(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20220127BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20220127BHJP
G03B 21/16 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
G03B21/16
(21)【出願番号】P 2018568131
(86)(22)【出願日】2018-02-06
(86)【国際出願番号】 JP2018004045
(87)【国際公開番号】W WO2018150957
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2020-12-18
(31)【優先権主張番号】P 2017027449
(32)【優先日】2017-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山谷 修一
【審査官】本田 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-164922(JP,A)
【文献】特開2016-051802(JP,A)
【文献】特開2011-171535(JP,A)
【文献】国際公開第2016/063540(WO,A1)
【文献】特開2017-125885(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0161354(US,A1)
【文献】国際公開第2016/031212(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01 - 27/02
B60K 35/00
G03B 21/16
H01S 5/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる波長の光を発する複数の光源が発した光を合成した合成光を出力する合成光出力部と、
前記光源が発した熱を放散する放熱器と、
を備え、前記合成光によって虚像を表示するヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記複数の光源は、第1動作保証温度帯域で動作する第1光源と、前記第1動作保証温度帯域よりも上限が高い第2動作保証温帯域で動作する第2光源と、を有し、
前記第1光源は、前記第2光源に比べ前記放熱器上の放熱性の高い箇所に設けられ
、
前記放熱器は、高熱伝導性樹脂で射出成形され、前記第1光源と前記第2光源が配置される箇所の間にウェルドラインが形成される、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源が発する熱を放散する放熱器を有するヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のヘッドアップディスプレイ装置として、特許文献1に開示されたものがある。このヘッドアップディスプレイ装置は、異なる波長の光を発する複数の光源が発した光を合成して虚像を表示するものである。複数の光源は共通の回路基板の表面に設けられ、この回路基板の背面に放熱器が当接して光源が発した熱を放熱している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、異なる波長の光を発する複数の光源それぞれの動作保証温度が異なる場合においては、各光源が発した熱が回路基板と放熱器を介して互いに熱交換されるため、動作保証温度が低い光源に合わせて動作させなければならず、各光源の性能を充分に活用することができなかった。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、異なる波長の光を発する複数の光源を有するヘッドアップディスプレイ装置において、光源が発する熱を効率的に放熱させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置は、
異なる波長の光を発する複数の光源が発した光を合成した合成光を出力する合成光出力部と、
前記光源が発した熱を放散する放熱器と、
を備え、前記合成光によって虚像を表示するヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記複数の光源は、第1動作保証温度帯域で動作する第1光源と、前記第1動作保証温度帯域よりも上限が高い第2動作保証温帯域で動作する第2光源と、を有し、
前記第1光源は、前記第2光源に比べ前記放熱器上の放熱性の高い箇所に設けられ、
前記放熱器は、高熱伝導性樹脂で射出成形され、前記第1光源と前記第2光源が配置される箇所の間にウェルドラインが形成される、
ように構成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、異なる波長の光を発する複数の光源が発する熱を効率的に放熱できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態であるヘッドアップディスプレイ装置の構成を示す図。
【
図2】同ヘッドアップディスプレイ装置の合成光出力部の構成を示す図。
【
図3】同ヘッドアップディスプレイ装置の電気的構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0011】
本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置1は、
図1に示すように、合成光出力部10と、走査部20と、透過スクリーン30と、平面鏡40と、凹面鏡50と、鏡駆動部51と、筐体60と、透光部61と、から構成される。
【0012】
合成光出力部10は、光源11と、集光光学部12と、合波部13と、回路基板14と、放熱器15と、温度検出部16と、制御部17と、から構成される。合成光出力部10は、光源11が発した光を合成した合成光Cを走査部20に出力する。
【0013】
走査部20は、制御部17からの駆動信号に基づき、水平方向と垂直方向に2次元走査するように振動するMEMS鏡である。走査部20は、合成光Cを透過スクリーン30の背面に向けて反射する。
【0014】
透過スクリーン30は、ホログラフィティックディフューザ、マイクロレンズアレイ、または、偏光板から構成されるスクリーンである。透過スクリーン30は、走査部20が反射した合成光Cを背面から受光し、透過拡散させて前面側に表示画像Mを表示する。
【0015】
平面鏡40は、透過スクリーン30の前面に表示された表示画像Mの表示光Lを凹面鏡50に向けて反射する鏡である。このように、表示光Lの光を折り返すことにより、光路長が長く確保でき、虚像がより遠方に表示される。
【0016】
凹面鏡50は、平面鏡40から反射された表示光Lを、透光部61を介して、車両の風防ガラスに向けて反射する鏡である。風防ガラスに出射された表示光Lは、虚像として風防ガラス前方に表示される。凹面鏡50により表示画像Mは拡大され、虚像をより大きく表示される。
【0017】
鏡駆動部51は、ステッピングモータなどの電動機の回転により凹面鏡50を回転させる駆動部である。鏡駆動部51は、制御部17からの駆動信号に基づいて、凹面鏡50を所定の角度に回転させる。鏡駆動部51により凹面鏡50を回転させることで、表示光Lが照射される車両の風防ガラスの位置を変更することができ、車両の搭乗者の視線の高さ(アイポイント)に合わせて虚像の表示位置を調整できる。
【0018】
透光部61は、アクリル樹脂などの透光性樹脂製の板であり、不透過な合成樹脂製の筐体60に形成された開口部(出射口)を覆うように嵌合されている。
【0019】
光源11は、半導体光源である。光源11は、アンバー色の光を発するアンバー光源11aと、青色の光を発する青光源11bと、緑色の光を発する緑光源11cと、から構成される。
【0020】
アンバー光源11aは、-40~100℃の動作保証温度帯域(第1動作保証温度帯域)で動作し、617nmの波長の光を発する。アンバー光源11aは、Al(アルミニウム),Ga(ガリウム),In(インジウム)のIII族元素と、P(リン)のV族元素を用いたIII-V族半導体光源である。
【0021】
青光源11bは、-40~125℃の動作保証温度帯域(第2動作保証帯域)で動作し、459nmの波長の光を発する。青光源11bは、Thin-Film構造のGaN(窒化ガリウム)半導体光源である。
【0022】
緑光源11cは、第2動作保証帯域で動作し、500~600nmの波長の光を発する。緑光源11cは、Thin-Film構造のGaN(窒化ガリウム)半導体光源である。
【0023】
集光光学部12は、レンズなどを用いて、各光源が発する光のスポット径を小さくして収束光にする。集光光学部12は、アンバー光源11aの光を収束する第1収束光学部12aと、青光源11bの光を収束する第2収束光学部12bと、緑光源11cの光を収束する第3収束光学部12cと、から構成される。
【0024】
合波部13は、特定の波長帯域の光を反射し、その他の波長の光は透過するダイクロイック鏡である。合波部13は、アンバー光源11aの光を反射する第1合波部13aと、アンバー光源11aが発する光を透過し青光源11bの光を反射する第2合波部13bと、アンバー光源11aと青光源11bの光を透過し緑光源が発する光を反射する第3合波部13cと、から構成される。
【0025】
回路基板14は、表面に光源11が実装されたアルミナ基板から構成されるリジット基板である。回路基板14は、光源11が実装されていない裏面が、放熱器15と熱伝導シートを介して接しており、光源11が発した熱を回路基板14と熱伝導シートを介して放熱器15に放熱する。
【0026】
放熱器15は、セラミックスフィラーなどの熱伝導性フィラーを添加した樹脂(高熱伝導樹脂)を射出成形して成形される。この高熱伝導樹脂は、熱伝導率1.0[W/mK:ワット毎メートル毎ケルビン]以上の熱伝導率を有し、ポリプロピレンやABS樹脂などの一般的な樹脂の熱伝導率に比べ高い。
【0027】
放熱器15は、アンバー光源11aに対応する箇所15aと、青光源11bに対応する箇所15b、緑光源11cに対応する箇所15cと、の間に射出された樹脂が合流するウエルドラインを形成している。このウエルドラインにより、各箇所15a,15b,15c同士の熱交換がされにくくなり、各光源11a,11b,11cが発した熱が他の光源に放熱器15を介して伝わることが抑制される。
【0028】
また、第1動作保証温度帯域で動作するアンバー光源11aに対応する箇所15aの体積は、第2動作保証温度帯域で動作する青光源11bや緑光源11cに対応する箇所11b,11cに対し大きく、アンバー光源11aは他の光源11b,11cに比べ放熱性の高い箇所に設けられている。
【0029】
温度検出部16は、サーミスタなどの温度を検出する温度センサである。温度検出部16は、光源11付近の温度を検出して制御部17に出力する。制御部17は、入力された温度により光源11が所定の温度以上となった場合に、光源11が破損しないように、光源11を減光あるいは消灯させる。
【0030】
制御部17は、マイクロコントローラ、FPGA(Field-Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などから構成される。制御部17は、車両の走行速度などの各種車両情報を、例えばCAN(Controller Area Network)などの通信規約に準じた通信路2から取得する。制御部17は、取得した各種車両情報を表示画像Mとして表示させる。
【0031】
以上のように、本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置1は、異なる波長の光を発する複数の光源11が発した光を合成した合成光Cを出力する合成光出力部10と、光源11が発した熱を放散する放熱器15と、を備え、合成光Cによって虚像を表示するヘッドアップディスプレイ装置であって、複数の光源11は、第1動作保証温度帯域で動作する第1光源11aと、第1動作保証温度帯域よりも上限が高い第2動作保証温帯域で動作する第2光源11b,11cと、を有し、第1光源11aは、第2光源11b,11cに比べ放熱器15上の放熱性の高い箇所15aに設けられる。
このように構成することで、異なる波長の光を発する複数の光源が発する熱を効率的に放熱できる。
【0032】
また、本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置1の放熱器15は、高熱伝導性樹脂で射出成形され、第1光源11aと第2光源11b,11cが配置される箇所(15aと15b)の間にウェルドラインが形成される。
このように構成することで、第2動作保証温帯域で動作する第2光源11bが発した熱が第1動作保証温度帯域で動作する第1光源11aに伝わることを抑制でき、異なる波長の光を発する複数の光源が発する熱を効率的に放熱できる。
【0033】
以上、本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置1を説明した。本発明は上述した実施形態(図面の内容も含む)によって限定されず、本発明の主旨に従う範囲で上述した実施形態に変更(構成要素の削除も含む)をしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、車両に搭載されるヘッドアップディスプレイ装置に好適である。
【符号の説明】
【0035】
1…ヘッドアップディスプレイ装置、2…通信路、10…合成光出力部、11…光源、11a…アンバー光源(第1光源)、11b…青光源(第2光源)、11c…緑光源(第2光源)、12…集光光学部、13…合波部、14…回路基板、15…放熱器、16…温度検出部、17…制御部、20…走査部、30…透過スクリーン、40…平面鏡、50…凹面鏡、51…凹面鏡駆動部、60…筐体、61…透光部