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特許7015312偏心的に動かされるドレッサブルなカップ研削砥石を用いてかさ歯車を機械加工するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】偏心的に動かされるドレッサブルなカップ研削砥石を用いてかさ歯車を機械加工するための方法
(51)【国際特許分類】
   B23F 23/00 20060101AFI20220126BHJP
   B23F 5/02 20060101ALI20220126BHJP
   B24B 53/00 20060101ALI20220126BHJP
   B24B 53/14 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
B23F23/00
B23F5/02
B24B53/00 A
B24B53/00 Z
B24B53/14
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019538223
(86)(22)【出願日】2018-01-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-06
(86)【国際出願番号】 EP2018050359
(87)【国際公開番号】W WO2018130495
(87)【国際公開日】2018-07-19
【審査請求日】2020-12-16
(31)【優先権主張番号】17151630.5
(32)【優先日】2017-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596043494
【氏名又は名称】クリンゲルンベルク・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Klingelnberg AG
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ・シャラスター
【審査官】村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-212577(JP,A)
【文献】米国特許第4765095(US,A)
【文献】米国特許第6390894(US,B1)
【文献】特開昭54-009090(JP,A)
【文献】特開平06-055304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 23/00
B23F 5/02
B24B 53/00
B24B 53/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
・研磨面(18.1,18.2)を備えたカップ研削砥石(10)を収容し、回転軸(R1)の周りでカップ研削砥石(10)を回転駆動するための工具スピンドル(11)と、
・カップ研削砥石(10)をドレッシングするために設計されたドレッシング工具(30)を収容し、回転軸(R3)の周りでドレッシング工具(30)を回転駆動するためのドレッシングスピンドル(31)と、
・かさ歯車ワークピース(40)を収容し、回転軸(R2)の周りでかさ歯車ワークピース(40)を回転駆動するためのワークピーススピンドル(41)であって、偏心駆動部(3)を備える、ワークピーススピンドル(41)と、
を備える研削機(100)において実行される方法であって、
a)工具スピンドルの回転軸(R1)の周りで、第1の速度(n1)で、カップ研削砥石(10)を回転駆動するステップと、
b)ドレッシングスピンドル(31)の回転軸(R3)の周りで、第2の速度(n3)で、ドレッシング工具(30)を回転駆動するステップと、
c)ドレッシング工具(30)を使用してカップ研削砥石(10)をドレッシングするドレッシング方法を実行するステップであって、このステップの間、予め定められた固定速度比(DV)が、第1の速度(n1)と第2の速度(n3)との間で特定される、ステップと、
を含むドレッシングステップを有し、
前記方法は、前記ドレッシングステップを実行した後に実行される、
i.偏心駆動部(3)を用いて、第1の機械加工速度(n1)で、工具スピンドルの回転軸(R1)の周りで、カップ研削砥石(10)を偏心的に回転駆動するステップと、
ii.カップ研削砥石(10)を使用して研削することによって、かさ歯車ワークピース(40)を機械加工する研削方法を実行するステップと、
を含む機械加工ステップを有する、方法。
【請求項2】
少なくともステップc)の間、固定速度比(DV)は、第2の速度(n3)に対する第1の速度(n1)の割合として定義されるものに特定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくともステップc)の間、固定速度比(DV)は、第1の速度(n1)に対する第2の速度(n2)の割合として定義されるものに特定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
固定速度比(DV)の値は、自然数Nに対応する、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
固定速度比(DV)の値は、2つの自然数Nの分数として定義される、請求項2又は4に記載の方法。
【請求項6】
少なくともステップiiの間、偏心駆動部(3)の偏心率(EV)は、カップ研削砥石(10)とかさ歯車ワークピース(40)の間の相対的なずれ運動から生じる偏心率(EV)の変動を考慮しない場合、有理数Qに対応する値を有するものに特定される、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
ステップiiにおいて、カップ研削砥石(10)は、カップ研削砥石(10)の回転駆動に加えて、かさ歯車ワークピース(40)に対して相対的なプランジ運動を実行する、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ステップiiにおいて、カップ研削砥石(10)は、カップ研削砥石(10)の回転駆動に加えて、かさ歯車ワークピース(40)に対して結合された転がり運動を実行する、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
偏心率(EV)は、準備的な方法ステップにおいて特定される、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
速度比(DV)の指定は、デバイス(100)に接続可能なディスプレイスクリーン上の入力要求によって実行される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
速度比(DV)の指定は、デバイス(100)のコントローラ(120)を介して行われる、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏心的に動かされるドレッサブルなカップ研削砥石を用いてかさ歯車を機械加工するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
かさ歯車は研削工具を用いて機械加工されることが知られている。カップ研削砥石は、この目的のためによく使用される。
【0003】
ドレッサブルなカップ研削砥石が通常使用される。このようなカップ研削砥石は、例えば、その寿命を延ばし、摩耗の出現を補うことができるように時々ドレッシングされる。
【0004】
図1は、このようなカップ研削砥石10が、回転駆動されるドレッシングホイール30を用いて研削機100の中でどのようにドレッシングされるかを概略的に示している。図示の瞬間では、ドレッシングホイール30は、外周上で研削砥石10をドレッシングする。この目的のために、ドレッシングホイール30は、研削砥石10の外側かつ上方に着座する。カップ研削砥石10をその内部でドレッシングできるようにするために、ドレッシングホイール30をCNC制御方式でカップ研削砥石10の内部に位置する別の位置に移動させ、回転方向の反転が実行される。図1において、ドレッシングホイール30は、カップ研削砥石10のプロファイル18の内側をドレッシングするための位置で破線で示されている。機械100のCNCコントローラ(経路コントローラ)は、ドレッシングホイール30が研削砥石10のプロファイル18に沿ってCNC制御方式で案内されることによって、必要なプロファイルを研削砥石10に送信する。例として記載されたこのドレッシング手段に関する更なる詳細は、例えば特許明細書EP2774721B1から推察される。
【0005】
高精度のワークピースの機械加工は、寸法精度及び形状精度が狭い許容差内にあるカップ研削砥石10を用いてのみ実行される。カップ研削砥石10の状態が加工可能であることは、常に保証されなければならない。
【0006】
例えば、図3Aに示されているように、かさ歯車ワークピース40の非連続的な創成研削のために、対応してドレッシングされたカップ研削砥石10を使用することができる。しかしながら、図2に示されているように、そのようなカップ研削砥石10は、かさ歯車ワークピース40の非連続的なプロファイル研削(プランジ研削とも呼ばれる)にも使用できる。
【0007】
プランジ研削を用いてクラウンホイールのみを機械加工できる。これに対して、かさ歯車ピニオン及びクラウンホイールは、創成研削を使用して機械加工できる。
【0008】
非連続的なプランジ研削及び創成研削は、単一割出し法による研削方法である。
【0009】
研削砥石10の突入中、プランジ研削の場合、カップ研削砥石10のプロファイルは、製造されるクラウンホイール40の材料の中に描かれている。図2に示されている例では、カップ研削砥石10は、かさ歯車ワークピース40の単一の歯間5を機械加工している。
【0010】
カップ研削砥石10の突入運動は、研削砥石中心点M1(M1は、図面の平面を通る対応する回転軸の通過点を定義する)の偏心補助運動によるプランジ研削の中及び創成研削の中に重ね合わせられ、これにより、研削による過熱を避けるとともに、金属粒子による研削砥石10の表面の目詰まりを防ぐことができることが知られている。カップ研削砥石10の偏心運動の詳細は、例えば模式図3Aから推察できる。
【0011】
前述の重ね合わせにより、カップ研削砥石の中心点M1は、中心点M2(M2は、図面の平面を通る対応する回転軸の通過点を定義する)を中心とする円軌道上を動く。円形経路の半径は、偏心ストロークeと呼ばれ、カップ研削砥石10の半径に比べて小さい。この動作により、カップ研削砥石10は、幾何学的に考えれば、図3Aの図面の平面に垂直な線に沿うだけではなく、ワークピース40に接触する。しかしながら、実際には、相対的な前進運動が原因で、接触するのは、前述の線に沿って局所的に境界を定められた領域4である。カップ研削砥石10の速度に対する偏心速度の比は、いわゆる偏心率EVである。
【0012】
偏心補助運動は、固定された指定の形で偏心率EV又は偏心速度をそれぞれ設定することによって、研削機100において生成されてもよい。
【0013】
図3Aは、一例として和栗法を示し、カップ研削砥石10は、和栗ホイール3の中心点M2に対して小さな距離eだけオフセットしたホイール中心点M1を中心に回転する(和栗偏心と呼ばれる)。偏心率EVは、偏心体の速度をカップ研削砥石10の速度n1で割ったものとして定義される。ワークピース40の加工中、カップ研削砥石10は、中心点M1の周りを角速度ω1で回転する。偏心運動は、カップ研削砥石10の中心点M1に対して、M2を中心とする円運動を起こさせる。円運動は、x方向及びy方向に動き成分を有する。
【0014】
図3Bは、カップ研削砥石10を通る線X1-X1に沿った断面を示す。図3Bでは、カップ研削砥石10のプロファイル18が見られる。プロファイル18上の外周面は参照符号18.1によって識別され、内周面は参照符号18.2によって識別される。
【0015】
重なった偏心運動のために、カップ研削砥石10のプロファイル18の外周18.1とワークピース40の凹歯面5.1の全表面との間の、又は、カップ研削砥石10のプロファイル18の内周18.2と凸歯面5.2の全表面との間の、(過度に)大きな表面接触が、それぞれ、回避される。
【0016】
他の一定の比率については、カップ研削砥石10と歯面5.1又は歯面5.2との接触頻度、カップ研削砥石10上のこの接触領域の位置、及び凹歯面5.1と凸歯面5.2との接触の位相は、選択された偏心率EVに依存する。
【0017】
偏心率EV=1である場合、偏心器3は、カップ研削砥石10が完全に1回転する間に1回転する。したがって、カップ研削砥石10は、各完全な回転中に、歯間5の凹歯面5.1に(0°において)1回接触し、歯面5の凸歯面5.2に(180°において)1回接触する。接触は、いつも同じ領域で起こる。したがって、偏心率EV=2である場合、カップ研削砥石10が完全に1回転する間に、カップ研削砥石10は、(0°及び180°において)歯間5の凹歯面5.1と、又は(90°及び270°において)歯間5の凸歯面5.2と、それぞれ2回接触する。これらの度数の指定は、カップ研削砥石10の固定されたx-y座標系と、言及された特別な場合とにそれぞれ関連し、カップ研削砥石10の完全な回転から完全な回転まで、研削砥石の円周に沿った接触領域の変位は起こらない。
【0018】
予め定められた偏心率EVは、有理数Qであってもよい。実用的な例は、EV=0.7の偏心率である。カップ研削砥石10が複数の完全な回転を実行する場合、接触領域は更に変位し、最終的にはプロファイル18上の研削砥石の全周が研削加工に使用される。
【0019】
カップ研削砥石10とワークピース40との間の望ましくない大きな表面接触は、偏心運動によって回避され得る。周期的な偏心運動の重ね合わせの詳細は、例えば、ドイツの公開された出願DE 2721164 A及びDE 2445483 Aから推測できる。
【0020】
実際の実験は、偏心運動を使用して研削された回転式かさ歯車が、光学的に可視の色むらを有する表面を有し得ることを示している。さらに、これらの構成要素は、歯面のうねりに起因する、動作中の顕著なノイズ挙動を示し得る。
【発明の概要】
【0021】
したがって、本発明は、この異常なノイズ挙動を回避することを可能にする手法を提供するという目的に基づくものである。
【0022】
本発明によれば、この目的は、請求項1に記載の方法によって達成される。
【0023】
本発明の方法は、研削機において実行される。研削機は、
・研磨面を備えたカップ研削砥石を収容し、回転軸の周りでカップ研削砥石を回転駆動するための工具スピンドルと、
・カップ研削砥石をドレッシングするために設計されたドレッシング工具を収容し、回転軸の周りでドレッシング工具を回転駆動するためのドレッシングスピンドルと、
・かさ歯車ワークピースを収容し、回転軸の周りでかさ歯車ワークピースを回転駆動するためのワークピーススピンドルと、を備える。ワークスピンドルには偏心駆動部が備えられ、その偏心率は指定可能である。
【0024】
本発明の方法は、すべての実施形態において、以下のドレッシングステップを含む:
a)工具スピンドルの回転軸の周りで、第1の速度で、カップ研削砥石を回転駆動するステップ、
b)ドレッシングスピンドルの回転軸の周りで、第2の速度で、ドレッシングホイールを回転駆動するステップ、
c)ドレッシング工具を使用してカップ研削砥石をドレッシングするドレッシング方法を実行するステップ。ここで、このステップの間、予め定められた固定速度比が、第1の速度と第2の速度との間で特定される。
本発明の方法は、上記のドレッシングステップが実行された後に実行される、以下の機械加工ステップを有する:
i.偏心駆動部を用いて、第1の機械加工速度で、工具スピンドルの回転軸の周りで、カップ研削砥石を偏心的に回転駆動するステップ、
ii.カップ研削砥石を使用して研削することによって、かさ歯車ワークピースを機械加工する研削方法を実行するステップ。
【0025】
本発明は、統合されたアプローチに基づくものであり、このアプローチは、ドレッシング手段中のドレッサとカップ研削砥石との相互作用、及び対応してドレッシングされたカップ研削砥石とかさ歯車ワークピースとの相互作用を最適化するものである。このアプローチの開発は、以前のドレッシング手段と研削手段の他の欠陥及び不正確さが系統的に排除された後に初めて可能になった。
【0026】
その後、ドレッシング手順の条件が、ワークピースの研削加工に、以前は認識されていなかった悪影響を及ぼす可能性があることが正確な研究で示された。
【0027】
したがって、本発明によれば、対応する速度比は互いに特別に適合される。
【0028】
この目的のために、例えば、すべての実施形態において、固定速度比は、第2の速度に対する第1の速度の割合として、又は第1の速度に対する第2の速度の割合のいずれかとして定義されるドレッシングに対して特定される。
【0029】
ドレッシング中の固定速度比の値は、自然数Nに対応することが好ましい。固定速度比の値は、自然数Nの集合{1,2,3,4…10}に対応することが特に好ましい。
【0030】
しかしながら、ドレッシング中の固定速度比が2つの自然数Nの分数として定義された実施形態も知られている。固定速度比の値は、分数の集合{1/2,1/3,2/3,1/4,3/4}に相当することが特に好ましい。
【0031】
好ましい実施形態では、偏心率は、固定速度比に対して(通常、複数の適切な偏心率の配列から)決定され、かさ歯車ワークピースの偏心研削中に使用される。しかしながら、このような偏心率の使用は選択であるが、ノイズ挙動の問題で更に優れた結果を提供するために使用されてもよい。
【0032】
本発明は、とりわけ、かさ歯車ワークピースの微細加工又は仕上げ加工に使用されてもよい。
【0033】
更なる有利な実施形態は、従属特許請求項から推測できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
以下、本発明の例示的な実施形態が、図面を参照してより詳細に説明される。
【0035】
図1】外周にドレッシングホイールによりドレッシングされたカップ研削砥石を有する研削機の一部の概略側面図を示す(ドレッシングホイールを使用した内周のドレッシングは、破線の図によって示されている)。
図2】かさ歯車ワークピースのプランジ研削中のカップ研削砥石の非常に概略的な側面図を示し、かさ歯車ワークピースは、軸方向断面で示されている。
図3A】和栗ホイールに既知の方法で偏心的に取り付けられ、示された瞬間にクラウンホイールワークピースの歯間を機械加工するカップ研削砥石の非常に概略的な、縮尺通りでない図を示す。
図3B図3Aのカップ研削砥石の線X1-X1に沿った非常に概略的な断面図を示す。
図4A】カップ研削砥石の半径方向断面における非常に概略的な断面図を示し、カップ研削砥石は、外周にドレッシングホイールを使用して既知の方法で、図示の瞬間に、ドレッシングされる。
図4B図4Aのドレッシングホイールを同一速度で使用したドレッシング後の、図4Aのカップ研削砥石の非常に概略的な側面図を示す。
図4C図4Aのドレッシングホイールを一定でない速度で使用したドレッシング後の、図4Aのカップ研削砥石の非常に概略的な側面図を示す。
図5】本発明の方法を実行できる例示的なデバイスの斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
用語は、関連する出版物及び特許においても使用されている本説明と併せて使用される。しかしながら、これらの用語の使用は、単に理解を深めるためだけのものであることに注意すべきである。発明の概念及び保護のための請求項の保護の範囲は、用語の特定の選択によって、解釈において制限されるべきではない。本発明は、他の用語システム及び/又は技術分野に容易に移転されてもよい。これらの用語は、他の技術分野においても適宜適用される。
【0037】
本発明は、統合されたアプローチに基づくものであり、このアプローチは、ドレッシング手段中のドレッサ30とカップ研削砥石10との相互作用、及び対応してドレッシングされたカップ研削砥石10とかさ歯車ワークピース40との相互作用を最適化し、したがって、かさ歯車ワークピース40のノイズ挙動に間接的に影響する。
【0038】
本発明の解決策は、複雑な関係及び相互依存関係の正確な分析によって初めて可能になった。これらの分析の結果は、本発明による解決策の詳細が説明される前に、非常に単純化された例及び図に基づいて以下に説明される。
【0039】
とりわけ、図1,2,3A,及び3B、並びにそれらの説明を参照する。
【0040】
図4Aは、第1の非常に概略的なスナップショットにおけるカップ研削砥石10及びドレッシングホイール30の上面図を示している。プロファイル18は、水平断面(径方向断面とも呼ばれる)としてのみ示されている。ドレッシングホイール30は、ディスクとして示され、その直径は、ここではプロファイル18の外径の50%である。ドレッシングホイール30は、典型的には、カップ研削砥石10の外径よりも著しく小さい直径を有する。ドレッシングホイール30の外周の上に、小さな記号によって、欠陥Fが示されている。これは、例えば、他の結晶とは幾分異なる配向を有するダイヤモンド結晶であり得る。しかしながら、ドレッシングホイール30は、例えば、記号Fの領域の中のわずかな拍動又はストロークによって示され得る同心性誤差を有することもある。以下に説明される原理は、表面の欠陥Fを有するドレッシングホイール30にも、同心性の欠陥を有するドレッシングホイール30にも適用される。
【0041】
ドレッシングの場合、これまでは常に、最適なドレッシング結果を達成するために速度比が特定されていた。速度比は通常、ドレッシング係数によって定義される。ドレッシング係数は、ドレッシングローラの周速度と研削砥石の周速度との比として定義される。
【0042】
ドレッシングホイール30の回転速度ω3及びカップ研削砥石10の回転速度ω1は、現在の相互作用の領域において所望の相対切削速度を達成するために、それに応じて制御される。
【0043】
対照的に、カップ研削砥石10の速度n1及びドレッシングホイール30の速度n3は、以下で使用される。これは、速度が半径及び/又は直径に依存しない変数であるからである。
【0044】
2つの速度が一致する場合、すなわち、n1=n3の場合、ドレッシングホイール30の欠陥F又は同心性の欠陥は、完全な回転ごとに1回だけ外周面18.1に接触する。ドレッシング中に他の相対運動が実行されない場合、この欠陥F又は同心性誤差は、カップ研削砥石10の外面18.1上の同じ点に何度も遭遇することになる。
【0045】
図4Bは、図4Aのドレッシングホイール30を使用したドレッシング後のカップ研削砥石10の側面図を示す。ドレッシングホイール30が、カップ研削砥石10に対するドレッシング中に、回転軸R1の方向に平行に移動する場合(軸方向に平行なドレッシングの前進)、及びn1=n3の指定がまだ適用される場合、軸方向に平行な線に沿って、一連の表面欠陥が生じる。これらの表面欠陥の中心は、図4Bの点線19の点によって示されている。
【0046】
これまでの場合のように、所望の相対切削速度に基づいて、ドレッシングに適切なドレッシング係数を特定した場合、速度比DV=n1/n3は、ほとんどの場合整数とならない。なぜなら、ドレッシング係数は、半径と、カップ研削砥石10及びドレッシングホイール30のそれぞれの角速度ω1及びω3とによって決定されるからである。したがって、実際には、速度比DVは、無理数によって定義される。
【0047】
例えば図3Bに側面図が示されている実際のカップ研削砥石10から始める場合、プロファイル18は円錐形状を有するから、その外周が可変であることが更に考慮されなければならない。すなわち、カップ研削砥石10の実効的な有効径、及びしたがって切削速度も、ドレッシングが進むと変化する。したがって、これまで典型的であったように、特定の相対切削速度を維持したい場合、ドレッシングホイール30が例えば軸方向に平行なドレッシングの前進を実行している間に、カップ研削砥石10の速度n1及び/又はドレッシングホイール30の速度n3は、変更される必要がある。
【0048】
これまで常に実践されてきた、無理数である速度比n1/n3から始め、これを図4A、4Bの例に適用した場合、外周面18.1上の表面欠陥の複雑な分布が生じることが直ちに明らかとなる。そのような分布は、図4Cに、外面18.1上に準任意に分布した複数の表面欠陥によって簡略化された形で象徴されている。ここでは、表面欠陥は、複数の黒い点によって模式的に示されている。
【0049】
以下の概念的なステップでは、実際のドレッシングホイール30が推定され、その表面は、1つの欠陥Fだけでなく、かなりの数の欠陥を有し、かつ/又は、同心円状の欠陥を有する。これらの欠陥は、例えば、ドレッシングホイール30の周囲に沿って分布し得る。
【0050】
ドレッシングホイール30が軸方向に平行なドレッシング運動を実行する、無理数の速度比n1/n3を使用した外面18.1のドレッシング手順が、多数の欠陥及び/又は同心性欠陥を有する実際のドレッシングホイール30を使用して実行された場合、最終的に、外面18.1全体にいくらかの表面欠陥がランダムに分布する。同様に、内面18.2のドレッシング中に、内面18.2全体にランダムに分布した表面欠陥が発生する可能性もある。
【0051】
実際には、これらの関係は、ここで説明するものよりもはるかに複雑である。したがって、角度の欠陥、クラウニングの欠陥、及びうねりがカップ研削砥石10に生じる可能性があり、これらは、例えば、カップ研削砥石10の円周に沿って変化し得る。
【0052】
次の概念的なステップでは、かさ歯車ワークピース40の偏心的なプランジ加工が、実際のカップ研削砥石10を使用して実行され、その外面18.1は、表面欠陥のランダムな分布を有する。偏心的なプランジ加工は、不連続なプロセスであり、このプロセスでは、かさ歯車ワークピース40は、研削中に回転しない。突入中、相対的な深さの送り込みのみが実行され、すでに説明したように、偏心がカップ研削砥石10の回転運動ω1に重なる。偏心的なプランジ加工のスナップショットは、図2に示されている。
【0053】
しかしながら、本発明の方法は、偏心的な創成研削に適用されてもよい。偏心的な創成研削も不連続なプロセスであり、このプロセスでは、かさ歯車ワークピース40は、歯間ごとに機械加工される。かさ歯車ワークピース40の回転運動ω2は、偏心的な創成研削において、カップ研削砥石10の回転運動ω1に結合される。
【0054】
創成研削では、例えば、歯面5.1とカップ研削砥石10との間に線形接触が生じる。転がり運動は、外径の上の歯の外端Zf(図3Aを参照)から、かさ歯車ワークピース40の内径の歯の内端Zz(図3Aを参照)まで、又はその逆に研削を創成する際に行われる。
【0055】
研削の生成において、かさ歯車ワークピース40とカップ研削砥石10の接触により歯面に沿って接触線が生じ、そこから砥粒の経路が接触点又は接触線においてそれぞれ生じる。この接触線の位置は、転がり運動により連続的に変化する。
【0056】
偏心運動の重ね合わせにより、接触線は、偏心回転の角度範囲内で接触線に沿って移動する接触点にまで縮小される。
【0057】
冒頭で説明したように、例えば1の偏心率が特定された場合、カップ研削砥石10の外面18.1は、現在研削されている歯間5の凹歯面5.1と、カップ研削砥石10の完全な回転ごとに1回接触する。カップ研削砥石10は、結合された転がり運動のため、研削中に歯間5を通って移動するから、カップ研削砥石10が例えば5回転する間に、カップ研削砥石10の外面18.1と凹歯面5.1との間に5つの接触が生じる。歯間5を通るカップ研削砥石10の上述の転がり運動のために、接触部は、例えば歯の外端Zfから歯の内端Zzまで凹歯面5.1に沿って移動する。
【0058】
表面欠陥は、外面18.1上にランダムに分布するが、整数の偏心率のため、凹歯面5.1上に、均一に繰り返される表面欠陥が形成される。
【0059】
例えば、これらの均一に繰り返される表面欠陥は、このようなかさ歯車ワークピース40のノイズ挙動に大きな影響を与え得ることが研究により示されている。例えば、偏心的なプランジに基づくかさ歯車ワークピース40では、プロファイル方向に欠陥が生じる。偏心的な創成研削に基づくかさ歯車ワークピース40では、研削及び偏心スピンドル速度に応じて異なる波パターンが発生し得る。
【0060】
本発明はこの点から始まる。そこから実質的な物質が結晶化される。それは互いに影響を及ぼし合い、最終的にはかさ歯車ワークピース40の望ましくない表面欠陥を生じさせ得る。
【0061】
そこで、本発明によって特別な方法が開発され、望ましくない方法で周期的な形状を有する表面欠陥が生じることを防ぐ。表面の完全性自体はプロセスに固有であるが、特定の条件を維持することによって、これらの表面欠陥が好ましくなく繰り返され、又は他の方法でワークピースに好ましくなく重なることを防ぐことができる。
【0062】
本発明の方法は、研削機100(本明細書では一般にデバイス100と呼ばれる)で実行されるように設計されている。研削機100は、図1及び図5に例として示すように、研磨面18.1,18.2を備えたカップ研削砥石10を収容し、回転駆動するための工具スピンドル11を備える。さらに、研削機100は、カップ研削砥石10をドレッシングするために設計されたドレッシング工具30を収容し、回転駆動するためのドレッシングスピンドル31を備える。さらに、かさ歯車ワークピース40を収容して回転駆動するためのワークピーススピンドル41が設けられ、ワークピーススピンドル41には、偏心駆動部3が設けられ、その偏心係数を特定することができる。偏心駆動部3は、例えば、図3Aに示されているように設計される。
【0063】
このような研削機100において実行される方法は、好ましくは、すべての実施形態において、以下のドレッシングステップを含む:
・工具スピンドル11の回転軸R1の周りで、第1の(ドレッシング)速度n1で、研削砥石10を回転駆動するステップ、
・ドレッシングスピンドル31の回転軸R3の周りで、第2の(ドレッシング)速度n3で、ドレッシング工具30を回転駆動するステップ、
・ドレッシング工具30を使用して研削砥石10をドレッシングするドレッシング方法を実行するステップ。ここで、このステップの間、正確に予め定められた固定速度比DVが、第1の(ドレッシング)速度n1と第2の(ドレッシング)速度n3との間で特定される。
【0064】
この目的のために、例えば、すべての実施形態において、固定速度比DVが特定され、第2の速度n3に対する第1の速度n1の割合(すなわち、DV=n1/n3)として、又は第1の速度に対する第2の速度の割合(すなわち、DV=n3/n1)のいずれかとして定義される。
【0065】
固定速度比DVの値は、自然数Nに対応することが好ましい。固定速度比DVの値は、自然数Nの集合{1,2,3,4…10}に対応することが特に好ましい。
【0066】
しかしながら、固定速度比DVが2つの自然数Nの分数として定義された実施形態も可能である。固定速度比DVの値は、分数の集合{1/2,1/3,2/3,1/4,3/4}に相当することが特に好ましい。
【0067】
この第1の手段と、正確に予め定められた固定速度比DVを使用した前述のドレッシングステップとは、不規則ではなく、比較的均一な表面欠陥の分布がカップ研削砥石10の表面18.1,18.2に沿って生じるという効果を有する。したがって、例えば、速度比DV=1,2、又は例えば1/2から始める場合、ドレッシングホイール30の同心性の欠陥は、研削砥石10の同心性の欠陥と正確に同じように形成される(この場合、ドレッシングの回転半径からの運動学的なずれは無視される)。
【0068】
したがって、ドレッシングされたカップ研削砥石10は、今や、かさ歯車ワークピース40を研削するための以下の機械加工ステップの範囲で使用される。これらの機械加工ステップは、ドレッシングステップの実行後に実行される。
・工具スピンドル11の回転軸R1の周りで、カップ研削砥石10を回転駆動するステップ、
・カップ研削砥石10を使用してかさ歯車ワークピース40を機械加工する、偏心的な研削方法を実行するステップ。すなわち、偏心駆動部3は、かさ歯車ワークピース40の研削の間は常に使用される。
【0069】
すべての実施形態において、かさ歯車ワークピース40の研削中、偏心駆動部3に対して1ではない偏心率EVが指定されることが好ましい。
【0070】
実施形態の一部で実施できるように、偏心率EVの決定において、この偏心率EVは、カップ研削砥石10とかさ歯車ワークピース40との間の相対的な(ずれ)運動なしで定義されることに留意しなければならない。言い換えれば、偏心率EVの変動は、例えば、カップ研削砥石10とかさ歯車ワークピース40との間の相対的な(ずれ)運動から生じる偏心率EVの決定において、考慮されないままである。
【0071】
自然数Nに一致しない偏心率EVが特に適当である。すなわち、本発明の範囲内で、偏心係数EVとして分数が特に適当である。あるいは、例えば、1以上の偶数又は奇数の自然数(例えば、1,2,3,4,又は5)に対応する偏心率が選択されてもよい。
【0072】
この第2の選択的な手段は、かさ歯車ワークピース40の歯面5.1,5.2の表面欠陥が周期的に繰り返されないという効果を有することができる。これは、とりわけ、かさ歯車ワークピース40の偏心的な創成研削に当てはまる。
【0073】
例示的なデバイス100が図5に示されている。本発明の方法のステップは、すべての実施形態において、例えば、デバイス100の(機械)コントローラ120において、実施可能である。しかしながら、デバイス100は、例えば、本発明の方法のステップを実行するために、すべての実施形態において外部から制御されてもよい。図5では、(機械)コントローラ120は、楕円によって表されている。
【0074】
かさ歯車ワークピース40を収容するためのワークピーススピンドル41と、カップ研削砥石10を収容するための工具スピンドル11とを有するデバイス100が特に適切である。デバイス100は、かさ歯車ワークピース40を機械加工するための複数の駆動部を有する。駆動部は、デバイス100のパネルの後ろに隠されている。さらに、例として示されたデバイス100は、機械土台101を含む。Y軸に平行な水平方向に延びるレール104に沿って移動可能なキャリッジ103は、x-y平面に平行に延びるスタンド102の上に設けられている。キャリッジ103は、工具スピンドル11を運び、X及びZ方向の並進運動を実行することができる。
【0075】
デバイス100は、ここでドレッシングホイール30を運ぶドレッシングスピンドル31を更に含む。カップ研削砥石10を回転軸R1の周りに回転させる回転駆動部は、A1回転駆動部とも呼ばれる。B回転駆動部は、かさ歯車ワークピース40を回転軸R2の周りに回転させる。カップ研削砥石10を使用したかさ歯車ワークピース40の研削加工中、その回転運動は、(電子的に)結合される。デバイス100の対応する駆動部も、文字X,Y,Z,A1,及びBによってここで識別される。デバイス100は、図5に示すように、対応する旋回駆動部を有する旋回軸Cを更に有することができる。
【符号の説明】
【0076】
3 和栗ホイール/偏心器
4 領域
5 歯間
5.1 凹歯面
5.2 凸歯面
10 研削砥石/カップ研削砥石
11 工具スピンドル
18 領域/プロファイル
18.1 外周面
18.2 内周面
19 線
30 ドレッシング工具/ドレッシングホイール
31 ドレッシングスピンドル
38 領域/プロファイル
40 かさ歯車ワークピース
41 ワークピーススピンドル
100 デバイス/機械/研削機
101 機械土台
102 スタンド
103 キャリッジ
104 レール
120 (機械)コントローラ
DV 速度比
e 距離
EV 偏心率
F 欠陥
M1 ホイール中心点
M2 中心点
N 自然数
n1 速度
n1 機械加工速度
n3 ドレッシング速度
Q 有理数
R1 (工具)回転軸
R3 ドレッシング回転軸
R2 ワークピース回転軸
ω1 ドレッシング中の角速度
ω1 機械加工中の角速度
ω2 機械加工中の角速度
ω3 ドレッシング中の角速度
x,y 座標系
X,Y,Z,B,C,A1 駆動部
X1-X1 断面
Zf 歯の外端
Zz 歯の内端
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5