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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】アイウェア
(51)【国際特許分類】
   G02C 5/16 20060101AFI20220126BHJP
   G02C 11/00 20060101ALI20220126BHJP
   G02C 7/06 20060101ALI20220126BHJP
   G02B 3/10 20060101ALI20220126BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20220126BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
G02C5/16
G02C11/00
G02C7/06
G02B3/10
G02F1/13 505
G02F1/1333
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020507369
(86)(22)【出願日】2019-01-11
(86)【国際出願番号】 JP2019000691
(87)【国際公開番号】W WO2019181150
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2018055006
(32)【優先日】2018-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村松 昭宏
(72)【発明者】
【氏名】日野 正喜
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-522842(JP,A)
【文献】実開平05-045637(JP,U)
【文献】実開昭58-128412(JP,U)
【文献】実開昭58-067313(JP,U)
【文献】特開2017-134100(JP,A)
【文献】米国特許第06513926(US,B1)
【文献】特開2008-096598(JP,A)
【文献】特開2008-009044(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0088820(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 5/16
G02C 11/00
G02C 7/06
G02B 3/10
G02F 1/13
G02F 1/1333
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気素子を有するレンズと、
前記レンズを保持し、一部が中空に形成されたフレームと、
前記電気素子の制御を行う制御部と、
前記制御部と配線を介して電気的に接続される電子部品と、
前記配線を内部に収容した状態で前記フレームのテンプルの筐体内部に配置されており、前記フレームの変形に追従して変形する中空部材と、
を有し、
前記中空部材は、コイルバネであって、
前記制御部は前記筐体の前端部付近に収容されており、
前記電子部品は前記筐体の後端部に取り付けられており、
前記配線は、前記コイルバネの内部において前記コイルバネと絶縁された状態で収容されている、
アイウェア。
【請求項2】
前記中空部材は、前記フレームの変形に追従して弾性変形する、
請求項1に記載のアイウェア。
【請求項3】
前記中空部材は、金属で形成される、
請求項1または2に記載のアイウェア。
【請求項4】
前記テンプルは屈曲部を有する耳掛け部を含み、
前記中空部材は、前記屈曲部に配置される、
請求項1から3のいずれか一項に記載のアイウェア。
【請求項5】
前記中空部材は、前記テンプルの耳掛け部の屈曲部を含む所定の範囲において前記フレームの変形に追従して弾性変形する弾性変形領域を有し、かつ、前記テンプルの耳掛け部の屈曲部を含む所定の範囲以外の範囲において前記フレームの変形に追従して変形する非弾性変形領域を有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載のアイウェア。
【請求項6】
前記弾性変形領域は、前記コイルバネで形成され、
前記非弾性変形領域は、金属パイプで形成され、
かつ、前記弾性変形領域と前記非弾性変形領域とが連結されている、
請求項に記載のアイウェア。
【請求項7】
電気素子を有するレンズと、
前記レンズを保持し、一部が中空に形成されたフレームと、
前記電気素子の制御を行う制御部と、
前記制御部と配線を介して電気的に接続される電子部品と、
前記配線を内部に収容した状態で前記フレームのテンプルの筐体内部に配置されており、前記フレームの変形に追従して変形するフレキシブルチューブと、
を有し、
前記フレキシブルチューブは、樹脂管を蛇腹型に加工して形成されており、
前記制御部は前記筐体の前端部付近に収容されており、
前記電子部品は前記筐体の後端部に取り付けられており、
前記配線は、前記フレキシブルチューブの内部において前記フレキシブルチューブと絶縁された状態で収容されている、
アイウェア。
【請求項8】
前記電子部品は、前記制御部に電力を供給する電源である、
請求項1からのいずれ一項に記載のアイウェア。
【請求項9】
前記電子部品は、アイウェアの使用者の身体情報を取得するセンサである、
請求項1からのいずれか一項に記載のアイウェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気素子を有するレンズを有するアイウェアに関する。
【背景技術】
【0002】
メガネやサングラス等のアイウェアの装着時において、使用者が良好な装着感を得るためには、フレーム各部のフィッティング(位置調整)が重要である。装着感を向上させるため、フレームの一部であるテンプルの先端部(モダン)の角度を容易に調整することができる技術が、例えば特許文献1等に開示されている。
【0003】
特許文献1では、テンプルの後端部に中空筒部を形成し、この中空筒部内にコイルバネを設け、このコイルバネの両端部を中空筒部のボトム部とモダンの連結軸部とに接続した状態で、モダンの連結軸部をテンプルの中空筒部に挿入している。このような構成により、モダンの位置をテンプル軸回り方向において自由に調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-92946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電気素子を有するレンズを備えたアイウェアが様々な用途に用いられている。このようなアイウェアでは、電気素子を制御することで、例えばレンズの屈折率、色、偏光状態等を変化させることができる。このような電気素子を有するレンズを備えたアイウェアでは、電気素子に電力を供給するための配線を通すため、フレームを例えば樹脂等で中空に形成する必要がある。樹脂等で中空に形成されたフレームの強度は低いが、例えばフレーム内に金属パイプ等の中空部材を配置することで、強度を確保することができる。そして、金属パイプ内に配線を通すことで、配線を保護することができる。
【0006】
このような電気素子を有するレンズを備えたアイウェアにおいて、フレーム各部のフィッティングが必要となった場合、樹脂製のフレームに熱を加えて軟化させ、軟化したフレームに力を加えて変形させることでフィッティングが行われる。この際、金属パイプがフレーム内部に配置されていると、フレームとともに金属パイプも変形させる必要が生じ、フィッティングにかかる手間や労力が増大する、という問題があった。また、複数回のフィッティングが必要となった場合、金属パイプにおいて複数回の変形による曲げ癖が生じ、フレームの外形に悪影響が生じることがあった。
【0007】
このため、電気素子を有するレンズを備えたアイウェアにおいても、フレームのフィッティングを好適に行うことができるような構成が要望されている。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、電気素子を有するレンズを備えたアイウェアにおいて、フレームのフィッティングを好適に行うことができるアイウェアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るアイウェアは、電気素子を有するレンズと、前記レンズを保持し、一部が中空に形成されたフレームと、前記電気素子の制御を行う制御部と、前記制御部と配線を介して電気的に接続される電子部品と、前記配線を内部に収容した状態で前記フレームのテンプルの筐体内部に配置されており、前記フレームの変形に追従して変形する中空部材と、を有し、前記中空部材は、コイルバネであって、前記制御部は前記筐体の前端部付近に収容されており、前記電子部品は前記筐体の後端部に取り付けられており、前記配線は、前記コイルバネの内部において前記コイルバネと絶縁された状態で収容されている。
【0010】
本発明に係るアイウェアは、電気素子を有するレンズと、前記レンズを保持し、一部が中空に形成されたフレームと、前記電気素子の制御を行う制御部と、前記制御部と配線を介して電気的に接続される電子部品と、前記配線を内部に収容した状態で前記フレームのテンプルの筐体内部に配置されており、前記フレームの変形に追従して変形するフレキシブルチューブと、を有し、前記フレキシブルチューブは、樹脂管を蛇腹型に加工して形成されており、前記制御部は前記筐体の前端部付近に収容されており、前記電子部品は前記筐体の後端部に取り付けられており、前記配線は、前記フレキシブルチューブの内部において前記フレキシブルチューブと絶縁された状態で収容されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電気素子を有するレンズを備えたアイウェアにおいて、フレームのフィッティングを好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る電子メガネの構成の一例を示す斜視図
図2】電子メガネの平面図かつ一部透視図
図3】電子メガネを右側面から見た一部透視図
図4】耳掛け部に対して外部から力が加えられた場合の、耳掛け部の位置の変化について説明するための図
図5A】コイルバネを例示した斜視図
図5B】フレキシブルチューブの斜視図
図5C】断面がS字型に形成された金属環状部材を繋ぎ合わせたフレキシブルチューブの断面図
図5D】金属板を断面波型(蛇腹型、すなわちベローズ)に加工したフレキシブルチューブの断面図
図5E】金属薄板を筒状に形成した部材であって、長軸方向に沿って所定の幅の隙間(スリット)を有するフレキシブルチューブの側面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態(本実施形態)に係るアイウェアについて、図面を用いて説明する。
【0014】
本発明において、アイウェアとは、視力矯正や目の保護、映像の視聴等のために、目に装着して使用される器具を意味し、視力矯正用のメガネやサングラス等に加えて、仮想空間(VR)・拡張現実(AR)を体験するためのVRグラスや、映像等が表示されるスマートグラス・ヘッドセット等を含むものである。以下の説明では、アイウェアの一例として、電気的制御によってその光学特性を変化させることができる電気活性領域を含むレンズを有する電子メガネについて説明する。
【0015】
[電子メガネの構成]
図1は、本実施形態に係る電子メガネ100の構成の一例を示す斜視図である。電子メガネ100は、一対のレンズ110と、フレーム120と、電子部品160とを有する。フレーム120は、フロント130、および一対のテンプル140を有する。なお、以下の説明では、フロント130が配置されている部分を電子メガネ100の正面(前方)として説明する。
【0016】
1)レンズ
一対のレンズ110は、電子メガネ100を正面視したときに左右対称となるように形成されており、互いに同一の構成要素を有する。
【0017】
レンズ110は、液晶レンズ111および一対の図示しない電極を有している。液晶レンズ111は多層構造となっており、少なくとも、液晶層(不図示)を前後から挟む一対の導電層(不図示)を有している。一対の導電層はそれぞれ電極に接続されている。一対の導電層間に電圧が印加されると、液晶層が活性化し、液晶レンズ111の屈折率が変化する。なお、電極としてはITO等の透明電極が用いられている。液晶レンズ111は、本発明の電気素子の一例であり、表示装置等であってもよい。
【0018】
レンズ110は、後に説明するリム131の形状に合った形状となるように、レンズブランクから切り出されて形成されている。
【0019】
2)フロント
図1に示されるように、フロント130は、一対のレンズ110を保持している。フロント130は、一対のレンズ110をそれぞれ支持している一対のリム131と、一対のリム131を互いに接続しているブリッジ132とを有する。リム131の形状は、レンズ110の形状に対応する形状である。ブリッジ132は、使用者の鼻に接触しうる一対の鼻パッド133を有する。特に図示しないが、フロント130の内部には、レンズ110の電極と後述の制御部150とを電気的に接続するための配線が配置されている。
【0020】
フレーム120を構成するフロント130の材料は、特に限定されないが、熱可塑性を有し、必要に応じて各部の位置や形状を調整可能である材料が好ましい。フロント130の材料としては、メガネのフロントの材料として使用されている公知の材料が使用されうる。フロント130の材料の例には、ポリアミド、アセテート、カーボン、セルロイド、ポリエーテルイミドおよびウレタンが含まれる。
【0021】
フロント130は、その両端部近傍に、智134を有している。智134は、リム131から見て左方または右方および後方に向かって延在する部位である。智134の後方先端部は、ヒンジ141によってテンプル140と接続されている。
【0022】
3)テンプル
左右一対のテンプル140は、電子メガネ100においてほぼ左右対称の外形を有するように形成されている。図1に示されるように、テンプル140は、その前端部のヒンジ141においてフロント130に回転可能に接続されている。なお、以下のテンプル140の説明における前または後ろは、テンプル140が展開された状態(図1から図3に示される状態)における前または後ろを意味する。
【0023】
フレーム120を構成するテンプル140の材料は、特に限定されないが、熱可塑性を有し、必要に応じて各部の位置や形状を調整可能である樹脂等の材料が好ましい。テンプル140の材料の例としては、メガネのテンプルの材料として使用されている公知の材料、例えばフロント130の材料の例と同じ材料が使用されうる。なお、テンプル140の材料として透明または半透明の材料を用いることにより、例えば、後述のコイルバネ200を外部からフィッティングの状態やコイルバネ200の曲がり具合等を確認することができ、また、コイルバネ200にロゴやマーク、模様を施したり、製造情報や製品情報、シリアルナンバーやバーコード等を印字したりした場合には、テンプル140のデザイン性を向上させたり、製品のトレーサビリティ向上や偽造防止対策に活用したりすることも可能である。
【0024】
図2および図3に示すように、テンプル140の外形は、筐体142によって構成されている。筐体142は、制御部150と、配線151と、コイルバネ200と、を収容している。図2は、電子メガネ100の平面図かつ一部透視図である。図3は、電子メガネ100を右側面から見た一部透視図である。図2および図3では、テンプル140の筐体142に収容された制御部150、配線151、およびコイルバネ200が、筐体142を透視した状態で図示されている。なお、図2では電子メガネ100の使用者から見て右側のテンプル140にのみ制御部150、配線151、およびコイルバネ200を図示している。
【0025】
テンプル140の後端部付近には、耳掛け部143が形成されている。なお、本実施形態では耳掛け部143がテンプル140の筐体142の一部として一体成形されているが、本発明はこれに限定されない。耳掛け部143は筐体142と同じまたは別の材料で別体に形成され、テンプル140の後端部に取り付けられていてもよい。
【0026】
図1および図2に示すように、テンプル140の前端部付近には、被接触部144が設けられている。被接触部144は、例えば、電子メガネ100の操作のため使用者の指等の対象物によって接触されうる部位である。このため、図1に示すように、被接触部144の少なくとも一部は、筐体142の外部に露出するように配置されている。
【0027】
被接触部144の位置は、電子メガネ100の使用者が被接触部144を触りやすい位置であることが好ましい。このような観点から、被接触部144は、筐体142の長軸方向における中点より前方側に配置されている。また、被接触部144は、筐体142における電子メガネ100の使用者から見て外側の面に配置されている。
【0028】
被接触部144の形状は、特に限定されない。本実施形態では、被接触部144は、筐体142の長軸方向に沿って延在している。
【0029】
被接触部144は、特に制限はないが、例えば、静電容量式のタッチセンサーや機械式のスイッチである。本実施の形態では、一例として、被接触部144が静電容量式のタッチセンサーである場合について説明する。この場合、導電体である対象物の被接触部144への接触は、電気的に制御部150に伝達される。このため、被接触部144は、導電性を有している。被接触部144の材料の例には、金、銀、銅、アルミニウムおよびこれらの合金が含まれる。この場合、被接触部144の少なくとも周辺部(例えばテンプル140)の材料は、絶縁性であることが好ましい。
【0030】
4)制御部
制御部150は、例えば、CPU等によって構成され、被接触部144における静電容量の変化の検出と、液晶レンズ111への電圧の印加とを制御する。具体的には、制御部150は、例えば、被接触部144が対象物の接触を検出したときに、液晶レンズ111に電圧を印加する、またはその電圧の印加を停止する制御を行い、液晶レンズ111の屈折率を切り替える。例えば、本発明の電気素子が表示装置(不図示)である場合は、制御部150は、被接触部144が対象物の接触を検出したときに、表示装置に電圧を印加し、映像等の情報信号を送信して映像等を表示する制御をしたり、電圧印加・情報信号の送信を停止する制御を行い、表示装置への映像の表示・映像の切り替え等を行ったりする。また、制御部150は、後述の各種の電子部品160の操作・制御を行う。
【0031】
制御部150は、筐体142の前端部付近において内部に収容されている。
【0032】
5)配線
配線151は、制御部150と、電子部品160とを電気的に接続する。配線151は、例えば導線の周囲を絶縁性の被覆部材で覆った被覆電線やフレキシブルプリント配線板(FPC)である。図2および図3に示すように、配線151は、筒状に形成されたコイルバネ200の内部に、絶縁された状態で収容されている。
【0033】
6)電子部品
電子部品160は、電子メガネ100の機能に関わる種々の電子部品である。電子部品160の例としては、以下のようなものがある。例えば、制御部150および液晶レンズ111に電力を供給する電源、各種情報を記憶する記憶部としてのメモリ(例えば、フラッシュメモリやメモリカード等の外部記憶装置を読み書きするリーダ/ライタを含む)、WiFiやブルートゥース(登録商標)、NFC(近距離無線通信)等の無線通信機能を提供する通信部としての無線通信装置、上述の制御部150(液晶レンズ111に電圧を印加する、またはその電圧の印加を停止する制御を行い、液晶レンズ111の屈折率を切り替える装置)とは異なる制御を行う第二の制御部(例えば、液晶レンズ111を電圧を印加することによりレンズの色を変化・調光させるエレクトロクロミックレンズに交換した場合や、後述のカメラやマイク、液晶ディスプレイ等を操作・制御する場合に、それらの電子部品の動作を制御する装置)、第二の被接触部(第二のタッチセンサー部)、カメラ、マイク、スピーカ(従来の音を発するスピーカのほか、骨伝導式スピーカを含む)、補聴器(集音器)、各種センサ(加速度センサ、傾斜センサ、心拍センサ、GPS、体温計、筋電センサ等)がある。
【0034】
上記のように例示した電子部品160を有する電子メガネ100の使用形態として、例えば以下のような形態が考えられる。すなわち、例えば、各種センサに基づいて得られた使用者の活動状態(加速度センサや傾斜センサ、GPS等によって得られる使用者の動きや位置等の情報)や身体状態(心拍センサ、体温計、筋電センサ等によって得られる、使用者の身体や健康状態に関する情報)を制御部150が常時または適時に取得して、メモリに記憶し、無線通信装置を介して外部ネットワークや電子機器(使用者のスマートフォンやウェアラブル端末等)に取得した情報等を記憶・更新するような形態である。このような使用形態によれば、電子メガネ100の有用性が大きく向上する。
【0035】
なお、図1から図3では、電子部品160として、筐体142の後端部に着脱可能に保持される充電式のバッテリーパックである電源を例示している。電源の例には、ニッケル水素充電池、リチウムイオン充電池、太陽電池が含まれる。なお、図1から図3では、着脱可能なバッテリーパックである電子部品160が筐体142の後端部に保持されている例を示したが、電子部品160が配置される位置については本発明では特に限定しない。例えばメモリや無線通信装置、第二の制御部等の場合は制御部150と同様の位置に配置されてもよい。また、電子部品160がカメラ、マイク、スピーカ、補聴器、各種センサ等である場合、電子部品160はそれぞれの目的に応じた位置に配置されればよい。具体的には、例えばカメラやマイクはフロント130の一部、スピーカ、補聴器は耳掛け部143の一部等に配置されればよい。
【0036】
7)コイルバネ
コイルバネ200は、中空の筒形状に形成されたバネであり、例えば円筒形状に形成されている。コイルばね200は、本発明の中空部材の一例である。図2および図3に示すように、コイルバネ200は、特に制限されないが、例えば、筐体142の内部において、制御部150より後ろ側から、筐体142の後端部、すなわち耳掛け部143の先端部まで配置されている。上記したように、コイルバネ200の内部には、配線151がコイルバネ200と絶縁された状態で収容されている。このような構成により、筐体142の前端部付近に収容された制御部150と筐体142の後端部に取り付けられた電子部品160とを接続する配線151は、コイルバネ200によって物理的に保護される。なお、コイルバネ200は、少なくとも、使用者へのフィッティングのために曲げられる電子メガネ100のテンプル140の一部の領域において、筐体142の内部に配置されていればよい。
【0037】
コイルバネ200は、金属で形成される。このため、コイルバネ200が筐体142内に配置されることで、テンプル140の強度が確保される。
【0038】
また、コイルバネ200は、弾性を有する。これにより、耳掛け部143を耳殻にフィットさせるための調整(フィッティング)の必要が生じた場合、コイルバネ200は筐体142に追従して容易に弾性変形する。
【0039】
図4は、耳掛け部143のフィッティングのために、耳掛け部143に対して外部から力が加えられた場合の、耳掛け部143の位置の変化について説明するための図である。図4は、電子メガネ100を平面視した図である。図4に示すように、耳掛け部143のフィッティングの際、電子メガネ100の平面視において、耳掛け部143は内側または外側へ向かって変形される。これにより、いわゆる抱え込み角が好適に調整されうる。
【0040】
この際、コイルバネ200は、変形した耳掛け部143に追従して容易に弾性変形する。このため、コイルバネ200の存在が耳掛け部143のフィッティングの妨げとなりにくく、耳掛け部143のフィッティングが好適に行われうる。また、コイルバネ200の変形は弾性変形であるため、耳掛け部143のフィッティングが複数回行われても曲げ癖が残らず、曲げ癖によってテンプル140の外形に影響が及ぶ事態が回避される。
【0041】
なお、図4では、電子メガネ100の平面視において、耳掛け部143を使用者から見て外側または内側に変形させることで、抱え込み角の調整が行われる場合について例示したが、本発明はこれに限定されない。例えばテンプル140の上側または下側へ変形させることで、いわゆる落ち込み角の調整が行われるようにしてもよい。さらに、抱え込み角と落ち込み角の両方の調整が同時に行われてもよい。
【0042】
コイルバネ200を内部に配置する筐体142の製造方法の例としては、例えばインサート成形が挙げられる。すなわち、筐体142の外形寸法に合わせて形成された金型(図示せず)にあらかじめコイルバネ200を挿入し、その周囲に材料を注入して成形することで、コイルバネ200を内部に配置する筐体142を製造することができる。
【0043】
[効果]
以上説明したように、本発明の実施形態に係る電子メガネ100は、液晶レンズ111を有するレンズ110と、レンズ110を保持し、中空に形成されたテンプル140と、液晶レンズ111の制御を行う制御部150と、制御部150と配線151を介して電気的に接続される電子部品160と、配線151を内部に収容した状態でテンプル140の内部に配置されており、フィッティングのため耳掛け部143が変形されるとき、耳掛け部143の変形に追従して弾性変形するコイルバネ200と、を有する。
【0044】
このような構成により、コイルバネ200によって、配線151を物理的に保護することができるとともに、テンプル140の強度を確保することができる。また、耳掛け部143のフィッティングの際には、コイルバネ200は筐体140に追従して弾性変形するため、耳掛け部143のフィッティングを好適に行うことができるようになる。さらに、耳掛け部143のフィッティングが複数回行われても、コイルバネ200の変形は弾性変形であるため曲げ癖が残らず、曲げ癖によってテンプル140の外形に影響が及ぶ事態が回避される。
【0045】
[変形例]
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範囲内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素は任意に組み合わせられてもよい。
【0046】
上記した実施形態において、テンプル140の強度を確保し、配線151を保護し、耳掛け部143のフィッティングを好適に行うための中空部材の一例としてコイルバネ200を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、コイルバネ200に代わりに、断面がS字型に形成された金属製または樹脂製の環状部材を繋ぎ合わせたり、金属板または樹脂版を断面波型に加工したり、金属管または樹脂管を蛇腹型に加工したりしたフレキシブルチューブを採用してもよい。あるいは、コイルバネ200に代わりに、金属薄板または樹脂薄板を筒状に形成した部材であって、長軸方向に沿って所定の幅の隙間を有するフレキシブルチューブをテンプル140内部に配置してもよい。このような部材をテンプル140の内部に配置した場合でも、コイルバネ200を採用した場合と同様の効果を得ることができる。また、中空部材としては、例えばパイプ状の樹脂等、金属以外の材料を用いてもよい。この場合、中空部材は弾性を有していなくてもよい。また、中空部材に樹脂等の金属以外の材料を用いる場合は、テンプル140と同じ材料を用いても良いが、例えば、テンプル140と異なる物性を有する材料を用いても良い。この場合、例えば、テンプル140の樹脂材料よりも曲げ弾性率またはヤング率が高い樹脂材料を中空部材に用いることで、フィッティングの安定性を向上させることができる。また、テンプル140の樹脂材料よりも曲げ弾性率またはヤング率が低い樹脂材料を中空部材に用いることで、フィッティングの容易性を向上させることができる。
【0047】
図5Aから図5Eは、上記した実施形態のコイルバネ200を含む、テンプル140の強度を確保し、配線151を保護し、耳掛け部143のフィッティングを好適に行うための構成を例示した図である。図5Aは、コイルバネ200を例示した斜視図である。図5Bはフレキシブルチューブの斜視図である。図5Cは断面がS字型に形成された金属環状部材を繋ぎ合わせたフレキシブルチューブの断面図である。図5Dは金属板を断面波型(蛇腹型、すなわちベローズ)に加工したフレキシブルチューブの断面図である。図5Eは金属薄板を筒状に形成した部材であって、長軸方向に沿って所定の幅の隙間(スリット)を有するフレキシブルチューブの側面図である。本発明の実施の形態に係る電子メガネ100は、図5Aから図5Eに例示した構成のいずれを用いても、テンプル140の強度を確保し、配線151を保護し、耳掛け部143のフィッティングを好適に行うことができる。また、図示は省略するが、フレキシブルチューブと配線151が密着または一体形成された態様の一例として、例えば同軸ケーブルが採用されてもよい。
【0048】
上記した実施形態においては、配線151の保護の観点からコイルバネ200の内部に配線151が配置されるため、コイルバネ200は制御部150より後ろ側から、筐体142の後端部、すなわち耳掛け部143の先端部まで配置されている。しかしながら、本発明はこれに限定されない。本発明では、図4に示すように、耳掛け部143のフィッティングの際の変形が、テンプル140の一部を支点とした回転方向に行われるとき、コイルバネ200は、その支点となる箇所に配置されていればよい。耳掛け部143の変形の支点とは、具体的には、耳掛け部143の根元、すなわち使用者の耳殻形状に合わせて耳掛け部143が曲がり始める位置の近傍(図4に示す屈曲部143B)である。
【0049】
耳掛け部143の屈曲部143B付近にのみコイルバネ200が配置されている場合、テンプル140のその他の部位には、例えば金属パイプ(図示せず)が内部に配置されていてもよい。また、コイルバネ200と金属パイプが連結されている形態としてもよい。これにより、より好適にテンプル140の強度を確保することができ、また配線151を好適に保護することができる。このような構成により、耳掛け部143のフィッティングを好適に行うことができ、テンプル140の十分な強度を確保でき、配線151を物理的に保護することができる。さらに、複数回のフィッティングが行われても、曲げ癖によるテンプル140の外形に影響が及ぶ事態が回避される。
【0050】
上記した実施形態において、耳掛け部143のフィッティングを好適に行うことを目的として、テンプル140内にコイルバネ200を配置していたが、本発明はこれに限定されない。コイルバネ200は、耳掛け部143だけではなく、テンプル140全体のフィッティングを行うことができるように構成されてもよい。この場合、コイルバネ200は、テンプル140のうち、少なくとも調整が要求される部位の変形の支点となる箇所に配置されることが望ましい。
【0051】
また、コイルバネ200は、フレーム120のテンプル140以外に配置されてもよい。具体的には、コイルバネ200は、例えばブリッジ132の内部に配置されてもよい。このような構成により、電子メガネ100の平面視において、ブリッジ132によって接続された左右のリム131のなす角度を変更するような変形が可能となる。これにより、電子メガネ100の見え方や掛け心地が向上するようなフィッティングを行うことができる。
【0052】
上記した実施形態において、筒状に形成されたコイルバネ200の内部に配線151が収容され、制御部150は収容されていないが、本発明はこれに限定されない。設計上、筐体142の外寸が許容すれば、コイルバネ200の内部に制御部150が収容されていてもよい。この場合、例えば回路基板である制御部150をコイルバネ200によって物理的に保護することができ、より好適である。
【0053】
上記した実施形態において、図2では、電子メガネ100の使用者から見て右側のテンプル140にのみ制御部150、配線151、およびコイルバネ200を図示している。しかしながら、本発明では、左側のテンプル140にも同様の構成が配置されていてもよい。あるいは、右側と左側のテンプル140のいずれかにのみ制御部150が配置されている場合、制御部150が配置されない側のテンプル140においては、コイルバネ200がテンプル140の長軸方向に沿って全体に配置されていてもよい。
【0054】
2018年3月22日出願の特願2018-055006の日本出願に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容は、全て本願に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、電気素子を有するレンズを備えるアイウェアとして好適である。
【符号の説明】
【0056】
100 電子メガネ
110 レンズ
111 液晶レンズ
120 フレーム
130 フロント
131 リム
132 ブリッジ
133 鼻パッド
134 智
140 テンプル
141 ヒンジ
142 筐体
143 耳掛け部
144 被接触部
150 制御部
151 配線
160 電子部品
200 コイルバネ
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E