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特許7015401クレアチニン/クレアチンセンサのための外膜組成物
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  • 特許-クレアチニン/クレアチンセンサのための外膜組成物 図1A
  • 特許-クレアチニン/クレアチンセンサのための外膜組成物 図1B
  • 特許-クレアチニン/クレアチンセンサのための外膜組成物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】クレアチニン/クレアチンセンサのための外膜組成物
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/327 20060101AFI20220126BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20220126BHJP
   G01N 33/70 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
G01N27/327 353Z
G01N27/327 353B
G01N27/327 353F
G01N27/416 336J
G01N27/327 353U
G01N33/70
【請求項の数】 37
(21)【出願番号】P 2020570972
(86)(22)【出願日】2019-06-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 US2019035157
(87)【国際公開番号】W WO2020204976
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-02-24
(31)【優先権主張番号】62/830,191
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506391864
【氏名又は名称】インストゥルメンテーション ラボラトリー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】シュウ,シャオシャン
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-256725(JP,A)
【文献】特開2019-039817(JP,A)
【文献】特表2018-535421(JP,A)
【文献】特表2016-517514(JP,A)
【文献】特表2008-545952(JP,A)
【文献】特表2008-541104(JP,A)
【文献】特表2008-541103(JP,A)
【文献】国際公開第2019/046281(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
A61B 5/145-5/1495
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
C12Q 1/00-3/00
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの異なるタイプのポリウレタン材料を含む拡散膜であって、前記拡散膜が、少なくとも2.0のクレアチニン対クレアチン拡散比を有する、拡散膜。
【請求項2】
前記異なるタイプのポリウレタン材料が異なる水分取込み率を有する、請求項1に記載の拡散膜。
【請求項3】
前記水分取込み率が約3~60%である、請求項2に記載の拡散膜。
【請求項4】
前記異なるタイプのポリウレタン材料が、3%水分取込みポリウレタン、20%水分取込みポリウレタン、50%水分取込みポリウレタン、及び60%水分取込みポリウレタンからなる群から選択される、請求項3に記載の拡散膜。
【請求項5】
前記50%水分取込みポリウレタンが0%w/wを超える量で存在する、請求項4に記載の拡散膜。
【請求項6】
前記50%水分取込みポリウレタンが65%w/wまでの量で存在する、請求項4又は5に記載の拡散膜。
【請求項7】
前記20%水分取込みポリウレタンが69%w/wまでの量で存在する、請求項4~6のいずれか一項に記載の拡散膜。
【請求項8】
前記3%水分取込みポリウレタンが33%w/wまでの量で存在する、請求項4~7のいずれか一項に記載の拡散膜。
【請求項9】
前記60%水分取込みポリウレタンが67%w/wまでの量で存在する、請求項4~8のいずれか一項に記載の拡散膜。
【請求項10】
前記少なくとも2つの異なるタイプのポリウレタンが、20%水分取込みポリウレタン及び60%水分取込みポリウレタンである、請求項4、7又は9のいずれか一項に記載の拡散膜。
【請求項11】
前記少なくとも2つの異なるタイプのポリウレタンが、20%水分取込みポリウレタン及び50%水分取込みポリウレタンである、請求項4~7のいずれか一項に記載の拡散膜。
【請求項12】
前記少なくとも2つの異なるタイプのポリウレタンが、60%水分取込みポリウレタン及び50%水分取込みポリウレタンである、請求項4~6又は9のいずれか一項に記載の拡散膜。
【請求項13】
少なくとも3つの異なるタイプのポリウレタン材料を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の拡散膜。
【請求項14】
前記少なくとも3つの異なるタイプのポリウレタン材料が、20%水分取込みポリウレタン、50%水分取込みポリウレタン、及び60%水分取込みポリウレタンである、請求項13に記載の拡散膜。
【請求項15】
少なくとも4つの異なるタイプのポリウレタン材料を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の拡散膜。
【請求項16】
50~55%w/wの20%水分取込みポリウレタンと、45~50%w/wの60%水分取込みポリウレタンとを含む、請求項4、7又は9のいずれか一項に記載の拡散膜。
【請求項17】
50%w/wの20%水分取込みポリウレタンと、50%w/wの60%水分取込みポリウレタンとを含む、請求項16に記載の拡散膜。
【請求項18】
55%w/wの20%水分取込みポリウレタンと、45%w/wの60%水分取込みポリウレタンとを含む、請求項16に記載の拡散膜。
【請求項19】
50%w/wの20%水分取込みポリウレタンと、50%w/wの50%水分取込みポリウレタンとを含む、請求項4~7のいずれか一項に記載の拡散膜。
【請求項20】
50%w/wの60%水分取込みポリウレタンと、50%w/wの50%水分取込みポリウレタンとを含む、請求項4~6又は9のいずれか一項に記載の拡散膜。
【請求項21】
33.3%w/wの20%水分取込みポリウレタンと、33.3%w/wの60%水分取込みポリウレタンと、33.3%w/wの50%水分取込みポリウレタンとを含む、請求項4~7、9、13又は14のいずれか一項に記載の拡散膜。
【請求項22】
69%w/wの20%水分取込みポリウレタンと、2%w/wの60%水分取込みポリウレタンと、29%w/wの50%水分取込みポリウレタンとを含む、請求項4~7、9、13又は14のいずれか一項に記載の拡散膜。
【請求項23】
12.5%w/wの20%水分取込みポリウレタンと、12.5%w/wの3%水分取込みポリウレタンと、62.5%w/wの60%水分取込みポリウレタンと、12.5%w/wの50%水分取込みポリウレタンとを含む、請求項4~9又は15のいずれか一項に記載の拡散膜。
【請求項24】
12.5%w/wの20%水分取込みポリウレタンと、12.5%w/wの3%水分取込みポリウレタンと、12.5%w/wの60%水分取込みポリウレタンと、62.5%w/wの50%水分取込みポリウレタンとを含む、請求項4~9又は15のいずれか一項に記載の拡散膜。
【請求項25】
8%w/wの20%水分取込みポリウレタンと、23%w/wの3%水分取込みポリウレタンと、4%w/wの60%水分取込みポリウレタンと、65%w/wの50%水分取込みポリウレタンとを含む、請求項4~9又は15のいずれか一項に記載の拡散膜。
【請求項26】
11%w/wの20%水分取込みポリウレタンと、11%w/wの3%水分取込みポリウレタンと、67%w/wの60%水分取込みポリウレタンと、11%w/wの50%水分取込みポリウレタンとを含む、請求項4~9又は15のいずれか一項に記載の拡散膜。
【請求項27】
拡散膜を製造する方法であって、
a)少なくとも2つの異なるポリウレタン樹脂を有機溶媒又は溶媒混合物中に溶解させて、ポリウレタン混合物を形成するステップと、
b)前記ポリウレタン混合物の層を支持材料上にキャストするステップと、
c)前記溶媒又は溶媒混合物を蒸発させるステップと、
d)ステップb)及びc)を1~3回繰り返すステップと、
を含み、
前記拡散膜が、少なくとも2.0のクレアチニン対クレアチン拡散比を有する、方法。
【請求項28】
前記異なるポリウレタン樹脂が異なる水分取込み率を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記水分取込み率が約3~60%である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記異なるポリウレタン樹脂が、3%水分取込みポリウレタン、20%水分取込みポリウレタン、50%水分取込みポリウレタン、及び60%水分取込みポリウレタンからなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記有機溶媒が、塩化メチレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、イソプロパノール及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項27~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記支持材料が、酵素層が上に固定化された金属電極である、請求項27~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
ステップb)及びc)が2回繰り返される、請求項27~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
電極、前記電極上に固定化された複数の酵素、及び請求項1~26のいずれか一項に記載の拡散膜を備える、バイオセンサ。
【請求項35】
前記電極が金属を含む、請求項34に記載のバイオセンサ。
【請求項36】
前記複数の酵素が、クレアチニナーゼ、クレアチナーゼ及びサルコシンオキシダーゼからなる群から選択される、請求項34又は35に記載のバイオセンサ。
【請求項37】
請求項34~36のいずれか一項に記載のバイオセンサを収容する使い捨てカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の分野
[0001] 本開示は、サンプル中のクレアチニン及びクレアチンを測定するために使用される電気化学センサのための拡散制御膜に関する。より具体的には、本開示は、クレアチニン及びクレアチンを検出するための透過性外側拡散制御膜のための組成物、並びにこのような膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
[0002] 患者の血液中のクレアチニン及びクレアチンレベルを正確に測定する能力は、腎臓の健康の重要な指標である。特に、血清クレアチニンは腎臓によって排出され、変更されず、容易に測定することができるので、腎臓の健康の重要な指標である。例えば、血清クレアチニンレベルの上昇は慢性腎疾患の遅いマーカーであり、一般に、著しい腎臓損傷が既に発生している場合に観察されるだけである。
【0003】
[0003] サンプル(例えば、患者の血液)中のクレアチニン及びクレアチン濃度は、電気化学センサによって測定され得る。例えば、現在のクレアチニンセンサは、クレアチニン及び水から、グリシン、ホルムアルデヒド、及び過酸化水素の生成を触媒する3つの酵素-クレアチニナーゼ、クレアチナーゼ、及びサルコシンオキシダーゼ-を含有する酵素バイオセンサを含み得る。これらの3つの酵素は白金電極の表面に固定化することができ、最終反応生成物の過酸化水素(H)は次に一定の分極電位下において白金電極上で電気化学的に酸化され、患者の血液中のクレアチニン/クレアチンを測定するために使用され得る。臨床サンプル中のクレアチンの存在に起因して、クレアチニンセンサのクレアチン応答を補正するためにクレアチン測定用の付加的なセンサが必要とされる。このようなクレアチンセンサは、クレアチナーゼ及びサルコシンオキシダーゼの2つの酵素を含有する酵素バイオセンサを含む。
【0004】
[0004] クレアチニン及びクレアチンセンサのいずれにおいても、酵素層の上部には拡散制御膜(外膜とも称される)がある。拡散制御膜は、過酸化水素により生じる信号がサンプルの基質濃度に比例することを保証するために、酵素層に入るクレアチニン及びクレアチン基質の流れを制限する。
【0005】
[0005] 理論上は、上記のクレアチニン測定システムは生体サンプル中のクレアチニンを定量的に測定することができるが、いくつかの因子は、正確なクレアチニン測定を得るための課題をもたらし得る。1つの因子であるクレアチン妨害は、通常、別のクレアチンセンサを使用し、補正処置としてクレアチン濃度を差し引くことによって対処される。しかしながら、クレアチン濃度が高い(例えば、[クレアチン]>>[クレアチニン])場合には、大きい誤差が生じ得る。サンプル測定の直後に未反応の基質が除去されないと、除去されていない基質は電流信号を発生し続けるので、別の因子である緩徐なベースライン回復は誤差を生じ得る。第3の因子は、生体サンプルマトリックス効果及び生体適合性に関する。例えば、全血などの生体サンプルマトリックスに曝露されると、一部の外側拡散膜は、タンパク質のファウリング又は表面疎水性の変化及び微細血塊の形成のために、激しい感度及びベースラインの変化を示し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0006] クレアチニンセンサのために現在利用可能な外側拡散制御膜は、ポリカーボネート、ポリ2-ヒドロキシエチルメタクリレート(ポリHEMA)及びポリウレタンなどの高分子材料を含む。しかしながら、このような拡散膜は、上述の制限の3つ全てに対処するというわけではない。したがって、外膜特性を改善して、クレアチン妨害、緩徐なベースライン回復、並びに生体サンプルマトリックス効果及び生体適合性に起因する問題に対処するために、新しい組成物を特定及び開発するというまだ満たされていない緊急の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
[0007] 本明細書には、拡散膜組成物、製造方法、このような拡散膜を含有するバイオセンサ、及びこのような拡散膜を含有するバイオセンサを収容するカートリッジが開示される。拡散膜を含有するバイオセンサは、クレアチニン/クレアチンバイオセンサである。拡散膜及び外膜という用語は本開示を通して互換的に使用される。また、バイオセンサ及びセンサという用語も本開示を通して互換的に使用される。
【0008】
[0008] 1つの態様では、少なくとも2つの異なるタイプのポリウレタン材料を含む拡散膜組成物が提供される。異なるタイプのポリウレタン材料は、異なる水分取込み率及び異なるショア硬度値を含む、異なる特性を有する。異なるタイプのポリウレタン材料のw/w量は、少なくとも2.0、好ましくは2.0~2.5、より好ましくは2.5~3.0、最も好ましくは少なくとも3.0のクレアチニン対クレアチン拡散比を有する拡散膜をもたらすように調整される。また、異なるタイプのポリウレタン材料のw/w量は、少なくとも1800、好ましくは少なくとも1900、より好ましくは少なくとも2000のクレアチニンスロープを有する拡散膜をもたらすようにも調整される。
【0009】
[0009] いくつかの実施形態において、拡散膜組成物において使用されるポリウレタン材料は、約3%~60%である水分取込み率を有する。ポリウレタン材料の代表的な例としては、3%水分取込みポリウレタン、20%水分取込みポリウレタン、50%水分取込みポリウレタン、及び60%水分取込みポリウレタンが挙げられる。
【0010】
[0010] いくつかの実施形態において、50%水分取込みポリウレタンは、0%w/wを超える量で拡散膜組成物中に存在する。他の実施形態では、50%水分取込みポリウレタンは、65%w/wまでの量で拡散膜組成物中に存在する。いくつかの実施形態において、20%水分取込みポリウレタンは、69%w/wまでの量で拡散膜組成物中に存在する。いくつかの実施形態において、3%水分取込みポリウレタンは、33%w/wまでの量で拡散膜組成物中に存在する。いくつかの実施形態において、60%水分取込みポリウレタンは、67%w/wまでの量で拡散膜組成物中に存在する。
【0011】
[0011] いくつかの実施形態において、拡散膜組成物は少なくとも2つの異なるタイプのポリウレタンを含む。2つの異なるタイプのポリウレタンを含む拡散膜組成物の代表的な例としては、20%水分取込みポリウレタン及び60%水分取込みポリウレタンの混合物、20%水分取込みポリウレタン及び50%水分取込みポリウレタンの混合物、並びに60%水分取込みポリウレタン及び50%水分取込みポリウレタンの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態において、拡散膜組成物は、50~55%w/wの20%水分取込みポリウレタンと、45~50%w/wの60%水分取込みポリウレタンとを含む。特定の実施形態では、拡散膜組成物は、50%w/wの20%水分取込みポリウレタンと、50%w/wの60%水分取込みポリウレタンとを含む。他の実施形態では、拡散膜組成物は、55%w/wの20%水分取込みポリウレタンと、45%w/wの60%水分取込みポリウレタンとを含む。さらなる実施形態では、拡散膜組成物は、50%w/wの20%水分取込みポリウレタンと、50%w/wの50%水分取込みポリウレタンとを含む。またさらなる実施形態では、拡散膜組成物は、50%w/wの60%水分取込みポリウレタンと、50%w/wの50%水分取込みポリウレタンとを含む。
【0012】
[0012] いくつかの実施形態において、拡散膜組成物は少なくとも3つの異なるタイプのポリウレタンを含む。例えば、3つの異なるタイプのポリウレタンを含む拡散膜組成物は、20%水分取込みポリウレタン、50%水分取込みポリウレタン、及び60%水分取込みポリウレタンの混合物を含む。いくつかの実施形態において、拡散膜組成物は、33.3%w/wの20%水分取込みポリウレタンと、33.3%w/wの60%水分取込みポリウレタンと、33.3%w/wの50%水分取込みポリウレタンとを含む。他の実施形態では、拡散膜組成物は、69%w/wの20%水分取込みポリウレタンと、2%w/wの60%水分取込みポリウレタンと、29%w/wの50%水分取込みポリウレタンとを含む。
【0013】
[0013] いくつかの実施形態において、拡散膜組成物は少なくとも4つの異なるタイプのポリウレタンを含む。例えば、4つの異なるタイプのポリウレタンを含む拡散膜組成物は、3%水分取込みポリウレタン、20%水分取込みポリウレタン、50%水分取込みポリウレタン、及び60%水分取込みポリウレタンの混合物を含む。いくつかの実施形態において、拡散膜組成物は、12.5%w/wの20%水分取込みポリウレタンと、12.5%w/wの3%水分取込みポリウレタンと、62.5%w/wの60%水分取込みポリウレタンと、12.5%w/wの50%水分取込みポリウレタンとを含む。他の実施形態では、拡散膜組成物は、12.5%w/wの20%水分取込みポリウレタンと、12.5%w/wの3%水分取込みポリウレタンと、12.5%w/wの60%水分取込みポリウレタンと、62.5%w/wの50%水分取込みポリウレタンとを含む。さらなる実施形態では、拡散膜組成物は、8%w/wの20%水分取込みポリウレタンと、23%w/wの3%水分取込みポリウレタンと、4%w/wの60%水分取込みポリウレタンと、65%w/wの50%水分取込みポリウレタンとを含む。またさらなる実施形態では、拡散膜組成物は、11%w/wの20%水分取込みポリウレタンと、11%w/wの3%水分取込みポリウレタンと、67%w/wの60%水分取込みポリウレタンと、11%w/wの50%水分取込みポリウレタンとを含む。
【0014】
[0014] 別の態様では、本明細書に開示される拡散膜組成物の製造方法が提供される。本方法は、a)少なくとも2つの異なるポリウレタン樹脂を有機溶媒又は溶媒混合物中に溶解させて、ポリウレタン混合物を形成するステップと、b)ポリウレタン混合物の層を支持材料上にキャストするステップと、c)溶媒又は溶媒混合物を蒸発させるステップと、d)ステップb)及びc)を1~3回繰り返すステップとを含む。
【0015】
[0015] 本方法のいくつかの実施形態において、拡散膜組成物において使用されるポリウレタン材料(例えば、樹脂)は、本組成物について上記されたように約3%~60%である水分取込み率を有する。本方法のいくつかの実施形態において、異なるタイプのポリウレタン材料のw/w量は、少なくとも2.0、好ましくは2.0~2.5、より好ましくは2.5~3.0、最も好ましくは少なくとも3.0のクレアチニン対クレアチン拡散比を有する拡散膜をもたらすように調整される。また、異なるタイプのポリウレタン材料のw/w量は、少なくとも1800、好ましくは少なくとも1900、より好ましくは少なくとも2000のクレアチニンスロープを有する拡散膜をもたらすようにも調整される。
【0016】
[0016] 本方法のいくつかの実施形態において、ポリウレタン材料は、塩化メチレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、イソプロパノール又はこれらの混合物を含む有機溶媒中に溶解される。
【0017】
[0017] 本方法のいくつかの実施形態において、支持材料は、酵素層が上に固定化された電極である。特定の実施形態では、電極は、炭素、グラファイト又はカーボンナノチューブから作られる。他の実施形態では、電極は金属から作られる。電極の金属の代表的な例としては、白金、金、パラジウム、又は白金、金及びパラジウムの合金が挙げられる。本方法のいくつかの実施形態において、酵素層は、クレアチニナーゼ、クレアチナーゼ、サルコシンオキシダーゼ及びこれらの組合せを含む、複数の酵素を含む。酵素層は、外側拡散膜と電極との間に位置する。
【0018】
[0018] 本方法のいくつかの実施形態において、ステップb)及びc)は2回繰り返される。
【0019】
[0019] 別の態様では、バイオセンサが提供される。いくつかの実施形態において、バイオセンサは、電極、電極上に固定化されて酵素層を形成する複数の酵素、及び酵素層の表面に配置された拡散膜を含む。
【0020】
[0020] バイオセンサのいくつかの実施形態において、拡散膜組成物において使用されるポリウレタン材料(例えば、樹脂)は、本組成物について上記されたように約3%~60%である水分取込み率を有する。バイオセンサのいくつかの実施形態において、異なるタイプのポリウレタン材料のw/w量は、少なくとも2.0、好ましくは2.0~2.5、より好ましくは2.5~3.0、最も好ましくは少なくとも3.0のクレアチニン対クレアチン拡散比を有する拡散膜をもたらすように調整される。また、異なるタイプのポリウレタン材料のw/w量は、少なくとも1800、好ましくは少なくとも1900、より好ましくは少なくとも2000のクレアチニンスロープを有する拡散膜をもたらすようにも調整される。
【0021】
[0021] バイオセンサの特定の実施形態では、電極は、炭素、グラファイト又はカーボンナノチューブから作られる。他の実施形態では、電極は金属から作られる。電極の金属の代表的な例としては、白金、金、パラジウム、又は白金、金及びパラジウムの合金が挙げられる。バイオセンサのいくつかの実施形態において、酵素層は、クレアチニナーゼ、クレアチナーゼ、サルコシンオキシダーゼ及びこれらの組合せを含む、複数の酵素を含む。酵素層は、外側拡散膜と電極との間に位置する。バイオセンサは、血液、血漿又は血清などの体液サンプル中のクレアチン及び/又はクレアチニンを測定するために使用される。
【0022】
[0022] さらなる態様では、本明細書に記載されるバイオセンサを収容する使い捨てカートリッジが提供される。使い捨てカートリッジのいくつかの実施形態において、本明細書に記載されるバイオセンサは、センサアレイ内の1つのセンサである。使い捨てカートリッジのいくつかの実施形態において、バイオセンサは、電極、電極上に固定化されて酵素層を形成する複数の酵素、及び酵素層の表面に配置された拡散膜を含み、拡散膜は、体液サンプルフローチャンバに隣接する。
【0023】
[0023] 本開示の他の特徴及び利点は、その好ましい実施形態の以下の記載から、及び特許請求の範囲から明らかであろう。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本開示の実施又は試験において、本明細書に記載されるものと同様又は同等の方法及び材料が使用され得るが、適切な方法及び材料は以下に記載される。本明細書で引用される公開された外国特許及び特許出願は全て、参照によって本明細書中に援用される。本明細書で引用される他の公開された参考文献、文書、原稿及び科学文献は全て、参照によって本明細書中に援用される。さらに、材料、方法、及び実施例は単なる実例であり、限定は意図されない。
【0024】
[0024] 適用可能な場合、又は特に否定されない場合、本明細書に記載される実施形態の任意の1つは、その実施形態が本開示の異なる態様において記載されるとしても任意の他の1つ又は複数の実施形態と組み合わせることができると考えられる。
【0025】
[0025] これら及び他の実施形態は、以下の詳細な説明によって開示及び/又は包含される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図面の簡単な説明
図1A】[0026]12個のカートリッジ群におけるクレアチニン(Crea)に対するクレアチニンセンサ感度のグラフであり、5ヶ月の室温貯蔵後の3週間の使用期間にわたってカートリッジのエイジ(時間)に対してスロープとしてプロットされた、各カートリッジのクレアチニンに対する感度(ピコアンペア/ミリグラム/デシリットル(pA/mg/dL))である。各カートリッジは、配合物F20の外側拡散膜を含む(表2を参照)。
図1B】[0027]12個のカートリッジ群におけるクレアチン(Cr)に対するクレアチニンセンサ感度のグラフであり、5ヶ月の室温貯蔵後の3週間の使用期間にわたってカートリッジのエイジ(時間)に対してスロープとしてプロットされた、各カートリッジのクレアチンに対する感度(ピコアンペア/ミリグラム/デシリットル(pA/mg/dL))である。各カートリッジは、配合物F20の外側拡散膜を含む(表2を参照)。
図2】[0028]化学分析計(例えば、Roche Cobas)における血漿クレアチニンに対して、全血クレアチニンバイオセンサにより測定されたクレアチニンのバイアスを示す散布図である。各バイオセンサは、配合物F20の外側拡散膜を含む(表2を参照)。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
[0029] 本開示は、少なくとも部分的に、異なるタイプのポリウレタンのブレンドから製造された拡散制御膜(すなわち、外膜)がクレアチン妨害を制限し、急速なベースライン回復を可能にし、且つ生体サンプルマトリックス効果を制限することができるという発見に基づく。本開示は、少なくとも2つの異なるタイプのポリウレタンを含み、且つ少なくとも2.0のクレアチニン対クレアチン拡散比を有する拡散膜組成物を提供する。また本開示は、このような拡散膜組成物の製造方法、及びこのような拡散膜を使用するバイオセンサも提供する。
【0028】
[0030] クレアチン/クレアチニンシステム(例えば、GEM PAKカートリッジ)中の現在のクレアチニンセンサは、3つの酵素を含有する酵素バイオセンサを含む。これらの酵素は、白金電極の表面に固定化される。クレアチニン検出は、3酵素カスケード反応に基づく:
【化1】
【0029】
[0031] 生成物の過酸化水素(H)は次に一定の分極電位下において白金電極上で電気化学的に酸化される。
【0030】
[0032] 臨床サンプル中のクレアチンの存在は、クレアチニンセンサのクレアチン応答を補正するために、クレアチン測定のための付加的なセンサを必要とする。クレアチンセンサは、上記の酵素カスケード反応のステップ(2)及び(3)を含む。
【0031】
[0033] 生体サンプル中のクレアチニン及びクレアチンのそれぞれの濃度を決定するために、クレアチニン及びクレアチンセンサは、そのそれぞれの感度を決定するために較正される必要がある。これは、所定の濃度のクレアチニン及びクレアチンを含有する較正溶液中のクレアチニン及びクレアチンセンサの示度を比較することによって達成され得る。クレアチニン及びクレアチンセンサの感度が決定されたら、較正プロセスから決定された結果を用いて測定示度を調整することによって、任意の生体サンプル中のクレアチン及びクレアチニンの濃度を推定することができる。
【0032】
[0034] またクレアチン及びクレアチニンセンサはいずれも、酵素層の上部に拡散制御膜(外膜とも称される)を有する。拡散制御膜は、過酸化水素により生じる信号がサンプルの基質濃度に比例することを保証するために、酵素層に入るクレアチニン及びクレアチン基質の流れを制限する。
【0033】
[0035] 理論上は、上記のようなクレアチニン測定システムは、生体サンプル中のクレアチニンの濃度を定量的に測定することができる。しかしながら、典型的な製造プロセスに起因するセンサ変動、較正及び他の分析計操作に特異的な変動、並びに生体サンプルマトリックス変動に関連するいくつかの実用上の問題があり、正確なクレアチニン測定に関して、例えば、以下のことを含む重要な課題を示す:
【0034】
[0036] 1.クレアチン妨害。生体サンプル(例えば、全血)はクレアチニン及びクレアチンの両方を含有し、クレアチニンを過酸化水素に変換する3酵素カスケード反応を用いるCreaセンサは、血液サンプル中のクレアチニン及びクレアチンの両方の全応答を測定することが文献から知られている。ほとんどの測定方法論は、上記のような2つの酵素を含む別のクレアチンセンサで血中クレアチンを測定することにより、クレアチンに起因し得る応答を補正として差し引くことを含む。この方法は、クレアチニン及びクレアチンセンサの両方においてクレアチン応答に影響を与える血液サンプル中の因子(例えば、HCO 、ヘマトクリット、血液マトリックスなど)が全て同一であり、補正の間に相殺され得ると仮定する。しかしながら、クレアチン濃度が高い(例えば、[Cr]>>[Crea])場合は、大きい誤差が生じる。本発明は、差示的測定を用いてクレアチン妨害からの影響が最小限にされるようにクレアチン拡散よりもクレアチニン拡散を選択する透過性を有する外膜組成物を提供することにより、酵素センサのクレアチン信号を抑制することによってクレアチン妨害の問題を解決する。
【0035】
[0037] 2.ベースライン回復。クレアチニン及びクレアチンバイオセンサの酵素カスケード反応により、基質のクレアチニン及びクレアチンの外膜を通って拡散する部分のみが生成物に変換される。残りの基質は、サンプル測定の直後に除去されなければ、連続的に電流信号を発生することになる。バックグラウンド電流のこの緩徐な変化は、その後のサンプル測定において誤差を引き起こす。本発明は、基質が急速にサンプル測定の間に中に拡散し、サンプル測定が完了したら外に拡散できるようにする、透過性を有する外膜組成物を提供することによって、緩徐なベースライン回復の問題を解決する。
【0036】
[0038] 3.生体サンプルマトリックス効果及び生体適合性。全血などの生体サンプルマトリックスへ曝露されると、いくつかの外側拡散制御膜は、タンパク質のファウリング又は表面疎水性の変化及び微細血塊の形成のために、激しい感度及びベースラインの変化を有し得る。生体サンプル中のクレアチニン濃度は、サンプルマトリックスのいくつかの他の成分(例えば、グルコースは65~95mg/dLの濃度で存在する)と比較して非常に低い(0.04~1.10mg/dL)。生体サンプル中の低濃度のクレアチニン、外膜を通して制限された拡散によるクレアチニン量のさらなる低減、及びバイオセンサの3酵素変換プロセスは、非常に低い電気信号をもたらす。発生される電気信号は非常に小さいので、生体サンプルマトリックス中の高濃度の薬物又は一般的な化学物質からの妨害はクレアチニンサンプル応答を支配することが可能であり、臨床サンプル測定の誤差を引き起こす。本発明は、最小限のマトリックス効果を有する外膜組成物を提供することによって、生体サンプルマトリックス効果及び生体適合性の問題を解決する。
【0037】
[0039] 本発明の開示は、クレアチニン/クレアチンバイオセンサのためのポリウレタンベースの外膜組成物、及びこのような膜の製造方法を記載する。本明細書に開示される膜は、クレアチンの透過性よりも2から3倍高いクレアチニンの透過性を有する。この透過性の差は、このようなバイオセンサに有利なCrea/Cr信号比を提供する。また本明細書に開示される外膜組成物は酵素層からの基質の急速な除去も促進し、サンプルの曝露及び洗浄後の急速なベースライン回復を有する。さらに、本明細書に開示される外膜組成物は、全血サンプルと接触したときに、微細血塊の形成を少ししか又は全く有さず、且つタンパク質のファウリング及び透過性の変化を最小限にする優れた生体適合性を示す。
【0038】
[0040] ポリウレタン(PU)は、医療用デバイスの多くの成功したインビボ及びインビトロ用途において優れた生体適合性を有するポリマーである。本明細書に開示される外膜の組成物において、Lubrizol(Ohio, USA)からのTecophlicTM及びTecoflexTM並びにAdvanSource Biomaterials(Massachusetts, USA)からのHydroMedTMDシリーズを含む親水性医療グレードのポリウレタンファミリーを使用した。これらの市販の高分子樹脂又は溶液は、塩化メチレン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、テトラヒドロフラン(THF)、シクロヘキサノン、イソプロパノールなどの有機溶媒又は溶媒混合物中に溶解させることができる脂肪族ポリエーテル系ポリウレタンである。これらのポリウレタンファミリーの中で、硬度及び水分取込みレベルの種々の組合せにより様々なグレードの材料が可能である。
【0039】
[0041] 物質移動ポリマー膜を通り抜ける物質の透過性は、主として、その分子構造、疎水性及び電荷に依存する。本明細書に開示されるポリマー膜は2つ以上のポリマーの混合物であり、このような膜を通る物質の透過性も、ポリマー膜組成物の分子構造、疎水性及び電荷に依存する。
【0040】
[0042] 本明細書で使用される場合、「クレアチン(2-[カルバムイミドイル(メチル)アミノ]酢酸、N-カルバムイミドイル-N-メチルグリシン、又はメチルグアニド酢酸としても知られている)」は、リン酸基の提供によりアデノシン二リン酸(ADP)を変換してATPに戻すことによるアデノシン三リン酸(ATP)の再循環を介して、細胞のためのエネルギーを生じる有機化合物を指す。クレアチンは以下の化学構造を有する:
【化2】
【0041】
[0043] 本明細書で使用される場合、「クレアチニン」は、クレアチンの酵素的分解の副産物を指し、一般に、以下に示される2つの主要な互変異性型で見出される。
【化3】
【0042】
[0044] 上記の略図に示されるように、クレアチニン(環状化合物)対クレアチン(線状化合物)の分子構造の著しい違いにより、ポリマー材料特性(構造、疎水性及び電荷)、複数のポリマーの混合比、及びキャスティングプロセス(固体濃度、層の数及び溶媒選択)に基づいて、ポリマー膜組成物を通るクレアチニン及びクレアチンの拡散速度を修正又は調節することが可能になる。
【0043】
[0045] 膜組成物の重要な因子:ポリウレタンのタイプ(硬度20~85、水分取込み:3%~100%)、キャスティング溶液の固形分%w/v(2~10%)、溶媒のタイプ及び溶媒比(例えば、THF、シクロヘキサノン、及び50~100%の間の比率を有する2つの混合物)を変更することにより、最良のクレアチニン拡散速度を有するだけでなく、クレアチン妨害を最小限にするために最大のCrea/Cr比も有する外膜組成物が開発された。膜が溶媒キャスティングプロセスにより形成される場合、溶媒は重要な役割を果たすことに注意すべきである。すなわち、異なる溶媒は異なる速度で蒸発するので、蒸発速度は、内部ポリマー鎖のモルホロジー及び配向、並びに膜の支持材料への接着に影響を与え得る。
【0044】
[0046] 高いクレアチニン感度及び2以上のCrea/Cr比を有するという要件を満たす配合物の群を実験から得た。その後のスクリーニング検査は、全血サンプルに曝露されたときのセンサ性能の安定性を評価するために実施した。参照方法と比較して報告されたクレアチニン濃度の精度、及び使用寿命にわたるセンサの感度の安定性を評価した。外膜配合物の一部は高い初期感度を有したが、全血サンプルへの曝露後に著しい変化を示した。理論により束縛されることは望まないが、この現象に対するいくつかの説明は、固体材料の全重量%が低すぎるので乾燥中に膜内にピンホールが形成された可能性があること、又は混合ポリウレタンの組成物があまりに親水性であり、血液中のタンパク質及び脂質が表面を被覆したときに拡散速度が著しく変化して、センサの感度の降下をもたらしたことである。外膜組成物の配合は、以下の実施例においてより詳細に議論される。
【0045】
[0047] 範囲は、本明細書において、「約」1つの特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値までとして表すことができる。このような範囲が表される場合、別の態様は、1つの特定の値から、及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」を用いて値が近似値として表される場合、特定の値は別の態様を形成すると理解される。さらに、各範囲の終点は、他の終点と関連しても、他の終点とは独立しても、重要であると理解される。本明細書にいくつかの値が開示されており、各値は、本明細書において、その値自体に加えて「約」その特定の値としても開示されることも理解される。また、本出願全体を通して、データはいくつかの異なる形式で提供され、このデータは、終点及び始点、並びにデータ点の任意の組合せの範囲を表すことも理解される。例えば、特定のデータ点「10」及び特定のデータ点「15」が開示される場合、10及び15を超える、10及び15以上、10及び15未満、10及び15以下、並びに10及び15に等しいが、10と15の間と同様に開示されると考えられることが理解される。また、2つの特定の単位の間にある各単位も開示されることも理解される。例えば、10及び15が開示されると、11、12、13、及び14も開示される。本明細書に提供される範囲は、その範囲内の全ての値の省略表現であると理解される。例えば、1から50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50からなる群からの任意の数、数の組合せ、又は部分範囲、並びに上記整数の間に介在する全ての小数値、例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、及び1.9を含むと理解される。部分範囲に関しては、範囲のいずれかの終点から延びる「入れ子の部分範囲」が特に考えられる。例えば、1から50の例示的な範囲の入れ子の部分範囲は、一方の方向に1から10、1から20、1から30、及び1から40、又は他方の方向に50から40、50から30、50から20、及び50から10を含み得る。
【0046】
[0048] 他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本開示の実施又は試験において、本明細書に記載されるものと同様又は同等の方法及び材料が使用され得るが、適切な方法及び材料は以下に記載される。本明細書で言及される刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は全て、参照によってその全体が援用される。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先する。さらに、材料、方法、及び実施例は単なる実例であり、限定は意図されない。
【0047】
[0049] 本開示の例示的な実施形態についてこれから詳細に言及されるであろう。本開示は例示的な実施形態と共に記載されるが、本開示をこれらの実施形態に限定することは意図されないと理解されるであろう。反対に、特許請求の範囲により定義されるような本開示の趣旨及び範囲内に含まれ得る代替物、修正物、及び等価物を包含することが意図される。当該技術分野において周知の標準的な技術又は以下に具体的に記載される技術を利用した。
【実施例
【0048】
実施例
[0050] 実施例1:3つの市販のポリウレタン(PU)ファミリーに基づいて外膜配合物を得るためのシンプレックスセントロイド混合設計(simplex-centroid mixture design)の適用
[0051] Tecophlic(商標)、Tecoflex(商標)、及びHydroMed(商標)Dファミリーから、20~80のショア硬度、及び3~60%の水分取込みレベルをカバーする4つのポリウレタン材料(PU1~PU4)を選択した。各成分並びに種々の2成分、3成分及び4成分混合物の透過性と、クレアチニン及びクレアチンスロープとの関係性を調査するために実験を設計した。センサスロープにおいて役割を果たし得る他の因子があるので、試験PU溶液の全てを、7%w/vの濃度及び85/15のTHF/シクロヘキサノンの溶媒比に保持した。またキャスティング条件も、各試験PU溶液について2つの層で一定に保持した。溶媒蒸発のために各層について外膜を室温で5~10分間硬化させた。
【0049】
[0052] 4つのタイプのポリウレタン(PU1~PU4)を用いるシンプレックスセントロイド混合設計を18個の設計点(F1~F18)に適用し、これらは、PU原材料の特徴(硬度及び水分取込み)に関連して表1に記載される。各PU成分について試験した濃度範囲は0~7%w/vであった。18個のPU配合物のそれぞれを用いて12個のセンサを作製し、各配合物についてクレアチニン及びクレアチンに対する平均スロープ値(ミリグラム/デシリットル当たりのピコアンペアの単位、pA/mg/dL)を表1に要約する。
【0050】
【表1】
【0051】
[0053] 表1の結果は、クレアチニン透過性が、試験したPU材料の水分取込みレベルに直接比例することを示す。極めて低い3%の水分取込みを有するPU2はクレアチニン及びクレアチンの拡散を遮断し、外膜組成物が33%以上のPU2を含有すれば、有用なセンサ信号を発生しないであろう。
【0052】
[0054] 一方で、水分取込みに加えて、クレアチンの拡散もPUのタイプに依存する。PU3膜(平均スロープ638pA/mg/dL)に対してPU4膜(平均スロープ1151pA/mg/dL)の場合にクレアチンは最高の透過性を有し、PU4膜は50%の水分取込みを有し、PU3膜は60%の水分取込みを有する。クレアチニンとクレアチンの間のこの透過性の違いは、PU材料及び組成物を調整することにより、高いクレアチニン信号をまだ維持しながら、Crea/Cr信号比を最大にする可能性を提供する。例えば、F5はF3と同様に高いクレアチニンスロープを提供する(1987対1862pA/mg/dL)が、F5は、F3よりも2倍高いCrea/Cr比を有し(3.4対1.6)、したがって、クレアチン妨害効果が低いという点で、より良好なセンサを提供する。
【0053】
[0055] 表1に示される18個のPU配合物の試験結果に基づいて、クレアチニンスロープは、PU混合物に依存する。したがって、クレアチニン及びクレアチンのための標的クレアチニンセンサスロープは、2から4つのポリウレタンの混合物により達成することができる。例えば、クレアチニンスロープに対して2000pA/mg/dLの設定標的を用いて、回帰モデリングを使用して種々の配合物を得ることができる(表2)。
【0054】
【表2】
【0055】
実施例2:クレアチニンセンサにおけるF20の使用
[0056] クレアチニンセンサに適用された配合物F20はクレアチニン及びクレアチンの両方に対して安定した感度を実証し、表3に示されるように、約3のCrea/Cr信号比を有した。センサ感度及びCrea/Cr比はいずれも、周囲貯蔵で5ヶ月の貯蔵寿命にわたって安定していた。
【0056】
[0057] 外膜配合物F20を有するセンサ(N=12)は、複数バッチに関して5ヶ月の室温貯蔵後の3週間の使用寿命にわたって一定のままであるクレアチニンセンサの感度を実証した。全てのセンサは、表3に示されるように、安定したクレアチニンスロープ(図1A)及び安定したクレアチンスロープ(図1B)、並びに高いCrea/Cr比を示した。また表3のデータは、好ましいCrea/Cr信号比が5ヶ月の貯蔵寿命にわたって安定していたことも実証する。
【0057】
【表3】
【0058】
実施例3:外膜配合物F20の生体適合性及びセンサベースライン回復
[0058] 外膜配合物F20を有するクレアチニンセンサによって臨床サンプル中の全血クレアチニンを測定し、化学分析計Roche Cobasにより測定された血漿クレアチニンと比較した。サンプルバイアスは、十分に臨床上の要求の範囲内であった(破線)(図2)。
【0059】
[0059] 結果は、臨床全血サンプルに連続的に曝露されたときの外膜配合物F20の生体適合性を実証し、臨床検査室分析計からの血漿結果と比較して安定した性能を示した。またF20は、血液サンプル測定の間のクレアチニンセンサの急速なベースライン回復も示した。クレアチニン精度は0.2~15mg/dLの測定サンプル範囲を通して保持され、サンプルのキャリーオーバーからの影響が最小限であることが示された。
【0060】
参照による援用
[0060] 本明細書中で引用又は言及される全ての文書、及び本明細書中で引用された文書中で引用又は言及される全ての文書は、本明細書中又は参照によって本明細書中に援用される任意の文書中で言及される任意の製品のための任意の製造業者の使用説明書、記載、製品規格、及び製品シートと一緒に参照によって本明細書に援用され、本開示の実施において使用され得る。
【0061】
等価物
[0061] 本明細書に記載される詳細な実施例及び実施形態は、説明のためだけに例として与えられ、決して本開示を限定すると考えられてはならないことが理解される。それを考慮すれば種々の修正又は変化が当業者に示唆され、これらは本出願の趣旨及び範囲内に含まれ、特許請求の範囲の範囲内であると考えられる。本開示のシステム、方法、及びプロセスに関連するさらなる有利な特徴及び機能性は、特許請求の範囲から明らかであろう。さらに、当業者は、単なるルーチン的な実験を用いて、本明細書に記載される本開示の特定の実施形態の多数の等価物を認識する又は確認できるであろう。このような等価物は、以下の特許請求の範囲により包含されることが意図される。
図1A
図1B
図2