(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】分子をプローブし、検出し、分析するための光学システム及びアッセイ・チップ
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20220126BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20220126BHJP
G01N 21/62 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
C12M1/00 Z
C12M1/34 Z
G01N21/62 Z
(21)【出願番号】P 2020037466
(22)【出願日】2020-03-05
(62)【分割の表示】P 2016554539の分割
【原出願日】2014-11-17
【審査請求日】2020-04-03
(32)【優先日】2014-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516144164
【氏名又は名称】クアンタム-エスアイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】QUANTUM-SI INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ロスバーグ、ジョナサン エム.
(72)【発明者】
【氏名】カビリ、アリ
(72)【発明者】
【氏名】シックラー、ジェイソン ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ジャーフィス、ブレット ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ラッキー、ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】シュミッド、ジェラード
(72)【発明者】
【氏名】チプリアニー、ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ジュウェル、ジャック
(72)【発明者】
【氏名】ウエスト、ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】フェリーノ、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】グレン、ポール イー.
(72)【発明者】
【氏名】コーヘン、アダム イー.
(72)【発明者】
【氏名】ベロフィオーレ、アンソニー
【審査官】北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-521485(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0065726(US,A1)
【文献】特開2000-004871(JP,A)
【文献】特開平11-173987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
G01N 21/00-21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップの表面に設けられた複数のサンプル・ウェルのアレイであって、前記アレイにおけるそれぞれのサンプル・ウェルは1つのサンプルを受け入れるように形成されている、サンプル・ウェルのアレイと、
前記チップ中に形成された複数のレンズであって、前記複数のレンズのそれぞれのレンズは前記アレイ中の1つのサンプル・ウェルから放出された光を集光するように形成され、前記複数のレンズのうちの少なくともいくつかのそれぞれは、前記サンプル・ウェルのアレイから近い凸面と、前記サンプル・ウェルのアレイから遠い平面とを有する屈折レンズである、複数のレンズとからなる、装置。
【請求項2】
前記複数のレンズのうちのそれぞれのレンズは前記アレイ中の個別のサンプル・ウェルに対応する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記複数のレンズのうちのそれぞれのレンズは前記アレイ中の対応するサンプル・ウェルから放出された光をセンサーに向かって指向させるべく配置されている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記複数のレンズのうちのそれぞれのレンズは前記アレイ中の対応するサンプル・ウェルと重なっている、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記複数のレンズのうちのそれぞれのレンズは前記対応するサンプル・ウェルの下方に中心が合わせられている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記複数のレンズのうちのそれぞれのレンズは前記対応するサンプル・ウェル
の5μm下方に設けられる、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記複数のレンズは前記チップのレンズ層に設けられる、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記レンズ層と前記サンプル・ウェルのアレイとの間に設けられた誘電材料の層をさらに備える、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記誘電材料の層は酸化ケイ素を含有し、前記レンズ層は窒化ケイ素を含有する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記誘電材料の層
は5μmの厚さを有する、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
チップの表面に設けられた複数のサンプル・ウェルのアレイであって、前記アレイにおけるそれぞれのサンプル・ウェルは1つのサンプルを受け入れるように形成されている、サンプル・ウェルのアレイと、
前記チップのレンズ層に形成された複数のレンズであって、前記複数のレンズのそれぞれのレンズは前記アレイ中の1つのサンプル・ウェルから放出された光を集光するように形成される、複数のレンズと、
前記レンズ層と前記サンプル・ウェルのアレイとの間に設けられた誘電材料の層であって、前記誘電材料は酸化ケイ素からなり、前記レンズ層は窒化ケイ素を含有する、誘電材料の層とからなる、装置。
【請求項12】
チップの表面に設けられた複数のサンプル・ウェルのアレイを形成する工程であって、前記アレイにおけるそれぞれのサンプル・ウェルは1つのサンプルを受け入れるように形成される、複数のサンプル・ウェルのアレイを形成する工程と、
前記チップ中に複数のレンズを形成する工程であって、前記複数のレンズは前記アレイ中の1つのサンプル・ウェルから放出された光を集光するように形成され、かつ前記複数のレンズのうちの少なくともいくつかのそれぞれは、前記サンプル・ウェルのアレイから近い凸面と、前記サンプル・ウェルのアレイから遠い平面とを有する屈折レンズである、複数のレンズを形成する工程とを備える、装置の製造方法。
【請求項13】
前記複数のレンズを形成する工程では、前記複数のレンズのうちのそれぞれのレンズが前記アレイ中の対応するサンプル・ウェルから放出された光をセンサーに向かって指向させるべく配置させる工程を含んでなる、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記複数のレンズを形成する工程では、前記複数のレンズのうちのそれぞれのレンズが前記アレイ中の対応するサンプル・ウェルと重
なるようにそれぞれのレンズを形成する工程を含んでなる、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記複数のサンプル・ウェルのアレイを形成する工程では、前記アレイ中の個別のサンプル・ウェルが前記複数のレンズのうちの対応するレンズと位置合わせされるように個別のサンプル・ウェルを形成する工程を含んでなる、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記複数のレンズと前記サンプル・ウェルのアレイとの間に設けられた誘電材料の層を形成する工程をさらに備える、請求項12に記載の製造方法。
【請求項17】
前記複数のサンプル・ウェルを形成する工程は、
光学的に透明な層の上方に、少なくとも1つの金属層からなる材料の積層体を形成する工程と、
複数のサンプル・ウェルを形成すべく前記材料の積層体を少なくとも貫通してエッチングする工程とを備える、請求項12に記載の製造方法。
【請求項18】
前記エッチングする工程は、さらに前記複数のサンプル・ウェルのそれぞれのサンプル・ウェルにテーパが付けられた側壁部をエッチングする工程を備える、請求項17に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、生物学的なサンプル及び/又は化学的なサンプルの迅速で大規模並列の定量的な分析を実施するためのデバイス、方法、及び技法一般に関し、また、前記デバイスを製作する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的なサンプルの検出及び分析は、生物学的なアッセイ(「バイオアッセイ」)を使用して実施され得る。バイオアッセイは、従来から、大きくて高価な実験機器を必要とし、機器を動作させ、バイオアッセイを実施するように訓練された研究科学者を必要とする。そのうえ、バイオアッセイは、従来から、まとめて実施されており、大量の特定のタイプのサンプルが、検出及び定量化のために必要であるようになっている。
【0003】
いくつかのバイオアッセイは、特定の波長の光を放出する発光性タグを用いてタグを付けることによって実施される。タグは、励起光供給源によって照射され、発光を引き起こし、発光性の光は、フォトディテクターによって検出され、タグによって放出される発光性の光の量を定量化する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発光性タグを使用するバイオアッセイは、従来から、サンプルを照射するための高価なレーザ光供給源と、照射されたサンプルからの発光を収集するための複雑で大型の検出オプティクス及び電子機器とを必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で説明されている技術は、アッセイ・チップ及び機器を使用して、試料を迅速に分析するための装置及び方法に関する。アッセイ・チップは、使い捨てのもしくはリサイクル可能なチップの形態であることが可能であり、それは、少量の試料を受け入れるように、及び、試料の中のサンプルの多数の分析を並行して実行するように構成されている。アッセイ・チップ及び機器が使用され、いくつかの実施形態では、特定の化学的な又は生物学的な分析対象の存在を検出し、いくつかの実施形態では、化学的な又は生物学的な反応を評価し、いくつかの実施形態では、遺伝子配列を決定することが可能である。いくつかの実施形態によれば、集積デバイスは、単一分子遺伝子シークエンシングのために使用され得る。
【0006】
いくつかの実施形態によれば、ユーザは、アッセイ・チップの上のチャンバーの中に試料を堆積させ、受け入れ機器の中へアッセイ・チップを挿入する。機器は、単独で、又は、コンピュータと通信して、集積デバイスと自動的にインターフェース接続し、アッセイ・チップから光を送り、及び受け取り、受け取られた光を処理し、分析の結果をユーザに提供する。
【0007】
いくつかの実施形態によれば、アッセイ・チップは、サンプルを受け入れるように構成されているサンプル・ウェルであって、サンプルは、励起されると、エミッション・エネルギーを放出する、サンプル・ウェルと、エミッション・エネルギーを特定の方向に方向付けする少なくとも1つのエレメントと、光路であって、光路に沿ってエミッション・エネルギーがサンプル・ウェルからセンサーに向けて進む、光路とを含む。少なくとも1つのエレメントは、屈折エレメント、回折エレメント、プラズモニック・エレメント、及び共振器からなる群から選択される。
【0008】
いくつかの実施形態では、アッセイ・チップが、廃棄の前に、単一の生物学的なアッセイだけにおいて使用される。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのエレメントが、エミッション・エネルギーをセンサーに向けて方向付けするように構成されている少なくとも1つのレンズを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのレンズが、屈折レンズである。
いくつかの実施形態では、光路が、アッセイ・チップの1つ又は複数の界面におけるエミッション・エネルギーの反射を低減させるように構成されている少なくとも1つの反射防止層を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、アッセイ・チップが、使い捨てのフレームをさらに含む。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのエレメントが、同心円状のリング・グレーチングを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、同心円状のリング・グレーチングが、サンプル・ウェルの中へカップリングしてサンプルを励起する、励起光供給源からの励起光の量を増加させるように構成されている。
【0012】
いくつかの実施形態では、同心円状のリング・グレーチングが、エミッション・エネルギーをセンサーに向けて方向付けするようにさらに構成されている。
いくつかの実施形態では、同心円状のリング・グレーチングが、非周期的な同心円状のリング・グレーチングである。
【0013】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのレンズが、回折レンズである。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのエレメントが、誘電体共振器アンテナからなる。
【0014】
いくつかの実施形態によれば、複数のサンプル・ウェルを含むアッセイ・チップとインターフェース接続するように構成されている機器であって、複数のサンプル・ウェルのそれぞれのサンプル・ウェルは、サンプルを受け入れるように構成されており、機器は、複数のサンプル・ウェルの少なくとも一部分のサンプルを励起するように構成されている少なくとも1つの励起光供給源と、複数のセンサーであって、複数のセンサーのそれぞれのセンサーは、複数のサンプル・ウェルのサンプル・ウェルに対応しており、複数のセンサーのそれぞれのセンサーは、それぞれのサンプル・ウェルの中のサンプルからのエミッション・エネルギーを検出するように構成されている、複数のセンサーと、複数のサンプル・ウェルのそれぞれのサンプル・ウェルからのエミッション・エネルギーを複数のセンサーのそれぞれのセンサーに向けて方向付けするように構成されている、少なくとも1つの光学エレメントとを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、機器が、少なくとも1つの励起光供給源からの励起光をアッセイ・チップに向けて反射するように、及び、複数のサンプルからのエミッション・エネルギーを複数のセンサーに向けて透過させるように構成されているポリクロイック・ミラーをさらに含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの光学エレメントが、リレー・レンズからなる。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの励起光供給源が、複数の光供給源を含み、複数の光供給源のそれぞれの光供給源は、複数の波長のうちの1つ又は複数において励起光を放出する。
【0017】
いくつかの実施形態では、機器が、複数の光供給源のそれぞれから放出される光を空間的に重ね合わせるための波長コンバイナーをさらに含む。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの励起光供給源が、パルス光供給源からなる。
【0018】
いくつかの実施形態では、機器が、少なくとも1つのスペクトル・フィルターをさらに含み、少なくとも1つのスペクトル・フィルターは、エミッション・エネルギーを透過させるように、ならびに、少なくとも1つの励起光供給源からの励起光を吸収及び/又は反射させるように構成されている。
【0019】
いくつかの実施形態では、機器が、第1の波長のエミッション・エネルギーを第2の波長のエミッション・エネルギーから空間的に分離するための少なくとも1つのスペクトル・ソーティング・エレメントをさらに含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのスペクトル・ソーティング・エレメントが、回折光学素子からなる。
いくつかの実施形態では、回折光学素子が、エミッション・エネルギーを色彩的に分散させること、及び、エミッション・エネルギーの焦点を合わせることの両方を行う。
【0021】
いくつかの実施形態では、回折光学素子が、オフセットされたフレネル・レンズからなる。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのスペクトル・ソーティング・エレメントが、光フィルタリング・エレメントである。
【0022】
いくつかの実施形態では、機器が、制御システムをさらに含み、制御システムは、(i)直接励起光を前記複数のサンプル・ウェルに方向付けし、(ii)前記複数のセンサーにおいて、前記複数のウェルからの信号を検出し、(iii)前記信号の空間的な分布パターンを使用し、前記サンプル又はそのサブユニットを特定するようにプログラムされている。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、装置は、複数のピクセルを含むアッセイ・チップと、アッセイ・チップにインターフェース接続するように構成されている機器とを含む。アッセイ・チップの複数のピクセルのそれぞれは、サンプルを受け入れるように構成されているサンプル・ウェルであって、サンプルは、励起されると、エミッション・エネルギーを放出する、サンプル・ウェルと、エミッション・エネルギーを特定の方向に方向付けするための少なくとも1つのエレメントであって、屈折エレメント、回折エレメント、プラズモニック・エレメント、及び共振器からなる群から選択される、少なくとも1つのエレメントと、光路であって、光路に沿ってエミッション・エネルギーがサンプル・ウェルからセンサーに向けて進む、光路とを含む。機器は、それぞれのサンプル・ウェルの中のサンプルを励起するように構成されている少なくとも1つの励起光供給源と、複数のセンサーであって、複数のセンサーのそれぞれのセンサーは、それぞれのサンプル・ウェルに対応しており、複数のセンサーのそれぞれのセンサーは、それぞれのサンプル・ウェルの中のサンプルからのエミッション・エネルギーを検出するように構成されている、複数のセンサーと、それぞれのサンプル・ウェルからのエミッション・エネルギーを複数のセンサーのそれぞれのセンサーに向けて方向付けするように構成されている、少なくとも1つの光学エレメントとを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、アッセイ・チップが、機器に接続されるように、及び、機器から除去されるように構成されている。
いくつかの実施形態では、アッセイ・チップが機器に接続されているときに、複数のサンプル・ウェルのサンプル・ウェルと複数のセンサーの対応するセンサーとの間の光学的な距離が、30cm未満である。
【0025】
いくつかの実施形態では、アッセイ・チップが機器に接続されているときに、複数のサンプル・ウェルのサンプル・ウェルと複数のセンサーの対応するセンサーとの間の光学的な距離が、5cm未満である。
【0026】
いくつかの実施形態では、アッセイ・チップが機器に接続されているときに、複数のサンプル・ウェルのサンプル・ウェルと複数のセンサーの対応するセンサーとの間の光学的な距離が、1cm未満である。
【0027】
いくつかの実施形態では、機器が、ポータブルである。
いくつかの実施形態では、それぞれのサンプルが、複数の波長帯域のうちの1つの波長帯域の中のエミッション・エネルギーを放出する発光性タグを含み、複数のセンサーのそれぞれのセンサーが、複数の波長帯域のそれぞれにおいてエミッション・エネルギーを検出するように構成されているサブ・センサーを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、複数のセンサーのそれぞれのセンサーが、少なくとも2つのサブ・センサーを含む。
いくつかの実施形態では、複数のセンサーのそれぞれのセンサーが、少なくとも4つのサブ・センサーからなる。
【0029】
いくつかの実施形態では、機器が、少なくとも1つの波長依存エレメントをさらに含み、少なくとも1つの波長依存エレメントは、第1の波長のエミッション・エネルギーを少なくとも2つのサブ・センサーの第1のサブ・センサーに向けて方向付けし、第2の波長のエミッション・エネルギーを少なくとも2つのサブ・センサーの第2のサブ・センサーに向けて方向付けする。
【0030】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの波長依存エレメントが、回折光学素子である。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの波長依存エレメントが、スペクトル・フィルターである。
【0031】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの励起供給源が、パルス光を放出する。
いくつかの実施形態では、第1のサンプルに関連付けられる第1の発光性タグは、第1の波長の光によって励起されるが、第2の波長の光によって励起されず、第2のサンプルに関連付けられる第2の発光性タグは、第2の波長の光によって励起されるが、第1の波長の光によって励起されない。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、試料を分析する方法であって、方法は、
複数のサンプル・ウェルからなるアッセイ・チップの上部表面の上に試料を提供する工程と、少なくとも1つの励起光供給源及び少なくとも1つのセンサーからなる機器にチップを整合させる工程と、複数のサンプル・ウェルのうちの少なくとも1つの中の試料からのサンプルを、少なくとも1つの励起光供給源からの励起光によって励起する工程と、励起光による励起に応答して、少なくとも1つのサンプル・ウェルの中のサンプルが発生させたエミッション・エネルギーを、少なくとも1つのセンサーによって検出する工程とを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、方法が、エミッション・エネルギーの検出に基づいて、エミッション・エネルギーを放出した分子のタイプを決定する工程をさらに含む。
いくつかの実施形態では、分子のタイプを決定する工程が、エミッション・エネルギーのスペクトルの特質を測定する工程を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、分子のタイプを決定する工程が、サンプルを励起した励起光の波長を決定する工程をさらに含む。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの励起光供給源が、連続波光を放出する。
【0035】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの励起光供給源が、パルス光を放出する。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの励起光供給源が、複数の励起光供給源からなり、複数の励起光供給源のそれぞれの励起光供給源が、異なる波長の光を放出する。
【0036】
いくつかの実施形態では、サンプルが、フルオロフォアに取り付けられている少なくとも1つのヌクレオチドを含む。
いくつかの実施形態によれば、ターゲット核酸分子をシークエンシングするための方法は、(a)励起供給源及びセンサーを含む機器に隣接してチップを提供する工程であって、チップは、少なくとも1つのウェルを含み、少なくとも1つのウェルは、チップが前記機器のセンシング位置にあるときに、励起供給源及びセンサーに動作可能にカップリングされており、ウェルは、ターゲット核酸分子、重合酵素、及び、複数のタイプのヌクレオチド又はヌクレオチド類似体を含有する、工程と、(b)センシング位置において、チップによって、重合酵素の存在下で、ターゲット核酸分子のプライミング場所において、伸長反応を実施し、ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体を、ターゲット核酸分子に相補的な成長する鎖の中へ順次組み込む工程であって、励起供給源からの励起エネルギーによる組み込み及び励起が起こると、ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体は、ウェルの中に信号を放出する、工程と、(c)複数のタイプのヌクレオチド又はヌクレオチド類似体に関して区別可能な、信号の空間的な及び/又は時間的な分布パターンを検出するために、センサーを使用する工程と、(d)信号の空間的な及び/又は時間的な分布パターンに基づいて、ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体を特定し、それによって、ターゲット核酸分子をシークエンシングする工程とを含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体が、タグを含み、タグは、前記成長する鎖の中に組み込むと、信号を放出する。
いくつかの実施形態では、タグが、発光性タグである。
【0038】
いくつかの実施形態では、ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体が、前記信号の空間的な及び/又は時間的な分布パターンを検出することに続いて特定される。
いくつかの実施形態では、複数のタイプのヌクレオチド又はヌクレオチド類似体が、4つの異なるタイプのヌクレオチド又はヌクレオチド類似体を含み、4つの異なるタイプのヌクレオチド又はヌクレオチド類似体に関連付けられる前記信号の空間的な及び/又は時間的な分布パターンは、互いから区別可能である。
【0039】
いくつかの実施形態では、前記4つの異なるタイプのヌクレオチド又はヌクレオチド類似体に関連付けられる信号の空間的な及び/又は時間的な分布パターンが、互いから別々に検出される。
【0040】
いくつかの実施形態では、信号の空間的な及び/又は時間的な分布パターンが、空間的な及び/又は時間的な分布パターンのそれぞれの形状及び/又は強度分布に基づいて、互いから区別可能である。
【0041】
いくつかの実施形態では、プライミング場所が、ターゲット核酸分子に相補的なプライマーを含む。
いくつかの実施形態では、本発明の方法の行為(b)が、前記プライマーを使用してプライマー伸長反応を実施する工程を含み、プライマーは、前記ターゲット核酸分子に対してハイブリダイズされ、前記成長する鎖を生み出す。
【0042】
いくつかの実施形態では、ターゲット核酸分子は二本鎖である。
いくつかの実施形態では、プライミング場所が、ターゲット核酸分子の中のギャップ又はニックである。
【0043】
いくつかの実施形態では、重合酵素が、ウェルの中に固定化されている。
いくつかの実施形態では、重合酵素が、ウェルの底部部分において固定化されている。
いくつかの実施形態では、重合酵素が、ウェルの表面に取り付けられるリンカーを使用して固定化されている。
【0044】
いくつかの実施形態では、重合酵素が、鎖置換活性を示す。
いくつかの実施形態では、ウェルが、前記チップの中の複数のウェルの間にある。
いくつかの実施形態では、機器が、前記複数のウェルに動作可能にカップリングされる複数の励起供給源を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、方法の行為(c)の前に、前記信号の空間的な及び/又は時間的な分布パターンが、前記信号から発生する。
いくつかの実施形態によれば、核酸シークエンシングのための方法は、(a)機器に隣接してチップを提供する工程であって、チップは、複数のウェルを含み、複数のウェルは、チップが機器のセンシング位置にあるときに、(i)励起供給源及び(ii)前記機器のセンサーにそれぞれ動作可能にカップリングされており、前記複数のうちの個々のウェルは、ターゲット核酸分子、重合酵素、及び、複数のタイプのヌクレオチド又はヌクレオチド類似体を含有する、工程と、(b)前記ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体及び前記重合酵素の存在下において、前記ターゲット核酸分子に相補的な成長する鎖を生み出すために、センシング位置において、チップによって、前記ターゲット核酸分子に重合反応を受けさせる工程であって、組み込みの間に、前記励起供給源からの励起エネルギーによる励起が起こると、前記ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体は、前記個々のウェルの中に信号を放出する、工程と、(c)複数のタイプのヌクレオチド又はヌクレオチド類似体に関して区別可能な、信号の空間的な及び/又は時間的な分布パターンを検出するために、センサーを使用する工程と、(d)前記信号の前記空間的な及び/又は時間的な分布パターンに基づいて、前記ターゲット核酸分子の配列を特定する工程とを含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体が、タグを含み、タグは、前記成長する鎖の中に組み込むと、前記信号を放出する。
いくつかの実施形態では、タグが、発光性タグである。
【0047】
いくつかの実施形態では、配列が、前記信号の前記空間的な及び/又は時間的な分布パターンを検出することに続いて特定される。
いくつかの実施形態では、複数のタイプのヌクレオチド又はヌクレオチド類似体が、4つの異なるタイプのヌクレオチド又はヌクレオチド類似体を含み、4つの異なるタイプのヌクレオチド又はヌクレオチド類似体に関連付けられる前記信号の前記空間的な及び/又は時間的な分布パターンは、互いから区別可能である。
【0048】
いくつかの実施形態では、前記4つの異なるタイプのヌクレオチド又はヌクレオチド類似体に関連付けられる前記信号の空間的な及び/又は時間的な分布パターンが、互いから別々に検出される。
【0049】
いくつかの実施形態では、方法の行為(b)が、プライマーを使用してプライマー伸長反応を実施する工程からなり、プライマーは、前記ターゲット核酸分子に対してハイブリダイズされ、前記成長する鎖を生み出す。
【0050】
いくつかの実施形態では、ターゲット核酸分子が、一本鎖である。
いくつかの実施形態では、重合酵素が、前記ウェルの中に固定化されている。
いくつかの実施形態では、励起供給源が、前記複数のウェルに動作可能にカップリングされる。
【0051】
いくつかの実施形態では、方法の行為(c)が、前記信号の空間的な及び/又は時間的な分布パターンを検出する工程を含む。
いくつかの実施形態では、機器が、前記複数のウェルに動作可能にカップリングされる複数の励起供給源を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、機器が、前記複数のウェルに動作可能にカップリングされる複数のセンサーを含む。
いくつかの実施形態では、方法の行為(c)の前に、前記信号の空間的な及び/又は時間的な分布パターンが、前記信号から発生する。
【0053】
本教示の先述の及び他の態様、実施形態、及び特徴は、添付の図面に関連する以下の説明からより完全に理解され得る。
「ピクセル」という用語は、本開示において、集積デバイスの単位セルを表すために使用され得る。単位セルは、サンプル・ウェル及びセンサーを含むことが可能である。単位セルは、励起供給源をさらに含むことが可能である。単位セルは、サンプル・ウェルへの励起供給源からの励起エネルギーのカップリングを増強するように構成されている、少なくとも1つの励起カップリング光学的な構造体(それは、「第1の構造体」と称され得る)をさらに含むことが可能である。単位セルは、センサーへのサンプル・ウェルからのエミッションのカップリングを増強するように構成されている、少なくとも1つのエミッション・カップリング構造体をさらに含むことが可能である。単位セルは、集積された電子デバイス(たとえば、CMOSデバイス)をさらに含むことが可能である。集積デバイスの上にアレイで配置されている複数のピクセルが存在することが可能である。
【0054】
「光学的な」という用語は、本開示において、可視、近赤外線、及び短波長赤外線スペクトル・バンドを表すために使用され得る。
「タグ」という用語は、本開示において、分析されることになるサンプルに取り付けられているか、又は、サンプルと反応させられ得る反応物質に取り付けられている、タグ、プローブ、マーカ、又はレポータを表すために使用され得る。
【0055】
「励起エネルギー」という語句は、本開示において、サンプル・ウェルの中のサンプル及び/又はタグに送達されるエネルギーの任意の形態(たとえば、放射又は非放射)を表すために使用され得る。放射励起エネルギーは、1つ又は複数の特性波長における光学的な放射線からなることが可能である。
【0056】
「特性波長」という語句は、本開示において、放射線の限定されたバンド幅の中の中央の又は支配的な波長を表すために使用され得る。いくつかのケースでは、それは、放射線のバンド幅のピーク波長を表すことが可能である。フルオロフォアの特性波長の例は、563nm、595nm、662nm、及び687nmである。
【0057】
「特性エネルギー」という語句は、本開示において、特性波長に関連付けられるエネルギーを表すために使用され得る。
「エミッション」という用語は、本開示において、タグ及び/又はサンプルからのエミッションを表すために使用され得る。これは、放射エミッション(たとえば、光学的なエミッション)、又は、非放射エネルギー伝達(たとえば、デクスター・エネルギー移動もしくはフェルスター共鳴エネルギー移動)を含むことが可能である。エミッションは、サンプル・ウェルの中のサンプル及び/又はタグの励起から結果として生じる。
【0058】
「サンプル・ウェルからのエミッション」又は「サンプルからのエミッション」という語句は、本開示において、サンプル・ウェルの中のタグ及び/又はサンプルからのエミッションを表すために使用され得る。
【0059】
「自己整合される」という用語は、本開示において、第1のリソグラフィック・パターニング工程(たとえば、フォトリソグラフィー、イオン-ビーム・リソグラフィー、EUVリソグラフィー)が、第1のエレメントのパターンをプリントし、第2のリソグラフィック・パターニング工程が、第1のリソグラフィック・パターニング工程に整合させられ、a第2のエレメントのパターンをプリントするという、2つの別々のリソグラフィック・パターニング工程を使用することなく、少なくとも2つの別個のエレメント(たとえば、サンプル・ウェル及びエミッション・カップリング構造体、サンプル・ウェル及び励起供給源)が、互いに対して製作及び整合させられ得る、マイクロ製作プロセスを表すために使用され得る。自己整合されるプロセスは、単一のリソグラフィック・パターニング工程において、第1のエレメント及び第2のエレメントの両方のパターンを含むことからなることが可能であり、又は、第1のエレメントの製作された構造体の特徴を使用して、第2のエレメントを形成することからなることが可能である。
【0060】
「センサー」という用語は、本開示において、サンプル・ウェルからのエミッションを感知し、感知されたエミッションを表す少なくとも1つの電気信号を作り出すように構成されている、1つ又は複数の集積回路デバイスを表すために使用され得る。
【0061】
「ナノ・スケール」という用語は、本開示において、150ナノメートル(nm)以下であるが、おおよそ500nmよりは大きくないオーダの少なくとも1つの寸法又は最小特徴サイズを有する構造体を表すために使用され得る。
【0062】
「マイクロ・スケール」という用語は、本開示において、おおよそ500nmからおおよそ100ミクロンの間の少なくとも1つの寸法又は最小特徴サイズを有する構造体を表すために使用され得る。
【0063】
「増強される励起エネルギー」という語句は、本開示において、サンプル・ウェルの励起領域における励起エネルギーの強度を増加させるということを表すために使用され得る。強度は、たとえば、サンプル・ウェルへ入射する励起エネルギーを集中及び/又は共鳴させることによって、増加させられ得る。いくつかのケースでは、強度は、励起エネルギーがサンプル・ウェルの励起領域の中へさらに浸透することを可能にする反射防止コーティング又は損失性層によって、増加させられ得る。励起エネルギーの増強は、サンプル・ウェルの励起領域における励起エネルギーを増強する構造体を含まない実施形態に対する比較参照であることが可能である。
【0064】
「約」、「おおよそ」、及び「実質的に」という用語は、本開示において、値を表すために使用され得、基準値プラス及びマイナス許容可能な変化を包含することが意図されている。変化の量は、いくつかの実施形態では、5%未満であることが可能であり、いくつかの実施形態では、10%未満であることが可能であり、さらに、いくつかの実施形態では、20%未満であることが可能である。たとえば、1つ又は複数の桁数を含む範囲など、大きい範囲の値にわたって、装置が適正に機能することができる実施形態では、変化の量は、2倍となる可能性がある。たとえば、20から350の範囲にある値に関して装置が適正に機能する場合には、「おおよそ80」は、40から160の間の値を包含することが可能である。
【0065】
「隣接して」という用語は、本開示において、互いに対して極めて接近して配置されている2つのエレメントを表すために使用され得る(たとえば、ピクセルの横断方向の又は垂直方向の寸法の約5分の1よりも小さい距離以内)。いくつかのケースでは、隣接するエレメントの間に、介在構造体又は層が存在することが可能である。いくつかのケースでは、隣接するエレメントは、介在構造体又はエレメントがない状態で、互いに対して直接隣接していることが可能である。
【0066】
「検出する」という用語は、本開示において、サンプル・ウェルからのエミッションをセンサーにおいて受け取るということ、及び、エミッションを表し、又はエミッションに関連付けられる、少なくとも1つの電気信号を作り出すことを表すために使用され得る。また、「検出する」という用語は、本開示において、サンプル・ウェルからのエミッションに基づいて、サンプル・ウェルの中の特定のサンプル又はタグの存在を決定すること、又は、サンプル・ウェルの中の特定のサンプル又はタグの特質を特定することを表すために使用され得る。
【0067】
当業者は、本明細書で説明されている図は、単に図示目的のためのものであるということを理解することとなる。いくつかの場合には、本発明のさまざまな態様は、本発明の理解を促進させるために、誇張して又は拡大して示されている可能性があるということが理解されるべきである。図面において、同様の参照文字は、全体的に、さまざまな図を通して、同様の特徴、機能的に同様のエレメント、及び/又は、構造的に同様のエレメントを表している。図面は、必ずしも実寸ではなく、その代わりに、本教示の原理を図示する際に強調されている。図面は、決して、本教示の範囲を限定することを意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図1-1】いくつかの実施形態による、エミッション波長スペクトルを示す図。
【
図1-2A】いくつかの実施形態による、吸収波長スペクトルを示す図。
【
図1-2B】いくつかの実施形態による、エミッション波長スペクトルを示す図。
【
図2-1】いくつかの実施形態による、生物学的な試料及び化学的な試料の迅速なモバイル分析のために使用され得る装置のブロック・ダイアグラム図。
【
図2-2】いくつかの実施形態による、センサー・チップのピクセルとアッセイ・チップのピクセルとの間の関係の概略ダイアグラムを示す図。
【
図2-3】いくつかの実施形態による、アッセイ・チップの単一のピクセル及びセンサー・チップの単一のピクセルに関連付けられるコンポーネントを示す図。
【
図2-4】いくつかの実施形態による、機器のコンポーネントの一部分を示す図。
【
図3-1A】いくつかの実施形態による、アッセイ・チップ及びチップ・ホルダー・フレームの上面図。
【
図3-1B】いくつかの実施形態による、アッセイ・チップ及びチップ・ホルダー・フレームの底面図。
【
図3-1C】いくつかの実施形態による、アッセイ・チップ及びチップ・ホルダー・フレームを示す図。
【
図3-2】いくつかの実施形態による、サンプル・ウェルへ入射する励起エネルギーを示す図。
【
図3-3】いくつかの実施形態による、ゼロ・モード導波路として形成されているサンプル・ウェルに沿う、励起エネルギーの減衰を図示する図。
【
図3-4】いくつかの実施形態において、サンプル・ウェルに関連付けられる励起領域において、励起エネルギーを増加させる、ディボットを含むサンプル・ウェルを示す図。
【
図3-5】1つの実施形態による、ディボットありとディボットなしのサンプル・ウェルに関する励起強度を比較する図。
【
図3-6】いくつかの実施形態による、突出部において形成されたサンプル・ウェル及びディボットを示す図。
【
図3-7A】いくつかの実施形態による、テーパが付けられた側壁部を有するサンプル・ウェルを示す図。
【
図3-7B】いくつかの実施形態による、湾曲している側壁部と、より小さい横断方向の寸法を備えるディボットとを有するサンプル・ウェルを示す図。
【
図3-7C】表面プラズモニック構造体から形成されたサンプル・ウェルを示す図。
【
図3-7D】表面プラズモニック構造体から形成されたサンプル・ウェルを示す図。
【
図3-7E】いくつかの実施形態による、サンプル・ウェルの側壁部に沿って形成されている励起エネルギー増強構造体を含むサンプル・ウェルを示す図。
【
図3-7F】いくつかの実施形態による、多層スタックの中に形成されたサンプル・ウェルを示す図。
【
図3-8】いくつかの実施形態による、サンプル・ウェルの表面の上に形成された表面コーティングを図示する図。
【
図3-9A】いくつかの実施形態による、サンプル・ウェルを形成するリフト・オフ・プロセスに関連付けられる構造体を示す図。
【
図3-9B】いくつかの実施形態による、サンプル・ウェルを形成するリフト・オフ・プロセスに関連付けられる構造体を示す図。
【
図3-9C】いくつかの実施形態による、サンプル・ウェルを形成するリフト・オフ・プロセスに関連付けられる構造体を示す図。
【
図3-9D】いくつかの実施形態による、サンプル・ウェルを形成するリフト・オフ・プロセスに関連付けられる構造体を示す図。
【
図3-9E】いくつかの実施形態による、サンプル・ウェルを形成するリフト・オフ・プロセスに関連付けられる構造体を示す図。
【
図3-9F】いくつかの実施形態による、サンプル・ウェルを形成する代替的なリフト・オフ・プロセスに関連付けられる構造体を示す図。
【
図3-10A】いくつかの実施形態による、サンプル・ウェルを形成するダイレクト・エッチング・プロセスに関連付けられる構造体を示す図。
【
図3-10B】いくつかの実施形態による、サンプル・ウェルを形成するダイレクト・エッチング・プロセスに関連付けられる構造体を示す図。
【
図3-10C】いくつかの実施形態による、サンプル・ウェルを形成するダイレクト・エッチング・プロセスに関連付けられる構造体を示す図。
【
図3-10D】いくつかの実施形態による、サンプル・ウェルを形成するダイレクト・エッチング・プロセスに関連付けられる構造体を示す図。
【
図3-11】いくつかの実施形態による、リフト・オフ・プロセス又はダイレクト・エッチング・プロセスを使用して、複数の層の中に形成され得るサンプル・ウェルを示す図。
【
図3-12】いくつかの実施形態による、ディボットを形成するために使用され得るエッチング・プロセスに関連付けられる構造体を示す図。
【
図3-13A】いくつかの実施形態による、ディボットを形成する代替的なプロセスに関連付けられる構造体を示す図。
【
図3-13B】いくつかの実施形態による、ディボットを形成する代替的なプロセスに関連付けられる構造体を示す図。
【
図3-13C】いくつかの実施形態による、ディボットを形成する代替的なプロセスに関連付けられる構造体を示す図。
【
図3-14A】いくつかの実施形態による、付着物質及び不動態化層を堆積させるプロセスに関連付けられる構造体を示す図。
【
図3-14B】いくつかの実施形態による、付着物質及び不動態化層を堆積させるプロセスに関連付けられる構造体を示す図。
【
図3-14C】いくつかの実施形態による、付着物質及び不動態化層を堆積させるプロセスに関連付けられる構造体を示す図。
【
図3-14D】いくつかの実施形態による、付着物質及び不動態化層を堆積させるプロセスに関連付けられる構造体を示す図。
【
図3-15】いくつかの実施形態による、サンプル・ウェルの中の中央に付着物質を堆積させるプロセスに関連付けられる構造体を示す図。
【
図4-1A】単に1つの実施形態による、表面プラズモン構造体を示す図。
【
図4-1B】単に1つの実施形態による、表面プラズモン構造体を示す図。
【
図4-1C】いくつかの実施形態による、サンプル・ウェルに隣接して形成されている表面プラズモン構造体を示す図。
【
図4-1D】いくつかの実施形態による、サンプル・ウェルの中に形成されている表面プラズモン構造体を示す図。
【
図4-1E】いくつかの実施形態による、サンプル・ウェルの中に形成されている表面プラズモン構造体を示す図。
【
図4-2A】いくつかの実施形態による、周期的な表面プラズモン構造体の例を示す図。
【
図4-2B】いくつかの実施形態による、周期的な表面プラズモン構造体の例を示す図。
【
図4-2C】いくつかの実施形態による、周期的な表面プラズモン構造体の例を示す図。
【
図4-2D】いくつかの実施形態による、非周期的な表面プラズモン構造体に隣接して形成されているサンプル・ウェルにおける励起エネルギーの数値シミュレーションを示す図。
【
図4-2E】いくつかの実施形態による、周期的な表面プラズモン構造体を示す図。
【
図4-2F】いくつかの実施形態による、周期的な表面プラズモン構造体を示す図。
【
図4-2G】いくつかの実施形態による、周期的な表面プラズモン構造体を示す図。
【
図4-2H】いくつかの実施形態による、表面プラズモン構造体からなるナノ・アンテナを示す図。
【
図4-2I】いくつかの実施形態による、表面プラズモン構造体からなるナノ・アンテナを示す図。
【
図4-3A】いくつかの実施形態による、表面プラズモン構造体を形成するためのプロセス工程に関連付けられる構造体を示す図。
【
図4-3B】いくつかの実施形態による、表面プラズモン構造体を形成するためのプロセス工程に関連付けられる構造体を示す図。
【
図4-3C】いくつかの実施形態による、表面プラズモン構造体を形成するためのプロセス工程に関連付けられる構造体を示す図。
【
図4-3D】いくつかの実施形態による、表面プラズモン構造体を形成するためのプロセス工程に関連付けられる構造体を示す図。
【
図4-3E】いくつかの実施形態による、表面プラズモン構造体を形成するためのプロセス工程に関連付けられる構造体を示す図。
【
図4-4A】いくつかの実施形態による、表面プラズモン構造体及び自己整合されるサンプル・ウェルを形成するためのプロセス工程に関連付けられる構造体を示す図。
【
図4-4B】いくつかの実施形態による、表面プラズモン構造体及び自己整合されるサンプル・ウェルを形成するためのプロセス工程に関連付けられる構造体を示す図。
【
図4-4C】いくつかの実施形態による、表面プラズモン構造体及び自己整合されるサンプル・ウェルを形成するためのプロセス工程に関連付けられる構造体を示す図。
【
図4-4D】いくつかの実施形態による、表面プラズモン構造体及び自己整合されるサンプル・ウェルを形成するためのプロセス工程に関連付けられる構造体を示す図。
【
図4-4E】いくつかの実施形態による、表面プラズモン構造体及び自己整合されるサンプル・ウェルを形成するためのプロセス工程に関連付けられる構造体を示す図。
【
図4-4F】いくつかの実施形態による、表面プラズモン構造体及び自己整合されるサンプル・ウェルを形成するためのプロセス工程に関連付けられる構造体を示す図。
【
図4-4G】いくつかの実施形態による、表面プラズモン構造体及び自己整合されるサンプル・ウェルを形成するためのプロセス工程に関連付けられる構造体を示す図。
【
図4-5A】いくつかの実施形態による、表面プラズモン構造体及び自己整合されるサンプル・ウェルを形成するためのプロセス工程に関連付けられる構造体を示す図。
【
図4-5B】いくつかの実施形態による、表面プラズモン構造体及び自己整合されるサンプル・ウェルを形成するためのプロセス工程に関連付けられる構造体を示す図。
【
図4-5C】いくつかの実施形態による、表面プラズモン構造体及び自己整合されるサンプル・ウェルを形成するためのプロセス工程に関連付けられる構造体を示す図。
【
図4-5D】いくつかの実施形態による、表面プラズモン構造体及び自己整合されるサンプル・ウェルを形成するためのプロセス工程に関連付けられる構造体を示す図。
【
図4-5E】いくつかの実施形態による、表面プラズモン構造体及び自己整合されるサンプル・ウェルを形成するためのプロセス工程に関連付けられる構造体を示す図。
【
図4-6A】いくつかの実施形態による、サンプル・ウェルに隣接して形成されている薄い損失性膜を示す図。
【
図4-6B】いくつかの実施形態による、サンプル・ウェル及び薄い損失性膜の付近の励起エネルギーの数値シミュレーションからの結果を示す図。
【
図4-6C】いくつかの実施形態による、サンプル・ウェル及び薄い損失性膜の付近の励起エネルギーの数値シミュレーションからの結果を示す図。
【
図4-6D】いくつかの実施形態による、サンプル・ウェルから間隔を置いて配置されている薄い損失性膜を示す図。
【
図4-6E】いくつかの実施形態による、サンプル・ウェルに隣接して形成された薄い損失性膜のスタックを示す図。
【
図4-7A】いくつかの実施形態による、サンプル・ウェルに隣接して共鳴キャビティーを形成するために使用され得る反射スタックを図示する図。
【
図4-7B】いくつかの実施形態による、サンプル・ウェルにおいて励起エネルギーを集中させるために使用され得る誘電体構造体を示す図。
【
図4-7C】いくつかの実施形態による、サンプル・ウェルに隣接してパターニングされ得るフォトニック・バンドギャップ構造体を示す図。
【
図4-7D】いくつかの実施形態による、サンプル・ウェルに隣接してパターニングされ得るフォトニック・バンドギャップ構造体を示す図。
【
図4-8A】いくつかの実施形態による、誘電体構造体及び自己整合されるサンプル・ウェルを形成するためのプロセス工程に関連付けられる構造体を示す図。
【
図4-8B】いくつかの実施形態による、誘電体構造体及び自己整合されるサンプル・ウェルを形成するためのプロセス工程に関連付けられる構造体を示す図。
【
図4-8C】いくつかの実施形態による、誘電体構造体及び自己整合されるサンプル・ウェルを形成するためのプロセス工程に関連付けられる構造体を示す図。
【
図4-8D】いくつかの実施形態による、誘電体構造体及び自己整合されるサンプル・ウェルを形成するためのプロセス工程に関連付けられる構造体を示す図。
【
図4-8E】いくつかの実施形態による、誘電体構造体及び自己整合されるサンプル・ウェルを形成するためのプロセス工程に関連付けられる構造体を示す図。
【
図4-8F】いくつかの実施形態による、誘電体構造体及び自己整合されるサンプル・ウェルを形成するためのプロセス工程に関連付けられる構造体を示す図。
【
図4-8G】いくつかの実施形態による、誘電体構造体及び自己整合されるサンプル・ウェルを形成するためのプロセス工程に関連付けられる構造体を示す図。
【
図4-9A】いくつかの実施形態による、非放射プロセスを介して励起エネルギーをサンプルにカップリングするための構造体を示す図。
【
図4-9B】いくつかの実施形態による、非放射プロセスを介して励起エネルギーをサンプルにカップリングするための構造体を示す図。
【
図4-9C】いくつかの実施形態による、複数の非放射プロセスによって励起エネルギーをサンプルにカップリングするための構造体を示す図。
【
図4-9D】いくつかの実施形態による、放射プロセス又は非放射プロセスを介して励起エネルギーをサンプルにカップリングするために、1つ又は複数のエネルギー変換粒子を組み込む構造体を示す図。
【
図4-9E】いくつかの実施形態による、サンプルへの励起エネルギーのダウン・コンバートに関連付けられるスペクトルを示す図。
【
図4-9F】いくつかの実施形態による、サンプルへの励起エネルギーのアップ・コンバートに関連付けられるスペクトルを示す図。
【
図5-1】いくつかの実施形態による、同心円状のプラズモニック円形グレーチングを示す図。
【
図5-2】いくつかの実施形態による、スパイラル・プラズモニック・グレーチングを示す図。
【
図5-3】いくつかの実施形態による、同心円状のプラズモニック円形グレーチングからのエミッション空間的な分布パターンを示す図。
【
図5-4A】いくつかの実施形態による、プラズモニック・ナノ・アンテナを示す図。
【
図5-4B】いくつかの実施形態による、プラズモニック・ナノ・アンテナを示す図。
【
図5-5A】いくつかの実施形態による、プラズモニック・ナノ・アンテナを示す図。
【
図5-5B】いくつかの実施形態による、プラズモニック・ナノ・アンテナを示す図。
【
図5-6A】いくつかの実施形態による、アッセイ・チップの屈折オプティクスを示す図。
【
図5-6B】いくつかの実施形態による、アッセイ・チップのフレネル・レンズを示す図。
【
図6-1】いくつかの実施形態による、機器の顕微鏡コンポーネントを示す図。
【
図6-2A】いくつかの実施形態による、センサー・チップの遠視野スペクトル・ソーティング・エレメントを示す図。
【
図6-2B】いくつかの実施形態による、センサー・チップの遠視野フィルタリング・エレメントを示す図。
【
図6-3A】いくつかの実施形態による、センサー・チップの薄い損失性膜を示す図。
【
図6-3B】いくつかの実施形態による、センサー・チップの薄い損失性膜を示す図。
【
図6-4】いくつかの実施形態による、機器の光学的なブロックを示す図。
【
図7-1A】いくつかの実施形態による、センサー・チップのピクセルの中のセンサーを立面図で示す図。
【
図7-1B】いくつかの実施形態による、2つの別々の及び同心円状のアクティブ領域を有するブルズ・アイ・センサーを示す図。
【
図7-1C】いくつかの実施形態による、4つの別々のアクティブ領域を有するストライプ・センサーを示す図。
【
図7-1D】いくつかの実施形態による、4つの別々のアクティブ領域を有するクワッド・センサーを示す図。
【
図7-1E】いくつかの実施形態による、4つの別々のアクティブ領域を有する円弧形セグメント・センサーを示す図。
【
図7-1F】いくつかの実施形態による、スタックされたセグメント・センサーを示す図。
【
図7-2A】いくつかの実施形態による、第1の波長で放出されたエネルギーに関する、ソーティング・エレメントからのエミッション分布を示す図。
【
図7-2B】いくつかの実施形態による、
図7-2Aに示されているエミッション分布に対応する、ブルズ・アイ・センサーによって受け取られる放射線パターンを示す図。
【
図7-2C】いくつかの実施形態による、第2の波長で放出されたエネルギーに関する、ソーティング・エレメントからのエミッション分布を示す図。
【
図7-2D】いくつかの実施形態による、
図7-2Cに示されているエミッション分布に対応する、ブルズ・アイ・センサーによって受け取られる放射線パターンを示す図。
【
図7-2E】いくつかの実施形態による、サンプルからの第1のエミッション波長に関して、2つのアクティブ領域を有するブルズ・アイ・センサーに関する信号検出の数値シミュレーションからの結果を表す図。
【
図7-2F】いくつかの実施形態による、サンプルからの第2のエミッション波長に関して、
図7-2Eに関連付けられるブルズ・アイ・センサーに関する信号検出の数値シミュレーションからの結果を表す図。
【
図7-2G】いくつかの実施形態による、サンプルからの第3のエミッション波長に関して、
図7-2Eに関連付けられるブルズ・アイ・センサーに関する信号検出の数値シミュレーションからの結果を表す図。
【
図7-2H】いくつかの実施形態による、サンプルからの第4のエミッション波長に関して、
図7-2Eに関連付けられるブルズ・アイ・センサーに関する信号検出の数値シミュレーションからの結果を表す図。
【
図7-2I】いくつかの実施形態による、サンプルからの第1のエミッション波長に関して、4つのアクティブ領域を有するブルズ・アイ・センサーに関する信号検出の数値シミュレーションからの結果を表す図。
【
図7-2J】いくつかの実施形態による、サンプルからの第2のエミッション波長に関して、
図7-2Iに関連付けられるブルズ・アイ・センサーに関する信号検出の数値シミュレーションからの結果を表す図。
【
図7-3A】いくつかの実施形態による、2つのアクティブ領域からなるセンサーからの信号を読み取るために使用され得る装置の上の回路を示す図。
【
図7-3B】いくつかの実施形態による、信号蓄積及び読み出しに関して、センサー・チップに含まれ得る3トランジスター回路を示す図。
【
図7-3C】いくつかの実施形態による、4つのアクティブ領域からなるセンサーからの信号を読み取るために使用され得る装置の上の回路を示す図。
【
図7-4A】いくつかの実施形態による、サンプル分析のために使用され得る2つの異なるエミッターに関する時間的なエミッション特性を示す図。
【
図7-4B】いくつかの実施形態による、励起供給源及びサンプルからの発光の時間的な進展を示す図。
【
図7-4C】いくつかの実施形態による、時間遅延サンプリングを示す図。
【
図7-4D】いくつかの実施形態による、2つの異なるエミッターに関する時間的なエミッション特性を示す図。
【
図7-4E】いくつかの実施形態による、センサーの電荷蓄積ノードにおける電圧ダイナミクスを示す図。
【
図7-4F】いくつかの実施形態による、リセットなしのセンサー・セグメントのダブルのリードを示す図。
【
図7-4G】いくつかの実施形態による、時間的に別個のエミッション特性を有する2つのエミッターに関連付けられる第1及び第2の読み取り信号レベルを図示する図。
【
図7-4H】いくつかの実施形態による、時間的に別個のエミッション特性を有する2つのエミッターに関連付けられる第1及び第2の読み取り信号レベルを図示する図。
【
図8-1A】いくつかの実施形態による励起源の励起スペクトル・バンドを示す図。
【
図8-1B】いくつかの実施形態による励起源の励起スペクトル・バンドを示す図。
【
図9-1】いくつかの実施形態による、生物学的な試料及び化学的な試料の迅速なモバイル分析のために使用され得るコンパクトな装置の動作の方法を示す図。
【
図9-2】いくつかの実施形態による、キャリブレーション手順を示す図。
【
図9-3】いくつかの実施形態による、データ分析手順を示す図。
【
図10】いくつかの実施形態による計算環境を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0069】
本発明の特徴及び利点は、図面と併用されたときに、以下に述べられている詳細な説明からより明らかになることとなる。
I.発明者による課題と解決手段の認識
本発明者は、バイオアッセイを実施するための従来の装置は、大きくて高価であり、先進的な実験技法を実施することを必要とするということを認識及び理解した。多くのタイプのバイオアッセイは、試料の中の単一分子の検出に依存する。従来から、単一分子検出は、分子の励起のために必要とされる高い強度の光を発生させるために使用される大きくて場所を取るレーザ・システムを必要とする可能性がある。加えて、大型の光学的なコンポーネントが、レーザ光を試料に方向付けするために使用され得、追加的な光学的なコンポーネントが、試料からの発光性の光をセンサーに方向付けするために使用され得る。これらの従来の光学的なコンポーネントは、正確なアライメント及び安定化を必要とする可能性がある。従来の実験機器、及び、この従来の機器を使用するために必要とされるトレーニングは、複雑で高価なバイオアッセイを結果として生じさせる可能性がある。
【0070】
本発明者は、構成する部分の性質を判定するために生物学的な及び/又は化学的な試料を簡単かつ安価に分析することができるデバイスに対する必要性が存在しているということを認識及び理解した。そのようなデバイスの用途は、核酸分子、又は、複数のアミノ酸を有するポリペプチド(たとえば、タンパク質)などのような、生体分子をシークエンシングするためのものであることが可能である。単一分子又は粒子の検出及び定量化を実施するためのコンパクトな高速装置は、生物学的なサンプル及び/又は化学的なサンプルの複雑で定量的な測定を実施するコストを低減させ、生化学における技術的発見を急速に前進させることができた。そのうえ、容易に輸送可能なコスト効率の良いデバイスは、先進国世界においてバイオアッセイが行われる方式を変えることができただけでなく、発展途上地域の人々に、初めて、必須の診断検査への容易なアクセスを提供することができ、それは、健康及び福祉を劇的に改善することができた。たとえば、いくつかの実施形態では、バイオアッセイを実施するための装置は、血液、尿、及び/又は唾液などのような、生物学的なサンプルの診断検査を実施するために使用される。装置は、個人によって家庭の中で、医者によって、又は、たとえば、田舎の医院など、発展途上国又は任意の他の場所における遠隔の診療所において、使用され得る。そのような診断検査は、核酸分子又はタンパク質などのような、被験者の生物学的なサンプルの中の生体分子の検出を含むことが可能である。いくつかの例では、診断検査は、被験者の生物学的なサンプルの中の無細胞デオキシリボ核酸分子又は発現産物のシークエンシングなどのような、被験者の生物学的なサンプルの中の核酸分子をシークエンシングすることを含む。
【0071】
「核酸」という用語は、本明細書で使用されているように、全体的に、1つ又は複数の核酸サブユニットからなる分子を表している。核酸は、アデノシン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、及びウラシル(U)、又は、それらの変異体から選択される1つ又は複数のサブユニットを含むことが可能である。いくつかの例では、核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)もしくはリボ核酸(RNA)、又は、それらの誘導体である。核酸は、一本鎖又は二本鎖であることが可能である。核酸は、円形であることが可能である。
【0072】
「ヌクレオチド」という用語は、本明細書で使用されているように、全体的に、核酸サブユニットを表しており、それは、A、C、G、T、又はU、又は、それらの変異体もしくは類似体を含むことが可能である。ヌクレオチドは、成長する核酸鎖の中に組み込まれ得る任意のサブユニットを含むことが可能である。そのようなサブユニットは、A、C、G、T、もしくはUであり、又は、1つ又は複数の相補的なA、C、G、T、もしくはUに特有な、又は、プリン(すなわち、A、もしくはG、又は、それらの変異体もしくは類似体)又はピリミジン(すなわち、C、T、もしくはU、又は、それらの変異体もしくは類似体)に相補的な、任意の他のサブユニットであることが可能である。サブユニットは、個々の核酸塩基又は塩基のグループ(たとえば、AA、TA、AT、GC、CG、CT、TC、GT、TG、AC、CA、又は、それらのウラシル対応物)が分解されることを可能にする。
【0073】
ヌクレオチドは、一般的に、ヌクレオシド、及び、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は、それ以上のホスフェート(PO3)グループを含む。ヌクレオチドは、核酸塩基、五炭糖(リボース又はデオキシリボースのいずれか)、及び、1つ又は複数のホスフェート基を含むことが可能である。リボヌクレオチドは、糖がリボースであるヌクレオチドである。デオキシヌクレオチドは、糖がデオキシリボースであるヌクレオチドである。ヌクレオチドは、ヌクレオシド一リン酸又はヌクレオシド・ポリリン酸であることが可能である。ヌクレオチドは、たとえば、デオキシリボヌクレオシド三リン酸などのような、デオキシリボヌクレオシド・ポリリン酸であることが可能であり、それは、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシシチジン三リン酸(dCTP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、デオキシウリジン三リン酸(dUTP)、及びデオキシチミジン三リン酸(dTTP)、dNTPから選択され得、それは、発光性タグ又はマーカ(たとえば、フルオロフォア)などのような、検出可能なタグを含む。
【0074】
ヌクレオシド・ポリリン酸は、「n」ホスフェート基を有することが可能であり、ここで、「n」は、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10以上の数である。ヌクレオシド・ポリリン酸の例は、ヌクレオシド二リン酸及びヌクレオシド三リン酸を含む。ヌクレオチドは、末端リン酸塩で標識されたヌクレオシド・ポリリン酸などのような、末端リン酸塩で標識されたヌクレオシドであることが可能である。そのような標識は、発光性(たとえば、蛍光又は化学発光性)標識、蛍光性標識、着色標識、発色性標識、質量タグ、静電的な標識、又は、電気化学的な標識であることが可能である。標識(又は、マーカ)は、リンカーを通して末端リン酸塩にカップリングされ得る。リンカーは、たとえば、少なくとも1つの又は複数のヒドロキシル基、スルフヒドリル基、アミノ基、又はハロアルキル基を含むことが可能であり、それは、自然の又は修飾されたヌクレオチドの末端リン酸塩において、たとえば、リン酸エステル、チオエステル、ホスホルアミデート、又はアルキルホスホネート連結を形成するのに適切である可能性がある。リンカーは、開裂可能であることが可能であり、たとえば、重合酵素の支援などによって、末端リン酸塩から標識を分離するようになっている。ヌクレオチド及びリンカーの例が、米国特許第7,041,812号に提供されており、それは、全体が本願明細書に援用されている。
【0075】
「ポリメラーゼ」という用語は、本明細書で使用されているように、全体的に、重合反応に触媒作用を及ぼすことができる任意の酵素(又は、重合酵素)を表している。ポリメラーゼの例は、限定なしに、核酸ポリメラーゼ、転写酵素、又はリガーゼを含む。ポリメラーゼは、重合酵素であることが可能である。
【0076】
「ゲノム」という用語は、一般的に、生物の遺伝的情報の全体を表している。ゲノムは、DNA又はRNAのいずれかにコードされ得る。ゲノムは、タンパク質をコードするコード領域、及び、非コード領域からなることが可能である。ゲノムは、生物の中に、すべての染色体の配列を一緒に含むことが可能である。たとえば、ヒト・ゲノムは、合計で46染色体を有している。これらのすべての配列が、一緒にヒト・ゲノムを構成する。
【0077】
本開示は、核酸分子などのような、生体分子又はそれらのサブユニットを検出するためのデバイス、システム、及び方法を提供する。そのような検出は、シークエンシングを含むことが可能である。生体分子は、被験者から得られる生物学的なサンプルから抽出され得る。生物学的なサンプルは、息、唾液、尿又は血液(たとえば、全血又は血漿)などのような、被験者の体液又は組織から抽出され得る。被験者は、病気(たとえば、癌)などのような、健康条件を有するということが疑われる可能性がある。いくつかの例では、1つ又は複数の核酸分子が、被験者の体液又は組織から抽出され得る。1つ又は複数の核酸が、被験者の組織の一部などのような、被験者から得られる1つ又は複数の細胞、又は、全血などのような、被験者の無細胞体液から得られる1つ又は複数の細胞から抽出され得る。
【0078】
生物学的なサンプルが、検出(たとえば、シークエンシング)の準備として処理され得る。そのようなプロセッシングは、生物学的なサンプルからの生体分子(たとえば、核酸分子)の隔離及び/又は精製、ならびに、生体分子のより多くのコピーの発生を含むことが可能である。いくつかの例では、1つ又は複数の核酸分子が、被験者の体液又は組織から隔離及び精製され、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などのような核酸増幅を通して増幅される。次いで、1つ又は複数の核酸分子又はそのサブユニットが、シークエンシングなどを通して特定され得る。
【0079】
シークエンシングは、鋳型に相補的又は類似した別の生体分子を合成することによって、たとえば、鋳型核酸分子に相補的な核酸分子を合成すること、及び、時間によってヌクレオチドの組み込みを特定すること(すなわち、合成によるシークエンシング)などによって、鋳型生体分子(たとえば、核酸分子)の個々のサブユニットを決定することを含むことが可能である。代替例として、シークエンシングは、生体分子の個々のサブユニットの直接的な特定を含むことが可能である。
【0080】
シークエンシングの間に、生体分子の個々のサブユニットを示す信号が、メモリーの中に収集され、リアルタイムで又はより後の時点で処理され、生体分子の配列を決定することが可能である。そのようなプロセッシングは、信号と参照信号の比較を含むことが可能であり、それは、個々のサブユニットの特定を可能にし、それは、いくつかのケースではリードを生み出す。リードは、十分な長さの配列(たとえば、少なくとも約30塩基対(bp))であることが可能であり、それは、より大きい配列又は領域を特定するために使用され得、たとえば、それは、染色体又はゲノム領域又は遺伝子の上の場所に整合させられ得る。
【0081】
配列リードは、被験者のゲノムのより長い領域を再構築するために使用され得る(アライメント)。リードは、染色体領域、染色体全部、又はゲノム全部を再構築するために使用され得る。配列リード、又は、そのようなリードから発生するより大きい配列が、たとえば、変異体又は多型を特定するなど、被験者のゲノムを分析するために使用され得る。変異体の例は、それに限定されないが、タンデムSNPを含む一塩基多型(SNP)、小規模多塩基欠失又は挿入(インデル又は欠失挿入多型又はDIPとも称される)、多塩基多型(MNP)、縦列型反復配列(STR)、微小欠失を含む欠失、微小挿入を含む挿入、重複を含む構造的変異、反転、転座、増殖、複雑なマルチ・サイト変異対、コピー数変異(CNV)を含む。ゲノム配列は、多様性の組み合わせからなることが可能である。たとえば、ゲノム配列は、1つ又は複数のSNP及び1つ又は複数のCNVの組み合わせを包含することが可能である。
【0082】
生体分子の個々のサブユニットは、マーカを使用して特定され得る。いくつかの例では、発光性マーカは、生体分子の個々のサブユニットを特定するために使用されている。いくつかの実施形態は、発光性マーカ(本明細書で「マーカ」とも称される)を使用し、それは、外因性の又は内因性のマーカであることが可能である。外因性のマーカは、発光性ラベリングのためのレポータ及び/又はタグとして使用される外部発光性マーカであることが可能である。外因性のマーカの例は、それに限定されないが、蛍光分子、フルオロフォア、蛍光色素、蛍光染色液、有機色素、蛍光タンパク質、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に関与する種、酵素、及び/又は量子ドットを含むことが可能である。他の外因性のマーカも、当技術分野で知られている。そのような外因性のマーカは、具体的には特定のターゲット又はコンポーネントに結合するプローブ又は官能基(たとえば、分子、イオン、及び/又はリガンド)にコンジュゲートされ得る。外因性のタグ又はレポータをプローブに取り付けることは、外因性のタグ又はレポータの存在の検出を通して、ターゲットの特定を可能にする。プローブの例は、タンパク質、核酸(たとえば、DNA、RNA)分子、脂質、及び抗体プローブを含むことが可能である。外因性のマーカ及び官能基の組み合わせは、検出のために使用される任意の適切なプローブ、タグ、及び/又はラベルを形成することが可能であり、それは、分子プローブ、標識プローブ、ハイブリダイゼーション・プローブ、抗体プローブ、タンパク質プローブ(たとえば、ビオチン結合プローブ)、酵素ラベル、蛍光プローブ、蛍光タグ、及び/又は酵素レポータを含む。
【0083】
本開示は発光性マーカを参照しているが、他のタイプのマーカが、本明細書で提供されるデバイス、システム、及び方法とともに使用され得る。そのようなマーカは、質量タグ、静電的なタグ、又は電気化学的なラベルであることが可能である。
【0084】
外因性のマーカはサンプルに追加され得るが、内因性のマーカは、すでに、サンプルの一部であることが可能である。内因性のマーカは、励起エネルギーの存在下で発光又は「自己蛍光」することができる、存在する任意の発光性マーカを含むことが可能である。内因性のフルオロフォアの自己蛍光は、外因性のフルオロフォアの導入を必要とすることなく、ラベル・フリーの及び非侵襲的なラベリングを提供することが可能である。そのような内因性のフルオロフォアの例は、例として、及び、限定としてではなく、ヘモグロビン、酸素ヘモグロビン、脂質、コラーゲン及びエラスチン・クロスリンク、還元型ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(NADH)、酸化フラビン(FAD及びFMN)、リポフスチン、ケラチン、ならびに/又はポルフィリンを含むことが可能である。
【0085】
いくつかの実施形態は、試料の中の単一分子を検出することによる診断検査に関する可能性があるが、本発明者は、本開示の単一分子検出能力が、たとえば遺伝子の1つ又は複数の核酸セグメントのポリペプチド(たとえば、タンパク質)シークエンシング又は核酸(たとえば、DNA、RNA)シークエンシングを実施するために使用され得るということを認識した。核酸シークエンシング技術は、核酸配列を決定するために使用される方法において変化し、また、シークエンシング・プロセスの中のレート、リード長、及びエラーの発生において変化することが可能である。たとえば、いくつかの核酸シークエンシング方法は、合成によるシークエンシングに基づいており、合成によるシークエンシングでは、ヌクレオチドが、ターゲット核酸分子に相補的な核酸の新しく合成された鎖の中へ組み込まれるときに、ヌクレオチドのアイデンティティーが決定される。
【0086】
シークエンシングの間に、重合酵素は、ターゲット核酸分子のプライミング場所にカップリングする(たとえば、取り付ける)ことが可能である。プライミング場所は、ターゲット核酸分子に相補的なプライマーであることが可能である。代替例として、プライミング場所は、ターゲット核酸分子の二本鎖セグメントの中に提供されるギャップ又はニックである。ギャップ又はニックは、長さが0から少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、又は40個のヌクレオチドであることが可能である。ニックは、二本鎖配列の1つの鎖の中に切断を提供することが可能であり、それは、たとえば、鎖置換ポリメラーゼ酵素などのような重合酵素のためのプライミング場所を提供することが可能である。
【0087】
いくつかのケースでは、シークエンシング・プライマーは、ターゲット核酸分子にアニーリングされ得、ターゲット核酸分子は、サンプル・ウェルなどのような固体支持体に固定化されていても又は固定化されていなくてもよい。いくつかの実施形態では、シークエンシング・プライマーは、固体支持体に固定化され得、また、ターゲット核酸分子のハイブリダイゼーションも、ターゲット核酸分子を固体支持体に固定化させている。ヌクレオチドをプライマーに追加又は組み込むことができる酵素(たとえば、ポリメラーゼ)の作用を介して、ヌクレオチドが、5’-3’鋳型バウンド方式でプライマーに追加され得る。プライマーへのヌクレオチドのそのような組み込み(たとえば、ポリメラーゼの作用を介する)は、一般的に、プライマー伸長反応と称され得る。それぞれのヌクレオチドは、検出可能なタグに関連付けられ得、検出可能なタグは、検出及び使用され、プライマーの中へ組み込まれるそれぞれのヌクレオチド、及び、したがって、新しく合成された核酸分子の配列を決定することが可能である。新しく合成された核酸分子の配列相補性を介して、ターゲット核酸分子の配列も決定され得る。いくつかのケースでは、ターゲット核酸分子へのシークエンシング・プライマーのアニーリング、及び、シークエンシング・プライマーへのヌクレオチドの組み込みは、同様の反応条件(たとえば、同じ又は同様の反応温度)において、又は、異なる反応条件(たとえば、異なる反応温度)において、起こることが可能である。そのうえ、合成方法によるいくつかのシークエンシングは、ターゲット核酸分子の集団(たとえば、ターゲット核酸のコピー)の存在、及び/又は、ターゲット核酸の増幅の工程を含み、ターゲット核酸の集団を実現することが可能である。
【0088】
実施形態によると、少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、99.99%、99.999%、又は99.9999%の精度、及び/又は、約10塩基対(bp)、50bp、100bp、200bp、300bp、400bp、500bp、1000bp、10,000bp、20,000bp、30,000bp、40,000bp、50,000bp、又は100,000bp以上のリード長などのような、高い精度及び長いリード長によって、単一の核酸分子をシークエンシングすることができる。いくつかの実施形態では、単一分子シークエンシングにおいて使用されるターゲット核酸分子は、一本鎖のターゲット核酸(たとえば、デオキシリボ核酸(DNA)、DNA誘導体、リボ核酸(RNA)、RNA誘導体)鋳型であり、それは、サンプル・ウェルに添加又は固定化されており、サンプル・ウェルは、サンプル・ウェルの底部などのような固体支持体に固定化され又は取り付けられている、シークエンシング反応(たとえば、DNAポリメラーゼ、シークエンシング・プライマーなどのようなポリメラーゼ)の少なくとも1つの追加的なコンポーネントを含有する。ターゲット核酸分子又はポリメラーゼは、たとえば、サンプル・ウェルの底部に、直接的に又はリンカーを通して、サンプル壁部に取り付けられ得る。また、サンプル・ウェルは、プライマー伸長反応を介する核酸合成に必要とされる任意の他の試薬を含有することが可能であり、それは、たとえば適切なバッファー、補因子、酵素(たとえば、ポリメラーゼ)、ならびに、たとえば、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシシチジン三リン酸(dCTP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、デオキシウリジン三リン酸(dUTP)、及びデオキシチミジン三リン酸(dTTP)、dNTPを含む、デオキシリボヌクレオシド三リン酸などのような、デオキシリボヌクレオシド・ポリリン酸などであり、それは、フルオロフォアなどのような発光性タグを含む。dNTPのそれぞれのクラス(たとえばアデニンを含有するdNTP(たとえば、dATP)、シトシンを含有するdNTP(たとえば、dCTP)、グアニンを含有するdNTP(たとえば、dGTP)、ウラシルを含有するdNTP(たとえば、dUTP)、及び、チミンを含有するdNTP(たとえば、dTTP))は、別個の発光性タグにコンジュゲートされており、タグから放出される光の検出が、新しく合成された核酸の中へ組み込まれたdNTPのアイデンティティーを示すようになっている。発光性タグから放出される光は、本明細書の他の場所で説明されている検出のためのそのようなデバイス及び方法を含む、任意の適切なデバイス及び/又は方法を介して検出され得、その適当な発光性タグに起因することが可能である(及び、したがって、dNTPに関連付けられる)。発光性タグは、任意の位置においてdNTPにコンジュゲートされ得、発光性タグの存在が、新しく合成された核酸鎖の中へのdNTPの組み込み、又は、ポリメラーゼの活動を阻止しないようになっている。いくつかの実施形態では、発光性タグは、dNTPの末端ホスフェート(ガンマ・ホスフェート)にコンジュゲートされている。
【0089】
一本鎖のターゲット核酸鋳型は、シークエンシング・プライマー、dNTP、ポリメラーゼ、及び、核酸合成に必要な他の試薬に接触させ得る。いくつかの実施形態では、すべての適当なdNTPは、一本鎖のターゲット核酸鋳型と同時に接触させ得(たとえば、すべてのdNTPが同時に存在する)、dNTPの組み込みが、連続的に起こり得るようになっている。他の実施形態では、dNTPは、一本鎖のターゲット核酸鋳型に順次接触させ得、その場合には、一本鎖のターゲット核酸鋳型が、それぞれの適当なdNTPに別々に接触し、一本鎖のターゲット核酸鋳型が異なるdNTPと接触する合間に洗浄工程を伴う。一本鎖のターゲット核酸鋳型がそれぞれのdNTPと別々に接触するそのようなサイクルは、洗浄が後に続き、識別されることとなる一本鎖のターゲット核酸鋳型のそれぞれの連続的なベース位置に関して繰り返され得る。
【0090】
シークエンシング・プライマーは、一本鎖のターゲット核酸鋳型に対してアニーリングし、ポリメラーゼは、一本鎖のターゲット核酸鋳型を介して、dNTP(又は、他のデオキシリボヌクレオシド・ポリリン酸)をプライマーに連続して組み込む。それぞれの組み込まれたdNTPに関連付けられる固有の発光性タグは、プライマーへのdNTPの組み込みの間又は後に、適当な励起光によって励起され得、そのエミッションは、本明細書の他の場所で説明されている検出のためのデバイス及び方法を含む、任意の適切なデバイス及び/又は方法を使用して、その後に検出され得る。光の特定のエミッションの検出は、組み込まれた特定のdNTPに起因することが可能である。次いで、検出された発光性タグの収集から得られる配列が使用され、配列相補性を介して、一本鎖のターゲット核酸鋳型の配列を決定することが可能である。
【0091】
本開示はdNTPを参照しているが、本明細書で提供されるデバイス、システム、及び方法は、リボヌクレオチド及びデオキシヌクレオチド(たとえば、少なくとも4、5、6、7、8、9、又は10のホスフェート基を備えるデオキシリボヌクレオシド・ポリリン酸)などのような、さまざまなタイプのヌクレオチドとともに使用され得る。そのようなリボヌクレオチド及びデオキシヌクレオチドは、さまざまなタイプのタグ(又は、マーカ)及びリンカーを含むことが可能である。
【0092】
ヌクレオシドの組み込みのときに放出される信号は、メモリーの中に保存され、より後の時点で処理され、ターゲット核酸鋳型の配列を決定することが可能である。これは、信号を参照信号と比較し、組み込まれるヌクレオシドのアイデンティティーを時間の関数として決定することを含むことが可能である。代替的に又は加えて、ヌクレオシドの組み込みのときに放出される信号は、リアルタイムで(すなわち、ヌクレオシド組み込みのときに)収集及び処理され、ターゲット核酸鋳型の配列をリアルタイムで決定することが可能である。
【0093】
複数の一本鎖のターゲット核酸鋳型の核酸シークエンシングは、本明細書の他の場所で説明されているデバイスのケースと同様に、複数のサンプル・ウェルが利用可能である場合に完了され得る。それぞれのサンプル・ウェルは、一本鎖のターゲット核酸鋳型を提供され得、シークエンシング反応が、それぞれのサンプル・ウェルの中で完了され得る。サンプル・ウェルのそれぞれは、プライマー伸長反応の間の核酸合成に必要な適当な試薬(たとえば、dNTP、シークエンシング・プライマー、ポリメラーゼ、補因子、適当なバッファーなど)に接触させ得、シークエンシング反応が、それぞれのサンプル・ウェルの中で進行することが可能である。いくつかの実施形態では、複数のサンプル・ウェルは、すべての適当なdNTPに同時に接触させる。他の実施形態では、複数のサンプル・ウェルは、それぞれの適当なdNTPに別々に接触し、それぞれが異なるdNTPとの接触の合間に洗浄される。組み込まれたdNTPは、それぞれのサンプル・ウェルの中で検出され得、配列が、上記に説明されているように、それぞれのサンプル・ウェルの中の一本鎖のターゲット核酸に関して決定され得る。
【0094】
単一分子核酸シークエンシングに関する実施形態は、ターゲット核酸分子に相補的な核酸を合成することができる任意のポリメラーゼを使用することが可能である。ポリメラーゼの例はこれらに限定されないが、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、耐熱性ポリメラーゼ、ワイルド・タイプ・ポリメラーゼ、変性ポリメラーゼ、大腸菌DNAポリメラーゼI、T7DNAポリメラーゼ、バクテリオファージT4 DNAポリメラーゼφ29(プサイ29)DNAポリメラーゼ、Taqポリメラーゼ、Tthポリメラーゼ、Tliポリメラーゼ、Pfuポリメラーゼ、Pwoポリメラーゼ、VENTポリメラーゼ、DEEPVENTポリメラーゼ、EX-Taqポリメラーゼ、LA-Taqポリメラーゼ、Ssoポリメラーゼ、Pocポリメラーゼ、Pabポリメラーゼ、Mthポリメラーゼ、ES4ポリメラーゼ、Truポリメラーゼ、Tacポリメラーゼ、Tneポリメラーゼ、Tmaポリメラーゼ、Tcaポリメラーゼ、Tihポリメラーゼ、Tfiポリメラーゼ、プラチナTaqポリメラーゼ、Tbrポリメラーゼ、Tflポリメラーゼ、Tthポリメラーゼ、Pfutuboポリメラーゼ、Pyrobestポリメラーゼ、Pwoポリメラーゼ、KODポリメラーゼ、Bstポリメラーゼ、Sacポリメラーゼ、3’から5’のエキソヌクレアーゼ活性を備えるKlenowフラグメント・ポリメラーゼ、及び変異体、改変生成物、及びそれらの誘導体を含む。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、単一のサブユニット・ポリメラーゼである。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、高い進行性を備えるポリメラーゼである。ポリメラーゼ進行性は、一般的に、核酸鋳型を解放することなく核酸鋳型の中へdNTPを連続して組み込む、ポリメラーゼの能力を参照している。ターゲット核酸の核酸塩基と相補的なdNTPとの間の塩基対合のときに、ポリメラーゼは、新しく合成された鎖の3’ヒドロキシル端部とdNTPのアルファ・ホスフェートとの間にリン酸ジエステル結合を形成することによって、新しく合成された核酸鎖の中へdNTPを組み込む。dNTPにコンジュゲートされた発光性タグがフルオロフォアである例では、その存在が、励起によって信号で伝えられ、エミッションのパルスが、組み込みの工程の間又は後に検出される。dNTPの末端(ガンマ)ホスフェートにコンジュゲートされた検出標識に関して、新しく合成された鎖の中へのdNTPの組み込みは、ベータ・ホスフェート及びガンマ・ホスフェートの解放を結果として生じさせ、検出標識は、サンプル・ウェルの中に自由に拡散することができ、フルオロフォアから検出されるエミッションの減少を結果として生じさせる。
【0095】
単一分子RNAシークエンシングに関する実施形態は、RNA鋳型から相補的なDNA(cDNA)を合成することができる任意の逆転写酵素を使用することが可能である。そのような実施形態では、cDNAが、RNA鋳型にアニーリングされる逆転写プライマーへのdNTPの組み込みを介して、RNA鋳型から合成され得るという点において、逆転写酵素は、ポリメラーゼと同様の様式で機能することが可能である。次いで、cDNAは、シークエンシング反応に関与することが可能であり、その配列は、上記に説明されているように決定される。次いで、決定されたcDNAの配列は、配列相補性を介して使用され、元のRNA鋳型の配列を決定することが可能である。逆転写酵素の例は、モロニー・マウス白血病ウイルス逆転写酵素(M-MLV)、ニワトリ骨髄芽球症ウイルス(AMV)逆転写酵素、ヒト免疫不全ウイルス逆転写酵素(HIV-1)、及びテロメラーゼ逆転写酵素を含む。
【0096】
単一分子検出及び/又は核酸シークエンシングを実施するための簡単でより複雑でない装置に対する必要性を認識したので、発明者らは、タグのセットを使用して、単一分子を検出し、異なる分子に標識するための技法を想到した。そのような単一分子は、タグを有するヌクレオチド又はアミノ酸であることが可能である。タグは、単一分子に結合される間に、単一分子からの解放の際に、又は、単一分子に結合されかつ単一分子からの解放の際に、検出され得る。いくつかの例では、タグは、発光性タグである。選択されたセットの中のそれぞれの発光性タグは、それぞれの分子に関連付けられている。たとえば、4つのタグのセットが、DNAの中に存在する核酸塩基を「標識」するために使用され得、セットのそれぞれのタグは、異なる核酸塩基に関連付けられており、たとえば、第1のタグは、アデニン(A)に関連付けられており、第2のタグは、シトシン(C)に関連付けられており、第3のタグは、グアニン(G)に関連付けられており、第4のタグは、チミン(T)に関連付けられている。そのうえ、タグのセットの中の発光性タグのそれぞれは、異なる特性を有しており、それは、セットの第1のタグをセットの中の他のタグから区別するために使用され得る。このように、それぞれのタグは、これらの区別する性質のうちの1つ又は複数を使用して、固有に特定可能である。例として、及び、限定としてではなく、1つのタグを別のタグから区別するために使用され得るタグの性質は、励起に応答してタグによって放出される光のエミッション・エネルギー及び/もしくは波長、ならびに/又は、特定のタグを励起する励起光のエネルギー及び/もしくは波長を含んで、励起状態にタグを配置することが可能である。
【0097】
実施形態は、タグ特性の任意の適切な組み合わせを使用し、タグのセットの中の第1のタグを同じセットの中の他のタグから区別することが可能である。たとえば、いくつかの実施形態は、タグからのエミッション光の波長だけを使用し、タグを特定することが可能である。そのような実施形態では、タグの選択されたセットの中のそれぞれのタグが、そのセットの中の他のタグとは異なるピーク・エミッション波長を有しており、発光性タグは、すべて、単一の励起供給源からの光によって励起される。
図1-1は、実施形態による4つの発光性タグからのエミッション・スペクトルを図示しており、4つのタグが、異なるエミッション波長においてそれらのそれぞれの強度ピークを示しており、それは、本明細書で、タグの「ピーク・エミッション波長」と称される。第1の発光性タグからの第1のエミッション・スペクトル1-101は、λ1においてピーク・エミッション波長を有しており、第2の発光性タグからの第2のエミッション・スペクトル1-102は、λ2においてピーク・エミッション波長を有しており、第3の発光性タグからの第3のエミッション・スペクトル1-103は、λ3においてピーク・エミッション波長を有しており、第4の発光性タグからの第4のエミッション・スペクトル1-104は、λ4においてピーク・エミッション波長を有している。この実施形態では、4つの発光性タグのエミッション・ピークは、関係式λ1<λ2<λ3<λ4を満たす任意の適切な値を有することが可能である。4つのエミッション・スペクトルは、重なり合ってもよいし、又は、重なり合わなくてもよい。しかし、2つ以上のタグのエミッション・スペクトルが重なり合う場合には、1つのタグが、それぞれのピーク波長において、任意の他のタグよりも実質的に多い光を放出するように、発光性タグ・セットを選択することが望ましい。この実施形態では、4つのタグのそれぞれが励起供給源からの光を最大限に吸収する励起波長は、実質的に同じであるが、そうである必要はない。上記のタグ・セットを使用して、4つの異なる分子が、タグ・セットからのそれぞれのタグによって標識化され得、タグは、単一の励起供給源を使用して励起され得、タグは、光学的なシステム及びセンサーを使用してタグのエミッション波長を検出することによって、互いから区別され得る。
図1-1は、4つの異なるタグを図示しているが、任意の適切な数のタグが使用され得るということが認識されるべきである。
【0098】
他の実施形態は、タグからのエミッション光の波長、及び、タグが励起光を吸収する波長の両方を使用し、タグを特定することが可能である。そのような実施形態では、選択されたタグのセットの中のそれぞれのタグは、そのセットの中の他のタグとは、エミッション波長及び励起波長の異なる組み合わせを有している。したがって、選択されたタグ・セットの中のいくつかのタグは、同じエミッション波長を有することが可能であるが、異なる波長の光によって励起され得る。逆に、選択されたタグ・セットの中のいくつかのタグは、同じ励起波長を有することが可能であるが、異なる波長において光を放出することが可能である。
図1-2Aは、実施形態による4つの発光性タグからのエミッション・スペクトルを図示しており、タグのうちの2つが、第1のピーク・エミッション波長を有しており、他の2つのタグが、第2のピーク・エミッション波長を有している。第1の発光性タグからの第1のエミッション・スペクトル1-105は、λ1においてピーク・エミッション波長を有しており、第2の発光性タグからの第2のエミッション・スペクトル1-106も、λ1においてピーク・エミッション波長を有しており、第3の発光性タグからの第3のエミッション・スペクトル1-107は、λ2においてピーク・エミッション波長を有しており、第4の発光性タグからの第4のエミッション・スペクトル1-108も、λ2においてピーク・エミッション波長を有している。この実施形態では、4つの発光性タグのエミッション・ピークが、関係式λ1<λ2を満たす任意の適切な値を有することが可能である。
図1-2Bは、4つの発光性タグからの吸収スペクトルを図示しており、タグのうちの2つが、第1のピーク吸収波長を有しており、他の2つのタグが、第2のピーク吸収波長を有している。第1の発光性タグに関する第1の吸収スペクトル1-109は、λ3においてピーク吸収波長を有しており、第2の発光性タグに関する第2の吸収スペクトル1-110は、λ4においてピーク吸収波長を有しており、第3の発光性タグに関する第3の吸収スペクトル1-111は、λ3においてピーク吸収波長を有しており、第4の発光性タグに関する第4の吸収スペクトル1-112は、λ4においてピーク吸収波長を有している。
図1-2Aにおいてエミッション・ピーク波長を共有するタグは、
図1-2Bでは吸収ピーク波長を共有していないということに留意されたい。そのようなタグ・セットを使用することは、4つの色素に関して2つのエミッション波長しか存在しないときでも、4つのタグの間を区別することを可能にする。これは、異なる波長で放出する2つの励起供給源、又は、複数の波長で放出することができる単一の励起供給源を使用することによって可能となる。励起光の波長が、それぞれの検出されるエミッション・イベントに関して知られている場合には、どのタグが存在していたかということが決定され得る。励起供給源は、第1の励起波長と第2の励起波長を繰り返すことが可能であり、それは、インターリービングと称される。代替的に、第1の励起波長の2つ以上のパルスが使用され、その後に、第2の励起波長の2つ以上のパルスが続くことが可能である。
【0099】
図には図示されていないが、他の実施形態は、吸収周波数だけに基づいて、発光性タグのアイデンティティーを決定することが可能である。励起光が、タグ・セットの中のタグの吸収スペクトルにマッチする特定の波長にチューニングされ得る場合に、そのような実施形態が可能である。そのような実施形態では、それぞれのタグから放出される光を方向付け及び検出するために使用される光学的なシステム及びセンサーは、放出される光の波長を検出することができる必要はない。これは、いくつかの実施形態では、有利である可能性がある。その理由は、そのような実施形態では、エミッション波長を検出することは要求されないので、それが、光学的なシステム及びセンサーの複雑さを低減させるからである。
【0100】
上記に議論されているように、本発明者は、タグのさまざまな特性を使用して異なる、光学的な(たとえば発光性の)タグを互いから区別することができることの必要性を認識及び理解した。タグのアイデンティティーを決定するために使用される特性のタイプは、この分析を行うために使用される物理的なデバイスに影響を与える。本出願は、これらの異なる実験を行うための装置、デバイス、機器、及び方法のいくつかの実施形態を開示している。
【0101】
手短に言えば、本発明者は、比較的に多数のピクセル(たとえば、数百、数千、数百万、又は、それ以上)を備えるピクセル化されたセンサー・デバイスは、並行して複数の個々の分子又は粒子の検出を可能にするということを認識及び理解した。そのような単一分子は、タグを有するヌクレオチド又はアミノ酸であることが可能である。タグは、単一分子に結合される間に、単一分子からの解放の際に、又は、単一分子に結合されかつ単一分子からの解放の際に、検出され得る。いくつかの例では、タグは、発光性タグである。分子は、例として、及び、限定としてではなく、タンパク質及び/又は核酸(たとえば、DNA、RNA)であることが可能である。そのうえ、毎秒百を超えるフレームでデータを獲得することができる高速デバイスは、分析されているサンプルの中に時間をかけて起こる動的なプロセス又は変化の検出及び分析を可能にする。
【0102】
本発明者は、低コストの単回使用の使い捨てのアッセイ・チップが、励起光供給源、オプティクス、及び光センサーを含む機器に関連して使用され、生物学的なサンプルから放出される光信号(たとえば、発光性の光)を測定することが可能であるということを認識及び理解した。低コストのアッセイ・チップを使用することは、所与のバイオアッセイを実施するコストを低減させる。生物学的なサンプルは、アッセイ・チップの上に設置され、単一のバイオアッセイが完了すると廃棄され得る。いくつかの実施形態では、アッセイ・チップの異なる部分の上に複数のサンプルを同時に設置することによって、2つ以上のタイプのサンプルが、並行して同時に分析され得る。アッセイ・チップは、より高価なマルチ・ユースの機器にインターフェース接続し、より高価なマルチ・ユースの機器は、多くの異なる使い捨てのアッセイ・チップとともに繰り返して使用され得る。コンパクトなポータブル機器にインターフェース接続する低コストのアッセイ・チップは、サンプルを分析するために実験室専門知識を必要とする高コストの生物学的な実験室の制約なしに、世界のどこででも使用され得る。したがって、以前には生物学的なサンプルの定量的な分析を行うことができなかった世界の領域に、自動化された生物学的分析を持っていくことが可能である。たとえば、使い捨てのアッセイ・チップの上に血液サンプルを設置することによって、分析のための小さいポータブル機器の中へ使い捨てのアッセイ・チップを設置することによって、及び、ユーザによる即座の再検討のために機器に接続するコンピュータによって結果を処理することによって、幼児のための血液テストが行われ得る。また、データは、分析されるためにデータ・ネットワークを通じて遠隔の場所に送信され、及び/又は、その後の臨床分析のためにアーカイブされ得る。代替的に、機器は、機器のセンサーから得られるデータを分析するための1つ又は複数のプロセッサーを含むことが可能である。
【0103】
さまざまな実施形態が、より詳細に下記に説明されている。
II. いくつかの実施形態による装置の概観
装置2-100の図式的概観が、
図2-1に図示されている。システムは、アッセイ・チップ2-110及び機器2-120の両方からなり、機器2-120は、励起供給源2-121及び少なくとも1つのセンサー2-122からなる。アッセイ・チップ2-110は、任意の適切なアッセイ・チップ・インターフェースを使用して、機器2-120にインターフェース接続している。たとえば、機器2-120のアッセイ・チップ・インターフェースは、アッセイ・チップ2-110を受け入れるために、ならびに、励起供給源2-110及び少なくとも1つのセンサー2-122と正確な光学的アライメントの状態にアッセイ・チップ2-110を保持するために、ソケット(図示せず)を含むことが可能である。機器2-120の中の外部励起供給源2-121は、アッセイ・チップ2-110のサンプル・ウェル2-111の中のサンプルを励起する目的のために、励起エネルギーをアッセイ・チップ2-110に提供するように構成されている。いくつかの実施形態では、アッセイ・チップ2-110は、複数のピクセルを有しており、それぞれのピクセルのサンプル・ウェル2-111は、他のピクセルから独立した分析において使用されるサンプルを受け入れるように構成されている。アッセイ・チップ2-110のそれぞれのピクセルは、分析されている試料からのサンプルを受け入れ、保持し、及び分析するためのサンプル・ウェル2-211からなる。そのようなピクセルは、ピクセルから離れた励起供給源からピクセルが励起エネルギーを受け取るので、「パッシブ・ソース・ピクセル」と称され得る。いくつかの実施形態では、アッセイ・チップ2-110の上に存在するそれぞれのピクセルに対応する、機器2-120の中のピクセルが存在している。機器2-120のそれぞれのピクセルは、サンプルが励起供給源2-121からの励起エネルギーによって照射されていることに応答して、サンプルによって放出されるエミッション・エネルギーを検出するための少なくとも1つのセンサーからなる。いくつかの実施形態では、それぞれのセンサーは、複数のサブ・センサーを含むことが可能であり、それぞれのサブ・センサーは、サンプルからのエミッション・エネルギーの異なる波長を検出するように構成されている。2つ以上のサブ・センサーが、特定の波長のエミッション・エネルギーを検出することが可能であるが、それぞれのサブ・センサーは、エミッション・エネルギーの異なる波長帯域を検出することが可能である。
【0104】
いくつかの実施形態では、励起供給源2-121からの励起エネルギーをサンプル・ウェル2-111にガイド及びカップリングするための光学エレメントが、
図2-1の中の矢印2-101によって表されているように、アッセイ・チップ2-110及び機器2-120の両方の上に位置付けされている。そのような供給源・トゥー・ウェル・エレメントは、励起エネルギーをアッセイ・チップ2-110にカップリングするために機器2-120の上に位置付けされている、ミラー、レンズ、誘電体コーティング、及びビーム・コンバイナーを含むことが可能であり、また、機器2-120から受け取られる励起エネルギーをサンプル・ウェル2-111に方向付けするためにアッセイ・チップ1-110の上に、レンズ、プラズモニック・エレメント、及び誘電体コーティングを含むことが可能である。追加的に、いくつかの実施形態では、サンプル・ウェル2-111からのエミッション・エネルギーをセンサー2-122にガイドするための光学エレメントが、
図2-1の中の矢印2-102によって表されているように、アッセイ・チップ2-110及び機器2-120の上に位置付けされている。そのようなウェル・トゥー・サンプル・エレメントは、アッセイ・チップ2-110からのエミッション・エネルギーを機器2-120に方向付けするためにアッセイ・チップ2-110の上に位置付けされている、レンズ、プラズモニック・エレメント、及び誘電体コーティングを含むことが可能であり、また、アッセイ・チップ2-110から受け取られるエミッション・エネルギーをセンサー2-111に方向付けするために機器1-120の上に、レンズ、ミラー、誘電体コーティング、フィルター、及び回折光学素子を含むことが可能である。いくつかの実施形態では、単一のコンポーネントは、励起エネルギーをサンプル・ウェルにカップリングする際、及び、サンプル・ウェルからのエミッション・エネルギーをセンサーに送達する際の両方において、役割を果たすことが可能である。
【0105】
いくつかの実施形態では、アッセイ・チップ2-110は、複数のピクセルからなり、それぞれのピクセルは、それ自身の個々のサンプル・ウェル2-111、及び、機器2-120の上のそれ自身の関連のセンサー2-122に関連付けられている。複数のピクセルが、アレイで配置され得、任意の適切な数のピクセルを有することが可能である。たとえば、アッセイ・チップは、おおよそ1,000個のピクセル、10,000個のピクセル、おおよそ100,000個のピクセル、おおよそ1,000,000個のピクセル、おおよそ10,000,000個のピクセル、又は、おおよそ100,000,000個のピクセルを含むことが可能である。
【0106】
いくつかの実施形態では、機器2-120は、複数のセンサー2-122からなるセンサー・チップを含み、複数のセンサー2-122は、複数のピクセルとして配置されている。センサー・チップのそれぞれのピクセルは、アッセイ・チップ2-110の中のピクセルに対応している。複数のピクセルは、アレイで配置され得、任意の適切な数のピクセルを有することが可能である。いくつかの実施形態では、センサー・チップは、アッセイ・チップ2-110と同じ数のピクセルを有している。たとえば、センサー・チップは、おおよそ10,000個のピクセル、おおよそ100,000個のピクセル、おおよそ1,000,000個のピクセル、おおよそ10,000,000個のピクセル、又は、おおよそ100,000,000個のピクセルを含むことが可能である。
【0107】
機器2-120は、アッセイ・チップ・インターフェース(図示せず)を通してアッセイ・チップ2-110にインターフェース接続している。アッセイ・チップ・インターフェースは、アッセイ・チップ2-110を機器2-120に対して位置決め及び/又は整合させるためのコンポーネントを含み、励起供給源2-121からの励起エネルギーをアッセイ・チップ2-110にカップリングすることを改善することが可能である。いくつかの実施形態では、励起供給源2-121は、励起エネルギーをアッセイ・チップ2-110に送達するために組み合わせられる複数の励起供給源を含む。複数の励起供給源は、複数の励起エネルギーを作り出すように構成され得、それは、異なる波長の光に対応している。
【0108】
機器2-120は、機器の動作を制御するためのユーザ・インターフェース2-125を含む。ユーザ・インターフェース2-125は、機器の機能を制御するために使用されるコマンド及び/又はセッティングなどのような情報を、ユーザが機器の中へ入力することを可能にするように構成されている。いくつかの実施形態では、ユーザ・インターフェース2-125は、ボタン、スイッチ、ダイアル、及び、ボイス・コマンドのためのマイクロホンを含むことが可能である。追加的に、ユーザ・インターフェース2-125は、適正なアライメント、及び/又は、センサー・チップの上のセンサーからの読み出し信号によって得られる情報などのような、機器及び/又はアッセイ・チップの性能についてのフィードバックを、ユーザが受け取ることを可能にすることができる。いくつかの実施形態では、ユーザ・インターフェース2-125は、可聴フィードバックを提供するためにスピーカを使用して、ならびに/又は、視覚的フィードバックを提供するためにインジケーター光及び/もしくは表示スクリーンを使用して、フィードバックを提供することが可能である。いくつかの実施形態では、機器2-120は、コンピューティング・デバイス2-130と接続するために使用されるコンピュータ・インターフェース2-124を含む。任意の適切なコンピュータ・インターフェース2-124及びコンピューティング・デバイス2-130が使用され得る。たとえば、コンピュータ・インターフェース2-124は、USBインターフェース又はfirewire(商標)インターフェースであることが可能である。コンピューティング・デバイス2-130は、ラップトップ・コンピュータ、デスクトップ・コンピュータ、もしくはタブレット・コンピュータなどのような、任意の汎用コンピュータ、又は、携帯電話などのようなモバイル・デバイスであることが可能である。コンピュータ・インターフェース2-124は、機器2-120とコンピューティング・デバイス2-130との間の情報の通信を促進させる。機器2-120を制御及び/又は設定するための入力情報は、機器のコンピュータ・インターフェース2-124に接続されているコンピューティング・デバイス2-130を通して提供され得る。追加的に、出力情報は、コンピュータ・インターフェース2-124を通してコンピューティング・デバイス2-130によって受け取られ得る。そのような出力情報は、機器2-120の性能についてのフィードバック、及び、センサー2-122の読み出し信号からの情報を含むことが可能である。また、機器2-120は、センサー2-122から受け取られるデータを分析するためのプロセッシング・デバイス2-123を含むことが可能である。いくつかの実施形態では、プロセッシング・デバイス2-123は、汎用プロセッサー(たとえば、中央処理装置(CPU)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、又は、特定用途向け集積回路(ASIC)などのようなカスタム集積回路)であることが可能である。いくつかの実施形態では、センサー2-122からのデータを処理することは、プロセッシング・デバイス2-123及び外部コンピューティング・デバイス2-130の両方によって行われ得る。他の実施形態では、コンピューティング・デバイス2-130は省略され得、また、センサー2-122からのデータを処理することは、プロセッシング・デバイス2-123だけによって行われ得る。
【0109】
励起供給源2-121が、励起エネルギーによってアッセイ・チップ2-110を照射すると、アッセイ・チップ2-110の1つ又は複数のピクセルの中のサンプルが励起され得る。いくつかの実施形態では、試料は、複数のマーカによって標識されており、複数のマーカは、それぞれ、試料の中の異なるサンプルに関連付けられており、エミッション・エネルギーによって特定可能である。サンプル・ウェル2-111からセンサー2-122への経路は、エミッション・エネルギーに基づいて複数のマーカを特定することを支援する1つ又は複数のコンポーネントを含むことが可能である。コンポーネントは、センサー2-122に向けてエミッション・エネルギーの焦点を合わせることが可能であり、追加的に又は代替的に、異なる特性エネルギー、及び、したがって異なる波長を有するエミッション・エネルギーを空間的に分離することが可能である。いくつかの実施形態では、アッセイ・チップ2-110は、エミッション・エネルギーをセンサー2-122に向けて方向付けするコンポーネントを含むことが可能であり、機器2-120は、異なる波長のエミッション・エネルギーを空間的に分離するためのコンポーネントを含むことが可能である。たとえば、光学フィルター又は回折光学素子は、エミッション・エネルギーの波長を空間的な自由度にカップリングするために使用され得る。センサー又はセンサー領域は、複数のサブ・センサーを含有することが可能であり、複数のサブ・センサーは、放射線パターンに依存するエミッション・エネルギーの空間的な分布を検出するように構成されている。異なるエミッション・エネルギー及び/又はスペクトル範囲を放出する発光性タグは、異なる放射線パターンを形成することが可能である。センサー又はセンサー領域は、複数のマーカの間のマーカを特定するために使用され得るエミッション・エネルギーの空間的な分布についての情報を検出することが可能である。
【0110】
サンプル・ウェル2-110の中のサンプルからのエミッション・エネルギーは、センサー2-122によって検出され、少なくとも1つの電気信号に変換され得る。電気信号は、機器2-120の回路の中の導電性ラインに沿って送信され、プロセッシング・デバイス2-123及び/又はコンピューティング・デバイス2-130によって処理及び/又は分析され得る。
【0111】
図2-2は、アッセイ・チップ2-110の上面図及びセンサー・チップ2-260の上面図であり、2つのチップのピクセルの間の対応を図示している。アッセイ・チップ2-110は、複数のピクセルからなり、それぞれのピクセルは、導電性材料2-221の中に形成されたサンプル・ウェル2-111を含む。また、センサー・チップ2-260も、複数のピクセルからなり、それぞれのピクセルは、基板2-247の中又は上に形成されたセンサー2-121を含む。
図2-2の中の矢印は、アッセイ・チップ2-110のピクセルのうちの2つと、センサー・チップ2-260のピクセルのうちの2つとの間の対応を図示している。明確化のために図示されていないが、アッセイ・チップ2-110のそれぞれのピクセルは、センサー・チップ2-260のピクセルに関連付けられている。
【0112】
アッセイ・チップ2-110の単一のピクセル及びセンサー・チップ2-260の単一のピクセルに関連付けられているいくつかのコンポーネントの概観が、
図2-3に図示されている。装置2-100は、アッセイ・チップ2-110及び機器2-120の両方からなる。いくつかの実施形態では、アッセイ・チップ2-110は、単一の試料の分析のために設計された使い捨てのチップである。アッセイ・チップ2-110は、1つ又は複数の金属層2-221、1つ又は複数の誘電体層2-225、及び集束エレメント2-227を含む。いくつかの実施形態では、金属層2-221は、層のスタックを含み、そのうちのいくつかは、吸収層を含むことが可能である。機器2-120は、1つ又は複数の励起供給源2-250、少なくとも1つのポリクロイック・ミラー2-230、及びセンサー・チップ2-260を含み、センサー・チップ2-260は、フィルタリング・エレメント2-241、スペクトル・ソーティング・エレメント2-243、集束エレメント2-245、及び、基板2-247の中又は上の少なくとも1つのセンサー2-122を含むことが可能である。
図2-3は、アッセイ・チップ2-110の単一のピクセルだけ、及びセンサー・チップ2-260の単一のピクセルだけを図示しているが、励起供給源2-250、ポリクロイック・ミラー2-230、及びフィルタリング・エレメント2-241などのような、機器2-120のいくつかのコンポーネントは、複数のピクセルに共通であることが可能である。たとえば、いくつかの実施形態では、単一の励起供給源2-250及びポリクロイック・ミラー2-230が、アッセイ・チップ2-110のすべてのピクセルに励起エネルギーを方向付けすることが可能である。
【0113】
いくつかの実施形態では、試料は、血液、尿、又は唾液などのような体液を含むことが可能である。金属層2-221の中のサンプル・ウェル2-211は、試料からのサンプルが進入するためのサンプル体積を形成する。サンプル・ウェル2-211の端部における開口部は、ナノアパーチャと称され得る。ナノアパーチャは、励起供給源2-250によって放出される励起エネルギー2-251の波長よりも小さい幅を有することが可能である。サンプルと称される試料の一部分が、サンプル・ウェル2-211によって画定されるサンプル体積に進入することが可能である。サンプルは、任意の粒子、分子、タンパク質、遺伝物質、又は、試料の中に存在する任意の他のサンプルであることが可能である。
【0114】
励起供給源2-250は、励起エネルギー2-251を放出し、励起エネルギー2-251は、サンプル・ウェル2-211に向けて方向付けされ、サンプルを照射する。いくつかの実施形態では、励起供給源2-251は、アッセイ・チップ2-110のすべてのピクセルのために励起エネルギーを提供する単一の光供給源であることが可能である。ポリクロイック・ミラー2-230は、励起供給源2-250からの光を反射し、アッセイ・チップ2-110の1つ又は複数のサンプル・ウェル2-211に向けて励起エネルギー2-251を方向付けする。したがって、いくつかの実施形態では、それぞれのピクセルがそれ自身のポリクロイック・ミラーに関連付けられているというよりも、むしろ、すべてのサンプル・ウェルに向けて励起エネルギーを方向付けする単一のポリクロイック・ミラー2-230だけが存在することが可能である。同様に、励起エネルギーをサンプル・ウェル2-211に向けて方向付けするために使用される他の光学エレメント同士の間に、一対多数の関係が存在することが可能である。
【0115】
同心円状の円形のグレーチング2-223は、サンプル・ウェル2-211の底部ナノアパーチャに隣接して形成され得る。同心円状の円形のグレーチング2-223は、金属層2-221の底部表面から突出することが可能である。サンプル・ウェル2-211は、円形のグレーチング2-223の中心に、又は、円形のグレーチング2-223の中心の近くに位置付けされ得る。サンプル・ウェル2-211のナノアパーチャのサブ波長スケール及び同心円状の円形のグレーチング2-223の両方が、場の増強効果を生成させ、場の増強効果が、サンプル・ウェル2-211の中の励起エネルギーの強度を増加させ、サンプル・ウェル2-211の中に存在するサンプルへの励起エネルギーのカップリングの増加を結果として生じさせる。少なくとも時々、サンプルは、励起エネルギーから光子を吸収し、そして、励起エネルギー2-251のものよりも小さいエネルギーを伴う光子(「エミッション・エネルギー」2-253と称される)を放出する。エミッション・エネルギー2-253は、下向き方向に放出され得る。円形のグレーチング2-223は、プラズモニック・エレメントとしての役割を果たし、プラズモニック・エレメントは、エミッション・エネルギー2-253の広がりを減少させるために、及び、関連のセンサーに向けてエミッション・エネルギー2-253を方向付けするために使用され得る。
【0116】
エミッション・エネルギー2-253は、誘電体層2-225を通って進み、誘電体層2-225は、エミッション・エネルギー2-253がいくらかの距離を伝播することを可能にするために使用されるスペーサー層であることが可能である。また、誘電体層2-225は、構造的強度をアッセイ・チップ2-110に提供することが可能である。次いで、エミッション・エネルギー2-253は、1つ又は複数の集束エレメント2-227を通って進み、1つ又は複数の集束エレメント2-227は、機器2-120の中のセンサー・チップ2-2260の関連のピクセルの中のセンサー2-122にエミッション・エネルギー2-253をさらに方向付けするために使用される。
【0117】
次いで、ポリクロイック・ミラー2-230は、エミッション・エネルギー2-253を透過し、アッセイ・チップ2-110から反射された任意の励起エネルギー2-251の一部分を反射する。アッセイ・チップ2-110によって反射されない励起光の一部分は、アッセイ・チップを通して透過させられるか、又は、アッセイ・チップによって吸収されるかのいずれかである。アッセイ・チップ2-110によって反射され、ポリクロイック・ミラー2-230によって反射されない励起エネルギー2-251の量をさらに低減させるために、フィルタリング・エレメント2-241が、センサー・チップ2-260に向かう光学的な経路の中に配設され得る。フィルタリング・エレメント2-241は、例として、及び、限定としてではなく、ブロードバンド・フィルター、ノッチ・フィルター、又はエッジ・フィルターを含むことが可能であり、それは、エミッション・エネルギー2-253を透過するが、励起エネルギー2-251を吸収及び/又は反射する。
【0118】
実施形態では、エミッション・エネルギー2-253のスペクトルの特質を使用して、サンプル・ウェル2-211の中のマーカのアイデンティティーを決定することを促進させるために、スペクトル・ソーティング・エレメント2-243が、センサー・チップ2-260の上に含まれ、エミッション・エネルギー2-253のスペクトル自由度を、エミッション・エネルギー2-253が進んでいる方向にカップリングすることが可能である。たとえば、回折光学素子が使用され、第1の波長のエミッション・エネルギー2-253を第1の方向に方向付けし、第2の波長のエミッション・エネルギー2-253を第2の方向に方向付けすることが可能である。1つ又は複数の集束エレメント2-245が使用され、スペクトル的にソーティングされた光をセンサー2-122の上に方向付けすることが可能である。センサー2-122は、1つ又は複数のサブ・センサー(図示せず)を含むことが可能であり、そのそれぞれは、スペクトル・ソーティング・エレメント2-243による異なる波長の光のリダイレクション(redirection)に基づいて、エミッション・エネルギー2-253の異なる波長に関連付けられる。
【0119】
図2-3の上記説明は、いくつかの実施形態による装置のコンポーネントのいくつか(必ずしもすべてではない)の概観である。いくつかの実施形態では、
図2-3の1つ又は複数のエレメントは、なくてもよく、又は、異なる場所にあってもよい。アッセイ・チップ2-210及び機器2-220のコンポーネントは、より詳細に下記に説明されている。
【0120】
アッセイ・チップ2-110及び機器2-120は、機械的に整合され、取り外し可能に連結され、互いから分離可能であり得る。機器2-120は、機器ハウジングを含むことが可能であり、機器ハウジングの内側には、マウンティング・ボード2-405が配設されている。
図2-4は、機器2-120のマウンティング・ボード2-405の上に含まれ得るコンポーネントのうちの少なくともいくつかを図示している。マウンティング・ボード2-405は、プリント回路基板を含むことが可能であり、マウンティング・ボード2-405は、センサー・チップ2-260(
図2-4では見ることができない)、ヒートシンク2-407、及び、それに装着されている光学ハウジング2-401を有することが可能である。機器2-120のさまざまな光学的なコンポーネントが、光学ハウジング2-401の中に配設され得る。いくつかの実施形態では、機器ハウジング及びマウンティング・ボードは、任意の適切なサイズであることが可能である。たとえば、マウンティング・ボードは、17.78~20.32cm(7~8”)の直径を有する実質的に円形であることが可能である。
【0121】
アッセイ・チップ2-110は、光学ハウジング2-401と連結し、光学ハウジング2-401の中の光学的なコンポーネントとのアライメントを確実にする。チップ・ホルダー・フレーム3-102は、光学ハウジング2-401の開口部に整合されられ得る。好ましくは、アッセイ・チップ2-110は、機器2-120に取り外し可能に連結され得る。たとえば、磁気シリンダーなどのような、任意の適切な形状の磁気コンポーネント2-403aから2-403bが、光学ハウジング3-401の開口部の周りに設置され得、光学ハウジング3-401の開口部を通って、励起エネルギーが、光学ハウジング2-401から出ていく。追加的に、磁気コンポーネント2-403aから2-403cがキャリブレートされ得、チップ・ホルダー・フレーム3-102が開口部とアライメント状態に保持されるようになっている。チップ・ホルダー・フレームは、アライメント・シリンダーを使用して、ミクロン・レベルの精度で位置決めされ得る。いくつかの実施形態では、3つの磁気シリンダー2-403aから2-403bが、チップ・ホルダー・フレーム・アライメントを生成させるために使用される。しかし、実施形態はそのように限定されず、任意の適切な数の磁気的な、スプリング・ロード式の、空気圧式の、又は、他のそのようなコンポーネントが、整合された構成で適切な場所にチップを保持するために使用され得る。たとえば、チップ・ホルダー・フレーム3-102は、スプリング、空気圧力、又は、真空からの吸引などのような、非磁性エレメントによって、適正な場所に保持され得る。随意的に、チップ・ホルダー・フレーム3-102は、光学的なブロックとアライメント状態でチップを位置決めするのに適切な任意の堅い材料を使用して構築され得る。
【0122】
本出願のいくつかの態様によれば、チップがシステムに接続されるときに、サンプル・ウェルとセンサーとの間の距離が、小さく維持され得る。いくつかの実施形態では、サンプル・ウェルとセンサーとの間の光学的な距離は、30cm未満、10cm未満、15cm未満、又は1cm未満であることが可能である。
【0123】
III. アッセイ・チップ
いくつかの実施形態では、アッセイ・チップ2-110は、任意のアクティブ電子的なコンポーネントを含んでいない。それぞれのピクセルに関する励起供給源2-250及びセンサー2-122の両方が、機器2-120の中にチップ外に位置付けされている。
【0124】
いくつかの実施形態では、アッセイ・チップ2-110は、
図3-1Aに図示されているように、チップ・ホルダー・フレーム3-102の中に収容され得る。チップ・ホルダー・フレーム3-102は、使い捨てのものであることが可能であり、単回使用の後に、アッセイ・チップ2-110とともに処分され得る。アッセイ・チップ2-110は、
図3-1Bに図示されているように、チップ・ホルダー・フレーム3-102裏側に位置することが可能である。チップ・ホルダー・フレーム3-102は、スチールなどのような任意の適切な強磁性の金属からなることが可能であり、光学ハウジング2-401に固定された磁気コンポーネント2-403aから2-403bが、チップ・ホルダー・フレーム3-102を、ひいては、アッセイ・チップ2-110を、適切な場所に保持するようになっている。いくつかの実施形態では、チップ・ホルダー・フレーム3-102は、
図2-4に図示されているように、光学ハウジング2-401の上部表面に取り付けられ得る。
【0125】
図3-1Cに図示されている他の実施形態では、アッセイ・チップは、チップ・ホルダー・フレーム3-102の上部表面に取り付けられ得る。プラスチック・キャップ3-103が、アッセイ・チップ2-110を取り囲んでおり、アッセイ・チップ2-110のピクセル・アレイが、プラスチック・キャップ3-103の中の開口部を介して露出されるようになっている。アッセイ・チップ2-110のユーザは、プラスチック・キャップ3-103の開口部の中へ試料を置くことが可能である。アッセイ・チップ2-110の上部表面に接触していることによって、試料の中のサンプルは、分析のために、アッセイ・チップ2-110の複数のピクセルのうちの1つ又は複数に導入され得る。いくつかの実施形態では、強制流体流動を介してサンプルの一部分をピクセルへ送達するための流体チャネル又はデバイスは必要でない。
【0126】
A. サンプル・ウェル層
図2-3に図示されているように、及び、
図3-2においてより詳細に図示されているように、いくつかの実施形態は、アッセイ・チップ2-110の1つ又は複数のピクセルに形成されたサンプル・ウェル2-211を含む。サンプル・ウェルは、金属層2-221の中に形成された小さい体積又は領域からなることが可能であり、小さい体積又は領域は、サンプルが、アッセイ・チップ2-110の表面の上に堆積された試料から、サンプル・ウェルの中へ、及び、サンプル・ウェルの外へ拡散し得るように、配置されている。さまざまな実施形態では、サンプル・ウェル2-211は、励起供給源2-250からの励起エネルギーを受け取るように配置され得る。サンプル・ウェルの中へ拡散するサンプルは、一時的に又は永久的に、付着物質3-211によってサンプル・ウェルの励起領域3-215の中に保持され得る。励起領域において、サンプルは、励起エネルギー(たとえば、励起光3-245)によって励起され得、その後にエネルギーを放出することが可能であり、エネルギーは、観察及び評価され、サンプルを特徴付けることが可能である。
【0127】
動作のさらなる詳細では、分析されることとなる少なくとも1つのサンプル3-101が、たとえば、サンプルの流体懸濁を含有する試料(図示せず)から、サンプル・ウェル2-211の中へ導入され得る。装置2-120の励起供給源2-250からの励起エネルギー3-245は、サンプル又は少なくとも1つのタグ(生物学的なマーカ、レポータ、又はプローブとも称される)を励起することが可能であり、少なくとも1つのタグは、サンプルに取り付けられており、又は、そうでなければ、それがサンプル・ウェルの中の励起領域3-215の中にある間に、サンプルに関連付けられている。いくつかの実施形態によれば、タグは、発光性分子(たとえば、発光性タグ又はプローブ)又は量子ドットであることが可能である。いくつかの実施形態では、サンプルを分析するために使用される2つ以上のタグが存在することが可能である(たとえば、ジェイ.エイド(J.Eid)らによる「単一のポリメラーゼ分子からのリアルタイムDNAシークエンシング(Real-Time DNA Sequencing from Single Polymerase Molecules)」、Science 323、p.133(2009)(それは本願明細書に援用される)に説明されているような、単一分子遺伝子シークエンシングのために使用される別個のタグ)。励起の間に及び/又は励起の後に、サンプル又はタグは、エミッション・エネルギーを放出することが可能である。複数のタグが使用されるときには、それらは、異なる特性エネルギーで放出し(したがって異なる波長を有し)、及び/又は、異なる時間特性によって放出することが可能である。サンプル・ウェル2-211からのエミッションは、装置2-120のセンサー2-122へ放射することが可能であり、センサー3-260において、それらは検出され、電気信号へと変換され、電気信号は、サンプルを特徴付けるために使用され得る。
【0128】
いくつかの実施形態によれば、サンプル・ウェル2-211は、
図3-2に示されているように、部分的に囲まれた構造体であることが可能である。いくつかの実施形態では、サンプル・ウェル2-211は、材料2-211の少なくとも1つの層の中に形成されたサブミクロン・サイズのホール又は開口部(少なくとも1つの横断方向の寸法D
swによって特徴付けられる)からなる。いくつかの実施形態によれば、サンプル・ウェルの横断方向の寸法は、おおよそ20ナノメートルからおおよそ1ミクロンの間であることが可能であるが、いくつかの実施形態では、より大きいサイズ及びより小さいサイズが使用され得る。サンプル・ウェル2-211の体積は、いくつかの実施形態では、約10
-21リットルから約10
-15リットルの間であることが可能である。サンプル・ウェルは、導波路として形成され得、導波路は、伝播モードをサポートすることが可能であり、又は、伝播モードをサポートすることが可能ではない。いくつかの実施形態では、サンプル・ウェルは、直径(又は、最大の横断方向の寸法)D
swを備える円筒形状の形状(又は、同様の形状)を有するゼロ・モード導波路(ZMW)として形成され得る。ZMWは、ナノ・スケール・ホールとして単一の金属層の中に形成され得、それは、ホールを通して伝播光学モードをサポートしない。
【0129】
サンプル・ウェル2-211は小さい体積を有しているので、サンプルが、自然環境において見出されるものと同様の濃度で、検査される試料の中に濃縮され得るとしても、それぞれのピクセルにおける単一のサンプル・イベント(たとえば、単一分子イベント)の検出が可能である可能性がある。たとえば、サンプルのマイクロモル濃度は、アッセイ・チップに接触して設置されている試料の中に存在することが可能であるが、ピクセル・レベルにおいて。アッセイ2-110のサンプル・ウェルは、統計的に、サンプルを含まない可能性が高いか、単に約1つだけのサンプルを含むような寸法にされていることによって、単分子の分析を行うことができる。たとえばいくつかの実施形態では、サンプル・ウェルの30~40%が単一のサンプルを含む。しかし、サンプル・ウェルは1つを超えるサンプルを含んでいてもよい。単一分子又は単一のサンプル・イベントが、それぞれのピクセルにおいて分析され得るので、アッセイ・チップは、そうでなければアンサンブル平均測定値の中に気付かれずに終わる可能性のある珍しいイベントを検出することを可能にする。
【0130】
サンプル・ウェルの横断方向の寸法Dswは、いくつかの実施形態では、約500ナノメートル(nm)から約1ミクロンの間であることが可能であり、いくつかの実施形態では、約250nmから約500nmの間であることが可能であり、いくつかの実施形態では、約100nmから約250nmの間であることが可能であり、さらに、いくつかの実施形態では、約20nmから約100nmの間であることが可能である。いくつかの実施形態によれば、サンプル・ウェルの横断方向の寸法は、おおよそ80nmからおおよそ180nmの間、又は、励起波長又はエミッション波長のおおよそ4分の1から8分の1の間であることが可能である。他の実施形態によると、サンプル・ウェルの横断方向の寸法は、約120nm~約170nmである。いくつかの実施形態では、サンプル・ウェル2-211の深さ又は高さは、約50nmから約500nmの間であることが可能である。いくつかの実施形態では、サンプル・ウェル2-211の深さ又は高さは、約80nmから約200nmの間であることが可能である。
【0131】
サブ波長の横断方向の寸法を有するサンプル・ウェル2-211は、少なくとも2つの方式で、アッセイ・チップ2-110のピクセル2-100の動作を改善することが可能である。たとえば、試料の反対側からサンプル・ウェルへ入射する励起エネルギー3-245は、指数関数的に減少するパワーを伴って励起領域3-215の中へカップリングすることが可能であり、サンプル・ウェルを通って試料へは伝播しない。結果として、励起エネルギーは、それが関心のサンプルを励起する励起領域の中で増加され、また、それが背景雑音に寄与するであろう他のサンプルを励起し得た試料の中で低減される。また、ウェルのベースにおいて保持されているサンプルからのエミッションは、好適には、装置2-120上のセンサーに向けて方向付けされる。その理由は、エミッションがサンプル・ウェルを通って上に伝播することができないからである。これらの効果の両方が、ピクセルにおける信号対雑音比を改善することが可能である。本発明者は、ピクセルにおける信号対雑音レベルをさらに引き上げるように改善され得るサンプル・ウェルのいくつかの態様を認識した。これらの態様は、ウェル形状及び構造に関し、また、サンプル・ウェル、及び、サンプル・ウェルから放出されたエネルギーと励起エネルギーをカップリングすることを支援する、隣接する光学的な及びプラズモニック構造体(下記に説明されている)との相対位置に関する。
【0132】
いくつかの実施形態によれば、サンプル・ウェル2-211は、伝播モードをサポートすることがないサブ・カットオフ・ナノアパーチャ(SCN)として形成され得る。たとえば、サンプル・ウェル2-211は、導電層2-221の中の円筒形状のホール又はボアからなることが可能である。サンプル・ウェルの断面は、丸形である必要はなく、いくつかの実施形態では、楕円形、正方形、長方形、又は多角形であることが可能である。励起エネルギー3-245(たとえば、可視又は近赤外の放射線)は、エントランス・アパーチャ3-212を通ってサンプル・ウェルに進入することが可能であり、エントランス・アパーチャ3-212は、
図3-2に示されているように、ウェルの第1の端部において、サンプル・ウェル2-211の壁部3-214によって画定され得る。SCNとして形成されるときには、励起エネルギー3-245は、SCNに沿って指数関数的に減衰することが可能である。いくつかの実施形態では、導波路は、サンプルから放出されたエネルギーに関するSCNからなることが可能であるが、励起エネルギーに関するSCNでなくてもよい。たとえば、サンプル・ウェルによって形成されるアパーチャ及び導波路は、励起エネルギーに関する伝播モードをサポートするのに十分に大きいことが可能である。その理由は、それが、放出されるエネルギーよりも短い波長を有することが可能であるからである。より長い波長において、エミッションは、導波路の中の伝播モードに関するカットオフ波長を超えることが可能である。いくつかの実施形態によれば、サンプル・ウェル2-211は、励起エネルギー3-245に関するSCNからなることが可能であり、励起エネルギーの最大強度が、サンプル・ウェル2-211へのエントランスにおいて、サンプル・ウェルの励起領域3-215に局所化されるようになっている(たとえば、
図3-2に示されているように、層3-235と層2-221との間の界面の近くに局所化される)。そのような励起エネルギーの局所化は、サンプルからのエミッション・エネルギー密度を増加することが可能であり、励起エネルギーをエントランス・アパーチャ3-212の近傍に閉じ込めることによって、観察されるエミッションを、単一のサンプル(たとえば、単一分子)に限定することが可能である。
【0133】
SCNからなるサンプル・ウェルのエントランスの近くの励起局所化の例が、
図3-3に示されている。数値シミュレーションが、SCNとして形成されたサンプル・ウェル2-211の中及び近くの励起エネルギーの強度を決定するために実施された。結果は、励起放射線の強度が、サンプル・ウェルのエントランス・アパーチャにおいて、入射エネルギーの約70%であり、サンプル・ウェルの中の約100nm以内で、入射強度の約20%まで降下するということを示している。このシミュレーションに関して、励起エネルギーの特性波長は、633nmであり、サンプル・ウェル2-211の直径は、140nmであった。サンプル・ウェル2-211は、ゴールド・メタルの層の中に形成されていた。グラフの中のそれぞれの水平方向の区分は、50nmである。グラフによって示されているように、サンプル・ウェルの中に受け取られる励起エネルギーの半分より多くが、サンプル・ウェル2-211のエントランス・アパーチャ3-212の中の約50nmに局所化される。
【0134】
サンプル・ウェル2-211において局所化される励起エネルギーの強度を改善するために、他のサンプル・ウェル構造体が、本発明者によって開発及び検討された。
図3-4は、サンプル・ウェル2-211の励起端部においてキャビティー又はディボット3-216を含む、サンプル・ウェルの実施形態を示している。
図3-3のシミュレーション結果の中に見ることができるように、より高い励起強度の領域が、サンプル・ウェルのエントランス・アパーチャ2-212の直前に存在している。いくつかの実施形態によれば、サンプル・ウェル2-211にディボット3-216を追加することは、サンプルがより高い励起強度の領域の中へ移動することを可能にする。いくつかの実施形態では、ディボットの形状及び構造は、(たとえば、層3-235とサンプル・ウェルの中にあるその試料の流体との間の屈折率の差に起因して)局所的な励起場を変更し、ディボットの中の励起エネルギーの強度をさらに増加させることが可能である。
【0135】
ディボットは、任意の適切な形状を有することが可能である。ディボットは、たとえば、丸形、楕円形、正方形、長方形、多角形など、サンプル・ウェルの横断方向の形状に実質的に均等な横断方向の形状を有することが可能である。いくつかの実施形態では、ディボットの側壁部は、サンプル・ウェルの壁部と同様に、実質的に真っ直ぐで垂直方向であることが可能である。いくつかの実施形態では、ディボットの側壁部は、図面に示されているように、傾斜及び/又は湾曲していることが可能である。ディボットの横断方向の寸法は、いくつかの実施形態では、サンプル・ウェルの横断方向の寸法とおおよそ同じサイズであることが可能であり、いくつかの実施形態では、サンプル・ウェルの横断方向の寸法よりも小さいことが可能であり、又は、いくつかの実施形態では、サンプル・ウェルの横断方向の寸法よりも大きいことが可能である。ディボット3-216は、サンプル・ウェルの金属層2-221を越えて、おおよそ10nm~おおよそ200nmで延在することが可能である。いくつかの実施形態では、ディボットは、サンプル・ウェルの金属層2-221を越えて、おおよそ50nm~おおよそ150nmで延在することが可能である。ディボットを形成することによって、励起領域3-215は、
図3-4に示されているように、サンプル・ウェルの金属層221の外側に延在することが可能である。
【0136】
図3-5は、ディボットを含有するサンプル・ウェルに関する励起領域の励起エネルギーの改善を示している(左のシミュレーション・イメージに示されている)。比較のために、励起場が、ディボットなしのサンプル・ウェルに関してもシミュレートされ、それは、右側に示されている。場の大きさは、これらのプロットの中のカラー・レンダリングから変換されており、ディボットのベースにおける暗い領域は、サンプル・ウェルの中の光領域よりも高い強度を表している。サンプル・ウェルの上方の暗い領域は、最低の強度を表している。見ることができるように、ディボットは、サンプル3-101がより高い励起強度の領域へ移動することを可能にし、また、ディボットは、サンプル・ウェルの励起端部において、最高強度の領域の局所化を増加させる。高い強度の領域は、ディボットなしのサンプル・ウェルに関して、より多く分散されるということに留意されたい。いくつかの実施形態では、ディボット3-216は、励起領域において、2倍以上の励起エネルギーの増加を提供する。いくつかの実施形態では、2倍以上の増加は、ディボットの形状及び深さに応じて得られ得る。これらのシミュレーションでは、サンプル・ウェルは、100mの厚さの層からなり、50nmの深さのディボットを備え、635nm波長における励起エネルギーを備えている。
【0137】
図3-6は、サンプル・ウェル2-211の別の実施形態を示しており、そこでは、ディボットを含んでなるサンプル・ウェルが、基板の表面における突出部3-615の上方に形成されている。結果として生じるサンプル・ウェルに関する構造体は、
図3-2に示されているサンプル・ウェルと比較して、サンプルにおける励起エネルギーを2倍以上増加させることが可能であり、サンプル・ウェルから装置2-120のセンサーに指向するようにエミッションを向けることが可能である。いくつかの実施形態によれば、突出部3-615は、材料の第1の層3-610の中でパターニングされている。突出部は、いくつかの実施形態では、円形台座又は矩形の断面を有したリッジとして形成され得、材料の第2の層3-620が、第1の層及び突出部の上方に堆積され得る。突出部において、第2の層は、示されているように、円筒形の部分3-625を近似する突出部の上方の形状を形成することが可能である。いくつかの実施形態では、導電層3-230(たとえば、反射金属)が、第2の層3-620の上方に堆積され、突出部の上方の導電層の中にサンプル・ウェル3-210を形成するようにパターニングされ得る。次いで、ディボット3-216が、第2の層の中へエッチングされ得る。ディボットは、導電層3-230の下方に、約50nm~約150nmにて延在することが可能である。いくつかの実施形態によれば、第1の層3-610及び第2の層3-620は、光学的に透明であることが可能であり、同じ材料から形成されてもよいし、又は形成されなくてもよい。いくつかの実施形態では、第1の層3-610は、酸化物(たとえば、SiO
2)又は窒化物(たとえば、Si
3N
4)から形成され得、第2の層3-620は、酸化物又は窒化物から形成され得る。
【0138】
いくつかの実施形態によれば、突出部3-625の上方の導電層3-230は、おおよそ球形の反射体3-630として形状決めされている。球形の部分の形状は、突出部高さh、突出部の直径又は横断方向の寸法w、及び、第2の層3-620の厚さtの選択によって制御され得る。励起領域の場所及びサンプルの位置は、ディボット深さdの選択によって、球形の反射体の光学的な焦点に対して調節され得る。円筒形の反射体3-630は、励起領域3-215に励起エネルギーを集中させることが可能であり、また、サンプルから放出されたエネルギーを収集し、センサー3-260に向けて放射線を反射及び集中させることが可能であるということが理解され得る。
【0139】
上述のように、サンプル・ウェルは、任意の適切な形状で形成され得、円筒形状だけに限定されない。いくつかの実施形態では、サンプル・ウェルは、円錐、4面体、5面体などであることが可能である。
図3-7A~
図3-7Fは、いくつかの実施形態において使用され得るいくつかの例示的なサンプル・ウェル形状及び構造を図示している。サンプル・ウェル2-211は、いくつかの実施形態によれば、励起エネルギーに関する第2のアパーチャ2-218よりも大きい第1のアパーチャ2-212を有するように形成され得る。サンプル・ウェルの側壁部は、テーパが付けられ、又は、湾曲していることが可能である。サンプル・ウェルをこのように形成することは、より多くの励起エネルギーが励起領域に入ることを許すことが可能であり、試料に向けて進む励起エネルギーをさらに目に見えて減衰させることが可能である。追加的に、サンプルによって放射されるエミッションは、より大きいアパーチャを備えるサンプル・ウェルの端部に向けて、その方向への好ましいエネルギー伝達に起因して、優先的に放射することが可能である。
【0140】
いくつかの実施形態では、ディボット3-216は、
図3-7Bに示されているように、サンプル・ウェルのベースよりも小さい横断方向の寸法を有することが可能である。より小さいディボットは、ディボットをエッチングする前に、サンプル・ウェルの側壁部を犠牲層によってコーティングし、その後に、犠牲層を除去することによって形成され得る。より小さいディボットは、サンプル・ウェルの導電性壁部からより等距離にある領域の中にサンプルを保持するように形成され得る。サンプル・ウェルの壁部から等距離にサンプルを保持することは、放射しているサンプルへの、サンプル・ウェル壁部の望ましくない効果、たとえば、エミッションの消光、及び/又は、放射線寿命時間の変更を低減させることが可能である。
【0141】
図3-7C及び
図3-7Dは、サンプル・ウェルの別の実施形態を示している。この実施形態によれば、サンプル・ウェル2-211は、励起エネルギー増強構造体3-711と、励起エネルギー増強構造体に隣接して形成された接着性物質3-211とからなることが可能である。エネルギー増強構造体3-711は、いくつかの実施形態によれば、光学的に透明な層3-235の上の導電性材料の中に形成された表面プラズモン又はナノ・アンテナ構造体からなることが可能である。
図3-7Cは、サンプル・ウェル2-211及び直ぐ近くの構造体の立面図を示しており、
図3-7Dは、平面図を示している。励起エネルギー増強構造体3-711は、小さい局所化された領域の中に励起エネルギーを増強するように、形状決め及び配置され得る。たとえば、構造体は、サンプル・ウェルにおいて、鋭角を有する先の尖った導体を含むことが可能であり、それは、励起領域3-215の中の励起エネルギーの強度を増加させる。示されている例では、励起エネルギー増強構造体3-711は、ちょうネクタイの形態になっている。領域の中へ拡散するサンプル3-101は、接着性物質3-211によって、一時的に又は永久的に保持され、また、装置2-120内に位置付けされている励起供給源2-250から送達され得る励起エネルギーによって励起され得る。いくつかの実施形態によれば、励起エネルギーは、エネルギー増強構造体3-711の中の表面プラズモン電流を駆動することが可能である。結果として生じる表面プラズモン電流は、構造体3-711の鋭く尖った先において高い電界を作り出すことが可能であり、これらの高い電界は、励起領域3-215の中に保持されているサンプルを励起することが可能である。いくつかの実施形態では、
図3-7Cに示されているサンプル・ウェル2-211は、ディボット3-216を含むことが可能である。
【0142】
サンプル・ウェルの別の実施形態が、
図3-7Eに示されており、サンプル・ウェル2-211の内部壁部に沿って形成された励起エネルギー増強構造体3-720を示している。励起エネルギー増強構造体3-720は、金属又は導体からなることが可能であり、角度付き(又は、シャドウ)の指向性堆積を使用して形成され得、そこでは、サンプル・ウェルがその上に形成される基板が、堆積の間に回転させられる。堆積の間に、サンプル・ウェル2-211のベースは、ウェルの上側壁部によって覆い隠されており、堆積される材料がベースに蓄積しないようになっている。結果として生じる構造体3-720は、構造体の底部において鋭角3-722を形成することが可能であり、導体のこの鋭角は、サンプル・ウェルの中の励起エネルギーを増強することが可能である。
【0143】
図3-7Eに示されている実施形態では、サンプル・ウェルがその中に形成されている材料3-232は、導体である必要はなく、誘電体材料などの任意の適切な材料であることが可能である。いくつかの実施形態によれば、サンプル・ウェル2-211及び励起エネルギー増強構造体3-720は、誘電体層3-235の中へエッチングされた有底のホールに形成され得、別々の層3-232が堆積させられる必要はない。
【0144】
いくつかの実施形態では、シャドウ・エバポレーションが、その後に、
図3-7Eに示されている構造体の上に行われ、サンプル・ウェルのベースにおいて、金属製の又は導電性のエネルギー増強構造体、たとえば、点線によって示されているように、台形の構造体又は先の尖った円錐を堆積させることが可能である。エネルギー増強構造体は、表面プラズモンを介して、ウェルの中に励起エネルギーを増強することが可能である。シャドウ・エバポレーションの後に、平坦化プロセス(たとえば、化学的で機械的なポリッシング工程又はプラズマ・エッチング・プロセス)が行われ、サンプル・ウェルの上部において、エネルギー増強構造体をウェルの中に残しながら、堆積された材料を除去し、又はエッチ・バックすることが可能である。
【0145】
いくつかの実施形態では、サンプル・ウェル2-211は、単一の金属層よりも多くから形成され得る。
図3-7Fは、多層構造体の中に形成されたサンプル・ウェルを図示しており、異なる材料が、異なる層に関して使用され得る。いくつかの実施形態によれば、サンプル・ウェル2-211は、第1の層3-232(それは、半導体材料又は導電性材料であることが可能である)、第2の層3-234(それは、絶縁体又は誘電体であることが可能である)、及び第3の層2-221(それは、導体又は半導体であることが可能である)の中に形成され得る。いくつかの実施形態では、縮退的にドープされた半導体又はグラフェンが、サンプル・ウェルの層に関して使用され得る。いくつかの実施形態では、サンプル・ウェルは、2つの層の中に使用され得、他の実施形態では、サンプル・ウェルは、4つ以上の層の中に形成され得る。いくつかの実施形態では、サンプル・ウェルを形成するために使用される多層材料は、サンプル・ウェルのベースにおいて表面プラズモン発生を増加させ、又は、ウェルの上部において、表面プラズモン放射線を抑制するように選択され得る。いくつかの実施形態では、サンプル・ウェルを形成するために使用される多層材料は、サンプル・ウェル及び多層構造体を越えてバルク試料の中へ伝播する励起エネルギーを抑制するように選択され得る。
【0146】
いくつかの実施形態では、サンプル・ウェルを形成するために使用される多層材料は、サンプル・ウェルへ入射する励起エネルギーによって発生させられ得る界面エキシトンを増加又は抑制するように選択され得る。たとえば、バイエキシトン及びトリエキシトンなどのような、マルチ・エキシトンが、サンプル・ウェルに隣接する2つの異なる半導体層の間の界面において発生させられ得る。サンプル・ウェルは、金属層及び第1の半導体層の両方の中に形成され得、第1の半導体層と第2の半導体層との間の界面が、サンプル・ウェルの励起領域3-215にあるようになっている。界面エキシトンは、単一の半導体層の体積の中のエキシトンよりも長い寿命時間を有することが可能であり、エキシトンがFRET又はDETを介してサンプル又はタグを励起することとなる可能性を増加させる。いくつかの実施形態では、マルチ・エキシトンが励起され得る少なくとも1つの量子ドットが、(たとえば、リンキング分子によって)サンプル・ウェルの底部に取り付けられ得る。また、量子ドットにおいて励起されるエキシトンは、単一の半導体層の体積の中のエキシトンよりも長い寿命時間を有することが可能である。界面エキシトン、又は、量子ドットにおいて発生させられるエキシトンは、いくつかの実施形態によれば、FRET又はDETのレートを増加させることが可能である。
【0147】
さまざまな材料が、先述の実施形態において説明されているサンプル・ウェルを形成するために使用され得る。いくつかの実施形態によれば、サンプル・ウェル2-211は、材料3-230の少なくとも1つの層から形成され得、材料2-221は、導電性材料、半導体、及び絶縁体のうちのいずれか1つ又はそれらの組み合わせからなることが可能である。いくつかの実施形態では、サンプル・ウェル2-211は、高度に導電性の金属製の層、たとえば、金、銀、アルミニウム、銅からなる。いくつかの実施形態では、層2-221は、金、銀、アルミニウム、銅、チタン、窒化チタン、及びクロムのうちのいずれか1つ又はそれらの組み合わせを含む多層スタックからなることが可能である。いくつかの実施形態では、他の金属は、追加的に又は代替的に使用され得る。いくつかの実施形態によれば、サンプル・ウェルは、AlCu又はAlSiなどのような、合金からなることが可能である。
【0148】
いくつかの実施形態では、異なる金属又は合金の複数の層が、サンプル・ウェルを形成するために使用され得る。いくつかの実施形態では、サンプル・ウェル2-211がその中に形成される材料は、金属及び非金属の交互層、たとえば、金属及び1つ又は複数の誘電体の交互層からなることが可能である。いくつかの実施形態では、非金属は、ポリビニルホスホン酸又はポリエチレングリコール(PEG)-チオールなどのような、ポリマーを含むことが可能である。
【0149】
サンプル・ウェルがその中に形成される層2-221は、いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの光学的に透明な層3-235の上に、又は、少なくとも1つの光学的に透明な層3-235に隣接して堆積され得、(たとえば、可視光又は近赤外の形態の)励起エネルギー及び(たとえば、可視光又は近赤外の形態の)エミッション・エネルギーが、ほとんど減衰なしに、サンプル・ウェル2-211へ、及び、サンプル・ウェル3-210から進むことが可能であるようになっている。たとえば、励起供給源2-250からの励起エネルギーは、少なくとも1つの光学的に透明な層2-235を通過し、励起領域3-215に至ることが可能であり、サンプルからのエミッションは、1つ又は複数の同じ層を通過し、センサー2-250に至ることが可能である。
【0150】
いくつかの実施形態では、サンプル・ウェル2-211の少なくとも1つの表面が、
図3-8に示されているように、サンプル・ウェルの中のサンプルの作用に影響を及ぼす材料の1つ又は複数の層3-211、3-280によってコーティングされ得る。たとえば、薄い誘電体層3-280(たとえば、アルミナ、窒化チタン、又はシリカ)が、サンプル・ウェルの側壁部の上に、不動態化コーティングとして堆積され得る。そのようなコーティングは、励起領域3-215の外側のサンプルのサンプル付着を低減させるように、又は、サンプルとサンプル・ウェル2-211がその中に形成されている材料2-221との間の相互作用を低減させるように実施され得る。サンプル・ウェルの中の不動態化コーティングの厚さは、いくつかの実施形態によれば、約5nmから約50nmの間であることが可能である。
【0151】
いくつかの実施形態では、コーティング層3-280のための材料は、その材料に関する化学剤の親和性に基づいて選択され得、層3-280は、化学的な又は生物学的な物質によって処置され、層へのサンプル種の付着をさらに阻止し得るようになっている。たとえば、コーティング層3-280は、アルミナからなることが可能であり、それは、いくつかの実施形態によれば、ポリホスホネート不動態化層によって不動態化され得る。追加的な又は代替的なコーティング剤及び不動態化剤が、いくつかの実施形態では使用され得る。
【0152】
いくつかの実施形態によれば、少なくともサンプル・ウェル2-211の底部表面及び/又はディボット3-216は、化学的な又は生物学的な接着性物質3-211(たとえば、ビオチン)によって処置され、サンプルの保持を推進させることが可能である。サンプルは、たとえば、少なくとも約0.5ミリ秒から約50ミリ秒の間の時間の期間にわたって、永久的に又は一時的に保持され得る。別の実施形態では、接着性物質は、より長い期間にわたるサンプル3-101の一時的な保持を推進することが可能である。任意の適切な接着性物質は、さまざまな実施形態において使用され得、ビオチンに限定されない。
【0153】
いくつかの実施形態によれば、サンプル・ウェルに隣接する材料3-235の層は、その層の材料に関する接着性物質の親和性に基づいて選択され得る。いくつかの実施形態では、サンプル・ウェルの側壁部の不動態化は、側壁部の上の接着性物質のコーティングを阻止することが可能であり、接着性物質3-211がサンプル・ウェルのベースに優先的に堆積するようになっている。いくつかの実施形態では、接着性物質コーティングは、サンプル・ウェルの側壁部の一部分の上に延在することが可能である。いくつかの実施形態では、接着性物質は、異方性の物理的な堆積プロセス(たとえば、エバポレーション、スパッタリング)によって堆積され得、接着性物質がサンプル・ウェルのベース又はディボットに蓄積するように、及び、サンプル・ウェルの側壁部の上に目に見えて形成しないようになっている。
【0154】
さまざまな製作技法が、アッセイ・チップのためのサンプル・ウェル2-211を製作するために用いられ得る。いくつかの例示的なプロセスが、下記に説明されているが、しかし、本発明は、これらの例だけに限定されない。
【0155】
サンプル・ウェル2-211は、任意の適切なマイクロ・ファブリケーション又はナノ・ファブリケーション・プロセスによって形成され得、それは、それに限定されないが、フォトリソグラフィー、深紫外線フォトリソグラフィー、液浸フォトリソグラフィー、近接場光学コンタクト・フォトリソグラフィー、EUVリソグラフィー、X線リソグラフィー、ナノ・インプリント・リソグラフィー、インターフェロメトリック・リソグラフィー、ステップ・アンド・フラッシュ・リソグラフィー、ダイレクト・ライト・電子ビーム・リソグラフィー、イオン・ビーム・リソグラフィー、イオン・ビーム・ミリング、リフト・オフ・プロセッシング、反応性イオン・エッチング、選択的エピタキシー、分子自己アセンブリ、有機合成などに関連付けられているプロセッシング工程を含むことが可能である。いくつかの実施形態によれば、サンプル・ウェル2-211は、フォトリソグラフィー及びリフト・オフ・プロセッシングを使用して形成され得る。サンプル・ウェルのリフト・オフ・プロセッシングに関連付けられている例示的な製作工程が、
図3-9に示されている。ピクセルにおいて、単一のサンプル・ウェル又は構造体だけの製作が典型的に図面に示されているが、多数のサンプル・ウェル又は構造体が、(たとえば、それぞれのピクセルにおいて)並行して基板の上に製作され得るということが理解されることとなる。
【0156】
いくつかの実施形態によれば、基板の上の層3-235(たとえば、酸化物層)は、
図3-9Aに示されているように、反射防止(ARC)層3-910及びフォトレジスト3-920によって被覆され得る。フォトレジストは、フォトリソグラフィー及びレジストの現像を使用して、露出及びパターニングされ得る。レジストは、(レジスト・タイプに応じて)露出された部分又は露出されていない部分を除去するように現像され、ピラー3-922を残すことが可能であり、ピラー3-922は、
図3-9Bに示されているように、サンプル・ウェルに関する所望の直径におおよそ等しい直径を有している。ピラーの高さは、サンプル・ウェルの所望の深さよりも大きいことが可能である。
【0157】
ピラー3-922のパターンは、たとえば
図3-9Cに示されているように、異方性の反応性イオン・エッチング(RIE)を介してARC層3-910に伝達され得る。次いで、領域は、サンプル・ウェルを形成するために望まれる少なくとも1つの材料2-221、たとえば、導体又は金属によってコーティングされ得る。堆積された1つ又は複数の材料の一部分は、
図3-9Dに示されているように、ピラー3-922の上方にキャップ3-232を形成している。次いで、レジスト及びARCは、選択的な除去プロセスを使用して(たとえば、少なくともレジストを溶解させ、キャップを解放又は「リフト・オフ」する、撹拌ありの又はなしの化学浴を使用して)、基板から剥がされ得る。ARCが残っている場合には、それは、選択的エッチを使用して基板から剥がされ、
図3-9Eに示されているように、サンプル・ウェル3-210を残すことが可能である。いくつかの実施形態によれば、サンプル・ウェルの側壁部3-214は、少なくとも1つの材料2-221の堆積の性質に起因して、傾斜していることが可能である。
【0158】
本明細書で使用されているように、「選択的エッチ」は、除去されることが意図されない他の材料をエッチャントがエッチングするよりも高いレート(たとえば、少なくとも2倍のレート)で除去又はエッチングされることが望まれる1つの材料を、エッチャントが選択的にエッチングする、エッチング・プロセスを意味している。
【0159】
レジスト及びARCは、典型的にポリマー・ベースのものであるので、それらは、軟質の材料であると考えられ、それは、高いアスペクト比(たとえば、高さ-対-幅に関して約2:1よりも大きいアスペクト比)を有するサンプル・ウェルを形成するのに適切でないことがある。より高いアスペクト比を有するサンプル・ウェルのために、硬質の材料が、リフト・オフ・プロセスの中に含まれ得る。たとえば、ARC及びフォトレジストを堆積させる前に、硬質の層(たとえば、無機材料)が堆積され得る。いくつかの実施形態では、チタン又は窒化ケイ素の層が堆積され得る。硬質の材料の層は、サンプル・ウェルがその中に形成される1つ又は複数の材料2-221の上方に優先的なエッチングを示すべきである。フォトレジストがパターニングされた後で、ピラーのパターンが、ARCの中へ伝達され得、下層にある硬質の材料3-930が、
図3-9Fに示されているような構造体を生み出す。次いで、フォトレジスト及びARCが剥がされ得、材料2-221が堆積され、リフト・オフ工程が行われ、サンプル・ウェルを形成する。
【0160】
いくつかの実施形態によれば、リフト・オフ・プロセスは、
図3-7C及び
図3-7Dに示されているように、エネルギー増強構造体3-711からなるサンプル・ウェルを形成するために使用され得る。
【0161】
サンプル・ウェルを形成するための代替的なプロセスが、
図3-10に示されている。このプロセスでは、サンプル・ウェルは、少なくとも1つの材料2-211の中へ直接的にエッチングされ得る。たとえば、サンプル・ウェルがその中に形成されることとなる少なくとも1つの材料2-211が、基板3-325の上に堆積され得る。層は、
図3-10Aに図示されているように、ARC層3-910及びフォトレジスト3-920によって被覆され得る。フォトレジストは、
図3-10Bに示されているように、サンプル・ウェルの所望の直径におおよそ等しい直径を有するホールを形成するようにパターニングされ得る。ホールのパターンは、たとえば
図3-10Cに示されているように、異方性の反応性イオン・エッチを使用して、層3-230を通してARCに伝達され得る。レジスト及びARCは、剥がされ、
図3-10Dに示されているようなサンプル・ウェルを生み出すことが可能である。いくつかの実施形態によれば、エッチングによって材料3-230の層の中へ形成されるサンプル・ウェルの側壁部は、リフト・オフ・プロセスから結果として生じる側壁部よりも垂直になっていることが可能である。
【0162】
いくつかの実施形態では、フォトレジスト及びARCは、材料2-221の上にハード・マスク(たとえば、窒化ケイ素又は酸化物層。図示せず)をパターニングするために使用され得る。次いで、パターニングされたホールは、ハード・マスクに伝達され得、ハード・マスクは、次いで、材料2-221の層の中へパターンを伝達するために使用される。ハード・マスクは、材料2-221の層の中へのより大きいエッチング深さを可能にすることができ、より高いアスペクト比のサンプル・ウェルを形成するようになっている。
【0163】
サンプル・ウェルがその中に形成される材料2-211のスタックを形成するために、異なる材料の複数の層が使用されるときに、上記に説明されているリフト・オフ・プロセス及びダイレクト・エッチング製作技法が、サンプル・ウェルを形成するために使用され得るということが認識されることとなる。例示的なスタックが、
図2-11に示されている。いくつかの実施形態によれば、サンプル・ウェルの励起領域への励起エネルギーのカップリングを改善するために、又は、バルク試料の中への励起エネルギーの伝送又は再放射を低減させるために、材料のスタックがサンプル・ウェルを形成するために使用され得る。たとえば、吸収層3-942が、第1の層3-940の上に堆積させられ得る。第1の層は、金属又は金属合金からなることが可能であり、吸収層は、表面プラズモンを阻止する材料、たとえば、アモルファス・シリコン、TaN、TiN、又はCrからなることが可能である。また、いくつかの実施形態では、表面層3-944は、サンプル・ウェルを取り囲む表面を不動態化させる(たとえば、分子の付着を阻止する)ために堆積され得る。
【0164】
ディボット3-216を含んでなるサンプル・ウェルの形成は、任意の適切な様式で行われ得る。いくつかの実施形態では、ディボットは、サンプル・ウェルに隣接して、エッチングによって、さらに、隣接する層3-235、及び/又は任意の1つ又は複数の介在層の中へ形成され得る。たとえば、材料2-221の層の中にサンプル・ウェルを形成した後に、その層2-221は、
図3-12に示されているように、ディボットをパターニングするためのエッチ・マスクとして使用され得る。たとえば、基板は、選択的な異方性の反応性イオン・エッチを受けることが可能であり、ディボット3-216が、隣接する層3-235の中へエッチングされ得るようになっている。たとえば、材料2-221が金属製であり、隣接する層3-235が酸化ケイ素である実施形態では、CHF
3又はCF
4からなるフィード・ガスを有する反応性イオン・プラズマ・エッチが使用され、サンプル・ウェルの下方の露出された酸化ケイ素を優先的に除去し、ディボット3-216を形成することが可能である。本明細書で使用されているように、「酸化ケイ素」は、一般的に、SiO
xを表しており、たとえば、二酸化ケイ素を含むことが可能である。
【0165】
いくつかの実施形態では、エッチの間のプラズマの中の条件(たとえば、基板に対するバイアス及び圧力)は、ディボット3-216のエッチ・プロファイルを決定するように制御され得る。たとえば、低い圧力(たとえば、約100mTorr未満)及び高いDCバイアス(たとえば、約20Vより大きい)において、エッチングは、高度に異方性であり、図面に示されているように、実質的に真っ直ぐで垂直になっているディボットの側壁部を形成することが可能である。より高い圧力及びより低いバイアスにおいて、エッチングは、より等方性であり、テーパが付けられ及び/又は湾曲しているディボットの側壁部を生み出すことが可能である。いくつかの実施形態では、ウェット・エッチが、ディボットを形成するために使用され得、それは、実質的に等方性であり、サンプル・ウェルの側壁部まで、又は、サンプル・ウェルの側壁部を越えて、材料2-221の下に横方向に延在し得るおおよそ球形のディボットを形成することが可能である。
【0166】
図3-13Aから
図3-13Cは、サンプル・ウェル2-211よりも小さい横断方向の寸法を有するディボット3-216(たとえば、
図3-7Bに示されているもののようなディボット)を形成するために使用され得るプロセス工程を示している。いくつかの実施形態では、サンプル・ウェルを形成した後に、コンフォーマルな犠牲層3-960が、サンプル・ウェルを含む領域の上に堆積され得る。いくつかの実施形態によれば、犠牲層3-960は、たとえば、化学蒸着(CVD)、プラズマ強化CVD、又は原子層堆積(ALD)など、蒸着プロセスによって堆積させられ得る。次いで、犠牲層は、犠牲層3-960に対して選択的な第1の異方性エッチを使用してエッチ・バックされ、水平方向の表面から層を除去し、
図3-13Bに示されているように、サンプル・ウェルの壁部の上に側壁部コーティング3-962を残すことが可能である。エッチ・バックは、選択的であり、いくつかの実施形態では、材料2-221及び隣接する層3-235の上で止まることが可能であり、又は、いくつかの実施形態では、タイミングを選んで行われる非選択的なエッチであることが可能である。
【0167】
隣接する層3-235に対して選択的な第2の異方性エッチが、
図3-13Cに示されているように、隣接する層の中へディボット3-216をエッチングするために実行され得る。次いで、犠牲側壁部コーティング3-962が、随意的に、選択的なウェット・エッチ又はドライ・エッチによって除去され得る。側壁部コーティングの除去は、ディボット3-216よりも大きい横断方向の寸法を有するようにサンプル・ウェルを開口する。
【0168】
いくつかの実施形態によれば、犠牲層3-960は、隣接する層3-235と同じ材料からなることが可能である。そのような実施形態では、第2のエッチは、ディボットが隣接する層3-235の中へエッチングされるときに、側壁部コーティング3-962のうちの少なくともいくつかを除去することが可能である。側壁部コーティングのこのエッチ・バックは、いくつかの実施形態では、テーパが付けられているディボットの側壁部を形成することが可能である。
【0169】
いくつかの実施形態では、犠牲層3-960は、サンプル・ウェルの側壁部を不動態化する(たとえば、サンプル・ウェルの側壁部におけるサンプルの付着を低減させる)ために使用される材料から形成され得、又は、その材料の層を含むことが可能である。次いで、層3-960のうちの少なくともいくつかは、ディボットの形成の後に、サンプル・ウェルの壁部の上に残され得る。
【0170】
いくつかの実施形態によれば、側壁部コーティング3-962の形成は、ディボットの形成の後に起こる。そのような実施形態では、層3-960が、ディボットの側壁部をコーティングしている。そのようなプロセスは、ディボットの側壁部を不動態化するために、及び、ディボットの中心にサンプルを局所化するために使用され得る。
【0171】
サンプル・ウェル2-211のベース、及び、不動態化層3-280に、接着性物質3-211を堆積させることに関連付けられるプロセス工程が、
図3-14に示されている。いくつかの実施形態によれば、サンプル・ウェルは、サンプル・ウェルの壁部の上に第1の不動態化層3-280を含むことが可能である。第1の不動態化層は、たとえば、
図3-13B又は
図3-8に関連して上記に説明されているように形成され得る。いくつかの実施形態では、第1の不動態化層3-280は、任意の適切な堆積プロセス及びエッチ・バックによって形成され得る。いくつかの実施形態では、第1の不動態化層は、サンプル・ウェルがその中に形成される材料3-230を酸化させることによって形成され得る。たとえば、サンプル・ウェルは、アルミニウムから形成され得、アルミニウムは酸化させられ、サンプル・ウェルの側壁部の上にアルミナのコーティングを生成させることが可能である。
【0172】
接着性物質3-980又は接着性物質前駆体(たとえば、接着性物質に優先的に結合する材料)は、
図3-14Aに示されているように、異方性の物理的な堆積プロセス、たとえば、蒸着を使用して、基板の上に堆積され得る。接着性物質又は接着性物質前駆体は、
図3-14Bに示されているように、サンプル・ウェルのベースに接着性物質層3-211を形成することが可能であり、サンプル・ウェルがその中に形成される材料2-221の上側表面をコーティングすることが可能である。
図3-14Cに示されている、その後の角度付きの指向性堆積(シャドウ堆積又はシャドウ・エバポレーション・プロセスと称される場合もある)が、接着性物質層3-211を被覆することなく、材料2-221の上側表面の上に第2の不動態化層3-280を堆積させるために使用され得る。シャドウ堆積プロセスの間に、基板が、基板に対して垂直の軸線の周りに回転させられ得、第2の不動態化層2-280が、サンプル・ウェルの上側リムの周りにより均一に堆積するようになっている。結果として生じる構造体が、いくつかの実施形態によれば、
図3-14Dに示されている。第2の不動態化層を堆積させることの代替として、平坦化エッチ(たとえば、CMP工程)が、材料2-221の上側表面から接着性物質を除去するために使用され得る。
【0173】
いくつかの実施形態によれば、接着性物質層3-211は、
図3-15に示されているように、テーパが付けられているサンプル・ウェルのベースにおいて、中央に堆積させられ得る。たとえば、接着性物質又は接着性物質前駆体は、
図3-14Aに示されているように、上記に説明されているように形成された、テーパが付けられているサンプル・ウェルの中に、一方向に堆積させられ得る。サンプル・ウェルの壁部は、接着性物質層3-211の堆積の前又は後の酸化プロセスによって不動態化され得る。材料2-221の表面の上に残っている接着性物質又は前駆体は、
図3-14Dに関連して説明されているように不動態化され得る。いくつかの実施形態では、材料2-221の上側表面の上の接着性物質は、化学的で機械的なポリッシング工程によって除去され得る。サンプル・ウェルのベースにおいて、接着性物質層又は接着性物質層前駆体を中央に形成することによって、サンプルからのエミッションに対する有害な効果(たとえば、サンプル壁部からのサンプル放射線の抑制又は消光、サンプル・ウェルの周りに形成されたエネルギー・カップリング構造体に対してサンプルが中央に位置付けされていないことに起因する、サンプルからの好ましくない放射線分布、サンプルに関する発光寿命時間に対する悪影響)が低減され得る。
【0174】
いくつかの実施形態では、サンプル・ウェル及びディボットを形成するために使用されるリフト・オフ・パターニング、エッチング、及び堆積プロセスは、センサ・チップの上に集積されたCMOS回路を形成するために使用されるCMOSプロセスと互換性があることが可能である。したがって、センサは、従来のCMOS設備及び製作技法を使用して製作され得るが、いくつかの実施形態では、特注の又は専門の製作設備も使用され得る。
【0175】
上記に説明されているプロセス工程の変形例が、サンプル・ウェルの代替的な実施形態を形成するために使用され得る。たとえば、
図3-7A又は
図3-7Bに示されているものなどのような、テーパが付けられているサンプル・ウェルが、
図3-14Cに示されている角度付きの堆積プロセスを使用して形成され得る。
図3-7Bのサンプル・ウェルに関して、堆積の角度は、堆積プロセスの間に変化させられ得る。そのような実施形態に関して、実質的に真っ直ぐで垂直になっている側壁部を有するサンプル・ウェルが最初に形成され、次いで、追加的な材料2-221が、角度付きの堆積によって堆積され、サンプル・ウェルの側壁部にテーパを付けることが可能である。
【0176】
B.励起エネルギーのサンプル・ウェルへのカップリング
図2-1,2-3に示すように、励起源2-250からの励起エネルギー2-251は、装置2-120の部品及びアッセイ・チップ2-110の部品を用いてサンプル・ウェル2-211に導かれる。このセクションでは、励起エネルギー2-251のサンプル・ウェル2-211へのカップリングを促進し得るアッセイ・チップ2-110の部品について記載する。
【0177】
励起供給源からサンプル・ウェルへのエネルギーのカップリングは、サンプル・ウェルの中に、及び/又は、サンプル・ウェルに隣接して、励起カップリング構造体を形成することによって改善され、又は、影響を及ぼされ得る。励起カップリング構造体は、いくつかの実施形態では、サンプル・ウェルの周りに製作されるマイクロ・スケール構造体もしくはナノ・スケール構造体からなることが可能であり、又は、いくつかの実施形態では、サンプル・ウェルにおいて形成される構造体もしくは粒子からなることが可能である。励起カップリング構造体は、いくつかの実施形態では、サンプルの放射励起に影響を及ぼすことが可能であり、いくつかの実施形態では、サンプルの非放射励起に影響を及ぼすことが可能である。さまざまな実施形態では、放射励起カップリング構造体は、サンプル・ウェルの励起領域の中の励起エネルギーの強度を増加させることが可能である。非放射励起カップリング構造体は、励起供給源(それは、放射又は非放射であることが可能である)からサンプルへの非放射エネルギー伝達経路を改善及び/又は変更することが可能である。
【0178】
C.放射励起カップリング構造体
複数の異なるタイプの放射励起カップリング構造体が存在しており、それは、励起供給源からサンプル・ウェルの中の励起領域への励起エネルギーのカップリングに影響を及ぼすために使用され得る。いくつかの放射カップリング構造体は、導体(たとえば、金属層を含む)から形成され得、また、サンプル・ウェルの近く及び/又はサンプルウェル内の励起エネルギーに局所的に影響を及ぼす(たとえば、電磁界を局所的に変更する)表面プラズモン振動をサポートする。いくつかのケースでは、表面プラズモン構造体が、サンプル・ウェルの励起領域の中の励起エネルギーを2倍以上増強することが可能である。いくつかの放射カップリング構造体は、励起場の位相及び/又は振幅を変更し、サンプル・ウェルの中の励起エネルギーを増強することが可能である。放射励起カップリング構造体のさまざまな実施形態が、この章において説明されている。
【0179】
図4-1Aは、サンプル・ウェルの中への励起エネルギーのカップリングを増強するために使用され得る表面プラズモン構造体4-120の単に1つの例を示している。図面は、表面プラズモン構造体4-120の周りの領域の平面図を示しており、構造体の周りの電界強度の数値シミュレーションの結果を表している。図面は、サンプル・ウェル(図示せず)に極めて接近して位置付けされている鋭い頂点を有する、3つの三角形の特徴からなる表面プラズモン構造体を示している。いくつかの実施形態によれば、表面プラズモン構造体は、金属又は導体(たとえば、以下の金属又は金属合金:Al、Au、Ag、Ti、TiNのうちのいずれか1つ又はそれらの組み合わせのパターニングされた薄い膜)からなることが可能である。膜の厚さは、いくつかの実施形態では、おおよそ10nmからおおよそ100nmの間であることが可能であるが、他の実施形態では、他の厚さも使用され得る。いくつかの実施形態では、表面プラズモン構造体は、サンプル・ウェルに極めて接近して位置付けされている鋭い特徴4-110を含むことが可能である(たとえば、約100nm以内)。
【0180】
図4-1Bは、点線において取られた、
図4-1Aの表面プラズモン構造体の断面立面図を示している。シミュレーションは、表面プラズモン構造体の三角形の頂点に隣接する励起エネルギーの局所化された高強度領域4-505を示している。このシミュレーションに関して、表面プラズモン構造体4-120は、誘電体層4-135(二酸化ケイ素)の上に位置付けされていた。表面プラズモン構造体は、導波路のエバネセント場からのエネルギーをタップし、サンプル・ウェルにおける強度を増強する。
【0181】
いくつかの実施形態では、表面プラズモン構造体による励起エネルギーの増強は、深いサンプル・ウェル2-211が必要とされない程度にまで局所化され得る。たとえば、高強度領域4-505が、おおよそ100nmの直径を有するように形成され、領域の外側の強度の約80%よりも大きいピーク強度値を備える場合には、深いサンプル・ウェルは必要とされない可能性がある。高強度領域4-505の中のサンプルだけが、検出の目的のために、かなりのエミッションに寄与するであろう。
【0182】
入射電磁界が表面プラズモン構造体と相互作用するときには、表面波電流が構造体の中に発生させられる。構造体の形状は、これらの表面プラズモンの強度及び分布に影響を及ぼすことが可能である。これらの局所化された電流は、たとえば、
図4-1Bの高強度領域4-505によって示されているように、表面プラズモン構造体の直ぐ付近の入射電磁界と相互作用し、それをかなり変更し、それを増大させることが可能である。いくつかの実施形態では、表面プラズモン構造体の近くでエネルギーを放出するエミッター(たとえば、蛍光性タグ)は、構造体によって変更されるそのエミッションを有することが可能であり、エミッターからの遠視野放射線パターンを変更するようになっている。
【0183】
表面プラズモン構造体4-122の別の実施形態が、
図4-1Cの平面図に示されている。図示されているちょうネクタイ構造体は、サンプル・ウェル2-211に隣接して位置付けされている2つの三角形の金属製の構造体からなることが可能である。構造体は、たとえば、サンプル・ウェルの下方に、及び/又は、サンプル・ウェルの励起領域に隣接して、パターニングされ得る。いくつかの実施形態では、サンプル・ウェルと表面プラズモン構造体の鋭い特徴4-125との間にギャップ4-127が存在することが可能である。ギャップ4-127は、いくつかの実施形態によれば、おおよそ10nmからおおよそ200nmの間であることが可能である。いくつかの実施形態では、ギャップ4-127は、おおよそ10nmからおおよそ100nmの間であることが可能である。鋭い特徴4-125は、図面に示されているように、表面プラズモン構造体の縁部の中のポイント又は鋭い曲げからなることが可能である。鋭い特徴は、任意の適切な形状を有することが可能である。いくつかの実施形態では、鋭い特徴4-125の曲げ半径は、入射励起エネルギーに関連付けられるおおよそ5つの波長よりも小さいことが可能である。いくつかの実施形態では、鋭い特徴4-125の曲げ半径は、入射励起エネルギーに関連付けられるおおよそ2つの波長よりも小さいことが可能である。いくつかの実施形態では、鋭い特徴4-125の曲げ半径は、入射励起エネルギーによって励起される表面プラズモン波に関連付けられるおおよそ5つの波長よりも小さいことが可能である。いくつかの実施形態では、鋭い特徴4-125の曲げ半径は、入射励起エネルギーによって励起される表面プラズモン波に関連付けられるおおよそ2つの波長よりも小さいことが可能である。
【0184】
いくつかの実施形態によれば、表面プラズモン構造体4-122は、
図4-1Dの立面図に図示されているように、サンプル・ウェル2-211の中にパターニングされ得る。いくつかの実施形態では、サンプル・ウェルの中の表面プラズモン構造体は、図面に示されているように、サンプル・ウェルの側壁部の上にパターニングされている1つ又は複数のフィンガー(たとえば、金属製のフィンガー)からなることが可能である。
図4-1Eは、サンプル・ウェルの中の側壁部の上に形成された表面プラズモン構造体5-122を示すサンプル・ウェル2-211の平面図を示している。いくつかの実施形態では、これらの表面プラズモン構造体4-122の下側端部が、鋭い特徴又は曲げを形成し、そこで、電磁界が増強されることとなる。表面プラズモン構造体4-122は、サンプル・ウェルのベースまで延在してもよいし、又は延在しなくてもよい。
【0185】
いくつかの実施形態では、表面プラズモン構造体4-122は、励起エネルギー及び/又はサンプル・ウェルから放出されるエネルギーの分極に影響を及ぼすように配置され得る。たとえば、
図4-1Eに示されているようなパターンは、線形のもしくは楕円形の励起分極の好適な配向、及び/又は、サンプル・ウェルの中のエミッターからの線形のもしくは楕円形の分極の好適な配向に影響を及ぼすために使用され得る。
【0186】
表面プラズモン構造体は、
図4-1Aから
図4-1Eに示されているもの以外の形状でパターニングされ得る。たとえば、表面プラズモン構造体は、いくつかの実施形態によれば、
図4-2Aに示されているように、規則的な又は周期的な構造体としてパターニングされ得る。たとえば、表面プラズモン構造体は、サンプル・ウェル2-211がその中に形成されている材料2-221の下側表面の上の突出する特徴4-210のアレイとしてパターニングされ得る。周期的な表面プラズモン構造体は、たとえば、グレーチング、グリッド、格子、円形のグレーチング、スパイラル・グレーチング、楕円形のグレーチング、又は、任意の他の適切な構造体など、規則的なアレイで形成され得る。表面プラズモン構造体の突出部4-210同士の間に実質的に均一なスペーシングが存在することが可能である。いくつかの実施形態では、スペーシングは、おおよそ40nmからおおよそ250nmの間の任意の値を有することが可能である。いくつかの実施形態によれば、突出部は、おおよそ20nmからおおよそ100nmの間の高さhを有することが可能である。いくつかの実施形態では、スペーシングsは、不均一であること場合があり、又は、チャープされる場合がある(chirped)(より大きい半径方向の距離において減少する値を有する)。いくつかの実施形態では、表面プラズモン構造体の突出部5-210は、フレネル・ゾーン・プレートとしてパターニングされ得る。いくつかの実施形態によれば、4-210の表面プラズモン構造体は、透明な層及び/又は誘電体層3-235に隣接して形成され得る。いくつかの実施形態では、突出部4-210の間の空隙(スペーシング)は周期的であってもよく、他の実施形態では突出部4-210は非周期的であってもよい。
【0187】
いくつかの実施形態では、表面プラズモン構造体4-212は、
図4-2Bに示されているように、サンプル・ウェルがその中に形成されている材料2-221から間隔を置いて配置され得る。たとえば、表面プラズモン構造体4-212と材料4-230との間に介在誘電体層4-247が存在することが可能である。いくつかの実施形態によれば、表面プラズモン構造体4-212は、図面に示されているように、サンプル・ウェルのディボット3-216に隣接して位置付けされ得る。たとえば、表面プラズモン構造体4-212は、
図4-2Bに示されているように、ディボット3-216の側壁部に隣接して位置付けされ得る。
【0188】
図4-2Cは、同心円状の円形のグレーチングとして形成されている表面プラズモン構造体4-214を図示している。構造体4-214は、いくつかの実施形態によれば、同心円状の導電性リング4-215からなることが可能である。リングは、規則的なスペーシングsによって分離され得、
図4-2Aに関連して説明されているように、高さhを有することが可能である。いくつかの実施形態によれば、随意的なディボットを備えるサンプル・ウェル4-210が、リングの中央に位置付けされ得る。円形のグレーチングは、サンプル・ウェルのベースに隣接してパターニングされ得る。
【0189】
表面プラズモン構造体の周期性は、いくつかの実施形態によれば、共鳴構造体を形成するように選択され得る。たとえば、表面プラズモン構造体のスペーシングsは、励起エネルギーによって構造体の中に発生させられる表面プラズモン波のおおよそ2分の1の波長となるように選択され得る。共鳴構造体として形成されているときには、表面プラズモン構造体は、周期的な表面プラズモン構造体の方向に沿って、励起エネルギーを蓄積及び共鳴させることが可能である。そのような共鳴挙動は、
図4-2Dに示されているように、サンプル・ウェルの中の、又は、サンプル・ウェルに隣接する、電磁エネルギーを増大させることが可能である。表面プラズモン構造体のスペーシングはいくつかの実施形態では周期的であってもよいが、他の実施形態では非周期的であってもよい。非周期的なスペーシングの使用は、電磁場の増大が励起エネルギーの波長及びこれに伴うエミッション・エネルギーの波長のために特別にデザインされたものとすることを可能にする。
図4-2Dは、サンプル・ウェルのベースにおいて、及び、周期的な表面プラズモン構造体の周りで、数値的にシミュレートされた電磁界結果を表している。表面プラズモン構造体4-216は、サンプル・ウェルがその中に形成されている材料2-221に隣接して位置付けされており、また、サンプル・ウェル2-211のベースに隣接している。表面プラズモン構造体は、サンプル・ウェルから離れた領域及びシミュレートされた領域の外側の領域において、規則的又は不規則的なスペーシング・インターバルで繰り返すグレーチング又は円形のグレーチングの形態であることが可能である。たとえば、3回から50回の間で繰り返された表面プラズモン構造体4-216のグレーチング突出部が存在することが可能である。高い強度の領域4-240が、サンプル・ウェル2-211のベースにおいて見られ得る。この領域の中の強度は、表面プラズモン構造体の直ぐ下方の取り囲む領域の上で2倍以上に増強され得る。
【0190】
図4-2Eは、共鳴表面プラズモン構造体4-218の代替的な実施形態を立面図で示している。いくつかの実施形態によれば、表面プラズモン構造体は、周期的又は非周期的なグレーチング又はグリッド・パターンとして形成され得、また、複数の層4-247の中にパターニングされ得る。サンプル・ウェル2-211は、いくつかの実施形態によれば、複数の層4-247を通して、及び、共鳴表面プラズモン構造体4-218の中に、パターニングされ得る。いくつかの実施形態では、共鳴表面プラズモン構造体は、
図4-2Fの平面図に示されているように、別個の導電性エレメント4-222からなることが可能である。いくつかの実施形態では、共鳴表面プラズモン構造体は、
図5-2Gに示されているように、連続的な格子パターン4-250からなることが可能である。誘電体充填材4-252が、導電性材料4-250のボイドの中に位置付けされ得、サンプル・ウェル2-211が、ボイドとともに位置付けされ得る。
【0191】
サンプル・ウェルの中へのカップリングを増強するために、又は、サンプル・ウェルの中のサンプルからのエミッションに影響を及ぼすために使用され得る、さまざまな異なる表面プラズモン構造体が存在している。
図4-2Hは、表面プラズモン構造体のさらに代替的な実施形態を平面図で示している。構造体の立面図が、
図4-2Iに示されている。いくつかの実施形態によれば、表面プラズモン構造体は、サンプル・ウェル2-211の周りに分散されたディスクのアレイからなることが可能である。いくつかの実施形態では、導電性ディスク4-260を使用する代わりに、表面プラズモン構造体は、導電層からなることが可能であり、分散されたホールのパターンが、導電層を通して形成される。そのような構造体は、「ナノ・アンテナ」と称され得る。
【0192】
さまざまな異なるプロセスが、サンプル・ウェルに隣接して表面プラズモン構造体をパターニングするために使用され得る。
図4-3Aから
図4-5Eは、いくつかの実施形態によれば、サンプル・ウェルに隣接して表面プラズモン構造体を形成するために使用され得るプロセス工程に関連付けられる構造体を示している。ここで
図4-3Aを参照すると、表面プラズモン構造体を形成するためのプロセスは、マスキング層4-330の上の反射防止コーティング(ARC)4-320の上にレジスト層4-310を形成することからなることが可能である。層は、いくつかの実施形態によれば、透明な誘電体層3-235の上に配設され得る。レジスト層4-310は、リソグラフィーによってパターニングされ得るフォトレジスト又は電子-ビーム・レジストもしくはイオン-ビーム・レジストからなることが可能である。マスキング層4-330は、いくつかの実施形態によれば、無機材料(たとえば、シリコンもしくはシリカ窒化物、又は、任意の他の適切な材料)から形成されたハード・マスクからなることが可能である。
【0193】
いくつかの実施形態では、フォトリソグラフィック・プロセスは、
図4-3Bに示されているように、レジスト4-310をパターニングするために使用され得る。選択されるパターンは、所望の表面プラズモン構造体を形成するために使用されることとなる突出部又はホールのレイアウトからなることが可能である。レジスト4-310の現像の後に、ARCの領域は、露出されることとなり、パターンが、ARC層4-320の中へ、及び、次いで、マスキング層4-330の中へ、エッチングされ得る。レジスト及びARCは、基板から剥がされ得、結果として生じる構造体が、
図4-3Cに示されているように出現することが可能である。次いで、マスキング層4-330は、エッチ・マスクとして使用され得、パターンが、
図4-3Dに示されているように、選択的な異方性エッチを介して、下層にある誘電体層3-235の中へ伝達され得るようになっている。
【0194】
次いで、導電性材料2-221、又は、導体からなる材料の層が、
図4-3Eに図示されているように、領域の上に堆積させられ得る。任意の適切な導電性材料が、それが材料2-221とは別々の層として堆積されるかどうかにかかわりなく、表面プラズモン構造体を形成するために使用され得る。たとえば、いくつかのケースでは、第1の導電性材料は、表面プラズモン構造体がその中に形成されている材料2-221のベース層として堆積させられ得る。表面プラズモン構造体を形成するために使用され得る材料の例は、それに限定されないが、Au、Al、Ti、TiN、Ag、Cu、及び、合金、又は、それらの組み合わせ層を含む。
【0195】
材料2-221、又は、材料の層は、それに限定されないが、物理的な堆積プロセス又は化学蒸着プロセスを含む、任意の適切な堆積プロセスによって堆積させられ得る。いくつかの実施形態では、材料2-221は、おおよそ80nmからおおよそ300nmの間の厚さを有することが可能である。いくつかの実施形態では、材料2-221は、(たとえば、CMPプロセスを使用して)平坦化され得るが、平坦化は必要ではない。サンプル・ウェルは、サンプル・ウェルを製作することに関連して本明細書で説明されている任意の適切なプロセスを使用して、材料2-221の中に形成され得る。
【0196】
本発明者は、
図4-3Aから
図4-3Eに示されている工程にしたがって表面プラズモン構造体を形成することは、表面プラズモン構造体に対するサンプル・ウェルの正確なアライメントを必要とする可能性があるということを認識した。たとえば、
図4-2Cに示されているように、同心円状のグレーチングからなる表面プラズモン構造体は、表面プラズモン構造体4-214の中心に対するサンプル・ウェル2-211の正確なアライメントを必要とする可能性がある。そのような正確なアライメントに関連付けられる製作の困難性を回避するために、
図4-4Aから
図4-5Eに示されている自己整合プロセスを用いてもよい。
【0197】
ここで
図4-4Aを参照すると、表面プラズモン構造体と、表面プラズモン構造体に自己整合されるサンプル・ウェルとを形成するためのプロセスは、透明な誘電体層2-235の上にマスキング層4-410を形成することからなることが可能である。マスキング層は、いくつかの実施形態によれば、シリコン又はシリカ窒化物などのような、無機材料から形成されたハード・マスクからなることが可能である。マスキング層4-410の厚さは、サンプル・ウェル2-212の所望の高さにおおよそ等しいことが可能である。たとえば、マスキング層の厚さは、いくつかの実施形態によれば、おおよそ50nmからおおよそ200nmの間であることが可能であるが、他の実施形態では、他の厚さも使用され得る。
【0198】
マスキング層4-410は、誘電体層2-235の中にパターニングされることとなる表面プラズモン構造体の所望のパターンを有するボイド4-430を生成させるためにパターニングされ得る。マスキング層4-410のパターニングは、任意の適切なリソグラフィー・プロセス(たとえば、フォトリソグラフィー、電子-ビーム・リソグラフィー、イオン-ビーム・リソグラフィー、EUVリソグラフィー、X線リソグラフィー)によって行われ得る。結果として生じる構造体は、
図4-4Bに示されているように出現することが可能である。構造体は、中央ピラー4-420を含むことが可能であり、中央ピラー4-420は、その後に、自己整合されたサンプル・ウェルを形成するために使用されることとなる。
【0199】
次いで、レジスト4-440(たとえば、フォトレジスト)は、
図4-4Cに示されているように、パターニングされたマスキング層4-410の上にパターニングされ得る。レジスト4-440をパターニングするためのアライメント(たとえば、基板に対するマスクのアライメント)は、高度に正確である必要はなく、単に、中央ピラー4-420を被覆するために、及び、表面プラズモン構造体を形成するために使用されることとなるボイド4-430を被覆しないために、レジスト4-440を必要とする。
【0200】
次いで、選択的な異方性エッチが、いくつかの実施形態によれば、
図4-4Dに示されているように、誘電体層2-235をエッチングするために、及び、誘電体の中へ表面プラズモン構造体のパターンを伝達するために、使用され得る。次いで、選択的な等方性エッチが、マスキング層4-410の露出された部分を除去するために使用され得る。等方性エッチは、たとえば、ウェット・エッチであることが可能であるが、いくつかの実施形態では、等方性ドライ・エッチも使用され得る。レジスト4-440が中央ピラー4-420を覆うので、中央ピラーは、
図4-4Eに示されているように、エッチングされることとならず、基板の上にあるままになることとなる。次いで、レジスト4-440が、
図4-4Fに示されているように、基板から剥がされ、ピラー4-420を露出させることが可能である。
【0201】
次いで、いくつかの実施形態によれば、金属導電性材料2-221、又は、導電性材料を含む材料のスタックが、
図4-4Gに図示されているように、領域の上に堆積させられ得る。次いで、中央ピラー4-420、及び、ピラーの上に堆積された材料のキャップが、ピラーの選択的なウェット・エッチによって除去され、キャップをリフト・オフすることが可能である。中央ピラーの除去は、下層にある表面プラズモン構造体4-450に自己整合されているサンプル・ウェルを残す。
【0202】
代替的なプロセスが、表面プラズモン構造体に自己整合されるサンプル・ウェルを形成するために使用され得、それは、
図4-5Aから
図4-5Eに示されている。いくつかの実施形態によれば、1つ又は複数の導電層4-510、4-520は、
図4-5Aに示されているように、任意の適切なリソグラフィー・プロセスを使用して、透明な誘電体層2-235の上にパターニングされ得る。いくつかの実施形態では、第1の層4-510は、アルミニウムからなることが可能であり、第2の層4-520は、窒化チタンからなることが可能であるが、さまざまな実施形態では、他の材料の組み合わせも使用され得る。1つ又は複数の層の合計厚さは、いくつかの実施形態によれば、サンプル・ウェルの所望の高さにおおよそ均等であることが可能である。パターニングは、サンプル・ウェル2-211と、1つ又は複数の金属層の中のサンプル・ウェルに隣接するボイド4-525とを形成することが可能である。ボイドは、所望の表面プラズモン構造体のパターンの中に配置され得る。
【0203】
いくつかの実施形態では、誘電体層2-235は、
図4-5Bに示されているように、表面プラズモン構造体及びサンプル・ウェル2-211のパターンを誘電体層の中へ伝達するようにエッチングされ得る。誘電体の中へのエッチ深さは、いくつかの実施形態によれば、おおよそ20nmからおおよそ150nmの間であることが可能である。レジスト4-440は、
図4-5Cに示されているように、サンプル・ウェルを被覆するようにパターニングされ得る。レジストをパターニングするためのアライメントは、高度に正確である必要はなく、表面プラズモン構造体を形成するために使用されることとなる誘電体層2-235のエッチングされた隣接する領域を被覆することなく、サンプル・ウェルを被覆することだけを必要とする。
【0204】
図4-5Dに図示されているように、導電性材料4-512、又は、導体を含む材料の層が、任意の適切な堆積プロセスを使用して、領域の上に堆積させられ得る。材料4-512は、誘電体層のエッチングされた領域を充填することが可能であり、また、1つ又は複数の層4-510、4-520の上に延在することが可能である。次いで、レジスト4-440、及び、レジストを被覆する材料が、リフト・オフ・プロセスにしたがって除去され得る。
図4-5Eに示されている、結果として生じる構造体は、取り囲む表面プラズモン構造体に自己整合されているサンプル・ウェルを残す。サンプル・ウェルは、ディボット3-216を含む。
【0205】
いくつかの実施形態では、
図4-5Aから
図4-5Eに示されているプロセスは、ディボット3-216を有さないサンプル・ウェルを形成するために使用され得る。たとえば、レジスト4-440は、誘電体層2-235がエッチングされる前に、サンプル・ウェル2-211の上にパターニングされ得る。次いで、誘電体層2-235が、エッチングされ得、それは、表面プラズモン構造体のパターンを誘電体層に伝達することとなるが、ディボットは形成しない。次いで、プロセスは、
図4-5D及び
図4-5Eに図示されているように進行し、ディボットを有さない自己整合されたサンプル・ウェルを生成させることが可能である。
【0206】
表面プラズモン構造体に加えて、又は、表面プラズモン構造体の代替として、他の構造体が、サンプル・ウェル2-211の付近にパターニングされ、サンプル・ウェルの中の励起エネルギーを増加させることが可能である。たとえば、いくつかの構造体は、入射励起場の位相及び/又は振幅を変更することが可能であり、サンプル・ウェルの中の励起エネルギーの強度を増加させるようになっている。
図4-6Aは、薄い損失性膜4-610を示しており、薄い損失性膜5-610は、入射励起エネルギーの位相及び振幅を変更するために、ならびに、サンプル・ウェルの中の電磁放射線の強度を増加させるために使用され得る。
【0207】
いくつかの実施形態によれば、薄い損失性膜は、励起エネルギーの強め合いの干渉を生成させ、サンプル・ウェルの励起領域の中の場の増強を結果として生じさせることが可能である。
図4-6Bは、サンプル・ウェルへ入射する励起エネルギーの数値シミュレーションを示しており、そこでは、薄い損失性膜4-610がサンプル・ウェルに直接隣接して形成されている。シミュレーションに関して、サンプル・ウェルは、おおよそ80nmの直径を有しており、また、おおよそ200nmの厚さの金の金属製の層の中に形成されている。サンプル・ウェルは、SCNからなり、サンプル・ウェルを通る励起エネルギーの伝播を抑制する。薄い損失性膜4-610は、おおよそ10nmの厚さであり、ゲルマニウムから形成されており、二酸化ケイ素からなる下層にある透明な誘電体を覆っている。薄い損失性膜は、サンプル・ウェルのエントランス・アパーチャを横切って延在している。シミュレーションは、励起エネルギーの強度がサンプル・ウェルのエントランス・アパーチャにおいて最高値であるということを示している。この明るい領域4-620の中の励起エネルギーの強度は、サンプル・ウェルの左及び右に対する強度の値の2倍より大きい。
【0208】
薄い損失性膜は、任意の適切な材料から作製され得る。たとえば、薄い損失性膜は、屈折率nがその材料に関する吸光係数kとおおよそ同じ桁数となっている、材料から作製され得る。いくつかの実施形態では、薄い損失性膜は、屈折率nがその材料の吸光係数kの値から約2桁の差の中にある、材料から作製され得る。可視波長におけるそのような材料の非限定的な例は、ゲルマニウム及びシリコンである。
【0209】
薄い損失性膜は、任意の適切な厚さであることが可能であり、それは、1つ又は複数の励起供給源に関連付けられる、1つ又は複数の特性波長に依存することが可能である。いくつかの実施形態では、薄い損失性膜は、おおよそ1nmからおおよそ45nmの間の厚さであることが可能である。他の実施形態では、薄い損失性膜は、おおよそ15nmからおおよそ45nmの間の厚さであることが可能である。さらなる他の実施形態では、薄い損失性膜は、おおよそ1nmからおおよそ20nmの間の厚さであることが可能である。
【0210】
サンプル・ウェルがその中に形成されている材料2-221からの反射率に対する薄い損失性膜の影響、薄い損失性膜の中の励起エネルギー損失、及び、材料2-221の中の励起エネルギー損失が、
図4-6Cのグラフに示されている。グラフの中にプロットされている1つの曲線は、反射率曲線4-634を表しており、また、薄い損失性膜の厚さが0nmから100nmへ変化するにつれて、材料2-221及び薄い損失性膜4-610からの反射率がどのように変化するかということを示している。反射率は、シミュレートされた実施形態によれば、約25nmにおいて最小値に到達している。反射率最小は、励起エネルギーの特性波長、ならびに、薄い損失性膜及び材料2-221に関して使用される材料に応じて、異なる厚さで起こることとなる。いくつかの実施形態では、薄い損失性膜の厚さは、反射率がおおよそその最小値となるように選択される。
【0211】
いくつかの実施形態では、薄い損失性膜4-610は、
図4-6Dに示されているように、サンプル・ウェル2-211及び材料2-221から間隔を置いて配置され得る。たとえば、薄い誘電体層4-620(たとえば、酸化ケイ素SiO
x)が、薄い損失性膜の上に形成され得、また、サンプル・ウェル2-211は、誘電体層4-620に隣接して形成され得る。誘電体層4-620の厚さは、いくつかの実施形態によれば、おおよそ10nmからおおよそ150nmの間であることが可能であるが、いくつかの実施形態では、他の厚さも使用され得る。
【0212】
単一の層として示されているが、薄い損失性膜は、2つ以上の材料の複数の層からなることが可能である。いくつかの実施形態では、薄い損失性膜4-610及び誘電体層4-620の交互層からなる多層スタックが、
図4-6Eに示されているように、サンプル・ウェル2-211に隣接して形成され得る。層のスタックの中の薄い損失性膜4-610の厚さは、おおよそ5nmからおおよそ100nmの間であることが可能であり、スタックの中の誘電体層4-620の厚さは、いくつかの実施形態によれば、おおよそ5nmからおおよそ100nmの間であることが可能である。いくつかの実施形態では、多層スタックは、二酸化ケイ素の層(厚さ4.3nm)、シリコンの層(厚さ14.35nm)、及び、ゲルマニウムの層(厚さ6.46nm)からなることが可能であるが、他の実施形態では、他の厚さも使用され得る。いくつかの実施形態では、多層スタックは、二酸化ケイ素の層(おおよそ4.2nmの厚さ)、シリコンの層(おおよそ14.4nmの厚さ)、及び、ゲルマニウムの層(おおよそ6.5nmの厚さ)からなることが可能であるが、他の実施形態では、他の厚さも使用され得る。
【0213】
薄い損失性膜は、入射放射線に対して少なくともいくらかの損失を示す任意の適切な材料から製作され得る。いくつかの実施形態では、薄い損失性膜は、たとえばシリコン及びゲルマニウムなど、半導体材料からなることが可能であるが、他の材料も使用され得る。いくつかの実施形態では、薄い損失性膜は、無機材料又は金属からなることが可能である。いくつかの実施形態では、薄い損失性膜は、合金又は化合物半導体からなることが可能である。たとえば、薄い損失性膜は、Si(57.4重量%)、Ge(25.8重量%)、及びSiO2(16.8重量%)を含む合金からなることが可能であるが、他の実施形態では、他の比率及び組成も使用され得る。
【0214】
いくつかの実施形態によれば、薄い損失性膜は、たとえば、物理的な堆積プロセス、化学蒸着プロセス、スピン・オン・プロセス、又は、それらの組み合わせなど、任意の適切なブランケット堆積プロセスを使用して、基板の上に形成され得る。いくつかの実施形態では、薄い損失性膜は、堆積の後に処置され、たとえば、焼かれ、アニーリングされ、及び/又は、イオン注入を受けることが可能である。
【0215】
他の位相/振幅を変更する構造体が、追加的に又は代替的に使用され、サンプル・ウェルの中の励起エネルギーを増強することが可能である。いくつかの実施形態によれば、及び、
図4-7Aに示されているように、反射スタック4-705は、サンプル・ウェル2-211から間隔を置いて配置され得る。いくつかの実施形態では、反射スタックは、交互の屈折率を有する材料の誘電体スタックからなることが可能である。たとえば、第1の誘電体層4-710は、第1の屈折率を有することが可能であり、第2の誘電体層4-720は、第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有することが可能である。反射スタック4-705は、いくつかの実施形態では、励起エネルギーに関して高い反射性を示すことが可能であり、また、サンプル・ウェルの中のエミッターからの放射エミッションに関して低い反射性を示すことが可能である。たとえば、反射スタック4-705は、励起エネルギーに関しておおよそ80%よりも大きい反射性を示すことが可能であり、また、サンプルからのエミッションに関しておおよそ40%よりも低い反射性を示すことが可能であるが、いくつかの実施形態では、他の反射性の値も使用され得る。励起エネルギーを送信する誘電体層4-730が、反射スタックとサンプル・ウェルとの間に位置付けされ得る。
【0216】
いくつかの実施形態によれば、
図4-7Aに示されている反射スタック4-705は、サンプル・ウェル2-211がその中に形成されている材料2-221とともに、共振器を形成することが可能である。たとえば、反射スタックは、誘電材料4-730の中の励起エネルギーの波長の2分の1又はその整数倍におおよそ等しい距離だけ、材料2-221から間隔を置いて配置され得る。共振器を形成することによって、励起エネルギーは、反射スタックを通過し、共鳴し、材料2-221と反射スタック4-705との間のスペースの中で増大することが可能である。これは、サンプル・ウェル2-211の中の励起強度を増加させることが可能である。たとえば、強度は、いくつかの実施形態では2倍以上、いくつかの実施形態では5倍以上、さらに、いくつかの実施形態では10倍以上、共鳴構造体の中で増加することが可能である。
【0217】
追加的な構造体が、
図4-7B及び
図4-7Cに示されているように、サンプル・ウェルの付近に追加され得る。いくつかの実施形態によれば、誘電体層4-730の第2の屈折率よりも高い第1の屈折率を有する誘電体プラグ4-740が、
図4-7Bに示されているように、サンプル・ウェル2-211に隣接して形成され得る。プラグは、サンプル・ウェルの直径におおよそ等しい直径を有するシリンダーの形状をしていることが可能であるが、他の形状及びサイズも使用され得る。そのより高い屈折率に起因して、誘電体プラグ4-740は、励起放射線を濃縮し、サンプル・ウェルに向けて励起エネルギーをガイドすることが可能である。
【0218】
プラグ4-740などのような誘電体構造体は、いくつかの実施形態によれば、反射スタック4-705の有無にかかわらず使用され得る。そのような誘電体構造体は、誘電体共鳴アンテナと称され得る。誘電体共鳴アンテナは、たとえば、円筒形状の、長方形、正方形、多角形、台形、又はピラミッド形など、任意の適切な形状を有することが可能である。
【0219】
図4-7C及び
図4-7Dは、いくつかの実施形態によれば、サンプル・ウェル2-211の付近に形成され得るフォトニック・バンドギャップ(PBG)構造体を示している。フォトニック・バンドギャップ構造体は、光学コントラスト構造体4-750の規則的なアレイ又は格子からなることが可能である。光学コントラスト構造体は、いくつかの実施形態によれば、取り囲む誘電材料の屈折率とは異なる屈折率を有する誘電材料からなることが可能である。いくつかの実施形態では、光学コントラスト構造体4-750は、取り囲む媒体とは異なる損失値を有することが可能である。いくつかの実施形態では、サンプル・ウェル2-211は、
図4-7Dに示されているような格子の中の欠陥に位置付けされ得る。さまざまな実施形態によれば、フォトニック格子の中の欠陥は、欠陥の領域の中に光子を閉じ込めることが可能であり、それは、サンプル・ウェルにおける励起エネルギーの強度を増強させることが可能である。フォトニック・バンドギャップ構造体に起因する閉じ込めは、基板の表面の横断方向に実質的に2次元になっていることが可能である。反射スタック4-705と組み合わせられるときには、閉じ込めは、サンプル・ウェルにおいて3次元になっていることが可能である。いくつかの実施形態では、フォトニック・バンドギャップ構造体は、反射スタックなしで使用され得る。
【0220】
図4-6Aから
図4-7Dに示されている励起カップリング構造体を製作するためのさまざまな方法が考えられてきた。薄い平面的な膜(たとえば、交互の屈折率の誘電体膜)を必要とする構造体は、いくつかの実施形態によれば、平面的な堆積プロセスによって形成され得る。平面的な堆積プロセスは、物理的な堆積(たとえば、電子ビーム・エバポレーション又はスパッタリング)又は化学蒸着プロセスからなることが可能である。
図4-7Bに示されている誘電体共鳴アンテナ4-740、又は、
図4-7Cに示されている光学コントラスト構造体4-750などのような、3次元の形状に形成された別個の埋め込まれている誘電体を必要とする構造体は、基板の中へパターンをエッチングするためにリソグラフィック・パターニング及びエッチング・プロセスを使用して、ならびに、たとえば、その後の誘電体層の堆積、及び、基板の平坦化を使用して、形成され得る。また、考えられるのは、サンプル・ウェル2-211の付近に誘電体共鳴アンテナ及びフォトニック・バンドギャップ構造体を形成するための自己アライメント・プロセッシング技法である。
【0221】
図4-8Aから
図4-8Gは、
図4-7Cに図示されているようなフォトニック・バンドギャップ構造体及び自己整合されたサンプル・ウェルを形成するために使用され得る、単に1つの自己アライメント・プロセスに関するプロセス工程に関連付けられる構造体を示している。いくつかの実施形態によれば、反射スタック4-705が、最初に、
図4-8Aに図示されているように、誘電体層3-235の上の基板の上に形成され得る。次いで、第2の誘電体層4-730が、反射スタックの上に堆積させられ得る。誘電体層4-730の厚さは、材料の中の励起エネルギーの波長の約2分の1又はその整数倍におおよそ等しいことが可能である。次いで、
図4-4Aから
図4-4Eに関連して説明されているプロセス工程が、誘電体層4-730の上のピラー4-420、及び、フォトニック・バンドギャップ構造体に関してエッチングされた特徴4-810のパターンを形成するために実施され得る。エッチングされた特徴は、誘電体層4-730の中へ、及び、随意的に、反射スタック4-705の中へ、延在することが可能である。結果として生じる構造体は、
図4-8Aに示されているように出現することが可能である。
【0222】
ピラー4-420を被覆するレジスト4-440が、基板から剥がされ得、また、コンフォーマルな堆積が、
図4-8Bに示されているように行われ、エッチングされた特徴を充填材料4-820によって充填することが可能である。充填材料4-820は、いくつかの実施形態によれば、ピラー4-420を形成するために使用されるのと同じ材料であることが可能である。たとえば、充填材料4-820及びピラー4-420は、窒化ケイ素から形成され得、誘電体層4-730は、たとえばSiO
2など、酸化物からなることが可能である。
【0223】
次いで、異方性エッチが、充填材料4-820をエッチ・バックするために実施され得る。充填材料は、いくつかの実施形態によれば、エッチ・バックされ、誘電体層4-730の表面を露出させ、
図4-8Cに示されているような構造体を結果として生じさせることが可能である。エッチは、ピラー4-830を残すことが可能であり、ピラー4-830は、オリジナルのピラー4-420と、充填材料4-820から残る側壁部4-822とからなる。
【0224】
次いで、レジスト4-440が、
図4-8Dに示されているように、基板の上にパターニングされ得る。たとえば、レジストが、基板の上にコーティングされ得、ホールが、レジストの中にパターニングされ得、レジストが、ピラー4-830の周りのレジストの中の領域を切り開くために現像され得る。ピラーに対するホールのアライメントは、高度に正確である必要はなく、誘電体層4-730の中に埋め込まれている下層にあるフォトニック・バンドギャップ構造体を露出させることなく、ピラー4-830を露出させることだけを必要とする。
【0225】
ピラー4-830が露出された後に、等方性エッチが、ピラーの横断方向の寸法を低減させるために使用され得る。いくつかの実施形態によれば、結果として生じるピラー形状は、
図4-8Eに示されているように出現することが可能である。次いで、レジスト4-440は、基板から剥がされ得、材料2-221、又は、材料の層が、領域の上に堆積させられ得る。いくつかの実施形態では、材料2-221は、CMPプロセスを使用してエッチ・バックされ、
図4-8Fに示されているように領域を平坦化することが可能である。その後に、選択的なドライ・エッチ又はウェット・エッチが、
図4-8Gに図示されているように、残りのピラー構造体を除去するために使用され、サンプル・ウェル2-211を残すことが可能である。図面によって示されているように、サンプル・ウェル2-211は、誘電体層4-730の中にパターニングされているフォトニック・バンドギャップ構造体に自己整合されている。
【0226】
代替的なプロセスとして、充填材料4-820は、ピラー4-420を形成するために使用される材料とは異なる材料からなることが可能である。このプロセスでは、
図4-8D及び
図4-8Eに関連付けられる工程は、省略される可能性がある。
図4-8Fに示されているように、材料2-221の堆積及び平坦化の後に、選択的エッチが行われ、ピラー4-420を除去することが可能である。これは、サンプル・ウェル2-211をライニングする充填材料4-820の側壁部を残すことが可能である。
【0227】
D.非放射励起カップリング構造体
本発明は、サンプル・ウェルの中のサンプルとの励起エネルギーの非放射カップリングに関する構造体を与える。非放射カップリング構造体の単に1つの実施形態が、
図4-9Aに示されている。いくつかの実施形態によれば、非放射カップリング構造体は、サンプル・ウェル2-211に直接隣接して形成される半導体層4-910からなることが可能である。半導体層4-910は、いくつかの実施形態では、有機半導体であることが可能であり、又は、いくつかの実施形態では、無機半導体であることが可能である。いくつかの実施形態では、ディボット3-216は、半導体層の中に形成されてもよいし、又は形成されなくてもよい。半導体層4-910は、いくつかの実施形態によれば、おおよそ5nmからおおよそ100nmの間の厚さを有することが可能であるが、いくつかの実施形態では、他の厚さも使用され得る。いくつかの実施形態によれば、励起供給源からの励起エネルギー又は光子4-930が、半導体層4-910に衝突し、エキシトン4-920を作り出すことが可能である。エキシトンは、サンプル・ウェルの表面まで拡散することが可能であり、そこで、それらは、非放射で再結合し、サンプル・ウェルの壁部に隣接するサンプルにエネルギーを伝達することが可能である。
【0228】
図4-9Bは、別の実施形態を示しており、その別の実施形態では、半導体層4-912が使用され、励起エネルギーからのエネルギーをサンプルに非放射で伝達することが可能である。いくつかの実施形態では、半導体層4-912は、図面に示されているように、サンプル・ウェルの底部に、又は、サンプル・ウェル2-211のディボットの中に形成され得る。半導体層4-912は、いくつかの実施形態によれば、サンプル・ウェルのベースにおいて接着性物質を堆積させるためのプロセス工程に関連して本明細書で説明されているような指向性堆積プロセスを使用することによって、サンプル・ウェルの中に形成され得る。半導体層4-912は、いくつかの実施形態によれば、おおよそ5nmからおおよそ100nmの間の厚さを有することが可能であるが、他の実施形態では、他の厚さも使用され得る。入射放射線が、半導体層の中にエキシトンを発生させることが可能であり、それは、次いで、サンプル・ウェル2-211の底部表面へ拡散することが可能である。次いで、エキシトンは、サンプル・ウェルの中のサンプルにエネルギーを非放射で伝達することが可能である。
【0229】
また、本発明は、励起エネルギーをサンプルに伝達するための複数の非放射経路を与える。いくつかの実施形態によれば、及び、
図4-9Cに示されているように、エネルギー伝達粒子4-940が、サンプル・ウェルの中に堆積させられ得る。エネルギー伝達粒子は、いくつかの実施形態では、量子ドットからなることが可能であり、又は、いくつかの実施形態では、分子からなることが可能である。いくつかの実施形態では、エネルギー伝達粒子4-940は、リンキング分子を通して、サンプル・ウェルの表面に官能基化され得る。薄い半導体層4-910が、サンプル・ウェルに隣接して、又は、サンプル・ウェルの中に形成され得、エキシトンは、図面に示されているように、半導体層へ入射する励起エネルギーから半導体層の中に発生させられ得る。エキシトンは、サンプル・ウェルの表面へ拡散し、エネルギー伝達粒子4-940にエネルギーを非放射で伝達することが可能である。次いで、エネルギー伝達粒子4-940は、サンプル・ウェルの中のサンプル3-101にエネルギーを非放射で伝達することが可能である。
【0230】
いくつかの実施形態によれば、サンプル・ウェルの中に2つ以上のエネルギー伝達粒子4-940が存在することが可能である。たとえば、エネルギー伝達粒子4-942の層が、
図4-9Cに示されているサンプル・ウェルなどのような、サンプル・ウェルの中に堆積させられ得る。
【0231】
いくつかの実施形態では、エネルギー伝達粒子は、入射励起エネルギーを吸収し、次いで、吸収された励起エネルギーの波長とは異なる波長で、放射エネルギーを再放出することが可能である。次いで、再放出されたエネルギーは、サンプル・ウェルの中のサンプルを励起するために使用され得る。
図4-9Eは、ダウン・コンバートするエネルギー伝達粒子に関連付けられるスペクトル・グラフを表している。いくつかの実施形態によれば、ダウン・コンバートするエネルギー伝達粒子は、量子ドットからなり、量子ドットは、短波長放射線(より高いエネルギー)を吸収し、1つ又は複数のより長い波長放射線(より低いエネルギー)を放出することが可能である。例示的な吸収曲線4-952が、6nmから7nmの間の半径を有する量子ドットに関して、点線としてグラフの中に示されている。量子ドットは、曲線4-954によって図示されている放射線の第1のバンド、曲線4-956によって図示されている放射線の第2のバンド、及び、曲線4-958によって図示されている放射線の第3のバンドを放出することが可能である。
【0232】
いくつかの実施形態では、エネルギー伝達粒子は、励起供給源からのエネルギーをアップ・コンバートすることが可能である。
図4-9Fは、エネルギー伝達粒子からのアップ・コンバートに関連付けられるスペクトルを示している。いくつかの実施形態によれば、量子ドットは、おおよそ980nmにおいて放射線によって励起され、次いで、グラフの中に図示されているような3つのスペクトル・バンドのうちの1つの中へ再放出することが可能である。第1のバンドは、おおよそ483nmに中心を合わせられ得、第2のバンドは、おおよそ538nmに中心を合わせられ得、第3のバンドは、おおよそ642nmに中心を合わせられ得る。量子ドットから再放出される光子は、量子ドットを励起するために使用される放射線の光子よりも高エネルギーである。したがって、励起供給源からのエネルギーは、アップ・コンバートされる。放出されるスペクトル・バンドのうちの1つ又は複数は、サンプル・ウェルの中の1つ又は複数のサンプルを励起するために使用され得る。
【0233】
E. エミッション・エネルギーをセンサーに向けて方向付けすること
アッセイ・チップ2-110は、ピクセル当たりに1つ又は複数のコンポーネントを含み、機器の上のセンサーによるエミッション・エネルギーの収集を改善することが可能である。そのようなコンポーネントは、エミッション・エネルギーをセンサーに向けて空間的に方向付けするように、及び、サンプル・ウェル2-211からのエミッション・エネルギーの方向性を増加させるように設計され得る。表面オプティクス及び遠視野オプティクスの両方が、エミッション・エネルギーをセンサーに向けて方向付けするために使用され得る。
【0234】
1. 表面オプティクス
ピクセルのサンプル・ウェルの近くに位置付けされているアッセイ・チップ2-110のピクセルの中のコンポーネントは、サンプルによって放出されるエミッション・エネルギーとカップリングするように構成され得る。そのようなコンポーネントは、アッセイ・チップの2つの層の間の界面において形成され得る。たとえば、いくつかのエミッション・エネルギー・カップリング・エレメントが、サンプル・ウェル層と、サンプル・ウェルが形成されている場所と反対側にサンプル・ウェル層に隣接する層との間の界面において形成され得る。いくつかの場合には、サンプル・ウェル層の下の層は、誘電体層であり、エミッション・エネルギー・カップリング・エレメントは、表面プラズモンをサポートすることが可能である。他の実施形態では、サンプル・ウェル層は、光学的に透明な材料に隣接する導電性材料であることが可能である。表面エネルギー・カップリング・エレメントは、表面光学的な構造体であることが可能であり、表面光学的な構造体は、サンプル・ウェルからの放射エミッションによって励起され、サンプル・ウェルからの放射エミッションと相互作用する。
【0235】
グレーチング周期、特徴サイズ、又は、サンプル・ウェルからの距離などのような、表面光学的な構造体の特性寸法は、エミッション・エネルギー運動量ベクトルの平行な成分を表面プラズモンに関する表面波運動量ベクトルの中へ最大限にカップリングするために選択され得る。たとえば、エミッション・エネルギー運動量ベクトルの平行な成分は、いくつかの実施形態によれば構造体によって支持される表面プラズモンの表面波運動量ベクトルにマッチさせられ得る。いくつかの実施形態では、サンプル・ウェルから表面光学的な構造体の縁部又は特性特徴への距離dは、たとえば、表面に対して垂直であるか、又は表面に対して垂直方向から角度θだけ傾けられているなど、選択された方向に、サンプル・ウェルからのエミッション・エネルギーを方向付けするように選択され得る。たとえば、距離dは、表面に対して垂直にエミッションを方向付けするために表面プラズモン波長の整数であることが可能である。いくつかの実施形態では、距離dは、分数の表面プラズモン波長又はそのモジュロ(modulo)の波長となるように選択され得る。
【0236】
いくつかの実施形態によれば、表面光学的な構造体は、サンプル・ウェルからの放射エミッション・エネルギーを、サンプル・ウェル層に対して垂直の方向に方向付けすることが可能である。カップリングされているエネルギーは、狭くなった指向性の放射線パターンの中で垂直方向に方向付けされ得る。
【0237】
表面光学的な構造体の例は、同心円状のグレーチングである。同心円状のグレーチング構造体は、アッセイ・チップのピクセルの中に形成され、ピクセルの1つ又は複数のセンサーに向けてエミッション・エネルギーを方向付けすることが可能である。同心円状のグレーチング構造体は、サンプル・ウェルの周りに形成され得る。同心円状の円形のグレーチング表面5-102の例が、表面プラズモン構造体として、
図5-1に示されている。円形のグレーチングは、任意の適切な数のリングからなることが可能であり、
図10-1に示されているリングの数(6個)が、非限定的な例である。円形のグレーチングは、導電層の表面から突出するリングからなることが可能である。たとえば、円形のグレーチングは、サンプル・ウェル層と、サンプル・ウェル層の下に形成された誘電体層の界面に形成され得る。サンプル・ウェル層は、導電性材料であることが可能であり、同心円状のグレーチングは、導電性材料と誘電体との間の界面においてグレーチング構造体をパターニングすることによって形成され得る。円形のグレーチングのリングは、規則的な周期的なスペーシングとなっていることが可能であり、又は、リング同士の間に非規則的な又は非周期的なスペーシングを有することが可能である。サンプル・ウェルは、円形のグレーチングの中心に位置付けされ、又は、円形のグレーチングの中心の近くに位置付けされ得る。いくつかの実施形態では、サンプル・ウェルは、円形のグレーチングの中心から外れて位置付けされ得、また、グレーチングの中心から特定の距離に位置決めされ得る。いくつかの実施形態では、グレーチング・タイプ・エミッション・カップリング・コンポーネントは、スパイラル・グレーチングからなることが可能である。スパイラル・グレーチング5-202の例が、
図5-2に示されている。スパイラル・グレーチング5-202は、導電性膜の中のスパイラル・アパーチャからなることが可能である。スパイラル・グレーチングの任意の適切な寸法が、スパイラル・グレーチングを形成するために使用され得る。
【0238】
図5-3は、サンプル・ウェル2-211からのエミッション・エネルギーに関する放射線パターン5-302を図示している。同心円状のグレーチング構造体2-223は、エミッション・エネルギーが、グレーチング構造体2-223がないときに形成される放射線パターンと比較して、より大きい方向性を有することを引き起こす。いくつかの実施形態では、エミッション・エネルギーは、金属層2-221に対して垂直に下向きに方向付けされている。
【0239】
表面オプティクス又は表面プラズモン構造体の別の例は、ナノ・アンテナ構造体である。ナノ・アンテナ構造体は、サンプル・ウェルからのエミッション・エネルギーを空間的に方向付けするように設計され得る。いくつかの実施形態では、ナノ・アンテナ構造体に対するサンプル・ウェルの場所は、サンプル・ウェルからのエミッション・エネルギーを、1つ又は複数のセンサーに向けて特定の方向に方向付けするように選択される。ナノ・アンテナは、ナノ・スケール双極子アンテナ構造体からなることが可能であり、ナノ・スケール双極子アンテナ構造体は、エミッション・エネルギーによって励起されるときに、指向性の放射線パターンを作り出すように設計されている。ナノ・アンテナは、サンプル・ウェルの周りに分散され得る。指向性の放射線パターンが、アンテナの電磁界の総和から結果として生じ得る。いくつかの実施形態では、指向性の放射線パターンが、電磁界がサンプルから直接的に放出される状態で、アンテナの電磁界の総和から結果として生じ得る。いくつかの実施形態では、サンプルから直接的に放出される電磁界は、サンプル・ウェルとナノ・アンテナ構造体との間の表面プラズモンによって媒介され得る。
【0240】
ナノ・アンテナ構造体を形成する個々のナノ・アンテナの寸法は、全体的なナノ・アンテナ構造体の組み合わせられた能力が特定の分布パターンを作り出すように選択され得る。たとえば、個々のナノ・アンテナの直径は、ナノ・アンテナ構造体の中で変化することが可能である。しかし、いくつかの場合には、直径は、ナノ・アンテナのセットの中で同じであることが可能である。他の実施形態では、数個の選択された直径が、全体的なナノ・アンテナ構造体の全体を通して使用され得る。いくつかのナノ・アンテナは、半径Rの円形の上に分散され得、いくつかは、円形から半径方向にシフトされ得る。いくつかのナノ・アンテナは、半径Rの円形の周りに等しく間隔を置いて配置され得(たとえば、均等な極角インクレメントに中心を合わせられている)、いくつかは、円形の周りの等しいスペーシングからシフトされ得る。いくつかの実施形態では、ナノ・アンテナは、サンプル・ウェルの周りにスパイラル構成で配置され得る。追加的に又は代替的に、サンプル・ウェルの周りのマトリックス・アレイ、十字形分布、及び星形分布などのような、ナノ・アンテナの他の構成が可能である。個々のナノ・アンテナは、正方形、長方形、十字形、三角形、ちょうネクタイ、環状のリング、五角形、六角形、多角形などのような、円形以外の形状であることが可能である。いくつかの実施形態では、アパーチャ又はディスクの周囲は、たとえば、(Ν/2)λなど、おおよそ分数波長の整数の倍数であることが可能である。
【0241】
ナノ・アンテナ・アレイは、サンプルからのエミッション・エネルギーを濃縮された放射線ローブの中へ方向付けすることが可能である。サンプルがエネルギーを放出するときには、サンプル・ウェルからサンプル・ウェルの周りに分散されたナノ・アンテナへ伝播する表面プラズモンを励起することが可能である。次いで、表面プラズモンは、ナノ・アンテナにおける放射線モード又は双極子エミッターを励起することが可能であり、それは、サンプル・ウェル層の表面に対して垂直な放射線を放出する。ナノ・アンテナにおいて励起されるモード又は双極子の位相は、サンプル・ウェルからのナノ・アンテナの距離に依存することとなる。サンプル・ウェルと個々のナノ・アンテナとの間の距離を選択することは、ナノ・アンテナから放出される放射線の位相を制御する。ナノ・アンテナにおいて励起される空間的な放射線モードは、ナノ・アンテナの幾何学形状及び/又はサイズに依存することとなる。個々のナノ・アンテナのサイズ及び/又は幾何学形状を選択することは、ナノ・アンテナから放出される空間的な放射線モードを制御する。アレイの中のすべてのナノ・アンテナ、及び、いくつかの場合にはサンプル・ウェルからの寄与が、放射線パターンを形成する1つ又は複数の全体的な放射線ローブを決定することが可能である。理解され得るように、位相及び個々のナノ・アンテナから放出される空間的な放射線モードは、波長に依存することが可能であり、放射線パターンを形成する1つ又は複数の全体的な放射線ローブが、波長に依存することとなるようになっている。電磁界の数値シミュレーションが用いられ、異なる特性波長のエミッション・エネルギーに関する全体的な放射線ローブ・パターンを決定することが可能である。
【0242】
ナノ・アンテナは、導電性膜の中のホール又はアパーチャのアレイからなることが可能である。たとえば、ナノ・アンテナ構造体は、導電性サンプル・ウェル層と下層にある誘電体層との間の界面において形成され得る。ホールは、中心点を取り囲む同心円状の円形の中に分散されたホールのセットからなることが可能である。いくつかの実施形態では、サンプル・ウェルは、アレイの中心点に位置付けされているが、他の実施形態では、サンプル・ウェルは中心から外れていてもよい。それぞれの円形に分散されたホールのセットは、円形分布の周りに最小から最大へ配置されている異なる直径の収集からなることが可能である。ホール直径は、セット同士の間で異なることが可能であり(たとえば、1つのセットの中の最小ホールは、別のセットの中の最小ホールよりも大きいことが可能である)、最小ホールの場所は、円形のそれぞれのセットに関して、異なる極角で配向され得る。いくつかの実施形態では、円形に分散されたホールの1つから7つのセットが、ナノ・アンテナの中に存在することが可能である。他の実施形態では、7つよりも多いセットが存在することが可能である。いくつかの実施形態では、ホールは、円形でなくてもよく、任意の適切な形状であることが可能である。たとえば、ホールは、楕円、三角形、矩形などであることが可能である。他の実施形態では、ホールの分布は、円形でなくてもよく、スパイラル形状を生成させることが可能である。
【0243】
図5-4A及び5-4Bは、導電層の中のホール又はアパーチャからなる例示的なナノ・アンテナ構造体を図示している。
図5-4Aは、ホール5-122によって取り囲まれたサンプル・ウェル5-108を備えるアッセイ・チップの表面の上部平面図を示している。ナノ・アンテナ・ホールは、その中心がおおよそ半径Rの円形の周りにあるように分散されている。この非限定的な例では、ホール直径は、ホールの円形の周囲の周りでインクレメンタルに増加することによって変化している。
図5-4Bは、線B-Bに沿って、
図5-4Aに示されているアッセイ・チップの断面図を示している。サンプル・ウェル層5-116は、ナノ・アンテナ構造体の一部であるサンプル・ウェル5-108及びアパーチャ5-122を含むことが可能である。アッセイ・チップの層5-118はサンプル・ウェル層5-116の下に延びている。層5-118は誘電材料及び/又は光学的に透明な材料であることが可能である。
【0244】
いくつかの実施形態では、ナノ・アンテナ構造体は、複数のディスクからなることが可能である。ナノ・アンテナ構造体のディスクは、導電性材料の表面から突出する導電性ディスクとして形成され得る。導電性材料は、光学的に透明な材料に隣接していることが可能である。いくつかの実施形態では、ナノ・アンテナは、サンプル・ウェルの周りに分散され得る。いくつかの場合には、ナノ・アンテナは、おおむねサンプル・ウェルの周りに半径Rの円形に分散され得る。ナノ・アンテナ・アレイは、サンプル・ウェルの周りで、おおよそ追加的な異なる半径の円形の上に分散されたナノ・アンテナの複数のセットからなることが可能である。
【0245】
図5-5A及び
図5-5Bは、導電層から突出するディスクからなるナノ・アンテナ構造体の例示的な実施形態を図示している。
図5-5Aは、ディスク5-224によって取り囲まれているサンプル・ウェル5-208を備えるアッセイ・チップの表面の上部平面概略図を示している。ナノ・アンテナディスクは、おおよそ半径Rの円形の周りに分散されている。この非限定的な例では、2つの直径が、ディスクに関して使用され、ディスクは、ナノ・アンテナの円形の周囲の周りで、これらの2つの直径の間で交互になる。
図5-5Bは、線C-C’に沿って、
図6-3Cに示されているアッセイ・チップの断面図を示している。サンプル・ウェル層5-216は、ナノ・アンテナ構造体の一部であるサンプル・ウェル5-208及びディスク5-224を含むことが可能である。ディスク5-224は、特定の距離だけサンプル・ウェル層5-216から突出している。いくつかの実施形態では、ディスクがサンプル・ウェル層から延在する距離は、ナノ・アンテナ構造体の中で変化することが可能である。アッセイ・チップの層5-218はサンプル・ウェル層5-216の下方に延びる。層5-218は誘電材料及び/又は光学的に透明な材料からなることが可能である。サンプル・ウェル層5-216及び突出するディスクは、導電性材料であることが可能である。
【0246】
2. 遠視野オプティクス
いくつかの実施形態では、表面オプティクスの直ぐ下の層は、任意の適切な厚さのスペーサー層2-225であることが可能であり、それは、任意の適切な誘電材料から作製され得る。スペーサー層は、たとえば、厚さが10μmであることが可能であり、二酸化ケイ素から作製され得る。代替的に、このスペーサー層は、48μm又は50μmであることが可能である。スペーサー層の下にあるのは、追加的なスペーサー層を備える1つ又は複数のレンズ層であることが可能である。たとえば、
図5-6Aは、上側レンズ層5-601を図示しており、上側レンズ層5-601は、少なくとも1つの屈折レンズを含むことが可能である。いくつかの実施形態では、上側レンズ層は、サンプル・ウェル層2-221の下方5μmに位置付けされ得る。それぞれのサンプル・ウェルに関連付けられる1つ又は複数のレンズが存在することが可能である。いくつかの実施形態では、レンズ・アレイが使用され得る。いくつかの実施形態では、上側レンズ層5-601のそれぞれのレンズは、サンプル・ウェル2-211の下方に中心を合わせられており、たとえば、10.5μmよりも小さい半径を有することが可能である。上側レンズ層は、例として、及び、限定としてではなく、窒化ケイ素などのような任意の適切な誘電材料から作製され得る。
【0247】
上側レンズ層の直ぐ下の層は、任意の適切な誘電体から作製された構造的な及び/又は光学的な層5-605であることが可能である。この構造的な及び/又は光学的な層5-605は、溶融シリカの形態の二酸化ケイ素から作製され得る。構造的な層の直ぐ下の層は、下側レンズ層5-603であることが可能であり、下側レンズ層5-603は、少なくとも1つの追加的なレンズを含むことが可能である。いくつかの実施形態では、下側レンズ層5-603の中のそれぞれのレンズも、サンプル・ウェルの下方に中心を合わせられ得る。下側レンズ層5-603は、例として、及び、限定としてではなく、窒化ケイ素などのような任意の適切な誘電材料から作製され得る。上側レンズ層の上部から下側レンズ層の底部までの距離は、100~500μmであることが可能である。下側レンズ層の直ぐ下の層は、反射防止層を含むことが可能であり、反射防止層は、励起エネルギー及びエミッション・エネルギーの両方を通過させ、反射される光の量を低減させる。反射防止層の直ぐ下の層は、構造的コンポーネントを含むことが可能であり、チップが機器に整合し、機器の上に装着することを可能にする。チップ装着層の直ぐ下の層は、保護カバーを含み、ダストを含む、損傷及び汚染からシステムを保護することが可能である。
【0248】
図5-6Aは、屈折レンズを使用して2つのレンズ層を図示しているが、任意の適切なレンズが使用され得る。たとえば、フレネル・レンズ、マイクロレンズ、屈折レンズ対、及び/又はフラット・レンズが使用され得る。
図5-6Bは、構造的な及び/又は光学的な層5-605によって分離されている上側レンズ層5-611及び下側レンズ層5-613の両方の中に、フレネル・レンズを使用した実施形態を図示している。
【0249】
いくつかの実施形態では、チップの中の上記に説明されている層同士の間の界面のいずれかは、反射防止コーティング又は反射防止層を含むことが可能である。上側レンズ層及び第2のレンズ層の両方は、サンプル・ウェルの下方に配置され、サンプル・ウェルのアレイから放出される発光を機器のリレー・レンズの中へ焦点を合わせることが可能である。
【0250】
IV. 機器コンポーネント
I. 機器の顕微鏡層
いくつかの実施形態では、機器は、顕微鏡層を含むことが可能であり、顕微鏡層は、
図6-1に図示されているように、副層を含むことが可能である。とりわけ、顕微鏡層は、励起エネルギーをアッセイ・チップに向けて方向付けするように角度θだけ傾けられたポリクロイック・ミラー2-230を含む副層を含むことが可能である。このポリクロイック・ミラーは、実質的に誘電体であることが可能であり、アッセイ・チップの上のサンプル・ウェルの1つ又は複数の中のサンプルからのエミッション・エネルギーを実質的に透過させながら、励起エネルギーを反射する。随意的に、追加的な誘電体層を含む非点収差補正エレメント6-101が、ポリクロイック・ミラーの下に設けられ、同じ角度θであるが、ポリクロイック・ミラーの傾きの軸線に直交する軸線の周りに傾けられており、ポリクロイック・ミラーによってもたらされる非点収差に関する補正を提供することが可能である。
図6-1では、非点収差補正エレメント6-101は、上部フィルターと同じ平面の中で傾けられているように図示されているが、説明図は、上部フィルターに対する傾きを表しており、それは、非点収差補正エレメント6-101の配向を限定することを決して意味していないということが認識されるべきである。また、この非点収差補正エレメント6-101は、追加的なフィルタリングを提供することが可能である。たとえば、非点収差補正エレメント6-101は、エミッション・エネルギーを透過させながら励起エネルギーをさらにフィルタリングする別のポリクロイック・ミラーであることが可能である。レンズ6-103が、非点収差補正エレメント6-101の下に設けられ、サンプル・ウェルからのエミッション・エネルギーを処理するのをさらに助けることが可能である。レンズ6-103は、たとえば、直径が25.4μmであることが可能であるが、任意の適切な直径が使用され得る。いくつかの実施形態では、レンズは、複数のレンズ・エレメントからなるリレー・レンズである。たとえば、リレー・レンズは、6つの別々のレンズ・エレメントを含むことが可能である。いくつかの実施形態では、リレー・レンズは、長さがおおよそ17.5mmであることが可能である。追加的なフィルタリング・エレメントが、レンズ6-103の前又は後に使用され、励起エネルギーをさらに拒絶し、それがセンサーに到達することを防止することが可能である。
【0251】
A. センサー・チップ
サンプル・ウェルの中のサンプルから放出されるエミッション・エネルギーは、さまざまな方式で、ピクセルのセンサーに送信され得、そのいくつかの例が、詳細に下記に説明されている。いくつかの実施形態は、光学コンポーネント及び/又はプラズモニック・コンポーネントを使用し、特定の波長の光が、特定の波長の光を検出するように特化されたセンサーの領域又は一部分へ方向付けされる可能性を増加させることが可能である。センサーは、異なる波長のエミッション・エネルギーを同時に検出するための複数のサブ・センサーを含むことが可能である。
【0252】
図6-2Aは、いくつかの実施形態によるセンサー・チップの単一のピクセルの概略ダイアグラムであり、そこでは、少なくとも1つのソーティング・エレメント6-127が使用され、特定の波長のエミッション・エネルギーをそれぞれのサブ・センサー6-111から6-114に方向付けする。エミッション・エネルギー2-253は、それがセンサー・チップのソーティング・エレメント6-127に到達するまで、サンプル・ウェルから、アッセイ・チップ及び機器の光学的なシステムを通って進む。ソーティング・エレメント6-127は、エミッション・エネルギー2-253の波長を空間的な自由度にカップリングし、それによって、その構成波長成分へとエミッション・エネルギーを分離し、それは、ソーティングされたエミッション・エネルギーと称される。
図6-2Aは、エミッション・エネルギー2-253が、誘電材料6-129を通って4つのソーティングされたエミッション・エネルギー経路へとスプリットされており、4つの経路のそれぞれが、ピクセルのサブ・センサー6-111から6-114に関連付けられているということを概略的に図示している。このように、それぞれのサブ・センサーが、スペクトルの異なる部分に関連付けられ、センサー・チップのそれぞれのピクセルに関してスペクトロメーターを形成している。
【0253】
任意の適切なソーティング・エレメント6-127が、エミッション・エネルギーの異なる波長を分離するために使用され得る。実施形態は、光学エレメント又はプラズモニック・エレメントを使用することが可能である。光学的なソーティング・エレメントの例は、それに限定されないが、ホログラフィック・グレーチング、位相マスク・グレーチング、振幅マスク・グレーチング、及び、オフセットされたフレネル・レンズを含む。プラズモニック・ソーティング・エレメントの例は、それに限定されないが、フェーズド・ナノ・アンテナ・アレイ及びプラズモニック準結晶を含む。
【0254】
図6-2Bは、いくつかの実施形態によるセンサー・チップの単一のピクセルの概略ダイアグラムであり、そこでは、フィルタリング・エレメント6-121から6-124が使用され、特定の波長のエミッション・エネルギーをそれぞれのサブ・センサーに方向付けし、他の波長のエミッション・エネルギーが他のサブ・センサーに到達することを防止する。エミッション・エネルギー2-253は、それがフィルタリング・エレメント6-121から6-124のうちの1つに到達するまで、サンプル・ウェルからアッセイ・チップ及び機器の光学的なシステムを通って進む。フィルタリング・エレメント6-121から6-124は、サブ・センサー6-11から6-114の特定のセグメントにそれぞれ関連付けられ得、また、フィルタリング・エレメント6-121から6-124は、エミッション・エネルギーを吸収することによって(
図6-1Bには図示されていない)、及び/又は、エミッション・エネルギーを反射することによって、それぞれの波長のエミッション・エネルギーを送信するように、及び、他の波長のエミッション・エネルギーを拒絶するように、それぞれ構成されている。それぞれのフィルタリング・エレメントを通過した後に、フィルタリングされたエミッション・エネルギーは、誘電材料6-129を通って進み、ピクセルの対応するサブ・センサー6-111から6-114に衝突する。このように、それぞれのサブ・センサーは、スペクトルの異なる部分に関連付けられ、センサー・チップのそれぞれのピクセルに関するスペクトロメーターを形成している。
【0255】
任意の適切なフィルタリング・エレメントが、エミッション・エネルギーの異なる波長を分離するために使用され得る。実施形態は、光学的なフィルタリング・エレメント又はプラズモニック・フィルタリング・エレメントを使用することが可能である。光学的なソーティング・エレメントの例は、それに限定されないが、反射性多層誘電体フィルター又は吸収性フィルターを含む。プラズモニック・ソーティング・エレメントの例は、それに限定されないが、特定の波長でエネルギーを送信するように設計された周波数選択性表面、及び、フォトニック・バンド-ギャップ結晶を含む。
【0256】
代替的に、又は、上述のソーティング・エレメント及びフィルタリング・エレメントに加えて、追加的なフィルタリング・エレメントが、それぞれのサブ・センサー6-11から6-114に隣接して設置され得る。追加的なフィルタリング・エレメントは、薄い損失性膜を含むことが可能であり、薄い損失性膜は、特定の波長のエミッション・エネルギーに関して、強め合いの干渉を生成させるように構成されている。薄い損失性膜は、単一の膜又は多層膜であることが可能である。薄い損失性膜は、任意の適切な材料から作製され得る。たとえば、薄い損失性膜は、屈折率nが吸光係数kとおおよそ同じ桁数となっている、材料から作製され得る。他の実施形態では、薄い損失性膜は、屈折率nがその材料の吸光係数kの値から約2桁の差の中にある、材料から作製され得る。可視波長におけるそのような材料の非限定的な例は、ゲルマニウム及びシリコンである。
【0257】
薄い損失性膜は、任意の適切な厚さであることが可能である。いくつかの実施形態では、薄い損失性膜は、1~45nmの厚さであることが可能である。他の実施形態では、薄い損失性膜は、15~45nmの厚さであることが可能である。さらなる他の実施形態では、薄い損失性膜は、1~20nmの厚さであることが可能である。
図6-3Aは、薄い損失性膜6-211から6-214が、それぞれのサブ・センサー6-11から6-114に関連付けられる波長によって少なくとも部分的に決定された異なる厚さをそれぞれ有している、実施形態を図示している。膜の厚さは、薄い損失性膜を選択的に通過しサブ・センサーに至ることとなる別個の波長を少なくとも部分的に決定する。
図6-211に図示されているように、薄い損失性膜6-211は、厚さd1を有しており、薄い損失性膜6-212は、厚さd2を有しており、薄い損失性膜6-213は、厚さd3を有しており、薄い損失性膜6-214は、厚さd4を有している。それぞれの次に続く薄い損失性膜の厚さは、その前の薄い損失性膜よりも小さくなっており、d1>d2>d3>d4となるようになっている。
【0258】
追加的に又は代替的に、薄い損失性膜は、異なる特質を備える異なる材料から形成され得、異なる波長のエミッション・エネルギーが、それぞれのサブ・センサーにおいて強め合って干渉するようになっている。たとえば、屈折率n及び/又は吸光係数kは、特定の波長のエミッション・エネルギーの伝送を最適化するように選択され得る。
図6-3Bは、同じ厚さを備える薄い損失性膜6-221から6-224を図示しているが、それぞれの薄い損失性膜は、異なる材料から形成されている。いくつかの実施形態では、所望の波長のエミッション・エネルギーが強め合って干渉し、膜を通して送信されるように、薄い損失性膜の材料及び薄い損失性膜の厚さの両方が選択され得る。
【0259】
図6-1は、回折エレメント及びレンズの組み合わせが波長によってエミッション・エネルギーをソーティングするために使用される、実施形態を図示している。センサー・チップの第1の層6-105は、ブレーズド位相グレーチングを含むことが可能である。ブレーズド・グレーチングは、たとえば、40度に実質的に等しい角度φでブレーズされ(blazed)得、ブレーズド・グレーチング(Λ)のライン・スペーシングは、1.25μmに実質的に等しいことが可能である。当業者は、異なるブレーズ角度及び周期性が、エミッション・エネルギーの異なる波長の光の分離を実現するために使用され得るということを理解することとなる。そのうえ、任意の適切な回折光学素子が、エミッション・エネルギーの異なる波長を分離するために使用され得る。たとえば、位相マスク、振幅マスク、ブレーズド・グレーチング、又は、オフセットされたフレネル・レンズが使用され得る。
【0260】
センサー・チップ2-260の第2の層6-106は、1つ又は複数のフレネル・レンズを含むことが可能であり、1つ又は複数のフレネル・レンズは、第1の層6-105の下に配設され、エミッション・エネルギーをさらにソーティングし、エミッション・エネルギーをセンサー6-107に方向付けする。そのうえ、任意の適切なレンズ・エレメントが、エミッション・エネルギーの異なる波長をさらに分離するために使用され得る。たとえば、屈折レンズが、フレネル・レンズの代わりに使用され得る。
【0261】
図6-1のさまざまなコンポーネントは、任意の適切な距離に間隔を離して配置され得る。たとえば、センサーの表面は、フレネル・レンズ層6-106の下に、5μmの距離に位置付けされ得る。顕微鏡層のレンズ6-103の中心からフレネル・レンズ層6-106までの距離は、50.6mmであることが可能である。ブレーズド位相グレーチング6-105は、センサーの表面の上に、おおよそ100μmの距離に位置付けされ得る。代替的に、アッセイ・チップの底部からグレーチング6-105の上部までの距離は、おおよそ53mmであることが可能である。センサー層の幅は、おおよそ10mmであることが可能である。
【0262】
アッセイ・チップ及び機器のさまざまな層は、上記に説明されている順序である必要はない。いくつかの実施形態では、フォーカシング・エレメント及び/又はソーティング・エレメント、ならびに、機器のイメージング・オプティクスは、逆の順序であることが可能である。たとえば、ブレーズド位相グレーチング6-105は、フレネル・レンズ層6-106の後に設置され得る。代替的に、フォーカシング・エレメント及び/又はソーティング・エレメントならびにイメージング・オプティクスは、単一の回折光学素子(DOE)の中へ組み込まれ得る。加えて、アッセイ・チップ及び機器のさまざまなコンポーネントが混ぜ合わせられ得、たとえば、イメージング・オプティクスが、フォーカシング・エレメント及び/又はソーティング・エレメントの上方及び下方の両方に起こり得るようになっている。
【0263】
空気とシステムの層との間の界面を含む、システムの中の上記に説明されている層同士の間の界面のいずれかは、反射防止コーティングを含むことが可能である。
B. 機器の光学的なブロックの実施形態
いくつかの実施形態では、機器1-120の光学的なブロックは、上記に説明されている光学的なコンポーネントのうちのいくつか又はすべてを含むことが可能である。光学的なブロックは、
図6-4に配置されているような光学的なコンポーネントを提供することが可能である。上記に説明されているコンポーネントに加えて、光学的なブロックは、第1のファイバー・コネクター6-401及び第2のファイバー・コネクター6-402を含むことが可能であり、第1のファイバー・コネクター6-401には、励起エネルギーの第1の波長を担持する第1の光ファイバーが接続することが可能であり、第2のファイバー・コネクター6-402には、励起エネルギーの第2の波長を担持する第2の光ファイバーが接続することが可能である。例として、及び、限定としてではなく、励起エネルギーの第1の励起波長は、630~640nmであることが可能である。光ファイバー・コネクターは、FCコネクター又はLCコネクターなどのような、任意の適切な従来のコネクターであることが可能である。2つの異なる波長が入力された場合には、波長は、ダイクロイック・ミラー又はポリクロイック・ミラーなどのような、波長コンバイナー6-403によって組み合わせられ得る。第2の励起波長は、515~535nmであることが可能である。入力励起エネルギーは、直線偏光などのような、任意の適切な偏光であることが可能である。いくつかの実施形態では、励起エネルギーを担持するファイバーは、偏光保持ファイバーであることが可能である。随意的に、励起フィルター、及び、光ファイバー・トゥー・フリー・スペース・カップラーなどのような偏光子が、光ファイバー入力の後に使用され、励起エネルギーの特性をさらにフィルタリング又は修正することが可能である。
【0264】
光学的なブロックは、1つ又は複数の金属ハウジングを含み、ビーム・シェイピングなどのような光学的なプロセッシングのためのレンズ及び他の光学的なコンポーネントを保持することが可能である。
図6-4は、4つの金属ハウジング6-405から6-408を図示しており、それぞれが、レンズ及び/又は他の光学的なコンポーネントを保持している。励起エネルギーをコリメートし、焦点を合わせるために使用される任意の数のレンズが存在することが可能である。1つ又は複数のミラー6-411及び6-412は、励起エネルギーをアッセイ・チップ2-110に向けてガイドするために、金属ハウジングのいくつかの間に位置している。
図6-4では、第1のミラー6-411は、第2のハウジング6-406から第3のハウジング6-407へ励起エネルギーを方向付けしており、第2のミラー6-412は、第4のハウジング6-408からポリクロイック誘電体ミラー2-230へ励起エネルギーを反射する。ポリクロイック誘電体ミラー2-230は、励起エネルギーを非点収差補正フィルター6-601に向けて方向付けする。
【0265】
いくつかの実施形態では、円偏光が、サンプル・ウェルの中へ方向付けされ、発光性マーカが同様の強度で発光を放出することを引き起こすことが可能である。4分の1波長プレートが、それがアッセイ・チップに到達する前に、直線偏光を円偏光に伝達するために使用され得る。ポリクロイック誘電体ミラー2-230は、励起エネルギーを4分の1波長プレート6-415に方向付けする。
図6-4に図示されているように、4分の1波長プレート6-415は、非点収差補正フィルター6-101とアッセイ・チップ2-110との間に配設され得る。次いで、円偏光された励起エネルギーは、アッセイ・チップの上の複数のピクセルに向けて方向付けされる。ピクセルに向けて方向付けされない励起エネルギーは、ビーム・ダンプ・コンポーネント6-417によって吸収され得る。1つ又は複数のサンプル・ウェルの内側のサンプルに到達する励起エネルギーは、サンプルがエミッション・エネルギーを放出することを引き起こすこととなり、エミッション・エネルギーは、センサー2-260に向けて方向付けされる。エミッション・エネルギーは、偏光オプティクス、非点収差補正エレメント6-101、ポリクロイック・ミラー2-230、及びリレー・レンズ6-103などのような、光学的なコンポーネントを通過することが可能である。ポリクロイック・ミラーは、フィルターとしての役割を果たし、それは、例として、ノッチ・フィルター、スパイク・フィルター、又はカット・オフ・フィルターであることが可能である。リレー・レンズ6-103は、センサーに向けてエミッション・エネルギーをイメージすることが可能である。次いで、エミッション・エネルギーの一部分が、センサー2-260の上方に位置している、1つ又は複数のエミッション・フィルター6-421及び6-422を通過することが可能であり、1つ又は複数のエミッション・フィルター6-421及び6-422は、エミッション・エネルギーをさらにフィルタリングすることが可能である。いくつかの実施形態では、エミッション・フィルターは、入射エミッション・エネルギー伝播方向に対してある角度で傾けられ得、フィルターの伝送特性をチューニングするように、及び/又は、後方反射によって引き起こされる干渉を低減させるようになっている。上部フィルター6-421が角度θで傾けられている場合には、底部フィルター6-422は、同じ角度θであるが、上部フィルターの傾きの軸線に直交する軸線の周りに傾けられており、エミッション放射線ビーム経路の中に非点収差が確実に生じないようにすることが可能である。
【0266】
C. センサー
本開示は、センサー、センサー動作、及び信号処理方法のさまざまな実施形態を提供する。いくつかの実施形態によれば、センサー・チップ2-260のピクセルにおけるセンサー2-122は、サンプル・ウェルの中の1つ又は複数のタグからのエミッション・エネルギーを受け取ることができ、かつ、受け取られたエミッション・エネルギーを表す1つ又は複数の電気信号を作り出すことができる、任意の適切なセンサーからなることが可能である。いくつかの実施形態では、センサーは、少なくとも1つのフォトディテクター(たとえば、半導体基板の中に形成されたp-n接合)からなることが可能である。
図7-1A及び
図7-1Bは、センサー・チップのピクセル2-100の中に製作され得るセンサーの1つの実施形態を示している。
【0267】
いくつかの実施形態によれば、センサー2-122は、センサー・チップのそれぞれのピクセル2-100において形成され得る。センサーは、アッセイ・チップのサンプル・ウェル2-211に関連付けられ得る。センサーの上方に、1つ又は複数の透明な層7-110が存在することが可能であり、サンプル・ウェルからのエミッションが、ほとんど減衰なしにセンサーまで進むことができるようになっている。センサー2-122は、いくつかの実施形態によれば、ピクセルのベースにおいて、半導体基板7-120の中に形成され得、サンプル・ウェルの、アッセイ・チップ(図示せず)と同じ側に位置付けされ得る。
【0268】
センサーは、1つ又は複数の半導体接合フォトディテクター・セグメントからなることが可能である。それぞれの半導体接合は、第1の導電タイプのウェルからなることが可能である。たとえば、それぞれの半導体接合は、図面に示されているように、p-タイプの基板の中に形成されたn-タイプのウェルからなることが可能である。いくつかの実施形態によれば、センサー2-122は、
図7-1Bの平面図に示されているように、ブルズ・アイ検出器7-162として配置され得る。第1のフォトディテクター7-124は、センサーの中央に位置付けされ得、第2の環状のフォトディテクター7-122は、中央フォトディテクターを取り囲むことが可能である。ウェルへの電気的接触が、第1の又はその後のメタライゼーション・レベルにおいて形成される導電性トレース7-134を通して、及び、導電性ビア7-132を通して、作製され得る。ビアの接触領域において、高度にドープされた半導体材料7-126の領域が存在することが可能である。いくつかの実施形態では、フィールド酸化物7-115が、フォトディテクター同士の間の表面に形成され得、及び、それぞれのフォトディテクターの一部分を被覆することが可能である。いくつかの実施形態では、センサー2-122に隣接してピクセルの中に形成された追加的な半導体デバイス7-125(たとえば、トランジスター、増幅器など)が存在することが可能である。ピクセルの中に追加的なメタライゼーション・レベル7-138、7-136が存在することが可能である。
【0269】
いくつかの実施形態では、メタライゼーション・レベル7-136は、ピクセルの大部分を横切って延在することが可能であり、また、フォトディテクター7-124の上方に中心を併せている開口部を有することが可能であり、サンプル・ウェルからのエミッションがセンサーに到達することができるようになっている。いくつかのケースでは、メタライゼーション・レベル7-136は、基準電位又はグランド平面としての役割を果たすことが可能であり、追加的に、光学的なブロックとしての役割を果たし、少なくともいくらかの背景放射線(たとえば、励起供給源又は周囲環境からの放射線)がセンサー2-260に到達することを防止することが可能である。
【0270】
図7-1A及び
図7-1Bに示されているように、センサー2-122は、空間的に及び電気的に互いから分離されている複数のフォトディテクター・セグメント7-122、7-124へとさらに分割され得る。いくつかの実施形態では、センサー2-122のセグメントは、反対にドープされた半導体材料の領域からなることが可能である。たとえば、第1のセンサー・セグメントに関する第1の電荷蓄積ウェル7-124が、基板の第1の領域をドーピングすることによって形成され、第1のウェルの中に第1の導電タイプ(たとえば、n-タイプ)を有することが可能である。基板は、p-タイプであることが可能である。第2のセンサー・セグメントに関する第2の電荷蓄積ウェル7-122が、基板の第2の領域をドーピングすることによって形成され、第2のウェルの中に第1の導電タイプを有することが可能である。第1及び第2のウェルは、基板のp-タイプ領域によって分離され得る。
【0271】
センサー2-122の複数のセグメントが、ブルズ・アイ・レイアウト以外の任意の適切な方式で配置され得、センサーの中に3つ以上のセグメントが存在することが可能である。たとえば、いくつかの実施形態では、複数のフォトディテクター・セグメント7-142が、横方向に互いから分離され、
図7-1Cに示されているように、ストライプ・センサー7-164を形成することが可能である。いくつかの実施形態では、クワッド(又はクワドラント)・センサー7-166が、
図7-1Dに示されているように、セグメント7-144をクワッド・パターンで配置することによって形成され得る。いくつかの実施形態では、円弧形セグメント7-146が、
図7-1Eに示されているように、ブルズ・アイ・パターンと組み合わせて形成され、円弧形にセグメント化されたセンサー7-168を形成することが可能である。別のセンサー構成は、パイ・ピース・セクションからなることが可能であり、パイ・ピース・セクションは、円形の別々のセクションで配置されている個々のセンサーを含むことが可能である。いくつかのケースでは、センサー・セグメントは、サンプル・ウェル2-211の周りに対称的に配置され、又は、サンプル・ウェルの周りに非対称的に配置され得る。センサー・セグメントの配置は、先述の配置だけに限定されず、センサー・セグメントの任意の適切な分布が使用され得る。
【0272】
本発明者は、クワドラント・センサー7-166、パイ・セクター・センサー、又は、同様のセクター・センサーが、より好適に、他のセンサー構成よりも小さいピクセル・サイズまで縮小することが可能であるということが見出された。クワドラント及びセクター検出器は、より少ない、検出される複数の波長に関するピクセル面積及びアクティブ・センサー面積しか消費しないことが可能である。センサーは、さまざまな幾何学的構成で配置され得る。いくつかの例では、センサーは、正方形の構成又は六角形の構成で配置されている。
【0273】
本開示のセンサーは、独立して(又は、個別に)アドレス可能であり得る。個別にアドレス可能なセンサーは、信号を検出することができ、他のセンサーから独立した出力を提供することができる。個別にアドレス可能なセンサーは、個別に読み取り可能であり得る。
【0274】
いくつかの実施形態では、スタックされたセンサー7-169が、
図7-1Fに示されているように、複数の分離されているセンサー・セグメント7-148を垂直方向のスタックに製作することによって形成され得る。たとえば、セグメントは、上下に位置付けされ得、スタックされたセグメント同士の間に、絶縁層が存在してもよいし、又は存在しなくてもよい。それぞれの垂直方向の層が、特定のエネルギーのエミッション・エネルギーを吸収するように、及び、異なるエネルギーでエミッションを通過させるように構成され得る。たとえば、第1の検出器は、より短い波長の放射線(たとえば、サンプルからの約500nm以下の青色波長の放射線)を吸収及び検出することが可能である。第1の検出器は、サンプルからの緑色及び赤色の波長エミッションを通過させることが可能である。第2の検出器は、(たとえば、約500nmから約600nmの間の)緑色波長の放射線を吸収及び検出し、赤色エミッションを通過させることが可能である。第3の検出器は、赤色エミッションを吸収及び検出することが可能である。いくつかの実施形態では、反射膜7-149が、スタックの中に組み込まれ、選択された波長帯域の光を反射させ、セグメントを通して戻すことが可能である。たとえば、膜は、第2のセグメントによって吸収されなかった緑色波長の放射線を反射させることが可能であり、第2のセグメントを通して戻し、その検出効率を増加させることが可能である。
【0275】
垂直方向にスタックされたセンサー・セグメントを備えるいくつかの実施形態では、エミッション・カップリング・コンポーネントが、サンプル・ウェルに含まれずに、エミッション波長に依存するサンプル・エミッションの別個の空間的な分布パターンを作り出すことが可能である。スペクトル的に異なるエミッションの判別は、いくつかの実施形態によれば、そのスタックされたセグメントからの信号の比率を分析することによって、垂直方向に-スタックされたセンサー7-169を用いて実現され得る。
【0276】
いくつかの実施形態では、センサー2-122のセグメントは、シリコンから形成されているが、任意の適切な半導体(たとえば、Ge、GaAs、SiGe、InPなど)も使用され得る。いくつかの実施形態では、センサー・セグメントは、有機の光導電性膜からなることが可能である。他の実施形態では、量子ドット・フォトディテクターが、センサー・セグメントに関して使用され得る。量子ドット・フォトディテクターは、量子ドットのサイズに基づいて、異なるエミッション・エネルギーに応答することが可能である。いくつかの実施形態では、さまざまなサイズの複数の量子ドットが、サンプル・ウェルから受け取られる異なるエミッション・エネルギー又は波長同士の間を差別するために使用され得る。たとえば、第1のセグメントは、第1のサイズを有する量子ドットから形成され得、第2のセグメントは、第2のサイズを有する量子ドットから形成され得る。さまざまな実施形態では、センサー2-122は、従来のCMOSプロセスを使用して形成され得る。
【0277】
上記に説明されているように、エミッション・カップリング・コンポーネントは、いくつかの実施形態では、サンプル・ウェルに隣接して製作され得る。ソーティング・エレメント2-243は、サンプル・ウェル2-211の中のサンプルからのエミッションを変更し、エミッション波長に依存するサンプル・エミッションの別個の空間的な分布パターンを作り出すことが可能である。
図7-2Aは、第1の空間的な分布パターン7-250の例を示しており、それは、第1の波長において第1のサンプルから作り出され得る。第1の空間的な分布パターン7-250は、たとえば
図7-2Bに示すように、ブルズ・アイ・センサー7-162の中央セグメントに向けて方向付けされている顕著な中央ローブを有することが可能である。そのようなパターン7-250は、あらゆる適切な回折素子から作り出され得、そこでは、サンプルが約663nmの波長で放出する。センサーへ入射する投射されたパターン7-252は、
図7-2Bに図示されているように出現することが可能である。
【0278】
図7-2Cは、空間的な分布パターン7-260を示しており、それは、いくつかの実施形態によれば、同じサンプル・ウェルから第2の波長で放出する第2のサンプルから作り出され得る。第2の空間的な分布パターン7-260は、放射線の2つのローブからなり、第1の空間的な分布パターン7-250とは異なることが可能である。第2の空間的な分布パターン7-260の投射されたパターン7-262は、いくつかの実施形態によれば、
図7-2Dに示されているように出現することが可能である。第2の空間的な分布パターン7-260は、あらゆる適切な回折素子から作り出され得、そこでは、サンプルが約687nmの波長で放出する。
【0279】
センサー2-122のセグメントは、いくつかの実施形態によれば、特定のエミッション・エネルギーを検出するように配置され得る。たとえば、サンプル・ウェルに隣接するエミッション・カップリング構造体及びセンサーのセグメントは、特定のエミッション・エネルギー同士の間の信号差別化を増加させるように、組み合わせて設計され得る。エミッション・エネルギーは、センサー・チップとともに使用されることとなる選択されたタグに対応することが可能である。例として、ブルズ・アイ・センサー7-162は、サンプルから投射されたパターン7-260、7-262により良好にマッチするように、そのセグメントをサイズ決め及び/又は位置付けさせることが可能であり、より高い強度の領域が、センサーのアクティブ・セグメントの中に、より中央に収まるようになっている。代替的に又は追加的に、回折素子は、投射されたパターン7-260、7-262を変更するように設計され得、強い領域が、センサーのセグメントの中に、より中央に収まるようになっている。
【0280】
センサー2-122は、2つのセグメントからなることが可能であるが、いくつかの実施形態では、サンプルからの3つ以上のスペクトル的に別個のエミッション・バンドを判別することが可能である。たとえば、それぞれのエミッション・バンドは、センサー・セグメントの上に別個の投射されたパターンを作り出し、センサー・セグメントからの信号の別個の組み合わせを生み出すことが可能である。信号の組み合わせは、エミッション・バンドを判別及び識別するために分析され得る。
図7-2Eから
図7-2Hは、4つの別個のエミッション・パターンに露出される2セグメントのセンサー2-122からの信号の数値シミュレーションからの結果を表している。見ることができるように、2つのセンサー・セグメントからの信号のそれぞれの組み合わせは別個であり、4つの波長においてエミッター同士の間を差別するために使用され得る。シミュレーションに関して、ブルズ・アイ・センサー7-162の外側の検出器セグメントはより大きい面積を有していたので、その検出器に関して、より多くの信号が集積された。追加的に、検出器同士の間の領域に衝突した光がキャリアを発生させ、キャリアは、いずれかの検出器セグメントに向けてドリフトし、両方のセグメントからの信号に寄与することが可能である。
【0281】
いくつかの実施形態では、ピクセル当たりN個のフォトディテクター・セグメントが存在することが可能であり、ここで、Nは、任意の整数値であることが可能である。いくつかの実施形態では、Nは、1以上であり、かつ、10以下であることが可能である。他の実施形態では、Nは、2以上であり、かつ、5以下であることが可能である。N個の検出器によって検出され得る判別可能なサンプル・エミッション(たとえば、異なる発光性タグからの別個のエミッション波長)の数Mは、N以上であることが可能である。M個のサンプル・エミッションの判別は、いくつかの実施形態によれば、それぞれのセンサー・セグメントからの信号の比率を評価することによって実現され得る。いくつかの実施形態では、受け取られる信号の比率、合計、及び/又は振幅が、サンプル・ウェルからのエミッションの特性波長を決定するために、測定及び分析され得る。
【0282】
いくつかの実施形態では、2つ以上のエミッターが、サンプル・ウェル2-211の中で、所与の時間ウィンドウの中で、異なる特性波長を放出することが可能である。センサー2-122は、異なる波長において、複数のエミッションからの信号を同時に検出し、データ・プロセッシングのために合計された信号を提供することが可能である。いくつかの実施形態では、マルチ波長エミッションは、センサー・セグメントからの信号値の別のセットとして区別可能であり得る(たとえば、
図7-2Eから
図7-2Hに示されているものとは異なる信号値)。信号値は、マルチ波長エミッションが起こったということを判別するために、及び、エミッションに関連付けられるエミッターの特定の組み合わせを特定するために、分析され得る。
【0283】
また、本発明者は、4つの同心円状のセグメントを有するブルズ・アイ・センサーを考えて分析した。セグメントからの信号が、
図7-2G及び
図7-2Hにそれぞれ関連付けられる同じエミッション条件に関して、
図7-2I及び
図7-2Jにプロットされている。また、4セグメントのブルズ・アイ・センサーは、サンプル・ウェルの中の特定のエミッターを特定するために分析され得る識別可能な信号を示している。
【0284】
波長フィルタリングがそれぞれのセンサー・セグメントにおいて使用されるとき、又は、スペクトルの分離が高いときには、センサーのそれぞれのセグメントは、選択されたエミッション・バンドだけを実質的に検出することが可能である。たとえば、第1の波長は、第1のセグメントによって検出され得、第2の波長は、第2のセグメントによって検出され得、第3の波長は、第3のセグメントによって検出され得る。
【0285】
再び
図7-1Aを参照すると、ピクセル2-100の中に追加的な電子回路7-125が存在することが可能であり、それは、センサー2-122のそれぞれのセグメントからの信号を収集及び読み出すために使用され得る。
図7-3A及び
図7-3Dは、いくつかの実施形態によれば、マルチ・セグメント・センサーと組み合わせて使用され得る回路を示している。例として、信号収集回路7-310は、それぞれのセンサー・セグメントに関する3つのトランジスターからなることが可能である。3つのトランジスターの配置が、いくつかの実施形態によれば、
図7-3Bに示されている。それぞれのセグメントに関連付けられている電荷蓄積ノード7-311において、信号レベルは、リセット・トランジスターRSTによってリセットされ得、(電荷蓄積ノードにおける電荷の量によって決定される)セグメントに関する信号レベルは、リード・トランジスターRDによって読み出され得る。
【0286】
ピクセル回路は、いくつかの実施形態によれば、増幅及び相関したダブル・サンプリング回路7-320をさらに含むことが可能である。増幅及びダブル・サンプリング回路は、センサー・セグメントからの信号を増幅させるように構成されているトランジスターと、たとえば、エミッション・エネルギーがセンサーの上に存在しないときに(たとえば、サンプル・ウェルにおける励起エネルギーの印加の前に)、電荷蓄積ノードにおける電圧レベルをリセットするように、及び、ノードにおける背景信号又は「リセット」信号を読み出すように、及び、その後のエミッション信号を読み取るように構成されているトランジスターとからなることが可能である。
【0287】
いくつかの実施形態によれば、相関したダブル・サンプリングは、検出されるエミッション信号レベルから背景又はリセット信号レベルを差し引くことによって、背景雑音を低減させるために用いられる。センサーのそれぞれのセグメントに関連付けられる収集されたエミッション信号及び背景信号は、縦列ライン7-330の上に読み出され得る。いくつかの実施形態では、エミッション信号レベル及び背景信号は、共通の縦列ラインの上に時分割多重化される。それぞれのセンサー・セグメントに関して別々の縦列ラインが存在することが可能である。縦列ラインからの信号は、増幅回路7-340(それは、アクティブ・ピクセル・アレイの外側に位置付けされ得る)によってバッファリング及び/又は増幅され、さらなるプロセッシング及び分析のために提供され得る。いくつかの実施形態では、ダブル・サンプリングされた信号の引き算が、たとえば、システム・プロセッサーによって、チップ外で計算される。他の実施形態では、引き算は、チップの上で、又は、ベース機器の回路の中で行われ得る。
【0288】
相関したダブル・サンプリングのいくつかの実施形態は、サンプルに対して横列を選択することによって動作させられ得、横列に関連付けられるセンサーは、サンプリング期間にわたって集積された信号電荷を有し、信号レベルを含有する。信号レベルは、縦列ラインの上に同時に読み出され得る。集積された信号レベルをサンプリングした後に、選択された横列の中のすべてのピクセルがリセットされ、即座にサンプリングされ得る。このリセット・レベルは、次に集積される信号に相関させられ得、それは、リセットが解放された後に蓄積を開始し、同じ横列が再び選択されるときに、フレーム時間を後で集積することを終了する。いくつかの実施形態では、フレームのリセット値は、チップ外で保存され得、信号が集積を終了し、サンプリングされたときには、保存された相関したリセット値が差し引かれ得るようになっている。
【0289】
いくつかの実施形態では、3つ以上のセグメントを備えるセンサー2-122は、追加的な回路を必要とする可能性がある。
図7-3Cは、クワッド・センサーに関連付けられる信号収集7-312、増幅7-320、及びダブル・サンプリング回路を示している。いくつかの実施形態によれば、2つ以上のセグメントからの信号が、図面に示されているように、ピクセルにおいて、共通の信号チャネルの上に時分割多重化され得る。時分割多重化された信号は、騒音消去のために、それぞれのセグメントに関してサンプリングされた背景信号を含むことが可能である。追加的に、2つ以上のセグメントからの信号は、共通の縦列ラインの上に時分割多重化され得る。
【0290】
いくつかの実施形態によれば、時間的な信号取得技法が、1つ又は複数の励起供給源からの背景信号レベルを低減させるために、及び/又は、サンプルに関連付けられる異なるエミッターからの異なるエミッションを判別するために、使用され得る。
図7-4Aは、いくつかの実施形態によれば、サンプルにタグを付けるために使用され得る2つの異なるエミッターからの蛍光エミッション及び減衰を示している。2つのエミッションは、目に見えて異なる時間減衰特性を有している。第1のエミッターからの第1の時間減衰曲線7-410は、ローダミンなどのような共通の蛍光分子に対応することが可能である。第2の時間減衰曲線7-420は、量子ドット又はリン光性エミッターなどのような、第2のエミッターの特性であることが可能である。両方のエミッターは、エミッターの初期励起の後のしばらくの間延在するエミッション減衰テールを示す。いくつかの実施形態では、エミッション減衰テールの間に適用される信号収集技法は、いくつかの実施形態では、励起供給源からの背景信号を低減させるために、及び、いくつかの実施形態では、エミッター同士の間を区別するために、タイミングを選んで行われ得る。
【0291】
いくつかの実施形態によれば、時間遅延サンプリングが、エミッション減衰テールの間に用いられ、励起供給源からの放射線に起因する背景信号を低減させることが可能である。
図7-4B及び
図7-4Cは、いくつかの実施形態による、時間遅延サンプリングを図示している。
図7-4Bは、励起供給源からの励起エネルギーの励起パルス7-440、及び、サンプル・ウェルの中で励起されるサンプルから得られ得るその後のエミッション・パルス7-450の時間的な進展を示している。励起パルス7-440は、
図7-4Cに示されているように、短い時間の期間にわたりドライブ信号7-442によって、励起供給源を駆動する結果として生じることが可能である。たとえば、ドライブ信号は、第1の時間t
1において開始し、第2の時間t
2において終了することが可能である。ドライブ信号の持続期間(t
2-t
1)は、いくつかの実施形態によれば、約1ピコ秒から約50ナノ秒の間であることが可能であるが、いくつかの実施形態では、より短い持続期間も使用され得る。
【0292】
励起供給源のためのドライブ信号の終端に続く時間t
3において、ピクセルにおけるセンサー3-260(又は、センサー・セグメント)は、時間t
3から時間t
4に延在する第2の時間インターバルの間に、電荷蓄積ノード7-311において電荷を蓄積するようにゲートでコントロールされ得る。第2の時間インターバルは、いくつかの実施形態によれば、約1ナノ秒から約50マイクロ秒の間であることが可能であるが、いくつかの実施形態では、他の持続期間も使用され得る。
図7-4Bを参照して見ることができるように、電荷蓄積ノードは、放出するサンプルに起因して、次いで、励起供給源に起因して、より多くの信号電荷を収集することとなる。したがって、改善された信号対雑音比が得られ得る。
【0293】
再び
図7-4Aを参照すると、エミッターの異なる時間的なエミッション特性に起因して、センサーにおける対応する信号は、異なる時間においてピークとなることが可能である。いくつかの実施形態では、エミッション減衰テールの間に適用される信号-取得技法は、異なるエミッターを判別するために使用され得る。いくつかの実施形態では、時間的な検出技法は、(たとえば、
図7-2に関連して上記に説明されているように)空間的な及びスペクトルの技法と組み合わせて使用され、異なるエミッターを判別することが可能である。
【0294】
図7-4Dから
図7-4Hは、センサー又はセンサー・セグメントにおけるダブル・サンプリングがどのように使用され、異なる時間的なエミッション特性を有する2つのエミッターの間を区別することができるかということを図示している。
図7-4Dは、第1のエミッター及び第2のエミッターにそれぞれ関連付けられるエミッション曲線7-470、7-475を示している。例として、第1のエミッターは、ローダミンなどのような共通のフルオロフォアであることが可能であり、第2のエミッターは、量子ドット又はリン光性エミッターであることが可能である。
【0295】
図7-4Eは、
図7-4Dの2つの異なるエミッション特性に応答して起こり得る、電荷蓄積ノード7-311における動的な電圧レベルを表している。例では、蛍光エミッターに対応する第1の電圧曲線7-472は、より短いエミッション・スパンに起因して、より急速に変化し、第1の時間t
1において、その最大(又は、ノードの極性に応じて、最小)に到達することが可能である。第2の電圧曲線7-477は、第2のエミッターのより長いエミッション特性に起因して、よりゆっくりと変化し、第2の時間t
2において、その最大(又は、最小)に到達することが可能である。
【0296】
いくつかの実施形態では、電荷蓄積ノードのサンプリングは、
図7-4Fに示されているように、サンプル励起の後の2つの時間t
3、t
4において行われ得る。たとえば、第1の読み取り信号7-481は、第1の時間t
3において、電荷蓄積ノードからの第1の電圧値を読み出すために適用され得る。その後に、第2の読み取り信号7-482は、第1の読み取りから第2の読み取りの間に電荷蓄積ノードをリセットすることなく、第2の時間t
4において、電荷蓄積ノードからの第2の電圧値を読み出すために適用され得る。次いで、2つのサンプリングされる信号値の分析が使用され、2つのエミッターのうちのどちらが検出された信号レベルを提供したかということを特定することが可能である。
【0297】
図7-4Gは、
図7-4Dに示されているようなエミッション曲線7-470を有する第1のエミッターに関して得られ得る、第1の読み取り及び第2の読み取りからの2つの信号の例を示している。
図7-4Hは、
図7-4Dに示されているようなエミッション曲線7-475を有する第2のエミッターに関して得られ得る、第1の読み取り及び第2の読み取りからの2つの信号の例を示している。たとえば、第1のエミッターに関して
図7-4Fに示されているサンプリング・シークエンスは、曲線7-472をサンプリングし、2つの読み取り時間においておおよそ同じ値を得ることとなる。第2のエミッターのケースでは、
図7-4Fに示されているサンプリング・シークエンスは、2つの読み取り時間において、曲線7-477の2つの異なる値をサンプリングする。結果として生じる2つの読み取り時間からの信号の対は、2つのエミッターの間を区別しており、それぞれのエミッターを特定するために分析され得る。また、いくつかの実施形態によれば、背景引き算に関するダブル・サンプリングが、第1及び第2の読み取り信号から背景信号を差し引くために実行され得る。
【0298】
動作時には、センサー・チップのセンサー2-260は、分析されることとなる試料からのデータ収集の前に、波長キャリブレーション手順を受けることが可能である。波長キャリブレーション手順は、センサー・チップとともに使用され得るフルオロフォア波長に対応する可能性があるか、又は対応しない可能性がある特性波長を有する異なる公知のエネルギーをセンサーに受けさせることを含むことが可能である。異なるエネルギーが、シークエンスにおいて印加され得、キャリブレーション信号が、それぞれのエネルギーに関してセンサーから記録され得るようになっている。次いで、キャリブレーション信号は、参照信号として保存され得、参照信号は、実際のデータ収集を処理するために、及び、どの1つ又は複数のエミッション波長がセンサーによって検出されるかということを決定するために使用され得る。
【0299】
V. 発光性マーカ
実施形態は、分析されている試料の中のサンプル(たとえば、単一分子)を標識するために任意の適切な発光性マーカを使用することが可能である。いくつかの実施形態では、市販のフルオロフォアが使用され得る。例として、及び、限定としてではなく、以下のフルオロフォア、Atto Rho 14(「ATRho14」)、Dylight 650(「D650」)、SetaTau 647(「ST647」)、CF 633(「C633」)、CF 647(「C647」)、Alexa fluor 647(「AF647」)、BODIPY 630/650(「B630」)、CF 640R(「C640R」)、及び/又はAtto 647N(「AT647N」)が使用され得る。追加的に及び/又は随意的に、発光性マーカが、任意の適切な方式で修飾され、サンプル分析プロセスの速度及び精度を増加させることが可能である。たとえば、光安定剤が、発光性マーカにコンジュゲートされ得る。光安定剤の例は、それに限定されないが、脱酸素剤又は三重項状態消光剤を含む。光安定剤を発光性マーカにコンジュゲートすることは、放出される光子のレートを増加させることが可能であり、また、発光性マーカが光子を放出しない場合の「点滅」効果を低減させることが可能である。いくつかの実施形態では、生物学的なイベントがミリ秒スケールで起こるときに、光子エミッションのレートの増加が、生物学的なイベントの検出の可能性を増加させることが可能である。光子イベントのレートの増加は、その後に、発光信号の信号対雑音比を増加させ、測定が行われているレートを増加させることが可能であり、より速くてより正確なサンプル分析につながる。
【0300】
VI. 励起供給源
励起供給源2-250は、アッセイ・チップの少なくとも1つのサンプル・ウェル2-111に励起エネルギーを送達するように配置されている任意の適切な供給源であることが可能である。アッセイ・チップの上のピクセルは、パッシブ・ソース・ピクセルであることが可能である。「パッシブ・ソース・ピクセル」という用語は、励起エネルギーが、ピクセル又はアッセイ・チップのピクセル・アレイの外側の領域からピクセルへ送達され、たとえば、励起が機器の中にあり得る、ピクセルを表すために使用されている。
【0301】
いくつかの実施形態によれば、励起供給源は、放射プロセスを介してサンプルを励起することが可能である。たとえば、励起供給源は、可視放射線(たとえば、約350nmから約750nmの間の波長を有する放射線)、近赤外線の放射線(たとえば、約0.75ミクロンから約1.4ミクロンの間の波長を有する放射線)、及び/又は、短波長赤外線の放射線(たとえば、約1.4ミクロンから約3ミクロンの間の波長を有する放射線)を、アッセイ・チップの少なくとも1つのサンプル・ウェルの少なくとも1つの励起領域3-215に提供することが可能である。いくつかの実施形態では、放射励起供給源は、サンプル・ウェルの励起領域に直接隣接している媒介体(たとえば、分子、量子ドット、又は、選択された分子及び/もしくは量子ドットからなる材料の層)を励起するために、エネルギーを提供することが可能である。媒介体は、非放射プロセスを介して(たとえば、FRET又はDETを介して)、そのエネルギーをサンプルに伝達することが可能である。
【0302】
いくつかの実施形態では、励起供給源は、励起エネルギーの2つ以上の供給源を提供することが可能である。たとえば、放射励起供給源は、2つ以上の別個のスペクトル特性を有する励起エネルギーを送達することが可能である。例として、マルチ・カラーLEDは、2つ以上の波長に集中したエネルギーを放出することが可能であり、これらのエネルギーは、サンプル・ウェルの励起領域に送達され得る。
【0303】
概観では、及び、いくつかの実施形態によれば、機器は、少なくとも1つの励起供給源2-250を含み、アッセイ・チップの少なくとも1つのサンプル・ウェルの少なくとも1つの励起領域に、又は、励起エネルギーを変換し、もしくは、1つ又は複数の励起領域の中の少なくとも1つのサンプルに励起エネルギーをカップリングする、少なくとも1つの媒介体に、励起エネルギーを提供することが可能である。
図2-3に示されているように、励起供給源2-250からの放射線励起エネルギー2-251は、たとえば、サンプル・ウェル2-211の周りの領域に衝突することが可能である。いくつかの実施形態では、サンプル・ウェルの励起領域2-215の中に入射励起エネルギーを集中させるのを支援する励起カップリング構造体2-223が存在することが可能である。
【0304】
励起供給源は、特性波長をそれぞれ有する1つ又は複数の別個のスペクトル・バンドによって特徴付けられ得る。単なる教育目的のためだけに、励起供給源からのスペクトル・エミッションの例が、
図8-1Aのスペクトル・グラフに示されている。励起エネルギーは、スペクトル励起バンド8-110の中に実質的に含有され得る。スペクトル励起バンドのピーク波長8-120は、励起エネルギーを特徴付けるために使用され得る。また、励起エネルギーは、スペクトル分布、たとえば、図面に示されているような半値全幅(FWHM)値によって、特徴付けられ得る。
図8-1Aに示されているようにエネルギーを作り出す励起供給源は、おおよそ540nm放射線の波長においてエネルギーを送達するものとして、及び、おおよそ55nmのFWHMバンド幅を有するものとして、特徴付けられ得る。
【0305】
図4-1Bは、2つの励起エネルギー・バンドを1つ又は複数のサンプル・ウェルに提供することができる1つの励起供給源(又は、複数の励起供給源)のスペクトル特性を示している。いくつかの実施形態によれば、図面に図示されているように、第1の励起バンド8-112は、おおよそ532nmにあり、第2の励起バンド8-114は、おおよそ638nmにある。いくつかの実施形態では、第1の励起バンドは、おおよそ638nmにあることが可能であり、第2の励起バンドは、おおよそ650nmにあることが可能である。いくつかの実施形態では、第1の励起バンドは、おおよそ680nmにあることが可能であり、第2の励起バンドは、おおよそ690nmにあることが可能である。いくつかの実施形態によれば、励起バンドのピークは、これらの値の±5nmの中にあることが可能である。
【0306】
いくつかのケースでは、放射励起供給源は、
図8-1Aに示されているように、幅広い励起バンドを作り出すことが可能である。幅広い励起バンド8-110は、いくつかの実施形態によれば、おおよそ20nmよりも大きいバンド幅を有することが可能である。幅広い励起バンドは、たとえば、発光ダイオード(LED)によって作り出され得る。いくつかの実施形態では、放射励起供給源は、
図8-1Bに示されているように、幅の狭い励起バンドを作り出すことが可能である。幅の狭い励起バンドは、たとえば、レーザ・ダイオードによって作り出され得、又は、LEDからの出力をスペクトル的にフィルタリングすることによって作り出され得る。
【0307】
いくつかの実施形態では、励起供給源は、光供給源であることが可能である。任意の適切な光供給源が使用され得る。いくつかの実施形態は、インコヒーレント光の供給源を使用することが可能であり、他の実施形態は、コヒーレント光供給源を使用することが可能である。例として、及び、限定としてではなく、いくつかの実施形態によるインコヒーレント光供給源は、有機LED(OLED)、量子ドット(QLED)、ナノワイヤーLED、及び(無機)有機半導体LEDなどのような、異なるタイプの発光ダイオード(LED)を含むことが可能である。例として、及び、限定としてではなく、いくつかの実施形態によるコヒーレント光供給源は、有機レーザ、量子ドット・レーザ、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)、端面発光型レーザ、及び分布帰還型(DFB)レーザ・ダイオードなどのような、異なるタイプのレーザを含むことが可能である。追加的に又は代替的に、スラブ結合光導波路レーザ(SCOWL)、又は、他の非対称のシングル・モードの導波路構造体が使用され得る。追加的に又は代替的に、レーザ・ダイオード又はフラッシュランプによって励起されるNd:YAG又はNd:ガラスなどのような、ソリッド・ステート・レーザが使用され得る。追加的に又は代替的に、ファイバー・レーザによって励起されるレーザ・ダイオードが使用され得る。いくつかの実施形態では、レーザ励起供給源の出力は、非線形結晶、又は周期的分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN)、又は、他の同様の周期的分極反転非線形結晶の中で、波長の半分に対して周波数が2倍になることが可能である。この周波数ダブリング・プロセスは、効率的なレーザの使用が、励起にとってより適切な波長を発生させることを可能にすることができる。ピクセルのアレイに関して、2つ以上のタイプの励起供給源が存在することが可能である。いくつかの実施形態では、異なるタイプの励起供給源が組み合わせられ得る。励起供給源は、選択されたタイプの励起供給源を製作するために使用される従来の技術にしたがって製作され得る。
【0308】
励起エネルギーの供給源の特性波長は、アッセイ分析において使用される発光性マーカの選択に基づいて選択され得る。いくつかの実施形態では、励起エネルギーの供給源の特性波長は、選ばれたフルオロフォアの直接励起(たとえば、単一の光子励起)に関して選択される。いくつかの実施形態では、励起エネルギーの供給源の特性波長は、間接励起(たとえば、多光子励起、又は、直接励起を提供することとなる波長への高調波変換)に関して選択される。いくつかの実施形態では、励起エネルギーは、サンプル・ウェルへの適用に関して特定の波長で励起エネルギーを発生させるように構成されている光供給源によって発生させられ得る。いくつかの実施形態では、励起供給源の特性波長は、サンプルからの対応するエミッションの特性波長よりも小さいことが可能である。いくつかの実施形態では、励起供給源の特性波長は、サンプルからのエミッションの特性波長よりも大きいことが可能であり、サンプルの励起は、多光子吸収を通して起こることが可能である。
【0309】
励起供給源は、バッテリー又は任意の他の電源を含むことが可能であり、それは、集積されたバイオ分析デバイス以外のどこかに位置付けされ得る。たとえば、励起供給源は、機器の中に位置付けされ得、電力は、導電性ワイヤー及びコネクターを介して、集積されたバイオ分析デバイスにカップリングされ得る。
【0310】
VIII. 使用方法、機器動作、及びユーザ・インタフェース
機器2-120は、ソフトウェア及び/又はハードウェアを使用して制御され得る。たとえば、機器は、ASIC、FPGA及び/又は、ソフトウェアを実行する汎用プロセッサーなどのような、プロセッシング・デバイス1-123を使用して制御され得る。
【0311】
図9-1は、いくつかの実施形態による、機器2-120の動作のフローチャートを図示している。ユーザが分析するために試料を獲得した後に、ユーザは、行為9-101において、新しい分析を始める。これは、ユーザ・インターフェース2-125を介して機器2-120に指示を提供することによって、たとえば、ボタンを押すことなどによって行われ得る。行為9-103において、機器2-120は、以前に行われた分析からのアッセイ・チップ2-110が機器2-120の中に依然として挿入されているかどうかということをチェックする。古いチップが存在しているということが決定される場合には、行為9-105において、励起供給源への電力が切られ得、ユーザは、行為9-107において、ユーザ・インターフェース2-125のインジケーターを使用して以前のチップを取り出すように促され、機器2-120は、行為9-109において、チップが取り出されることを待つ。
【0312】
以前のチップがユーザによって取り出されるときには、又は、機器2-120が、行為9-103において、以前のチップがすでに除去されたということを決定した場合には、ユーザは、行為9-111において、新しい分析のための新しいアッセイ・チップ2-110を挿入するように促される。次いで、機器2-120は、行為9-113において、新しいアッセイ・チップ2-110が挿入されることを待つ。ユーザが新しいチップを挿入するときには、ユーザは、行為9-115において、分析されることとなる試料を、アッセイ・チップ2-110の露出された上部表面の上に置くように、ユーザ・インターフェース2-125のインジケーターによって促され、また、機器2-120の上に蓋を閉じるように促される。次いで、機器2-120は、行為9-117において、蓋が閉じられることを待つ。蓋がユーザによって閉じられるときには、行為9-119において、励起供給源は、アッセイ・チップ2-110のサンプル・ウェルの中に存在する試料のサンプル部分を励起させるための励起エネルギーを作り出すように駆動され得る。行為8-121において、サンプルからのエミッション・エネルギーは、センサー2-122によって検出され、センサー2-122からのデータは、分析のためにプロセッシング・デバイス2-123に流される。いくつかの実施形態では、データは、外部コンピューティング・デバイス2-130に流され得る。行為2-123において、機器2-120は、データ収集が完了したかどうかということをチェックする。データ収集は、特定の時間の長さの後に完了され得、励起供給源からの励起パルスの特定の数、又は、1つの特定のターゲットが特定された。データ収集が完了したときに、データ分析は、9-125において終了される。
【0313】
図9-2は、いくつかの実施形態による例示的な自己キャリブレーション・ルーチンを図示している。キャリブレーション・ルーチンは、試料の分析の前の任意の適切な時間に実行され得る。たとえば、それは、エンド・ユーザへの出荷の前に、それぞれの機器に関する製造業者によって一度行われ得る。代替的に、エンド・ユーザは、任意の適切な時間にキャリブレーションを実施することが可能である。上記に議論されているように、機器2-120は、異なるサンプルから放出された異なる波長を有するエミッション・エネルギーの間を区別することが可能である。機器2-120及び/又はコンピューティング・デバイス2-130は、たとえば、分析されている試料の分子にタグを付けるために使用される発光性タグに関連付けられる光のそれぞれの特定の色に関連付けられるキャリブレーションによってキャリブレートされ得る。このように、特定の色に関連付けられる正確な出力信号が決定され得る。
【0314】
デバイスをキャリブレートするために、単一の発光性タグに関連付けられたキャリブレーション試料が、1つずつ機器2-120に提供される。ユーザが、アッセイ・チップ2-110の上に単一の波長のエミッション・エネルギーを放出する発光性タグからなる試料を置き、機器2-120の中へアッセイ・チップ2-110を挿入するときに、自己キャリブレーションが、行為9-201において開始する。ユーザ・インターフェース2-125を使用して、ユーザは、自己キャリブレーションを開始するように機器2-120に指示する。それに応答して、行為8-203において、機器2-120は、励起エネルギーによってアッセイ・チップ2-110を照射することによって、及び、キャリブレーション試料からの単一の波長エミッション・エネルギーを測定することによって、キャリブレーション分析を走らせる。次いで、機器2-120は、行為9-205において、センサー・アレイのそれぞれのピクセルに関するセンサー2-122のサブ・センサーのアレイの上で測定される検出パターンをセーブすることが可能である。それぞれの発光性タグに関する検出パターンは、発光性タグに関連付けられる検出シグネチャーと考えられ得る。このように、シグネチャーは、その後の分析ランにおいて分析される未知のサンプルから受け取られるデータを分析するために使用されるトレーニング・データ・セットとして使用され得る。
【0315】
次いで、上記のキャリブレーション・ルーチンは、単一の発光性タグに関連付けられるすべてのキャリブレーション試料に関して実行され得る。このように、ピクセルのアレイのそれぞれのセンサー2-122は、キャリブレーション・データに関連付けられており、キャリブレーション・データは、キャリブレーション・ルーチンの完了の後に、行為9-207において実施されるその後の分析の間に、サンプル・ウェルの中に存在する発光性タグを決定するために使用され得る。
【0316】
図9-3は、いくつかの実施形態にしたがって、キャリブレーション・データがデータを分析するためにどのように獲得及び使用され得るかということをさらに図示している。行為9-301において、キャリブレーション・データが、センサーから得られる。これは、上述の自己キャリブレーション・ルーチンを使用して行われ得る。行為9-303において、変換行列が、キャリブレーション・データに基づいて発生させられる。変換行列は、センサー・データをサンプルのエミッション波長にマッピングし、また、mxn行列であり、ここで、mは、異なるエミッション波長を備える発光性タグの数であり、nは、ピクセル当たりのエミッション・エネルギーを検出するために使用されるサブ・センサーの数である。したがって、変換行列のそれぞれの列は、センサーに関するキャリブレーション値を表している。たとえば、ピクセル当たりに4つのサブ・センサー、及び、5つの異なる発光性タグが存在する場合には、変換行列は、4x5行列(すなわち、4つの行及び5つの列)であり、それぞれの列は、異なる発光性タグに関連付けられており、列の中の値は、自己キャリブレーション・ルーチンの間にサブ・センサーから得られる測定値に対応している。いくつかの実施形態では、それぞれのピクセルは、それ自身の変換行列を有することが可能である。他の実施形態では、ピクセルのうちの少なくともいくつかからのキャリブレーション・データは、平均され得、次いで、すべてのピクセルが、平均されたデータに基づいて同じ変換行列を使用することが可能である。
【0317】
行為9-305において、バイオアッセイに関連付けられる分析データが、センサーから得られる。これは、上記に説明されている方式のいずれかで行われ得る。行為9-307において、エミッション・エネルギーの波長、及び/又は、発光性タグのアイデンティティーが、変換行列及び分析データを使用して決定され得る。これは、任意の適切な方式で行われ得る。いくつかの実施形態では、分析データは、変換行列の擬似逆行列を乗じ、mx1ベクトルを結果として生じさせる。次いで、最大値を備えるベクトル成分に関連付けられる発光性タグが、サンプル・ウェルの中に存在している発光性タグとして特定され得る。実施形態は、この技法に限定されない。いくつかの実施形態では、小さい値を備える行列の逆行列がとられるときに生じ得る、可能性のある病理を防止するために、最小二乗法方法又は最尤技法などのような、制限付きの最適化ルーチンが、サンプル・ウェルの中に存在する発光性タグを決定するために行われ得る。
【0318】
センサーからのデータを分析するためにキャリブレーション・データを使用する先述の方法は、任意の適切なプロセッサーによって実施され得る。たとえば、機器2-120のプロセッシング・デバイス2-123が、分析を実施することが可能であり、又は、コンピューティング・デバイス2-130が、分析を実施することが可能である。
【0319】
IX. コンピューティング・デバイス
図10は、実施形態がその上に実施され得る適切なコンピューティング・システム環境1000の例を図示している。たとえば、
図2-1のコンピューティング・デバイス2-130が、コンピューティング・システム環境1000にしたがって実施され得る。追加的に、コンピューティング・システム環境1000は、制御システムとしての役割を果たすことが可能であり、制御システムは、アッセイを実施するように機器を制御するようにプログラムされている。たとえば、制御システムは、光を放出し、アッセイ・チップのサンプル・ウェルに向けて光を方向付けするように、励起供給源を制御することが可能であり、また、サンプル・ウェルの中の1つ又は複数のサンプルからのエミッション光の検出を可能にするように、センサーを制御することが可能であり、また、たとえば、エミッション・エネルギーの空間的な分布を分析することによって、センサーからの信号を分析し、サンプル・ウェルの中に存在するサンプルを特定することが可能である。コンピューティング・システム環境1000は、適切なコンピューティング環境の単なる1つの例であり、本発明の使用又は機能性の範囲に関する限定を提案することはまったく意図していない。いずれのコンピューティング環境1000も、例示的な動作環境1000の中に図示されているコンポーネントの任意の1つ又は組み合わせに関する任意の依存性又は要求を有するものとして解釈されるべきではない。
【0320】
実施形態は、多数の他の汎用又は専用コンピューティング・システム環境又は構成とともに動作可能である。本発明とともに使用するのに適切であり得る、周知のコンピューティング・システム、環境、及び/又は構成の例は、それに限定されないが、パーソナル・コンピュータ、サーバ・コンピュータ、ハンド・ヘルド又はラップトップ・コンピュータ・デバイス、マルチプロセッサー・システム、マイクロプロセッサー・ベースのシステム、セット・トップ・ボックス、プログラム可能なコンシューマ・エレクトロニクス、ネットワークPC、ミニコンピュータ、メインフレーム・コンピュータ、及び、上記のシステム又はデバイスのいずれかを含む分散型コンピューティング環境などを含む。
【0321】
コンピューティング環境は、プログラム・モジュールなどのような、コンピュータ実行可能な命令を実行することが可能である。一般に、プログラム・モジュールは、特定のタスクを実施し、又は特定の抽出データ・タイプを実施する、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含む。また、本発明は、分散型コンピューティング環境において実践され得、そこでは、タスクが、通信ネットワークを通してリンクされている遠隔のプロセッシング・デバイスによって実施される。分散型コンピューティング環境では、プログラム・モジュールが、メモリー・ストレージ・デバイスを含む、ローカルのコンピュータ・ストレージ媒体及び遠隔のコンピュータ・ストレージ媒体の両方の中に位置付けされ得る。
【0322】
図10を参照すると、本発明を実施するための例示的なシステムは、コンピュータ1010の形態の汎用コンピューティング・デバイスを含む。コンピュータ1010のコンポーネントは、それに限定されないが、処理ユニット1020、システム・メモリー1030、及びシステム・バス1021を含むことが可能であり、システム・バス1021は、システム・メモリーを含むさまざまなシステム・コンポーネントを処理ユニット1020にカップリングする。システム・バス1021は、さまざまなバス・アーキテクチャーのいずれかを使用するメモリー・バス又はメモリー・コントローラ、ペリフェラル・バス、及びローカル・バスを含む、いくつかのタイプのバス構造のいずれかであることが可能である。例として、及び、限定としてではなく、そのようなアーキテクチャーは、業界標準アーキテクチャー(ISA)バス、マイクロ・チャネル・アーキテクチャー(MCA)バス、拡張ISA(EISA)バス、ビデオ・エレクトロニクス・スタンダーズ・アソシエーション(VESA)ローカル・バス、及び、メザニン・バスとしても知られるペリフェラル・コンポーネント・インターコネクト(PCI)バスを含む。
【0323】
コンピュータ1010は、典型的に、さまざまなコンピュータ可読媒体を含む。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ1010によってアクセスされ得る任意の利用可能な媒体であり、それは、揮発性の及び不揮発性の媒体、リムーバブルの及びノン・リムーバブルの媒体の両方を含む。例として、及び、限定としてではなく、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ・ストレージ媒体及び通信媒体からなることが可能である。コンピュータ・ストレージ媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラム・モジュール、又は他のデータなどのような、情報のストレージに関して任意の方法又は技術で実施された、揮発性の及び不揮発性の媒体、リムーバブルの及びノン・リムーバブルの媒体の両方を含む。コンピュータ・ストレージ媒体は、それに限定されないが、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュ・メモリー、もしくは、他のメモリー技術、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)、もしくは、他の光ディスク・ストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク・ストレージ、もしくは、他の磁気ストレージ・デバイス、又は、所望の情報を保存するために使用され得、コンピュータ1010によってアクセスされ得る、任意の他の媒体を含む。通信媒体は、典型的に、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラム・モジュール、又は、たとえば、キャリア波又は他の輸送メカニズムなど、変調されたデータ信号の中の他のデータを具現化し、任意の情報送達媒体を含む。「変調されたデータ信号」という用語は、信号の中の情報を符号化するような様式で設定又は変化させられたその特性のうちの1つ又は複数を有する信号を意味している。例として、及び限定としてではなく、通信媒体は、ワイヤード・ネットワーク又はダイレクト・ワイヤード接続などのような、ワイヤード媒体、ならびに、音響媒体、RF媒体、赤外線媒体、及び他のワイヤレス媒体などのような、ワイヤレス媒体を含む。また、上記の任意の組み合わせは、コンピュータ可読媒体の範囲内に含まれるべきである。
【0324】
システム・メモリー1030は、リード・オンリー・メモリー(ROM)1031及びランダム・アクセス・メモリー(RAM)1032などのような、揮発性の及び/又は不揮発性のメモリーの形態のコンピュータ・ストレージ媒体を含むことが可能である。基本入力/出力システム1033(BIOS)は、たとえば起動の間などにコンピュータ1010の中のエレメント同士の間で情報を伝達することを助ける基本ルーチンを含有しており、基本入力/出力システム1033(BIOS)は、典型的にROM1031の中に保存される。RAM1032は、典型的に、データ及び/又はプログラム・モジュールを含有し、データ及び/又はプログラム・モジュールは、処理ユニット1020に即座にアクセス可能であり、及び/又は、処理ユニット1020によって現在動作されている。例として、及び、限定としてではなく、
図10は、オペレーティング・システム1034、アプリケーション・プログラム1035、他のプログラム・モジュール1036、及びプログラム・データ1037を図示している。
【0325】
また、コンピュータ1010は、他のリムーバブルの/ノン・リムーバブルの揮発性の/不揮発性のコンピュータ・ストレージ媒体を含むことが可能である。単なる例として、
図10は、ノン・リムーバブルの不揮発性の磁気媒体に読み書きをするハード・ディスク・ドライブ1041、リムーバブルの不揮発性の磁気ディスク1052に読み書きをする磁気ディスク・ドライブ1051、及び、CD ROM又は他の光学的な媒体などのような、リムーバブルの不揮発性の光ディスク1056に読み書きをする光ディスク・ドライブ1055を図示している。例示的な動作環境において使用され得る他のリムーバブルの/ノン・リムーバブルの揮発性の/不揮発性のコンピュータ・ストレージ媒体は、それに限定されないが、磁気テープ・カセット、フラッシュ・メモリー・カード、デジタル多用途ディスク、デジタル・ビデオ・テープ、ソリッド・ステートRAM、及びソリッド・ステートROMなどを含む。ハード・ディスク・ドライブ1041は、典型的に、インターフェース1040などのようなノン・リムーバブル・メモリー・インターフェースを通して、システム・バス1021に接続され、また、磁気ディスク・ドライブ1051及び光ディスク・ドライブ1055は、典型的に、インターフェース1050などのようなリムーバブル・メモリー・インターフェースによって、システム・バス1021に接続されている。
【0326】
上記に議論されており、
図10に図示されている、ドライブ及びそれらの関連のコンピュータ・ストレージ媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラム・モジュール、及び、コンピュータ1010に関する他のデータのストレージを提供する。
図10では、たとえば、ハード・ディスク・ドライブ1041は、オペレーティング・システム1044、アプリケーション・プログラム1045、他のプログラム・モジュール1046、及びプログラム・データ1047を保存しているものとして図示されている。これらのコンポーネントは、オペレーティング・システム1034、アプリケーション・プログラム1035、他のプログラム・モジュール1036、及びプログラム・データ1037と同じであるか、又は、それらとは異なるかのいずれかであることが可能であるということに留意されたい。オペレーティング・システム1044、アプリケーション・プログラム1045、他のプログラム・モジュール1046、及びプログラム・データ1047は、ここでは異なる数字を与えられており、最低でも、それらが異なるコピーであるということを図示している。ユーザは、キーボード1062、及び、マウス、トラックボール、又はタッチ・パッドと一般に称されるポインティング・デバイス1061などのような、入力デバイスを通して、コンピュータ1010の中へ、コマンド及び情報を入力することが可能である。他の入力デバイス(図示せず)は、マイクロホン、ジョイスティック、ゲーム・パッド、サテライト・ディッシュ、又はスキャナーなどを含むことが可能である。これらの入力デバイス及び他の入力デバイスは、システム・バスにカップリングされているユーザ入力インターフェース1060を通して、処理ユニット1020に接続され得るが、それは、パラレル・ポート、ゲーム・ポート、又はユニバーサル・シリアル・バス(USB)などのような、他のインターフェース及びバス構造によって接続されることが多い。また、モニター1091又は他のタイプのディスプレイ・デバイスが、ビデオ・インターフェース1090などのようなインターフェースを介して、システム・バス1021に接続されている。また、モニターに加えて、コンピュータは、スピーカ1097及びプリンター1096などのような、他のペリフェラル出力デバイスを含むことが可能であり、それは、出力ペリフェラル・インターフェース1095を通して接続され得る。
【0327】
コンピュータ1010は、遠隔のコンピュータ1080などのような1つ又は複数の遠隔のコンピュータへの論理的接続を使用して、ネットワーク化された環境において動作させられ得る。遠隔のコンピュータ1080は、パーソナル・コンピュータ、サーバ、ルータ、ネットワークPC、ピア・デバイス、又は、他の共通のネットワーク・ノードであることが可能であり、また、メモリー・ストレージ・デバイス1081だけが
図10に図示されているが、遠隔のコンピュータ1080は、典型的に、コンピュータ1010に関して上記に説明されているエレメントのうちの多く又はすべてを含む。
図10に示されている論理的接続は、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)1071及びワイド・エリア・ネットワーク(WAN)1073を含むが、他のネットワークを含むことも可能である。そのようなネットワーキング環境は、オフィス、企業規模のコンピュータ・ネットワーク、イントラネット、及びインターネットにおいて普通である。
【0328】
LANネットワーキング環境において使用されるときには、コンピュータ1010は、ネットワーク・インターフェース又はアダプター1070を通して、LAN1071に接続されている。WANネットワーキング環境において使用されるときには、コンピュータ1010は、典型的に、モデム1072、又は、インターネットなどのようなWAN1073を通した通信を確立するための他の手段を含む。モデム1072は、内部又は外部にあることが可能であり、モデム1072は、ユーザ入力インターフェース1060、又は他の適当なメカニズムを介して、システム・バス1021に接続され得る。ネットワーク化された環境では、コンピュータ1010に関して示されているプログラム・モジュール又はその一部分は、遠隔のメモリー・ストレージ・デバイスの中に保存され得る。例として、及び、限定としてではなく、
図10は、メモリー・デバイス1081の上にあるものとして、遠隔のアプリケーション・プログラム1085を図示している。示されているネットワーク接続は、例示的なものであり、コンピュータ同士の間で通信リンクを確立する他の手段も使用され得るということが認識されることとなる。
【0329】
VIII. 結論
したがって、本発明の少なくとも1つの実施形態のいくつかの態様が説明されてきたが、さまざまな代替例、修正例、及び改善例が、当業者に容易に思いつくこととなるということが理解されるべきである。
【0330】
そのような代替例、修正例、及び改善例は、この開示の一部であるということが意図されており、また、本発明の精神及び範囲の中にあることが意図されている。さらに、本発明の利点が示されているが、本発明のすべての実施形態が、記載されているすべての利点を含むこととなるわけではないということが認識されるべきである。いくつかの実施形態は、本明細書で、及び、いくつかの場合において、有利であるとして説明されている任意の特徴を実施しなくてもよい。したがって、先述の説明及び図面は、単なる例としてのものである。
【0331】
本発明の上述の実施形態は、多数の方式のいずれかで実施され得る。たとえば、実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせを使用して実施され得る。ソフトウェアの中に実施されるときには、ソフトウェア・コードは、単一のコンピュータの中に設けられるか、又は、複数のコンピュータの間に分散されるかにかかわらず、任意の適切なプロセッサー、又は、プロセッサーの収集の上で実行され得る。そのようなプロセッサーは、集積回路として実施され得、1つ又は複数のプロセッサーを集積回路コンポーネントの中に備えており、それは、CPUチップ、GPUチップ、マイクロプロセッサー、マイクロコントローラ、又はコプロセッサーなどのような名前によって当技術分野で知られている市販の集積回路コンポーネントを含む。代替的に、プロセッサーは、プログラム可能なロジック・デバイスを構成することから結果として生じる、ASICなどのようなカスタム回路、又は、セミ・カスタム回路の中に実施され得る。さらなる代替例として、プロセッサーは、市販のものであろうと、セミ・カスタムであろうと、又はカスタムであろうと、より大きい回路又は半導体デバイスの一部分であることが可能である。特定の例として、いくつかの市販のマイクロプロセッサーは、複数のコアを有しており、それらのコアのうちの1つ又はサブセットが、プロセッサーを構成し得るようになっている。しかし、プロセッサーは、任意の適切なフォーマットの回路を使用して実施され得る。
【0332】
さらに、コンピュータは、ラック・マウント型コンピュータ、デスクトップ・コンピュータ、ラップトップ・コンピュータ、又はタブレット・コンピュータなどのような、多数の形態のいずれかで具現化され得るということが認識されるべきである。追加的に、コンピュータは、パーソナル・デジタル・アシスタント(PDA)、スマート・フォン、又は、任意の他の適切なポータブルのもしくは固定された電子デバイスを含む、適切なプロセッシング能力を備えるが一般的にコンピュータとみなされないデバイスの中に埋め込まれ得る。
【0333】
また、コンピュータは、1つ又は複数の入力及び出力デバイスを有することが可能である。これらのデバイスは、とりわけ、ユーザ・インターフェースを提示するために使用され得る。ユーザ・インターフェースを提供するために使用され得る出力デバイスの例は、出力の視覚的表現に関するプリンター又は表示スクリーン、及び、出力の可聴表現に関するスピーカ又は他のサウンド発生デバイスを含む。ユーザ・インターフェースに関して使用され得る入力デバイスの例は、キーボード、ならびに、マウス、タッチ・パッド、及びデジタイジング・タブレットなどのような、ポインティング・デバイスを含む。別の例として、コンピュータは、音声認識を通して、又は、他の可聴フォーマットで、入力情報を受け取ることが可能である。
【0334】
そのようなコンピュータは、企業ネットワーク又はインターネットなどのような、ローカル・エリア・ネットワーク又はワイド・エリア・ネットワークを含む、1つ又は複数のネットワークによって、任意の適切な形態で相互接続され得る。そのようなネットワークは、任意の適切な技術に基づくことが可能であり、任意の適切なプロトコルにしたがって動作することが可能であり、ワイヤレス・ネットワーク、ワイヤード・ネットワーク、又は光ファイバー・ネットワークを含むことが可能である。
【0335】
また、本明細書で概説されているさまざまな方法又はプロセスは、さまざまなオペレーティング・システム又はプラットフォームのうちの任意の1つを用いる1つ又は複数のプロセッサーの上で実行可能なソフトウェアとして符号化され得る。追加的に、そのようなソフトウェアは、多数の適切なプログラミング言語及び/又はプログラミング・ツールもしくはスクリプティング・ツールのいずれかを使用して書かれ得、また、フレームワーク又はバーチャル・マシンの上で実行される実行可能なマシン語コード又は中間コードとしてコンパイルされ得る。
【0336】
この点において、本発明は、1つもしくは複数のコンピュータ又は他のプロセッサーの上で実行されるときに、上記に議論されている本発明のさまざまな実施形態を実施する方法を実施する1つ又は複数のプログラムによって符号化されたコンピュータ可読のストレージ媒体(又は、複数のコンピュータ可読媒体)(たとえば、コンピュータ・メモリー、1つ又は複数のフロッピー・ディスク、コンパクト・ディスク(CD)、光学ディスク、デジタル・ビデオ・ディスク(DVD)、磁気テープ、フラッシュ・メモリー、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイもしくは他の半導体デバイスの中の回路構成、又は、他の有形的コンピュータ・ストレージ媒体)として具現化され得る。先述の例から明らかであるように、コンピュータ可読のストレージ媒体は、非一時的な形態のコンピュータ実行可能な命令を提供するのに十分な時間にわたって、情報を保持することが可能である。そのような1つ又は複数のコンピュータ可読のストレージ媒体は、輸送可能であり得、その上に保存された1つ又は複数のプログラムが、1つ又は複数の異なるコンピュータ又は他のプロセッサーの上にロードされ、上記に議論されているような本発明のさまざまな態様を実施することができるようになっている。本明細書で使用されているように、「コンピュータ可読のストレージ媒体」という用語は、製品(すなわち、製造品)又はマシンであると考えられ得るコンピュータ可読媒体だけを包含する。代替的に又は追加的に、本発明は、伝播信号などのような、コンピュータ可読のストレージ媒体以外のコンピュータ可読媒体として具現化され得る。
【0337】
「プログラム」又は「ソフトウェア」という用語は、上記に議論されているような本発明のさまざまな態様を実施するために、コンピュータ又は他のプロセッサーをプログラムするために使用され得る、コンピュータ・コード又はコンピュータ実行可能な命令の任意のタイプのセットを表すために、一般的な意味で、本明細書で使用され得る。追加的に、この実施形態の1つの態様によれば、実行されるときに、本発明の方法を実施する1つ又は複数のコンピュータ・プログラムは、単一のコンピュータ又はプロセッサーの上にある必要はなく、本発明のさまざまな態様を実施するために、複数の異なるコンピュータ又はプロセッサーの間にモジュラー方式で分散され得るということが認識されるべきである。
【0338】
コンピュータ実行可能な命令は、1つ又は複数のコンピュータ又は他のデバイスによって実行される、プログラム・モジュールなどのような多くの形態であることが可能である。一般的に、プログラム・モジュールは、特定のタスクを実施し、又は特定の抽出データ・タイプを実施する、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含む。典型的に、プログラム・モジュールの機能性が、さまざまな実施形態において、必要に応じて、組み合わせられ又は分散させられ得る。
【0339】
また、データ構造は、任意の適切な形態で、コンピュータ可読媒体の中に保存され得る。図示を簡単にするために、データ構造は、データ構造の中の場所を通して関連するフィールドを有するように示され得る。そのような関係は、フィールドに関するストレージを、フィールド同士の間の関係を伝えるコンピュータ可読媒体の中の場所に割り当てることによって、同様に実現され得る。しかし、任意の適切なメカニズムが、データ構造のフィールドの中の情報の間の関係を確立するために使用され得、それは、ポインター、タグ、又は、データ・エレメント同士の間の関係を確立する他のメカニズムの使用を通すことを含む。
【0340】
本発明のさまざまな態様が、単独で、組み合わせて、又は、先述のものにおいて説明された実施形態の中では具体的に議論されていないさまざまな配置で、使用され得、したがって、その用途において、先述の説明において述べられ又は図面に図示されているコンポーネントの詳細及び配置に限定されない。たとえば、1つの実施形態において説明されている態様は、他の実施形態において説明されている態様と、任意の様式で組み合わせられ得る。
【0341】
また、本発明は、方法として具現化され得、その例が提供されている。方法の一部として行われる行為は、任意の適切な方式で順序付けられることが可能である。したがって、図示されているものとは異なる順序で行為が行われる実施形態が構築され得、それは、例示目的の実施形態では連続的な行為として示されているとしても、いくつかの行為を同時に実施することを含むことが可能である。
【0342】
特許請求の範囲の中で請求項エレメントを修飾するために、「第1の」、「第2の」、「第3の」などのような序数用語を使用することは、それ自身では、別の請求項エレメントに対する1つの請求項エレメントのいずれの優先度、順位、もしくは順序も含意しておらず、又は、方法の行為が実施される時間的な順序も含意しておらず、それらは、単に、特定の名前を有する1つの請求項エレメントを、(序数の用語の使用がなければ)同じ名前を有する別のエレメントからを区別するためのラベルとして使用され、請求項エレメントを区別する。
【0343】
また、本明細書で使用されている言語表現及び専門用語は、説明の目的のためのものであり、限定としてみなされるべきではない。「含む(including)」、「からなる(comprising)」、又は「有する(having)」、「含有する(containing)」、「含む(involving)」、及び、それらの変形例を本明細書で使用することは、その後に列挙されている項目及びその均等物、ならびに、追加的な項目を包含することを意味している。