(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】非水電解質蓄電素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/058 20100101AFI20220127BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20220127BHJP
H01M 50/46 20210101ALI20220127BHJP
H01G 11/64 20130101ALI20220127BHJP
H01G 11/52 20130101ALI20220127BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20220127BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20220127BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20220127BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20220127BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20220127BHJP
H01M 10/0525 20100101ALI20220127BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/0567
H01M50/46
H01G11/64
H01G11/52
H01G11/84
H01M50/489
H01M50/443 M
H01M50/434
H01M50/451
H01M10/0525
(21)【出願番号】P 2018535565
(86)(22)【出願日】2017-08-03
(86)【国際出願番号】 JP2017028165
(87)【国際公開番号】W WO2018037869
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】P 2016162299
(32)【優先日】2016-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100127513
【氏名又は名称】松本 悟
(72)【発明者】
【氏名】田中 樹恵
【審査官】原 和秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-340026(JP,A)
【文献】特開2006-108100(JP,A)
【文献】特開2016-006763(JP,A)
【文献】特開2009-026733(JP,A)
【文献】特開2015-053282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 50/40-50/497
H01M 4/13- 4/62
H01G 11/26-11/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極とセパレータとの間に耐熱層が配置されている電極体、及び非水電解質を備え、
上記耐熱層の破断強度が
400gf/cm以下であり、
上記非水電解質が下記式(1)で表される化合物を含む非水電解質蓄電素子。
【化1】
(式(1)中、Xは、ハロゲン原子である。R
1は、ハロゲン原子、炭素数1~3の炭化水素基、又は炭素数1~3のハロゲン化炭化水素基である。nは、0~2の整数である。nが2の場合、複数のR
1は、それぞれ独立して上記定義を満たす。)
【請求項2】
上記耐熱層が、アスペクト比が3以上500以下の粒子を含む請求項1に記載の非水電解質蓄電素子。
【請求項3】
上記耐熱層が、上記セパレータの表面に形成されている請求項1
又は請求項2に記載の非水電解質蓄電素子。
【請求項4】
正極とセパレータとの間に耐熱層が配置されている電極体を得ることを有し、
上記耐熱層の破断強度が
400gf/cm以下であり、
下記式(1)で表される化合物を含む非水電解質を用いる非水電解質蓄電素子の製造方法。
【化2】
(式(1)中、Xは、ハロゲン原子である。R
1は、ハロゲン原子、炭素数1~3の炭化水素基、又は炭素数1~3のハロゲン化炭化水素基である。nは、0~2の整数である。nが2の場合、複数のR
1は、それぞれ独立して上記定義を満たす。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質蓄電素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池は、エネルギー密度の高さから、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器、自動車等に多用されている。上記非水電解質二次電池は、一般的には、セパレータで電気的に隔離された一対の電極を有する電極体、及び電極間に介在する非水電解質を備え、両電極間でイオンの受け渡しを行うことで充放電するよう構成される。また、二次電池以外の非水電解質蓄電素子として、リチウムイオンキャパシタや電気二重層キャパシタ等のキャパシタも広く普及している。
【0003】
このような非水電解質蓄電素子に備わる電極体においては、正極と負極との間に絶縁性の無機フィラー層が設けられているものがある(特許文献1参照)。一方、上記非水電解質には、性能向上等を目的として各種添加剤が添加される。例えば、過充電の防止のためにハロゲン化芳香族化合物等が添加された非水電解質が提案されている(特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-253010号公報
【文献】特開2005-340026号公報
【文献】特開2006-108100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、フルオロトルエン等のハロゲン化芳香族化合物が添加された非水電解質を用いると、使用する電圧範囲によっては、充放電の繰り返しに伴ってハロゲン化芳香族化合物の酸化分解が生じ、これにより放電容量が徐々に低下していくという不都合が生じ得る可能性がある。すなわち、このようなハロゲン化芳香族化合物が添加された非水電解質を用いた蓄電素子は、寿命特性を向上することが望まれる。
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、寿命特性に優れる非水電解質蓄電素子及びこの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様に係る非水電解質蓄電素子は、正極とセパレータとの間に耐熱層が配置されている電極体、及び非水電解質を備え、上記耐熱層の破断強度が
400gf/cm以下であり、上記非水電解質が下記式(1)で表される化合物を含む非水電解質蓄電素子である。
【化1】
(式(1)中、Xは、ハロゲン原子である。R
1は、ハロゲン原子、炭素数1~3の炭化水素基、又は炭素数1~3のハロゲン化炭化水素基である。nは、0~2の整数である。nが2の場合、複数のR
1は、それぞれ独立して上記定義を満たす。)
【0008】
本発明の他の一態様に係る非水電解質蓄電素子の製造方法は、正極とセパレータとの間に耐熱層が配置されている電極体を得ることを有し、上記耐熱層の破断強度が
400gf/cm以下であり、下記式(1)で表される化合物を含む非水電解質を用いる非水電解質蓄電素子の製造方法である。
【化2】
(式(1)中、Xは、ハロゲン原子である。R
1は、ハロゲン原子、炭素数1~3の炭化水素基、又は炭素数1~3のハロゲン化炭化水素基である。nは、0~2の整数である。nが2の場合、複数のR
1は、それぞれ独立して上記定義を満たす。)
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、寿命特性に優れる非水電解質蓄電素子及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る非水電解質二次電池を示す外観斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の非水電解質二次電池に備わる電極体の模式的断面図である。
【
図3】
図3は、アスペクト比を説明するための粒子の概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係る非水電解質二次電池を複数用いて構成した蓄電装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の非水電解質蓄電素子の一実施形態としての非水電解質二次電池及びその製造方法を中心に詳説する。
【0012】
<非水電解質二次電池>
図1の非水電解質二次電池1(以下、単に「二次電池1」ともいう。)は、電極体2と、この電極体2を収容する電池容器3とを備える。さらに、二次電池1は、電池容器3内に充填されている非水電解質を備える。なお、
図1は、電池容器3の内部を透視した図としている。電極体2は、後に詳述するように、一対の電極(正極及び負極)等が捲回されることにより形成されている。正極は、正極リード4’を介して正極端子4と電気的に接続され、負極は、負極リード5’を介して負極端子5と電気的に接続されている。また、非水電解質は、後に詳述する式(1)で表される化合物(特定のハロゲン化芳香族化合物)を含む。
【0013】
(電極体)
図2に示すように、電極体2は、正極11と、負極12と、正極11及び負極12の間に配置されるセパレータ13と、正極11及びセパレータ13との間に配置される耐熱層14とを備える。すなわち、電極体2は、正極11、耐熱層14、セパレータ13及び負極12がこの順に重ねられた層構造体である。正極11、負極12、セパレータ13及び耐熱層14は、それぞれシート状、あるいは膜状である。正極11、負極12、セパレータ13及び耐熱層14は、隣接する各要素が接着されていてもよいし、接着されていなくてもよい。これらから形成される層構造体(電極体2)は捲回された状態で電池容器3内に収容される。
【0014】
(正極)
正極11は、通常、正極基材、及びこの正極基材に直接又は中間層を介して配される正極活物質層を有する。
【0015】
上記正極基材は、導電性を有する。正極基材の材質としては、アルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼等の金属又はそれらの合金が用いられる。これらの中でも、耐電位性、導電性の高さ及びコストのバランスからアルミニウム及びアルミニウム合金が好ましい。また、正極基材の形成形態としては、箔、蒸着膜等が挙げられ、コストの面から箔が好ましい。つまり、正極基材としてはアルミニウム箔が好ましい。なお、アルミニウム又はアルミニウム合金としては、JIS-H-4000(2014年)に規定されるA1085P、A3003P等が例示される。
【0016】
上記中間層は、例えば正極基材の表面の被覆層であり、炭素粒子等の導電性粒子を含むことで正極基材と正極活物質層との接触抵抗を低減することができる。中間層の構成は特に限定されず、例えば樹脂バインダー及び導電性粒子を含有する組成物により形成できる。なお、「導電性」を有するとは、JIS-H-0505(1975年)に準拠して測定される体積抵抗率が107Ω・cm以下であることを意味し、「非導電性」とは、上記体積抵抗率が107Ω・cm超であることを意味する。
【0017】
上記正極活物質層は、正極活物質を含むいわゆる正極合材から形成される。また、正極活物質層を形成する正極合材は、必要に応じて導電剤、バインダー(結着剤)、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。
【0018】
上記正極活物質としては、例えばLixMOy(Mは少なくとも一種の遷移金属を表す)で表される複合酸化物(層状のα―NaFeO2型結晶構造を有するLixCoO2,LixNiO2,LixMnO2,LixNiαCo(1-α)O2,LixNiαMnβCo(1-α-β)O2等、スピネル型結晶構造を有するLixMn2O4,LixNiαMn(2-α)O4等)、LiwMex(XOy)z(Meは少なくとも一種の遷移金属を表し、Xは例えばP、Si、B、V等を表す)で表されるポリアニオン化合物(LiFePO4,LiMnPO4,LiNiPO4,LiCoPO4,Li3V2(PO4)3,Li2MnSiO4,Li2CoPO4F等)が挙げられる。これらの化合物中の元素又はポリアニオンは、他の元素又はアニオン種で一部が置換されていてもよい。正極活物質層においては、これら化合物の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0019】
上記導電剤としては、電池性能に悪影響を与えない導電性材料であれば特に限定されない。このような導電剤としては、天然又は人造の黒鉛(グラファイト)、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、金属、導電性セラミックス等が挙げられる。導電剤の形状としては、粉状、繊維状等が挙げられる。
【0020】
上記バインダー(結着剤)としては、公知のものを使用することができ、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重含体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、酢酸ビニル共重合体、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリルモノマーを主体としたポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、スルホン化EPDM、フッ素ゴム、アラビアゴム、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレンオキサイド-プロピレンオキサイド共重合体(PEO-PPO)等を用いることができる。
【0021】
上記増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース等の多糖類高分子等が挙げられる。また、増粘剤がリチウムと反応する官能基を有する場合、予めメチル化等によりこの官能基を失活させておくことが好ましい。
【0022】
上記フィラーとしては、電池性能に悪影響を与えないものであれば特に限定されない。フィラーの主成分としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、シリカ、アルミナ、ゼオライト、ガラス、炭素等が挙げられる。
【0023】
(負極)
負極12は、負極基材、及びこの負極基材に直接又は中間層を介して配される負極活物質層を有する。上記中間層は正極11の中間層と同様の構成とすることができる。
【0024】
上記負極基材は、導電性を有する。材質としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属又はそれらの合金が用いられる。これらの中でも、銅又は銅合金が好ましい。また、負極基材の形成形態としては、箔、蒸着膜等が挙げられ、コストの面から箔が好ましい。つまり、負極基材としては銅箔が好ましい。なお、銅箔としては、圧延銅箔、電解銅箔等が例示される。
【0025】
上記負極活物質層は、負極活物質を含むいわゆる負極合材から形成される。また、負極活物質層を形成する負極合材は、必要に応じて導電剤、バインダー(結着剤)、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。導電剤、結着剤、増粘剤、フィラー等の任意成分は、正極活物質層と同様のものを用いることができる。
【0026】
上記負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材料が用いられる。具体的な負極活物質としては、例えばSi、Sn等の金属又は半金属;Si酸化物、Sn酸化物等の金属酸化物又は半金属酸化物;ポリリン酸化合物;黒鉛(グラファイト)、非晶質炭素(易黒鉛化性炭素または難黒鉛化性炭素)等の炭素材料等が挙げられる。なお、半金属としては、B、Si、Ge、As、Sb、Te、Po、At等が挙げられる。
【0027】
また、負極活物質層は、B、N、P、F、Cl、Br、I等の典型非金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge等の典型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Zr、Ta、Hf、Nb、W等の遷移金属元素を含有してもよい。
【0028】
(セパレータ)
セパレータ13は、正極11と負極12を隔離し、かつ非水電解質を保持する役割を担う。セパレータ13の材質としては、例えば織布、不織布、多孔質樹脂フィルム等が挙げられる。これらの中でも多孔質樹脂フィルムが好ましい。多孔質樹脂フィルムの主成分としては、強度の観点から例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましい。また、これらの樹脂とアラミドやポリイミド等の樹脂とを複合した多孔質樹脂フィルムを用いてもよい。
【0029】
(耐熱層)
耐熱層14は、正極11とセパレータ13との間に配置されている。耐熱層14は、セパレータ13よりも耐熱性(融点)の高い層であることが好ましい。例えば、耐熱層14の主成分(後述するフィラー等)の融点は、200℃以上であることが好ましい。なお、主成分とは、質量基準で最も含有量の多い成分をいう。耐熱層14は、通常、多孔質状(多孔質層)である。また、耐熱層14は、電気絶縁性が高く、電気化学的に安定であるものが好ましい。
【0030】
耐熱層14の破断強度の上限は、460gf/cm(451N/m)であり、440gf/cm(431N/m)が好ましく、400gf/cm(392N/m)がより好ましく、370gf/cm(363N/m)がさらに好ましい。さらに、この破断強度の上限は、300gf/cm(294N/m)であってもよく、200gf/cm(196N/m)であってもよく、100gf/cm(98N/m)であってもよい。
【0031】
当該二次電池1は、電極体2がこのように上記の破断強度を満たす耐熱層14を有することにより、寿命特性に優れる。この理由は定かでは無いが、以下の理由が推察される。耐熱層14の破断強度が上記の範囲であると、耐熱層14は押圧等によって厚さ方向に圧縮されやすい。一方、上述のように、充放電が繰り返され、二次電池1が充電状態を経ることで、フルオロトルエン等のハロゲン化芳香族化合物(式(1)で表される化合物)の酸化分解が生じ、これが放電容量を低減させる原因になり得る。そこで、正極11とセパレータ13との間に上記範囲の破断強度を満たす耐熱層14を設けると、耐熱層14は、二次電池1の充電時における電極体2の膨張によって、押圧されて圧縮される。耐熱層14が圧縮されて潰れることにより、二次電池1の充電時において、多孔質状の耐熱層14の空孔率が一時的に低下し、耐熱層14内に上記ハロゲン化芳香族化合物が存在できる空間(空孔)が小さくなる。これにより、二次電池1の充電時において、上記ハロゲン化芳香族化合物が正極11近傍に存在する量が減少し、正極11近傍での上記ハロゲン化芳香族化合物の酸化分解が低減する。このような作用によって、当該二次電池1は、充放電サイクルにおいて高い容量維持率を有することができると推察される。特に耐熱層14の破断強度を400gf/cm以下とした場合、比較的高温(例えば60℃)の環境下での使用においても、上記ハロゲン化芳香族化合物の酸化分解が十分に抑制され、優れた寿命特性を発揮することができる。
【0032】
一方、耐熱層14の破断強度の下限としては特に限定されないが、例えば10gf/cm(10N/m)とすることができ、50gf/cm(49N/m)が好ましく、100gf/cm(98N/m)であってもよく、200gf/cm(196N/m)であってもよい。耐熱層14の破断強度を上記下限以上とすることにより、製造工程等における十分な強度が付与され、電極体2を製造する際の生産性を高めることができる。
【0033】
耐熱層14の破断強度は、以下に記載の方法に基づいて算出することができる。
幅30mm以上長さ40mm以上に切り取った耐熱層を用意する。耐熱層がセパレータ等と一体化している場合は、セパレータ等と共に耐熱層を切り取る。試料台(試料板)に両面テープを用いて耐熱層を固定する。耐熱層が浮いて角度が変わらないように、耐熱層の下側の面全面を固定する。なお、耐熱層がセパレータ等と一体化している場合は、耐熱層が上面となるようにセパレータ等と共に固定する。次いで、幅18mmのテープを耐熱層表面に貼り付け、テープを引き剥がす。テープは、スリーエムジャパン社の「Scotch MP-18S」を用いることができる。引き剥がすときの耐熱層と引き出す方向との角度は180°とする。また、引き剥がし速度は、2mm/sとする。引き剥がしにより、耐熱層が層内で破断したとき、その引き剥がしたときの力(gf)をテープ幅(cm)で除した値を破断強度(gf/cm)とする。なお、耐熱層が層内で破断しなかった場合、すなわちテープと耐熱層との間や、耐熱層とセパレータ等との間で剥離した場合は、粘着力の強いテープを用いて引き剥がす、あるいは粘着力の強い両面テープを用いて耐熱層のみを固定することにより行う。
【0034】
耐熱層14の破断強度は、後述する耐熱層14を形成するバインダーの量等により調整することができる。具体的には、バインダーの使用量を減らした場合、破断強度が下がる要因となる。また、結着力の弱いバインダーを用いることで、破断強度を下げることもできる。
【0035】
耐熱層14は、耐熱性樹脂から形成されていてもよく、フィラーと、このフィラーを固定するバインダーとから形成されていてもよい。耐熱性樹脂としては、アラミド樹脂(全芳香属ポリアミド)、ポリイミド等を挙げることができる。フィラーを形成する材料としては、上述した耐熱性樹脂や、無機物等を挙げることができる。無機物としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄等の無機酸化物、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の無機窒化物、その他、シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリンクレー、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、アルミノシリケート、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂、ガラス等を挙げることができる。
【0036】
耐熱層14は、フィラーと、このフィラーを固定するバインダーとから形成されていることが好ましい。フィラーを形成する材料としては、無機物が好ましく、無機酸化物がより好ましい。
【0037】
フィラーの形状は、粒子状や、繊維状等、特に限定されないが、アスペクト比の高い粒子状であることが好ましい。すなわち、耐熱層14は、アスペクト比の高い粒子を含むことが好ましい。このアスペクト比の下限としては、3が好ましく、5がより好ましく、10がさらに好ましく、20が特に好ましい。アスペクト比の高い粒子は、棒状、板状等の形状を有する。このようにアスペクト比の高い粒子を用いた場合、耐熱層14に対する押圧に伴って、これらの粒子が倒れるため耐熱層14が厚さ方向に圧縮されやすい。従って、このような粒子を用いることで、耐熱層14の空孔率を下げ、二次電池1の寿命特性をより高めることができる。一方、このアスペクト比の上限としては、入手容易性、取扱性等の点から、例えば500である。
【0038】
アスペクト比は、
図3に示すように、粒子が有する3つの長さのパラメーター(r1,r2,b)を用いて算出することができる。ここでは、r1及びr2は長径、bは短径とし、r1≧r2>bの関係性を満たしている。具体的には、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて耐熱層14のSEM画像を観察し、かかる画像中において、上記関係性(r1≧r2>b)を満たしていることが確認された粒子の長径(r1)及び短径(b)を実測し、長径(r1)を短径(b)で除することによりアスペクト比を算出することができる。なお、上記アスペクト比は、SEM画像中に観察される粒子の中から任意に10個の粒子を選び、それぞれの長径(r1)及び短径(b)を実測し、かかる実測値から求めたアスペクト比の平均値である。
【0039】
上記粒子のサイズとしては特に限定されないが、上記長径は、0.1μm以上70μm以下が好ましく、0.1μm以上50μm以下がより好ましく、0.1μm以上20μm以下がさらに好ましい。
【0040】
バインダーは、フィラーを固定でき、非水溶媒に溶解せず、かつ使用範囲で電気化学的に安定であるものが、通常用いられる。上記バインダーとしては、正極活物質層に用いられるバインダーとして上述したものを挙げることができる。上記バインダーとしては、電気化学的な安定性や好適な破断強度を得られる等の観点から、アクリルモノマーを主体としたポリマー等が好ましい。これらのバインダーは、水系溶媒(水を主体とする溶媒)に溶解又は分散させて用いることができるため、低コスト及び低環境負荷で耐熱層を形成することができる。なお、水系溶媒(水を主体とする溶媒)を用いる際は、バインダーと併せて増粘剤を用いることが好ましい。
【0041】
上記バインダーの含有量は、例えばフィラー100質量部に対して0.5質量部以上20質量部以下とすることができる。バインダーの含有量を上記範囲とすることで、耐熱層14の破断強度をより好適なものとすることができる。
【0042】
耐熱層14は、フィラー及びバインダー以外の成分が含有されていてもよい。但し、耐熱層14におけるフィラー及びバインダーの合計含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。
【0043】
耐熱層14の平均厚さとしては特に限定されないが、下限としては2μmが好ましい。一方、この上限としては、10μmが好ましい。耐熱層14の平均厚さを上記下限以上とすることで、十分な厚さを確保でき、圧縮に伴うハロゲン化芳香族化合物の酸化分解抑制効果をより十分に発揮させることができる。一方、耐熱層14の平均厚さを上記上限以下とすることで、電極体2全体として薄膜化できることや、二次電池1のエネルギー密度を高めること等ができる。なお、耐熱層14の平均厚さは、例えば、当該耐熱層14がセパレータの表面に形成された場合であれば、耐熱層14が形成された部分のセパレータの厚さと、耐熱層14を除去した部分のセパレータの厚さとの差を求めることにより算出することができる。
【0044】
耐熱層14は、正極11又はセパレータ13に対して固着(接着)されていてもよいし、これら双方と分離可能に配置されていてもよい。但し、耐熱層14は、セパレータ13の表面に形成されている、すなわち、セパレータ13と接着されていることが好ましい。このように、耐熱層14がセパレータ13に接着している場合、セパレータ13の異常時等における熱収縮を抑制することができる。
【0045】
(非水電解質)
非水電解質は、正極11と負極12との間に介在し、両電極間でイオンを受け渡す役割を担う。非水電解質は、非水溶媒と、この非水溶媒に溶解される電解質塩とを含み、さらに下記式(1)で表される化合物(ハロゲン化芳香族化合物)を含む。
【0046】
【0047】
式(1)中、Xは、ハロゲン原子である。R1は、ハロゲン原子、炭素数1~3の炭化水素基、又は炭素数1~3のハロゲン化炭化水素基である。nは、0~2の整数である。nが2の場合、複数のR1は、それぞれ独立して上記定義を満たす。
【0048】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等を挙げることができる。
【0049】
炭素数1~3の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、エテニル基等を挙げることができる。
【0050】
炭素数1~3のハロゲン化炭化水素基としては、上記炭素数1~3の炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部をハロゲン原子で置換した基を挙げることができる。具体的には、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、フルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基等を挙げることができる。
【0051】
上記Xとしては、フッ素原子が好ましい。
【0052】
上記R1としては、炭素数1~3の炭化水素基が好ましく、メチル基がより好ましい。上記R1がこのような基である場合、上記化合物の酸化分解電位が上昇し、電池の通常使用時における上記化合物の酸化分解をより抑制することができる。
【0053】
上記R1の結合位置としては、特に限定されず、Xに対してオルト位、メタ位、パラ位のいずれであってもよいが、Xに対してオルト位であることが好ましい。上記R1の結合位置がXに対してオルト位である場合、上記化合物の酸化分解電位が上昇するため、電池の充電中に、上記化合物が酸化分解する恐れをより低減することができる。なお、上記式(1)で表される化合物は、上記R1の結合位置がXに対してオルト位、メタ位、パラ位のいずれであってもよく、またこれらの混合物であってもよい。
【0054】
上記nは、1及び2が好ましく、1がさらに好ましい。
【0055】
上記式(1)で表される化合物をこのような構造とすることにより、十分な過充電防止機能を発揮しつつ、より寿命特性を高めることができる。
【0056】
上記化合物としては、具体的には、フルオロベンゼン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、フルオロトルエン、クロロトルエン、ブロモトルエン、ジフルオロトルエン、ジクロロトルエン、ジブロモトルエン、トリフルオロトルエン、トリクロロトルエン、トリブロモトルエン等を挙げることができ、フルオロトルエンが好ましく、o-フルオロトルエンがより好ましい。
【0057】
上記非水電解質における上記化合物の含有量の下限としては、特に限定されないが、0.1質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましい。上記化合物の含有量を上記下限以上とすることにより、十分な過充電抑制機能を発揮させること等ができる。この含有量の上限としては、特に限定されないが、10質量%が好ましく、5質量%がより好ましい。上記化合物の含有量を上記上限以下とすることで、上記化合物の酸化分解による放電容量の低下をより抑制することができる。
【0058】
(非水溶媒)
上記非水溶媒としては、一般的な二次電池用の非水電解質の非水溶媒として通常用いられる公知の非水溶媒を用いることができる。上記非水溶媒としては、環状カーボネート、鎖状カーボネート、エステル、エーテル、アミド、スルホン、ラクトン、ニトリル等を挙げることができる。これらの中でも、環状カーボネート又は鎖状カーボネートを少なくとも用いることが好ましく、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを併用することがより好ましい。環状カーボネートと鎖状カーボネートとを併用する場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの体積比(環状カーボネート:鎖状カーボネート)としては、特に限定されないが、例えば5:95以上50:50以下とすることが好ましい。
【0059】
上記環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、クロロエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、スチレンカーボネート、カテコールカーボネート、1-フェニルビニレンカーボネート、1,2-ジフェニルビニレンカーボネート等を挙げることができ、これらの中でもECやPCを用いることが好ましい。
【0060】
上記鎖状カーボネートとしては、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジフェニルカーボネート等を挙げることができ、これらの中でもEMCやDECを用いることが好ましい。
【0061】
(電解質塩)
上記電解質塩としては、一般的な二次電池用の非水電解質の電解質塩として通常用いられる公知の電解質塩を用いることができる。上記電解質塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、オニウム塩等を挙げることができるが、リチウム塩が好ましい。
【0062】
上記リチウム塩としては、LiPF6、LiPO2F2、LiBF4、LiClO4、LiN(SO2F)2等の無機リチウム塩、LiSO3CF3、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiN(SO2CF3)(SO2C4F9)、LiC(SO2CF3)3、LiC(SO2C2F5)3等のフッ化炭化水素基を有するリチウム塩等を挙げることができる。これらの中でも、無機リチウム塩が好ましく、LiPF6がより好ましい。
【0063】
上記非水電解質における上記電解質塩の含有量の下限としては、0.1Mが好ましく、0.3Mがより好ましく、0.5Mがさらに好ましい。一方、この上限としては、特に限定されないが、2.5Mが好ましく、2Mがより好ましく、1.5Mがさらに好ましい。
【0064】
上記非水電解質は、本発明の効果を阻害しない限り、上記式(1)で表される化合物、上記非水溶媒、及び上記電解質塩以外の他の成分を含有していてもよい。上記他の成分としては、一般的な二次電池用の非水電解質に含有される各種添加剤を挙げることができる。
【0065】
上記非水電解質は、上記非水溶媒に上記電解質塩、及び上記式(1)で表される化合物を添加し、溶解させることにより得ることができる。
【0066】
<非水電解質二次電池の製造方法>
非水電解質二次電池1の製造方法は、特に限定されないが、以下の方法により製造することが好ましい。すなわち、本発明の一実施形態に係る非水電解質二次電池1(非水電解質蓄電素子)の製造方法は、正極11とセパレータ13との間に耐熱層14が配置されている電極体2を得ることを有し、上記耐熱層14の破断強度が460gf/cm以下であり、上記式(1)で表される化合物を含む非水電解質を用いる。
【0067】
耐熱層14は、例えば、フィラー(粒子)、バインダー、溶剤等を含むペースト状の混合物の塗布により形成することができる。この混合物を正極11又はセパレータ13の一方の面に塗布し、乾燥させることで耐熱層14が形成される。この混合物の塗布は、セパレータ13に行うことが好ましい。これにより、セパレータ13の表面に耐熱層14を形成することができる。
【0068】
混合物の塗布方法は特に限定されず、公知の各種塗工方法を用いることができるが、厚さの制御が容易であること等から、グラビア塗工による塗布方法を採用することが好ましい。
【0069】
このようにして、例えば、耐熱層14をセパレータ13上に形成した後は、正極11、耐熱層14を積層したセパレータ13、及び負極12を重ね合わせ、捲回することにより、電極体2を得ることができる。ここで耐熱層14の破断強度は460gf/cm以下であり、圧縮強度が比較的弱い。
【0070】
電極体2を得た後は、この電極体2を電池容器3に収容し、電池容器3に非水電解質を注入することにより、二次電池1が得られる。
【0071】
<その他の実施形態>
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記形態の他、種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。上記実施の形態においては、非水電解質蓄電素子が非水電解質二次電池である形態を説明したが、その他の非水電解質蓄電素子であってもよい。その他の非水電解質蓄電素子としては、キャパシタ(電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ)等が挙げられる。
【0072】
さらに、本発明に係る非水電解質蓄電素子の構成については特に限定されるものではなく、円筒型電池、角型電池(矩形状の電池)、扁平型電池等が一例として挙げられる。本発明は、上記の蓄電素子を複数備える蓄電装置としても実現することができる。蓄電装置の一実施形態を
図4に示す。
図4において、蓄電装置30は、複数の蓄電ユニット20を備えている。それぞれの蓄電ユニット20は、複数の蓄電素子(非水電解質二次電池1)を備えている。上記蓄電装置30は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源として搭載することができる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0074】
[耐熱層の破断強度]
実施例及び比較例の耐熱層の破断強度は、測定装置として(株)イマダ社の「電動計測スタンドMH-100AC」及び「デジタルフォースゲージDS2-20」を用いて測定した。具体的には以下のとおりである。セパレータ表面に形成された耐熱層をセパレータと共に幅30mm以上長さ40mm以上に切り取る。これを、両面テープを用いて耐熱層が上側になるように試料台に固定する。耐熱層が浮いて角度が変わらないように、下側の面全面を固定する。次いで、幅18mmのテープを耐熱層表面に貼り付け、テープを引き剥がす。テープは、スリーエムジャパン社の「Scotch MP-18S」を用いる。引き剥がすときの耐熱層と引き出す方向との角度は180°とする。また、引き剥がし速度は、2mm/sとする。引き剥がしにより、耐熱層が層内で破断したときの力(gf)をテープ幅(cm)で除した値を破断強度とする。
【0075】
[実施例1]
(非水電解質の作製)
ECとDMCとEMCとを30:35:35の体積比で混合した溶媒にLiPF6を1.0Mの濃度で溶解させた。これに、さらに添加剤としてオルトフルオロトルエンを5.0質量%となるように添加し、非水電解質を得た。
【0076】
(非水電解質二次電池の作製)
正極活物質としてLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2を90質量部、導電助剤としてアセチレンブラックを5質量部、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンを5質量部含む正極を作製した。また、負極活物質としてグラファイトを95質量部、バインダーとしてスチレンブタジエンゴム(SBR)を3質量部、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を2質量部含む負極を作製した。次いで、一方の面に耐熱層(平均厚さ5μm)を形成したポリエチレン製微多孔膜からなるセパレータを用意した。この耐熱層は、主成分としてアルミナ(Al2O3)粒子を含有する。また、上記方法によって測定した耐熱層の破断強度は50gf/cmであった。上記正極、耐熱層、セパレータ及び負極がこの順となるように積層し、扁平形状に巻回することにより電極体を得た。この電極体に正極端子及び負極端子を電気的に接続し、アルミニウム製の角型電槽缶に収納した。この容器(角型電槽缶)内部に上記非水電解質を注入した後、封口し、非水電解質蓄電素子(リチウムイオン二次電池)を得た。また、電池の公称容量は900mAhとした。
【0077】
[実施例2~4、比較例1]
破断強度を370gf/cm(実施例2)、440gf/cm(実施例3)、460gf/cm(実施例4)及び480gf/cm超(比較例1)に調整した耐熱層が一方の面に形成されたセパレータを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2~4及び比較例1の非水電解質蓄電素子を得た。
【0078】
[評価]
(充放電サイクル試験)
得られた各非水電解質蓄電素子について、25℃において充電上限電圧を4.2V、放電終止電圧を2.75Vとし、充電電流及び放電電流を1CmAとして初期充放電を行った。次いで、45℃の温度に設定した恒温槽内において充電電流1CmA、充電上限電圧4.20V、トータル充電時間3時間で定電流定電圧充電を行い、その後、10分間の休止期間を設けた。その後、放電電流1CmA、放電終止電圧2.75Vで定電流放電を行い、その後、10分間の休止期間を設けた。この充放電を、45℃の温度に設定した恒温槽内において700サイクル実施した。この充放電サイクル試験における1サイクル目の放電容量に対する700サイクル後の放電容量の比を放電容量維持率として求めた。実施例1の放電容量維持率に対する各実施例の放電容量維持率を百分率で表したものを表1に示す。
【0079】
また、設定温度を45℃から60℃に変更したこと以外は同様にして、充放電サイクル試験を行い、放電容量維持率を求めた。同様に、実施例1の放電容量維持率に対する各実施例の放電容量維持率を百分率で表したものを表1に示す。なお、表1中の「‐」は、試験を行っていないことを示す。
【0080】
【0081】
上記表1に示されるように、破断強度が460gf/cm以下である耐熱層を備える実施例1~4(実施例3、4は参考例)の非水電解質蓄電素子は、放電容量維持率が高い、すなわち寿命特性に優れることがわかる。さらに、破断強度が400gf/cm以下である耐熱層を備える実施例1、2の非水電解質蓄電素子においては、比較的高温(60℃)における環境下での寿命特性も特に優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器、自動車等の電源として使用される非水電解質蓄電素子等に適用できる。
【0083】
(符号の説明)
1 非水電解質二次電池
2 電極体
3 電池容器
4 正極端子
4’ 正極リード
5 負極端子
5’ 負極リード
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置