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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】制震装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20220126BHJP
   F16F 15/04 20060101ALI20220126BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
E04H9/02 311
F16F15/04 A
F16F7/00 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017220251
(22)【出願日】2017-11-15
(65)【公開番号】P2019090254
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】安達 大悟
(72)【発明者】
【氏名】野村 武史
(72)【発明者】
【氏名】高田 友和
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-207292(JP,A)
【文献】特開2010-024656(JP,A)
【文献】米国特許第04910929(US,A)
【文献】登録実用新案第3193710(JP,U)
【文献】登録実用新案第3204251(JP,U)
【文献】特開2016-211292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/02
E04B 1/26
F16F 15/04
F16F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームを構成する柱及び横架材のうち、相対向する一対の前記柱或いは前記横架材の何れか一方の長手方向中央部へフレーム面と平行に固定される固定金具と、
他方の前記柱或いは前記横架材の長手方向両端側から前記一方の長手方向中央部に架設される一対のブレースと、
前記一対のブレースに固定されて前記フレームとの直交方向で前記固定金具と所定間隔をおいて重なり、前記フレーム面と平行に支持される可動金具と、
前記固定金具と前記可動金具との間に介在されて両金具に接着される粘弾性体と、を含んでなる制震装置であって、
前記可動金具は、前記一方の前記柱或いは前記横架材側の端面の少なくとも一部が、前記一方の前記柱或いは前記横架材に直接又は別体の部材を介して間接的に接触した状態で、又は前記固定金具に直接接触した状態で支持されており、
前記可動金具の前記端面が接触する前記一方の前記柱或いは前記横架材、又は前記固定金具には、前記端面を含む前記可動金具の端部が挿入するガイド溝が、前記可動金具の可動範囲全長に亘って形成されて、前記端面は前記ガイド溝の底面に沿って配置されていることを特徴とする制震装置。
【請求項2】
フレームを構成する柱及び横架材のうち、相対向する一対の前記柱或いは前記横架材の何れか一方の長手方向中央部へフレーム面と平行に固定される固定金具と、
他方の前記柱或いは前記横架材の長手方向両端側から前記一方の長手方向中央部に架設される一対のブレースと、
前記一対のブレースに固定されて前記フレームとの直交方向で前記固定金具と所定間隔をおいて重なり、前記フレーム面と平行に支持される可動金具と、
前記固定金具と前記可動金具との間に介在されて両金具に接着される粘弾性体と、を含んでなる制震装置であって、
前記可動金具は、前記一方の前記柱或いは前記横架材側の端面の少なくとも一部が、前記一方の前記柱或いは前記横架材に別体の部材を介して間接的に接触した状態で支持されており、
前記別体の部材は、前記可動金具の前記端面と、当該端面が接触する前記一方の前記柱或いは前記横架材との少なくとも一方に設けられた摺動板であることを特徴とする制震装置。
【請求項3】
フレームを構成する柱及び横架材のうち、相対向する一対の前記柱或いは前記横架材の何れか一方の長手方向中央部へフレーム面と平行に固定される固定金具と、
他方の前記柱或いは前記横架材の長手方向両端側から前記一方の長手方向中央部に架設される一対のブレースと、
前記一対のブレースに固定されて前記フレームとの直交方向で前記固定金具と所定間隔をおいて重なり、前記フレーム面と平行に支持される可動金具と、
前記固定金具と前記可動金具との間に介在されて両金具に接着される粘弾性体と、を含んでなる制震装置であって、
前記可動金具は、前記一方の前記柱或いは前記横架材側の端面の少なくとも一部が、前記一方の前記柱或いは前記横架材に直接接触した状態で支持されており、
前記固定金具は、前記フレーム面の外側へ向けて直角に折曲されて前記長手方向中央部へ固定される折曲部を備え、前記固定金具には、前記端面を含む前記可動金具の端部が前記フレームの面外方向へ変形することを防止する拘束片が、前記折曲部と逆方向に切り起こし形成されていることを特徴とする制震装置。
【請求項4】
前記可動金具は、前記端面の全面が、前記一方の前記柱或いは前記横架材、又は前記固定金具に接触していることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の制震装置。
【請求項5】
前記可動金具における前記端面を含む端部には、面取部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の制震装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘弾性体を用いてフレーム内に取り付けられる制震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
制震装置には、特許文献1に例示されるように、梁等の横架材と柱とで形成されるフレーム内において、一方の柱の中央部と、他方の柱の両端部との間に架設される一対の筋交いと、一方の柱の中央部へフレーム面と平行に固定される固定金具と、固定金具と平行に配置されて一対の筋交いが固定される可動金具と、固定金具と可動金具との間に接着される粘弾性体とを含んでなる構成が知られている。
このような制震装置においては、フレームへの加振に対し、固定金具と可動金具とが上下方向へ相対変位して粘弾性体をせん断変形させることで減衰性能が発揮される。しかし、実際の加振時には可動金具が回転方向に変位を起こしやすく、減衰性能の悪化に繋がってしまう。
そこで、特許文献1では、可動金具に上下方向の長孔を上下に設けて各長孔を貫通するボルトを固定金具にナットで締結することで、可動金具の回転変位を規制する構造を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3193710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
可動金具の回転変位を規制するために特許文献1のように長孔及びボルト、ナットを用いると、金具のサイズが大きくなってコストアップに繋がる。また、粘弾性体の大変形に追従させるためには、長孔自体の寸法を大きくする必要があるが、これによって粘弾性体の断面欠損が増えてしまい、所望の減衰性能が得られなくなる。
【0005】
そこで、本発明は、コンパクト且つ低コストとなる構造で可動金具の回転変位を抑制でき、安定した減衰性能を得ることができる制震装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、フレームを構成する柱及び横架材のうち、相対向する一対の柱或いは横架材の何れか一方の長手方向中央部へフレーム面と平行に固定される固定金具と、他方の柱或いは横架材の長手方向両端側から一方の長手方向中央部に架設される一対のブレースと、一対のブレースに固定されてフレームとの直交方向で固定金具と所定間隔をおいて重なり、フレーム面と平行に支持される可動金具と、固定金具と可動金具との間に介在されて両金具に接着される粘弾性体と、を含んでなる制震装置であって、
可動金具は、一方の柱或いは横架材側の端面の少なくとも一部が、一方の柱或いは横架材に直接又は別体の部材を介して間接的に接触した状態で、又は固定金具に直接接触した状態で支持されており、
可動金具の端面が接触する一方の柱或いは横架材、又は固定金具には、端面を含む可動金具の端部が挿入するガイド溝が、可動金具の可動範囲全長に亘って形成されて、端面はガイド溝の底面に沿って配置されていることを特徴とする。
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、フレームを構成する柱及び横架材のうち、相対向する一対の柱或いは横架材の何れか一方の長手方向中央部へフレーム面と平行に固定される固定金具と、他方の柱或いは横架材の長手方向両端側から一方の長手方向中央部に架設される一対のブレースと、一対のブレースに固定されてフレームとの直交方向で固定金具と所定間隔をおいて重なり、フレーム面と平行に支持される可動金具と、固定金具と可動金具との間に介在されて両金具に接着される粘弾性体と、を含んでなる制震装置であって、
可動金具は、一方の柱或いは横架材側の端面の少なくとも一部が、一方の柱或いは横架材に別体の部材を介して間接的に接触した状態で支持されており、
別体の部材は、可動金具の端面と、当該端面が接触する一方の柱或いは横架材との少なくとも一方に設けられた摺動板であることを特徴とする。
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、フレームを構成する柱及び横架材のうち、相対向する一対の柱或いは横架材の何れか一方の長手方向中央部へフレーム面と平行に固定される固定金具と、他方の柱或いは横架材の長手方向両端側から一方の長手方向中央部に架設される一対のブレースと、一対のブレースに固定されてフレームとの直交方向で固定金具と所定間隔をおいて重なり、フレーム面と平行に支持される可動金具と、固定金具と可動金具との間に介在されて両金具に接着される粘弾性体と、を含んでなる制震装置であって、
可動金具は、一方の柱或いは横架材側の端面の少なくとも一部が、一方の柱或いは横架材に直接接触した状態で支持されており、
固定金具は、フレーム面の外側へ向けて直角に折曲されて長手方向中央部へ固定される折曲部を備え、固定金具には、端面を含む可動金具の端部がフレームの面外方向へ変形することを防止する拘束片が、折曲部と逆方向に切り起こし形成されていることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかの構成において、可動金具は、端面の全面が、一方の柱或いは横架材、又は固定金具に接触していることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項1乃至4の何れかの構成において、可動金具における端面を含む端部には、面取部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、可動金具の端面の少なくとも一部を柱或いは横架材等に直接又は間接的に接触させことで、金具のサイズが大きくなったり、粘弾性体に断面欠損が生じたりすることなく、可動金具の回転変位を抑制することができる。すなわち、コンパクト且つ低コストな構造で可動金具の回転変位を抑制して安定した減衰性能を得ることができる。
特に、請求項に記載の発明によれば、上記効果に加えて、可動金具の端面は、一方の柱或いは横架材に形成されたガイド溝の底面に沿って配置されているので、ガイド溝によって可動金具のフレーム面外方向への移動が規制されて確実にフレーム面と平行に直線移動させることができる。
特に、請求項に記載の発明によれば、上記効果に加えて、可動金具の端面と柱等との一方には摺動板が固定されているので、摺動板に沿って可動金具をスムーズに直線移動させることができる。
特に、請求項に記載の発明によれば、上記効果に加えて、固定金具、端面を含む可動金具の端部がフレームの面外方向へ変形することを防止する拘束片が設けられていることで、可動金具を確実にフレーム面と平行に直線移動させることが可能となり、回転変位をより効果的に抑制することができる。
請求項に記載の発明によれば、上記効果に加えて、可動金具の端面の全面を接触させているので、可動金具の回転抑制を効果的に行うことができる。
請求項に記載の発明によれば、上記効果に加えて、可動金具の端部に面取部が形成されているので、端面を柱等に接触させても角部での抵抗を抑えて可動金具の直線移動をスムーズに行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】形態1の制震装置を採用したフレームの正面図である。
図2】形態1の制震装置の拡大図である。
図3】形態1の制震装置の平面図である。
図4】形態2の制震装置の平面図である。
図5】形態3の制震装置の説明図で、(A)は平面、(B)は正面をそれぞれ示す。
図6】形態4の制震装置の説明図で、(A)は平面、(B)は正面をそれぞれ示す。
図7】形態5の制震装置の説明図で、(A)は平面、(B)は正面をそれぞれ示す。
図8】形態5の制震装置の変更例を示す平面図である。
図9】形態6の制震装置の説明図で、(A)は平面、(B)は正面をそれぞれ示す。
図10】形態6の制震装置の変更例を示す平面図である。
図11】形態7の制震装置の説明図で、(A)は平面、(B)は正面をそれぞれ示す。
図12】形態7の制震装置の変更例を示す平面図である。
図13】形態8の制震装置の説明図で、(A)は平面、(B)は正面をそれぞれ示す。
図14】形態9の制震装置の説明図で、(A)は平面、(B)は正面をそれぞれ示す。
図15】形態9の制震装置の変更例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[形態1]
図1は、制震装置の一例を採用したフレームの正面図である。まず、フレーム1は、横架材としての上側の梁2と下側の土台3との間に、左右に所定間隔をおいて一対の柱4A,4Bを鉛直方向に接合してなり、このフレーム1内に制震装置10が設けられている。
制震装置10は、図2,3に示すように、左側の柱4Aの上下方向(長手方向)の中央部で、フレーム面と平行に且つフレーム1の厚み方向に所定間隔をおいて固定される一対の固定金具11,11と、固定金具11,11の間で互いに所定間隔をおいて重なり、フレーム面と平行に配置される可動金具12と、固定金具11,11と可動金具12との間に介在されて両金具11,12に接着される粘弾性体13,13(図1,2でのハッチング部分)と、右側の柱4Bの上下両端側の梁2及び土台3との仕口部を可動金具12と連結する上下一対のブレース14,14と、を備えてなる。
【0010】
まず固定金具11は、正面視が縦長矩形状の板体で、柱4Aとの固定側は、図3に示すように、互いにフレーム面の外側へ向けて直角に折曲された折曲部15を備え、折曲部15が柱4Aの側面へ釘やビス等の図示しない固定具によって固定されることで、フレーム面と平行に支持される。
可動金具12は、正面視を固定金具11と同じくする縦長矩形状の板体であるが、左右の幅は固定金具11よりも大きくなって、柱4A側の左端面16は、図3に示すように、柱4Aの右側面へ上下方向の全長に亘って当接している。また、左端面16を含む左側端部における上下の角部には、傾斜平面状にカットした面取部17,17が形成されている。さらに、可動金具12の右側端部は、固定金具11よりも右側へ突出して、固定金具11の外側でブレース14,14の端部が図示しないボルト及びナットによって連結される連結部18となっている。
【0011】
粘弾性体13,13は、固定金具11より一回り小さい正面視縦長矩形状で、各固定金具11と可動金具12との間に介在されて、各金具11,12との対向面が接着されている。
ブレース14,14は、右側の柱4Bと梁2及び土台3との上下の仕口部では、当該仕口部に固定された連結金具19,19を介して図示しないボルト及びナットによって端部が固定されている。
【0012】
以上の如く構成された制震装置10においては、フレーム1が水平方向に加振されてフレーム1が左右へ変形すると、左側の柱4Aに固定される固定金具11,11と、右側の柱4B側に上下のブレース14,14を介して固定される可動金具12とが上下に相対変位し、両金具11,12間に接着される粘弾性体13,13をそれぞれ剪断変形させて震動エネルギーを減衰させる。このとき、可動金具12は、柱4A側の左端面16を柱4Aの右側面に当接させているので、左端面16が柱4Aの右側面に沿って上下にガイドされる。よって、可動金具12の回転変位が抑制されて好適な減衰性能が得られる。
【0013】
このように、上記形態1の制震装置10によれば、可動金具12は、一方の柱4A側の左端面16が、柱4Aに直接に接触した状態で支持されているので、両金具11,12のサイズが大きくなったり、粘弾性体13に断面欠損が生じたりすることなく、可動金具12の回転変位を抑制することができる。すなわち、コンパクト且つ低コストな構造で可動金具12の回転変位を抑制して安定した減衰性能を得ることができる。
特にここでは、可動金具12の左端面16の全面が柱4Aに接触した状態で支持されているので、可動金具12の回転抑制を効果的に行うことができる。
また、可動金具12における左端面16を含む左側端部には、面取部17が形成されているので、左端面16を柱4Aに接触させても左側端部の角部での抵抗を抑えて可動金具12の上下移動をスムーズに行わせることができる。
【0014】
なお、上記形態1では、可動金具の面取部を傾斜平面状にカットして形成しているが、曲面状(R状)にカットして形成してもよいし、面取部自体を省略してもよい。また、可動金具の端面の全面を接触させる構造に限らず、一部を接触させる構造としてもよい。これらは他の形態についても同様である。
【0015】
以下、本発明の他の形態について説明する。但し、フレームやブレース等の構成は形態1と同じであるので、重複する構成部の説明は省略して構成が異なる制震装置を中心に説明する。
[形態2]
図4に示す制震装置10Aでは、可動金具12の左端面16が直接柱4Aの右側面に当接しておらず、柱4Aの右側面へ上下方向に固定された帯状の摺動板20に当接している。この摺動板20は樹脂製又は金属製で、接着或いは釘やネジ等の固定具によって柱4Aに固定される。
よって、この制震装置10Aにおいても、フレーム1への加振時に可動金具12は、左端面16が柱4A側の摺動板20に摺接して上下にガイドされることが回転が抑制される。従って、好適な減衰性能が得られる。
【0016】
このように、上記形態2の制震装置10Aによれば、可動金具12は、一方の柱4A側の左端面16が、柱4Aに摺動板20を介して間接的に接触した状態で支持されているので、両金具11,12のサイズが大きくなったり、粘弾性体13に断面欠損が生じたりすることなく、可動金具12の回転変位を抑制できる。よって、コンパクト且つ低コストな構造となって安定した減衰性能を得ることができる。
特にここでは、可動金具12の左端面16が接触する柱4Aの右側面に摺動板20を設けているので、摺動板20に沿って可動金具12をスムーズに上下移動させることができる。
【0017】
なお、上記形態2において、摺動板20は柱4Aに固定する場合に限らず、摺動板20を可動金具12の左側端部に固定して、摺動板20を柱4Aの右側面に摺接させて上下方向のガイドを得るようにしても差し支えない。また、摺動板を可動金具と柱との双方に設けて摺動板同士を摺接させることもできる。
【0018】
[形態3]
図5に示す制震装置10Bでは、可動金具12の左端面16が柱4Aの右側面に直接当接する構造である点で形態1とは同じであるが、ここでは固定金具11,11における折曲部15形成側の根元部分に、折曲部15と逆方向に折曲されて端部が可動金具12の左側端部の前後面にそれぞれ近接或いは当接する拘束片21,21が、各固定金具11に上下2箇所で切り起こし形成されている。
よって、この制震装置10Bにおいても、可動金具12は、柱4A側の左端面16を柱4Aに当接させているので、形態1と同様に左端面16が柱4Aの右側面に沿って上下にガイドされることで回転が抑制される。このとき、左端面16を含む可動金具12の端部は、固定金具11,11の拘束片21,21によって前後(フレーム1の面外方向)への変形が拘束されるため、可動金具12は、傾いたり捻れたりすることなく固定金具11,11の間でフレーム面と平行に上下移動することになる。
【0019】
このように、上記形態3の制震装置10Bによれば、可動金具12は、一方の柱4A側の左端面16が、柱4Aに直接に接触した状態で支持されているので、両金具11,12のサイズが大きくなったり、粘弾性体13に断面欠損が生じたりすることなく、可動金具12の回転変位を抑制できる。よって、コンパクト且つ低コストな構造となって安定した減衰性能を得ることができる。
特にここでは、固定金具11に、左端面16を含む可動金具12の左側端部がフレーム1の面外方向へ変形することを防止する拘束片21を設けているので、可動金具12を確実にフレーム面と平行に上下移動させることが可能となり、回転変位をより効果的に抑制することができる。
【0020】
なお、拘束片の数は上記形態3に限らず、増やしてもよいし減らしてもよい。また、拘束片の上下方向の長さも適宜変更可能で、全て同じ長さとせずに、例えば中央部を短くして上下端部側を長くする等の変更も可能である。前後で揃えずに互い違いとなるように拘束片を設けても差し支えない。
さらに、上記形態3では、拘束片を固定金具に設けているが、これと逆に、可動金具の左側端部に、固定金具側へ折曲されて端部が固定金具の内面にそれぞれ近接或いは当接する拘束片を切り起こし形成して、可動金具自身でフレーム面外方向への変形を防止してもよい。
【0021】
[形態4]
図6に示す制震装置10Cでは、可動金具12の左端面16を含む左側端部を左側へ長く形成して形態1よりも左右幅を大きくすると共に、柱4Aの右側面に、可動金具12の当該端部が挿入して底面に左端面16が当接するガイド溝5が、可動金具12の可動範囲全長に亘って上下方向に凹設されている。
よって、この制震装置10Cにおいても、可動金具12は、左端面16を柱4Aのガイド溝5の底面に当接させているので、同様に左端面16がガイド溝5の底面に沿って上下にガイドされることで回転が抑制される。このとき、左端面16を含む可動金具12の左側端部は、ガイド溝5の前後の内面6,6によってフレーム面外方向への移動が拘束されるため、可動金具12は、傾いたり捻れたりすることなく固定金具11,11の間でフレーム面と平行に上下移動することになる。
【0022】
このように、上記形態4の制震装置10Cによれば、可動金具12は、一方の柱4A側の左端面16が、柱4Aのガイド溝5の底面に直接接触した状態で支持されているので、両金具11,12のサイズが大きくなったり、粘弾性体13に断面欠損が生じたりすることなく、可動金具12の回転変位を抑制できる。よって、コンパクト且つ低コストな構造となって安定した減衰性能を得ることができる。
特にここでは、柱4Aに、左端面16を含む可動金具12の左側端部が挿入するガイド溝5を、可動金具12の可動範囲全長に亘って形成して、左端面16をガイド溝5の底面に沿って配置しているので、ガイド溝5によって可動金具12のフレーム面外方向への移動が規制されて確実にフレーム面と平行に上下移動させることができる。よって、可動金具12の回転変位をより効果的に抑制することができる。
【0023】
なお、上記形態4においても、上記形態2で説明した摺動板20を採用して、摺動板20をガイド溝5の底面に固定したり、可動金具12の左側端部に固定したりして上下方向のガイドを得るようにしても差し支えない。また、摺動板20をガイド溝5の底面と可動金具12との双方に設けて摺動板20同士を摺接させることもできる。これらの場合、摺動板20に合わせてガイド溝5の幅は広く形成される。
【0024】
[形態5]
図7に示す制震装置10Dでは、可動金具12の左端面16が柱4Aの右側面に直接当接する構造である点で形態1とは同じであるが、ここでは可動金具12の連結部18に固定される上下のブレース14の端部に、固定金具11の右端面と当接する回転規制部としての上下方向の平面である回転規制面22をそれぞれ設けている。
よって、この制震装置10Dにおいても、可動金具12は、柱4A側の左端面16を柱4Aに当接させているので、形態1と同様に左端面16が柱4Aの右側面に沿って上下にガイドされることで回転が抑制される。同時に、各ブレース14に設けた回転規制面22が固定金具11の右端面に沿って摺動し、上下にガイドされることで、ここでも回転抑制作用が得られる。従って、可動金具12は、傾いたり捻れたりすることなく固定金具11,11の間でフレーム面と平行に上下移動することになる。
【0025】
このように、上記形態5の制震装置10Dによれば、可動金具12に、固定金具11における柱4Aと反対側の右端面と接触する回転規制部(ブレース14の回転規制面22)を一体に設けたことで、両金具11,12のサイズが大きくなったり、粘弾性体13に断面欠損が生じたりすることなく、可動金具12の回転変位を抑制できる。よって、コンパクト且つ低コストな構造となって安定した減衰性能を得ることができる。
特にここでは、固定金具11に接触する回転規制部を可動金具12に設けているので、可動金具12側のみで回転規制が容易に行える。
また、各回転規制面22を、一対のブレース14,14における可動金具12との固定端部に設けているので、ブレース14を利用した合理的な構造で回転規制部を簡単に得ることができる。
【0026】
なお、上記形態5では、可動金具12の左端面16を柱4Aの右側面に当接させているが、これに限らず、図8に示すように、可動金具12の左端面16を柱4Aの右側面に当接させず、各ブレース4の回転規制面22のみを固定金具11の右端面に当接させて可動金具12の上下移動をガイドさせても差し支えない。
また、可動金具の連結部に対するブレースの固定面は上記形態5と逆側でもよい。
【0027】
[形態6]
図9に示す制震装置10Eでは、可動金具12の左端面16が柱4Aの右側面に直接当接する構造である点で形態1とは同じであるが、ここでは連結部18に固定される上下のブレース14,14の間で、可動金具12及び固定金具11,11を右側(フレーム1の中心側)から覆う回転規制部としての回転規制部材23が、柱4Aに取り付けられている。
この回転規制部材23は、平面視倒U字状に形成された門型部材で、柱4A側の両端部に、互いに外側に向けた取付片24,24が折曲形成されて固定金具11の折曲部15,15に重なっており、この取付片24,24が折曲部15と共に柱4Aに固定具によって固定される。この固定状態で、右側基端の上下方向の平面である内面25を、可動金具12の右端面26に当接させている。
【0028】
よって、この制震装置10Eにおいても、可動金具12は、柱4A側の左端面16を柱4Aに当接させているので、形態1と同様に左端面16が柱4Aの右側面に沿って上下にガイドされることで回転が抑制される。同時に、可動金具12の右端面26が回転規制部材23の内面25に沿って摺動し、上下にガイドされることで、ここでも回転抑制作用が得られる。従って、可動金具12は、傾いたり捻れたりすることなく固定金具11,11の間でフレーム面と平行に上下移動することになる。
【0029】
このように、上記形態6の制震装置10Eによれば、柱4Aに、可動金具12における柱4Aと反対側の右端面26と接触する回転規制部(回転規制部材23)を一体に設けたことで、両金具11,12のサイズが大きくなったり、粘弾性体13に断面欠損が生じたりすることなく、可動金具12の回転変位を抑制できる。よって、コンパクト且つ低コストな構造となって安定した減衰性能を得ることができる。
特にここでは、回転規制部材23を、固定金具11及び可動金具12をフレーム1の中心側から囲んで柱4Aに固定される門型部材としているので、回転規制部材23を固定金具11及び可動金具12を跨いで柱4Aへ簡単に取り付けることができる。
【0030】
なお、上記形態6でも、可動金具12の左端面16を柱4Aの右側面に当接させているが、これに限らず、図10に示すように、可動金具12の左端面16を柱4Aの右側面に当接させず、右端面26のみを回転規制部材23の内面25に当接させて可動金具12の上下移動をガイドさせても差し支えない。
また、回転規制部材は1つでなく、上下に間隔をおいて複数設けてもよい。柱への取り付け構造も、固定金具を介さずに直接柱へ取り付けることもできる。
【0031】
[形態7]
図11に示す制震装置10Fでは、可動金具12の左端面16が柱4Aの右側面に直接当接する構造である点で形態1とは同じであるが、ここでは可動金具12の連結部18の前後面に、固定金具11側にフレーム面と直交する当接片28をそれぞれ折曲形成した回転規制部としての平面視L字状の回転規制板27,27が、当接片28が前後で互いに外向きとなる向きで、ボルト29及びナット30によってブレース14,14の端部と共に固定されている。この固定状態で前後の当接片28,28は、それぞれ固定金具11の右端面に当接している。なお、ブレース14,14の端部は、前後の回転規制板27,27の何れか一方の外側でボルト29及びナット30で固定してもよいし、連結部18と前後何れか一方の回転規制板27との間で固定してもよい。
【0032】
よって、この制震装置10Fにおいても、可動金具12は、柱4A側の左端面16を柱4Aの右側面に当接させているので、形態1と同様に左端面16が柱4Aの右側面に沿って上下にガイドされることで回転が抑制される。同時に、可動金具12に設けた回転規制板27,27の当接片28,28が固定金具11の右端面に沿って摺動し、上下にガイドされることで、ここでも回転抑制作用が得られる。従って、可動金具12は、傾いたり捻れたりすることなく固定金具11,11の間でフレーム面と平行に上下移動することになる。
【0033】
このように、上記形態7の制震装置10Fによれば、可動金具12に、固定金具11における柱4Aと反対側の右端面と接触する回転規制部(回転規制板27)を一体に設けたことで、両金具11,12のサイズが大きくなったり、粘弾性体13に断面欠損が生じたりすることなく、可動金具12の回転変位を抑制できる。よって、コンパクト且つ低コストな構造となって安定した減衰性能を得ることができる。
特にここでは、可動金具12と一体の回転規制板27,27の各当接片28も固定金具11の右端面に当接させているので、可動金具12を確実にフレーム面と平行に上下移動させることが可能となり、回転変位をより効果的に抑制することができる。
【0034】
なお、上記形態7では、可動金具12の連結部18の略全長に亘って当接片28を設けているが、全長でなく断続的に形成してもよい。
また、図12に示すように、可動金具12の左端面16を柱4Aの右側面に当接させず、回転規制板27,27の当接片28,28のみを固定金具11,11の右端面に当接させて可動金具12の上下移動をガイドさせても差し支えない。
そして、上記形態7では、回転規制板を可動金具と別体の部材としているが、可動金具に切り起こし形成してもよい。
【0035】
[形態8]
図13に示す制震装置10Gでは、固定金具と可動金具との位置が上記形態とは逆となっている。すなわち、固定金具11Aは、ベース31を左側端部へ直交状に備えた平面視倒T字状で、ベース31が柱4Aの右側面に固定具で固定される。可動金具12,12は、固定金具11Aを前後に挟んで一対配置されて、固定金具11Aとの間にそれぞれ粘弾性体13,13が接着されている。各可動金具12の連結部18は固定金具11Aよりも右側へ突出して、前後の連結部18,18の間にブレース14,14の端部が連結されることになる。
そして、ここでは各可動金具12の左端面16の全面が、固定金具11Aのベース31の表面にそれぞれ当接している。
【0036】
よって、この制震装置10Gにおいても、各可動金具12は、柱4A側の左端面16をベース31に当接させているので、各左端面16がベース31の表面に沿って上下にガイドされることで回転が抑制される。従って、可動金具12,12は、傾いたり捻れたりすることなく固定金具11Aの前後両側でフレーム面と平行に上下移動することになる。
このように、上記形態8の制震装置10Gによれば、可動金具12,12は、各左端面16が固定金具11Aのベース31に直接接触した状態で支持されているので、両金具11A,12のサイズが大きくなったり、粘弾性体13に断面欠損が生じたりすることなく、可動金具12,12の回転変位を抑制できる。よって、コンパクト且つ低コストな構造となって安定した減衰性能を得ることができる。
【0037】
なお、上記形態8においても、ベース31の表面に、各可動金具12の左側端部が挿入するガイド溝を、可動金具12の可動範囲全長に亘って設けて、左端面16をガイド溝の底面に接触させることができる。
また、ベース31に、各可動金具12の左側端部の外側及び/又は内側に立設する拘束片を一体又は別体に設けて、各可動金具の左側端部のフレーム面外方向への変形を防止することができる。
【0038】
[形態9]
図14に示す制震装置10Hでは、前後の可動金具12,12の各左端面16が固定金具11Aのベース31に当接する構造である点で形態8とは同じであるが、ここでは可動金具12,12の連結部18,18の間に、回転規制部としての平面視倒U字状の板体である回転規制体32が、開放側を外側(右側)に向けた姿勢で挿入されて、回転規制体32の間にブレース14,14の端部が挿入されて、連結部18,18及び回転規制体32ごとボルト及びナットで連結されている。この状態で回転規制体32の基端側の上下方向の平面である外面33が、固定金具11Aの右端面に当接している。
【0039】
よって、この制震装置10Hにおいても、各可動金具12は、柱4A側の左端面16をベース31に当接させているので、各左端面16がベース31の表面に沿って上下にガイドされることで回転が抑制される。同時に、連結部18,18の間に固定した回転規制体32の外面33が固定金具11Aの右端面に沿って上下にガイドされることでも回転抑制作用が得られる。従って、可動金具12,12は、傾いたり捻れたりすることなく固定金具11Aの前後両側でフレーム面と平行に上下移動することになる。
【0040】
このように、上記形態9の制震装置10Hによれば、可動金具12,12に、固定金具11Aにおける柱4Aと反対側の端面と接触する回転規制部(回転規制体32)を設けたことで、両金具11A,12のサイズが大きくなったり、粘弾性体13に断面欠損が生じたりすることなく、可動金具12,12の回転変位を抑制できる。よって、コンパクト且つ低コストな構造となって安定した減衰性能を得ることができる。
【0041】
なお、この形態9においても、形態8で述べたのと同様に、ベース31の表面に、各可動金具12の左側端部が挿入して左端面16が底面に接触するガイド溝を設けたり、ベース31に、各可動金具12の左側端部の外側及び/又は内側に立設する拘束片を一体又は別体に設けたりすることができる。
但し、図15に示すように、可動金具12の左端面16をベース31に当接させず、回転規制体32の外面33のみを当接させて可動金具12,12の上下移動をガイドさせても差し支えない。
【0042】
その他、各形態に共通して、上記各形態では、左側の柱に固定金具を固定して右側の柱両端の仕口部から一対のブレースを介して可動金具を支持させているが、左右逆にして、右側の柱に固定金具を固定して左側の仕口部から一対のブレースを介して可動金具を支持させてもよい。
また、左右の柱に両金具及び粘弾性体を設けるK型に限らず、上下の梁又は土台の一方に両金具及び粘弾性体を設け、他方にブレースを設けるV型或いは逆V型であっても本発明は採用可能である。
さらに、固定金具と可動金具とを1つずつ設けて両金具の間に粘弾性体を接着する制震装置であっても、可動金具の端面を柱又は横架材、さらには固定金具に接触させたり、可動金具に設けた回転規制部を固定金具の端面に接触させたりして可動金具の回転変位を抑制することは可能である。
【符号の説明】
【0043】
1・・フレーム、2・・梁、3・・土台、4A・・柱(左側)、4B・・柱(右側)5・・ガイド溝、6・・内面、10,10A~10H・・制震装置、11,11A・・固定金具、12・・可動金具、13・・粘弾性体、14・・ブレース、15・・折曲部、16・・左端面、17・・面取部、18・・連結部、20・・摺動板、21・・拘束片、22・・回転規制面、23・・回転規制部材、24・・取付片、25・・内面、26・・右端面、27・・回転規制板、28・・当接片、29・・ボルト、30・・ナット、31・・ベース、32・・回転規制体、33・・外面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15