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特許7015316ナノグを導入した羊水内胎児由来間葉系幹細胞から獲得したエクソソーム内に含まれた育毛促進用組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】ナノグを導入した羊水内胎児由来間葉系幹細胞から獲得したエクソソーム内に含まれた育毛促進用組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 21/02 20060101AFI20220126BHJP
   A61K 38/18 20060101ALI20220126BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20220126BHJP
   A61K 8/98 20060101ALI20220126BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20220126BHJP
   A61Q 7/00 20060101ALI20220126BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20220126BHJP
   C07K 14/475 20060101ALN20220126BHJP
   C07K 14/49 20060101ALN20220126BHJP
   C07K 14/50 20060101ALN20220126BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALN20220126BHJP
【FI】
C12P21/02 H ZNA
A61K38/18
A61P17/14
A61K8/98
A61K8/64
A61Q7/00
C12N15/867 Z
C07K14/475
C07K14/49
C07K14/50
C12N5/0775
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019558322
(86)(22)【出願日】2018-01-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 KR2018000506
(87)【国際公開番号】W WO2018131900
(87)【国際公開日】2018-07-19
【審査請求日】2019-07-10
(31)【優先権主張番号】10-2017-0004242
(32)【優先日】2017-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517401521
【氏名又は名称】ステムラボ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スン・クォン・ユ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン-ヒョン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ジ-フン・チャン
(72)【発明者】
【氏名】ウン・キョン・ジュン
【審査官】安川 聡
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2010-0105167(KR,A)
【文献】特開2009-011254(JP,A)
【文献】特表2015-526067(JP,A)
【文献】特開2015-077074(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103767985(CN,A)
【文献】特表2018-532395(JP,A)
【文献】特開2018-102926(JP,A)
【文献】Stem Cells and Development,2008年12月22日,Vol. 18,pp. 1013-1022, supplementary materials
【文献】Journal of Cellular Biochemistry,2015年12月07日,Vol. 117,pp. 1658-1670, supporting information
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N、C12P、C07K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)妊婦から得た羊水から胎児由来細胞を分離する段階;
(b)前記分離した胎児由来細胞をFBS(fetal bovine serum)および、bFGF(basic fibroblast growth factor)を含む培地で継代培養して、羊水内胎児由来間葉系幹細胞を収得する段階;
(c)前記収得した羊水内胎児由来間葉系幹細胞にナノグ(Nanog)を導入して、ナノグ(Nanog)が過発現した羊水内胎児由来間葉系幹細胞を収得する段階;
(d)前記収得したナノグ(Nanog)が過発現した羊水内胎児由来間葉系幹細胞を無血清培地で1~5日間培養して、コンディションド培地を製造する段階;および
(e)前記コンディションド培地からエクソソームを分離する段階;を含み、
前記分離したエクソソームは、bFGF(basic fibroblast growth factor、塩基性線維芽細胞成長因子)、IGF(Insulin-like Growth Factor)、Wnt7a(Wingless-type MMTV integration site family member 7A)およびPDGF-AA(Platelet-derived Growth Factor)よりなる群から選ばれたいずれか一つ以上のヒト成長因子を含有することを特徴とする、間葉系幹細胞由来エクソソームを製造する方法。
【請求項2】
前記段階(c)でナノグ(Nanog)は、レトロウイルスベクターを利用して導入するものである、請求項1に記載の間葉系幹細胞由来エクソソームを製造する方法。
【請求項3】
前記段階(b)でセレニウム(selenium)およびアスコルビン酸(ascorbic acid)をさらに含む培地で継代培養する、請求項1に記載の間葉系幹細胞由来エクソソームを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆分化因子ナノグ(Nanog)を過発現させた羊水内胎児由来間葉系幹細胞の培養液内のエクソソーム分離を介した育毛促進用組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
幹細胞(stem cell)とは、身体内での特徴的な条件および環境が与えられたり、自体内での必要に応じて程度による無限自己増殖能力および身体内で必要な特定細胞および組織への分化能を有している細胞を意味する。幹細胞は、その種類を3つに分類しており、その種類としては、初期胚芽から分離した胚芽幹細胞(embryonic stem cell,ES細胞)、胚芽期の原始生殖細胞から分離した胚芽生殖細胞(embryonic germ cell.EG細胞)、および成体の骨髄から分離した多能性成体幹細胞(multipotent adult progenitor cell,MAPC細胞)がある。
【0003】
それらのうち成体幹細胞とよく知られた間葉系幹細胞は、既に臨床的に細胞治療剤および培養液治療剤として多様に活用されており、その効果も、相当数立証された。この中間葉細胞は、様々な身体組織から分離が可能なものと確認され、代表的には、骨髄、脂肪、臍帯血、羊水などで同定が可能である。また、その細胞の性格および特性が相当数一致しており、治療剤としての活用価値も、同様または同一であることが既によく知られている。
【0004】
それらのうち羊水間葉系幹細胞は、様々な長所を有しているので、研究的、商業的活用価値に優れている。羊水間葉系幹細胞は、妊婦の羊水から分離して体外培養が可能であるが、羊水は、産婦から容易に獲得することができる。また、羊水は、胎児の健康に関する様々な情報を知ることができる検査用に使用されるが、これを患者の同意によって研究用目的に使用が可能であり、獲得する方法も、非常に簡単であるので、羊水を獲得した当日に体外培養が可能である。このような長所によって羊水由来間葉系幹細胞を治療用製剤として活用することが適当であると判断することができる。
【0005】
ヒトの毛髪は、必要部位に一定数の毛髪を維持することとなる。毛髪の成長は、その組織によってそれぞれの独自の成長周期があるが、これを毛周期(hair cycle)と言い、発生期→成長期→退行期→休止期の段階を有している。このような機作を毛根の付近に位置する毛乳頭細胞(dermal papilla)が周囲細胞に信号を伝達することによって管理することとなるが、この細胞が受け入れる成長因子および自体の数が毛髪の成長に大きい役割を行うこととなる。脱毛が進行し始めると、毛乳頭が小さくなり、毛乳頭が小さくなると、髪の毛の太さも細くなると同時に、毛周期も短くなり、新しく育ってきた毛は、細くなり始める。このような進行過程によってハゲ頭が進行されると、髪の毛は、綿毛に変わり、毛髪の成長株期は、さらに短くなって、少し育った後、毛髪は脱落する。ハゲ頭の最も大きい原因は、遺伝であり、男性ホルモンであるテストステロンが毛乳頭細胞の成長を抑制して脱毛を誘導するという報告もある。このような身体内の原因以外にも、環境による脱毛も多数存在する。特に老化は、頭皮細胞の減少と頭皮脂肪質の蓄積量が増加するにつれて、毛包組織への酸素供給が円滑にならず、これに伴い、毛包組織が栄養供給を受けることに問題が生じて、脱毛が生成されると知られている。これに加えて、ストレス、不規則な生活、環境汚染など外的要因も、脱毛の原因となり得るという見解も多数存在する。
【0006】
ハゲ頭や脱毛現象に当事者が感じる精神的な苦痛は非常に大きいが、現在開発されて販売されている発毛剤は、大概発毛効果が一時的であるか、または制限的であるので、ユーザの欲求を十分に満足させていない。ある程度効果が検証されて使用されている塗る発毛剤であるミノキシジルは、血管拡張作用によって、経口用であるプロペシアは、フィナステリドを主剤とした男性ホルモンの活性化抑制作用によって脱毛防止効果に優れた製剤として多く用いられている。しかしながら、前述した発毛剤は、脱毛の防止にはある程度の効果を示すが、発毛と関連した効果は微小である。すなわち、前記発毛剤を使用してから中断するときには、再び脱毛現象が起こることとなり、長期使用時には、副作用の憂慮が大きく、また、長期使用による費用問題もあるので、大概の患者が治療をあきらめているのが現状である。
【0007】
これより、本発明者らは、ナノグ(Nanog)を導入して細胞の生長および寿命を延ばした羊水内胎児由来間葉系幹細胞から分離したコンディションド培地をエクソソーム単位にまで分離、獲得した後、発毛効能を評価し、それに対する主要因子を選別した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国特許公開第2013-0116972号公報
【文献】韓国特許登録第1422559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の他の目的は、ナノグ(Nanog)が過発現した羊水内胎児由来間葉系幹細胞から生産されたヒト成長因子が含有されたエクソソームの製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、ナノグ(Nanog)が過発現した羊水内胎児由来間葉系幹細胞から生産されたヒト成長因子が含有されたエクソソームを有効成分として含む育毛促進用組成物、およびその化粧料組成物または薬学的組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、(a)妊婦から得た羊水から胎児由来細胞を分離する段階;
(b)前記分離した胎児由来細胞をFBS(fetal bovine serum)および、bFGF(basic fibroblast growth factor)を含む培地で継代培養して、羊水内胎児由来間葉系幹細胞を収得する段階;
(c)前記収得した羊水内胎児由来間葉系幹細胞にナノグ(Nanog)を導入して、ナノグ(Nanog)が過発現した羊水内胎児由来間葉系幹細胞を収得する段階;
(d)前記収得したナノグ(Nanog)が過発現した羊水内胎児由来間葉系幹細胞を無血清培地で1~5日間培養して、コンディションド培地を製造する段階;および
(e)前記コンディションド培地からエクソソームを分離する段階を含む間葉系幹細胞由来エクソソームの製造方法を提供する。
【0012】
本発明において用語「間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells;MSCs)」というのは、骨、軟骨、脂肪、骨髄間質、筋肉、神経などを作るのに起源となる細胞であって、成人では、一般的に骨髄に留まっているが、臍帯血、末梢血液、その他の組織などにも存在し、これらから収得できる細胞を意味する。妊婦から得た羊水には、胎児のからだから出てきた様々な化学物質が含まれていて、人体にある大概の細胞を生成することができ、採取が容易である。また、羊水には、異種(heterogenous)形状の細胞が存在するが、本発明者らは、そのうち間葉系幹細胞の特徴である線維芽細胞(fibroblast)と同じ形状を有する同種(homogenous)の間葉系幹細胞が存在することを確認した。
【0013】
本発明において用語「逆分化因子ナノグ(Nanog)」は、2006年にYamanaka教授チームにより導入された概念である逆分化(Reprogramming)から始まった。成体のすべての組織は、正常発達過程を経て分化しない状態から次第に分化して、各機能が専門化した細胞に変化する。そのうち受精卵の細胞は、全能性(Totipotent)を有しており、その後、発達段階が進行されるにつれて、胚盤胞になると、内部細胞塊(inner cell mass)と外側細胞とに区分が可能であるが、この際の内部細胞塊細胞が胚芽体細胞と生殖細胞として発生し得、これを万能性(pluripotent)と呼ぶ。この胚芽幹細胞は、万能性特有の遺伝子発現様相を示すが、その代表的な例がOct4、Sox2、Nanog、Lin28等である。逆分化は、体細胞にこのような特異的な遺伝子発現を誘導して、胚芽幹細胞と類似した性質に戻す技術といえる。Nanogは、それによる一連の研究で使用されてきた多様な因子の一つであって、Viral vectorを利用して細胞内に遺伝子を導入して過発現させる技術に本研究チームは活用した。
【0014】
本発明において用語「培地(culture medium)」は、in vitro上で羊水内胎児由来細胞の成長および生存を支持できるようにする培地を意味し、羊水内胎児由来細胞の培養に適切な当分野において使用される通常の培地を全部含む。細胞の種類によって培地および培養条件を選択することができる。培養に使用される培地は、好ましくは細胞培養最小培地(cell culture minimum medium;CCMM)であり、一般的に炭素源、窒素源および微量元素成分を含む。このような細胞培養最小培地には、例えば、DMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)、MEM(Minimal essential Medium)、BME(Basal Medium Eagle)、RPMI1640,F-10,F-12,αMEM(αMinimal essential Medium)、GMEM(Glasgow’s Minimal essential Medium)およびIMEM( Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium)等があるが、これらに制限されない。また、前記培地は、ペニシリン(penicillin)、ストレプトマイシン(streptomycin)またはゲンタマイシン(gentamicin)等の抗生剤を含むことができる。
【0015】
本発明において、羊水内胎児由来間葉系幹細胞は、羊水から分離した細胞をFBSおよびbFGFを含有する塩基性培地で培養することによって収得することができ、好ましくは10%FBSが含まれた低グルコースDMEM培地にbFGF 4ng/ml、セレニウム5ng/ml、アスコルビン酸50μg/mlを添加して培養することによって収得することができる。本発明の好ましい実施例として、前記低グルコースDMEM培地は、10%FBS、1%L-グルタミンおよび1%ペニシリン-ストレプトマイシンとbFGF 4ng/ml、セレニウム5ng/ml、アスコルビン酸50μg/ml溶液をさらに含むことができる。
【0016】
前記段階(c)のナノグ(Nanog)導入の方法は、レトロウイルスベクター(Retroviral vector)を利用することができる。
【0017】
さらに具体的に、段階(d)で、段階(c)で収得した間葉系幹細胞を無血清培地で3日間培養して、コンディションド培地を製造することができる。
【0018】
具体的に、本発明は、ナノグ(Nanog)が導入された胎児由来間葉系幹細胞を適正な培地で培養して、Apo-1/Fas、表皮細胞成長因子(EGF)、IP-10(Interferon-γ inducible protein-10)、レプチン(Leptin)、MIP4、MMP3、ランテス(Rantes)、インターフェロン-ガンマ(IFNγ)、ヒト形質転換成長因子-ベータ(TGF-β)、腫瘍壊死因子-アルファ(TNFα)、腫瘍壊死因子受容体I(TNFR I)、腫瘍壊死因子受容体II(TNFRII)、細胞接着因子-1(ICAM-1)、血管細胞接着因子-1(VCAM-1)、脈管内皮細胞成長因子(VEGF)、インターロイキン-1ベータ(IL-1β)、インターロイキン-1受容体アルファ(IL-1Rα)、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-6R、IL-7、IL-8、IL-12およびIL-15等を合成し、さらに好ましくは、毛髪成長促進成長因子であるbFGF(basic Fibroblast Growth Factor)、IGF(Insulin-like Growth Factor)、PDGF-AA(Platelet-derived Growth Factor)、Wnt7aなどを合成することができるように操作する方法を提供する。羊水内胎児由来間葉系幹細胞のコンディションド培地を利用してELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)を通じて成分を明らかにし、in vitro上で確認が可能である。
【0019】
本発明では、胎児由来間葉系幹細胞のコンディションド培地を得るために、羊水から分離して収得した間葉系幹細胞をアミノ酸またはその類似体およびビタミンまたはその類似体を含むDMEM栄養素混合液を含有する無血清培地を利用することが好ましい。この際、L-グルタミンなどの酸化栄養源、ピルビン酸ナトリウムなどのエネルギー代謝物質、重炭酸ナトリウムなどの炭素調節源を添加することが可能である。本混合液は、細胞の成長と恒常性の維持を助け、間葉系幹細胞の初期培養後に継代培養において細胞の安定性および維持力の増進に関与される様々な無機質およびアミノ酸、胎児由来間葉系幹細胞で分泌される成長因子のさらに高い生産を促進できるビタミン系の栄養素と他の因子を一定の割合で混合して形成される。
【0020】
本発明で用語「コンディションド培地(conditioned medium)」とは、細胞を液体懸濁培養して細胞分裂最盛期である対数増殖期に到達したとき、分裂細胞を遠心分離または濾過して除去し、培養液だけを採取して、これを培養基質に混合した培地をいう。これは、分裂中の細胞から培地内で抽出されて出る未知の成長要素(growth factor)を利用するものであって、低密度の細胞プレーティングや原形質体の培養に多く用いられる。
【0021】
本発明のコンディションド培地には、胎児由来間葉系幹細胞に由来した成長因子などの物質が豊富に含有されており、好ましくはApo-1/Fas、表皮細胞成長因子(EGF)、IP-10(Interferon-γinducible protein-10)、レプチン(Leptin)、MIP4、MMP3、ランテス(Rantes)、インターフェロン-ガンマ(IFNγ)、ヒト形質転換成長因子-ベータ(TGF-β)、腫瘍壊死因子-アルファ(TNFα)、腫瘍壊死因子受容体I(TNFR I)、腫瘍壊死因子受容体II(TNFR II)、細胞接着因子-1(ICAM-1)、血管細胞接着因子-1(VCAM-1)、脈管内皮細胞成長因子(VEGF)、インターロイキン-1ベータ(IL-1β)、インターロイキン-1受容体アルファ(IL-1Rα)、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-6R、IL-7、IL-8、IL-12およびIL-15を含む。最も好ましくは毛髪成長促進成長因子であるbFGF(basic Fibroblast Growth Factor)、IGF(Insulin-like Growth Factor)、PDGF-AA(Platelet-derived Growth Factor)、Wnt7aなどを含む。
【0022】
間葉系幹細胞のコンディションド培地の生産において主な限界点は、幹細胞の老化と大きく関連がある。細胞の老化は、細胞成長の低下を誘発し、分泌する成長因子およびサイトカイン(cytokine)の量を減少させ、細胞の死滅を引き起こす。また、細胞由来コンディションド培地の量および質的損失を誘発し、均一な組成を維持しにくくし、これは、結局、コンディションド培地およびこれを有効成分として含む組成物の大量生産および産業化時に困難を招く。これより、本発明者らは、以前の研究で間葉系幹細胞の培養に逆分化技術を導入した。前記先行研究によれば、羊水由来間葉系幹細胞に多様な万能性因子であるOct4、ナノグ(Nanog)、Lin28を導入し、そのうちナノグ(Nanog)を導入した羊水由来間葉系幹細胞は、細胞株を確立可能であり、持続的な培養が可能であるのに対し、他の遺伝子の導入は、細胞死滅が由来され、持続的な細胞培養が困難であることを確認した。さらに、ナノグ(Nanog)を導入した羊水幹細胞において細胞成長の増大および幹細胞能の保存効果が既存の羊水幹細胞よりも向上したことを確認した。これを通じて、ナノグが導入された羊水由来幹細胞のコンディションド培地の生産が持続され得、コンディションド培地を通じて培地に含まれた多量の成長因子などを獲得することができることを証明した。
【0023】
本発明において用語「エクソソーム(exosome)」とは、細胞間相互作用のための一つの伝達体系物質であって、リン脂質の膜で円形状を成しているナノサイズの袋である。エクソソームの内部は、一般的にmRNA、shRNA、プロテインなどが含まれており、このような物質が細胞内部、外部から伝達されて、その機能を行う。細胞外部に排出されるエクソソームは、他の細胞に物質を伝達することとなり、提供された細胞は、それに合う反応機作を示すこととなる。現在までエクソソームの多様な機能が研究されてきており、一般的に癌のバイオマーカー、傷治癒、プロテイン伝達、shRNAの伝達などが知られている。細胞のセクレトームと比較したとき、細胞外部環境に対する抵抗性が相当に高く、他の細胞への吸着性にも優れている。それに加えて、濃度の調節が容易であるので、機能性製剤として活用できる価値が十分である。
【0024】
具体的に、前記段階(e)で分離したエクソソームは、bFGF(basic fibroblast growth factor、塩基性線維芽細胞成長因子)、IGF(Insulin-like Growth Factor)、Wnt7a(Wingless-type MMTV integration site family member 7A)およびPDGF-AA(Platelet-derived Growth Factor)よりなる群から選ばれたいずれか一つ以上のヒト成長因子を含有することができるが、これに制限されるものではない。
【0025】
本発明の具体的な一実施例によれば、分離したエクソソームの内部には、毛髪成長因子と関連するmRNA、成長因子などが多数含まれており、毛乳頭細胞に処理したとき、毛乳頭細胞の成長を促進させると共に、毛髪成長信号体系も活性化されることを確認することができた。
【0026】
また、本発明の一実施例において、コンディションド培地からエクソソームを除去した後、成長因子などを分析した結果、エクソソームの除去後、成長因子などが大幅減少することを確認し、エクソソームの内部に多量の成長因子などが含まれていることを確認した。これに伴い、エクソソームを分離して利用する場合、エクソソームに含有された成長因子などをより効率的に活用できる可能性を確認した。
【0027】
また、本発明は、羊水内胎児由来間葉系幹細胞から分離したエクソソームを有効成分として含む育毛促進用化粧料組成物を提供する。
【0028】
前記化粧料組成物は、育毛促進、毛髪再生および脱毛防止効果を有する毛髪化粧品に多様に用いられる。
【0029】
前記化粧料組成物は、全体化粧料組成物100重量部に対して0.001~10重量部を含むことができる。
【0030】
前記化粧料組成物は、脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤、ゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤(foaming agent)、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型または非イオン型乳化剤、充填剤、金属イオン封鎖剤、キレート化剤、保存剤、ビタミン、遮断剤、湿潤化剤、エッセンシャルオイル、染料、顔料、親水性または親油性活性剤、脂質小胞または化粧品に通常使用される任意の他の成分のような化粧品学または皮膚科学分野において通常的に使用される補助剤を含有することができる。前記補助剤は、化粧品学または皮膚科学分野において一般的に使用される量で導入される。
【0031】
前記化粧料組成物の外形は、化粧品学または皮膚科学的に許容可能な媒質または基剤を含有する。これは、局所適用に適合したすべての剤形であって、例えば、溶液、ゲル、固体、混練無水生成物、水相に油相を分散させて得たエマルジョン、懸濁液、マイクロエマルジョン、マイクロカプセル、微細顆粒球またはイオン型(リポソーム)および非イオン型の小胞分散剤の形態で、またはクリーム、スキン、ローション、パウダー、軟膏、スプレーまたはコンシーラースティックの形態で提供され得る。これらの組成物は、当該分野の通常の方法によって製造され得る。本発明による組成物は、また、泡沫(foam)の形態で、または圧縮された推進剤をさらに含有するエアロゾル組成物の形態で使用することができる。
【0032】
本発明の化粧料組成物は、その剤形において特に限定されず、例えば、柔軟化粧水、収れん化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、アイエッセンス、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、パウダー、ボディーローション、ボディークリーム、ボディーオイル、ボディーエッセンス、ヘアトニック、ヘアコンディショナー、ヘアエッセンス、ヘアローション、ヘア栄養ローション、ヘアシャンプー、ヘアリンス、ヘアトリートメント、ヘアクリーム、ヘア栄養クリーム、ヘアモイスチャークリーム、ヘアマッサージクリーム、ヘアワックス、ヘアエアロゾル、ヘアパック、ヘア栄養パック、ヘア石鹸、ヘアクレンジングフォーム、ヘアオイル、毛髪乾燥剤、毛髪保存処理剤、毛髪染色剤、毛髪用ウェーブ剤、毛髪脱色剤、ヘアジェル、ヘアグレーズ、ヘアドレッシング、ヘアラッカー、ヘアモイスチャライザー、ヘアムースまたはヘアスプレーなどの化粧品で剤形化され得る。
【0033】
上述したような化粧料組成物は、皮膚に塗る形態で適用され得、マイクロニードルなどを利用して皮膚内部に吸収される形態で適用されることもできる。
【0034】
また、本発明は、羊水内胎児由来間葉系幹細胞から分離したエクソソームを有効成分として含む育毛促進用薬学的組成物を提供する。
【0035】
前記薬学的組成物は、育毛促進、毛髪再生および脱毛防止効果を有する毛髪医薬品に多様に用いられる。
【0036】
前記薬学的組成物は、全体薬学的組成物100重量部に対して0.001~10重量部を含むことができる。
【0037】
前記薬学的組成物は、育毛促進用錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、注射剤、ジェル、エマルジョン、シロップ、エアロゾル、パッチ、噴霧剤、クリーム、軟膏剤、硬膏剤、ローション剤、リニメント剤、パスタ(paste)剤またはカタプラズマ剤の形態の薬学組成物で製造して使用することができるが、これらに限定されるものない。
【0038】
前記薬学的組成物を製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調製される。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、一つ以上の化合物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、炭酸カルシウム、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混ぜて調製される。また、単純な賦形剤以外に、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどのような潤滑剤も使用される。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、頻繁に使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に、様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などを含むことができる。非経口投与のための製剤としては、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのようなじ植物性オイル、エチルオレートのような注射可能なエステルなどを使用することができる。坐剤の基剤としては、ウィテプソル(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用され得る。
【0039】
前記薬学的組成物の投与形態は、これらの薬学的許容可能な塩、単独または他の薬学的活性化合物と結合だけでなく、適当な集合の形態で使用することができる。前記塩としては、薬学的に許容されるものであれば、特に限定されず、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、ギ酸、酢酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などを使用することができる。
【0040】
前記薬学的組成物は、目的に応じて非経口投与したり、経口投与することができ、一日に体重1kg当たり0.1~500mg、1~100mgの量で投与されるように1~数回に分けて投与することができる。特定の患者に対する投与用量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食事、投与時間、投与方法、排泄率、疾患の重症度などによって変化することができる。
【0041】
前記薬学的組成物は、ラット、マウス、家畜、ヒトなどの哺乳動物に非経口、経口などの多様な経路で投与することができ、投与のすべての方式は、予想できるが、例えば、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜または脳血管内(intracerebroventricular)注射によって投与することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明は、羊水内胎児由来間葉系幹細胞に逆分化因子であるナノグ(Nanog)を導入して過発現することによって、間葉系幹細胞の成長、幹細胞性、寿命を増大し、これから分泌される成長因子の発現を増大した。また、ナノグ(Nanog)が導入された羊水内胎児由来間葉系幹細胞を培養したコンディションド培地から分離したエクソソームも毛髪成長促進効果を示すので、育毛促進用化粧料組成物および薬学的組成物として活用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は、本発明の一実施例によって細胞株でNanogの過発現の有無を確認した結果を示す。
図2図2は、本発明の一実施例によって羊水由来間葉系幹細胞およびナノグ羊水由来間葉系幹細胞の平均サイズおよび個数を測定した結果を示す。
図3図3は、本発明の一実施例によってエクソソーム内部の物質をPCRを通じて分析した結果を示す。
図4図4は、本発明の一実施例によってエクソソーム内部の物質をELISAを通じて分析した結果を示す。
図5図5は、本発明の一実施例によって獲得されたエクソソームの機能を確認した結果を示す。
図6図6は、本発明の一実施例によって得られたエクソソームの毛乳頭成長と共に、毛髪生成マーカーの変化をAP stainingを通じて確認した結果を示す。
図7図7は、本発明の一実施例によって得られたエクソソームのマーカーの変化を確認した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
別途定義されない限り、本明細書で使用されたすべての技術的および科学的用語は、本発明の属する技術分野において熟練した専門家によって通常的に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に、本明細書で使用された命名法は、本技術分野においてよく知られており、通常的に使用されるものである。
【0045】
[実施例]
実施例1:Nanogが導入された羊水由来間葉系幹細胞株の確立
本発明者らは、細胞拡張に容易な羊水由来間葉系幹細胞株を獲得するために、羊水由来間葉系幹細胞にレトロウイルスベクターシステム(Retroviral vector system)を利用してナノグ(Nanog)遺伝子を導入し、ナノグ(Nanog)の過発現を誘導し、これにより、ナノグ(Nanog)導入羊水由来間葉系幹細胞株を確立した。具体的な方法は、次の通りである。
【0046】
妊婦から得られた羊水内から分離した胎児由来細胞を10%FBS(Fetal bovine serum、ウシ胎児血清)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、1%L-グルタミン、bFGF(basic fibroblast growth factor、塩基性線維芽細胞成長因子)4ng/ml、セレニウム(Selenium)5ng/ml、アスコルビン酸(Ascorbic acid)50μg/mlが含まれた低グルコース(low glucose)DMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)培地で継代培養して、羊水内胎児由来間葉系幹細胞を収得した。
【0047】
レトロウイルスベクターシステム(Retroviral vector system)を利用して前記収得した羊水由来間葉系幹細胞にナノグ(Nanog)遺伝子を導入してナノグ(Nanog)の過発現を誘導することによって、ナノグ(Nanog)導入羊水由来間葉系幹細胞株を製造した。
【0048】
具体的に、pBS-Nanogベクター(Yamanaka lab’s plasmid stock #A4,JAPAN)で制限酵素(restriction enzyme)を利用してナノグ遺伝子(NCBI GenBank Accession number NM_024865.3)(配列番号1)を分離した。分離したナノグ遺伝子をpMXsベクター(Cell biolab,JAPAN)にT4連結酵素(ligase)でライゲーション(ligation)して、pMXs-Nanogを製作した。pMXs-Nanogベクターを293GPG cellに形質導入試薬(transfection reagent)を利用して6時間の間形質導入(transfection)した。72時間の間ナノグ遺伝子を有するウイルスを生産し、上澄み液を分離した後、2,000rpmで10分間遠心分離した後、その上澄み液を0.45umのフィルターにフィルタリングした。このウイルスを80%コンフルエンス状態の羊水由来間葉系幹細胞に6時間の間処理して、細胞内に感染(Infection)させた。
【0049】
実施例2:ナノグ(Nanog)が導入された羊水由来間葉系幹細胞のナノグ(Nanog)発現検定
RT-PCRを行うために、ナノグ(Nanog)導入羊水由来間葉系幹細胞をトリゾール(TRIzol)試薬(Invitrogen,USA)を利用して製造者の指示に応じてトータルRNAを分離した。分離したトータルRNA500ugをcDNA製造ミックス(Bioneer)を利用してcDNAに逆転写した。実験チューブを45℃で60分間静置した後、95℃で5分間静置し、以後、使用時まで-20℃で保管された。cDNAは、Taq合成酵素(Promega)とナノグ(Nanog)mRNAに特異的なプライマー(Exo-Nanog foward:5’-GCTTGGATACACGCCGC-3’(配列番号2);およびExo-Nanog reverse:5’-GATTGTTCCAGGATTGGGTG-3’(配列番号3))を通じて増幅された。RT-PCRは、94℃で20秒、60℃で30秒、および72℃で2分のサイクルを35回繰り返した後、最終合成のために72℃で10分間進めた。PCR結果物を1%アガロースゲルに電気泳動し、これを分析した。
【0050】
ナノグ(Nanog)過発現を確認するウェスタンブロット(Western blot)実験を行うために、ナノグ(Nanog)導入羊水由来間葉系幹細胞を10%FBSを含むDMEM培地で100%飽和するまで培養した後に収得し、細胞を破砕した後、タンパク質が含有された上澄み液30μgをSDS-PAGE(sodium dodecyl sulfate-polyacrylamide gel electrophoresis)に展開して分離し、ニトロセルロース膜(nitrocellulose membrane)に移動して4%スキムミルク(skim milk)でブロッキング(blocking)した。以後、膜に1次抗体としてナノグ(Nanog)受容体を探知する抗体(AF1997,R&D)を処理して4℃で一晩中培養し、TBST(0.1%Tween 20が添加されたTris-Buffered Saline(TBS))で洗浄した。2次抗体としてヤギ由来のHRP抗体(goat HRP antibody)(Santa Cruz Biotechnology,USA)を1%BSA(ウシ血清アルブミン、bovine serum albumin)を含むTBSTと共に膜に処理し、一時間の間反応してウェスタンブロットを行った。発現の程度を比較するための対照群として、抗-α-チューブリン(tubulin)抗体(R&D、USA)を1次抗体として使用して前記の方法と同じ方法を行うことによって、α-チューブリンの発現を確認した。
【0051】
その結果、ナノグ(Nanog)導入羊水由来間葉系幹細胞が、mRNA水準での外因性(exogenous)ナノグ(Nanog)遺伝子発現量と蛋白質水準でのナノグ(Nanog)発現量が羊水由来間葉系幹細胞より顕著に向上して、過発現したことを確認した(図1)。
【0052】
上記した胎児由来間葉系幹細胞は、DMEM低グルコース+10%ウシ胎児血清+1%ペニシリン/ストレプトマイシン+1%非必須アミノ酸+basic FGF(bFGF)4ng/ml+セレニウム5ng/ml+アスコルビン酸50μg/ml)で培養したとき、持続的に細胞成長が起こった。
【0053】
実施例3:ナノグ(Nanog)が導入された羊水由来間葉系幹細胞に由来したコンディションド培地内エクソソーム分析
実施例1および2で確立された羊水由来間葉系幹細胞株のうちそれぞれ一つずつの細胞部を選択し、コンディションド培地100mlを生産した後、エクソソームを分離した。
【0054】
コンディションド培地からエクソソームの抽出は、胎児由来間葉系幹細胞から生産したコンディションド培地を一定の分子量(molecular weight)のプロテインを濾すことが可能となるように考案されたAmicon Ultra-15 10K Centrifugal filter device(Millipore)を使用した。コンディションド培地14.8mlをデバイスの上部キャップ(upper cap)に入れた後、5,000×gで15~40分間遠心分離をさせた。このような方式でコンディションド培地100mlを濃縮させた後、濃縮された培地にExosome isolation kit(Invitrogen)を最終ボリュームの1/2を入れた後、よく混ぜた。完成されたサンプル(sample)は、4℃で12時間の間保管した。以後、13,2000rpmで30分間遠心分離をした後、上澄み液は除去し、残っている白色のペレット(pellet)をPBSまたはDMEMに溶解して、エクソソームサンプルを完成した。
【0055】
Nanosightを利用してエクソソームの平均サイズおよび個数を測定した結果、羊水由来間葉系幹細胞およびナノグ羊水由来間葉系幹細胞のそれぞれの直径156nm、147nmを記録し、その個数は、20.0×10、20.1×10と測定された(図2)。すなわち、実験に使用された幹細胞株からエクソソームの分離は、正常に行われ、また、ナノグが導入された羊水由来間葉系幹細胞株から同一量のエクソソームが分離可能であることを確認することができた。
【0056】
実施例4:エクソソーム内部の物質分析
実施例3で分離したエクソソーム内部の物質を分析するために、最初にRT-PCRを通じてmRNAの含有を調査した。
【0057】
qRT-PCRは、上記のRT-PCR時にRNA prepと同一にRNAを収得し、同一にcDNAを製作した。このように準備したcDNAは、CFX-96 PCR systemを通じてqRT-PCRを行い、cDNAは、bFGF、IGF、Wnt7aおよびPDGF-AAのmRNAに特異的なプライマーを利用して増幅した。bFGF特異的プライマーは、bFGF forward:5’-CAGATTAGCGGACGCGGTGC-3’(配列番号4)およびbFGF reverse:5’-TCACGGATGGGTGTCTCCGC-3’(配列番号5)を使用し、IGF特異的プライマーは、IGF forward:5’-CCATGTCCTCCTCGCATCTCTTCT-3’(配列番号6)およびIGF reverse:5’-CCATACCCTGTGGGCTTGTTGAA-3’(配列番号7)を使用し、Wnt7a特異的プライマーは、Wnt7a forward:5’-TCTTTCTCAGCCTGGGCATGGT-3’(配列番号8)およびWnt7a reverse:5’-TCCTATGACGATGATGGCGTCG-3’(配列番号9)を使用し、PDFG-AA特異的プライマーは、PDGF-AA forward:5’-CTGCCCATTCGGAGGAAGAGAA-3’(配列番号10)およびPDGF-AA reverse:5’-TGGCACTTGACACTGCTCGTGTT-3’(配列番号11)を使用した。標的mRNAの相対的定量は、CT方法で分析した。
【0058】
bFGF、Wnt7aおよびPDGF-AAタンパク質の分泌程度を調べてみるために、ナノグ(Nanog)導入羊水由来間葉系幹細胞から分離したエクソソームに対して酵素免疫測定法(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay,ELISA assay)を行った。エクソソーム内bFGF、Wnt7a、PDGF-AAタンパク質の量は、ELISAキット(Raybiotech)を使用してそれぞれのエクソソーム内タンパク質の含量を確認した。ELISAは、エクソソームを準備した後、標準(standard)およびサンプルにビオチン(biotin)抗体を1時間の間処理した後、ストレプトアビジン(streptavidin)を45分間処理した。以後、30分間TMB substrate reagentを処理した後、停止液(stop solution)を加えて反応を中止させた。結果は、マイクロプレート分光光度計(Microplate Spectrophotometer)を通じて450nm吸光度を測定した後、定量分析した。
【0059】
RT-PCRを通じて毛髪成長関連遺伝子の発現を比較してみた結果、Wnt7aを除いたbFGF、PDGF、IGFにおいてナノグ羊水由来間葉系幹細胞エクソソームがさらに高い発現量を示した。これは、ナノグ羊水由来間葉系幹細胞でのエクソソームの量が、既存の幹細胞と数が類似してはいるが、内部の物質で少しの差異があることを示す。RT-PCRデータをさらに確実にするために、qRT-PCRを通じて定量分析した。RT-PCRと同一に、Wnt7aを除いた残りの成長因子のmRNA量が非常に多数存在することが分かった(図3)。結論的に、エクソソームの内部には、毛髪成長関連因子のmRNAが含まれており、これは、毛髪成長の促進に役に立つと解析することができる。 プロテインの量は、ELISAを利用して分析し、Wnt7a、PDGF-AA、bFGFの濃度を測定した(図4)。測定によれば、Wnt7aは、約8pg/mL、PDGF-AAは、2.5pg/mL、bFGFは、約5.5pg/mLが存在していた。これは、エクソソームの内部に毛髪成長関連プロテインも含まれていることを確認することができた。
【0060】
実施例5:エクソソーム処理を介した毛乳頭細胞の成長およびマーカー変化
獲得したエクソソームを様々な濃度に区別した後、毛乳頭細胞に処理して毛髪生成に決定的な役割をする二つ、すなわち、毛乳頭細胞の成長および毛髪生成マーカーの変化を確認した。濃度は、100Xから1Xまで分け、コンディションド培地とエクソソームを除いたコンディションド培地を共に比較分析した。
【0061】
具体的に、ラットの皮膚組織を採取して細胞を分離し、実施例2と同じ方法で細胞のトータルRNAを分離して、cDNAに逆転写し、cDNAは、Taq合成酵素(Promega)とALP、LEFおよびベルシカン(Versican)のmRNAに特異的なプライマーを通じて増幅された。ALP特異的プライマーは、ALP forward:5’-TGGCCCTCTCCAAGACGTACAA-3’(配列番号12)およびALP reverse:5’-TGGTTCACTCTCGTGGTGGTCA-3’(配列番号13)を使用したし、LEF特異的プライマーは、LEF forward:5’-CTTCCTTGGTGAACGAGTCTG-3’(配列番号14)およびLEF reverse:5’-GTGTTCTCTGGCCTTGTCGT-3’(配列番号15)を使用し、ベルシカン特異的プライマーは、Versican forward:5’-AACTAGCCGTTGGAGTGGATTC-3’(配列番号16)およびVersican reverse:5’-AAATGCTCTGTGGCTCTGGA-3’(配列番号17)を使用した。結果物を1%アガロースゲルに電気泳動して、GAPDH mRNAを基準として相対的なmRNA発現量をCT値基準の分析を利用して定量化した。
【0062】
結果によれば、濃度が増加するにつれて、毛乳頭細胞の成長率は次第に増加し、一定濃度以上は、コンディションド培地よりも非常に良好な成長促進能力を発揮した。それに加えて、エクソソームを除去したコンディションド培地は、その機能性が顕著に低くなることを確認することができたが、これは、コンディションド培地内でもエクソソームの機能が多くの部分を占めていることを反証している(図5)。
【0063】
毛乳頭の成長とともに、毛髪生成マーカーの変化をqRT-PCRおよびAP stainingを通じて確認した。毛乳頭細胞が毛髪生成を誘導するためには、毛乳頭細胞固有の幹細胞能性を維持しなければならないが、この幹細胞性を表すマーカーが代表的にALP、LEFおよびベルシカン(Versican)と知られている。したがって、このマーカーの発現量を、エクソソームのない培地(Control)およびそれぞれの濃度(10X、50X)に区別して処理した結果、ALPおよびLEFの発現量が1.5倍から2倍程増加することを確認することができた(図6、上段)。ベルシカンの場合には、少量増加することのように見えるが、大きく異ならなかった。このデータに信憑性を得るために、ALPを染色(staining)で確認できるAP stainingを進め、qRT-PCRと同様に、エクソソームの濃度が増加するにつれて、青色に染色(staining)になる細胞の数が増加することを確認することができる(図6、下段)。
【0064】
追加に、毛乳頭細胞も、間葉系幹細胞への機能をある程度有していることが知られているので、一般的な幹細胞マーカーであるOct4、Sox2が発現する。このような一般的な幹細胞マーカーの変化を確認した結果、ALP、LEFのように徐々に増加することが分かる(図7)。特にOct4の場合には、5倍以上違いが生じる様相を示していて、エクソソームがOct4発現に大きい影響力を有していると解析することができる。
【0065】
この結果を見れば、エクソソームは、毛乳頭細胞の毛髪生成能力を促進させて、発毛および育毛に効率的な効果を示すことができると判断することができる。
【0066】
<製剤例1>ヘアローションの製造
通常のヘアローションの製造方法によって、本発明のナノグ(Nanog)を導入した羊水由来間葉系幹細胞コンディションド培地内エクソソームを有効成分として含むヘアローションを表1のように製造した。
【0067】
【表1】
【0068】
<製剤例2>親水性軟膏剤の製造
通常の親水性軟膏剤の製造方法によって、本発明のナノグ(Nanog)を導入した羊水由来間葉系幹細胞コンディションド培地内エクソソームを有効成分として含む親水性軟膏剤を表2のように製造した。
【0069】
【表2】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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