(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】チューブフロート構造体
(51)【国際特許分類】
H02G 1/10 20060101AFI20220127BHJP
H02G 9/02 20060101ALI20220127BHJP
B63B 21/20 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
H02G1/10
H02G9/02
B63B21/20 B
(21)【出願番号】P 2020119152
(22)【出願日】2020-07-10
【審査請求日】2020-07-10
(31)【優先権主張番号】U 2020002328
(32)【優先日】2020-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592190028
【氏名又は名称】株式会社関海事工業所
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関 勝
【審査官】須藤 竜也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-028375(JP,A)
【文献】特開2019-154137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/10
H02G 9/02
B63B 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
索状の被敷設物を水底に敷設する作業時に該被敷設物を水面に浮かせるリング状のチューブフロートを有するチューブフロート構造体であって、
前記チューブフロートを覆う可撓性を有する網体と、前記網体の中央部分に設けられた被敷設物取付部と、を備え、
前記網体は、前記チューブフロートの軸方向の片面に開口部が設けられており、
前記被敷設物取付部は、
前記開口部と反対の面の中央部分に設けられ、該被敷設物取付部から前記チューブフロートの中央部分を通って前記開口部から出て前記被敷設物に取り付ける取付部材を有している、
ことを特徴とするチューブフロート構造体。
【請求項2】
前記被敷設物取付部は、前記網体の一部分が束ねられた結束部と、該結束部を固定する固定部材と、を有している、
請求項1に記載のチューブフロート構造体。
【請求項3】
前記取付部材は、前記被敷設物に縛りつけて取り付ける索状体で構成されている、
請求項1
又は2に記載のチューブフロート構造体。
【請求項4】
前記チューブフロートは、タイヤチューブで構成されている、
請求項1~
3のいずれか1項に記載のチューブフロート構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、索状の被敷設物を水底に敷設する作業時に、この被敷設物を水面に浮かすためのチューブフロート構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水底ケーブルなどの索状の被敷設物を水底に敷設するための敷設方法が知られている。索状の被敷設物としては、例えば、電力ケーブル、通信ケーブル、送水管などのパイプ等がある。以下、電力ケーブル、通信ケーブルなどを「水底ケーブル」と総称し、この水底ケーブルを例に説明する。
【0003】
この種の先行技術として、例えば、本出願人が先に出願した敷設方法がある(特許文献1参照)。
図9(a)、(b)及び
図10(a)、(b)は、この敷設方法を示しており、この敷設方法で水底ケーブル100を海底Sに敷設する場合を例に説明する。
図9(a)に示すように、海岸線Aから所定距離の沖合から、水底ケーブル100の敷設ラインB上の海面Pに複数の浮標110が設置される。その後、
図9(b)に示すように、敷設船120上で水底ケーブル100に所定間隔で複数のフロート130が取り付けられ、その水底ケーブル100が海面Pへ投入される。海面Pに投入された水底ケーブル100は、フロート130の上部に載った状態となっている。その後、海面Pに浮遊している水底ケーブル100は、陸地側端部101を陸地Lの方に向けて、浮標110に沿って陸地Lまで取り付けられる。そして、
図10(a)に示すように、水底ケーブル100の陸地側端部101が陸地Lの接続部140に接続される。その後、
図10(b)に示すように、陸地Lの方向から水底ケーブル100に取り付けられているフロート130が順に取り外されて、水底ケーブル100が海底Sに敷設(沈設)される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記敷設方法におけるフロート130としては、自動車のタイヤチューブなどを用いたリング状のチューブフロート(この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「チューブフロート」は、タイヤチューブを含むリング状の形態のフロートをいう)を用いることがある。また、フロート130は、水底ケーブル100の敷設長さによっては100個を越える場合もあり、しかも敷設船120に搭載しておく必要があるため、未使用時にはコンパクトにできるものが好ましいため、タイヤチューブなどのチューブフロートが用いられることがある。
【0006】
上記敷設方法においてチューブフロート10を用いる場合、
図11に示すように、チューブフロート10にエアーを充填した後、水底ケーブル100に取り付けるためのロープ20を2箇所に取り付ける。ロープ20を2箇所に取り付けることで、チューブフロート10が水底ケーブル100からずれるのを防止している。ロープ20としては、例えば、ポリプロピレンロープなどが用いられる。チューブフロート10にロープ20を取り付ける方法としては、通常、縛りつけたものが横ずれしにくい巻き結び(クラブヒッチ)が用いられる。その後、
図12に示すように、チューブフロート10がロープ20で水底ケーブル100に取り付けられる。
【0007】
しかし、上記敷設方法の場合、
図10(b)に示すように、水底ケーブル100を沈設するために水底ケーブル100の陸地側端部101側からチューブフロート10を順に取り外すと、水底ケーブル100に取り付けられた状態のチューブフロート10の一部が水底ケーブル100の重量によって海面Pから水没した状態となる。水没した水中Wのチューブフロート10は、
図13に示すように、水底ケーブル100を取り付けているロープ20の部分は下降しようとするが、他の部分は自身の浮力で浮き上がろうとする。このため、チューブフロート10のロープ20が取り付けられた部分15が絞り込まれる。
【0008】
これにより、水底ケーブル100を敷設した後に回収したチューブフロート10は、
図14に示すように、ロープ20が取り付けられた部分15が絞りこまれてダメージを受けている。また、チューブフロート10に絞り込まれたロープ20は、水深によっては大きな力で固く絞り込まれているため、船上で取り外す作業に時間と労力を要する。このため、チューブフロート10からロープ20を取り外し、チューブフロート10を使用前の状態に戻す回収後の作業に多くの人員と時間を要している。
【0009】
また、海底ケーブルの場合、海水の干満によって海面Pの高さが作業できない低さとなる場合もあるため、作業ができる海面Pの高さが保てる時間内にチューブフロート10の仕込みと回収作業を行う必要があるが、従来のチューブフロート10では時間的に難しい場合もある。
【0010】
そこで、本発明は、索状の被敷設物を水底に敷設する作業時に、この被敷設物を水面に浮かせるチューブフロートの仕込みと回収後の作業が容易なチューブフロート構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、索状の被敷設物を水底に敷設する作業時に該被敷設物を水面に浮かせるリング状のチューブフロートを有するチューブフロート構造体であって、前記チューブフロートを覆う可撓性を有する網体と、前記網体の中央部分に設けられた被敷設物取付部と、を備え、前記被敷設物取付部は、前記被敷設物に取り付ける取付部材を有している。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「網体」は、合成繊維の網糸やゴム材などで網目状に形成され、可撓性を有するものをいう。
【0012】
この構成により、リング状のチューブフロートは、可撓性を有する網体によって全体が覆われ、チューブフロートは網体の中央部分に設けられた被敷設物取付部の取付部材によって被敷設物に取り付けられる。よって、チューブフロートは、網体を介して被敷設物に取り付けられるので、被敷設物からの力をチューブフロートの全体で受けることができ、チューブフロートを被敷設物に取り付けている部分が痛むことを防止できる。しかも、チューブフロートの仕込みと回収後の作業を効率良く行うことができる。
【0013】
また、前記被敷設物取付部は、前記網体の一部分が束ねられた結束部と、該結束部を固定する固定部材と、を有していてもよい。このように構成すれば、固定部材で被敷設物に取り付けることにより、被敷設物からの力は固定部材から結束部を介して網体の全体で受けることができる。
【0014】
また、前記網体は、前記チューブフロートの軸方向の片面に開口部が設けられていてもよい。このように構成すれば、網体の片面に設けられた開口部からチューブフロートを網体の内部に入れて、チューブフロートを網体で容易に覆うことができる。
【0015】
また、前記取付部材は、前記被敷設物に縛りつけて取り付ける索状体で構成されていてもよい。索状体は、樹脂製のロープなどを含む。このように構成すれば、網体の被敷設物取付部を索状体で被敷設物に取り付けることが容易にできる。被敷設物取付部と被敷設物とを索状体を用いて1箇所で取り付けているので、被敷設物にチューブフロートを取り付ける作業及び取り外す作業を効率良く行うことができる。
【0016】
また、前記チューブフロートは、タイヤチューブで構成されていてもよい。このように構成すれば、入手が容易なタイヤチューブをチューブフロートとして用いることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、索状の被敷設物を水底に敷設する作業時に、この被敷設物を水面に浮かせるチューブフロートの仕込みと回収後の作業が容易なチューブフロート構造体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る第1チューブフロート構造体に用いる網体の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す網体の中にチューブフロートを入れた状態を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すチューブフロートを膨らませて第1チューブフロート構造体を形成した状態を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す第1チューブフロート構造体を被敷設物に取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す第1チューブフロート構造体が水没したときの状態を示す正面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2実施形態に係る第2チューブフロート構造体を示す図面であり、(a)はチューブフロートに空気を入れる前の斜視図、(b)は網体の集束部を示す拡大斜視図である。
【
図7】
図7は、
図6に示す網体の中にチューブフロートを入れて膨らませた第2チューブフロート構造体を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、
図7に示す第2チューブフロート構造体が水没したときの状態を示す正面図である。
【
図9】
図9(a)、(b)は、水底ケーブルを海底に敷設する方法の一例を示す図面である。
【
図10】
図10(a)、(b)は、
図9(b)に続く、水底ケーブルの敷設方法の一例を示す図面である。
【
図11】
図11は、チューブフロートの一例を示す斜視図である。
【
図12】
図12は、
図11に示すチューブフロートを被敷設物に取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図13】
図13は、
図10(b)に示すように、
図12に示す状態のチューブフロートが水没したときの状態を示す正面図である。
【
図14】
図14は、
図13に示す水没したチューブフロートを被敷設物から取り外して回収したときの状態を示す一部分の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明において、上記した説明と同一の構成には同一符号を付し、その説明は省略する。以下の実施形態では、上述した
図9、
図10に示す敷設方法において、水底ケーブル100の陸地側端部101を陸地Lの接続部140に接続する作業に用いるチューブフロート構造体1,2を例に説明する。以下に説明するチューブフロート構造体1,2は、平面視で円形のリング状に形成されたチューブフロート10(タイヤチューブ)を用いる例を説明する。
【0020】
(第1チューブフロート構造体の構成)
図1は、第1実施形態に係る第1チューブフロート構造体1における網体30の一例を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す網体30の中にチューブフロート10を入れた状態を示す斜視図である。
図3は、
図2に示すチューブフロート10を膨らませて第1チューブフロート構造体1を形成した状態を示す斜視図である。なお、以下の図で示す網体30は、図示を簡略化するために大きな網目で示しているが、網体30の網目の大きさ、網糸の太さ(線径)などは、チューブフロート10の大きさや浮力に応じて設定すればよく、網体30の形態は図示する例に限定されるものではない。
【0021】
図1に示すように、第1実施形態の網体30は、合成繊維の網糸などで網目が形成された可撓性を有するものであり、リング状のチューブフロート10が、エアーを注入して膨れたときの外形に形成されている。この実施形態のチューブフロート10は、平面視がリング状の円形であるため、網体30も円形の外形に形成されている。網体30には、内部に入れるチューブフロート10の軸方向の片面(図示する上面)に、チューブフロート10を内部に入れるための開口部31が設けられている。開口部31は、エアーを抜いた状態のチューブフロート10を内部に入れることができる大きさに形成されている。この例では、開口部31の周囲に補強材32が設けられており、この補強材32から網体30の他方の面(図示する下面)に向けても補強材33が設けられている。網体30は、全体的に所定の強度を有するものであれば、補強材33はなくてもよい。網体30には、既存の漁網(本目結びなどの漁網)などを用いることができる。
【0022】
図2に示すように、チューブフロート10は、エアーを注入していない状態で開口部31から網体30の内部に入れられる。そして、網体30の内部に入れられたチューブフロート10にエアーが充填される。これにより、チューブフロート10は、可撓性を有する網体30に沿って膨らみ、可撓性を有する網体30はチューブフロート10に接した状態となり、網体30の中にチューブフロート10を適切に配置することができる。また、チューブフロート10は、網体30の外形に沿って膨らむため、エアー充填時の変形が抑えられる。
【0023】
網体30には、開口部31と反対の面の中央部分に、被敷設物取付部となるベース部材40が設けられている。この実施形態では、被敷設物取付部に網体30とは別部材のベース部材40を設けている。ベース部材40は、例えば、プラスチック製の板材で形成することができる。ベース部材40は、網体30の補強材33の外面に位置するように設けられている。ベース部材40は、図示する楕円形に限定されるものではなく、円形等、他の形態であってもよい。
【0024】
ベース部材40には、2箇所に穴部41が設けられており、穴部41には外面側から取付部材たるロープ20(索状体)が挿入され、ロープ20の端部は網体30の開口部31から外部に出ている。ロープ20をベース部材40に設けることで、ロープ20を縛りつける水底ケーブル100からの力(重量)がベース部材40を介して網体30に対して面で作用するようにしている。これにより、網体30の一部に、水底ケーブル100からの力(重量)が作用するのを防いでいる。取付部材はロープ20に限定されるものではなく、網体30を水底ケーブル100に取り付けることができる部材であればよい。
【0025】
これらの構成により、水底ケーブル100(被敷設物)の取り付け箇所が1箇所となった第1チューブフロート構造体1が形成されている。
【0026】
なお、網体30にベース部材40とロープ20を取り付けた後、チューブフロート10を網体30の内部に入れるようにできる。また、網体30は、内部にチューブフロート10を入れて開口部31がない状態とすることもできる。
【0027】
(チューブフロート構造体の取り付け状態)
図4は、
図3に示す第1チューブフロート構造体1を水底ケーブル100(被敷設物)に取り付けた状態を示す斜視図である。上記第1チューブフロート構造体1を水底ケーブル100に取り付ける場合、第1チューブフロート構造体1の中央部分を通るように水底ケーブル100が載置される。そして、ロープ20を水底ケーブル100に縛りつけることで、第1チューブフロート構造体1を水底ケーブル100に取り付けることができる。第1チューブフロート構造体1を水底ケーブル100に取り付ける仕込み作業は、第1チューブフロート構造体1を水底ケーブル100に1箇所で取り付けるため、効率良く行うことができる。よって、水底ケーブル100を敷設船120(
図6(b))から海面Pへ繰り出す作業も効率良くできる。
【0028】
(第1チューブフロート構造体の水没時の状態)
図5は、
図4に示す第1チューブフロート構造体1が水没したときの状態を示す正面図である。図示するように、第1チューブフロート構造体1は、チューブフロート10を覆う網体30に設けられたロープ20によって水底ケーブル100に取り付けられている。そして、第1チューブフロート構造体1が水没すると、水中Wでは水底ケーブル100は自重で下方に位置し、チューブフロート10は自身の浮力で上方に位置した状態となる。このような状態で第1チューブフロート構造体1に作用する水底ケーブル100からの力(重量)は、網体30の中央部分に設けられたベース部材40を介して網体30の全体に作用し、チューブフロート10の全体で受けることができる。
【0029】
すなわち、上記第1チューブフロート構造体1によれば、水底ケーブル100からの力(重量)は、網体30の中央部分に設けられたロープ20とベース部材40を介してチューブフロート10が入れられた網体30の全体で受けることになる。これにより、網体30の中央部分は水底ケーブル100の重量で下がり、網体30の周囲はチューブフロート10の浮力で浮き上がろうとする状態となる。
【0030】
よって、チューブフロート10には、水底ケーブル100からの力(重量)が網体30を介してほぼ均一に作用するため、チューブフロート10が部分的にダメージを受けることはない。このため、水底ケーブル100から外して回収した第1チューブフロート構造体1は、チューブフロート10のエアーを抜いて網体30から出せば元の状態にでき、容易に格納することができる。したがって、使用した第1チューブフロート構造体1を回収した後の作業に要する時間と労力を大幅に軽減することができる。
【0031】
しかも、上記第1チューブフロート構造体1によれば、水底ケーブル100を1箇所で取り付けているため、第1チューブフロート構造体1を水底ケーブル100(被敷設物)に取り付ける仕込みの時間の短縮を図ることができる。例えば、電源ケーブのように重量がある水底ケーブル100の場合、第1チューブフロート構造体1を近接して並べて取り付ける場合もあるが、その取り付け作業の時間を短縮することができる。よって、従来に比べて水底ケーブル100の仕込み作業の時間が約半分になり、水底ケーブル100の繰り出し速度が速くなって、作業時間の短縮を図ることができる。
【0032】
また、水底ケーブル100を敷設(沈設)するために第1チューブフロート構造体1を取り外す作業はダイバーによって行われるが、ロープ20を1箇所切断すれば第1チューブフロート構造体1を取り外すことができるため、この点でも作業時間の短縮を図ることができる。
【0033】
よって、例えば、海水の干満によって海面Pの高さが大きく変化して水底ケーブル100の敷設時間が短い場合でも、水底ケーブル100(海底ケーブル)に第1チューブフロート構造体1を仕込み、水底ケーブル100を敷設し、第1チューブフロート構造体1を回収する作業を、作業ができる海面Pの高さの短い時間内に行うことが可能となる。
【0034】
(第2チューブフロート構造体の構成)
図6は、第2実施形態に係る第2チューブフロート構造体2を示す図面であり、(a)はチューブフロート10に空気を入れる前の斜視図、(b)は網体50の結束部52を示す拡大斜視図である。
図6(b)では、網体50の一部を示している。
図7は、
図6に示す網体50の中のチューブフロート10を膨らませた第2チューブフロート構造体2を示す斜視図である。チューブフロート10は、第1チューブフロート構造体1と同一の構成である。
【0035】
図6(a)に示すように、第2実施形態の網体50も、合成繊維の網糸などで網目54が形成された可撓性を有するものであり、リング状のチューブフロート10が、エアーを注入して膨れたときの外形に形成されている。この網体50も、円形の外形に形成されている。網体50には、内部に入れるチューブフロート10の軸方向の片面(図示する上面)に、チューブフロート10を内部に入れるための開口部51が設けられている。開口部51は、エアーを抜いた状態のチューブフロート10を内部に入れることができる大きさに形成されている。開口部51には、周囲に補強材53が設けられている。
【0036】
第2チューブフロート構造体2の網体50は、開口部51と反対の面(図示する下面)のチューブフロート10の中央部分に位置する一部分が結束部52として束ねられ、結束部52は固定部材60で固定されている。固定部材60には、ロープが用いられている。
【0037】
図6(b)にも示すように、この実施形態では、網体50の結束部52として束ねられた網目54の次の網目54に固定部材60のロープが挿通されている。ロープの挿通部61は、結束部52の全周に位置する網目54に挿通されている。ロープ(固定部材60)は、網目54に挿通された挿通部61に連なる部分が、結束部52に強く縛り付けられた固縛部62となっている。固縛部62は、例えば、二重テグス結びなどの縛り方とすることができる。固縛部62の縛り方は一例であり、他の縛り方とすることができる。また、固定部材60たるロープを挿通する網目54も、この例以外に更に次の網目54でもよく、この実施形態に限定されるものではない。結束部52の長さも、この実施形態に限定されるものではない。固定部材60たるロープの端部は、固縛部62から所定長さの環状に形成された取付け部63となっている。取付け部63には、第2チューブフロート構造体2を水底ケーブル100に取り付けるための取付部材たるロープ20が取り付けられている。
【0038】
このように、第2チューブフロート構造体2は、固定部材60であるロープを結束部52に近い網目54に通し、結束部52に強く縛り付けて固縛部62を形成している。これにより、固定部材60に作用する力を網体50の全体で受けるようにしている。
【0039】
(第2チューブフロート構造体の水没時の状態)
図8は、
図7に示す第2チューブフロート構造体2が水没したときの状態を示す正面図である。なお、第2チューブフロート構造体2を水底ケーブル100(被敷設物)に取り付けた状態は、上述した
図4の第1チューブフロート構造体1と同様であるため、図示は省略する。第2チューブフロート構造体2は、固定部材60の取付け部63に取り付けられたロープ20により、水底ケーブル100に取り付けられている。なお、取付け部63の長さを、ロープ20(取付部材)を兼ねる長さにしておけば、第2チューブフロート構造体2を取付け部63で水底ケーブル100に取り付けることもできる。
【0040】
図示するように、第2チューブフロート構造体2が水没すると、水中Wでは水底ケーブル100は自重で下方に位置し、チューブフロート10は自身の浮力で上方に位置した状態となる。このような状態で第2チューブフロート構造体2に作用する水底ケーブル100からの力(重量)は、網体50の中央部分に設けられた固定部材60の固縛部62及び挿通部61から結束部52の周囲の網体50全体に作用し、チューブフロート10の全体で受けることができる。
【0041】
すなわち、第2チューブフロート構造体2によっても、水底ケーブル100からの力(重量)は、網体50の中央部分に設けられたロープ20から固定部材60を介してチューブフロート10が入れられた網体50の全体で受けることができる。これにより、網体50の中央部分は水底ケーブル100の重量で下がり、網体50の周囲はチューブフロート10の浮力で浮き上がろうとする状態となる。
【0042】
よって、チューブフロート10には、水底ケーブル100の重量が網体50を介してほぼ均一に作用するため、チューブフロート10が部分的にダメージを受けることはない。このため、水底ケーブル100から外して回収した第2チューブフロート構造体2は、チューブフロート10のエアーを抜いて網体50から出せば元の状態にでき、容易に格納することができる。したがって、使用した第2チューブフロート構造体2を回収した後の作業に要する時間と労力を大幅に軽減することができる。
【0043】
しかも、第2チューブフロート構造体2によっても、水底ケーブル100に1箇所で取り付けているため、第2チューブフロート構造体2を水底ケーブル100(被敷設物)に取り付ける仕込みの時間の短縮を図ることができる。よって、従来に比べて水底ケーブル100の仕込み作業の時間が約半分になり、水底ケーブル100の繰り出し速度が速くなって、作業時間の短縮を図ることができる。
【0044】
また、水底ケーブル100を敷設(沈設)するために第2チューブフロート構造体2を水底ケーブル100から取り外す作業も、ロープ20を1箇所切断すればよく、ダイバーによる水中作業の時間短縮も図ることができる。
【0045】
よって、例えば、海水の干満によって海面Pの高さが大きく変化して水底ケーブル100の敷設時間が短い場合でも、水底ケーブル100(海底ケーブル)に第2チューブフロート構造体2を仕込み、水底ケーブル100を敷設し、第2チューブフロート構造体2を回収する作業を、作業ができる海面Pの高さの短い時間内に行うことが可能となる。
【0046】
(その他の変形例)
上記した実施形態では、円形に形成されたリング状のチューブフロート10を例に説明したが、チューブフロート10は円形に限定されるものではない。チューブフロート10は、矩形のリング状に形成されたものなどでもよい。
【0047】
また、上記した実施形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、網体30の網目の大きさ、網糸の太さ(線径)なども一例であり、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0048】
1 チューブフロート構造体
10 チューブフロート
20 ロープ(取付部材)
30 網体
31 開口部
40 ベース部材
50 網体
51 開口部
52 集束部
54 網目
60 固定部材(被敷設物取付部)
61 挿通部
62 結束部
63 取付け部
100 水底ケーブル
110 浮標
120 敷設船
130 フロート
140 接続部
B 敷設ライン
P 海面
S 海底
W 水中