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特許7015296一体的に射出成形される層スリーブを備えたペンシル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】一体的に射出成形される層スリーブを備えたペンシル
(51)【国際特許分類】
   A45D 40/20 20060101AFI20220126BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20220126BHJP
   B43K 19/00 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
A45D40/20 A
B29C45/16
B43K19/00 Z
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019511587
(86)(22)【出願日】2017-08-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-10
(86)【国際出願番号】 EP2017070345
(87)【国際公開番号】W WO2018036837
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-08-07
(31)【優先権主張番号】102016115872.0
(32)【優先日】2016-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519060656
【氏名又は名称】エー.ダブリュー.ファーバー-カステル コスメティックス ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】A.W.FABER-CASTELL COSMETICS GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100180781
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 友和
(74)【代理人】
【識別番号】100181582
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 直斗
(72)【発明者】
【氏名】カウル,ウォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】ツェッヒ,クリスティーナ
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-224428(JP,A)
【文献】特開2012-006315(JP,A)
【文献】特開2013-071964(JP,A)
【文献】特表2016-511711(JP,A)
【文献】特表2001-511079(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0334863(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0237708(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0045898(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0207071(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102004021048(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D40/00-40/30
B29C45/00-45/84
B43K19/00-19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色料および/または化粧品物質を塗布するためのペンシル(1)であって、塗布されるべき物質からなる芯(8)と、前記芯(8)を被覆する一体的に射出成形されたスリーブ(2)とを備え、前記スリーブ(2)が熱可塑性材料からなり、前記熱可塑性材料が、互いに混合された第1プラスチックと第2プラスチックとからなる混合物からなる、ペンシルにおいて、
前記スリーブ(2)は、それぞれ半径方向で見ると、前記第1プラスチックの濃度が中央領域中よりも高い外側強化ゾーン(6)を有し、
前記スリーブ(2)は、それぞれ半径方向で見ると、前記第1プラスチックの濃度が中央領域中よりも高い内側強化ゾーン(7)を有することを特徴とする、ペンシル。
【請求項2】
前記第1プラスチックの濃度は、前記外側強化ゾーン(6)から、および、前記内側強化ゾーン(7)から中央に向かって継続的に低下することを特徴とする、請求項1に記載のペンシル。
【請求項3】
前記スリーブ(2)は、主に、少なくとも85重量%まで、または好ましくは専ら前記第1プラスチックと前記第2プラスチックとからなり、これに加えて場合によっては充填剤および補助剤例えば顔料とからなることを特徴とする、請求項1~2のいずれか1項に記載のペンシル。
【請求項4】
1つのプラスチック、好ましくは前記第1プラスチックは、極性の低いプラスチックであり、電気陰性度の差ΔΕΝが0.3~0.5(0.5を含む)の範囲であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のペンシル。
【請求項5】
1つのプラスチック、好ましくは前記第2プラスチックは、極性の高いプラスチックであり、電気陰性度の差ΔΕΝが0.5より上で、1.7までの範囲であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のペンシル。
【請求項6】
前記第1プラスチックは、AESまたは好適にはSANであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のペンシル。
【請求項7】
前記第2プラスチックは、TPEまたは好適にはTPC-ETであることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のペンシル。
【請求項8】
前記第1プラスチックの重量割合が少なくとも45重量%、より良くは少なくとも55%であるように、前記スリーブ(2)を形成する材料系が設定されていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のペンシル。
【請求項9】
射出注入のために調製される混合物中の前記第1プラスチックの上限は、85重量%、より良くは70重量%であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載のペンシル。
【請求項10】
前記スリーブ(2)の前記外周表面における算術的平均光沢度GUは、30GUを上回り、より良くは40GUを上回ることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載のペンシル。
【請求項11】
前記スリーブ(2)は、互いに分離可能な2つの層からなる構造を有し、好ましくはこれら双方の層のうちの表面に近い層がより薄いことを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載のペンシル。
【請求項12】
前記プラスチックスリーブは、非発泡性プラスチックからなることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載のペンシル。
【請求項13】
前記スリーブ(2)は、双方の端面で開いた管として構成されていることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載のペンシル。
【請求項14】
前記スリーブ(2)は、1つの端面において円錐形状に先細り、好ましくは前記スリーブ(2)の縦軸(L)に対する円すい角(Pi)が25°~35°であることを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載のペンシル。
【請求項15】
前記スリーブ(2)は、1つの端面において、この1つの端面に向かうにつれてより小さくなる直径の段差を有することを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載のペンシル。
【請求項16】
前記ペンシル端部において、および好ましくは前記段差上に、前記スリーブ(2)の端部を閉栓する端部キャップが固定されていることを特徴とする、請求項1に記載のペンシル。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載のスリーブ(2)を備えたペンシル(1)の製造方法において、
・完全に互いに混ざり合った第1プラスチック材料と第2プラスチック材料とから、可塑化され射出成形可能なペーストを製造する工程と、
・前記プラスチック材料は、冷却された金型表面上に当たると脱混合するように、異なる凝固挙動を有するように選択する工程と
・少なくとも900バール、より良くは少なくとも1100バールの高圧下で、好ましくは軸方向で、後の時点でスリーブ(2)になる部分の端面から、前記ペンシル(1)の前記スリーブ(2)を複製する射出成形金型の型穴中へ、前記ペーストを射出注入する工程と、
・前記型穴を形成する壁表面に直接接する位置で、前記型穴の全長で、主に前記第1プラスチック材料を凝固し、かつこれにより前記壁表面で強化するように、前記射出成形金型を急激に冷却する工程と、
・続いて、前記双方のプラスチック材料を、これより下にある領域中で、前記壁表面の領域中よりも脱混合を少なくして、または脱混合なしに共に凝固させる工程と
を特徴とする、方法。
【請求項18】
射出が完了した前記スリーブ(2)は、その縦軸(L)に沿って前記金型から取り出されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記芯収容部は、前記スリーブ(2)の中央で、金型コアを形成するピンにより複製され、前記スリーブ(2)が前記射出成形金型から取り出される際に、前記スリーブ(2)は前記ピンと共に引き戻されることを特徴とする、請求項17~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記スリーブ(2)をその先細りする端部で密閉しかつ後の時点の未使用の芯先端の形状を複製する金型中に、前記スリーブ(2)を差し込み、かつ前記芯(8)を形成するペーストを前記スリーブ(2)の他の端部中に充填することにより、前記芯(8)を注ぐことを特徴とする、請求項119のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
請求項1~16のいずれか1項に記載のスリーブ(2)を使用する、芯ペンシル、とりわけ化粧品用ペンシルの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各主請求項の前提部に記載の尖らせることができるペンシル、とりわけ化粧品用ペンシル、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木製のペンシルスリーブにより芯が収容される化粧品用ペンシルは非常に普及している。この木製のペンシルスリーブは、鉛筆削り器の原理に従って動く削り器を用いて、手動で良好に尖らせることができ、尖らせ直すことができる。
【0003】
しかし、木製のペンシルスリーブの製造は、本質的に非常にコスト高である。その上に木製の板を成型し、接着し、その後切削により切り離さねばならない。
【0004】
この種のペンシルが、鉛筆または色鉛筆としてではなく、化粧品用ペンシルとして製造されねばならない場合には、さらなる特殊な問題が生じる。
【0005】
化粧品用ペンシルは、通常、色鉛筆よりも高い木材品質を必要とする。これは、通常化粧品用ペンシルがより均質な先端像を有するべきであるからである。さらに、化粧品用ペンシルには、多かれ少なかれコスト高の表面仕上げが必要である。個々のペンシルには、通常一度または数回ラッカー塗りをし、またはコーティングをする。なぜならば、個々の色鉛筆と比較して高価である化粧品用ペンシルは、買い手に対して視覚的および触覚的に特別な高品質感を伝えるべきであるからである。
【0006】
芯用ペーストに関連してそれ自体では問題のないこの種のペンシルの典型的な製造方法は、適切な芯用ペーストを押し出し、溝を付けた薄板に貼り付ける、またはプラスチックスリーブ中に押し入れる方法である。この方法は、色鉛筆の製造において実証された方法に相当する。この押し出し成形方法における欠点は、通常、比較的硬い芯になるような芯用ペーストのみが挿入可能である点である。なぜならば、この芯は、さらなる処理において取扱い可能であり続けなければならず、柔らかすぎる芯では、これに続いて張り合わされるべき薄板の間に挟まれる際に、変形する恐れがあるからである。しかしながら、硬い芯は、まさに化粧品用ペンシルにおいてしばしば望ましくないが、この理由は、相対的に高い圧力下でのみ、満足できる量の化粧品を芯から引き外すことができることにより、いわゆる塗布がより難しくなるからである。
【0007】
この理由により、化粧品用ペンシル製造の分野では、しばしば異なる芯の製造方法が採用される。この方法の場合、化粧品用のペーストは、事前に製造された同心の穴を備えたシャフトスリーブ中に熱い状態で注入され、そこで芯用ペーストが冷却する。しかし、この場合には、化粧品用ペーストが、(熱い状態では)比較的高い割合の揮発性成分を有しうるとの問題が生じる。この揮発性成分は、少なくとも時間の経過とともに、さらに冷却状態でも拡散し、または移動する傾向がある。
【0008】
したがって、この種の柔らかい芯を備えた化粧品用ペンシルでは、そもそも木製のスリーブである場合には、芯を収容する木製のペンシルスリーブの内側表面にも、特別な前処理が採用されることが必要である。特別な方策が必要であるのは、芯の揮発性成分が木材中に入って拡散しまたは木材中で移動し、木材を通って芯から出て、可能な場合外側表面におけるラッカーに悪影響を与えることを防がねばならないからである。ところで、この問題は、プラスチックにおいても、とりわけ発泡プラスチックにおいても直面しうる。プラスチック中にも、揮発性成分は拡散し、しばらくしてプラスチックを十分強く通り抜ける際に、外側表面に悪影響を与える可能性がある。
【0009】
この問題を正すために、独国特許出願公開第2 834 479号明細書は、油脂芯を備えた化粧品用ペンシルであって、芯がスリーブに入れられる前に金属被覆を設けた化粧品用ペンシルを作ることを提案している。金属被覆は良好な遮断部になるが、不必要なコストが生じる。さらに、これは、ペンシルを尖らせる際には妨げとなる。金属被覆は、確かに非常に薄くすることができ、ほとんど薄膜により形成されうる。しかし削り器で切り取られる細長片は、もつれあう傾向があるが、この理由は、木材の削りくずが切り取られる場合とは異なり、この場合には、削りくずが切れないからである。
【0010】
独国特許出願公開第31 37 4 86 A1号明細書は同じ問題を扱っている。この文献で提案されるのは、芯を射出可能なプラスチック材料からなる細管中に入れ、この細管を、外側で、溶媒が透過しない層、例えばポリエステルからなるプラスチック薄膜で被覆することである。この種の構成はコスト高であるのみならず、化粧品用ペンシルに課せられる高い視覚的および触覚的要件も満たすことができない。さらに、この薄膜は、熱収縮チューブとして取り付けられる場合には、しわが寄る、または一般的に望ましくない重複を形成しうる。これ以外に、プラスチック薄膜を組み込むことにより、プラスチック薄膜は、ペンシルを尖らせる際に切り込みが入りかつ必ずしもきれいに切り取られず、その結果、尖らせた端部の見かけがよくないとの危険があるとの理由からも問題がある。さらに、上で既に金属フィルムについて述べた削りくずが切れないとの問題もある。これらの問題は、鋭利に尖らせる可能性について上述の特許出願中で何も述べられていないとはいえ、当業者には公知である。
【0011】
欧州特許第0 613 634 B1号明細書も、この問題を扱っている。この文献ではペンシルスリーブを組み合わせて形成するが、このスリーブは薄壁のプラスチック細管からなり、この細管を本来のペンシルスリーブの収容開口中に押し入れることを提案している。これらの双方の部分を組み立てた後に、芯を注入する。明らかに、押し入れられる薄壁のプラスチック細管の課題は、芯を密封し、芯の注入温度を越えて芯を形状安定で保つことである。この細管の壁は薄いので、比較的硬いプラスチックを採用する場合でさえも、尖らせるのに妨げとはならない。これに反して本来のペンシルスリーブについては、良好に尖らせることができるプラスチックを用いることができ、このプラスチックについて芯の成分の拡散挙動について顧慮するには及ばない。
【0012】
一般的には、一体的なペンシルスリーブをプラスチックで製造する場合には、何重にも相反する目標が存在する。
【0013】
一方では、手動の鉛筆削り器の原理に従って動作する削り器を用いて尖らせることができるように、十分柔らかいプラスチックを用いねばならない。そして、同時に、このプラスチックは、芯の注入温度を越えて形状保持性を有さねばならない。最後に、可能な限り後加工を少なくして、所望の視覚的、触覚的および高品質の外観を提供するために、このプラスチックは、可能な限り魅力的な表面を形成せねばならない。
【0014】
この限りで役に立つ妥協を見つけるために、多くの本質的に相対的に硬質のプラスチックを、ペンシルスリーブの製造のために採用する。これらのプラスチックは必須となる耐久性を示す。この場合、鋭利に尖らせる可能性は、大概プラスチックが発泡することにより確保される。しかしながら、発泡プラスチックは、射出成形方法では加工されえず、ペンシルスリーブは押し出しにより製造することが必須である。発泡および押し出しにより、表面品質は悪影響を受け、その結果、この種のペンシルスリーブは、後処理なしには、販売用には適さない。
【0015】
このための一例は米国特許第5 360 281号明細書であり、この特許は、発泡プラスチックからなるペンシルスリーブについて保護請求をしている。この特許は、ペンシルスリーブを射出成形により製造することについての思想も述べているが、この思想は特許請求項中には入れられていないが、これは、明らかに、提案されたプラスチックが発泡せず、鋭利に尖らせる可能性が劣っているからである。
【0016】
最後に、米国特許出願公開第2013/0121747 A1号明細書も言及すべきであるが、この文献は、化学的および機械的な観点から特に安全なペンシルスリーブを備えたペンシルを提供することを目的にしている。この点は、製造時および使用時にVOCを放出しないこと、および割れる際に破片がでないプラスチック混合物を選択することによって達成されるべきで、その結果、これに対応するペンシルは、小さな子どもにも適している。さらに、このペンシルは、良好に尖らせることもできるとされている。
【0017】
この問題を解決するために、上述の米国特許は、ペンシルスリーブの製造のために、以下のようなプラスチック混合物を採用することを提案している。すなわち、このプラスチック混合物は、
・少なくとも1つのスチレンブタジエンコポリマーと、
・少なくとも1つのスチレンブタジエンスチレンブロックコポリマーと、
・スチレンポリマー、スチレンアクリルニトリルポリマー、アシルニトリルブタジエンスチレンポリマー、アクリルスチレンメチルメタクリレートまたは上述のプラスチックの組み合わせからなる群から選ばれた少なくとも1つのさらなるプラスチックと、
・少なくとも1つの補助剤と
からなる。
【0018】
化粧品用ペンシルの製造時における上述の問題については、この特許出願は扱っていない。とりわけ、この出願は、芯注入時に生じる問題も、良質の外側表面をいかに達成可能にするかとの問題も扱っていない。また、この出願により認識された芯の成分が移動するとの問題については、この米国特許は十分に満足できる解決方法を提供していない。この米国特許は、揮発性成分を備えた芯の完全な乾燥に対して、スリーブを製造するプラスチック混合物に対して、ワックスを配合することにより対処することを提案している。この解決方法は、とりわけ化粧品分野では不適当であるが、この理由は、この方法では、プラスチックに添加される技術的なワックス自体が芯中で移動しないことを保証できず、この移動は望ましくないからであるが、この理由は、芯は、化粧品として認められる無害の物質のみが規定された量だけ放出するべきであるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
これに対して、まず第1に、本発明の課題は、着色料および/または化粧品物質を塗布するためのペンシルを示すことであり、このペンシルは、一体的に、完全にプラスチックからなるスリーブを有し、このスリーブは、好ましくは鉛筆削り器を用いて手動で尖らせることができ、かつ、好ましくは光沢を有し、高品質の外側表面を有し、射出成形後には、妥当な場合には文字入れまたはそれ以外の大概は局所的な装飾をつけることを除いて後加工はもはや必要ではないというものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明によるペンシルは、揮発性成分を有するまたはこれを有さない塗布されるべき物質からなる芯と、芯を被覆する一体的におよび一つの材料として射出成形されたスリーブとを備え、このスリーブが熱可塑性材料からなり、この熱可塑性材料が、第1プラスチックと第2プラスチックとからなる混合物からなるが、これらのプラスチックは、それぞれ純粋な形態では異なる特性を有する。「1つの材料として」射出成形されるとは、本発明の意味合いでは、単一の材料(それ自体は混合物であったとしても)のみを型穴中に射出注入し、それも大概1回の射出でこれを行い、例外的に複数の連続する射出で行うことを意味する。これは、「オーバーモールド」とは対照的であるが、オーバーモールドの場合には、まず、第1の材料を型穴中に射出注入し、その後別の材料貯蔵部から別の特性を有する第2の材料を射出する。
【0021】
本発明によるペンシルが際立っている点は、第1プラスチックと第2プラスチックとが、射出成形により部分的に脱混合され、これにより、半径方向で見ると、その外周表面の領域(外側強化ゾーン)中では、第1プラスチックが中央(中央の弱化ゾーン)よりも高い濃度を有するようなスリーブを形成するように、第1プラスチックと第2プラスチックとが選択されているという点である。同時に、スリーブが内周表面の領域(内側強化ゾーン)中で、第1プラスチックがより高い濃度を有するように、第1プラスチックと第2プラスチックとは選択されている。
【0022】
さらに本発明によるペンシルの際立っている点は、これが、鉛筆削り器の原理で動作する削り器を用いて尖らせうる、すなわち、ペンシルを手動で回転させることにより尖らせうるとの点である。
【0023】
ペンシルを尖らせることができるか否かについての本発明による決定のためには、様々な代替となる基準が存在するが、これらは理想的な場合累積して満たされている。これらは、
・手動削り器を用いて、ペンシルの端部(この端部の一貫した円錐形は、削り器の刃が配置されている角度に対応する)において、少なくとも5回、より良くは少なくとも8回完全にペンシルを回転させることを介して、連続して3回、連続した削りくずを取り除くことができる。すなわち、この削りくずは、一貫したカールを形成し、好ましくは全長に渡って一定の厚さ(+/-10%の変動あり)が保たれ、理想的には、削りくずの端部に向かって、平均して15%を上回らない、より良くは10%の厚さの上昇のみが、観察されること
・この種の削り器が後に残す通常円錐状の断面が、この場合は好ましくは均質で滑らかである。この断面は(尖らせる過程が中断した際に削り器の刃が至る位置により印付けられる局所的な段差縁を除いて)、好ましくは、局所的な噴出、細かい破片または例えば0.3mmを越える深さの段差が全くないこと
である。
【0024】
通常第2プラスチックは、スリーブが鉛筆削り器の様式の削り器を用いて確実に尖らせることができるように選択されている。このための尺度は、同一のサイズのスリーブを有するペンシルであって、かつ完全に第1プラスチックからなり、かつ上述の方法では尖らせることができないペンシルとの比較である。
【0025】
したがって、従来明らかによりコスト高なオーバーモールド方法(この場合、まず、1つのスリーブ部分を第1の材料で射出し、その後、可動スライダーを引いた後に、第2の材料からなる第2のスリーブ部分を上に射出させる方法)によってのみ製造可能であったような準多層のスリーブがすぐに得られる。
【0026】
本発明によるペンシルが際立っている点は、各外周表面と内周表面とに直接接する位置に、特定の割合の第2プラスチックが見出されうる場合であっても、純粋な第1プラスチックに固有の特性が、各外周表面と内周表面とにおいて射出成形を用いて獲得される第1プラスチックが強化されることにより、特徴的に効果を発揮するという点である。このようにして、第1プラスチックは、それぞれ同じ1つの鋳造プロセスにおいて、ペンシルスリーブの外周表面において、高い表面品質の層を形成させる。この表面は、第1プラスチックを正しく選んだ場合、肉眼で見ると絶対的に平坦で鏡のように滑らかにすることができる。さらにペンシルスリーブの内周表面において、遮断機能を備えた層が形成される。この遮断機能については後でまたより詳細に説明する。この機能は芯注入時および/または芯の保存能力について良い影響を与える。
【0027】
本発明によれば、ここで課題を分割する。第1プラスチックは、突出した表面品質が達成可能なように選択されうる。第1プラスチックと第2プラスチックとが、互いに対して正しく調整されていて、その結果、必須の混合物が設定されている場合、このようにしてピアノラッカーの輝きに匹敵しうる鏡のような輝きを示す表面が達成されうる。
【0028】
第1プラスチックの選択時には、鋭利に尖らせる可能性について顧慮するには及ばない。なぜならば、第1プラスチックが、外側で好ましくは80重量%を上回って、より良くは90重量%を上回って強化される外側強化ゾーンは、半径方向に薄く保つことができ、必要な場合、明らかにオーバーモールドの場合よりも薄く保つことができるからである。
【0029】
同じことが、第1プラスチックが内側で少なくとも70重量%以上に強化される内側強化ゾーンについても大抵の場合該当する。
【0030】
理想的には、外側および/または内側強化ゾーンの伸張RAAないしRIAは、外周表面ないし内周表面から半径方向に内側に向かって計測する場合、0.075~0.5mmであり、より良くは0.35mmまでにすぎない。これにより、第1プラスチックに、機械加工がややうまくできない傾向がある場合でも、鋭利に尖らせる可能性を妨げることはない。
【0031】
内側強化ゾーンの半径方向の伸張RIAが、外側強化ゾーンの半径方向の伸張がRAAよりも少し小さい場合に、各機能の実現にとって好都合であることが明らかになった。したがって好ましくはRAA>RIAが該当し、理想的な場合にはRAA>RIA×12/10さえ該当する。
【0032】
外側強化ゾーンを複製する箇所で、相応に射出成形金型を徹底的に冷却すると、外側強化ゾーンの自由表面は、少なくとも95重量%まで、場合によっては97重量%以上まで、第1プラスチック(および、場合によってはその中に埋め込まれた顔料)からなる。
【0033】
外側強化ゾーン全体内では、第1プラスチックの割合は80重量%以上、明らかにより良いのは90重量%以上である。
【0034】
内側強化ゾーンを複製する箇所で、相応に射出成形金型を徹底的に冷却すると、内側強化ゾーン全体内の第1プラスチックの割合は、少なくとも67重量%以上、より良くは70重量%以上である。
【0035】
これに対応して、これに伴って通常中央の弱化ゾーンが生じる。スリーブの中央にあるこの中央弱化ゾーン内では、第1プラスチックの局所的な重量%割合は、射出成形のために調製された射出成形混合物中で第1プラスチックが射出注入から持つ重量割合よりも低減する。スリーブの中央との概念は、いずれの場合も外周表面における半径と、内周表面における半径との平均値として算出される半径の領域の周りの+/-0.75mm、または少なくとも+/-0.5mmの範囲のことを指し、円形ではない輪郭の場合には、平均半径が設定される。
【0036】
型穴中に射出注入されたプラスチックペーストにおける第1プラスチックの割合に応じて、中央弱化ゾーン全体内の第1プラスチックは、好ましくは少なくとも60重量%、より良くは55重量%以下である。
【0037】
これとは逆に、第2プラスチックについては、場合によっては、第1プラスチックが全混合物に対してより高い重量割合を有する場合でさえ、プラスチック構造の形成に特徴的に関与する箇所では、第1プラスチックの強度をより小さくするプラスチックを選択可能である。この際、第2プラスチックの選択時には、表面品質および/または芯の成分に対するその遮断性については顧慮するには及ばないが、この理由は、第2プラスチックは、表面の形成については特徴的に関与していないからである。
【0038】
ペンシルのスリーブを射出成形により製造することにより、この場合、このペンシルには特定の物理的特性が与えられる。なぜならば、この場合、射出成形によって初めて、第1プラスチックが外周表面で強化され、これにより妥当な場合には、第1プラスチックと第2プラスチックとが射出成形金型中に射出注入前に均質に混ざり合っているにも関わらず、ピアノラッカー様の表面が形成されるからである。
【0039】
確かに、この種の脱混合が生じる理由は、いまだ完全には解明されていない。にもかかわらず、型中に射出注入される第1プラスチックと第2プラスチックとの混合物が、型穴の十分冷却された表面に当たることにより、まず急激な冷却が生じることが認識できる。この冷却は脱混合を伴うが、この理由は、一方のプラスチックが、他方のプラスチックよりも迅速に凝固するからである。
【0040】
このようにして、良好に冷却された型穴の表面は、完全にまたは主に第1プラスチックからなる層に覆われる。このようにして生じる層は、大概非常に強く、ないしその下にあるコアよりも強いが、この理由は、第2プラスチックの割合がゆえに、その特徴的な妨害効果を発揮しえないからである。
【0041】
この上述の層は、その熱伝導性が劣悪であるがゆえに断熱性を示すので、さらなる急激な冷却が防がれる。この結果、この脱混合は、上述の層の下方で低減するが、これは大概急速に低減する。したがって、中央では通常、重量%割合の変化が生じる場合であっても、第1プラスチックと第2プラスチックとの混合物がそのままで、凝固の途中でも得られるままとなる。第2プラスチックがこの組織を妨げるので、この凝固層は、この領域中では、型穴の冷却された表面において形成される上述の層よりも強くない。
【0042】
削り器ないし鉛筆削り器との概念は、ここでは、例えば、鉛筆、色鉛筆および化粧品用ペンシルのために採用される古典的な鉛筆削り器のことを称する。この種の鉛筆削り器は、金属、木製またはプラスチックからなる本体を有し、この本体が、尖らせるべきペンシル先端用の円錐状の収容部と、少なくとも1つの刃(これは、ペンシルを手動で相応に回転させると、先端から削りくずを取り除く)とを有する。
【0043】
熱可塑性材料との概念は、ここでは、加熱により、射出注入可能な粘性の状態に移行しうる材料を称する。この概念は、古典的な熱可塑性プラスチックおよびTPEを網羅する。
【0044】
第1プラスチックと第2プラスチックとは化学的に異なり、すなわち、通常異なる材料分類ないしプラスチックタイプに属する。
【0045】
様々な概念について上で述べた定義は、文脈から明らかに異なる場合でない限り、後続の説明についても該当する。
【0046】
本発明の好適なさらなる構成
【0047】
第1プラスチックの濃度は、外側強化ゾーンと内側強化ゾーンとから中央に向かって好ましくは継続的に低減する。
【0048】
この点が、本発明によるペンシルないしその多層スリーブと、公知のスリーブとの差異であるが、公知のスリーブの場合、その2つ以上の層は、さらなる一貫したプラスチック層、一貫した膜、または一貫したラッカー層(「ピアノラッカー」)などが塗布されることによってのみ得られる。
【0049】
当然、最後には、本発明によるスリーブにも、とりわけ部分的な追加装飾のために、例えば、文字入れの目的のために、さらなるプラスチックまたはラッカー層ならびに膜が設けられうる。
【0050】
好ましくは、スリーブは、その全断面に渡って第1プラスチックと第2プラスチックとから形成され、この際、双方のプラスチックは、局所ごとに異なる重量割合で見出されうるが、通常これは、重量割合が断面に沿って(半径方向で)継続的に変化するように見いだされる。「全断面」との概念は、場合によっては外周表面より下方の0.2mmの範囲中にある縁層は含まない。内周表面より下方の0.2mmの範囲中にある縁層についても、妥当な場合には同じことが該当する。
【0051】
理想的な場合、スリーブは、それぞれ表面近くにのみ別の層、例えば以下で述べるような形態の引き外し可能な外皮を有し、全断面に渡ってスレート状の構造を有することはない。なぜならば、この場合、傾斜を望ましくないように強化してしまい、尖らせる際に剥がされる削りくずは、意図せず非常に細かいかけらに砕け、これにより、化粧品芯にさえも汚れを引き起こしうるからである。
【0052】
遮断層は機械的な遮断層でありえ、これは、非常に滑らかで、これにより芯を注入する際に、空気の混入が防がれる。この空気の混入は、内側表面が比較的粗い木製のスリーブ中に芯が注入される際にしばしば観察されている。
【0053】
遮断層は、これに代えて、または同時に化学的な遮断層でありえるが、これは明らかに好適である。この種の遮断層は、芯の成分の移動を制限する点が際立っている。第1プラスチックの選択に応じて、とりわけイソパラフィンとシリコーンとの移動が制限され、および/または水と極性を有する揮発性物質例えばアルコールとの移動が制限される。これは、12ヶ月の間23℃の一定の温度で保管後でも芯についての認識可能な悪影響(硬化/乾燥)が記録されえない程度に、いずれにしてもこの種の遮断層が移動を減少させる場合に行う。狭義の意味合いでの遮断層とは、いずれにしても、純粋な第1プラスチックが、純粋な第2プラスチックよりも、イソパラフィンとシリコーンとに対して、および/または、水と、極性を有する揮発性物質例えばアルコールとに対して拡散係数がより小さい場合のことである。
【0054】
特に有利であるのは、第1プラスチックとして、弱い極性を有するプラスチックであって、電気陰性度の差ΔΕΝが0.3~0.5(0.5を含む)の範囲であるプラスチックを用いることであると判明したが、このプラスチックが、強い極性を有するプラスチックとの弱い相互作用が可能であるこれ以外のモノマー成分ないしブロックを有し、その結果、直接的な自然発生的な脱混合が防がれる。ここで、および以下で、電気陰性度の差ΔΕΝとは、ポリマー構造中の隣接する原子間における最大の電気陰性度の差であると理解される。
【0055】
この際、特に好都合であるのは、スチレンアクリルニトリルないしアクリルニトリルスチレンコポリマーの分類中のプラスチック(省略記号:SAN、ここおよび全ての箇所で命名はDIN EN IDSO 18064による)、好ましくは純粋にSANのみを用いることである。SANは弱極性であるが、その中に含まれるアクリルニトリルの割合を介して、別の強い極性を有するプラスチックとの相互作用を開始させることができる。
【0056】
好適な組成物は、65重量%~80重量%の割合のスチレンと、20重量%~35重量%の割合のアクリルニトリルとからなり、それぞれ異なるモル質量からなる。特に好都合である組成物は、70重量%の割合のスチレンと、30重量%の割合のアクリルニトリル(それぞれ+/-1.5重量%の許容誤差あり)からなる。理想的にはBASF SE社(ルートヴィヒスハーフェン(Ludwigshafen)、ドイツ在)が販売している商標「ルーラン(LURAN)378P(登録商標)」のスチレンアクリルニトリルを採用する。
【0057】
スチレンアクリルニトリル、特にLURAN378P(登録商標)が際立つ点は、別のプラスチックと(全くまたは実質的に)混ざり合っていない形態では、その耐化学性を有し、とりわけ、しばしば中和剤として化粧品用ペースト中に採用されるアミンに対しても耐化学性を有する点である。スチレンアクリルニトリル,特にLURAN378P(登録商標)は、さらにその耐熱形状安定性を有する。これらの特性は、射出成形途中における本発明による脱混合と関連付けて利用され、これによりスリーブの内周における表面にこれらの優れた特性を与えられる。
【0058】
同時に、このスチレンアクリルニトリル、特にLURAN378P(登録商標)は、表面におけるその卓越した外観が際立っているが、この点は、ここで、スリーブの外周における表面に必須の表面品質を付与するために、射出成形途中における本発明による脱混合と関連付けて利用される。
【0059】
スチレンアクリルニトリル、特にLURAN378P(登録商標)は、本質的に高い強度、とりわけ高いひっかき抵抗性を示し、かつもろいことが公知である。純粋なスチレンアクリルニトリルから製造されたスリーブは、したがって、鉛筆削り器を用いて通常の力で難なく尖らせることができない。
【0060】
本発明によれば、スリーブが第1プラスチックのこれらの特別な特性により特徴付けられる必要ではない箇所で、第2プラスチックが、第1プラスチックの強度を弱らせるように選択される。
【0061】
一般的には、第2プラスチックは、好ましくは射出成形の途中で、SANからの脱混合現象を介して、およびそれ自体のマイクロ相の脱混合により、半結晶領域を形成しつつ物理的に架橋するプラスチックであるべきであると言える。
【0062】
好適には第2プラスチックは、電気陰性度の差ΔΕΝが0.5より大きく1.7までの範囲である極性を有するプラスチックである。
【0063】
第2プラスチックとしては、極性を有する熱可塑性エラストマー(省略記号TPE-ET)の分類中のプラスチックを、好ましくは純粋にこのプラスチックを採用することが特に有利であると判明した。
【0064】
とりわけ、ポリエーテル基に対してソフトセグメントとして機能するTPE-ETを採用する。特に好都合であるのは、この分類に属する副分類中の、極性を有する熱可塑性ポリエステルエラストマーないし極性を有する熱可塑性コポリエステル(省略記号TPC-ET)を採用することであると判明した。典型的には、このプラスチックは、硬質部分と軟質部分とを交互に備えたブロック・コポリマーからなり、化学的な相互作用は実質的にエステルおよび/またはエーテルベースの双極性相互作用である。理想的には、DSMエンジニアリング・プラスチック非公開株式会社(DSM Engineering Plastics BV)(ウアモンダーバーン 22、6167 RDゲレーン(Urmonderbaan 22、6167 RD Geleen)オランダ在)製の商標「アルニテル(Arnitel)EM400(登録商標)」の下で販売される極性を有する熱可塑性コポリエステルを採用する。
【0065】
驚くべきことに、上述の第1プラスチックと第2プラスチックとの混合物は、(SAN濃度が90重量%以下に低下しないとの意味合いで)ほぼ脱混合しない箇所では、個々の成分自体に従って予想されうるよりも強度が小さい。これに基づいて、良好に鋭利に尖らせる可能性が生じる。この際、柔らかい芯用ペーストの揮発性成分に対して第2プラスチックの耐久性が限られている点は重要ではないが、この理由は、第1プラスチックが、芯用ペーストと直接接触する表面において、上述のように遮断層を形成するからである。さらに、TPEないしTPC-ETでは光沢のある表面が達成されえない事情も重要でもない。
【0066】
あるいは、第1プラスチックとして、アクリルニトリルエチレンプロピレンスチレン(AES)分類中のプラスチックを採用することができる。
【0067】
理想的にはロミーラ化学製品販売処理(ROMIRA fuer Vertrieb & Verarbeitng von Chemieprudukten)有限会社(ピンネベルク(Pinneberg)ドイツ在)が、商標「ローテック(ROTEC)A702(登録商標)」の下で市販しているアクリルニトリルエチレンプロピレンスチレンを用いる。
【0068】
基本的に考えられうると思われるのは、第1プラスチックの重量割合が20重量%~80重量%であり、第2プラスチックの重量割合が80重量%~20重量%であり、充填剤ないし補助剤の重量割合が0重量%~30重量%であり、より良くは15重量%までのみである系である。あらゆる種類の不純物は望ましくなく、プロミル領域を上回る、とりわけ15重量プロミルを上回ることは好ましくは回避される。個々の場合でこれが達成されない場合は、5重量%までの、より良くは2.5重量%までの不純物は許容可能である。
【0069】
本発明による効果の実現のために特に好都合であるのは、第1プラスチックの重量割合が少なくとも45重量%であり、より良くは少なくとも55重量%である系の設定であると判明した。大抵の場合、第1プラスチックの推奨上限は、この場合75重量%、より良くは65重量%である。充填剤ないし補助剤は重量割合が15重量%まで、より良くは5重量%までのみ追加可能である。
【0070】
驚くべきことに、さらなるプラスチックを、(SANまたはAESからなる、および、TPE-ETないしTPC-ETからなる)2成分系に付け加えることは、その可能な限り単純な設定可能性に悪影響を与えうることが明らかになった。したがって、第1プラスチックと第2プラスチックとが、スリーブ用に採用されるプラスチックの少なくとも主な部分を形成する。これは、本発明によるスリーブが、第1プラスチックと第2プラスチックとからなり、これらが、プラスチックペーストの主な部分を形成し、ないし場合によっては、採用されるプラスチックペーストの少なくとも90重量%を提供することを意味する。最良の場合には、第1プラスチックと第2プラスチックと、これらに添加される顔料および補助剤とが、または、これらの双方のプラスチックのみがこれらに添加される顔料と共に、スリーブ用に採用される全プラスチックペースト(不純物を除く)を形成する。
【0071】
これ以外には、上述のように、プラスチックマトリックスに影響を与えるがその構造には関与しない充填剤と、補助剤例えば顔料とを加えることができる。ガス発生剤または発泡剤を射出成形に悪影響を与える量用いることは避けるべきであり、好ましくは全く避けるべきである。
【0072】
補助剤には、第1プラスチックと第2プラスチックとからなるマトリックス中に補助剤の様式でのみ注入され射出成形の途中で溶融しないプラスチック成分も含まれ、例えば、すり砕かれた形態で充填剤として添加される架橋されるエラストマーまたは熱硬化性プラスチックも含まれる。しかし、好ましくはそれ自体プラスチックからなるこの種の充填剤は回避されるが、この理由は、これらは、粘着性を高める可能性があり脱混合を妨ぐ可能性があるからである。
【0073】
好適には、第1プラスチックは、スリーブの外周表面における算術的平均光沢度GUが30GUを上回る、より良くは40GUを上回るように選択される。計測は、ISO2813に準拠して、縦軸Lに沿った方向で、均等に間隔を空けた10個の計測点を備えた10mmの道のり上で、60°の計測角度で行う。
【0074】
本発明のさらなる作用、利点および構成可能性は、後続の実施形態から読み取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1】本発明によるペンシルのスリーブの中央縦断面図である。
図2】本発明による完成したペンシルの中央縦断面である。
図3】スリーブをその縦軸方向に沿って裂いた際のスリーブの破面の一部分を示す細部拡大図である。
図4】本発明によるペンシルのスリーブを中央縦軸に垂直の方向で切った断面図である。
図5a】外皮引き外しテストを示す図であり、切り込みを入れた後の初期の概観図である。
図5b】外皮引き外しテストがさらに進行した過程における詳細図である。
図6】SANおよびTPC-ETについての各RAMANスペクトルの図である。
図7】スリーブの断面における2つの異なる計測点100および200におけるSANおよびTPC-ETについて純粋材料についてのRAMANスペクトルを示す図である。
図8】この図は存在しない。
図9】0重量%のSAN、30重量%のSAN、50重量%のSAN、70重量%のSANおよび100重量%のSAN、ならびに、補完する割合でのTPE-ETが含まれる試料について受光スペクトルのRAMAN強度を示す図である。
図10】第1の実施形態により製造されたスリーブの断面をRAMAN分光法でどのステップで計測したかを具体的に示す図である。
図11】SANとTPC-ETとの濃度が半径方向でスリーブの断面に渡っていかに変化するかを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
第1実施形態
第1実施形態については、60重量%のSAN(LURAN(ルーラン)378P(登録商標))と、40重量%のTPC-ET(アルニテル(Arnitel)EM400(登録商標))とを、3%の顔料(好ましくは様々な会社から入手可能である商品価値のあるタイプの黒い顔料、カーボンブラック(Carbon Black)CI 77266を添加して、好適には250°+/-10°の温度にして、射出成形可能な粘性状態にして、その際均質に混ぜ合わせる。さらなる充填剤または補助剤は添加しない。このためには、ライストリッツ(Leistritz)社(90459 ニュルンベルク、ドイツ在)製の押し出し機が役立ちうる。
【0077】
本来の射出成形過程は、エンゲル(Engel)社(90451 ニュルンベルク/ドイツ在)製のエーモーション(E-motion)940/160T型の射出成形機械で行うことができる。調製されたペーストを、約1400バールの射出注入圧力で、射出成形金型の型穴中に押し入れる。射出成形金型は、この際、流体の媒体により冷却されるが、この媒体は、型穴に対して密閉された射出成形金型を貫流する。とりわけ、スリーブ中で後の時点で芯を収容するために設けられている中空空間を複製する射出成形金型のコアピン自身も、流体の媒体により直接冷却される。すなわち、コアピン自身も冷却媒体が貫流する。
【0078】
続いて離型が行われるが、これは、好ましくはコアピンをスリーブと共に型穴から引き抜き、その後スリーブをコアピンから押し外すことにより行われる。
【0079】
このように製造されたスリーブ2は、特に好適には図1で具体的に示すように見えるが、この際、スリーブ2の構成における個々の点については、後でより詳細に言及する。
【0080】
このように製造されたスリーブは、引っかき傷のつきにくいピアノラッカー様の輝きを備えた顕著な外周表面を示す。この表面は芯の成分の移動に対して非常に強くがあり、かつ良好に装飾可能である。
【0081】
肉眼での検査で得られうる断面を得るために、図1に記されたスリーブ2を引張試験機中に張設し、かつ相応の大きさの引張力で、その縦軸Lの方向で2つの半片になるように裂いた。これにより得られた断面3の破面であって、顕微鏡により支援された初期光学評価により得られうる破面の細部を拡大したものを図3に示す。
【0082】
図3に基づいてすでに、内周5および外周4の表面に接する位置で、およびそれらの直下で、別の種類の層が形成されたことを認識しうる。この所見は、RAMAN分光法を採用した計測により検証されるが、これについては、後でより詳細に説明する。この結果は、図4に提示されている通りである。
【0083】
この図よりわかるように、外側強化ゾーン6と内側強化ゾーン7とが確認されうる。外側強化ゾーン6と内側強化ゾーン7との特徴は、型穴の内側で複製される表面の温度を介して影響されうる。射出注入開始時に、対応する型穴の表面が冷たいほど、脱混合はより強く特徴付けられる。この点は、内側強化ゾーン7についても該当する。すでに上述したように、内側強化ゾーンを複製するコアピンの温度は、コアピン自体に多少なりとも徹底的に冷却剤を貫流させることにより制御可能である。
【0084】
この場合、外側強化ゾーンの自由表面上では、RAMAN分光法を用いて、その計測精確性の枠内では第2プラスチックの割合を検出しえない。この点は、この実施形態の枠内でのみ望ましいのではなく、一般的に好適である。なぜならば、この種の形成はここで望まれるピアノラッカー様式の表面である光沢を有する表面の達成にとって好都合であるからである。半径方向で内側方向で自由表面の下方で、第1プラスチックの割合は低減し始める。約0.2mmの深さまででは、第1プラスチックの割合は90重量%を上回る割合で存在する。
【0085】
興味深いことに、いずれにしても、外側強化ゾーンの領域中で、スリーブの壁を形成するプラスチックの強度が有意に低減する規定の境界層が存在するように思われる。この第1実施形態にしたがって製造されたスリーブを、刃を用いて斜めに切り込みを入れた結果、図5に図示するように、斜めに突き出た削りくずが生じ、その後、素手でこの削りくずを引っ張ることにより、切り込みの深さに依存せず、外皮をスリーブの表面から引き外すことができる。外皮は比較的強く、大抵の場合、引き外し長さが4cmを上回って初めて、裂き取ることができる。
【0086】
一般的には言うことができるのは、本実施形態を越えた作用で、この種の外皮引き外しテストの結果として、この種の外皮を厚さが0.08mm~0.25mmで引き外しうる場合には、特に良好な鋭利に尖らせる可能性が常に存在することが明らかであるとの点である。
【0087】
ここまでで明らかになったと思われる点は、削り器の刃は、相対的に強い外皮を完全に細かく破断せねばならないことに頼るべきではなく、切断と剥離とが混ざるように思われる点であり、これは便利に作用するとの点である。
【0088】
第2実施形態
第2の実施形態の製造のためには、60重量%のAES(ロテック(ROTEC)A702(登録商標))と、40重量%のTPC-ET(アルニテル(Arnitel)EM400(登録商標))とを、3%の顔料(好ましくは上述のタイプの黒い顔料)を添加して、好適には250°+/-10°の温度にして、射出成形可能な粘性の状態にして、その際均質に混ぜ合わせる。さらなる充填剤または補助剤は添加しない。
【0089】
このペーストの処理は、上で第1の実施形態について記述したように、第1実施形態で記載した機械を用いて、これも同様に射出成形方法で行う。
【0090】
このようにして製造されたスリーブ2は、図1で具体的に示したように特に好適に見える。
【0091】
このように製造されたスリーブは、サテン仕上げの輝きを備え、顕著に引っかき傷のつきにくい外周表面を示す。これは芯の成分の移動に対して抵抗力を有し、かつ良好に装飾可能である。
【0092】
RAMAN分光法を用いた検査により、後でより詳細に説明するように、このプラスチック混合物を射出成形する際にも、明らかに認識可能な外側強化ゾーンと、これも同様に明らかに認識可能な内側強化ゾーンとが設定され、その伸張は、上述の領域内における射出成形金型の冷却の強度に応じて動くことが示される。
【0093】
比較例
比較例としては60重量%のSAN(ルーラン(LURAN)378P(登録商標))と、40重量%の通例非極性を有するSBSブロック・コポリマー(アルルナ(ALLRUNA)W55(登録商標))とを、3%の顔料(好ましくは上述のタイプの黒い顔料)を添加して、好適には250°+/-10°の温度にして、射出成形可能な粘性の状態にして、その際均質に混ぜ合わせる。さらなる充填剤または補助剤は添加しない。ALLRUNA(アルルナ)W55(登録商標)は、アルロッド・ヴェルクシュトッフ(ALLOD Werkstoff)有限合資会社(91593 ブルクベルンハイム(Burgbernheim)ドイツ在)の商標である。
【0094】
このペーストの処理は、上に第1の実施形態について説明したように、そこで説明した機械を用いて、これも同様に射出成形方法で行う。
【0095】
このようにして製造されたスリーブ2は、図1で具体的に示したように特に好適であるように見える。
【0096】
このようにして製造されたスリーブはくすんだ外側表面を示し、有意な外側強化ゾーンも内側強化ゾーンも示さない。これに代えて、これらの材料は、凝固するまで実質的に均一に混ざり合ったままである。外皮引き外しテストを行うこともできないが、なぜならば、スリーブは明らかに強度が均一である。
【0097】
濃度測定のためのRAMAN分光法
とりわけ本発明による外側および内側強化ゾーン中に見いだされる濃度を測定するために、RAMAN分光法は選択すべき手段である。
【0098】
RAMAN分光法を実施するためには、上述の破面はあまり適切ではないと判明する。これに代えて、スリーブをまずその縦軸に対して横断方向で完全に切断ないし鋸で切り、その後得られた断面を研磨することにより生じる断面において検査を行った。
【0099】
SANとTPC-ETとの局所的な量の比率を明確にするために、RAMANスペクトルを、第1の実施形態にしたがって製造されたスリーブの断面に渡って測定した。この計測は、サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック(Thermo Fisher Scientific)社(168 サードアベニュー(Third Avenue) ウォルトハム(Waltham) MA アメリカ合衆国 02451在)のアルメガ(Almega)シリーズのRAMAN分光器を用いて行った。
【0100】
機器を較正するため、および各スペクトルの個々の部分を割り当てることができるように、まず原材料を計測する。すなわち、100重量%のSANからなる板と、100重量%のTPC-ETからなる板とを製造した。計測点が完全に各板上にある限り、および板の厚さが2/10mmを上回る限り、試験片のサイズは重要ではない。双方の板を独自に個々に計測した。
【0101】
このようにして得られたスペクトルを、図6のグラフ中にプロットした。点線は、SANについて受光したスペクトルで、実線は、TPE-ETについて受光したスペクトルを示す。
【0102】
SANを測定するためには、3050cm-1でその最大値に達するピークの面を参照し、また同様にSANにとって特徴的な最大値が2250cm-1であるピークの面も参照でき、これらは匹敵する値を提供し、したがって、以下で別々に考慮するには及ばず、無視し続けうる。
【0103】
その後、図4中で特定された点100および200について順々に計測を行った。この際受光された双方のスペクトルは重なり合い、したがって、図7に示されるようになる。この図ですでに、点100と点200とで、異なる濃度のSANとTPC-ETとが見出されうることが認識できる。
【0104】
その後、0重量%と100重量%とのSANを備えたすでに言及した試料に追加して、SANとTPC-ETとから製造された体系的に異なる混合物を製造し、適切な温度制御で縁層なしに上述の板に加工し、すなわち30重量%、50重量%、70重量%のSANを含みかつこれを補完する割合のTPC-ETを含む混合物とする。これらの一連の試料の個々の代表について受光されたスペクトルのRAMAN強度を、グラフ中にプロットし、図9に示した。図9からは、各混合比率に対して、特徴的なRAMAN強度を割り当てることができ、SANないしTPC-ETの重量%割合と、これらについてそれぞれ計測さうるRAMAN強度との間に線形の関係性が存在することが認識される。
【0105】
その後、上で既に述べたように、第1の実施形態にしたがって製造されたスリーブ2の研磨された断面を、図10で具体的に示すように段階的に計測した。外側から半径方向に進んで、スリーブ断面の中央までの点ごとに順に計測を行い、内側から半径方向に進んで一点ずつスリーブ断面の中央まで計測を行った。
【0106】
これらの計測の結果が、図10に示す図である。射出成形のために採用されたプラスチックペーストの混合比率は、SANが2/3、TPC-ETが1/3であった。これから出発して、計測結果のばらつきを考慮すると、射出成形工具中の射出成形プロセス時に、部分的な脱混合に至ったとわかる。
【0107】
この際、スリーブの外周面の表面におけるSANの濃度は、ほぼ100重量%である。
【0108】
内周面の表面では、SANの濃度は、約70重量%にすぎない。
【0109】
本発明によるペンシルの構成
本発明によるペンシル1は、図2、3および4に示されるように構成されている、このペンシルの外径は通常約6~16mmである。
【0110】
このペンシルは、その中央に芯8用の収容部を有し、これは形状締結の廻り止めを形成するので有利である。その断面は円形でありえるが、好ましくは楕円ないし多角形ないし八角形で構成されていて、これにより、芯8とスリーブ2との間のより良い保持が確保される。八角形の2つの対向する平坦面間の距離は、好ましくは3~5mmである。スリーブ2の壁厚は好ましくは1.5~3mmの範囲である。ペンシル1の長さ、すなわちその縦軸L方向の伸張は、通常85mmより長く、大抵100mmより長く、180mmまである。
【0111】
芯8用の収容部は、好ましくはその縦軸L方向でスリーブ2全体を貫通して伸張していて、すなわち、スリーブ2は、半完成品として管を形成する。これにより、芯注入が容易になる。なぜならば、スリーブは、すぐあとでより詳細に説明する円錐形を形成する側で、芯注入の目的で、スリーブを密閉する金型中に差し込まれることができ、この金型は、芯の端部すぐの近くで円錐の領域中で、これに応じて通常これも同様に円錐状に経過する形状となる。芯用ペーストは、その後スリーブの他方の端部であって台座のある端部から注入され、かつスリーブ2中の芯収容部および芯8の先端を複製する金型の中空空間を充填する。本発明によるスリーブのような、プラスチックからなるスリーブは、芯注入の目的でこのスリーブを密閉する金型中に特に良好に差し込まれるが、これは、このスリーブのプラスチックが、木製のスリーブに比較して可逆的な弾性を有し、すなわち、相応の密閉された金型中に差し込まれないし射出注入可能であるからである。スリーブの非常に平坦な外側表面は、確実な密閉を達成するために寄与する。
【0112】
ペンシル1の一端は円錐形12になるよう尖らされ、好適には円すい角Piは20°と60°との間である。この端部は、このようにして、通常の木製のペンシルで公知である尖った面を複製し、これにより最初に尖らせる場合に削り器の刃に対して正確に位置付けられる継ぎ目面を形成するのに寄与し、かつ、これにより、削り器刃が、その全長で削りくずを取り除くことが可能になる。
【0113】
ペンシル1の他端は、好ましくは、その外径が引っ込んだ領域となる形状の台座9を有する。この台座の上に、エンドキャップ10を載せることができ、好ましくは台座9とエンドキャップ10との間のラッチが生じる。芯を可能な限り良好に保護しおよび移動を回避するために、蓋の下には、通常追加的な密閉部が設けられていて、これはしばしば栓すなわちシリコン栓11の形状の物である。完成したペンシル1は、芯8がスリーブ2を超えて突出している側で、通常、上に乗せられた蓋12を用いて、出来上がったままに保たれる。本発明により達成された非常に平坦で引っかき傷のつきにくい外側表面は、蓋10が良好にかつ確実に載せられるのを助ける。本発明により達成された表面は、引っかき傷がつきにくいので、蓋10を30回引き外し再度載せた後でさえも、蓋10が通過した表面について、ペンシルの縦軸方向に延在する微細な引っかき傷などによる肉眼で認識可能な鈍磨は生じない。蓋10は、少し小さいサイズで実施され、したがって、スリーブ2の外径に比較して内径が少し小さい。このように製造された蓋10は、本発明により達成されたスリーブ2の表面上に吸い付くように載せられ、その滑らかさがゆえにそこから再び引き外すことができる(スティックスリップがない)。
【0114】
全般的な最後の所見
独立的に、場合によっては上述の説明のさらなる特徴および/またはすでに存在する請求項でも補強されて保護請求されるのは、着色料および/または化粧品物質を塗布するためのペンシルであって、塗布されるべき物質からなる芯と、この芯を被覆する一体的に射出成形されたスリーブとを備え、このスリーブが熱可塑性材料からなるペンシルであって、この熱可塑性材料が、第1プラスチックと第2プラスチックとからなる混合物からなり、これが際立っている点は、削りくずが外周面から突き出るように外周表面に切り込みを入れた後、素手でこの削りくずを引くことにより、外皮をスリーブの表面から引き外すことができるという点である。
【0115】
独立的に、場合によっては上述の説明のさらなる特徴および/またはすでに存在する請求項でも補強されて保護請求されるのは、着色料および/または化粧品物質を塗布するためのペンシルであって、塗布されるべき物質からなる芯と、芯を被覆する一体的に射出成形されたスリーブとを備え、このスリーブが熱可塑性材料からなり、この熱可塑性材料が、第1プラスチックと第2プラスチックとからなる混合物からなる、ペンシルであって、このペンシルが際立っている点は、そのスリーブが、手で分けることができる2つの層を有する構造を有し、好ましくはこれら双方の層のうちの表面に近い層がより薄い点である。
【0116】
独立的に、場合によっては上述の説明のさらなる特徴でも補強されて保護請求されるのは、着色料および/または化粧品物質を塗布するためのペンシルであって、塗布されるべき物質からなる芯と、この芯を被覆する一体的に射出成形されたスリーブとを備え、このスリーブが熱可塑性材料からなり、この熱可塑性材料が、第1プラスチックと第2プラスチックとからなる混合物からなる、ペンシルであり、これが際立っている点は、そのスリーブが、半径方向で見ると、中央領域中よりも第1プラスチックの濃度がより高い外側強化ゾーンを有する点である。
【0117】
これに関して注記すべきは、内側強化ゾーンの形成は、必要な場合、スリーブの内周において相応の温度制御をすることにより達成されうるという点であろう。この請求項が効力を発するところでは、上の説明は意味的に同様に該当し(この変形例では存在しない、ないし純粋に任意選択的である)内側強化ゾーンに根差す特別な制限のみがない。
【0118】
独立的に、場合によっては上述の説明のさらなる特徴および/またはすでに存在する請求項でも補強されて保護請求されるのは、着色料および/または化粧品物質を塗布するためのペンシルであって、塗布されるべき物質からなる芯と、この芯を被覆する一体的に射出成形されたスリーブとを備え、このスリーブが熱可塑性材料からなり、この熱可塑性材料が、第1プラスチックと第2プラスチックとからなる混合物からなる、ペンシルであり、これが際立っている点は、そのスリーブが、半径方向で見ると、中央領域中よりも第1プラスチックの濃度がより高い内側強化ゾーンを有する点である。
【0119】
注釈すべきであろう点は、外側強化ゾーンの形成が、必要な場合スリーブの外周における相応の温度制御により達成されうること、および、型穴中に射出注入後はもはや必要ではない熱エネルギーが、スリーブのプラスチックペーストから、その後に実質的にその内周面を介して取り去られるとの点である。この請求項が応力を発するところでは、上の説明は意味的に同様に該当し(この変形例では存在しない、ないし純粋に任意選択的である)外側強化ゾーンに根差す特別な制限のみがない。
【符号の説明】
【0120】
1 ペンシル
2 スリーブ
3 スリーブ断面
4 外周
5 内周
6 外側強化ゾーン
7 内側強化ゾーン
8 芯
9 台座
10 エンドキャップ
11 シリコン栓
12 円錐
100 計測点1
200 計測点2
L ペンシルおよびそのスリーブの縦軸
S 削りくず
D 外皮の厚さ
A 引き外し長さ
Pi 円すい角
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7
図9
図10
図11