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特許7015311医療デバイス、前記医療デバイスを含む組立品、およびそのような医療デバイスを製造するためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】医療デバイス、前記医療デバイスを含む組立品、およびそのような医療デバイスを製造するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/34 20060101AFI20220207BHJP
   A61M 5/31 20060101ALI20220207BHJP
   A61M 5/28 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
A61M5/34 520
A61M5/34 510
A61M5/31 502
A61M5/31 530
A61M5/28
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019534726
(86)(22)【出願日】2017-12-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 EP2017084797
(87)【国際公開番号】W WO2018122366
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-07-21
(31)【優先権主張番号】16207453.8
(32)【優先日】2016-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】310021434
【氏名又は名称】ベクトン ディキンソン フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン ブリュネル
(72)【発明者】
【氏名】マリオ カテナ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-マウリス オーレット
【審査官】田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-530586(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102013015820(DE,A1)
【文献】特表2012-525217(JP,A)
【文献】特開2003-260143(JP,A)
【文献】特表2012-530585(JP,A)
【文献】特表2015-519136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/34
A61M 5/28
A61M 5/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体内に医療溶液を送達するのに使用するための医療デバイス(10)であって、 医療溶液を含有するためのリザーバ(22)を画定する細長い本体(20)、
前記本体(20)から軸方向および遠位方向に延びる長手方向先端(40)であって、前記長手方向先端(40)を通って軸方向に延びおよび前記リザーバ(22)と流体連通する流体経路(42)を画定する、長手方向先端(40)、および
前記長手方向先端(40)の外面(44)上に形成される把持部分(46)、
を含み、前記本体(20)および長手方向先端(40)は、ガラス製であり、前記把持部分(46)は、長手方向先端(40)と一体的に形成されおよび長手方向先端(40)の長手方向軸(A)の周りに延びる3本から8本のリブ(48)を含み、ならびに前記把持部分(46)は、0.5μmから3μmの平均粗さを有することを特徴とする医療デバイス(10)。
【請求項2】
前記リブ(48)は、前記長手方向先端(40)の前記外面(44)上に所定間隔で配置されることを特徴とする請求項1に記載のデバイス(10)。
【請求項3】
前記リブ(48)の各々は、丸みを帯びた外形を有することを特徴とする請求項1または2に記載のデバイス(10)。
【請求項4】
隣接リブ(48)間の距離は、0.4mmから0.8mmの間に含まれることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項5】
前記リブ(48)の各々は、0.01mmから0.1mmの高さを有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項6】
前記リブ(48)は、3から6mmの全長にわたって、互いから軸方向に間隔が空けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項7】
前記長手方向先端(40)は、遠位端において近位端よりも小さい直径を有する円錐台形状を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項8】
患者の体に医療溶液を送達するのに使用するための組立品(100、110)であって、前記組立品(100、110)は、請求項1から7のいずれか一項に記載のデバイス(10)、および前記長手方向先端(40)の前記把持部分(46)上に適合される付加的な要素(102、112)を含むことを特徴とする組立品。
【請求項9】
前記付加的な要素は、針ハブ(102)であることを特徴とする請求項8に記載の組立品(100)。
【請求項10】
前記付加的な要素は、先端キャップ(112)であることを特徴とする請求項8に記載の組立品(110)。
【請求項11】
請求項1から7のいずれか一項に記載のデバイス(10)を製造するためのプロセスであって、前記プロセスは、
前記長手方向先端(40)の最終形状が得られることとなる最終形成先端ステーションにおいて、前記デバイス(10)の長手方向先端(40)を前記長手方向先端に関して反対方向に回転する1対の形成ホイール(60a、60b)間に挿入する工程であって、前記長手方向先端の材料は、その軟化点を超える温度になる、工程、および
前記長手方向先端(40)の外面(44)に対して前記ホイール(60a、60b)を押し付ける工程、
を含み、前記ホイール(60a、60b)には、前記長手方向先端(40)が形成されたときに前記長手方向先端(40)と接触するそれらのそれぞれの外面上に凹部(62)が備わっており、各リブ(48)は、前記ホイールのそれぞれの凹部(62)を充填する前記先端の軟化された材料によって形成されることを特徴とするプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬組成物、ビタミン、ワクチン、または任意の他の種類の医療溶液を患者の体に送達するのに使用するための医療デバイスに関し、および、また、そのようなデバイスを製造するためのプロセスに関する。
【0002】
本願において、構成要素または装置の遠位端は、使用者の手から最も遠い端を意味するとして理解されなければならず、および近位端は、使用者の手に最も近い端を意味するとして理解されなければならない。そのようなものとして、本願において、遠位方向は、注射の方向として理解されなければならず、および近位方向は、反対方向、すなわち、使用者の手に向かう方向である。
【背景技術】
【0003】
シリンジのような薬物送達デバイスは、典型的には、それを通って医療溶液が容器および/またはリザーバから排出される流体経路を画定する長手方向先端(longitudinal tip)の形態のエンドピースを有する医療溶液を含有するための容器および/またはリザーバを含む。薬物送達デバイスは、好ましくは、その高い化学的不動態(chemical passivity)、その低い気体透過性および高い透明性で知られている材料であるガラス製であり、これは、長時間の保存(extended storage)および容易な検査(easy inspection)を可能にする。しかしながら、この長手方向先端は、それだけでは非経口投与(parenteral administration)を可能にせず、および針ハブまたは静脈(IV)ラインのようなコネクタへの薬物送達デバイスの接続を可能にする加締された針(staked needle)またはアダプタ、または長手方向先端に直接的に接続される針ハブ、のどちらかを含まなければならない。そのようなデバイスの使用の間、アダプタおよび/または針ハブがデバイスの長手方向先端にしっかりと接続されることは、医療スタッフおよび患者の安全のために重要であるが、容器内に含有される医療溶液の全用量を送達してデバイスを通して輸送される液体の漏出を回避するためにも重要である。シリンジの長手方向先端がキャップによって閉じられている場合には、薬物の漏出または汚染を回避するために、キャップが先端上にしっかりと閉じられていることが重要である。
【0004】
特許文献1は、長手方向先端(エンドピース)の外面の特定部分上に、前記長手方向先端とアダプタとの間に信頼性のある接続を提供するために、把持面(gripping surface)が備わっている薬物送達デバイスを開示する。特許文献1は、また、把持面が、長手方向先端上にセラミックコーティングを適用することによって、または代替的に、摩耗技術(abrasion technique)、プラズマまたはレーザー処理を用いることによる長手方向先端の外面の改質(modification)を用いて、形成され得ることを教示する。
【0005】
しかしながら、セラミックコーティングは、多孔性(porous)であり、およびしたがって、アダプタと長手方向先端との間の接続のタイトネスを低減させる。上述の代替的な取り組みは、また、粒子を生成する欠点を有し、および医療溶液の汚染のリスクを持ち出す。加えて、開示された技術は、把持面の特定の形状を複製することをかなり困難にし、およびしたがって、アダプタと長手方向先端との間の接続のタイトネスは、個々のデバイス間で変動することがある。加えて、セラミックコーティングを先端上に加えるこの技術は、先端に応力および制限を生み出し、およびシリンジの先端を弱め、破損を引き起こすことがあるが、また、コーティングが先端上に加えられた際に、先端をより大きくし、それはもはや、ISO規格(ISO standards)に準拠していない。
【0006】
上記を考慮して、本発明の目的は、医療デバイスの長手方向先端と、アダプタのような前記長手方向先端に取り付けられるべき要素および/または直接的に針ハブおよび/またはキャップと、の間の接続の信頼性を改善することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2016/050699号
【発明の概要】
【0008】
本発明の第1の態様によると、患者の体に医療溶液を送達するのに使用するためのデバイスであって、医療溶液を含有するためのリザーバを画定する細長い本体、リザーバの遠位端に位置しおよびそこから軸方向に延びるエンドピースであって、長手方向先端を通って軸方向に延びおよびリザーバと流体連通する流体経路を画定する、長手方向先端の形態のエンドピース、ならびに長手方向先端の外面上に形成される把持部分、を含み、本体および長手方向先端は、ガラス製であり、把持部分は、長手方向先端と一体的に形成されおよび前記長手方向先端の長手方向軸の周りに延びる3本から8本のリブを含み、ならびに把持部分は、0.5μmから3μmの平均粗さを有することを特徴とする、デバイスが提供される。
【0009】
本発明の第2の態様によると、第1の態様によるデバイスにおいて、リブは、長手方向先端の外面上に所定間隔で配置される。
【0010】
本発明の第3の態様によると、第1または第2の態様によるデバイスにおいて、リブの各々は、丸みを帯びた外形(rounded profile)を有する。
【0011】
本発明の第4の態様によると、第1から第3の態様のうちの任意の1つによるデバイスにおいて、隣接リブ間の距離は、0.4mmから0.8mmの間に含まれる。
【0012】
本発明の第5の態様によると、第1から第5の態様のうちの任意の1つによるデバイスにおいて、リブの各々は、0.01mmから0.1mmの高さを有する。
【0013】
本発明の第6の態様によると、第1から第6の態様のうちの任意の1つによるデバイスにおいて、リブは、3mmから6mmの全長にわたって、互いから軸方向に間隔が空けられている。
【0014】
本発明の第7の態様によると、第1から第7の態様のうちの任意の1つによるデバイスにおいて、長手方向先端は、その遠位端においてその近位端よりも小さい直径を有する円錐台形状を有する。
【0015】
本発明の第8の態様によると、患者の体内に医療溶液を送達するのに使用するための組立品であって、第1から第9の態様のうちの任意の1つによるデバイス、および長手方向先端の把持部分上に適合される(fitted onto)付加的な要素、を含む組立品が提供される。
【0016】
本発明の第9の態様によると、第10の態様による組立品において、付加的な要素は、針ハブである。
【0017】
本発明の第10の態様によると、第10の態様による組立品において、付加的な要素は、先端キャップである。
【0018】
本発明の第11の態様によると、上述のようなデバイスを製造するためのプロセスであって、
長手方向先端の最終形状が得られるべき最終形成先端ステーション(final forming tip station)において、デバイスの長手方向先端を、長手方向先端に関して反対方向に回転する1対の形成ホイール(forming wheels)間に、挿入する工程であって、長手方向先端の材料は、その軟化点を超える温度になる、工程、および
長手方向先端の外面に対してホイールを押し付ける工程(pressing)、
を含み、ホイールには、長手方向先端が形成されたときに長手方向先端と接触するそれらのそれぞれの外面上に凹部が備わっており、各リブは、ホイールのそれぞれの凹部を充填する先端の軟化された材料によって形成される、プロセスが提供される。
【0019】
したがって、既存の医療デバイスの長手方向先端上のセラミックコーティングは、長手方向先端の長手方向軸の周りに延びる3本から8本のリブを備えて形成される把持部分で置き換えられる。この把持部分は、長手方向先端と先端に取り付けられるべき付加的な要素との間の密接な接続(tight connection)を保証することができ、および同時に、デバイスが使用されるときに、付加的な要素を長手方向先端から引き離すために、比較的小さい力を必要とする。
【0020】
シリンジ先端が、回転する形成ホイールを先端の外面に対して押し付けることによって成形される(shaped)場合、先端の特定の形状は、正確な方法で容易に複製され得る。
【0021】
本発明は、添付図面を参照して、以下の説明においてさらに詳細に説明されよう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態によるシリンジのような医療デバイスを示す図である。
図2】医療デバイスを示す長手方向断面図である。
図3】医療デバイスの先端部分を示す部分拡大図である。
図4A】医療デバイスおよび医療デバイスの長手方向先端に取り付けられる針ハブを含む組立品を示す図である。
図4B】医療デバイスおよび医療デバイスの長手方向先端に取り付けられる針ハブを含む組立品を示す図である。
図5A】医療デバイスおよび医療デバイスの長手方向先端に取り付けられる先端キャップを含む組立品を示す図である。
図5B】医療デバイスおよび医療デバイスの長手方向先端に取り付けられる先端キャップを含む組立品を示す図である。
図6】1対の形成ホイールを示す拡大図である。
図7】実施形態による長手方向先端を形成する工程を概略的に示す図である。
図8A】本発明による把持部分およびセラミックコーティングを示す先行技術の把持部分に関する、先端と針ハブとの間のインターフェースにおける漏れ量(leak rate)の比較実験結果を示す図である。
図8B】本発明による把持部分およびセラミックコーティングを示す先行技術の把持部分に関する、先端と先端キャップとの間のインターフェースにおける漏れ力(leak force)の比較実験結果を示す図である。
図8C】本発明による把持部分およびセラミックコーティングを示す先行技術の把持部分に関する、先端キャップ引き抜き力(pull out force)の比較実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の実施形態による医療デバイス10を示す。図2は、医療デバイス10の長手方向断面図である。図1および図2に示されるように、医療デバイス10は、軸Aに沿って延びる概して細長い(elongated)中空要素である。医療デバイス10は、細長い本体20および本体20から遠位に延びる長手方向先端40を含む。
【0024】
本体20は、軸方向に(すなわち、軸Aに沿って)延び、および概して管状の形状を有する。本体20は、医療溶液を含有するためのリザーバ22を画定する。医療溶液は、医薬組成物、ビタミン、ワクチン、または任意の他の種類の注射可能な薬物を含んでいてもよい。
【0025】
本体20は、近位端20aおよび本体20から半径方向外方に延びるフランジ24を有する。本体20は、リザーバ22内に含有される医療溶液を排出するために、医療デバイス10が、プランジャ(不図示)がプランジャロッド(不図示)の助けを借りて開口26を通してリザーバ22内部において遠位方向に進むことを可能にするように、近位端20aに本体20と概して同心である開口26を画定する。
【0026】
長手方向先端40は、また、本体20よりも小さい直径を持つ概して管状の形状を有する。長手方向先端40は、肩部28によって本体20の遠位端20bに円滑に接続される。長手方向先端40は、長手方向先端40を通って軸方向に延びる流体経路42を画定する。流体経路42は、リザーバ22と流体連通する。したがって、リザーバ22内に含有される医療溶液は、長手方向先端40の流体経路42を通して排出される。本体20および長手方向先端40は、ガラス製であり、および互いと一体的に形成される。
【0027】
医療デバイス10は、患者の体にリザーバ22内に含有される医療溶液を送達するために使用される。医療デバイス10は、その遠位端、特に長手方向先端40に接続される付加的な要素と共に使用されてもよい。本発明の実施形態において、長手方向先端40は、静脈ラインまたは針ハブの1つの端を受け入れるためにアダプタがそれに適合され得るように設計されていてもよい。本発明の別の実施形態において、針ハブは、医療デバイス10の長手方向先端40に直接的に取り付けられてもよい。さらに別の実施形態において、先端キャップのような他の付属品が、長手方向先端40に取り付けられてもよい。
【0028】
さらに図3を参照して、長手方向先端40は、その外面44上に把持部分46を有する。好ましくは、把持部分46は、長手方向先端40の遠位端に最も近い部分を覆って(over)延びていてもよい。
【0029】
把持部分46は、複数の環状リブ48(例えば、例示される実施形態において8本のリブ)を含む。リブ48は、長手方向先端40の軸Aの周りに延びる。リブ48は、互いに概して同一の形状を有するが、長手方向先端40は遠位端において近位端よりも小さい直径を持つ円錐台形状を有するので、リブ48の外径は、互いにわずかに異なる。
【0030】
実施形態によると、把持部分46の平均粗さRa(算術平均粗さ)は、0.5μmから3μmの間に及ぶ。対照的に、ベアガラス(すなわち、把持部分46なし)の平均粗さは、約0.005μmである。
【0031】
粗さRaは、表面状態をマイクロメートルの単位で(in micrometers)測定するのに適当な装置によって測定される。そのような装置は、測定が線形測定(linear measure)を行う測定用先端(measuring tip)を用いて行われる粗さ計(roughometer)、および粗さ計と同様の結果を与える測定用先端を用いる側面計(profilometer)を含む。
【0032】
把持部分46は、長手方向先端40と長手方向先端40上にしっかりと適合されるべき付加的な要素との間の密接な接続を達成するために、3本から8本のリブ48を含んでいてもよく、一方、同時に、必要なときに付加的な要素を長手方向先端40から引き離すために、比較的小さい力を必要とする。把持部分の長さは、3mmから6mmまで延びていてもよい。実施形態において、長手方向先端40には、5mmの全長にわたって互いから間隔が空けられた8本のリブ48が備わっている。隣接リブ間の距離は、0.4mmから0.8mmの間に含まれ、例えば約0.5mmであってもよい。前記距離は、隣接リブの頂部間の距離として考えられる。
【0033】
リブ48の高さは、0.01mmから0.1mmの間、好ましくは、0.03から0.07mmの間、例えば、およそ0.05mmである。
【0034】
長手方向先端40が多すぎるリブ48を備えて形成された場合、付加的な要素を長手方向先端40から引き離すために必要とされる力である引き抜き力は、高すぎる傾向にあり、これは、使用のために医療デバイス10を準備することを困難にする。それに対して、リブ48の数が不十分である場合、付加的な要素と長手方向先端40との間の把持力は、弱すぎ、付加的な要素と医療デバイス10との間の接続の信頼性を低減させる。
【0035】
さらに、本実施形態による医療デバイス10は、セラミックコーティングまたは任意の他の種類のコーティングのような付加的な材料を必要とせず、およびしたがって、セラミックコーティングでコーティングされた長手方向先端40から剥がれ落ち、したがって、リザーバ22に貯蔵される医療溶液の汚染を潜在的にもたらすであろう粒子を生成するリスクがない。さらに、長手方向先端上にセラミックコーティングが適用される既存の技術と比較された際に、長手方向先端40は、把持部分において弱められず、一方、長手方向先端40と長手方向先端40上に適合されるべき付加的な要素との間に十分な把持力を達成する。
【0036】
図4Aおよび図4Bは、医療デバイス10および医療デバイス10の長手方向先端40に直接的に取り付けられる針ハブ102を含む組立品100を示す。針ハブ102は、ハブ104を含み、およびフランジ106を示しても示さなくてもよい。ハブ104は、それを通してハブ104が針101を保持するルーメン108を含む。針ハブ102は、プラスチック製またはアルミニウム材料製、またはそのようなデバイスに適当な任意の他の材料製であってもよい。フランジ106は、針ハブ102を医療デバイス10から引き離す動作を容易にすることを目的とする。
【0037】
ハブ104は、また、医療デバイス10の長手方向先端40上に適合されるべく寸法付けられたキャビティ103を備えて形成される。具体的には、組み立てられた状態において、長手方向先端40の外面44は、その把持部分46上のキャビティ103の周囲内壁(circumferential inner wall)と密接に接触し、それによって、針ハブ102と長手方向先端40との間の密接な接続を確立する。
【0038】
図5Aおよび図5Bは、医療デバイス10および医療デバイス10の長手方向先端40に取りつけられる先端キャップ112を含む組立品110を示す。先端キャップ112は、リザーバ22の中身を汚染から保護することが意図される。先端キャップ112は、閉鎖遠位端を有するカップの形態の本体部(body part)114を含む。本体部114は、近位端において開口するキャビティ118を画定する。キャビティ118は、長手方向先端40の把持部分46と係合されるべく寸法付けられる。先端キャップ112は、図5Bに示されるように、医療デバイス10に完全に組み立てられたときに、長手方向先端40の流体経路42の遠位端を閉鎖するように設計される。先端キャップ112は、流体経路42を閉鎖するために適当な材料製であってもよい。
【0039】
本発明の先端キャップのために適当な材料は、天然ゴム、アクリレートブタジエンゴム(acrylate-butadiene rubber)、シスポリブタジエン(cis-polybutadiene)、クロロまたはブロモブチルゴム(chloro or bromobutyl rubber)、塩素化リエチレンエラストマー(chlorinated polyethylene elastomers)、ポリアルキレンオキシド(polyalkyleneoxide)ポリマー、エチレン酢酸ビニル(ethylene vinyl acetate)、フルオロシリコーンゴム(fluorosilicone rubbers)、ヘキサフルオルプロピレンビニリデンフルオライドテトラフルオロエチレンターポリマー(hexafluoropropylene-vinylidene fluoridetetrafluoroethyleneterpolymers)、ブチルゴム(butyl rubbers)、ポリイソブテン(polyisobutene)、合成ポリイソプレンゴム(synthetic polyisoprene rubber)、シリコーンゴム(silicone rubbers)、スチレンブタジエンゴム(styrene-butadiene rubbers)、テトラフルオロエチレンプロピレン共重合体(tetrafluoroethylene propylene copolymers)、熱可塑性コポリエステル(thermoplastic-copolyesters)、熱可塑性エラストマー(thermo-plastic elastomers)、および同様のもの、またはそれらの組み合わせを含む。
【0040】
本実施形態によると、複数のリブ48が備わっている長手方向先端40の把持部分46のおかげで、針ハブ102または先端キャップ112を医療デバイス10から引き離すために必要とされる力は比較的小さいが、同時に、医療デバイス10と針ハブ102または先端キャップ112との信頼性のある接続が確立される。
【0041】
加えて、医療デバイス10の長手方向先端40上に把持部分46を形成する方法は、図6および図7を参照して、以下に説明される。実施形態によると、長手方向先端40は、1対の回転する形成ホイールを使用することによって成形されてもよい。
【0042】
医療デバイス10は、ガラス管を形成することによって成形されてもよい。本体20および本体20から遠位方向に延びる端部の先端(end tip)を形成する方法は、シリンジの技術分野においてよく知られている。それに対して、本実施形態によると、長手方向先端40は、2つの回転するホイールから長手方向先端40の外面44上に圧力を加えることによって成形される。
【0043】
図6は、把持部分46を含む長手方向先端40の外径を形成するために使用される1対の回転する形成ホイール60aおよび60bを示す。ホイール60aおよび60bの各々は、他のホイール60aまたは60bに面するその外面上に複数の凹部62を有する。凹部62は、長手方向先端40上に形成されるべきリブ48に対応するようにホイールの外面上に寸法付けられおよび配置される。
【0044】
実施形態において、凹部62は、鋭い縁のない、丸みを帯びた外形を有していてもよい。これは、長手方向先端40の軟化されたガラス材料が凹部62の容積全体を充填し、それによってリブ48を含む長手方向先端40の形状を正確に複製することを容易にする。この実施形態によると、結果として、リブ48もまた凹部62に対応するように丸みを帯びた外形を有することに留意されたい。
【0045】
ホイール60aおよび60bは、意図的に、医療デバイス10の長手方向先端40の最終形状が形成される最終形成先端ステーションに設置される。図6に見られるように2つのホイール60aおよび60b間の空間64に導入される医療デバイス10の長手方向先端40の形成の間、長手方向先端40は、その軟化点まで、例えば900℃から1100℃の間の温度に加熱され、およびしたがって、リブ48を備えて形成されるべき理想の状態にある。
【0046】
図7に示されるように、ホイール60aおよび60bは、両方とも、それ自体が回転している長手方向先端40に関して反対方向に回転することが引き起こされる。換言すると、および以下にさらに説明されるように、長手方向先端40は、両方のホイール60aおよび60bが反対方向に回転している間に、一方向に回転している。図7は、回転する形成ホイール60aおよび60bならびに医療デバイス10の長手方向先端40の例示的な配置を示す。医療デバイス10が時計回り方向に回転しているとき、それは、両方の回転する形成ホイール(60a、60b)が反対方向に、すなわち反時計回り方向に回転することを引き起こすこととなる。医療デバイス10が反時計回り方向に回転している場合、それは、両方の回転する形成ホイールが時計回り方向に回転することをもたらす。ホイール60aおよび60bならびに長手方向先端40は、それぞれ、電気モーターによって、知られている方法で、回転させられる。従来の(conventional)プロセスにおいて、形成ホイールは、また、長手方向先端を形成するために使用されるが、それらは、平滑な表面を有する(すなわち、何ら凹部または突出部が無い)。
【0047】
長手方向先端40の把持部分46は、長手方向先端40を成形するための最終先端ステーションで行われるのと同じプロセス工程において形成されるので、本発明の医療デバイス10の長手方向先端40を製造するための余分な工程(extra step)の必要がない。その上、リブ48を含む長手方向先端40は、単純に、ガラスを変形させることによって形成され、それによって製造プロセスの間に小粒子が生成されるのを防止する。
【0048】
さらに、長手方向先端40上のリブ48は、それらは必要に応じて修正(modification)の対象となるホイール60aおよび60b上に事前形成される凹部62に対応するので、寸法(幅および高さ)、形状、および場所において容易に修正され得る。
【0049】
図8Aは、先端と針ハブとの間のインターフェースにおける漏れ量(Pa・m3/s)の比較実験結果を示す。
【0050】
圧減衰試験方法は、ATEQ(商標)(ATEQ(商標)F5200またはF620)リークテスタを使用する。
【0051】
ISO80369-7に基づく試験方法は、3本のバーの圧力を、15秒間、その先端が針ハブに接続されるシリンジ内に加えることにある。最大許容漏れ量は、0.005000Pa・m3/sの量である。
【0052】
2種類の、ガラスシリンジの把持部分が、各30試料に関して試験された。
- 本発明による8本のリブを備える把持部分(高さ:0.05mm、隣接リブ間の距離:0.55mm)。
- セラミックコーティングの付いた把持部分(1μmから30μmの間の厚さを持つ)(先行技術)。
【0053】
図8Aは、上述の方法を用いて得られた結果を示す(左:本発明による把持部分、右:セラミックコーティングを備える把持部分)。この方法を用いて、本発明による把持部分を備える試料は、最大許容量(rate)をはるかに下回り、およびしたがって、他の把持部分よりも非常に小さい漏れ量で、ISO80369-7に準拠する。
【0054】
これらの比較結果は、したがって、本発明による把持部分が、針ハブ/先端インターフェースにおける漏れを防止するために、セラミックコーティングを示す把持部分よりもずっと効率的であることを示す。
【0055】
図8Bは、本発明による把持部分を備える先端(図8Aに関するものと同一の構成、左)、およびセラミック層で形成される把持部分を備える先端(先行技術、右)に関する、先端と先端キャップとの間のインターフェースにおける漏れ力(N)の比較結果を示す。
【0056】
試験方法は、その先端が先端キャップによって閉鎖されるシリンジをWFI(注射用水(Water For Injection))で充填することにあり、次いで、プランジャストッパをシリンジ内に挿入し、およびさらにプランジャロッドと組み立てる。次いで、牽引/圧縮ベンチ(traction/compression bench)(LLOYD LRX PLUS社、イギリス)が使用され、および圧力がプランジャロッド上に漏れるまで加えられる。漏れ力(N)は、次いで、記録される。
【0057】
漏れ力は、本発明による把持部分について、より大きい。
【0058】
図8Cは、本発明による把持部分を備える先端(図8Aに関するものと同一の構成、左)、およびセラミック層を示す把持部分を備える先端(先行技術、右)に関する、先端キャップ引き抜き力(N)の比較結果を示す。
【0059】
試験方法は、シリンジ先端を先端キャップで閉鎖することにある。次いで、牽引/圧縮ベンチ(LLOYD LRX PLUS社、イギリス)を使用して、先端キャップは、ガラス先端から組立解除される。力対変位量(Force versus displacement)が、次いで記録される。
【0060】
引き抜き力は、本発明による把持部分についてわずかにより大きく、これは、先端と先端キャップとの間の接続が改善されたことを示す。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図8C