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  • 特許-ルーフパネル及びルーフ構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】ルーフパネル及びルーフ構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/06 20060101AFI20220127BHJP
【FI】
B62D25/06 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018050196
(22)【出願日】2018-03-16
(65)【公開番号】P2019156374
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 健太郎
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-017682(JP,A)
【文献】実開昭61-095675(JP,U)
【文献】実開昭62-185682(JP,U)
【文献】実開昭63-165275(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2004/0031831(US,A1)
【文献】特開2017-171033(JP,A)
【文献】特開2011-183939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
B62D 31/00-39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向と交叉する板状に形成され、その前端縁と後端縁との間の領域が側面視において上方へ膨出するように湾曲し、車両の車室の上方を区画するルーフ本体と、
前記ルーフ本体の上面から上方へ突出した状態で前後方向に延びるビードと、を備え、
前記ビードは、前記ルーフ本体の最も高い位置である頂部よりも前方から前記頂部よりも後方まで延び、
前記ルーフ本体の上面から前記ビードの上面までの前記ビードのビード高さは、前記ビードのうち前記ルーフ本体の前記頂部の上方の領域のビード高さよりも、前記ビードの前端部及び後端部のビード高さの方が高い
ことを特徴とするルーフパネル。
【請求項2】
請求項1に記載のルーフパネルを備えるルーフ構造であって、
前記ルーフ本体の前記頂部の下方に配置され、前記ルーフ本体の下面の下方で車幅方向に延び、前記ルーフ本体の前記下面に対して固定され、前記ルーフ本体を補強する補強部材を備えた
ことを特徴とするルーフ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ルーフパネル及びルーフ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、幅方向に車幅中央部が最高の高さになるように湾曲したルーフ一般面を有するとともに、車長方向に相互に平行に複数のビードが膨出成形されている車両用ルーフが記載されている。相互に平行に整列したビードのルーフ一般面よりの高さは、中央ビードより徐々に漸増し、最端部ビードが最大高さになるように構成してある。他のビードの上端は、中央ビードの上面の高さが描く線と同一水準になるようになっている。他のビードを、ビード一般面よりの高さよりも高くするとともに、中央ビードの上面の形成する線と同一水準になるように設定することによって、中央ビードのルーフ一般面からの高さは低くなり、低くなった分に対応してルーフ一般面を上方に設け、車両室容積を増加させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭63-165275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の車両用ルーフ(ルーフパネル)では、ルーフパネルの上面の高さ位置の上昇を抑えつつ車両室容積を増加するために、ルーフパネルの車幅中央部が最高の高さになるようにルーフパネルを湾曲し、中央ビードのルーフ一般面からの高さ(以下、単に高さという。)を他のビードの高さよりも低くしている。しかし、前後方向に延びる中央ビードの高さが他のビードの高さよりも低いので、ルーフパネルの車幅方向中央部の張り剛性(上方(又は下方)から荷重に対する剛性)が前後に亘って低くなり、ルーフパネルの所望の剛性を確保することができないおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、車室内空間を広く確保し、且つルーフパネルの剛性を確保することが可能なルーフパネル及びルーフ構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様のルーフパネルは、ルーフ本体とビードとを備える。ルーフ本体は、上下方向と交叉する板状に形成され、その前端縁と後端縁との間の領域が側面視において上方へ膨出するように湾曲し、車両の車室の上方を区画する。ビードは、ルーフ本体の上面から上方へ突出した状態で前後方向に延びる。ビードは、ルーフ本体の最も高い位置である頂部よりも前方から頂部よりも後方まで延びる。ルーフ本体の上面からビードの上面までのビードのビード高さは、ビードのうちルーフ本体の頂部の上方の領域のビード高さよりも、ビードの前端部及び後端部のビード高さの方が高い。
【0007】
上記構成では、車両の車室の上方を区画するルーフ本体は、その前端縁と後端縁との間の領域が側面視において上方へ膨出するように湾曲するので、ルーフ本体の前端縁と後端縁との間の領域が前後方向に直線状に延びる場合に比べ、車室内空間を上方へ広く確保することができる。
【0008】
また、ビードが、ルーフ本体の頂部よりも前方から頂部よりも後方まで延び、ビードのビード高さが、ビードのうちルーフ本体の頂部の上方のビード高さよりも、ビードの前端部及び後端部のビード高さの方が高い。このため、ルーフ本体の前端縁と後端縁との間の領域を側面視において上方へ膨出するように湾曲させても、ルーフパネルの上端面(ビードの上面)を前後方向に略水平に延ばすことができる。このため、ルーフパネルの上端面の高さ位置を上昇させることなく、車室内空間を上方へ広く確保することができる。
【0009】
また、ビードのビード高さが、ルーフ本体の頂部の上方のビード高さよりもビードの前端部及び後端部のビード高さの方が高いので、ビードの前端部及び後端部のビード高さを、ルーフ本体の頂部の上方のビード高さと同じ高さにする場合に比べ、ビードの前端部側及び後端部側の剛性を確保することができる。
【0010】
従って、車室内空間を広く確保し、且つルーフパネルの剛性を確保することができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様のルーフパネルを備えるルーフ構造であって、補強部材を備える。補強部材は、ルーフ本体の頂部の下方に配置され、ルーフ本体の下面の下方で車幅方向に延び、ルーフ本体の下面に対して固定され、ルーフ本体を補強する。
【0012】
上記構成では、ルーフ本体を補強する補強部材が、ルーフ本体の頂部の下方に配置される。すなわち、補強部材は、車室内空間側の比較的高い位置に配置されるので、乗員の頭部から離間する位置に補強部材を配置することができ、乗員の頭部と補強部材との接触を抑えることができる。
【0013】
また、ルーフ本体を補強する補強部材が、ルーフ本体の頂部の下方に配置され、ルーフ本体の下面の下方で車幅方向に延び、ルーフ本体の下面に対して固定される。このため、ルーフ本体のうちビード高さが低い(ビードの前端部及び後端部よりも低い)領域(頂部)を、補強部材によって補強することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、車室内空間を広く確保し、且つルーフパネルの剛性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係るルーフパネルを備える車両の斜視図である。
図2図1の要部拡大斜視図である。
図3図2の平面図である。
図4図3のIV-IV矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において、FRは車両の前方を、UPは上方を、INは車幅方向内側をそれぞれ示す。また、以下の説明において、左右方向は車両前方を向いた状態での左右方向を意味する。
【0017】
図1及び図2に示すように、本開示に係る車両のルーフパネル11は、キャブ2が概ねエンジン(図示省略)の上方に配置されるキャブオーバー型のトラック(車両)1に適用される。
【0018】
キャブ2は、フロントガラス10と、車室3の上方で上下方向と交叉して延びて車室3を上方から覆うルーフパネル11と、車室3の前方で起立するダッシュパネル12と、車室3の下方で車室3を下方から覆うフロアパネル13と、車室3の後方で起立するバックパネル14と、車室3の左右両側で起立してドア4が取り付けられる左右1対のサイドパネル15と、ルーフパネル11の下面に取付けられる補強部材21(図4参照)とを有する略箱状体であって、その内部に車室3を区画する。
【0019】
図2図4に示すように、ルーフパネル11は、ルーフ本体24と複数(本実施形態では、7本)のビード30とを備える。
【0020】
ルーフ本体24は、上下方向と交叉する板状に形成され、車両1の車室3の上方を区画する。ルーフ本体24の車幅方向両端縁22は、前後方向に沿って延びて、左右のサイドパネル15の上端部の車幅方向内面にそれぞれ接合される。ルーフ本体24の前端縁23は、フロントガラス10の上端縁を車幅方向に沿って延びる。ルーフ本体24の後端縁20は、バックパネル14の上端縁に接合される。ルーフ本体24は、前端縁23と後端縁20との間の領域が側面視において上方へ膨出するように湾曲する。ルーフ本体24は、前後方向に直線状に延びる領域を有することなく側面視において上方へ湾曲している。
【0021】
複数のビード30は、ルーフ本体24の上面から上方に突出し、互いに車幅方向に離間して前後方向に沿って延びる。複数のビード30は、互いに平行である。複数にビード30は、車幅方向右側から順に、第1ビード31、第2ビード32、第3ビード33、第4ビード34、第5ビード35、第6ビード36、及び第7ビード37を有する。複数のビード30は、第4ビード34を中央に左右に略等間隔で配置される。なお、複数のビード30は、ほぼ同様の構成を有するため、以下では、ルーフ本体24の車幅方向中央部に配置される第4ビード34について説明し、他のビード31,32,33,35,36,37の説明を省略する。
【0022】
図4に示すように、第4ビード34は、ルーフ本体24の最も高い位置である頂部25よりも前方のルーフ本体24の前端から、頂部25よりも後方のルーフ本体24の後端まで延び、上方へ突出している。ルーフ本体24の頂部25は、ルーフ本体24の車幅方向略中央に位置する。第4ビード34は、ルーフ本体24の上面から車幅方向に離間し、ルーフ本体24の前後方向に亘って上方へ延びる左右のルーフ側板部43と、ルーフ本体24の前端から上方へ延びて左右のルーフ側板部43の前端縁同士を連結するビード前板部40と、ルーフ本体24の後端から上方へ延びて左右のルーフ側板部43の後端縁同士を連結するビード後板部41と、上下方向と交叉して左右のルーフ側板部43の上端縁とビード前板部40の上端縁とビード後板部41の上端縁とを連結するビード上板部42とを有する。第4ビード34のビード上板部42の上面は、前後方向に略水平に延びる。複数のビード30の上面は、互いに略同一平面上に設けられる。ルーフ本体24の上面から第4ビード34の上面までの第4ビード34のビード高さ(以下、単にビード高さという。)は、第4ビード34のうちルーフ本体24の頂部25の上方の領域26のビード高さh1が最も低く、第4ビード34の前端部27及び後端部28のビード高さh2が最も高い。すなわち、第4ビード34のうちルーフ本体24の頂部25の上方の領域26のビード高さh1よりも、第4ビード34の前端部27及び後端部28のビード高さh2の方が高い。
【0023】
補強部材21は、ルーフ本体24の頂部25の下方に配置され、ルーフ本体24の下面の下方で車幅方向に沿って延び、ルーフ本体24の下面に対して固定され、ルーフ本体24に固定された状態でルーフ本体24を補強する。補強部材21は、上方へ開放する断面略ハット状に形成され、上下方向と交叉する前後1対の上板部50と、前方の上板部50後端縁及び後方の上板部50の前端縁から略鉛直方向に沿って下方へそれぞれ延びる前後1対の縦板部51と、前後の縦板部51の下端縁同士を連結する底板部52とを一体的に有する。上板部50は、ルーフ本体24の頂部25の下面に当接した状態で、その当接部分を溶接等することによりルーフ本体24に対して固定される。前後の縦板部51の上端縁は、ルーフ本体24の下面に接触する。
【0024】
本実施形態では、車両1の車室3の上方を区画するルーフ本体24は、その前端縁23と後端縁20との間の領域が側面視において上方へ膨出するように湾曲するので、ルーフ本体24の前端縁23と後端縁20との間の領域が前後方向に直線状に延びる場合に比べ、車室内空間29を上方へ広く確保することができる。
【0025】
また、第4ビード34が、ルーフ本体24の頂部25よりも前方から頂部25よりも後方まで延び、第4ビード34のビード高さが、第4ビード34のうちルーフ本体24の頂部25の上方の領域26のビード高さh1よりも、第4ビード34の前端部27及び後端部28のビード高さh2の方が高い。このため、ルーフ本体24の前端縁23と後端縁20との間の領域を側面視において上方へ膨出するように湾曲させても、ルーフパネル11の上端面(第4ビード34のビード上板部42の上面)を前後方向に略水平に延ばすことができる。従って、ルーフパネル11の上端面の高さ位置を上昇させることなく、車室内空間29を上方へ広く確保することができる。
【0026】
また、第4ビード34のビード高さが、第4ビード34のうちルーフ本体24の頂部25の上方の領域26のビード高さh1よりも、第4ビード34の前端部27及び後端部28のビード高さh2の方が高いので、第4ビード34の前端部27及び後端部28のビード高さh2を、第4ビード34の上方の領域26のビード高さh1と同じ高さにする場合に比べ、第4ビード34の前端部27側及び後端部28側の剛性を確保することができる。
【0027】
また、ルーフ本体24を補強する補強部材21が、ルーフ本体24の頂部25の下方に配置され、ルーフ本体24の下面の下方で車幅方向に延び、ルーフ本体24の下面に対して固定される。このため、ルーフ本体24のうちビード高さが低い(第4ビード34の前端部27及び後端部28よりも低い)領域(頂部25)を、補強部材21によって補強することができる。
【0028】
従って、車室内空間29を広く確保し、且つルーフパネル11の剛性を確保することができる。
【0029】
また、ルーフ本体24を補強する補強部材21が、ルーフ本体24の頂部25の下方に配置される。すなわち、補強部材21は、車室内空間29側の比較的高い位置に配置されるので、乗員の頭部から離間する位置に補強部材21を配置することができ、乗員の頭部と補強部材21との接触を抑えることができる。
【0030】
なお、本実施形態では、第4ビード34のビード上板部42の上面を前後方向に略水平に延ばしたが、これに限定されるものではなく、第4ビード34のビード上板部42の上面は、第4ビード34のうちルーフ本体24の頂部25の上方の領域26のビード高さh1よりも、第4ビード34の前端部27及び後端部28のビード高さh2の方が高い構造であれば、水平でなくてよい。例えば、第4ビード34のビード上板部42の上方の領域26を上方へ膨出するように湾曲させてもよい。
【0031】
また、本実施形態では、ルーフ本体24の最も高い位置である頂部25を、ルーフ本体24の車幅方向略中央に配置したが、これに限定されるものではなく、ルーフ本体24の前端縁23と後端縁20との間の領域に位置すればよい。
【0032】
また、本実施形態では、複数のビード30を互いに平行となるように配置したが、これに限定されるものではなく、平行に配置しなくてもよい。
【0033】
また、本実施形態では、ルーフ本体24を、前後方向に直線状に延びる部分を含まないように上方へ湾曲させたが、これに限定されるものではなく、例えば、ルーフ本体24の頂部25近傍に前後方向に直線状に延びる領域を有してもよい。
【0034】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のルーフパネル及びルーフ構造は、トラックその他の車両に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 車両
2 キャブ
3 車室
10 フロントガラス
11 ルーフパネル
20 ルーフ本体の後端縁
21 補強部材
22 ルーフ本体の車幅方向両端縁
23 ルーフ本体の前端縁
24 ルーフ本体
30 ビード
40 ビード前板部
41 ビード後板部
42 ビード上板部
50 上板部
51 縦板部
52 底板部
図1
図2
図3
図4