(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】ステアリングホイール
(51)【国際特許分類】
B62D 1/10 20060101AFI20220126BHJP
B60R 21/203 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
B62D1/10
B60R21/203
(21)【出願番号】P 2018051059
(22)【出願日】2018-03-19
【審査請求日】2021-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清原 純一
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】実開平5-016549(JP,U)
【文献】特開2017-218034(JP,A)
【文献】特開2013-082283(JP,A)
【文献】国際公開第2015/098224(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102016108186(DE,A1)
【文献】特開2018-149837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/203
B62D 1/10
B62D 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールの本体部に複数の取付構造によってエアバッグ装置の固定プレートが取り付けられたステアリングホイールであって、
前記取付構造は、
前記エアバッグ装置の固定プレートを貫通し、前記本体部側にフランジ部を有する筒状のガイド部材と、
前記エアバッグ装置の固定プレートに設けられた開口部を横断する位置に固定されたロックばねと、
前記開口部を貫通し、前記ロックばねを乗り越えた位置で前記ロックばねと係止する先端部を有するフックと、
前記ガイド部材と対向して配置され、前記フックの基端部の前記フックの突出方向への移動を規制して保持し、前記ステアリングホイールの本体部に固定される中空の保持部材と、
前記フックを囲んで配置され、その一端が前記ステアリングホイールの本体部又は前記保持部材と当接し、他端が前記ガイド部材のフランジ部に当接し、離反方向に付勢しているリターンスプリングと、を備え、
前記フックの基端部は、凸球面形状の底面を有することを特徴とするステアリングホイール。
【請求項2】
請求項1に記載のステアリングホイールであって、
前記保持部材と前記フックの基端部との間に弾性部材が設けられて、前記基端部が前記弾性部材と当接することを特徴とするステアリングホイール。
【請求項3】
請求項2に記載のステアリングホイールであって、
前記フックの基端部と前記弾性部材との当接状態は、前記基端部及び前記弾性部材のうち少なくとも一方に設けた複数の突起によって当接していることを特徴とするステアリングホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングホイールに関する。より詳しくは、エアバッグ装置をダイナミックダンパとして利用するステアリングホイールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ステアリングシャフトからステアリングホイールに伝わる振動を制振するために、ステアリングホイールと、ステアリングホイールに取り付けられているエアバッグ装置との間にゴム等の弾性部材を介在させ、エアバッグ装置をダイナミックダンパとして使用する技術が知られている。この技術によると、ダイナミックダンパ固有の共振周波数と同一又は近い周波数の振動がステアリングホイールから伝わると、エアバッグ装置が共振してステアリングホイールの振動の一部を相殺する。この相殺により、ステアリングホイールの振動が抑制(制振)される。
【0003】
特許文献1に記載のステアリングホイールの場合、取付部材(スナップピン31)とエアバッグ装置の保持部材(ホーンプレート)に固定するキャップ(コンタクトホルダ33)との間に弾性部材41及びダンパホルダ42を介在させ、さらにホーンを鳴動させるためにエアバッグ装置を押し下げたときに、取付部材に沿って摺動しやすいようにスライダ(ピンホルダ32)を弾性部材と取付部材との間に設けている。そして弾性部材の位置がずれないように、スライダとダンパホルダとで一部に空隙を設けた弾性部材を押し潰し挟持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の構造では、ステアリングホイールに伝わる振動を制振する際、弾性部材を中心にエアバッグ装置が揺動するため、揺動の支点となる弾性部材に負荷が掛かる。この負荷により弾性部材が劣化すると、エアバッグ装置の振幅が劣化前とは変わってしまうことで制振される共振周波数が変化し、ダイナミックダンパの制振性が低下してしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、経年劣化しにくく、制振される共振周波数が変化しにくいダイナミックダンパ機構を備えたステアリングホイールを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様は、ステアリングホイールの本体部に複数の取付構造によってエアバッグ装置の固定プレートが取り付けられたステアリングホイールであって、前記取付構造は、前記エアバッグ装置の固定プレートを貫通し、前記本体部側にフランジ部を有する筒状のガイド部材と、前記エアバッグ装置の固定プレートに設けられた開口部を横断する位置に固定されたロックばねと、前記開口部を貫通し、前記ロックばねを乗り越えた位置で前記ロックばねと係止する先端部を有するフックと、前記ガイド部材と対向して配置され、前記フックの基端部の前記フックの突出方向への移動を規制して保持し、前記ステアリングホイールの本体部に固定される中空の保持部材と、前記フックを囲んで配置され、その一端が前記ステアリングホイールの本体部又は前記保持部材と当接し、他端が前記ガイド部材のフランジ部に当接し、離反方向に付勢しているリターンスプリングと、を備え、前記フックの基端部は、凸球面形状の底面を有するステアリングホイールである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のステアリングホイールは、底面が凸球面形状の基端部を備えるフックの揺動を利用してダイナミックダンパであるエアバッグ装置を揺動させることから、共振周波数が変化しにくく、ダイナミックダンパの性能の安定性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るステアリングホイールの構成を示した側面図であり、(a)は、車両後方から見たときの正面図であり、(b)は、車両幅方向から見たときの側面図である。
【
図2】実施形態に係るステアリングホイールの構成部材を示した分解斜視図である。
【
図3】実施形態に係るステアリングホイールの構成部材を示した分解斜視図である。
【
図4】(a)は、エアバッグ装置の固定プレートを示した斜視図であり、(b)は、取付構造のガイド部材を示した斜視図であり、(c)は、取付構造のロックばねを示した斜視図である。
【
図5】エアバッグ装置の固定プレートとステアリングホイールの本体部との連結状態を説明するための図であり、(a)は、全体斜視図であり、(b)は、車両後方側から見た拡大正面図であり、(c)は、連結に用いられる挿入ピンとステアリングホイールの本体部との位置関係を示した拡大斜視図である。
【
図6】エアバッグ装置の固定プレートに対して取付構造を取り付けた状態を示した拡大斜視図である。
【
図7】エアバッグ装置の固定プレートをステアリングホイールの本体部に取り付けるのに用いられる挿入ピンを示した斜視図である。
【
図9】(a)は、実施形態に係るフックを示した斜視図であり、(b)は、実施形態に係るフックの基端部周辺を拡大して示した拡大斜視図である。
【
図10】エアバッグ装置の固定プレートに対して取付構造を取り付けた状態を示した断面図である。
【
図11】(a)は、変形例に係るフックを示した斜視図であり、(b)は、変形例に係るフックの基端部周辺を拡大して示した拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るステアリングホイールについて説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係るステアリングホイールの構成を示した側面図であり、(a)は、車両後方側から見たときの正面図であり、(b)は、車両幅方向から見たときの側面図である。
図2及び3は、実施形態に係るステアリングホイールの構成部材を示した分解斜視図である。
図4(a)は、エアバッグ装置の固定プレートを示した斜視図であり、
図4(b)は、取付構造のガイド部材を示した斜視図であり、
図4(c)は、取付構造のロックばねを示した斜視図である。
図5は、エアバッグ装置の固定プレートとステアリングホイールの本体部との連結状態を説明するための図であり、(a)は、全体斜視図であり、(b)は、車両後方側から見た拡大正面図であり、(c)は、連結に用いられる挿入ピンとステアリングホイールの本体部との位置関係を示した拡大斜視図である。
図6は、エアバッグ装置の固定プレートに対して取付構造を取り付けた状態を示した拡大斜視図である。なお、本願図面では、適宜、車両後方側(乗員側)を符号「R」で表し、車両前方側を符号「F」で表す。
【0012】
ステアリングホイール100は、ステアリングシャフト200の車両後方側端部に回転可能に取り付けられており、エンジン振動や路面からの振動がステアリングシャフト200を介して伝達される。ステアリングホイール100の骨格を構成する本体部110は、ステアリングシャフト200と結合される芯金111と、芯金111を取り囲む環状のリム112と、芯金111とリム112とを連結するスポーク113を有する。この本体部110の車両後方側の中央には、エアバッグ装置20が取り付けられている。また、本体部110には、車両後方側にガーニッシュ130が取り付けられ、車両前方側にロアカバー150が取り付けられている。
【0013】
エアバッグ装置20は、外表面を構成するカバー21内に、折り畳まれた袋状のエアバッグ(図示せず)と、車両衝突時に該エアバッグを膨張展開させるためのインフレータ(ガス発生装置)27とを収納している。
図3に示したように、インフレータ27は、固定プレート25を挟みこんで、挟込プレート23と連結される。すなわち、挟込プレート23に設けられた突出ねじ23aが、インフレータ27の外縁に設けられたフランジ部27aの開口を通り、ナット28で締め付けられている。
【0014】
エアバッグ装置20の固定プレート25は、3つの取付構造50を介して、ステアリングホイール100の本体部110(芯金111)に取り付けられる。各取付構造50は、スナップフィット構造を有し、これによりエアバッグ装置20をステアリングホイール100に容易に組み付けることができる。スナップフィット構造は、一端にフランジ部を有する筒状のガイド部材51とロックばね53とを保持側部材として含み、フックを備える挿入ピン60を挿入側部材として含む。挿入ピン60のフックが、本体部110に設けられた開口111aを貫通した状態で保持側部材と結合する。ガイド部材51は、固定プレート25を貫通しており、固定プレート25の本体部110側(車両前方側)の面に、ガイド部材51のフランジ部52が当接し、固定プレート25の車両後方側に、ロックばね53を通す開口が設けられている。ロックばね53は、閉状態に復元する力が働く開閉構造を有する部材であり、固定プレート25の本体部110側(車両前方側)から挿入ピン60が差し込まれた際に加わる力で開状態となる。ロックばね53は、固定プレート25に設けられた開口部25aを横断する位置に固定されている。具体的には、ロックばね53を、固定プレート25と平行方向に、かつガイド部材51の開口を通ってガイド部材51を横断するように配置している。筒状のガイド部材51には、固定プレート25の本体部110側(車両前方側)から、挿入ピン60が差し込まれ、フックの先端部がガイド部材51内に配置される。これにより、フックの先端部は、固定プレート25の開口部25aを貫通し、ロックばね53を乗り越えた位置でロックばね53と係止する。その結果、ステアリングホイール100の本体部110に対して、エアバッグ装置20の固定プレート25がスナップフィット構造を用いて連結される。
【0015】
図7は、エアバッグ装置の固定プレートをステアリングホイールの本体部に取り付けるのに用いられる挿入ピンを示した斜視図である。
図8は、
図7の挿入ピンの分解斜視図である。
図9(a)は、実施形態に係るフックを示した斜視図であり、
図9(b)は、実施形態に係るフックの基端部周辺を拡大して示した拡大斜視図である。挿入ピン60は、螺旋状のリターンスプリング61、環状の弾性部材63、フック70、及び、上方が開口した中空の保持部材67を互いに組み合わせて形成されるものである。
【0016】
リターンスプリング61は、コイルばねであり、フック70を囲んで配置され、その一端がステアリングホイール100の本体部110に固定された保持部材67と当接し、他端がガイド部材51のフランジ部52に当接している。保持部材67とガイド部材51とは対向して配置されており、リターンスプリング61によって、保持部材67とガイド部材51とが離反する方向に付勢されている。すなわち、リターンスプリング61は、エアバッグ装置20の固定プレート25がステアリングホイール100から離反するように当接している。フック70の先端部が筒状のガイド部材51の中でロックばね53と係止することで、エアバッグ装置20の固定プレート25とステアリングホイール100の位置関係が維持される。
【0017】
フック70は、略円盤状の基端部71の一方の側から、略棒状の突出部73が突出した構造を有する。突出部73の先端には、鉤状の先端部75が設けられ、ロックばね53と係止するために用いられる。また、突出部73の基端部71近傍の外周には、環状突起(リブ)78が設けられている。基端部71の突出部73側には、突出部73よりも低い嵌合用突起72及び線状突起(リブ)77が設けられている。
【0018】
挿入ピン60の組み立て状態において、フック70の突出部73は、リターンスプリング61及び弾性部材63の中心の空洞64を貫通する。フック70の嵌合用突起72は、弾性部材63に設けられた開口65に嵌合し、フック70と弾性部材63の位置決めに用いられる。フック70に装着された弾性部材63は、線状突起77及び環状突起78と当接し、突出部73の本体との間には僅かな間隙が設けられる。また、弾性部材63を装着したフック70には、基端部71の側方及び下方を覆うように保持部材67が取り付けられる。保持部材67は、180°回転したときに同形状(2回対称)である一対の保持部材用部品67a及び67bを結合させることで形成される。
【0019】
図10は、エアバッグ装置の固定プレートに対して取付構造を取り付けた状態を示した断面図である。図中の矢印は、リターンスプリング61による付勢力の作用方向を示している。図示のように、フック70は、金属製の芯材70bの表面を樹脂製の表層材70aで覆った構造を有する。すなわち、フック70は、金型内に、鉄等の金属製の芯材70bを固定した状態で、樹脂を注入し、硬化させることにより形成することができる。このような構造とすることで、ロックばね53と係止する先端部75の形状や、弾性部材63と当接する線状突起77及び環状突起78の形状等の加工に求められる精度を確保することができる。
【0020】
上述したように、エアバッグ装置20の固定プレート25には、取付構造50の保持側部材であるガイド部材51及びロックばね53が取り付けられている。車両前方側から進入したフック70の先端部75が、ロックばね53を乗り越えて係止することで、フック70が固定プレート25と連結されることになる。
【0021】
フック70の基端部71は、リターンスプリング61が離反方向に付勢しているため、フック70の突出方向への移動を規制された状態で、保持部材67に保持されている。基端部71を保持する保持部材67は、ステアリングホイール100の本体部110(芯金111)との嵌合により固定されていることから、フック70はステアリングホイール100とも連結されている。したがって、フック70を介して、エアバッグ装置20の固定プレート25が、ステアリングホイール100に連結されている。そして、フック70が揺動可能に保持されていることで、エアバッグ装置20をダイナミックダンパとして機能させることができる。
【0022】
以上の構成により、通常時は、リターンスプリング61によってエアバッグ装置20が持ち上げられたような状態となる。また、エアバッグ装置20の作動時には、エアバッグが膨張展開する勢いによってエアバッグ装置20が車両後方側(乗員側)に引っ張られる。その際にロックばね53とフック70とが係止していることにより、エアバッグ装置20の脱落が防止される。
【0023】
フック70の基端部71は、凸球面形状の底面71aを有する。ここで、「凸球面形状」とは、フック70の揺動(首振り)が保持部材67により妨げられないようにするためのものであり、そのような効果が得られる限りにおいて、フック70の基端部71の底面形状は厳密な球面に限定されるものではない。
【0024】
フック70の基端部71の底面71aは、保持部材67と当接していてもよいが、フック70の基端部71の底面71aと保持部材67との間にスペースSが設けられることにより、フック70の揺動時の可動域を大きくすることができる。フック70の通常の揺動時に、フック70の基端部71の底面71aと保持部材67とが当接しないことが好ましい。
【0025】
また、エアバッグ装置20の固定プレート25とステアリングホイール100の本体部110とにはホーン接点が設けられ、乗員がエアバッグ装置20を押圧することでホーン接点同士が接触し、ホーンを鳴動する構成であることが好ましい。フック70の組付けを円滑に行う観点からは、上記スペースSの大きさは、ホーン接点同士の間隔よりも小さいことが好ましい。
【0026】
フック70は、嵌合用突起72、線状突起77及び環状突起78によって弾性部材63と部分的に当接する。このため、フック70の揺動のエネルギーを弾性部材63に吸収させることで、制振を促進することができる。弾性部材63には開口65が設けられていることから、開口65の変形を利用して弾性部材63を歪ませることができる。
【0027】
本実施形態では、ステアリングホイール100に振動が伝わった際、その振動はステアリングホイール100の本体部111と当接しているフック70の基端部71を介して、ロックばね53と係止しているフック70の先端部75にも伝わる。この係止部分は、フック70の先端部75とロックばね53とが強干渉するようにリターンスプリング61が付勢しているため、フック70は、凸球面形状の基端部71を中心に揺動する。フック70自身が揺動することで、ロックばね53及びガイド部材51を介してエアバッグ装置20の固定プレート25が揺動し、エアバッグ装置20がダイナミックダンパとして作用する。このとき、フック70は、ステアリングホイール110のように剛性がある部材と当接して揺動するため劣化しにくく、フック70の揺動、すなわち、エアバッグ装置25の振幅(周波数)が経時的に変化することを防止できる。
【0028】
なお、特許文献1に記載の構造では、ステアリングホイールに伝わる振動を制振する際、弾性部材を中心にエアバッグ装置が揺動する。このため、共振周波数の調整(チューニング)は、弾性部材の硬さにより調整していた。そして、制振する際に揺動の支点となる弾性部材に負荷が掛かるだけでなく、ホーン使用時にも弾性部材に負荷が掛かる構造であったため、負荷によって弾性部材の変形や変質のような劣化が生じやすかった。その結果、エアバッグ装置の振幅が劣化前とは変わってしまうことで制振される共振周波数が変化し、ダイナミックダンパの制振性が低下してしまうことがある。これに対して、本実施形態では、フック70の基端部71の形状によって揺動の支点が決まるため、共振周波数が変化しにくく、ダイナミックダンパの性能が安定する。また、本実施形態では、ホーンの機能は、リターンスプリング61を圧縮したときに、エアバッグ装置20の固定プレート25とステアリングホイール100の本体部110とに設けた接点同士が接触するように設計することができる。よって、ダイナミックダンパの制振性の劣化を防止しつつホーンの機能を確保することができる。
【0029】
本実施形態では、保持部材67とフック70の基端部71との間に弾性部材63が設けられているため、基端部71は弾性部材63と当接しており、揺動したフック70が保持部材67と当接して異音を発生させることを防止できる。また、特許文献1に記載の構造とは異なり、弾性部材63の硬さは、弾性部材63とフック70の揺動の支点との距離に応じて調整することが可能であり、通常、支点との距離が近い場合には柔らかくされ、支点との距離が遠い場合には硬くされる。
【0030】
本実施形態では、フック70の基端部71が線状突起77及び環状突起78等によって弾性部材63と点接触で当接することで、フック70の揺動が抑制されにくい。フック70の揺動が抑制されることを防止する観点からは、点接触用の突起は、基端部71及び弾性部材63のうち少なくとも一方に設ければよく、弾性部材63よりも劣化しにくい樹脂製の表層材70aで構成される基端部71側に設けられることが好ましい。
【0031】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に記載された内容に限定されるものではない。各実施形態に記載された構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜削除されてもよいし、追加されてもよいし、変更されてもよいし、組み合わされてもよい。
【0032】
(変形例)
取付構造の構成は、
図10に示したものに限定されない。
図11(a)は、変形例に係るフックを示した斜視図であり、
図11(b)は、変形例に係るフックの基端部周辺を拡大して示した拡大斜視図である。変形例に係るフック80は、
図9に示した線状突起(リブ)77に代えて、基端部71上に点状突起(エンボス)83が設けられており、
図9に示した環状突起(リブ)78に代えて、突出部73の外周に点状突起(エンボス)84が設けられている。このようなエンボスタイプのフック80を備える変形例の取付構造によっても、弾性部材63と点接触で当接することができ、リブタイプのフック70を備える実施形態の取付構造と同様の効果が得られる。
【0033】
また、
図10において、リターンスプリング61は、その一端がステアリングホイール100の本体部110に固定された保持部材67と当接しているが、リターンスプリング61の一端がステアリングホイール100の本体部110に当接するように構成されていてもよい。
【0034】
図10においては、フック70の凸球面形状の基端部71の底面71aが保持部材67の底面と対向しているが、保持部材は、フックを保持できるように中空とされていればよく、底面を有さない筒状であってもよい。保持部材が底面を有さない場合、フック70の凸球面形状の基端部71は、ステアリングホイール100の本体部110と対向してもよい。
【0035】
また、エアバッグ装置20の固定プレート25は、一般的に金属製であるが、樹脂製とする場合には、固定プレート25と取付構造50のガイド部材51とを一体的に形成することも可能である。
【符号の説明】
【0036】
20:エアバッグ装置
21:カバー
23:挟込プレート
23a:突出ねじ
25:固定プレート
25a:開口部
27:インフレータ
27a:フランジ部
28:ナット
50:取付構造
51:ガイド部材
52:フランジ部
53:ロックばね
60:挿入ピン
61:リターンスプリング
63:弾性部材
64:空洞
65:開口
67:保持部材
67a、67b:保持部材用部品
70、80:フック
70a:表層材
70b:芯材
71:基端部
71a:底面
72:嵌合用突起
73:突出部
75:先端部
77:線状突起
78:環状突起
83、84:点状突起
100:ステアリングホイール
110:本体部
111:芯金
111a:開口
112:リム
113:スポーク
130:ガーニッシュ
150:ロアカバー
200:ステアリングシャフト
S:スペース