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特許7015441ペイロードを目標地点に輸送するための方法、および関連するハイブリッド飛行船
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】ペイロードを目標地点に輸送するための方法、および関連するハイブリッド飛行船
(51)【国際特許分類】
   B64B 1/32 20060101AFI20220127BHJP
   B64D 1/12 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
B64B1/32
B64D1/12
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020544182
(86)(22)【出願日】2017-11-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-28
(86)【国際出願番号】 IB2017001544
(87)【国際公開番号】W WO2019092471
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】508013548
【氏名又は名称】トタルエナジーズ エス ウ
(73)【特許権者】
【識別番号】520164518
【氏名又は名称】フライング・ホエールズ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エルヴェ・フランソワ・キュルマン
【審査官】川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0076279(US,A1)
【文献】特表2010-501401(JP,A)
【文献】特表平11-513635(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0248241(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64B 1/00 - 1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペイロード(30)を目標地点(11)に輸送するための方法であって、
- 空気より軽いガスを収容する浮力筐体(32)を備えるハイブリッド飛行船(10)を提供するステップであって、前記浮力筐体(32)は長手方向軸(A-A’)を有し、前記ハイブリッド飛行船(10)は、前記浮力筐体(32)によって運搬されるゴンドラ(34)と、前記浮力筐体(32)に接続されたペイロード運搬器具(41)と、少なくともプロペラ軸(B-B’)の周りで回転したときに力を生じることができるブレード(50)を備える少なくとも1つのプロペラ(36)と、少なくとも1つの前記プロペラ(36)によって生じる力の向きを変更するために、少なくとも1つの軸(60;62)の周りで前記浮力筐体(32)に対する少なくとも1つの前記プロペラ(36)の向きを制御するための機構(39)と、を備えるステップと、
- 前記ペイロード(30)を運搬する前記ハイブリッド飛行船(10)を前記目標地点(11)に飛行させるステップであって、前記ペイロード(30)を運搬する前記ハイブリッド飛行船(10)を飛行させるステップは、少なくとも1つの前記プロペラ(36)によって揚力を生じるステップを含む、ステップと、
を含み、前記ペイロード(30)を運搬する前記ハイブリッド飛行船(10)を飛行させるステップが、前記ペイロード(30)を運搬する前記ハイブリッド飛行船(10)が長手方向に移動するとき、空気力学的揚力を生じるために、前記浮力筐体(32)の前記長手方向軸(A-A’)を正のピッチに傾けるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記正のピッチは、0.5°より大きことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ペイロード(30)を運搬する前記ハイブリッド飛行船(10)を前記目標地点(11)に飛行させる前には、
- 前記ペイロード(30)まで前記ハイブリッド飛行船(10)を飛行させ、前記ペイロード運搬器具(41)を前記ペイロード(30)に接続するステップと、
- 前記ペイロード(30)を上昇させるステップと、
を含み、前記ペイロード(30)を運搬する前記ハイブリッド飛行船(10)を前記目標地点(11)に飛行させた後には、
- 前記ハイブリッド飛行船(10)および前記ペイロード(30)を、前記ペイロード(30)を前記目標地点(11)に落とすために降下させるステップを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ペイロード(30)を前記目標地点(11)に落とした後には、ペイロード(30)なしで、または前記ハイブリッド飛行船(10)とペイロード(30)との組み合わせが空気よりも軽い浮力を有するようなペイロード(30)とともに、前記ハイブリッド飛行船(10)を飛行させ帰すステップを含み、前記ハイブリッド飛行船(10)を飛行させ帰すステップは、前記ハイブリッド飛行船(10)が長手方向に移動するとき、空気力学的降下力を生じるために、前記浮力筐体(32)の前記長手方向軸(A-A’)を負のピッチに傾けるステップを含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ハイブリッド飛行船(10)を飛行させ帰すステップは、少なくとも1つの前記プロペラ(36)によって降下力を生じるステップを含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ペイロード(30)まで前記ハイブリッド飛行船(10)を飛行させるステップは、目標高度まで前記ハイブリッド飛行船を上昇させるために、少なくとも1つの前記プロペラ(36)によって揚力を生じるステップを含むことを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ペイロード(30)まで前記ハイブリッド飛行船(10)を飛行させるステップは、前記目標高度に到達した後には、前記ハイブリッド飛行船(10)が長手方向に移動するとき、空気力学的降下力を生じるために、前記浮力筐体(32)の前記長手方向軸(A-A’)を負のピッチに傾けるステップを含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ペイロード(30)を運搬する前記ハイブリッド飛行船(10)を前記目標地点(11)に飛行させるステップは、前記目標地点(11)に対する前記浮力筐体(32)の前記長手方向軸(A-A’)の位置を横方向に調整するための前記長手方向軸(A-A’)を横切る成分を有する力を生じるために、少なくとも1つの前記プロペラ(36)の向きを制御するための前記機構(39)を作動させるステップを含むことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの前記プロペラ(36)の向きを制御するための前記機構(39)は、前記プロペラ軸(B-B’)が水平であるときに少なくとも実質的に鉛直である、前記浮力筐体(32)に対する少なくとも1つの前記プロペラ(36)の第1のピボット軸(60)を備え、少なくとも1つの前記プロペラ(36)の向きを制御するための前記機構(39)は、前記長手方向軸(A-A’)を横切る成分を有する力を生じるため、少なくとも1つの前記プロペラ(36)を前記第1のピボット軸(60)の周りで回転させることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの前記プロペラ(36)を回転させるための前記機構(39)は、前記長手方向軸(A-A’)が水平であるときに少なくとも実質的に水平である、前記浮力筐体(32)に対する少なくとも1つの前記プロペラ(36)の第2のピボット軸(62)を備え、少なくとも1つの前記プロペラ(36)の向きを制御するための前記機構(39)は、揚力を生じるため、少なくとも1つの前記プロペラ(36)を前記第2のピボット軸(62)の周りで回転させることを特徴とする請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のピボット軸(60)は前記第2のピボット軸(62)の周りで回転可能であり、少なくとも1つの前記プロペラ(36)を前記第2のピボット軸(62)の周りで回転させることは、前記第1のピボット軸(60)の前記第2のピボット軸(62)の周りでの回転を生じることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記長手方向軸(A-A’)の位置の前記横方向調整は、前記ハイブリッド飛行船(10)を長手方向に移動させることなく実施されることを特徴とする請求項8から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ペイロード(30)を目標地点(11)に輸送するためのハイブリッド飛行船(10)であって、
- 空気より軽いガスを収容する浮力筐体(32)であって、長手方向軸(A-A’)を有する浮力筐体(32)と、
- 前記浮力筐体(32)によって運搬されるゴンドラ(34)と、
- 前記浮力筐体(32)に接続されたペイロード運搬器具(41)と、
- 少なくともプロペラ軸(B-B’)の周りで回転したときに力を生じることができるブレード(50)を備える少なくとも1つのプロペラ(36)と、
- 生じた力の向きを変更するために、少なくとも1つの軸(60,62)の周りで前記浮力筐体(32)に対する少なくとも1つの前記プロペラ(36)の向きを制御するための機構(39)であって、前記ペイロード(30)を運搬する前記ハイブリッド飛行船(10)を飛行させるとき、少なくとも1つの前記プロペラ(36)によって揚力を生じるために少なくとも1つの前記プロペラ(36)の向きを制御することができる少なくとも1つのプロペラの向きを制御するための機構(39)と、
を備え、前記ペイロード(30)を運搬する前記ハイブリッド飛行船(10)が長手方向に移動するとき、空気力学的揚力を生じるために、傾き制御装置(46)が前記浮力筐体(32)の長手方向軸(A-A’)を正のピッチに傾けることができることを特徴とするハイブリッド飛行船(10)。
【請求項14】
少なくとも1つの前記プロペラ(36)の向きを制御するための前記機構(39)は、前記目標地点(11)に対する前記浮力筐体の前記長手方向軸(A-A’)の位置を横方向に調整するための前記長手方向軸(A-A’)を横切る成分を有する力を生じるために、少なくとも1つの前記プロペラ(36)の向きを制御することができることを特徴とする請求項13に記載のハイブリッド飛行船(10)。
【請求項15】
少なくとも1つの前記プロペラ(36)の向きを制御するための前記機構(39)は、前記プロペラ軸(B-B’)が水平であるときに少なくとも実質的に鉛直である、前記浮力筐体(32)に対する少なくとも1つの前記プロペラ(36)の第1のピボット軸(60)を備え、少なくとも1つの前記プロペラ(36)の向きを制御するための前記機構(39)は、前記長手方向軸(A-A’)を横切る成分を有する力を生じるため、少なくとも1つの前記プロペラ(36)を前記第1のピボット軸(60)の周りで回転させることができることを特徴とする請求項14に記載のハイブリッド飛行船(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペイロードを目標地点に輸送するための方法であって、
- 空気より軽いガスを収容する浮力筐体を備えるハイブリッド飛行船を提供するステップであって、浮力筐体は長手方向軸を有し、ハイブリッド飛行船は、浮力筐体によって運搬されるゴンドラと、前記浮力筐体に接続されたペイロード運搬器具と、少なくともプロペラ軸の周りで回転したときに力を生じることができるブレードを備える少なくとも1つのプロペラと、少なくとも1つのプロペラによって生じる力の向きを変更するために、少なくとも1つの軸の周りで浮力筐体に対する少なくとも1つのプロペラの向きを制御するための機構と、を備えるステップと、
- ペイロードを運搬するハイブリッド飛行船を目標地点に飛行させるステップであって、ペイロードを運搬するハイブリッド飛行船を飛行させるステップは、少なくとも1つのプロペラによって揚力を生じるステップを含む、ステップと、
を含む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド飛行船は、特に、重いペイロードをアクセスが困難な遠隔の地点、特に、陸路によるアクセスが面倒または不可能である地方に運搬することを目的とする。
【0003】
例えば、ペイロードは、アクセスが困難な遠隔の地方での石油およびガス探査活動で使用される。この地方は、特に、森林、特に、熱帯林のような高密度の植生を含む。また、この地方は、丘陵(例えば山麓)、崖、および/または山のような起伏の多い地形を含むことがある。この地方は、時に、不発弾(UXO)のあるエリアのような、アクセスが危険なエリアを含むことがある。
【0004】
一般に、そのような地方にペイロードを運搬するためにはヘリコプターが使用される。しかしながら、ヘリコプターは運用に費用がかかり、大量の温室効果ガスを生じる。またヘリコプターは、運搬することができるペイロードの量も非常に制限されている。
【0005】
ハイブリッド飛行船は、重いペイロードを目標地点に輸送するための非常に効率的で環境にやさしい代替手段である。ハイブリッド飛行船は最小限の燃料消費でより重いペイロードを運搬することができる。ハイブリッド飛行船は静かであり、プロペラに電力を提供する汽力発電機で推進されることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2007/0102571号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1は、上記のタイプの飛行船を開示している。飛行船は、浮力筐体に対して垂直方向の向きが固定された複数のプロペラを備える。プロペラのブレードの傾きは調整可能である。飛行船が空気よりも軽いとき、例えば、飛行船がペイロードを運搬しないとき、または飛行船によって運搬されるペイロードが数トンよりも小さいとき、プロペラは飛行船の正の浮力を補償することができる降下力を生じる。逆に、飛行船が空気より重いとき、例えば、飛行船が数トンを超えるペイロードを運搬するとき、プロペラは浮力に加えて使用される揚力を生じる。
【0008】
このような飛行船は完全に満足のいくものではない。輸送するペイロードの重量が増大したとき、より大きな浮力を提供するために飛行船の大きさを増大させ、かつ/または推進揚力を高めるためにプロペラの大きさと出力とを向上させねばならない。
【0009】
大きさおよび/または推進力の増大は、飛行のためのベースキャンプに飛行船を運搬するのがより困難となるので、かつ/または輸送に時間がかかり追加の燃料を必要とするので、遠隔の環境には適応しない。
【0010】
本発明の1つの目的は、飛行船の大きさおよび/または燃料消費の、大幅な増大を必要としないハイブリッド飛行船によって、重いペイロードを遠隔の地点に輸送する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のために、本発明の主題は、上記のタイプの方法であって、ペイロードを運搬するハイブリッド飛行船を飛行させるステップが、ペイロードを運搬するハイブリッド飛行船が長手方向に移動するとき、浮力筐体の長手方向軸を正のピッチに傾けて空気力学的揚力を生じるステップを含むことを特徴とする方法である。
【0012】
本発明による方法は、単独でまたは任意の技術的に実現可能な組み合わせに従って得られる1つ以上の下記の特徴を備える。
- 正のピッチは、0.5°より大きく、有利には、0.5°と15°との間、特に、0.5°から5°までに含まれる。
- 方法は、ペイロードを運搬するハイブリッド飛行船を目標地点に飛行させる前には、
* ペイロードまでハイブリッド飛行船を飛行させ、ペイロード運搬器具をペイロードに接続するステップと、
* ペイロード(30)を上昇させるステップと、
を含み、
ペイロードを運搬するハイブリッド飛行船を目標地点に飛行させた後には、
* ハイブリッド飛行船およびペイロードを、ペイロードを目標地点に落とすために降下させるステップ、
を含む。
- 方法は、ペイロードを目標地点に落とした後には、ペイロードなしで、またはハイブリッド飛行船とペイロードとの組み合わせが空気よりも軽い浮力を有するようなペイロードとともに、ハイブリッド飛行船を飛行させ帰すステップを含み、ハイブリッド飛行船を飛行させ帰すステップは、ハイブリッド飛行船が長手方向に移動するとき、空気力学的降下力を生じるために、浮力筐体の長手方向軸を負のピッチに傾けるステップを含む。
- ハイブリッド飛行船を飛行させ帰すステップは、少なくとも1つのプロペラによって降下力を生じるステップを含む。
- ペイロードまでハイブリッド飛行船を飛行させるステップは、目標高度まで飛行船を上昇させるために、少なくとも1つのプロペラによって揚力を生じるステップを含む。
- ペイロードまでハイブリッド飛行船を飛行させるステップは、目標高度に到達した後には、ハイブリッド飛行船が長手方向に移動するとき、空気力学的降下力を生じるために、浮力筐体の長手方向軸を負のピッチに傾けるステップを含む。
- ペイロードを運搬するハイブリッド飛行船を目標地点に飛行させるステップは、目標地点に対する浮力筐体の長手方向軸の位置を横方向に調整するための長手方向軸を横切る成分を有する力を生じるために、少なくとも1つのプロペラの向きを制御するための機構を作動させるステップを含む。
- 少なくとも1つのプロペラの向きを制御するための機構は、プロペラ軸が水平であるときに少なくとも実質的に鉛直である、浮力筐体に対する少なくとも1つのプロペラの第1のピボット軸を備え、少なくとも1つのプロペラの向きを制御するための機構は、長手方向軸を横切る成分を有する力を生じるため、少なくとも1つのプロペラを第1のピボット軸の周りで回転させる。
- 少なくとも1つのプロペラを回転させるための機構は、長手方向軸が水平であるときに少なくとも実質的に水平である、浮力筐体に対する少なくとも1つのプロペラの第2のピボット軸を備え、少なくとも1つのプロペラの向きを制御するための機構は、揚力を生じるため、少なくとも1つのプロペラを第2のピボット軸の周りで回転させる。
- 第1のピボット軸は第2のピボット軸の周りで回転可能であり、少なくとも1つのプロペラを第2のピボット軸の周りで回転させることは、第1のピボット軸の第2のピボット軸の周りでの回転を生じる。
- 長手方向軸の位置の横方向調整は、ハイブリッド飛行船を長手方向に移動させることなく実施される。
【0013】
本発明はさらに、
- 空気より軽いガスを収容する浮力筐体であって、長手方向軸を有する浮力筐体と、
- 浮力筐体によって運搬されるゴンドラと、
- 前記浮力筐体に接続されたペイロード運搬器具と、
- 少なくともプロペラ軸の周りで回転したときに力を生じることができるブレードを備える少なくとも1つのプロペラと、
- 生じた力の向きを変更するために、少なくとも1つの軸の周りで浮力筐体に対する少なくとも1つのプロペラの向きを制御するための機構であって、ペイロードを運搬するハイブリッド飛行船を飛行させるとき、少なくとも1つのプロペラによって揚力を生じるために少なくとも1つのプロペラの向きを制御することができる、少なくとも1つのプロペラの向きを制御するための機構と、
を備え、ペイロードを運搬するハイブリッド飛行船が長手方向に移動するとき、空気力学的揚力を生じるために、傾き制御装置が浮力筐体の長手方向軸を正のピッチに傾けることができることを特徴とするハイブリッド飛行船に関する。
【0014】
本発明による飛行船は、単独でまたは任意の技術的に実現可能な組み合わせに従って得られる1つ以上の下記の特徴を備える。
- 少なくとも1つのプロペラの向きを制御するための機構は、目標地点に対する筐体の長手方向軸の位置を横方向に調整するための長手方向軸を横切る成分を有する力を生じるために、少なくとも1つのプロペラの向きを制御することができる。
- 少なくとも1つのプロペラの向きを制御するための機構は、プロペラ軸が水平であるときに少なくとも実質的に鉛直である、浮力筐体に対する少なくとも1つのプロペラの第1のピボット軸を備え、少なくとも1つのプロペラの向きを制御するための機構は、長手方向軸を横切る成分を有する力を生じるため、少なくとも1つのプロペラを第1のピボット軸の周りで回転させることができる。
【0015】
本発明はまた、ペイロードを目標地点に輸送するための方法に関し、方法は、
- 空気より軽いガスを収容する浮力筐体を備えるハイブリッド飛行船を提供するステップであって、浮力筐体は長手方向軸を有し、ハイブリッド飛行船は、浮力筐体によって運搬されるゴンドラと、ペイロード運搬器具と、少なくともプロペラ軸の周りで回転したときに力を生じることができるブレードを備える少なくとも1つのプロペラと、少なくとも1つのプロペラによって生じる力の向きを変更するために、少なくとも1つの軸の周りで浮力筐体に対する少なくとも1つのプロペラの向きを制御するための機構と、を備えるステップと、
- ペイロードを運搬するハイブリッド飛行船を目標地点に飛行させるステップであって、ペイロードを運搬するハイブリッド飛行船を飛行させるステップは、少なくとも1つのプロペラによって揚力を生じるステップを含む、ステップと、
を含み、ペイロードを運搬するハイブリッド飛行船を目標地点に飛行させるステップは、目標地点に対する浮力筐体の長手方向軸の位置を横方向に調整するための長手方向軸を横切る成分を有する力を生じるために、少なくとも1つのプロペラの向きを制御するための機構を作動させるステップを含むことを特徴とする。
【0016】
本発明による方法は、ペイロードを運搬するハイブリッド飛行船を飛行させるステップが、ペイロードを運搬するハイブリッド飛行船が長手方向に移動するとき、空気力学的揚力を生じるために、浮力筐体の長手方向軸を正のピッチに傾けるステップを含むことを必須としない。
【0017】
本発明による方法は、単独でまたは任意の技術的に実現可能な組み合わせに従って得られる1つ以上の上記の特徴を含むことがある。
【0018】
本発明はまた、ペイロードを目標地点に輸送するためのハイブリッド飛行船にも関し、ハイブリッド飛行船は、
- 空気より軽いガスを収容する浮力筐体であって、長手方向軸を有する浮力筐体と、
- 浮力筐体によって運搬されるゴンドラと、
- ペイロード運搬器具と、
- 少なくともプロペラ軸の周りで回転したときに力を生じることができるブレードを備える少なくとも1つのプロペラと、
- 生じた力の向きを変更するために、少なくとも1つの軸の周りで浮力筐体に対する少なくとも1つのプロペラの向きを制御するための機構であって、ペイロードを運搬するハイブリッド飛行船を飛行させるとき、少なくとも1つのプロペラによって揚力を生じるために少なくとも1つのプロペラの向きを制御することができる、少なくとも1つのプロペラの向きを制御するための機構と、
を備え、少なくとも1つのプロペラの向きを制御するための機構は、目標地点に対する筐体の長手方向軸の位置を横方向に調整するための長手方向軸を横切る成分を有する力を生じるために、少なくとも1つのプロペラの向きを制御することができることを特徴とする。
【0019】
本発明による飛行船は、ペイロードを運搬するハイブリッド飛行船が長手方向に移動するときに空気力学的揚力を生じるための、浮力筐体の長手方向軸を正のピッチに傾けることができる傾き制御装置を有することを必須としない。
【0020】
本発明による飛行船は、単独でまたは任意の技術的に実現可能な組み合わせに従って得られる1つ以上の上記の特徴を備えることがある。
【0021】
本発明は、単に例として与えられかつ添付の図面を参照してなされる下記の説明を読むと、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】対象の地方の概略図である。
図2】本発明による飛行船の側面図である。
図3図2の飛行船の上面図である。
図4図2の飛行船のプロペラと、プロペラの向きを制御するための機構と、の概略正面図である。
図5図2の飛行船のプロペラと、プロペラの向きを制御するための機構と、の概略上面図である。
図6】飛行船が飛行するときのプロペラの構成を示す。
図7】飛行船が飛行するときのプロペラの別の構成を示す。
図8】飛行船が飛行するときのプロペラの別の構成を示す。
図9】初期位置からペイロードが飛行船に接続されている位置までの飛行船の飛行を示す。
図10】ペイロードが飛行船に接続されている位置から、ペイロードが落とされる目標位置までの飛行船の飛行を示す。
図11】プロペラによって横方向の力が生じたときの、目標地点の付近の飛行船の上面図である。
図12】プロペラによって横方向の力が生じたときの、目標地点の付近の飛行船の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明による方法によってペイロード30を対象の地方12内の目標地点11に輸送するために使用される第1のハイブリッド飛行船10が、図1に示される。ハイブリッド飛行船10は、対象の地方12の上空を飛行する。
【0024】
対象の地方12は、例えば、平坦でない地形14を有する地方である。特に、平坦でない地形14は、丘陵、山、崖、またはあらゆるタイプの起伏の多い地形を含む。対象の地方12は、例えば、アクセスが困難な山麓に位置する。
【0025】
対象の地方12は、植生16をさらに含む。植生16は、例えば、森林、特に、熱帯林である。ここで、対象の地方12は、高密度の植生、例えば、対象の地方12の地面の大部分を覆う林冠20を形成する樹木18を含む。
【0026】
対象の地方12において、植生16は、複数の自然および/または人工の開けた土地22を画成する。
【0027】
開けた土地22は、2つの隣接する開けた土地22間の見通し線に沿って得られた距離が、一般に、100mと500mとの間に含まれ、優先的には、約300mであるように、離間して対象の地方12に広がっている。
【0028】
開けた土地22は、地表では、25mを超え、一般に、200mを超える表面積を有し、または林冠20の頂部では900mを超えさえする表面積を一般に有する。
【0029】
開けた土地22は、例えば、OGP標準の「OGP-陸地地震とヘリリグの運用のためのヘリコプターガイドライン-レポート420バージョン1.1、2013年6月」で定義されている。
【0030】
地面の下に位置する地下24は、地層の層と、潜在的な石油およびガスの貯留層と、を含む。
【0031】
石油およびガス貯留層の探査または採掘を実施するために、対象の地方12は、少なくともベースキャンプ26び二次キャンプ28を含む。ベースキャンプ26と二次キャンプ28とは、その距離が、一般に、5kmと20kmとの間に含まれ、優先的には約10km離れている。
【0032】
ベースキャンプ26は、有利には、道路27によってアクセス可能である。備品および必需品は、例えば、道路27を走行するトラックによってベースキャンプ26に提供される。
【0033】
二次キャンプ28は、ベースキャンプ26よりも開けた土地22から近く、どの道路からもアクセス可能でない。
【0034】
二次キャンプ28と開けた土地22とは、その距離が、一般に、200mと10kmとの間に含まれ、優先的には、約5km離れている。
【0035】
ハイブリッド飛行船10は、地面から離陸し、周囲の空を飛行し、地面に着陸するように構成されている。
【0036】
図2および図3に示されるように、ハイブリッド飛行船10は、長手方向軸A-A’に沿って延在する。
【0037】
ハイブリッド飛行船10は、実質的に鉛直方向に離陸および着陸し、飛行中は長手方向軸A-A’に実質的に沿って移動するように構成されている。
【0038】
ハイブリッド飛行船10は、ペイロード30をベースキャンプ26から二次キャンプ28に、またその逆に、二次キャンプ28からベースキャンプ26に運搬するように構成されている。
【0039】
ハイブリッド飛行船10はまた、ペイロード30を二次キャンプ28から他の開けた土地22に、またその逆に、開けた土地22から二次キャンプ28に運搬するために使用されてもよい。
【0040】
ベースキャンプ26から二次キャンプ28に輸送されるペイロード30は、例えば、テント、供給水、燃料または食料のような、キャンプ備品である。ペイロード30は、また、地震設備および/または掘削設備のような、石油およびガスの探査および/または採掘のための設備も含む。
【0041】
二次キャンプ28からベースキャンプ26に輸送されるペイロード30は、例えば、キャンプ廃棄物、または使用済み備品である。
【0042】
二次キャンプ28から開けた土地22に輸送されるペイロード30は、例えば、探査のための地震設備および/または掘削設備である。
【0043】
ペイロード30は、いくつかの例では、患者後送のため、負傷したまたは病気の労働者を含んでもよい。
【0044】
ハイブリッド飛行船10は、特に、0トンと2トンとの間の重量のペイロード30を運搬するように構成されている。
【0045】
空気よりも軽いガスで満たされると、ペイロードを運搬していないときのハイブリッド飛行船10の負の重量は、一般に、ペイロード30の最大重量の約50%であり、例えば、-1トンである。
【0046】
図2および図3に示されるように、ハイブリッド飛行船10は、浮力筐体32と、浮力筐体32の下に取り付けられたゴンドラ34と、力を生じるための少なくとも1つのプロペラ36と、1つ以上のプロペラ36に電力を提供する少なくとも1つの発電機38と、を備える。本発明によれば、ハイブリッド飛行船10は、それぞれのプロペラ36のために、プロペラ36の向きと、制御装置39によって生じさせられる力の向きと、を制御するための機構39と、をさらに備える(図4および図5を参照)。
【0047】
ハイブリッド飛行船10は、ペイロード運搬器具41をさらに備える。
【0048】
浮力筐体32は、空気よりも軽いガスを収容し、これは、ガスが20℃かつ1気圧で周囲の空気よりも低い密度を有することを意味する。ガスは、有利には、ヘリウムである。
【0049】
空気よりも軽いガスで満たされたとき、浮力筐体32は、ハイブリッド飛行船10の空気中に正の浮力を提供する。
【0050】
浮力筐体32は、長手方向軸A-A’に沿って延在する。
【0051】
ここで、図2および図3に示されるように、浮力筐体32は、軸A-A’を横切る平面で得られた、卵形の輪郭の翼形状を有する。卵形の輪郭は空気抵抗を制限する。
【0052】
飛行船10が水平であるとき、軸A-A’に垂直に得られた浮力筐体32の最大鉛直方向高さと、長手方向軸A-A’に沿って得られた浮力筐体32の最大長さと、の比率は、20%と35%との間に含まれる。
【0053】
水平断面において、浮力筐体32の最大横幅と浮力筐体32の最大長さとの比率は、25%と35%との間に含まれる。
【0054】
浮力筐体32は、有利には、浮力筐体32から突出しかつ浮力筐体32の後方に位置する少なくとも1つの舵42と、少なくとも舵42を制御してハイブリッド飛行船10のピッチ角を変更することができる傾き制御装置46と、を備える。
【0055】
ここで、ピッチ角は、長手方向軸A-A’と水平軸との間の角度として定義される。
【0056】
舵42は、ハイブリッド飛行船10の方向制御を安定させかつ改善するように構成されている。傾き制御装置46は、舵42の昇降舵を制御して、ハイブリッド飛行船10のピッチを変更し、0°から15°までの、優先的には、0.5°から15°まで、特に、0.5°から5°までの範囲に及ぶ長手方向軸A-A’の正のピッチ、または、0°から-15°までの、優先的には、-0.5°から-15°まで、特に、-0.5°から-5°までの長手方向軸A-A’の負のピッチを得る。
【0057】
ここで、ゴンドラ34は、長手方向軸A-A’に沿って延在する。
【0058】
有利には、ゴンドラ34の水平断面は、空気抵抗を制限する空気力学的形状を有するために楕円形である。
【0059】
ゴンドラ34は、有利には、複合材料で作られている。例えば、ゴンドラ34は、炭素繊維サンドイッチパネルで作られている。
【0060】
ゴンドラ34は、有利には、ハイブリッド飛行船10のパイロットのためのコックピットと、乗客または荷物を輸送するためのキャビンと、少なくとも1つのサイドドアと、搭載された電気システムと、を備える。
【0061】
それぞれのプロペラ36は、ハイブリッド飛行船10を推進するように構成されている。
【0062】
プロペラ36は、有利には、浮力筐体32から側方に突出するマスト構造44によって浮力筐体32に取り付けられる。
【0063】
ハイブリッド飛行船10は、有利には、少なくとも2つのプロペラ36、例えば、浮力筐体32のそれぞれの側面に対称的に配置された4つのプロペラ36を備える。
【0064】
ここで、図4および図5において、それぞれのプロペラ36は、電動モーター45と、ローター48と、管状ガイド51内でローター48から突出する複数のプロペラブレード50と、を備える。発電機38が電動モーター48に電力を提供するとき、電動モーター48は、管状ガイド51に沿って空気流を引き起こすため、ローター48およびブレード50をプロペラ軸B-B’の周りで回転させる。次に、軸B-B’に沿って力が生じる。
【0065】
プロペラ36は、最高100km/hの対気速度で、一般に、実質的に60km/hの巡航対気速度でハイブリッド飛行船10を推進することができる。
【0066】
ハイブリッド飛行船10は、その上昇が、空気よりも軽いガスを含む浮力筐体32の浮力による空気静力学的上昇、有利には、浮力筐体32の特定の翼状形状による空気力学的上昇と、プロペラ36による潜在的な鉛直方向推力と、によって確保されるので、「ハイブリッド」と呼ばれる。
【0067】
発電機38は、それぞれのプロペラ36に電力を提供する。発電機38は、プロペラ36のそれぞれから離れている。
【0068】
発電機38およびそれぞれの関連するプロペラ36は、ゴンドラ34および筐体32を通る電気ケーブルを介して電気的に接続されている。
【0069】
発電機38は、発電機38に取り付けられたプロペラを奪われている。
【0070】
発電機38は、少なくとも1つのモーター54と、少なくとも1つのオルタネーター56と、を備える。
【0071】
モーター54は、好ましくは、熱モーターである。モーターは、石油、ガス、水素によって燃料供給される。モーター54は、燃料の化学的エネルギーから機械的エネルギーを生成するように構成されている。
【0072】
変形例において、発電機38は、燃料電池のような化学的発電機である。
【0073】
それぞれのオルタネーター56は、モーター54のうちの1つに接続されている。オルタネーター56は、モーター54によって提供される機械的エネルギーから電気的エネルギーを生成するように構成されている。
【0074】
図2および図3に示される例において、それぞれの発電機38は、2つのモーター54と、2つのオルタネーター56と、を備える。
【0075】
それぞれのオルタネーター48は、ゴンドラ34内に位置する一次配電システム(図示せず)に接続されている。一次配電システムは、搭載された電気システムおよびプロペラ36のそれぞれのモーター45に電力を提供するように構成されている。
【0076】
ペイロード運搬器具41は、例えば、ゴンドラ34の下でペイロード30を運搬するための、例えば、ウィンチによってゴンドラ34から展開された少なくとも1つの綱を備える巻上システムである。ペイロード30は、ペイロード運搬器具41によってハイブリッド飛行船10から吊り下げられている。ゴンドラ34の底部とペイロード30との間の鉛直方向の高さは、一般に、10mより大きく、10mと60mとの間に含まれる。
【0077】
図4および図5に示されるように、制御機構39は、浮力筐体32に対するプロペラ36の第1のピボット軸60と、第1のピボット軸60に対して垂直な、浮力筐体32に対するプロペラ36の第2のピボット軸62と、有利には、第1のピボット軸60と第2のピボット軸62との間の接続アセンブリ64と、を備える。
【0078】
制御機構39は、第1のピボット軸60の周りおよび第2のピボット軸62の周りのプロペラ36のそれぞれのピボット角度を制御するための制御ユニット66をさらに備え、プロペラ軸B-B’の向きおよびプロペラ36によって生じる力の向きを定める。
【0079】
この例において、第2のピボット軸62は、長手方向軸A-A’に対して固定された向きの水平軸である。長手方向軸A-A’を含む水平面での投影において、第2のピボット軸62は、有利には、長手方向軸A-A’に対して垂直である。
【0080】
プロペラ軸B-B’が水平であるとき、第1のピボット軸60は鉛直である。接続アセンブリは、第1のピボット軸60を第2のピボット軸62に接続し、プロペラ36が第2のピボット軸62の周りで回転するとき、第1のピボット軸60も第2のピボット軸62の周りで一緒に回転する。
【0081】
有利には、接続アセンブリ64は、「カルダン」または「ジンバル」タイプである。第1のピボット軸60は、少なくとも1つの第1のピボット70、優先的には、2つの互いに反対側の第1のピボット70を備え、第1のピボット70は、プロペラ軸B-B’に対して垂直にプロペラ管状ガイド51の2つの反対側に径方向に設けられる。
【0082】
接続器具は、少なくとも1つのフォーク72、優先的には、2つの互いに反対側のフォーク72を備え、フォーク72は、基部74と、プロペラ管状ガイド51の両側の互いに反対側の第1のピボット70を接続する2つのアーム76と、を備える。
【0083】
第2のピボット軸62は、少なくとも1つの第2のピボット78、優先的には、2つの互いに反対側の第2のピボット78を備え、第2のピボット78は、それぞれの基部74と浮力筐体32上のマスト構造44との間に設けられる。
【0084】
図6から図8に示されるように、制御ユニット66は、第2のピボット軸62の周りでそれぞれのプロペラ36を選択的に回転させて、純粋に鉛直方向の上昇または降下(または逆上昇)成分を有する力(図6を参照)、ハイブリッド飛行船を長手方向軸A-A’に沿って移動させることができる長手方向駆動成分を有する力(図8を参照)、および/または鉛直方向の上昇または降下成分と長手方向駆動成分との混合力(図7)を生じるために、長手方向軸A-A’が水平なときに長手方向軸A-A’に対するプロペラ軸B-B’の傾き角を、-180°から+180°まで、有利には、-90°から90°まで、変更することができる。
【0085】
図11に示されるように、制御ユニット66は、第1のピボット軸60の周りでそれぞれのプロペラ36を選択的に回転させて、ハイブリッド飛行船10を長手方向軸A-A’に対して横方向に移動させることができる横方向駆動成分を含むために、第2のピボット軸62に垂直な軸に対するプロペラ軸B-B’の傾き角を、-180°から+180°まで、優先的には、-90°から+90°まで、変更することができる。
【0086】
次に、ペイロード30を目標地点11に輸送するための方法について説明する。
【0087】
最初に、ハイブリッド飛行船10は収縮状態で組立地点、例えば、ベースキャンプ26に運搬される。
【0088】
図9のステップ100に示されるように、ハイブリッド飛行船10は組み立てられ、浮力筐体は空気よりも軽いガスで満たされる。
【0089】
有利には、それぞれのプロペラ36の制御機構49は、プロペラ36によって揚力を生じるように、プロペラ軸B-B’を実質的に鉛直位置に配置するように作動される。図9のステップ102に示されるように、ハイブリッド飛行船10は、正の浮力と揚力との組み合わせによって上昇させられる。
【0090】
ペイロードについての目標高度、例えば、林冠を30mよりも超える高度では、プロペラ軸B-B’は、長手方向駆動成分を有する力を生じて飛行船10を長手方向に移動させるため、第2のピボット軸62の周りでの回転によって徐々に傾けられる。
【0091】
図9のステップ104では、プロペラ軸B-B’は、長手方向軸A-A’に平行に設定される。傾き制御装置46は、ハイブリッド飛行船10の長手方向軸A-A’の負のピッチを生じるように作動される。
【0092】
負のピッチは、ハイブリッド飛行船10が長手方向に移動するとき、ハイブリッド飛行船10に空気力学的降下力を引き起こす。空気力学的降下力は、正の浮力を補償し、ハイブリッド飛行船10の高度を一定に保つことができる(図9のステップ106を参照)。
【0093】
ペイロード位置の付近において、プロペラ36は、第2のピボット軸62の周りで再び回転させられ、増大する降下成分を有する力を生じる。ハイブリッド飛行船がペイロード36の上空の地点に到達するとき、プロペラ軸B-B’は再び鉛直に設定され、ペイロード36の上空での降下静止飛行を可能にする(図9のステップ108を参照)。
【0094】
次に、ペイロード運搬器具41がペイロード30に展開される。その後、ペイロード30は、ペイロード運搬器具41に接続される。ペイロードが重いとき、ペイロードを運搬するハイブリッド飛行船10の組み合わされた浮力は負になる。
【0095】
次に、制御ユニット66は、有利には、負の浮力を補償する鉛直揚力を生じるためにプロペラ軸B-B’を鉛直に設定することにより、プロペラ36を回動するように作動される。
【0096】
ペイロード30を運搬するハイブリッド飛行船10は、上空に昇る。図9のステップ110では、プロペラ軸B-B’は、長手方向成分を有する力を生じるように、第2のピボット軸62の周りで回動される。
【0097】
長手方向軸のピッチ角は、プロペラ36によって生じる上昇成分に加えて、空気力学的揚力を生じるため、例えば、0°を超え、特に、1°を超えて正の値まで上げられ、また一般に、0°から15°までの間に、特に、0.5°から5°までの間に含まれる。
【0098】
空気力学的揚力は、例えば、プロペラ36によって生じる揚力および空気力学的揚力の総和の40%と60%との間の範囲に及ぶ。
【0099】
したがって、本発明による方法におけるハイブリッド飛行船10の正のピッチの使用により、飛行船は、浮力筐体32の大きさを大幅に増大させる必要なく、またはプロペラ36によってより大きな揚力を生じる必要なく、より重いペイロード30を運搬することができる。
【0100】
図10のステップ112では、目標地点11の付近に到達するとき、ハイブリッド飛行船10の長手方向軸A-A’のピッチが徐々に減少させられ、かつ/または、第2のピボット軸62の周りでのプロペラ軸B-B’の向きが降下力を生じるように変更される。
【0101】
ハイブリッド飛行船10は、目標地点11に向かって長手方向に移動しながら、目標地点11に向かって徐々に降下する。
【0102】
長手方向軸A-A’が正確な目標地点11の横方向にオフセットしている場合、制御ユニット66は、第1のピボット軸60の周りでプロペラ36を回転させるように作動される。プロペラ軸B-B’は、長手方向軸に平行な軸C-C’に対して傾き、それぞれのプロペラ36は、横方向の移動力を生じる。ハイブリッド飛行船10の長手方向軸A-A’は、図11および図12に示されるように、目標地点11を長手方向軸A-A’と整列させるために横方向に移動する。
【0103】
したがって、本発明による方法において、目標地点11が長手方向軸A-A’と完全に整列されていない場合に、ハイブリッド飛行船10の位置を、複雑な復行の手順を実施する必要なく、鉛直方向だけでなく水平方向にも細かく制御することができる。
【0104】
これは、特に、植生16と小規模の開けた土地22とを含む対象の地方12のような遠隔の環境で役立つ。
【0105】
次に、図10のステップ114に示されるように、プロペラ軸B-B’は鉛直に向けられ、ペイロードが目標地点11に接触するまでハイブリッド飛行船10の静止降下が実施される。
【0106】
次に、ペイロード30は、ペイロード運搬器具41から切り離され、飛行船10は、別の場所に、例えば、ベースキャンプ26(ステップ116)に、ステップ102から106と同様の方法で飛行し帰す。
【0107】
変形例(図示せず)において、1つ以上のプロペラ36のローター48は、2つの反対方向に回転することができる。プロペラは、第2のピボット軸62の周りでプロペラ36を回転させる必要なく、回転方向に応じて揚力または降下力のいずれかを生じることができる。
【0108】
別の変形例において、長手方向軸A-A’の位置の横方向調整は、長手方向軸A-A’に沿ってハイブリッド飛行船10を長手方向に移動させることなく実施される。
【0109】
別の変形例において、ペイロード30は、ゴンドラ34内に直接収容され、またはゴンドラ34に取り付けられる。ペイロード運搬器具41は、例えば、ゴンドラ34内に画成された仕切り部、またはゴンドラ34の下に固定された構造物である。
【0110】
ペイロード30は、必ずしも目標地点11で落とされる必要はなく、目標地点11で、地面から離間してゴンドラ34に接続されたままであり得る。
【0111】
例えば、ペイロード34は、有利には、測定を実施するためのセンサーを含む。これらのセンサーは、例えば、電磁センサー、レーザーセンサー(LIDAR)または赤外線センサーのようなアクティブセンサー、または重力場または磁場を測定するパッシブセンサーである。
【符号の説明】
【0112】
10 ハイブリッド飛行船
11 目標地点
30 ペイロード
32 浮力筐体
34 ゴンドラ
36 プロペラ
39 プロペラの向きを制御するための機構
41 ペイロード運搬器具
46 傾き制御装置
50 ブレード
60 第1のピボット軸
62 第2のピボット軸
A-A’ 長手方向軸
B-B’ プロペラ軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12