(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】普遍的な抗原の賦活化化合物とその使用の方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20220207BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20220207BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20220207BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20220207BHJP
【FI】
G01N33/53 Y
G01N33/68
G01N33/48 R
G01N27/62 V
G01N33/48 P
(21)【出願番号】P 2019152680
(22)【出願日】2019-08-23
(62)【分割の表示】P 2016538510の分割
【原出願日】2014-10-31
【審査請求日】2019-09-20
(32)【優先日】2014-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511248249
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ ヒューストン システム
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】エリクセン,ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】ヴォラート,クレイグ
(72)【発明者】
【氏名】バーク,スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】モリー,ウィルナ
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-258024(JP,A)
【文献】特表2013-502564(JP,A)
【文献】特開2002-350430(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01376096(EP,A1)
【文献】特表2009-519027(JP,A)
【文献】CATTORETTI, G et al.,ANTIGEN UNMASKING ON FORMALIN-FIXED, PARAFFIN-EMBEDDED TISSUE SECTIONS,JOURNAL OF PATHOLOGY,1993年,vol.171,PP.83-98
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原を賦活化して、固定組織中のアミノ酸、ペプチド、及びタンパク質の検出を改善するための方法であって、
アルデヒド捕捉剤を含有する溶液を調製する工程、ここで、該アルデヒド捕捉剤は、マレイン酸、無水マレイン酸、置換された無水マレイン酸、2,3-ジメチルマレイン酸無水物、ジクロロマレイン酸、ペルオキシマレイン酸、2,3-ジクロロマレイン酸、これらの誘導体、及びこれらの組合せからなる群から選択される;
アルデヒド系架橋結合剤で固定した組織を前記溶液と接触させる工程;
前記溶液を3.5~5.5の最適なpHにおいて加熱する工程、ここで、この溶液のpHは、アルデヒド系架橋結合剤とアルデヒド捕捉剤が反応する特異的な範囲内にある;
を含んでなり、ここで、アルデヒド系架橋結合剤のアルデヒド部分とアルデヒド捕捉剤の反応によって、抗原が賦活化され、固定組織中のアミノ酸、ペプチド、及びタンパク質の検出が改善される、上記方法。
【請求項2】
前記アルデヒド系架橋結合剤がホルムアルデヒド又はグルタルアルデヒドである、請求項1の方法。
【請求項3】
前記溶液中のアルデヒド捕捉剤の濃度が0.05%~30%である、請求項1の方法。
【請求項4】
前記
加熱が60℃~125℃
で行われて、アルデヒドとアルデヒド付加物の間で可逆平衡に到達させる工程をさらに含んでなる、請求項1の方法。
【請求項5】
前記溶液が加熱処理組織において自家蛍光を低下させる、請求項
4の方法。
【請求項6】
前記組織を染色して、タンパク質、ペプチド、前記タンパク質、ペプチドを含んでなる抗原又はエピトープ、又は抗原を検出する工程をさらに含んでなる、請求項1の方法。
【請求項7】
前記アルデヒド捕捉剤が、2-スルファニルブト-2-エン二酸、ブト-2-エン二酸、2-メトキシブト-2-エン二酸、2,3-ジジュウテリオブト-2-エン二酸、ブト-2-エンジオエート、2-ヒドロペルオキシブト-2-エン二酸、2-クロロ-3-メチルブト-2-エン二酸、2-ブテン二酸、[(Z)-3-カルボキシプロプ-2-エノイル]オキシダニウム、(Z)-ブト-2-エン二酸、及び、上記化合物の任意の組合せからなる群から選択される、請求項1の方法。
【請求項8】
前記溶液が、パラフィン包埋試料よりパラフィンを除去して、抗原が賦活化された後で蛍光強度を高める、0.1%~5%の非イオン性界面活性剤をさらに含有する、請求項1の方法。
【請求項9】
前記非イオン性界面活性剤が、セトマクロゴール1000、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、コカミドジエタノールアミン、コカミドモノエタノールアミン、デシルグルコシド、IGEPAL CA-630、イソセテス-20、ラウリルグルコシド、NP-40、ノニデットP-40、ノノキシノール-9、ノノキシノール類、モノラウリン、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、オレイルアルコール、ポロキサマー類、ポロキサマー407、ポリグリセロールポリリシンオレエート、ポリソルベート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート;ステアリルアルコール;トリトンX-100;ツイーン80;オクチル-、デシル-、ドデシル-グルコピラノシド、-マルトシド、又はデオキシコール酸である、請求項
8の方法。
【請求項10】
前記溶液が、保存剤、抗真菌剤、抗菌剤、着色剤、色素剤、陰イオン洗浄剤、金属塩、抗酸化剤、又はこれらの組合せより選択される安定化剤をさらに含有する、請求項1の方法。
【請求項11】
前記抗酸化剤が2mM~400mMの濃度のグルタチオンである、請求項
10の方法。
【請求項12】
マレイン酸、無水マレイン酸、置換された無水マレイン酸、2,3-ジメチルマレイン酸無水物、ジクロロマレイン酸、ペルオキシマレイン酸、2,3-ジクロロマレイン酸、これらの誘導体、及びこれらの組合せからなる群から選択される
アルデヒド捕捉剤を溶液中に含んでなる製剤であって、
アルデヒド捕捉剤は、pHが3.5~5.5の範囲内である加熱された溶液中にあり、ここで、この溶液のpHは、アルデヒド系架橋結合剤とアルデヒド捕捉剤が反応する特異的な範囲内にある、上記製剤。
【請求項13】
前記
アルデヒド捕捉剤又は
アルデヒド捕捉剤の混合物の溶液中の濃度が0.05%~30%である、請求項
12の製剤。
【請求項14】
非イオン性界面活性剤を0.05%~30%の濃度でさらに含んでなり、ここで前記非イオン性界面活性剤は、セトマクロゴール1000、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、コカミドジエタノールアミン、コカミドモノエタノールアミン、デシルグルコシド、IGEPAL CA-630、イソセテス-20、ラウリルグルコシド、NP-40、ノニデットP-40、ノノキシノール-9、ノノキシノール類、モノラウリン、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、オレイルアルコール、ポロキサマー類、ポロキサマー407、ポリグリセロールポリリシンオレエート、ポリソルベート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート;ステアリルアルコール;トリトンX-100;ツイーン80;オクチル-、デシル-、ドデシル-グルコピラノシド、-マルトシド、又はデオキシコール酸である、請求項
12の製剤。
【請求項15】
保存剤、抗真菌剤、抗菌剤、着色剤、色素剤、陰イオン洗浄剤、金属塩、抗酸化剤、又はこれらの組合せより選択される安定化剤をさらに含んでなる、請求項
14の製剤。
【請求項16】
抗原を賦活化して、固定組織中のアミノ酸、ペプチド、及びタンパク質の検出を改善するためのキットであって、
マレイン酸、無水マレイン酸、置換された無水マレイン酸、2,3-ジメチルマレイン酸無水物、ジクロロマレイン酸、ペルオキシマレイン酸、2,3-ジクロロマレイン酸、これらの誘導体、及びこれらの組合せからなる群より選択されるアルデヒド捕捉剤;
任意選択の非イオン性界面活性剤;
安定化剤;
染色剤、着色剤、又は抗体;及び
該キットの使用説明書;
を含んでな
り、ここで、アルデヒド捕捉剤は、pHが3.5~5.5の範囲内である加熱された溶液中にあり、この溶液のpHは、アルデヒド系架橋結合剤とアルデヒド捕捉剤が反応する特異的な範囲内にある、上記キット。
【請求項17】
前記アルデヒド捕捉剤が、2-スルファニルブト-2-エン二酸、ブト-2-エン二酸、2-メトキシブト-2-エン二酸、2,3-ジジュウテリオブト-2-エン二酸、ブト-2-エンジオエート、2-ヒドロペルオキシブト-2-エン二酸、2-クロロ-3-メチルブト-2-エン二酸、2-ブテン二酸、[(Z)-3-カルボキシプロプ-2-エノイル]オキシダニウム、(Z)-ブト-2-エン二酸、及び、上記化合物の任意の組合せからなる群から選択される、請求項
16のキット。
【請求項18】
前記非イオン性界面活性剤が、セトマクロゴール1000、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、コカミドジエタノールアミン、コカミドモノエタノールアミン、デシルグルコシド、IGEPAL CA-630、イソセテス-20、ラウリルグルコシド、NP-40、ノニデットP-40、ノノキシノール-9、ノノキシノール類、モノラウリン、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、オレイルアルコール、ポロキサマー類、ポロキサマー407、ポリグリセロールポリリシンオレエート、ポリソルベート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート;ステアリルアルコール;トリトンX-100;ツイーン80;オクチル-、デシル-、ドデシル-グルコピラノシド、-マルトシド、又はデオキシコール酸である、請求項
16のキット。
【請求項19】
前記安定化剤が、保存剤、抗真菌剤、抗菌剤、着色剤、色素剤、陰イオン洗浄剤、金属塩、抗酸化剤、又はこれらの組合せである、請求項
16のキット。
【請求項20】
抗原賦活化剤を同定する方法であって、
水溶液において、あるタンパク質をアルデヒド系架橋結合剤で固定する工程;
前記溶液を凍結乾燥させて、固定化タンパク質を入手する工程;
前記固定化タンパク質を、試験される薬剤を含有する溶液へ加える工程;
試験される前記薬剤と固定化タンパク質を含有する前記溶液を
3.5~5.5の最適なpHにおいて加熱する工程
、ここで、この溶液のpHは、アルデヒド系架橋結合剤とアルデヒド捕捉剤が反応する特異的な範囲内にある;及び
該タンパク質を質量分析法で検出する工程;
を含んでなり、ここで、前記タンパク質についてのピークの存在によって、前記被験薬剤が抗原賦活化剤であることが示される、上記方法。
【請求項21】
前記アルデヒド系架橋結合剤が水中4%ホルムアルデヒドを含む、請求項20の方法。
【請求項22】
前記溶液を60℃~125℃まで45分~90分間加熱する、請求項20の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この国際特許出願は、35 U.S.C.§119(e)の下で、このいずれもの全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国仮特許出願シリアル番号:62/037,905(2014年8月15日出願、現在放棄された)と米国仮特許出願シリアル番号:61/915,271(2013年12月12日出願、現在放棄された)の優先権の利益を主張する。
【0002】
連邦政府の資金提供についての説明
本発明は、認可番号:1R15AG039008-01の下で米国国立衛生研究所によって報奨された政府支援でなされた。連邦政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は、組織学の分野と、アルデヒド系架橋結合剤を使用して保存された組成物又は組織中のタンパク質の検出に概して関する。具体的には、本発明は、該組成物又は組織中に含有される、アルデヒド固定液(fixatives)によって化学的に修飾されたタンパク質
を賦活化するためにアルデヒド捕捉剤を使用する、抗原賦活化の方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
関連技術についての記載
臨床病理の実験室では、生体材料の保存用に、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド及びアセトン、又は他の有機溶媒のような数種の固定液が定型的に使用されている。しかしながら、大多数の固定化手順では、ホルムアルデヒドとグルタルアルデヒドのようなアルデヒド系架橋結合剤の使用を伴う。この固定溶液は、典型的には、リン酸ナトリウムを含有するホルムアルデヒド水溶液であって、少量の強酸又は強塩基の添加後にもpH7.2~7.6へのほとんどpH変化をもたらさない緩衝作用と、ほぼ等張の溶液を提供するように構成されている。この固定化溶液は、アミン基、フェノール基、チオール基、及びヒドロキシル基のような、タンパク質上の様々な基へホルムアルデヒド又はグルタルアルデヒドを付加して、当初は、2つのアミン基の間での、イミン、エナミン、ヒドロキシルメチレン、及びメチレン架橋結合が含まれる一連の可逆的修飾を生じる。ホルムアルデヒド固定化が長期化すると、タンパク質分子の内部で不可逆的な分子間及び分子内の架橋結合が起こり得て、パラフィンワックスの浸透、及び/又は抗体分子のアクセスを損なう可能性がある、濃密なネットワークを生じる。この結果、目的の抗原が可逆的に又は不可逆的にも覆われる場合があるか、又はアルデヒド系固定液との反応によってエピトープが化学的に修飾又は破壊される場合がある。
【0005】
精製タンパク質、タンパク質抽出物、細胞又は組織試料において多様な免疫組織化学法とタンパク質分析法が広く使用されて大いに有用であるにもかかわらず、さらなる改善への大きなニーズがある。そのような改善は、例えば、細胞又は組織試料のより温和な固定化、抗原賦活化及び/又は結果の再現性における改善、並びに、ホルムアルデヒド固定化のような標準手順において破壊される対応する抗原又はエピトープに対する抗体の使用への改善に関する。
【0006】
このように、当該技術分野には、タンパク質を露出させて抗原を賦活化することについての改善法への認知されたニーズがある。特に、先行技術には、タンパク質中のアミン基でのイミン、エナミン、及びメチレンヒドロキシル形成の逆転、アミノ基間のメチレン架橋結合の逆転、及びタンパク質に対する他の可逆的なアルデヒド修飾によって、固定組織
中のタンパク質とのアルデヒド反応を逆転させるように容易に定式化される方法及び化合物に乏しい。本発明は、当該技術分野におけるこの積年のニーズと要望を満足させるものである。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、抗原を賦活化して、アルデヒド系架橋結合剤で固定された組織中のアミノ酸、ペプチド、及びタンパク質の検出を改善するための方法へ向けられる。本方法は、アルデヒド捕捉剤の溶液を調製する第一工程を含む。次いで、アルデヒド系架橋結合剤で固定された組織をこの溶液と接触させる;ここで、架橋結合剤を含んでなるアルデヒドとアルデヒド捕捉剤の反応は、抗原を賦活化して、固定組織中のアミノ酸、ペプチド、及びタンパク質の検出を改善する。固定された組成物又は組織では、アルデヒドとアルデヒド付加物が可逆平衡の状態で存在するので、アルデヒド捕捉剤は、加熱と最適pHの存在下で、この平衡を、アルデヒドを放出させる方向へシフトさせ、可逆的なアルデヒド付加物の除去をもたらし、それによってタンパク質を露出させることができる。本発明は、該溶液を約60℃~約125℃まで加熱して、アルデヒドとアルデヒド付加物間の可逆平衡に到達させる工程をさらに含んでなる関連の方法へ向けられる。本発明は、露出されたタンパク質、又はそれを含んでなる抗原又はエピトープを検出するために該組織を染色する工程をさらに含んでなる別の関連した方法へ向けられる。
【0008】
本発明はまた、本明細書に記載される方法に有用な、溶液中の化合物又は化合物の混合物の製剤へ向けられる。この化合物は、アルデヒド捕捉剤又はその混合物であり得る。該製剤は、アルデヒド捕捉剤、任意選択の非イオン性界面活性剤、及び安定化剤を、加熱処理溶液中に、覆われたタンパク質と反応するのに有効な濃度で含む。
【0009】
本発明は、本発明の抗原賦活化法に有用な抗原捕捉剤の化合物及び/又は製剤を含んでなるキットへさらに向けられる。このキットはまた、染色剤、着色剤、抗体、又は露出されたタンパク質、ペプチド、エピトープ、又は抗原を検出するのに有用な他の成分、及び該キットの使用説明書を含む。
【0010】
本発明は、本明細書に記載される製剤を使用して加熱することによって引き起こされる、組織中の自家蛍光(autofluorescence)を低下させる方法へさらに向けられる。本発明は、タンパク質露出処理後の蛍光強度を高めると同時に、本明細書に記載される溶液中の任意選択の非イオン性界面活性剤を適用することによってパラフィン包埋試料よりパラフィンを除去するための方法へさらに向けられる。
【0011】
本発明は、抗原賦活化剤を同定するための方法へなおさらに向けられる。この方法では、タンパク質を水溶液においてアルデヒド系架橋結合剤で固定して、この溶液を凍結乾燥させて、固定化タンパク質を入手する。この固定化タンパク質を、抗原賦活化剤として試験される化合物を含有する溶液へ加えて、該化合物と固定化タンパク質を含有する溶液を加熱する。このタンパク質を質量分析法によって検出し、ここで該タンパク質が存在すれば、被験薬剤が抗原賦活化剤であることが示唆される。
【0012】
本発明の他の側面とさらなる側面、特徴、及び利点は、開示の目的のために示される、現在好ましい態様についての以下の記載より明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
上記に引用した本発明の特徴、利点、及び目的、並びに明瞭となる他の特徴、利点、及び目的が達成されて詳しく理解され得るように、上記に簡略に概説した本発明のより特別な記載について、付帯の図面に例示されるそのいくつかの態様を参照にして言及することができる。これらの図面は、本明細書の一部を構成する。しかしながら、付帯の図面は、
本発明の好ましい態様について例示するものであるが故に、その範囲を限定するものとみなしてはならないことに留意されたい。
【
図1】図面1A~図面1Bは、置換された無水マレイン酸(図面1A)と、マレイン酸又は(Z)-2-ブテン二酸(図面1B)の基本構造を図示する。
【
図2】図面2A~図面2Dは、IV型コラーゲンの抗原賦活化と免疫検出を例示する。パラホルムアルデヒド固定組織を、TBST(図面2A)、低pH(6.0)のクエン酸ナトリウム(図面2B)、ペプシン前処理(図面2C)、及び0.05%無水マレイン酸前処理(図面2D)を使用する抗原賦活化へ処した。
【
図3】図面3A~図面3Cは、免疫組織化学法による可視化を介した、固定組織における抗原賦活化を例示する。免疫蛍光を使用して、パラホルムアルデヒド固定化低温保持(cryostat)切片組織を可視化し(図面3A)、免疫蛍光を使用して、ホルムアルデヒド固定化パラフィン包埋組織を可視化し(図面3B)、そしてDAB発色原を使用する免疫組織化学によって、ホルムアルデヒド固定化パラフィン包埋組織を可視化する(図面3C)。
【
図4】図面4A~図面4Eは、マレイン酸(図面4A)、無水マレイン酸(図面4B)、2,3-ジメチルマレイン酸無水物(図面4C)、フマル酸(図面4D)、及びコハク酸(図面4E)を使用して、固定血管組織における抗原賦活化を比較する。
【
図5】図面5A~図面5Dは、エンドセリン-1(図面5A)、VEGF(図面5B)、フォン・ウィレブランド因子(図面5C)、及びα平滑筋アクチンとIV型コラーゲンの両方(図面5D)の賦活化を実証する。
【
図6】図面6A~図面6Bは、増加濃度のマレイン酸中で加熱後の固定化脳ホモジェネートにおいて検出されるタンパク質の濃度(図面6A)と、ドットブロット比較における対応するGAPDHの増加(図面6B)を例示する。
【
図7】図面7は、パラホルムアルデヒド固定化成人ヒト脳組織における、抗原賦活化後の血管のIV型コラーゲン染色を示す顕微鏡像である。
【
図8】図面8A~図面8Bは、0.05%アスコルビン酸単独(図面8A)と比較した、非イオン性界面活性剤、トリトンX-100の添加による抗原賦活化処理後の蛍光の増強(図面8B)を示す顕微鏡像を示す。
【
図9】図面9A~図面9Cは、5%アスコルビン酸を伴わない加熱処理組織(heated tissue)(図面9B)と非加熱処理組織(図面9A)と比較した、5%アスコルビン酸とともに加熱処理した組織における自家蛍光の低下(図面9C)を実証する顕微鏡像を示す。
【
図10】図面10A~図面10Cは、溶液中2.8mMグルタチオン(図面10A)、5%アスコルビン酸(図面10B)、及び2.8mMグルタチオン+5%アスコルビン酸(図面10C)とともに70℃まで30分間加熱されたパラホルムアルデヒド固定化パラフィン包埋脳組織が脱パラフィン化されることを示す。
【
図11A】図面11A~図面11Lは、ホルマリン処理済アンジオテンシンI(図面11A~図面11B)の、pH=3.5の水(図面11C)、pH=5.5の水(図面11D)、5%イミダゾリドン(図面11E)、5%クエン酸(図面11F)、5%グアニジン(図面11G)、5%マレイン酸(図面11H)、pH=3.5の5%トリス緩衝液(図面11I)、5%アスコルビン酸(図面11J)、5%ヒドロキシルアミン(図面11K)、及び5%システイン(図面11L)を使用する抗原賦活化についての質量分析法の結果を示す。図面11Aは、ホルマリン処理前アンジオテンシンIの抗原賦活化についての質量分析法の結果を示す。
【
図11B】図面11Bは、ホルマリン処理済アンジオテンシンIの抗原賦活化についての質量分析法の結果を示す。
【
図11C】図面11Cは、ホルマリン処理済アンジオテンシンIの、pH=3.5の水を使用する抗原賦活化についての質量分析法の結果を示す。
【
図11D】図面11Dは、ホルマリン処理済アンジオテンシンIの、pH=5.5の水を使用する抗原賦活化についての質量分析法の結果を示す。
【
図11E】図面11Eは、ホルマリン処理済アンジオテンシンIの、5%クエン酸を使用する抗原賦活化についての質量分析法の結果を示す。
【
図11F】図面11Fは、ホルマリン処理済アンジオテンシンIの、5%クエン酸を使用する抗原賦活化についての質量分析法の結果を示す。
【
図11G】図面11Gは、ホルマリン処理済アンジオテンシンIの、5%グアニジンを使用する抗原賦活化についての質量分析法の結果を示す。
【
図11H】図面11Hは、ホルマリン処理済アンジオテンシンIの、5%マレイン酸を使用する抗原賦活化についての質量分析法の結果を示す。
【
図11I】図面11Iは、ホルマリン処理済アンジオテンシンIの、pH=3.5の5%トリス緩衝液を使用する抗原賦活化についての質量分析法の結果を示す。
【
図11J】図面11Jは、ホルマリン処理済アンジオテンシンIの、5%アスコルビン酸を使用する抗原賦活化についての質量分析法の結果を示す。
【
図11K】図面11Kは、ホルマリン処理済アンジオテンシンIの、5%ヒドロキシルアミンを使用する抗原賦活化についての質量分析法の結果を示す。
【
図11L】図面11Lは、ホルマリン処理済アンジオテンシンIの、5%システインを使用する抗原賦活化についての質量分析法の結果を示す。
【
図12A】図面12A~図面12Dは、ホルマリン処理済ACTH(図面12A)の、5%マレイン酸(図面12B)、5%アスコルビン酸(図面12C)、及び水(図面12D)を使用する抗原賦活化についての質量分析法の結果を示す。ACTHは、ホルマリンで、室温で48時間処理する。図面12Aは、ホルマリン処理済ACTHの抗原賦活化についての質量分析法の結果を示す。
【
図12B】図面12Bは、ホルマリン処理済ACTHの、5%マレイン酸を使用する抗原賦活化についての質量分析法の結果を示す。
【
図12C】図面12Cは、ホルマリン処理済ACTHの、5%アスコルビン酸を使用する抗原賦活化についての質量分析法の結果を示す。
【
図12D】図面12Dは、ホルマリン処理済ACTHの、水を使用する抗原賦活化についての質量分析法の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書に使用するように、以下の用語及び字句は、下記に説明する意味を有するものとする。他に定義されなければ、本明細書に使用するすべての科学技術用語は、当業者に通常理解されるのと同じ意味を有する。
【0015】
本明細書に使用するように、「1つの(a 又は an)」(不定冠詞)という用語は、1
以上を意味する場合がある。特許請求項(複数)において本明細書に使用するように、「~を含んでなる(comprising)」という単語と組み合わせて使用されるとき、「1つの(a 又は an)」(不定冠詞)という用語は、1又は1より多いことを意味する場合がある。本明細書に使用するように、「別の(another)」又は「他の(other)」は、同じか又は異なる請求項の要素又はその構成要素の少なくとも第二のもの以上のことを意味する場合がある。「~を含む(comprise)」と「~を含んでなる(comprising)」という用語は、包括的で無制限な意味で使用され、追加の要素が含まれ得ることを意味する。
【0016】
本明細書に使用するように、特許請求項における「又は(or)」という用語は、明確に二者択一のみを意味するように示されなければ、又はその二者択一が相互に排除的でなければ、「及び/又は」を意味するが、本開示では、二者択一のみと「及び/又は」を意味する定義を支持する。
【0017】
本明細書に使用するように、「約」という用語は、明確に示されるかどうかにかかわらず、例えば、整数、比率、及び百分率が含まれる、数値に言及する。「約」という用語は、一般に、当業者であれば引用値と同等とみなす(例えば、同じ機能又は結果を有する)、数値の範囲(例、引用値の+/-5~10%)に言及する。いくつかの事例において、「約」という用語には、近傍の有効数字へ丸められる数値が含まれる場合がある。
【0018】
本明細書に使用するように、「露出(unmasking)」という用語は、抗原を賦活化する
こと、及び/又は固定組織中のアミノ酸、ペプチド、及びタンパク質の検出を改善することを意味する。
【0019】
本発明の1つの態様では、アルデヒド捕捉剤の溶液を調製する工程;及び、アルデヒド系架橋結合剤で固定した組織を前記溶液と接触させる工程;を含んでなる、抗原を賦活化して、固定組織中のアミノ酸、ペプチド、及びタンパク質の検出を改善するための方法を提供し、ここで架橋結合剤を含んでなるアルデヒドとアルデヒド捕捉剤の反応は、抗原を賦活化して、固定組織中のアミノ酸、ペプチド、及びタンパク質の検出を改善する。
【0020】
さらにこの態様に対して、本方法は、前記溶液を約60℃~約125℃まで約30分~約48時間の間加熱する工程を含み、ここではこの温度で、アルデヒドとアルデヒド付加物の間に可逆平衡がある。このさらなる態様において、上記化合物の溶液は、加熱処理組織において自家蛍光を低下させる。なおさらにこの態様に対して、本方法は、賦活化されたタンパク質、又は前記タンパク質を含んでなる抗原又はエピトープ、又は抗原を検出するために組織を染色する工程を含む。
【0021】
すべての態様において、アルデヒド捕捉剤の溶液の濃度は、約0.05%~約30%である。また、この溶液のpHは、アルデヒド捕捉剤に特異的な範囲内で維持される。加えて、すべての態様において、代表的なアルデヒド系架橋結合剤は、ホルムアルデヒド又はグルタルアルデヒドであり得る。アルデヒド捕捉剤を表1に収載するが、これに限定されるわけではない。特に、該化合物は、アミノエタノール、N-メチルアミノエタノール、2-(ヒドロキシメチル)ピペリジン、2-(ヒドロキシメチル)ピロリジン、N-ベンジルアミノエタノール、アミノ(ビスエタノール)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール;セリン、スレオニン、キトサン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、アルギニン、リジン、グリシン、ヒスチジン、5-ヒドロキシトリプトファン、カルノシン、グアニジン、モルホリン、2-ヒドロキシメチルピペリジン、アンモニア、炭酸アンモニウム、ヒドロキシルアミン、O-アルキル化ヒドロキシルアミン、N-アルキル化ヒドロキシルアミン、O,N-アルキル化ヒドロキシルアミン、ヒドロキシメチルアミン、メトキシアミン、ジブチルアミン、トリエチレンテトラミン、ベンジルアミン、チアベンダゾール、ベンゾトリアゾール、トリアゾール、インドリン、ベンゾグアナミン、3,4-ジアミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸メチル、アニリン;1-アミノ-2-インドール;ポリオキシアルキレンアミン;ポリアミドアミン、アントラニル酸、アントラニル酸メチル、アントラニルアミド;o-フェニレンジアミン;4-アミノ安息香酸;3,4-ジアミノ安息香酸;ヒドラジン、N-メチルヒドラジン、N-フェニルヒドラジン、メチルヒドラジド、2,4-ジニトロフェニルヒドラジド、尿素、アラントイン、イミダゾリドン、フェノバルビタール、グリコルリル、ビウレット、システアミン、システイン、グルタチオン、重亜硫酸ナトリウム、o-メルカプトベンズアミド、マロンアミド、オキサミド、アセトアセトアミド、オキサミド、ピログルタミン酸、スクシンアミド、エチレンジアミン-N,N’-ビスアセトアセトアミド、N-(2-エチルヘキシル)アセトアセトアミド、N-(3-フェニルプロピル)アセトアセトアミド、ポリアミド;ポリエステルアミド、ソルビトール、ヘキサンジオール、グルコース、セルロース、ヒドロキシシトロネロール、ジメドン、アスコルビン酸、ペンタンジオン、2-ブタノン、シクロヘキサノン、2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオン、2-ペンタノン、5,5-ジメチル-1,3-シクロヘキサンジオン、デヒドロ酢酸、1,3-ジヒドロキシアセトン二量体、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、ピロガロール、サリチルアミド;サリチルアニリド;4,5-ジヒドロキシ-2,7-ナフタレンジスルホン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、2,3-ジメチルマレイン酸無水物、1(E)-2-ブテン二酸ジメチルエステル、2-スルファニルブト-2-エン二酸、ブト-2-エン二酸、(E)-3-ニトロプロプ-2-エノエート、(E)-2,3-ジジュウテリオブト-2-エン二酸、(Z)-2-メトキシブト-2-エン二酸、(Z)-2-ヒドロペルオキシブト-2-エン二酸、2-メトキシブト-2-エン二酸、(Z)-2-フルオロブト-2-エンジオエート、4-オキソペント-2-エン酸、(E)-2,3-ジクロロブト-2-エン二酸、ジクロロマレイン酸、(Z)-2-ヨードブト-2-エン二酸、(E)-2,3-ジジュウテリオブト-2-エン二酸、(Z)-2-ヒドロキシ-3-メチルブト-2-エン二酸、2,3-ジジュウテリオブト-2-エン二酸、(E)-3-ニトロブト-2-エン酸、ブト-2-エンジオエート、(E)-4-クロロ-4-オキソブト-2-エノエート、(E)-2,3-ジフルオロブト-2-エンジオエート、(E)-4-ヒドロキシ-4-オキソブト-2-エノエート、フマル酸水素、(Z)-2-スルファニルブト-2-エン二酸、2,3-ジフルオロフマル酸、(E)-4-ヒドロキシ-2-メチル-4-オキソブト-2-エノエート、モノフルオロフマレート、フルオロフマル酸、(Z)-2-クロロブト-2-エン二酸、2-ヒドロペルオキシブト-2-エン二酸、ペルオキシマレイン酸、2-クロロ-3-メチルブト-2-エン二酸、2-クロロ-3-メチルブト-2-エン二酸、2-ブテン二酸、[(E)-3-カルボキシ-1-ヒドロキシプロプ-2-エニリデン]オキシダニウム、(E)-2-メチルブト-2-エンジオエート、2-メチルフマレート、シトラコン酸、2,3-ジクロロマレイン酸、3,4-ジクロロ-5-ヒドロキシフラン-2(5H)-オン、3-クロロカルボニルアクリル酸エチルエステル、4-オキソペント-2-エン酸(E)-エチル、[(Z)-3-カルボキシプロプ-2-エノイル]オキシダニウム、(Z)-ブト-2-エン二酸、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル;活性炭、アルミナ;シリカ;アミン官能化シリカ;タルク;ゼオライト;又は一級又は二級アミン基と、カルボン酸、フェノール、アミド、ヒドロキシル、尿素、エステル又はチオール基の両方(このうちの少なくとも1つがアルデヒドと反応する)を含有する多官能性有機分子種;シクロデキストリン類;又は上記化合物の任意の組合せであり得る。
【0022】
すべての態様において、アルデヒド捕捉剤の溶液は、パラフィンをパラフィン包埋試料より除去して、抗原が賦活化された後で蛍光強度を高める、約0.1%~約5%の非イオン性界面活性剤をさらに含有し得る。代表的な非イオン性界面活性剤の例には、限定されないが、セトマクロゴール1000、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、コカミドジエタノールアミン、コカミドモノエタノールアミン、デシルグルコシド、IGEPAL CA-630、イソセテス-20、ラウリルグルコシド、NP-40、ノニデットP-40、ノノキシノール-9、ノノキシノール類、モノラウリン、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、オレイルアルコール、ポロキサマー類、ポロキサマー407、ポリグリセロールポリリシンオレエート、ポリソルベート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート;ステアリルアルコール;トリトンX-10;ツイーン80.;オクチル-、デシル-、ドデシル-グルコピラノシド、-マルトシド、及びデオキシコール酸が含まれる。
【0023】
これらの態様において、該溶液は、安定化剤をさらに含有し得る。代表的な安定化剤の例には、限定されないが、保存剤、抗真菌剤、抗菌剤、着色剤、色素剤、陰イオン洗浄剤、金属塩、抗酸化剤、又はこれらの組合せが含まれる。1つの好ましい態様において、安定化剤は、約2mM~約400mMの濃度範囲にあるグルタチオンである。
【0024】
本発明の別の態様では、溶液中のある化合物又は化合物の混合物、任意選択の(optional)非イオン性界面活性剤、及び上記に記載の安定化剤を、加熱処理溶液において、該化合物が有効なアルデヒド捕捉剤であるための特別なpH範囲内で、そしてアルデヒドとアルデヒド付加物との間に平衡があるか又はアルデヒドとアルデヒド付加物との間で平衡に達する速度を高める温度範囲内で、覆われたタンパク質と反応するのに有効な濃度で含んでなる製剤を提供する。特に、該製剤は、該化合物又は該化合物の混合物を約0.05%~約30%の濃度で含み得て、約0.1~約5%の濃度でのその任意選択の非イオン性界面活性剤と、水を含んでなる溶液中の安定化剤をさらに含有し得る。安定化剤の例は、限定されないが、保存剤、抗真菌剤、抗菌剤、着色剤、色素剤、陰イオン洗浄剤、金属塩、抗酸化剤、又はこれらの組合せである。
【0025】
本発明のなお別の態様では、上記に記載のようなアルデヒド捕捉剤、上記に記載のような任意選択の非イオン性界面活性剤、上記に記載のような安定化剤、染色剤、着色剤、又は抗体と該キットの使用説明書を含んでなる、固定組織中の目的のタンパク質を賦活化するためのキットを提供する。
【0026】
本発明のなお別の態様では、抗原賦活化剤を同定するための方法を提供し、該方法は、水溶液において、あるタンパク質をアルデヒド系架橋結合剤で固定する工程;前記溶液を凍結乾燥させて、固定化タンパク質を入手する工程;前記固定化タンパク質を、抗原賦活化剤として試験される薬剤を含有する溶液へ加える工程;試験される前記薬剤と固定化タンパク質を含有する前記溶液を加熱する工程;該タンパク質を質量分析法で検出する工程;を含んでなり、ここで前記タンパク質のピークの存在は、前記被験薬剤が抗原賦活化剤であることを示唆する。この態様において、アルデヒド系架橋結合剤は、水中約4%のホルムアルデヒドを含む。この溶液は、約60℃~約125℃の温度範囲まで、約30分~約48時間加熱される。
【0027】
本発明で提供するのは、アルデヒド系架橋結合剤で固定された組織において覆われたタンパク質を露出させて検出するのに有用な方法、化合物、及びキットである。特に、特異的なpH範囲においてアルデヒド捕捉剤として機能するどの化合物も、抗原賦活化に有用である。該化合物は、アルデヒド固定化の間に生成された、組織中のタンパク質への固定付加物の加水分解によって生成される放出アルデヒドに対する反応性を示し、固定組織においてアルデヒドとアルデヒド付加物の間の平衡を(ホルム)アルデヒドの方向へシフトさせる。適用可能な化合物の代表的なリストを表1に示す。
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
実施例に記載されるように、本発明で提供する方法は、溶液中、例えば水中で製剤化される化合物を約0.05%~30%の濃度で利用する。固定組織を最適化されたpH範囲で加熱すると、アルデヒドを解放して、これが溶液中の該化合物と反応して、目的のタンパク質を露出させることができる。該製剤中では、1種の化合物又は化合物の混合物を利用し得る。露出に続いて、目的の1以上のタンパク質を、染色、免疫組織化学又は組織病理学、又は当該技術分野で知られている他の手順より、目的の1以上のタンパク質に基づいて選択される方法によって検出することができる。
【0032】
固定組織において、上記化合物は、血管タンパク質のようなタンパク質のロバスト(robust)検出を可能にして、組織形態を保存する。さらに、上記化合物は、DAPIのような慣用の核酸結合色素を使用する、DNAの in situ 検出を保存し、組織病理学的手順における多色造影を可能にする。
【0033】
このように、また提供するのは、本明細書に記載される方法に有用な新規化合物とその製剤である。該製剤は、タンパク質露出処理後の蛍光強度を高めると同時に、パラフィン包埋試料よりパラフィンを除去し、別の脱ロウ(dewaxing)工程を省くことができる、任意選択の非イオン性界面活性剤を含有し得る。非イオン性界面活性剤には、限定されないが、セトマクロゴール1000、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、コカミドジエタノールアミン、コカミドモノエタノールアミン、デシルグルコシド、IGEPAL CA-630、イソセテス-20、ラウリルグルコシド、NP-40、ノニデットP-40、ノノキシノール-9、ノノキシノール類、モノラウリン、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、オレイルアルコール、ポロキサマー類、ポロキサマー407、ポリグリセロールポリリシンオレエート、ポリソルベート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート;ステアリルアルコール;トリトンX-10;ツイーン80;及びオクチル-、デシル-、ドデシル-グルコピラノシド、-マルトシド、及びデオキシコール酸が含まれる。
【0034】
本発明でさらに提供するのは、固定組織中のタンパク質を露出させるのに有用なキットである。これらのキットは、本明細書に記載される1以上の新規化合物又はその製剤を、検出に使用される抗体又は他の薬剤と組み合わせて含み得る。このようなキットは、多種多様なタンパク質の検出用の1工程抗原賦活化法を可能にする。このキットを用いて、ユーザーは、パラホルムアルデヒド、ホルマリン、エタノールのような多様な条件において、又はパラフィンブロックにおいて保存された固定組織を取り上げて、これらの固定組織を簡便な化学処理法へ処してから、ウェスタンブロッティング及びELISAのような定量技術を使用して、タンパク質を分析し得る。これらの応用により、当業者には、現行では固定化による感度の損失のためにタンパク質の定量分析に使用し得ない、多量の記録保管(archival)組織を使用することが可能になる。
【0035】
以下の実施例は、本発明の様々な態様を例示する目的のために示すのであって、本発明をいかなる形式でも限定することを意図しない。
実施例1
化合物
特別なpH範囲内でアルデヒドと反応するのに有効な代表的なアルデヒド捕捉剤には、限定されないが、アミノエタノール誘導体(アミノエタノール、N-メチルアミノエタノール、2-(ヒドロキシメチル)ピペリジン、2-(ヒドロキシメチル)ピロリジン、N-ベンジルアミノエタノール、アミノ(ビスエタノール)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールが含まれる);セリン、スレオニン、キトサン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、アミノ酸と誘導体(アルギニン、リジン、グリシン、ヒスチジン、5-ヒドロキシトリプトファン、カルノシンが含まれる)、他のアミン及びアニリン含有化合物(グアニジン、モルホリン、2-ヒドロキシメチルピペリジン、アンモニア、炭酸アンモニウム、ヒドロキシルアミン、O-アルキル化ヒドロキシルアミン、N-アルキル化ヒドロキシルアミン、O,N-アルキル化ヒドロキシルアミン、ヒドロキシメチルアミン、メトキシアミン、ジブチルアミン、トリエチレンテトラミン、ベンジルアミン、チアベンダゾール、ベンゾトリアゾール、トリアゾール、インドリン、ベンゾグアナミン、3,4-ジアミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸メチル、アニリンが含まれる);1-アミノ-2-インドール;ポリオキシアルキレンアミン;ポリアミドアミン、アントラニル酸、アントラニル酸メチル、アントラニルアミド;o-フェニレンジアミン;4-アミノ安息香酸;3,4-ジアミノ安息香酸;ヒドラジンとヒドラジド誘導体(ヒドラジン、N-メチルヒドラジン、N-フェニルヒドラジン、メチルヒドラジド、2,4-ジニトロフェニルヒドラジドが含まれる)、尿素誘導体(尿素、アラントイン、イミダゾリドン、フェノバルビタール、グリコルリル、ビウレットが含まれる)、チオール誘導体(システアミン、システイン、グルタチオン、重亜硫酸ナトリウム、o-メルカプトベンズアミドが含まれる)、アミド誘導体(マロンアミド、オキサミド、アセトアセトアミド、オキサミド、ピログルタミン酸、スクシンアミド、エチレンジアミン-N,N’-ビスアセトアセトアミド、N-(2-エチルヘキシル)アセトアセトアミド、N-(3-フェニルプロピル)アセトアセトアミド、ポリアミドが含まれる);ポリエステルアミド、ヒドロキシル化合物(ソルビトール、ヘキサンジオール、グルコース、セルロース、ヒドロキシシトロネロールが含まれる)、ケト誘導体(ジメドン、アスコルビン酸、ペンタンジオン、2-ブタノン、シクロヘキサノン、2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオン、2-ペンタノン、5,5-ジメチル-1,3-シクロヘキサンジオン、デヒドロ酢酸、1,3-ジヒドロキシアセトン二量体が含まれる)、フェノール誘導体(没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、ピロガロール、サリチルアミド;サリチルアニリドが含まれる);4,5-ジヒドロキシ-2,7-ナフタレンジスルホン酸、酸とエステル誘導体(マレイン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、2,3-ジメチルマレイン酸無水物、1(E)-2-ブテン二酸ジメチルエステル、2-スルファニルブト-2-エン二酸、ブト-2-エン二酸、(E)-3-ニトロプロプ-2-エノエート、(E)-2,3-ジジュウテリオブト-2-エン二酸、(Z)-2-メトキシブト-2-エン二酸、(Z)-2-ヒドロペルオキシブト-2-エン二酸、2-メトキシブト-2-エン二酸、(Z)-2-フルオロブト-2-エンジオエート、4-オキソペント-2-エン酸、(E)-2,3-ジクロロブト-2-エン二酸、ジクロロマレイン酸、(Z)-2-ヨードブト-2-エン二酸、(E)-2,3-ジジュウテリオブト-2-エン二酸、(Z)-2-ヒドロキシ-3-メチルブト-2-エン二酸、2,3-ジジュウテリオブト-2-エン二酸、(E)-3-ニトロブト-2-エン酸、ブト-2-エンジオエート、(E)-4-クロロ-4-オキソブト-2-エノエート、(E)-2,3-ジフルオロブト-2-エンジオエート、(E)-4-ヒドロキシ-4-オキソブト-2-エノエート、フマル酸水素、(Z)-2-スルファニルブト-2-エン二酸、2,3-ジフルオロフマル酸、(E)-4-ヒドロキシ-2-メチル-4-オキソブト-2-エノエート、モノフルオロフマレート、フルオロフマル酸、(Z)-2-クロロブト-2-エン二酸、2-ヒドロペルオキシブト-2-エン二酸、ペルオキシマレイン酸、2-クロロ-3-メチルブト-2-エン二酸、2-クロロ-3-メチルブト-2-エン二酸、2-ブテン二酸、[(E)-3-カルボキシ-1-ヒドロキシプロプ-2-エニリデン]オキシダニウム、(E)-2-メチルブト-2-エンジオエート、2-メチルフマレート、シトラコン酸、2,3-ジクロロマレイン酸、3,4-ジクロロ-5-ヒドロキシフラン-2(5H)-オン、3-クロロカルボニルアクリル酸エチルエステル、4-オキソペント-2-エン酸(E)-エチル、[(Z)-3-カルボキシプロプ-2-エノイル]オキシダニウム、(Z)-ブト-2-エン二酸、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチルが含まれる)、固相材料(活性炭、アルミナ;シリカ;アミン官能化シリカが含まれる);タルク;ゼオライト;又は一級又は二級アミン基と、カルボン酸、フェノール、アミド、ヒドロキシル、尿素、エステル又はチオール基の両方(このうちの少なくとも1つがアルデヒドと反応することが可能である)を含有する多官能性有機分子種;シクロデキストリン類;又は上記化合物の任意の組合せが含まれる。
【0036】
実施例2
ホルムアルデヒド固定組織における抗原賦活化:一般法
例えば、表1からの化合物の1つ又は混合物の少量を0.05%濃度で水へ加える。この溶液を約70℃~約95℃まで約30分間加熱する。後続する化学反応は、化学的エピトープの露出又は賦活化を可能にする。このホルムアルデヒド固定組織を先の加熱溶液中へ約30分間入れてから、洗浄する。次いで、この組織は、目的のタンパク質を検出するために染色することができる。無水マレイン酸を使用して、パラホルムアルデヒド固定組織中の血管タンパク質であるIV型コラーゲンの優れた抗原賦活化と免疫検出を実証した(図面2A~図面2D)。
【0037】
実施例3
抗原賦活化は、異なる免疫組織化学法と交差適合性がある
抗原賦活化の方法は、適合性があって、多形態の処理済み組織においてタンパク質の可視化を高める。顕微鏡写真は、免疫蛍光を使用して可視化されるパラホルムアルデヒド固定化低温保持切片組織と、DAB発色原を使用して免疫組織化学法によって可視化されるホルムアルデヒド固定化パラフィン包埋組織における可視化の増強を例証する(図面3A~図面3D)。
【0038】
実施例4
抗原賦活化剤としてのマレイン酸、無水マレイン酸、及び2,3-ジメチルマレイン酸無水物
無水コハク酸を試験品として使用した。実施例1に記載のように調製した化合物の溶液において、パラホルムアルデヒド固定組織試料を加熱してから、この組織中の血管を可視化する。マレイン酸(図面4A)、無水マレイン酸(図面4B)、及び2,3-ジメチルマレイン酸無水物では、関連組織により、血管の可視化での成功裡の抗原賦活化が実証される(図面4C)。図面4Dは、上記化合物のα,β二重結合でのシス(cis)配置が、
トランス(trans)配置を含有するフマル酸での処理より実質的に高い活性を生じること
を示す(フマル酸では、活性の有意な低下が実証される)。別個の対照において、図面4Eは、無水コハク酸処理組織では血管構造が見えないことを実証する。このことは、抗原賦活化にはシス配置が優ることを実証する。
【0039】
実施例5
成体マウス脳組織における無水マレイン酸での血管抗原賦活化
12月齢と6月齢のC57ブラック6Jマウスを慣用の12時間明暗期の管理環境条件下に収容した。犠牲の後で、脳を4%(パーセント)パラホルムアルデヒドにおいて4℃で72時間事後固定(post-fixed)してから70%エタノール溶液へ移して、4℃で保存した。慣用の脱水及び包埋を使用して組織をパラフィン処理してから、5μm間隔で切片化した。低温切片化組織を最適切断温度(Optimal cutting temperature)化合物(Tissue-Tek)に包埋してから、-80℃で凍結した;50μm切片を低温保持装置(Leica)上で切断した。異なる処理試験を実施する試験では、隣接切片を比較用に使用した。
【0040】
無水炭酸溶液においてインキュベートする組織では、0.2%トリトンX-100を含有するPBSにおいて50μm切片を各10分間で3回インキュベートしてから、切片を、予め95℃へ温めた蒸留水中0.05%無水マレイン酸(Sigma Aldrich)溶液に45
分間浸した。免疫組織化学による処理に先立って、切片を室温へ冷やしてから、4回交換のPBSにおいて15分間洗浄した。
【0041】
ホルムアルデヒド固定組織の無水マレイン酸での処理を使用して、アルデヒド系の固定化によって通常は覆われる多種多様な血管関連抗原を露出させた。組織中で機能することが報告されてきた抗体を使用して、エンドセリン-1、VEGF、フォン・ウィレブランド因子と、(二重標識法を使用して)α平滑筋アクチン及びIV型コラーゲン(図面5A~図面5D)を露出させた。
【0042】
実施例6
ホルムアルデヒド固定化脳組織由来の組織ホモジェネートからの抗原賦活化
組織へ架橋結合してそれを修飾するその能力により、アルデヒド系固定化では、ローリー(Lowry)法及びBCAアッセイ、ドットブロッティング、又はウェスタンブロッティングのような、タンパク質を検出するための定量技術における固定組織の使用が有意に損なわれるか又は妨げられる。本実施例では、検出可能なタンパク質の回復における本発明の有用性を実証する。図面6Aに示すように、脳由来のホルムアルデヒド固定化タンパク質ホモジェネートを様々な濃度のマレイン酸の存在下で加熱すると、BCAアッセイによって検出可能であるタンパク質レベルは、ほぼ8倍増加して、利用可能な遊離アミノ酸の増加を示唆する。一方、マレイン酸とともに同様に加熱した非固定化タンパク質はBCAによって容易に検出されて、その濃度は一定のままである(データ示さず)。図面6Bは、検出可能なGAPDHタンパク質のドットブロット比較であって、上記化合物の使用により、特異的なタンパク質の有意で検出可能な増加がもたらされることを実証する。ホルムアルデヒド処理された組織を1.6%~12.8%の濃度のマレイン酸とともに95℃で30分間加熱して処理すると、GAPDHの検出が併行して増加することが実証された。対照的に、未処理のホルムアルデヒド架橋結合組織では、GAPDHが検出不能であった。
【0043】
実施例7
成体ヒト脳血管構造における抗原賦活化
記載のような抗原賦活化法として、成体ヒト脳由来のパラホルムアルデヒド固定化パラフィン包埋組織を2,3-ジメチルマレイン酸で処理する。IV型コラーゲンを使用して、血管を検出した(図面7)。
【0044】
実施例8
トリトン(Triton)の添加に伴う抗原賦活化処理後の蛍光増強
パラホルムアルデヒド固定化パラフィン包埋脳組織を脱パラフィン化し、溶液において
70℃まで30分間加熱してから、IV型コラーゲンを使用して血管を検出する(図面8A~図面8B)。488nm励起を使用して、画像を捉える。0.5%トリトンX-100の5.0%アスコルビン酸溶液への添加は、トリトンX-100無しの試料(図面8B)に優る、染色の均等性及び強度における優位な改善(図面8A)をもたらす。
【0045】
実施例9
抗原賦活化用製剤の処理による自家蛍光の低下
パラホルムアルデヒド固定化パラフィン包埋脳組織を脱パラフィン化し、溶液において70℃まで30分間加熱してから、488nm励起を使用して、画像を捉える(図面9A~図面9C)。画像は、同一の曝露及び時間で捉える。非加熱処理組織(図面9A)と比較して、水中でのみ加熱した組織(図面9B)は、増強された組織自家蛍光を表示した。同じ条件下での5%アスコルビン酸の添加は、可視の自家蛍光を劇的に低下させた(図面9C)。
【0046】
実施例10
グルタチオンの添加に伴う化合物の安定性の増加
パラホルムアルデヒド固定化パラフィン包埋脳組織を脱パラフィン化し、溶液において70℃まで30分間加熱して、488nm励起を使用して、20倍の倍率で画像を捉える(図面10A~図面10C)。画像は、同一の曝露及び時間で、20倍の倍率で捉える。5%アスコルビン酸(陰性対照)中で加熱した組織(図面10B)と比較して、グルタチオンは、アスコルビン酸の存在しない組織に対して影響を及ぼさなかった(図面10A)。5%アスコルビン酸への2.8mMグルタチオンの添加は、染色を存続させる一方で、アスコルビン酸の安定性を増加させた(図面10C)。
【0047】
実施例11
異なるアルデヒド捕捉化合物を使用する抗原(アンジオテンシンI)賦活化
アンジオテンシンIをホルマリンで、室温で48時間処理する。この処理済のアンジオテンシンIとともに、pH=3.5での水(図面11C)、pH=5.5での水(図面11D)、5%イミダゾリドン(図面11E)、5%クエン酸(図面11F)、5%グアニジン(図面11G)、5%マレイン酸(図面11H)、pH=3.5でのトリス緩衝液(図面11I)、アスコルビン酸(図面11J)、ヒドロキシルアミン(図面11K)、システイン(図面11L)が含まれる化合物をそれぞれ95℃で45分間加熱して、各化合物について抗原賦活化の能力を検証する。質量分析法を使用して、アンジオテンシンIの組成物を各化合物による処理の前と後で分析する。ホルマリン処理の前(図面11A)とその後(図面11B)のアンジオテンシンIの試料をこの実験の対照として使用する。この試験の結果を図面(11A~11L)に示す。m/z 1296でのピークは、非修飾のアンジオテンシンIを表す。m/z 1308でのピークは、1つのメチレン単位が付いたアンジオテンシンIを表す。m/z 1320でのピークは、2つのメチレン単位が付いたアンジオテンシンIを表す。m/z 1238でのピークは、1つのメチレン単位と1つのヒドロメチル基が付いたアンジオテンシンIを表す。m/z 1350でのピークは、2つのメチレン単位と1つのヒドロメチル基が付いたアンジオテンシンIを表す。
【0048】
図面11A~11Bは、アンジオテンシンIのホルマリン付加物への完全な変換を図示する。図面11C~図面11Dは、pH=3.5での水がホルマリン付加物の賦活化の能力を示したが、pH=5.5での水は、ホルマリン付加物の賦活化をほとんど示さないことを明らかにする。図面11B、11D、及び11Gの比較は、5%マレイン酸と5%イミダゾリドンの両方が、2つのメチレン基付きアンジオテンシンI(m/z 1320)の量を有意に低下させて、非修飾アンジオテンシンI(m/z 1296)のより高い含量をもたらすことが可能であることを実証する。図面10Bと図面10Fの間の比較は、5%クエン酸(45分、95℃)が、2つのメチレン単位付きアンジオテンシンI(m/
z 1320)と1つのメチレン単位と1つのヒドロキシメチレン基が付いたアンジオテンシン(m/z 1338)の両方の含量を有意に低下させることが可能であることを示す。図面11Gは、5%グアニジンが、1つのメチレン単位と1つのヒドロキシメチレン基が付いたアンジオテンシンI(m/z 1338)を賦活化する能力をほとんど明示せず、そして2つのメチレン単位付きアンジオテンシンI(m/z 1320)の含量に対して影響を明示しないことを示す。さらに、図面11Bと図面Eと図面11I~図面11Lとの間の比較は、5%クエン酸、pH=3.5での5%トリス緩衝液、5%アスコルビン酸、5%ヒドロキシルアミン、及び5%システインがいずれもホルマリン付加物の有意な賦活化を明示することを示す。
【0049】
実施例12
ホルムアルデヒド捕捉剤による抗原(副腎皮質刺激ホルモン(ACTH))賦活化
ACTH(18-39)ペプチドをホルマリンで、室温で48時間処理する(図面12A)。次いで、5%マレイン酸(図面12B)、5%アスコルビン酸(図面12C)、及びpH=3.5での水(図面12D)を使用して、このホルマリン処理済ACTHペプチドをそれぞれ90℃で45分間処理する。ホルマリン処理済ACTHの各処理後の組成物について、質量分析法を使用して分析する。図面12A~図面12Dに示す結果を使用して、ホルムアルデヒド付加物を復帰させる薬剤の能力について検討する。図面12Aは、2つのメチレン単位付きACTH(m/z 2489)と1つのメチレン単位付きACTH(m/z 2477)の高含量をもたらす、ホルマリン処理後のACTHの組成物を示す。ごく微量の3つのメチレン単位付きACTHも検出される。図面12A、図面12B、及び図面12Cの比較は、5%マレイン酸と5%アスコルビン酸の両方が、98℃、45分で、ほとんどすべての修飾化ACTH(1、2、又は3つのメチレン基が付いたACTH;それぞれ、m/z 2477、2489、及び2501)を非修飾ACTH(m/z 2465)へ変換することが可能であることを示す。
【0050】
本発明は、上記に言及した目標と利点だけでなく、そこに内在するそれらを達成するのに十分適合している。上記に開示した特別な態様は、本明細書の教示の利益を有する当業者に明らかな、異なるが同等のやり方で本発明を修飾して実践し得るので、例示に他ならない。さらに、下記の特許請求項に記載される他には、本明細書に示した構造又は設計の詳細に対して、いかなる制限も意図されない。故に、上記に開示した特別な例示の態様を改変又は修飾し得て、そのようなすべての変更態様が本発明の範囲及び精神内で考慮されることが明らかである。また、特許請求中の用語は、特許権所有者によって他に明白かつ明瞭に定義されなければ、その平明な通常の意味を有する。
これらに限定されるものではないが、本発明は以下の態様の発明を包含する。
[1] 抗原を賦活化して、固定組織中のアミノ酸、ペプチド、及びタンパク質の検出を改善するための方法であって:
アルデヒド捕捉剤を含有する溶液を調製する工程;及び
アルデヒド系架橋結合剤で固定した組織を前記溶液と接触させる工程;
を含んでなり、
ここで架橋結合剤を含んでなるアルデヒドとアルデヒド捕捉剤の反応は、抗原を賦活化して、固定組織中のアミノ酸、ペプチド、及びタンパク質の検出を改善する、前記方法。
[2] 前記アルデヒド系架橋結合剤がホルムアルデヒド又はグルタルアルデヒドである、[1]の方法。
[3] 前記溶液中のアルデヒド捕捉剤の濃度が約0.05%~約30%である、[2]の方法。
[4] 前記溶液のpHが前記アルデヒド捕捉剤に特異的な範囲内にある、[3]の方法。
[5] 前記溶液を約60℃~約125℃まで加熱して、アルデヒドとアルデヒド付加物の間で可逆平衡に到達させる工程;
をさらに含んでなる、[1]の方法。
[6] 前記溶液が加熱処理組織において自家蛍光を低下させる、[5]の方法。
[7] 前記組織を染色して、タンパク質、ペプチド、前記タンパク質、ペプチドを含んでなる抗原又はエピトープ、又は抗原を検出する工程をさらに含んでなる、[1]の方法。
[8] 前記アルデヒド捕捉剤が、アミノエタノール、N-メチルアミノエタノール、2-(ヒドロキシメチル)ピペリジン、2-(ヒドロキシメチル)ピロリジン、N-ベンジルアミノエタノール、アミノ(ビスエタノール)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール;セリン、スレオニン、キトサン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、アルギニン、リジン、グリシン、ヒスチジン、5-ヒドロキシトリプトファン、カルノシン、グアニジン、モルホリン、2-ヒドロキシメチルピペリジン、アンモニア、炭酸アンモニウム、ヒドロキシルアミン、O-アルキル化ヒドロキシルアミン、N-アルキル化ヒドロキシルアミン、O,N-アルキル化ヒドロキシルアミン、ヒドロキシメチルアミン、メトキシアミン、ジブチルアミン、トリエチレンテトラミン、ベンジルアミン、チアベンダゾール、ベンゾトリアゾール、トリアゾール、インドリン、ベンゾグアナミン、3,4-ジアミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸メチル、アニリン;1-アミノ-2-インドール;ポリオキシアルキレンアミン;ポリアミドアミン、アントラニル酸、アントラニル酸メチル、アントラニルアミド;o-フェニレンジアミン;4-アミノ安息香酸;3,4-ジアミノ安息香酸;ヒドラジン、N-メチルヒドラジン、N-フェニルヒドラジン、メチルヒドラジド、2,4-ジニトロフェニルヒドラジド、尿素、アラントイン、イミダゾリドン、フェノバルビタール、グリコルリル、ビウレット、システアミン、システイン、グルタチオン、重亜硫酸ナトリウム、o-メルカプトベンズアミド、マロンアミド、オキサミド、アセトアセトアミド、オキサミド、ピログルタミン酸、スクシンアミド、エチレンジアミン-N,N’-ビスアセトアセトアミド、N-(2-エチルヘキシル)アセトアセトアミド、N-(3-フェニルプロピル)アセトアセトアミド、ポリアミド;ポリエステルアミド、ソルビトール、ヘキサンジオール、グルコース、セルロース、ヒドロキシシトロネロール、ジメドン、アスコルビン酸、ペンタンジオン、2-ブタノン、シクロヘキサノン、2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオン、2-ペンタノン、5,5-ジメチル-1,3-シクロヘキサンジオン、デヒドロ酢酸、1,3-ジヒドロキシアセトン二量体、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、ピロガロール、サリチルアミド;サリチルアニリド;4,5-ジヒドロキシ-2,7-ナフタレンジスルホン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、2,3-ジメチルマレイン酸無水物、1(E)-2-ブテン二酸ジメチルエステル、2-スルファニルブト-2-エン二酸、ブト-2-エン二酸、(E)-3-ニトロプロプ-2-エノエート、(E)-2,3-ジジュウテリオブト-2-エン二酸、(Z)-2-メトキシブト-2-エン二酸、(Z)-2-ヒドロペルオキシブト-2-エン二酸、2-メトキシブト-2-エン二酸、(Z)-2-フルオロブト-2-エンジオエート、4-オキソペント-2-エン酸、(E)-2,3-ジクロロブト-2-エン二酸、ジクロロマレイン酸、(Z)-2-ヨードブト-2-エン二酸、(E)-2,3-ジジュウテリオブト-2-エン二酸、(Z)-2-ヒドロキシ-3-メチルブト-2-エン二酸、2,3-ジジュウテリオブト-2-エン二酸、(E)-3-ニトロブト-2-エン酸、ブト-2-エンジオエート、(E)-4-クロロ-4-オキソブト-2-エノエート、(E)-2,3-ジフルオロブト-2-エンジオエート、(E)-4-ヒドロキシ-4-オキソブト-2-エノエート、フマル酸水素、(Z)-2-スルファニルブト-2-エン二酸、2,3-ジフルオロフマル酸、(E)-4-ヒドロキシ-2-メチル-4-オキソブト-2-エノエート、モノフルオロフマレート、フルオロフマル酸、(Z)-2-クロロブト-2-エン二酸、2-ヒドロペルオキシブト-2-エン二酸、ペルオキシマレイン酸、2-クロロ-3-メチルブト-2-エン二酸、2-クロロ-3-メチルブト-2-エン二酸、2-ブテン二酸、[(E)-3-カルボキシ-1-ヒドロキシプロプ-2-エニリデン]オキシダニウム、(E)-2-メチルブト-2-エンジオエート、2-メチルフマレート、シトラコン酸、2,3-ジクロロマレイン酸、3,4-ジクロロ-5-ヒドロキシフラン-2(5H)-オン、3-クロロカルボニルアクリル酸エチルエステル、4-オキソペント-2-エン酸(E)-エチル、[(Z)-3-カルボキシプロプ-2-エノイル]オキシダニウム、(Z)-ブト-2-エン二酸、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル;活性炭、アルミナ;シリカ;アミン官能化シリカ;タルク;ゼオライト;又は一級又は二級アミン基と、カルボン酸、フェノール、アミド、ヒドロキシル、尿素、エステル又はチオール基の両方(このうちの少なくとも1つがアルデヒドと反応する)を含有する多官能性有機分子種;シクロデキストリン類;又は上記化合物の任意の組合せである、[1]の方法。
[9] 前記溶液が、パラフィン包埋試料よりパラフィンを除去して、抗原が賦活化された後で蛍光強度を高める、約0.1%~約5%の非イオン性界面活性剤をさらに含有する、[1]の方法。
[10] 前記非イオン性界面活性剤が、セトマクロゴール1000、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、コカミドジエタノールアミン、コカミドモノエタノールアミン、デシルグルコシド、IGEPAL CA-630、イソセテス-20、ラウリルグルコシド、NP-40、ノニデットP-40、ノノキシノール-9、ノノキシノール類、モノラウリン、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、オレイルアルコール、ポロキサマー類、ポロキサマー407、ポリグリセロールポリリシンオレエート、ポリソルベート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート;ステアリルアルコール;トリトンX-100;ツイーン80;オクチル-、デシル-、ドデシル-グルコピラノシド、-マルトシド、又はデオキシコール酸である、[9]の方法。
[11] 前記溶液が、保存剤、抗真菌剤、抗菌剤、着色剤、色素剤、陰イオン洗浄剤、金属塩、抗酸化剤、又はこれらの組合せより選択される安定化剤をさらに含有する、[1]の方法。
[12] 前記抗酸化剤が約2mM~約400mMの濃度のグルタチオンである、[11]の方法。
[13] アミノエタノール、N-メチルアミノエタノール、2-(ヒドロキシメチル)ピペリジン、2-(ヒドロキシメチル)ピロリジン、N-ベンジルアミノエタノール、アミノ(ビスエタノール)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール;セリン、スレオニン、キトサン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、アルギニン、リジン、グリシン、ヒスチジン、5-ヒドロキシトリプトファン、カルノシン、グアニジン、モルホリン、2-ヒドロキシメチルピペリジン、アンモニア、炭酸アンモニウム、ヒドロキシルアミン、O-アルキル化ヒドロキシルアミン、N-アルキル化ヒドロキシルアミン、O,N-アルキル化ヒドロキシルアミン、ヒドロキシメチルアミン、メトキシアミン、ジブチルアミン、トリエチレンテトラミン、ベンジルアミン、チアベンダゾール、ベンゾトリアゾール、トリアゾール、インドリン、ベンゾグアナミン、3,4-ジアミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸メチル、アニリン;1-アミノ-2-インドール;ポリオキシアルキレンアミン;ポリアミドアミン、アントラニル酸、アントラニル酸メチル、アントラニルアミド;o-フェニレンジアミン;4-アミノ安息香酸;3,4-ジアミノ安息香酸;ヒドラジン、N-メチルヒドラジン、N-フェニルヒドラジン、メチルヒドラジド、2,4-ジニトロフェニルヒドラジド、尿素、アラントイン、イミダゾリドン、フェノバルビタール、グリコルリル、ビウレット、システアミン、システイン、グルタチオン、重亜硫酸ナトリウム、o-メルカプトベンズアミド、マロンアミド、オキサミド、アセトアセトアミド、オキサミド、ピログルタミン酸、スクシンアミド、エチレンジアミン-N,N’-ビスアセトアセトアミド、N-(2-エチルヘキシル)アセトアセトアミド、N-(3-フェニルプロピル)アセトアセトアミド、ポリアミド;ポリエステルアミド、ソルビトール、ヘキサンジオール、グルコース、セルロース、ヒドロキシシトロネロール、ジメドン、アスコルビン酸、ペンタンジオン、2-ブタノン、シクロヘキサノン、2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオン、2-ペンタノン、5,5-ジメチル-1,3-シクロヘキサンジオン、デヒドロ酢酸、1,3-ジヒドロキシアセトン二量体、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、ピロガロール、サリチルアミド;サリチルアニリド;4,5-ジヒドロキシ-2,7-ナフタレンジスルホン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、2,3-ジメチルマレイン酸無水物、1(E)-2-ブテン二酸ジメチルエステル、2-スルファニルブト-2-エン二酸、ブト-2-エン二酸、(E)-3-ニトロプロプ-2-エノエート、(E)-2,3-ジジュウテリオブト-2-エン二酸、(Z)-2-メトキシブト-2-エン二酸、(Z)-2-ヒドロペルオキシブト-2-エン二酸、2-メトキシブト-2-エン二酸、(Z)-2-フルオロブト-2-エンジオエート、4-オキソペント-2-エン酸、(E)-2,3-ジクロロブト-2-エン二酸、ジクロロマレイン酸、(Z)-2-ヨードブト-2-エン二酸、(E)-2,3-ジジュウテリオブト-2-エン二酸、(Z)-2-ヒドロキシ-3-メチルブト-2-エン二酸、2,3-ジジュウテリオブト-2-エン二酸、(E)-3-ニトロブト-2-エン酸、ブト-2-エンジオエート、(E)-4-クロロ-4-オキソブト-2-エノエート、(E)-2,3-ジフルオロブト-2-エンジオエート、(E)-4-ヒドロキシ-4-オキソブト-2-エノエート、フマル酸水素、(Z)-2-スルファニルブト-2-エン二酸、2,3-ジフルオロフマル酸、(E)-4-ヒドロキシ-2-メチル-4-オキソブト-2-エノエート、モノフルオロフマレート、フルオロフマル酸、(Z)-2-クロロブト-2-エン二酸、2-ヒドロペルオキシブト-2-エン二酸、ペルオキシマレイン酸、2-クロロ-3-メチルブト-2-エン二酸、2-クロロ-3-メチルブト-2-エン二酸、2-ブテン二酸、[(E)-3-カルボキシ-1-ヒドロキシプロプ-2-エニリデン]オキシダニウム、(E)-2-メチルブト-2-エンジオエート、2-メチルフマレート、シトラコン酸、2,3-ジクロロマレイン酸、3,4-ジクロロ-5-ヒドロキシフラン-2(5H)-オン、3-クロロカルボニルアクリル酸エチルエステル、4-オキソペント-2-エン酸(E)-エチル、[(Z)-3-カルボキシプロプ-2-エノイル]オキシダニウム、(Z)-ブト-2-エン二酸、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル;活性炭、アルミナ;シリカ;アミン官能化シリカ;タルク;ゼオライト;又は一級又は二級アミン基と、カルボン酸、フェノール、アミド、ヒドロキシル、尿素、エステル又はチオール基の両方(このうちの少なくとも1つがアルデヒドと反応する)を含有する多官能性有機分子種;シクロデキストリン類より選択される化合物;又は上記化合物の任意の混合物を溶液中に含んでなる製剤であって、
ここで前記化合物(複数)は、前記化合物又は化合物の混合物に特異的なpH範囲内の加熱処理溶液において、固定化タンパク質と反応するのに有効な濃度で、アルデヒド捕捉剤として有効であり得る、前記製剤。
[14] 前記化合物又は化合物の混合物の溶液中の濃度が約0.05%~約30%である、[13]の製剤。
[15] 非イオン性界面活性剤を約0.05%~約30%の濃度でさらに含んでなり、ここで前記非イオン性界面活性剤は、セトマクロゴール1000、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、コカミドジエタノールアミン、コカミドモノエタノールアミン、デシルグルコシド、IGEPAL CA-630、イソセテス-20、ラウリルグルコシド、NP-40、ノニデットP-40、ノノキシノール-9、ノノキシノール類、モノラウリン、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、オレイルアルコール、ポロキサマー類、ポロキサマー407、ポリグリセロールポリリシンオレエート、ポリソルベート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート;ステアリルアルコール;トリトンX-100;ツイーン80;オクチル-、デシル-、ドデシル-グルコピラノシド、-マルトシド、又はデオキシコール酸である、[13]の製剤。
[16] 保存剤、抗真菌剤、抗菌剤、着色剤、色素剤、陰イオン洗浄剤、金属塩、抗酸化剤、又はこれらの組合せより選択される安定化剤をさらに含んでなる、[15]の製剤。
[17] 抗原を賦活化して、固定組織中のアミノ酸、ペプチド、及びタンパク質の検出を改善するためのキットであって:
アルデヒド捕捉剤;
任意選択の非イオン性界面活性剤;
安定化剤;
染色剤、着色剤、又は抗体;及び
該キットの使用説明書;
を含んでなる、前記キット。
[18] 前記アルデヒド捕捉剤が、アミノエタノール、N-メチルアミノエタノール、2-(ヒドロキシメチル)ピペリジン、2-(ヒドロキシメチル)ピロリジン、N-ベンジルアミノエタノール、アミノ(ビスエタノール)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール;セリン、スレオニン、キトサン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、アルギニン、リジン、グリシン、ヒスチジン、5-ヒドロキシトリプトファン、カルノシン、グアニジン、モルホリン、2-ヒドロキシメチルピペリジン、アンモニア、炭酸アンモニウム、ヒドロキシルアミン、O-アルキル化ヒドロキシルアミン、N-アルキル化ヒドロキシルアミン、O,N-アルキル化ヒドロキシルアミン、ヒドロキシメチルアミン、メトキシアミン、ジブチルアミン、トリエチレンテトラミン、ベンジルアミン、チアベンダゾール、ベンゾトリアゾール、トリアゾール、インドリン、ベンゾグアナミン、3,4-ジアミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸メチル、アニリン;1-アミノ-2-インドール;ポリオキシアルキレンアミン;ポリアミドアミン、アントラニル酸、アントラニル酸メチル、アントラニルアミド;o-フェニレンジアミン;4-アミノ安息香酸;3,4-ジアミノ安息香酸;ヒドラジン、N-メチルヒドラジン、N-フェニルヒドラジン、メチルヒドラジド、2,4-ジニトロフェニルヒドラジド、尿素、アラントイン、イミダゾリドン、フェノバルビタール、グリコルリル、ビウレット、システアミン、システイン、グルタチオン、重亜硫酸ナトリウム、o-メルカプトベンズアミド、マロンアミド、オキサミド、アセトアセトアミド、オキサミド、ピログルタミン酸、スクシンアミド、エ
チレンジアミン-N,N’-ビスアセトアセトアミド、N-(2-エチルヘキシル)アセトアセトアミド、N-(3-フェニルプロピル)アセトアセトアミド、ポリアミド;ポリエステルアミド、ソルビトール、ヘキサンジオール、グルコース、セルロース、ヒドロキシシトロネロール、ジメドン、アスコルビン酸、ペンタンジオン、2-ブタノン、シクロヘキサノン、2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオン、2-ペンタノン、5,5-ジメチル-1,3-シクロヘキサンジオン、デヒドロ酢酸、1,3-ジヒドロキシアセトン二量体、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、ピロガロール、サリチルアミド;サリチルアニリド;4,5-ジヒドロキシ-2,7-ナフタレンジスルホン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、2,3-ジメチルマレイン酸無水物、1(E)-2-ブテン二酸ジメチルエステル、2-スルファニルブト-2-エン二酸、ブト-2-エン二酸、(E)-3-ニトロプロプ-2-エノエート、(E)-2,3-ジジュウテリオブト-2-エン二酸、(Z)-2-メトキシブト-2-エン二酸、(Z)-2-ヒドロペルオキシブト-2-エン二酸、2-メトキシブト-2-エン二酸、(Z)-2-フルオロブト-2-エンジオエート、4-オキソペント-2-エン酸、(E)-2,3-ジクロロブト-2-エン二酸、ジクロロマレイン酸、(Z)-2-ヨードブト-2-エン二酸、(E)-2,3-ジジュウテリオブト-2-エン二酸、(Z)-2-ヒドロキシ-3-メチルブト-2-エン二酸、2,3-ジジュウテリオブト-2-エン二酸、(E)-3-ニトロブト-2-エン酸、ブト-2-エンジオエート、(E)-4-クロロ-4-オキソブト-2-エノエート、(E)-2,3-ジフルオロブト-2-エンジオエート、(E)-4-ヒドロキシ-4-オキソブト-2-エノエート、フマル酸水素、(Z)-2-スルファニルブト-2-エン二酸、2,3-ジフルオロフマル酸、(E)-4-ヒドロキシ-2-メチル-4-オキソブト-2-エノエート、モノフルオロフマレート、フルオロフマル酸、(Z)-2-クロロブト-2-エン二酸、2-ヒドロペルオキシブト-2-エン二酸、ペルオキシマレイン酸、2-クロロ-3-メチルブト-2-エン二酸、2-クロロ-3-メチルブト-2-エン二酸、2-ブテン二酸、[(E)-3-カルボキシ-1-ヒドロキシプロプ-2-エニリデン]オキシダニウム、(E)-2-メチルブト-2-エンジオエート、2-メチルフマレート、シトラコン酸、2,3-ジクロロマレイン酸、3,4-ジクロロ-5-ヒドロキシフラン-2(5H)-オン、3-クロロカルボニルアクリル酸エチルエステル、4-オキソペント-2-エン酸(E)-エチル、[(Z)-3-カルボキシプロプ-2-エノイル]オキシダニウム、(Z)-ブト-2-エン二酸、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル;活性炭、アルミナ;シリカ;アミン官能化シリカ;タルク;ゼオライト;又は一級又は二級アミン基と、カルボン酸、フェノール、アミド、ヒドロキシル、尿素、エステル又はチオール基の両方(このうちの少なくとも1つがアルデヒドと反応する)を含有する多官能性有機分子種;シクロデキストリン類;又は上記化合物の任意の組合せである、[17]のキット。
[19] 前記非イオン性界面活性剤が、セトマクロゴール1000、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、コカミドジエタノールアミン、コカミドモノエタノールアミン、デシルグルコシド、IGEPAL CA-630、イソセテス-20、ラウリルグルコシド、NP-40、ノニデットP-40、ノノキシノール-9、ノノキシノール類、モノラウリン、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、オレイルアルコール、ポロキサマー類、ポロキサマー407、ポリグリセロールポリリシンオレエート、ポリソルベート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート;ステアリルアルコール;トリトンX-100;ツイーン80;オクチル-、デシル-、ドデシル-グルコピラノシド、-マルトシド、又はデオキシコール酸である、[17]のキット。
[20] 前記安定化剤が、保存剤、抗真菌剤、抗菌剤、着色剤、色素剤、陰イオン洗浄剤、金属塩、抗酸化剤、又はこれらの組合せである、[17]のキット。
[21] 抗原賦活化剤を同定する方法であって、
水溶液において、あるタンパク質をアルデヒド系架橋結合剤で固定する工程;
前記溶液を凍結乾燥させて、固定化タンパク質を入手する工程;
前記固定化タンパク質を、試験される薬剤を含有する溶液へ加える工程;
試験される前記薬剤と固定化タンパク質を含有する前記溶液を加熱する工程;及び
該タンパク質を質量分析法で検出する工程;
を含んでなり、
ここで前記タンパク質についてのピークの存在は、前記被験薬剤が抗原賦活化剤であることを示す、前記方法。
[22] 前記アルデヒド系架橋結合剤が水中約4%ホルムアルデヒドを含む、[21]の方法。
[23] 前記溶液を約60℃~約125℃まで約45分~約90分間加熱する、[21]の方法。