(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/22 20060101AFI20220126BHJP
H01Q 1/52 20060101ALI20220126BHJP
H01Q 5/30 20150101ALI20220126BHJP
【FI】
H01Q1/22 A
H01Q1/52
H01Q5/30
(21)【出願番号】P 2020179609
(22)【出願日】2020-10-27
【審査請求日】2020-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2020034753
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000165848
【氏名又は名称】原田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100211052
【氏名又は名称】奥村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】石田 淳
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-057022(JP,A)
【文献】特開2010-062964(JP,A)
【文献】特開2008-092244(JP,A)
【文献】特開2007-153019(JP,A)
【文献】特開2018-137824(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0006652(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0292593(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00- 1/52
H01Q 5/00- 5/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取り付けられる車両用のアンテナ装置であって、
受信面を有し、該受信面において第1の周波数帯の電波を受信する第1のアンテナ素子と、
前記第1のアンテナ素子に対して離間すると共に、前記受信面に垂直な方向から見て前記第1のアンテナ素子の少なくとも一部に対して重なるように配置された遮蔽部材と、
前記第1のアンテナ素子及び前記遮蔽部材に離間して設けられ、前記第1の周波数帯よりも高い第2の周波数帯の電波を受信する第2のアンテナ素子と、
を備え、
前記第1のアンテナ素子は、第1の縁部と、該第1の縁部よりも前記車両に対して離れた位置に配置される第2の縁部とを有し、
前記受信面に垂直な方向から見て、前記第2のアンテナ素子は、前記第1のアンテナ素子よりも前記車両から離れた位置において前記第2の縁部に沿って延在する、アンテナ装置。
【請求項2】
前記第1のアンテナ素子は、FM放送波を受信し、
前記第2のアンテナ素子は、DAB放送波を受信する、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1のアンテナ素子は、AM放送波及びFM放送波を受信する、請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1のアンテナの前記受信面は、第1の領域と該第1の領域よりも前記車両に近接して配置された第2の領域とを有し、
前記遮蔽部材は、前記受信面に垂直な方向から見て、前記受信面のうち前記第1の領域のみに重なっている、請求項1~3の何れか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記遮蔽部材は、前記受信面に対面する主部と、前記主部に対して傾斜する屈曲部とを有し、
前記屈曲部は、前記第1のアンテナ素子と前記第2のアンテナ素子との間に少なくとも部分的に介在する、請求項1~4の何れか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記遮蔽部材が前記車両に電気的に接続されている、請求項1~5の何れか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記第1のアンテナ素子及び前記第2のアンテナ素子が、板金によって構成されている、請求項1~6の何れか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記遮蔽部材は、前記受信面に垂直な方向から見て、前記第1のアンテナ素子に対して重なる有効遮蔽部と前記第1のアンテナ素子に対して重ならない遮蔽部付属部とを含み、
前記遮蔽部材には、接地電位に接続する接地部材が取り付けられている、請求項1~7の何れか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記第1の縁部に平行な方向を第1の方向とし、前記受信面に垂直な方向及び前記第1の方向に垂直な方向を第2の方向としたときに、前記第2の方向における前記遮蔽部付属部の幅は、前記第2の方向における前記有効遮蔽部の幅よりも小さく、
前記第1の方向における前記有効遮蔽部の一方の端部と前記遮蔽部材に対する前記接地部材の接続位置との前記第1の方向における距離、及び、前記第1の方向における前記有効遮蔽部の他方の端部と前記遮蔽部材に対する前記接地部材の接続位置との前記第1の方向における距離のうち大きい方の距離は、前記第2のアンテナ素子で受信される電波の波長の8分の1以下である、請求項8に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記第1の縁部に平行な方向を第1の方向とし、前記受信面に垂直な方向及び前記第1の方向に垂直な方向を第2の方向としたときに、前記第2の方向における前記遮蔽部付属部の幅は、前記第2の方向における前記有効遮蔽部の幅よりも大きく、
前記第1の方向における前記有効遮蔽部の一方の端部と前記遮蔽部材に対する前記接地部材の接続位置との前記第1の方向における距離、及び、前記第1の方向における前記有効遮蔽部の他方の端部と前記遮蔽部材に対する前記接地部材の接続位置との前記第1の方向における距離のうち大きい方の距離は、前記第2のアンテナ素子で受信される電波の波長の5.6分の1以下である、請求項8に記載のアンテナ装置。
【請求項11】
前記有効遮蔽部及び前記遮蔽部付属部が互いに離間する、請求項8~10の何れか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項12】
前記接地部材が、前記遮蔽部材を前記車両に連結するブラケットである、請求項8~11の何れか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項13】
前記遮蔽部材は、前記受信面に垂直な方向から見て、前記第1のアンテナ素子に対して重なる有効遮蔽部と前記第1のアンテナ素子に対して重ならない遮蔽部付属部とを含み、
前記有効遮蔽部及び前記遮蔽部付属部が互いに離間しており、
前記有効遮蔽部と前記遮蔽部付属部とを電気的に接続し、前記遮蔽部材の線路長を調整する線路長調整部を更に備える、請求項1~7の何れか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項14】
前記線路長調整部がコイルを含む、請求項13に記載のアンテナ装置。
【請求項15】
前記線路長調整部がメアンダパターンを含む、請求項13に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のアンテナ素子を有する車両用のアンテナ装置が利用されている。例えば、特許文献1には、移動体通信用のアンテナ装置であって、自動車のルーフパネル上に設けられた基板と、基板上に立設された2つのアンテナと、当該2つのアンテナの間に介在するように設けられた遮蔽板とを備えるアンテナ装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の自動車には多数の電子機器が搭載され、これらの電子機器からはノイズが放射される。特許文献1に記載のアンテナ装置では、遮蔽板によって2つのアンテナの間に形成される電界を遮ることで当該2つのアンテナ間の干渉を低減しているが、この遮蔽板では、車両内に搭載されたノイズ源から放射されるノイズを軽減することは困難である。特許文献1では、アンテナ装置をルーフパネル上し、当該ルーフパネルによってノイズ源からアンテナ装置を遮蔽しているが、例えばアンテナ装置の配置位置によっては、ノイズ源からのノイズの影響によってアンテナ装置の受信感度が劣化することがある。
【0005】
したがって、ノイズの影響を軽減することができる車両用のアンテナ装置を提供することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、車両に取り付けられる車両用のアンテナ装置が提供される。このアンテナ装置は、受信面を有し、該受信面において第1の周波数帯の電波を受信する第1のアンテナ素子と、第1のアンテナ素子に対して離間すると共に、受信面に垂直な方向から見て第1のアンテナ素子の少なくとも一部に対して重なるように配置された遮蔽部材と、第1のアンテナ素子及び遮蔽部材に離間して設けられ、第1の周波数帯よりも高い第2の周波数帯の電波を受信する第2のアンテナ素子と、を備え、第1のアンテナ素子は、第1の縁部と、該第1の縁部よりも車両に対して離れた位置に配置される第2の縁部とを有し、受信面に垂直な方向から見て、第2のアンテナ素子は、第1のアンテナ素子よりも車両から離れた位置において第2の縁部に沿って延在する。
【0007】
このアンテナ装置では、遮蔽部材が第1のアンテナ素子の少なくとも一部に対して重なるように設けられているので、遮蔽部材によって第1のアンテナ素子をノイズ源に対して遮蔽することができる。さらに、第2のアンテナが、第1のアンテナ素子よりも車両から離れた位置に設けられているので、第2のアンテナ素子へのノイズの影響を軽減することができる。したがって、このアンテナ装置では、車両に搭載された電子機器などから放射されるノイズの影響を軽減することができ、その結果、第1のアンテナ素子及び第2のアンテナ素子の受信性能を改善することができる。
【0008】
一実施形態では、第1のアンテナ素子は、FM放送波を受信し、第2のアンテナ素子は、DAB放送波を受信してもよい。なお、第1のアンテナ素子は、AM放送波及びFM放送波を受信してもよい。
【0009】
一実施形態では、第1のアンテナの受信面は、第1の領域と該第1の領域よりも車両に近接して配置された第2の領域とを有し、遮蔽部材は、受信面に垂直な方向から見て、受信面のうち第1の領域のみに重なっていてもよい。第1のアンテナ素子の近傍に導体が存在すると、第1のアンテナ素子の容量に変化が生じて、受信感度が低下することがある。この実施形態では、第1のアンテナ素子と遮蔽部材との重なりが部分的であるので、第1のアンテナ素子の受信感度の低下を抑制することができる。
【0010】
遮蔽部材は、受信面に対面する主部と、主部に対して傾斜する屈曲部とを有し、屈曲部は、第1のアンテナ素子と第2のアンテナ素子との間に少なくとも部分的に介在してもよい。この実施形態では、第1のアンテナ素子と第2のアンテナ素子との間に屈曲部が介在することによって、第1のアンテナ素子と第2のアンテナ素子との干渉を抑制することができる。
【0011】
一実施形態では、遮蔽部材が車両に電気的に接続されていてもよい。遮蔽部材が車両に電気的に接続されることにより、遮蔽部材を車両を介して接地させることができるので、第1のアンテナ素子及び第2のアンテナ素子の受信感度の低下を抑制することができる。
【0012】
一実施形態では、第1のアンテナ素子及び第2のアンテナ素子が、板金によって構成されていてもよい。
【0013】
一実施形態では、遮蔽部材は、受信面に垂直な方向から見て、第1のアンテナ素子に対して重なる有効遮蔽部と第1のアンテナ素子に対して重ならない遮蔽部付属部とを含み、遮蔽部材には、接地電位に接続する接地部材が取り付けられていてもよい。
【0014】
一実施形態では、第1の縁部に平行な方向を第1の方向とし、受信面に垂直な方向及び第1の方向に垂直な方向を第2の方向としたときに、第2の方向における遮蔽部付属部の幅は、第2の方向における有効遮蔽部の幅よりも小さく、第1の方向における有効遮蔽部の一方の端部と遮蔽部材に対する接地部材の接続位置との第1の方向における距離、及び、第1の方向における有効遮蔽部の他方の端部と遮蔽部材に対する接地部材の接続位置との第1の方向における距離のうち大きい方の距離は、第2のアンテナ素子で受信される電波の波長の8分の1以下であってもよい。有効遮蔽部の端部と遮蔽部材に対する接地部材の接続位置との第1の方向における距離を第2のアンテナ素子で受信される電波の波長の8分の1以下にすることにより、第2のアンテナ素子と遮蔽部材との共振を抑制することができる。その結果、第2のアンテナ素子の受信感度の劣化を抑制することができる。
【0015】
一実施形態では、第1の縁部に平行な方向を第1の方向とし、受信面に垂直な方向及び第1の方向に垂直な方向を第2の方向としたときに、第2の方向における遮蔽部付属部の幅は、第2の方向における有効遮蔽部の幅よりも大きく、第1の方向における有効遮蔽部の一方の端部と遮蔽部材に対する接地部材の接続位置との第1の方向における距離、及び、第1の方向における有効遮蔽部の他方の端部と遮蔽部材に対する接地部材の接続位置との第1の方向における距離のうち大きい方の距離は、第2のアンテナ素子で受信される電波の波長の5.6分の1以下であってもよい。有効遮蔽部の端部と遮蔽部材に対する接地部材の接続位置との第1の方向における距離を第2のアンテナ素子で受信される電波の波長の5.6分の1以下にすることにより、第2のアンテナ素子と遮蔽部材との共振を抑制することができる。その結果、第2のアンテナ素子の受信感度の劣化を抑制することができる。
【0016】
一実施形態では、有効遮蔽部及び遮蔽部付属部が互いに離間していてもよい。
【0017】
一実施形態では、接地部材が、遮蔽部材を車両に連結するブラケットであってもよい。この実施形態では、ブラケットを用いて遮蔽部材を車両に固定することができる。
【0018】
遮蔽部材は、受信面に垂直な方向から見て、第1のアンテナ素子に対して重なる有効遮蔽部と第1のアンテナ素子に対して重ならない遮蔽部付属部とを含み、有効遮蔽部及び遮蔽部付属部が互いに離間しており、有効遮蔽部と遮蔽部付属部とを電気的に接続し、遮蔽部材の線路長を調整する線路長調整部を更に備えていてもよい。線路長調整部によって、例えば遮蔽部材の共振周波数を第1のアンテナ素子及び第2のアンテナ素子によって受信される電波の周波数とは異なる周波数に調整することで、第1のアンテナ素子と遮蔽部材との共振、及び、第2のアンテナ素子と遮蔽部材との共振を抑制することができる。
【0019】
なお、線路長調整部がコイル又はメアンダパターンを含んでいてもよい。線路長調整部がコイル又はメアンダパターンを含むことにより、遮蔽部材の線路長を調整することが可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様及び種々の実施形態によれば、ノイズの影響を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】一実施形態に係るアンテナ装置を示す上面図である。
【
図2】一実施形態に係るアンテナ装置を示す下面図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】回路基板の機能的構成を示すブロック図である。
【
図5】車両に取り付けられたアンテナ装置を示す一部破断側面図である。
【
図6】車両に取り付けられたアンテナ装置を示す上面図である。
【
図7】比較実験例1及び比較実験例2で用いたアンテナ装置を示す上面図である。
【
図8】比較実験例1及び比較実験例2におけるDAB放送波の受信感度を示すグラフである。
【
図9】比較実験例1及び比較実験例2におけるFM放送波の受信感度を示すグラフである。
【
図10】実験例1におけるDAB放送波の受信感度を示すグラフである。
【
図11】実験例1におけるFM放送波の水平偏波の受信感度を示すグラフである。
【
図12】実験例1におけるFM放送波の垂直偏波の受信感度を示すグラフである。
【
図13】別の実施形態に係るアンテナ装置を示す下面図である。
【
図14】更に別の実施形態に係るアンテナ装置を示す下面図である。
【
図15】更に別の実施形態に係るアンテナ装置を示す下面図である。
【
図16】更に別の実施形態に係るアンテナ装置を示す下面図である。
【
図17】更に別の実施形態に係るアンテナ装置を示す下面図である。
【
図18】更に別の実施形態に係るアンテナ装置を示す下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0023】
図1及び
図2は、一実施形態に係るアンテナ装置1を示す上面図及び下面図である。
図3は、
図1に示すアンテナ装置1のIII-III線に沿った断面図である。一実施形態のアンテナ装置1は、自動車等の車両に搭載されるモノポールアンテナ又はダイポールアンテナであり、例えばAMラジオ、FMラジオ、DAB(Digital Audio Broadcast)等に用いられる電波を受信する機能を有する。このアンテナ装置1は、車両に取り付けられ、車両の内部に搭載された電子機器に接続される。例えば、アンテナ装置1は、車両のリアスポイラの内部に収容される。
【0024】
図1~
図3に示すように、アンテナ装置1は、第1のアンテナ素子10、第2のアンテナ素子20、遮蔽部材30、絶縁部材40及び回路基板50を備えている。
【0025】
第1のアンテナ素子10は、第1の周波数帯域の電波として、例えばAM放送波及びFM放送波を受信する。第1のアンテナ素子10は、例えば略長方形の平面形状を有する板状アンテナであり、合金製の板金によって構成されている。第1のアンテナ素子10は、一対の主面11,12を有している。一対の主面11,12は、AM放送波及びFM放送波を受信する受信面を構成する。以下では、後述する一対の縁部13c,13dに平行な方向をX方向(第2の方向)とし、後述する一対の縁部13a,13bに平行な方向をY方向(第1の方向)とし、第1のアンテナ素子10の受信面(主面11,12)に垂直な方向をZ方向として説明する。
【0026】
図1に示すように、第1のアンテナ素子10は、Z方向から見て略長方形をなしており、一対の縁部13a,13bと一対の縁部13c,13dとを有している。一対の縁部13a,13bはY方向に沿って互いに平行に延在し、一対の縁部13c,13dはX方向に沿って互いに平行に延在している。第1のアンテナ素子10の主面11は、一対の縁部13c,13dに平行な方向、すなわちX方向において、第1の領域R1及び第2の領域R2に区画されている。第1の領域R1は、一対の縁部13a,13bのうち縁部13b側に位置する主面11上の領域である。第2の領域R2は、一対の縁部13a,13bのうち縁部13a側に位置する主面11上の領域である。すなわち、第2の領域R2は、第1の領域R1よりも車両に近接して配置されている。後述するように、第1の領域R1は、Z方向から見て、遮蔽部材30に対して重なるように配置されている。
【0027】
第1のアンテナ素子10は、例えば、X方向において20mm以上60mm以下の幅W1を有し、Y方向において80mm以上260mm以下の長さL1を有している。
【0028】
第1のアンテナ素子10の縁部13dには、給電部14が形成されている。この給電部14には、給電線15の一端が接続されている。給電線15の他端は、回路基板50に接続されている。給電線15は、第1のアンテナ素子10によって受信された信号を回路基板50に伝送する。
【0029】
第2のアンテナ素子20は、第2の周波数帯の電波として、例えばDAB放送波を受信する。第2の周波数帯域は、上述した第1の周波数帯よりも高い周波数帯である。第2のアンテナ素子20は、例えば略長方形の平面形状を有する板状アンテナであり、合金製の板金によって構成されている。第2のアンテナ素子20は、第1のアンテナ素子10及び遮蔽部材30に離間して設けられている。
【0030】
第2のアンテナ素子20は、Y方向を長手方向とする長尺状をなしている。より詳細には、第2のアンテナ素子20は、例えば、X方向において5mm以上20mm以下の幅W2を有し、Y方向において70mm以上300mm以下の長さL2を有している。
【0031】
図1に示すように、第2のアンテナ素子20は、第1のアンテナ素子10に対してX方向にずれた位置に配置され、Z方向から見て第1のアンテナ素子10の縁部13bに沿って延在している。第2のアンテナ素子20は、第1のアンテナ素子10と略平行に延在しており、第1のアンテナ素子10よりもZ方向における下方に位置している(
図3参照)。後述するように、アンテナ装置1が車両に取り付けられた状態のときに、第2のアンテナ素子20は、第1のアンテナ素子10よりも車両に対して離れた位置に配置される。
【0032】
第2のアンテナ素子20は、一対の縁部21a,21bと一対の縁部21c,21dとを有している。一対の縁部21a,21bはY方向に沿って互いに平行に延在し、一対の縁部21c,21dはX方向に沿って互いに平行に延在している。第2のアンテナ素子20の縁部21cは、第1のアンテナ素子10の縁部13cよりY方向の外側に位置し、第2のアンテナ素子20の縁部21dは、第1のアンテナ素子10の縁部13dよりY方向の外側に位置している。すなわち、Y方向における第2のアンテナ素子20の長さL2は、Y方向における第1のアンテナ素子10の長さL1よりも長い。Z方向から見たときに、第2のアンテナ素子20の縁部21aと第1のアンテナ素子10の縁部13bとは、X方向において対向するように配置されている。なお、X方向における第1のアンテナ素子10と第2のアンテナ素子との間の距離D1は、例えば10mm以上150mm以下に設定されている(
図1参照)。
【0033】
第2のアンテナ素子20の縁部21dには、給電部22が形成されている。この給電部22には、給電線23の一端が接続されている。給電線23の他端は、回路基板50に接続されている。給電線23は、第2のアンテナ素子20によって受信された信号を回路基板50に伝送する。
【0034】
遮蔽部材30は、Z方向において第1のアンテナ素子10に対して離間して配置されている。遮蔽部材30は、例えば合金製の板金であり、第1のアンテナ素子10と車両に搭載されたノイズ源との間に介在して、第1のアンテナ素子10をノイズ源に対して遮蔽する機能を有する。
【0035】
図2及び
図3に示すように、遮蔽部材30は、主部31及び屈曲部32を有している。主部31は、板状をなし、第1のアンテナ素子10と対面している。主部31は、Z方向から見て、第1のアンテナ素子10一部に重なるように配置されている。より具体的には、Z方向から見て、主部31は、第1のアンテナ素子10の第1の領域R1に対して重なり、第2の領域R2には重ならないように配置されている。すなわち、Z方向から見た場合に、第1の領域R1及び第2の領域R2のうち第1の領域R1のみが遮蔽部材30に対して重なっている。したがって、ノイズ源から第1のアンテナ素子10の第1の領域R1に向かうノイズは遮蔽部材30によって遮断される。
【0036】
屈曲部32は、略長方形の平面形状を有する板材であり、主部31に対して傾斜している。屈曲部32は、X方向における主部31の一方の端部に連結されており、主部31と屈曲部32との連結部はY方向に延在している(
図2参照)。屈曲部32は、例えば遮蔽部材30の一部が折り曲げられて形成されている。この屈曲部32は、第1のアンテナ素子10と第2のアンテナ素子20との間に少なくとも部分的に介在する。したがって、第1のアンテナ素子10と第2のアンテナ素子20との間に形成される電界は屈曲部32によって遮断される。その結果、第1のアンテナ素子10と第2のアンテナ素子20との干渉が抑制される。なお、Y方向における第2のアンテナ素子20と遮蔽部材30との間の最短距離D2は、例えば10mm以上に設定されている(
図3参照)。
【0037】
遮蔽部材30の主部31には、導電性を有するブラケット33が接続されている。
図2に示すように、ブラケット33は、主部31から縁部13aを超えてX方向に延びている。ブラケット33には、複数のねじ穴33aが形成され、複数のねじにより、遮蔽部材30が車両に固定される。すなわち、アンテナ装置1は、ブラケット33を介して車体に連結される。ブラケット33は導電性を有しているので、遮蔽部材30はブラケット33を介して車両に電気的に接続され、接地される。なお、ブラケット33は、導電性を有する他のブラケットを介して車両に固定されてもよい。
【0038】
絶縁部材40は、ポリプロピレン(PP)等の絶縁材料によって構成され、基部41、保持部42及び基板支持部43を含んでいる。これら基部41、保持部42及び基板支持部43は、一体的に形成されていてもよい。
【0039】
図3に示すように、基部41は、略直方体形状を有しており、第1のアンテナ素子10と遮蔽部材30との間に設けられている。基部41の上面は、例えばボルトやリベット等を用いた機械的接合法によって第1のアンテナ素子10に対して接合されている。基部41の下面は、例えばボルトやリベット等を用いた機械的接合法によって遮蔽部材30の主部31に対して接合されている。絶縁部材40の基部41は、第1のアンテナ素子10と遮蔽部材30との間の間隔が所定の距離に維持されるように第1のアンテナ素子10と遮蔽部材30とを保持する。
【0040】
保持部42は、Y方向から見てL字状を呈している。保持部42の一端は基部41に連結され、保持部の他端は第2のアンテナ素子20に接続されている。保持部42は、第2のアンテナ素子20を吊り下げた状態で保持する。基板支持部43は、基部41に対してY方向にずれた位置に配置され、その上に回路基板50を支持する。
【0041】
回路基板50は、絶縁部材40の基板支持部43上に設けられている。回路基板50は、第1のアンテナ素子10及び第2のアンテナ素子20で受信された信号を増幅する機能を有する。
図4は、回路基板50の機能的構成の一例を示すブロック図である。
図4に示すように、回路基板50は、コイル51、分配器52、AM増幅器53、FM増幅器54、コイル56及びDAB増幅器57を備えている。
【0042】
コイル51は、例えば空芯コイルである。このコイル51には、給電線15を介して第1のアンテナ素子10によって受信されたAM信号及びFM信号が伝送される。コイル51は、第1のアンテナ素子10のアンテナ長を調節する機能を有する。コイル51を通過した信号は、分配器52に出力される。
【0043】
分配器52は、コイル51から出力された信号をAM信号及びFM信号に分割してAM増幅器53及びFM増幅器54にそれぞれ出力する。AM増幅器53及びFM増幅器54は、例えば集中定数回路であり、分配器52によって分割されたAM信号及びFM信号をそれぞれ増幅する。増幅されたAM信号及びFM信号は、例えば同軸ケーブルによって、車両内に設けられた電子機器に出力される。
【0044】
コイル56は、例えば空芯コイル又はチップインダクタである。このコイル56には、給電線23を介して第2のアンテナ素子20によって受信されたDAB信号が伝送される。コイル56は、第2のアンテナ素子20のアンテナ長を調節する機能を有する。コイル56を通過したDAB信号は、DAB増幅器57に出力される。DAB増幅器57は、例えば集中定数回路であり、コイル56を通過したDAB信号を増幅する。増幅されたDAB信号は、例えば同軸ケーブルによって、車両内に設けられた電子機器に出力される。
【0045】
上述したアンテナ装置1は、例えば車両を構成する車体に取り付けられる。
図5は、車両に取り付けられたアンテナ装置1を示す側面図であり、
図6は、車両に取り付けられたアンテナ装置1を示す上面図である。なお、
図5では、車体の一部を破断して図示しており、
図6では、後述するリアスポイラ120を省略して図示している。
【0046】
図5に示す車両100は、リアスポイラ120を備えている。リアスポイラ120は、主に絶縁性の樹脂によって構成され、ルーフパネル101bの後方に設けられている。リアスポイラ120は、車両100の走行時に周囲の空気流を整流する外装部品として用いられる。
図5に示すように、アンテナ装置1は、例えばリアスポイラ120の内部に配置される。
【0047】
図5及び
図6に示すように、アンテナ装置1は、ブラケット33と車両100の車体101とをボルト111を用いて締結することによって、車両100のバックドア101a上部に固定されている。このとき、アンテナ装置1は、第1のアンテナ素子10の縁部13a(第1の縁部)よりも縁部13b(第2の縁部)が車体101に対して離れた位置に配置されるように車体101に固定される。なお、X方向における車体101と第1のアンテナ素子10との間の距離D3は、例えば30mm以上400mm以下に設定されてもよい。
【0048】
このように、アンテナ装置1が車体101に固定されることによって、第2のアンテナ素子20は、第1のアンテナ素子10よりも車体101から離れた位置(車両100の後方)に配置される。このとき、車体101と第2のアンテナ素子20との間の距離は、例えば70mm以上600mm以下に設定されてもよい。アンテナ装置1の遮蔽部材30がブラケット33を介して車体101に取り付けられることにより、アンテナ装置1の遮蔽部材30は、車体101に電気的に接続され、接地される。
【0049】
上記のように、アンテナ装置1が車体101に固定されることにより、Z方向において第1のアンテナ素子10は、第2のアンテナ素子20及び遮蔽部材30よりも上方に配置される。したがって、遮蔽部材30は、車両100のリアガラス103と第1のアンテナ素子10との間に介在する。特に、第1のアンテナ素子10の第1の領域R1は、Z方向において遮蔽部材30に対して重なるように配置されている。したがって、例えばノイズ源であるリアランプ102から発生して第1のアンテナ素子10の第1の領域R1へ向かうノイズは、遮蔽部材30によって遮断される。なお、バックドア101aには、リアランプ102以外にもハイマウントストップランプ、デフォッガ、リアワイパー、バックカメラ等のノイズ源となる電装品が設けられることがある。遮蔽部材30は、これらのノイズ源から発生したノイズの少なくとも一部を遮断する。
【0050】
一方、第1のアンテナ素子10の第2の領域R2は、バックドア101aの近くに配置されている。第2の領域R2は、Z方向において遮蔽部材30に対して重なるように配置されていないものの、第2の領域R2と車両100内のノイズ源との間には、バックドア101aが介在することとなる。このバックドア101aによって、車体101の内部に設けられたインバータ、モータ、ルームランプ等のノイズ源から第2の領域R2に向かうノイズを遮断することができる。したがって、このアンテナ装置1では、第1のアンテナ素子10に対するノイズの遮断性能をより向上させることができる。
【0051】
また、
図6に示すように、Z方向から見て、第2のアンテナ素子20は、第1のアンテナ素子10よりも車体101から離れた位置に配置されている。第2のアンテナ素子20は、車体101の内部に搭載されたノイズ源から離れた位置に配置されているので、第2のアンテナ素子20に対するノイズの影響を軽減することができる。さらに、第1のアンテナ素子10と第2のアンテナ素子20との間には、遮蔽部材30が部分的に介在しているので、第1のアンテナ素子10と第2のアンテナ素子20との干渉を抑制することができる。したがって、上記アンテナ装置によれば、ノイズの影響を軽減することが可能となり、その結果、第1のアンテナ素子10及び第2のアンテナ素子20の受信性能を改善することができる。
【0052】
さらに、
図6に示すように、Z方向から見て、第2のアンテナ素子20は、第1のアンテナ素子10の縁部13bに沿って延在している。すなわち、第1のアンテナ素子10と第2のアンテナ素子20とは、Y方向において互いに重なるように配置されているので、Y方向におけるアンテナ装置1の幅を小さくすることができる。したがって、アンテナ装置1を小型化することが可能となる。
【0053】
以下、実験例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
【0054】
まず、比較実験例1及び比較実験例2について説明する。比較実験例1及び比較実験例2では、
図7に示すように、FMアンテナ素子210及びDABアンテナ素子220を備え、遮蔽部材を備えないアンテナ装置201を用意し、このアンテナ装置201の受信感度を測定した。FMアンテナ素子210は、X方向において30mmの幅を有し、Y方向において140mmの長さを有するFM放送波受信用のアンテナ素子である。DABアンテナ素子220は、X方向において10mmの幅を有し、Y方向において200mmの長さを有するDAB放送波受信用のアンテナ素子である。
【0055】
比較実験例1では、FMアンテナ素子210よりもDABアンテナ素子220が車両から離れた位置に配置されるようにアンテナ装置201を車両に取り付けた状態でFMアンテナ素子210及びDABアンテナ素子220の受信感度を測定した。比較実験例2では、FMアンテナ素子210よりもDABアンテナ素子220が車両に近い位置に配置されるようにアンテナ装置201を車両に取り付けた状態でFMアンテナ素子210及びDABアンテナ素子220の受信感度を測定した。
【0056】
図8は、DABアンテナ素子220によるDAB放送波の受信感度を示すグラフであり、
図9は、FMアンテナ素子210によるFM放送波の受信感度を示すグラフである。
図8に示すように、比較実験例2におけるDABアンテナ素子220の受信感度は、比較実験例1におけるDABアンテナ素子220の受信感度よりも低かった。一方、
図9に示すように、比較実験例1におけるFMアンテナ素子210の受信感度は、比較実験例2におけるFMアンテナ素子210の受信感度よりも低かった。
【0057】
図8及び
図9に示す結果から、FMアンテナ素子210よりもDABアンテナ素子220を車両から近い位置に配置した場合にはDAB放送波の受信性能が劣化し、反対に、FMアンテナ素子210よりもDABアンテナ素子220を車両から遠い位置に配置した場合にはFM放送波の受信性能が劣化することが確認された。特に、比較実験例1では、第1のアンテナ素子10のアンテナ性能が広い周波数帯域で30[dBμV]以下となり、大幅にFM放送波の受信性能が劣化することが確認された。これらの結果から、
図7に示すアンテナ装置201では、FM放送波及びDAB放送波の受信性能を両立することが難しいことが確認された。
【0058】
次に、実験例1について説明する。実験例1では、
図1に示すように、第1のアンテナ素子10、第2のアンテナ素子20及び遮蔽部材30を備えるアンテナ装置1を用意した。そして、
図6に示すように、第2のアンテナ素子20が第1のアンテナ素子10よりも車体101に対して離れた位置に配置されるようにアンテナ装置1を車両に固定し、第1のアンテナ素子10及び第2のアンテナ素子20のアンテナ性能を測定した。なお、実験例1では、第1のアンテナ素子10として、X方向において35mmの幅W1を有し、Y方向において180mmの長さL1を有するFM放送波受信用のアンテナ素子を用い、第2のアンテナ素子20としては、X方向において10mmの幅W2を有し、Y方向において280mmの長さL2を有するDAB放送波受信用のアンテナ素子を用いた。車体101と第2のアンテナ素子20との間の距離D4は、100mmに設定した。
【0059】
図10は、実施例1における第2のアンテナ素子20によるDAB放送波の受信感度を示すグラフである。
図11は、実施例1における第1のアンテナ素子10によるFM放送波の水平偏波の受信感度を示すグラフであり、
図12は、実施例1における第1のアンテナ素子10によるFM放送波の垂直偏波の受信感度を示すグラフである。
図10に示すように、実験例1では、DAB放送波の略全周波数帯域で第2のアンテナ素子20の受信感度が-10[dBd]よりも高くなっており、比較実験例2と比較してDAB放送波の受信感度が改善することが確認された。
【0060】
また、
図11及び
図12に示すように、実験例1では、FM放送波の略全周波数帯域において第1のアンテナ素子10の水平偏波及び垂直偏波の受信感度が30[dBμV]よりも高くなっており、比較実験例1と比較してFM放送波の受信感度が改善することが確認された。これらの結果から、一実施形態に係るアンテナ装置1によれば、FM放送波及びDAB放送波の受信性能を双方とも高い水準に保つことができることが確認された。このような効果は、第1のアンテナ素子10と第2のアンテナ素子20との干渉を軽減させたことに起因するものであると推測される。
【0061】
以下、別の実施形態に係るアンテナ装置について説明する。
図13は、別の実施形態に係るアンテナ装置を示す下面図である。以下では、上述したアンテナ装置1との相違点について主に説明し、重複する説明は省略する。
【0062】
図13に示すアンテナ装置1Aは、接地部材35を更に含む点でアンテナ装置1と相違する。なお以下の説明では、遮蔽部材30のうち第1のアンテナ素子10に重なる部分を有効遮蔽部36と称し、遮蔽部材30のうち第1のアンテナ素子10に重ならない部分を遮蔽部付属部37と称するものとする。アンテナ装置1Aでは、X方向における遮蔽部付属部37の幅W4は、X方向における有効遮蔽部36の幅W3より小さく形成されている。
【0063】
接地部材35は、遮蔽部材30の有効遮蔽部36又は遮蔽部付属部37に取り付けられている。この接地部材35は、接地電位に接続されている。すなわち、遮蔽部材30は、接地部材35を介して電気的に接地されている。なお、接地部材35は、任意の接続方法で車体101に接続される。例えば、接地部材35は、車体101にケーブル等を用いて物理的に接続されていてもよいし、車体101に樹脂等を介して容量結合されていてもよい。なお、遮蔽部材30を車体101に連結するブラケットを接地部材35として利用してもよい。
【0064】
図13に示すように、遮蔽部材30に対する接地部材35の接続位置とY方向における遮蔽部材30の一方の端部30aとの間のY方向における距離、及び、遮蔽部材30に対する接地部材35の接続位置とY方向における遮蔽部材30の他方の端部30bとの間のY方向における距離のうち、大きい方の距離D5は、第2のアンテナ素子20で受信される電波の波長の8分の1以下に設定されている。例えば第2のアンテナ素子20で受信される電波が240MHzの上限周波数を有するDAB放送波である場合には、距離D5は、156mm以下に設定される。なお、距離D5を156mm以下に設定することが可能であれば、接地部材35は有効遮蔽部36及び遮蔽部付属部37の何れに接続されてもよい。
【0065】
第2のアンテナ素子20及び遮蔽部材30は、略平行に設けられ、且つ、Y方向において互いに近い長さを有しているので、第2のアンテナ素子20と遮蔽部材30との間には電磁界結合が生じて共振が発生することがある。このような共振は、第2のアンテナ素子20の受信感度を劣化させる原因となる。これに対し、遮蔽部材30に対する接地部材35の接続位置と遮蔽部材30の一方の端部30a又は他方の端部30bと間のY方向における距離D5を第2のアンテナ素子20で受信される電波の波長の8分の1以下にすることにより、第2のアンテナ素子20と遮蔽部材30との共振を抑制することができ、その結果、第2のアンテナ素子20の受信感度の劣化を抑制することが可能となる。
【0066】
なお、電流の流れの関係上、第2のアンテナ素子20と遮蔽部材30との共振は、第2のアンテナ素子20の開放端側で発生しやすい。アンテナ装置1Aでは、遮蔽部材30の一方の端部30aが他方の端部30bよりも第2のアンテナ素子20の開放端に近接して配置されているので、接地部材35の接続位置と一方の端部30aとの間のY方向における距離を156mm以下に設定する方が、接地部材35の接続位置と他方の端部30bとの間のY方向における距離を156mm以下に設定するよりも第2のアンテナ素子20と遮蔽部材30との間の共振をより効果的に抑制することが可能である。
【0067】
次に、
図14を参照する。
図14は、更に別の実施形態に係るアンテナ装置1Bを示す下面図である。アンテナ装置1Bは、X方向における遮蔽部付属部37の幅W4が、X方向における有効遮蔽部36の幅W3以上である点でアンテナ装置1Aと相違する。
【0068】
このアンテナ装置1Bでは、遮蔽部材30に対する接地部材35の接続位置とY方向における遮蔽部材30の一方の端部30aとの間のY方向における距離、及び、遮蔽部材30に対する接地部材35の接続位置とY方向における遮蔽部材30の他方の端部30bとの間のY方向における距離のうち、大きい方の距離D5は、第2のアンテナ素子20で受信される電波の波長の5.6分の1以下に設定されている。例えば第2のアンテナ素子20によって受信される電波が240MHzの上限周波数を有するDAB放送波である場合には、距離D5は220mm以下に設定される。
【0069】
本実施形態のアンテナ装置1Bでは、遮蔽部材30がアンテナ装置1Aの遮蔽部材30と異なる線路長を有するので、距離D5が第2のアンテナ素子20で受信される電波の波長の8分の1以上であっても、距離D5が第2のアンテナ素子20で受信される電波の波長の5.6分の1以下であれば遮蔽部材30及び第2のアンテナ素子20の共振を抑制することが可能となる。
【0070】
なお、電流の流れの関係上、第2のアンテナ素子20と遮蔽部材30との共振は、第2のアンテナ素子20の開放端側で発生しやすい。アンテナ装置1Bでは、遮蔽部材30の一方の端部30aが他方の端部30bよりも第2のアンテナ素子20の開放端に近接して配置されているので、接地部材35の接続位置と一方の端部30aとの間のY方向における距離を220mm以下に設定する方が、接地部材35の接続位置と他方の端部30bとの間のY方向における距離を220mm以下に設定するよりも第2のアンテナ素子20と遮蔽部材30との間の共振をより効果的に抑制することが可能である。
【0071】
次に、
図15を参照する。
図15は、更に別の実施形態に係るアンテナ装置1Cを示している。アンテナ装置1Cは、遮蔽部材30が複数の接地部材35を含む点でアンテナ装置1Aと相違する。
図15に示すように、アンテナ装置1Cでは、複数の接地部材35のうち遮蔽部材30の端部30a側に配置された接地部材35の遮蔽部材30に対する接続位置と遮蔽部材30の端部30aとの間のY方向における距離D5が、第2のアンテナ素子20で受信される電波の波長の8分の1以下に設定されている。このアンテナ装置1Cにおいても、第2のアンテナ素子20と遮蔽部材30との共振を抑制し、第2のアンテナ素子20の受信感度の劣化を抑制することが可能である。
【0072】
上述した実施形態では、有効遮蔽部36と遮蔽部付属部37とが1枚の板材によって構成されているが、
図16に示すように、有効遮蔽部36と遮蔽部付属部37とは分離されていてもよい。
図16に示すアンテナ装置1Dでは、有効遮蔽部36と遮蔽部付属部37との間に間隙38が形成され、有効遮蔽部36と遮蔽部付属部37とが互いに離間して配置されている。この実施形態では、有効遮蔽部36は接地部材35を介して接地電位に接続され、遮蔽部付属部37はブラケット33を介して接地電位に接続されている。なお、遮蔽部材30は複数の部材から構成されていてもよい。遮蔽部材30が複数の部材から構成されている場合には、これら複数の部材は互いに接続されていてもよいし、互いに接続されていなくてもよい。
【0073】
図17は、更に別の実施形態に係るアンテナ装置1Eを示している。アンテナ装置1Eは、接地部材35を備えず、遮蔽部材30の線路長を調整する線路長調整部39を更に備える点でアンテナ装置1Dと相違する。
図17に示すように、線路長調整部39は、間隙38内に配置され、有効遮蔽部36と遮蔽部付属部37とを電気的に接続する。線路長調整部39は、例えば遮蔽部材30の共振周波数が、第1のアンテナ素子10によって受信される電波の周波数と第2のアンテナ素子20によって受信される電波の周波数との間の周波数になるように遮蔽部材30の線路長を調整する。例えば、第1のアンテナ素子10が422kHz~1710kHzのAM放送波、及び、76MHz~108MHzのFM放送波を受信し、第2のアンテナ素子20が174MHz~240MHzのDAB放送波を受信する場合には、線路長調整部39は、遮蔽部材30の共振周波数が141MHzに対してプラスマイナス10MHzの範囲内になるように遮蔽部材30の線路長を調整する。なお、線路長調整部39は、線路長を調整する素子として、例えばコイル又はメアンダ形状を有する配線(メアンダパターン)を含んでいてもよい。
【0074】
このアンテナ装置1Eでは、線路長調整部39によって、遮蔽部材30の共振周波数が、第1のアンテナ素子10によって受信される電波の周波数及び第2のアンテナ素子20によって受信される電波の周波数とは異なる周波数になるように遮蔽部材30の線路長が調整されることにより、第1のアンテナ素子10と遮蔽部材30との共振、及び、第2のアンテナ素子20と遮蔽部材30との共振を抑制することができる。したがって、第1のアンテナ素子10及び第2のアンテナ素子20の受信感度の劣化を抑制することが可能となる。
【0075】
なお、上述したアンテナ装置1A~1Dは、ブラケット33及び接地部材35の双方を備えているが、ブラケット33及び接地部材35の一方のみを備えていてもよい。例えば、例えば、
図18に示すように、遮蔽部材30には、ブラケット33が取り付けられず、接地部材35のみが遮蔽部材30に取り付けられていてもよい。
【0076】
以上、種々の実施形態に係るアンテナ装置について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形態様を構成可能である。
【0077】
例えば、アンテナ装置1の第1のアンテナ素子10、第2のアンテナ素子20及び遮蔽部材30の少なくとも1つが可撓性を有してもよい。この場合、アンテナ装置1をリアスポイラ120の内面に沿った形状に容易に変形させた状態で、アンテナ装置1をリアスポイラ120内に収容することが可能となる。
【0078】
図5に示す実施形態では、アンテナ装置1がリアスポイラ120内に設けられているが、アンテナ装置1の設置位置は、リアスポイラ120の内部に限定されるものではない。例えば、アンテナ装置1は、車両100のサイドドア又はルーフ前部に設けられていてもよい。また、アンテナ装置1は、リアスポイラ120とは異なる外装部品内に設けられていてもよい。アンテナ装置1が、これらの位置に設けられている場合であっても、第1のアンテナ素子10及び第2のアンテナ素子20へのノイズの影響を軽減することができ、これらのアンテナの受信性能を改善することができる。
【0079】
さらに、第1のアンテナ素子10及び第2のアンテナ素子20の平面形状は、長方形に限定されるものではない。例えば、第1のアンテナ素子10及び第2のアンテナ素子20は、円形状又は多角形状の平面形状を有していてもよい。また、第1のアンテナ素子10及び第2のアンテナ素子20は、必ずしも板金によって構成されていなくてもよく、網状、格子状又はフィルム状の導体によって構成されていてもよい。なお、第1のアンテナ素子10及び第2のアンテナ素子20は、メアンダ構造を有してもよい。
【0080】
さらに、
図1では、回路基板50が第1のアンテナ素子10に対してY方向にずれた位置に配置されているが、例えば回路基板50は、第1のアンテナ素子10と遮蔽部材30との間に設けられていてもよい。また、回路基板50は、車両の内部に配置されていてもよい。
【0081】
上述の実施形態では、第1のアンテナ素子10がAM放送波及びFM放送波を受信し、第2のアンテナ素子20がDAB放送波を受信しているが、第1のアンテナ素子10が第1の周波数帯の電波を受信し、第2のアンテナ素子20が、第1の周波数帯よりも高い第2の周波数帯の電波を受信する限り、第1のアンテナ素子10及び第2のアンテナ素子20の種類は限定されるものではない。例えば、第1のアンテナ素子10は、FM放送波だけを受信してもよい。
【0082】
なお、上記実施形態では、Z方向から見て、遮蔽部材30が第1の領域R1のみに重なるように配置されているが、遮蔽部材30は、第1のアンテナ素子10の全面に重なるように配置されていてもよい。また、遮蔽部材30は、例えば網状又は格子状の導電部材によって構成されていてもよい。また、遮蔽部材30は、絶縁材料の表面に導電材料が被覆された板材であってもよい。このような遮蔽部材30は、例えば、樹脂性の板状部材に対して導電材料を塗布し、導電材料を蒸着し、或いは、導電材料をメッキすることによって形成される。
【0083】
また、
図1に示す実施形態では、Y方向における第2のアンテナ素子20の長さL2が、Y方向における第1のアンテナ素子10の長さL1よりも長く形成されているが、アンテナ装置1が搭載される車両によっては、Y方向における第2のアンテナ素子20の長さL2は、Y方向における第1のアンテナ素子10の長さL1と同じであってもよいし、長さL1よりも短くてもよい。上述した種々の実施形態は、矛盾のない範囲で組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0084】
1,1A,1B,1C,1D,1E…アンテナ装置、10…第1のアンテナ素子、20…第2のアンテナ素子、13a…縁部(第1の縁部)、13b…縁部(第2の縁部)、30…遮蔽部材、30a,30b…端部、31…主部、32…屈曲部、33…ブラケット、35…接地部材、36…有効遮蔽部、37…遮蔽部付属部、39…線路長調整部、40…絶縁部材、101…車体。