(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】熱伝導性シリコーングリース組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 5/14 20060101AFI20220126BHJP
【FI】
C09K5/14 101E
(21)【出願番号】P 2021571725
(86)(22)【出願日】2021-09-07
(86)【国際出願番号】 JP2021032886
【審査請求日】2021-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2021009373
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000237422
【氏名又は名称】富士高分子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】片石 拓海
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/182854(WO,A1)
【文献】特表2020-535270(JP,A)
【文献】国際公開第2018/88416(WO,A1)
【文献】特開2016-11358(JP,A)
【文献】特表2008-510878(JP,A)
【文献】特開2004-161797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K5/00-5/20
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非硬化性の熱伝導性シリコーングリース組成物であって、
A 40℃における動粘度が50~10,000mm
2/sである非硬化性のシリコーンオイルを100質量部と、
B 熱伝導性粒子を、A成分100質量部に対して、105~500質量部を含み、
前記熱伝導性粒子は、
B1 中心粒子径が0.1~1μmの不定形アルミナであり、一部または全部がR
aSi(OR’)
4-a(但し、Rは炭素数8~12の非置換または置換のアルキル基、R’は炭素数1~4のアルキル基、aは0もしくは1)で示されるアルコキシシラン化合物又はその部分加水分解物で表面処理されているもの50~300質量部と、
B2 中心粒子径が0.1~10μmの板状窒化ホウ素を5~50質量部と、
B3 中心粒子径が20~70μmの凝集窒化ホウ素を50~150質量部を含み、
B3成分/B2成分=2~20となる割合で配合されていることを特徴とする熱伝導性シリコーングリース組成物。
【請求項2】
前記熱伝導性シリコーングリース組成物は、さらにC成分として、R
aSi(OR’)
4-a(但し、Rは炭素数8~12の非置換または置換のアルキル基、R’は炭素数1~4のアルキル基、aは0もしくは1)で示されるアルコキシシラン化合物を0.1~2質量部含む請求項1に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【請求項3】
前記熱伝導性シリコーングリース組成物の熱伝導率は、2.0W/m・K以上8.0W/m・K以下である請求項1又は2に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【請求項4】
前記熱伝導性シリコーングリース組成物の比重は、1.0以上2.0以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【請求項5】
前記熱伝導性シリコーングリース組成物は、B型粘度計で測定した絶対粘度が1,000~10,000Pasである請求項1~4のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【請求項6】
前記B1成分の不定形アルミナは、一部または全部が前記アルコキシシラン化合物又はその部分加水分解物で前処理されている請求項1~5のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【請求項7】
前記B1成分の不定形アルミナ100質量部に対し、アルコキシシラン化合物は0.01~10質量部添加されている請求項6に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【請求項8】
前記熱伝導性シリコーングリース組成物は、ディスペンサー、ビン、缶及びチューブからなる群から選ばれる少なくとも一つに充填されている請求項1~7のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の非硬化性の熱伝導性シリコーングリース組成物の製造方法であって、
A 40℃における動粘度が50~10,000mm
2/sである非硬化性のシリコーンオイルを100質量部に、
B 熱伝導性粒子を、A成分100質量部に対して、105~500質量部とし、前記熱伝導性粒子は、
B1 中心粒子径が0.1~1μmの不定形アルミナであり、一部または全部がR
aSi(OR’)
4-a(但し、Rは炭素数8~12の非置換または置換のアルキル基、R’は炭素数1~4のアルキル基、aは0もしくは1)で示されるアルコキシシラン化合物又はその部分加水分解物で表面処理されているもの50~300質量部と、
B2 中心粒子径が0.1~10μmの板状窒化ホウ素を5~50質量部と、
B3 中心粒子径が20~70μmの凝集窒化ホウ素を50~150質量部を含み、
B3成分/B2成分=2~20となる割合で混合することを特徴とする熱伝導性シリコーングリース組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気・電子部品等の発熱部と放熱体の間に介在させるのに好適な熱伝導性シリコーングリース組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のCPU等の半導体の性能向上はめざましくそれに伴い発熱量も膨大になっている。そのため発熱するような電子部品には放熱体が取り付けられ、半導体などの発熱体と放熱体との密着性を改善する為に熱伝導性シリコーングリースが使われている。機器の小型化、高性能化、高集積化に伴い熱伝導性シリコーングリースには高熱伝導性とともに耐落下性が求められている。特許文献1には、熱伝導性充填剤と、分子内に硬化性官能基を一つ有するポリシロキサンを少なくとも1種含むポリオルガノシロキサン樹脂と、アルコキシシリル基及び直鎖状シロキサン構造を有するシロキサン化合物とを含む組成物が提案されている。特許文献2には、液状シリコーンと熱伝導性充填剤と疎水性球状シリカ微粒子を含み、放熱性を向上した熱伝導性シリコーン組成物が提案されている。特許文献3の[0131]には、粒子径と形状の異なるアルミナを含フッ素接着組成物に配合することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-104714号公報
【文献】特開2016‐044213号公報
【文献】特開2017-190389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の熱伝導性シリコーングリースは、熱伝導率に比例して、粘度または比重が高くなってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は前記従来の問題を解決するため、作業性及び塗布性が良好な粘度であり、高熱伝導率でありながら比較的低比重である熱伝導性シリコーングリース組成物及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物は、非硬化性の熱伝導性シリコーングリース組成物であって、
A 40℃における動粘度が50~10,000mm2/sである非硬化性のシリコーンオイルを100質量部と、
B 熱伝導性粒子を、A成分100質量部に対して、105~500質量部を含み、
前記熱伝導性粒子は、
B1 中心粒子径が0.1~1μmの不定形アルミナであり、一部または全部がRaSi(OR’)4-a(但し、Rは炭素数8~12の非置換または置換のアルキル基、R’は炭素数1~4のアルキル基、aは0もしくは1)で示されるアルコキシシラン化合物又はその部分加水分解物で表面処理されているもの50~300質量部と、
B2 中心粒子径が0.1~10μmの板状窒化ホウ素を5~50質量部と、
B3 中心粒子径が20~70μmの凝集窒化ホウ素を50~150質量部を含み、
B3成分/B2成分=2~20となる割合で配合されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物の製造方法は、
A 40℃における動粘度が50~10,000mm2/sである非硬化性のシリコーンオイルを100質量部に、
B 熱伝導性粒子を、A成分100質量部に対して、105~500質量部とし、前記熱伝導性粒子は、
B1 中心粒子径が0.1~1μmの不定形アルミナであり、一部または全部がRaSi(OR’)4-a(但し、Rは炭素数8~12の非置換または置換のアルキル基、R’は炭素数1~4のアルキル基、aは0もしくは1)で示されるアルコキシシラン化合物又はその部分加水分解物で表面処理されているもの50~300質量部と、
B2 中心粒子径が0.1~10μmの板状窒化ホウ素を5~50質量部と、
B3 中心粒子径が20~70μmの凝集窒化ホウ素を50~150質量部を含み、
B3成分/B2成分=2~20となる割合で混合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、特定粒子径の不定形アルミナと板状窒化ホウ素と凝集窒化ホウ素を組み合わせて配合することにより、高熱伝導率でありながら比較的低比重であり、作業性及び塗布性に優れた粘度を有する熱伝導性シリコーングリース組成物が提供できる。また、本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物は非硬化性であり、保存中も使用後も性状の変化は見られず、保存安定性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1A-Bは本発明の一実施例における試料の熱伝導率の測定方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物は、非硬化性の熱伝導性シリコーングリース組成物である。したがって、硬化触媒及び硬化剤は必要としないが、場合によっては加えてもよい。マトリックス樹脂として非硬化性のシリコーンオイルを使用する。このシリコーンオイルと、熱伝導性粒子を基本成分とし、配合割合は下記のとおりであり、A成分とB成分及び必要によりその他の成分を混合してグリースとする。
A 40℃における動粘度が50~10,000mm2/sである非硬化性のシリコーンオイルを100質量部と、
B 熱伝導性粒子を、A成分100質量部に対して、105~500質量部を含む。
【0011】
A成分は40℃における動粘度が50~9,000mm2/sが好ましく、より好ましくは50~8,000mm2/sであり、さらに好ましくは50~7,000mm2/sである。
B成分は、A成分100質量部に対して110~500質量部が好ましく、より好ましくは120~500質量部である。
【0012】
前記熱伝導性粒子は、
B1 中心粒子径が0.1~1μmの不定形アルミナであり、一部または全部がRaSi(OR’)4-a(但し、Rは炭素数8~12の非置換または置換のアルキル基、R’は炭素数1~4のアルキル基、aは0もしくは1)で示されるアルコキシシラン化合物又はその部分加水分解物で表面処理されているもの50~300質量部と、
B2 中心粒子径が0.1~10μmの板状窒化ホウ素を5~50質量部と、
B3 中心粒子径が20~70μmの凝集窒化ホウ素を50~150質量部を含み、
B3成分/B2成分=2~20となる割合で配合されている。
前記において「一部」とは50質量%以上をいう。
【0013】
B1成分はA成分100質量部に対して60~300質量部が好ましく、より好ましくは70~280質量部である。
B2成分はA成分100質量部に対して7~45質量部が好ましく、より好ましくは10~40質量部である。
B3成分はA成分100質量部に対して55~150質量部が好ましく、より好ましくは60~150質量部である。
B3成分/B2成分の配合比は2.5~20が好ましく、より好ましくは3~20である。これにより、大粒子の間に小粒子が存在し、最密充填に近い状態で充填し、熱伝導性を高くできる。
【0014】
前記熱伝導性シリコーングリース組成物は、さらにC成分として、RaSi(OR’)4-a(但し、Rは炭素数8~12の非置換または置換のアルキル基、R’は炭素数1~4のアルキル基、aは0もしくは1)で示されるアルコキシシラン化合物を0.1~2質量部含むことが好ましい。これにより、組成物の粘度を下げることができる。
【0015】
前記熱伝導性シリコーングリース組成物の熱伝導率は、2.0W/m・K以上8.0W/m・K以下であるのが好ましく、より好ましくは2.5~8.0W/m・Kであり、さらに好ましくは3.0~8.0W/m・Kである。このような熱伝導性グリースはTIM(Thermal Interface Material)として好適である。
【0016】
前記熱伝導性シリコーングリース組成物の比重は、1.0以上2.0以下であるのが好ましい。より好ましい比重は1.0~1.9であり、さらに好ましくは1.0~1.8である。これにより低比重のシリコーングリースとなり、電子部品全体の軽量化ができる。
【0017】
前記熱伝導性シリコーングリース組成物は、B型粘度計で回転速度5rpm、T-Eスピンドルを用いて測定した23℃における絶対粘度が1,000~10,000Pasであるのが好ましく、より好ましくは1,000~8,000Pasであり、さらに好ましくは1,000~7,000Pasである。これにより作業性に優れ、発熱部と放熱部の間への注入性又は塗布性も良好な熱伝導性シリコーングリース組成物となる。また、前記熱伝導性シリコーングリース組成物は非硬化性であり、保存中も使用後も性状の変化は見られず、保存安定性が良い。
【0018】
本発明において、A成分にB1成分、B2成分及びB3成分を前記の割合で配合するのは、大粒子の間に小粒子が存在し、最密充填に近い状態で充填し、熱伝導性を高くするためである。粒子径の測定はレーザー回折光散乱法により、体積基準による累積粒度分布のD50(メジアン径)を測定する。この測定器としては、例えば堀場製作所社製のレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-950S2がある。
【0019】
前記B1成分の中心粒径0.1~1μmの不定形アルミナは、一部または全部がRaSi(OR’)4-a(但し、Rは炭素数8~12の非置換または置換のアルキル基、R’は炭素数1~4のアルキル基、aは0もしくは1)で示されるアルコキシシラン化合物又はその部分加水分解物で表面処理されている。例えば、オクチルトリメトキシシラン,オクチルトリエトキシシラン,デシルトリメトキシシラン,デシルトリエトキシシラン,ドデシルトリメトキシシラン,ドデシルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン化合物がある。とくにRが炭素数8~12のアルキル基は、炭素数が好ましい範囲であり、かつ液状で撥水性もあり、シリコーンオイルとの親和性も高い。前記シラン化合物は、一種又は二種以上混合して使用することができる。表面処理剤として、アルコキシシランと片末端シラノールシロキサンを併用してもよい。ここでいう表面処理とは共有結合のほか吸着なども含む。
前記B1成分の中心粒径0.1~1μmの不定形アルミナは、そのままではシリコーンオイルと混合しにくいが、予めアルコキシシラン化合物と前処理により表面処理しておくと、シリコーンオイルと混合しやすくなり、均一組成物を得やすい。中心粒径0.1~1μmの不定形アルミナ100質量部に対し、アルコキシシラン化合物は0.01~10質量部添加するのが好ましい。ここでいう前処理とは、シリコーンオイルと熱伝導性粒子の混合前に、予め熱伝導性粒子を表面処理剤で表面処理しておくことをいう。
前記B1成分以外の熱伝導性粒子は、前処理してもよいが、前処理しなくても混合性は低下しないことから、前処理しなくてもよい。
【0020】
本発明のグリースには、必要に応じて前記以外の成分を配合することができる。例えばベンガラ、酸化チタン、酸化セリウムなどの耐熱向上剤、難燃剤、難燃助剤などを添加してもよい。着色、調色の目的で有機或いは無機粒子顔料を添加しても良い。フィラー表面処理などの目的で添加する材料として、アルコキシ基含有シリコーンを添加しても良い。
【0021】
本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物は、ディスペンサー、ビン、缶、チューブなどに充填して商品とすることができる。
【0022】
本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物の製造方法は、
A 40℃における動粘度が50~10,000mm2/sである非硬化性のシリコーンオイルを100質量部に、
B 熱伝導性粒子を、A成分100質量部に対して、105~500質量部とし、前記熱伝導性粒子は、
B1 中心粒子径が0.1~1μmの不定形アルミナであり、一部または全部がRaSi(OR’)4-a(但し、Rは炭素数8~12の非置換または置換のアルキル基、R’は炭素数1~4のアルキル基、aは0もしくは1)で示されるアルコキシシラン化合物又はその部分加水分解物で表面処理されているもの50~300質量部と、
B2 中心粒子径が0.1~10μmの板状窒化ホウ素を5~50質量部と、
B3 中心粒子径が20~70μmの凝集窒化ホウ素を50~150質量部を含み、
B3成分/B2成分=2~20となる割合で混合する。
混合は、一例として前記原料成分をプラネタリーミキサーに入れ、混合する。プラネタリーミキサーでは均一に分散できない高粘度の場合は、さらに2本ロールで混練りをするのが好ましい。前記プラネタリーミキサーは、二つのブレードが自転しながら公転するプラネタリー運動を行うミキサーのことである。
【実施例】
【0023】
以下実施例を用いて説明する。本発明は実施例に限定されるものではない。各種パラメーターについては下記の方法で測定した。
<熱伝導率>
熱伝導性グリースの熱伝導率は、ホットディスク(ISO/CD 22007-2準拠)により測定した。この熱伝導率測定装置1は
図1Aに示すように、ポリイミドフィルム製センサ2を2個の試料3a,3bで挟み、センサ2に定電力をかけ、一定発熱させてセンサ2の温度上昇値から熱特性を解析する。センサ2は先端4が直径7mmであり、
図1Bに示すように、電極の2重スパイラル構造となっており、下部に印加電流用電極5と抵抗値用電極(温度測定用電極)6が配置されている。熱伝導率は以下の式(数1)で算出する。
【0024】
【数1】
<グリースの絶対粘度>
グリースの絶対粘度はB型粘度計(ブルックフィールド社製HBDV2T)で測定した。スピンドルはT-Eスピンドルを使用し、回転速度5rpm、23℃における絶対粘度を測定した。
【0025】
(実施例1~2、比較例1~2)
1.原料成分
(1)A成分:シリコーンオイル
40℃における動粘度が110mm2/sの非硬化性のシリコーンオイル(ジメチルポリシロキサン)を表1に示す割合で使用した。
(2)B成分:熱伝導性粒子
・中心粒径0.3μm(D50=0.3μm)の不定形アルミナ:オクチルトリメトキシシラン前処理品(アルミナ100gに対してオクチルトリメトキシシラン2.4gを吸着させたもの)
・中心粒径1μm(D50=1μm)の板状窒化ホウ素
・中心粒径5μm(D50=5μm)の板状窒化ホウ素
・中心粒径60μm(D50=60μm)の球状凝集窒化ホウ素
・中心粒径2.3μm(D50=2.3μm)の不定形アルミナ:デシルトリメトキシシラン前処理品(アルミナ100gに対してデシルトリメトキシシラン1.1gを吸着させたもの)
・中心粒径20μm(D50=20μm)の球状アルミナ
配合量は表1に示す。
(3)C成分:アルコキシシラン化合物
デシルトリメトキシシランを表1に示す配合量を添加した。
2.混合方法
上記シリコーンオイルに熱伝導性粒子をプラネタリーミキサーに入れ、23℃で10分間混合し、熱伝導性シリコーングリース組成物とした。
以上のようにして得たグリースを評価した。条件と結果を次の表1にまとめて示す。
【0026】
【0027】
以上の結果から、実施例1~2は高熱伝導率でありながら比較的低比重であり、作業性に優れた粘度を有する熱伝導性シリコーングリース組成物であることが確認できた。これに対し、比較例1は熱伝導性粒子が全部アルミナであったため、比重が高い問題があり、比較例2はB2/B3の配合比が2~20を外れていたため、粘度が高い問題があった。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物は、電気・電子部品等の発熱部と放熱体の間に介在させるのに好適である。
【符号の説明】
【0029】
1 熱伝導率測定装置
2 センサ
3a,3b 試料
4 センサの先端
5 印加電流用電極
6 抵抗値用電極(温度測定用電極)
【要約】
非硬化性の熱伝導性シリコーングリース組成物であって、A:40℃における動粘度が50~10,000mm2/sである非硬化性のシリコーンオイルを100質量部と、B:熱伝導性粒子を、A成分100質量部に対して、105~500質量部を含み、前記熱伝導性粒子は、B1:中心粒子径が0.1~1μmの不定形アルミナであり、一部または全部が表面処理されているもの50~300質量部と、B2:中心粒子径が0.1~10μmの板状窒化ホウ素を5~50質量部と、B3:中心粒子径が20~70μmの凝集窒化ホウ素を50~150質量部を含み、B3/B2=2~20となる割合で配合されている。これにより、作業性及び塗布性が良好な粘度であり、高熱伝導率でありながら比較的低比重である熱伝導性シリコーングリース組成物を提供する。