(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】高純度のフルオレセイン類化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 493/10 20060101AFI20220126BHJP
C07B 61/00 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
C07D493/10 E
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2018217937
(22)【出願日】2018-11-21
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000187046
【氏名又は名称】東レ・ファインケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】高畑 梨花
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 良太
(72)【発明者】
【氏名】森井 清二
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/003815(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2006/0106234(US,A1)
【文献】国際公開第2009/046165(WO,A1)
【文献】特表2013-505261(JP,A)
【文献】特開2016-172705(JP,A)
【文献】特開2012-219258(JP,A)
【文献】J Am Chem Soc.,2012年,134(25),10502-10508
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 493/10
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール性水酸基を有する化合物と酸無水物化合物を、酸性触媒存在下で反応させてフルオレセイン類化合物を製造する方法であって、
前記フェノール性水酸基を有する化合物として1,6-ジヒドロキシナフタレン、反応溶媒として
酢酸を含む溶媒を用いて前記反応を行う工程
、前記フェノール性水酸基を有する化合物および酸無水物化合物の反応溶液から冷却晶析により、前記フルオレセイン類化合物を単離する工程、単離されたフルオレセイン類化合物を、非プロトン性溶媒に溶解させて貧溶媒晶析するか、またはプロトン性極性溶媒を用いてスラリー洗浄することにより精製する工程を含む、化学純度が95%以上
である、下記式(5)で表される高純度のフルオレセイン類化合物の製造方法。
【化1】
【請求項2】
化学純度が98%以上である、請求項1に記載のフルオレセイン類化合物の製造方法。
【請求項3】
前記酸性触媒が、プロトン酸である請求項
1または2に記載のフルオレセイン類化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業的なスケールで効率がよく、かつ安全性が高い、高純度のフルオレセイン類化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオレセイン類化合物は、溶液中で強い蛍光発光を示すことが知られており、タンパク質のための蛍光標識剤や、タンパク質追跡のための蛍光試薬としての生物学的な用途を有する。
【0003】
さらには、フルオレセイン類化合物は、がんや炎症性疾患治療薬や化粧品材料、有機ELパネル並びにカラーフィルター基板材料などの電子情報材料や光学材料など、工業用途として多岐にわたる分野で有用な化合物である。
【0004】
一般的なフルオレセイン類化合物の製造方法は、フェノール性水酸基を有する化合物と酸無水物化合物を酸性触媒存在下で反応させることで得られる。
フルオレセインは、1871年にレゾルシノールと無水フタル酸から初めて合成され、その後多くの研究者により蛍光特性解析や類縁体の合成研究がなされてきた。フルオレセイン類化合物の一種であるナフトフルオレセインは、1989年に1,6-ジヒドロキシナフタレンと無水フタル酸から合成されている。
【0005】
特許文献1ではフルオレセイン類化合物の合成方法に用いる酸触媒として、塩化亜鉛を用いる方法が提案されている。しかしながら、塩化亜鉛は潮解性があるため加水分解を受けやすく、工業的な取り扱いが困難であるといった課題がある。また塩化亜鉛は加熱により分解し、有毒なヒュームを生じることが知られている。塩化亜鉛のヒュームは刺激性であり、眼、呼吸器あるいは皮膚を刺激するといった問題もある。また近年、より高純度のフルオレセイン類化合物を、工業的なスケールで効率よく製造する方法が求められている。
【0006】
そのため、特許文献2、非特許文献1、2および3ではメタンスルホン酸を酸性触媒および反応溶媒として用いる製造方法が提案されている。
しかしながら、特許文献2、非特許文献1、2および3に記載されている製造方法は、メタンスルホン酸を酸触媒兼反応溶媒として使用しているため、メタンスルホン酸の使用量が過剰となり、合成反応の後の酸処理が困難であるといった課題がある。
【0007】
さらに上述した製造方法では、反応液を水に添加してフルオレセイン類化合物の析出操作を行なうが、強酸であるメタンスルホン酸を水に添加することにより激しい発熱を伴うため、安全な生産方法とはいえない。また発熱を抑制するために少量ずつ添加すると生産性が低下するため、効率的な生産方法とならない。加えて、水による析出操作では不純物や類縁物質も同時に析出するため、析出されるフルオレセイン類化合物の化学純度も低いという問題がある。
【0008】
さらに特許文献2、非特許文献1、2および3ではフルオレセイン類化合物の精製にカラムクロマトグラフィーを用いているが、カラムクロマトグラフィーでの精製は効率が悪く、精製コストが高く安定した工業生産方法とは言えない。
【0009】
すなわち、高純度のフルオレセイン類化合物の製造において、生産効率が高く、かつ安全性が高い工業的な製造方法は未だ確立されておらず、高純度のフルオレセイン類化合物を工業的なスケールで効率的かつ安全に生産する製造方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】欧州特許第0357350号明細書
【文献】国際公開第2016/148215号
【非特許文献】
【0011】
【文献】Chemical Communications,5974-5976,2005.
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,18(22),5948-5950,2008.
【文献】Journal of Organic Chemistry,77(7),3492-3500,2012.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、工業的なスケールで効率よくかつ安全に高純度のフルオレセイン類化合物を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の高純度のフルオレセイン類化合物の製造方法は、フェノール性水酸基を有する化合物と酸無水物化合物を、酸性触媒存在下で反応させてフルオレセイン類化合物を製造する方法であって、
前記フェノール性水酸基を有する化合物として1,6-ジヒドロキシナフタレン、反応溶媒に
酢酸を含む溶媒を用いて前記反応を行
う工程、前記フェノール性水酸基を有する化合物および酸無水物化合物の反応溶液から冷却晶析により、前記フルオレセイン類化合物を単離する工程、単離されたフルオレセイン類化合物を、非プロトン性溶媒に溶解させて貧溶媒晶析するか、またはプロトン性極性溶媒を用いてスラリー洗浄することにより精製する工程を含む、化学純度が95%以上
である、下記式(5)で表される高純度のフルオレセイン類化合物を得ることを特徴とする。
【化1】
【発明の効果】
【0016】
本発明のフルオレセイン類化合物によれば、化学純度が95%以上、好ましくは98%以上と高純度の化合物であるので、生物学的な用途や、電子情報材料や光学材料など、多岐にわたる工業用途で有用である。
【0017】
本発明のフルオレセイン類化合物の製造方法によれば、反応溶媒にカルボン酸を含む溶媒を用いることで酸性触媒量を低減させることができるため、反応後の酸性廃液処理が容易になる。また、本発明により得られたフルオレセイン類化合物は、カルボン酸を含む溶媒への溶解性が低いため、晶析、濾過、洗浄等の簡便な操作で単離精製が可能となる。
【0018】
本発明のフルオレセイン類化合物の製造方法は、高純度のフルオレセイン類化合物を、工業的なスケールで安全に生産することができる。本発明のフルオレセイン類化合物の製造方法は、好ましくは、晶析により精製を行なうことにより、高純度のフルオレセイン類化合物を効率よく安全に生産することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の高純度のフルオレセイン類化合物について詳細に記載する。
本明細書において、フルオレセイン類化合物は、フルオレセインおよびその誘導体、並びにナフトフルオレセインおよびその誘導体をいうものとする。
【0020】
本発明のフルオレセイン類化合物は、下記式(1)で表される化合物である。
【化3】
上記式(1)において、x、y、zは、0~4の整数を表し、R
1、R
2、R
3は、それぞれ独立して、置換基を有する縮合したベンゼン環又は無置換の縮合したベンゼン環である。x、y、zは、好ましくは、1~4の整数である。R
1、R
2は、好ましくは、水酸基を有する縮合したベンゼン環であり、より好ましくはx,yが1、zが0であるとよい。
【0021】
フルオレセイン類化合物は、その化学純度が95%以上であり、好ましくは98%以上である。フルオレセイン類化合物の化学純度の上限値は100%である。本明細書において、フルオレセイン類化合物の化学純度は、高速液体クロマトグラフィー法(以下、「HPLC」と略す。)を使用し、後述する方法により測定したときのフルオレセイン類化合物のピーク面積の分率(HPLC area%)である。
【0022】
本発明のフルオレセイン類化合物は、下記式(2)~(4)で表される化合物の群から選ばれる化合物である。フルオレセイン類化合物は、下記式(2)~(4)で表される化合物のうち、1種類の化合物でも、複数種の化合物の混合物でもよい。
【化4】
上記式(2)~(4)において、a、b、c、d、e、fは、1~4の整数を表し、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11は、それぞれ独立して、水素、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、ハロゲン、ニトロ基及びアルキル基からなる群から選択される。R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11は、水酸基であることが好ましい。
【0023】
上記式(2)~(4)で表される化合物の群から選ばれるフルオレセイン類化合物の化学純度は、95%以上であり、好ましくは98%以上である。また、化学純度の上限値は100%である。フルオレセイン類化合物の化学純度は、HPLCにより測定されたフルオレセイン類化合物のピーク面積の分率(HPLC area%)とする。
【0024】
本発明のフルオレセイン類化合物は、好ましくは、下記式(5)~(7)で表される化合物の群から選ばれる化合物である。フルオレセイン類化合物は、下記式(5)~(7)で表される化合物のうち、1種類の化合物でも、複数種の化合物の混合物でもよい。
【化5】
【0025】
次に、本発明の高純度のフルオレセイン類化合物の製造方法について詳細に記載する。
本発明のフルオレセイン類化合物の製造方法は、フェノール性水酸基を有する化合物と酸無水物化合物を、酸性触媒存在下で反応させてフルオレセイン類化合物を製造する方法であって、その反応を反応溶媒にカルボン酸を含む溶媒を用いて行う。
【0026】
フェノール性水酸基を有する化合物として、フェノール類、ナフトール類を使用することができる。さらに、フェノール性水酸基を有する化合物は、1種類を使用することができ、または、2種類以上を混合して用いることができる。
【0027】
フェノール類を反応に用いると、フルオレセインおよびその誘導体からなるフルオレセイン類化合物が得られる。フェノール類としては、例えば、フェノール、カテコール、レゾルシノール、2-アミノレゾルシノール、4-アミノレゾルシノール、2-クロロレゾルシノール、4-クロロレゾルシノール、2-ブロモレゾルシノール、4-ブロモレゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール、フロログルシノール、サリチル酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、2,6-ジヒドロキシ安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、2-アミノフェノール、3-アミノフェノール、4-アミノフェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クロロフェノール、m-クロロフェノール、p-クロロフェノール、o-ブロモフェノール、m-ブロモフェノール、p-ブロモフェノール、o-ヨードフェノール、m-ヨードフェノール、p-ヨードフェノール、2-ニトロフェノール、3-ニトロフェノール、4-ニトロフェノールなどが例示される。フェノール類としてはフェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール、ヒドロキシ安息香酸、アミノフェノールが、より好ましく、なかでも、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノンが特に好ましい。
【0028】
一方、フェノール性水酸基を有する化合物として、ナフトール類を用いるとナフトフルオレセインおよびその誘導体からなるナフトフルオレセイン類化合物が得られる。
ナフトール類としては、例えば、1-ナフトール、2-ナフトール、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、1,8-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸、1-ヒドロキシ-4-ナフトエ酸、1-ヒドロキシ-5-ナフトエ酸、1-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸、1-ヒドロキシ-7-ナフトエ酸、1-ヒドロキシ-8-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-1-ナフトエ酸、3-アミノ-1-ナフトール、4-アミノ-1-ナフトール、5-アミノ-1-ナフトール、6-アミノ-1-ナフトール、7-アミノ-1-ナフトール、8-アミノ-1-ナフトール、1-アミノ-2-ナフトール、3-アミノ-2-ナフトール、4-アミノ-2-ナフトール、5-アミノ-2-ナフトール、6-アミノ-2-ナフトール、7-アミノ-2-ナフトール、8-アミノ-2-ナフトール、3-クロロ-1-ナフトール、4-クロロ-1-ナフトール、5-クロロ-1-ナフトール、6-クロロ-1-ナフトール、7-クロロ-1-ナフトール、8-クロロ-1-ナフトール、1-クロロ-2-ナフトール、3-クロロ-2-ナフトール、4-クロロ-2-ナフトール、5-クロロ-2-ナフトール、6-クロロ-2-ナフトール、7-クロロ-2-ナフトール、8-クロロ-2-ナフトール、3-ブロモ-1-ナフトール、4-ブロモ-1-ナフトール、5-ブロモ-1-ナフトール、6-ブロモ-1-ナフトール、7-ブロモ-1-ナフトール、8-ブロモ-1-ナフトール、1-ブロモ-2-ナフトール、3-ブロモ-2-ナフトール、4-ブロモ-2-ナフトール、5-ブロモ-2-ナフトール、6-ブロモ-2-ナフトール、7-ブロモ-2-ナフトール、8-ブロモ-2-ナフトール、などが例示される。ナフトール類としては、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン、アミノナフトール、ヒドロキシナフトエ酸が好ましく、なかでも1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレンが特に好ましい。
【0029】
本発明の製造方法において、酸無水物には、好ましくは、フタル酸無水物およびその誘導体を用いることができる。フタル酸無水物のベンゼン環は、任意に置換基を有してもよい。その置換基は、官能基の種類、数および位置も特に限定されない。また置換基は、置換基を有する縮合したベンゼン環又は無置換の縮合したベンゼン環でもよい。
【0030】
フタル酸無水物およびその誘導体の例としては、フタル酸無水物、2,3-ナフタレンジカルボン酸無水物、1,2-ナフタレンジカルボン酸無水物、トリメリット酸無水物、3-メチルフタル酸無水物、4-メチルフタル酸無水物、3-クロロフタル酸無水物、4-クロロフタル酸無水物、3-ブロモフタル酸無水物、4-ブロモフタル酸無水物、3-ヒドロキシフタル酸無水物、4-ヒドロキシフタル酸無水物、3-アミノフタル酸無水物、4-アミノフタル酸無水物、3-ニトロフタル酸無水物、4-ニトロフタル酸無水物、3-メチルフタル酸無水物、4-メチルフタル酸無水物などが例示される。
【0031】
フルオレセイン類化合物の製造方法において、フェノール性水酸基を有する化合物および酸無水物の使用量に特に制限はなく、フェノール性水酸基を有する化合物が酸無水物に対し多いほど反応が進み易くて良いが、多すぎると、原料費が高くなり経済性の面では好ましくない。フルオレセイン類化合物の合成のためのフェノール性水酸基を有する化合物の量は、具体的には、用いる酸無水物のモル量に対して1~10モル倍が良く、より好ましくは2~4モル倍であり、さらに好ましくは2~3モル倍である。安価な工業的製造方法としては、化学量論量である2モル倍で反応させることが良い。
【0032】
フルオレセイン類化合物の製造方法では、反応促進剤として酸性触媒が使用される。酸性触媒としては、好ましくは、プロトン酸があげられる。プロトン酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、フルオロスルホン酸、ヘキサフルオロアンチモン酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、クロム酸、ホウ酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などが例示される。プロトン酸としては塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸が好ましい。
【0033】
酸性触媒量は、フェノール性水酸基を有する化合物の使用量に対して0.1~20モル倍であり、好ましくは1~10モル倍であり、より好ましくは2~5モル倍である。酸性触媒量が0.1モル倍未満では反応速度が著しく低下し、得られるフルオレセイン類化合物の量が低下してしまう場合がある。一方、20モル倍以上用いると、酸性廃棄物が多量に排出されるため、酸処理が困難となり、安全な工業的製造方法とはならない場合がある。
【0034】
本発明のフルオレセイン類化合物の製造方法で用いられる反応溶媒には、反応を阻害しない溶媒が選択されるが、晶析による精製を行なうため、フルオレセイン類化合物の溶解性が低いカルボン酸を含む溶媒を用いる。カルボン酸の炭素数は、好ましくは1~24、より好ましくは1~9、更に好ましくは1~4であるとよい。カルボン酸の具体例としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、ピバル酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、2-エチル酪酸、2-エチルヘキサン酸、カプリル酸、オレイン酸、乳酸、クエン酸、シュウ酸、オクチル酸、ナフテン酸、ネオデカン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグリノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、トウハク酸、リンデル酸、ツズ酸、マッコウ酸、ミリストオレイン酸、ゾーマリン酸、ペトロセリン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、鯨油酸、エルシン酸、サメ油酸、リノール酸、ヒラゴ酸、エレオステアリン酸、ブニカ酸、トリコサン酸、リノレン酸、モロクチ酸、パリナリン酸、アラキドン酸、イワシ酸、ヒラガシラ酸、ニシン酸等が挙げられる。中でも蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸が好ましく、更に好ましくは、酢酸、プロピオン酸が用いられる。さらに、カルボン酸は1種類を用いてもよく、または、2種類以上を混合して用いることができる。なお、本明細書において、カルボン酸は、無水カルボン酸を含まないものとする。
【0035】
カルボン酸を含む反応溶媒は、カルボン酸以外の他の溶媒を含んでもよい。カルボン酸と混合する他の溶媒の成分としては、一般的に使用される溶媒から選択されるが、フルオレセイン類化合物の合成反応を阻害しない電子求引性官能基を有する溶媒がより好ましい。具体的には、ジクロロメタン、ジクロロエタンおよびクロロホルム等のハロゲン系溶媒、ニトロメタン、ニトロエタンおよびニトロベンゼン等のニトロ系溶媒、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブタナール、ペンタナールおよびベンズアルデヒド等のアルデヒド系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルおよび酢酸イソブチル等のエステル系溶媒などが挙げられる。
【0036】
カルボン酸を含む反応溶媒100重量%に対し、カルボン酸の含有量は、フルオレセイン類化合物の溶解性を低下させない範囲で適宜選択されるが、1重量%~100重量%が好ましく、より好ましくは30重量%~100重量%であり、さらに好ましくは50重量%~100重量%である。本発明では、カルボン酸を含む反応溶媒が、カルボン酸のみで構成されてもよい。
【0037】
フルオレセイン類化合物の製造方法での反応溶媒の使用量は、フェノール性水酸基を有する化合物に対し、好ましくは、0.5~100重量倍であり、より好ましくは1~50重量倍であり、さらに好ましくは1~20重量倍である。
【0038】
フルオレセイン類化合物を製造する反応温度は、通常40~150℃、好ましくは50~130℃、さらに好ましくは70~120℃である。40℃以上が反応速度の観点から好ましく、150℃以下が安全な工業的製造条件という観点から好ましい。
【0039】
本発明の製造方法で得られた反応溶液中のフルオレセイン類化合物の化学純度は、好ましくは、80%以上であり、より好ましくは、85%以上である。反応溶液中のフルオレセイン類化合物の化学純度は、HPLCにより測定したときのフルオレセイン類化合物のピーク面積の分率(HPLC area%)である。
【0040】
本発明において、フルオレセイン類化合物は、晶析により(1)未反応原料の除去、(2)反応溶媒の除去、(3)酸性触媒の除去が可能である。本発明では、好ましくは、晶析により、フルオレセイン類化合物を単離する。晶析により、フルオレセイン類化合物を単離することにより、フルオレセイン類化合物が精製され、得られたフルオレセイン類化合物の化学純度が、さらに向上する。晶析には、冷却晶析、貧溶媒晶析、蒸発晶析、非溶媒添加晶析などがあるが、本発明では、簡便な晶析方法である冷却晶析および貧溶媒晶析がより好ましい。
【0041】
なお、本明細書に記載する冷却晶析とは、反応溶液を反応温度以下に冷却することにより、溶液温度によるフルオレセイン類化合物の溶解度差を利用してフルオレセイン類化合物の結晶を析出させる方法を意味する。また貧溶媒晶析とは、フルオレセイン類化合物に対する溶解度が低い溶媒を反応溶液中に加え、反応溶液の溶解度を低下させてフルオレセイン類化合物の結晶を析出させる方法、あるいは反応液をフルオレセイン類化合物が不溶の溶媒中に加えてフルオレセイン類化合物を析出させる方法、あるいはフルオレセイン類化合物の溶解度が高い溶媒と低い溶媒を混合し、溶解度の高い溶媒を留去してフルオレセイン類化合物を析出させる方法を意味する。
【0042】
晶析により得られたフルオレセイン類化合物の化学純度は、好ましくは、95%以上であり、より好ましくは、98%以上である。
【0043】
晶析により析出したフルオレセイン類化合物の結晶は濾過により未反応原料、酸性触媒、反応溶媒を分離できる。さらに、得られた結晶を洗浄することにより、残存する未反応原料、酸性触媒、反応溶媒を完全に除去することが好ましい。
【0044】
フルオレセイン類化合物の結晶は、濾過後、さらに溶媒でスラリー洗浄することにより、化学純度を高くすることができる。なお、本明細書においてスラリー洗浄とは、濾過により得られた結晶を含むウェットケークを再びフラスコ等の容器へ移し、溶解度の低い溶媒を加え撹拌して洗浄する方法を意味する。したがって、漏斗等の上のウェットケークを溶媒でかけ洗いする洗浄とは異なる洗浄方法である。
【0045】
スラリー洗浄に用いる溶媒としては、プロトン性極性溶媒を例示することができる。また、ここで用いるプロトン性極性溶媒とは、例えば、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、酢酸、プロピオン酸、エチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。中でも水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノールが好ましく、更に好ましくは水、メタノール、2-プロパノールが用いられる。さらにプロトン性極性溶媒は1種類を用いてもよく、または2種類以上を混合して用いることができる。
【0046】
また、フルオレセイン類化合物の結晶を、濾過した後、溶媒で溶解させた後に晶析させることにより精製することができる。フルオレセイン類化合物の結晶の溶解は、常温または加熱した溶媒を使用することができる。溶媒として、非プロトン性極性溶媒、プロトン性極性溶媒を例示することができる。
【0047】
非プロトン性極性溶媒とは、例えばN,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、2-ピロリドン、N-メチル-ピロリドン(NMP)、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリノジン等のアミド化合物;ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド化合物;スルホラン、メチルスルホラン等のスルホラン化合物;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル化合物;モノグライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン等のエーテル化合物;アセトン等のケトン化合物、等が挙げられる。中でもN-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドが好ましく、更に好ましくはN-メチルピロリドンが用いられる。
【0048】
また、プロトン性極性溶媒とは、例えば、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、酢酸、プロピオン酸、エチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。中でも水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノールが好ましく、更に好ましくは水、メタノール、2-プロパノールが用いられる。さらにプロトン性極性溶媒は1種類を用いてもよく、または2種類以上を混合して用いることができる。
【0049】
フルオレセイン類化合物の結晶を、非プロトン性極性溶媒およびプロトン性極性溶媒に溶解させる温度は、好ましくは20~100℃、より好ましくは40~80℃、さらに好ましくは50~70℃であるとよい。また、非プロトン性極性溶媒およびプロトン性極性溶媒の使用量は、フルオレセイン類化合物に対し、好ましくは1~50重量倍であり、より好ましくは5~40重量倍であり、さらに好ましくは10~30重量倍であるとよい。
【0050】
次に、非プロトン性極性溶媒に溶解させたフルオレセイン類化合物は、好ましくは貧溶媒晶析により精製する。貧溶媒としては、水、トルエン等が例示される。貧溶媒晶析の温度は、好ましくは5~80℃、より好ましくは10~60℃、さらに好ましくは10~35℃であるとよい。また、貧溶媒の使用量は、フルオレセイン類化合物に対し、好ましくは0.1~20重量倍であり、より好ましくは0.1~10重量倍であり、さらに好ましくは0.1~5重量倍であるとよい。
【0051】
溶媒による精製で得られたフルオレセイン類化合物の化学純度は、好ましくは95%以上であり、より好ましくは98%以上である。また、化学純度の上限値は100%である。フルオレセイン類化合物の化学純度は、HPLCにより測定されたフルオレセイン類化合物のピーク面積の分率(HPLC area%)とする。
【0052】
本発明の製造方法で得られるフルオレセイン類化合物は、下記式で表される化合物であることが好ましい。
【化6】
上記式において、x、y、zは、0~4の整数を表し、R
1、R
2、R
3は、それぞれ独立して、水素、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、ハロゲン、ニトロ基及びアルキル基からなる群から選択される。x、y、zは、好ましくは、1~4の整数である。
【0053】
本発明の製造方法で得られるフルオレセイン類化合物は、下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【化7】
上記式(1)において、x、y、zは、0~4の整数を表し、R
1、R
2、R
3は、それぞれ独立して、置換基を有する縮合したベンゼン環又は無置換の縮合したベンゼン環である。x、y、zは、好ましくは、1~4の整数である。R
1、R
2は、好ましくは、水酸基を有する縮合したベンゼン環であり、より好ましくはx,yが1、zが0であるとよい。
【0054】
本発明の製造方法で得られるフルオレセイン類化合物は、下記式(2)~(4)で表される化合物の群から選ばれることがさらに好ましい。フルオレセイン類化合物は、下記式(2)~(4)で表される化合物のうち、1種類の化合物でも、複数種の化合物の混合物でもよい。
【化8】
上記式(2)~(4)において、a、b、c、d、e、fは、1~4の整数を表し、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11は、それぞれ独立して、水素、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、ハロゲン、ニトロ基及びアルキル基からなる群から選択される。R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11は、水酸基であることがより好ましい。
【0055】
本発明で得られるフルオレセイン類化合物は、さらに好ましくは、下記式(5)~(7)で表される化合物の群から選ばれる化合物である。フルオレセイン類化合物は、下記式(5)~(7)で表される化合物のうち、1種類の化合物でも、複数種の化合物の混合物でもよい。
【化9】
【実施例】
【0056】
以下、実施例により具体的に説明する。なお、本明細書において得られるフルオレセイン類化合物の化学純度は、次の方法により測定した。
(化学純度)
以下の条件の液体クロマトグラフィー(島津製作所製LC-10Vp)により、フルオレセイン類化合物のピーク面積の分率(HPLC area%)を測定し、化学純度とした。
カラム :Mightysil RP18GP、4.6×150mm (5μm)
カラム温度 :40℃
移動相 :(A)5mmol/L硫酸水素テトラブチルアンモニウム水溶液
(B)メタノール
グラジエント 0分 (A):(B)=65:35
20分 (A):(B)=35:65
22分 (A):(B)=35:65
流量 :1mL/min
注入量 :5μL
検出 :UV254nm
分析時間 :30分
サンプル調製 :サンプル0.01gを秤量し、メタノール約25mLに希釈させた。
ただし、上記の分析条件に基づく分析結果と同じ結果が得られる限り、この分析条件に限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
温度計、冷却管および撹拌機を取り付けた100mLの4つ口フラスコに、1,6-ジヒドロキシナフタレン6.41g(0.04mol)、フタル酸無水物2.96g(0.02mol)、メタンスルホン酸(MeSO3H)15.4g(0.16mol)、酢酸25gを仕込み、系内を窒素置換した。この混合液を撹拌しながら120℃まで昇温し、ナフトフルオレセインの合成反応を行った。24時間加熱撹拌を行った後、反応液中のナフトフルオレセインをHPLCにより分析したところ、ナフトフルオレセインの化学純度は、86%であった。
【0058】
得られた反応液を30-40℃に冷却させナフトフルオレセインの結晶を析出させた。析出した結晶を濾過し、酢酸と水の混合液でスラリー洗浄した後、乾燥することで赤紫結晶のナフトフルオレセインを6.6g得た。得られたナフトフルオレセインは、化学純度99.0%、収率76%であった。
【0059】
(実施例2)
実施例1において、メタンスルホン酸7.7g(0.08mol)、酢酸32.7gを用いた以外は、実施例1と同様に反応を実施した。濾過、スラリー洗浄および乾燥により、得られたナフトフルオレセインは、化学純度99%、収率58%であった。
【0060】
(実施例3)
実施例1において、メタンスルホン酸3.8g(0.04mol)、酢酸36.5gを用いた以外は、実施例1と同様に反応を実施した。濾過、スラリー洗浄および乾燥により、得られたナフトフルオレセインは、化学純度97%、収率60%であった。
【0061】
(実施例4)
実施例1において、酢酸使用量を12.5gとした以外は、実施例1と同様に反応を実施した。濾過、スラリー洗浄および乾燥により、得られたナフトフルオレセインは、化学純度98%、収率70%であった。
【0062】
(実施例5)
実施例1において、酸性触媒としてメタンスルホン酸の代わりに硫酸15.6g(0.16mol)を用いた以外は、実施例1と同様に反応を実施した。濾過、スラリー洗浄および乾燥により、得られたナフトフルオレセインは、化学純度96%、収率50%であった。
【0063】
(実施例6)
析出した結晶を濾過する操作までは実施例1と同様に実施した。濾過した結晶を酢酸15.0g(0.25mol)で洗浄し、結晶を含むウェットケークを得た。温度計、冷却管および撹拌機を取り付けた100mLの4つ口フラスコに、洗浄して得たウェットケーク、N-メチルピロリドン(NMP)22.0g(4.3重量倍/ナフトフルオレセイン)を仕込み、系内を窒素置換した。この混合液を撹拌しながら80℃まで昇温し、30分撹拌継続した。その後2時間かけて室温まで冷却し、水5.2g(1.0重量倍/ナフトフルオレセイン)を30℃で1時間かけて滴下することで、薄い紫色結晶のナフトフルオレセインが析出した。結晶を濾過し、2-プロパノールでかけ洗いし、乾燥し、薄い紫色結晶のフルオレセインを3.6g得た。得られたナフトフルオレセインは、化学純度99.7%、収率50%であった。
【0064】
(実施例7)
析出した結晶を濾過する操作までは実施例1と同様に実施した。濾過した結晶を酢酸15.0g(0.25mol)で洗浄し、結晶を含むウェットケークを得た。温度計、冷却管および撹拌機を取り付けた200mLの4つ口フラスコに、洗浄して得たウェットケーク、水74.4g(8.6重量倍/フルオレセイン)、2-プロパノール(IPA)111.6g(12.9重量倍/フルオレセイン)を仕込み、系内を窒素置換した。この混合液を撹拌しながら60℃まで昇温し、30分撹拌継続した。その後60℃、減圧度250torrで3.7時間かけて2-プロパノールを留去したところ、赤色結晶のフルオレセインが析出した。結晶を濾過し、水でスラリー洗浄し、濾過したケークを2-プロパノールでかけ洗いした後、乾燥し、赤色結晶のナフトフルオレセインを5.1g得た。得られたナフトフルオレセインは、化学純度99%、収率59%であった。
実施例1~7の反応条件および評価結果を表1にまとめて記載する。
【0065】
【0066】
(比較例1)
温度計、冷却管および撹拌機を取り付けた100mLの4つ口フラスコに、1,6-ジヒドロキシナフタレン10.0g(0.063mol)、無水フタル酸4.6g(0.031mol)、塩化亜鉛4.2g(0.030mol)を仕込み、系内を窒素置換した。この混合液を撹拌しながら120℃まで昇温しフルオレセイン合成反応を行ったが、反応の進行が確認できなかったため反応を中断した。
【0067】
(比較例2)
温度計、冷却管および撹拌機を取り付けた100mLの4つ口フラスコに、1,6-ジヒドロキシナフタレン4.77g(0.03mol)、無水フタル酸2.22g(0.015mol)、メタンスルホン酸57.66g(0.60mol)を仕込み、系内を窒素置換した。この混合液を撹拌しながら120℃まで昇温し、ナフトフルオレセインの合成反応を行った。13時間加熱撹拌を行った後、反応液を中のナフトフルオレセインHPLCにより分析したところ、フルオレセインの化学純度は、85%であった。
【0068】
得られた反応液を10℃の純水70gに滴下した。このとき発熱が観測されたため、ゆっくりと滴下し、フルオレセインの結晶を析出させた。析出した結晶を濾過、純水でかけ洗いし、乾燥することで黒色粉末のフルオレセイン類化合物を5.6g得た。得られたフルオレセイン類化合物は、化学純度82%、収率87%であった。
【0069】
(比較例3)
実施例1においてメタンスルホン酸を用いなかったこと以外は実施例1と同様に反応を実施した。24時間加熱撹拌を行った後、反応液をHPLCにより分析した。反応液中のナフトフルオレセインの生成は確認できなかった。
【0070】
(比較例4)
実施例1において反応溶媒として酢酸の代わりに、トルエンを1,6-ジヒドロキシナフタレンの7.8重量倍用いて反応温度を70℃とした以外は実施例1と同様に反応を実施した。24時間加熱撹拌を行った後、反応液をHPLCにより分析したが、反応液中のナフトフルオレセインの生成は確認できなかった。
【0071】
(比較例5)
比較例4において反応溶媒としてトルエンの代わりに、イソプロピルアルコール(IPA)を用いた以外は比較例4と同様に反応を実施した。24時間加熱撹拌を行った後、反応液をHPLCにより分析したが、反応液中のナフトフルオレセインの生成は確認できなかった。
【0072】
(比較例6)
比較例4において反応溶媒としてトルエンの代わりに、テトラヒドロフラン(THF)を用いた以外は比較例4と同様に反応を実施した。24時間加熱撹拌を行った後、反応液をHPLCにより分析したが、反応液中のナフトフルオレセインの生成は確認できなかった。
【0073】
(比較例7)
比較例4において反応溶媒としてトルエンの代わりに、酢酸イソプロピルを用いた以外は比較例4と同様に反応を実施した。24時間加熱撹拌を行った後、反応液をHPLCにより分析したが、反応液中のナフトフルオレセインは4%であり単離には至らなかった。
【0074】
(比較例8)
比較例4において反応溶媒としてトルエンの代わりに、アセトニトリルを用いた以外は比較例4と同様に反応を実施した。24時間加熱撹拌を行った後、反応液をHPLCにより分析したが、反応液中のナフトフルオレセインの生成は確認できなかった。
【0075】
(比較例9)
比較例4において反応溶媒としてトルエンの代わりに、無水酢酸を用いた以外は比較例4と同様に反応を実施した。24時間加熱撹拌を行った後、反応液をHPLCにより分析したが、反応液中のナフトフルオレセインの生成は確認できなかった。
比較例1~9の反応条件および評価結果を表2にまとめて記載する。
【0076】