(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】圧電振動基板および圧電振動素子
(51)【国際特許分類】
H01L 41/312 20130101AFI20220126BHJP
H01L 41/09 20060101ALI20220126BHJP
H01L 41/337 20130101ALI20220126BHJP
【FI】
H01L41/312
H01L41/09
H01L41/337
(21)【出願番号】P 2021520631
(86)(22)【出願日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 JP2021000351
(87)【国際公開番号】W WO2021141081
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2021-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2020003003
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】多井 知義
(72)【発明者】
【氏名】鵜野 雄大
(72)【発明者】
【氏名】浅井 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】服部 良祐
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 真人
(72)【発明者】
【氏名】滑川 政彦
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-109950(JP,A)
【文献】国際公開第2019/244461(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0112233(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02182560(EP,A2)
【文献】米国特許出願公開第2021/0111698(US,A1)
【文献】国際公開第2019/220713(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/054238(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/312
H01L 41/09
H01L 41/337
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルク状の圧電性材料からなり、第一面および前記第一面と反対側の第二面を有する圧電層、
前記圧電層の第一面上の下部電極、
支持基板、および
前記下部電極と前記支持基板との間の中間層を有しており、
前記中間層が、酸化珪素、五酸化タンタル、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化ビスマス、アルミナ、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化珪素または珪素からなり、
前記支持基板の
表面と前記中間層との直接接合界面に
沿って非晶質層があり、前記中間層と前記非晶質層とが接触し、前記支持基板の前記表面と前記非晶質層とが接触していることを特徴とする、圧電振動基板。
【請求項2】
請求項1記載の圧電振動基板、および
前記圧電層の前記第二面上の上部電極
を備えることを特徴とする、圧電振動素子。
【請求項3】
バルク状の圧電性材料からなり、第一面および前記第一面と反対側の第二面を有する圧電層、
前記圧電層の第一面上の下部電極、
支持基板、および
前記支持基板の
表面に設けられた中間層を有しており、
前記中間層が、酸化珪素、五酸化タンタル、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化ビスマス、アルミナ、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化珪素または珪素からなり、
前記下部電極と前記中間層との直接接合界面に
沿って非晶質層があるか、あるいは前記中間層中
の直接接合界面に
沿って非晶質層があることを特徴とする、圧電振動基板。
【請求項4】
請求項3記載の圧電振動基板、および
前記圧電層の前記第二面上の上部電極
を備えることを特徴とする、圧電振動素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMSミラー等に好適に利用できる圧電振動基板および素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヘッドアップディスプレイ(HUD)とは、「視線を前方に保ったまま必要な情報を視界にオーバーラップして表示する装置」である。自動車の運転においては、メーターパネルやコンソールパネル上の情報をみる場合に比べ、前方に視線を保ったまま情報を視認できるので、わき見運転防止に効果があり、更には目の焦点移動が少なくて済むためドライバーの疲労軽減と安全性向上が図れる。
【0003】
HUDの原理は、蛍光管、CRTや液晶ディスプレイの画像を車のフロントガラスや透明なスクリーン(コンバイナ)に映す。HUDは光学的な構造の違いにより、以下の2方式がある。
(1) フロントガラスなどをスクリーンとして直接画像を投影するDirect Projection方式
(2) フロントガラスなどを反射ミラーとして作用させドライバーの網膜上に結像させるVirtual Imaging方式
【0004】
これらの方式の大きな相違は、ドライバーが画像を目にしたときの距離感にある。Direct Projection方式では、普通のプロジェクタと同様にスクリーン(コンバイナ)上に画像を認識するが、Virtual Imaging方式では、ドライバーの視線数メートル先の空間上に画像を認識する。いずれの方式でも、HUDを使用しないときと比較すると、ドライバーの前方視界とメーターパネルやコンソールパネルとの視線移動は格段に少なくなる しかし、Virtual Imaging方式においては通常運転時の視野からの焦点移動も少なくてすむため、より運転に注意を集中でき疲労も少ない。Virtual Imaging方式では、近年レーザービームを走査して描画する新しい方式の開発が進んでいる。
【0005】
レーザー走査型ディスプレイは、RGB3色のレーザービームをコンバイナと呼ぶ光学素子で合波し、この1本のビームを微小ミラーで反射して2次元に走査することにより描画を行う。この方式は、CRTの電子ビーム走査に似ているが、蛍光体を励起する代わりに、その水平走査線上の画素にあたる位置で各レーザーのパルス幅と出力を制御して色と輝度を変え、画素を高速に点描画する。実現可能な解像度はミラーの振動周波数とレーザーの変調周波数によって決まる。
この方式による主な利点は以下のとおりである。
(1) 部品点数が少ないため小型化、低コスト化、信頼性向上を実現できる。
(2) 各画素に必要な明るさでレーザーを点灯するため、低消費電力を実現できる。
(3) コリメート(平行光)されたレーザー光を用いるため、フォーカス調整が不要である。
【0006】
レーザー走査型ディスプレイのコア部品であるマイクロミラーは、SiをMEMS(Micro Electro Mechanical System)技術で加工し、金属を蒸着する。MEMSミラーの駆動方法は、静電引力で駆動する静電方式、電磁力で駆動する電磁方式、圧電素子で駆動する圧電方式などがある。この中で圧電方式の長所として高速駆動、低消費電力、大駆動力、短所として圧電素子の成膜が難しいことが挙げられる。
【0007】
従来、MEMSミラーなどに使用する圧電振動素子を製造するには、シリコン基板上にPZTなどの圧電膜をスパッタリング法などによって成膜している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-225596
【文献】特開2014-086400
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
今後、HUDには大画面化・広画角化が要求されており、現状の画角7~8度に対し、最大20度まで広げる要求もある。大画面化・広画角を実現するためには、MEMSミラーの圧電振動素子の周波数、振幅および信頼性を向上させる必要がある。しかし、特許文献1記載のように、従来のシリコン基板上に成膜法で圧電層を形成した圧電振動素子では、こうした高度の周波数、振幅および信頼性を備えた圧電振動素子を実現できないことが判明してきた。
【0010】
特に、圧電振動素子をパッケージや基板に実装し、電気的な接続をする際には、ワイヤーボンディングやフリップチップボンディングを行う。ボンディング工程では、圧電振動素子に加熱、超音波振動および荷重という負荷をかけることが必要である。この際、圧電振動素子の周波数、振幅、信頼性を向上させる仕様とすると、加熱、超音波振動および加重の負荷が大きくなり、圧電振動素子にクラックやチッピングが発生しやすくなることが判明してきた。これによって、圧電振動素子の歩留りが低下する。
【0011】
本発明の課題は、圧電振動素子の実装時に加わる加熱、超音波振動および加重によるクラックやチッピングを抑制できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
バルク状の圧電性材料からなり、第一面および前記第一面と反対側の第二面を有する圧電層、
前記圧電層の第一面上の下部電極、
支持基板、および
前記下部電極と前記支持基板との間の中間層を有しており、
前記中間層が、酸化珪素、五酸化タンタル、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化ビスマス、アルミナ、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化珪素または珪素からなり、
前記支持基板の表面と前記中間層との直接接合界面に沿って非晶質層があり、前記中間層と前記非晶質層とが接触し、前記支持基板の前記表面と前記非晶質層とが接触していることを特徴とする、圧電振動基板に係るものである。
また、本発明は、
バルク状の圧電性材料からなり、第一面および前記第一面と反対側の第二面を有する圧電層、
前記圧電層の第一面上の下部電極、
支持基板、および
前記支持基板の表面に設けられた中間層を有しており、
前記中間層が、酸化珪素、五酸化タンタル、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化ビスマス、アルミナ、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化珪素または珪素からなり、
前記下部電極と前記中間層との直接接合界面に沿って非晶質層があるか、あるいは前記中間層中の直接接合界面に沿って非晶質層があることを特徴とする、圧電振動基板に係るものである。
【0013】
また、本発明は、前記圧電振動基板、および
前記圧電層上の上部電極
を備えることを特徴とする、圧電振動素子に係るものである。
【0014】
第二の態様に係る発明は、
バルク状の圧電性材料からなり、第一面および前記第一面と反対側の第二面を有する圧電層、
前記圧電層の第一面上の下部電極、
前記下部電極に対して接合されている高剛性セラミック板、および
前記高剛性セラミック板に対して接合されている支持基板
を備えていることを特徴とする、圧電振動基板に係るものである。
【0015】
また、本発明は、前記圧電振動基板、および
前記圧電層の第二面上の上部電極
を備えることを特徴とする、圧電振動素子に係るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明者は、圧電振動素子をパッケージや基板に実装し、電気的な接続をする際には、加熱、超音波振動および加重によって圧電振動素子にクラックやチッピングが発生する理由を検討した。この結果、スパッタリング等の各種成膜方法によってPZTなどの圧電膜を成膜した場合、圧電膜の結晶品質が悪く、これがクラックやチッピングの原因となっていることがわかった。
【0017】
このため、本発明者は、バルクの圧電性材料基板を薄膜化することで圧電振動板を製造することも検討した。しかし、パルクの圧電性材料基板は、加工によって厚さを例えば50μm以下に薄くすると、強度不足のため割れる傾向があるため、圧電振動素子として利用することは困難であった。
【0018】
これらの知見に立ち、本発明者は、バルク状の圧電性材料基板を下部電極および中間層を介して別体の支持基板に直接接合し、この圧電性材料基板を高周波での振動に適した所望の厚みにまで薄く研磨することで、厚みが薄く結晶性の良い圧電振動層を形成することに成功し、これによって加熱、超音波振動および加重による圧電振動素子のクラックやチッピングを抑制できることを見いだした。
【0019】
更に、本発明者は、こうした形態の圧電振動素子において、圧電層の第一面上に設けられた下部電極と支持基板との間に別体の高剛性セラミック板を設けることによって、加熱、超音波振動および加重による圧電振動素子のクラックやチッピングをより一層低減できることを見いだした。
この結果、本発明によって、圧電特性および耐久性に優れた圧電アクチュエーターデバイスを実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】(a)は、圧電体2、下部電極3および中間層4の積層体を示し、(b)は、支持基板5を示し、(c)は、中間層4と支持基板5とを直接接合した接合体を示す。
【
図2】(a)は、
図1(c)の接合体において圧電体を加工することで得られた接合体を示し、(b)は、圧電層2A、上部電極1、下部電極3、中間層4、非晶質層6および支持基板5を有する圧電振動素子11を示す。
【
図3】(a)は、高剛性セラミック体7の第一面上に中間層8を設けた状態を示し、(b)は、支持基板5を示し、(c)は、支持基板5に高剛性セラミック板7Aを接合している状態を示し、(d)は、圧電体2上に下部電極3および中間層4を設けた状態を示す。
【
図4】(a)は、支持基板5、下部電極3、高剛性セラミック板7Aおよび圧電体2の接合体を示し、(b)は、
図4(a)の接合体において圧電体2を加工して圧電層2Aとした状態を示し、(c)は、圧電振動素子12を示す。
【
図5】本発明実施例における支持基板と中間層との界面付近の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【
図6】本発明実施例における下部電極の接合面上の中間層と高剛性セラミック板との接合界面とその周辺を示す断面透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【
図7】支持基板の接合面上の中間層と高剛性セラミック板の第一面との接合界面とその周辺を示す断面透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【
図8】圧電振動素子の断面透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施形態を更に詳細に説明する。
図1および
図2は、第一の態様の発明に係るものである。
好適な実施形態においては、
図1(a)に示すように、圧電体2は第一面2aと第二面2bとを有する。圧電体2の第一面2a上に下部電極3、中間層4を設ける。次いで、中間層4の接合面4aに対して矢印Aのように中性化原子ビームを照射することによって,中間層4aを活性化する。
【0022】
一方、
図1(b)に示すように、支持基板5の接合面5aに対して矢印Bのように中性化原子ビームを照射することによって、接合面5aを活性化する。次いで、
図1(c)に示すように、中間層4の接合面4aと支持基板5の接合面5aとを接触させ、直接接合することによって、接合体が得られる。典型的には、支持基板5と中間層4との境界に沿って非晶質層6が生成する。
【0023】
次いで、
図2(a)に示すように、接合体の圧電体を加工して薄くすることによって、所望の厚さを有する圧電層2Aを形成する。圧電層2Aの厚さは、目的とする振動周波数に応じて適宜変更する。2cは圧電層2Aの加工面(第二面)である。次いで、
図2(b)に示すように、圧電層2Aの第二面2c上に上部電極1を形成することによって、圧電振動素子11を得る。
【0024】
図3および
図4は、第二の態様の発明に係るものである。
図3(a)に示すように、高剛性セラミック体7は第一面7aおよび第二面7bを有する。高剛性セラミック体7の第一面7a上に中間層8を設ける。次いで、中間層8の接合面8aに対して矢印Cのように中性化原子ビームを照射することによって、接合面8aを活性化する。一方、
図3(b)に示すように、支持基板5の接合面5aに対して矢印Bのように中性化原子ビームを照射することによって、接合面5aを活性化する。
【0025】
次いで、
図3(c)に示すように、中間層8の接合面8aと支持基板5の接合面5aとを接触させ、直接接合することによって、接合体を得る。この際、典型的には、接合面8aと接合面5aとの界面に沿って非晶質層10が生成している。
【0026】
次いで、高剛性セラミック体7を加工して薄くすることによって、所望厚さの高剛性セラミック板7Aを形成する。次いで、高剛性セラミック板7Aの第二面7c上に中間層16を設け、中間層の接合面16aに対して矢印Dのように中性化原子ビームを照射し、表面活性化する。
【0027】
一方、
図3(d)に示すように、圧電体2の第一面2a上に下部電極3および中間層4を順次設け、中間層4の接合面4aを中性化原子ビームEによって活性化する。次いで、
図4(a)に示すように、中間層4の接合面4aと高剛性セラミック板7Aの第二面7c上の中間層16とを接触させ、直接接合することによって、接合体を得る。この際、典型的には、直接接合された中間層4と中間層16との界面に沿って非晶質層が生成する。
【0028】
次いで、
図4(b)に示すように、接合体の圧電体2を加工して薄くすることによって、所望の厚さを有する圧電層2Aを形成する。圧電層2Aの厚さは、目的とする振動周波数に応じて適宜変更する。2cは圧電層2Aの加工面(第二面)である。次いで、
図4(c)に示すように、圧電層2Aの第二面2c上に上部電極1を形成することによって、圧電振動素子12を得る。
【0029】
本発明の素子は、バルク状の圧電性材料からなり、第一面および第二面を有する圧電層を有する。
バルク状の圧電性材料とは、基板上に成膜された状態の圧電性材料ではなく、結晶成長法や焼結法によってバルク状に形成された圧電性材料を意味する。こうした圧電性材料は通常結晶性がよく、強度が高い。
【0030】
特に、バルク状の圧電性材料は結晶性が高いため、デバイスに必要な圧電特性の一つであるd31(電極面に反った方向の伸び縮み)が、成膜品に比べて大きいという特徴を有する。圧電定数(d31:pc/N=pm/V)は、バルク品の場合に例えば150以上(200を超える場合もある)であっても、成膜品は150以下であり,平均的に100前後であることが多い。
【0031】
圧電性材料は、特に限定はされないが、鉛系ペロブスカイト酸化物(例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)やニオブ酸鉛マグネシウム-チタン酸鉛(PMN-PT)を例示できる。また、鉛系ペロブスカイト酸化物(たとえばPZT)には、La(ランタン)、Nb(ニオブ)、および/またはSr(ストロンチウム)を添加することができるし、Pb(Mg,Nb)O3、Pb(Ni,Nb)O3、PbTiO3等の酸化物またはこれらの組み合わせを用いることができる。
【0032】
加工前の圧電体の厚さは、ハンドリングの際の機械的強度の観点からは、200μm以上であることが好ましい。また、加工後の圧電層(振動体)の厚さは、目的とする振動周波数に投じて決定するが、たとえば0.5μm~50μmとすることができる。
【0033】
上部電極、下部電極の材質は特に限定されず、圧電層の振動を制御する電圧を印加可能であれば問題はないが、たとえば、白金、金、Au-Cu、Al、Al-Cu合金を例示できる。また、圧電層と上部電極との間、高剛性セラミックス板と下部電極との間には、各電極の密着性を向上させるためのCrやTiなどのバッファ層を設けることもできる。
【0034】
PZTなどの圧電体を支持基板上に成膜法で形成する場合、支持基板上に圧電体を成長させるためのシード層が必須となる。圧電体育成の観点から、シード層の材質はPtが一般的であり、成膜方法ではPt以外に下部電極の選択肢が事実上なかった。
【0035】
一方、本発明においては、バルク状の圧電性材料を支持基板に対して接合して振動体を作製するので、下部電極の材料や膜厚などの影響を受けずに下部電極を圧電体に対して接合することができる。このため、デバイスやプロセスに最適な電極材料を選択することができる。例えば、Ptと比較してAuはエッチングが容易にできるため、下部電極の微細化が可能となる。一般には下部電極を微細化すると、配線抵抗が上昇しデバイス特性の劣化や発熱による信頼性の劣化が問題となるが、AuはPtと比較して抵抗率が低いため、微細化しても配線抵抗の上昇による問題は回避できる。このため、デバイスの小型化と高性能化の両立が可能となる。
【0036】
こうした観点からは、下部電極の材質はAuが特に好ましいが、Ag、Cu、Al、W、Moも好適に利用でき、またAu、Ag、Cu、Al、W、Moの合金も好適に利用できる。また、下部電極と圧電体との間には、前述のバッファ層を設けることで、密着性を向上させることが好ましい。
【0037】
第一の態様の発明においては、下部電極上に中間層を設けることができ、また支持基板上に中間層を設けることができる。この直接接合には以下の実施形態がある。
(1) 下部電極上の中間層と支持基板とを直接接合する。
(2) 支持基板の上の中間層と下部電極とを直接接合する。
(3) 下部電極上の中間層と支持基板上の中間層とを直接接合する。
【0038】
また、第二の態様の発明においては、下部電極の接合面上に中間層を設けることができ、高剛性セラミックス板の第一面上に中間層を設けることができる。この直接接合には以下の実施形態がある。
(1) 下部電極の接合面上の中間層と高剛性セラミックス板の第二面とを直接接合する。
(2) 高剛性セラミックス板の第二面上の中間層と下部電極の接合面とを直接接合する。
(3) 下部電極の接合面上の中間層と高剛性セラミックス板の第二面上の中間層とを直接接合する。
【0039】
また、第二の態様の発明においては、支持基板の接合面上に中間層を設けることができ、高剛性セラミックス体の第一面上に中間層を設けることができる。この直接接合には以下の実施形態がある。
(1) 支持基板の接合面上の中間層と高剛性セラミックス体の第一面とを直接接合する。
(2) 高剛性セラミックス板の第一面上の中間層と支持基板の接合面とを直接接合する。
(3) 高剛性セラミックス板の第一面上の中間層と支持基板の接合面上の中間層とを直接接合する。
いずれの形態においても、直接接合の界面に沿って非晶質層が生成することがある。
【0040】
こうした中間層は、下部電極と高剛性セラミックス板、高剛性セラミック板と支持基板との間の接合強度を高くする上で好ましい。
中間層の材質は限定されないが、酸化珪素、五酸化タンタル、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化ビスマス、アルミナ、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化珪素、珪素を例示できる。
【0041】
中間層の厚さは、特に限定されないが、製造コストの観点からは0.01~1μmが好ましく、0.01~0.5μmが更に好ましい。
中間層の成膜方法は限定されないが、スパッタリング(sputtering)法、化学的気相成長法(CVD)、蒸着を例示できる。
【0042】
支持基板の材質は特に限定されないが、金属酸化物、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、ケイ素、ガラス、金属、SOI (Silicon on Insulator) であることが好ましい。この金属酸化物は、単一金属の酸化物であってよく、あるいは複数種の金属の複合酸化物であってもよい。この金属酸化物は、好ましくは、サイアロン、サファイア、コージェライト、ムライトおよびアルミナからなる群より選ばれる。アルミナは好ましくは透光性アルミナである。金属はSUS、銅、アルミニウムなどが例示できる。
【0043】
支持基板の相対密度は、接合強度の観点からは、95.5%以上が好ましく、100%であってもよい。相対密度はアルキメデス法によって測定する。また、支持基板の製法は特に限定されないが、焼結体、結晶育成であることが好ましい。
【0044】
高剛性セラミック板を構成する高剛性セラミックスとは、ヤング率(JIS R1602):200GPa以上、曲げ強度(JIS R1601):310MPa以上、破壊靭性(JIS R1607):1.5MPa√m以上の材料である。
高剛性セラミックスの種類としては、サイアロン、透光性アルミナ、サファイアなどを例示できる。
サイアロンは、窒化珪素とアルミナとの混合物を焼結して得られるセラミックスであり、以下のような組成を有する。
Si6-zAlzOzN8-z
すなわち、サイアロンは、窒化珪素中にアルミナが混合された組成を有しており、zがアルミナの混合比率を示している。zは、0.5以上が更に好ましい。また、zは、4.0以下が更に好ましい。
【0045】
サファイアはAl2O3の組成を有する単結晶であり、アルミナはAl2O3の組成を有する多結晶である。
【0046】
中間層と支持基板、中間層と下部電極、中間層と高剛性セラミック体、中間層と支持基板、および中間層同士を直接接合する際には、以下の方法が好ましい。
まず、各中間層の接合面、支持基板の接合面、高剛性セラミック体の接合面、下部電極の接合面を平坦化して各平坦面を得る。ここで、各接合面を平坦化する方法は、ラップ(lap)研磨、化学機械研磨加工(CMP)などがある。また、平坦面の算術平均粗さRaは、1nm以下が好ましく、0.3nm以下が更に好ましい。
【0047】
次いで、研磨剤の残渣や加工変質層の除去のため、各接合面を洗浄する。各接合面を洗浄する方法は、ウエット洗浄、ドライ洗浄、スクラブ洗浄などがあるが、簡便かつ効率的に清浄表面を得るためには、スクラブ洗浄が好ましい。この際には、洗浄液としてサンウオッシュLH540を用いた後に、アセトンとIPA(イソプロピルアルコール)の混合溶液を用いてスクラブ洗浄機にて洗浄することが特に好ましい。
【0048】
次いで、各接合面に中性化原子ビームを照射することで、各接合面を活性化する。
中性化ビームによる表面活性化を行う際には、特許文献2に記載のような装置を使用して中性化ビームを発生させ、照射することが好ましい。すなわち、ビーム源として、サドルフィールド型の高速原子ビーム源を使用する。そして、チャンバーに不活性ガスを導入し、電極へ直流電源から高電圧を印加する。これにより、電極(正極)と筺体(負極)との間に生じるサドルフィールド型の電界により、電子eが運動して、不活性ガスによる原子とイオンのビームが生成される。グリッドに達したビームのうち、イオンビームはグリッドで中和されるので、中性原子のビームが高速原子ビーム源から出射される。ビームを構成する原子種は、不活性ガス(アルゴン、窒素等)が好ましい。
ビーム照射による活性化時の電圧は0.5~2.0kVとすることが好ましく、電流は50~200mAとすることが好ましい。
【0049】
次いで、真空雰囲気で、活性化された接合面同士を接触させ、接合する。この際の温度は常温であるが、具体的には40℃以下が好ましく、30℃以下が更に好ましい。また、接合時の温度は20℃以上、25℃以下が特に好ましい。接合時の圧力は、100~20000Nが好ましい。
【0050】
支持基板と中間層との間には非晶質層が生成することがある。こうした非晶質層の組成は、中間層を構成する金属原子、支持基板を構成する金属原子、支持基板を構成する酸素原子または窒素原子、および場合によってはアルゴンを含有する。
また、下部電極と中間層との間には非晶質層が生成することがある。こうした非晶質層の組成は、中間層を構成する金属原子、下部電極を構成する金属原子、および場合によってはアルゴンを含有する。
【0051】
また、高剛性セラミック板と中間層との間には非晶質層が生成することがある。こうした非晶質層の組成は、中間層を構成する金属原子、高剛性セラミック板を構成する金属原子、高剛性セラミックス板を構成する酸素原子または窒素原子、および場合によってはアルゴンを含有する。
【0052】
また、圧電体と中間層との間には非晶質層が生成することがある。こうした非晶質層の組成は、中間層を構成する金属原子、圧電体を構成する金属原子、および場合によってはアルゴンを含有する。
【0053】
好適な実施形態においては、第一の態様の基板を製造するには、圧電体上に下部電極および中間層を設け、次いで、中間層の接合面と支持基板の接合面とを直接接合することによって、接合体を得る。この場合、典型的には、支持基板と中間層との境界に沿って非晶質層が生成する。
次いで、接合体の圧電体を加工して薄くすることによって、所望の厚さを有する圧電層を形成し、圧電振動基板を得る。次いで、
図2(b)に示すように、圧電層の第二面上に上部電極を形成することによって、圧電振動素子を得る。
【0054】
また、第二の態様の基板を作製するには、高剛性セラミック体の第一面上に中間層を設ける。次いで、この中間層と支持基板の接合面とを直接接合し、接合体を得る。この際、典型的には、中間層と支持基板の接合面との界面に沿って非晶質層が生成している。次いで、高剛性セラミック体を加工して薄くすることによって、所望厚さの高剛性セラミック板を形成する。
一方、圧電体の第一面に下部電極を設け、下部電極の接合面上に中間層を設ける。
、そして、高剛性セラミックス板の第二面上に中間層を設け、この中間層を下部電極の接合面上の中間層に直接接合する。次いで、圧電体を加工することで圧電層を得る。
【0055】
本発明の圧電振動素子は、MEMS素子のアクチュエーターなどに好適に利用できる。
【実施例】
【0056】
(実施例A1)
図1および
図2を参照しつつ説明した方法にしたがって、
図2(b)に示す圧電振動素子11を試作した。.
ただし、圧電体2は厚さ250μmのPZTのバルク体とし、上部電極1、下部電極3の材質をPtとした。下部電極3上にスパッタリング法によってアモルファスシリコンからなる中間層4を設けた。また、シリコンからなる支持基板5を準備した。次いで、支持基板5の接合面5aおよび中間層4の接合面4aを、化学機械研磨加工(CMP)によって仕上げ加工し、各算術平均粗さRaを0.2nmとした。
【0057】
次いで、支持基板5の接合面5aおよび中間層4の接合面4aを洗浄し、汚れを取った後、真空チャンバーに導入した。10-6Pa台まで真空引きした後、各接合面4a、5aに高速原子ビーム(加速電圧1kV、Ar流量27sccm)を120sec間照射した。ついで、支持基板5の接合面5aと中間層4の接合面4aとを接触させた後、10000Nで2分間加圧して接合した。
次いで、圧電体2の一方の主面2bを研削および研磨加工することによって、厚み1μmの圧電層2Aを形成した。次いで、圧電層2Aの第二面2c上に上部電極1をスパッタリング法で成膜し、圧電振動素子11を得た。
【0058】
圧電振動素子11をパッケージに実装し、ワイヤーボンディングを行った。ボンディング工程では、圧電振動素子11に加熱(150℃)、超音波振動(80kHz)および荷重(500gf)を加えた。この結果、圧電振動素子11にクラックやチッピングが発生した不良品の発生率は5%であった。
【0059】
図5には、圧電振動素子11の中間層と支持基板との接合界面とその周辺を示す断面透過型電子顕微鏡(TEM)写真である(倍率200万倍)。
図5において、上側の明るい領域は中間層(アモルファスシリコン)であり、下側は支持基板(シリコン)であり、中央部分の帯状領域は、接合時に生じた非晶質層である。支持基板、非晶質層、および中間層における各原子の比率は以下のとおりである。
【0060】
【0061】
(比較例A1)
気相成膜法によって圧電層を成膜し、圧電振動素子を試作した。
すなわち、シリコンからなる支持基板上に、Ptからなる下部電極3、厚さ1μmのPZTからなる圧電層およびPtからなる上部電極をスパッタリング法で成膜し、圧電振動素子を得た。
次いで、圧電振動素子をパッケージに実装し、実施例A1と同様にして熱、超音波振動および荷重を加えた。この結果、圧電振動素子にクラックやチッピングが発生した不良品の発生率は20%であった。
【0062】
(実施例B1)
実施例A1と同様にして圧電振動素子11を試作した。ただし、実施例A1とは異なり、圧電体2および圧電層2Aの材質をPMN-PTとした。その他は実施例A1と同様とした。得られた圧電振動素子11をパッケージに実装し、実施例A1と同様にして熱、超音波振動および荷重を加えた。この結果、圧電振動素子にクラックやチッピングが発生した不良品の発生率は6%であった。
【0063】
(比較例B1)
比較例A1と同様にして圧電振動素子11を試作した。ただし、比較例A1とは異なり、圧電層の材質をPMN-PTとした。その他は比較例A1と同様とした。得られた圧電振動素子をパッケージに実装し、実施例A1と同様にして熱、超音波振動および荷重を加えた。この結果、圧電振動素子にクラックやチッピングが発生した不良品の発生率は22%であった。
【0064】
(実施例C1)
図3および
図4を参照しつつ説明した方法にしたがって、
図4(c)に示す圧電振動素子12を試作した。
ただし、
図3(a)に示すように、厚さ250μmのサイアロンからなる高剛性セラミック体7の第一面7aに、アモルファスシリコンからなる中間層8を設けた。また、
図3(b)に示すように、シリコンからなる厚さ500μmの支持基板5の表面にアモルファスシリコンからなる中間層を準備した。次いで、支持基板5の中間層接合面5aおよび中間層8の接合面8aを、化学機械研磨加工(CMP)によって仕上げ加工し、各算術平均粗さRaを0.2nmとした。
次いで、支持基板5の中間層接合面5aおよび中間層8の接合面8aを洗浄し、汚れを取った後、真空チャンバーに導入した。10
-6Pa台まで真空引きした後、各接合面5a、8aに高速原子ビーム(加速電圧1kV、Ar流量27sccm)を120sec間照射した。ついで、支持基板5の中間層接合面5aと中間層8の接合面8aとを接触させた後、10000Nで2分間加圧して接合した。次いで、得られた接合体を100℃で20時間加熱した。
【0065】
次いで、高剛性セラミック体7の第二面7bを研削および研磨加工することによって、
図3(c)に示すように、厚み50μmの高剛性セラミック板7Aを形成した。ただし、本実施例では、高剛性セラミック板7Aの第二面7c上に中間層16を設けなかった。
一方、
図3(d)に示すように、圧電体2は厚さ250μmのPZTのバルク体とし、圧電体2の第一面2a上に、下部電極3としてTi(15nm)/Pt(200nm)を成膜し、更にスパッタリング法によってアモルファスシリコンからなる中間層4を設けた。
次いで、高剛性セラミック板7Aの第二面7cおよび中間層4(
図1(a)参照)の接合面4aを、化学機械研磨加工(CMP)によって仕上げ加工し、各算術平均粗さRaを0.2nmとした。
【0066】
次いで、高剛性セラミック板7Aの第二面7cおよび中間層4の接合面4aを洗浄し、汚れを取った後、真空チャンバーに導入した。10
-6Pa台まで真空引きした後、第二面7c、接合面4aに高速原子ビーム(加速電圧1kV、Ar流量27sccm)を120sec間照射した。ついで、高剛性セラミック板7Aの第二面7cと中間層4の接合面4aとを接触させた後、10000Nで2分間加圧して接合した。次いで、得られた接合体を100℃で20時間加熱した。
次いで、圧電体2の第二面2bを研削および研磨加工することによって、
図4(b)に示すように、厚さ1μmの圧電層2Aを形成した。次いで、上部電極1(Ti(15nm)/Pt(200nm))をスパッタリング法で成膜し、圧電振動素子12を得た。
【0067】
圧電振動素子12をパッケージに実装し、ワイヤーボンディングを行った。ボンディング工程では、圧電振動素子12に加熱(150℃)、超音波振動(80kHz)および荷重(500gf)を加えた。この結果、圧電振動素子11にクラックやチッピングが発生した不良品の発生率は5%であった。
【0068】
図6は、下部電極3の接合面上の中間層と高剛性セラミック板との接合界面とその周辺を示す断面透過型電子顕微鏡(TEM)写真である(倍率200万倍)。
図6において、上側の明るい領域は中間層(アモルファスシリコン)であり、下側は高剛性セラミック板(サイアロン)であり、中央部分の帯状領域は、接合時に生じた非晶質層である。高剛性セラミック板、非晶質層、および中間層における各原子の比率は以下のとおりである。
【0069】
【0070】
図7は、支持基板5の接合面5a上の中間層と高剛性セラミック板の第一面上の中間層との接合界面とその周辺を示す断面透過型電子顕微鏡(TEM)写真である(倍率200万倍)。
図7において、上側の明るい領域は中間層(アモルファスシリコン)であり、下側の暗い領域は支持基板(シリコン)である。そして、二つの中間層の間の帯状領域は、接合時に生じた非晶質層である。高剛性セラミックス板上の中間層、第一面上の非晶質層、支持基板上の中間層および支持基板における各原子の比率は以下のとおりである。
【0071】
【0072】
(実施例D1)
実施例A1と同様にして圧電振動素子を作製した。
ただし、実施例A1と異なり、圧電体上のバッファ層の材質をCrとし、下部電極および上部電極の材質をAuとした。また下部電極上には中間層を設けず、支持基板上にも中間層を設けず、下部電極と支持基板とを直接接合した。
【0073】
具体的には、圧電体2は厚さ250μmのPZTのバルク体とし、圧電体2上にバッファ層および下部電極をスパッタリング法で成膜した。バッファ層の材質をCrとし、下部電極の材質をAuとした。また、シリコンからなる支持基板5を準備した。次いで、支持基板5の接合面5aおよび下部電極の接合面を、化学機械研磨加工(CMP)によって仕上げ加工し、各算術平均粗さRaを0.2nmとした。
【0074】
次いで、支持基板5の接合面5aおよび下部電極の接合面を洗浄し、汚れを取った後、真空チャンバーに導入した。10-6Pa台まで真空引きした後、各接合面に高速原子ビーム(加速電圧1kV、Ar流量27sccm)を120sec間照射した。ついで、支持基板5の接合面5aと下部電極の接合面とを接触させた後、10000Nで2分間加圧して接合した。
【0075】
次いで、圧電体2の一方の主面2bを研削および研磨加工することによって、厚み1μmの圧電層2Aを形成した。次いで、圧電層2Aの第二面2c上に、Crからなるバッファ層およびAuからなる上部電極をスパッタリング法で成膜し、圧電振動素子を得た。
【0076】
圧電振動素子をパッケージに実装し、ワイヤーボンディングを行った。ボンディング工程では、圧電振動素子に加熱(150℃)、超音波振動(80kHz)および荷重(500gf)を加えた。この結果、圧電振動素子11にクラックやチッピングが発生した不良品の発生率は3%であった。
図8は、圧電振動素子の断面透過型電子顕微鏡(TEM)写真である(倍率200万倍)。
図8において、上側の明るい領域は圧電層であり、圧電層の第一面にCr層およびAu層がそれぞれ帯として表示されている。そして、下側は支持基板(シリコン)であり、支持基板とAu層との間の帯状領域は、接合時に生じた非晶質層である。