IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社大真空の特許一覧

<>
  • 特許-圧電デバイス 図1
  • 特許-圧電デバイス 図2
  • 特許-圧電デバイス 図3
  • 特許-圧電デバイス 図4
  • 特許-圧電デバイス 図5
  • 特許-圧電デバイス 図6
  • 特許-圧電デバイス 図7
  • 特許-圧電デバイス 図8
  • 特許-圧電デバイス 図9
  • 特許-圧電デバイス 図10
  • 特許-圧電デバイス 図11
  • 特許-圧電デバイス 図12
  • 特許-圧電デバイス 図13
  • 特許-圧電デバイス 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】圧電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/02 20060101AFI20220126BHJP
   H01L 23/04 20060101ALI20220126BHJP
   H03B 5/32 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
H03H9/02 A
H01L23/04 E
H03B5/32 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019097866
(22)【出願日】2019-05-24
(62)【分割の表示】P 2015253752の分割
【原出願日】2015-12-25
(65)【公開番号】P2019169970
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2019-06-17
【審判番号】
【審判請求日】2021-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2015048754
(32)【優先日】2015-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2015060785
(32)【優先日】2015-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 秀憲
(72)【発明者】
【氏名】平井 政史
【合議体】
【審判長】佐藤 智康
【審判官】衣鳩 文彦
【審判官】伊藤 隆夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-239414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/02 -9/66
H03H 3/007-3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板部を有すると共に、当該基板部の外部基板に対向する側の主面の外周部に枠部を有する平面視矩形状の絶縁性容器と、
前記枠部と前記基板部の外部基板に対向する側の主面とで囲まれた凹部に収容される電子部品と、
前記基板部の電子部品が収容される主面とは反対側の主面に搭載される圧電素子と、
前記圧電素子を気密に封止する蓋と、
を備える圧電デバイスにおいて、
前記枠部の底面の外周縁と内周縁とが平面視矩形状であり、当該内周縁の4隅は平面視で円弧状となっており、
前記外部基板に半田によって接合される4つの各外部接続端子のみが、前記枠部の底面の4隅において当該底面の内周縁との間に無電極領域を隔てて形成され、
前記4つの各外部接続端子の内の2つの各外部接続端子が、前記電子部品に電気的に接続され、他の2つの各外部接続端子が、前記圧電素子に電気的に接続され、
前記各外部接続端子は、前記枠部の内周縁の各隅の円弧と略対応した円弧状の内周縁を有し、前記各外部接続端子の前記円弧状の内周縁における円弧の中心と、前記枠部の内周縁の各隅の円弧の中心とが、前記絶縁性容器の長辺方向に沿って延びる仮想直線上にあって、前記各外部接続端子の前記円弧状の内周縁における円弧の中心が、前記枠部の内周縁の各隅の円弧の中心に比べて、各外部接続端子における前記絶縁性容器の短辺側にずれている、
圧電デバイス。
【請求項2】
前記各外部接続端子の前記円弧状の内周縁の前記円弧の曲率半径と、前記枠部の内周縁の各隅の前記円弧の曲率半径とが略同一である、
請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項3】
前記各外部接続端子の前記円弧状の内周縁の前記円弧の曲率半径が、前記枠部の内周縁の各隅の前記円弧の曲率半径に比べて大きい、
請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項4】
前記各外部接続端子が、前記枠部の底面の4隅の各々から当該底面の隣接する長辺および短辺の各々に沿って延出した辺を有する平面視L字状に形成され、
前記各外部接続端子の前記短辺に沿って延出した辺の長さが、当該外部接続端子の前記長辺に沿って延出した辺の長さよりも長い、
請求項1ないし3のいずれかに記載の圧電デバイス。
【請求項5】
前記電子部品が直方体状であり、前記電子部品は、その長手方向が、前記絶縁性容器の長辺方向に直交するように、前記凹部に収容される、
請求項1ないし4のいずれかに記載の圧電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部基板に半田等を介して実装される表面実装型の圧電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より圧電振動子や圧電発振器等の圧電デバイスは、外部基板の表面に半田付けされる表面実装型のものが広く用いられている。例えば表面実装型の水晶デバイスでは、水晶素子と、集積回路素子(IC)やサーミスタ等の電子部品とを絶縁基板の表裏主面の各々に搭載し、水晶素子を、蓋を用いて気密に封止した構成のものが存在する。つまり、水晶素子と電子部品とが別個の空間に収容される構成となっている。
【0003】
前記構成の具体例としては、平板状の基板部の下面(外部基板と対向する側の主面)と、当該下面の外周部に設けられた枠部(下枠部)とで形成される下側凹部と、平板状の基板部の上面(外部基板と対向する側の主面と反対側の主面)と、当該上面の外周部に設けられた枠部(上枠部)とで形成される上側凹部とを備えた絶縁性容器(ベース)を備えたものがある。当該ベースでは前記上側凹部に水晶素子が搭載され、前記下側凹部にICやサーミスタ等の電子部品が搭載される。そして上側凹部の開口部を塞ぐように平板状の蓋が接合されることによって水晶素子が上側凹部内に気密封止される。このような構成の圧電デバイスは、例えば特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1ではベースの下枠部の底面の4隅に外部接続端子が形成される。前記外部接続端子は、水晶デバイスが超小型、例えば平面視矩形状の水晶デバイスの外形寸法が1.6mm×1.2mm程度以下になってくると下枠部の底面の面積も狭小化するため、外部接続端子の形成領域はより狭くなってくる。
【0005】
このように外部接続端子の形成領域がより狭くなってくるのは、下側凹部に搭載される電子部品は或る程度の大きさを有するため、当該電子部品の下側凹部内への実装作業性を考慮すると、下側凹部は或る程度の開口面積を確保しておく必要がある。これに伴って下枠部の枠幅が幅狭になって、下枠部の底面の領域が狭くなってしまうからである。
【0006】
ベースの下枠部の底面の領域が狭くなると、下枠部の剛性が相対的に低下するため、外部基板等から発生した各種応力によってベースに撓みが生じ易くなる。
【0007】
このような超小型の水晶デバイスと外部基板との半田接合の強度を確保するためには、限られた下枠部の底面の領域内において、外部接続端子を出来るだけ大きく形成する必要がある。その結果、例えば特許文献2に示すように外部接続端子の形成領域は、下側凹部の開口端に接近してくることになる。しかし外部接続端子が下側凹部の開口端に接近し過ぎると、水晶デバイスを外部基板に実装する際に溶融した半田が、下側凹部の内底面の電子部品搭載用パッド(電極)にまで流れ込んで絶縁不良等の不具合が発生する危険性が高まる。このため、安全のためには外部接続端子の内周縁と下側凹部の開口端との間には隙間、すなわち、ベースの基材が露出した無電極領域を設けておくことが望ましい。
【0008】
ところで平面視矩形状の外部接続端子の場合、その角部は屈曲した部位であるため応力が集中しやすくなる。その結果、前記角部は半田のクラック発生の起点となり易い。そして上記のように超小型の水晶デバイスのベースの下枠部の剛性が低下することにより、外部基板等から発生した各種応力の影響を受けてベースに撓みが生じ易くなる。このような撓みが生じると、水晶デバイスの外部接続端子と半田との接合部に応力が働き、外部接続端子の角部にも前記応力が集中し易くなる。これにより、半田のクラックが発生する虞がある。半田のクラックが発生すると、当該クラックの進行によって接続不良や水晶デバイスの脱落等の不具合に至ることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2007-124513号公報
【文献】特開2010-268193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、超小型化に対応するとともに、半田のクラック発生を抑制し、高い接合信頼性を有する圧電デバイスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、上記目的を達成するために、次のように構成している。
【0012】
すなわち、本発明の圧電デバイスは、基板部を有すると共に、当該基板部の外部基板に対向する側の主面の外周部に枠部を有する平面視矩形状の絶縁性容器と、前記枠部と前記基板部の外部基板に対向する側の主面とで囲まれた凹部に収容される電子部品と、前記基板部の電子部品が収容される主面とは反対側の主面に搭載される圧電素子と、前記圧電素子を気密に封止する蓋と、を備える圧電デバイスにおいて、
前記枠部の底面の外周縁と内周縁とが平面視矩形状であり、当該内周縁の4隅は平面視で円弧状となっており、
前記外部基板に半田によって接合される4つの各外部接続端子のみが、前記枠部の底面の4隅において当該底面の内周縁との間に無電極領域を隔てて形成され、
前記4つの各外部接続端子の内の2つの各外部接続端子が、前記電子部品に電気的に接続され、他の2つの各外部接続端子が、前記圧電素子に電気的に接続され、
前記各外部接続端子は、前記枠部の内周縁の各隅の円弧と略対応した円弧状の内周縁を有し、前記各外部接続端子の前記円弧状の内周縁における円弧の中心と、前記枠部の内周縁の各隅の円弧の中心とが、前記絶縁性容器の長辺方向に沿って延びる仮想直線上にあって、前記各外部接続端子の前記円弧状の内周縁における円弧の中心が、前記枠部の内周縁の各隅の円弧の中心に比べて、各外部接続端子における前記絶縁性容器の短辺側にずれている。
【0013】
本発明によれば、絶縁性容器の前記枠部の内周縁の4つの各隅を、平面視で円弧状にすることによって、枠部の4隅を補強して枠部の剛性を高め、外部基板等から発生した各種応力による絶縁性容器の撓みを生じ難くすることができる。補強された枠部の内周縁の各隅の円弧と各外部接続端子の内周縁の円弧とを略対応させた状態で枠部の外周縁の長辺方向にずらすことによって、枠部から外部接続端子に伝わる応力をより緩和することができる。
【0014】
また、本発明によれば、平面視矩形状の圧電デバイスが超小型になっても、圧電デバイスを外部基板に実装する際に溶融した半田が凹部内に流れ込む危険性を一層低減させることができる。これは、外部接続端子の円弧状の内周縁における円弧の中心と、枠部の内周縁の各隅の円弧の中心とが、枠部の外周縁の長辺方向にずれていることによって、よりスペースを確保し易い長手方向に前記無電極領域を確保することができるからである。つまり、外部接続端子の内周縁と枠部の内周縁、すなわち、凹部の開口端との間の、長辺方向における距離をより長く確保することができるからである。
【0015】
本発明の一つの実施態様では、前記各外部接続端子の前記円弧状の内周縁の前記円弧の曲率半径と、前記枠部の内周縁の各隅の前記円弧の曲率半径とが略同一である。
【0016】
この実施態様によれば、前記2つの円弧の曲率半径を同一とすることによって、外部接続端子の円弧状の内周縁と、枠部の底面の内周縁の各隅の円弧とをより対応させることができるため、絶縁容器から外部接続端子に伝わる応力を効果的に緩和することができる。
【0017】
本発明の好ましい実施態様では、前記各外部接続端子の前記円弧状の内周縁の前記円弧の曲率半径が、前記枠部の内周縁の各隅の前記円弧の曲率半径に比べて大きい
【0018】
この実施態様によれば、絶縁性容器から外部接続端子に伝わる応力を緩和することができる。
【0019】
本発明の他の実施態様では、前記各外部接続端子が、前記枠部の底面の4隅の各々から当該底面の隣接する長辺および短辺の各々に沿って延出した辺を有する平面視L字状に形成され、前記各外部接続端子の前記短辺に沿って延出した辺の長さが、当該外部接続端子の前記長辺に沿って延出した辺の長さよりも長い
【0020】
この実施態様によれば、外部接続端子の長辺に沿って延出した辺の長さを短くしても、その分、短辺に沿って延出した辺の長さを長くすることによって、外部接続端子の形成領域を確保することができる。
【0021】
本発明の他の実施態様では、前記電子部品が直方体状であり、前記電子部品は、その長手方向が、前記絶縁性容器の長辺方向に直交するように、前記凹部に収容される。
【0022】
平面視矩形状の枠部は、外部基板から応力等が加わったときには、長辺方向の方が、短辺方向に比べて相対的に撓み量が大きくなるが、この実施態様によれば、撓み易い枠部の長辺方向に対して、直方体状の電子部品の長手方向が直交するように電子部品を配置するので、電子部品の長手方向を、前記長辺方向に対して平行に配置するのに比べて、枠部の撓み量を相対的に抑制することができる。その結果、電子部品に働く曲げ応力等を緩和することができる。
【発明の効果】
【0034】
以上のように、超小型化に対応するとともに、半田のクラック発生を抑制し、高い接合信頼性を有する圧電デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の参考例に係る水晶振動子の断面模式図
図2】本発明の参考例に係る水晶振動子の底面模式図
図3図2の部分拡大図
図4図2の水晶振動子の外部接続端子の他の例を示す部分拡大図
図5図3の拡大図
図6】本発明の他の参考例に係る水晶振動子の底面の部分拡大図
図7発明の実施形態に係る図3に対応する部分拡大図
図8図7の実施形態に係る図2に対応する底面模式図
図9】応力シミュレーションのモデルを示す斜視図
図10】応力シミュレーションに用いた対称な外部接続端子の平面図
図11】応力シミュレーションに用いた非対称な外部接続端子の平面図
図12図10の対称な外部接続端子の応力分布を示す図
図13図11の非対称な外部接続端子の応力分布を示す図
図14本発明の他の実施形態に係る水晶振動子の底面の部分拡大図
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、圧電デバイスとして温度センサを内蔵した表面実装型の水晶振動子を例に挙げ、本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の参考例を、図面を参照しながら説明する。
【0037】
本発明の参考例図1乃至図3を用いて説明する。図2は、本発明の参考例に係る水晶振動子の底面を示す模式図であり、図1図2のA-A線における断面模式図であり、図3図2における外部接続端子10aを含む領域を拡大した模式図である。
【0038】
図1において、温度センサ内蔵水晶振動子1(以下、「水晶振動子1」という)は略直方体状のパッケージであり、平面視では矩形状となっている。本実施形態では水晶振動子1の平面視の外形寸法は、長辺が1.6mm、短辺が1.2mmであり、その発振周波数は38.4MHzとなっている。なお、前記水晶振動子1の平面視外形寸法と発振周波数は一例であり、前記外形寸法以外のパッケージサイズおよび前記発振周波数以外の発振周波数であっても本発明は適用可能である。
【0039】
水晶振動子1は、絶縁性容器2(以下、「ベース2」という)と、水晶素子3と、電子部品4と、蓋5とが主な構成部材となっている。本参考例では前記電子部品4として温度センサであるサーミスタ(以下「サーミスタ4」という)が用いられている。水晶振動子1は、サーミスタ4から得られた温度情報に基づいて外部で温度補償が行われる。以下、水晶振動子1を構成する各部材の概略について説明する。
【0040】
図1乃至図2において、ベース2は絶縁性材料からなる平面視矩形状の容器である。ベース2は、平板状の基板部20と、基板部20の一主面201の外周部から上方に伸びる上枠部21と、基板部20の他主面202の外周部から下方に伸びる下枠部22とから構成されている。ここで基板部20の他主面202は、外部基板に対向する側の主面であり、基板部20の一主面201は電子部品としてのサーミスタ4が収容される主面とは反対側の主面となっている。本参考例では基板部20と上枠部21と下枠部22の各々は、セラミックグリーンシート(アルミナ)となっており、これら3つのシートが積層された状態で焼成によって一体成形されている。これらのシートの積層間には所定形状の内部配線が形成されている。
【0041】
図1に示すように、ベース2の上枠部21と基板部20の一主面201とで囲まれた空間は、上側凹部E1となっている。この上側凹部E1は、平面視では略矩形となっている。上側凹部E1の周囲の上枠部21の内周縁は、平面視で略矩形となっており、当該内周縁の4隅は平面視で円弧状となっている。上側凹部E1の内底面の一端側には、水晶素子3と導電接合される一対の水晶搭載用パッド7,7が並列して形成されている(図1では1つの水晶搭載用パッド7のみを示している)。当該水晶搭載用パッド7には、導電性接着剤8によって水晶素子3の一端側が導電接合される。
【0042】
ベース2の下枠部22と基板部20の他主面202とで囲まれた空間は、下側凹部E2となっている。この下側凹部E2は、平面視では正方形状となっている。下側凹部E2は、上側凹部E1よりも平面視の大きさが小さくなっており、平面視透過では、下側凹部E2は上側凹部E1に内包される位置関係となっている。
【0043】
図2に示すように、本参考例において下枠部22の外周縁22aは、平面視矩形状となっており、ベース2の平面視の外形形状と略一致している。一方、下枠部22の内周縁22b、すなわち、下側凹部E2の開口端は、平面視で正方形状となっている。下側凹部E2の開口端を構成する各辺は、下枠部22の外周縁22aの短辺(図2で符号Wに平行な辺)および長辺(図2で符号Lに平行な辺)と略平行となっている。そして下枠部22の内周縁22bの4つの各隅は、平面視で円弧状E2Rとなっている。つまり下枠部22の内周縁22bの4隅は、平面視で正方形状の下側凹部E2の角部を円弧状(4分の1円状)に丸めたような平面視形状となっている。
【0044】
平面視矩形状の下枠部22の外周縁22aの4つの角部には、図2に示すように、切り欠き部9a,9b,9c,9dが形成されている。これら切り欠き部9a,9b,9c,9dは、ベース2の外側面の4つの稜部の各々において下枠部22のみを上下方向に貫くように切り欠かれており、平面視では4分の1円状となっている。これら4つの切り欠き部9a,9b,9c,9dの各々の内壁面には、導体が被着されている。各導体は、後述する4つの各外部接続端子10a,10b,10c,10dにそれぞれ接続されている。
【0045】
下側凹部E2の内底面、すなわち、基板部20の他主面202には、サーミスタ4と導電接合される一対のサーミスタ搭載用パッド11,11が、図2に示すように、互いに対向するように形成されている。この一対のサーミスタ搭載用パッド11,11は、一対の引き出し電極12,12とそれぞれ接続されている。この一対の引き出し電極12,12は、内部配線を経由してサーミスタ用の外部接続端子10b,10dとそれぞれ電気的に接続されている。一対のサーミスタ搭載用パッド11,11は、半田Sによってサーミスタ4の両端の電極4E,4Eに導電接合される。なお半田Sには、鉛(Pb)を含有しない鉛フリー半田が用いられている。
【0046】
一対のサーミスタ搭載用パッド11,11は、本参考例では、下枠部22の外周縁22aの短辺方向で互いに対向するように配置されている。つまり、後述する略直方体形状のサーミスタ4の長手方向が、下枠部22の外周縁22aの長辺、すなわち、ベース2の長辺と直交するようにサーミスタ4が、サーミスタ搭載用パッド11,11上に導電接合されることになる。このような位置関係でサーミスタ4が搭載されることにより、水晶振動子1を外部基板へ実装した後にサーミスタ4に働く応力を緩和することができる。これは次の理由による。
【0047】
水晶振動子1が実装された外部基板は、曲げ応力等が働くことによって外部基板に撓みが生じることがある。外部基板が撓むことにより、外部基板と半田を介して接合された水晶振動子1にも応力が伝わる。ベース2は平面視矩形状であり、ベース長辺の方がベース短辺よりも相対的に撓み量が大きくなる。このため、略直方体形状のサーミスタ4の長手方向が、相対的に撓み易いベース2の長辺と直交するように下側凹部E2内で接合する方が、ベース2の長辺と平行になるように下側凹部E2内で接合するよりも、ベース2の撓み量がより少ない方向でサーミスタ4を固着することができる。その結果、サーミスタ4に働く曲げ応力等を緩和することができる。
【0048】
上枠部21と基板部20と下枠部22とで構成されるベース2は、図1に示す断面視では、上枠部21と下枠部22との枠幅が略等しいと見なすと、基板部20の上下に凹部E1,E2を有するアルファベットの「H」状(H型)のパッケージ構造となっている。このようなパッケージ構造により、水晶素子3とサーミスタ4とが、別空間である上下の凹部E1,E2に収容されるため、製造過程で発生するガスの影響や、他の素子から発生するノイズの影響を受けにくくすることができるという効果がある。また水晶素子3とサーミスタ4とは、互いに接近した状態で1つのベース2内に収容されているため、水晶素子3の実際の温度とサーミスタ4の測定値との差異を小さくすることができる。さらに本参考例における温度センサ内蔵型水晶振動子1は、温度補償回路を内蔵していない非温度補償デバイスであるため、良好な位相雑音特性を得ることができる。
【0049】
ベース2の上枠部21の上面には、図1に示すように金属膜6が形成されている。この金属膜6と蓋5に形成された後述の封止材とが、接触した状態で加熱されることにより、蓋5とベース2とが溶着される。本参考例では金属膜6は金メッキ層(Au)であるが、金以外の金属を使用してもよい。
【0050】
図1において、水晶素子3はATカット水晶振動板の表裏主面に各種電極が形成された平面視矩形状の圧電素子である。なお、図1では記載を省略しているが、水晶素子3の略中央部分には、励振電極が表裏で対向するように一対で形成されている。前記一対の励振電極の各々から水晶素子3の表裏主面の一短辺縁部に向かって引出電極が引き出されている。この引出電極の終端部は、接合用の電極となっており、上記水晶搭載用パッド7と導電性接着剤8とによって片持ち支持されて接合されるようになっている。本参考例では導電性接着剤8にシリコーン系の接着剤が使用されているが、シリコーン系以外の導電性接着剤を使用してもよい。
【0051】
参考例では、上記のように温度センサとしてサーミスタ4を用いている。サーミスタ4は温度上昇に対して抵抗値が減少する、いわゆるNTCサーミスタ(Negative Temperature Coefficient Thermistor )であり、圧電デバイスの小型化に対応したチップタイプのものが用いられている。図2においてサーミスタ4は略直方体形状であり、その平面視の大きさは0.6mm×0.3mmとなっている。なお本参考例におけるサーミスタの大きさは一例であり、前記サイズ以外のサーミスタであってもよい。
【0052】
図1において、蓋5は平面視矩形状の平板である。蓋5はコバールが基材となっており、基材の表面にニッケルメッキと金メッキが施されている。そして蓋5のベース2と接合される側の主面の外周部には、封止材として金錫合金(AuSn)が枠状に形成されている。なお封止材として金錫合金以外の材料を用いてもよい。
【0053】
参考例では図1に示すように、上枠部21と基板部20の内部を貫通し、その内部に導体が充填されたビアVが形成されている。ビアVの一端は、上枠部21の上面に露出しており、金属膜6と電気的に接続されている。一方、ビアVの他端は、ベース2の内部配線と接続されており、当該内部配線を経由して外部接続端子10dと接続されている。つまり、金属製の蓋5と外部接続端子10dとはグランド接続されている。このようにグランド接続することによって電磁的シールド効果を得ることができる。以上が各構成部材の概略である。
【0054】
次に、外部接続端子について図2乃至図3を参照しながら説明する。
【0055】
図2に示すように、下枠部22の底面220、すなわち、ベース2の底面の外周縁は、平面視矩形状となっており、当該底面220の4隅の各々に外部接続端子10a,10b,10c,10dが形成されている。これら4つの外部接続端子10a,10b,10c,10dは、外部基板と半田によって接合される端子である。なお本参考例では、外部接続端子10a~10dは、3種類の金属の積層構成となっている。具体的には前記外部接続端子10a~10dは、ベース2の基材(セラミック)上に印刷処理によってモリブデン層が形成され、当該モリブデン層の上に、ニッケルめっき層、金めっき層の順でめっき層が積層された構成となっている。前記ニッケルめっき層および前記金めっき層は、電解めっき法によって形成されており、外部接続端子10a~10dとパッド等が一括同時に形成されている。なお上記外部接続端子10a~10dの各層を構成する金属材料は一例であり、他の金属材料を使用してもよい。例えばモリブデンに代えてタングステンを用いてもよい。
【0056】
4つの外部接続端子10a,10b,10c,10dのうち、外部接続端子10aと10cは、水晶素子3の表裏主面の図示しない各励振電極と電気的に接続されている。残りの外部接続端子10bと10dは、サーミスタ4の両端の電極4E,4Eとそれぞれ電気的に接続されている。つまり、外部接続端子10aと10cは、水晶素子用の外部接続端子であり、外部接続端子10bと10dは、サーミスタ用の外部接続端子となっている。ここで水晶素子用の外部接続端子10aと10cは、サーミスタ用の外部接続端子10bと10dとは互いに電気的に接続されることはなく、図1の内部配線M1,M2に示すように別個独立した状態となっている。換言すれば、外部接続端子10aと10cは、水晶素子3の励振電極とのみ電気的に接続されている。また外部接続端子10bと10dは、サーミスタ4の両端の電極4E,4Eとのみ電気的に接続されている。
【0057】
前記4つの外部接続端子10a,10b,10c,10dは、平面視では、下枠部22の外周縁22aの短辺方向(図2の上下方向)、すなわち、ベース2の短辺方向に長く、下枠部22の外周縁22aの長辺方向(図2の左右方向)、すなわち、ベース2の長辺方向に短いアルファベットの「L」のように屈曲した形状となっており、この屈曲した部分の内周縁側は円弧状10Rとなっている。
【0058】
平面視矩形状のベース2は、上記のようにベース長辺の方がベース短辺よりも相対的に撓みが大きく、ベース長辺の中央部分の撓み量が最大となるため、外部接続端子10a,10b,10c,10dの先端を、ベース長辺方向へあまり延出させるのは好ましくない。このため、半田接合の領域を確保するためには、外部接続端子10a,10b,10c,10dの先端を、ベース短辺方向へ長く延出させるのが好ましい。
【0059】
4つの外部接続端子10a,10b,10c,10dのうち、外部端子10cには、図2に示すように、下枠部22の外周縁22aの短辺方向に延びる延出端の一部が、短辺の中央側(図2の上側)に突出した突出部13が形成されている。この突出部13は、画像認識の際に、4つの外部接続端子10a,10b,10c,10dの方向性を識別するための目印として設けられているものである。なお、この突出部13に換えて、例えば図4に示すように、外部接続端子101cの角部を面取り形状に切り欠いた切り欠き35としてもよい。
【0060】
外部接続端子10a~10dは、下枠部22の内周縁22b、すなわち下側凹部E2の開口端との間に、無電極領域14を隔てて形成されている。ここで「無電極領域」とは、下枠部22の底面220において、外部接続端子10a~10dが形成されていない領域のことであり、ベース2の基材であるセラミック素地が露出した領域となっている。このように外部接続端子10a~10dが、下側凹部E2の開口端との間に無電極領域14を隔てて形成されていることにより、水晶振動子1を外部基板に実装する際に、溶融した半田が下側凹部E2内に流れ込むのを防止することができる。
【0061】
次に、外部接続端子10a,10b,10c,10dのうち、代表例として外部接続10aに着目して説明するが、他の外部接続端子10b,10c,10dの構成も同様である。
【0062】
外部接続端子10aは、図3に示すように平面視で略直角となる複数の角部C1、C2、C3、C4を備えている。これらの角部C1、C2、C3、C4のうち、外部接続端子10aの外周縁側の角部がC1,C2であり、外部接続端子10aの内周縁側の角部がC3,C4である。
【0063】
参考例においては、外部接続端子10aの内周縁側の角部C3,C4のうち、角部C4が、下枠部22の隅の円弧状E2Rの内周縁22bに近接している。なお外部接続端子10aを構成する各角部C1、C2、C3、C4は若干の曲率を帯びていてもよい。
【0064】
このように外部接続端子10aの角部C4を、下枠部22の隅の円弧状E2Rの内周縁22bに近接させることによって、超小型の水晶振動子においても半田のクラック発生を抑制することができる。これは下枠部22の内周縁22bの4隅が平面視で円弧状E2Rであることによって、当該4隅を補強して下枠部22の剛性を高めることができることによる。つまり、下枠部22の内周縁22bの4隅を平面視で円弧状E2Rにすることによって下枠部22の剛性を高め、外部基板等から発生した各種応力をベース2に伝わり難くすることができる。
【0065】
そして補強された領域である下枠部22の円弧状E2Rの内周縁22bに、外部接続端子10aの少なくとも1つの角部C4を近接させることによって、外部接続端子10aを構成する角部C4への応力集中を緩和することができる。これにより、半田のクラック発生を抑制することができる。
【0066】
ここで、近接について、図3を拡大して示す図5に基づいて説明する。近接とは、角部C4に適用した場合、角部C4が、下枠部22の隅の円弧状E2Rの内周縁22bと、下側凹部E2の平面視正方形状の開口端を構成する一組の対向辺のうちの1つの辺E2Wに沿って延びる第1仮想直線VL1と、下側凹部E2の平面視正方形状の開口端を構成する他の一組の対向辺のうちの1つの辺E2Lに沿って延びる第2仮想直線VL2とによって区画される近接領域PA、あるいは、この近接領域PAの周囲の周辺領域SAにあることをいう。すなわち、角部C4が、近接領域PAと周辺領域SAとを併せた領域(PA+SA)にあることをいう。
【0067】
上記第1仮想直線VL1及び第2仮想直線VL2は、下枠部22の外周縁22aの短辺方向(図5の上下方向)及び長辺方向(図5の左右方向)にそれぞれ延びている。
【0068】
近接領域PAの周囲の領域である周辺領域SAとは、近接領域PAを区画する前記第1仮想直線VL1を、近接領域PAの外側(図5の左側)へ第1距離SP1だけ平行移動させた移動第1仮想直線VL1mと、近接領域PAを区画する前記第2仮想直線VL2を、近接領域PAの外側(図5の上側)へ第2距離SP2だけ平行移動させた移動第2仮想直線VL2mとによって区画される、近接領域PA寄りの領域であって、かつ、前記移動第1,第2仮想直線VL1m,VL2mと、下枠部22の円弧状E2Rの円弧の各終端において第1,第2仮想直線VL1,VL2にそれぞれ直交する第3,第4仮想垂線VL3,VL4によって区画される領域である。
【0069】
周辺領域SAを規定する前記第1,第2距離SP1,SP2は、前記移動第1仮想直線VL1mについては、下枠部22の外周縁22aの短辺方向(図5の上下方向)に延びる部分の枠幅FW1の1/4以内であり、好ましくは1/8以内、更に好ましくは、1/16以内である。また、前記移動第2仮想直線VL2mについては、下枠部22の外周縁22aの長辺方向(図5の左右方向)に延びる部分の枠幅FW2の1/4以内であり、好ましくは1/8以内、更に好ましくは、1/16以内である。なお、周辺領域SAを規定する前記第1,第2距離SP1,SP2が下枠部22の枠幅FW1,FW2の各々の1/4以上であると、補強された領域である下枠部22の円弧状E2Rの内周縁22bに対して、外部接続端子の角部C4が離間してしまい、角部C4への応力集中の緩和効果が低くなってしまう。また、周辺領域SAを規定する前記第1,第2距離SP1,SP2が下枠部22の枠幅FW1,FW2の各々の1/4以上であると、外部接続端子の形成領域が小さくなり、外部基板との充分な接合強度を得られなくなってしまう。
【0070】
この第1,第2距離SP1,SP2は、外部接続端子10を構成するメタライズ層(本参考例ではモリブデン)の印刷位置のずれを考慮して設定するのが好ましい。
【0071】
この参考例では、外部接続端子10aの角部C4は、図3図5に示すように、近接領域PAを区画する第2仮想直線VL2上にある。
【0072】
外部接続端子10aの、下枠部22の隅から該下枠部22の外周縁22aの長辺方向(図5の左右方向)に延出する延出端10a1は、上記第1仮想直線VL1を越えて前記長辺方向へ延出している。同様に、外部接続端子10aの、下枠部22の隅から該下枠部22の外周縁22aの短辺方向(図5の上下方向)に延出する延出端10a2は、上記第2仮想直線VL2を越えて前記短辺方向へ延出している。
【0073】
このように外部接続端子10aの前記長辺方向及び前記短辺方向にそれぞれ延出する延出端10a1,10a2は、下側凹部E2の開口端の各辺E2W,E2Lに沿って延びる第1仮想直線VL1及び第2仮想直線VL2をそれぞれ越えて、下側凹部E2の開口端よりも内側の位置まで延出することにより、外部接続端子10aの形成領域をより多く確保することができる。これにより、水晶振動子1が超小型になっても外部基板との半田の接合強度を確保することができる。
【0074】
上記参考例では下枠部22の内周縁22bの4隅は平面視で円弧状となっていたが、図6に示す本発明の他の参考例のように、平面視で直線状に面取りされた面取り状(いわゆるC面状)であってもよい。図6は4つの外部接続端子10a~10dのうち、代表例として外部接続端子10aに着目した部分拡大図であり、上記参考例と同一の構成については同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0075】
この参考例では、ベース2の下枠部22の内周縁22bの4隅は平面視で面取り状E2Cとなっている。
【0076】
この参考例では、近接領域PAが、下枠部22の隅の面取り状E2Cの内周縁22bと、下側凹部E2の平面視正方形状の開口端を構成する一組の対向辺のうちの1つの辺E2Wに沿って延びる第1仮想直線VL1と、下側凹部E2の平面視正方形状の開口端を構成する他の一組の対向辺のうちの1つの辺E2Lに沿って延びる第2仮想線VL2とによって区画された領域となる。この近接領域PAの周囲の周辺領域SAは、上記図3図5参考例と同様である。
【0077】
すなわち、周辺領域SA1は、前記第1仮想直線VL11を、近接領域PA1の外側(図6の左側)へ第1距離だけ平行移動させた移動第1仮想直線VL11mと、前記第2仮想直線VL21を、近接領域PA1の外側(図6の上側)へ第2距離だけ平行移動させた移動第2仮想直線VL21mとによって区画される、近接領域PA1寄りの領域であって、かつ、前記移動第1,第2仮想直線VL11m,VL21mと、下枠部221の面取り状E2Cの直線の各終端において第1,第2仮想直線VL11,VL21にそれぞれ直交する第3,第4仮想直線VL31,VL41とによって区画される領域である。
【0078】
この参考例では、外部接続端子10aの角部C4は、近接領域PA内に位置している。
【0079】
このように外部接続端子10aの角部C4が、近接領域PA内に位置しているので、上記参考例に比べて、角部C4への応力集中を一層緩和することができる。これにより、半田のクラック発生を効果的に抑制することができる。
【0080】
上記参考例では、外部接続端子10a~10dは平面視で「L」字状に屈曲し、この屈曲した部分の内周縁は円弧状となっていたが、必ずしも円弧状でなくてもよい。例えば外部接続端子10a~10dの屈曲した部分の内周縁を直角または面取り状としてもよい。
【0081】
次に、本発明について説明する。
【0083】
発明は、上記参考例に基づいて説明することが可能であり、上記図1図3に示される水晶振動子1に基づいて説明する。本発明の一実施形態は、上記参考例図1図3に示される水晶振動子1と共通の構成を有しており図1図3に対応する部分には、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0084】
図7は、本発明の一実施形態を説明するための図3に対応する図であり、上記のように、4つの外部接続端子10a,10b,10c,10dのうち、外部接続端子10aを代表例として説明するものであり、他の外部接続端子10b,10c,10dも、第1外部接続端子10aと同様である。
【0085】
下枠部22の内周縁22bの4つの各隅は、上記のように平面視で円弧状E2Rとなっている。つまり下枠部22の内周縁22bの4隅は、平面視で正方形状の下側凹部E2の角部を円弧状(4分の1円状)に丸めたような平面視形状となっている。
【0086】
図7では、4分の1円の曲率半径を符号R1で示し、中心をO1で示している。なお、中心O1を中心とした点線円は、前記4分の1円の全周を示す仮想円である。
【0087】
このように下枠部22の内周縁の各隅を平面視で4分の1円状(円弧状)にすることによって、上記のように当該4隅を補強して下枠部22の剛性を高め、外部基板等から発生した各種応力によるベース2の撓みを生じ難くすることができる。これにより、ベース2から外部接続端子10aに伝わる応力を緩和することができる。
【0088】
一方、外部接続端子10aは、平面視で「L」字状に屈曲し、この屈曲した部分の内周縁は円弧状10Rとなっている。つまり外部接続端子10aの屈曲した部分の内周縁は、平面視で4分の1円状となっている。この4分の1円の曲率半径を符号R2で示し、中心をO2で示している。なお、中心O2を中心とした点線円は、前記4分の1円の全周を示す仮想円である。
【0089】
本実施形態では2つの円弧の曲率半径R1とR2とは同一となっている。
【0090】
このように2つの円弧の曲率半径R1,R2を同一とすることによって、外部接続端子10aの円弧状10Rの内周縁と、下枠部22の隅の円弧状E2Rの内周縁22bとをより対応させることができるため、ベース2から外部接続端子10a~10dに伝わる応力をより緩和することができる。
【0091】
図7に示すように、下枠部22の底面220の隅の円弧状E2Rの内周縁22bの円弧の中心O1と、外部接続端子10aの円弧状10Rの内周縁における円弧の中心O2とは、下枠22の外周縁22aの長辺方向(図7の左右方向)にずれている。図7に示す例では、中心O1と中心O2とは、下枠部22の外周縁22aの長辺方向に沿って延びる1本の仮想直線VL上に互いに離間して位置している。つまり、本実施形態では2つの円弧の曲率半径R1とR2とは同一であることから、2つの4分の1円が前記長辺方向にずれた状態となっている。
【0092】
2つの円弧(4分の1円)がこのような位置関係にあることによって、ベース2から外部接続端子10a~10dに伝わる応力をより緩和することができるため、半田のクラック発生を抑制することができる。つまり、下枠部22の内周縁22bの4隅を平面視で円弧状E2Rにして下枠部22の剛性を高めてベース2の撓みを生じ難くするとともに、補強された下枠部22の内周縁22bの4隅の円弧と外部接続端子10a~10dの内周縁の円弧とを略対応させた状態で、下枠部22の外周縁22aの長辺方向、すなわち、ベース2の長辺方向にずらすことによって、ベース2から外部接続端子10a~10dに伝わる応力をより緩和することができる。
【0093】
また本実施形態によれば、平面視矩形状の水晶振動子1が超小型になっても、水晶振動子1を外部基板に実装する際に溶融した半田が凹部E2内に流れ込む危険性を低減させることができる。これは例えば図7に示すように、外部接続端子10aの円弧状10Rの内周縁における円弧の中心O2と、下枠部22の内周縁22bの4隅の円弧の中心O1とが、ベース2の長辺方向にずれていることによって、よりスペースを確保し易いベース2の長辺方向に無電極領域14を確保することができるからである。つまり、外部接続端子10aの内周側と下枠部22の底面220の内周縁22bとの間の、ベース長辺方向(図7の左右方向)における距離Gをより長く確保することができるからである。
【0094】
図7に示すように、平面視で「L」字状に屈曲した形状の外部接続端子10aは、下枠部22の隅から該下枠部22の外周縁22aの長辺方向(図7の左右方向)に延出する長さと、下枠部22の外周縁22aの短辺方向(図7の上下方向)に延出する長さとが、異なっている。すなわち、外部接続端子10aの下枠部22の外周縁22aの短辺方向に延出した辺の長さ10Wが、外部接続端子10aの下枠部22の外周縁22aの長辺方向に延出した辺の長さ10Lよりも長くなっている(10L<10W)。
【0095】
換言すれば外部接続端子10aは、切り欠き9aが無いと想定したときの外側の仮想角部Pと、外部接続端子10aの内周側の屈曲部分の仮想角部CPとを結ぶ図示しない仮想線に対して非対称な形状となっている。なお仮想角部CPとは、外部接続端子10aの内周側の各辺に沿ってそれぞれ延びる仮想直線L1,W1が交差する点である。
【0096】
ここで、外部接続端子10aの平面視形状による応力の伝搬について説明する。外部接続端子10aの平面視形状として、実施形態の外部接続端子10aとは異なり、屈曲部を有しない単なる矩形である場合と、実施形態の外部接続端子10aと同様に屈曲部を有するものの、下枠部22の外周縁22aの長辺方向及び短辺方向へそれぞれ延出する各延出長さが等しい(10L=10W)対称な形状である場合と、屈曲部を有し、下枠部22の外周縁22aの長辺方向及び短辺方向へそれぞれ延出する延出長さが異なる実施形態のような非対称な形状である場合とについて説明する。
【0097】
先ず、外部接続端子が平面視で、屈曲部を有しない単なる矩形の場合、当該外部接続端子を構成する4つの角部のうち、応力の影響を受けてクラック発生の起点となり易いのは、後述の図8の中心O4で示されるベース底面の中心O4から最も遠方に位置する最遠の角部となる。そして主に当該最遠の角部から、4つの角部のうち、ベース底面の中心O4に最も近い角部付近に向かって応力が伝搬することによってクラックが進行する傾向がある。
【0098】
一方、外部接続端子が、平面視で、屈曲部を有し、下枠部22の外周縁22aの長辺方向及び短辺方向へそれぞれ延出する各延出長さが等しい場合(10L=10W)は、切り欠き9aが無いと想定したときの外側の仮想角部Pと外部接続端子10aの内周側の屈曲部分の仮想角部CPとを結ぶ仮想線に対して対称な形状である。この場合は、クラック発生の起点となりやすいベース底面の中心O4から最も遠方に位置する角部(角部に上記の切り欠き部9aが存在する場合は当該角部に相当する仮想角部Pの近傍)から、図7の符号Vc1で示すように仮想角部CPに向かって応力が伝搬すると考えられる。
【0099】
これに対して本実施形態における外部接続端子10aのように、屈曲部を有し、下枠部22の外周縁22aの短辺方向へ延出した延出長さ10Wが、下枠部22の外周縁22aの長辺方向へ延出した延出長さ10Lよりも長い非対称な形状、すなわち、平面視でL字状の場合には、相対的に延出長さが長い(10W)方の延出部分の影響を受けて、応力の伝搬は、図7において符号Vc2で示すように仮想角部CPから下方にずれると考えられる。
【0100】
一般的に応力の伝搬に対して、直線状に屈曲して連続する部分(例えば角部)は、応力が集中し易い。したがって、曲線状に連続する方が、応力が集中し難くなるため好ましい。
【0101】
本実施形態では、平面視で非対称な形状の外部接続端子10aにおいて、図7の符号Vc2で示すように仮想角部CPから下方にずれた方向に応力が伝搬しても、外部接続端子10aの円弧状10Rの内周縁が、応力の伝搬方向にも対応しているため当該円弧状10Rの内周縁に応力が集中し難くなる。これにより、外部接続端子10aにおける応力集中を緩和することができる。つまり、ベース底面の中心から最遠となる外部接続端子10aの角部(もしくは仮想角部P)からの応力の伝搬に対して、外部接続端子10aの内周縁の角度を鈍化させることによって、応力の集中を緩和することができる。これにより、超小型の平面視略矩形の水晶振動子1においても半田のクラック発生を抑制することができる。
【0102】
また、本実施形態に係る水晶振動子によれば、半田のクラックが発生したとしても、その進展を遅らせることができる。これを、図8を用いて説明する。図8は、本実施形態に係る水晶振動子1の底面模式図であり、上記図2に対応する底面摸式図である。図8においては、2本の仮想対角線DLが点線で表示されている。これらの仮想対角線DLは、平面視矩形状の下枠部22の底面220の外周縁22aの4つの仮想角部P,P,P,Pのうち、斜対向する2つの仮想角部同士を結んだ直線であり、その交点(ベース2の底面の中心)をO4として示している。
【0103】
4つの外接続端子10a~10dの各々は、下枠部22の底面220の外周縁22aの4つの仮想角部Pと、外部接続端子10a~10dの内周側の屈曲部分の仮想角部(図8では図示省略)とを結ぶ図示しない仮想線に対して非対称な形状となっている。そして図7で述べたように応力の伝搬は、平面視L字状の外部接続端子10a~10dの相対的に延出長さが長い方の影響を受けて、外部接続端子10a~10dの外周側の仮想角部Pから図8の符号Vc2で示す矢印の方向にずれると考えられる。
【0104】
4つの応力の伝搬方向Vc2は、2本の対角線DL,DLを基準にすると、それぞれ対角線DLから逸脱し、下枠部22の外周縁22aの短辺方向(図8の上下方向)においては、互いに近づくように弧を描くような向きになっている。応力の伝搬方向がこのような向きとなることによって、クラック発生の起点となり易いベース底面の中心O4から最も遠方に位置する仮想角部Pから、ベース底面の中心O4に向かう方向への応力の伝搬を遅らせることができる。
【0105】
ここで、外部接続端子が、本実施形態のように、下枠部22の外周縁22aの短辺方向に延出した辺の長さ10Wが、前記外周縁22aの長辺方向に延出した辺の長さ10Lよりも長い非対称な平面視L字状の場合と、前記短辺方向に延出した辺の長さ10Wと前記長辺方向に延出した辺の長さ10Lが等しい対称な場合とについて行った応力シミュレーションについて説明する。
【0106】
この応力シミュレーションでは、図9の斜視図に示すように、基板部20及び上下の枠部21,22に相当するセラミックベース30と、リッド31とを有し、セラミックベース30の底面に、図10に示される対称な外部接続端子32、又は、図11に示される非対称なL字状の外部接続端子33をそれぞれ有する水晶振動子の全体の1/4の部分を、半田34によって外部基板に接合したシミュレーションモデルを用いて行った。
【0107】
セラミックベース30、リッド31、及び、図11の外部接続端子33の寸法は、上記図1図3に示される実施形態と同じ寸法とし、図10の外部接続端子32は、図11の外部接続端子33の短辺方向への延出長さを短くして形状を対称としたものである。
【0108】
次に、この応力シミュレーションの結果について説明する。
【0109】
上記図10及び図11の外部接続端子32,33における応力の分布を、図12及び図13にそれぞれ示す。
【0110】
この図12及び図13は、外部接続端子32,33の応力の大小を、応力が大きくなるにつれて、紫から赤へとレインボーカラーで段階的に示したものを、濃淡画像に変換したものである。
【0111】
図13に示すように、L字状の非対称な外部接続端子33では、図12の対称な外部接続端子32に比べて、応力の大きな部分が、外部接続端子33の非対称に長く延びる方向(図13の下方)へ広がって応力勾配が生じている。
【0112】
クラックは、応力が高い領域から低い領域へ進展していくと考えられる。したがって、図12の対称な外部接続端子32の場合には、クラック発生の起点となりやすいベース底面の中心から最も遠方に位置する角部から、矢印AW1で示すように、仮想角部CPに向かって応力が伝搬すると考えられる。
【0113】
これに対して、図13のL字状の非対称な外部接続端子33の場合には、非対称に長く延びる方向に、応力の大きい領域が広がるために、応力の勾配が生じ、クラック発生の起点となりやすいベース底面の中心から最も遠方に位置する角部から、矢印AW1で示すように、仮想角部CPに向かう応力が、矢印AW2で示す非対称に長く延びている部分の影響を受けて、長く延びる方向である短辺方向(図13では、下方向)にずれて伝搬すると考えられる。
【0114】
応力の伝搬方向が、このような向きとなることによって、クラック発生の起点となり易いベース底面の中心O4から最も遠方に位置する仮想角部Pから、ベース底面の中心に向かう方向への応力の伝搬を遅らせることができる。
【0115】
なお、図11の外部端子33とは逆に、下枠部22の外周縁22aの長辺方向に延出した辺の長さ10Lが、前記外周縁22aの短辺方向に延出した辺の長さ10Wよりも長い非対称な平面視L字状の外部端子についても応力シミュレーションを行った。この場合は、図12の対称な外部接続端子32に比べて、応力の大きな部分が、外部接続端子33の非対称に長く延びる方向、すなわち、下枠部22の外周縁22aの長辺方向へ広がって応力勾配が生じた。したがって、ベース底面の中心から最も遠方に位置する角部から、仮想角部CPに向かう応力が、前記長辺方向にずれて伝搬すると考えられる。
【0116】
図14本発明の他の実施形態を示す。なお上記実施形態と同一の構成については同一の参照符号を付してその説明を省略する。上記実施形態では、2つの円弧の曲率半径(R1とR2)は同一となっていたが、この実施形態では異なっている。
【0117】
具体的には、ベース22の下枠部222の底面2202の内周縁222bの4隅の円弧状(4分の1円)E2Rの内周縁における曲率半径R1よりも、4つの外部接続端子102a,102b,102c,102d(図14では代表例として102aのみを図示している)の円弧状(4分の1円)102Rの曲率半径R3の方が大きくなっている。
【0118】
下枠部222の底面2202の内周縁222bの4隅の円弧の中心O1と、外部接続端子102aの円弧状102Rの内周縁における円弧の中心O3とは、下枠部222の外周縁222aの長辺方向(図14において左右方向)に沿って延びる1本の仮想直線VL2上に位置している。
【0119】
このように2つの円弧の曲率半径(R1とR3)とが異なる場合であっても、ベース22から外部接続端子102aに伝わる応力をより緩和させることができる。これにより、超小型の水晶振動子においても半田のクラック発生を抑制することができる。つまり、下枠部222の内周縁の4隅を平面視で円弧状E2Rにして下枠部222の剛性を高めてベース22の撓みを生じ難くするとともに、補強された下枠部222の内周縁の4隅の円弧と外部接続端子102aの内周縁の円弧とを対応させることによって、ベース22から外部接続端子102aに伝わる応力をより緩和することができる。
【0120】
なお、この図14の実施形態では、外部接続端子102aの角部C4は、下枠部222の円弧状E2Rの内周縁222bには近接していない。すなわち、上記図3及び図5で示す近接領域PA及び周辺領域SAに位置していない。
【0124】
上述の本発明の各実施形態では、下枠部の底面の内周縁の4隅の円弧および外部接続端子の内周縁の円弧の、それぞれの平面視形状は4分の1円であったが、前記円弧の平面視形状は4分の1円以外であってもよい。
【0125】
上述の本発明の実施形態においては、ベースの構造は断面視でH型としたが、本発明は基板部の下面側の外周部にのみ枠部を形成することで下側凹部を設けたベースにも適用可能である。当該構造のベースの場合、基板部の上面側は平坦面となるため、基板部の上面の外周部に対応するように、その下面側の外周部に鍔部が形成された蓋を用いて、基板部の上面側に搭載された圧電素子を気密封止するようにしてもよい。
【0126】
上述した本発明の実施形態では温度センサとしてサーミスタを使用しているが、サーミスタ以外にダイオード等を用いることも可能である。また、温度センサを内蔵した水晶振動子だけでなく、電子部品として発振回路を内蔵したICを用いた圧電発振器や、温度補償回路等を内蔵したICを用いた温度補償型の圧電発振器にも本発明は適用可能である。
【0127】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明は、圧電デバイスの量産に好適である。
【符号の説明】
【0129】
1 水晶振動子
2、21、22 絶縁性容器
3 水晶素子
4 電子部品
5 蓋
10a、101a、102a、10b、10c、10d 外部接続端子
14 無電極領域
21 上枠部
22、221 下枠部
E1 上側凹部
E2 下側凹部
220、230 下枠部の底面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14