(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】鞍乗車両用エンジンの冷却水流路構造
(51)【国際特許分類】
F02F 1/38 20060101AFI20220126BHJP
F01P 3/02 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
F02F1/38 B
F01P3/02 F
(21)【出願番号】P 2018099043
(22)【出願日】2018-05-23
【審査請求日】2020-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成岡 翔平
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-239184(JP,A)
【文献】特開平09-021348(JP,A)
【文献】実開平02-063052(JP,U)
【文献】特開2014-025349(JP,A)
【文献】特開2017-066997(JP,A)
【文献】特開2010-151118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/36~ 1/40
F01P 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダブロックと、前記シリンダブロックに取り付けられて複数の燃焼室を形成するシリンダヘッドとを有し、前記複数の燃焼室の各々に、複数の吸気バルブ、複数の排気バルブ、および点火プラグが設けられた、鞍乗車両用エンジンの冷却水流路構造であって、
前記シリンダヘッドに形成された冷却室と、
前記排気バルブが挿通される孔を形成し、前記冷却室を貫通する排気バルブ挿通壁と、
前記吸気バルブが挿通される孔を形成し、前記排気バルブ挿通壁より後方において前記冷却室を貫通する吸気バルブ挿通壁と、
前記点火プラグが挿通される孔を形成し、前記排気バルブ挿通壁と前記吸気バルブ挿通壁との間において前記冷却室を貫通する点火プラグ挿通壁と、
前記排気バルブ挿通壁より前方において、前記冷却室に冷却水を流入させる冷却水入口と、
前記吸気バルブ挿通壁より後方において、前記冷却室から冷却水を流出させる冷却水出口と、
前記冷却室内に形成され、前記点火プラグの軸線方向から見て隣接する前記燃焼室の間で前後方向に延びる主流路と、
前記点火プラグの軸線方向から見て、後方に延びる略V字状に形成され、前記主流路を塞ぐ閉塞壁と、
前記シリンダブロックと前記シリンダヘッドとを締結する締結用ボルトが挿通される孔を前記吸気バルブ挿通壁より後方に形成し、前記冷却室を貫通する締結用ボスと、を備え、
前記閉塞壁は、隣接する前記燃焼室に対応した前記吸気バルブ挿通壁の各々と、前記締結用ボスとを連結して、前記点火プラグの軸線方向から見て略V字状に形成される、鞍乗車両用エンジンの冷却水流路構造。
【請求項2】
前記燃焼室の各々における前記排気バルブ挿通壁と前記吸気バルブ挿通壁の間に形成された、前記主流路につながる支流路を備え、
前記閉塞壁は、前記点火プラグ挿通壁より後方において前記主流路を塞ぐ、請求項1に記載の鞍乗車両用エンジンの冷却水流路構造。
【請求項3】
前記複数の燃焼室の数は3つ以上であり、前記主流路は2つ以上の流路を含み、
前記閉塞壁は、前記主流路が含む流路の中で前記冷却水出口に最も近い位置にある流路に設けられる、請求項1または2に記載の鞍乗車両用エンジンの冷却水流路構造。
【請求項4】
前記複数の燃焼室の数は3つ以上であり、前記主流路は、第1主流路および第2主流路を含み、
前記閉塞壁は、前記点火プラグ挿通壁より後方において前記第1主流路を塞ぐ第1閉塞壁と、前記点火プラグ挿通壁より前方において前記第2主流路を塞ぐ第2閉塞壁と、を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の鞍乗車両用エンジンの冷却水流路構造。
【請求項5】
シリンダブロックと、前記シリンダブロックに取り付けられて複数の燃焼室を形成するシリンダヘッドとを有し、前記複数の燃焼室の各々に、複数の吸気バルブ、複数の排気バルブ、および点火プラグが設けられた、鞍乗車両用エンジンの冷却水流路構造であって、
前記シリンダヘッドに形成された冷却室と、
前記排気バルブが挿通される孔を形成し、前記冷却室を貫通する排気バルブ挿通壁と、
前記吸気バルブが挿通される孔を形成し、前記排気バルブ挿通壁より後方において前記冷却室を貫通する吸気バルブ挿通壁と、
前記点火プラグが挿通される孔を形成し、前記排気バルブ挿通壁と前記吸気バルブ挿通壁との間において前記冷却室を貫通する点火プラグ挿通壁と、
前記排気バルブ挿通壁より前方において、前記冷却室に冷却水を流入させる冷却水入口と、
前記吸気バルブ挿通壁より後方において、前記冷却室から冷却水を流出させる冷却水出口と、
前記冷却室内に形成され、前記点火プラグの軸線方向から見て隣接する前記燃焼室の間で前後方向に延びる主流路と、
前記主流路を塞ぐ閉塞壁と、を備え、
前記複数の燃焼室の数は3つ以上であり、前記主流路は、第1主流路および第2主流路を含み、
前記閉塞壁は、前記点火プラグ挿通壁より後方において前記第1主流路を塞ぐ第1閉塞壁と、前記点火プラグ挿通壁より前方において前記第2主流路を塞ぐ第2閉塞壁と、を含み、
前記冷却水流路構造は、
前記複数の燃焼室に夫々つながる複数の排気ポートと、
前記複数の排気ポートに夫々二次エアを供給するための供給路を形成する、対応する前記排気バルブ挿通壁に前記主流路に面して突設された、前記冷却室を貫通する複数の二次エア供給壁を備え、
前記第2閉塞壁は、前記複数の二次エア供給壁のうち、前記主流路を挟んで対向する前記二次エア供給壁同士を連結する
、鞍乗車両用エンジンの冷却水流路構造。
【請求項6】
前記閉塞壁は、前記点火プラグの軸線方向から見て、後方に延びる略V字状に形成される、請求
項5に記載の鞍乗車両用エンジンの冷却水流路構造。
【請求項7】
シリンダブロックと、前記シリンダブロックに取り付けられて複数の燃焼室を形成するシリンダヘッドとを有し、前記複数の燃焼室の各々に、複数の吸気バルブ、複数の排気バルブ、および点火プラグが設けられた、鞍乗車両用エンジンの冷却水流路構造であって、
前記シリンダヘッドに形成された冷却室と、
前記排気バルブが挿通される孔を形成し、前記冷却室を貫通する排気バルブ挿通壁と、
前記吸気バルブが挿通される孔を形成し、前記排気バルブ挿通壁より後方において前記冷却室を貫通する吸気バルブ挿通壁と、
前記点火プラグが挿通される孔を形成し、前記排気バルブ挿通壁と前記吸気バルブ挿通壁との間において前記冷却室を貫通する点火プラグ挿通壁と、
前記排気バルブ挿通壁より前方において、前記冷却室に冷却水を流入させる冷却水入口と、
前記吸気バルブ挿通壁より後方において、前記冷却室から冷却水を流出させる冷却水出口と、
前記冷却室内に形成され、前記点火プラグの軸線方向から見て隣接する前記燃焼室の間で前後方向に延びる主流路と、
前記主流路を塞ぐ閉塞壁と、を備え、
前記複数の燃焼室の数は3つ以上であり、前記主流路は、第1主流路および第2主流路を含み、
前記閉塞壁は、前記点火プラグ挿通壁より後方において前記第1主流路を塞ぐ第1閉塞壁と、前記点火プラグ挿通壁より前方において前記第2主流路を塞ぐ第2閉塞壁と、を含み、
前記冷却水流路構造は、
前記複数の燃焼室に夫々つながる複数の排気ポートと、
前記複数の排気ポートに夫々二次エアを供給するための供給路を形成する、対応する前記排気バルブ挿通壁に前記主流路に面して突設された、前記冷却室を貫通する複数の二次エア供給壁を備え、
前記第2閉塞壁は、前記複数の二次エア供給壁のうち、前記主流路を挟んで対向する前記二次エア供給壁同士を連結し、
前記閉塞壁は、前記点火プラグの軸線方向から見て、後方に延びる略V字状に形成され、
前記冷却水流路構造は、
前記シリンダブロックと前記シリンダヘッドとを締結する締結用ボルトが挿通される孔を前記吸気バルブ挿通壁より後方に形成し、前記冷却室を貫通する締結用ボスを備え、
前記閉塞壁は、隣接する前記燃焼室に対応した前記吸気バルブ挿通壁の各々と、前記締結用ボスとを連結して、前記点火プラグの軸線方向から見て略V字状に形成される
、鞍乗車両用エンジンの冷却水流路構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車等の鞍乗車両用エンジンの冷却水流路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動二輪車等の鞍乗乗物のエンジンでは、シリンダブロックおよびシリンダヘッドの内部に冷却水を通過させる冷却水通路(ウォータージャケット)を設けたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シリンダヘッドのウォータージャケットに流入した冷却水は、受熱の大きな点火プラグ近傍をできるだけ効率よく冷却することが望まれる。
【0005】
そこで、本発明は、鞍乗車両用エンジンにおけるシリンダヘッドを冷却する冷却効率を向上することができる、鞍乗車両用エンジンの冷却水流路構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の鞍乗車両用エンジンの冷却水流路構造によれば、シリンダブロックと、前記シリンダブロックに取り付けられて複数の燃焼室を形成するシリンダヘッドとを有し、前記複数の燃焼室の各々に、複数の吸気バルブ、複数の排気バルブ、および点火プラグが設けられた、鞍乗車両用エンジンの冷却水流路構造であって、前記シリンダヘッドに形成された冷却室と、前記排気バルブが挿通される孔を形成し、前記冷却室を貫通する排気バルブ挿通壁と、前記吸気バルブが挿通される孔を形成し、前記排気バルブ挿通壁より後方において前記冷却室を貫通する吸気バルブ挿通壁と、前記点火プラグが挿通される孔を形成し、前記排気バルブ挿通壁と前記吸気バルブ挿通壁との間において前記冷却室を貫通する点火プラグ挿通壁と、前記排気バルブ挿通壁より前方において、前記冷却室に冷却水を流入させる冷却水入口と、前記吸気バルブ挿通壁より後方において、前記冷却室から冷却水を流出させる冷却水出口と、前記冷却室内に形成され、前記点火プラグの軸線方向から見て隣接する前記燃焼室の間で前後方向に延びる主流路と、前記主流路を塞ぐ閉塞壁と、を備える。
【0007】
点火プラグは、複数の吸気バルブと複数の排気バルブとにより前後方向に挟まれた位置にあるため、通常、前後方向に延びる主流路を流れる冷却水は、点火プラグ挿通壁に接触しにくい。上記構成によれば、主流路を前後方向に流れる冷却水が、当該主流路を塞ぐ閉塞壁に堰き止められて、横方向に対流する。これにより、冷却室内に横方向の流れを生じさせて、点火プラグ挿通壁に接触させやすくする。従って、鞍乗車両用エンジンにおけるシリンダヘッドの冷却効率を向上することができる。
【0008】
また、上記の構成において、前記燃焼室の各々における前記排気バルブ挿通壁と前記吸気バルブ挿通壁の間に形成された、前記主流路につながる支流路を備え、前記閉塞壁は、前記点火プラグ挿通壁より後方において前記主流路を塞いでもよい。この構成によれば、冷却水は、点火プラグ挿通壁より後方において閉塞壁に堰き止められると、排気バルブ挿通壁と吸気バルブ挿通壁の間の支流路へと迂回する。すなわち、閉塞壁に堰き止められた冷却水を、積極的に排気バルブ挿通壁と吸気バルブ挿通壁の間の点火プラグ挿通壁に接触させることができる。
【0009】
また、上記の構成において、前記複数の燃焼室の数は3つ以上であり、前記主流路は2つ以上の流路を含み、前記閉塞壁は、前記主流路が含む流路の中で前記冷却水出口に最も近い位置にある流路に設けられてもよい。この構成によれば、閉塞壁が、主流路が含む流路の中で冷却水出口に最も近い位置に流路に設けられるため、より効率よく冷却室内に横方向の流れを生じさせることができる。
【0010】
また、上記の構成において、前記複数の燃焼室の数は3つ以上であり、前記主流路は、第1主流路および第2主流路を含み、前記閉塞壁は、前記点火プラグ挿通壁より後方において前記第1主流路を塞ぐ第1閉塞壁と、前記点火プラグ挿通壁より前方において前記第2主流路を塞ぐ第2閉塞壁と、を含んでもよい。この構成によれば、第1閉塞壁が、第1主流路を流れる冷却水を点火プラグより後方にて堰き止め、第2閉塞壁が、第2主流路を流れる冷却水を点火プラグより前方にて堰き止める。このため、冷却室内で横方向の流れが生じる箇所を分散させて、効率よく冷却室内に横方向の流れを生じさせるとともに、冷却室内の圧力損失を低減することができる。
【0011】
また、上記の構成において、前記複数の燃焼室に夫々つながる複数の排気ポートと、前記複数の排気ポートに夫々二次エアを供給するための供給路を形成する、対応する前記排気バルブ挿通壁に前記主流路に面して突設された、前記冷却室を貫通する複数の二次エア供給壁を備え、前記第2閉塞壁は、前記複数の二次エア供給壁のうち、前記主流路を挟んで対向する前記二次エア供給壁同士を連結してもよい。この構成によれば、主流路を閉塞するのに二次エア供給壁を利用するため、冷却室内の圧力損失を低減することができる。
【0012】
また、上記の構成において、前記閉塞壁は、前記点火プラグの軸線方向から見て、後方に延びる略V字状に形成されてもよい。この構成によれば、主流路における閉塞壁の後方において、冷却水のよどみを生じにくくすることができる。
【0013】
また、上記の構成において、前記シリンダブロックと前記シリンダヘッドとを締結する締結用ボルトが挿通される孔を前記吸気バルブ挿通壁より後方に形成し、前記冷却室を貫通する締結用ボスを備え、前記閉塞壁は、隣接する前記燃焼室に対応した前記吸気バルブ挿通壁の各々と、前記締結用ボスとを連結して、前記点火プラグの軸線方向から見て略V字状に形成されてもよい。この構成によれば、主流路を閉塞するのに締結用ボスを利用するため、冷却室内の圧力損失を低減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、鞍乗車両用エンジンにおけるシリンダヘッドを冷却する冷却効率を向上することができる、鞍乗車両用エンジンの冷却水流路構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る冷却水流路構造を有する鞍乗車両用エンジンの概略構成図である。
【
図2】
図1に示す鞍乗車両用エンジンのシリンダブロックの横断面図である。
【
図3】
図1に示す鞍乗車両用エンジンのシリンダヘッドの横断面図である。
【
図4】変形例に係る冷却水流路構造を有する鞍乗車両用エンジンのシリンダヘッドの横断面図である。
【
図5】本実施形態と比較するために示された、閉塞壁を有さないシリンダヘッドの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に、本発明の一実施形態に係る冷却水流路構造20を有する鞍乗車両用エンジン1の概略構成図を示す。鞍乗車両用エンジン1(以下、「エンジン」と呼ぶ。)は水冷式であり、冷却水流路構造20は、冷却水を用いてエンジン1が有する燃焼室7を冷却する構造である。鞍乗型車両は、例えば自動二輪車であり、以下に記載する各方向は、自動二輪車の搭乗者から見た各方向を基準とする。
【0017】
(エンジンの構成)
まずエンジン1の構成について説明する。エンジン1は、例えば4ストロークエンジンである。エンジン1は、シリンダブロック2とシリンダヘッド3とを備える。シリンダブロック2とシリンダヘッド3との合わせ面の間には、ガスケット4が設けられる。シリンダブロック2は、クランクシャフト5と、クランクシャフト5の軸方向に一列で配列された4つのシリンダ6を有する。
【0018】
シリンダヘッド3がガスケット4を挟むようにシリンダブロック2に取り付けられることにより、各シリンダ6がシリンダヘッド3によって閉塞されて、燃焼室7が形成されている。具体的には、各シリンダ6には、ピストン8が摺動可能に収容され、各ピストン8とシリンダヘッド3の間に燃焼室7が形成されている。ピストン8は、コンロッド9によりクランクシャフト5と連結されている。
【0019】
シリンダヘッド3は、各燃焼室7に吸気を供給するための吸気ポート11と、燃焼室7から排気を排出するための排気ポート12とを有する。吸気ポート11は、シリンダヘッド3の後部に設けられており、排気ポート12は、シリンダヘッド3の前部に設けられている。複数の燃焼室7の各々には、左右方向に並ぶ2つの吸気バルブ13と、左右方向に並ぶ2つの排気バルブ14と、1つの点火プラグ15が設けられている。
【0020】
吸気バルブ13は、シリンダヘッド3の後部に位置する。また、吸気バルブ13は、直線状に延びる軸部13aと当該軸部13aと同軸に形成された略円板状の傘部13bを有している。排気バルブ14は、シリンダヘッド3の前部に位置する。排気バルブ14は、直線状に延びる軸部14aと当該軸部14aと同軸に形成された略円板状の傘部14bを有する。点火プラグ15は、前後方向における2つの吸気バルブ13と2つの排気バルブ14の間に位置している。点火プラグ15は、外周面にシリンダヘッド3に取り付けるためのネジ部が形成された軸部15aと、軸部15aの先端に火花を発生させる電極15bとを有する。
【0021】
なお、吸気バルブ13の軸部13aは、後述する吸気バルブ挿通壁52に挿通されており、排気バルブ14の軸部14aは、後述する排気バルブ挿通壁51に挿通されており、点火プラグ15の軸部15aは、後述する点火プラグ挿通壁53に挿通されている。
【0022】
吸気バルブ13は、吸気ポート11の燃焼室7への開口を開閉する。吸気ポート11には、吸気管16が接続されており、吸気管16の上流側にはスロットル装置(図示せず)が接続されている。スロットル装置又は吸気管16には、燃料タンク内に貯留されている燃料を噴射する燃料噴射装置(図示せず)が設けられる。吸気バルブ13が吸気ポート11を開放しているときに、スロットル装置を通過する新気に燃料噴射装置より噴射された燃料が混合された混合気が、吸気ポート11を介して燃焼室7に供給される。
【0023】
点火プラグ15は、燃焼室7内で圧縮された混合気を点火して燃焼させる。点火プラグ15が、燃焼室7内で混合気を燃焼させることにより、ピストン8が下動し、ピストン8にコンロッド9を介して連結されたクランクシャフト5が回転駆動される。
【0024】
排気バルブ14は、排気ポート12の燃焼室7への開口を開閉する。排気ポート12には、排気管17が接続されており、排気管17の下流側にはマフラ(図示せず)などが接続されている。排気バルブ14が排気ポート12を開放しているときに、点火燃焼後の燃焼室7内のガスが、排気ポート12、排気管17、およびマフラなどを介して車外に排出される。
【0025】
エンジン1は、排気ポート12に新気を供給する二次エア供給路18を備えている(以下、排気ポート12に供給される新気を「二次エア」と称す)。二次エア供給路18は、その上流端が吸気ポート11より上流側部分に接続されており、その下流端が排気ポート12に接続されている。排気ポート12に二次エア供給路18を介して、燃焼室7を迂回して二次エアを供給することによって、排気ガスを再燃焼させ排気ガス中のCOおよびHCを低減させることができる。なお、二次エア供給路18の下流側の一部は、シリンダヘッド3における後述する二次エア供給壁54により形成されている。
【0026】
(冷却水流路構造)
以下、エンジン1が備える本実施形態の冷却水流路構造20について説明する。冷却水流路構造20は、ブロック側冷却室21とヘッド側冷却室22とを備える。ブロック側冷却室21は、シリンダブロック2におけるシリンダ6の周囲に形成されている。また、ヘッド側冷却室22(本発明の「冷却室」に相当)は、シリンダヘッド3における吸気ポート11、燃焼室7および排気ポート12などの周囲に形成されている。シリンダブロック2、シリンダヘッド3、およびこれらの間に配されるガスケット4には、シリンダブロック2のブロック側冷却室21とシリンダヘッド3のヘッド側冷却室22とを連通する複数の連通孔23が形成されている。連通孔23は、シリンダ6の軸方向に延びている。なお、
図1では、簡略化のため、複数の連通孔23のうち、エンジン1の前部に位置する1つの連通孔23のみが示されている。
【0027】
また、シリンダブロック2には、ブロック側冷却室21へ冷却水を流入させる入口24が設けられている。入口24は、シリンダブロック2の後部であって、左右方向における中央に配置されている(
図2参照)。シリンダブロック2の入口24を通過してブロック側冷却室21へ流入した冷却水は、ブロック側冷却室21を流れた後、連通孔23を介してブロック側冷却室21から流出し、ヘッド側冷却室22に流入する。本実施形態において、複数の連通孔23のうち、後述する排気バルブ挿通壁51より前方に位置する連通孔23は、本発明の「冷却水入口」に相当する。
【0028】
また、シリンダヘッド3には、ヘッド側冷却室22から冷却水を流出させる出口25が設けられている。出口25は、シリンダヘッド3の後部であって、左右方向における中央に配置されている(
図3参照)。ヘッド側冷却室22へ流入した冷却水は、ヘッド側冷却室22を流れた後、出口25を介してヘッド側冷却室22から流出する。すなわち、本実施形態において、出口25は、ヘッド側冷却室22から冷却水を流出させる冷却水出口を構成しており、本発明の「冷却水出口」に相当する。
【0029】
出口25から流出した冷却水は、循環装置26により再び入口24から流入するように循環する。具体的には、循環装置26は、出口25から流出した冷却水を放熱する放熱器27と入口24とに接続された送りライン28と、出口25と放熱器27とに接続された戻しライン29を含む。送りライン28には、上流側から順にポンプ31および流量制御弁32が設けられている。戻しライン29には、温度センサ33が設けられている。なお、ポンプ31は、戻しライン29に設けられていてもよい。
【0030】
ポンプ31が稼働すると、冷却水が入口24を通じてエンジン1内へ流入し、ブロック側冷却室21、連通孔23およびヘッド側冷却室22をこの順に流れた後に(
図1の破線矢印参照)、出口25を通じてエンジン1から流出する。エンジン1から流出した冷却水の温度は、温度センサ33により計測される。エンジン1から流出した冷却水は、放熱器27で放熱した後に、再びエンジン1内に流入する。流量制御弁32は、図示しない制御装置により、温度センサ33で計測される温度が一定の範囲内に維持されるように制御される。
【0031】
以下、冷却水流路構造20について、
図2および
図3を参照しつつ詳細に説明する。
図2は、エンジン1のシリンダブロック2の横断面図であり、
図3は、エンジン1のシリンダヘッド3の横断面図である。
図2および
図3はいずれも、点火プラグ15の軸線方向から見た図となっている。
図2および
図3では、冷却水の流れ方向が矢印で示され、また、点火プラグ15の軸線方向から見たときの各冷却室21,22と連通孔23の位置関係が分かるよう、連通孔23が破線で示される。
【0032】
図2に示すように、4つの燃焼室7(言い換えれば、4つのシリンダ6)は、左右方向に一列に並んでいる。以下の説明では、これら4つの燃焼室7を、左側から右側に向かって順に、第1燃焼室7a、第2燃焼室7b、第3燃焼室7c、第4燃焼室7dと称することとする。
【0033】
図2に示すように、ブロック側冷却室21は、左右方向に一列に並んだ燃焼室7を取り囲むように形成されている。ブロック側冷却室21は、左右方向における中央に位置する入口24から分岐する第1分岐路21aと第2分岐路21bとを含む。
【0034】
第1分岐路21aは、入口24から、第2燃焼室7bおよび第1燃焼室7aの後ろ側をこの順に通過するように左方に延びた後、第1燃焼室7aの前側に回り込んで、第2燃焼室7bの前側へと延びる。第2分岐路21bは、入口24から、第3燃焼室7cおよび第4燃焼室7dの後ろ側をこの順に通過するように右方に延びた後、第4燃焼室7dの前側に回り込んで、第3燃焼室7cの前側へと延びる。第1分岐路21aと第2分岐路21bの各々の下流側部分が、シリンダブロック2の前部であって、左右方向における中央で互いにつながる。
【0035】
複数の連通孔23は、
図2に示すように、点火プラグ15の軸線方向から見て、ブロック側冷却室21に重なるように、すなわち第1分岐路21aと第2分岐路21bに重なるように配される。また、複数の連通孔23は、第1分岐路21aと第2分岐路21bにおいて、互いに間隔をあけて配される。第1分岐路21aと第2分岐路21bの各々を通流する冷却水は、途中に配された連通孔23を通って、ヘッド側冷却室22へと流出する。
【0036】
図3に示すように、シリンダヘッド3には、排気バルブ14の軸部14aが挿通される孔41を形成する排気バルブ挿通壁51が設けられている。排気バルブ挿通壁51は、ヘッド側冷却室22を貫通するように形成されており、ヘッド側冷却室22と孔41とを隔離する。
【0037】
また、シリンダヘッド3には、吸気バルブ13の軸部13aが挿通される孔42を形成する吸気バルブ挿通壁52が設けられている。吸気バルブ挿通壁52は、排気バルブ挿通壁51より後方においてヘッド側冷却室22を貫通するように形成されており、ヘッド側冷却室22と孔42とを隔離する。
【0038】
また、シリンダヘッド3には、点火プラグ15の軸部15aが挿通される孔43を形成する点火プラグ挿通壁53が設けられている。点火プラグ挿通壁53は、排気バルブ挿通壁51と吸気バルブ挿通壁52との間においてヘッド側冷却室22を貫通するように形成されており、ヘッド側冷却室22と孔43とを隔離する。
【0039】
また、
図3に示すように、シリンダヘッド3には、1つの排気ポート12に対し、1つの二次エア供給壁54が設けられている。二次エア供給壁54は、ヘッド側冷却室22を貫通して、二次エア供給路18を形成する。また、
図3に示すように、シリンダヘッド3には、ヘッド側冷却室22を貫通する複数の締結用ボス55が設けられている。締結用ボス55は、吸気バルブ挿通壁52より後方であって、出口25より前方に、シリンダブロック2とシリンダヘッド3とを締結する締結用ボルトが挿通される孔45を形成している。
【0040】
燃焼室7毎に、2つの排気バルブ挿通壁51、2つの吸気バルブ挿通壁52、1つの点火プラグ挿通壁53および1つの二次エア供給壁54が設けられている。すなわち、排気バルブ挿通壁51、吸気バルブ挿通壁52、点火プラグ挿通壁53および二次エア供給壁54は、夫々、4つの第1燃焼室7a、第2燃焼室7b、第3燃焼室7c、第4燃焼室7dのいずれかに対応して設けられている。以下の説明では、排気バルブ挿通壁51、吸気バルブ挿通壁52、点火プラグ挿通壁53および二次エア供給壁54に関して、4つの第1燃焼室7a、第2燃焼室7b、第3燃焼室7c、第4燃焼室7dのうちの特定の燃焼室7に対応する要素を示す場合、第1~第4燃焼室7a~7dと同じ符号a~dを付して示し、任意の要素を示す場合、符号a~dを付さずに示すこととする。
【0041】
各燃焼室7に対応して設けられた2つの排気バルブ挿通壁51の間は、冷却水が通流しないように閉塞されている。また、各燃焼室7に対応して設けられた2つの吸気バルブ挿通壁52の間も、冷却水が通流しないように閉塞されている。このため、ヘッド側冷却室22内には、3つの主流路61と、2つの側方流路62と、4つの支流路63が形成されている。
【0042】
3つの主流路61は、夫々、点火プラグ15の軸線方向から見て隣り合う2つの燃焼室7の間(すなわち、隣り合う2つの点火プラグ挿通壁53の間)を前後方向に延びている。2つの側方流路62は、夫々、点火プラグ15の軸線方向から見て両端に位置する燃焼室7a,7dの外方側(すなわち、点火プラグ挿通壁53aの左側と点火プラグ挿通壁53dの右側)で前後方向に延びている。4つの支流路63は、夫々、各燃焼室7に対応して設けられた排気バルブ挿通壁51と吸気バルブ挿通壁52の間で左右方向に延びている。すなわち、支流路63には、点火プラグ挿通壁53が配置されており、支流路63を通流する冷却水は、点火プラグ挿通壁53に接触する。
【0043】
また、ヘッド側冷却室22内には、3つの主流路61を夫々塞ぐ閉塞壁71が形成されている。本実施形態では、閉塞壁71は、1つの第1閉塞壁71aと2つの第2閉塞壁71bとを含む。第1閉塞壁71aは、点火プラグ挿通壁53より後方において主流路61を塞ぐものであり、第2閉塞壁71bは、点火プラグ挿通壁53より前方において主流路61を塞ぐものである。本実施形態では、3つの主流路61の中で、第1閉塞壁71aが閉塞する主流路61を第1主流路61aと呼び、第2閉塞壁71bが閉塞する主流路61を第2主流路61bと呼ぶ。
【0044】
第1主流路61aは、シリンダヘッド3の左右方向における中央、より詳しくは隣り合う2つの点火プラグ挿通壁53b,53cの間を前後方向に延びている。第1主流路61aは、出口25に最も近い位置にある。2つの第2主流路61bは、隣り合う2つの点火プラグ挿通壁53a,53bの間および隣り合う2つの点火プラグ挿通壁53c,53dの間を夫々前後方向に延びている。
【0045】
第1閉塞壁71aは、点火プラグ15の軸線方向から見て、後方に延びる略V字状に形成される。具体的には、
図3に示すように、第1主流路61aにおける吸気バルブ挿通壁52より後方に上述した1つの締結用ボス55が設けられている。第1閉塞壁71aは、第1主流路61aを挟んで互いに対向する吸気バルブ挿通壁52b,52cの各々と、締結用ボス55とを連結するように形成されている。こうして、第1閉塞壁71aは、点火プラグ15の軸線方向から見て略V字状に形成される。
【0046】
第2閉塞壁71bは、第2主流路61bを挟んで互いに対向する二次エア供給壁54同士を連結するように形成されている。具体的には、第1燃焼室7aと第2燃焼室7bの各排気ポート12に対応して設けられた2つの二次エア供給壁54a,54bは、第2主流路61bに面して、対応する排気バルブ挿通壁51a,51bに夫々突設されている。これら2つの二次エア供給壁54a,54bを連結するように、2つの第2閉塞壁71bの一方が形成されている。また、第3燃焼室7cと第4燃焼室7dの各排気ポート12に対応して設けられた2つの二次エア供給壁54c,54dは、第2主流路61bに面して、対応する排気バルブ挿通壁51c,51dに夫々突設されている。これら2つの二次エア供給壁54c,54dを連結するように、2つの第2閉塞壁71bの他方が形成されている。
【0047】
このような冷却水流路構造20による、シリンダヘッド3の冷却効率を向上する作用効果について説明する。
【0048】
図5は、本実施形態と比較するために示された、エンジンの冷却水流路構造100を備えるシリンダヘッド3の横断面図である。この冷却水流路構造100は、閉塞壁71を備えていない。すなわち、
図5に示す冷却水流路構造100では、いずれの主流路61も閉塞されておらず、冷却水を通流可能に形成されている。このため、排気バルブ挿通壁51より前方に位置する連通孔23からヘッド側冷却室22に流入した冷却水の大部分は、主流路61または側方流路62を通流して出口25へと向かう。つまり、ヘッド側冷却室22に流入した冷却水の大部分が支流路63を流れることなくヘッド側冷却室22から流出する。
【0049】
これに対し、本実施形態によれば、主流路61を前後方向に流れる冷却水が、当該主流路61を塞ぐ閉塞壁71に堰き止められて、横方向に対流する。これにより、ヘッド側冷却室22内に横方向の流れを生じさせて、冷却水を点火プラグ挿通壁53に接触させやすくする。従って、エンジン1におけるシリンダヘッド3の冷却効率を向上することができる。
【0050】
また、本実施形態では、第1主流路61aを流れる冷却水が、点火プラグ挿通壁53より後方において第1閉塞壁71aに堰き止められると、第1主流路61aにつながる支流路63へと迂回する。すなわち、第1閉塞壁71aに堰き止められた冷却水を、積極的に排気バルブ挿通壁51と吸気バルブ挿通壁52の間の点火プラグ挿通壁53に接触させることができる。
【0051】
また、本実施形態では、第1閉塞壁71aが、第1主流路61aを流れる冷却水を点火プラグ15より後方にて堰き止め、第2閉塞壁71bが、第2主流路61bを流れる冷却水を点火プラグ15より前方にて堰き止める。このため、ヘッド側冷却室22内で横方向の流れが生じる箇所を分散させて、効率よく冷却水室内に横方向の流れを生じさせるとともに、ヘッド側冷却室22内の圧力損失を低減することができる。
【0052】
また、本実施形態では、第2閉塞壁71bが第2主流路61bを閉塞するのに二次エア供給壁54を利用するため、ヘッド側冷却室22内の圧力損失を低減することができる。より詳しくは、第2主流路61bにおける互いに対向する二次エア供給壁54の間の箇所は、これら二次エア供給壁54が第2主流路61bに面して突設されているため、第2主流路61bにおける他の箇所に比べて幅が狭い。このような幅が狭い箇所に第2閉塞壁71bを形成することで、できるだけ第2閉塞壁71bが閉塞する流路断面積を小さくして、ヘッド側冷却室22内の圧力損失を低減することができる。
【0053】
ところで、例えば第1閉塞壁71aが、点火プラグ15の軸線方向から見て、左右方向に延びる直線状に形成されている場合、第1閉塞壁71aの後方側に、冷却水のよどみ、すなわち冷却水の流れが遅い箇所ができてしまい、これが冷却効率の低下につながるおそれがある。本実施形態では、第1閉塞壁71aが、点火プラグ15の軸線方向から見て、後方に延びる略V字状に形成されているため、第1主流路61aにおける第1閉塞壁71aの後方において、冷却水のよどみを生じにくくすることができる。
【0054】
また、本実施形態では、第1主流路61aを閉塞するのに締結用ボス55を利用するため、できるだけ第1閉塞壁71aが閉塞する流路断面積を小さくして、ヘッド側冷却室22内の圧力損失を低減することができる。
【0055】
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0056】
例えば、上記実施形態の冷却水流路構造20を備えるエンジンとして、4つの燃焼室7を備えるエンジン1が示されたが、本発明の鞍乗車両用エンジンは、4気筒エンジンに限定されない。すなわち、主流路61の数は、3つでなくてもよいし、支流路63の数は4つでなくてもよい。本発明は、例えば6気筒エンジンなど、3気筒以上のエンジンに適用可能である。
【0057】
また、上記実施形態で示された、二次エア供給壁54の位置、締結用ボス55の位置、閉塞壁71の位置なども、本発明を限定するものではない。
【0058】
例えば、本発明は、
図4に示すような冷却水流路構造20aであってもよい。
図4には、上記実施形態の変形例に係る冷却水流路構造20aを有するエンジンのシリンダヘッド3aの横断面図が示される。この変形例に係る冷却水流路構造20aは、点火プラグ挿通壁53b,53cの間を前後方向に延びる主流路61を、第1閉塞壁71aが閉塞する代わりに、第2閉塞壁71bが閉塞している。また、この変形例では、二次エア供給壁54b,54cが、点火プラグ挿通壁53b,53cの間の主流路61を挟んで互いに対向するように配置されており、これら二次エア供給壁54b,54c同士を連結するように第2閉塞壁71bが形成されている。また、この変形例では、隣り合う2つの点火プラグ挿通壁53a,53bの間および隣り合う2つの点火プラグ挿通壁53c,53dの間で前後方向に延びている2つの主流路61を、夫々、第2閉塞壁71bが閉塞する代わりに、第1閉塞壁71aが閉塞している。このような構成の冷却水流路構造20aでも、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0059】
また、上記実施形態では、冷却水流路構造20が備える全ての主流路61について閉塞壁71が設けられていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、冷却水流路構造20は、複数の主流路61のうち、1つの主流路61のみに閉塞壁71が設けられていてもよい。また、冷却水流路構造20は、第1閉塞壁71aと第2閉塞壁71bの双方を備えていなくてもよく、第1閉塞壁71aと第2閉塞壁71bのうちのいずれか一方のみ備えていてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、出口25がシリンダヘッド3の左右方向における中央に配置されていたが、本発明における冷却水出口の位置は、これに限定されない。例えば冷却水出口が、シリンダヘッド3の後部であって、左右方向における右端部に設けられていてもよい。
【0061】
また、複数の連通孔23の数や配置、サイズも、上記実施形態で示されたものに限定されない。なお、ヘッド側冷却室22による冷却効率を向上させる観点からは、複数の連通孔23のうち、排気バルブ挿通壁51より前方に位置する連通孔23(本発明の「冷却水入口」に相当)からヘッド側冷却室22に流入する冷却水の流量は、それ以外の連通孔23からヘッド側冷却室22に流入する冷却水の流量に比べて大きくすることが好ましい。このような構成は、例えば、排気バルブ挿通壁51より前方に位置する各連通孔23の開口面積よりも、排気バルブ挿通壁51より後方に位置する各連通孔23の開口面積を小さくすることや、あるいは、排気バルブ挿通壁51より前方に位置する各連通孔23の数よりも、排気バルブ挿通壁51より後方に位置する各連通孔23の数を少なくすることなどにより実現される。
【0062】
また、本発明の冷却水入口は、ブロック側冷却室21とヘッド側冷却室22とを連通する連通孔23でなくてもよい。例えば、シリンダヘッド3に、シリンダブロック2を介さずに外部から直接冷却水をヘッド側冷却室22に流入させる入口が設けられてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、第2閉塞壁71bが、互いに対向する2つの二次エア供給壁54を連結するように形成されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、第2閉塞壁71bは、主流路61を挟んで対向する2つの排気バルブ挿通壁51同士を連結するように形成されてもよい。また、主流路61を挟む2つの排気バルブ挿通壁51のうちの一方にのみ二次エア供給壁54が突設されている場合、第2閉塞壁71bは、当該二次エア供給壁54とそれに対向する排気バルブ挿通壁51とを連結するように形成されてもよい。また、冷却水流路構造20が、ヘッド側冷却室22を貫通する二次エア供給壁54を備えていなくてもよい。
【0064】
また、第1閉塞壁71aは、点火プラグ15の軸線方向から見て、後方に延びる略V字状に形成されていなくてもよい。例えば、第1閉塞壁71aは、左右方向に延びる直線状に形成されていてもよい。また、第1閉塞壁71aは、隣接する燃焼室7に対応した吸気バルブ挿通壁52の各々と、締結用ボス55とを連結するものでなくてもよい。また、冷却水流路構造20が、ヘッド側冷却室22を貫通する締結用ボス55を備えていなくてもよい。
【0065】
また鞍乗型車両は、当然ながら自動二輪車に限定されず、その他の各種の乗物、例えば、三輪車、小型滑走艇(PWC: Personal Water Craft)、スノーモービル、およびATV(全地形走行車)等のいずれかでもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 :鞍乗車両用エンジン
3,3a :シリンダヘッド
7 :燃焼室
12 :排気ポート
13 :吸気バルブ
14 :排気バルブ
15 :点火プラグ
18 :二次エア供給路(供給路)
20 :冷却水流路構造
22 :ヘッド側冷却室(冷却室)
23 :連通孔(冷却水入口)
25 :出口(冷却水出口)
41,42,43,44 :孔
51 :排気バルブ挿通壁
52 :吸気バルブ挿通壁
53 :点火プラグ挿通壁
54 :二次エア供給壁
55 :締結用ボス
61 :主流路
61a :第1主流路
61b :第2主流路
63 :支流路
71 :閉塞壁
71a :第1閉塞壁
71b :第2閉塞壁