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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】ハンドリングロボット及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/08 20060101AFI20220126BHJP
   E04G 21/16 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
B25J9/08
E04G21/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017143835
(22)【出願日】2017-07-25
(65)【公開番号】P2018020432
(43)【公開日】2018-02-08
【審査請求日】2020-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2016146602
(32)【優先日】2016-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】599016110
【氏名又は名称】株式会社エスシー・マシーナリ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】大木 智明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正憲
(72)【発明者】
【氏名】金丸 清人
(72)【発明者】
【氏名】河野 重行
(72)【発明者】
【氏名】小西 真
(72)【発明者】
【氏名】本保 裕文
【審査官】杉田 隼一
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-220875(JP,A)
【文献】特開平05-321454(JP,A)
【文献】特開2008-230327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/08
E04G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材に着脱可能に装着されたハンドリングロボットであって、
前記支持部材に着脱可能に装着された付け根旋回部と、
前記付け根旋回部に回動可能に装着された第一アームと、
前記第一アームに回動可能に装着された肘旋回部と、
前記肘旋回部に回動可能に装着された第二アームと、
前記第二アームに取り付けられていて被搬送部材を把持することが可能な把持部と、
前記ハンドリングロボットを水平方向と上下方向の少なくともいずれかに回動させる操作部材とを備え、
前記付け根旋回部と第一アームの間、前記第一アームと肘旋回部の間、前記肘旋回部と前記第二アームの間の関節部のうち少なくともいずれかで着脱可能とし、
前記関節部は、ジョイントピンを使用したピン接合により連結されていることを特徴とするハンドリングロボット。
【請求項2】
前記把持部は前記第二アームから突出した突出位置と前記第二アームに収納された収納位置とを選択的に取り得るようにした請求項に記載されたハンドリングロボット。
【請求項3】
前記操作部材は、前記ハンドリングロボットを水平方向と上下方向に移動可能な操作グリップ、または、前記ハンドリングロボットを水平方向に移動可能な操作グリップと上下方向に移動可能な操作ボタンとを備えている請求項1又は2に記載されたハンドリングロボット。
【請求項4】
前記把持部はフック部材を有している請求項からのいずれか1項に記載されたハンドリングロボット。
【請求項5】
前記第二アームの先端部には、前記操作部材と、地面に着地した車輪と、を有し、
前記車輪は、前記操作部材より下方に突出して設置されている請求項に記載されたハンドリングロボット。
【請求項6】
支持部材に着脱可能に装着されたハンドリングロボットの使用方法であって、
前記支持部材に着脱可能に装着された付け根旋回部にそれぞれ回動可能で着脱可能な第一アームと肘旋回部と第二アームとを順次接続しており、
前記第二アームに設けた把持部で被搬送部材を保持することができ、
操作部材で操作して、前記第一アームと肘旋回部と前記第二アームの少なくともいずれかを、水平方向と上下方向の少なくともいずれか一方に回動しながら前記被搬送部材を所定位置まで運搬し、
前記付け根旋回部と前記第一アームの間、前記第一アームと肘旋回部の間、前記肘旋回部と前記第二アームの間の関節部のうち少なくともいずれかで着脱可能とし、前記関節部は、ジョイントピンを使用したピン接合により連結するようにしたことを特徴とするハンドリングロボットの使用方法。
【請求項7】
1名以上の操作者により、または1名以上の操作者と介添え者により、前記被搬送部材を所定位置に運搬して設置するようにした請求項に記載されたハンドリングロボットの使用方法。
【請求項8】
前記被搬送部材は鉄筋である請求項またはに記載されたハンドリングロボットの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば開削トンネルの工事現場等で鉄筋等の重量のある被搬送部材を所定位置まで搬送、組立することのできるハンドリングロボット及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
開削トンネル等の躯体構築現場における鉄筋組立作業では、例えば地盤を地中に掘削した躯体構築現場の両側壁部に矢板等で土留め壁を構築しており、土留め壁の間に切梁等を縦横方向に取り付けている。しかも、上部に設けた車両走行用の覆工板を支持する中間杭を垂直方向に打設している。
【0003】
このような躯体構築現場での鉄筋組立機構として、例えば特許文献1,2に記載されたものが提案されている。特許文献1では足場を設けた架台の支持板と載置板との間に直立させたパイプ内に主筋を挿入し、載置板上にせん断補強筋を所定間隔で設置して主筋と結束して鉄筋籠を組み立てている。
また、特許文献2では、主筋位置決め治具に主筋保持具を設けた主筋保持部材に各主筋を配置し、補強枠と主筋位置決め治具を兼用させて主筋とフープ筋及び補強筋で鉄筋籠を強固に組み立てている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平07-217074号公報
【文献】特開2012-26247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、開削トンネル等の躯体構築現場で鉄筋の組立作業を行う場合、クレーン等で鉄筋束を現場に運搬して仮置きすることは可能であっても、個々の鉄筋の運搬や位置決め配置等の際に切梁や中間杭等が障害になるため、クレーン等を使って各鉄筋の詳細な位置決め作業は困難であった。そのため、このような現場では多数の作業員の人力によって鉄筋を運搬して位置決め配置や組立をせざるを得なかった。
【0006】
一方、組立等に使用する鉄筋は、コスト削減のために鉄筋継手数の削減ニーズがあるため長大化する傾向があり、しかも耐震設計による鉄筋径の太径化等の要求があるため、鉄筋1本あたりの重量と長さが増大している。
そのため、躯体構築現場等で、長尺で太径の鉄筋を作業員の人力によって運搬、組み立てする場合に大人数での作業が必要になり、苦渋作業であった。また、人力での運搬や組立のため、鉄筋の太径化や長尺化にも限界があった。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、鉄筋等の重量のある被搬送部材の運搬や組立が容易で苦渋作業を軽減できるようにしたハンドリングロボット及びその使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るハンドリングロボットは、支持部材に着脱可能に装着されたハンドリングロボットであって、前記支持部材に着脱可能に装着された付け根旋回部と、前記付け根旋回部に回動可能に装着された第一アームと、前記第一アームに回動可能に装着された肘旋回部と、前記肘旋回部に回動可能に装着された第二アームと、前記第二アームに取り付けられていて被搬送部材を把持することが可能な把持部と、前記ハンドリングロボットを水平方向と上下方向の少なくともいずれかに回動させる操作部材とを備え、前記付け根旋回部と第一アームの間、前記第一アームと肘旋回部の間、前記肘旋回部と前記第二アームの間の関節部のうち少なくともいずれかで着脱可能とし、前記関節部は、ジョイントピンを使用したピン接合により連結されていることを特徴とする。
本発明によれば、ハンドリングアームの把持部で被搬送部材を把持してその重量を負担させて運搬や組立等の作業を行うことができ、しかも第一アームと肘旋回部と第二アームを水平方向や上下方向に回動できるため、少ない労力で効率的に被搬送部材の運搬と組み立てを行える。また、ハンドリングアームは支持部材に対して着脱可能であるため、作業終了後に分割等して取り外し、他の支持部材に装着することで被搬送部材の運搬や組立作業を効率的に行える。
ハンドリングロボットを移動させる際、短時間で適宜に分割できるため、その分解と組み立てが容易で移動に便利である。
【0010】
また、前記把持部は前記第二アームから突出した突出位置と前記第二アームに収納された収納位置とを選択的に取り得るようにしてもよい。
また、前記把持部はフック部材を有していてもよい。
更に、前記第二アームの先端部には、前記操作部材と、地面に着地した車輪と、を有し、前記車輪は、前記操作部材より下方に突出して設置されていてもよい。
【0011】
また、操作部材は、ハンドリングロボットを水平方向と上下方向に移動可能な操作グリップ、または、ハンドリングロボットを水平方向に移動可能な操作グリップと上下方向に移動可能な操作ボタンとを備えていてもよい。
操作部材は、操作グリップを水平方向や上下方向に操作することでハンドリングロボットを水平方向や上下方向に移動できる。または、操作グリップを水平方向に操作してハンドリングロボットを水平方向に移動させ、操作ボタンによって上下方向に移動することができる。
【0013】
本発明によるハンドリングロボットの使用方法は、支持部材に着脱可能に装着されたハンドリングロボットの使用方法であって、前記支持部材に着脱可能に装着された付け根旋回部にそれぞれ回動可能で着脱可能な第一アームと肘旋回部と第二アームとを順次接続しており、前記第二アームに設けた把持部で被搬送部材を保持することができ、操作部材で操作して、前記第一アームと肘旋回部と前記第二アームの少なくともいずれかを、水平方向と上下方向の少なくともいずれか一方に回動しながら前記被搬送部材を所定位置まで運搬し、前記付け根旋回部と前記第一アームの間、前記第一アームと肘旋回部の間、前記肘旋回部と前記第二アームの間の関節部のうち少なくともいずれかで着脱可能とし、前記関節部は、ジョイントピンを使用したピン接合により連結するようにしたことを特徴とする。
また、本発明によるハンドリングロボットの使用方法では、1名以上の操作者により、または1名以上の操作者と介添え者により、前記被搬送部材を所定位置に運搬して設置するようにしてもよい。
また、前記被搬送部材は鉄筋であってもよい。
さらに、本発明によるハンドリングロボットの使用方法は、被搬送部材として長尺部材に限定されるものではない。例えば、短尺部材を多数束ねたようなものを運搬する場合には、1名の操作者のみで運搬が可能である。また、運搬する部材の長さや重量に応じて1名の操作者と1名以上の介添え者で運搬することも可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るハンドリングロボットとその使用方法によれば、把持部で被搬送部材を把持してその重量を負担させて運搬や組立等の作業を行うことができ、操作者は被搬送部材の重量を負担することなく操作部材を把持して移動するだけで運搬や組立を行える。そのため、被搬送部材を大人数で重量負担する必要がなく、必要に応じてわずかな介添者が重量バランスを取ればよいので苦渋作業を大幅に改善できる。
また、ハンドリングロボットは支持部材に対して短時間で着脱可能であるため、作業終了後に取り外して他の支持部材に装着することで、現場に障害物等があってもハンドリングロボットの装着場所を変えることで被搬送部材の運搬と組立等の作業を容易且つ効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態によるハンドリングロボットの使用状態を示す斜視図である。
図2】ハンドリングロボットの先端部に設けた把持部と操作グリップを示す斜視図である。
図3】(a)は中間杭への付け根旋回部の取り付け状態を示す図、(b)は付け根旋回部と第一アームの後端部の取り付け状態を示す図である。
図4】(a)は第一アームの先端部と肘旋回部の取り付け状態を示す図、(b)は肘旋回部と第二アームの後端部の取り付け状態を示す図である。
図5】ハンドリングロボットの回動範囲を示す平面図である。
図6】開削トンネルの施工現場でのハンドリングロボットの使用状態を示す要部説明図である。
図7】第二実施形態によるハンドリングロボットの先端部を示す要部斜視図である。
図8】把持部を第二アーム部の先端部に収納した状態を示す図である。
図9】変形例として把持部にフック部材を設けた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態によるハンドリングロボットについて添付図面に基づいて説明する。
図1乃至図6は第一実施形態によるハンドリングロボット1を示す。本第一実施形態によるハンドリングロボット1は一般に地下の構造物、地下のアンダーパス等で用いられ、狭い地下空間や障害物のある地下空間等で鉄筋等の運搬や組立等に使用される。図1に示すように、本実施形態のハンドリングロボット1は例えば開削トンネルの施工現場において地下に掘削した躯体構築現場等に設置されている。即ち、地中の躯体構築現場の両側壁部に矢板等で土留め壁を構築しており、土留め壁の腹起しに切梁等を縦横方向に施工している。しかも、地下工事の際に地上に車両を通行させる仮設の覆工板を支持するために、中間杭2を所定間隔で垂直方向に打設しているものとする。
【0017】
図1において、現場に施工した例えばH鋼からなる中間杭2にハンドリングロボット1が取り付けられている。このハンドリングロボット1は中間杭2のフランジ部2aに着脱可能に装着した付け根旋回部4と、付け根旋回部4に対して着脱可能な第一アーム5と、第一アーム5に対して着脱可能な肘旋回部6と、肘旋回部6に対して着脱可能な第二アーム7とをそれぞれ装着している。しかも、第一アーム5、肘旋回部6、第二アーム7はそれぞれ互いに水平方向に回動可能とされている。
また、肘旋回部6と第二アーム7との間には第二アーム7を上下動させるための昇降シリンダー8が設置されている。そのため、第二アーム7は水平方向の回動と上下方向の回動とを行える。図2に示すように、第二アーム7の先端部には支軸11が垂下されており、その下部には鉄筋14を把持するための把持部12が設置されている。第二アーム7の先端部にはハンドリングロボット1を3軸方向に移動させるための操作部材13が連結されている。
【0018】
次にハンドリングロボット1の連結構造について図3及び図4により説明する。
図3(a)において、付け根旋回部4は例えば互いに連結された上部支持板16と下部支持箱17とが、両側部に設けた略コの字状のアングル治具18によって中間杭2のフランジ部2aにそれぞれ嵌合されている。しかも、各アングル治具18はその両端部に設けたねじ穴18aを通してボルトを締め込むことでフランジ部2aに固定されている。
また、図3(b)に示すように、上部支持板16と下部支持箱17はそれぞれ上下に設けた第一回転軸20、20を介して回動板21、21をそれぞれ水平方向に回動可能に支持している。上側の回動板21に設けたピン穴21aに第一アーム5の後端部上部に設けた挿通穴を有する略コの字状のピン保持枠5aを嵌合して、ピン穴21aと挿通穴に第一ジョイントピン22を挿通して連結している。また、下部支持箱17に設けた回動板21に連結された第二ジョイントピン23に、第一アーム5の下部に設けたフック状の引掛け部5bが係合している。
そのため、第一アーム5は付け根旋回部4に設けた第一回転軸20を中心に水平方向に回動可能とされている。
【0019】
次に、図4(a)において、第一アーム5の先端部の上部に第三ジョイントピン25が支持されている。肘旋回部6の後端部に設けた上下に延びる第二回転軸26の上部には引掛け板27が回動可能に支持され、引掛け板27のフック状の引掛け部27aが第三ジョイントピン25に係合している。また、第二回転軸26の下部には下部支持板28が水平方向に回動可能に支持され、下部支持板28の起立板28aは第一アーム5の先端部にねじ固定されている。そのため、肘旋回部6は第一アーム5に対して第二回転軸26回りに水平方向に回動可能とされている。
【0020】
また、図4(b)において、肘旋回部6の先端部には第三回転軸30が上下方向に支持され、第三回転軸30の下部には下部仲介板31が水平方向に回動可能に支持されている。第二アーム7の後端部と下部仲介板31とは互いに嵌合する起立板同士が第四ジョイントピン32を貫通させることで連結されている。しかも、第三回転軸30の上部には上部仲介板33が水平方向に回動可能に支持され、昇降シリンダー8の後端部8aと上部仲介板33とが第五ジョイントピン34で連結されている。そのため、第二アーム7は肘旋回部6の第三回転軸30回りに水平方向に回動可能とされている。
しかも、第二アーム7の上部に設けた昇降シリンダー8は後端部8aを有するシリンダチューブ36に進退可能なシリンダーロッド37を備えており、シリンダーロッド37の先端部が第二アーム7の先端側部分に連結されている。そのため、昇降シリンダ-8のシリンダーロッド37の伸縮によって第二アーム7を第四ジョイントピン32及び第五ジョイントピン34回りに上下方向に回動可能とされている。
【0021】
次に、第二アーム7の先端に取り付けた把持部12と操作部材13について説明する。 図2において、第二アーム7の先端部から突出する一対の支持枠38の間に設けた水平軸35に回動可能に支軸11が垂下されている。支軸11の垂下する方向にはロードセル41が設置され、その下端部に把持部12が設置されている。把持部12は例えば重量のある長尺部材として鉄筋14等を支持可能で開口39aを備えたフック部39とその開口39aを開閉可能な開閉部40とを備えている。開閉部40はその上端部の支軸42回りに回動可能であり、開口39aを閉鎖した位置と上に跳ね上げた開放位置とを選択的に取り得るようになっている。
【0022】
この開閉部40には分岐した枝板40aを介して鉄筋14等の長尺部材に当接可能な弾性部材40bが一体に形成されている。また、把持部12で把持する鉄筋14等の被搬送物はロードセル41でその荷重を検出する。荷重が閾値を超えた場合にはアラームを出力して、持ち上げる動作を中断する等の過負荷防止処置を行うことができる。なお、過負荷防止処置以外に、運搬及び組立に必要な動力を演算出力することができるようにしてもよい。さらに、被搬送物の重量が重い場合や軽い場合等に応じて搬送速度を増減調整するように制御することもできる。
【0023】
また、第二アーム7の先端部に設けた一方の支持枠38に固定された枠部44で支持された操作グリップ45が取り付けられている。操作グリップ45の下部筐体には操作グリップ45の移動方向を検知するセンサー部として例えば六軸センサー46が収納されている。操作グリップ45は操作者が手で掴んで鉄筋14を保持した把持部12を移動させたい任意方向、例えば水平方向や上下方向に押し引きすることで六軸センサー46によってその方向と強度等を電気信号として検出し、図示しない電動機で鉄筋14の搬送方向を制御できる。操作部材13は操作グリップ45と六軸センサー46を備えている。
また、操作グリップ45の上面にはハンドリングロボット1の起動をONするための起動スイッチ43が設置されている。この起動スイッチ43を押しながら操作グリップ45を移動操作する場合にのみハンドリングロボット1の移動操作が行える。起動スイッチ43を押さない場合には操作グリップ45を操作してもハンドリングロボット1は起動しないため、安全である。
【0024】
そして、六軸センサー46は操作グリップ45の移動方向、向き、回転等を検出するセンサー部である。操作グリップ45の移動方向等を六軸センサー46で検出して電気信号に変換して図示しない制御部に送信し、ロードセル41で検知した鉄筋14の重量の大きさに応じて、第一アーム5や第二アーム7に内蔵した駆動モータ等でハンドリングロボット1の移動を制御できる。
【0025】
図5は、本実施形態によるハンドリングロボット1の旋回範囲の例を示す図である。図5において、ハンドリングロボット1は第一アーム5と第二アーム7を直線状に配列させた状態で例えば付け根旋回部4を中心にして左右に180度回転可能であり、その範囲の任意の位置で第一アーム5に対して第二アーム7は肘旋回部6を介して180度回転可能である。しかし、ハンドリングロボット1のこの回転範囲は一例にすぎず、例えば360度回転できるようにしてもよく、その回転角度範囲は任意に設定できる。
なお、鉄筋14を把持したハンドリングロボット1の移動や旋回等の駆動のための電動機構や油圧機構等は第一アーム5や第二アーム7のボックス内に内蔵されており、公知の技術を採用できる。
【0026】
本実施形態によるハンドリングロボット1は上述した構成を備えており、次に図6に示す開削トンネルの地下現場での鉄筋14の運搬及び組立を例にとってハンドリングロボット1の使用方法を説明する。
図6において、地下の躯体構築現場では切梁49が土留め壁の間に設置され、上下方向に覆工板を敷設するための中間杭2が所定間隔で設置されている。現場で運搬や組立に用いる鉄筋14は適宜のものを用いることができるが、例えば直径約51mm、長さ13m、重量約210kgとし、人力で運搬して組み立てる場合には1本を6~8人程度で持ち上げて作業するものである。
躯体構築現場において、例えばクレーンやホイストクレーン50によって鉄筋14を鉄筋束として基礎コンクリート上に仮置きしたものをハンドリングロボット1によって1本ずつ所定の位置、例えば架台51上の位置決め場所に所定の間隔で設置するものとする。
【0027】
そのため、鉄筋14を設置すべき場所に近い位置の中間杭2にハンドリングロボット1を取り付けて鉄筋束の位置に移動させ、1本の鉄筋14の長手方向中央部分を把持部12のフック部39に載せて開閉部40で開口39aを閉塞する。この状態で、例えば振れ止めのための介添者は鉄筋14の両端を把持してバランスをとるが、鉄筋14の重量は把持部12で負担しているため、介添者の重量負担はほとんどない。そして、操作者は第二アーム7の先端部に設けた操作グリップ45を手でつかみ、鉄筋14を載置すべき方向に押すか引っ張る等して移動させると、その方向と強さを六軸センサー46で検出して図示しない電動機構等に送信してハンドリングロボット1を移動させる。
【0028】
操作者の移動方向に応じてハンドリングロボット1は付け根旋回部4の第一回転軸20を中心に第一アーム5を回転させ、第二回転軸26、第三回転軸30を中心に肘旋回部6及び第二アーム7を適宜の角度に水平回転させることで、把持部12で把持された鉄筋14を所定位置に運搬させる。しかも、障害物を避ける等のために鉄筋14を上下動する場合には、操作グリップ45を上方に持ち上げるか下方に押し下げる等することで昇降シリンダー8を伸縮させて第二アーム7と共に把持部12で把持した鉄筋14を上下動させる。
こうして、所定位置に鉄筋14を移動させた後、開閉部40を開放操作してフック部39の開口39aから鉄筋14を所定位置に落下させて載置する。そして、ハンドリングロボット1を操作して次の鉄筋14を再度把持して移動させ、順次鉄筋14を所定位置に載置すればよい。
【0029】
また、鉄筋14を載置すべき架台51がハンドリングロボット1の中間杭2の取り付け位置から離れた場合には、ハンドリングロボット1を中間杭2から取り外して別のより近接した中間杭2に取り付け直せばよい。ハンドリングロボット1の取り外しの例は次の通りである。即ち、第二アーム7を取り付ける肘旋回部6から第五ジョイントピン34と第四ジョイントピン32を外して第二アーム7を外す。
【0030】
そして、肘旋回部6の後端部で下部支持板28の取り付けねじを外し、引掛け板27の引掛け部27aを第一アーム5の第三ジョイントピン25から取り外せばよい。そして、第一アーム5は付け根旋回部4の第一ジョイントピン22と第二ジョイントピン23を取り外すことで第一アーム5を取り外し、最後に付け根旋回部4のアングル治具18からネジを外すことで付け根旋回部4を中間杭2のフランジ部2aから取り外すことができる。このように各部品を短時間で関節部分で分解して運搬できる。
また、新たな中間杭2にハンドリングロボット1を取り付け直す場合には、上述の手順と逆の操作で順次装着すればよい。こうして、ハンドリングロボット1の中間杭2への取り付け位置を順次移動させながら複数の鉄筋14を所定位置にそれぞれ載置し、ハンドリングロボット1のアシストにより鉄筋14の組み立てを行える。
なお、本実施形態による発明によるハンドリングロボット1は、鉄筋14等の長尺部材に限定されることなく、例えば短い鉄筋14や短尺でコの字型等の鉄筋を複数束ねた鋼材等の短尺部材等でも運搬でき、各種の被搬送部材を運搬できる。これらの場合には1名の操作者のみで運搬が可能である。また、部材の長さや重量に応じて1名の操作者と1名の介添え者等で運搬を行うことも可能である。
【0031】
上述のように本実施形態によるハンドリングロボット1とその使用方法によれば、施工現場に仮打設された中間杭2を利用してハンドリングロボット1を取り付けて鉄筋14を運搬及び組立できる。しかも、ハンドリングロボット1の関節部分での各部品毎の取り付け取り外しが容易で短時間で行えるため、取り付け場所を移動させながら鉄筋14の運搬や組み立てができるため、鉄筋14の組み立て効率が向上する。
また、ハンドリングロボット1に鉄筋14の重量を受け持たせて運搬と組立を行えるため、操作者と介添者が重量負担を受け持つことなく苦渋作業を軽減することができる。しかも、従来、人力では運搬や組立が困難であった太径や長尺の鉄筋14の組立を容易且つ効率的に行うことができる。
また、操作グリップ45を第二アーム7の先端側の把持部12の近傍に設置したため、操作者による操作が容易でハンドリングロボット1や鉄筋14が操作者の移動の邪魔にならないという利点もある。
【0032】
なお、本発明によるハンドリングロボット1は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や置換等が可能であり、これらの場合も本発明の技術的範囲に含まれる。以下に本発明の他の実施形態や変形例について上述した実施形態と同一または同様な部分、部材には同一の符号を用いて説明する。
【0033】
次に本発明の第二実施形態によるハンドリングロボット1Aについて図7により説明する。第二実施形態によるハンドリングロボット1Aは中間杭2のフランジ部2aに着脱可能に装着した付け根旋回部4と第一アーム5と肘旋回部6と第二アーム7とを備えた点で第一実施形態と共通の構成を有している。第二アーム7の先端部7aに操作グリップ45と把持部12とを有しており、先端部7a近傍の底部7bに車輪54を設置した。底部7bの角部近傍には一対の支持脚55が下方に設けた軸受け56に連結され、この軸受け56には車輪54の軸部が支持されている。車輪54は操作部材13の六軸センサー46よりも下方に突出している。車輪54は第二アーム7の底部7bの片側に設けているが、底部7bの両側に設けてもよい。
そのため、ハンドリングロボット1Aの組み立て時に肘旋回部6に第二アーム7の後端部を取り付ける際、先端部7aは車輪54が地面に着地しているため、操作部材13が地面に接触することがなく破損を防止できると共に移動が容易になる。
【0034】
また、第二アーム7の先端部7aには一対の支持枠38が突出し、支持枠38間に設けた水平軸35には把持部12を備えた支軸11の回転受け部11aが回転可能に装着されている。把持部12は水平軸35を中心に上下方向に回動可能であり、不使用時には水平軸35を中心に把持部12を上方に約180°回転させて支軸11、チェーン部、ロードセル41を一対の支持枠38の間に収納できる(図8参照)。
その際、フック部39が第二アーム7の先端上部に設けた水平方向に延びる係止部58に係止することで保持できる。そのため、ハンドリングロボット1Aの運搬時や保管時等では第二アーム7の把持部12を支持枠38の間に収納することができて、破損の恐れを防止できる。
【0035】
次に、把持部12の変形例について図9により説明する。
上述した第一及び第二実施形態によるハンドリングロボット1、1Aでは、把持部12としてフック部39とレバー形状の開閉部40を有していたため、架台51に配列した鉄筋14の間隔が狭いとレバー形状の開閉部40が配筋済みの鉄筋14に干渉するおそれがあった。本変形例では把持部53として、フック部39及び開閉部40に代えて図9に示すようにフック形状を有するフック部材59を設けた。そのため、架台51上の鉄筋14の間隔が狭くても干渉することなく鉄筋14を個別に設置または取り上げできる。
把持部53として、ロードセル41の下部にフック部材59が連結されているため、玉掛けワイヤーやスリングベルト等の玉掛け治具を引っ掛けて使用できる。この把持部53も収納時には一対の支持枠38の間に収納して係止部58にフック部材59を係止できる。
【0036】
なお、上述した各実施形態では、操作グリップ45の操作方向や操作強さ等を六軸センサー46によって水平方向と上下方向を判別して操作するようにした。しかし、操作者が操作グリップ45を把持して上方向や下方向に操作してハンドリングロボット1、1Aの移動を行うとすると、操作グリップ45の真上や真下への移動操作は困難であり、斜め方向に移動し易く正確な操作ができないおそれがある。
そのため、本変形例では、操作グリップ45の操作によるハンドリングロボット1、1Aの移動に関し水平方向だけを操作させるようにした。上下方向の移動は操作ボタンとして上昇ボタンと下降ボタンを別個に設置し、ボタン操作によって行ってもよい。これによって、簡単且つ正確に上下動の操作を行える。
【0037】
また、上述した各実施形態によるハンドリングロボット1、1Aでは、重量のある長尺の鉄筋14を移動して組み立てるものとしたが、被搬送物として鉄筋14に限定されるものではなく、木材や鋼材等、各種の重量のある長尺部材や重量物等の被搬送部材の移動や組立等に使用することができることはいうまでもない。
また、上述した実施形態ではハンドリングロボット1、1Aを取り付ける支持部材として中間杭2を用いたが、これに限定されるものではない。例えば、支柱等でもよいし、ハンドリングロボット1、1Aを取り付けるための仮設の杭や支柱等を設置してもよい。或いは、既設や新設の建物や設備等の各種の建造物を支持部材として着脱可能に取り付けるようにしてもよい。
【0038】
また、ハンドリングロボット1、1Aの取り外しや取り付け等の移設に際し、上述の各実施形態では付け根旋回部4、第一アーム5、肘旋回部6、第二アーム7の4つに分割と再連結を行うようにしたが、分割の数は任意である。例えば、付け根旋回部4と第一アーム5を一体とし、肘旋回部6、第二アーム7との3つ、または2つに分割と連結を行うようにしてもよい。或いは、ハンドリングロボット1、1Aの全体をまとめて中間杭2等から取り外しと取り付けを行うようにしてもよい。
また、上述した実施形態では、ハンドリングロボット1、1Aのハンドリング用のアームとして第一アーム5と第二アーム7を肘旋回部6を介して着脱可能に連結して構成したが、更に第三アームまたはそれ以上のアーム部材を着脱可能に設けてもよいし、或いは第一アーム5だけを設けて後端部に付け根旋回部4を着脱可能に連結し、先端部に把持部12、53と操作部材13を設けてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1、1A ハンドリングロボット
2 中間杭
4 付け根旋回部
5 第一アーム
6 肘旋回部
7 第二アーム
8 昇降シリンダー
12、53 把持部
13 操作部材
14 鉄筋
20 第一回転軸
22 第一ジョイントピン
23 第二ジョイントピン
25 第三ジョイントピン
26 第二回転軸
30 第三回転軸
32 第四ジョイントピン
34 第五ジョイントピン
38 支持枠
39 フック部
45 操作グリップ
46 六軸センサー
54 車輪
59 フック部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9