(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】X線診断装置、X線診断装置の制御方法、及び画像処理装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20220126BHJP
【FI】
A61B6/00 320Z
A61B6/00 350A
A61B6/00 ZDM
(21)【出願番号】P 2017026272
(22)【出願日】2017-02-15
【審査請求日】2020-01-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100202429
【氏名又は名称】石原 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100125151
【氏名又は名称】新畠 弘之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 久典
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-011863(JP,A)
【文献】特開2005-211514(JP,A)
【文献】特開2013-070723(JP,A)
【文献】特開平07-171142(JP,A)
【文献】国際公開第2013/042416(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/135867(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を被検体に向けて照射するX線照射部と、
前記X線照射部の照射に応じて、前記被検体を透過した前記X線のX線画像を繰り返し取得する取得部と、
前記X線照射部の制御に用いる領域であ
り、前記X線画像中の所定領域が前記被検体の体動によって変化する領域としての第1関心領域と、当該第1関心領域に含まれ
、前記所定領域に基づく大きさを有する第2関心領域とを前記X線画像内に設定する設定部と、
前記第2関心領域
を前記第1関心領域内の当該第2関心領域を除く領域
よりも大きい重みを付けて、前記取得部で取得された前記X線画像の前記第1関心領域内における画素値を変換する画素値変換部と、
前記画素値が変換された第1関心領域内における画素値に基づいて制御値を生成する生成部と、
前記制御値が所定値に近づくように、前記X線照射部が照射するX線の制御を行う制御部と、
を備えるX線診断装置。
【請求項2】
前記第1関心領域および前記第2関心領域と、前記第1関心領域および前記第2関心領域それぞれの重み値とは、検査種別毎に予め設定されている請求項
1に記載のX線診断装置。
【請求項3】
前記制御部は、検査種別で定まる線量指標に前記制御値を近づけるように、前記X線照射部に供給する管電圧、及びmAs値に対応する電流を制御する請求項
1又は2に記載のX線診断装置。
【請求項4】
X線を被検体に向けて照射する照射工程と、
前記X線の照射に応じて、前記被検体を透過した前記X線のX線画像を繰り返し取得する取得工程と、
前記X線の制御に用いる領域であ
り、前記X線画像中の所定領域が前記被検体の体動によって変化する領域としての第1関心領域と、当該第1関心領域に含まれ、
前記所定領域に基づく大きさを有する第2関心領域とを前記X線画像内に設定する設定工程と、
前記第2関心領域
を前記第1関心領域内の当該第2関心領域を除く領域
よりも大きい重みを付けて、前記取得工程で取得された前記X線画像の前記第1関心領域内における画素値を変換する画素値変換工程と、
前記画素値が変換された第1関心領域内における画素値に基づいて制御値を生成する生成工程と、
前記制御値が所定値に近づくように、前記X線の制御を行う制御工程と、
を備えるX線診断装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、X線診断装置、X線診断装置の制御方法、及び画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置では、被検体を透過したX線のX線像を時系列に収集し、このX線像に基づくX線画像を時系列に得るX線透視が行われている。このX線透視では、X線画像に設定された第1関心領域内の画素値が所定値になるように、X線量がフィードバック制御されている。
【0003】
X線画像に設定された第1関心領域内の画素がフィードバック制御に用いられる。これにより、X線画像における第1関心領域の画素値が所定値になるように、X線量がフィードバック制御される。この結果、画像処理されたX線画像中における被検体内の関心領域は、観察や、診断に適した所定の輝度値で表示される。このような制御は、ABC(ABC:Auto Brightness Control)と呼ばれている。
【0004】
ところが、被検体の体動などが生じると、X線画像に設定された第1関心領域内の画素値分布が変動し、フィードバック制御の結果、被検体内の関心領域を透過するX線量が変動する場合がある。この結果、被検体内の関心領域における輝度値も変動し、観察や、診断に適さなくなってしまう恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本実施形態の目的は、被検体内の関心領域を透過したX線量の変動を抑制可能なX線診断装置、X線診断装置の制御方法、及び画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係るX線診断装置は、X線を被検体に向けて照射するX線照射部と、前記X線照射部の照射に応じて、前記被検体を透過した前記X線のX線画像を繰り返し取得する取得部と、前記X線照射部の制御に用いる領域である第1関心領域を前記X線画像内に設定する設定部と、前記取得部での前記X線画像の取得に応じて、当該X線画像の前記第1関心領域内におけるそれぞれの画素値を、前記第1関心領域内の位置に応じて0より大きな重み値が付与された重みを付けて加算する加算処理を行い、当該加算処理で得られた値に基づいて制御値を生成する生成部と、前記制御値が所定値に近づくように、前記X線照射部が照射するX線の制御を行う制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係るX線診断装置の構成を説明するためのブロック図。
【
図2】対数変換機能により画像処理された画像のヒストグラムを示す図。
【
図3】画像処理装置の生成機能が生成した制御値の時間変化を示す図。
【
図4】検査種別毎に設定する領域及び重み値の設定テーブルの一例を示す図。
【
図5A】(a)は、胸部正面のX線画像と、第1関心領域の範囲を示す図。(b)は、胸部正面の第1関心領域及び第2関心領域それぞれの領域内の重み値と、第1関心領域内の位置との関係を示す図。
【
図5B】(a)は、胸椎正面のX線画像と、第1関心領域の範囲を示す図。(b)は、胸椎正面の第1関心領域及び第2関心領域それぞれの領域内の重み値と、第1関心領域内の位置との関係を示す図。
【
図5C】(a)は、胸椎右側面のX線画像と、第1関心領域の範囲を示す図。(b)は、胸椎右側面の第1関心領域及び第2関心領域それぞれの領域内の重み値と、第1関心領域内の位置との関係を示す図。
【
図5D】(a)は、胸椎左側面のX線画像と、第1関心領域の範囲を示す図。(b)は、胸椎左側面の第1関心領域及び第2関心領域それぞれの領域内の重み値と、第1関心領域内の位置との関係を示す図。
【
図6】第1実施形態に係る透視の一連の流れを示したフローチャートを示す図。
【
図7A】第1関心領域、第2関心領域及び第3関心領域の範囲を示す図であり、第2関心領域が中央部にある図。
【
図7B】第1関心領域、第2関心領域及び第3関心領域の範囲を示す図であり、第2関心領域が右部にある図。
【
図7C】第1関心領域、第2関心領域及び第3関心領域の範囲を示す図であり、第2関心領域が左部にある図。
【
図7D】第1関心領域内の重み値が連続的に変化する場合の重み値を示す図。
【
図8】第2実施形態に係るX線診断装置の構成を説明するためのブロック図。
【
図9】(a)は、腰椎のミエログラフィーにおいて時系列に透視されるX線画像を示す図。(b)は、X線画像に対応して、設定機能が時系列に設定する第1関心領域と第2関心領域を示す図。
【
図10】透視シーケンス設定機能を用いた透視における一連の流れを示したフローチャートを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係るX線診断装置10を説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行うこととする。
【0010】
(第1実施形態)
まず、
図1に基づき、第1実施形態に係るX線診断装置10の構成を説明する。
図1は、第1実施形態に係るX線診断装置10の構成を説明するためのブロック図である。この
図1に示すように、X線診断装置10は、被検体PのX線透視が可能な装置であり、X線照射装置100と、収集装置200と、画像処理装置300と、制御装置400と、曝射ボタン500と、入力回路600と、ディスプレイ700と、天板800とを備えて構成されている。
【0011】
X線照射装置100は、X線を被検体Pに向けて所定の時間間隔で繰り返し照射する。このX線照射装置100は、高電圧発生器102と、X線管104と、X線可動絞り106とを備えて構成されている。
【0012】
高電圧発生器102は、管電圧と、mAs値に基づく電流とを出力する。ここでのmAs値は、管電流と照射時間の積である。具体的には、高電圧発生器102は、例えば変圧器と、整流器とを有している。変圧器は、交流電源に接続され、交流電源から供給される交流電圧を設定された管電圧に応じて昇圧する。そして、変圧器は、昇圧した交流電圧を整流器に供給する。整流器は、変圧器から供給された交流電圧を整流し、正の成分だけを有する脈動電圧を管電圧として出力する。また、高電圧発生器102は、脈動電圧を分圧し、mAs値に基づく照射時間の間、mAs値に基づく電流を出力する。このmAs値に基づく電流が管電流に対応する。
【0013】
より詳細には、高電圧発生器102は、制御装置400とX線管104とに接続され、管電圧、管電流、パルス幅、及びパルスレートを示す透視条件信号が制御装置400から高電圧発生器102に入力される。高電圧発生器102は、透視条件信号に基づくパルス幅の間、透視条件信号に基づく管電圧、及び管電流に対応する電流をパルスレートの逆数の時間間隔でX線管104に供給する。すなわち、ここでの時間間隔は、X線の照射の開始から、次のX線の照射の開始までの時間を意味する。これは、曝射ボタン500を押している限り継続する。なお、本実施形態における時間間隔はパルスレートの逆数でもよく、或いは、X線の照射の終了から、次のX線の照射の開始までの時間でもよい。
【0014】
X線管104は、X線を発生する。X線管104は、真空の外囲器内に陰極であるフィラメントと、陽極であるターゲット金属とを有している。X線管104は、高電圧発生器102に接続され、高電圧発生器102から管電圧、及び管電流に対応する電流が供給される。より詳細には、フィラメントは、タングステン等の金属によりコイル状に形成され、管電流に対応する電流が高電圧発生器102から供給されると、熱電子を発生する。すなわち、単位時間あたりに発生する熱電子の数が管電流である。ターゲット金属は、例えばタングステンである。これらの陰極と陽極との間には、高電圧発生器102から供給される管電圧が印加され、陰極と陽極との間に電界が発生する。この電界により加速された熱電子は、陽極のターゲット金属に衝突し、ターゲット金属からX線が発生する。管電圧の増加に従い、X線の波長ピークは短波長側にシフトし、X線のエネルギーも増加する。
【0015】
ここで、X線の強度は、単位面積を単位時間に通過するX線のエネルギーである。また。X線量は、X線の強度と、照射時間との積である。これらのことから分かるように、X線量は、mAs値に比例すると共に、管電圧が増加するに従い増加する。
【0016】
X線可動絞り106は、鉛などで構成される羽状の絞りを有している。X線可動絞り106は、X線管104の出射口に配置され、X線管104が発生したX線の照射範囲の絞りを移動させることで限定する。これにより、被検体PにX線を照射する範囲が限定される。ここでは、透視前および透視中に検査者が手動で絞りの移動を行う。なお、絞りの移動は、制御装置400からの制御信号に従い、モータ駆動で行ってもよい。
【0017】
収集装置200は、X線照射装置100の照射に応じて、被検体Pを透過したX線のX線画像を繰り返し収集する。収集装置200は、X線検出器202と、AD変換回路204と、画像補正部206とを有している。X線検出器202は、被検体Pを透過したX線のX線像を画素単位で検出するとともに、検出したX線量に比例する画像信号を画素毎に出力する。ここで、X線像は2次元のX線強度分布である。
【0018】
例えば、X線検出器202は、検出面に照射されたX線を検出するための平面検出器(FPD:Flat Panel Detector)により構成されている。FPDはイメージセンサを有しており、イメージセンサには、CMOSイメージセンサ(Complementary Metal Oxide Semiconductor Image Sensor)や、CCD(Charge Coupled Device)、薄膜トランジスタ(TFT:thin film transistor)などが利用されている。
【0019】
より詳細には、X線検出器202は、制御装置400に接続され、制御装置400から入力される例えば蓄積信号、及び照射時間信号に従い制御されている。また、X線検出器202の駆動は、高電圧発生器102に入力される透視条件信号と同期している。例えば、CMOSイメージセンサでは、蓄積信号に従い、各画素に対応するフォトダイオード(PD:Photodiode)は、X線がX線管104から照射されている間、X線量に応じた電荷を蓄える。そして、照射時間信号に従い、これらの各画素に対応するフォトダイオードは、照射時間の終了に応じて、蓄えた電荷を電圧に変換し、増幅器で増幅された電圧信号をアナログの画像信号として出力する。
【0020】
AD変換回路204は、アナログ信号をデジタル信号に変換する。より詳細には、AD変換回路204は、X線検出器202と画像処理装置300とに接続され、X線検出器202から入力されるアナログの画像信号を、デジタルの画像信号に変換する。
【0021】
画像補正回路206は、AD変換回路204に接続され、デジタルの画像信号に対し、X線検出器202における各画素の感度不均一を補正するゲイン補正処理、及び画素の脱落を補正する欠陥画素補正処理などの補正処理を行って、補正処理後のX線画像を生成する。画像補正回路206は、この補正処理後のX線画像を画像処理装置300の第1記憶回路302に出力する。なお、本実施形態では、被検体Pを透過したX線の二次元の強度分布に基づく画像をX線画像と呼ぶこととする。例えば、X線画像には、AD変換回路204が出力するデジタルの画像信号に基づくX線デジタル画像が含まれる。また、このX線デジタル画像に、ゲイン補正処理、欠陥画素補正処理などの補正処理を施した画像もX線画像に含まれる。
【0022】
画像処理装置300は、収集装置200が収集したX線像に基づくX線画像を処理し、X線照射装置100が照射するX線の線量制御を行うための制御値を生成する。また、画像処理装置300は、X線画像を画像処理し、表示用の画像を生成する。具体的には、画像処理装置300は、第1記憶回路302と、処理回路304とを備えて構成されている。第1記憶回路302は、磁気的もしくは光学的記録媒体または半導体メモリなどの、読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有する。第1記憶回路302は、処理回路304にて行われる各処理機能をコンピュータによって実行可能なプログラム形態で、記憶している。第1記憶回路302は、画像補正回路206から入力されたX線画像を記憶するほか、後述する処理回路304における各処理機能を実現するための領域情報、重み値なども記憶している。より詳細には、第1記憶回路302は、収集装置200の画像補正回路206に接続され、画像補正回路206から入力されたX線画像を記憶する。
【0023】
処理回路304は、プログラムを第1記憶回路302から読み出し、実行することで各プログラムに対応する各処理機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路304は、各処理機能を有することとなる。なお
図1においては単一の処理回路304にて各処理機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路304を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各処理機能を実現しても構わない。
【0024】
より詳細には、処理回路304は、収集装置200の画像補正回路206と、第1記憶回路302と、制御装置400と、ディスプレイ700などに接続され、第1記憶回路302から読み出したX線画像を処理し、処理結果を制御装置400と、ディスプレイ700とに出力する。すなわち、この処理回路304は、画素値変換機能306と、設定機能308と、生成機能310と、画像処理機能312と、第1階調処理機能314とを備えて構成されている。ここで、画素値変換機能306と、設定機能308と、生成機能310とは、X線照射装置100の制御に用いられる制御値を演算するための機能である。一方、画像処理機能312と、第1階調処理機能314とは、X線画像を画像処理し、表示用の画像を生成するために用いられる機能である。
【0025】
画素値変換機能306は、第1記憶回路302から読み出したX線画像の画素値を変換する。この画素値変換機能306は、画素値の変換テーブルを有しており、変換テーブルに基づいてX線画像の画素値を変換する。
【0026】
ここで、
図2に基づき画素値変換機能306について説明する。
図2は、画素値変換機能306の一例である対数変換により画像処理されたX線画像のヒストグラムを示す図である。左図は、胸椎正面画像と後述する第1関心領域320とを示す図であり、中図は、対数変換する前の第1関心領域内の画素値のヒストグラムであり、右図は、対数変換した後の第1関心領域320内の画素値のヒストグラムである。ヒストグラムでは、横軸は画素値を示し、縦軸は画素値毎の出現頻度を示している。
【0027】
画素値変換機能306による画素値の変換は、輝度を合せたい部分を伸張し、その他の部分を圧縮するように行われる。例えば
図2の左図に示す胸部検査において縦隔に輝度を合わせたい場合、画素値変換は、縦隔つまり画素値の低い領域を伸張し、肺野つまり高い領域を圧縮するような、例えば対数変換が行われる。これにより、低めの画素値(縦隔)寄りの領域が観察に適する輝度となる。なお、高い画素値の領域(肺野)は明るくなり観察しにくくなるが、線量が多くノイズが少ない領域なので、ダイナミックレンジ圧縮処理などの既存技術で補正すれば観察可能となる。このように、画素値変換機能306に対数変換を用い、ダイナミックレンジ圧縮処理など既存の補正技術を併用すると、広い範囲が観察可能になるので、積極的に輝度を合せたい部分がなく一般的なABCの用途には、対数変換が適している。
【0028】
再び
図1に戻り、設定機能308は、X線照射装置100の制御に用いる領域である第1関心領域を、X線像に基づくX線画像内に設定する。ここでのX線画像は、画素値変換機能306で画素値が変換された画像である。また、被検体Pを透過したX線の線量に基づく画像に各種の画像処理を施した画像も、X線画像と呼ぶこととする。例えば、X線画像に、画素値変換、周波数処理などの画像処理を行った画像もX線画像と呼ぶこととする。
【0029】
また、設定機能308は、第1関心領域内に第2関心領域を設定する。設定機能308の詳細は、後述する。なお、関心領域は、ROI(ROI:Region Of Interest)と呼ばれる場合がある。
【0030】
生成機能310は、X線画像の第1関心領域内におけるそれぞれの画素値に、第1関心領域内の位置に応じて0より大きな重み値が付与された重みを付けて加算する加算処理を行い、加算処理で得られた値に基づいてX線照射装置100を制御する制御値を生成する。生成機能310の詳細も後述する。
【0031】
画像処理機能312は、補正処理後のX線画像に周波数処理などの鮮鋭化処理を施す。
第1階調処理機能314は、画像処理機能312が生成したX線画像、第1記憶回路302から読み出した画像、画素値変換機能306が生成したX線画像の内のいずれかの階調を変換する第1階調処理を行う。第1階調処理機能314がいずれの画像の階調処理を行うかは、例えば入力回路600からの選択指示により可能である。なお、第1階調処理機能314による画素値変換特性は、輝度を合せたい部分により、変更してもよい。例えば、胸部検査と四肢の検査とで、画素値変換特性を異ならせてもよい。
【0032】
図1に示すように、制御装置400は、X線照射装置100の高電圧発生器102と、収集装置200のX線検出器202と、画像処理装置300の処理回路304と、曝射ボタン500と、入力回路600と、ディスプレイ700とに接続され、X線診断装置1全体の制御を行う。具体的には、制御装置400は、第2記憶回路402と、F条件決定回路404と、制御回路406とを備えて構成されている。
【0033】
第2記憶回路402は、上述した第1記憶回路302と同様に、磁気的もしくは光学的記録媒体または半導体メモリなどの、読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有する。第2記憶回路402は、制御回路406にて行われる各処理機能をコンピュータによって実行可能なプログラム形態で記憶している。また、第2記憶回路402は、被検体Pを透過したX線量の指標となる線量指標を検査種別毎に記憶し、
図1で示すF条件決定テーブル408を記憶している。このF条件決定テーブル408において、横軸は管電圧(F_kV)を示し、縦軸は管電流とパルス幅の積であるmAs値(F_mAs)を示している。
図1中で矢印410が示す向きに従い、X線量がより大きくなる管電圧(F_kV)と、mAs値(F_mAs)との組み合わせを示している。
【0034】
F条件決定回路404は、検査種別に応じた線量指標と画像処理装置300の生成機能310が生成した制御値とに基づき、次の透視における透視条件である管電圧、及びmAs値を制御回路406に出力する。
【0035】
制御回路406は、プログラムを第2記憶回路402から読み出し、実行することで各プログラムに対応する各機能を実現するプロセッサである。より詳細には、制御回路406は、X線照射装置100の高電圧発生器102と、F条件決定回路404とに、接続され、検査種別で定まる線量指標に生成機能310で生成された制御値を近づけるように、X線照射装置100のX線管104に供給する管電圧、及びmAs値に対応する電流とパルス幅を制御する。すなわち、制御回路406は、F条件決定回路404から入力された管電圧、及びmAs値に基づく透視条件信号を高電圧発生器102に出力する。制御回路406により行われるX線照射装置100全体における一連の透視処理の詳細は、
図6を参照して後述する。また、制御回路406は、第1記憶回路302から読み込まれた検査種別の情報に基づき、検査種別を示すボタンを検査種別毎に映像信号としてディスプレイ700に出力する。
【0036】
曝射ボタン500は、X線の照射タイミングを制御装置400に指示するためのスイッチであり、検査者は手で、この曝射ボタン500を操作する。曝射ボタン500は、制御装置400の制御回路406に接続され、検査者にスイッチが押されると、曝射開始信号を制御回路406に出力する。
【0037】
入力回路600は、検査種別、透視検査種別等の設定を行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード等によって実現される。入力回路600は、制御装置400の制御回路406に接続され、検査者から受け取った入力操作を電気信号に変換し、制御回路406に出力する。本実施形態では、入力回路600から検査種別を示す信号が制御回路406に入力されると、制御回路406は、その検査種別の検査を開始する。一方で、別の検査種別を示す信号、又は終了を示す終了信号が入力回路600から入力されると、制御回路406はその検査種別の検査を終了する。
【0038】
ディスプレイ700は、X線画像を表示するための、液晶表示装置などによって実現される。より詳細には、ディスプレイ700は、画像処理装置300の処理回路304に接続され、処理回路304で処理されたX線画像などを輝度信号に変換し画面に表示する。また、ディスプレイ700は、制御回路406に接続され、上述のように制御回路406から入力された検査種別それぞれを示すボタンの映像信号を輝度信号に変換し画面に表示する。例えば、ディスプレイ700に表示される検査種別を示すボタンが検査者に指示されると、検査種別を示す信号が入力回路600から制御回路406に出力される。一方で、検査種別を示すボタンの指示が終了すると、終了を示す終了信号が入力回路600から制御回路406に出力される。
【0039】
天板800は、X線の透過率が高いアクリル、カーボンなどで構成される。この天板800に、横たわった状態の被検体Pが載置される。
【0040】
次に、
図1を参照にしつつ
図3に基づき、ABCに用いられる制御回路406の透視条件制御について説明する。
図3は、画像処理装置300の生成機能310が生成した制御値412の時間変化を示す図である。横軸は経過時間を示し、縦軸は制御値を示している。
図3中の412は、
図3と同様に、検査種別が胸部正面透視である場合における制御値を示し、414は、胸部正面透視の基準となる線量指標を示している。
【0041】
この
図3に示すよう、制御回路406は、線量指標414に生成機能310が生成した制御値412が近づくように、X線照射装置100における高電圧発生器102の透視条件を制御する。すなわち、F条件決定回路404は、線量指標414よりも制御値412が大きい場合には、F条件決定テーブル408に従い、現透視における透視条件のmAs値及び管電圧を共に減少し、制御回路406に出力する。これにより、制御回路406は、現透視における透視条件の管電圧、及びmAs値を共に減少した次透視用の管電圧、及びmAsを透視条件信号として高電圧発生器102に出力する。つまり、次透視では、被検体を透過するX線量が減少する。
【0042】
一方で、F条件決定回路404は、線量指標414よりも制御値412が小さい場合には、F条件決定テーブル408に従い、現透視における透視条件のmAs値及び管電圧を共に増加した次透視用の管電圧、及びmAsを透視条件信号として高電圧発生器102に出力する。つまり、次透視では、被検体を透過するX線量が増加する。なお、透視条件の変更は、必ずしも次透視である必要はなく、数パルスから数十パルスのX線が照射された後に変更してもよい。
【0043】
これらから分かる様に、制御回路406は、F条件決定回路404からの入力に基づき、検査種別で定まる線量指標414に制御値412を近づけるように高電圧発生器102を制御する。このように、X線画像における第1関心領域内の画素値を一定値に維持するようにX線量を増減させる一連の制御は、ABCと呼ばれている。
【0044】
次に、
図1を参照にしつつ、
図4及び
図5Aから
図5Dに基づいて設定機能308及び生成機能310についてより詳細に説明する。
図4は、検査種別毎に設定される領域及び重み値の設定テーブルの一例を示す図である。
図4には、検査種別の例として胸部正面、腰椎正面、腰椎右側面、腰椎左側面が記載されている。
【0045】
座標1は、四角形の第1関心領域を示す座標であり、この四角形における原点の座標と、原点と対角線で結ばれる対角点の座標を示している。重み値1は、第1関心領域内の第2関心領域を除く領域に付与される重みを示している。ここでは、重み値は、重み係数の値に対応する。この重み値は、後述する(1)式に示すように、正規化してもよい。座標2は、四角形の第2関心領域を示す座標で有り、この四角形の原点の座標と、原点と対角線で結ばれる対角点の座標を示している。重み値2は、第2関心領域に付与される重みを示している。なお、胸部正面においては、2つの第2関心領域が設定される。このように、第1関心領域及び第1関心領域内の第2関心領域は、X線画像中の座標で定義されている。
【0046】
ここで検査種別とは例えば、腰椎正面、腰椎側面、胸部正面、頭部正面、胸部側面、腹部正面、手正面、足正面等の検査における透視部位と透視方向とを含むプロトコルである。また、透視部位とは、被検体P中の体の部位であり、例えば部位は、腰椎、胸部、頭部、腹部、手、足などである。さらにまた、透視方向は、X線の進行方向に対向する被検体Pの向きであり、例えば正面、背面、右側面、左側面などである。このように、第1記憶回路302が記憶する設定テーブルには、透視可能である検査種別毎に、座標1、重み値1、座標2、重み値2の情報が登録されている。
【0047】
なお、第1関心領域、及び第2関心領域の形状は四角形に限らず任意の形状でよい。例えば楕円、円、台形、5角形などの多角形などでもよい。
【0048】
図5A~
図5Dは、検査種別毎の第1関心領域320、第2関心領域322の範囲、及び被検体内の関心領域324と、領域内の重み値とを示す図である。
図5Aは、検査種別が胸部正面の図であり、
図5Bは、胸椎正面の図であり、
図5Cは、胸椎右側面の図あり、
図5Dは、胸椎左側面の図ある。ここでの右側面とはR―L透視を意味する。すなわち、撮像装置に被検体Pの左側面を天板800につけ、右側面からX線を照射する透視である。一方で、ここでの左側面とはL―R透視を意味し、撮像装置に被検体Pの右側面を天板800につけ、左側面からX線を照射する透視である。
【0049】
図5A~
図5Dにおける(a)図がX線画像と、第1関心領域320の範囲とを示す図である。ここでのX線画像においては、線量が高くなるにしたがい色が白くなるように処理されている。
【0050】
324は、被検体P内の関心領域を示している。関心領域324は、線量基準となる領域であり、検査種別毎に、位置、及び大きさが異なる。例えば、検査種別が胸部正面透視であれば、
図5Aの関心領域324で示す第5肋間の領域であり、腰椎透視であれば、
図5B~
図5Dの関心領域324で示す腰椎内の領域である。関心領域324には、胸部正面透視の第5肋間のように、階調の基準となる部位を領域として選択する場合もあり、或いは、関心領域324には、腰椎透視のように、例えば検査で観察や診断を行いたい領域を選択する場合もある。
【0051】
また、
図5A~
図5Dにおける(b)図が、第1関心領域320及び第2関心領域322それぞれの領域内の重み値と、第1関心領域320内の位置との関係を示す図である。ここで、(b)図では、上側の図が重み値を濃淡で示し、下側のグラフの横軸は第1関心領域320内の水平軸上の位置を示し、縦軸は重み値を示している。さらにまた、ここでの所定値th2は、例えば1.0であり、1.0以上の重み値を有する領域が第2関心領域322である。換言すると第2関心領域322内の重み値を1.0以上に設定している。一方で、0.0よりも大きく、1.0未満の重み値を付与する領域が第1関心領域320内で第2関心領域322を除く領域である。
【0052】
設定機能308は、入力回路600に接続され、入力回路600から入力された検査種別に基づき、
図4に示す設定テーブルの座標1及び座標2を記憶回路から呼び出し、X線画像内に第1関心領域320及び、第2関心領域322を設定する。例えば、設定機能308は、これらの
図5A~
図5Dに示すように、第1関心領域320及び第2関心領域322を、検査種別毎にX線画像内に設定する。なお、検査種別は、透視プロトコルと呼ばれる場合もある。
【0053】
ここで、X線画像中の関心領域324の大きさと第1関心領域320の大きさとの比率が小さいと、被検体Pに体動が生じることにより、第1関心領域320内から関心領域324の少なくとも一部がはみ出してしまう可能性が高くなる。
【0054】
第1関心領域320の外に位置する関心領域324内の画素は、生成機能310が生成する制御値の演算に用いられず、この制御値の演算精度が低下してしまう恐れがある。また、上述したように、関心領域324は検査種別により大きさと位置が異なる。そこで、本実施形態では、設定機能308は、第1関心領域320を被検体内の関心領域324よりも広く設定し、且つ検査種別に応じて第1関心領域320の大きさと位置を設定する。この場合、第1関心領域320は、関心領域324の検査種別毎の体動に基づく大きさに設定される。ここで、体動とは、透視中における被検体Pの体の動きを意味する。体動には随意筋による体の動きと、不随意筋による体の動きとの両方が含まれる。また、例えば側面透視などのように、重力などの外力により体が移動する場合も体動に含まれる。
【0055】
一方で、第1関心領域320を大きくすると、関心領域324の周辺組織による生成機能310が生成する制御値への寄与が増加してしまう。そこで、本実施形態では、設定機能308は、所定値(th2)以上の重み値を付与する領域を第2関心領域322として設定する。すなわち、第2関心領域322は、関心領域324に基づく大きさであり、第1関心領域320よりも小さく設定される。上述のように、関心領域324は、検査種別毎に大きさ、及び位置が異なる。このため、設定機能308は、検査種別に基づき、第2関心領域322の大きさ、及び位置を設定する。
【0056】
例えば、第1関心領域320の大きさ、及び位置は、過去に透視された検査種別毎の被検体P内の関心領域324の位置に基づき設定されている。この過去の画像には体動により関心領域324の位置が変動している画像が含まれている。これにより、一般的な体動が生じても第1関心領域320内から関心領域324が出ない範囲に第1関心領域320を設定可能である。
【0057】
同様に、第2関心領域322の大きさ、及び位置は、過去に透視された検査種別毎の被検体P内の関心領域324の位置に基づき設定されている。すなわち、第2関心領域322の大きさ、及び位置は、関心領域324がより高い可能性で存在する位置に基づき設定されている。これにより、体動が生じていない透視時には、関心領域324内における画素が制御値の演算に寄与する割合をより高めることが可能である。換言すると、関心領域324の周辺組織が制御値の演算に寄与する割合をより低減可能である。
【0058】
例えば、生成機能310は、
図4の設定テーブルに示すように、第2関心領域322を除く第1関心領域320内の重み値1よりも、第2関心領域322内の重み値2を大きく設定している。このように、第1関心領域内の重み付けに用いられる重み値の分布は、被検体Pの検査種別に応じて予め設定されている。
【0059】
これらから分かるように、第1関心領域320の大きさを被検体P内の関心領域324より大きく設定することで、被検体Pの体動や位置ずれが生じた場合に、生成機能310が生成する制御値の変動が抑制される。一方で、体動などが生じていない通常時の透視では、関心領域324に対応する重み値が他の領域の重み値よりも大きくなるので、関心領域324内における画素の制御値への寄与を高めることが可能である。
【0060】
また、本実施形態では、例えば
図5A及び
図5Cに示すように、第1関心領域320全体における面積に対する第2関心領域322の面積の割合を、検査種別に応じて異ならせている。例えば、第2関心領域322の面積が80(任意単位)であり、第1関心領域320全体における面積が100(任意単位)であれば、第1関心領域320全体における面積に対する第2関心領域322の面積の割合は0.8である。また、例えば、第2関心領域322の面積が120(任意単位)であり、第1関心領域320全体における面積が240(任意単位)であれば、第1関心領域320全体における面積に対する第2関心領域322の面積の割合は0.5である。ここでは、割合0.8の方が割合0.5よりも大きいと定義する。さらに、ここでは、第1関心領域320全体における面積とは、第1関心領域320から第2関心領域322を除かない面積である。すなわち、第1関心領域320全体における面積は、第2関心領域322を包含している場合であっても、包含していない場合であっても同一の値である。
【0061】
より具体的には、被検体Pの体動が胸椎側面透視より少ない胸部正面透視では、第1関心領域320全体における面積に対する第2関心領域322の面積の割合を、胸椎側面透視より大きくしている。この場合、第2関心領域322を除く第1関心領域320内の重み値1と、第2関心領域322内の重み値2との差も、胸部正面透視の方が胸椎側面透視より小さく設定されている。このように、検査種別に応じて、設定機能308が、第2関心領域322と第1関心領域320全体との面積比を異ならせている。また、検査種別に応じて、生成機能310が、第2関心領域322を除く第1関心領域320内の重み値1と、第2関心領域322内の重み値2との差を異ならせている。これにより、検査種別毎に制御値の変動を抑制すると共に、検査種別毎の線量制御をより正確に行うことが可能である。
【0062】
また、本実施形態では、
図5C及び
図5Dに示すように、第1関心領域320内の胸部寄りの重み値をより小さくし、胸部から遠ざかるに従い重み値を大きくしている。すなわち、
図5Cに示す胸椎右側面透視では、第2関心領域322は、第1関心領域320の中心から右側にずれた位置に設定される。
【0063】
一方で、
図5Dに示す胸椎左側面透視では、第2関心領域322は、第1関心領域320の中心から左側にずれた位置に設定される。このように、例えば側面透視では、第1関心領域320内の重み値の分布は左右非対称である。これにより、体動などが生じて胸部が第1関心領域内に含まれても、胸部内の画素値が制御値の演算に寄与してしまうことを抑制している。
【0064】
また、胸椎等の脊柱系の側面透視では、第1関心領域320も画像の中心からずれた位置に設定される。例えば、
図5Cに示すように、第1関心領域320が画像の中心から右側にずれた位置にある場合には、第1関心領域320の左側に胸部が透視される。このため、第2関心領域322は、第1関心領域320の中心から右側にずれた位置に設定される。
【0065】
このように、検査種別に応じて、第1関心領域320内における第2関心領域322の位置を変更することで、体動により生じる制御値の変動をより抑制可能であると共に、検査種別毎の線量制御をより正確に行うことが可能である。
【0066】
次に、生成機能310が行う制御値の演算について詳しく説明する。生成機能310は、例えば下記の(1)式に従い、制御値を演算する。
【数1】
【0067】
ここでは、重み係数の値を重み係数の値の総和で除算することで、重み値は正規化されている。すなわち、第1関心領域320及び第2関心領域322内の各画素値に割り振られる重み値の合計値は、1.0になるように設定されている。このように重み値を正規化することにより、制御値をX線画像の画素値と同等に扱うことが可能となる。ここでの画素値はX線量に比例するので、制御値もX線量に比例する。なお、「重み値」は、画素値を加算する加算処理を行う場合に、それぞれの画素値に付けられた重みに付与された値である。例えば(1)式では、(重み係数の値/重み係数の値の総和)が「重み値」である。但し、例えば、重み値を正規化せずに、(1)式において、(重み係数の値の総和)で重み係数の値を除算しない場合には、重み係数の値が「重み値」に相当することとなる。このように、制御値を演算する場合に、重み値を正規化してもよく、或いは、正規化しなくてもよい。
【0068】
また、ここでの実施形態では、画素の間引きでなく、画素ごとの重み付けであることにより、S/N比の向上という効果も奏される。このため、より正確に関心領域324内を透過するX線量の制御が可能になる。
【0069】
以上が第1実施形態に係るX線診断装置10の構成の説明であるが、以下に第1実施形態に係るX線診断装置10における透視処理の一連の流れを説明する。
【0070】
図6は、第1実施形態に係る透視の一連の流れを示したフローチャートを示す図である。ステップS100は、検査者が入力回路600から検査種別を入力することにより実現するステップである。ステップS100により入力された検査種別を示す信号は、設定機能308、生成機能310、第1階調処理機能314、F条件決定回路404、及び制御回路406に入力される。
【0071】
ステップS102は、制御機能に対応するステップであり、制御回路406が第2記憶回路402から制御機能に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、制御機能が実現されるステップである。ステップS102では、制御機能が、入力回路600から入力された検査種別の検査を終了するか否かを判定する。別の検査種別を示す信号、又は終了信号が入力された場合(ステップS102のYES)には、制御機能は、その検査種別の検査を終了する。一方で、入力回路600から別の検査種別を示す信号、又は終了信号が入力されていない場合(ステップS102のNO)には、その検査種別の検査を継続する。
【0072】
ステップS104は、制御機能に対応するステップであり、制御回路406が第2記憶回路402から制御機能に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、制御機能が実現されるステップである。ステップS104では、透視用のX線の照射を継続するか否かを判定する。曝射ボタン500から照射信号が制御回路406に入力されている場合に(ステップS104のYES)、透視用のX線の照射を継続する。一方で、曝射ボタン500のスイッチが押されていない場合には、透視用のX線の照射を停止し、制御機能は、ステップS102からの処理を行う(ステップS104のNO)。
【0073】
ステップS106は、F条件決定回路404が、第2記憶回路402からF条件決定テーブル408、及び入力回路600から入力された検査種別に応じた線量指標を読み出すことにより実現するステップである。ステップS106では、F条件決定回路404が、透視開始時には初期設定のmAs値、及び管電圧を制御回路406に出力する。一方で、画像処理装置300の生成機能310が生成した制御値が入力される場合には、F条件決定回路404が、線量指標と制御値との比較に基づく、管電圧、及びmAs値を制御回路406に出力する。
【0074】
ステップS108は、制御機能に対応するステップである。制御回路406が第2記憶回路402から制御機能に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、制御機能が実現されるステップである。ステップS108では、制御回路406が、F条件決定回路404から入力された管電圧、及びmAs値に対応する透視条件信号を高電圧発生器102に出力する。また、制御回路406が、X線検出器202に蓄積信号、及び照射時間を示す照射時間信号を出力する。続いて、高電圧発生器102が、管電圧、及びmAs値に対応する電流をX線管104に供給する。また、制御回路406からの蓄積信号に応じて、X線検出器202が、電荷の蓄積を開始する。続いて、X線検出器202が、制御回路406から入力された照射時間信号に従い、照射時間の終了に応じて蓄積電荷に基づくアナログのX線画像信号をAD変換回路204に出力する。更に続いて、AD変換回路204がデジタルのX線画像信号に変換し、画像補正回路206に出力する。そして、画像補正回路206は、補正後のX線画像を第1記憶回路302に出力する。
【0075】
ステップS110は、処理回路304が第1記憶回路302から画素値変換機能306に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、画素値変換機能306が実現されるステップである。ステップS100では、画素値変換機能306が第1記憶回路302からX線画像を読み出し、例えば対数変換処理を施したX線画像を設定機能308に出力する。
【0076】
ステップS112は、処理回路304が第1記憶回路302から設定機能308に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、設定機能308が実現されるステップである。ステップSS112は、設定機能308が、入力された検査種別に基づき、X線画像内に第1関心領域320及び第2関心領域322を設定する。
【0077】
ステップS114は、処理回路304が第1記憶回路302から生成定機能に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、生成機能310が実現されるステップである。ステップS114では、生成機能310が、入力された検査種別に基づき、第1関心領域320内におけるそれぞれの画素値に、第1関心領域320内の位置に応じて0より大きな値が付与された重みを付けて加算処理をし、加算処理で得られた値に基づいて制御値を生成する。
【0078】
ステップS116は、処理回路304が第1記憶回路302から第1階調処理機能314に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、第1階調処理機能314が実現されるステップである。ステップS116では、第1階調処理機能314が、観察に適した画像への階調変換を第1記憶回路302から入力されるX線画像に施し、ディスプレイ700に出力する。
【0079】
ステップS118は、ディスプレイ700が第1階調処理機能314から入力された画像信号を輝度信号に変換して画面に表示することで実行されるステップである。そして、制御回路406の制御機能は、ステップS104からの処理を繰り返す。
【0080】
以上のように、本実施形態においては、第1関心領域320内におけるそれぞれの画素値に、第1関心領域320内の位置に応じて0より大きな値が付与された重み値が付与された重みを付けて加算する加算処理を行い、加算処理で得られた値に基づいて制御値を生成することした。これにより、被検体P内の関心領域324内の画素に付与する重みを大きくすることが可能であり、X線照射装置100の制御に用いる制御値の生成に関心領域324内の画素の寄与を増加させることができる。このため、透視時における制御値の精度をより向上させることが可能である。
【0081】
また、第1関心領域320の大きさを、体動で生じる変動に基づき被検体内の関心領域324の大きさよりも、大きくしている。これにより、被写体Pに体動が生じても、第1関心領域320の外に関心領域324の少なくとも一部が位置することが抑制されるので、被検体Pへの照射線量の変動が抑制される。
【0082】
(変形例)
上述した第1実施形態においては、生成機能310に用いられる重み値を2値で構成することとしたが、本変形例においては、生成機能310に用いられる重み値を3値以上で構成するようにしている。以下、上述した第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0083】
図7Aから
図7Dに基づいて、本変形例に係る生成機能310に用いられる重み値について説明する。
図7Aは、第1関心領域320、第2関心領域322、及び第3関心領域326の範囲を示す図であり、第2関心領域322が中央部にある図である。
図7Bは、第1関心領域320、第2関心領域322及び第3関心領域326の範囲を示す図であり、第2関心領域322が右部にある図である。
図7Cは、第1関心領域320、第2関心領域322及び第3関心領域326の範囲を示す図であり、第2関心領域322が左部にある図である。
図7Dは、第1関心領域320内の重み値が連続的に変化する場合の重み値を示す図である。
【0084】
図7Aから
図7Cの上図が第1関心領域320、第2関心領域322及び第3関心領域326の範囲を示す図であり、下図が第1関心領域320内の重み値と、第1関心領域320内の位置との関係を示す図である。
図7Dの上図が第1関心領域320、及び第2関心領域322の範囲を示す図であり、下図が第1関心領域320内の重み値と、第1関心領域320内の位置との関係を示す図である。これらの下図において、横軸は、第1関心領域320内の水平軸上の位置を示し、縦軸は、重み値を示している。また、ここで、所定値th2は、例えば1.0であり、1.0以上の重み値を有する領域が第2関心領域322である。
【0085】
第1実施形態では、例えば
図5Aから
図5Dに示したように、設定機能308は、第1関心領域320と、第2関心領域322とを設定していた。この場合、被検体Pの体動が生じ、関心領域324が第2関心領域322からはみ出した場合に、制御値(例えば(1)式)が不連続に変動してしまう恐れがある。
【0086】
そこで、本変形例では、この
図7Aから
図7Cに示すように、設定機能308は、第1関心領域320内に第3関心領域326を設定し、第3関心領域326内に第2関心領域322を設定する。この場合、生成機能310は、第2関心領域322内に1段階目の重み値を付与し、第2関心領域322を除く第3関心領域326内に2段階目の重み値を付与し、第3関心領域326を除く第1関心領域320内に3段階目の重み値を付与する。このように、多段階にすることで、体動により第1関心領域320内を被検体Pの関心領域324が移動する場合に、制御値(例えば(1)式)の変動をよりなだらかにできる。これにより、よりX線量の変動もよりなだらかにできる。
【0087】
また、
図7Dに示すように、重み値の値を連続的に変化させる場合には、体動により第1関心領域320内を被検体Pの関心領域324が移動する場合に、制御値の変動を連続的にすることが可能となり、X線量の変動も連続的にすることが可能である。
図7Dで示す重み値は、例えばx=XAを中心(平均値)とする正規分布の演算式に従い生成される。すなわち、画像処理装置300の生成機能310は、正規分布の演算式に従い重み値を生成する。この場合、第2関心領域322の座標に従い、重み値が1.0をとる座標が予め設定されている。
【0088】
以上のように、本変形例においては、第1関心領域320を被検体内の関心領域324よりも広くすると共に、第1関心領域320内の重み値の変動をよりなだらかにすることとした。これにより、第1関心領域320内を被検体Pの関心領域324が移動する場合に、被検体Pに照射するX線量の変動もよりなだらかにすることが可能である。これにより、被検体内の関心領域に対応する輝度値の変動もよりなだらかにすることができる。
【0089】
(第2実施形態)
上述した第1実施形態においては、検査種別を検査者がX線診断装置10に入力することとしたが、第2実施形態においては、透視シーケンス設定機能328が透視シーケンスに従い、検査種別をX線診断装置10に入力するようにしている。以下、上述した第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0090】
図8は、第2本実施形態に係るX線診断装置10の構成を説明するためのブロック図である。この
図8に示すように、画像処理装置300が、透視シーケンス設定機能328を更に有することで、第1実施形態と相違する。処理回路304が第2記憶回路402から透視シーケンス設定機能328に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、透視シーケンス設定機能328が実現される。すなわち、透視シーケンス設定機能328は、画素値変換機能306と、設定機能308と、生成機能310と同様に、X線照射装置100の制御に用いられる制御値を演算するための機能である。
【0091】
図8を参照にしつつ
図9に基づき透視シーケンス設定機能328を説明する。
図9は、腰椎のミエログラフィーにおける一連の透視動作の一部を示す図である。(a)は、時系列に透視装置200に透視されるX線画像を示す図である。また、(b)は、X線画像に対応して、設定機能308が時系列に設定する第1関心領域320と第2関心領域322を示す図である。ここで、ミエログラフィーは、脊髄腔の形状などを診断するための臨床検査である。ミエログラフィーでは、脊髄腔内に造影剤を注入し、X線透視により造影剤の流れが観察される。このように、X線透視では、時系列に透視される検査種別が予め定められている場合がある。この場合、検査者が、時系列に検査種別を入力回路600から入力すると、X線透視の流れを途切れさしてしまう恐れがある。
【0092】
このため、本実施形態では、
図8に示すように、第1記憶回路302は、透視検査毎に時系列に透視される検査種別の順番を記憶している。ここでは、時系列に透視される検査種別の順番を透視シーケンスと呼ぶこととする。例えば、透視検査が腰椎のミエログラフィーである場合、透視シーケンスとして、胸椎正面、胸椎左側面、胸椎右側面などが時系列の順番に記憶されている。また、例えば、透視検査が胃造影透視である場合、透視シーケンスとして、腹部正面、腹部右10度側面、腹部右30度側面などが時系列の順番に記憶されている。第1記憶回路302には、腰椎のミエログラフィー、頸椎のミエログラフィー、胃造影、胆管造影、泌尿器系造影などの透視検査毎に透視シーケンスが記憶されている。
【0093】
透視シーケンス設定機能328は、透視シーケンスに従い、検査種別を時系列に出力する。具体的には、透視シーケンス設定機能328は、第1記憶回路302と、設定機能308と、生成機能310と、第1階調処理機能314と、F条件決定回路404と、制御回路406と、曝射ボタン500と、入力回路600とに接続され、入力回路600から透視検査の開始指示が入力されると、第1記憶回路302から透視検査に対応する透視シーケンスを読み出す。例えば、透視シーケンス設定機能328は、予め設定された検査種別ごとの透視時間に従い、透視シーケンスに従った検査種別を設定機能308、生成機能310、第1階調処理機能314、F条件決定回路404、及び制御回路406に出力する。また、本実施形態の透視シーケンス設定機能328は、一連の検査種別を出力した後に終了信号を出力する。また、例えば、透視シーケンス設定機能328は、曝射ボタン500から入力される照射信号に基づき、透視シーケンスに従った検査種別を設定機能308、生成機能310、第1階調処理機能314、F条件決定回路404、及び制御回路406に出力してもよい。
【0094】
図10に基づき、この透視シーケンス設定機能328を用いた透視の一例を説明する。
図10は、透視シーケンス設定機能328を用いた透視における一連の流れを示したフローチャートを示す図である。第1実施形態における
図6と同等の処理には、同一の番号を付し、必要がない場合には、その説明を省略する。
【0095】
ステップS120は、検査者が入力回路600から透視検査の種別を入力することにより実現するステップである。ステップS120により入力された透視検査の種別は、透視シーケンス設定機能328に入力される。
【0096】
ステップS122は、処理回路304が第1記憶回路302から透視シーケンス設定機能328に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、透視シーケンス設定機能328が実現されるステップである。ステップS122では、透視シーケンス設定機能328は、入力回路600から入力された透視検査の透視シーケンスを、第1記憶回路302から読み出し、透視シーケンスに示される検査種別を透視の進行に従いF条件決定回路404、制御回路406、設定機能308、生成機能310、及び第1階調処理機能314に出力する。また、ここでの透視シーケンス設定機能328は、一連の処理の終了時に終了信号を出力する。
【0097】
ステップS100は、第1実施形態における
図6と同様に検査種別を入力するステップである。ここでのステップS100は、処理回路304が第1記憶回路302から透視シーケンス設定機能328に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、透視シーケンス設定機能328が実現されるステップである。ステップS100では、透視シーケンス設定機能328は、透視シーケンスに示される検査種別を、設定機能308、生成機能310、第1階調処理機能314、F条件決定回路404、及び制御回路406に出力する。この場合、時系列に並ぶ透視種別を順に一つ出力する。
【0098】
ステップS124は、制御機能に対応するステップであり、制御回路406が第2記憶回路402から制御機能に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、制御機能が実現されるステップである。ステップS128では、透視検査の種別に基づく一連の検査を終了するか否かを判定する。透視シーケンス設定機能328から検査種別が入力されている場合(ステップS124のNO)、一連の検査を継続し、ステップS100からの処理を行う。一方で、透視シーケンス設定機能328から終了信号が入力されている場合(ステップS124のNO)、一連の検査を終了する。
【0099】
以上のように、本実施形態においては、透視シーケンス設定機能328が、透視検査の種別が入力されると、透視検査に応じた透視シーケンスに従い、第1関心領域320、及びと第2関心領域322の位置を検査種別毎に自動的に変更させることとした。これにより、検査者が、検査種別を入力する必要がなくなり、操作性を向上させることができる。
【0100】
なお、第1実施形態におけるX線照射装置100は、特許請求の範囲におけるX線照射部の一例であり、収集装置200は、特許請求の範囲における取得部の一例である。第1実施形態における設定機能308は、特許請求の範囲における設定部の一例である。また、第1実施形態の変形例における設定機能308は、特許請求の範囲における設定部の他の例である。第1実施形態における生成機能310は、特許請求の範囲における生成部の一例である。また、第1実施形態の変形例における生成機能310は、特許請求の範囲における生成部の他の例である。
【0101】
第1実施形態における制御装置400は、特許請求の範囲における制御部の一例であり、第1階調処理機能314は、特許請求の範囲における第1階調処理部の一例である。第2実施形態における透視シーケンス設定機能328は、特許請求の範囲におけるシーケンス設定部の一例である。第1実施形態におけるディスプレイ700は、特許請求の範囲における画像表示部の一例である。
【0102】
上記の説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えばCPU(central processing unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD))、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)などの回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1、8、11における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0103】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置、方法およびシステムは、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置、方法およびシステムの形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0104】
10:X線診断装置、100:X線照射装置、200:収集装置、300:画像処理装置、308:設定機能、310:生成機能、314:第1階調処理機能、320:第1関心領域、322:第2関心領域、324:被検体内の関心領域、328:透視シーケンス設定機能、400:制御装置、700:ディスプレイ、P:被検体