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特許7015461ミラーフィルム、反射光学素子、反射光学素子の成形方法及びミラーフィルムの製造方法
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  • 特許-ミラーフィルム、反射光学素子、反射光学素子の成形方法及びミラーフィルムの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】ミラーフィルム、反射光学素子、反射光学素子の成形方法及びミラーフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/08 20060101AFI20220127BHJP
【FI】
G02B5/08 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017081193
(22)【出願日】2017-04-17
(65)【公開番号】P2018180358
(43)【公開日】2018-11-15
【審査請求日】2020-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107272
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 敬二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109140
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 研一
(72)【発明者】
【氏名】古田 勝己
(72)【発明者】
【氏名】森 基
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-214790(JP,A)
【文献】国際公開第2016/027733(WO,A1)
【文献】特開平11-339683(JP,A)
【文献】特開2012-116219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/08 - 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状の基材と、前記基材上に形成された反射層とを有するミラーフィルムであって、
前記反射層は、厚さ50nm~300nmである銀層を有しており、前記銀層の厚さ方向に沿って断面をとったとき、前記断面における表面側又は裏面側において、前記銀層の隣接する粒界同士の間隔は平均100nm以上であり、
前記反射層が前記基材上に形成された前記ミラーフィルムを延伸率10%で引き延ばしたときの前記反射層の反射率が90%以上であるミラーフィルム。
【請求項2】
前記反射層の上に、保護層を形成した請求項1に記載のミラーフィルム。
【請求項3】
前記基材と前記銀層との間に、下地層を形成した請求項1又は2に記載のミラーフィルム。
【請求項4】
前記基材は、PC,PET,COPのいずれかを素材としてフィルム状に形成されている請求項1~3のいずれかに記載のミラーフィルム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のミラーフィルムを樹脂成形品の表面に貼り付けてなる反射光学素子。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のミラーフィルムを金型内に配置して、溶融した樹脂を前記ミラーフィルムに接するように前記金型内に射出して、前記樹脂を固化させることで前記ミラーフィルムと前記樹脂とを一体化する反射光学素子の成形方法。
【請求項7】
処理空間内に窒素を流入させつつ、前記処理空間における内部圧力が窒素流入状態で10 -2 Pa以上である状態で、真空蒸着法を用いて金属分子を基材に衝突させることにより、前記基材上に金属層を形成するミラーフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記内部圧力が、窒素流入状態で10 -1 Pa以上である請求項7に記載のミラーフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラーフィルム、反射光学素子、反射光学素子の成形方法及びミラーフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザービームプリンタや複合機等に用いられているfθミラーや折返しミラー、ヘッドアップディスプレイやプロジェクター用の大型ミラーなどの比較的大型の反射光学素子は、軽量化、低コスト化への対応等の理由から、従来のガラス製から樹脂成形品への転換が行われ、既に実用化されている。これらの反射光学素子については、一般的には金型の高精度の鏡面を射出成形などにより転写して得られた成形品に蒸着等の成膜プロセスを介して、所定の金属反射面を形成している。
【0003】
この蒸着等の成膜プロセスは、所定の環境に維持された成膜室にてバッチ処理により行われるが、成膜室の大きさが制限されることから、大型の成形品に大面積にわたって成膜を行う場合、1バッチあたりに成膜できる成形品の個数が少なくなり、成膜コストが顕著に増大するという課題がある。このような課題に対して、金属シートや、金属薄膜を形成したフィルムなどをプラスチック成形品と複合化することにより、より低コストで反射光学素子を形成する試みがある。
【0004】
ところで、このような複合化による反射光学素子の課題の一つに、高反射率をいかに確保するかということがある。上述したような用途の大型光学ミラーに求められる反射率は、可視光領域で90%以上を要求されるものもある。
【0005】
これに対し、高い反射率を得る手法として、プラスチックフィルムに銀やアルミニウムを蒸着して反射層を形成する技術も提案されている。しかるに、高反射率を有する反射層をフィルム上に成膜したミラーフィルムの場合、延伸を行うと反射層の表面に微細なクラックが入り反射率が低下してしまうという問題がある。特に、インサート成形を用いて射出成形と同時にミラーフィルムの貼付を行って、3次元的に曲率を有する大型光学ミラー形状の成形品にミラーフィルムを一体化するような工程では、インサートするミラーフィルムに高い延伸性が求められるため、クラックによる反射層の反射率低下が大きな問題となっている。
【0006】
かかる問題に対し、特許文献1においては、スパッタ成膜法において支持基板と反射層の界面に所定量の窒素が添加されており、支持基板と反射層の密着性を得ることで水分の透水による剥離を防ぐことが出来るとされる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-190611号公報
【文献】特開2003-272236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に開示された反射層はスパッタ成膜法で形成されており、その反射層の膜厚は10nm以上、50nm以下であり、支持基板と反射層の密着性を得ることで水分の透水による剥離を防ぐことを目的としている。しかるに、スパッタ成膜は銀分子がプラズマイオン化されるので、窒素ガスと反応しやすく窒化銀になりやすく、それにより粒界の間隔も狭まる。よって、かかる技術を樹脂成形品と複合化される反射フィルムに転用しても、樹脂成形品と複合化される際に生じる曲げに対してクラックが生じる恐れがある。
【0009】
一方、特許文献2には、スパッタ成膜において窒素流量を上げていくと粒径が小さくなることが記載されている。上述したように、スパッタ成膜では銀分子がプラズマイオン化されるので、窒素ガスと反応しやすく窒化銀になりやすく、それにより粒界の間隔も詰まる。よって、かかる技術を樹脂成形品と複合化される反射フィルムに転用しても、樹脂成形品と複合化される際に生じる曲げに対してクラックが更に増大することとなる。
【0010】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、樹脂成形品の形状にかかわらず複合化してもクラックなどが生じにくいミラーフィルム、ミラーフィルムを樹脂成形品と複合化した反射光学素子、反射光学素子の成形方法、及びミラーフィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のミラーフィルムは、フィルム状の基材と、前記基材上に形成された反射層とを有するミラーフィルムであって、
前記反射層は、厚さ50nm~300nmである銀層を有しており、前記銀層の厚さ方向に沿って断面をとったとき、前記断面における表面側又は裏面側において、前記銀層の隣接する粒界同士の間隔は平均100nm以上であり、
前記反射層が前記基材上に形成された前記ミラーフィルムを延伸率10%で引き延ばしたときの前記反射層の反射率が90%以上である。
【0012】
本発明のミラーフィルムの製造方法は、処理空間内に窒素を流入させつつ、前記処理空間における内部圧力が窒素流入状態で10 -2 Pa以上である状態で、真空蒸着法を用いて金属分子を基材に衝突させることにより、前記基材上に金属層を形成するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、樹脂成形品の形状にかかわらず複合化してもクラックなどが生じにくいミラーフィルム、ミラーフィルムを樹脂成形品と複合化した反射光学素子、反射光学素子の成形方法、及びミラーフィルムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施の形態にかかるミラーフィルムを製造するために用いるロールトゥロール方式の真空蒸着装置の概略図である。
図2】本実施の形態にかかるミラーフィルムを製造するために用いるロールコータ装置の概略図である。
図3】反射光学素子のインサート成形工程を示す図である。
図4】(a)は比較例にかかるミラーフィルムの厚さ方向における断面のSEM(走査電子顕微鏡)画像であり、(b)は、実施例にかかるミラーフィルムの厚さ方向における断面のSEM画像である。
図5】(a)は、図4(a)のSEM画像を模式化した図であり、(b)は、図4(b)のSEM画像を模式化した図である。
図6】(a)は、比較例にかかるミラーフィルムの反射特性を示すグラフであり、(b)は、実施例にかかるミラーフィルムの反射特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施の形態にかかるミラーフィルムを製造するために用いるロールトゥロール方式の真空蒸着装置の概略図である。図1のロールトゥロール方式の真空蒸着装置は、筐体2内の密閉された処理空間内に配置されており、蒸着材料としての銀分子又はアルミニウム分子を含む蒸着フラックス3を発生するための蒸発源1と、プラスチックフィルム(基材)8を支持し、その上に蒸着フラックス3を受けて薄膜を形成するための成膜ローラ4と、蒸発源1と成膜ローラ4の間に蒸着フラックス3の一部を遮るための遮蔽板6と、を備えている。筐体2は、N2発生源7に接続され、ここから内部へとN2ガスが流入するようになっている。
【0016】
本真空蒸着装置には、図示していない巻き出しロールと巻き取りロールが備えられている。すなわち、図1で左側のテンションロール5の更に先には幾つかのロールを介して巻き出しロールが備えられており、巻き出しロールには処理前のプラスチックフィルム8が巻き付けられている。プラスチックフィルム8としては,例えばPC、PET、COP材料を用いることができるが、それに限られない。また図1で右側のテンションロール5の更に先には幾つかのロールを介して巻き取りロールが備えられており、巻き取りロールには処理後のプラスチックフィルム8が巻き付けられる。
【0017】
成膜ローラ4は、公知の温度調整手段により温度制御されている。遮蔽板6は、蒸発源1から発せられる蒸着材料の蒸着フラックス3を遮る機能を有する。一対の遮蔽板6が、成膜ローラ4と蒸発源1の間に、成膜ローラ4に近接させて設置され、その間に開口部9を形成している。
【0018】
本真空蒸着装置の動作を説明する。図1において、筐体2の内部の真空度は10-2Pa以上、好ましくは10-1Pa(すなわち、従来の真空蒸着法に比べて窒素流入分だけ大気圧に近くなる)であり、また窒素流入状態での成膜圧力が10-1Paとなっている。不図示の巻き出しローラから連続的に供給されるプラスチックフィルム8は、成膜ロー4の外周に巻き付いた後、その露出した表面が開口部9を通過する際に、蒸発源1から開口部9を介して飛散してきた銀分子又はアルミニウム分子が、成膜レート1Å/sにて付着することで、厚さ50nm~300nm(より好ましくは50nm~200nm)の金属層(銀層又はアルミニウム層)が成膜される。
【0019】
成膜ロー4にて片面に金属層を成膜したプラスチックフィルム8は、成膜ロー4の外周から離脱した後、不図示の巻き取りローラに巻き取られ、次工程に搬送されるようになっている。このように本実施の形態にかかるロールトゥロール方式の真空蒸着装置を用いることで、プラスチックフィルム8の片面に連続的に金属層を成膜できる。
【0020】
本実施の形態によれば、特許文献1のように透水防止に対する密着性確保を目的とせず、銀層又はアルミニウム層の粒界を制御することで、面方向への延伸時の微細クラックを抑えることが出来る。「粒界」とは、膜成長の過程で生ずる金属粒子間の空壁をいう。窒素ガス雰囲気下で成膜することで、単位面積あたりの粒界が少なくなる傾向があり、特に膜断面の厚み方向で粒界が少なくなるから、顕著な横方向への延伸に対して堅牢な膜質となる。更に銀層又はアルミニウム層の膜厚を50nm~300nmとしているので、高い反射率を確保することができる。
【0021】
特に、真空蒸着中に窒素を流入することで粒界を抑えることが出来、粒状の粒子では無く連続膜に近づけることができる。特許文献2に開示されたようなスパッタ成膜法では、銀又はアルミニウムがプラズマイオン化されるので窒素ガスと反応しやすく窒化銀になりやすい。これに対し、本実施の形態で用いる真空蒸着法では、基材に向かって金属分子の塊で飛んでいくので窒素ガスと化学的な反応は起きにくく、延伸に有利な粒界を抑えた膜質になるのである。
【0022】
図2は、本実施の形態にかかるミラーフィルムを製造するために用いるロールコータ装置の概略図である。図2に示すロールコータ装置は、グラビアロール11と、ピックアップロール12と、貯留槽13とを有する。貯留槽13内には、硬化剤にイソシアネート樹脂を用い、主剤にポリエステルやアクリル系樹脂を用いた混合液14が貯留されている。混合液14は、塗布後に乾燥させることでポリウレタン樹脂の被膜となる。「ポリウレタン樹脂」とは、ウレタン結合を分子内に有する高分子化合物のことであり、通常ポリオールとイソシアネートの反応により作製される。ポリオールとしては、ポリカーボネートポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、アクリルポリオール類が挙げられ、これらの化合物は単独で用いても、複数種用いてもよい。
【0023】
本ロールコータ装置にも、図示していない巻き出しロールと巻き取りロールが備えられている。すなわち、図2で左側になる上流側に巻き出しロールが備えられており、巻き出しロールには片面(図2で下面)に金属層を成膜されたプラスチックフィルム8が巻き付けられている。また図2で右側になる下流側には巻き取りロールが備えられており、巻き取りロールには処理後のプラスチックフィルム8が巻き付けられる。
【0024】
図2において,貯留槽13内に貯留された混合液14は、混合液14内に浸漬されるゴム製のピックアップロール12を介してグラビアロール11に転写され、グラビアロール11によって、巻き出しロールから連続的に供給されたプラスチックフィルム8の金属層上に所望の厚さで塗布される。その後、プラスチックフィルム8は乾燥工程を経て、金属層の上にポリウレタン樹脂を保護層として被覆させたプラスチックフィルム8,すなわちミラーフィルムが得られる。かかるプラスチックフィルム8は、不図示の巻き取りローラに巻き取られ、更に所定のサイズにカットされた後、成形品と複合化される次工程へと搬送されるようになっている。尚、ポリウレタン樹脂を形成する工程は、以上に限られず、グラビアコーターやリバースコーター、コンマコーターなどのロールコーター法やスロットダイなどによるダイコーター法等、種々の工程により形成することができる。
【0025】
変形例として、プラスチックフィルム8に下地層を設ける場合、プラスチックフィルム8の片面に対して、図2のようなロールコータ装置を用いてポリウレタン樹脂の下地層を形成し、その後、図1のようなロールトゥロール方式の真空蒸着装置を用いて金属層を形成し、再び図2のようなロールコータ装置を用いてポリウレタン樹脂の保護層を形成して、ミラーフィルムを製造することができる。尚、プラスチックフィルム8に下地層を設けるか否かにかかわらず、金属層を設けた片面とは反対側の面に接着層を設けても良い。接着層を設けることで、成形品にプラスチックフィルム8を貼り付ける際に強固な接着力を確保できる。
【0026】
図3は、反射光学素子のインサート成形工程を示す図である。インサート成形を用いた反射光学素子の製造方法について、図3を参照して説明する。図3において、金型21は、凸曲面状の転写面21aと、一端が転写面21aに開口する吸気孔21bと、転写面21aから突き出し可能に配置されたイジェクトピン21cとを有している。吸気孔21bの他端は、外部の負圧機構(不図示)に接続されている。又、イジェクトピン21cは、駆動機構21dにより突き出し又は引き込みが可能となっている。一方、金型22は、転写面21aに対向して凹曲面状の転写面22aを有している。
【0027】
まず、前工程として、上述のように銀層とポリウレタン樹脂を形成したプラスチックフィルム8を所定サイズに裁断する。更に、図3(a)に示すように、金型21,22を離間させた状態で、搬送装置23を用いて,裁断したプラスチックフィルム8を搬送し、銀層と保護層を設けた側を転写面21aに接近させる。このとき、負圧機構により吸気孔21b内を負圧にすると、プラスチックフィルム8は大気圧により曲面状の転写面21aに対して密着する。この際に、銀層及びポリウレタン樹脂の保護層は曲げられるが、割れなどが生じることがない。更に、搬送装置23は、プラスチックフィルム8を解放させた後に金型間から退避させる。
【0028】
その後、図3(b)に示すように、図21,22を互いに接近させて型締めを行い、転写面21a(プラスチックフィルム8)と転写面22aの間に形成されたキャビティ内に、不図示のゲートを介して溶融した樹脂を射出する。射出した樹脂が固化することで、プラスチックフィルム8と一体化することとなる。この際に、銀層及びポリウレタン樹脂の保護層は加熱されるが、熱膨張などで割れやヒビなどが生じることがない。
【0029】
その後、図3(c)に示すように、金型21,22を離間して型開きし、更に図3(d)に示すように駆動機構21dを用いてイジェクトピン21cを突き出すことで、転写面21aから成形品を取り出すことができる。かかる成形品は、プラスチックフィルム8をインサート成形することにより、低コストながらも高反射率を備えた高精度な反射面を有する反射光学素子OEとなる。
【0030】
本発明者らは、ミラーフィルムの比較例と実施例を作成した。図4(a)は比較例にかかるミラーフィルムの厚さ方向における断面のSEM(走査電子顕微鏡)画像であり、図4(b)は、実施例にかかるミラーフィルムの厚さ方向における断面のSEM画像であり、それぞれ表面を上面とし、裏面を下面とする。ここでは比較例及び実施例とも、真空蒸着法で基材上に厚さ150nmの銀層を形成したが、比較例では窒素ガスを流入せず真空度10-3Paで蒸着を行い、実施例では成膜圧力10-1Paで窒素ガスを導入しつつ蒸着を行った。それ以外の成膜条件は同じである。
【0031】
図5(a)は、図4(a)のSEM画像を模式化した図であり、図5(b)は、図4(b)のSEM画像を模式化した図であり、金属層内の粒界を線で示している。図5(a)に示す比較例では、銀層の表面又は裏面上での結晶粒界の平均間隔が50nm以下であるのに対し、図5(b)に示す実施例では、銀層の表面又は裏面上での結晶粒界の平均間隔が150nm以上であって、比較例の結晶粒界の平均間隔よりも大きくなっている。窒素ガスを流入させつつ真空蒸着法で金属層を成膜することで、結晶粒界の平均間隔を100nm以上とすることができる。これにより、ミラーフィルム曲げ時のクラック発生による反射率低下を抑制できる。
【0032】
本発明者らは、比較例と実施例のミラーフィルムを、延伸率2.5%、5%、7.5%、10%、12.5%、20%で引き延ばした際の反射率の変化について検討した。図6は、その結果を示すグラフである。図6(a)に示す比較例では、延伸率10%では波長530nm未満で反射率が90%未満となり、可視光を反射するミラーフィルムとしては反射性能が不十分であることが分かる。
【0033】
これに対し、図6(b)に示す実施例では、延伸率10%では波長400nm以上の可視光域で反射率が90%以上となり、延伸率12.5%でも波長410nm以上で反射率が90%以上となり、十分実用に供し得ることが分かる。すなわち、窒素ガス雰囲気下で銀又はアルミニウムを成膜することで、インサート成形時に10%程度延伸しても微細クラックが発生又は拡大しづらいため、反射率の劣化を抑えることができるミラーフィルムを得ることができる。
【0034】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明はこれに限られない。例えば、ミラーフィルムと成形品との複合化は、インサート成形に限られず、ミラーフィルムを樹脂成形品に接着する場合も含む。又、本発明の反射光学素子は、レーザービームプリンタや複合機等に用いられているfθミラーや折返しミラー、ヘッドアップディスプレイやプロジェクター用の大型ミラー等に適用できる。
【符号の説明】
【0035】
1 蒸発源
2 筐体
3 蒸着フラックス
4 成膜ローラ
5 テンションロール
6 遮蔽板
7 N2発生源
8 プラスチックフィルム
9 開口部
11 グラビアロール
12 ピックアップロール
13 貯留槽
13 貯留部
14 混合液
21 金型
21a 転写面
21b 吸気孔
21c イジェクトピン
21d 駆動機構
22 金型
22a 転写面
23 搬送装置
OE 反射光学素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6