(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】はんだ接合工法
(51)【国際特許分類】
B23K 1/005 20060101AFI20220127BHJP
【FI】
B23K1/005 A
(21)【出願番号】P 2017045891
(22)【出願日】2017-03-10
【審査請求日】2020-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】514068107
【氏名又は名称】株式会社ナノマテックス
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】村上 広幸
(72)【発明者】
【氏名】徳村 啓雨
(72)【発明者】
【氏名】能見 巧
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-082133(JP,A)
【文献】特開2008-177520(JP,A)
【文献】特開2007-320095(JP,A)
【文献】特開昭60-180666(JP,A)
【文献】特開昭59-110462(JP,A)
【文献】特開2014-150130(JP,A)
【文献】特開昭63-261689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/005
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に
カーボンナノチューブを含むレーザー吸収剤が塗布されたはんだを手で保持し、基材と部材とを接合する接合部に近接させ、
前記はんだの表面に塗布された前記レーザー吸収剤に、2W以上10W以下の低出力レーザー光をレーザーはんだごてで照射することで、前記はんだを溶融することを含む、
はんだ接合工法。
【請求項2】
前記はんだの表面は、複数の部材とはんだ接合により接合されたはんだの表面である、
請求項1に記載のはんだ接合工法。
【請求項3】
さらに、前記照射の前に、前記レーザーはんだごてが、前記はんだに、2W以上10W以下の低出力レーザー光の焦点をずらして照射することにより、前記はんだをプリヒートする、
請求項1
または2に記載のはんだ接合工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザーを用いたはんだ接合工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体レーザー等の光源から加熱光線を照射し、電子部品の電極部(リード線含む)を電子回路基材やプリント基材等の基材にはんだ接合する方法が知られている。この方法によると、はんだごてを使用することなく、基材に非接触ではんだ接合することができる。
【0003】
しかしながら、加熱光線等の光エネルギーを用いて非接触で基材に電子部品のはんだ接合を行おうとする場合、はんだ接合部(ランド)周囲のプリント基材の基材部位に熱損傷(焼け)を与える恐れがある。すなわち、ランド近傍のプリント配線以外の基材が熱損傷しやすく、このためランド径よりもレーザー光の照射径を小さくする必要がある。
【0004】
そこで、複数のレーザー透過孔が形成された金属製のマスクを用いることにより、非接触の光エネルギーを用いてはんだ接合を行っても、レーザー光が透過孔を透過し、はんだ接合部を均一に短時間で加熱することができる方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、基材の熱損傷を防止することはできるものの、金属製のマスクが必要であるため、基材の様々な部位に自由にはんだ接合を行うことができない。また、照射されたレーザー光の殆どがはんだの表面で反射されるため、高出力のレーザー光を用い、はんだを融解させる熱量を発生させる必要がある。そのため、レーザー光の照射により発生する熱量が大きく、微細な部品や耐熱温度の低い部品に適応することが難しい。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、はんだ接合を行う部材および基材への熱損傷を抑制することと低出力レーザーが使用でき省エネを実現できるはんだ接合工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るはんだ接合工法の一態様は、表面にカーボンナノチューブを含むレーザー吸収剤が塗布されたはんだを手で保持し、基材と部材とを接合する接合部に近接させ、前記はんだの表面に塗布された前記レーザー吸収剤に、2W以上10W以下の低出力レーザー光をレーザーはんだごてで照射することで、前記はんだを溶融することを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、はんだ接合を行う部材および基材への熱損傷を抑制することと低出力レーザーが使用でき省エネを実現できるはんだ接合工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施の形態に係るはんだ接合工法の一例を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、実施の形態に係るはんだ接合工法の一例を示す説明図である。
【
図3A】
図3Aは、実施の形態に係るはんだ接合工法にて使用するレーザーはんだごての一例を示す概略断面図である。
【
図3B】
図3Bは、実施の形態に係るはんだ接合工法にて使用するレーザーはんだごての他の例を示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、他の実施の形態に係るはんだ接合工法の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態、並びに、ステップ(工程)及びステップの順序等は、一例であり、本発明を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0012】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0013】
(実施の形態)
以下、本実施の形態に係るはんだ接合工法について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明するはんだ接合工法は、人の手で行ってもよく、機械で行ってもよい。
【0014】
まず、本実施の形態に係るはんだ接合工法について、
図1~
図3Bを用いて説明する。
図1は、本実施の形態に係るはんだ接合工法の一例を示すフローチャートである。
図1に示すように、本実施の形態に係るはんだ接合工法の主なフローとしては、はんだの表面にレーザー吸収剤を塗布する(S01)。レーザー吸収剤を塗布したはんだを、基材と部材とを接合する接合部に近づけ(例えば、近接させ)、はんだの表面に塗布されたレーザー吸収剤に、レーザーはんだごてで、2W以上10W以下の低出力レーザー光の焦点をずらして照射することで、はんだをプリヒートする(S02)。プリヒートの後、はんだの表面に塗布されたレーザー吸収剤に、低出力レーザー光の焦点を合わせて照射することにより、はんだを溶融させる(S03)。溶融されたはんだが、基材と部材との接合部で、冷却固化(合金の形成)することにより、基材と部材とを接合する(S04)。
【0015】
次に、
図2は、はんだ接合工法の一例を示す説明図である。また、
図3Aおよび
図3Bは、本実施の形態に係るはんだ接合工法にて使用するレーザーはんだごての一例を示す概略断面図である。ここでは、はんだ接合工法について、電子部品を基材に実装する例を用いてさらに詳細に説明する。
【0016】
本実施の形態に係るはんだ接合工法では、例えば、
図2の(a)に示すように、予め、基材1の所定の位置(例えば、ランド部)1aに部材2(例えば、電子部品であるチップコンデンサ等)を配置する。ここで、基材1と部材2との接合信頼性を高めるため、および、レーザー照射時の位置ずれを防止するため、基材1の所定の位置(ランド部)1aと所定の位置(ランド部)1aとの間(つまり、電子部品の電極以外の表面に対向する位置)に、接着剤を配置してもよい。上記接着剤は、例えば、熱硬化型接着剤である。これにより、基材1および部材2をプリヒートする際に、部材2を所定の位置1aに固定することができる。
【0017】
なお、基材1は、例えば、電子部品等を実装するための実装基板であって、具体的には、セラミックス基板、樹脂基板またはメタルベース基板等を挙げることができる。
【0018】
次に、
図2の(b)に示すように、はんだ3の表面にレーザー吸収剤4(炭素同素体、例えば、カーボンナノチューブ)を塗布する(S01)。
【0019】
レーザー吸収剤4は、照射されたレーザー光5のエネルギーを吸収し、熱伝達によりはんだ3を溶融させる部材であり、例えば、レーザーに対する吸収性の高い染料あるいは顔料である。具体的には、炭素同素体および有機化合物のうち1種以上を含有する。より具体的には、炭素同素体としては、例えば、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、グラファイト等を挙げることができ、有機化合物としては、例えば、アジン系化合物、ニグロシン、アニリンブラック、フタロシアニン、ナフタロシアニン、ポルフィリン、シアニン系化合物、ペリレン、クオテリレン、アゾ染料、アントラキノン、スクエア酸誘導体およびインモニウム染料等を挙げることができる。その他、チタンブラック、黒色酸化鉄等の黒色顔料、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、リトポン等の白色顔料、アドミウムイエロー、黄鉛(クロム黄)、ジンククロメート、黄土、黄色酸化鉄等黄色顔料、赤口顔料、アンバー、赤色酸化鉄、カドミウムレッド、鉛丹等の赤色顔料、紺青、群青、コバルトブルー等青色顔料、クロムグリーン、コバルトグリーン、ビリジアン等の緑色顔料、金属錯体等の無機化合物を含んでもよい。
【0020】
中でも、レーザーの吸収性(吸光度)が高く、溶媒との分散性やコスト性が良好であることから、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、グラフェンまたはグラファイト等の炭素同素体が特に好ましい。
【0021】
また、レーザー吸収剤4は、粒径が10μmより小さければよい。レーザー吸収剤4の粒径(平均粒径)が10μmよりも小さいと、レーザー吸収剤4にレーザー光5を照射することによりレーザー吸収剤4が燃焼して形成される微細な孔の径も10μmより小さくなる。そのため、はんだ接合を行った際にはんだに形成される微細な孔に湿気(粒径10μm)が入り込みにくくなり、酸化による錆等の発生を抑制することができる。
【0022】
なお、レーザー吸収剤4の平均粒径は、10nm以上であることが好ましい。上記平均粒径が10nm未満であると、高いレーザーエネルギーを要するため、低出力レーザー光では、精度よくはんだ接合を行うことができない場合があるからである。
【0023】
レーザー吸収剤4は、例えば、水や有機溶剤等に分散されていてもよく、溶液に分散されたレーザー吸収剤4を刷毛7等ではんだ3の表面に塗布してもよい。なお、
図2の(b)では、説明の容易のため、レーザー吸収剤4のはんだ3への塗布に、刷毛7を使用する例を示しているが、はんだ3への異物の付着を予防する観点から、毛および繊維等を使用しない形状のものを使用することが好ましい。毛および繊維等を使用しない形状のものとしては、例えば、樹脂やゴム等で形成されたもの(例えば、へら等)であってもよく、レーザー吸収剤4の分散液をはんだ3の表面に噴霧するもの(例えば、スプレー等)であってもよい。
【0024】
上記溶液に分散されるレーザー吸収剤4の添加量は、例えば、溶液100重量部に対し、0.001重量部以上3.0重量部以下であり、好ましくは0.01重量部以上2.0重量部以下である。レーザー吸収剤の含有量が0.001重量部未満であるとレーザー溶着時の発熱量が少なく、はんだ3と基材1および部材2との接合強度が不十分となりやすく、一方、2.0重量部を超えると溶融したはんだ3にレーザー吸収剤4が残存し、はんだ不良およびはんだ接合部の劣化の原因となる場合があるからである。
【0025】
また、はんだ3は、鉛含有はんだであっても、鉛フリーはんだであってもよい。具体的には、鉛含有はんだとしては、Sn-Pb、Sn-Pb-Bi、Sn-Pb-Ag、などを挙げることができる。また鉛フリーはんだとしては、Sn-Ag-Cu、Sn-Ag、Sn-Sb、Sn-Cu、Bi-Sn、In-Snなどを挙げることができる。
【0026】
次に、
図2の(c)に示すように、レーザー吸収剤4を塗布したはんだ3を、基材1と部材2とを接合する接合部に近接させる。そして、はんだ3の表面に塗布されたレーザー吸収剤4に、レーザーはんだごて6を用いて、2W以上10W以下の低出力レーザー光(以下、単に、「レーザー光」と称する場合がある。)の焦点10をずらして照射することにより、はんだ3をプリヒートする(S02)。はんだ3をプリヒートすることにより、はんだ3に含まれるフラックス中の有機溶剤の気化、フラックスの活性化、フラックスによるはんだ3表面の酸化物の除去を行うことができる。また、プリヒート温度は、はんだ3の融点よりも低いため、はんだ3の形態に変化はない。なお、はんだ3のプリヒートと同時に、基材1および部材2をプリヒートしてもよい。はんだ3と基材1および部材2との間の温度差を小さくすることにより、溶融したはんだ3が基材1と部材2との接合部で急激に冷却されることを防ぐことができるため、精度よくはんだ接合を行うことができる。また、溶融したはんだ3と基材1および部材2との温度差を小さくすることにより、はんだ接合の際に基材1および部材2の急激な温度変化を抑えることができ、熱衝撃による部材2の破損等を防ぐことができる。
【0027】
なお、プリヒートについては、必要に応じて適宜実施されればよい。
【0028】
また、はんだ3を、基材1と部材2とを接合する接合部に近接させるとは、はんだ3が溶融した際に溶融したはんだ3が接合部を覆うことができる間隔まではんだ3を接合部に近づけていればよく、はんだ3を接合部に当接してもよい。
【0029】
次に、
図2の(d)に示すように、はんだ3の表面に塗布されたレーザー吸収剤4に、レーザー光5の焦点10を合わせて照射し、はんだ3を溶融させる(S03)。
【0030】
照射するレーザーの種類は、レーザー吸収剤の種類、吸光性、添加量等を考慮して、適宜選択することができる。例えば、YAGレーザー、YVO4レーザー、ファイバーレーザー、半導体レーザー等が挙げられる。中でも、冷却効率が高く冷却機構が簡素化でき、小型化が可能である観点から、ファイバーレーザーが好ましい。また、照射するレーザーの波長としては、800nm以上1600nm以下の赤外光線、好ましくは800nm以上1100nmに発振波長を有するレーザー光を使用することができる。
【0031】
レーザーの出力は、2W以上10W以下の範囲内の値であり、中でも、2W以上8W以下の範囲内であることが好ましく、さらに、2W以上6W以下の範囲内であることが好ましく、特に、2W以上4W以下の範囲内であることが好ましい。上述のレーザー吸収剤を使用するため、レーザーの出力が2Wであれば、レーザー照射による熱エネルギーの発生が十分に得られ、はんだの種類に関わらず、精度よくはんだ接合を行うことができる。また、レーザーの出力が10Wを越えても、はんだ接合の精度に影響はなく、過剰な熱エネルギーの発生による周辺部材への影響(熱損傷等)も抑制される。しかしながら、エネルギーコストの削減、装置の小型化等の観点から、10W以下の範囲内であることが好ましい。
【0032】
また、レーザーの照射密度や移動速度などの照射条件は、レーザー吸収剤の種類、吸光性、添加量、使用するはんだの種類および量等を考慮して、適宜設定可能である。なお、はんだの表面に対するレーザー光の照射角度は垂直、斜めの何れであってもよい。
【0033】
ここで、レーザーはんだごて6は、レーザー吸収剤4を塗布したはんだ3にレーザー光5を照射するレーザー装置であり、一般的なレーザー装置を使用することができ、特に限定されるものではない。具体的には、
図3Aおよび
図3Bに示されるレーザーはんだごて6aおよび6bを挙げることができる。レーザーはんだごて6aでは、ファイバーレーザー101でから出射されたレーザー光5が、本体103の内部を通る光ファイバー102で伝搬され、光ファイバー102から出射されたレーザー光5はコリメートレンズ104でコリメートされ、集光レンズ105で集光される。一方、レーザーはんだごて6bは、コリメートレンズ104を有しておらず、光ファイバー102から出射されたレーザー光5が集光レンズ105で集光される。
【0034】
本実施の形態におけるレーザーはんだごて6は、通常のはんだごてのように、基板(基材1の一例)や基板に実装する部材2の大きさによって小手先の細さを変える必要がなく、レーザー吸収剤4を塗布した部分にレーザー光5を照射するだけでよい。このように、レーザーはんだごて6は、はんだ3と接触せずに接合を行うことができるため、通常のはんだごてでは消耗品である小手先(小手先につけるチップ)が不要であり、経済的である。もちろん、通常のはんだごてのような小手先の銅食われの心配もない。
【0035】
次に、
図2の(e)に示すように、溶融したはんだ3が基材1と部材2との接合部で冷却されて固化し、基材1と部材2とを接合する(S04)。
【0036】
なお、上記はんだ接合工法では、はんだ3をプリヒート(S02)せずに、はんだ3に塗布したレーザー吸収剤4にレーザー光5を照射し、はんだを溶融させてもよい(S03)。
【0037】
(他の実施の形態)
以下、他の実施の形態に係るはんだ接合工法について、
図4を用いて説明する。なお、実施の形態にて既に説明した内容については、説明を省略する。
【0038】
図4は、他の実施の形態に係るはんだ接合工法の一例を示す説明図である。
図4では、故障した部材(例えば、電子部品)2aを基材1から取り外し、新しい部材2を基材1に実装する例を示している。
【0039】
図4の(a)に示すように、故障した部材2aが基材1の所定の位置(例えば、ランド部)1aに実装されている。
図4の(b)に示すように、基材1と故障した部材2aとを接合するはんだ3の表面に、刷毛7等でレーザー吸収剤4を塗布する。そして、
図4の(c)に示すように、はんだ3の表面に塗布されたレーザー吸収剤4に、レーザーはんだごて6でレーザー光5を照射して、はんだ3を溶融させ、
図4の(d)に示すように、故障した部材2aを基材1上の所定の位置1aから取り外す。
【0040】
次に、
図4の(e)~(i)に示すように、新たな部材2を基材1上の所定の位置1aに配置し、実施の形態にて説明した手順と同様に、基材1と新しい部材2とを接合する。
【0041】
なお、他の実施の形態に係るはんだ接合工法では、接合が不十分な部材を基材から取り外し、基材に取り付け直す場合であってもよく、また、所定の位置と異なる位置に実装した部材を基材から取り外し、正しい位置に付け直す場合であってもよい。
【0042】
(まとめ)
以上のように、上記実施の形態に係るはんだ接合工法は、はんだ3の表面にレーザー吸収剤4を塗布し(S01)、はんだ3の表面に塗布されたレーザー吸収剤4に、2W以上10W以下の低出力レーザー光5を照射することで、はんだ3を溶融させる(S03)ことを含む。はんだ3の表面にレーザー吸収剤4を塗布することにより、レーザー光5の反射率が低減され、レーザー光5のエネルギーをレーザー吸収剤4が効率よく吸収することができる。そのため、レーザー光5は低出力であっても、はんだ3を溶融させる十分な熱エネルギーを得ることができ、はんだ接合を行う部材および基材に過剰な熱エネルギーが伝達されることを防ぐことができる。したがって、はんだ接合を行う基材および部材の熱損傷を抑制することができる。また、低出力レーザーを使用するため、省エネを実現することができる。
【0043】
また、はんだ3の表面は、複数の部材2とはんだ接合により接合されたはんだ3の表面であってもよい。これにより、実装された部材(例えば、故障した部材2a)が微小な部材であっても、上記実施の形態に係るはんだ接合工法を用いることにより、取り換える部材およびその周辺の基材への熱損傷を抑制することができるとともに、容易に新たな部材2に取り換えることができる。
【0044】
上記実施の形態で使用するレーザー吸収剤4は、粒径が10μmより小さい炭素同素体および有機化合物のうち1種以上を含有してもよい。レーザー吸収剤4の粒径が10μmよりも小さいと、レーザー吸収剤4にレーザー光5を照射した際にレーザー吸収剤4が燃焼することにより形成される微細な孔の径も10μmより小さくなる。そのため、はんだ接合を行った際にはんだに形成される微細な孔に湿気(粒径10μm)が入り込みにくくなり、錆等の発生を抑制することができる。
【0045】
さらに、照射(S03)の前に、はんだ3に、2W以上10W以下の低出力レーザー光5の焦点10をずらして照射することにより、はんだ3をプリヒート(S02)してもよい。これにより、はんだ3に含まれるフラックス中の有機溶剤の気化、フラックスの活性化、フラックスによるはんだ3表面の酸化物の除去を行うことができる。ここで、はんだ3のプリヒートと同時に、基材1および部材2をプリヒートしてもよい。はんだ3と基材1および部材2との間の温度差を小さくすることにより、溶融したはんだ3が基材1と部材2との接合部に沿って流れる途中で急激に冷却されることを防ぐことができるため、精度よくはんだ接合を行うことができる。また、溶融したはんだ3と基材1および部材2との温度差を小さくすることにより、はんだ接合の際に基材1および部材2の急激な温度変化を抑えることができ、熱衝撃による部材2の破損等を防ぐことができる。
【0046】
以上、本発明に係るはんだ接合工法について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本発明の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を実施の形態に施したものや、実施の形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される別の形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、低出力レーザーを使用するため、発生する熱エネルギーを調整することができ、微小な電子部品を含む回路の修理等にも適用できる。本発明のはんだ接合方法では、従来の方法よりも低出力のレーザーではんだ接合が可能となり、大幅な省エネが実現できる。また、微小部品や耐熱温度の低い部品等にまで修理範囲を拡大することができ、はんだ接合の品質を大幅に向上することができる。さらに、はんだ接合ロボット等機器の簡略化等で大幅なコストダウンが可能となる。
【符号の説明】
【0048】
1 基材
1a 所定の位置
2 部材
2a 故障した部材
3 はんだ
4 レーザー吸収剤
5 レーザー光
6、6a、6b レーザーはんだごて
7 刷毛
10 焦点
101 ファイバーレーザー
102 光ファイバー
103 本体
104 コリメートレンズ
105 集光レンズ