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特許7015161リーン型乗物の走行情報蓄積方法、走行情報処理プログラム及び走行情報蓄積装置
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  • 特許-リーン型乗物の走行情報蓄積方法、走行情報処理プログラム及び走行情報蓄積装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】リーン型乗物の走行情報蓄積方法、走行情報処理プログラム及び走行情報蓄積装置
(51)【国際特許分類】
   G07C 5/00 20060101AFI20220126BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20220126BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
G07C5/00 Z
G08G1/00 D
G08G1/09 F
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2017236695
(22)【出願日】2017-12-11
(65)【公開番号】P2019105909
(43)【公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-06-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 義基
(72)【発明者】
【氏名】冨永 淳
【審査官】毛利 太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/159476(WO,A1)
【文献】特開2008-092682(JP,A)
【文献】国際公開第2005/038745(WO,A1)
【文献】特開2006-240491(JP,A)
【文献】特開2017-065561(JP,A)
【文献】国際公開第2013/175680(WO,A1)
【文献】特開2013-041355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07C 5/00- 5/12
G08G 1/00- 1/16
B60R 16/00-16/08
B60R 21/00-21/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーン状態で旋回走行するリーン型乗物の走行情報を蓄積する方法であって、
前記乗物の走行位置履歴に関する情報を取得する走行位置履歴取得工程と、
旋回走行時において前記乗物に対して旋回半径方向外方に向けて作用する横力又は前記横力に相当する値を含む横力情報を検出する横力検出工程と、
前記検出された横力情報を前記取得された走行位置履歴の情報に関連付けて記憶する記憶工程と、を備える、リーン型乗物の走行情報蓄積方法。
【請求項2】
前記横力は、遠心力である、請求項1に記載のリーン型乗物の走行情報蓄積方法。
【請求項3】
前記横力は、前記乗物の少なくとも1つの車輪に生じるタイヤ力の成分の情報を含み、
前記少なくとも1つの車輪は、駆動輪を含む、請求項1に記載のリーン型乗物の走行情報蓄積方法。
【請求項4】
前記横力は、前記乗物の少なくとも1つの車輪に生じるタイヤ力の成分の情報を含み、
前記少なくとも1つの車輪に生じるタイヤ力は、前記乗物の前輪及び後輪に生じる各タイヤ力を含む、請求項1に記載のリーン型乗物の走行情報蓄積方法。
【請求項5】
前記乗物の車輪の路面に対する滑りが発生するまでの余裕度を算出する滑り余裕度算出工程を更に備え、
前記記憶工程において、前記横力情報と共に前記余裕度を前記走行位置履歴の情報に関連付けて記憶する、請求項3又は4に記載のリーン型乗物の走行情報蓄積方法。
【請求項6】
前記横力情報の一定期間ごとの平均値及びピーク値の少なくとも一方を算出する横力関連値算出工程を更に備え、
前記記憶工程において、前記横力情報と共に前記平均値及びピーク値の少なくとも一方を更に記憶する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のリーン型乗物の走行情報蓄積方法。
【請求項7】
前記記憶工程において、前記横力情報を乗物制御装置に入力される検出情報と関連付けて記憶する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のリーン型乗物の走行情報蓄積方法。
【請求項8】
前記記憶工程において、前記横力情報を路面状態又は周囲環境に基づいて分類分けして記憶する、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の走行情報蓄積方法。
【請求項9】
前記記憶工程において、前記横力情報を前記乗物又は運転者の識別情報に関連付けて記憶する、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の走行情報蓄積方法。
【請求項10】
リーン状態で旋回走行するリーン型乗物の走行情報を蓄積する方法であって、
前記乗物の走行位置履歴の情報を取得する走行位置履歴取得工程と、
前記乗物の車輪の路面に対する滑りが発生するまでの余裕度を算出する滑り余裕度算出工程と、
前記余裕度を前記走行位置履歴の情報に関連付けて記憶する記憶工程と、を備える、リーン型乗物の走行情報蓄積方法。
【請求項11】
リーン状態で旋回走行するリーン型乗物の走行情報を処理する情報処理装置にインストールされるプログラムであって、
前記乗物の走行位置履歴の情報を取得する走行位置履歴取得工程と、
旋回走行時において前記乗物に対して旋回半径方向外方に向けて作用する横力又は前記横力に相当する値を含む横力情報を取得する横力取得工程と、
前記取得された横力情報を前記取得された走行位置履歴の情報に関連付けて記憶する記憶工程と、
前記記憶された横力情報及び前記走行位置履歴をサーバに送信する送信工程と、
を前記情報処理装置に実行させる、リーン型乗物の走行情報処理プログラム。
【請求項12】
リーン状態で旋回走行するリーン型乗物の走行情報を処理する情報処理装置にインストールされるプログラムであって、
前記乗物の走行位置履歴の情報を取得する走行位置履歴取得工程と、
旋回走行時において前記乗物に対して旋回半径方向外方に向けて作用する横力又は前記横力に相当する値を含む横力情報を取得する横力取得工程と、
前記取得された横力情報及び走行位置履歴を互いに関連付けて表示器に表示させる出力工程と、
を前記情報処理装置に実行させる、リーン型乗物の走行情報処理プログラム。
【請求項13】
リーン状態で旋回走行するリーン型乗物の走行情報を蓄積する装置であって、
前記乗物の識別情報を取得する識別情報取得器と、
前記乗物の走行位置履歴の情報を取得する走行位置履歴取得器と、
旋回走行時において前記乗物に対して旋回半径方向外方に向けて作用する横力又は前記横力に相当する値を含む横力情報を取得する横力取得器と、
前記走行位置履歴取得器及び前記横力取得器に接続された制御器と、
前記制御器により処理されたデータを記憶する記憶器と、
前記記憶器に記憶された前記データを表示器に出力させる出力器と、を備え、
前記制御器は、前記横力取得器で取得された前記横力情報を、前記走行位置履歴取得器で取得された前記走行位置履歴の情報と前記識別情報取得器で取得された前記識別情報とに関連付けて前記記憶器に記憶させ、
前記出力器は、前記識別情報ごとに前記横力情報及び前記走行位置履歴を互いに関連付けて表示器に出力させる、リーン型乗物の走行情報蓄積装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーン状態で旋回走行するリーン型乗物の走行情報蓄積する方法、プログラム及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動二輪車の車体のバンク角を座標データとリンクして記憶する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4346609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、バンク角は、運転者の操作結果を示すものであり、バンク角のみによって十分な走行分析を行うことは困難な場合がある。
【0005】
そこで本発明は、実際の感覚に近く、走行分析に用いやすい走行情報を蓄積する方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るリーン型乗物の走行情報蓄積方法は、リーン状態で旋回走行するリーン型乗物の走行情報を蓄積する方法であって、前記乗物の走行位置履歴の情報を取得する走行位置履歴取得工程と、旋回走行時において前記車両に対して旋回半径方向外方に向けて作用する横力又は前記横力に相当する値を含む横力情報を検出する横力検出工程と、前記検出された横力情報を前記取得された走行位置履歴の情報に関連付けて記憶する記憶工程と、を備える。
【0007】
前記方法によれば、走行後又は走行中に記憶蓄積された情報を参照することで、旋回中に発生する横力に関する情報を把握でき、乗物を操作するために有用な情報を得ることができる。また、乗物に対して旋回半径方向外方に向けて作用する横力に関する情報を参照するので、単に車体横方向に向いた力を参照する場合に比べ、旋回中に乗物がヨーイング等した場合にも、旋回走行に影響の大きい力にフォーカスした情報を得ることができる。
【0008】
本発明の一態様に係るリーン型乗物の走行情報処理プログラムは、リーン状態で旋回走行するリーン型乗物の走行情報を処理する情報処理装置にインストールされるプログラムであって、前記乗物の走行位置履歴の情報を取得する走行位置履歴取得工程と、旋回走行時において前記車両に対して旋回半径方向外方に向けて作用する横力又は前記横力に相当する値を含む横力情報を取得する横力取得工程と、前記取得された横力情報を前記取得された走行位置履歴の情報に関連付けて記憶する記憶工程と、前記記憶された横力情報及び前記走行位置履歴をサーバに送信する送信工程と、を前記情報処理装置に実行させる。
【0009】
本発明の他態様に係るリーン型乗物の走行情報処理プログラムは、リーン状態で旋回走行するリーン型乗物の走行情報を処理する情報処理装置にインストールされるプログラムであって、前記乗物の走行位置履歴の情報を取得する走行位置履歴取得工程と、旋回走行時において前記車両に対して旋回半径方向外方に向けて作用する横力又は前記横力に相当する値を含む横力情報を取得する横力取得工程と、前記検出された横力情報及び走行位置履歴を互いに関連付けて表示器に表示させる出力工程と、を前記情報処理装置に実行させる。
【0010】
本発明の一態様に係るリーン型車両の走行情報蓄積装置は、リーン状態で旋回走行するリーン型乗物の走行情報を蓄積する装置であって、前記乗物又は運転者の識別情報を取得する識別情報取得器と、前記乗物の走行位置履歴の情報を取得する走行位置履歴取得器と、旋回走行時において前記乗物に対して旋回半径方向外方に向けて作用する横力又は前記横力に相当する値を含む横力情報を取得する横力取得器と、前記走行位置履歴取得器及び前記横力検出器に接続された制御器と、前記制御器により処理されたデータを記憶する記憶器と、前記記憶器に記憶された前記データを表示器に出力させる出力器と、を備え、前記制御器は、前記横力取得器で取得された前記横力情報を、前記走行位置履歴取得器で取得された前記走行位置履歴の情報と前記識別情報取得器で取得された前記識別情報とに関連付けて前記記憶器に記憶させ、前記出力器は、前記識別情報ごとに前記横力情報及び前記走行位置履歴を互いに関連付けて表示器に出力させる。
【0011】
前記構成によれば、複数の運転者又は乗物の夫々に対応して情報分析することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、運転者の操作の結果ではなく、実際に車両に作用する力を検出及び蓄積することで、実際の感覚に近く、走行分析に用いやすい走行情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る走行情報管理システムの全体図である。
図2図1に示す走行情報管理システムのブロック図である。
図3】後輪の摩擦円を示す平面図である。
図4】(A)(B)は図2に示す携帯情報端末の表示画面の例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0015】
図1は、実施形態に係る走行情報管理システム1の全体図である。図1に示すように、走行情報管理システム1により蓄積・管理される走行情報は、路面に対して駆動輪に横力が作用した状態で車体を左右方向に傾斜させて走行するリーン型車両の走行情報である。リーン型車両は、運転者と車体とを総合した移動体全体が遠心力と釣り合う傾斜角で走行することで、車体傾斜状態を維持して旋回走行が可能な車両のことである。自動二輪車2は、リーン型車両の好適例である。自動二輪車2は、従動輪である前輪3と、駆動輪である後輪4とを備える。自動二輪車2は、前輪接地点と後輪接地点とを通過する前後軸AX周りに左右方向に車体5を傾斜させた状態(リーン状態又はバンク状態)で旋回走行する。車体5の直立状態に対する前後軸AX周りの傾斜角をバンク角θという(直立状態のバンク角θはゼロ)。
【0016】
自動二輪車2は、走行用の駆動力を発生する原動機を備える。本実施形態では、原動機としてエンジンE(内燃機関)が採用されるが、エンジンに代えて電動モータを採用してもよいし、エンジン及び電動モータの両方を採用してもよい。エンジンEは、動力伝達機構を介して駆動力を後輪4に付与する。
【0017】
自動二輪車2は、前輪3及び後輪4を制動する油圧式のブレーキ装置を備える。当該ブレーキ装置は、前輪3を制動する前ブレーキユニット6と、後輪4を制動する後ブレーキユニット7と、前ブレーキユニット6及び後ブレーキユニット7を制御するブレーキ制御ユニット8とを有する。前ブレーキユニット6及び後ブレーキユニット7は、互いに独立して動作し、それぞれブレーキ圧に比例した制動力を前輪3及び後輪4に付与する。
【0018】
自動二輪車2は、車両制御装置9(ECU)を備える。車両制御装置9は、駆動源(例えば、エンジンE)の駆動力を制御するものでよいし、車輪の制動動作を制御(ABS制御)するものでもよいし、車体挙動(サスペンションやステアリング)を制御するものでもよい。車両制御装置9には、車両を制御するために各種センサから検出情報が与えられる。例えば、スロットル開度、車速、エンジン回転数、ブレーキ圧等の検出情報が、車両制御装置9に入力される。
【0019】
路面から前輪3又は後輪4に作用する力には、そのタイヤに縦方向(前後方向)に作用する「縦タイヤ力Fx」と、そのタイヤに横方向(左右方向)に作用する「横タイヤ力Fy」と、タイヤに鉛直上向きに作用する「垂直抗力FV」とが含まれる。即ち、縦タイヤ力Fxは、前後方向の力であって、駆動輪では、加速時には前方向に向いて減速時には後方向に向く力であり、従動輪では、減速時に後方向に向く力である。本実施形態では、駆動輪である後輪4を対象車輪とする。なお、前輪3を対象車輪としてもよいし、前後輪をそれぞれ対象車輪としてもよいし、前輪3のタイヤ力と後輪4のタイヤ力とを統合(例えば、平均化)したタイヤ力を求めて記憶してもよい。後輪4に縦力Fxを発生させる主要因には、エンジンEから後輪4に伝達された駆動力と、後ブレーキユニット7から後輪4に付与された制動力とが挙げられる。横タイヤ力Fyは、旋回走行中に発生する。前輪3及び後輪4に横タイヤ力Fyを発生させる主要因には、走行速度及び旋回半径に基づく遠心力の反力が挙げられる。
【0020】
自動二輪車2には、走行状態を検出する後述する各種のセンサが搭載されており、その各センサの検出信号を受信する走行情報管理装置10が搭載されている。自動二輪車2を運転するライダーは、携帯情報端末11(例えば、スマートフォン)を所持するか、あるいは、自動二輪車2の所定の位置に携帯情報端末11を取り付ける。携帯情報端末11は、走行情報管理装置10と通信すると共に、ネットワークN(例えば、インターネット)を介して外部のサーバ12及びデータベース13と通信する。
【0021】
図2は、図1に示す走行情報管理システム1のブロック図である。図2に示すように、走行情報管理装置10の入力側には、GPS受信機21、IMU22(慣性計測装置)、エンジン回転数センサ23、車速センサ24、駆動輪速度センサ25、ブレーキ圧センサ26、バンク角センサ27、スロットル開度センサ28及び入力操作器29が接続されている。GPS受信機21は、GPS衛星から自車位置情報を受信する。なお、このGPS受信機21に代えて携帯情報端末11の位置検出機能を用いてもよい。また、GPS受信器21に代えて、速度センサ及び方向センサから移動距離及び方向を累積演算して現在位置座標を取得してもよい。また、走行軌跡を取得可能であれば、既存の他の検出装置を用いてもよい。IMU22は、3軸のジャイロと3方向の加速度計によって、3次元の角速度及び加速度をそれぞれ検出する装置であり、互いに直交する3軸方向の加速度と当該3軸回りの角速度とを検出することができる。エンジン回転数センサ23は、エンジンEのクランク軸の回転数を検出する。
【0022】
車速センサ24は、例えば、従動輪である前輪3の回転数を検出することにより自動二輪車2の走行速度を検出する。駆動輪速度センサ25は、駆動輪である後輪4の回転数を検出する。ブレーキ圧センサ26は、前ブレーキユニット6及び後ブレーキユニット7に発生するブレーキ圧力(例えば、ブレーキ油圧)をそれぞれ検出する。バンク角センサ27は、車体5が直立状態から左右方向へ傾斜した角度(バンク角)を検出する。スロットル開度センサ28は、エンジンEに供給される吸気量を調節するスロットル装置のスロットル開度を検出する。入力操作器29は、運転者が入力操作を行うタッチパネルやボタン等である。
【0023】
走行情報管理装置10は、ハードウェア面において、プロセッサ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ及びI/Oインターフェース等を有する。走行情報管理装置10は、機能面において、入力部31、走行位置履歴取得部32、横タイヤ力取得部33(横力検出器)、遠心力取得部34(横力検出器)、車両情報取得部35、制御部36、記憶部37及び出力部38を備える。記憶部37は、揮発性メモリ及び不揮発性メモリにより実現される。入力部31及び出力部38は、I/Oインターフェースにより実現される。走行位置履歴取得部32、横タイヤ力取得部33、遠心力取得部34、車両情報取得部35及び制御部36は、不揮発性メモリに保存された走行情報処理プログラムに基づいてプロセッサが揮発性メモリを用いて演算処理することで実現される。
【0024】
走行位置履歴取得部32は、GPS受信機21で検出される自動二輪車2の位置情報から自動二輪車2の走行位置履歴として走行軌跡を求める。走行軌跡は、自動二輪車2の位置情報を時間経過ごとに蓄積することで得られる。なお、走行位置履歴として自動二輪車2の走行した位置座標を求めてもよい。その場合、位置座標を別の工程で走行軌跡として統合してもよい。横タイヤ力取得部33は、後述するように後輪4にかかる横タイヤ力Fy(横力)を求める。遠心力取得部34は、後述するようにIMU22の検出信号に基づいて旋回走行時に車体5にかかる遠心力を求める。車両情報取得部35は、各種センサ21~28の検出信号を取得する。制御部36は、走行位置履歴取得部32、横タイヤ力取得部33、遠心力取得部34及び車両情報取得部35で得られた各データを記憶部37に書込み可能であると共に、各データを記憶部37から読出し可能である。
【0025】
出力部38は、自動二輪車2に搭載された表示器39にデータを出力可能であると共に、外部メモリ40にも出力可能である。また、出力部38は、自動二輪車2の運転者が所有する携帯情報端末11に近距離無線通信(例えば、Bluetooth(登録商標))によりデータを出力する。携帯情報端末11は、走行情報処理プログラムを有し、そのプログラムに従ってネットワークNを介して遠隔地のサーバ12及びデータベース13との間でデータを送受信する。サーバ12には、自動二輪車2と同様に他のユーザの自動二輪車の携帯情報端末との通信し、データベース13には多数のユーザの走行情報が蓄積される。即ち、サーバ12は、走行情報蓄積装置として機能する。
【0026】
図3は、後輪4の摩擦円を示す平面図である。図3に示すように、後輪4の摩擦円Cfは、路面に対する後輪4のタイヤのグリップ限界を示す円である。即ち、摩擦円Cfは、鉛直方向に垂直な水平面上において後輪接地点を中心とし、最大摩擦力(路面と後輪との間の摩擦係数と後輪タイヤの垂直抗力Fvとの積)の大きさを半径とする円である。後輪4と路面との間に生じるタイヤ力は、後輪4の進行方向成分である縦タイヤ力Fxと、当該進行方向に直交する横方向成分である横タイヤ力Fyとを有する。
【0027】
縦タイヤ力Fxと横タイヤ力Fy との合力Ftの起点は摩擦円Cfの中心にあり、合力Ftの終点が摩擦円Cfの内側に収まっているときには、合力Ftが摩擦力と釣り合い得るので、後輪4のスリップが防がれる。合力Ftが摩擦円Cfを超えるときには、合力Ftが最大摩擦力よりも大きいので、後輪4が最大摩擦力に抗してスリップする。即ち、合力Ftの終点が摩擦円Cfの内側にあるときにおける合力Ftの終点と摩擦円Cfとの間の距離Lが、後輪4の路面に対する滑りが発生するまでの余裕度FSである。余裕度FSは、例えば、試験結果等に基づいて予め定められた値に設定されてもよい。
【0028】
遠心力取得部34は、IMU22及びバンク角センサ27の検出信号から遠心力Fc(横力)を求める。具体的には、車体5がバンク状態にあるときはIMU22の検出方向も車体5と一体に水平面に対して傾斜するため、以下の数式3で遠心力Fcを算出する。数式1に入力される横加速度αは、以下の数式2で算出される。なお、AがIMU22で検出される横加速度、θはバンク角である。即ち、Aは、IMUを基準とした座標における横方向の加速度であり、地面を基準とした座標においてはバンク角θの分だけ水平方向に対して傾斜した横方向の加速度となる。なお、遠心力は、走行軌跡(カーブ軌跡)の曲率及び車速データから算出されてもよい。又は、遠心力は、IMU22で検出されたヨー方向の加速レート及びロール方向の加速レートに基づいて算出されてもよい。
【0029】
横タイヤ力取得部33は、以下の数式1で横タイヤ力Fyを算出する。なお、αは、左右方向において車体5に作用する水平方向の横加速度である。γは、IMU22で検出されるヨーレートである。f1は、横加速度αが増加するにつれて横タイヤ力Fyが増加して且つヨーレートγが増加するにつれて横タイヤ力Fyが増加する関数である。
【0030】
【数1】
【0031】
車体5がバンク状態にあるときはIMU22の検出方向も車体5と一体に水平面に対して傾斜するため、数式1に入力される横加速度αは、以下の数式2で算出される。なお、AがIMU22で検出される横加速度、θはバンク角である。
【0032】
【数2】
【0033】
横タイヤ力取得部33は、横タイヤ力以外の情報を検出するセンサからの上方から横タイヤ力を演算して取得したが、横タイヤ力をセンサによって検出した情報を取得してもよい。例えば、タイヤ力について、特開2017-161395号公報に開示されたように、力を検出するひずみゲージを用いて検出してもよい。
【0034】
遠心力取得部34は、IMU22及びバンク角センサ27の検出信号から遠心力Fcを求める。具体的には、車体5がバンク状態にあるときはIMU22の検出方向も車体5と一体に水平面に対して傾斜するため、以下の数式3で遠心力Fcを算出する。なお、mは車体5の質量である。
【0035】
【数3】
【0036】
遠心力Fcの演算方法は一例であって、他の演算式で遠心力を求めてもよい。例えば、特開2017-65561号公報に開示されたように車両及び運転者を含む移動体全体の車幅方向の傾斜角(移動体バンク角)に釣り合う力を遠心力として求めてもよい。即ち、移動体バンク角は、車両バンク角とは異なり、横力(遠心力)に相当する値である。携帯情報端末11に加速度センサが搭載される場合、携帯情報端末11の加速度センサを用いて遠心力を求めてもよい。
【0037】
横力は、横方向力に相当する情報であればよい。本実施形態では、横力は、横タイヤ力Fy及び遠心力Fcを含み得る。走行情報管理装置10の制御部36は、横タイヤ力取得部33で求められた横タイヤ力Fy及び/又は遠心力取得部34で求められた遠心力Fcを、走行位置履歴取得部32で取得された走行軌跡の情報に関連付けて記憶部37に記憶させる。また、制御部36は、横タイヤ力Fy及び/又は遠心力Fcだけでなく前記した余裕度Lも走行軌跡の情報に関連付けて記憶部37に記憶させる。また、制御部36は、横タイヤ力Fy及び/又は遠心力Fcの一定期間ごとの平均値及びピーク値を算出し、横タイヤ力Fy及び/又は遠心力Fcと共にその算出された平均値及びピーク値を記憶部37に記憶させる。前記一定期間は、一定時間でも一定距離でもよく、1つのカーブごとに期間が設定されてもよいし、複数のカーブで1つの期間が設定されてもよい。
【0038】
また、制御部36は、横タイヤ力Fy及び/又は遠心力Fcを車両情報取得部35で取得された各種検出情報(例えば、各種センサ21~28で得られた情報)と関連付けて記憶部37に記憶させる。また、制御部36は、前記した記憶部37に記憶された各走行情報を入力操作器29等から入力された路面状態(例えば、ウェット度や荒れ地度等)及び/又は周囲環境(例えば、温度や湿度や天気等)によって分類分けして記憶する。路面状態及び/又は周囲環境は、例えば、ユーザが判断して手入力される。そして、制御部36は、記憶部37に記憶された情報を出力部38から出力させ、携帯情報端末11及びネットワークNを介してサーバ12に送信してデータベース13に蓄積させる。
【0039】
路面情報は、前後輪の速度差から摩擦係数を推定してもよいし、外部通信手段を用いて外部から路面状態を入手してもよい。路面状態として、路面の凹凸、上下傾斜、左右傾斜等を自動二輪車のストロークセンサや加速度センサから入手してもよいし、路面状態として、高速道路か、一般道か、市街地か、不整地かなどをGPSやETC等を利用して入手してもよい。周囲環境は、温度センサや気圧センサの検出信号に基づいた情報から入手してもよいし、携帯情報端末によってインターネット経由で自車位置と現在時刻とに基づいて入手してもよい。
【0040】
その際、走行情報管理装置10から携帯情報端末11を介してサーバ12に送信されるデータには、送信元の自動二輪車2及び運転者の各識別情報が付加されている。自動二輪車2の識別情報は、走行情報管理装置10に予め記憶されている。運転者の識別情報は、携帯情報端末11に登録されていてもよいし、ハンドルスイッチなどから入力されてもよい。サーバ12には、各自動二輪車又はそれら運転者の識別情報を取得する識別情報取得部14が設けられ、サーバ12にインストールされた走行情報処理プログラムは、種々の走行分析を行い、出力部15を用いて、当該識別情報ごとに横タイヤ力Fy及び遠心力Fcを含む各種走行情報や分析結果等を走行軌跡に関連付けた状態で携帯情報端末11(表示器)に出力させる。
【0041】
一例として、図4(A)に示すように、携帯情報端末11の画面には、走行軌跡41が表示され、走行軌跡41における選択箇所41aが他の箇所と区別可能に表示される。そして、選択箇所41aにおける旋回時の横力(横タイヤ力Fy及び/又は遠心力Fc)の時系列横力グラフ42が、走行軌跡41に隣接して表示される。選択箇所41aは、走行軌跡41上において任意の位置を選ぶことができる。時系列横力グラフ42では、右バンクと左バンクとが(正負に)分けて表示される。また、選択箇所41aにおける右向き及び左向きの各遠心力の最大値が、時系列横力グラフ42に隣接して表示される。
【0042】
別の例として、図4(B)に示すように、携帯情報端末11の画面には、走行軌跡44が表示される。走行軌跡44の色は可変であり、走行軌跡44の各部の色により横力(横タイヤ力Fy及び/又は遠心力Fc)の強さを表示する。走行軌跡44の隣には、横力の強さと色との相関関係の定義が凡例45として表示される。また、携帯情報端末11の画面には、後輪4の路面に対する滑りが発生するまでの余裕度FSを走行軌跡と関連付けて数値や色等で識別可能に表示すると好ましい。
【0043】
運転者は、記憶部37に保存された情報に接することで、旋回走行時に自動二輪車2に生じた横力と、その横力が生じた走行軌跡とが関連して示された情報を把握することができる。例えば、運転者は、過去に生じた横力を鑑みて、今後の走行において、走行軌跡を変更したり、走行速度を異ならせたりして、横力を調整することができる。例えば、横タイヤ力を把握することで、車輪と路面との間で発生可能な最大摩擦力に対して比較的横タイヤ力が大きい場合には、横滑りが生じる可能性を低くするために、横タイヤ力を小さくするよう、旋回半径を大きくしたり走行速度を低くしたりできる。このようにして、次回の走行操作の調整に利用可能な指標を提供することができる。
【0044】
また、自動二輪車2は、運転者の重心位置を車体重心から左右方向にずらして、旋回走行する場合がある。即ち、走行操作として、運転者重心を車体中心に対して旋回中心内側に移動させたリーンイン状態走行や、運転者重心を車体中心に対して旋回中心外側寄りに移動させたリーンアウト状態走行が存在する。このような場合には、自動二輪車2と運転者とを含む移動体の重心と、自動二輪車2のみの重心とにずれが生じる。したがって、自動二輪車2のバンク角を参照しただけでは、遠心力との釣り合いを正確に把握することができない。本実施形態では、自動二輪車2のバンク角ではなく、自動二輪車2に生じる横力を情報として蓄積することで、運転者の走行スタイルに関わらずに、次回の走行操作の調整に利用可能な指標を提供することができる。なお、横力としての遠心力に相当する値は、横力に対応して変化する値であればよく、例えば、車両と運転者とを含む移動体全体の重心と車両接地点とを結ぶ仮想線の鉛直線に対する傾斜角(移動体バンク角)を遠心力に相当する値としてもよい。
【0045】
例えば、旋回開始時に、積極的に車体をバンクさせることで、前輪3と後輪4との内輪差が生じて前輪3を操舵する力が生じることがある。このような場合に、自動二輪車が倒れるのを防ぐために、運転者はリーンアウト状態走行とすることがある。また、車体と路面とが接触する限界値である最大バンク角を超えた横力が生じた場合に、自動二輪車の倒れを防ぐためにリーンイン状態走行とすることがある。このように、横力と車体のバンク角とは必ずしも一致しない。上述したように、操舵・車体形状のほか、タイヤのグリップ、走行スタイル、好みなど、車体のバンク角が遠心力以外の要因で決定されるような場合でも、本実施形態では横力を指標とすることで、走行分析を行いやすく、次回の走行操作の調整に用いることができる。
【0046】
また、横力として旋回方向外側に向けて作用する力を用いることで、例えば旋回走行中に自動二輪車にヨーイングなどが生じた場合にも、旋回走行に影響の大きい力にフォーカスした情報を得ることができる。具体的には、旋回中心に対する公転旋回とともに、前後輪のうちの少なくとも一方がスライドしたり、車体に設定される基準点に対して旋回する自転旋回を生じることがある。このような場合に、スライドや自転旋回の影響を除いた遠心力を横力として利用することで、より精度良く走行分析を行うことができる。また、例えば、旋回走行中に運転者が車体を前後軸回りに時間経過に応じて傾ける過渡変化、いわゆるローリングを生じさせることがある。このような場合にも、ローリングの影響を除いた遠心力を横力として利用することで、より精度良く走行分析を行うことができる。また逆に、旋回に対して生じる横力の時間変化(発生時期または終了時期)から、車体を傾けたり起こしたりする操作の時期または位置を、運転者に把握させることができ、次回の走行操作の調整に用いることができる。
【0047】
また、自動二輪車を運転する場合には、大きさや時間変化などの横力状況として、運転者が快適と感じる快走範囲がある。快走範囲レベルは、予め運転者の走行レベルに応じて設定される。快走範囲よりも横力状況が小さい場合には、単調な走行路であると推測することができる。また快走範囲よりも横力状況が大きい場合には、難易度の高い走行路であると推測することができる。また快走範囲内の横力状況となる走行路の場合には、対応する走行レベルの運転者にとって、心地よいと感じる走行が可能となる可能性が高いと推測できる。
【0048】
また、横力と走行軌跡とを関連付けた情報が示されることで、走行路ごとに生じている横力を運転者が把握することができる。これによって運転者は、走行路の難易度を推定することができる。たとえば横力が大きいほど、横滑りの可能性が高いことが予想される。このことから、運転者は、横力が大きいほど難易度が高い走行路であることを推定することができる。また、横力と走行軌跡とを関連付けた情報が示されることで、運転者の走行スタイルを推定することができる。たとえば、同じ走行路であっても、自動二輪車に作用する横力が大きい運転者の場合には、旋回走行時の速度が高く、積極的な走行スタイルであることを推定することができる。逆に、自動二輪車に作用する横力の時間経過に対する変化幅が小さい運転者の場合には、スムーズな走行スタイルであることを推定することができる。このように横力と走行軌跡とを関連付けた指標とすることで、車体のバンク角に比べて、運転者が受ける実際の感覚に近い指標を得ることができる。これによって実際の感覚に近づけて走行スキルや走行路の分析に用いることができる有用な情報を得ることができる。
【0049】
また、記憶部37に記憶される旋回半径方向外方に向かう方向に作用する横力を横タイヤ力とすれば、横タイヤ力が指標として記憶されることで車両にヨーイングやピッチング等が生じたとしても、路面とタイヤとの間で作用する実際の力を把握することができる。これによって、車輪と路面との間の最大摩擦力と、実際にタイヤに生じている力とを比較しやすく、車輪に横滑りが生じるかどうかを分析しやすくなる。加えて、縦タイヤ力も指標として記憶されることで、タイヤに縦方向と横方向とを総合した滑りが生じるかどうかを分析しやすくなる。このように横力としてタイヤ力の情報を運転者に把握させることで、運転者は、走行軌跡に対する滑りやすさを推測でき、有益な情報を得ることができる。これによって、運転者は、走行操作の調整(走行軌跡や、車速の調整、バンク角操作、加減速操作)を考えやすい。
【0050】
また、前輪と後輪とのそれぞれの横タイヤ力が指標として記憶されることで、前輪と後輪とにそれぞれに作用する横タイヤ力を把握することができる。たとえば横滑りが生じた場合に、横滑りに対して、前後輪のいずれの横タイヤ力が影響したかを推定することができる。これによって次回の走行操作の調整を行いやすい。たとえば上述した走行操作の調整に加えて、横滑りが生じる可能性が高い車輪に向けて、運転者の姿勢を移動して垂直抗力を増やしたり、ピッチング方向の車体の姿勢バランスを調整したりしてもよい。
【0051】
サーバ12には、車両の識別情報ごとに情報が集められる。これによって、車両の種類に応じた横力と走行軌跡とを得ることができ、運転者の所有する車両に応じた分析を行うことができる。たとえば車両の平均的な横力の作用や、上級者の操作(横力の作用状況)などを提供することができる。これによって、運転者はこの情報を利用してスキルアップを図ることができる。車両の識別情報として、車種のほか、セッティング、タイヤの種類などで分類分けすることで、運転者の走行スタイルや車種に対する適切なセッティングについての分析を行うことができる。
【0052】
サーバ12には、運転者の識別情報ごとに情報が集められる。これによって、対象の運転者と近い運転スキルや走行スタイルの運転者グループを抽出することで、それらのグループでの平均的な横力の作用や、上級者での操作(横力の作用状況)などを提供することができる。また、上級者の運転による横力の作用と、運転者による横力との作用とを比較して分析することもできる。上達のための比較ではなく、仲間同士での比較を行ってもよい。運転者の識別情報として、性別、走行暦、年齢、所在地などのほか、好みとする走行スタイル、走行路などが設定されてもよい。このようにサーバ12には、横力と走行軌跡のほか、分類分け可能な各種情報が関連付けられて記憶されることで、複数の車両や運転者による情報から、傾向を分析したり比較することができ、有用な情報を得ることができる。
【0053】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、その構成を変更、追加、又は削除することができる。各種走行情報の演算や蓄積は、走行情報管理装置10で行わずにサーバ12側でのみ行うようにしてもよく、例えば、走行情報管理装置10の制御部36の機能をサーバ12側に移してもよい。また、各種走行情報の演算や蓄積は、サーバ12側で行わずに走行情報管理装置10のみで行うようにしてもよく、例えば、データベース13の機能を走行情報管理装置10に移してもよい。また、走行情報管理装置10に保存された走行情報処理プログラムは、携帯情報端末11に保存されてもよい。この場合には、走行軌跡取得部32、横タイヤ力取得部33、遠心力取得部34、車両情報取得部35、制御部36、記憶部37、出力部38及び表示器39が、携帯情報端末11に設けられてもよい。走行情報管理装置10から横力情報及び走行軌跡を携帯情報端末11に送信して携帯情報端末11において横力情報を走行軌跡に関連付けて記憶してもよい。また、走行情報管理装置10及び携帯情報端末11の機能を、据え置き型のパーソナルコンピュータで代替してもよい。
【0054】
制御部36は、取得したデータ(走行軌跡、横力との関連情報)を記憶部37の不揮発領域に記憶せずに、携帯情報端末11に出力して、携帯情報端末11側に記憶させてもよい。また、制御部36が取得したデータを携帯情報端末11で記憶せずに、インターネット上のサーバ12側で記憶してもよい。この場合、制御部36は、取得データを記憶し続ける必要がなく、一時的に記憶する領域が設けられるだけでよく、記憶領域を抑えることができる。制御部36は、ある程度のデータ量のデータが蓄積されてからそのデータ送信してもよい。車両走行停止時に制御部36がデータを送信することで、制御部36が車体制御装置と兼用される場合に、走行中の車体制御を優先することができ、処理速度の低下を抑えることができる。情報携帯端末11も、一時的に記憶する領域が設けられることで、公衆通信回線による接続状況が確保される状況まで、送信待機することができ、サーバ12への送信の確実性を高めることができる。
【0055】
遠心力Fcの求め方は前記数式3に限られない。例えば、IMU22により検出される車体5のヨー方向の角度及び角加速度から旋回半径を求め、その旋回半径と車速とから遠心力を求めてもよい。その際、ヨー方向の角加速度から車体5のバンクによる影響を除外するために、ヨー方向の角加速度からロール方向の角加速度の影響を減算しておくとよい。
【0056】
横タイヤ力Fyの求め方も前記数式1に限られない。例えば、後輪4の回転速度の微分値(又はエンジン回転速度の微分値)は、以下の数式4に示すように、後輪4のタイヤにかかる縦タイヤ力Fxに相関する。なお、Tはトルク、Mは慣性モーメント、ωは回転速度である。
【0057】
【数4】
【0058】
そこで、駆動輪速度センサ25で検出される後輪速度(又はエンジン回転数センサ23で検出されるエンジン速度)に基づいて縦タイヤ力Fxを求め、以下の数式5により、後輪4の路面に対する滑りが発生するまでの余裕度FSを求める。数式5中のFLは、以下の数式6により求められる。なお、Tmaxはスリップせずに出力可能な最大トルク(摩擦円)であり、ΔVは後輪速度又はエンジン回転速度の時間微分値である。
【0059】
【数5】
【0060】
【数6】
【符号の説明】
【0061】
1 走行情報管理システム
2 自動二輪車(リーン型乗物)
14 識別情報取得部(識別情報取得器)
32 走行位置履歴取得部(走行位置履歴取得器)
33 横タイヤ力取得部(横力検出器)
34 遠心力取得部(横力検出器)
35 車両情報取得部
36 制御部(制御器)
37 記憶部(記憶器)
38 出力部(出力器)
41,44 走行軌跡(走行位置履歴)
図1
図2
図3
図4