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特許7015168吸入器のためのコンプライアンス支援モジュール
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】吸入器のためのコンプライアンス支援モジュール
(51)【国際特許分類】
   A61M 15/00 20060101AFI20220126BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2017511923
(86)(22)【出願日】2015-08-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2017-09-07
(86)【国際出願番号】 EP2015069781
(87)【国際公開番号】W WO2016030521
(87)【国際公開日】2016-03-03
【審査請求日】2018-08-08
【審判番号】
【審判請求日】2020-09-03
(31)【優先権主張番号】62/043,120
(32)【優先日】2014-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512297125
【氏名又は名称】ノートン (ウォーターフォード) リミテッド
【住所又は居所原語表記】Unit 301 IDA, Industrial Park, Cork Road, Waterford, Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カルデロン オリべラス,エンリケ
(72)【発明者】
【氏名】バック,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】フレミング,フレデリック スコット
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイツェル,ダグラス,イー.
【合議体】
【審判長】千壽 哲郎
【審判官】村上 聡
【審判官】莊司 英史
(56)【参考文献】
【文献】特表平7-509378(JP,A)
【文献】特開2007-289716(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0178872(US,A1)
【文献】国際公開第2013/098334(WO,A1)
【文献】特表平9-508845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マウスピースカバーと、
投与カップと、
閉位置から開位置への前記マウスピースカバーの動作により、前記投与カップに一回分の用量のドライパウダー薬剤を送る薬剤レザバーと
光源と、
前記マウスピースカバーが前記閉位置にある場合に前記光源が第1の状態になるように前記光源を制御し、前記ドライパウダー薬剤が前記薬剤レザバーから前記投与カップに送られると前記光源が第2の状態になるように前記光源を制御し、前記マウスピースカバーが前記閉位置に戻されたときに前記光源が前記第1の状態に戻るように前記光源を制御するプロセッサと、を含む
ことを特徴とする吸入器。
【請求項2】
前記第1の状態はオフであり、前記第2の状態はオンである
ことを特徴とする請求項1に記載の吸入器。
【請求項3】
気圧センサを含み、
前記プロセッサは、前記気圧センサのゼロリーディングを実施し、前記気圧センサの出力に基づいて前記光源が第3の状態になるように前記光源を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の吸入器。
【請求項4】
前記第1の状態はオフであり、前記第2の状態はオンであり、前記第3の状態はオフである
ことを特徴とする請求項3に記載の吸入器。
【請求項5】
前記第3の状態は、当該吸入器からの吸入が成功したことを示す
ことを特徴とする請求項3に記載の吸入器。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記気圧センサの出力が所定の閾値を超える場合に、前記第3の状態になるように前記光源を制御する
ことを特徴とする請求項3に記載の吸入器。
【請求項7】
前記気圧センサの出力は、当該吸入器のマウスピースを通る気流の量に対応する圧力測定値を含む
ことを特徴とする請求項6に記載の吸入器。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記閉位置から前記開位置への前記マウスピースカバーの動作の数に基づいて前記光源が第3の状態になるように、前記光源を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の吸入器。
【請求項9】
前記第3の状態は、当該吸入器において薬剤が残っていないことを示す
ことを特徴とする請求項8に記載の吸入器。
【請求項10】
前記プロセッサは、ユーザが薬剤の投与を行う時であることを示すために、第3の状態になるように前記光源を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の吸入器。
【請求項11】
ユーザに吸入器の状態を示す方法であって、
前記吸入器のマウスピースカバーが閉位置にある場合に、前記吸入器の光源が第1の状態になるように前記光源を制御し、
前記閉位置から開位置への前記マウスピースカバーの動作に応じて、投与カップに一回分の用量のドライパウダー薬剤を送り、
前記ドライパウダー薬剤が前記投与カップに送られたことに応じて、前記光源が第2の状態になるように前記光源を制御し、
前記吸入器の気圧センサのゼロリーディングを実施し、前記吸入器の前記気圧センサから前記吸入器内の圧力低下を示す信号を受け取り、
前記ゼロリーディングの実施後の前記信号が所定の閾値を超えているかを判定し、
前記信号が前記所定の閾値を超えていることに基づいて、前記光源が第3の状態になるように前記光源を制御する
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記第1の状態はオフであり、前記第2の状態はオンであり、前記第3の状態はオフである
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第3の状態は、吸入が成功したことを示す
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記閉位置から前記開位置への前記マウスピースカバーの動作の数に基づいて、前記光源が第4の状態になるように前記光源を制御し、前記第4の状態は、前記吸入器に薬剤が残っていないことを示す
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
ユーザが薬剤の投与を行う時であることを示すために、前記光源が第4の状態になるように前記光源を制御する
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
ユーザが前記吸入器のマウスピースから吸入する場合に、前記吸入器のフローチャネル経由でユーザに薬剤を送る
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項17】
マウスピースと、
マウスピースカバーと、
ドライパウダー薬剤と、
光源と、
プロセッサと、
を含む吸入器であって、
前記プロセッサは、
前記マウスピースカバーが前記マウスピースを覆う閉位置にある場合に前記光源が第1の状態になるように前記光源を制御し、前記マウスピースカバーが開位置に移動することにより当該吸入器内において前記ドライパウダー薬剤の一回分の投与の準備がされ、かつ前記マウスピースが露出したときに前記光源が第2の状態になるように前記光源を制御し、前記マウスピースカバーが前記閉位置に戻されたときに前記光源が前記第1の状態に戻るように前記光源を制御す
ことを特徴とする吸入器。
【請求項18】
前記光源は、前記第1の状態のときはオフであり、前記第2の状態のときはオンである
ことを特徴とする請求項17に記載の吸入器。
【請求項19】
前記閉位置から前記開位置への前記マウスピースカバーの動作により、ユーザへの前記ドライパウダー薬剤の投与の準備がされる
ことを特徴とする請求項17に記載の吸入器。
【請求項20】
投与カップと、
前記閉位置から前記開位置への前記マウスピースカバーの動作に応じて、前記投与カップに前記ドライパウダー薬剤を送る薬剤レザバーと、をさらに含み、
前記プロセッサは、前記ドライパウダー薬剤が前記薬剤レザバーから前記投与カップに送られると前記光源が前記第2の状態になるように前記光源を制御する
ことを特徴とする請求項17に記載の吸入器。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2014年8月28日出願の米国仮特許出願62/043,120の利益を主張するものであり、本明細書においてその内容が参照によって援用される。
【背景技術】
【0002】
インヘラーやプッファーは、肺を経由して体内に薬剤を送達するために用いられる。それらは、例えば、喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療で使用することができる。吸入器の形態には、計量式吸入器(MDIs)、ドライパウダー吸入器(DPIs)およびネブライザーがある。
【0003】
呼吸の薬剤送達における一般的な問題は、患者のアドヒアランスおよびコンプライアンスを測定する方法である。アドヒアランスは、例えば1日あたりに処方された回数の用量を服用しているといったように、調剤ラベルに従って患者を取り扱う。例えば、処方箋が1日あたり2用量を要求し、患者が1日に2用量を服用しているなら、それは100%のアドヒアラントとされる。患者が1日に1用量だけしか服用していないなら、それは50%のアドヒアラントにすぎない。後者の場合、患者は、医者により処方された治療を得ていない。
【0004】
一方、コンプライアンスは、患者がどのように薬剤送達装置を使用するかに関係がある。効果的な治療のために推奨された方法で用いられているなら、それは100%のコンプライアントである。適切に用いられていないなら、それは100%未満のコンプライアントである。吸気感応型吸入器(例えばドライパウダー吸入器(DPI))の使用は、特別の方法で吸入することを必要とする;例えば、吸入は、十分な量の薬剤を運ぶために十分に長くかつ十分に強くする必要がある。何人かの患者(例えば、子供および高齢者)にとって、完全なコンプライアンスの要件を満たすことは困難かもしれない。100%のコンプライアンスを達成しないことは、処方された薬剤の有効性を縮小しうる。
【0005】
患者が、自分が服用量どおりの薬剤を吸入したかどうかを判定し、それにより処方へのコンプライアンスを確認することは困難である。特に、DPIについては、患者は薬剤が吸入されていることにすぐに気付かないかもしれない(例えば、粒子が非常に小さく、感じることができず味もしないので)。患者は、医療効果を理解した後に吸入薬のことを知ればよく、吸入された薬剤の量が処方に適合するかはどうかはまだ知らなくてもよい。
【発明の概要】
【0006】
現在の開示は、一般に、吸入器による薬剤投与のための患者のコンプライアンス支援に関する。例えば、現在の開示は、吸入器が薬剤を投与できる状態になっているとき、および、患者が推奨された服用量を受け取るのに十分に吸入したとき、を示す指標の使用に関する。
【0007】
吸入器は、マウスピースカバー、圧力センサ、第1のインディケータおよび第2のインディケータを含んでもよい。第1のインディケータを第1の光源とし、第2のインディケータを第2の光源としてもよい。第1のインディケータを光源の第1の状態とし、第2のインディケータを光源の第2の状態としてもよい。第1のインディケータは、マウスピースカバーの状態に基づいた表示をするように構成されていてもよい。例えば、第1のインディケータがマウスピースカバーの開状態に基づいて点灯するように構成され、例えば、マウスピースカバーの開状態に基づいて薬剤吸入の準備をしてもよい。例えば、薬剤は、マウスピースカバーの開状態に基づいて、レザバーから投与カップまで運ばれてもよい。第2のインディケータは、圧力センサの出力に基づいた表示をするように構成されていてもよい。例えば、第2のインディケータは、マウスピースまたは吸入器の他の部分における圧力測定値が所定の閾値を超えることで点灯するように構成されていてもよい。所定の閾値は、投与管理に関連していてもよい。
【0008】
吸入器は、マウスピースカバー、圧力センサ、および/または光源を含んでもよい。光源は、マウスピースカバーの状態に基づいた第1のインディケーション、および圧力センサの出力に基づいた第2のインディケーションを提供するように構成されていてもよい。第1のインディケーションおよび第2のインディケーションは、光源の異なる色でもよい。第1のインディケーションおよび第2のインディケーションの少なくとも一方は、光源を点滅させることにより提供されてもよい。吸入器は投与カップを含んでもよい。薬剤は、マウスピースカバーの動作に基づいて、投与カップに送られてもよい。
【0009】
吸入器は、マウスピースカバー、第1の光源および第2の光源を含んでもよい。第1および第2の光源は、マウスピースカバーの状態に基づいて吸入器が吸入の準備ができていることを示し、かつ吸入を示すように構成されていてもよい。第1の光源は、マウスピースカバーが開状態になったことに基づいて、吸入器が吸入の準備ができていることを示すように構成されていてもよい。吸入器は投与カップを含んでもよい。薬剤は、マウスピースカバーの動作に基づいて、投与カップに送られてもよい。第1の光源は、吸入器が直立配向であることに基づいて、吸入器が吸入の準備ができていることを示してもよい。
【0010】
吸入器は、吸入器のマウスピースを通る気流に基づいた出力を提供する、例えばユーザの吸入の示す、ように構成されたセンサを含んでもよい。例えば、第2の光源は、センサの出力に基づいて吸入を示すように構成されていてもよい。第2の光源は、(例えば、センサを使用して)吸入された薬剤の量が所定の閾値に達した(および/または達していない)ことを判定することで、吸入を示すように構成されていてもよい。例えば、第2の光源は、センサの測定値が(例えば、ユーザの吸入を示す)第1閾値に達したことを示すために点滅し、かつセンサの測定値が(例えば、吸入量の薬剤がユーザに送られたことを示す)所定の第2閾値に達したという判定に基づいて点灯するように、構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1Aは、インディケータを備えた吸入器の一例を示す図である。
【0012】
図1Bは、吸入器の部分分解立体図の一例を示す図である。
【0013】
図2A-Cは、吸入器の内部構造上部の一例を示す図である。
【0014】
図3は、吸入器の内部構造の一例を示す図である。
【0015】
図4は、吸入器における電子機器の一例を示す概略図である。
【0016】
図5A-Cは、吸入器における電子機器モジュールの一例を示す図である。
【0017】
図6は、センサを備えた吸入器用マウスピースの構成例を示す断面図である。
【0018】
図7A-7Fは、吸入器が提供するインディケーションの一例を示す図ある。
【0019】
図8は、少なくとも2つのインディケータ(例えば、2つの光源)を用いたコンプライアンス支援方法の一例を示すフローチャートである。
【0020】
図9は、1つのインディケータ(例えば、1つの光源)を用いたコンプライアンス支援方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1Aに、インディケータを備えた吸入器100の一例を示す。吸入器100には、マウスピース170があってもよい。吸入器100には、マウスピース170用のカバー180があってもよい。吸入器100には、ユーザにインディケーションを与えるインディケータ152(例えば、視覚的かつ/または聴覚的なインディケータ)があってもよい。インディケータ152は、2つ以上の光源(例えば、図1Aで示す2つの光源)を含んでもよい。インディケータ152は、例えば、単一の光源でもよい。例えば、単一の光源が、複数のインディケーション(例えば、第1のインディケーションとしての第1の色、第2のインディケーションとしての第2の色)を与えてもよい。インディケータ152は、例えば、ブザーまたはスピーカーのような、聴覚的なインディケータを含んでもよい。インディケータ152は、触覚フィードバックを提供する1以上の装置を含んでもよい。インディケータ152は、吸入器100の状態またはユーザによる吸入の状態を示してもよい。インディケーションは、例えば、吸入を始めるとき、吸入を続けるとき、吸入を止めるとき、および/または投与のリマインダーのとき等をユーザが分かるように、ユーザへの指示を提供してもよい。インディケーションは、1以上の光源を点灯させる、1以上の光源を消灯させる、および/または1以上の光源を点滅させることにより、行なわれてもよい。インディケーションは、複数の色または異なるタイプの点滅によって行なわれてもよい。視覚的なインディケータに関して、インディケータ152は、吸入器100の上部近傍にあってもよい(例えば、図1A参照)。例えば、ユーザが吸入器100の使用中にインディケータを容易に見ることができるように、インディケータ152は、吸入器100の上部近傍にあってもよい。インディケータ152は、インディケーションに関するメッセージ、絵文字および/または色を表示する画面を含んでもよい。インディケータ152は、音または振動を利用してもよい。インディケータ152は、視覚的、聴覚的、触覚的なインディケータの1または組み合わせを提供することができる。
【0022】
図1Bに、例示的な吸入器100の部分分解立体図を示す。マウスピース170は、カバー180を外す(例えば、振り下ろす)ことにより露出されてもよい。マウスピース170の下方への動作が、ヨーク190を押し上げてもよい。ヨーク190は、電子機器モジュールまたはPCB150に達する、垂直のバーでもよい。
【0023】
PCB150は、プロセッサおよびトランスミッタを支えていてもよく、吸入器100の本体上部に組み込まれていてもよい。PCB150のまわりのカラー197は、吸入器100の製造の終わりに、ヨークの上部にクリップで留められてもよい(図示略)。これは、吸入器本体の部品の滅菌後に行われてもよい。これは、滅菌プロセスがPCB150の上の高感度電子部品を破損するおそれがあるので、都合がよいかもしれない。
【0024】
ヨーク190は、マウスピースカバー180が開かれるときに上昇するように構成されていてもよい。これは、ヨーク190の水平上部を押し上げて、タクタイルスイッチ195を閉じてもよい。スイッチ195が閉じるときに、コイン電池のように、PCB150とバッテリー155との間で電気的な接続が形成され、それにより、マウスピースカバー180が開いているときに、PCB150は電力供給される。一例では、PCB150はバッテリー155に常に接続されていてもよいが、スイッチ195を閉じること(あるいは、例えば、光学センサ、加速度センサまたはホール効果センサ等の他のスイッチ手段のアクティベーション)で、消費電力を抑制するスリープモードからPCB150を復帰させてもよい。例えば、PCB150は常時電源が入っていてもよく、かつ、電子機器モジュールの回路はスタンバイ状態になっていてもよい。そして、マウスピースカバー180が開くことで、電子機器モジュールの回路を復帰させてもよい(例えば、電子機器モジュールのスリープモードを解除してフルパワーの状態にする)。インディケータとしての発光ダイオード(LEDs)は、(例えば、任意に色付けされ、)吸入器100の外部、例えば、投与中のユーザに見える位置に示されたウィンドウまたは光導波路を通して、見ることができる。インディケータは、バッテリー155によって電力供給され、かつPCB上のプロセッサによって制御されてもよい。インディケータ152は、例えば、異なる色および点滅の組み合わせによって、例えば、マウスピースカバーが開いた(例えば、その結果、吸入器は投与を許可している)こと、および/または、薬を補充する時期であること、および/または、(例えば、圧力センサ測定のプロセスに応じて)投与が完了した/まだ完了していないこと等、ユーザおよび/または世話人に情報を提供するために、使用されてもよい。
【0025】
図2A-Cに、例示的な吸入器(例えば、吸入器100)の上部の内部構造を示す。ヨーク290は、ベローズ291を支えるヒンジ付マウスピースカバー(図示せず)に連結され、例えば、部分的に適合性のある材料で作られる。図2Aに、カバーが閉じているときのベローズポジションを示す。スプリングアーム292の底部は、ベローズの上部壁のくぼみ293に収容されてもよい。くぼみ293の底部は、スプリングアームが上方に付勢されるように、アーム底部の下表面を押しつけてもよい。これにより、スプリングアーム292の上部がスイッチ295を閉じ、PCB250をスリープモードに維持してもよい。
【0026】
図2Bに、カバーの開放が開始され、ヨーク290およびベローズ291がわずかに上方へ移動したときの配置を示す。スプリングアーム292はスイッチ295と接触し続けてもよい。また、ベローズ材料のコンプライアンスは、くぼみ293の底部が変形して曲がることでスイッチにかけられる、あらゆる付加的な変形を取り除いてもよい。
【0027】
図2Cに、カバーが完全に開いている場合の配置を示す。ヨーク290およびベローズ291は、スプリングアーム292から離れて下方へ移動し、スプリングアーム292は、スイッチ295から離れる。それにより、スイッチ295が開き、PCB250が起動する。
【0028】
図3に、吸入器(例えば、吸入器100)の内部構造の一例を示す。例えば、マウスピースカバーが開くと、レザバーから投与カップまで薬剤が送られてもよい。吸入器300は、スプリング392およびベローズ391を備えていてもよい。カバー380の開放は、スプリング392の加圧または減圧をもたらしてもよい。マウスピース370からカバー380が開くと、スプリング392はベローズ391を加圧してもよい。レザバー378内の薬剤が投与カップ375に流れるように、加圧されたベローズ391が圧力をかけてもよい。レザバー378と投与カップ375の間に、薬剤の流出を許可するホッパーがあってもよい。例えば、カバー380が開いている場合に限り、ホッパーは、レザバー378から投与カップ375への薬剤の移動を許可する位置にスライドしてもよい。ユーザがマウスピース370を使用して吸入する場合、投与カップからの薬剤は、フローチャネル320を流れてもよい。
【0029】
図4は、吸入器(例えば吸入器100)内の電子機器の一例を示す概略図である。吸入器は、電子機器モジュール400を含んでもよい。電子機器モジュール400は、プロセッサ457を備え、さらに、電源455、メモリ445、インディケータ452、スイッチ495、センサ410、および/またはトランシーバー460を備えてもよい。プロセッサ457は、各コンポーネントに接続されてもよい。スイッチ495は、例えば、図1Bに示されているヨークを介してマウスピースに接続されてもよい。スイッチ495は、機械的なスイッチに限定されず、例えば、電気的なスイッチでもよい。センサ410は、吸入器のマウスピース(あるいは吸入器の他の部分)における圧力変化(例えば、圧力差)に関する情報をプロセッサ457に提供してもよい。例えば、センサ410は、プロセッサに瞬間圧力値を提供してもよいし、時間をかけて圧力値を集計してもよい。例えば、圧力値は、最大吸気流、加速度、全体積、総時間および/または同様なものに換算されてもよい。圧力値は、振幅、加速度、体積および/または同様なものの1または組み合わせに換算されてもよい。圧力値(例えば、圧力降下)は、吸入器700の他のところで測定されてもよい。また、吸入器700は、マウスピースの流量を計算してもよい。圧力値で、吸入器のマウスピースを通る気流の量を示してもよく、例えば、ユーザによって吸入される薬剤を示してもよい。そのため、センサ410は、圧力値、マウスピース(または吸入器の他の部分)を通る気流の量、および/またはユーザによって吸入される薬剤、に関係する情報をプロセッサ457に提供してもよい。プロセッサ457は、センサ410を圧力値に基づいて(例えば、1以上のインディケータに関する)判定をしてもよい。例えば、プロセッサ457は、センサ410によって提供された圧力値に基づいて、吸入される空気または薬剤の量を計算してもよい。センサ410は、吸入された空気または薬剤のレベルを計算し、かつプロセッサ457にそれを提供するための、別のプロセッサを備えてもよい。
【0030】
スイッチ495および/またはセンサ410から受け取った情報に基づいて、プロセッサ457は、圧力値(例えば、ユーザが吸入した薬剤を示してもよい)が所定レベルに達したと判定してもよい。プロセッサが圧力値と比較するための、所定レベルに関するルックアップ表があってもよい。所定レベルに達した場合、プロセッサ457は、吸入器の状態を示すために1以上のインディケータ452に信号を送ってもよい。プロセッサ457は、圧力値、圧力値のタイムスタンプ、および/または圧力値に基づいて導き出された情報(例えば、投与量、ユーザに投与された薬剤、ユーザに十分に投与された薬剤、マウスピースを通る気流、等)をメモリに格納してもよい。例えば、プロセッサ457は、ノンリムーバブルメモリおよび/またはリムーバブルメモリのような任意のタイプの適切なメモリから、情報(例えば、薬剤の所定レベルに関するルックアップ表)にアクセスしてもよいし、その中にデータを格納してもよい。ノンリムーバブルメモリは、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、ハードディスク、または他のタイプのメモリ記憶デバイスを含んでもよい。リムーバブルメモリは、加入者識別モジュール(SIM)カード、メモリスティック、セキュアデジタル(SD)メモリカード、等を含んでもよい。プロセッサは、サーバのように吸入器内に物理的に設けられていないメモリから、情報にアクセスしてもよいし、その中にデータを格納してもよい。
【0031】
プロセッサ457は、マイクロコントローラ、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、マイクロプロセッサ、特定用途向けIC(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または任意の適切な制御演算装置、コントローラもしくは制御回路を含んでもよい。プロセッサ457は、内部記憶装置を含んでもよい。プロセッサ457は、電源455から電力を受け取り、吸入器400の他のコンポーネントへの電力配分および/または電力制御を行うように構成されていてもよい。電源は、吸入器に電力を供給するのに適した任意の装置とすることができる。スイッチ495は、プロセッサ457に接続されることなく、電源455に接続されてもよい。電源は、センサ410、メモリ445、インディケータ452およびトランシーバー460の1または複数に直接接続されてもよい。
【0032】
インディケータおよび電子機器モジュールは、吸入器に永続的に付けられてもよい。図1Bに示すように、インディケータおよび電子機器モジュールは、吸入器の上部に位置してもよい。いくつかの実施例では、電子機器モジュールは、異なる場所に位置してもよい。例えば、吸入器は、吸入器の上部にそれをマウントするためのマウント用キャップを備えてもよい。キャップは、インディケータおよびインディケータを制御するための電子機器モジュールを含んでもよい。例えば、マウント用キャップを使用することで、動作に影響を与えることなく既存の吸入器にインディケータを取り付けたり取り外したりすることができる。
【0033】
図5は、インディケータおよび電子機器モジュールが常設か取り外し可能かにかかわらず、電子機器モジュール550(例えば、コンプライアンスモジュール)が吸入器(例えば、吸入器100)の上部にどのように組み込まれているかを示す。電子機器モジュール550は、図4の電子機器モジュール400の一例でもよい。図5Aに、タクタイルスイッチ595を押し上げて開いた、ヨーク(例えば、補強リング)590のデフォルト位置の一例を示す。スイッチ595が開いた状態では、コンプライアンスモジュール550とコイン電池のようなバッテリー555との間に電気的導通はなくてもよい。図5Bに、コンプライアンスモジュール550に電力供給されるように、スイッチ595を下げて閉じ、吸入器の使用が許可されている場合の、補強リング590の位置の一例を示す。
【0034】
図5Cは、図5AおよびBで示された吸入器の製造工程の最終段階を示す。コンプライアンスモジュール550は、吸入器ボデイまで下げられ、そのときにキャップ598は適所に留められてもよい。前の例のように、LEDインディケータ552を備えていてもよい。
【0035】
吸入を検出するためにセンサを使用する方法の一例を以下に示す。以下の例では圧力センサ、特に気圧センサを使用するが、吸入器(例えば吸入器100)は、吸入を測定するために他のタイプのセンサを使用してもよい。
【0036】
肺活量計は、患者の肺によって吸い込まれ吐き出された空気の体積を測定するための装置である。肺活量計は、通気(肺の中への、および肺からの空気の移動)を測定する。肺容量曲線として知られ、肺活量計によって出力された記録波形から、異常な(閉塞性または拘束性のある)通気パターンを識別することができる。肺活量計は、圧力変換器、超音波および水位計を含む様々な異なる測定法を使用してもよい。
【0037】
呼吸と関連する流れを監視するために、圧力センサが便利である。というのも、圧力情報は、流れを測定するために用いることができ、その後に体積を測定するために用いることができるからである。
【0038】
呼吸検出に使用される圧力センサは、患者の気道の一部にわたる圧力差を測定してもよい。これは、管材料あるいは他の適切な導管によって、センサを気道に接続するために、2つのコネクションを使用して行われてもよい。大気にさらされた別のポートとともに、気道に対する1つのコネクションを使用することも可能かもしれない。フローが生じる前と後の両方で気道内の圧力(空気経路抵抗による所望の圧力低下を示す数値の差)が測定される場合、シングルポートゲージタイプのセンサを使用してもよい。
【0039】
使用前後にそれぞれ測定を行う、差異(2ポート)タイプの圧力センサおよびシングルポートゲージタイプのセンサに加えて、絶対圧センサまたは気圧センサを利用してもよい。気圧センサは、真空を参照する。高度は気圧測定値から推測することができるので、これらはときに高度計とも呼ばれる。
【0040】
しかしながら、MEMSとNEMSの技術の導入を含む小型化で、さらに改良されたセンサを現在利用することができる。MEMSの気圧センサは20kPaから110kPaまで動作でき、既知の流体抵抗を有するフローパスに空気圧で接続されたとき、30lpm未満(リットル/分)の流量を検出することができる。
【0041】
気圧のセンサの使用は、測定サイクルを通じてのベースラインとしての大気圧の使用を可能にし、それは、他のシングルポートのアプローチの不確実性に対処することができる。
【0042】
また、局所の気圧の知識を有することで、患者の肺機能への洞察を提供することができる。大気圧の変化が、例えば接近する暴風雨前線と関連するようなそれが、おそらく喘息やCOPDの事象にすら関連する患者の呼吸に影響を与えるかは疑わしい。
【0043】
気圧センサは、すでに圧力が加えられた状態であり、装置内において真空下でシールされた内蔵の参照ポートを有している。これは、それらが関心領域で低いヒステリシスを持っていることを意味する。
【0044】
それらの検出素子の極端に小さいサイズと質量により、MEMSセンサは、極端に小さい圧力変化に対して反応することができる。1Paほどの低い圧力変化を分析できるものもある。
【0045】
例えば、FreescaleMPL3115A2MEMS気圧計/高度計チップ(圧力20センサ)は、デジタルであり、圧力情報をホストマイクロコンピュータへ通信するI2Cインターフェースを使用する。
【0046】
MEMS圧力センサは金属でパッケージされていてもよい。これは、RF遮蔽、および、温度補償に対する良好な熱伝導性を提供する。
【0047】
さらに、MEMS圧力センサは、低価格、低消費電力、および小型である。これは、これらを、例えばコイン電池のようなバッテリーによって電力供給されるような、持ち運び可能および/または使い捨て可能な装置での使用に特に適したものにする。
【0048】
MEMS圧力センサの小さいサイズにより、これらを既存の設計の吸入器に組み込むことが容易になる。これらをマウスピース内またはマウスピースに隣接して組み込んで、患者の吸入または吐出によりもたらされる圧力変化をより正確に測定することがより容易になるであろう。
【0049】
小型気圧センサは、あらゆる種類の管材料を必要としない空気経路への小さな穴だけを用いて、患者の気道に直接的に接続されてよい。これは、エラストマー管材に関連する結露および潜在的な細菌繁殖の可能性を低減する。汚染から検出素子を保護する、例えばジェルシールのような内部シールが含まれてよい。
【0050】
図6に、例示的構成のセンサを備えた吸入器マウスピースの断面図を示す。小型の気圧センサ610は、患者が呼吸するフローチャネル620に対して置かれてもよい。矢印630によって示されるように、気流は実質上軸をなしてもよい。センサポート611は、含気性の(例えば、気密)シール640によって、フローチャネル壁622の開口621と一致してシールされてもよい。(センサポートとフローチャネルの間に含気性の関係がある限り、シールが完全には気密である必要はない。)センサポート611は、フィルタ(例えば、空気浸透性、水不浸透性のフィルタ)を含んでもよい。フローチャネルとシールは、二段階成型加工によって形成されてもよい。電源および他の電子機器への接続を提供するために、圧力センサ610は、プリント回路基板(PCB)650に取り付けられてもよい。
【0051】
小型の圧力センサ(例えば小型の圧力センサ全体)は、例えば、開口621とセンサポート611との間のチャネル周辺のシール640の位置を決める代わりに、フローチャネルに隣接しているチェンバーの内に閉じ込められてもよい。含気性のシールは、センサ設置面の外側に位置し、フローチャネル壁の面部から、センサがマウントされる面(例えば、PCBの構成要素の面)まで、ずっと広がってもよい。
【0052】
MEMSセンサは内蔵の温度補償で利用できる。一例において、外部の熱センサは使用されてもよい。一例において、外部の熱センサは使用されなくてもよい。補償は、測定位置で正しく提供され、補償の精度を増加させてもよい。温度補償内蔵のMEMSセンサは、小型呼吸温度計として機能することもでき、追加の情報を、患者および/またはその世話人へ提供する。センサのハウジングが金属であるなら、感度の高い内部回路が、RF場、例えば携帯電話や近くの外乱と関連するそれから隔てられるだけでなく、センサは、最適な温度補償を提供するために、迅速に局所の温度と平衡になるであろう。
【0053】
吸入器を通じた気流経路中のどこかに、または、気流経路と流体連通するどこかに小型気圧センサを追加することで、コンプライアンスモニタリングが可能となる。というのも、このような小型センサは、患者が適切な方法で(例えば、十分に強くそして十分長く)吸入して一回分の十分な用量の薬剤を受けたか否かを示す十分なデータを収集することができるからである。この情報は、吸入前に薬剤が患者が吸い込むフローチャネルに利用できるようになったことを示す投与量計量システムから生じる信号と組み合わせると、一回分の用量が成功裡に投与されたこと確認するのに十分かもしれない。
【0054】
MEMS圧力センサは、その小さいサイズゆえに、例えばネブライザー、DPIsまたはpMDIsを通じた患者のフローを監視するために用いることができ、したがって、アドヒアランスモニタリングに加えて/代えて、低コストなコンプライアンスモニタリングを容易にし、装置の動作を確認する。モニターされる気道への小さな穴部を通る投与装置に連結されるアクセサリ装置を使用して、あるいは投与装置自体で、前記コンプライアンスモニタリングを実施することができるかもしれない。MEMSセンサの小さいサイズ、高いパフォーマンス、および低コストは、それらを、サイズおよび重量が常に吸入器を持ち運ばなければならないであろうユーザにとって主要な動機となるアプリケーションに理想的に適したものにする。
【0055】
小型圧力センサからの出力がデジタルであるなら、すべての低レベル信号処理は、センサ内でなされてよく、それを外部干渉から遮蔽する。これは、外部回路を有する従来のセンサで挑戦されていたであろうことを、数十オーダーのパスカルの信号で難なくできるようにする。
【0056】
センサは、例えば、ドライパウダー吸入器を動作させる呼吸の中で用いられてもよい。マウスピースを通るユーザによる吸入がドライパウダー薬剤を流入させる装置を通る気流になるように、これらの吸入器が構成されていてもよい。吸入は、さらに外部から吸入器に入る別の気流になってもよい。吸入器は、2つの気流が互いに衝突する渦流室と、より効果的なデリバリーのためのドライパウダー薬剤の集合体を分解するための室壁と、を含んでもよい。
【0057】
例えば、センサは、気圧調節されたエアロゾル吸入器を動作させる呼吸の中で用いられてもよい。これらの吸入器は、調整された用量の薬剤をリリースする手段と、デリバリー手段を動作させることができる前負荷を用いることによって装置をプライミングする手段を含む解除手段と、デリバリー手段の動作を防ぐことができる空気抵抗力とデリバリー手段を動作させて薬剤を投与するため空気抵抗力を解放することができるリリース装置とを用いる手段と、を含む。空気抵抗力は、例えば、ダイアフラム、ピストン形シリンダ、ベローズまたはスプリングを含む機構により、確立される。バルブを通るあるいは羽根機構通過する吸入は、前負荷が薬剤をリリースするエアロゾルバルブを動かすことを可能にする。
【0058】
装置がプライミングされたとき、および/または、エアロゾルバルブが開放するときを測定することにより、そのような吸入器のためにアドヒアランスをモニターすることができるかもしれない。また、MEMS気圧センサの導入することは、吸入器を通る気流経路のどこかでまたは気流経路と流体連通するところのどこかで、装置がプライミングされているときおよび/またはエアロゾルバルブが開放するときを測定する装置ときと組み合わせて、コンプライアンスモニタリングを可能にする。
【0059】
装置をプライミングすることは、デリバリー手段に適用されている前負荷および電子スイッチに適用されている負荷の両方をもたらす。装置をプライミングする場合、プロセッサが電子パルスを受け取るように、このスイッチはプロセッサの入力に接続されてもよい。代替的にまたは追加的に、電子スイッチは、エアロゾルバルブの動きによって動くか、またはエアロゾルバルブに先行してバルブまたは羽根機構の動きによって動くように調整されてもよい。エアロゾルが患者が吸い込むフローチャネルへリリースされる場合、プロセッサが電子パルスを受け取るように、このスイッチはプロセッサの入力に接続されてもよい。スイッチは、例えば、機械的であり、光学的であり、近接度に基づいており、あるいは加速度センサであってもよい。
【0060】
MEMS気圧センサは、経時的に変化しうる環境気圧に応答するので、後に続くセンサ出力信号分析が基準とする最初の測定値に注意を払うべきことに、留意すべきである。自動ゼロ値・ゼロリーディング(例えば、風袋)は、吸入信号をモニタリングする直前に実施されてよい。この値を局所の環境気圧の変化に応答して経時的に変化させることもできるが、治療が数分内に完了されるのであれば、問題を生じさせるようなことは望まれないであろう。第2の気圧計チップが気圧の活動の経過を記録するために用いられてよく、これにより、第1のチップを呼吸検出のためにもっぱら使用することができる。
【0061】
投与が完了する(例えば、肺の体積がピークになる)点は、流れの方向が反転する点に対応してもよい。したがって、圧力センサからのデータが、流れの方向が反転したことを示すとき、プロセッサは、投与が完了したと判定を下してよい。
【0062】
全ての処理が、モジュールによってなされる必要はない。任意のまたは全ての処理が外部データ処理装置へオフロードされてもよい。無線方式(例えばBLEモジュールを含む)が、患者の流れプロファイルを、その後に特定の呼吸パラメータを計算するアプリへ送信するために用いられてよい。吸入器は、それによって、このようなタスクのために必要とされる処理を、例えばスマートフォンプロセッサにオフロードしてもよい。これは、吸入器とってふさわしい最小のフォームファクターを容易にするかもしれない。このアプローチのさらなる利点は、スマートフォンを動かすソフトウェアが吸入器を動かすソフトウェアよりも、より容易に変化させることができることにあるかもしれない。
【0063】
プロセッサは、センサによって集められ、かつプロセッサによって処理された情報を、トランシーバーを通してリモート装置に提供してもよい。トランシーバーは、以下に詳細に記述される。以下例では無線通信を使用するが、吸入器は、ワイヤーの使用を含む他のモードによって通信してもよい。
【0064】
トランシーバーの追加は、それを患者のアドヒアランスおよびコンプライアンスのモニターを可能にし、スマートフォン、タブレットまたはコンピュータのようなユーザ装置に、例えば患者のフロープロフィールを含むような情報の通信を可能にする。情報は、吸入器またはユーザ装置から直接サーバへ送られてもよい。ユーザ装置からのデータは、例えば医者のパーソナルコンピュータ(PC)のような世話人の装置へ通信されてよい。これは、例えばユニバーサルシリアルバス(USB)ポートを経由するといったように、有線接続を用いてなされてもよい。無線技術を用いて、製品のハウジングを著しい方法で干渉することなく、結果を外部へ通信することができる。適切な無線技術は、例えば、IEEE802.11のようなWiFi技術、IEEE802.15のようなメディカルボディエリアネットワーク(MBAN)技術、近距離無線通信(NFC)技術、3Gおよび4Gのような携帯技術、および、Bluetooth(登録商標) Low Energy(BLE)のようなBluetooth(登録商標)技術でよい。無線トランシーバーが、例えばBLEチップの形式で、小型センサに接続され、または、それに組み込まれてもよい。
【0065】
前記無線の接続性は、例えば、装置の作動および/または検出された吸入を、リアルタイムで、日付およびタイムスタンプを共に報告するために、用いられてよい。このデータは、外部で処理されてよく、当該処理の結果が、処方箋が再提出されるべきであると判定されたものであるなら、アラートが、患者および/または世話人および/または薬剤師へ送られてよい。アラートは、1または複数の吸入器のインターフェース(例えばLEDおよび/またはブザー)を経由して、または、テキストメッセージまたはEメールを経由して、提供されてよい。一例として、投与レポートが、予定された投与時間後、所定の期間内に受けられてないなら、リマインダーが、患者および/または世話人へ送られてよい。アラートは、例えば使用頻度が安全閾値を超えているときに、発生されるようにしてもよい。
【0066】
コンプライアンスモジュールは、以下の1または複数と直接的または間接的に通信してもよい:患者のまたは世話人(例えば医者、看護師、薬剤師、家族メンバー、介護人)のユーザ装置(例えばスマートフォンのような携帯電話、タブレット、ラップトップ、デスクトップコンピュータ)、または、例えばヘルスサービスプロバイダーの、吸入器の製造業者の、薬の製造業者の、または、ディストリビュータのサーバ、または、クラウドストレージシステム。当該通信は、インターネットのようなネットワークを経由するものであってよく、例えば患者のスマートフォン上の専用アプリを伴うものでよい。
【0067】
コンプライアンスモニタリング手段(例えば、アドヒアランスを検出するための機械式スイッチのような装置作動センサといった1または複数のセンサ、および、例えば、適切な用量送達ために十分な流れを検出する小型圧力センサといったコンプライアンスレポート手段)、および、コンプライアンスレポート手段(例えば無線トランスミッタまたは有線出力ポート)は、単一のモジュール内に含まれていてもよい。このモジュールは、既存の設計の吸入器またはわずかに修正された設計の吸入器へのアタッチメント用の個別の吸入器の付属品/アップグレート品として売られてもよい。コンプライアンスモニタリングモジュールは、製造中に吸入器に組み込まれてもよい。コンプライアンスモニタリングモジュールは、単一の物理装置内にあってもよい。コンプライアンスモニタリングモジュールは、複合ユニット内にあってもよい。吸入器付属品の場合、そのモジュールは、1または複数の取り付け可能なユニットからなってもよい。吸入器に組み込まれたモジュールの場合、個々の構成要素は、吸入器内または吸入器上の任意の適切な箇所に位置され、一緒にグループ化されるまたはそれらが機能するために必要とされる以上に接続される必要はない。
【0068】
図7A-Fに、吸入器700およびそのインディケーションの様々な状態の一例を示す。図7A-Bに、薬剤を吸入する準備ができることを示す吸入器700の一例を示す。吸入器700は、吸入器100の一例でもよい。ユーザがマウスピースカバー780を開く場合、投与の準備ができていてもよい。例えば、薬剤は、レザバー(例えばレザバー178)から投与カップ(例えば、投与カップ175)に送られてもよい。吸入器700は、「クリック」音を出し、かつ/または吸入器の「投与準備」状態を示すために1つ以上のインディケータ752を点灯させてもよい。例えば、「投与準備」状態を示すために、インディケータ752aは点灯し、かつ、インディケータ752bは切られたまま、点滅している、および/または点灯していてもよい。吸入器700は、カバー780の開放に加えて、またはその代わりに、薬剤投与の準備をするために押されてもよいボタンを含んでもよい。カバー780を開くか、または「投与準備」状態を示すためにボタンを押す場合、吸入器700は、特別の配向(例えば、直立配向)にあってもよい。
【0069】
図7C-Dは、マウスピース770内の圧力測定値が所定の閾値(例えば、最大吸気流、加速度、全体積、総時間、および/または、同様なもの)を超えることを示す吸入器700の一例を示す図である。例えば、図4および6に記載されているように、吸入の量を判定する一実施例に係る方法がここに提供される。吸入器700は、圧力測定値が所定の閾値を超えることを示し、例えば、それはユーザが成功裡に薬剤を吸入したことを示してもよい。例えば、圧力測定値(例えば、圧力降下値)は、吸入器700のどこか他のところで測定されてもよい。また、それにより、吸入器700はマウスピース中のフローを計算してもよい。吸入器700は、吸入が成功したことを示すために、音を出すか、振動するか、あるいは点灯するインディケータを備えてもよい。例えば、インディケータ752aおよびインディケータ752bの両方は、そのようなインディケーションのために点灯してもよい。例えば、インディケータ752aが点灯したままで、インディケータ752bが消灯されてもよい。
【0070】
図7E-Fは、吸入器700がオフであることを示す吸入器700を示す図である。吸入器700は、例えば、ユーザがカバー780を閉じる場合、吸入器がオフであることを示してもよい。吸入器700は、吸入器700がオフである(例えば、電子機器モジュール550の電源が切られる)ことを示すために、「クリック」音を出し、かつ/またはインディケータ752aおよび752bの両方を消してもよい。図示しなかったが、吸入器700は、インディケータ752a、752bと他のものを使用して投与リマインダーインディケーションを提供してもよい。例えば、吸入器は、ユーザが薬剤の投与を行う時であることを示してもよい。例えば、吸入器700は、ユーザが薬剤の投与を行う時であることをユーザに示すために、インディケータ752aおよび/またはインディケータ752bを、特定の点灯パターン、色などで点灯させてもよい。吸入器700は、有効期限消滅時に、ユーザが薬剤の投与を行う時であることを示すための1以上のインディケータを使用させる、タイマー回路を含んでもよい。
【0071】
図8は、オペレーションによる吸入器の状態(例えば吸入器100)を示す例示的なフローチャートである。例えば、吸入器は2つのインディケータ、すなわちインディケータAおよびインディケータB(例えば、第1の光源および第2の光源)を含んでもよい。810で、吸入器カバー(例えば、カバー180)は閉じていてもよく、および/または、インディケータAおよびBは、それぞれ状態A1およびB1でもよい。例えば、インディケータAおよびBは、状態A1およびB1においてオフでもよい。815で、カバーが開いていることを吸入器が(例えば、吸入器の内部のプロセッサによって)検出する場合、820で、インディケータは状態A2およびB2であっても(例えば、変化させても)よい。例えば、インディケータAは状態A2において明るくなってもよい。そして、インディケータBは状態B2においてオフでもよい。825で、(例えば圧力センサによって)吸入器が吸入器の圧力測定値(例えば第1閾値の)を検出する場合、830で、インディケータは状態A3およびB3にあってもよい。例えば、インディケータAは状態A3において点灯してもよい。また、インディケータBは状態B3において点滅してもよい。圧力測定値は、薬剤を吸入するユーザ(によって引き起こされたこと)を示してもよい。圧力測定値は、マウスピースあるいは吸入器の他のところで測定した圧力でもよい。
【0072】
835で、吸入器の圧力測定値が所定量を超過することを吸入器が検出する場合(例えば、ユーザに管理されている薬剤の総量を示してもよい)、840で、インディケータAおよびBは状態A4およびB4にあってもよい。例えば、インディケータAが状態A4において点灯し、かつインディケータBが状態B4において点灯してもよい。845で、カバーが閉じていることを吸入器が検出する場合、810で、インディケータAおよびBは状態A1およびB1にあってもよい。例えば、インディケータAおよびBは、状態A1およびB1においてオフでもよい。1以上の実施例において、吸入器が820から835に移ってもよいように、825と830は省略されてもよい。
【0073】
例示的な状態図は、オフ状態、オン状態および/または点滅状態の任意の組合せである、インディケータAおよびBの状態A1、B1、A2、B2、A3、B3、A4、およびB4を含んでもよい。さらに、インディケータが光源である場合、オン状態および/または点滅状態は、複数の色のうち1以上の色で点灯する光源によって特徴付けられてもよい。インディケータは、異なるパターンの点滅を使用してもよい。例えば、例示的な状態図は、以下のテーブル1で提供される:
【表1】
【0074】
例1では、インディケータAは、状態A1(例えば、カバーが閉じているとき)においてオフであり、状態A2(例えば、投与の準備ができているのを示すこと)においてオンであり、状態A3(例えば、ユーザが吸入している間)においてオンであり、そして状態A4(例えば、投与が行われたとき)においてオンである。例1では、インディケータBは、状態B1、B2およびB3においてオフであり、状態B4においてオンである。例2では、インディケータAは、状態A1においてオフであり、状態A2、A3およびA4においてオンである。例2では、インディケータBは、状態B1においてオフであり、状態B2およびB3において点滅し、状態B4においてオンである。例3では、インディケータAは、状態A1においてオフであり、状態A2、A3およびA4においてオンである。例3では、インディケータBは、状態B1においてオフであり、状態B2およびB3においてオンであり、状態B4においてオフである。例4では、インディケータAは、状態A1においてオフであり、状態A2、A3およびA4においてオンである。例4では、インディケータBは、状態B1においてオフであり、状態B2において点滅し、状態B3においてオンであり、状態B4においてオフである。状態を示す他の方法があってもよい。例えば、インディケータは、マルチ光源および/またはマルチカラーの構成を含んでもよい。
【0075】
吸入器(例えば、吸入器100)は、単一のインディケータ、例えば単一の光源を備えてもよい。インディケータ光源には、複数の色および/または複数のインディケーションモードがあってもよい。例えば、インディケータ光源は、オン、オフ、点滅、および/または複数の色で点灯してもよい。インディケータ光源は、異なるパターンで点滅してもよい。図9は、単一のインディケータ(例えば、インディケータ光源)を備えた吸入器の例示的なフローチャートである。910で、吸入器のカバーは閉じた状態であり、インディケータ光源は状態1である。例えば、インディケータ光源は状態1においてオフでもよい。915で、吸入器が(例えば、吸入器の内部のプロセッサによって)カバーが開いていることを検出する場合、920で、インディケータは状態2であっても(例えば、変化させても)よい。例えば、インディケータは、状態2において点灯または点滅してもよい。(例えば圧力センサによって)吸入器が吸入器の圧力測定値(例えば、第1閾値)を検出する場合、930で、インディケータは状態3であってもよい。例えば、インディケータは、状態3において点灯または点滅してもよい。圧力測定値は、薬剤を吸入するユーザ(によって引き起こされたこと)を示してもよい。
【0076】
935で、吸入器の圧力測定値が所定量を超過することを吸入器が検出する場合(例えば、ユーザに管理されている薬剤の総量を示してもよい)、940で、インディケータは状態4であってもよい。例えば、インディケータは状態4で点灯してもよい。945で、カバーが閉じていることを吸入器が検出する場合、910で、インディケータは状態1であってもよい。例えば、インディケータは状態1においてオフでもよい。1以上の実施例において、吸入器が920から935に移ってもよいように、925と930は省略されてもよい。
【0077】
インディケータは、オン、オフ、点滅、および/または異なる状態を示すために異なる色で点灯してもよい。例えば、インディケータは、緑で状態2を示し、青で状態4を示してもよい。
【0078】
例示的な状態図は、オフ状態、オン状態および/または点滅状態の任意の組合せである、インディケータの状態A1、B1、A2、B2、A3、B3、A4およびB4を含んでもよい。さらに、インディケータが1つの光源である場合、オン状態および/または点滅状態は、複数の色のうち1以上の色で点灯する光源によって特徴付けられてもよい。インディケータは、異なるパターンで点滅してもよい。例えば、例示的な状態図は、以下のテーブル2で提供される:
【表2】
【0079】
例1では、インディケータは、状態A1(例えば、カバーが閉じているとき)においてオフであり、状態2(例えば、投与の準備ができているのを示すこと)において点滅し、状態3(例えば、ユーザが吸入している間)において点滅し、状態4(例えば、投与が管理されているとき)においてオンである。例2では、インディケータは、状態1においてオフであり、状態2、3においてオンであり、状態4においてオフである。例3では、インディケータは、状態1においてオフであり、状態2、3において第1の色でオンし、状態4において第2の色でオンする。例4では、インディケータは、状態A1においてオフであり、状態2において第1の色でオンし、状態3において点滅し、状態4において第2の色でオンする。例5では、インディケータは、状態1、2および3においてオフであり、状態4においてオンである。例6では、インディケータは、状態1においてオフであり、状態2において第1の色でオンし、状態3において第2の色でオンし、状態4において第3の色でオンする。状態を示す他の方法があってもよい。例えば、インディケータは、マルチ光源および/またはマルチカラーの構成を含んでもよい。
【0080】
吸入器(例えば吸入器100)は、例えば、ドーズカウンターによって、レザバーが空であることを判定してもよい。ドーズカウンターは、機械的および/または電気的でもよい。例えば、吸入器の電子機器モジュールは、レザバーが空であることを判定してもよい。一例において、ドーズカウンターは、カバーの操作に基づいて入手可能な投与数を、例えば、投与カップへの薬剤の投与に対応するものを、カウントするように構成されていてもよい。レザバーが空であると吸入器が判定する場合、およびカバーが続いて開かれる場合、吸入器はインディケータをオフ状態にしてもよい。これは、例えば、吸入器の薬剤が不足しているため吸入器が吸入の準備ができないこと、をユーザに示してもよい。吸入器は、ここで示した1または複数のインディケーション技術(例えば、点灯光源、着色光源、点滅光源、1以上のインディケータなど)を使用して、レザバーが空であることを示してもよい。
【0081】
図示しなかったが、ここに提供される例は(例えば、図8-9およびそれに関連する記載および例に関して)、1以上の追加のインディケーションを含んでもよい。例えば、吸入器は、さらにユーザに投与リマインダーインディケーションを提供してもよい。投与リマインダーインディケーションは、ユーザが薬剤の投与を行う時であることを示してもよい。例えば、吸入器は、ユーザに投与リマインダーを提供するために1以上のインディケータ(例えば、光、音、触覚フィードバックなど)を使用してもよい。
【0082】
主として視覚的なインディケータ(例えば、1以上の光源および/または光源の状態)に関して記載したが、ここに記載された1以上の実施例/例は他のインディケータを含んでもよい。例えば、インディケータは、視覚的なインディケータ(例えば、1以上の光源および/または光源の状態)、聴覚的なインディケータ(例えば、1以上のブザー/スピーカーおよび/または音)、および/または触覚フィードバックインディケータ(例えば、1以上の触覚フィードバックデバイスおよび/または触覚フィードバック状態/動作)を含んでもよい。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8
図9