(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】美粧用切断具
(51)【国際特許分類】
A45D 29/02 20060101AFI20220127BHJP
【FI】
A45D29/02 Z
A45D29/02 L
(21)【出願番号】P 2020145060
(22)【出願日】2020-08-12
【審査請求日】2020-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】599114106
【氏名又は名称】株式会社諏訪田製作所
(72)【発明者】
【氏名】袖山 義一
(72)【発明者】
【氏名】小関 隆一
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-253874(JP,A)
【文献】特開2007-323188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 29/02-29/17
B26B 13/00-13/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッパー式の美粧用切断具であって、
第一アームと第二アームとを連結軸で相対揺動可能に連結して構成され、
前記第一アーム及び前記第二アームは、それぞれ、前端部に刃部を有し、後端部には握り柄を有し、
前記第一アームは、前記第二アームに対向する第一アーム連結面を、前記第二アームは、前記第一アームに対向する第二アーム連結面を、それぞれ有し、
前記第一アーム連結面には、前記連結軸の周囲を囲む状態で第一溝が、前記第二アーム連結面には、前記連結軸の周囲を囲む状態で第二溝が、それぞれ形成され、
前記第一溝と前記第二溝とは、前記第一アームと前記第二アームとの連結状態で互いに連通して板バネを収容する板バネ収容空部を画成し、
前記板バネは、両端部分が互いに外側を向くようにΩ型状に形成され、
前記第一溝には、前記板バネの一端に係止可能な第一突起部が、前記第二溝には、前記板バネの他端に係止可能な第二突起部が、それぞれ形成され、
前記連結軸を中心としてΩ型状板バネは嵌入されており、
前記刃部が互いに近づく側に前記第一アーム及び前記第二アームを相対的に揺動させると、前記第一突起部と前記第二突起部とが互いに近づき前記第一突起部が前記板バネの一端に、前記第二突起部が前記板バネの他端に、それぞれ当接して前記板バネの弾性力が前記第一アーム及び前記第二アームに作用する作用状態となる一方、前記連結軸を中心として前記刃部が互いに遠ざかる側に前記第一アーム及び前記第二アームを相対的に揺動させると、前記第一突起部と前記第二突起部とが互いに遠ざかり前記作用状態が解除されることを特徴とする美粧用切断具。
【請求項2】
前記板バネの全長Xは、12mm以上40mm以下であり、
前記板バネの厚さYは、0.32X≦Y≦0.64Xの範囲内であり、
前記板バネの幅は連結軸の長さに対して20%以上50%以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の美粧用切断具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に爪切りや甘皮切り等に用いる美粧用切断具(特に以下の説明で「ニッパー式の鋏」と呼称するもの)に関する。
【背景技術】
【0002】
爪切り等の美粧用道具には、一対のレバーが枢支部を介して互いに交差連結されて、開閉自在に保持されているニッパー式の鋏がある。これには一対の刃部を開く方向に付勢させるために、板状バネやコイルバネなどを一対の柄部の間に介在させており、本体外部にバネが露出している「外部露出型バネ」タイプのものと、バネ機構がニッパー式の鋏の本体に内蔵されて外部から一切露出していない「内蔵型バネ」の2種類が存在している。前記の構造によって対象物を切る際の繰り返しのレバー開閉操作が容易に行えて、操作者の負担が軽減されるようになっている。
【0003】
また、前記「内蔵型バネ」を有しているニッパー式の鋏は内部にコイルバネを使用しており、非使用時には必要以上に大きく開いているか、若しくはバネの反発力による開きすぎを防止するためのストッパー機構を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これは次のような欠点があった。「外部露出型バネ」のニッパー式の鋏は板状バネやコイルバネがむき出しの状態であったため、衝撃やサビといった、外的要因による故障の危険に晒されていた。また、美粧用具においては体裁が悪くなるという欠点があった。
【0006】
一方「内蔵型バネ」を有しているニッパー式の鋏は内部にコイルバネを使用しており、その構造上、非使用時には必要以上に大きく開いているか、または大きく開きたい場合(厚い爪を切るときやメンテナンス修理時等)は逆に閉じる方向に弾性力が付勢してしまい非常に扱い難いという欠点があった(特許文献1参照)。
【0007】
前記構成で、コイルバネはその小ささから、大きな可動域で弾性力を作用させる必要があり、そのため、疲労が大きくバネの寿命が短くなってしまう欠点もあった。
【0008】
更には、前述「内蔵型バネ」を有しているニッパー式の鋏の中には、バネの反発力による開きすぎを防止するためのストッパー機構を有しており、刃の離隔距離が制限されるとともに、構造の複雑化や部品点数の増加を招き、コスト高の要因となっていた。
本発明は、以上のような欠点をなくすためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の構成は、
爪切りや甘皮切り等のニッパー式の美粧用切断具であって、
本体を形成している第一アームと第二アームとを連結軸で相対揺動可能に連結して構成され、
前記第一アーム及び前記第二アームは、それぞれ、前端部に刃部を有し、後端部には握り柄を有し、
前記第一アームは、前記第二アームに対向する第一アーム連結面を、前記第二アームは、前記第一アームに対向する第二アーム連結面を、それぞれ有し、
前記第一アーム連結面には、前記連結軸の周囲を囲む状態で第一溝が、前記第二アーム連結面には、前記連結軸の周囲を囲む状態で第二溝が、それぞれ形成され、
前記第一溝と前記第二溝とは、前記第一アームと前記第二アームとの連結状態で互いに連通して板バネを収容する板バネ収容空部を画成し、
前記板バネは、両端部分が互いに外側を向くようにΩ型状に形成され、
前記第一溝には、前記板バネの一端に係止可能な第一突起部が、前記第二溝には、前記板バネの他端に係止可能な第二突起部が、それぞれ形成され、
前記連結軸を中心としてΩ型状板バネは嵌入されており、前記刃部が互いに近づく側に前記第一アーム及び前記第二アームを相対的に揺動させると、前記第一突起部と前記第二突起部とが互いに近づき前記第一突起部が前記板バネの一端に、前記第二突起部が前記板バネの他端に、それぞれ当接して前記板バネの弾性力が前記第一アーム及び前記第二アームに作用する作用状態となる一方、前記連結軸を中心として前記刃部が互いに遠ざかる側に前記第一アーム及び前記第二アームを相対的に揺動させると、前記第一突起部と前記第二突起部とが互いに遠ざかり前記作用状態が解除されることを特徴とする美粧用切断具。
また、請求項2に記載の構成は、前記板バネの全長Xは、12mm以上40mm以下であり、
前記板バネの厚さYは、0.32X≦Y≦0.64Xの範囲内であり、
前記板ばねの幅は、連結軸8の長さに対して20%以上50%以下の幅であることを特徴とするものである。
本発明は以上の構成よりなる美粧用切断具である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、前述の内蔵型板バネ機構を採用することで、バネの露出がないため、衝撃やサビといった、外的要因による故障の危険がなく、バネが剥き出しにならないので外観を美しくするデザインを持たせることができる。
【0011】
更には、板バネの弾性力の作用した状態は、両握り柄を挟持したときのみ得られ、非使用時には良好な刃の離間距離以上のバネの弾性力が作用しないため、開きすぎを防止するためのストッパー機構を取り付ける必要がなく、無用な高コスト化を抑制できる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、上記のように寸法を規定した板バネを採用することによって、コイルバネと比較してより小さい可動域でより大きな弾性力をもたせることができ、かつコイルバネよりも可動域が小さくなることによりバネの寿命を長くすることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】 本発明のニッパー式の鋏の要部の分解図である。
【
図2】 本発明のニッパー式の要部の分解斜視図である。
【
図3】 本発明のニッパー式の鋏に使用される板バネの斜視図である。
【
図4】 本発明のニッパー式の鋏の初期状態の正面図である。
【
図5】 本発明のニッパー式の鋏の挟持状態の正面図である。
【
図6】 本発明のニッパー式の鋏の大きく開いた状態の正面図である。
【
図7】 本発明のニッパー式の鋏についての側面図である。
【
図8】
図7の連結軸付近のA-A線一部断面図である。
【
図10】
図8の大きく開いた状態についての一部断面斜図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の美粧用切断具(ニッパー式の鋏)の一実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1~
図3を参照すれば分かるように、本実施形態におけるニッパー式の鋏は、第一アーム1と第二アーム2とを備え、その内部にΩ状型に形成された板バネ9を有し、第一アーム1と第二アーム2とを連結軸8で相対揺動可能に連結して構成されている。
【0016】
前記第一アーム1、第二アーム2にはそれぞれ先端に刃部3を形成し、後端に握り柄4を形成している。これらの第一アーム1及び第二アーム2は、互いに連結される連結部に連結面(第一アーム連結面5-1、第二アーム連結面5-2)を有している。これらの連結面5-1,5-2は、第一アーム1及び第二アーム2を連結した際に互いに対向する面である。支軸となる連結軸8の周囲に板バネを内蔵するために第一アーム連結面5-1には第一溝6-1、第二アーム連結面5-2には第二溝6-2が、それぞれ連結軸8の周囲を囲む状態で形成されており、これらの溝6-1,6-2の組み合わせにより板バネ9が収容される収容部(板バネ収容空部)が形成されている。つまり、第一アーム1と第二アーム2とを、互いの連結面5-1,5-2を対向させた状態で組み合わせ、連結軸8で揺動可能に連結させた状態では、第一溝6-1と第二溝6-2とが互いに連通することで板バネ収容空部が画成される。
【0017】
また、上記第一溝6-1、第二溝6-2には、それぞれ、板バネ9の端部9-1、9-2に係止可能な突起部7-1,7-2が形成されている。より具体的には、第一溝6-1の外周側の内面には、第一突起部7-1が、内周側に向けて突設されている。同様に、第二溝6-2の外周側の内面には、第二突起部7-2が、内周側に向けて突設されている。
【0018】
図4~
図5は使用していない(握り柄4に外力が作用していない)初期状態の図(
図4)と使用者が握り柄4を握り挟持状態にある図(
図5)、さらに
図4の初期状態よりも大きく開いた状態の図(
図5)である。なお、第一溝6-1、第二溝6-2の内周は、連結軸8が挿通する軸穴が貫通して形成された円筒状部分の外周でもある。また、6-1,6-2の溝幅は、板バネ9の厚さよりも十分広く設定されている。これにより、後述するように、第一突起部7-1及び第一突起部7-1により両側から押圧された際の板バネ9の変形が許容される。すなわち、板バネ9の可動域が確保されている。
【0019】
通常本発明のニッパー式の鋏を使用する場合は
図4~
図5の範囲内で使用し、厚い爪や、メンテナンス時等は
図6のように大きく開く必要があるのだが、本発明の特徴は
図4~5の可動範囲では板バネ9の弾性力が各アーム1,2に作用することによって爪を切る際の繰り返しのレバー操作が行い易くなっており、
図6のように大きく開く状態においてはバネの弾性は非作用状態(作用状態から解除された状態)となり、自由可動となっているために容易に開くことが可能である。また、大きく開いた状態を維持することができる。
【0020】
上記の仕組みを説明すると、
図8及び
図9を参照すれば分かるように、使用者が第一アーム及び第二アーム2のそれぞれの握り柄4を把持した状態で握り、連結軸を中心として前記刃部3が互いに近づく側に前記第一アーム1及び前記第二アーム2を相対的に揺動させると、連結軸8の軸方向で見た状態で、第一突起部7-1と第二突起部7-2とが連結軸8を中心に回動して互いに近づき、第一突起部7-1が板バネ9の一端9-1に、第二突起部7-2が板バネ9の他端9-2に、それぞれ当接する(
図8の初期状態)。この初期状態からさらに刃部3が互いに近づく側に第一アーム1及び第二アーム2を相対的に揺動させると、第一突起部7-1と第二突起部7-2とで板バネ9の両端9-1,9-2の間隔を狭めるように板バネ9を押圧して変形させ、これにより、板バネ9の弾性力が第一アーム1及び第二アーム2にそれぞれ作用する作用状態となる。この作用状態では、板バネ9は、握り柄4と刃部3をそれぞれ開く方向に付勢する。
【0021】
一方で初期状態から大きく開く場合は(
図10)、板バネの一端9-1と他端9-2は第一アーム1の第一突起部7-1と第二アーム2の第二突起部7-2から離間して、板バネ9の弾性力が第一アーム1及び第二アーム2に作用しない非作用状態となるため、無駄に開いたり閉じたりという付勢力を生まないために、任意で容易に開くことができ、保管時には良好な刃の離隔距離を保持できるとともに、爪の厚み等に合わせて刃を離隔させることも可能となる。
【0022】
また、本発明においては、以下に説明するように、全長(Ω型に形成される前のまっすぐな状態での一端から他端までの長さ)に対して厚み及び幅を規定した板バネ9を採用することによって、従来のコイルバネと比較してより小さい可動域でより大きな弾性力をもたせることができ、かつコイルバネよりもバネの寿命を長くすることが可能となった。
【0023】
上記のバネにおいて、バネの全長は12mm以上40mm以下であり、厚みにおいては、全長をXとして厚さをYとした場合、0.32X≦Y≦0.64Xの範囲内であり、バネの幅においては連結軸8の長さに対して20%以上50%以下の範囲内である。板バネ9の全長を上記の範囲とした理由として、全長が12mm未満であると板バネ9が小さくなり過ぎてしまい、また、全長が40mmを超えると板バネ9全体が大きくなり過ぎてしまい、ニッパー式の鋏に採用するには現実的では無いためである。
【0024】
また、板バネ9の厚さYを上記の範囲とした理由は、全長が上記の範囲であることを前提として、厚さYが0.32X未満であると、付勢力(弾性力)が弱くなり過ぎるため、刃部を一旦閉じた後に初期位置に戻りにくく(開きにくく)なる一方、厚さYが0.64Xを超えると付勢力が強くなり過ぎて操作がし難くなるためである。板バネ9の弾性力は、材質によって変化するが、例えばステンレス鋼等のように板バネ9の材質として通常選択される金属を採用する場合、厚さYを上記範囲内とすることで、ニッパー式の鋏の良好な操作が可能となる。
【0025】
また、板バネ9の幅を上記の範囲とした理由は、全長が上記の範囲であって、且つ、厚みが上記の範囲であることを前提として、連結軸8の長さの20%以下の幅では付勢力(弾性力)が弱くなり過ぎるため、刃部を一旦閉じた後に初期位置に戻りにくく(開きにくく)なり、連結軸8の長さの50%以上の幅では鋏本体への干渉が大きくなりすぎてしまい現実的では無いためである。
【符号の説明】
【0026】
1 第一アーム
2 第二アーム
3 刃部
4 握り柄
5-1 第一アーム連結面
5-2 第二アーム連結面
6-1 第一溝
6-2 第二溝
7-1 第一突起部
7-2 第二突起部
8 連結軸
9 板バネ
9-1 板バネの一端
9-2 板バネの他端
【要約】
【課題】 本発明は爪切りや甘皮切りのような美粧用具などのニッパー式の鋏に於いて内蔵型板バネ機構を有し、外的要因によるバネの故障の危険を回避するとともに、大きく開く必要があるときは自由に開くことのできるニッパー式の鋏で、かつ開きすぎを防止するためのストッパー機構をなくし、無用な高コスト化をも制御できることを目的とする。
【解決手段】 本発明の構成は、刃部を有する一対の本体が支軸を中心に相対的に回動可能となるように結合され、板バネによって一対の刃部は開く方向に付勢されている爪切りにおいて、前記板バネは両本体内面の連結軸の周囲に設けた溝部内に装着され、刃部を開かせる弾性力を作用させるために、板バネは両端部分に係止部を有し、該2つの作用部は別々の本体内面の溝に設けられた突起部に作用して刃部を開かせる弾性力を作用させることを特徴とするものである。
【選択図】
図1