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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】ヒンジ
(51)【国際特許分類】
   G03B 27/62 20060101AFI20220127BHJP
   F16C 11/04 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
G03B27/62
F16C11/04 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018025160
(22)【出願日】2018-02-15
(65)【公開番号】P2019139192
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】592264101
【氏名又は名称】下西技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】特許業務法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安井 頼一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 禎治
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-128251(JP,A)
【文献】特開2007-132399(JP,A)
【文献】実公昭49-000230(JP,Y1)
【文献】特開2009-071804(JP,A)
【文献】特開2017-111375(JP,A)
【文献】米国特許第03555591(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 27/62
F16C 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一連結対象物に固定される第一ウイング部材と、
第二連結対象物に固定されるとともに前記第一ウイング部材に回動軸を介して回動可能に連結され、前記第一ウイング部材に対して開状態と閉状態との間で遷移する第二ウイング部材と、
前記第二ウイング部材に接近する方向および前記第二ウイング部材から離間する方向に移動可能な第一スライド部材と、
前記第一ウイング部材のスライド部材収容室内に配置され、前記スライド部材収容室の内面に当接した状態で前記第二ウイング部材に接近する方向および前記第二ウイング部材から離間する方向に移動可能な第二スライド部材と、を具備し、
前記第二ウイング部材を開状態から閉状態とするときに、前記第一スライド部材は前記第二ウイング部材から離間する方向に移動し、前記第二スライド部材は第一スライド部材によって押込まれるようにして前記第二ウイング部材から離間する方向に移動する、ヒンジ。
【請求項2】
前記第一スライド部材は挿入部を備え、
前記第二スライド部材は、前記第一スライド部材の挿入部を圧入可能な挿入孔を備え、前記第二ウイング部材を開状態から閉状態とするときに、前記第一スライド部材の挿入部が前記挿入孔に圧入されることによって弾性変形して、前記第二ウイング部材から離間する方向に移動するときの前記スライド部材収容室の内面との摩擦力を増加させる、請求項1に記載のヒンジ。
【請求項3】
前記第一スライド部材に回動軸を介して回動可能に連結され、前記第二ウイング部材に回動軸を介して回動可能に連結される、中間部材を具備し、
前記中間部材は、前記第二ウイング部材を開状態から閉状態とするときに、前記第一スライド部材を押込むようにして前記第二ウイング部材から離間する方向に移動させる、請求項1または請求項2に記載のヒンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば事務機器の本体に事務機器の原稿圧着板を開閉可能に連結する等、第一連結対象物に第二連結対象物を開閉可能に連結するヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、ファクシミリ、スキャナー等、オフィスで使用される事務機器の多くは、その本体の上面に原稿読み取り部(コンタクトガラス)を具備するとともに、当該原稿読み取り部を覆う原稿圧着板を具備する。原稿圧着板は、原稿読み取り部に載置された原稿を原稿読み取り部に密着させるとともに原稿読み取り部に対する原稿の位置を保持するものである。
【0003】
事務機器の本体と原稿圧着板とを連結する器具としては、第一ウイング部材と、第一ウイング部材に回動軸を介して回動可能に連結される第二ウイング部材と、ダンパーとを具備するヒンジが知られている(特許文献1参照)。
前記ヒンジでは、例えば、第二ウイング部材(原稿圧着板)を閉じる方向に回動させたときの回動速度をダンパーによって減衰させる。前記ヒンジのダンパーは、バネやオイル等を用いてダンパー効果(減衰効果)を生じさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-111375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記ヒンジでは、バネやオイルを用いたダンパーを具備することから、比較的高価な構成となっていた。
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、バネやオイルを用いずに比較的安価にダンパー効果を生じさせることができるヒンジを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、第一連結対象物に固定される第一ウイング部材と、第二連結対象物に固定されるとともに前記第一ウイング部材に回動軸を介して回動可能に連結され、前記第一ウイング部材に対して開状態と閉状態との間で遷移する第二ウイング部材と、前記第二ウイング部材に接近する方向および前記第二ウイング部材から離間する方向に移動可能な第一スライド部材と、前記第一ウイング部材のスライド部材収容室内に配置され、前記スライド部材収容室の内面に当接した状態で前記第二ウイング部材に接近する方向および前記第二ウイング部材から離間する方向に移動可能な第二スライド部材と、を具備し、前記第二ウイング部材を開状態から閉状態とするときに、前記第一スライド部材は前記第二ウイング部材から離間する方向に移動し、前記第二スライド部材は第一スライド部材によって押込まれるようにして前記第二ウイング部材から離間する方向に移動するものである。
【0009】
請求項2においては、前記第一スライド部材は挿入部を備え、前記第二スライド部材は、前記第一スライド部材の挿入部を圧入可能な挿入孔を備え、前記第二ウイング部材を開状態から閉状態とするときに、前記第一スライド部材の挿入部が前記挿入孔に圧入されることによって弾性変形して、前記第二ウイング部材から離間する方向に移動するときの前記スライド部材収容室の内面との摩擦力を増加させるものである。
【0010】
請求項3においては、前記第一スライド部材に回動軸を介して回動可能に連結され、前記第二ウイング部材に回動軸を介して回動可能に連結される、中間部材を具備し、前記中間部材は、前記第二ウイング部材を開状態から閉状態とするときに、前記第一スライド部材を押込むようにして前記第二ウイング部材から離間する方向に移動させるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明によれば、バネやオイルを用いずに比較的安価にダンパー効果を生じさせるものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るヒンジを具備する複合機を示す側面図。
図2】同じくヒンジを示す斜視図。
図3】同じくヒンジの開放状態を示す側面図。
図4】同じくヒンジの開いた状態を示す側面断面図。
図5】同じくヒンジの第一スライダを示す正面図。
図6】同じくヒンジの第一スライダと第二スライダを示す斜視図。
図7】同じくヒンジの閉じる動作を示す側面断面図。
図8】同じくヒンジの閉じる動作を示す側面断面図。
図9】同じくヒンジの閉じた状態を示す側面断面図。
図10】同じくヒンジの開く動作を示す側面断面図。
図11】同じくヒンジの開く動作を示す側面断面図。
図12】同じくヒンジの開いた状態を示す側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では図1を用いて事務機器の実施の一形態である複合機1について説明する。
複合機1は本体2および原稿圧着板3を具備する。本実施形態において、複合機1は本発明の第一実施形態に係るヒンジ100を具備する構成とするが、複合機1が後述する他の実施形態に係るヒンジを具備する構成とすることも可能である。
【0014】
本体2は本発明に係る第一連結対象物の実施の一形態である。
本体2は原稿読み取り装置、制御装置、印刷装置、表示装置および入力装置を具備する。
原稿読み取り装置は本体2の上面に配置される。原稿読み取り装置は本体2の上面に載置された原稿を読み取る(原稿の画像情報を生成する)。
制御装置は複合機1の各部の動作、より詳細には原稿読み取り装置、後述する印刷装置および後述するADFの動作を制御する。
また、制御装置は原稿読み取り装置が生成した画像情報および本体2に接続された回線(インターネット回線等)を通じて取得した画像情報を記憶することが可能である。
印刷装置は原稿読み取り装置の下方に配置される。印刷装置は制御装置が記憶した画像情報に基づいて所定の用紙に画像を印刷する。
表示装置は例えば液晶パネルからなり、複合機1の動作状況等に係る情報を表示する。
入力装置は例えばボタン、スイッチ等からなり、作業者が複合機1に対する指示等を入力する際に操作する。表示装置および入力装置は本体2の上面前部に配置される。
【0015】
原稿圧着板3は本発明に係る第二連結対象物の実施の一形態である。
原稿圧着板3は原稿読み取り装置の上に載置された原稿を原稿読み取り装置に向かって押さえつける(圧着する)ことにより、原稿読み取り装置が原稿を読み取る際に原稿が動く(原稿読み取り装置との相対的な位置が変化する)ことを防止する。
原稿圧着板3は読取前原稿収容トレイ、ADF(Auto Document Feeder)および読取後原稿収容トレイを具備する。
ADFは読取前原稿収容トレイに積層状態で収容された複数枚の原稿を一枚ずつ順に取り出して原稿読み取り装置の上の所定の読取位置に載置する。原稿読み取り装置による原稿の読み取りが終了した後、ADFは読取位置に載置された原稿を読取後原稿収容トレイに搬送する。
【0016】
「事務機器」は、少なくとも原稿を読み取る(原稿の画像情報を取得する)機能を具備する装置を指す。
事務機器の具体例としては、(a)原稿を読み取る機能および読み取った原稿に係る画像情報を他の機器(例えば、パーソナルコンピュータ)に送信する機能を具備するスキャナー、(b)原稿を読み取る機能、読み取った原稿に係る画像情報を通信回線を介して他の機器に送信する機能および他の機器から取得した画像情報をプリントアウトする機能を具備するファクス、(c)原稿を読み取る機能および読み取った原稿に係る画像情報をプリントアウトする機能を具備するコピー機、(d)上記スキャナー、ファクス、およびコピー機としての機能を兼ねる複合機、等が挙げられる。
【0017】
以下で詳述する各実施形態に係るヒンジはいずれも複合機1の本体2に原稿圧着板3を開閉可能(回動可能)に連結する用途に用いられるが、本発明に係るヒンジの用途はこれに限定されない。
すなわち、本発明に係るヒンジは、「二つの部材のうちの一方の部材(第一連結対象物)に他方の部材(第二連結対象物)を開閉可能に連結する用途」に広く適用可能である。
本発明に係るヒンジが適用される他の用途の具体例としては、事務機器の本体にトナーカートリッジを交換するためのハッチ(蓋)を開閉可能に連結する用途、自動車の車体にボンネットを開閉可能に連結する用途、便器に便座を開閉可能に連結する用途、等が挙げられる。
【0018】
以下の説明では、原稿圧着板3が閉じているとき(原稿圧着板3の下面が本体2の上面に当接しているとき)の原稿圧着板3の回動角度θ(より厳密には、本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θ)を「0°」とし、原稿圧着板3が開く方向に回動した場合に回動角度θが増加する(回動角度θが正になる)ように原稿圧着板3の回動角度θを定義する(図1参照)。本実施形態において、本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θは、後述する第二ウイング部材の第一ウイング部材に対する閉状態からの回動角度とも一致する。このため、本実施形態では双方とも「回動角度θ」と記載する。
【0019】
以下では、図1から図12を用いて本発明に係るヒンジの一実施形態であるヒンジ100について説明する。
図1に示す如く、ヒンジ100は複合機1の本体2に原稿圧着板3を回動可能に連結する。
図2から図4に示す如く、ヒンジ100は、下部固定部材10、中間部材20、上部固定部材30、第一スライダ40、第二スライダ50、第一回動ピン71、第二回動ピン72、第三回動ピン73を具備する。
以下では便宜上、原稿圧着板3が本体2に対して閉じているとき(回動角度θ=0°のとき)の複合機1の上下方向、前後方向および左右方向を基準として(原稿圧着板3が本体2に対して閉じているときの複合機1の上下方向、前後方向および左右方向をそれぞれヒンジ100の上下方向、前後方向および左右方向に対応させて)ヒンジ100を構成する各部材の形状を説明する。また以下では、図中において示す白色矢印は上部固定部材30の回動方向を示すものとして説明する。
【0020】
下部固定部材10は本発明に係る第一ウイング部材の実施の一形態である。下部固定部材10は複合機1の本体2に固定される。
下部固定部材10は、底部11と側部12と収容室13とを備え、上端部および上前部が開口する略円筒状に構成される。
側部12における上部の両側部には、第一回動ピン71を挿通するための貫通孔が開口される。
収容室13は、本発明に係るスライド部材収容室の実施の一形態である。収容室13は、下部固定部材10の内部の空間(底部11及び側部12で囲まれる空間)で構成され、第一スライダ40および第二スライダ50が収容される。収容室13の側壁の内面は、軸心方向と平行に構成される。収容室13には潤滑剤としてのグリスが塗布または充填されること等によって設けられる。
【0021】
中間部材20は本発明に係る中間部材の実施の一形態である。
中間部材20は、一対の側板部21・21と連結部22とを備える。
側板部21・21は、長円の平板状の部材であり、連結部22の左右に配置される。側板部21の下端側には、第二回動ピン72を挿通するための貫通孔が開口され、側板部21の上端側には、第三回動ピン73を挿通するための貫通孔が開口される。
連結部22は、平板状の部材であり、その左右の端部が側板部21・21のそれぞれの内側の面に固定されて、側板部21・21と連結される。
中間部材20は、第二回動ピン72を介して第一スライダ40に回動可能に連結され、
第三回動ピン73を介して上部固定部材30に回動可能に連結される。
【0022】
上部固定部材30は本発明に係る第二ウイング部材の実施の一形態である。上部固定部材30は複合機1の原稿圧着板3に固定される。上部固定部材30の後部には、第一回動ピン71を挿通するための貫通孔が開口される。上部固定部材30の下部には、第三回動ピン73を挿通するための貫通孔が開口される。上部固定部材30は第一回動ピン71を介して下部固定部材10に回動可能に連結される。
【0023】
第一スライダ40は本発明に係る第一スライド部材の実施の一形態である。本実施形態の第一スライダ40は樹脂材料からなる。
図4から図6に示す如く、第一スライダ40は、下部固定部材10の収容室13内(下部固定部材10内)に配置され、下部固定部材10の軸心方向(上下方向)に移動可能に構成される。第一スライダ40は、上部固定部材30に近接または離間する方向に移動可能に構成される。第一スライダ40は、下部固定部材10の底部11に近接または離間する方向に移動可能に構成される。
第一スライダ40は、取付部41と、挿入部42と、第一張出部43と、第二張出部44と、孔部45と、を備える。
【0024】
取付部41には第二回動ピン72を挿通するための貫通孔が開口される。
挿入部42は、取付部41の下方に配置され、取付部41に連接されるように設けられる。挿入部42は、上下方向を軸心とする棒状であって、下方(先端側)に行くに従って縮径される円錐台状に形成される。
第一張出部43は、取付部41と挿入部42との境界部分に設けられ、側方に張出して鍔状に構成される。第一張出部43の左右端部は下方に傾斜する。
第二張出部44は、挿入部42の下端部(先端部)に設けられ、側方に張出して鍔状に構成される。
孔部45は、挿入部42の軸心方向(上下方向)に沿って形成されて、挿入部42の下端から取付部41の貫通孔まで貫通する。
【0025】
第二スライダ50は本発明に係る第二スライド部材の実施の一形態である。本実施形態の第二スライダ50は樹脂材料からなる。
第二スライダ50は、一対のスライダ片50a・50aを組合わせることによって構成される円柱状の部材であり、下部固定部材10の収容室13内(下部固定部材10内)に配置される。スライダ片50aは、円柱状の部材を軸心方向に二分割した部材である。
第二スライダ50の側面は、収容室13の側壁内面と並行に構成される。第二スライダ50は、その外面と下部固定部材10の収容室13の側壁の内面とが当接した状態で下部固定部材10の軸心方向(上下方向)に移動可能(摺動可能)に構成される。第二スライダ50は、上部固定部材30に近接または離間する方向に移動可能に構成される。第二スライダ50は、下部固定部材10の底部11に近接または離間する方向に移動可能に構成される。第二スライダ50の上下方向の長さは、第一スライダ40の挿入部42の上下方向の長さよりも短く構成される。
第二スライダ50は、挿入孔51を備える。
【0026】
挿入孔51は、挿入孔51の上面から下面に貫通し、第一スライダ40の挿入部42を圧入可能に構成される。挿入孔51は、下方(先端側)に行くに従って縮径される円錐台状に形成される。挿入孔51の傾斜角度は、第一スライダ40の挿入部42の外面の傾斜角度と一致するように形成される。
第一スライダ40は、挿入部42の外面の外面と第二スライダ50の挿入孔51の内面とが当接した状態で下部固定部材10の軸心方向(上下方向)に移動可能(摺動可能)に構成される。
第二スライダ50は、第一スライダ40よりも軟質素材で構成されて、第二スライダ50に対して第一スライダ40が下方に移動して挿入部42が挿入孔51に圧入されて行くに従って、外側に膨張するように若干弾性変形する。このため、第二スライダ50の外面による下部固定部材10の収容室13の内面に対する押圧力が増加し、下部固定部材10に対して第二スライダ50が移動するときの下部固定部材10の収容室13の内面と第二スライダ50の外面との摩擦力(摩擦抵抗)が増加する。
【0027】
なお、第一スライダ40と第二スライダ50とを組立てる際には、第二スライダ50のスライダ片50a・50aの内側を向き合わせた状態にして第一スライダ40の挿入部42を挟み込むようにようにしてスライダ片50a・50a同士を固定する(図6参照)。
また、第一スライダ40と第二スライダ50とを組立てる際には、第二スライダ50の挿入孔51の上方の開口から第一スライダ40の挿入部42を挿入して、挿入孔51の下方の開口から挿入部42の先端を突出させた状態とし、当該挿入部42に第二張出部44を固定するものとすることもできる。
【0028】
第一回動ピン71は本発明に係る「第一ウイング部材に対する第二ウイング部材の回動軸(第二ウイング部材を第一ウイング部材に回動可能に連結する回動軸)」の実施の一形態であり、概ね円柱形状の部材である。
【0029】
第二回動ピン72は本発明に係る「第一スライド部材に対する中間部材の回動軸(中間部材を第一スライド部材に回動可能に連結する回動軸)」の実施の一形態であり、概ね円柱形状の部材である。
【0030】
第三回動ピン73は本発明に係る「第二ウイング部材に対する中間部材の回動軸(中間部材を第二ウイング部材に回動可能に連結する回動軸)」の実施の一形態であり、概ね円柱形状の部材である。
【0031】
本実施形態においては、上部固定部材30が下部固定部材10に最も近接した状態を上部固定部材30の「閉状態」(原稿圧着板3が本体2に対して閉じている状態)とする。閉状態とは、上部固定部材30の下部固定部材10に対する閉状態からの回動角度θが0°となる状態を指す。また、上部固定部材30が下部固定部材10から最も離間した状態を上部固定部材30の「開状態」とする。開状態とは、原稿圧着板3が本体2に対して開いている状態であり、回動角度θが45°となる状態を指す。
【0032】
ヒンジ100では、上部固定部材30を開状態から閉状態とするときに、ダンパー効果が生じて上部固定部材30の落下速度(閉じる方向への回動速度)を減衰させる。
以下では、上部固定部材30を開状態から閉状態とする動作について説明する。
【0033】
まず、図4に示す如く、上部固定部材30の開状態(回動角度θ=45°)では、第一スライダ40の第二張出部44の上面と第二スライダ50の下面とが当接した状態となっており、第二スライダ50が第一スライダ40によって上方に引上げられた状態となっている。
このような状態では、上部固定部材30の回動角度θ中(回動角度θが0°から45°中)において、第二スライダ50の挿入孔51に対する第一スライダ40の取付部42の圧入力は最も弱く、また、下部固定部材10の収容室13の内面と第二スライダ50の外面との摩擦力は最も弱い。
【0034】
次に、上部固定部材30を開状態から閉じる方向に回動させて回動角度θが45°から所定角度φ1までの第一領域における動作について説明する。
所定角度φ1は、30°に設定されている(図7参照)。図7から図8に示す如く、上部固定部材30を閉じる方向に回動させると中間部材20が上部固定部材30の回動方向と反対方向に回動し、中間部材20によって押込まれるようにして第一スライダ40が下方に移動する。
このとき、第一スライダ40の挿入部42が第二スライダ50の挿入孔51に圧入されていき、回動角度θが所定角度φ1になると、第一スライダ40の第一張出部43が第二スライダ50の上面に当接した状態となり、第一スライダ40の挿入部42が第二スライダ50の挿入孔51に圧入される動作が終了する。
回動角度θが45°から所定角度φ1までの第一領域においては、いずれの回動角度θにおいても、第二スライダ50の挿入孔51に対する第一スライダ40の取付部42の圧入力よりも下部固定部材10の収容室13の内面と第二スライダ50の外面との摩擦力の方が大きく、第二スライダ50は下方に移動しない。
回動角度θが所定角度φ1の状態においては、第二スライダ50の挿入孔51に対する第一スライダ40の取付部42の圧入力は最も強く、また、第二スライダ50が弾性変形していることから下部固定部材10の収容室13の内面と第二スライダ50の外面との摩擦力は最も強い。
【0035】
次に、上部固定部材30をさらに閉じる方向に回動させて回動角度θが所定角度φ1から0°までの第二領域における動作について説明する。
図8から図9に示す如く、上部固定部材30をさらに閉じる方向に回動させると中間部材20が上部固定部材30回動方向と反対方向にさらに回動し、中間部材20によって押込まれるようにして第一スライダ40が下方に移動する。このとき、第一スライダ40の第一張出部43によって第二スライダ50が引掛ったような状態となり、第一スライダ40によって押込まれるようにして第一スライダ40とともに第二スライダ50が下方に移動していき、上部固定部材30を閉状態(回動角度θ=0°)とする。
回動角度θが所定角度φ1から0°までの第二領域においては、第一スライダ40の挿入部42が第二スライダ50の挿入孔51に圧入された状態で、且つ、下部固定部材10の収容室13の内面に第二スライダ50の外面が当接した状態で、第二スライダ50が下方に移動する。
以上のようにして、ヒンジ100では、上部固定部材30を開状態から閉状態とする動作を行う。
【0036】
なお、上部固定部材30の「開状態」を回動角度θが0°以外の角度に設定することも可能である。また、上部固定部材30の「開状態」を回動角度θが45°以外の角度に設定することも可能である。また、所定角度φ1を30°以外の他の角度に設定することも可能である。
【0037】
以上のように、ヒンジ100では、上部固定部材30を開状態から閉状態とするときに、下部固定部材10の収容室13の内面に第二スライダ50の外面が当接した状態で第二スライダ50が下方に移動することから、下部固定部材10の収容室13の内面と第二スライダ50の外面との摩擦力によってダンパー効果が生じて上部固定部材30(第二連結対象物)の落下速度を減衰させることができる。
またこのように、ヒンジ100では、バネやオイルを用いずにダンパー効果を生じさせる構成とすることができることから、比較的安価にダンパー効果を生じさせるものを実現することができる。
【0038】
また以上のように、ヒンジ100では、上部固定部材30を開状態から閉状態とするときに、第一スライダ40の挿入部42が第二スライダ50の挿入孔51に圧入されることによって、第二スライダ50が弾性変形して下方に移動するときの下部固定部材10の収容室13の内面との摩擦力を増加させる。このため、上部固定部材30を開状態から閉状態とするときのダンパー効果をより確実に生じさせることができる。
【0039】
また以上のように、ヒンジ100では、上部固定部材30を開状態から閉じる方向に回動させて回動角度θが45°から所定角度φ1までの第一領域においては、第二スライダ50は下方に移動しないことから下部固定部材10の収容室13の内面と第二スライダ50の外面との摩擦力によるダンパー効果は生じず、また、第一スライダ40の挿入部42が第二スライダ50の挿入孔51に圧入されていくことから当該圧入力によるダンパー効果が生じている。また、上部固定部材30をさらに閉じる方向に回動させて回動角度θが所定角度φ1から0°までの第二領域においては、第二スライダ50は下方に移動することから下部固定部材10の収容室13の内面と第二スライダ50の外面との摩擦力によるダンパー効果が生じ、また、第一スライダ40の挿入部42が第二スライダ50の挿入孔51に圧入動作が終了していることから当該圧入力によるダンパー効果が生じない。このため、上部固定部材30を閉じる方向に回動させるときに、回動角度θが比較的大きい状態と小さい状態とで、ダンパー効果の大きさを異なるものに設定(例えば、回動角度θが比較的大きい状態のときには、ダンパー効果が比較的小さく設定)することができる。
【0040】
また以上のように、ヒンジ100では、中間部材20は、上部固定部材30を開状態から閉状態とするときに、第一スライダ40を押込むようにして下方に移動させて、第一スライダ40とともに第二スライダ50が下方に移動させることから、バネやオイルを用いずにダンパー効果を生じさせる構成とするものを、簡易な構成で実現することができる。
【0041】
以下では、上部固定部材30を閉状態から開状態とする動作について説明する。
【0042】
まず、上部固定部材30を開く方向に回動させて回動角度θが0°から所定角度φ1までの第二領域における動作について説明する。
図9から図10に示す如く、上部固定部材30の閉状態(回動角度θ=0°)から、上部固定部材30を開く方向に回動させると中間部材20が上部固定部材30の回動方向と反対方向に回動し、中間部材20によって引上げられるようにして第一スライダ40が上方に移動する。このとき、第一スライダ40の第一張出部43が第二スライダ50の上面に当接した状態が解消され、第二スライダ50の挿入孔51に対する第一スライダ40の取付部42の圧入力が弱まり、第一スライダ40の挿入部42が第二スライダ50の挿入孔51に圧入されている状態が解消されていく。またこのとき、下部固定部材10の収容室13の内面と第二スライダ50の外面との摩擦力によって、第二スライダ50は上方に移動しない。
【0043】
そして、図11に示す如く、第一スライダ40がさらに上方に移動して、第一スライダ40の第二張出部44の上面と第二スライダ50の下面とが当接した状態となる。第一スライダ40の第二張出部44の上面と第二スライダ50の下面とが当接した後、第二張出部44によって第二スライダ50が引掛ったような状態となり、第一スライダ40によって引上げられるようにして第一スライダ40とともに第二スライダ50が上方に移動する。このとき、第一スライダ40の挿入部42が第二スライダ50の挿入孔51に圧入されている状態が解消されている(挿入孔51に対する取付部42の圧入力が弱い)ことから、第二スライダ50は元の状態(外側に膨張するように変形している状態が解消された状態)となっている。このため、下部固定部材10の収容室13の内面と第二スライダ50の外面との摩擦力は、上部固定部材30を閉じる方向に回動させるときのものと比べて弱い。
【0044】
次に、上部固定部材30をさらに開く方向に回動させて回動角度θが所定角度φ1から45°までの第一領域における動作について説明する。
上部固定部材30をさらに開く方向に回動させると中間部材20が上部固定部材30回動方向と反対方向にさらに回動し、第一スライダ40とともに第二スライダ50が上方に移動していき、上部固定部材30を開状態(回動角度θ=45°)とする(図4参照)。このとき、上記と同様に、第一スライダ40の挿入部42が第二スライダ50の挿入孔51に圧入されている状態が解消されている。このため、下部固定部材10の収容室13の内面と第二スライダ50の外面との摩擦力は、上部固定部材30を閉じる方向に回動させるときのものと比べて弱い。
以上のようにして、ヒンジ100では、上部固定部材30を閉状態から開状態とする動作を行う。
【0045】
以上のように、ヒンジ100では、上部固定部材30を閉状態から開状態とするときに、第一スライダ40の挿入部42が第二スライダ50の挿入孔51に圧入されている状態が解消されて、第二スライダ50は元の状態(外側に膨張するように変形している状態が解消された状態)で上方に移動することから、下部固定部材10の収容室13の内面と第二スライダ50の外面との摩擦力は、上部固定部材30を閉じる方向に回動させるときのものと比べて弱い。このため、上部固定部材30を閉じるときには、ダンパー効果が生じて上部固定部材30(第二連結対象物)の落下速度を減衰させることができ、上部固定部材30を開くときには、ダンパー効果が生じない構成とすることができる。
【0046】
ヒンジ100では、第一スライダ40が下方に移動して挿入部42が第二スライダ50の挿入孔51に圧入されるものではなく、第二スライダ50は外側に膨張するように弾性変形するものではない構成とすることもできる。当該構成においては、下部固定部材10に対して第二スライダ50が移動するときの下部固定部材10の収容室13の内面と第二スライダ50の外面との摩擦力は回動角度θによって変化せず一定に構成される。
このように構成されるときの上部固定部材30を開状態から閉状態とする動作、または、上部固定部材30を閉状態から開状態とする動作について説明する。
以下では、上部固定部材30を開状態から閉状態とする動作について説明する。
【0047】
まず、上部固定部材30を開状態から閉じる方向に回動させて回動角度θが45°から所定角度φ1までの第一領域における動作について説明する。
図7に示す如く、上部固定部材30を閉じる方向に回動させると中間部材20が上部固定部材30の回動方向と反対方向に回動し、中間部材20によって押込まれるようにして第一スライダ40が下方に移動する。
このとき、第一スライダ40の挿入部42が第二スライダ50の挿入孔51に挿入されていき、回動角度θが所定角度φ1になると、第一スライダ40の第一張出部43が第二スライダ50の上面に当接した状態となり、第一スライダ40の挿入部42が第二スライダ50の挿入孔51に挿入される動作が終了する。
回動角度θが45°から所定角度φ1までの第一領域においては、いずれの回動角度θにおいても、第二スライダ50は下方に移動しない。
【0048】
次に、上部固定部材30をさらに閉じる方向に回動させて回動角度θが所定角度φ1から0°までの第二領域における動作について説明する。
図8から図9に示す如く、上部固定部材30をさらに閉じる方向に回動させると中間部材20が上部固定部材30回動方向と反対方向にさらに回動し、中間部材20によって押込まれるようにして第一スライダ40が下方に移動する。このとき、第一スライダ40の第一張出部43によって第二スライダ50が引掛ったような状態となり、第一スライダ40によって押込まれるようにして第一スライダ40とともに第二スライダ50が下方に移動していき、上部固定部材30を閉状態(回動角度θ=0°)とする。
以上のようにして、ヒンジ100では、上部固定部材30を開状態から閉状態とする動作を行う。
【0049】
以下では、上部固定部材30を閉状態から開状態とする動作について説明する。
【0050】
まず、上部固定部材30を開く方向に回動させて回動角度θが0°から所定角度φ1までの第二領域における動作について説明する。
図9から図10に示す如く、上部固定部材30の閉状態(回動角度θ=0°)から、上部固定部材30を開く方向に回動させると中間部材20が上部固定部材30の回動方向と反対方向に回動し、中間部材20によって引上げられるようにして第一スライダ40が上方に移動する。このとき、下部固定部材10の収容室13の内面と第二スライダ50の外面との摩擦力によって、第二スライダ50は上方に移動しない。
【0051】
そして、図11に示す如く、第一スライダ40がさらに上方に移動して、第一スライダ40の第二張出部44の上面と第二スライダ50の下面とが当接した状態となる。第一スライダ40の第二張出部44の上面と第二スライダ50の下面とが当接した後、第二張出部44によって第二スライダ50が引掛ったような状態となり、第一スライダ40によって引上げられるようにして第一スライダ40とともに第二スライダ50が上方に移動する。
【0052】
次に、上部固定部材30をさらに開く方向に回動させて回動角度θが所定角度φ1から45°までの第一領域における動作について説明する。
上部固定部材30をさらに開く方向に回動させると中間部材20が上部固定部材30回動方向と反対方向にさらに回動し、第一スライダ40とともに第二スライダ50が上方に移動していき、上部固定部材30を開状態(回動角度θ=45°)とする(図4参照)。
以上のようにして、ヒンジ100では、上部固定部材30を閉状態から開状態とする動作を行う。
【0053】
当該構成においては、第一スライダ40の挿入部42は、円錐台状に形成されず円柱状に形成される構成とすることもできる。また当該構成においては、第二スライダ50の挿入孔51は円錐台状に形成されず円柱状に形成される構成とすることもできる。
【0054】
また、ヒンジ100では、上部固定部材30を開状態から閉状態とするときに、第二スライダ50が下方に移動するに従って下部固定部材10の収容室13に圧入されていく構成とすることもできる。
当該構成においては、図12に示すように、下部固定部材10の収容室13の側壁の内面は、傾斜面で構成され下方に行くに従って縮径される円錐台状に形成され、第二スライダ50の側面は、傾斜面で構成され下方に行くに従って縮径される円錐台状に形成される。
【0055】
このように構成されるヒンジ100では、上部固定部材30を開状態から閉じる方向に回動させて回動角度θが45°から所定角度φ1までの第一領域においては、第一スライダ40の挿入部42が第二スライダ50の挿入孔51に圧入されていき、第二スライダ50は外側に膨張するように変形している状態となる。
【0056】
そして、上部固定部材30をさらに閉じる方向に回動させて回動角度θが所定角度φ1から0°までの第二領域においては、第一スライダ40によって押込まれるようにして第二スライダ50が第一スライダ40とともに下方に移動して下部固定部材10の収容室13に圧入されていく。
【0057】
このため、上部固定部材30の回動角度θが小さくなるにつれて下部固定部材10の収容室13の内面と第二スライダ50の外面との摩擦力が大きくなる。このため、バネやオイルを用いずに、上部固定部材30の回動角度θが小さくなるにつれてダンパー効果が大きく生じるものとすることができる。
【0058】
また、上部固定部材30を閉状態から開く方向に回動させると、第一スライダ40の挿入部42が第二スライダ50の挿入孔51に圧入された状態が解消され、次いで、第二スライダ50が下部固定部材10の収容室13に圧入された状態が解消される。
このため、上部固定部材30を開く方向に回動させたときには、下部固定部材10の収容室13の内面と第二スライダ50の外面との摩擦力が生じず、上部固定部材30を開く方向に回動させる動作をよりスムーズに行うことができる。
【符号の説明】
【0059】
1 複合機
2 本体
3 原稿圧着板
10 下部固定部材
20 中間部材
30 上部固定部材
40 第一スライダ
50 第二スライダ
100 ヒンジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12