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特許7015513酸化染毛用第1剤、酸化染毛用第2剤および酸化染毛剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】酸化染毛用第1剤、酸化染毛用第2剤および酸化染毛剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20220207BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20220207BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20220207BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/81
A61K8/86
A61Q5/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017167408
(22)【出願日】2017-08-31
(65)【公開番号】P2019043873
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2020-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】595082283
【氏名又は名称】株式会社アリミノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】志村 幸一郎
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-028107(JP,A)
【文献】特開2001-328927(JP,A)
【文献】特表平06-501963(JP,A)
【文献】特開2014-108936(JP,A)
【文献】特開2001-220333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/34
A61K 8/81
A61K 8/86
A61Q 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化染毛用第1剤100質量%中に、ポリアクリル酸アミド(A)が0.1~1.1質量%、ベヘニルアルコール(B)が0.15~8質量%およびポリオキシエチレンベヘニルエーテル(C)が0.1~3質量%含まれている、酸化染毛用第1剤であって、
ポリアクリル酸アミド(A)がアクリル酸アミドの単独重合体である、酸化染毛用第1剤
【請求項2】
酸化染毛用第2剤100質量%中に、ポリアクリル酸アミド(A)が0.1~1.1質量%、ベヘニルアルコール(B)が0.15~8質量%およびポリオキシエチレンベヘニルエーテル(C)が0.1~3質量%含まれている、酸化染毛用第2剤であって、
ポリアクリル酸アミド(A)がアクリル酸アミドの単独重合体である、酸化染毛用第2剤
【請求項3】
酸化染毛用第1剤および酸化染毛用第2剤を混合してなる酸化染毛剤組成物であって、
酸化染毛剤組成物100質量%中に、ポリアクリル酸アミド(A)が0.05~0.55質量%、ベヘニルアルコール(B)が0.075~4質量%およびポリオキシエチレンベヘニルエーテル(C)が0.05~1.5質量%含まれ
ポリアクリル酸アミド(A)がアクリル酸アミドの単独重合体である、酸化染毛剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化染毛用第1剤、酸化染毛用第2剤および酸化染毛剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪を着色するために用いられるカラーリング剤として、酸化染料が配合された酸化染毛剤や酸性染料が配合された酸性染毛料等がある。酸化染毛剤は、毛髪内に浸透させた酸化染料を酸化重合により染着させるものであり、酸性染毛料とは異なる染毛原理を持つ。
近年、酸化染毛剤を用いて染毛した際の仕上がり時に艶を出すことが、仕上がりの美しさの観点から求められていた。
【0003】
艶を出すことが可能な酸化染毛剤として、ポリアクリル酸アミドおよびカルボキシビニルポリマーを含む酸化染毛剤が提案されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-1668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された酸化染毛剤は、従来の酸化染毛剤と比べた場合には艶に優れるものではあったが、未だその艶は充分でなく、さらなる改善が望まれていた。
本発明の目的は、染毛後の毛髪の艶に優れる酸化染毛用第1剤、酸化染毛用第2剤および酸化染毛剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、以下の構成を有する酸化染毛用第1剤、酸化染毛用第2剤および酸化染毛剤組成物は上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、例えば、以下の[1]~[3]である。
【0007】
[1]酸化染毛用第1剤100質量%中に、ポリアクリル酸アミド(A)が0.1~1.1質量%、ベヘニルアルコール(B)が0.15~8質量%およびポリオキシエチレンベヘニルエーテル(C)が0.1~3質量%含まれている、酸化染毛用第1剤。
【0008】
[2] 酸化染毛用第2剤100質量%中に、ポリアクリル酸アミド(A)が0.1~1.1質量%、ベヘニルアルコール(B)が0.15~8質量%およびポリオキシエチレンベヘニルエーテル(C)が0.1~3質量%含まれている、酸化染毛用第2剤。
【0009】
[3] 酸化染毛用第1剤および酸化染毛用第2剤を混合してなる酸化染毛剤組成物であって、
酸化染毛剤組成物100質量%中に、ポリアクリル酸アミド(A)が0.05~0.55質量%、ベヘニルアルコール(B)が0.075~4質量%およびポリオキシエチレンベヘニルエーテル(C)が0.05~1.5質量%含まれている、酸化染毛剤組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の酸化染毛用第1剤、酸化染毛用第2剤および酸化染毛剤組成物によれば、染毛後の毛髪は艶、仕上がりの滑らかさ、および流し時の指通りに優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、酸化染毛用第1剤、酸化染毛用第2剤および酸化染毛剤組成物により、構成される。
【0012】
〔酸化染毛用第1剤〕
本発明の酸化染毛用第1剤は100質量%中、ポリアクリル酸アミド(A)を0.1~1.1質量%、ベヘニルアルコール(B)を0.15~8質量%およびポリオキシエチレンベヘニルエーテル(C)を0.1~3質量%含む。
本発明の酸化染毛用第1剤は通常、酸化染料およびアルカリ剤を含有する。
【0013】
本発明の酸化染毛用第1剤に含まれるポリアクリル酸アミド(A)、ベヘニルアルコール(B)およびポリオキシエチレンベヘニルエーテル(C)の含有量が前記範囲内であると、染毛後の毛髪は艶、仕上がりの滑らかさ、および流し時の指通りに優れる。
【0014】
<酸化染料>
酸化染料は、酸化剤による酸化重合によって発色可能な化合物である。酸化染料は特に限定されないが、例えば、染料中間体、カップラー、メラニン前駆物質等が挙げられる。酸化染料等の染料は酸化染毛用第1剤に配合されることが好ましい。
【0015】
より具体的には、例えば、酸化染料として、フェニレンジアミン及びその誘導体、フェノール誘導体、アミノフェノール及びその誘導体、ジフェニルアミン及びその誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラゾール誘導体、ピロリジン誘導体、トルエン誘導体、インドール誘導体、ピロール誘導体、並びにイミダゾール誘導体等が挙げられる。
【0016】
更に具体的には、例えば、染料中間体としては、フェニレンジアミン類(但し、メタフェニレンジアミンを除く。)、アミノフェノール類(但し、メタアミノフェノール、2,4-ジアミノフェノール及びパラメチルアミノフェノールを除く。)、トルイレンジアミン類(但し、トルエン-3,4-ジアミン及びトルエン-2,4-ジアミンを除く。)、ジフェニルアミン類、ジアミノフェニルアミン類、N-フェニルフェニレンジアミン類、ジアミノピリジン類(但し、2,6-ジアミノピリジンを除く)等が挙げられる。
【0017】
染料中間体の中でも、染毛力が強いことからパラフェニレンジアミン、パラトルイレンジアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-パラフェニレンジアミン、N-フェニル-パラフェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、2-クロロパラフェニレンジアミン、N,N-ジメチルパラフェニレンジアミン、パラアミノフェノール、オルトアミノフェノール、2,6-ジクロロパラフェニレンジアミン、パラアミノフェニルスルファミン酸等が好ましい。
【0018】
カップラーとしては、レゾルシン、ピロガロール、カテコール、メタアミノフェノール、メタフェニレンジアミン、2,4-ジアミノフェノール、1,2,4-ベンゼントリオール、トルエン-3,4-ジアミン、トルエン-2,4-ジアミン、ハイドロキノン、α-ナフトール、2,6-ジアミノピリジン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、5-アミノオルトクレゾール、パラメチルアミノフェノール、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、没食子酸、タンニン酸、没食子酸エチル、没食子酸メチル、没食子酸プロピル、五倍子、5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-2-メチルフェノール等が挙げられる。
【0019】
なお、酸化染料は、酸化剤による酸化重合によって発色可能な化合物の塩を含む概念である。例えば、上記した各化合物の酸付加塩等が挙げられる。好ましくは、有機酸の付加塩、無機酸の付加塩等が挙げられる。
【0020】
これら酸化染料は単独で配合してもよく、組み合わせて配合してもよい。本発明の酸化染毛用第1剤における酸化染料の含有量は特に限定されないが、好ましくは0.005~5質量%である。
【0021】
<アルカリ剤>
アルカリ剤として、例えば、アンモニア、アルカノールアミン、有機アミン類(2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、グアニジン等)、無機アルカリ(無水亜硫酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等)、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン等)及びそれらの塩等が挙げられる。アルカノールアミンの具体例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。
これらのアルカリ剤は単独で配合してもよく、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0022】
本発明の酸化染毛用第1剤におけるアルカリ剤の含有量は特に限定されないが、好ましくは0.5~15質量%である。本発明の酸化染毛剤組成物を使用する上で好ましいpHに調整することができる。
【0023】
<任意成分>
本発明の酸化染毛用第1剤は、その他の成分として、(A)~(C)成分、酸化染料およびアルカリ剤に該当しない、任意成分が配合されてもよい。例えば、イオン交換水等の水、セトステアリルアルコール等の油剤、流動パラフィン等の炭化水素、ポリオキシエチレンセチルエーテル等のノニオン界面活性剤、プロピレングリコール等の溶剤、L-アスコルビン酸等の酸化防止剤およびキレート剤が挙げられる。
【0024】
<剤型>
本発明の酸化染毛用第1剤の剤型は、乳化物状であることが好ましい。具体的にはフォーム状、クリーム状、乳液状等が挙げられる。酸化染毛用第1剤は、乳化安定性が得られ易いことから、水中油滴型乳化物であることが好ましい。本発明の酸化染毛用第1剤の剤型は、各剤型の常法に基づき調製することができる。
【0025】
本発明の酸化染毛用第1剤は、通常は、本発明の酸化染毛用第2剤と共に用いられることはない。本発明の酸化染毛用第1剤を、酸化染毛用第2剤と共に用いることにより、酸化染毛剤組成物を得ることが可能であるが、得られる酸化染毛剤組成物が、(A)~(C)成分を所定の量で含む本発明の酸化染毛剤組成物となるように、酸化染毛用第2剤に含まれる各成分の種類や量、酸化染毛用第1剤と、酸化染毛用第2剤との量比を適宜決定することが好ましい。すなわち、本発明の酸化染毛用第1剤と共に用いられる、酸化染毛用第2剤としては、前記(A)~(C)成分を含まないか、(A)~(C)成分から選択される少なくとも1種の成分を少量含むことが好ましい。このような酸化染毛用第2剤であれば、従来公知のものを始め、特に制限なく、本発明の酸化染毛用第1剤と共に用いることができる。
【0026】
〔酸化染毛用第2剤〕
本発明の酸化染毛用第2剤は100質量%中、ポリアクリル酸アミド(A)を0.1~1.1質量%、ベヘニルアルコール(B)を0.15~8質量%およびポリオキシエチレンベヘニルエーテル(C)を0.1~3質量%含む。
本発明の酸化染毛用第2剤は通常、酸化剤を含有する。
【0027】
本発明の酸化染毛用第2剤に含まれるポリアクリル酸アミド(A)、ベヘニルアルコール(B)およびポリオキシエチレンベヘニルエーテル(C)の含有量が前記範囲内であると、染毛後の毛髪は艶、仕上がりの滑らかさ、および流し時の指通りに優れる。
【0028】
酸化剤は、酸化染料を酸化重合させて発色させるとともに、毛髪に含まれるメラニンを脱色させるために配合される。酸化剤の具体例としては、例えば、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、硫酸塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、ピロリン酸塩の過酸化水素付加物等が挙げられる。これらの酸化剤は単独で配合してもよく、二種以上を組み合わせて配合してもよい。これらの酸化剤の中でも、メラニンの脱色力に優れることから、好ましくは過酸化水素である。
【0029】
本発明の酸化染毛用第2剤における酸化剤の含有量は特に限定されないが、好ましくは1~6質量%である。
【0030】
<任意成分>
本発明の酸化染毛用第2剤は、その他の成分として、(A)~(C)成分、酸化剤に該当しない、任意成分が配合されてもよい。例えば、イオン交換水等の水、セトステアリルアルコール等の油剤およびポリオキシエチレンステアリルエーテルおよびポリオキシエチレンセチルエーテル等のノニオン界面活性剤が含有される。
【0031】
<剤型>
本発明の酸化染毛用第2剤の剤型は、水溶液状、分散液状、ゲル状、フォーム状、クリーム状、乳液状等が挙げられる。本発明の酸化染毛用第2剤は、各剤型の常法に従って調製することが出来る。
【0032】
本発明の酸化染毛用第2剤は、通常は、本発明の酸化染毛用第1剤と共に用いられることはない。本発明の酸化染毛用第2剤を、酸化染毛用第1剤と共に用いることにより、酸化染毛剤組成物を得ることが可能であるが、得られる酸化染毛剤組成物が、(A)~(C)成分を所定の量で含む本発明の酸化染毛剤組成物となるように、酸化染毛用第1剤に含まれる各成分の種類や量、酸化染毛用第1剤と、酸化染毛用第2剤との量比を適宜決定することが好ましい。すなわち、本発明の酸化染毛用第2剤と共に用いられる、酸化染毛用第1剤としては、前記(A)~(C)成分を含まないか、(A)~(C)成分から選択される少なくとも1種の成分を少量含むことが好ましい。このような酸化染毛用第1剤であれば、従来公知のものを始め、特に制限なく、本発明の酸化染毛用第2剤と共に用いることができる。
【0033】
〔酸化染毛剤組成物〕
本発明の酸化染毛剤組成物は、酸化染毛用第1剤および酸化染毛用第2剤を混合してなるものであって、
酸化染毛剤組成物100質量%中に、ポリアクリル酸アミド(A)が0.05~0.55質量%、ベヘニルアルコール(B)が0.075~4質量%およびポリオキシエチレンベヘニルエーテル(C)が0.05~1.5質量%含まれている、酸化染毛剤組成物である。
【0034】
本発明の酸化染毛剤組成物は、酸化染毛用第1剤と、酸化染毛用第2剤とを混合することにより得られる組成物であり、酸化染毛剤組成物は、通常、使用の直前に混合される。なお、本発明の酸化染毛剤組成物は、酸化染毛用第1剤と、酸化染毛用第2剤とに加え、さらに酸化染毛用第3剤とを混合することにより得られる組成物であってもよい。
【0035】
本発明の酸化染毛剤組成物は、前記(A)~(C)成分を前述の範囲で含んでいればよく、前記(A)~(C)成分はそれぞれ、酸化染毛用第1剤に由来してもよく、酸化染毛用第2剤に由来してもよい。また、酸化染毛用第3剤を用いる場合には、前記(A)~(C)成分は、酸化染毛用第3剤に由来してもよい。
【0036】
本発明の酸化染毛剤組成物の調製方法としては、例えば本発明の酸化染毛用第1剤と、前記(A)~(C)成分を含まないか、(A)~(C)成分から選択される少なくとも1種の成分を少量含む酸化染毛用第2剤とを混合する方法(方法1)、本発明の酸化染毛用第2剤と、前記(A)~(C)成分を含まないか、(A)~(C)成分から選択される少なくとも1種の成分を少量含む酸化染毛用第1剤とを混合する方法(方法2)、(A)~(C)成分から選択される少なくとも1種の成分を少量含む酸化染毛用第1剤と、(A)~(C)成分から選択される少なくとも1種の成分を少量含む酸化染毛用第2剤とを混合する方法(方法3)等が挙げられる。なお、いずれの方法であっても、得られる酸化染毛剤組成物において、(A)~(C)成分が前記範囲となる量で、酸化染毛用第1剤および酸化染毛用第2剤に含まれる(A)~(C)成分の種類や量、酸化染毛用第1剤と、酸化染毛用第2剤との混合割合を調整する必要がある。例えば、本発明の酸化染毛用第1剤と、(A)~(C)成分を含まない酸化染毛用第2剤とを混合する場合、あるいは本発明の酸化染毛用第2剤と、(A)~(C)成分を含まない酸化染毛用第1剤とを混合する場合には、1剤と2剤との質量比が例えば1:1となるように混合すると、本発明の酸化染毛剤組成物を得ることができる。
【0037】
本発明の酸化染毛剤組成物に含まれるポリアクリル酸アミド(A)、ベヘニルアルコール(B)およびポリオキシエチレンベヘニルエーテル(C)の含有量が前記範囲内であると、染毛後の毛髪は艶、仕上がりの滑らかさ、および流し時の指通りに優れる。
本発明の酸化染毛剤組成物は、前記(A)~(C)成分以外にも酸化染毛用第1剤および第2剤に由来する成分を含んでいる。
【0038】
<任意成分>
本発明の酸化染毛剤組成物は、通常、精製水を含んでおり、さらに任意成分を本発明の目的を損なわない範囲で含んでいてもよい。例えば、任意成分としては、セトステアリルアルコール等の油剤、流動パラフィン等の炭化水素、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル等のノニオン界面活性剤、プロピレングリコール等の溶剤、L-アスコルビン酸等の酸化防止剤およびキレート剤などが挙げられる。
【0039】
<剤型>
また、本発明の酸化染毛剤組成物は、水溶液、クリーム、ワックス、ゲル、フォームなどの剤型とすることができる。本発明の酸化染毛剤組成物は、各剤型の常法に基づき調製することができる。
【0040】
<ポリアクリル酸アミド(A)>
本発明にはポリアクリル酸アミド(A)が用いられる。ポリアクリル酸アミド(A)は、アクリル酸アミドの単独重合体または共重合体である。
また、ポリアクリル酸アミド(A)としては、合成したものを用いても、市販品を用いてもよく、市販のポリアクリル酸アミドとしては、他の成分との混合物として流通しているもの、例えば、ポリアクリル酸アミド、軽質流動イソパラフィンおよびポリオキシエチレンラウリルエーテルを含むSEPPIC社の「SEPIGEL 305」等、を用いてもよい。
【0041】
本発明の酸化染毛用第1剤または第2剤に含まれるA成分は、通常0.1~1.1質量%、好ましくは0.2~1.1質量%、より好ましくは0.2~0.5質量%である(酸化染毛用第1剤または第2剤全体を100質量%とする)。
本発明の酸化染毛用第1剤または第2剤に含まれるA成分が前記範囲内であると、染毛後の毛髪は艶、仕上がりの滑らかさ、および流し時の指通りに優れる。
【0042】
本発明の酸化染毛剤組成物に含まれるA成分は、通常0.05~0.55質量%、好ましくは0.1~0.55質量%、より好ましくは0.1~0.25質量%である(酸化染毛剤組成物全体を100質量%とする)。
本発明の酸化染毛剤組成物に含まれるA成分が前記範囲内であると、染毛後の毛髪は艶、仕上がりの滑らかさ、および流し時の指通りに優れる。
【0043】
<ベヘニルアルコール(B)>
本発明にはベヘニルアルコール(B)が用いられる。本発明において、ベヘニルアルコール(B)は炭素数22の飽和直鎖高級アルコール(CH3(CH221OH)であるか、炭素数22の飽和直鎖高級アルコールと、炭素数16~20、24の飽和直鎖高級アルコール等との混合物である。ベヘニルアルコール(B)が、前記混合物である場合には、炭素数22の飽和直鎖高級アルコールを通常60~90質量%含む。
【0044】
本発明の酸化染毛用第1剤または第2剤に含まれるB成分は、通常0.15~8質量%、好ましくは0.5~8質量%、より好ましくは1~4質量%である(酸化染毛用第1剤または第2剤全体を100質量%とする)。
本発明の酸化染毛用第1剤または第2剤に含まれるB成分が前記範囲内であると、染毛後の毛髪は艶、仕上がりの滑らかさ、および流し時の指通りに優れる。
【0045】
本発明の酸化染毛剤組成物に含まれるB成分は、通常0.075~4質量%、好ましくは0.25~4質量%、より好ましくは0.5~2質量%である(酸化染毛剤組成物全体を100質量%とする)。
本発明の酸化染毛剤組成物に含まれるB成分が前記範囲内であると、染毛後の毛髪は艶、仕上がりの滑らかさ、および流し時の指通りに優れる。
【0046】
<ポリオキシエチレンベヘニルエーテル(C)>
本発明にはポリオキシエチレンベヘニルエーテル(C)が用いられる。ポリオキシエチレンベヘニルエーテル(C)は、ポリオキシエチレンと、ベヘニルアルコールとから得られるエーテルであり、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル(C)は、主に、下記一般式(I)で表される化合物から構成される。
【0047】
【化1】
(一般式(I)において、Rは炭素数16~24のアルキル基であり、nは2~50である。)
【0048】
本発明の酸化染毛用第1剤または第2剤に含まれるC成分は、通常0.1~3質量%、好ましくは0.2~3質量%、より好ましくは0.2~0.5質量%である(酸化染毛用第1剤または第2剤全体を100質量%とする)。
本発明の酸化染毛用第1剤または第2剤に含まれるC成分が前記範囲内であると、染毛後の毛髪は艶、仕上がりの滑らかさ、および流し時の指通りに優れる。
【0049】
本発明の酸化染毛剤組成物に含まれるC成分は、通常0.05~1.5質量%、好ましくは0.1~1.5質量%、より好ましくは0.1~0.25質量%である(酸化染毛剤組成物全体を100質量%とする)。
本発明の酸化染毛剤組成物に含まれるC成分が前記範囲内であると、染毛後の毛髪は艶、仕上がりの滑らかさ、および流し時の指通りに優れる。
【実施例
【0050】
[実施例1~26、比較例1~13]
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例、比較例で使用した酸化染毛用第1剤および第2剤の成分および配合割合は、表1~4に示す通りである。表1~4に記載された成分の単位は質量%であり、第1剤または第2剤の全量を100質量%として表す。
表1~4に記載の配合割合で、第1剤および第2剤の各成分を秤量して、第1剤および第2剤を調製した。その後第1剤および第2剤を質量基準で1:1の比率で混合することにより、酸化染毛剤組成物(酸化染毛剤)を調製した。
【0051】
調製した酸化染毛剤を用いて、以下の試験を行い、評価を行った。
なお、表1~4に記載の各成分は以下の市販品を用いた。
<ポリアクリル酸アミド(A成分)>
ポリアクリル酸アミド:SEPIGEL 305(SEPPIC社製)に40質量%含まれるポリアクリル酸アミド
<ベヘニルアルコール(B成分)>
ベヘニルアルコール:トーホー BH-65(東邦化学工業株式会社製)
<ポリオキシエチレンベヘニルエーテル(C成分)>
ポリオキシエチレンベヘニルエーテル:エマレックス BHA-30(日本エマルジョン株式会社製)
<A~C成分以外の成分>
パラフェニレンジアミン
レゾルシン
セトステアリルアルコール:カルコール 6850(花王株式会社製)
流動パラフィン:ハイコール K-230(カネダ株式会社製)
ポリオキシエチレンセチルエーテル:エマレックス 120(日本エマルジョン株式会社製)
プロピレングリコール:プロピレングリコール(昭和電工株式会社製)
L-アスコルビン酸:ビタミンC(扶桑化学工業株式会社製)
無水亜硫酸ナトリウム:亜硫酸ソーダ(大東化学株式会社製)
28%アンモニア水:28%アンモニア(大盛化工株式会社製)
キレート剤:キレスト 2D-SD(中部キレスト株式会社製)
ポリオキシエチレンステアリルエーテル:ブラウノンSR-730(青木油脂株式会社製)
35%過酸化水素水:35%過酸化水素水(東海電化株式会社製)
【0052】
<評価>
調製した酸化染毛剤を使用してヘアカラー処理を施した毛束に対し、専門パネラー(美容師)10名が1人ずつ以下の(1)~(3)の各項目に記載した評価基準に従って官能評価を行った。
なお、(3)流し時の指通り以外の項目については、ヘアカラー処理を施した毛束がドライの状態で評価を行った。
各項目につき10名の評価点の平均を算出し、以下のとおり評価した。
◎:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が3.5点以上である。
○:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が2.5点以上3.5点未満である。
△:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が1.5点以上2.5点未満である。
×:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が1.5点未満である。
比較例6および12の酸化染毛剤の評価は、ハンドリング性が悪く、粘度が高くなりすぎ、毛束に塗布することが困難であり、行わなかった。
【0053】
<評価項目および評価基準>
(1)艶に関する評価
人毛黒髪毛束(30cm、10g)(BS-B3A、ビューラックス株式会社製)に各実施例および比較例で製造した酸化染毛剤を30g塗布し、室温で30分放置後、40℃のお湯で水洗した。シェルパデザインサプリD-2シャンプー(株式会社アリミノ製)3gを用いてシャンプーした後、40℃のお湯で水洗し、シェルパデザインサプリD-2トリートメント(株式会社アリミノ製)3gを塗布した。その後、毛束を水洗しドライヤーで乾燥させた。
酸化染毛剤処理後の毛束の艶を目視で評価した。
4点 非常に艶がでている
3点 明らかな艶がある。
2点 やや艶を感じる。
1点 艶を感じない。
【0054】
(2)仕上がりの滑らかさに関する評価
人毛黒髪毛束(30cm、10g)(BS-B3A、ビューラックス株式会社製)に各実施例および比較例で製造した酸化染毛剤を30g塗布し、室温で30分放置後、40℃のお湯で水洗した。シェルパデザインサプリD-2シャンプー(株式会社アリミノ製)3gを用いてシャンプーした後、40℃のお湯で水洗し、シェルパデザインサプリD-2トリートメント(株式会社アリミノ製)3gを塗布した。その後、毛束を水洗しドライヤーで乾燥させた。
酸化染毛剤処理後の毛束の仕上がりの滑らかさを官能により評価した。
4点 非常に滑らかである。
3点 指通りが良く滑らかである。
2点 ややざらざらして滑らかではない。
1点 べたべたして滑らかさを全く感じない。
【0055】
(3)流し時の指通りに関する評価
人毛黒髪毛束(30cm、10g)(BS-B3A、ビューラックス株式会社製)に各実施例および比較例で製造した酸化染毛剤を30g塗布し、室温で30分放置後、40℃のお湯で水洗した時の指通りを評価した。
4点 滑らかに指が通る。
3点 問題なく指を通しながら水洗ができる。
2点 きしみはあるが指を通すことができる。
1点 きしみが強く指が通らない。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
実施例1~26で製造した酸化染毛剤はいずれも比較例と比べて艶、仕上がりの滑らかさ、および流し時の指通りの評価の全てが良好となった。また、実施例1~26で製造した酸化染毛剤はいずれもハンドリング性が良く、容易に毛束に塗布することができた。
【0061】
比較例1で製造した酸化染毛剤は、B成分およびC成分を含まない第1剤を使用して調製した。該比較例では酸化染毛剤処理後の毛髪は、艶および仕上がりの滑らかさが劣る結果となった。
【0062】
比較例2~4で製造した酸化染毛剤は、A~C成分がそれぞれの所定の範囲の量より少なく含まれる第1剤を使用して調製した。該比較例では酸化染毛剤処理後の毛髪は、艶および仕上がりの滑らかさが劣る結果となった。
【0063】
比較例5で製造した酸化染毛剤は、A成分が所定の範囲の量より多く含まれる第1剤を使用して調製した。該比較例では酸化染毛剤処理後の毛髪は、流し時の指通りが劣る結果となった。
【0064】
比較例6で製造した酸化染毛剤は、B成分が所定の範囲の量より多く含まれる第1剤を使用して調製した。該比較例はハンドリング性が悪く、毛束に塗布することが困難であった。
【0065】
比較例7で製造した酸化染毛剤は、C成分が所定の範囲の量より多く含まれる第1剤を使用して調製した。該比較例では酸化染毛剤処理後の毛髪は、仕上がりの滑らかさおよび流し時の指通りが劣る結果となった。
【0066】
比較例8~10で製造した酸化染毛剤は、A~C成分がそれぞれの所定の範囲の量より少なく含まれる第2剤を使用して調製した。該比較例では酸化染毛剤処理後の毛髪は、艶および仕上がりの滑らかさが劣る結果となった。
【0067】
比較例11で製造した酸化染毛剤は、A成分が所定の範囲の量より多く含まれる第2剤を使用して調製した。該比較例では酸化染毛剤処理後の毛髪は、流し時の指通りが劣る結果となった。
【0068】
比較例12で製造した酸化染毛剤は、B成分が所定の範囲の量より多く含まれる第2剤を使用して調製した。該比較例はハンドリング性が悪く、毛束に塗布することが困難であった。
【0069】
比較例13で製造した酸化染毛剤は、C成分が所定の範囲の量より多く含まれる第2剤を使用して調製した。該比較例では酸化染毛剤処理後の毛髪は、仕上がりの滑らかさおよび流し時の指通りが劣る結果となった。