(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】密封装置
(51)【国際特許分類】
F16J 15/324 20160101AFI20220127BHJP
F16J 15/3204 20160101ALI20220127BHJP
【FI】
F16J15/324
F16J15/3204 201
(21)【出願番号】P 2016204827
(22)【出願日】2016-10-19
【審査請求日】2019-09-20
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000143307
【氏名又は名称】株式会社荒井製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100183357
【氏名又は名称】小林 義美
(72)【発明者】
【氏名】天野 正和
(72)【発明者】
【氏名】山岸 高弘
(72)【発明者】
【氏名】財津 勝志郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 久貴
(72)【発明者】
【氏名】坂本 利徳
(72)【発明者】
【氏名】荒井 泰一
【合議体】
【審判長】平田 信勝
【審判官】田村 嘉章
【審判官】内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-48284(JP,A)
【文献】特開2001-99326(JP,A)
【文献】特開平9-133218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/324
F16J 15/3204
F16J 15/3232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプラインを有する回転軸と、前記回転軸の中心軸周りに相対回転可能に対向される静止部材との間に設けられ、外部環境に対して内部環境を密封するための密封装置であって、
前記静止部材に対して固定される固定部と、
前記固定部から一体に設けられ、前記回転軸に押圧されて摺接するシール部とを有し、
前記シール部には、
前記内部環境寄りに設けられ、少なくとも前記回転軸のスプラインの凸部外径よりも小径のリップ先端を有する第一シールリップと、
前記外部環境寄りに設けられた第二シールリップと、
前記第一シールリップの先端と前記第二シールリップの先端とを結ぶ仮想線及び前記第一シールリップの先端と前記第二シールリップの先端と
にわたって凹状に窪ませた第一傾斜面で囲まれた第一凹領域とを有し、
さらに、前記第一シールリップの先端よりも内部環境寄りに、前記第一シールリップの先端から連続して設けられた第二傾斜面と、
前記第二シールリップの先端よりも外部環境寄りに、第二シールリップの先端から連続して設けられた第三傾斜面と、を含み、
前記第二傾斜面には第一シールリップの先端近傍に凹状に窪ませた第二凹領域を有し、
前記第一凹領域及び前記第二凹領域には潤滑剤が充填され、
前記第二傾斜面及び前記第三傾斜面に潤滑剤が被着され、
前記第二傾斜面及び前記第三傾斜面に被着される潤滑剤の厚みは、前記第一凹領域に充填される潤滑剤の厚みよりも薄いことを特徴とする密封装置。
【請求項2】
前記潤滑剤は、固形状ワックスであり、融点が温度60℃から80℃であることを特徴とする請求項1に記載の密封装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などのエンジンに用いられる密封装置(オイルシール)に関し、特にシール部分に潤滑剤を被着させた密封装置(オイルシール)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における回転軸とハウジングとの間を密封する密封装置(オイルシール)では、回転軸に摺接する弾性部材からなるシール部分の磨耗を防止するために、当該シール部分に潤滑剤を塗布させることが行われている。例えば、特許文献1では、初期潤滑剤として異物の付着しにくいワックス状潤滑剤を用いて、異物の付着による初期漏れの不具合を防止すると共に、塗布むらが無いようにするためシールリップの内周面を潤滑剤溶液に浸着させる方法によって、薄く塗布した密封装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記したような密封装置では、ワックス状の潤滑剤溶液により被膜が薄く塗布されているだけなので、回転軸の組み付け(挿入)時においてシール部分の潤滑剤が剥がれやすく、さらに、シールリップ表面も傷付き、回転軸の組み付け後に傷ついた部分から潤滑剤が逃げてしまう虞もある。そうなると、密封性の向上と共に摩擦力の低減(潤滑性の維持)を図る本来の回転軸とハウジングとの間の密封を目的とする密封装置を提供することができなくなる。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされており、その目的は、密封装置内周のシール部分にワックス状潤滑剤を厚く充填することにより、回転軸が組み付け時のシールリップの傷付きを防止でき、また、回転軸の回転時には固形状のワックス状潤滑剤が溶融して充分な量の潤滑油が供給される密封装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、第一の発明は、スプラインを有する回転軸と、前記回転軸の中心軸周りに相対回転可能に対向される静止部材との間に設けられ、外部環境に対して内部環境を密封するための密封装置であって、前記静止部材に対して固定される固定部と、前記固定部から一体に設けられ、前記回転軸に押圧されて摺接するシール部とを有し、前記シール部には、前記内部環境寄りに設けられ、少なくとも前記回転軸のスプラインの凸部外径よりも小径のリップ先端を有する第一シールリップと、前記外部環境寄りに設けられた第二シールリップと、前記第一シールリップの先端と前記第二シールリップの先端とを結ぶ仮想線及び前記第一シールリップの先端と前記第二シールリップの先端とにわたって凹状に窪ませた第一傾斜面で囲まれた第一凹領域とを有し、さらに、前記第一シールリップの先端よりも内部環境寄りに、前記第一シールリップの先端から連続して設けられた第二傾斜面と、前記第二シールリップの先端よりも外部環境寄りに、第二シールリップの先端から連続して設けられた第三傾斜面と、を含み、前記第二傾斜面には第一シールリップの先端近傍に凹状に窪ませた第二凹領域を有し、前記第一凹領域及び前記第二凹領域には潤滑剤が充填され、前記第二傾斜面及び前記第三傾斜面に潤滑剤が被着され、前記第二傾斜面及び前記第三傾斜面に被着される潤滑剤の厚みは、前記第一凹領域に充填される潤滑剤の厚みよりも薄いことを特徴とする。
第二の発明は、第一の発明において、前記潤滑剤は、固形状ワックスであり、融点が温度60℃から80℃であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、密封装置内周のシール部分にワックス状潤滑剤を厚く充填することにより、回転軸が組み付け時のシールリップの傷付きを防止でき、また、回転軸の回転時には固形状のワックス状潤滑剤が溶融して充分な量の潤滑油が供給される密封装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る密封装置の構成を示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る密封装置に回転軸の挿入状態を示す図である。
【
図3】本発明の第二実施形態に係る密封装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第一実施形態]
以下、本発明の第一実施形態に係る密封装置について、添付図面を参照して説明する。
本実施形態の密封装置は、回転中心軸周りに相対回転可能に対向する静止部材相互間に設けられ、外部環境(大気)側に対して内部環境(エンジン)側を密封することができるように構成されている。ここでは、
図2に示すように、相対回転可能に対向する部材として、表面外周に歯状の溝が金属加工されたスプライン71を備え、回転中心軸Axを中心に回転する回転軸7と、これと同中心に対向して非回転状態に維持された静止部材としてのハウジング2を想定する。
【0010】
図1において、本実施形態の密封装置1は、一方の部材である静止部材のハウジング2に固定される固定部4と、固定部4から一体に設けられ、他方の部材である回転軸7に押圧されて接触するシール部5を備えている。
固定部4は、所定幅の嵌合面を有する円環状で、固定部4の一側端から連続して固定部4の円環中心方向に連続して円板部41が設けられ、円板部41の内径から連続してシール部5が設けられて全体で中空円環状をなしている。
【0011】
固定部4には、固定部4に沿って連続し、かつ、その一部がシール部5に向けて延出した断面L字状の補強金具(芯金)3が埋設されている。これにより、固定部4の剛性が一定に維持されることで、固定部4をハウジング2に対して堅牢に固定させることができる。この結果、シール部5を常時安定して回転軸7に摺接させることが可能となり、回転軸7が高速回転する環境下における密封性の維持向上を図ることができる。
【0012】
回転軸に押圧されて摺接するシール部5には、内部環境寄りに設けられ、少なくとも回転軸7のスプライン71の凸部外径よりも小径のリップ先端Sを有する第一シールリップ(主リップ)51と、外部環境寄りに設けられた第二シールリップ(ダストリップ)52と、第一シールリップ(主リップ)51の先端Sと第二シールリップ(ダストリップ)52の先端Vと結ぶ線で囲まれた凹領域(潤滑剤充填部)Bとを有し、少なくとも凹領域(潤滑剤充填部)Bに潤滑剤Aが充填されている。
【0013】
第一シールリップ(主リップ)51は、内周面の断面視がほぼV字形状に形成されており、また、第一シールリップ(主リップ)51と径方向反対側のシール部5の外周には、無端状のガータースプリング6が巻回されている。これにより、第一シールリップ(主リップ)51のリップ先端Sが常時一定の緊迫力で回転軸7に摺接した状態に維持される。そして、内部環境側にオイルやグリースなどの潤滑剤が封入されて漏洩防止が図られている。
【0014】
第二シールリップ(ダストリップ)52は、外部環境側に向けて薄肉化させつつ傾斜した姿勢で、第一シールリップ(主リップ)51よりも小さい内周面の断面視のV字形状に突出し、その突出端が回転軸7に対して接触状態(或いは、僅かな隙間を隔てた非接触状態)に位置決めされている。これにより、外部環境側に存するダストや液状物などの異物の浸入防止が図られている。
【0015】
なお、本実施形態において、密封装置1は、自身の弾性力によってそのシール部5を回転軸7の摺接面72に接触させるべく、弾性を有する材料で成形されている。例えば、フッ素ゴムなどである。
【0016】
ところで、密封装置1では、
図1に示すように、潤滑剤Aは、第一シールリップ(主リップ)51の先端Sと第二シールリップ(ダストリップ)52の先端Vと結ぶ仮想線50に至るまで、凹領域(潤滑剤充填部)Bに充填されている。
なお、一例として、凹領域(潤滑剤充填部)Bは、シール部5の内周断面を半円形状に窪ませた第一傾斜面53に構成しているが、半円形状に限定されず、第一傾斜面53と第一シールリップ(主リップ)51の先端Sと第二シールリップ(ダストリップ)52の先端Vとで囲まれた凹領域(潤滑剤充填部)Bが構成できる形状であれば、本発明の実施範囲内である。
【0017】
このように凹領域B(潤滑剤充填部)に固形ワックス状の潤滑剤Aを充填することにより、従来技術のように薄くシール部の内周面に塗布された潤滑剤とは異なり、回転軸7の組み付け時に潤滑剤が剥がれにくくなる。
【0018】
本実施形態で、組み付けられる回転軸7は、
図2に示すように、その外周にスプライン71を備えている。このようなスプライン71を有することで、密封装置1に挿入する際に、軸中心側に突出した柔らかい弾性部材(例えば、ゴム)の第一シールリップ(主リップ)51、第二シールリップ(ダストリップ)52と硬い金属のスプライン71の凸部が接触して、これらのシールリップの先端S、Vを傷つける虞がある。特に、少なくともスプライン71の凸部外径よりも小径のリップ先端を有し、第二シールリップ(ダストリップ)52の先端V部分よりも突出した第一シールリップ(主リップ)51の先端S部分を削ってしまう虞が大きい(
図2の挿入方向矢印を参照。)。
そこで、
図1のとおり、回転軸7が挿入される凹領域(潤滑剤充填部)Bの円環状にわたって十分な固形状ワックスの潤滑剤Aを設けることで、スプライン71を備えた回転軸7であっても円滑に挿入され、前述のリップ先端の傷付きを防止することができる。なお、
図2は、挿入過程の説明図であるため潤滑剤Aの図示を省略している。
【0019】
固形ワックス状の潤滑剤Aは、例えば、常温において半透明ないし白色の軟らかい固体(蝋状)で水には溶けず、融点が温度60℃から80℃の範囲の石油系のパラフィンワックスが用いられる。また、密着性の良い固形ワックスを用いることで、液だれのおそれもなく密封装置を汚すこともない。
なお、この固形ワックス状の潤滑剤Aは、柔らかい練り状のワックス状態にて、第一傾斜面53から隙間なく凹領域B(潤滑剤充填部)に充填後、第一シールリップ(主リップ)51の先端Sと第二シールリップ(ダストリップ)52の先端Vを結ぶ線(仮想線50)からはみ出していた場合、回転軸7への組立て(挿入)前にそぎ落とすが、少量であれば回転軸7の円滑な挿入に影響を与えることはないため、そのままの充填状態で構わない。また、この充填方法については、自動化或いは手動によりいずれでも行うことができ、いずれでも本発明の実施範囲内である。
【0020】
また、軸回転時のオイル等の潤滑油の温度は、例えば、80℃から120℃の範囲であるが、本実施形態の潤滑剤Aの融点が温度60℃から80℃の範囲であることから、回転初期動作時には、オイル等の潤滑油の温度に達していなくても溶融して初期潤滑剤として機能する。これにより、第一シールリップ(主リップ)51の先端Sと第二シールリップ(ダストリップ)52の初期磨耗を防止することができる。
さらに、溶融して液状化された潤滑剤Aはオイル等の上記温度まで上昇して、充分な潤滑油量が密封装置1内に供給されるように作用する。即ち、固形状態のままでは、オイル等潤滑油のように低摩擦性や冷却性は逆に得られないものの、潤滑剤Aが溶融して潤滑油に液状化することで、回転軸7の組み付け時のシールリップの傷つき防止だけでなく、その後において回転軸7とシール部5の潤滑にも効果を発揮することができる。
【0021】
以上、説明のとおり、回転軸7の組み付け(挿入)時には、固形ワックス状の潤滑剤Aにより、回転軸7のスプライン71との接触により第一シールリップ(主リップ)51が削られて傷つくことを防止することができ、耐久性に優れた密封装置1を実現することができる。
また、固形ワックス状の潤滑剤Aが、シール部5の第一傾斜面53と第一シールリップ(主リップ)51の先端Sと第二シールリップ(ダストリップ)52の先端Vとで囲まれた凹領域(潤滑剤充填部)Bに充填されることにより、回転軸7の組み付け(挿入)時に潤滑剤Aが剥がれにくく、さらに、軸回転初期時には固形ワックス状が溶融して充分な量が凹領域(潤滑剤充填部)Bから回転軸7の摺接面72に供給され、確実に初期潤滑油として作用することできる。その結果、全回転時も含め、シール部5と回転軸7との間の良好な潤滑が維持されることにより、低トルク(摩擦力の低減)に優れた密封装置1を実現することができる。
【0022】
また、図には示さないが、第一実施形態の構成に加えて、さらに第二傾斜面54の領域にも潤滑剤Aを充填する第二凹領域(第二潤滑剤充填部)が設けても構わない。その場合、第二凹領域(第二潤滑剤充填部)は、第一シールリップ(主リップ)51との先端S近傍或いはやや離れた位置にあって、断面が半円形状に窪ませて環状に構成されている。なお、第二凹領域(第二潤滑剤充填部)は、全周に亘って連続していても良いし、複数に分割されていても良い。
【0023】
このように第二凹領域(潤滑剤充填部)を、回転軸7に押圧されて摺接する領域以外の第二傾斜面54に環状にわたって設けることにより、さらに、シール部5と回転軸7との間の良好な潤滑が維持されることにより、低トルク(摩擦力の低減)で耐久性に優れた密封装置1を実現することができる。
【0024】
[第二実施形態]
本実施形態は、
図3に示すように、第一実施形態の構成に加え、シール部5には、第一シールリップ(主リップ)51の先端Sよりも内部環境寄りに、第一シールリップ(主リップ)51の先端Sから連続して設けられた第二傾斜面54と、第二シールリップ(ダストリップ)52の先端Vよりも外部環境寄りに、第二シールリップ(ダストリップ)52の先端Vから連続して設けられた第三傾斜面と、を含み、潤滑剤Aは、第二傾斜面54と第三傾斜面55にわたって被着されている。
具体的には、本実施形態における固形ワックス状の潤滑剤Aは、シール部5の内部環境側で回転軸7の摺接面72と摺接しない第二傾斜面54から、第一シールリップ(主リップ)51の先端Sを介して、さらに凹領域(潤滑剤充填部)Bを経て、第二シールリップ(ダストリップ)52の先端Vを介して、外部環境側の第三傾斜面55まで連続して覆うように、環状に被着範囲を広げている。
【0025】
なお、第一実施形態の
図1の密封装置1の構成と同じ構成にあっては、第二実施形態の
図3には
図1と同じ符号を付すこととし、詳細な説明においては説明が重複するため省略する。また、固形ワックス状の潤滑剤Aについても、第一実施形態で用いられたものと同じ潤滑剤として説明する。
【0026】
第二傾斜面54は、回転中心軸Axに対して所定の角度を持って傾斜し、シール部5の上方(符号Tの位置)から第一シールリップ(主リップ)51の先端Sまでの長さによる内周面を有している。また、同様に、第三傾斜面55は、回転中心軸Axに対して所定の角度を持って傾斜し、シール部5の下方(符号Wの位置)から第二シールリップ(ダストリップ)52の先端Vまでの長さによる内周面を有している。そして、第二傾斜面54の内周面は、第一シールリップ(主リップ)51が回転軸7とのシール性を高めるために肉厚に形成されていることから、第三傾斜面55の内周面に比べて広くなっている。なお、第二シールリップ(ダストリップ)52が第一シールリップ(主リップ)51と同等或いは大きく形成されている場合にあっては、第三傾斜面55が第二傾斜面54と同等或いは大きく形成されることは当然であって、このように構成することも本発明の実施可能範囲である。
【0027】
また、凹領域(潤滑剤充填部)Bを除いた、第二傾斜面54、第一シールリップ(主リップ)51との先端S、第二シールリップ(ダストリップ)52の先端V及び第三傾斜面55の潤滑剤Aの被着の厚みは薄くなるように形成されている。
したがって、第二実施形態の凹領域(潤滑剤充填部)Bへの固形ワックスの潤滑剤Aは、第一実施形態の凹領域(潤滑剤充填部)Bに充填されているよりも、第二傾斜面54及び第三傾斜面55を被着する所定の厚さの分だけ多く充填されている。
【0028】
このように、密封装置1の内周面であるシール部5の摺接面72側全体を広く覆うことで、さらに第一実施形態に比べて、固形ワックス状の潤滑剤Aが剥がれにくくなる。また、シール部5の第二傾斜面54及び第三傾斜面55と、回転軸7の摺接面72にさらに潤滑剤を介在させることで、シール部5と回転軸7との間の良好な潤滑が維持されることになり、低トルク(摩擦力の低減)で耐久性に優れた密封装置1を実現することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 密封装置
2 ハウジング
3 補強金具(芯金)
4 固定部
5 シール部
51 第一シールリップ(主リップ)
52 第二シールリップ(ダストリップ)
53 第一傾斜面
54 第二傾斜面
55 第三傾斜面
6 ガータースプリング
7 回転軸
71 スプライン
72 摺接面
A 潤滑剤(固形状ワックス)
B 凹領域(潤滑剤充填部)