(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】プラスチック判定装置及びプラスチック判定プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 33/44 20060101AFI20220127BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20220127BHJP
G01N 21/35 20140101ALI20220127BHJP
【FI】
G01N33/44
G01N21/27 B
G01N21/35
(21)【出願番号】P 2020136007
(22)【出願日】2020-08-11
【審査請求日】2020-10-27
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000144898
【氏名又は名称】株式会社山本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大森 健司
【合議体】
【審判長】井上 博之
【審判官】樋口 宗彦
【審判官】▲高▼見 重雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-297062(JP,A)
【文献】特開2002-267601(JP,A)
【文献】特開2017-228316(JP,A)
【文献】特開2012-189386(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0282277(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0177155(US,A1)
【文献】特開2019-219331(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0321648(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N21/00-21/86
G01N33/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
比較対象のプラスチックである比較プラスチックに照射されて部分的に吸収された赤外線のスペクトルである比較スペクトルが記憶される記憶部と、
前記記憶部に記憶された比較スペクトルに基づき材質を判定するプラスチックである判定プラスチックに照射されて部分的に吸収された赤外線のスペクトルである判定スペクトルの比較スペクトルとの類似度を判定する判定部と、
前記記憶部及び前記判定部の少なくとも1つと通信可能にされ、比較スペクトル及び判定スペクトルの少なくとも1つを測定する測定部と、
を備え、
前記測定部は、
フィルム状の比較プラスチック又は判定プラスチックであるフィルムプラスチックに赤外線を照射する照射部と、
前記照射部が照射してフィルムプラスチックを透過した赤外線を反射する反射部と、
前記反射部が反射してフィルムプラスチックを透過した赤外線を検出する検出部と、
フィルムプラスチック内を面内方向に通過する前記照射部以外からの光をフィルムプラスチックの面内方向における前記反射部からの離間側に反射して当該光の前記反射部側への侵入を制限する制限部と、
を有するプラスチック判定装置。
【請求項2】
前記判定部は、判定スペクトルの比較スペクトルとの類似度が閾値を超えている場合に判定プラスチックの材質を比較プラスチックと判定する請求項1記載のプラスチック判定装置。
【請求項3】
前記閾値が変更可能にされる請求項2記載のプラスチック判定装置。
【請求項4】
前記判定部が判定プラスチックの材質を比較プラスチックと判定したこと及び前記判定部が判定プラスチックの材質を比較プラスチックでないと判定したことの少なくとも1つを記号、音及び色彩の少なくとも1つにより報知する報知部を備える請求項1~請求項3の何れか1項記載のプラスチック判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックの材質を判定するためのプラスチック判定装置及びプラスチック判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載のプラスチック材判定装置では、プラスチック材の近赤外吸収スペクトルとプラスチックである各材質の近赤外吸収スペクトルとの一致度を求めて、プラスチック材の材質を判定する。
【0003】
このように、プラスチック材判定装置では、プラスチック材の材質との類似度を判定できるのが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、判定プラスチックの材質の比較プラスチックとの類似度を判定できるプラスチック判定装置及びプラスチック判定プログラムを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のプラスチック判定装置は、比較対象のプラスチックである比較プラスチックに照射されて部分的に吸収された赤外線のスペクトルである比較スペクトルが記憶される記憶部と、前記記憶部に記憶された比較スペクトルに基づき材質を判定するプラスチックである判定プラスチックに照射されて部分的に吸収された赤外線のスペクトルである判定スペクトルの比較スペクトルとの類似度を判定する判定部と、前記記憶部及び前記判定部の少なくとも1つと通信可能にされ、比較スペクトル及び判定スペクトルの少なくとも1つを測定する測定部と、を備え、前記測定部は、フィルム状の比較プラスチック又は判定プラスチックであるフィルムプラスチックに赤外線を照射する照射部と、前記照射部が照射してフィルムプラスチックを透過した赤外線を反射する反射部と、前記反射部が反射してフィルムプラスチックを透過した赤外線を検出する検出部と、フィルムプラスチック内を面内方向に通過する前記照射部以外からの光をフィルムプラスチックの面内方向における前記反射部からの離間側に反射して当該光の前記反射部側への侵入を制限する制限部と、を有する。
【0008】
請求項2に記載のプラスチック判定装置は、請求項1に記載のプラスチック判定装置において、前記判定部は、判定スペクトルの比較スペクトルとの類似度が閾値を超えている場合に判定プラスチックの材質を比較プラスチックと判定する。
【0009】
請求項3に記載のプラスチック判定装置は、請求項2に記載のプラスチック判定装置において、前記閾値を変更可能にされる。
【0010】
請求項4に記載のプラスチック判定装置は、請求項1~請求項3の何れか1項に記載のプラスチック判定装置において、前記判定部が判定プラスチックの材質を比較プラスチックと判定したこと及び前記判定部が判定プラスチックの材質を比較プラスチックでないと判定したことの少なくとも1つを記号、音及び色彩の少なくとも1つにより報知する報知部を備える。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載のプラスチック判定装置では、比較プラスチックに部分的に吸収された赤外線のスペクトルである比較スペクトルが記憶部に記憶される。
【0016】
ここで、判定プラスチックに部分的に吸収された赤外線のスペクトルである判定スペクトルの比較スペクトルとの類似度を判定部が判定する。このため、判定プラスチックの材質の比較プラスチックとの類似度を判定できる。
【0018】
請求項2に記載のプラスチック判定装置では、判定スペクトルの比較スペクトルとの類似度が閾値を超えている場合に、判定プラスチックの材質を比較プラスチックと判定部が判定する。このため、判定プラスチックの材質が比較プラスチックであることを判定できる。
【0019】
請求項3に記載のプラスチック判定装置では、閾値が変更可能にされる。このため、判定プラスチックの材質の判定を調整できる。
【0020】
請求項4に記載のプラスチック判定装置では、判定部が判定プラスチックの材質を比較プラスチックと判定したこと及び判定部が判定プラスチックの材質を比較プラスチックでないと判定したことの少なくとも1つを、報知部が記号、音及び色彩の少なくとも1つにより報知する。このため、言語を使用せずに判定プラスチックの材質の判定結果を報知できる。
【0021】
請求項1に記載のプラスチック判定装置では、測定部が比較スペクトル及び判定スペクトルの少なくとも1つを測定する。このため、比較スペクトル及び判定スペクトルの少なくとも1つを容易に取得できる。
【0022】
請求項1に記載のプラスチック判定装置では、フィルム状の比較プラスチック又は判定プラスチックであるフィルムプラスチックに測定部の照射部が赤外線を照射する。さらに、照射部が照射してフィルムプラスチックを透過した赤外線を測定部の反射部が反射する。そして、反射部が反射してフィルムプラスチックを透過した赤外線を測定部の検出部が検出する。このため、フィルムプラスチックについての赤外線のスペクトルの検出精度を高くできる。
【0023】
請求項1に記載のプラスチック判定装置では、フィルムプラスチック内を通過する光の反射部側への侵入を測定部の制限部が制限する。このため、フィルムプラスチック内を通過する光を検出部が検出することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態に係るプラスチック判定装置を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るプラスチック判定装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るプラスチック判定装置の機能構成の例を示すブロック図である。
【
図4】(A)及び(B)は、本発明の実施形態に係るプラスチック判定装置における測定装置の別態様を示す斜視図であり、(A)は、測定装置の開閉板の開放時を示し、(B)は、測定装置の開閉板の閉鎖時を示している。
【
図5】(A)及び(B)は、本発明の実施形態に係るプラスチック判定装置における測定装置の別態様を示す断面図であり、(A)は、測定装置の開閉板の開放時を示し、(B)は、測定装置の開閉板の閉鎖時を示している。
【
図6】本発明の実施形態に係るプラスチック判定装置における本体装置の画面への表示例を示す正面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るプラスチック判定装置におけるプラスチック判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1には、本発明の実施形態に係るプラスチック判定装置10が斜視図にて示されている。
【0028】
図1に示す如く、本実施形態に係るプラスチック判定装置10には、測定部としての測定装置12が設けられており、測定装置12は、プラスチックを測定可能にされている。
【0029】
測定装置12の後側部分には、略板状の把持部14が設けられており、把持部14は、前後方向に延伸されて、測定者が把持可能にされている。測定装置12の前部には、台形柱状の本体部16が一体に設けられており、本体部16は、把持部14に対し下側に突出されると共に、下面が平面状にされている。本体部16の上面には、スイッチ18が設けられており、スイッチ18は、測定者が把持部14を把持する手の指(例えば親指又は人差し指)により操作(押圧操作)可能にされている。
【0030】
図5(A)に示す如く、本体部16の下部には、略矩形柱状の測定空間20が形成されており、測定空間20は、周面が光反射性を有すると共に、下側に開放されている。測定空間20の下端近傍には、矩形板状のガラス板22が固定されており、ガラス板22は、測定空間20の下側近傍を閉塞している。測定空間20の上部には、照射部としての光源24が所定数(本実施形態では2個)固定されると共に、検出部としての分光センサ26が固定されている。
【0031】
図4及び
図5の(A)及び(B)に示す如く、本体部16には、アタッチメント28が装着可能にされている。アタッチメント28には、略断面V字形板状の装着板30が設けられており、装着板30は、本体部16に装着されて、上部が本体部16の後面を被覆すると共に、下部が本体部16の下面を被覆する。装着板30の下部には、矩形状の開放孔30Aが貫通形成されており、開放孔30Aは、本体部16の測定空間20を下側に開放すると共に、側面が測定空間20の側面と面一にされる。
【0032】
装着板30には、回動板32が支持されており、回動板32の後端部の上側には、略断面V字形板状の操作片32Aが設けられている。回動板32は、操作片32Aにおいて、装着板30の後部に回動可能に支持されており、操作片32A内は、後側に開放されている。回動板32の下部には、略矩形板状の開閉板32Bが設けられており、開閉板32Bの後端部は、操作片32Aの下端部と一体にされている。回動板32は、付勢されており、開閉板32Bは、付勢力により装着板30の下部に面接触されて、装着板30の開放孔30A下側を閉鎖する(
図5(B)参照)。測定者が把持部14を把持する手の指(例えば人差し指)により操作片32Aを操作(回動操作)することで、開閉板32Bが、付勢力に抗して下側に回動されて、開放孔30Aを下側に開放する(
図5(A)参照)。開閉板32Bの上面には、反射部及び制限部としての矩形板状の反射板34が設けられており、反射板34の外面全体は、光反射性を有している。反射板34は、上側に突出されており、開閉板32Bが開放孔30Aの下側を閉鎖する際には、反射板34が開放孔30A内に略嵌合される。
【0033】
測定装置12により測定するプラスチックが固形(厚肉)のものである場合には、本体部16にアタッチメント28が装着されない。そして、本体部16の下面がプラスチックの表面に当接された状態で、スイッチ18(下記本体装置36の画面36Aでもよい)が操作されて、光源24が光(近赤外線を含む)を測定空間20及びガラス板22を介してプラスチックに照射することで、プラスチックによって反射されて部分的に吸収された光を分光センサ26が検出する。この際には、測定空間20の下側がプラスチックによって閉鎖されることで、光源24からの光が測定空間20の下側に漏洩することが抑制される。
【0034】
測定装置12により測定するプラスチックがフィルム状(薄肉)のもの(
図5の(A)及び(B)のフィルムプラスチックP)である場合には、本体部16にアタッチメント28が装着される。そして、開閉板32Bが下側に回動されて、プラスチック(複数重に重ねられたものでもよい)が装着板30の下部と開閉板32Bとの間に配置された後(
図5(A)参照)に、開閉板32Bが上側に回動されて、プラスチックが、装着板30の下部と開閉板32Bとの間及び開放孔30Aの側面と反射板34の側面との間に挟まれて、反射板34の上側に配置される(
図5(B)参照)。さらに、スイッチ18(下記本体装置36の画面36Aでもよい)が操作されて、光源24が光(近赤外線を含む)を測定空間20及びガラス板22を介してプラスチックに照射することで、光が反射板34によって反射されると共にプラスチックを往復透過して、プラスチックによって部分的に吸収された光を分光センサ26が検出する。この際には、開放孔30Aの下側が反射板34及び開閉板32Bによって閉鎖されることで、光源24からの光が開放孔30Aの下側に漏洩することが抑制される。
【0035】
以上のように、測定装置12では、分光センサ26がプラスチックに部分的に吸収された光を検出することで、プラスチックに部分的に吸収された近赤外線のスペクトルが測定される。
【0036】
図1に示す如く、プラスチック判定装置10には、本体装置36が設けられており、本体装置36は、測定装置12に例えばUSBコード38によって電気的に接続されている。本体装置36は、所謂タブレット端末にされており、本体装置36には、報知部及び入力部としての画面36Aが設けられている。
【0037】
図2に示す如く、プラスチック判定装置10は、CPU40(Central Processing Unit:プロセッサ)、ROM42(Read Only Memory)、RAM44(Random Access Memory)、ストレージ46、ユーザインタフェース48、報知部50及び測定装置12を有している。各構成は、バス52を介して相互に通信可能に接続されている。
【0038】
CPU40は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU40は、ROM42又はストレージ46からプログラムを読み出し、RAM44を作業領域としてプログラムを実行する。CPU40は、ROM42又はストレージ46に記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM42又はストレージ46には、プラスチックの材質を判定するプラスチック判定プログラムが格納されている。
【0039】
ROM42は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM44は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ46は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、各種プログラム及び各種データを格納する。
【0040】
ユーザインタフェース48は、プラスチック判定装置10をユーザが使用する際のインタフェースである。ユーザインタフェース48は、例えば、ユーザによるタッチ操作を可能とするタッチパネルを備えた液晶ディスプレイ(本体装置36の画面36A)、ユーザによる音声入力を受け付ける音声入力受付部、及び、ユーザが押下可能なボタン等の少なくとも1つを含んでいる。報知部50は、プラスチック判定装置10を使用するユーザに例えば本体装置36の画面36Aへの表示及び音の発生等により報知を行う。
【0041】
上記のプラスチック判定プログラムを実行する際に、プラスチック判定装置10は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。プラスチック判定装置10が実現する機能構成について説明する。
【0042】
図3に示す如く、プラスチック判定装置10は、機能構成として、測定装置12、記憶部54(ライブラリ)、判定部56及び報知部50を有している。各機能構成は、CPU40が、ROM42又はストレージ46に記憶されたプラスチック判定プログラムを読み出し、RAM44に展開して実行することにより実現される。
【0043】
記憶部54には、少なくとも1個の比較プラスチックについて、比較プラスチックに部分的に吸収された近赤外線のスペクトルである比較スペクトルが測定装置12により測定されることで、比較スペクトルが記憶される。
【0044】
さらに、記憶部54には、判定プラスチックの材質を判定するための下記相関係数の閾値(例えば0.8)が記憶されている。また、記憶部54に記憶される閾値は、例えば本体装置36の画面36Aの操作により、変更可能にされている。
【0045】
判定部56では、測定装置12により測定された判定プラスチックに部分的に吸収された近赤外線のスペクトルである判定スペクトルに基づき、判定プラスチックの材質が判定される。
【0046】
判定部56では、判定プラスチックの材質の判定に、近赤外線分光法が使用される。さらに、判定スペクトルと比較スペクトルとに対し、2次微分処理が行われた上で、前処理(ノイズ除去、平滑化及び平均中央化の処理、例えば所謂SGフィルタ処理及びSNV処理)が行われた後に、判定スペクトルの比較スペクトルに対する相関係数(相関値、所謂ピアソンの積率相関係数)が類似度(一致度)として算出される。そして、判定スペクトルの比較スペクトルに対する相関係数が高い程、判定プラスチックが当該比較スペクトルを有する比較プラスチックに類似すると判断されることで、相関係数が閾値を超えている場合に、当該相関係数の比較スペクトルを有する比較プラスチックが判定プラスチックの材質であると判定される。
【0047】
報知部50は、本体装置36の画面36Aに、判定部56で判定された判定プラスチックの材質又は判定プラスチックの材質が不明であることと、判定スペクトル及び判定スペクトルとの相関係数が最も高い比較スペクトルの少なくとも一方の波形と、判定プラスチックに類似する比較プラスチックの1位から3位のランキングと、1位から3位の比較スペクトルに対する判定スペクトルの相関係数の100倍値と、判定プラスチックの材質が1位から3位の比較プラスチックであるか否か(1位から3位の相関係数が閾値を超えているか否か)を表す記号(言語以外の表意記号、例えば〇又は×等)と、を表示可能にされる(例えば
図6参照)。
【0048】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0049】
以上の構成のプラスチック判定装置10では、プラスチック判定処理(
図7参照)が行われる。プラスチック判定処理は、CPU40が、ROM42又はストレージ46からプラスチック判定プログラムを読み出し、RAM44に展開して実行することにより、行なわれる。
【0050】
プラスチック判定処理では、ステップ100において、少なくとも1個の比較プラスチック(例えば、sample1からsample4の4個の比較プラスチック)につき、比較プラスチックに部分的に吸収された近赤外線のスペクトル(比較スペクトル)が測定装置12により測定されて、比較スペクトルが取得される。
【0051】
さらに、ステップ102において、判定プラスチックに部分的に吸収された近赤外線のスペクトル(判定スペクトル)が測定装置12により測定されて、判定スペクトルが取得される。
【0052】
そして、ステップ104において、各比較スペクトル及び判定スペクトルが読み出されて、各比較スペクトル及び判定スペクトルの所定波長範囲(例えば1570nm以上1928nm以下)が切り出された上で、判定スペクトルの各比較スペクトルに対する相関係数(相関値)が所定波長範囲において算出される。さらに、相関係数の高い順のランキングが判断されて、比較プラスチックの判定プラスチックに類似する順のランキングが判断される。
【0053】
次に、ステップ106において、ランキングが1位から3位の相関係数が閾値(例えば0.8)を超えているか否かが判断される。
【0054】
ステップ106において、ランキングが1位から3位の相関係数の少なくとも1つが閾値を超えていると判断された場合には、ステップ108において、当該相関係数の少なくとも1つの比較スペクトルを有する比較プラスチックが判定プラスチックの材質であると判定される。ステップ106において、ランキングが1位から3位の相関係数が閾値を超えていないと判断された場合には、ステップ110において、判定プラスチックの材質が不明であると判定される。そして、プラスチック判定処理の判定結果が本体装置36の画面36Aに表示されて(例えば
図6参照)、プラスチック判定処理が終了される。
【0055】
ここで、上述の如く、判定スペクトルの比較スペクトルに対する相関係数が類似度(一致度)として判定される。このため、比較プラスチックの材質が不明である(例えば汎用プラスチックでない)場合でも、判定プラスチックの材質の比較プラスチックとの類似度(一致度)を判定できる。
【0056】
さらに、比較プラスチックが複数材質のプラスチックが複合されたもの(例えば複数材質のプラスチックの複合率が多様に変更されたもの)であっても、判定スペクトルの比較スペクトルに対する相関係数が類似度として判定される。このため、当該比較プラスチックとの判定プラスチックの材質の類似度を判定できる。
【0057】
また、判定スペクトルの比較スペクトルに対する相関係数が閾値を超えている場合に、判定プラスチックの材質が比較プラスチックであると判定される。このため、判定プラスチックの材質が比較プラスチックであることを判定できる。
【0058】
さらに、閾値が変更可能にされている。このため、判定プラスチックの材質の判定を調整できる。
【0059】
しかも、判定プラスチックの材質が比較プラスチックであるか否かが、本体装置36の画面36Aに、記号(例えば〇又は×等)の表示により報知される(例えば
図6参照)。このため、言語を使用せずに判定プラスチックの材質の判定結果を報知でき、言語が通じないユーザでも、判定プラスチックの材質の判定結果を認識できる。
【0060】
また、測定装置12により比較スペクトル及び判定スペクトルが測定される。このため、比較スペクトル及び判定スペクトルを容易に取得できる。
【0061】
さらに、測定装置12の本体部16にアタッチメント28が装着された状態で、フィルムプラスチックP(フィルム状の比較プラスチック又は判定プラスチック)が、アタッチメント28における装着板30の下部と開閉板32Bとの間及び開放孔30Aの側面と反射板34の側面との間に挟まれて、反射板34の上側に配置される(
図5(B)参照)。そして、光源24が光をフィルムプラスチックPに照射することで、光が反射板34によって反射されると共にフィルムプラスチックPを往復透過して、フィルムプラスチックPによって部分的に吸収された光を分光センサ26が検出する。このため、光がフィルムプラスチックPを往復透過してフィルムプラスチックPに吸収されるため、フィルムプラスチックPについての近赤外線のスペクトルの検出精度(測定精度)を高くできる。
【0062】
しかも、上述の如く、フィルムプラスチックPが開放孔30Aの側面と反射板34の側面との間に挟まれる。このため、測定装置12外からフィルムプラスチックP内に侵入してフィルムプラスチックP内を通過する外乱光が反射板34の側面によって反射されることで、外乱光が開放孔30A(反射板34側)に侵入することが制限される。このため、フィルムプラスチックP内を通過する外乱光を分光センサ26が検出することを抑制でき、フィルムプラスチックPについての近赤外線のスペクトルの検出精度(測定精度)を一層高くできる。
【0063】
なお、上記実施形態では、判定プラスチックの材質が比較プラスチックであるか否かが、記号の表示により報知される。しかしながら、これに代えて、又は、これと共に、判定プラスチックの材質が比較プラスチックであるか否かが、音(言語以外の表意音、例えばドアチャイム音又はブザー音等)の発生と色彩(例えば青色又は赤色等)の表示との少なくとも一方により報知されてもよい。
【0064】
さらに、上記実施形態では、測定装置12及び本体装置36を備える。しかしながら、測定装置12のみを備えて本体装置36を備えなくてもよく、本体装置36のみを備えて測定装置12を備えなくてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、プラスチック判定処理をCPU40がソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行する。しかしながら、プラスチック判定処理をCPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、プラスチック判定処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0066】
さらに、上記実施形態では、プラスチック判定プログラムがROM42又はストレージ46に予め記憶(インストール)されているが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10 プラスチック判定
12 測定装置(測定部)
24 光源(照射部)
26 分光センサ(検出部)
34 反射板(反射部、制限部)
50 報知部
54 記憶部
56 判定部
P フィルムプラスチック
【要約】
【課題】判定プラスチックの材質の比較プラスチックとの類似度を判定する。
【解決手段】プラスチック判定装置では、比較プラスチックに部分的に吸収された近赤外線のスペクトルである比較スペクトルが取得される共に、判定プラスチックに部分的に吸収された近赤外線のスペクトルである判定スペクトルが取得される。そして、判定スペクトルの比較スペクトルに対する相関係数が類似度として判定される。このため、判定プラスチックの材質の比較プラスチックとの類似度を判定できる。
【選択図】
図7