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  • 特許-車両の収納ボックス 図1
  • 特許-車両の収納ボックス 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】車両の収納ボックス
(51)【国際特許分類】
   B60R 7/06 20060101AFI20220207BHJP
【FI】
B60R7/06 G
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017179591
(22)【出願日】2017-09-19
(65)【公開番号】P2019055618
(43)【公開日】2019-04-11
【審査請求日】2020-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】新留 悠規
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許出願公開第03007706(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の前方で起立するパネル部材のうち助手席の前方の領域に形成されて前後に貫通する開口と、
上下方向と交叉する下面部を有し、前記パネル部材の前方に配置され、前記開口を介して後方から収納物を収納可能な内部空間を区画する有底筒状のボックス本体部と、を備え、
前記ボックス本体部の前記下面部の後端縁は、車幅方向に延び、
前記開口の下方を区画する開口下端縁は、前記ボックス本体部の前記下面部の前記後端縁以上の高さ位置で車幅方向に延び、
前記開口の車幅方向の一側の端部では前記ボックス本体部の前記下面部の前記後端縁と前記開口下端縁との間に上下の段差が設けられ、前記開口の車幅方向の他側の端部では前記開口下端縁が前記下面部の前記後端縁と略同じ高さ位置に配置されるように、記開口下端縁は、前記下面部の前記後端縁に対して車幅方向の前記一側から前記他側へ向かって下方へ傾斜する
ことを特徴とする車両の収納ボックス。
【請求項2】
請求項1に記載の収納ボックスであって、
前記開口下端縁は、車幅方向の外側から内側へ向かって下方へ傾斜する
ことを特徴とする車両の収納ボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の収納ボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両における物入れ装置が記載されている。この車両のインスツルメントパネルは、一側部(左側部)の上、下部を構成する上、下物入れ装置と、これら上、下物入れ装置の間の中間部ガーニッシュとを備えている。上物入れ装置は、内部が収納物用の物入れ空間とされる物入れ部と、物入れ空間を車室に連通させる物入れ開口と、上記物入れ開口を車室側から開閉可能に閉じる蓋体と、蓋体の下部を物入れ開口の下部開口縁部に枢支させる左右一対の枢支具と、蓋体の上部を上記物入れ開口の上部開口縁部に解除可能にロックするロック具とを備えている。なお、同公報には、物入れ開口の下側の開口縁よりも下方に物入れ空間が拡がっている状態が図示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-241777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の物入れ装置(収納ボックス)のように、物入れ開口の下側の開口縁よりも下方に物入れ空間(内部空間)が拡がっている場合には、物入れ部の底面が物入れ開口の下側の開口縁よりも下方に配置されるので、内部空間の後下側の領域(物入れ開口の下側の開口縁の前下方の領域)の視認性が悪くなる可能性がある。一方、物入れ部の底面を物入れ開口の下側の開口縁と略同じ高さ位置に配置すると、蓋体を開放した際に、収納物が物入れ開口から後方へ飛び出し易くなってしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、収納物の飛び出しを抑え、且つ内部空間の視認性を確保することが可能な車両の収納ボックスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様の車両の収納ボックスは、開口とボックス本体部とを備える。開口は、車室の前方で起立するパネル部材のうち助手席の前方の領域に形成されて前後に貫通する。ボックス本体部は、有底筒状のボックス本体部であり、上下方向と交叉する下面部を有し、パネル部材の前方に配置され、開口を介して後方から収納物を収納可能な内部空間を区画する。ボックス本体部の下面部の後端縁は、車幅方向に延びる。開口の下方を区画する開口下端縁は、ボックス本体部の下面部の後端縁以上の高さ位置で車幅方向に延びる。開口の車幅方向の一側の端部ではボックス本体部の下面部の後端縁と開口下端縁との間に上下の段差が設けられ、開口の車幅方向の他側の端部では開口下端縁が下面部の後端縁と略同じ高さ位置に配置されるように、開口の開口下端縁は、下面部の後端縁に対して車幅方向の一側から他側へ向かって下方へ傾斜する。
【0007】
上記構成では、開口の開口下端縁が、ボックス本体部の下面部の後端縁以上の高さ位置で、下面部の後端縁に対して車幅方向の一側から他側へ向かって下方へ傾斜する。すなわち、ボックス本体部の下面部の後端縁のうち少なくとも上記一側の端部は、開口下端縁よりも下方に配置される。このため、内部空間の上記一側に収納された収納物が後方へ移動すると、収納物はボックス本体部の下面部と開口下端縁との間の段差部分に当接するので、開口からの収納物の飛び出しを抑えることができる。
【0008】
また、開口の開口下端縁が、車幅方向の一側から他側へ向かって下方へ傾斜するので、車幅方向の一側から他側へ向かって略水平に延びる場合に比べて、開口の上記他側が下方へ拡がっている。このように開口が下方へ拡がっているので、その分だけ後方(特に開口よりも上記他側の後方)からのボックス本体部の内部空間の視認性が向上する。
【0009】
本発明の第2の態様の車両の収納ボックスは、上記第1の態様の収納ボックスであって、開口下端縁が、車幅方向の外側から内側へ向かって下方へ傾斜する。
【0010】
上記構成では、開口下端縁は、車幅方向の外側から内側へ向かって下方へ傾斜するので、開口よりも車幅方向内側の後方からのボックス本体部の内部空間の視認性が向上する。開口は、パネル部材のうち助手席の前方の領域に形成されるので、運転席側からのボックス本体部の内部空間の視認性が向上する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、収納物の飛び出しを抑え、且つ内部空間の視認性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る収納ボックスを備える車両のインストルメントパネルの概略斜視図である。
図2】収納ボックスの後面図である。
図3図1のIII-III矢視断面図である。
図4図1のIV-IV矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において、FRは車両の前方を、UPは上方を、INは車幅方向内側をそれぞれ示す。また、以下の説明において、左右方向は車両前方を向いた状態での左右方向を意味する。
【0014】
図1に示すように、車両1の車室3の前方には、車幅方向に亘って延びるインストルメントパネル2が設けられる。インストルメントパネル2は、上下方向と交叉するインパネ上面部2aと、前後方向と交叉して起立するインパネ後面部(パネル部材)2bとを有する。インストルメントパネル2のインパネ後面部2bのうち助手席側(本実施形態では、左側)の前方には、上下2つの収納ボックス10,11が設けられる。上側の収納ボックス10は、インパネ後面部2bの上部に配置され、下側の収納ボックス11は、上側の収納ボックス10から下方に離間してインパネ後面部2bの下部に配置される。本発明の一実施形態に係る収納ボックス10は、上下2つの収納ボックス10,11のうちの上側の収納ボックス10(以下、単に収納ボックス10という。)である。
【0015】
図1図4に示すように、収納ボックス10は、インパネ後面部2bに形成されるパネル開口(開口)12と、パネル開口12を開閉するリッド13と、インパネ後面部2bの前方に配置されるボックス本体部14とを備える。なお、図2では、リッド13を省略した状態を図示している。
【0016】
図1及び図2に示すように、インパネ後面部2bは、パネル開口12の左右両側に配置される左右のサイドカバー部22,23と、パネル開口12の下方に配置されて車幅方向に延びるアンダーカバー部24とを有する。左側のサイドカバー部22は、インパネ後面部2bの左側の車幅方向外端部を構成し、パネル開口12の左側で上下方向に延びる。右側のサイドカバー部23は、インパネ後面部2bの車幅方向中央の一部を構成し、パネル開口12の右側で上下方向に延びる。アンダーカバー部24は、上下2つの収納ボックス10,11の間で車幅方向に延びる。
【0017】
パネル開口12は、インパネ後面部2bのうちの助手席の前方の領域に形成される略矩形状の開口であり、インパネ後面部2bを前後に貫通する。パネル開口12の開口上端縁12aは、インパネ上面部2aの後端縁部4に区画され、車幅方向に略水平に延びる。パネル開口12の車幅方向外側の開口外端縁12bは、左側のサイドカバー部22の車幅方向の内端縁部22aに区画され、上下方向に延びる。パネル開口12の車幅方向内側の開口内端縁12cは、右側のサイドカバー部23の車幅方向の外端縁部23aに区画され、上下方向に延びる。パネル開口12の開口下端縁12dは、アンダーカバー部24の上端縁部24aに区画され、水平方向に対して車幅方向の外側(一側)から内側(他側)へ向かって下方へ傾斜する。すなわち、パネル開口12の開口内端縁12cは、開口外端縁12bよりも下方へ長い。
【0018】
図1図4に示すように、リッド13は、パネル開口12よりも僅かに小さく形成された略矩形状の蓋体であって、パネル開口12を塞ぐ位置に配置され、リッド13の上端部側で車幅方向に延びる回転軸20を中心として傾動可能にインパネ後面部2bに支持される。リッド13を開ける際には、リッド13の下端側を後上方へ傾動させる。
【0019】
ボックス本体部14は、後方へ向かって開放される有底筒状に形成され、インパネ後面部2bの前方の空間に配置されてインパネ後面部2bに対して固定される。ボックス本体部14は、上面部16、下面部17、左右の側面部18(図3及び図4には、右側の側面部18のみが図示されている。)、及び前面部19を有し、各面部16~19によって、収納物を収納可能な内部空間15が区画される。ボックス本体部14の上面部16とインストルメントパネル2のインパネ上面部2aとの間には、車両1の衝突時等に助手席の乗員を保護するためのエアバッグ5が収納される。前面部19の前方には、インストルメントパネル2の内部で車幅方向に延びてステアリングシャフト6(図1参照)等を支持するステアリングサポートメンバ7が配置される。
【0020】
ボックス本体部14の上面部16の後端縁16aは、パネル開口12の開口上端縁12aよりも下方、且つ前方に配置されて車幅方向に略水平に延びる。ボックス本体部14の上面部16は、その後端縁16aから前方へ向かって下方へ傾斜して延びて、ボックス本体部14の前面部19の上端縁へ連続する。上面部16の後端縁16aとインパネ上面部2aの後端縁部4との間には、リッド13の回転軸20が配置される。左側の側面部(図示省略)の後端縁は、パネル開口12の車幅方向外側の開口外端縁12bよりも僅かに車幅方向外側に配置されて上下方向に延びる。右側の側面部18の後端縁18aは、パネル開口12の開口内端縁12cよりも僅かに車幅方向内側に配置されて上下方向に延びる。左右の側面部18は、その後端縁18aから前方へ向かって延びて、ボックス本体部14の前面部19の左右の側端縁へ連続する。下面部17の後端縁17aは、パネル開口12の開口下端縁12dの車幅方向の内端21と略同じ高さ位置に配置されて、車幅方向に略水平に延びる。すなわち、パネル開口12の開口下端縁12dは、下面部17の後端縁17a以上の高さ位置で、下面部17の後端縁17aに対して車幅方向の外側から内側へ向かって下方へ傾斜している。ボックス本体部14の下面部17は、その後端縁17aから前方へ向かって下方へ傾斜して延びて、ボックス本体部14の前面部19の下端縁へ連続する。
【0021】
図2及び図3に示すように、パネル開口12の車幅方向外端部では、ボックス本体部14の下面部17の後端縁17aは、パネル開口12の開口下端縁12d(アンダーカバー部24の上端縁部24a)よりも下方に配置され、ボックス本体部14の下面部17とパネル開口12の開口下端縁12dとの間に上下に段差が設けられる。図2及び図4に示すように、パネル開口12の車幅方向内端部では、ボックス本体部14の下面部17の後端縁17aは、パネル開口12の開口下端縁12d(アンダーカバー部24の上端縁部24a)と略同じ高さ位置に配置される。
【0022】
上記のように構成された収納ボックス10では、パネル開口12の開口下端縁12dが、ボックス本体部14の下面部17の後端縁17a以上の高さ位置で、下面部17の後端縁17aに対して車幅方向の外側から内側へ向かって下方へ傾斜している。そして、パネル開口12の車幅方向外端部では、ボックス本体部14の下面部17の後端縁17aは、パネル開口12の開口下端縁12d(アンダーカバー部24の上端縁部24a)よりも下方に配置され、ボックス本体部14の下面部17とパネル開口12の開口下端縁12dとの間に上下に段差が設けられる。このため、収納ボックス10の内部空間15の車幅方向外側に収納された収納物が後方へ移動すると、ボックス本体部14の下面部17とパネル開口12の開口下端縁12dとの間の段差部分に当接するので、リッド13を開けた際のパネル開口12からの収納物の飛び出しを抑えることができる。
【0023】
また、パネル開口12の開口下端縁12dが、下面部17の後端縁17aに対して車幅方向の外側から内側へ向かって下方へ傾斜しているので、開口下端縁12dが車幅方向に略水平に延びる場合に比べて、パネル開口12は、車幅方向内側へ向かうほど下方へ拡がっている。このようにパネル開口12が下方へ拡がっているので、その分だけ後方(特にパネル開口12よりも車幅方向内側の後方)からのボックス本体部14の内部空間15の視認性が向上する。
【0024】
また、パネル開口12は、インパネ後面部2bのうちの助手席の前方の領域に形成され、車幅方向内側へ向かうほど下方へ拡がっているので、運転席側からのボックス本体部14の内部空間15の視認性が向上する。
【0025】
従って、本実施形態によれば、収納ボックス10のパネル開口12からの収納物の後方への飛び出しを抑え、且つ収納ボックス10の内部空間15の視認性を確保することができる。
【0026】
なお、本実施形態では、ボックス本体部14の下面部17の後端縁17aを、パネル開口12の開口下端縁12dの車幅方向の内端21と略同じ高さ位置に配置したが、これに限定されるものではなく、パネル開口12の開口下端縁12dの車幅方向の内端21よりも下方に配置してもよい。
【0027】
また、本実施形態では、パネル開口12の開口下端縁12dを、水平方向に対して車幅方向の外側(一側)から内側(他側)へ向かって下方へ傾斜させたが、車幅方向の内側(一側)から外側(他側)へ向かって下方へ傾斜させてもよい。この場合であっても、パネル開口12の後方(特に車幅方向外側の後方)からのボックス本体部14の内部空間15の視認性が向上する。
【0028】
また、本実施形態では、収納ボックス10にリッド13を設けたが、リッド13を設けなくてもよい。
【0029】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【0030】
例えば、上記実施形態では、本発明の一実施形態に係る収納ボックス10を、左側に助手席が配置される車両1に適用したが、右側に助手席が配置される車両に適用してもよい。
【符号の説明】
【0031】
1:車両
2:インストルメントパネル
2b:インパネ後面部(パネル部材)
3:車室
10:収納ボックス
12:パネル開口(開口)
12d:パネル開口の開口下端縁
14:ボックス本体部
17:ボックス本体部の下面部
17a:ボックス本体部の下面部の後端縁
図1
図2
図3
図4