(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】頭蓋内に安全に細胞を投与するための総合システム
(51)【国際特許分類】
A61M 5/00 20060101AFI20220127BHJP
A61M 5/42 20060101ALI20220127BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
A61M5/00 500
A61M5/42 520
A61B5/055 380
A61B5/055 390
(21)【出願番号】P 2021518980
(86)(22)【出願日】2020-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2020048838
(87)【国際公開番号】W WO2021132600
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2021-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2019239560
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520002597
【氏名又は名称】株式会社RAINBOW
(74)【代理人】
【識別番号】100118371
【氏名又は名称】▲駒▼谷 剛志
(72)【発明者】
【氏名】川堀 真人
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-185503(JP,A)
【文献】特表2016-517288(JP,A)
【文献】特開2014-111083(JP,A)
【文献】特表2015-521883(JP,A)
【文献】特表2009-500069(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0105105(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00 - 5/52
A61B 34/00 -34/37
A61B 5/055
A61B 6/03
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与する部位を特定するための方法であって、該方法は
A)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得するステップと、
B)該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、被験体の脳の情報を入手するステップと、
C)該コンピュータデバイスにより、該取得した画像データおよび該被験体の脳に関するデータを用いて運動線維を描写するステップと、
D)該コンピュータデバイスにより、該運動線維が障害を受けている障害位置を特定するステップであって、
該被験体の脳の少なくとも一部の画像データにおいて該運動線維の走行データ
の輝度値が他の部位より低い部分を特定し、該低い部分を障害を受けている運動線維と特定するステップと
E)該コンピュータデバイスにより、該障害位置の付近の
、AVMでeloquent areaと呼ばれる部位以外の領域を投与部位として選択するステップと、
F)該選択された投与部位を、グラフィック表示として出力するステップと
を包含する、方法。
【請求項2】
前記画像化デバイスはMRI、CT、超音波検査装置または血管造影検査装置を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記画像化デバイスはMRIであり、前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データは少なくともDTI画像を含み、前記運動線維の走行データは、
該DTI画像中に表現される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記走行データは、
前記DTI画像におけるFA値(fractional anisotropy value)により表現される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記運動線維の走行データ
の輝度値が他の部位より低い部位における走行データの低下は、少なくとも50%以上の低下である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記
AVMでeloquent areaと呼ばれる部位以外の領域は、前記障害位置から半径1.5cm以内に存在する位置を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記投与部位は、前記障害位置に対して脳の尾側に位置決めされる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記投与部位は、前記障害位置ごとに決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記投与部位は、前記障害位置に対して1または複数存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記運動線維の走行データが得られない場合、対側の健常な運動線維の対称を
該得られない側の該走行データとして用いることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記画像化デバイスはMRIであり、前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データは少なくともDWI画像、T2強調画像、FLAIR画像およびDTI画像を含み、
前記選択は、
該DWI画像と該T2
強調画像とを比較することにより
特定される、現在の脳梗塞で損傷を受けた領域
を選択から外し、
該
DWI画像では白く描出されない部位であるが、
該T2
強調画像および
該FLAIR画像において浮腫が強く出ている部位もまた、選択から外し、
該DTI
画像で運動線維を描出し、該描出された運動線維の領域を選択から外
し、
前記コンピュータデバイスが、
a)信号強度をプロットした該FLAIR画像において、高信号の部位、および
b)信号強度をプロットした該T2強調画像において、高信号の部位
のうちの両方を満たす部位を、浮腫と特定する、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記画像化デバイスはMRIであり、前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データは少なくともDWI画像、T2強調画像、FLAIR画像およびDTI画像を含み、
[1]
該DTI画像においてTractographyが描出される場合、
(a)該DTI画像においてTractographyが断裂しているか、または弱くなっている部分に近い場所で可及的に近接する正常脳組織であり、かつ、
(b)
AVMでeloquent areaと呼ばれる部位以外の領域であ
る
という条件を満たす部位を投与部位として選択するか、または
[2]該DTI画像においてTractographyが描出されない場合、
(aa)中心前回、内包後脚、橋のそれぞれ単独をROIとして設定した場合において出てくるTractographyの中で、健常な人間における運動線維を選択するか、もしくは
(bb)(aa)でもTractographyが出ない場合は対側のTractographyの対称を取ることにより、運動線維の走行を推定して、急性期の
該DWI画像において高信号と示される損傷部位、または慢性期に
該T2
強調/FLAIR画像において低信号と示される損傷部位と、
対側のTractographyの対称を取ることにより推定されるTractographyの通過点が重なる部位を運動線維が断裂している箇所と推定し、[1]を行う
ことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
前記[1]において、前記T2強調/FLAIR画像の高信号部位も避けてその可及的近傍である部分という条件をさらに満たす部位を投与部位として選択する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与するための投与針の通過領域を特定するための方法であって、該方法は
(A)画像化デバイスを用いて、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得するステップと、
(B)該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、被験体の脳の情報を入手するステップと、
(C)該取得した画像データおよび該被験体の脳の情報から、該コンピュータデバイスにより、血管を描写するステップと、
(D)該コンピュータデバイスにより、該血管を貫通しないような経路範囲を特定するステップと、
(E)該コンピュータデバイスにより、脳内に針を刺入した後脳溝に
該針が出ない脳溝非侵襲
経路を特定するステップと、
(F)該コンピュータデバイスにより、
該(D)と
該(E)で算出した経路範囲のうち重複す
る範囲内で経路を設定するステップと
(G)該設定された経路を、グラフィック表示として出力するステップと
を包含する方法。
【請求項15】
前記血管は、脳の表面から上矢状静脈洞へ注ぐ
、ガドリニウム増強T1画像で同定できる静脈を含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記画像化デバイスはMRIであり、前記取得した画像データは少なくともガドリニウム増強T1画像を含み、前記
(D)の特定は、ガドリニウム増強T1画像における高信号部位を血管と判断する、請求項
14に記載の方法。
【請求項17】
前記画像化デバイスはMRIであり、前記取得した画像データは少なくともDWI画像、T2強調画像、FLAIR画像およびDTI画像を含み、前記
(D)および(E)の特定は
、該DWI、
該T2
強調、
該FLAI
R、および
該DTIのうち少なくとも1つを測定することで達成される、請求項
14に記載の方法。
【請求項18】
前記画像化デバイスはMRIであり、前記取得した画像データは少なくともガドリニウム増強T1画像、T2強調画像およびFLAIR画像を含み、前記(D)および(E)の特定は
、(1)
該FLAIR画像、(2)
該T2
強調画像、(3)
該ガドリニウム増強T1画像のシークエンスで決定される、請求項
14に記載の方法。
【請求項19】
前記画像化デバイスはMRIであり、前記取得した画像データは少なくともT2強調画像およびFLAIR画像を含み、前記脳溝非侵襲経路の特定は、
該MRIにおける
該T2強調画像および
該FLAIR画像を確認することにより実現される、請求項
14に記載の方法。
【請求項20】
前記画像化デバイスはMRIであり、前記取得した画像データは少なくともT2強調画像およびFLAIR画像を含み、
前記(E)において、
1)信号強度をプロットした
該FLAIR画像において、低信号の部位、および
2)信号強度をプロットした
該T2強調画像において、高信号の部位
の両方を満たす部位を、脳溝と特定する、請求項
14に記載の方法。
【請求項21】
被験体の脳における髄液漏れを防止するためのシステムであって、
A)脳の表面に存在する硬膜を切開する切開具と、
B)
電気外科器具であって、
該電気外科器具の出力および凝固接着予定領域の面積を入力すると、凝固接着に必要な時間を計算し、凝固接着を開始して予想時間経過後に焼灼を止めるための警告を示すように構成される、電気外科器具
と
C)該くも膜の白濁を検出し得るセンサーと
を含むシステム。
【請求項22】
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与する経路を特定するための方法であって、該方法は
i)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得するステップと、
ii)該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、被験体の脳の情報を入手するステップと、
iii)該細胞を投与する経路の候補を以下の手順で提供するステップであって、該ステップは:
aa)該コンピュータデバイスにより、
障害位置の付近の
、AVMでeloquent areaと呼ばれる部位以外の領域を投与部位として選択することと、
bb)該選択された投与部位への投与経路を特定することと
、
を含むステップと、
iv)該選択された投与部位を、グラフィック表示として出力するステップと
を包含する、方法。
【請求項23】
前記iii)がcc)前記コンピュータデバイスにより、頭皮において細胞を投与する投与デバイスを通すための切除位置を選択することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記aa)が、
C)該コンピュータデバイスにより、該取得した画像データおよび該被験体の脳に関するデータを用いて運動線維を描写することと、
D)該コンピュータデバイスにより、該運動線維が障害を受けている障害位置を特定する
ことであって、該運動線維の走行データにおいて、
該運動繊維
の走行データの輝度値が他の部位より低い部分を特定し、該低い部分を障害を受けている運動線維と特定することと
E)該コンピュータデバイスにより、該障害位置の付近の
、AVMでeloquent areaと呼ばれる部位以外の領域を投与部位として選択することと
を包含する、請求項
22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記bb)が、
(C)該取得した画像データおよび該被験体の脳の情報から、該コンピュータデバイスにより、血管を描写することと、
(D)該コンピュータデバイスにより、該血管を貫通しないような経路範囲を特定することと、
(E)該コンピュータデバイスにより、脳内に針を刺入した後脳溝に
該針が出ない脳溝非侵襲範囲を特定することと、
(F)該コンピュータデバイスにより、
該(D)と
該(E)で算出した経路範囲のうち重複す
る範囲内で経路を設定することと
を包含する、請求項
22または23に記載の方法。
【請求項26】
前記画像化デバイスはMRI、CT、超音波検査装置または血管造影検査装置を含む、請求項
24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記画像化デバイスはMRIであり、前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データは少なくともDTI画像を含み、前記運動線維の走行データは、
該DTI画像中に表現される、請求項
24~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記走行データは、
前記DTI画像におけるFA値(fractional anisotropy value)により表現される、請求項
27に記載の方法。
【請求項29】
前記運動線維の走行データ
の輝度値が他の部位より低い部位における走行データの低下は、少なくとも50%以上の低下である、請求項
24に記載の方法。
【請求項30】
前記
AVMでeloquent areaと呼ばれる部位以外の領域は、前記障害位置から半径1.5cm以内に存在する位置を含む、請求項
24に記載の方法。
【請求項31】
前記投与部位は、前記障害位置に対して脳の尾側に位置決めされる、請求項
24に記載の方法。
【請求項32】
前記投与部位は、前記障害位置ごとに決定される、請求項
24に記載の方法。
【請求項33】
前記投与部位は、前記障害位置に対して1または複数存在する、請求項
24に記載の方法。
【請求項34】
該運動線維の走行データが得られない場合、対側の健常な運動線維の対称を
該得られない側の該走行データとして用いることを特徴とする、請求項
24に記載の方法。
【請求項35】
前記画像化デバイスはMRIであり、前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データは少なくともDWI画像、T2強調画像、FLAIR画像およびDTI画像を含み、
前記選択は、
該DWI画像と該T2
強調画像とを比較することにより
特定される、現在の脳梗塞で損傷を受けた領域
を選択から外し、
該
DWI画像では白く描出されない部位であるが、該T2
強調画像および該FLAIR画像において浮腫が強く出ている部位もまた、選択から外し、
該DTI
画像で運動線維を描出し、該描出された運動線維の領域を選択から外
し、
前記コンピュータデバイスが、
a)信号強度をプロットした該FLAIR画像において、高信号の部位、および
b)信号強度をプロットした該T2強調画像において、高信号の部位
のうちの両方を満たす部位を、浮腫と特定する、
請求項
24に記載の方法。
【請求項36】
前記画像化デバイスはMRIであり、前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データは少なくともDWI画像、T2強調画像、FLAIR画像およびDTI画像を含み、
[1]
該DTI画像においてTractographyが描出される場合、
(a)該DTI画像においてTractographyが断裂しているか、または弱くなっている部分に近い場所で可及的に近接する正常脳組織であり、かつ、
(b)
AVMでeloquent areaと呼ばれる部位以外の領域であ
る
という条件を満たす部位を投与部位として選択するか、または
[2]該DTI画像においてTractographyが描出されない場合、
(aa)中心前回、内包後脚、橋のそれぞれ単独をROIとして設定した場合において出てくるTractographyの中で、健常な人間における運動線維を選択するか、もしくは
(bb)(aa)でもTractographyが出ない場合は対側のTractographyの対称を取ることにより、運動線維の走行を推定して、急性期の
該DWI画像において高信号と示される損傷部位、または慢性期に
該T2
強調/FLAIR画像において低信号と示される損傷部位と、
対側のTractographyの対称を取ることにより推定されるTractographyの通過点が重なる部位を運動線維が断裂している箇所と推定し、[1]を行う
ことを特徴とする、請求項
24に記載の方法。
【請求項37】
前記[1]において、
前記T2
強調/FLAIR画像の高信号部位も避けてその可及的近傍である部分という条件をさらに満たす部位を投与部位として選択する、請求項
36に記載の方法。
【請求項38】
前記血管は、脳の表面から上矢状静脈洞へ注ぐ
、ガドリニウム増強T1画像で同定できる静脈を含む、請求項
25に記載の方法。
【請求項39】
前記画像化デバイスはMRIであり、前記取得した画像データは少なくともガドリニウム増強T1画像を含み、前記(D)の特定は、ガドリニウム増強T1画像における高信号部位を血管と判断する、請求項
25に記載の方法。
【請求項40】
前記画像化デバイスはMRIであり、前記取得した画像データは少なくともDWI画像、T2強調画像、FLAIR画像およびDTI画像を含み、前記
(D)および(E)の特定は
、該DWI、
該T2
強調、
該FLAIRおよび
該DTIのうち少なくとも1つを測定することで達成される、請求項
25に記載の方法。
【請求項41】
前記画像化デバイスはMRIであり、前記取得した画像データは少なくともガドリニウム増強T1画像、T2強調画像およびFLAIR画像を含み、前記(D)および(E)の特定は
、(1)
該FLAIR画像、(2)
該T2
強調画像、(3)
該ガドリニウム増強T1画像のシークエンスで決定される、請求項
25に記載の方法。
【請求項42】
前記画像化デバイスはMRIであり、前記取得した画像データは少なくともT2強調画像およびFLAIR画像を含み、前記脳溝非侵襲経路の特定は、MRIにおける
該T2強調画像および
該FLAIR画像を確認することにより実現される、請求項
25に記載の方法。
【請求項43】
前記画像化デバイスはMRIであり、前記取得した画像データは少なくともT2強調画像およびFLAIR画像を含み、
前記(E)において、
1)信号強度をプロットした
該FLAIR画像において、低信号の部位、および
2)信号強度をプロットした
該T2強調画像において、高信号の部位
の両方を満たす部位を、脳溝と特定する、請求項
25に記載の方法。
【請求項44】
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与する経路を特定するための方法であって、該方法は
i)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得するステップと、
ii)該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、被験体の脳の情報を入手するステップと、
iii)該細胞を投与する経路の候補を以下の手順で提供するステップであって、該ステップは:
a)該コンピュータデバイスにより、細胞治療を投与するための頭蓋骨において該投与デバイスを通すための開口部を選択することと、
b)該コンピュータデバイスにより、該取得した画像データおよび該被験体の脳に関するデータを用いて運動線維、脳血管、脳溝、機能部位からなる群より選択される少なくとも一つの脳経路除外領域を特定することと、
c)該コンピュータデバイスにより
、障害位置の付近の
、AVMでeloquent areaと呼ばれる部位以外の領域を投与部位として選択することと、
d)該開口部と該投与部位との間に投与経路を描写することであって、該投与経路は該脳経路除外領域に関する情報を含んで描写される、こととを
含む、ステップと、
iv)該選択された投与部位を、グラフィック表示として出力するステップと
を包含する、方法。
【請求項45】
前記iii)が前記コンピュータデバイスにより、頭皮において細胞を投与する投与デバイスを通すための切除位置を選択することをさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記iii)が前記脳経路除外領域に関する情報から前記投与経路に関して経路安全度の情報を提供することをさらに含む、請求項44または45に記載の方法。
【請求項47】
前記画像化デバイスはMRI、CT、超音波検査装置または血管造影検査装置を含む、請求項
44~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記d)が、
C)前記コンピュータデバイスにより、前記取得した画像データおよび前記被験体の脳に関するデータを用いて運動線維を描写することと、
D)該コンピュータデバイスにより、該運動線維が障害を受けている障害位置を特定する
ことであって、
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データにおいて該運動線維の走行データ
の輝度値が他の部位より低い部分を特定し、該低い部分を障害を受けている運動線維と特定することと
E)該コンピュータデバイスにより、該障害位置の付近の
、AVMでeloquent areaと呼ばれる部位以外の領域を投与部位として選択することと、
を包含する、請求項
44~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記画像化デバイスはMRIであり、前記取得した画像データは少なくともガドリニウム増強T1画像を含み、前記c)において、
該ガドリニウム増強T1画像における高信号部位を前記脳血管と判定することを含む、請求項
44~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記画像化デバイスはMRIであり、前記取得した画像データは少なくともT2強調画像およびFLAIR画像を含み、
前記c)において、
1)信号強度をプロットした
該FLAIR画像において、低信号の部位、および
2)信号強度をプロットした
該T2強調画像において、高信号の部位
のうち両方を満たす部位を、脳溝と特定する、請求項
44~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血の発生確率を予測する方法であって、
1)細胞の投与位置を示すデータ群と、該細胞の投与位置ごとの細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血の発生のデータとを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させるステップと、
2)細胞の投与位置を示すデータ群を取得するステップと、
3)学習済みの該人工知能モデルに対して、2)で取得した該細胞の投与位置を示すデータ群を入力するステップと、
4)学習済みの該人工知能モデルに、細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血の発生確率を算出させるステップと
を包含する方法。
【請求項52】
前記細胞の投与位置を示すデータ群が、投与位置と脳表との距離、投与位置と障害位置との距離、投与位置と浮腫領域との距離、および投与位置が脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位以外であるかどうかの少なくとも1つのデータを含む、請求項
51に記載の方法。
【請求項53】
前記細胞の投与位置を示すデータ群が、投与位置と脳表との距離、投与位置と障害位置との距離、投与位置と浮腫領域との距離、および投与位置が脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位以外であるかどうかの組合せを含む、請求項
51または52に記載の方法。
【請求項54】
前記細胞の投与位置が、請求項1~14のうちの1つまたは複数の方法により特定されたものである、請求項
51~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血の発生確率を予測する方法であって、
1)細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群と、該細胞を投与するための投与針の通過領域ごとの細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血のデータとを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させるステップと、
2)細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を取得するステップと、
3)学習済みの該人工知能モデルに対して、2)で取得した該細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を入力するステップと、
4)学習済みの該人工知能モデルに、細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血の発生確率を算出させるステップと
を包含する方法。
【請求項56】
前記細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群が、投与針が通過する皮膚直下の脳表と頭蓋骨との距離、投与針の刺入点の直下がeloquent areaであるかどうか、投与針の刺入点の直下に
、ガドリニウム増強T1画像で同定できる静脈があるかどうか、投与針が人工骨、人工硬膜またはチタンプレート
を含む人工物を通過するかどうか、脳溝と投与針との距離、および投与針と
ガドリニウム増強T1画像で同定できる脳内の血管との距離の少なくとも1つを含む、請求項
55に記載の方法。
【請求項57】
前記細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群が、投与針が通過する皮膚直下の脳表と頭蓋骨との距離、投与針の刺入点の直下がeloquent areaであるかどうか、投与針の刺入点の直下に
、ガドリニウム増強T1画像で同定できる静脈があるかどうか、投与針が人工骨、人工硬膜またはチタンプレート
を含む人工物を通過するかどうか、脳溝と投与針との距離、および投与針と
ガドリニウム増強T1画像で同定できる脳内の血管との距離の組合せを含む、請求項
55または56に記載の方法。
【請求項58】
前記細胞の投与位置が、請求項
22~43のうちの1つまたは複数の方法により特定されたものである、請求項
55~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血の発生確率を予測する方法であって、
1)細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群と、該細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に該細胞を投与するための投与針の通過領域ごとの細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血のデータとを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させるステップと、
2)細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を取得するステップと、
3)学習済みの該人工知能モデルに対して、2)で取得した該細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を入力するステップと、
4)学習済みの該人工知能モデルに、細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血の発生確率を算出させるステップと
を包含する方法。
【請求項60】
前記細胞の投与位置を示すデータ群が、投与位置と脳表との距離、投与位置と障害位置との距離、投与位置と浮腫領域との距離、および投与位置が脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位以外であるかどうかの組合せを含む、請求項
59に記載の方法。
【請求項61】
前記細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群が、投与針が通過する皮膚直下の脳表と頭蓋骨との距離、投与針の刺入点の直下がeloquent
areaであるかどうか、投与針の刺入点の直下に
、ガドリニウム増強T1画像で同定できる静脈があるかどうか、投与針が人工骨、人工硬膜またはチタンプレート
を含む人工物を通過するかどうか、および脳溝と投与針との距離、投与針と
ガドリニウム増強T1画像で同定できる脳内の血管との距離の組合せを含む、請求項
59または60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記細胞の投与位置を示すデータ群が、投与位置と脳表との距離、投与位置と障害位置との距離、投与位置と浮腫領域との距離、および投与位置が脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位以外であるかどうかの少なくとも1つを含み、
該該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群が、投与針が通過する皮膚直下の脳表と頭蓋骨との距離、投与針の刺入点の直下がeloquent areaであるかどうか、投与針の刺入点の直下に
、ガドリニウム増強T1画像で同定できる静脈があるかどうか、投与針が人工骨、人工硬膜またはチタンプレート
を含む人工物を通過するかどうか、脳溝と投与針との距離、および投与針と
ガドリニウム増強T1画像で同定できる脳内の血管との距離の少なくとも1つを含む、請求項
59~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記細胞の投与位置と、該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域とが、請求項
22~50のうちの1つまたは複数の方法により特定されたものである、請求項
59~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与する部位を特定するための方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、該方法は
A)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得するステップと、
B)該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、被験体の脳の情報を入手するステップと、
C)該コンピュータデバイスにより、該取得した画像データおよび該被験体の脳に関するデータを用いて運動線維を描写するステップと、
D)該コンピュータデバイスにより、該運動線維が障害を受けている障害位置を特定するステップであって、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データにおいて該運動線維の走行データ
の輝度値が他の部位より低い部分を特定し、該低い部分を障害を受けている運動線維と特定するステップと
E)該コンピュータデバイスにより、該障害位置の付近の
、AVMでeloquent areaと呼ばれる部位以外の領域を投与部位として選択するステップと、
F)該選択された投与部位を、グラフィック表示として出力するステップと
を包含する、プログラム。
【請求項65】
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与する部位を特定するための方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納した記録媒体であって、該方法は
A)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得するステップと、
B)該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、被験体の脳の情報を入手するステップと、
C)該コンピュータデバイスにより、該取得した画像データおよび該被験体の脳に関するデータを用いて運動線維を描写するステップと、
D)該コンピュータデバイスにより、該運動線維が障害を受けている障害位置を特定するステップであって、
該被験体の脳の少なくとも一部の画像データにおいて該運動線維の走行データ
の輝度値が他の部位より低い部分を特定し、該低い部分を障害を受けている運動線維と特定するステップと
E)該コンピュータデバイスにより、該障害位置の付近の
、AVMでeloquent areaと呼ばれる部位以外の領域を投与部位として選択するステップと、
F)該選択された投与部位を、グラフィック表示として出力するステップと
を包含する、記録媒体。
【請求項66】
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与する部位を特定するためのシステムであって、該システムは
A)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得する取得部と、
B)該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、被験体の脳の情報を入手する情報入手部と、
C)該コンピュータデバイスにより、該取得した画像データおよび該被験体の脳に関するデータを用いて運動線維を描写する描写部と、
D)該コンピュータデバイスにより、該運動線維が障害を受けている障害位置を特定する特定部であって、
該被験体の脳の少なくとも一部の画像データにおいて該運動線維の走行データ
の輝度値が他の部位より低い部分を特定し、該低い部分を障害を受けている運動線維と特定する特定部と
E)該コンピュータデバイスにより、該障害位置の付近の
、AVMでeloquent areaと呼ばれる部位以外の領域を投与部位として選択する選択部と、
F)該選択された投与部位を、グラフィック表示として出力する出力部と
を含む、システム。
【請求項67】
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与するための投与針の通過領域を特定するための方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、該方法は
(A)画像化デバイスを用いて、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得するステップと、
(B)該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、被験体の脳の情報を入手するステップと、
(C)該取得した画像データおよび該被験体の脳の情報から、該コンピュータデバイスにより、血管を描写するステップと、
(D)該コンピュータデバイスにより、該血管を貫通しないような経路範囲を特定するステップと、
(E)該コンピュータデバイスにより、脳内に針を刺入した後
該針が脳溝に出ない脳溝非侵襲範囲を特定するステップと、
(F)該コンピュータデバイスにより、
該(D)と
該(E)で算出した経路範囲のうち重複す
る範囲内で経路を設定するステップと
(G)該設定された経路を、グラフィック表示として出力するステップと
を包含するプログラム。
【請求項68】
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与するための投与針の通過領域を特定するための方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納した記録媒体であって、該方法は
(A)画像化デバイスを用いて、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得するステップと、
(B)該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、被験体の脳の情報を入手するステップと、
(C)該取得した画像データおよび該被験体の脳の情報から、該コンピュータデバイスにより、血管を描写するステップと、
(D)該コンピュータデバイスにより、該血管を貫通しないような経路範囲を特定するステップと、
(E)該コンピュータデバイスにより、脳内に針を刺入した後
該針が脳溝に出ない脳溝非侵襲範囲を特定するステップと、
(F)該コンピュータデバイスにより、
該(D)と
該(E)で算出した経路範囲のうち重複す
る範囲内で経路を設定するステップと
(G)該設定された経路を、グラフィック表示として出力するステップと
を包含する、記録媒体。
【請求項69】
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与するための投与針の通過領域を特定するためのシステムであって、該システムは
(A)画像化デバイスを用いて、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得する取得部と、
(B)該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、被験体の脳の情報を入手する情報入手部と、
(C)該取得した画像データおよび該被験体の脳の情報から、該コンピュータデバイスにより、血管を描写する描写部と、
(D)該コンピュータデバイスにより、該血管を貫通しないような経路範囲を特定する経路範囲特定部と、
(E)該コンピュータデバイスにより、脳内に針を刺入した後
該針が脳溝に出ない脳溝非侵襲範囲を特定する脳溝非侵襲範囲特定部と、
(F)該コンピュータデバイスにより、
該(D)と
該(E)で算出した経路範囲のうち重複す
る範囲内で経路を設定する設定部と
(G)該設定された経路を、グラフィック表示として出力する出力部と
を含む、システム。
【請求項70】
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与する経路を特定するための方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、該方法は
i)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得するステップと、
ii)該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、被験体の脳の情報を入手するステップと、
iii)該細胞を投与する経路の候補を以下の手順で提供するステップであって、該ステップは:
aa)該コンピュータデバイスにより
、障害位置の付近の
、AVMでeloquent areaと呼ばれる部位以外の領域を投与部位として選択することと、
bb)該選択された投与部位への投与経路を特定すること
と
を含むステップと、
iv)該選択された投与部位を、グラフィック表示として出力するステップと
を包含する、プログラム。
【請求項71】
前記iii)がcc)前記コンピュータデバイスにより、頭皮において細胞を投与する投与デバイスを通すための切除位置を選択することをさらに含む、請求項70に記載のプログラム。
【請求項72】
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与する経路を特定するための方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納した記録媒体であって、該方法は
i)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得するステップと、
ii)該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、被験体の脳の情報を入手するステップと、
iii)該細胞を投与する経路の候補を以下の手順で提供するステップであって、該ステップは:
aa)該コンピュータデバイスにより
、障害位置の付近の
、AVMでeloquent areaと呼ばれる部位以外の領域を投与部位として選択することと、
bb)該選択された投与部位への投与経路を特定すること
と
を含むステップと、
v)該選択された投与部位を、グラフィック表示として出力するステップと
を包含する、記録媒体。
【請求項73】
前記iii)がcc)前記コンピュータデバイスにより、頭皮において細胞を投与する投与デバイスを通すための切除位置を選択することをさらに含む、請求項72に記載の記録媒体。
【請求項74】
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与する経路を特定するためのシステムであって、該システムは
i)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得する取得部と、
ii)該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、被験体の脳の情報を入手する情報入手部と、
iii)該細胞を投与する経路の候補を以下の手順で提供する手順提供部であって、該手順提供部は:
aa)該コンピュータデバイスにより
、障害位置の付近の
、AVMでeloquent areaと呼ばれる部位以外の領域を投与部位として選択することと、
bb)該選択された投与部位への投与経路を特定することと
、
を実施するように構成されている、手順提供部と、
iv)該選択された投与部位を、グラフィック表示として出力する出力部と
を含む、システム。
【請求項75】
前記iii)がcc)前記コンピュータデバイスにより、頭皮において細胞を投与する投与デバイスを通すための切除位置を選択することをさらに実施するように構成されている、請求項74に記載のシステム。
【請求項76】
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与する経路を特定するための方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、該方法は
i)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得するステップと、
ii)該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、被験体の脳の情報を入手するステップと、
iii)該細胞を投与する経路の候補を以下の手順で提供するステップであって、該ステップは:
a)該コンピュータデバイスにより、細胞治療を投与するための頭蓋骨において該投与デバイスを通すための開口部を選択することと、
b)該コンピュータデバイスにより、該取得した画像データおよび該被験体の脳に関するデータを用いて運動線維、脳血管、脳溝、機能部位からなる群より選択される少なくとも一つの脳経路除外領域を特定することと、
c)該コンピュータデバイスにより
、障害位置の付近の
、AVMでeloquent areaと呼ばれる部位以外の領域を投与部位として選択することと、
d)該開口部と該投与部位との間に投与経路を描写することであって、該投与経路は該脳経路除外領域に関する情報を含んで描写される、こ
とを含む、ステップと、
iv)該選択された投与部位を、グラフィック表示として出力するステップと
を包含する、プログラム。
【請求項77】
前記iii)が前記コンピュータデバイスにより、頭皮において細胞を投与する投与デバイスを通すための切除位置を選択することをさらに含む、請求項76に記載のプログラム。
【請求項78】
前記iii)が前記脳経路除外領域に関する情報から前記投与経路に関して経路安全度の情報を提供することをさらに含む、請求項76または77に記載のプログラム。
【請求項79】
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与する経路を特定するための方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納した記録媒体であって、該方法は
i)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得するステップと、
ii)該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、被験体の脳の情報を入手するステップと、
iii)該細胞を投与する経路の候補を以下の手順で提供するステップであって、該ステップは:
a)該コンピュータデバイスにより、細胞治療を投与するための頭蓋骨において該投与デバイスを通すための開口部を選択することと、
b)該コンピュータデバイスにより、該取得した画像データおよび該被験体の脳に関するデータを用いて運動線維、脳血管、脳溝、機能部位からなる群より選択される少なくとも一つの脳経路除外領域を特定することと、
c)該コンピュータデバイスにより
、障害位置の付近の
、AVMでeloquent areaと呼ばれる部位以外の領域を投与部位として選択することと、
d)該開口部と該投与部位との間に投与経路を描写することであって、該投与経路は該脳経路除外領域に関する情報を含んで描写される、こ
とを含む、ステップと、
iv)該選択された投与部位を、グラフィック表示として出力するステップと
を包含する、記録媒体。
【請求項80】
前記iii)が前記コンピュータデバイスにより、頭皮において細胞を投与する投与デバイスを通すための切除位置を選択することをさらに含む、請求項79に記載の記録媒体。
【請求項81】
前記iii)が前記脳経路除外領域に関する情報から前記投与経路に関して経路安全度の情報を提供することをさらに含む、請求項79または80に記載の記録媒体。
【請求項82】
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与する経路を特定するためのシステムであって、該システムは
i)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得する取得部と、
ii)該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、被験体の脳の情報を入手する情報入手部と、
iii)該細胞を投与する経路の候補を以下の手順で提供する手順提供部であって、該手順提供部は:
a)該コンピュータデバイスにより、細胞治療を投与するための頭蓋骨において該投与デバイスを通すための開口部を選択することと、
b)該コンピュータデバイスにより、該取得した画像データおよび該被験体の脳に関するデータを用いて運動線維、脳血管、脳溝、機能部位からなる群より選択される少なくとも一つの脳経路除外領域を特定することと、
c)該コンピュータデバイスにより
、障害位置の付近の
、AVMでeloquent areaと呼ばれる部位以外の領域を投与部位として選択することと、
d)該開口部と該投与部位との間に投与経路を描写することであって、該投与経路は該脳経路除外領域に関する情報を含んで描写される、こ
とを実施するように構成されている、手順提供部と、
iv)該選択された投与部位を、グラフィック表示として出力する出力部と
を含む、システム。
【請求項83】
前記iii)が前記コンピュータデバイスにより、頭皮において細胞を投与する投与デバイスを通すための切除位置を選択することをさらに実施するように構成されている、請求項82に記載のシステム。
【請求項84】
前記iii)が前記脳経路除外領域に関する情報から前記投与経路に関して経路安全度の情報を提供することをさらに実施するように構成されている、請求項82または83に記載のシステム。
【請求項85】
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血の発生確率を予測する方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、該方法は、
1)細胞の投与位置を示すデータ群と、該細胞の投与位置ごとの細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血の発生のデータとを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させるステップと、
2)細胞の投与位置を示すデータ群を取得するステップと、
3)学習済みの該人工知能モデルに対して、2)で取得した該細胞の投与位置を示すデータ群を入力するステップと、
4)学習済みの該人工知能モデルに、細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血の発生確率を算出させるステップと
を包含する、プログラム。
【請求項86】
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血の発生確率を予測する方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納した記録媒体であって、該方法は、
1)細胞の投与位置を示すデータ群と、該細胞の投与位置ごとの細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血の発生のデータとを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させるステップと、
2)細胞の投与位置を示すデータ群を取得するステップと、
3)学習済みの該人工知能モデルに対して、2)で取得した該細胞の投与位置を示すデータ群を入力するステップと、
4)学習済みの該人工知能モデルに、細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血の発生確率を算出させるステップと
を包含する、記録媒体。
【請求項87】
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血の発生確率を予測するシステムであって、
1)細胞の投与位置を示すデータ群と、該細胞の投与位置ごとの細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血の発生のデータとを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させる学習部と、
2)細胞の投与位置を示すデータ群を取得する取得部と、
3)学習済みの該人工知能モデルに対して、2)で取得した該細胞の投与位置を示すデータ群を入力する入力部と、
4)学習済みの該人工知能モデルに、細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血の発生確率を算出させる算出部とを含む、システム。
【請求項88】
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血の発生確率を予測する方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、該方法は、
1)細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群と、該細胞を投与するための投与針の通過領域ごとの細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血のデータとを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させるステップと、
2)細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を取得するステップと、
3)学習済みの該人工知能モデルに対して、2)で取得した該細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を入力するステップと、
4)学習済みの該人工知能モデルに、細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血の発生確率を算出させるステップと
を包含する、プログラム。
【請求項89】
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血の発生確率を予測する方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納した記録媒体であって、該方法は、
1)細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群と、該細胞を投与するための投与針の通過領域ごとの細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血のデータとを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させるステップと、
2)細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を取得するステップと、
3)学習済みの該人工知能モデルに対して、2)で取得した該細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を入力するステップと、
4)学習済みの該人工知能モデルに、細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血の発生確率を算出させるステップと
を包含する、記録媒体。
【請求項90】
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血の発生確率を予測するシステムであって、
1)細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群と、該細胞を投与するための投与針の通過領域ごとの細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血のデータとを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させる学習部と、
2)細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を取得する取得部と、
3)学習済みの該人工知能モデルに対して、2)で取得した該細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を入力する入力部と、
4)学習済みの該人工知能モデルに、細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血の発生確率を算出させる算出部とを含む、システム。
【請求項91】
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血の発生確率を予測する方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、該方法は、
1)細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群と、該細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に該細胞を投与するための投与針の通過領域ごとの細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血のデータとを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させるステップと、
2)細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を取得するステップと、
3)学習済みの該人工知能モデルに対して、2)で取得した該細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を入力するステップと、
4)学習済みの該人工知能モデルに、細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血の発生確率を算出させるステップと
を包含する、プログラム。
【請求項92】
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血の発生確率を予測する方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納した記録媒体であって、該方法は、
1)細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群と、該細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に該細胞を投与するための投与針の通過領域ごとの細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血のデータとを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させるステップと、
2)細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を取得するステップと、
3)学習済みの該人工知能モデルに対して、2)で取得した該細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を入力するステップと、
4)学習済みの該人工知能モデルに、細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血の発生確率を算出させるステップと
を包含する、記録媒体。
【請求項93】
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血の発生確率を予測するシステムであって、
1)細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群と、該細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に該細胞を投与するための投与針の通過領域ごとの細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血のデータとを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させる学習部と、
2)細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を取得する取得部と、
3)学習済みの該人工知能モデルに対して、2)で取得した該細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を入力する入力部と、
4)学習済みの該人工知能モデルに、細胞治療
に起因する運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または脳内出血の発生確率を算出させる算出部とを含む、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、中枢神経障害(脳梗塞や脳出血など)に対する細胞治療において有用な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
中枢神経障害(脳梗塞や脳出血など)に対して細胞治療が期待されている。投与方法の一つとして脳内投与が考えられ、これは脳血液関門をクリア出来るため、経血管(静脈・動脈)投与に比べ大量の細胞を患部に送ることが出来るメリットがある。ただ脳内投与する際の問題点として新たな脳損傷を作りうる危険性があり、それを避けるためには(1)細胞投与部位(重要部位を避ける)、(2)投与用針の通過する領域(脳溝や血管を避ける)、(3)髄液漏れによる脳移動、を防ぐ必要がある。これらの総合システムに関して細胞治療に関して開示された既存の技術は存在しない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明者らは、本開示において新しい手術・投与の方法を提供する。その方法は、主に以下を特徴とする。
【0004】
(1)投与部位の決定:細胞投与部位を決定するために事前に脳MRIで運動線維を描出する。描出された運動線維(脳損傷が強く、描出されない場合には対側の健常な運動線維を参考にする)が障害を受けている部分を把握し、同部位に可及的に近い場所(半径1.5cm以内)で神経機能に重要な働きをしていないと考えられる部位を投与部位として選択する。
【0005】
(2)投与針の通過領域の決定:事前に脳MRIを用いて脳表の太い静脈を確認し針の通過の際に同部位を貫通することが無いように策定する。また一旦脳内に針を刺入した場合以後は脳溝に出ない様な通路を選ぶ(脳溝に出ることによって脳の表面を走っている細い静脈や動脈を傷つける恐れがある)。この手法は、手術の方法として記載できるほか、プログラム発明としても記載可能である。
【0006】
(3)髄液漏れを防ぐ方法:脳の表面に存在するくも膜を切開すると脳内の髄液が流出する。脳は髄液の中に浮いている様に存在するため、時間が経過した際には脳の位置がずれるbrain shift (sinking)が生じる。これを防ぐためにくも膜を切開する前に、穿刺開始予定部位の脳表のくも膜と軟膜をバイポーラー凝固鑷子などの電気外科器具を用いて凝固接着させる方法がある。これにより針を挿入している際にも脳のずれを防ぐことが出来る。これは特に複数回の穿刺を必要とする場合において特に重要である。
【0007】
本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与する部位を特定するための方法であって、該方法は
A)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得するステップと、
B)該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、被験体の脳の情報を入手するステップと、
C)該コンピュータデバイスにより、該取得した画像データおよび該被験体の脳に関するデータを用いて運動線維を描写するステップと、
D)該コンピュータデバイスにより、該運動線維が障害を受けている障害位置を特定するステップであって、該運動線維の走行データが他の部位より低い部分を特定し、該低い部分を障害を受けている運動線維と特定するステップと
E)該コンピュータデバイスにより、該障害位置の付近の安全領域を投与部位として選択するステップと、
F)該選択された投与部位を、グラフィック表示として出力するステップと
を包含する、方法。
(項目2)
前記画像化デバイスはMRI、CT、超音波検査装置または血管造影検査装置を含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目3)
前記運動線維の走行データは、DTI画像中に表現される、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記走行データは、DTI画像におけるFA値(fractional anisotropy value)により表現される、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目5)
前記運動線維の走行データが他の部位より低い部位における走行データの低下は、少なくとも50%以上の低下である、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目6)
前記安全領域は、前記障害位置から半径約1.5cm以内に存在する位置を含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目7)
前記安全領域は、前記障害位置から半径約1.5cm以内に存在する位置で、かつ、神経機能に重要な働きをしていないと考えられる部位が選択される、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目8)
前記投与部位は、前記障害位置に対して脳の尾側に位置決めされる、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目9)
前記投与部位は、前記障害位置ごとに決定される、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目10)
前記投与部位は、前記障害位置に対して1または複数存在する、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目11)
該運動線維の走行データが得られない場合、対側の健常な運動線維を参考にして、障害を受けている部分を把握することを特徴とする、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目12)
前記選択は、
DWI画像とT2画像とを比較することにより、現在の脳梗塞で損傷を受けた領域を把握し、該領域は選択から外し、
DWI陰性であるが、T2画像およびFLAIR画像において浮腫が強く出ている部位もまた、選択から外し、
DTI領域で運動線維を描出し、該描出された運動線維の領域を選択から外す、
先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目13)
前記MRIにおけるT2強調画像およびFLAIR画像において、
a)信号強度をプロットしたFLAIR画像において、高信号の部位、および
b)信号強度をプロットしたT2強調画像において、高信号の部位のうちの両方を満たす部位を、浮腫と特定する、先行する項目のいずれかに記載の方法。(項目14)
[1}前記DTI画像においてTractographyが描出される場合、
(a)該DTI画像においてTractographyが断裂しているか、または弱くなっている部分(脳梗塞急性期の場合通常はDWIで白い場所、脳梗塞慢性期の場合T2/FLAIRの高信号、外傷・脳出血の急性期の場合、CTで高信号、外傷・脳出血の慢性期の場合、T2/FLAIRで高信号)に近い場所で可及的に近接する正常脳組織であり、かつ、
(b)安全性の高い場所(もし出血やアレルギー反応を起こしても障害が少ない場所:一般的にAVMでeloquent area*と呼ばれる部位以外)である
という条件を満たし、
(c)必要に応じて、T2/FLAIR画像の高信号部位も避けてその可及的近傍である部分
という条件を満たす部位を投与部位として選択するか、または
[2}該DTI画像においてTractographyが描出されない場合、
(aa)Tractographyを出すためのROIの設定(通常は中心前回・内包後脚・橋の3カ所を通過する神経線維選ぶことが多い)を中心前回、内包後脚、橋をそれぞれ単独において出てくるTractographyを参考にし、その中で、通常予想される人間における運動線維を選択するか、もしくは
(bb)(aa)でも出ない場合は対側のTractographyを参考に運動線維の走行を推定して、急性期のDWI画像において高信号と示される損傷部位、または慢性期にT2/FLAIR画像において低信号と示される損傷部位と、推定されるTractographyの通過点が重なる部位を運動線維が断裂している箇所と推定し、[1}を行う
ことを特徴とする、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目15)
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与するための投与針の通過領域を特定するための方法であって、該方法は
(A)画像化デバイスを用いて、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得するステップと、
(B)該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、被験体の脳の情報を入手するステップと、
(C)該取得した画像データおよび該被験体の脳の情報から、該コンピュータデバイスにより、血管を描写するステップと、
(D)該コンピュータデバイスにより、該血管を貫通しないような経路範囲を特定するステップと、
(E)該コンピュータデバイスにより、脳内に針を刺入した後脳溝に出ない脳溝非侵襲範囲を特定するステップと、
(F)該コンピュータデバイスにより、(D)と(E)で算出した経路範囲のうち重複する範囲の範囲内で経路を設定するステップと
(G)該設定された経路を、グラフィック表示として出力するステップと
を包含する方法。
(項目16)
前記血管は、脳の表面から上矢状静脈洞へ注ぐ太い静脈を含む、項目15に記載の方法。(項目17)
前記特定は、ガドリニウム増強T1画像における高信号部位を血管と判断する、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目18)
前記特定は、MRI画像に基づき該MRI画像について、DWI、T2、FLAIR(fluid-attenuated inversion-recovery)、およびDTIのうち少なくとも1つを測定することで達成される、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目19)
前記特定は、MRI画像に基づき該MRI画像について、(1)FLAIR画像、(3)T2画像、(3)ガドリニウム増強T1画像のシークエンスで決定される、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目20)
前記脳溝非侵襲経路の特定は、MRIにおけるT2強調画像およびFLAIR画像を確認することにより実現される、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目21)
(E)において、
1)信号強度をプロットしたFLAIR画像において、低信号の部位、および
2)信号強度をプロットしたT2強調画像において、高信号の部位
の両方を満たす部位を、脳溝と特定する、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目22)
被験体の脳における髄液漏れを防止する方法であって、
A)脳の表面に存在する硬膜を切開するステップと
B)穿刺開始予定部位の脳表のくも膜と軟膜を電気外科器具を用いて凝固接着させるステップであって、(a)該くも膜が白濁するまで、または(b)該くも膜の目視もしくは該くも膜を表示する画像において、該脳の表面に存在する微小血管が確認できなくなるまで、あるいは(c)出力パワーがくも膜が白濁することが確認されている出力パワーに設定される条件で、凝固させて該軟膜と接着させる、ステップと
を含む、方法。
(項目23)
前記脳における髄液漏れの防止は、前記被験体の中枢神経障害に対する細胞治療におけるものである、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目24)
さらに、C)該被験体に必要となる細胞を投与するステップを含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目25)
被験体の脳における髄液漏れを防止するためのシステムであって、
A)脳の表面に存在する硬膜を切開する切開具と、
B)穿刺開始予定部位の脳表のくも膜と軟膜を凝固接着させるように構成される電気外科器具であって、(a)該くも膜が白濁するまで、または(b)該くも膜の目視もしくは該くも膜を表示する画像において該脳の表面に存在する微小血管が確認できなくなるまで、あるいは(c)出力パワーがくも膜が白濁することが確認されている出力パワーに設定される条件で、凝固させて該軟膜と接着させるように操作される、電気外科器具と、
C)該くも膜の白濁を検出し得るセンサーと
を含むシステム。
(項目26)
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与する経路を特定するための方法であって、該方法は
i)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得するステップと、
ii)該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、被験体の脳の情報を入手するステップと、
iii)該細胞を投与する経路の候補を以下の手順で提供するステップであって、該ステップは:
aa)該コンピュータデバイスにより、該障害位置の付近の安全領域を投与部位として選択するステップと、
bb)該選択された投与部位への投与経路を特定するステップと、
cc)必要に応じて、該コンピュータデバイスにより、頭皮において細胞を投与する投与デバイスを通すための切除位置を選択することと
を含むステップと、
iv)該選択された投与部位を、グラフィック表示として出力するステップと
を包含する、方法。
(項目27)
前記aa)が、
C)該コンピュータデバイスにより、該取得した画像データおよび該被験体の脳に関するデータを用いて運動線維を描写するステップと、
D)該コンピュータデバイスにより、該運動線維が障害を受けている障害位置を特定するステップであって、該運動線維の走行データにおいて、運動繊維の量が他の部位より低い部分を特定し、該低い部分を障害を受けている運動線維と特定するステップと
E)該コンピュータデバイスにより、該障害位置の付近の安全領域を投与部位として選択するステップと
を包含する、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目28)
前記bb)が、
(C)該取得した画像データおよび該被験体の脳の情報から、該コンピュータデバイスにより、血管を描写するステップと、
(D)該コンピュータデバイスにより、該血管を貫通しないような経路範囲を特定するステップと、
(E)該コンピュータデバイスにより、脳内に針を刺入した後脳溝に出ない脳溝非侵襲範囲を特定するステップと、
(F)該コンピュータデバイスにより、(D)と(E)で算出した経路範囲のうち重複する範囲の範囲内で経路を設定するステップと
を包含する、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目29)
前記画像化デバイスはMRI、CT、超音波検査装置または血管造影検査装置を含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目30)
前記運動線維の走行データは、DTI画像中に表現される、先行する項目のいずれかのいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
前記走行データは、DTI画像におけるFA値(fractional anisotropy value)により表現される、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目32)
前記運動線維の走行データが他の部位より低い部位における走行データの低下は、少なくとも50%以上の低下である、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目33)
前記安全領域は、前記障害位置から半径約1.5cm以内に存在する位置を含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目34)
前記安全領域は、前記障害位置から半径約1.5cm以内に存在する位置で、かつ、神経機能に重要な働きをしていないと考えられる部位が選択される、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目35)
前記投与部位は、前記障害位置に対して脳の尾側に位置決めされる、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目36)
前記投与部位は、前記障害位置ごとに決定される、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目37)
前記投与部位は、前記障害位置に対して1または複数存在する、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目38)
該運動線維の走行データが得られない場合、対側の健常な運動線維を参考にして、障害を受けている部分を把握することを特徴とする、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目39)
前記選択は、
DWI画像とT2画像とを比較することにより、現在の脳梗塞で損傷を受けた領域を把握し、該領域は選択から外し、
DWI陰性であるが、T2画像およびFLAIR画像において浮腫が強く出ている部位もまた、選択から外し、
DTI領域で運動線維を描出し、該描出された運動線維の領域を選択から外す、
先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目40)
前記MRIにおけるT2強調画像およびFLAIR画像において、
a)信号強度をプロットしたFLAIR画像において、高信号の部位、および
b)信号強度をプロットしたT2強調画像において、高信号の部位
のうちの両方を満たす部位を、浮腫と特定する、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目41)
[1]前記DTI画像においてTractographyが描出される場合、
(a)該DTI画像においてTractographyが断裂しているか、または弱くなっている部分(脳梗塞急性期の場合通常はDWIで白い場所、脳梗塞慢性期の場合T2/FLAIRの高信号、外傷・脳出血の急性期の場合、CTで高信号、外傷・脳出血の慢性期の場合、T2/FLAIRで高信号)に近い場所で可及的に近接する正常脳組織であり、かつ、
(b)安全性の高い場所(もし出血やアレルギー反応を起こしても障害が少ない場所:一般的にAVMでeloquent area*と呼ばれる部位以外)である
という条件を満たし、
(c)必要に応じて、T2/FLAIR画像の高信号部位も避けてその可及的近傍である部分
という条件を満たす部位を投与部位として選択するか、または
[2]該DTI画像においてTractographyが描出されない場合、
(aa)Tractographyを出すためのROIの設定(通常は中心前回・内包後脚・橋の3カ所を通過する神経線維選ぶことが多い)を中心前回、内包後脚、橋をそれぞれ単独において出てくるTractographyを参考にし、その中で、通常予想される人間における運動線維を選択するか、もしくは
(bb)(aa)でも出ない場合は対側のTractographyを参考に運動線維の走行を推定して、急性期のDWI画像において高信号と示される損傷部位、または慢性期にT2/FLAIR画像において低信号と示される損傷部位と、推定されるTractographyの通過点が重なる部位を運動線維が断裂している箇所と推定し、[1]を行う
ことを特徴とする、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目42)
前記血管は、脳の表面から上矢状静脈洞へ注ぐ太い静脈を含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目43)
前記特定は、ガドリニウム増強T1画像における高信号部位を血管と判断する、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目44)
前記特定は、MRI画像に基づき該MRI画像について、DWI、T2、FLAIR(fluid-attenuated inversion-recovery)、およびDTIのうち少なくとも1つを測定することで達成される、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目45)
前記特定は、MRI画像に基づき該MRI画像について、(1)FLAIR画像、(3)T2画像、(3)ガドリニウム増強T1画像のシークエンスで決定される、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目46)
前記脳溝非侵襲経路の特定は、MRIにおけるT2強調画像およびFLAIR画像を確認することにより実現される、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目47)
(E)において、
1)信号強度をプロットしたFLAIR画像において、低信号の部位、および
2)信号強度をプロットしたT2強調画像において、高信号の部位
の両方を満たす部位を、脳溝と特定する、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目48)
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与する経路を特定するための方法であって、該方法は
i)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得するステップと、
ii)該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、被験体の脳の情報を入手するステップと、
iii)該細胞を投与する経路の候補を以下の手順で提供するステップであって、該ステップは:
a)必要に応じて、該コンピュータデバイスにより、頭皮において細胞を投与する投与デバイスを通すための切除位置を選択することと、
b)該コンピュータデバイスにより、細胞治療を投与するための頭蓋骨において該投与デバイスを通すための開口部を選択することと、
c)該コンピュータデバイスにより、該取得した画像データおよび該被験体の脳に関するデータを用いて運動線維、脳血管、脳溝、機能部位からなる群より選択される少なくとも一つの脳経路除外領域を特定することと、
d)該コンピュータデバイスにより、該障害位置の付近の安全領域を投与部位として選択するステップと、
e)該開口部と該投与部位との間に投与経路を描写することであって、該投与経路は該脳経路除外領域に関する情報を含んで描写される、こととを含み、必要に応じて、該脳経路除外領域に関する情報から該投与経路に関して適切性の情報を提供することと、
を含む、ステップと、
iv)該選択された投与部位を、グラフィック表示として出力するステップと
を包含する、方法。
(項目49)
前記画像化デバイスはMRI、CT、超音波検査装置または血管造影検査装置を含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目50)
前記d)が、
C)前記コンピュータデバイスにより、前記取得した画像データおよび前記被験体の脳に関するデータを用いて運動線維を描写するステップと、
D)該コンピュータデバイスにより、該運動線維が障害を受けている障害位置を特定するステップであって、該運動線維の走行データが他の部位より低い部分を特定し、該低い部分を障害を受けている運動線維と特定するステップと
E)該コンピュータデバイスにより、該障害位置の付近の安全領域を投与部位として選択するステップと、
を包含する、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目51)
前記c)において、ガドリニウム増強T1画像における高信号部位を前記脳血管と判定することを含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目52)
前記c)において、
1)信号強度をプロットしたFLAIR画像において、低信号の部位、および
2)信号強度をプロットしたT2強調画像において、高信号の部位
のう両方を満たす部位を、脳溝と特定する、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目53)
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療の悪影響の発生確率を予測する方法であって、
1)細胞の投与位置を示すデータ群と、該細胞の投与位置ごとの細胞治療の悪影響の発生のデータとを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させるステップと、
2)細胞の投与位置を示すデータ群を取得するステップと、
3)学習済みの該人工知能モデルに対して、2)で取得した該細胞の投与位置を示すデータ群を入力するステップと、
4)学習済みの該人工知能モデルに、細胞治療の悪影響の発生確率を算出させるステップと
を包含する方法。
(項目54)
前記細胞の投与位置を示すデータ群が、投与位置と脳表との距離、投与位置と障害位置との距離、投与位置と浮腫領域との距離、および投与位置が脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位以外であるかどうかの少なくとも1つのデータを含む、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記細胞の投与位置を示すデータ群が、投与位置と脳表との距離、投与位置と障害位置との距離、投与位置と浮腫領域との距離、および投与位置が脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位以外であるかどうかの組合せを含む、項目54または55に記載の方法。
(項目56)
前記細胞の投与位置が、項目1~14のうちの1つまたは複数の方法により特定されたものである、項目53~55のいずれか一項に記載の方法。
(項目57)
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療の悪影響の発生確率を予測する方法であって、
1)細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群と、該細胞を投与するための投与針の通過領域ごとの細胞治療の悪影響のデータとを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させるステップと、
2)細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を取得するステップと、
3)学習済みの該人工知能モデルに対して、2)で取得した該細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を入力するステップと、
4)学習済みの該人工知能モデルに、細胞治療の悪影響の発生確率を算出させるステップと
を包含する方法。
(項目58)
前記細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群が、投与針が通過する皮膚直下の脳表と頭蓋骨との距離、投与針の刺入点の直下がeloquent areaであるかどうか、投与針の刺入点の直下に太い静脈があるかどうか、投与針が人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物を通過するかどうか、脳溝と投与針との距離、および投与針と太い脳内の血管との距離の少なくとも1つを含む、項目57に記載の方法。
(項目59)
前記細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群が、投与針が通過する皮膚直下の脳表と頭蓋骨との距離、投与針の刺入点の直下がeloquent areaであるかどうか、投与針の刺入点の直下に太い静脈があるかどうか、投与針が人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物を通過するかどうか、脳溝と投与針との距離、および投与針と太い脳内の血管との距離の組合せを含む、項目57または58に記載の方法。
(項目60)
前記細胞の投与位置が、項目15~25のうちの1つまたは複数の方法により特定されたものである、項目57~59のいずれか一項に記載の方法。
(項目61)
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療の悪影響の発生確率を予測する方法であって、
1)細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群と、該細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に該細胞を投与するための投与針の通過領域ごとの細胞治療の悪影響のデータとを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させるステップと、
2)細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を取得するステップと、
3)学習済みの該人工知能モデルに対して、2)で取得した該細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を入力するステップと、
4)学習済みの該人工知能モデルに、細胞治療の悪影響の発生確率を算出させるステップと
を包含する方法。
(項目62)
前記細胞の投与位置を示すデータ群が、投与位置と脳表との距離、投与位置と障害位置との距離、投与位置と浮腫領域との距離、および投与位置が脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位以外であるかどうかの組合せを含む、項目61に記載の方法。
(項目63)
前記細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群が、投与針が通過する皮膚直下の脳表と頭蓋骨との距離、投与針の刺入点の直下がeloquent
areaであるかどうか、投与針の刺入点の直下に太い静脈があるかどうか、投与針が人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物を通過するかどうか、および脳溝と投与針との距離、投与針と太い脳内の血管との距離の組合せを含む、項目61または62のいずれか一項に記載の方法。
(項目64)
前記細胞の投与位置を示すデータ群が、投与位置と脳表との距離、投与位置と障害位置との距離、投与位置と浮腫領域との距離、および投与位置が脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位以外であるかどうかの少なくとも1つを含み、
該該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群が、投与針が通過する皮膚直下の脳表と頭蓋骨との距離、投与針の刺入点の直下がeloquent areaであるかどうか、投与針の刺入点の直下に太い静脈があるかどうか、投与針が人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物を通過するかどうか、脳溝と投与針との距離、および投与針と太い脳内の血管との距離の少なくとも1つを含む、項目61~63のいずれか一項に記載の方法。
(項目65)
前記細胞の投与位置と、該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域とが、項目26~52のうちの1つまたは複数の方法により特定されたものである、項目61~64のいずれか一項に記載の方法。
(項目66)
前記悪影響が、運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または失血である、項目53~65のいずれか一項に記載の方法。
(項目67)
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療の悪影響の発生確率を予測する方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、該方法は、
1)細胞の投与位置を示すデータ群と、該細胞の投与位置ごとの細胞治療の悪影響の発生のデータとを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させるステップと、
2)細胞の投与位置を示すデータ群を取得するステップと、
3)学習済みの該人工知能モデルに対して、2)で取得した該細胞の投与位置を示すデータ群を入力するステップと、
4)学習済みの該人工知能モデルに、細胞治療の悪影響の発生確率を算出させるステップと
を包含する、プログラム。
(項目68)
前記細胞の投与位置を示すデータ群が、投与位置と脳表との距離、投与位置と障害位置との距離、投与位置と浮腫領域との距離、および投与位置が脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位以外であるかどうかの少なくとも1つのデータを含む、項目67に記載のプログラム。
(項目69)
前記細胞の投与位置を示すデータ群が、投与位置と脳表との距離、投与位置と障害位置との距離、投与位置と浮腫領域との距離、および投与位置が脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位以外であるかどうかの組合せを含む、項目67または68に記載のプログラム。
(項目70)
前記細胞の投与位置が、項目1~14のうちの1つまたは複数の方法により特定されたものである、項目67~69のいずれか一項に記載のプログラム。
(項目71)
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療の悪影響の発生確率を予測する方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、該方法は、
1)細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群と、該細胞を投与するための投与針の通過領域ごとの細胞治療の悪影響のデータとを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させるステップと、
2)細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を取得するステップと、
3)学習済みの該人工知能モデルに対して、2)で取得した該細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を入力するステップと、
4)学習済みの該人工知能モデルに、細胞治療の悪影響の発生確率を算出させるステップと
を包含するプログラム。
(項目72)
前記細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群が、投与針が通過する皮膚直下の脳表と頭蓋骨との距離、投与針の刺入点の直下がeloquent areaであるかどうか、投与針の刺入点の直下に太い静脈があるかどうか、投与針が人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物を通過するかどうか、脳溝と投与針との距離、および投与針と太い脳内の血管との距離の少なくとも1つを含む、項目71に記載のプログラム。
(項目73)
前記細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群が、投与針が通過する皮膚直下の脳表と頭蓋骨との距離、投与針の刺入点の直下がeloquent areaであるかどうか、投与針の刺入点の直下に太い静脈があるかどうか、投与針が人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物を通過するかどうか、脳溝と投与針との距離、および投与針と太い脳内の血管との距離の組合せを含む、項目71または72に記載のプログラム。
(項目74)
前記細胞の投与位置が、項目15~25のうちの1つまたは複数の方法により特定されたものである、項目71~73のいずれか一項に記載のプログラム。
(項目75)
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療の悪影響の発生確率を予測する方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、該方法は、
1)細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群と、該細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に該細胞を投与するための投与針の通過領域ごとの細胞治療の悪影響のデータとを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させるステップと、
2)細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を取得するステップと、
3)学習済みの該人工知能モデルに対して、2)で取得した該細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を入力するステップと、
4)学習済みの該人工知能モデルに、細胞治療の悪影響の発生確率を算出させるステップと
を包含する、プログラム。
(項目76)
前記細胞の投与位置を示すデータ群が、投与位置と脳表との距離、投与位置と障害位置との距離、投与位置と浮腫領域との距離、および投与位置が脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位以外であるかどうかの組合せを含む、項目75に記載のプログラム。
(項目77)
前記細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群が、投与針が通過する皮膚直下の脳表と頭蓋骨との距離、投与針の刺入点の直下がeloquent
areaであるかどうか、投与針の刺入点の直下に太い静脈があるかどうか、投与針が人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物を通過するかどうか、および脳溝と投与針との距離、投与針と太い脳内の血管との距離の組合せを含む、項目75または76のいずれか一項に記載のプログラム。
(項目78)
前記細胞の投与位置を示すデータ群が、投与位置と脳表との距離、投与位置と障害位置との距離、投与位置と浮腫領域との距離、および投与位置が脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位以外であるかどうかの少なくとも1つを含み、
該該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群が、投与針が通過する皮膚直下の脳表と頭蓋骨との距離、投与針の刺入点の直下がeloquent areaであるかどうか、投与針の刺入点の直下に太い静脈があるかどうか、投与針が人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物を通過するかどうか、脳溝と投与針との距離、および投与針と太い脳内の血管との距離の少なくとも1つを含む、項目75~77のいずれか一項に記載のプログラム。
(項目79)
前記細胞の投与位置と、該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域とが、項目26~52のうちの1つまたは複数の方法により特定されたものである、項目75~78のいずれか一項に記載のプログラム。
(項目80)
前記悪影響が、運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または失血である、項目67~79のいずれか一項に記載のプログラム。
(項目81)
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療の悪影響の発生確率を予測する方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納した記録媒体であって、該方法は、
1)細胞の投与位置を示すデータ群と、該細胞の投与位置ごとの細胞治療の悪影響の発生のデータとを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させるステップと、
2)細胞の投与位置を示すデータ群を取得するステップと、
3)学習済みの該人工知能モデルに対して、2)で取得した該細胞の投与位置を示すデータ群を入力するステップと、
4)学習済みの該人工知能モデルに、細胞治療の悪影響の発生確率を算出させるステップと
を包含する、記録媒体。
(項目82)
前記細胞の投与位置を示すデータ群が、投与位置と脳表との距離、投与位置と障害位置との距離、投与位置と浮腫領域との距離、および投与位置が脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位以外であるかどうかの少なくとも1つのデータを含む、項目81に記載の記録媒体。
(項目83)
前記細胞の投与位置を示すデータ群が、投与位置と脳表との距離、投与位置と障害位置との距離、投与位置と浮腫領域との距離、および投与位置が脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位以外であるかどうかの組合せを含む、項目67または82に記載の記録媒体。
(項目84)
前記細胞の投与位置が、項目1~14のうちの1つまたは複数の方法により特定されたものである、項目81~83のいずれか一項に記載の記録媒体。
(項目85)
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療の悪影響の発生確率を予測する方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納した記録媒体であって、該方法は、
1)細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群と、該細胞を投与するための投与針の通過領域ごとの細胞治療の悪影響のデータとを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させるステップと、
2)細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を取得するステップと、
3)学習済みの該人工知能モデルに対して、2)で取得した該細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を入力するステップと、
4)学習済みの該人工知能モデルに、細胞治療の悪影響の発生確率を算出させるステップと
を包含する記録媒体。
(項目86)
前記細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群が、投与針が通過する皮膚直下の脳表と頭蓋骨との距離、投与針の刺入点の直下がeloquent areaであるかどうか、投与針の刺入点の直下に太い静脈があるかどうか、投与針が人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物を通過するかどうか、脳溝と投与針との距離、および投与針と太い脳内の血管との距離の少なくとも1つを含む、項目85に記載の記録媒体。
(項目87)
前記細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群が、投与針が通過する皮膚直下の脳表と頭蓋骨との距離、投与針の刺入点の直下がeloquent areaであるかどうか、投与針の刺入点の直下に太い静脈があるかどうか、投与針が人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物を通過するかどうか、脳溝と投与針との距離、および投与針と太い脳内の血管との距離の組合せを含む、項目85または86に記載の記録媒体。
(項目88)
前記細胞の投与位置が、項目15~25のうちの1つまたは複数の方法により特定されたものである、項目85~87のいずれか一項に記載の記録媒体。
(項目89)
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療の悪影響の発生確率を予測する方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納した記録媒体であって、該方法は、
1)細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群と、該細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に該細胞を投与するための投与針の通過領域ごとの細胞治療の悪影響のデータとを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させるステップと、
2)細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を取得するステップと、
3)学習済みの該人工知能モデルに対して、2)で取得した該細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を入力するステップと、
4)学習済みの該人工知能モデルに、細胞治療の悪影響の発生確率を算出させるステップと
を包含する、記録媒体。
(項目90)
前記細胞の投与位置を示すデータ群が、投与位置と脳表との距離、投与位置と障害位置との距離、投与位置と浮腫領域との距離、および投与位置が脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位以外であるかどうかの組合せを含む、項目89に記載の記録媒体。
(項目91)
前記細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群が、投与針が通過する皮膚直下の脳表と頭蓋骨との距離、投与針の刺入点の直下がeloquent
areaであるかどうか、投与針の刺入点の直下に太い静脈があるかどうか、投与針が人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物を通過するかどうか、および脳溝と投与針との距離、投与針と太い脳内の血管との距離の組合せを含む、項目89または90のいずれか一項に記載の記録媒体。
(項目92)
前記細胞の投与位置を示すデータ群が、投与位置と脳表との距離、投与位置と障害位置との距離、投与位置と浮腫領域との距離、および投与位置が脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位以外であるかどうかの少なくとも1つを含み、
該該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群が、投与針が通過する皮膚直下の脳表と頭蓋骨との距離、投与針の刺入点の直下がeloquent areaであるかどうか、投与針の刺入点の直下に太い静脈があるかどうか、投与針が人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物を通過するかどうか、脳溝と投与針との距離、および投与針と太い脳内の血管との距離の少なくとも1つを含む、項目89~91のいずれか一項に記載の記録媒体。
(項目93)
前記細胞の投与位置と、該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域とが、項目26~52のうちの1つまたは複数の方法により特定されたものである、項目89~92のいずれか一項に記載の記録媒体。
(項目94)
前記悪影響が、運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または失血である、項目81~93のいずれか一項に記載の記録媒体。
(項目95)
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療の悪影響の発生確率を予測するためのシステムであって、
1)細胞の投与位置を示すデータ群と、該細胞の投与位置ごとの細胞治療の悪影響の発生のデータとを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させる学習部と、
2)細胞の投与位置を示すデータ群を取得する取得部と、
3)学習済みの該人工知能モデルに対して、2)で取得した該細胞の投与位置を示すデータ群を入力する入力部と、
4)学習済みの該人工知能モデルに、細胞治療の悪影響の発生確率を算出させる算出部とを備える、システム。
(項目96)
前記細胞の投与位置を示すデータ群が、投与位置と脳表との距離、投与位置と障害位置との距離、投与位置と浮腫領域との距離、および投与位置が脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位以外であるかどうかの少なくとも1つのデータを含む、項目95に記載のシステム。
(項目97)
前記細胞の投与位置を示すデータ群が、投与位置と脳表との距離、投与位置と障害位置との距離、投与位置と浮腫領域との距離、および投与位置が脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位以外であるかどうかの組合せを含む、項目95または96に記載のシステム。
(項目98)
前記細胞の投与位置が、項目1~14のうちの1つまたは複数の方法により特定されたものである、項目95~97のいずれか一項に記載のシステム。
(項目99)
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療の悪影響の発生確率を予測するシステムであって、
1)細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群と、該細胞を投与するための投与針の通過領域ごとの細胞治療の悪影響のデータとを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させる学習部と、
2)細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を取得するステップと、
3)学習済みの該人工知能モデルに対して、2)で取得した該細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を入力する入力部と、
4)学習済みの該人工知能モデルに、細胞治療の悪影響の発生確率を算出させる算出部とを備える、システム。
(項目100)
前記細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群が、投与針が通過する皮膚直下の脳表と頭蓋骨との距離、投与針の刺入点の直下がeloquent areaであるかどうか、投与針の刺入点の直下に太い静脈があるかどうか、投与針が人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物を通過するかどうか、脳溝と投与針との距離、および投与針と太い脳内の血管との距離の少なくとも1つを含む、項目99に記載のシステム。
(項目101)
前記細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群が、投与針が通過する皮膚直下の脳表と頭蓋骨との距離、投与針の刺入点の直下がeloquent areaであるかどうか、投与針の刺入点の直下に太い静脈があるかどうか、投与針が人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物を通過するかどうか、脳溝と投与針との距離、および投与針と太い脳内の血管との距離の組合せを含む、項目99または100に記載のシステム。
(項目102)
前記細胞の投与位置が、項目15~25のうちの1つまたは複数の方法により特定されたものである、項目99~101のいずれか一項に記載のシステム。
(項目103)
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療の悪影響の発生確率を予測するシステムであって、
1)細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群と、該細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に該細胞を投与するための投与針の通過領域ごとの細胞治療の悪影響のデータとを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させる学習部と、
2)細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を取得する取得部と、
3)学習済みの該人工知能モデルに対して、2)で取得した該細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を入力する入力部と、
4)学習済みの該人工知能モデルに、細胞治療の悪影響の発生確率を算出させる算出部とを備える、システム。
(項目104)
前記細胞の投与位置を示すデータ群が、投与位置と脳表との距離、投与位置と障害位置との距離、投与位置と浮腫領域との距離、および投与位置が脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位以外であるかどうかの組合せを含む、項目103に記載のシステム。
(項目105)
前記細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群が、投与針が通過する皮膚直下の脳表と頭蓋骨との距離、投与針の刺入点の直下がeloquent
areaであるかどうか、投与針の刺入点の直下に太い静脈があるかどうか、投与針が人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物を通過するかどうか、および脳溝と投与針との距離、投与針と太い脳内の血管との距離の組合せを含む、項目103または104のいずれか一項に記載のシステム。
(項目106)
前記細胞の投与位置を示すデータ群が、投与位置と脳表との距離、投与位置と障害位置との距離、投与位置と浮腫領域との距離、および投与位置が脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位以外であるかどうかの少なくとも1つを含み、
該該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群が、投与針が通過する皮膚直下の脳表と頭蓋骨との距離、投与針の刺入点の直下がeloquent areaであるかどうか、投与針の刺入点の直下に太い静脈があるかどうか、投与針が人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物を通過するかどうか、脳溝と投与針との距離、および投与針と太い脳内の血管との距離の少なくとも1つを含む、項目93~105のいずれか一項に記載のシステム。
(項目107)
前記細胞の投与位置と、該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域とが、項目26~52のうちの1つまたは複数の方法により特定されたものである、項目93~106のいずれか一項に記載のシステム。
(項目108)
前記悪影響が、運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または失血である、項目95~107のいずれか一項に記載のシステム。
(項目A1)
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与する部位を特定するための方法であって、該方法は
X)該被験体の脳の少なくとも一部の画像データ群と、細胞を投与する部位のデータ群とを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させるステップと、
A)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得するステップと、
Y)学習済みの該人工知能モデルに対して、A)で取得した該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを入力するステップと、
Z)学習済みの該人工知能モデルに、細胞を投与する部位のデータを算出させるステップと
を包含する方法。
(項目A2)
B)前記画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、前記被験体の脳の情報を入手するステップと、
C)該コンピュータデバイスにより、前記取得した画像データおよび該被験体の脳に関するデータを用いて運動線維を描写するステップと、
D)該コンピュータデバイスにより、該運動線維が障害を受けている障害位置を特定するステップであって、該運動線維の走行データが他の部位より低い部分を特定し、該低い部分を障害を受けている運動線維と特定するステップと、
F)前記算出された投与部位を、グラフィック表示として出力するステップと
をさらに包含する、項目A1に記載の方法。
(項目A3)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該運動線維が障害を受けている障害位置データ、該被験体の脳表の位置データ、該被験体の浮腫領域データ、および該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータのうちの少なくとも1つを含む、項目A1またはA2に記載の方法。
(項目A4)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該運動線維が障害を受けている障害位置データ、該被験体の脳表の位置データ、該被験体の浮腫領域データ、および該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータの組み合わせを含む、項目A1~A3のいずれか一項に記載の方法。
(項目A5)
項目1~14のうちの1つまたは複数の特徴をさらに含む、項目A1~A4のいずれかに記載の方法。
(項目A6)
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与する部位を特定するための方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、該方法は
X)該被験体の脳の少なくとも一部の画像データ群と、細胞を投与する部位のデータ群とを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させるステップと、A)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得するステップと、
Y)学習済みの該人工知能モデルに対して、A)で取得した該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを入力するステップと、
Z)学習済みの該人工知能モデルに、細胞を投与する部位のデータを算出させるステップと
を包含する、プログラム。
(項目A7)
前記方法が、
B)前記画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、前記被験体の脳の情報を入手するステップと、
C)該コンピュータデバイスにより、前記取得した画像データおよび該被験体の脳に関するデータを用いて運動線維を描写するステップと、
D)該コンピュータデバイスにより、該運動線維が障害を受けている障害位置を特定するステップであって、該運動線維の走行データが他の部位より低い部分を特定し、該低い部分を障害を受けている運動線維と特定するステップと、
F)前記算出された投与部位を、グラフィック表示として出力するステップと
をさらに包含する、項目A6に記載のプログラム。
(項目A8)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該運動線維が障害を受けている障害位置データ、該被験体の脳表の位置データ、該被験体の浮腫領域データ、および該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータのうちの少なくとも1つを含む、項目A6またはA7に記載のプログラム。
(項目A9)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該運動線維が障害を受けている障害位置データ、該被験体の脳表の位置データ、該被験体の浮腫領域データ、および該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータの組み合わせを含む、項目A6~A8のいずれか一項に記載のプログラム。
(項目A10)
項目1~14のうちの1つまたは複数の特徴をさらに含む、項目A6~A9のいずれかに記載のプログラム。
(項目A11)
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与する部位を特定するための方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納した記録媒体であって、該方法は
X)該被験体の脳の少なくとも一部の画像データ群と、細胞を投与する部位のデータ群とを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させるステップと、A)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得するステップと、
Y)学習済みの該人工知能モデルに対して、A)で取得した該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを入力するステップと、
Z)学習済みの該人工知能モデルに、細胞を投与する部位のデータを算出させるステップと
を包含する、記録媒体。
(項目A12)
前記方法が、
B)前記画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、前記被験体の脳の情報を入手するステップと、
C)該コンピュータデバイスにより、前記取得した画像データおよび該被験体の脳に関するデータを用いて運動線維を描写するステップと、
D)該コンピュータデバイスにより、該運動線維が障害を受けている障害位置を特定するステップであって、該運動線維の走行データが他の部位より低い部分を特定し、該低い部分を障害を受けている運動線維と特定するステップと、
F)前記算出された投与部位を、グラフィック表示として出力するステップと
をさらに包含する、項目A11に記載の記録媒体。
(項目A13)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該運動線維が障害を受けている障害位置データ、該被験体の脳表の位置データ、該被験体の浮腫領域データ、および該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータのうちの少なくとも1つを含む、項目A11またはA12に記載の記録媒体。
(項目A14)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該運動線維が障害を受けている障害位置データ、該被験体の脳表の位置データ、該被験体の浮腫領域データ、および該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータの組み合わせを含む、項目A11~A13のいずれか一項に記載の記録媒体。
(項目A15)
項目1~14のうちの1つまたは複数の特徴をさらに含む、項目A11~A14のいずれかに記載の記録媒体。
(項目A16)
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与する部位を特定するためのシステムであって、該システムは
X)該被験体の脳の少なくとも一部の画像データ群と、細胞を投与する部位のデータ群とを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させる学習部と、
A)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得する取得部と、
Y)学習済みの該人工知能モデルに対して、A)で取得した該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを入力する入力部と、
Z)学習済みの該人工知能モデルに、細胞を投与する部位のデータを算出させる算出部とを備える、システム。
(項目A17)
B)前記画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、前記被験体の脳の情報を入手する入手部と、
C)該コンピュータデバイスにより、前記取得した画像データおよび該被験体の脳に関するデータを用いて運動線維を描写する描写部と、
D)該コンピュータデバイスにより、該運動線維が障害を受けている障害位置を特定する特定部であって、該運動線維の走行データが他の部位より低い部分を特定し、該低い部分を障害を受けている運動線維と特定する特定部と、
F)前記算出された投与部位を、グラフィック表示として出力する出力部と
をさらに備える、項目A16に記載のシステム。
(項目A18)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該運動線維が障害を受けている障害位置データ、該被験体の脳表の位置データ、該被験体の浮腫領域データ、および該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータのうちの少なくとも1つを含む、項目A16またはA17に記載のシステム。
(項目A19)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該運動線維が障害を受けている障害位置データ、該被験体の脳表の位置データ、該被験体の浮腫領域データ、および該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータの組み合わせを含む、項目A16~A18のいずれか一項に記載のシステム。
(項目A20)
項目1~14のうちの1つまたは複数の特徴をさらに含む、項目A16~A19のいずれかに記載のシステム。
(項目B1)
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与するための投与針の通過領域を特定するための方法であって、該方法は
(X)該被験体の脳の少なくとも一部の画像データ群と、細胞を投与するための投与針の通過領域のデータ群とを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させるステップと、
(A)画像化デバイスを用いて、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得するステップと、
(Y)学習済みの該人工知能モデルに対して、(A)で取得した該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを入力するステップと、
(Z)学習済みの該人工知能モデルに、細胞を投与するための投与針の通過領域のデータを算出させるステップと
を包含する方法。
(項目B2)
(B)前記画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、前記被験体の脳の情報を入手するステップと、
(C)前記取得した画像データおよび該被験体の脳の情報から、該コンピュータデバイスにより、血管を描写するステップと、
(D)該コンピュータデバイスにより、該血管を貫通しないような経路範囲を特定するステップと、
(E)該コンピュータデバイスにより、脳内に針を刺入した後脳溝に出ない脳溝非侵襲範囲を特定するステップと、
(G)前記算出された経路を、グラフィック表示として出力するステップと
をさらに包含する、項目B1に記載の方法。
(項目B3)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該被験体の脳溝の位置データ、該被験体の脳表と頭蓋骨との距離データ、該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータ、人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物の位置データ、皮膚直下の太い動脈の位置データおよび太い脳内の血管の位置データのうちの少なくとも1つを含む、項目B1またはB2に記載の方法。
(項目B4)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該被験体の脳溝の位置データ、該被験体の脳表と頭蓋骨との距離データ、該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータ、人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物の位置データ、皮膚直下の太い動脈の位置データおよび太い脳内の血管の位置データの組み合わせを含む、項目B1~B3のいずれか一項に記載の方法。
(項目B5)
項目15~25のうちの1つまたは複数の特徴をさらに含む、項目B1~4のいずれか一項に記載の方法。
(項目B6)
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与するための投与針の通過領域を特定するための方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、該方法は
(X)該被験体の脳の少なくとも一部の画像データ群と、細胞を投与するための投与針の通過領域のデータ群とを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させるステップと、
(A)画像化デバイスを用いて、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得するステップと、
(Y)学習済みの該人工知能モデルに対して、(A)で取得した該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを入力するステップと、
(Z)学習済みの該人工知能モデルに、細胞を投与するための投与針の通過領域のデータを算出させるステップと
を包含する、プログラム。
(項目B7)
前記方法が、
(B)前記画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、前記被験体の脳の情報を入手するステップと、
(C)前記取得した画像データおよび該被験体の脳の情報から、該コンピュータデバイスにより、血管を描写するステップと、
(D)該コンピュータデバイスにより、該血管を貫通しないような経路範囲を特定するステップと、
(E)該コンピュータデバイスにより、脳内に針を刺入した後脳溝に出ない脳溝非侵襲範囲を特定するステップと、
(G)前記算出された経路を、グラフィック表示として出力するステップと
をさらに包含する、項目B6に記載のプログラム。
(項目B8)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該被験体の脳溝の位置データ、該被験体の脳表と頭蓋骨との距離データ、該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータ、人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物の位置データ、皮膚直下の太い動脈の位置データおよび太い脳内の血管の位置データのうちの少なくとも1つを含む、項目B6またはB7に記載のプログラム。
(項目B9)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該被験体の脳溝の位置データ、該被験体の脳表と頭蓋骨との距離データ、該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータ、人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物の位置データ、皮膚直下の太い動脈の位置データおよび太い脳内の血管の位置データの組み合わせを含む、項目B6~B8のいずれか一項に記載のプログラム。
(項目B10)
項目15~25のうちの1つまたは複数の特徴をさらに含む、項目B6~9のいずれか一項に記載のプログラム。
(項目B11)
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与するための投与針の通過領域を特定するための方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納した記録媒体であって、該方法は
(X)該被験体の脳の少なくとも一部の画像データ群と、細胞を投与するための投与針の通過領域のデータ群とを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させるステップと、
(A)画像化デバイスを用いて、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得するステップと、
(Y)学習済みの該人工知能モデルに対して、(A)で取得した該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを入力するステップと、
(Z)学習済みの該人工知能モデルに、細胞を投与するための投与針の通過領域のデータを算出させるステップと
を包含する、記録媒体。
(項目B12)
前記方法が、
(B)前記画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、前記被験体の脳の情報を入手するステップと、
(C)前記取得した画像データおよび該被験体の脳の情報から、該コンピュータデバイスにより、血管を描写するステップと、
(D)該コンピュータデバイスにより、該血管を貫通しないような経路範囲を特定するステップと、
(E)該コンピュータデバイスにより、脳内に針を刺入した後脳溝に出ない脳溝非侵襲範囲を特定するステップと、
(G)前記算出された経路を、グラフィック表示として出力するステップと
をさらに包含する、項目B11に記載の記録媒体。
(項目B13)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該被験体の脳溝の位置データ、該被験体の脳表と頭蓋骨との距離データ、該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータ、人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物の位置データ、皮膚直下の太い動脈の位置データおよび太い脳内の血管の位置データのうちの少なくとも1つを含む、項目B11またはB12に記載の記録媒体。
(項目B14)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該被験体の脳溝の位置データ、該被験体の脳表と頭蓋骨との距離データ、該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータ、人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物の位置データ、皮膚直下の太い動脈の位置データおよび太い脳内の血管の位置データの組み合わせを含む、項目B11~B13のいずれか一項に記載の記録媒体。
(項目B15)
項目15~25のうちの1つまたは複数の特徴をさらに含む、項目B11~14のいずれか一項に記載の記録媒体。
(項目B16)
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与するための投与針の通過領域を特定するためのシステムであって、該システムは
(X)該被験体の脳の少なくとも一部の画像データ群と、細胞を投与するための投与針の通過領域のデータ群とを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させる学習部と、
(A)画像化デバイスを用いて、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得する取得部と、
(Y)学習済みの該人工知能モデルに対して、(A)で取得した該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを入力する入力部と、
(Z)学習済みの該人工知能モデルに、細胞を投与するための投与針の通過領域のデータを算出させる算出部と
を包含するシステム。
(項目B17)
(B)前記画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、前記被験体の脳の情報を入手する入手部と、
(C)前記取得した画像データおよび該被験体の脳の情報から、該コンピュータデバイスにより、血管を描写する描写部と、
(D)該コンピュータデバイスにより、該血管を貫通しないような経路範囲を特定する経路範囲特定部と、
(E)該コンピュータデバイスにより、脳内に針を刺入した後脳溝に出ない脳溝非侵襲範囲を特定する脳溝非侵襲範囲特定部と、
(G)前記算出された経路を、グラフィック表示として出力する出力部と
をさらに備える、項目B16に記載のシステム。
(項目B18)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該被験体の脳溝の位置データ、該被験体の脳表と頭蓋骨との距離データ、該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータ、人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物の位置データ、皮膚直下の太い動脈の位置データおよび太い脳内の血管の位置データのうちの少なくとも1つを含む、項目B16またはB17に記載のシステム。
(項目B19)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該被験体の脳溝の位置データ、該被験体の脳表と頭蓋骨との距離データ、該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータ、人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物の位置データ、皮膚直下の太い動脈の位置データおよび太い脳内の血管の位置データの組み合わせを含む、項目B16~18のいずれか一項に記載のシステム。
(項目B20)
項目15~25のうちの1つまたは複数の特徴をさらに含む、項目B16~19のいずれか一項に記載のシステム。
(項目C1)
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与する経路を特定するための方法であって、該方法は
x)該被験体の脳の少なくとも一部の画像データ群と、細胞を投与する経路のデータ群とを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させるステップと、i)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得するステップと、
y)学習済みの該人工知能モデルに対して、i)で取得した該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを入力するステップと、
z)学習済みの該人工知能モデルに、細胞を投与する経路のデータを算出させるステップと
を包含する方法。
(項目C2)
ii)前記画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、前記被験体の脳の情報を入手するステップと、
iii)前記細胞を投与する経路の候補を以下の手順で提供するステップであって、該ステップは:
aa)該コンピュータデバイスにより、該障害位置の付近の安全領域を投与部位として選択することと、
bb)該選択された投与部位への投与経路を特定することと、
cc)必要に応じて、該コンピュータデバイスにより、頭皮において細胞を投与する投与デバイスを通すための切除位置を選択することと
を含むステップと、
iv)前記算出された投与部位を、グラフィック表示として出力するステップと
をさらに包含する、項目C1に記載の方法。
(項目C3)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該運動線維が障害を受けている障害位置データ、該被験体の脳表の位置データ、該被験体の浮腫領域データ、および該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータのうちの少なくとも1つを含む、項目C1またはC2に記載の方法。
(項目C4)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該運動線維が障害を受けている障害位置データ、該被験体の脳表の位置データ、該被験体の浮腫領域データ、および該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータの組み合わせを含む、項目C1~C3のいずれか一項に記載の方法。
(項目C5)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該被験体の脳溝の位置データ、該被験体の脳表と頭蓋骨との距離データ、該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータ、人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物の位置データ、皮膚直下の太い動脈の位置データおよび太い脳内の血管の位置データのうちの少なくとも1つを含む、項目C1~4のいずれか一項に記載の方法。
(項目C6)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該被験体の脳溝の位置データ、該被験体の脳表と頭蓋骨との距離データ、該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータ、人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物の位置データ、皮膚直下の太い動脈の位置データおよび太い脳内の血管の位置データの組み合わせを含む、項目C1~5のいずれか一項に記載の方法。
(項目C7)
項目26~47のうちの1つまたは複数の特徴をさらに含む、項目C1~C6のいずれか一項に記載の方法。
(項目C8)
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与する経路を特定するための方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、該方法は
x)該被験体の脳の少なくとも一部の画像データ群と、細胞を投与する経路のデータ群とを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させるステップと、i)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得するステップと、
y)学習済みの該人工知能モデルに対して、i)で取得した該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを入力するステップと、
z)学習済みの該人工知能モデルに、細胞を投与する経路のデータを算出させるステップと
を包含する、プログラム。
(項目C9)
前記方法が、
ii)前記画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、前記被験体の脳の情報を入手するステップと、
iii)前記細胞を投与する経路の候補を以下の手順で提供するステップであって、該ステップは:
aa)該コンピュータデバイスにより、該障害位置の付近の安全領域を投与部位として選択することと、
bb)該選択された投与部位への投与経路を特定することと、
cc)必要に応じて、該コンピュータデバイスにより、頭皮において細胞を投与する投与デバイスを通すための切除位置を選択することと
を含むステップと、
iv)前記算出された投与部位を、グラフィック表示として出力するステップと
をさらに包含する、項目C8に記載のプログラム。
(項目C10)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該運動線維が障害を受けている障害位置データ、該被験体の脳表の位置データ、該被験体の浮腫領域データ、および該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータのうちの少なくとも1つを含む、項目C8またはC9に記載のプログラム。
(項目C11)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該運動線維が障害を受けている障害位置データ、該被験体の脳表の位置データ、該被験体の浮腫領域データ、および該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータの組み合わせを含む、項目C8~C10のいずれか一項に記載のプログラム。
(項目C12)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該被験体の脳溝の位置データ、該被験体の脳表と頭蓋骨との距離データ、該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータ、人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物の位置データ、皮膚直下の太い動脈の位置データおよび太い脳内の血管の位置データのうちの少なくとも1つを含む、項目C8~11のいずれか一項に記載のプログラム。
(項目C13)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該被験体の脳溝の位置データ、該被験体の脳表と頭蓋骨との距離データ、該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータ、人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物の位置データ、皮膚直下の太い動脈の位置データおよび太い脳内の血管の位置データの組み合わせを含む、項目C8~12のいずれか一項に記載のプログラム。
(項目C14)
項目26~47のうちの1つまたは複数の特徴をさらに含む、項目C8~C13のいずれか一項に記載のプログラム。
(項目C15)
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与する経路を特定するための方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納した記録媒体であって、該方法は
x)該被験体の脳の少なくとも一部の画像データ群と、細胞を投与する経路のデータ群とを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させるステップと、i)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得するステップと、
y)学習済みの該人工知能モデルに対して、i)で取得した該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを入力するステップと、
z)学習済みの該人工知能モデルに、細胞を投与する経路のデータを算出させるステップと
を包含する、記録媒体。
(項目C16)
前記方法が、
ii)前記画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、前記被験体の脳の情報を入手するステップと、
iii)前記細胞を投与する経路の候補を以下の手順で提供するステップであって、該ステップは:
aa)該コンピュータデバイスにより、該障害位置の付近の安全領域を投与部位として選択することと、
bb)該選択された投与部位への投与経路を特定することと、
cc)必要に応じて、該コンピュータデバイスにより、頭皮において細胞を投与する投与デバイスを通すための切除位置を選択することと
を含むことと、
iv)前記算出された投与部位を、グラフィック表示として出力するステップと
をさらに包含する、項目C15に記載の記録媒体。
(項目C17)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該運動線維が障害を受けている障害位置データ、該被験体の脳表の位置データ、該被験体の浮腫領域データ、および該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータのうちの少なくとも1つを含む、項目C15またはC16に記載の記録媒体。
(項目C18)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該運動線維が障害を受けている障害位置データ、該被験体の脳表の位置データ、該被験体の浮腫領域データ、および該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータの組み合わせを含む、項目C15~C17のいずれか一項に記載の記録媒体。
(項目C19)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該被験体の脳溝の位置データ、該被験体の脳表と頭蓋骨との距離データ、該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータ、人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物の位置データ、皮膚直下の太い動脈の位置データおよび太い脳内の血管の位置データのうちの少なくとも1つを含む、項目C15~18のいずれか一項に記載の記録媒体。
(項目C20)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該被験体の脳溝の位置データ、該被験体の脳表と頭蓋骨との距離データ、該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータ、人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物の位置データ、皮膚直下の太い動脈の位置データおよび太い脳内の血管の位置データの組み合わせを含む、項目C15~19のいずれか一項に記載の記録媒体。
(項目C21)
項目26~47のうちの1つまたは複数の特徴をさらに含む、項目C15~C20のいずれか一項に記載の記録媒体。
(項目C22)
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与する経路を特定するためのシステムであって、該システムは
x)該被験体の脳の少なくとも一部の画像データ群と、細胞を投与する経路のデータ群とを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させる学習部と、
i)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得する取得部と、
y)学習済みの該人工知能モデルに対して、i)で取得した該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを入力する入力部と、
z)学習済みの該人工知能モデルに、細胞を投与する経路のデータを算出させる算出部とを備える、システム。
(項目C23)
ii)前記画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、前記被験体の脳の情報を入手する入手部と、
iii)前記細胞を投与する経路の候補を以下の手順で提供する提供部であって、該提供部は:
aa)該コンピュータデバイスにより、該障害位置の付近の安全領域を投与部位として選択する選択部と、
bb)該選択された投与部位への投与経路を特定する特定部と、
cc)必要に応じて、該コンピュータデバイスにより、頭皮において細胞を投与する投与デバイスを通すための切除位置を選択する選択部と
を含む提供部と、
iv)前記算出された投与部位を、グラフィック表示として出力する出力部と
をさらに包含する、項目C22に記載のシステム。
(項目C24)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該運動線維が障害を受けている障害位置データ、該被験体の脳表の位置データ、該被験体の浮腫領域データ、および該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータのうちの少なくとも1つを含む、項目C22またはC23に記載のシステム。
(項目C25)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該運動線維が障害を受けている障害位置データ、該被験体の脳表の位置データ、該被験体の浮腫領域データ、および該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータの組み合わせを含む、項目C22~C24のいずれか一項に記載のシステム。
(項目C26)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該被験体の脳溝の位置データ、該被験体の脳表と頭蓋骨との距離データ、該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータ、人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物の位置データ、皮膚直下の太い動脈の位置データおよび太い脳内の血管の位置データのうちの少なくとも1つを含む、項目C22~25のいずれか一項に記載のシステム。
(項目C27)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該被験体の脳溝の位置データ、該被験体の脳表と頭蓋骨との距離データ、該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータ、人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物の位置データ、皮膚直下の太い動脈の位置データおよび太い脳内の血管の位置データの組み合わせを含む、項目C22~26のいずれか一項に記載のシステム。
(項目C28)
項目26~47のうちの1つまたは複数の特徴をさらに含む、項目C22~C27のいずれか一項に記載のシステム。
(項目D1)
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与する経路を特定するための方法であって、該方法は
x)該被験体の脳の少なくとも一部の画像データ群と、細胞を投与する経路のデータ群とを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させるステップと、i)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得するステップと、
y)学習済みの該人工知能モデルに対して、i)で取得した該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを入力するステップと、
z)学習済みの該人工知能モデルに、細胞を投与する経路のデータを算出させるステップと
を包含する方法。
(項目D2)
ii)該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、被験体の脳の情報を入手するステップと、
iii)該細胞を投与する経路の候補を以下の手順で提供するステップであって、該ステップは:
a)必要に応じて、該コンピュータデバイスにより、頭皮において細胞を投与する投与デバイスを通すための切除位置を選択することと、
b)該コンピュータデバイスにより、細胞治療を投与するための頭蓋骨において該投与デバイスを通すための開口部を選択することと、
c)該コンピュータデバイスにより、該取得した画像データおよび該被験体の脳に関するデータを用いて運動線維、脳血管、脳溝、機能部位からなる群より選択される少なくとも一つの脳経路除外領域を特定することと、
d)該コンピュータデバイスにより、該障害位置の付近の安全領域を投与部位として選択することと、
e)該開口部と該投与部位との間に投与経路を描写することであって、該投与経路は該脳経路除外領域に関する情報を含んで描写される、こととを含み、必要に応じて、該脳経路除外領域に関する情報から該投与経路に関して適切性の情報を提供することと、
を含む、ステップと、
iv)前記算出された投与部位を、グラフィック表示として出力するステップと
をさらに包含する、項目D1に記載の方法。
(項目D3)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該運動線維が障害を受けている障害位置データ、該被験体の脳表の位置データ、該被験体の浮腫領域データ、および該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータのうちの少なくとも1つを含む、項目D1またはD2に記載の方法。
(項目D4)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該運動線維が障害を受けている障害位置データ、該被験体の脳表の位置データ、該被験体の浮腫領域データ、および該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータの組み合わせを含む、項目D1~D3のいずれか一項に記載の方法。
(項目D5)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該被験体の脳溝の位置データ、該被験体の脳表と頭蓋骨との距離データ、該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータ、人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物の位置データ、皮膚直下の太い動脈の位置データおよび太い脳内の血管の位置データのうちの少なくとも1つを含む、項目D1~4のいずれか一項に記載の方法。
(項目D6)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該被験体の脳溝の位置データ、該被験体の脳表と頭蓋骨との距離データ、該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータ、人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物の位置データ、皮膚直下の太い動脈の位置データおよび太い脳内の血管の位置データの組み合わせを含む、項目D1~5のいずれか一項に記載の方法。
(項目D7)
項目49~52のうちの1つまたは複数の特徴をさらに含む、項目D1~D6のいずれか一項に記載の方法。
(項目D8)
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与する経路を特定するための方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、該方法は
x)該被験体の脳の少なくとも一部の画像データ群と、細胞を投与する経路のデータ群とを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させるステップと、i)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得するステップと、
y)学習済みの該人工知能モデルに対して、i)で取得した該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを入力するステップと、
z)学習済みの該人工知能モデルに、細胞を投与する経路のデータを算出させるステップとを包含する、プログラム。
(項目D9)
前記方法が、
ii)該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、被験体の脳の情報を入手するステップと、
iii)該細胞を投与する経路の候補を以下の手順で提供するステップであって、該ステップは:
a)必要に応じて、該コンピュータデバイスにより、頭皮において細胞を投与する投与デバイスを通すための切除位置を選択することと、
b)該コンピュータデバイスにより、細胞治療を投与するための頭蓋骨において該投与デバイスを通すための開口部を選択することと、
c)該コンピュータデバイスにより、該取得した画像データおよび該被験体の脳に関するデータを用いて運動線維、脳血管、脳溝、機能部位からなる群より選択される少なくとも一つの脳経路除外領域を特定することと、
d)該コンピュータデバイスにより、該障害位置の付近の安全領域を投与部位として選択することと、
e)該開口部と該投与部位との間に投与経路を描写することであって、該投与経路は該脳経路除外領域に関する情報を含んで描写される、こととを含み、必要に応じて、該脳経路除外領域に関する情報から該投与経路に関して適切性の情報を提供することと、
を含む、ステップと、
iv)前記算出された投与部位を、グラフィック表示として出力するステップと
をさらに包含する、項目D8に記載のプログラム。
(項目D10)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該運動線維が障害を受けている障害位置データ、該被験体の脳表の位置データ、該被験体の浮腫領域データ、および該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータのうちの少なくとも1つを含む、項目D8またはD9に記載のプログラム。
(項目D11)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該運動線維が障害を受けている障害位置データ、該被験体の脳表の位置データ、該被験体の浮腫領域データ、および該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータの組み合わせを含む、項目D8~10のいずれか一項に記載のプログラム。
(項目D12)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該被験体の脳溝の位置データ、該被験体の脳表と頭蓋骨との距離データ、該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータ、人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物の位置データ、皮膚直下の太い動脈の位置データおよび太い脳内の血管の位置データのうちの少なくとも1つを含む、項目D8~D11のいずれか一項に記載のプログラム。
(項目D13)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該被験体の脳溝の位置データ、該被験体の脳表と頭蓋骨との距離データ、該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータ、人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物の位置データ、皮膚直下の太い動脈の位置データおよび太い脳内の血管の位置データの組み合わせを含む、項目D8~D12のいずれか一項に記載のプログラム。
(項目D14)
項目49~52のうちの1つまたは複数の特徴をさらに含む、項目D8~D13のいずれか一項に記載のプログラム。
(項目D15)
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与する経路を特定するための方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納した記録媒体であって、該方法は
x)該被験体の脳の少なくとも一部の画像データ群と、細胞を投与する経路のデータ群とを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させるステップと、i)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得するステップと、
y)学習済みの該人工知能モデルに対して、i)で取得した該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを入力するステップと、
z)学習済みの該人工知能モデルに、細胞を投与する経路のデータを算出させるステップと
を包含する、記録媒体。
(項目D16)
前記方法が、
ii)該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、被験体の脳の情報を入手するステップと、
iii)該細胞を投与する経路の候補を以下の手順で提供するステップであって、該ステップは:
a)必要に応じて、該コンピュータデバイスにより、頭皮において細胞を投与する投与デバイスを通すための切除位置を選択することと、
b)該コンピュータデバイスにより、細胞治療を投与するための頭蓋骨において該投与デバイスを通すための開口部を選択することと、
c)該コンピュータデバイスにより、該取得した画像データおよび該被験体の脳に関するデータを用いて運動線維、脳血管、脳溝、機能部位からなる群より選択される少なくとも一つの脳経路除外領域を特定することと、
d)該コンピュータデバイスにより、該障害位置の付近の安全領域を投与部位として選択することと、
e)該開口部と該投与部位との間に投与経路を描写することであって、該投与経路は該脳経路除外領域に関する情報を含んで描写される、こととを含み、必要に応じて、該脳経路除外領域に関する情報から該投与経路に関して適切性の情報を提供することと、
を含む、ステップと、
iv)前記算出された投与部位を、グラフィック表示として出力するステップと
をさらに包含する、項目D15に記載の記録媒体。
(項目D17)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該運動線維が障害を受けている障害位置データ、該被験体の脳表の位置データ、該被験体の浮腫領域データ、および該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータのうちの少なくとも1つを含む、項目D15またはD16に記載の記録媒体。
(項目D18)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該運動線維が障害を受けている障害位置データ、該被験体の脳表の位置データ、該被験体の浮腫領域データ、および該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータの組み合わせを含む、項目D15~17のいずれか一項に記載の記録媒体。
(項目D19)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該被験体の脳溝の位置データ、該被験体の脳表と頭蓋骨との距離データ、該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータ、人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物の位置データ、皮膚直下の太い動脈の位置データおよび太い脳内の血管の位置データのうちの少なくとも1つを含む、項目D15~D18のいずれか一項に記載の記録媒体。
(項目D20)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該被験体の脳溝の位置データ、該被験体の脳表と頭蓋骨との距離データ、該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータ、人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物の位置データ、皮膚直下の太い動脈の位置データおよび太い脳内の血管の位置データの組み合わせを含む、項目D15~D19のいずれか一項に記載の記録媒体。
(項目D21)
項目49~52のうちの1つまたは複数の特徴をさらに含む、項目D15~D20のいずれか一項に記載の記録媒体。
(項目D22)
被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与する経路を特定するためのシステムであって、該システムは
x)該被験体の脳の少なくとも一部の画像データ群と、細胞を投与する経路のデータ群とを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させる学習部と、
i)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得する取得部と、
y)学習済みの該人工知能モデルに対して、i)で取得した該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを入力する入力部と、
z)学習済みの該人工知能モデルに、細胞を投与する経路のデータを算出させる算出部とを備える、システム。
(項目D23)
ii)該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、被験体の脳の情報を入手する入手部と、
iii)該細胞を投与する経路の候補を以下の手順で提供する提供部であって、該提供部は:
a)必要に応じて、該コンピュータデバイスにより、頭皮において細胞を投与する投与デバイスを通すための切除位置を選択する切除位置選択部と、
b)該コンピュータデバイスにより、細胞治療を投与するための頭蓋骨において該投与デバイスを通すための開口部を選択する開口部選択部と、
c)該コンピュータデバイスにより、該取得した画像データおよび該被験体の脳に関するデータを用いて運動線維、脳血管、脳溝、機能部位からなる群より選択される少なくとも一つの脳経路除外領域を特定する特定部と、
d)該コンピュータデバイスにより、該障害位置の付近の安全領域を投与部位として選択する選択部と、
e)該開口部と該投与部位との間に投与経路を描写することであって、該投与経路は該脳経路除外領域に関する情報を含んで描写される、こととを含み、必要に応じて、該脳経路除外領域に関する情報から該投与経路に関して適切性の情報を提供する情報提供部と、を含む、提供部と、
iv)前記算出された投与部位を、グラフィック表示として出力する出力部と
をさらに備える、項目D22に記載のシステム。
(項目D24)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該運動線維が障害を受けている障害位置データ、該被験体の脳表の位置データ、該被験体の浮腫領域データ、および該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータのうちの少なくとも1つを含む、項目D22またはD23に記載のシステム。
(項目D25)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該運動線維が障害を受けている障害位置データ、該被験体の脳表の位置データ、該被験体の浮腫領域データ、および該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータの組み合わせを含む、項目D22~D24のいずれか一項に記載のシステム。
(項目D26)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該被験体の脳溝の位置データ、該被験体の脳表と頭蓋骨との距離データ、該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータ、人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物の位置データ、皮膚直下の太い動脈の位置データおよび太い脳内の血管の位置データのうちの少なくとも1つを含む、項目D22~25のいずれか一項に記載のシステム。
(項目D27)
前記被験体の脳の少なくとも一部の画像データが、該被験体の運動線維の走行データ、該被験体の脳溝の位置データ、該被験体の脳表と頭蓋骨との距離データ、該被験体の脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位のデータ、人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物の位置データ、皮膚直下の太い動脈の位置データおよび太い脳内の血管の位置データの組み合わせを含む、項目D22~26のいずれか一項に記載のシステム。
(項目D28)
項目49~52のうちの1つまたは複数の特徴をさらに含む、項目D22~D27のいずれか一項に記載のシステム。
【0008】
本開示において、上記1または複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供されうることが意図される。本開示のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
【発明の効果】
【0009】
各々の発明が達成した効果の例を記載する。
(1)投与部位決定
本開示のように、客観的な方法を提供することで、正確な投与を行うことができ、脳に対する細胞療法の成功率を格段に上昇させることができる。また、コンピュータプログラム化することで、術者に対して成功し得る投与部位の選択肢を提供し、経験と勘に頼った手術ではなく、一定程度客観性を持った手術をすることができ、再現性や成功率の上昇に寄与することができる。
(2)投与針の通過経路決定
本開示のように、客観的な方法を提供することで、正確な投与を行うことができ、脳に対する細胞療法の成功率を格段に上昇させることができる。また、コンピュータプログラム化することで、術者に対して成功し得る投与経路の選択肢を提供し、経験と勘に頼った手術ではなく、一定程度客観性を持った手術をすることができ、再現性や成功率の上昇に寄与することができる。
(3)髄液漏れを防ぐ方法
本開示のように、髄液漏れの客観的な方法を提供することで、失敗確率を大幅に減らした細胞療法を行うことができ、脳に対する細胞療法の成功率を格段に上昇させることができる。また、コンピュータプログラム化することで、術者に対して成功し得る髄液漏れの手法の選択肢を提供し、経験と勘に頼った手術ではなく、一定程度客観性を持った手術をすることができ、再現性や成功率の上昇に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】
図1は、本開示にしたがって細胞の投与位置を決定した患者のMRI画像を示す。A:DWI画像。
【
図1B】
図1は、本開示にしたがって細胞の投与位置を決定した患者のMRI画像を示す。B:DTI画像。
【
図1C】
図1は、本開示にしたがって細胞の投与位置を決定した患者のMRI画像を示す。C:FLAIR画像。Cにおいて、細胞の投与位置をまるで囲った。
【
図2A】
図2は、本開示にしたがって細胞の投与位置を決定した患者のMRI画像を示す。A:DWI画像。
【
図2B】
図2は、本開示にしたがって細胞の投与位置を決定した患者のMRI画像を示す。B:DTI画像。
【
図2C】
図2は、本開示にしたがって細胞の投与位置を決定した患者のMRI画像を示す。C:FLAIR画像。Cにおいて、細胞の投与位置をまるで囲った。
【
図3A】
図3は、本開示にしたがって細胞の投与位置を決定した患者のMRI画像を示す。A:DWI画像。
【
図3B】
図3は、本開示にしたがって細胞の投与位置を決定した患者のMRI画像を示す。B:DTI画像。
【
図3C】
図3は、本開示にしたがって細胞の投与位置を決定した患者のMRI画像を示す。C:FLAIR画像。Cにおいて、細胞の投与位置をまるで囲った。
【
図4A】
図4は、本開示にしたがって細胞の投与位置を決定した患者のMRI画像を示す。A:DWI画像。
【
図4B】
図4は、本開示にしたがって細胞の投与位置を決定した患者のMRI画像を示す。B:DTI画像。
【
図4C】
図4は、本開示にしたがって細胞の投与位置を決定した患者のMRI画像を示す。C:FLAIR画像。Cにおいて、細胞の投与位置をまるで囲った。
【
図5A】
図5は、本開示にしたがって細胞の投与位置を決定した患者のMRI画像を示す。A:DWI画像。
【
図5B】
図5は、本開示にしたがって細胞の投与位置を決定した患者のMRI画像を示す。B:DTI画像。
【
図5C】
図5は、本開示にしたがって細胞の投与位置を決定した患者のMRI画像を示す。C:FLAIR画像。Cにおいて、細胞の投与位置をまるで囲った。
【
図6A】
図6は、本開示にしたがって細胞の投与位置を決定した患者のMRI画像を示す。A:DWI画像。
【
図6B】
図6は、本開示にしたがって細胞の投与位置を決定した患者のMRI画像を示す。B:DTI画像。
【
図6C】
図6は、本開示にしたがって細胞の投与位置を決定した患者のMRI画像を示す。C:FLAIR画像。Cにおいて、細胞の投与位置をまるで囲った。
【
図7A】
図7は、本開示にしたがって細胞の投与位置を決定した患者のMRI画像を示す。A:DWI画像。
【
図7B】
図7は、本開示にしたがって細胞の投与位置を決定した患者のMRI画像を示す。B:DTI画像。
【
図7C】
図7は、本開示にしたがって細胞の投与位置を決定した患者のMRI画像を示す。C:FLAIR画像。Cにおいて、細胞の投与位置をまるで囲った。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本開示は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
【0012】
本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本開示の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0013】
<定義>
本明細書において、「対象」または「被検体」もしくは「被験体」(英文ではsubject)とは、患者(patient)と同義に用いられ、細胞治療などの本開示の技術が対象とする任意の生体または動物をいい、時に目的物(object)と称されることがあるが、これらは同じ意味である。対象としては、好ましくは、ヒトであるがこれに限定されない。
【0014】
本明細書において「中枢神経障害」とは、中枢神経の任意の障害を言う。
【0015】
本明細書において、「細胞治療(cell therapy)」(英語では、「cellular therapy」または「cytotherapy」とも呼ばれる)は、損傷を受けた組織又は器官の置換又は修復、免疫反応の調節、及び炎症性症候及び癌の減少等を非限定的に含む疾患又は障害に関連付けられた1つ以上の症候を予防、処置、又は改善するための、ヒト又は動物の細胞の移植を意味する。
【0016】
本明細書において、「画像化デバイス」とは、体の断層画像を撮影するための任意のデバイスをいう。画像化デバイスとしては、核磁気共鳴画像法(MRI)デバイス、コンピュータ断層撮影(CT)デバイス、血管造影検査装置、超音波検査装置等を上げることができるが、MRI(デバイス)が好ましい。画像は、光イメージング技術によって提示又は表示することができ、これをグラフィック表示とも言い、被験者に見えるように、特に、コンピュータのモニター、プラズマスクリーン、LCDスクリーン、CRT、投射スクリーン、フォグスクリーン、ウォータースクリーン、VRゴーグル、画像表示スクリーンを有する頭部に装着されるヘルメット若しくは眼鏡、又は画像を表示することが可能な他の任意の構造に表示することができる。
【0017】
本明細書において、「運動線維」とは、被験体の体や内臓の筋肉の動きを指令するために信号を伝える神経繊維を指す。中心前回、内包後脚および橋の全てを通過する。「運動神経」と互換的に使用される。
【0018】
本明細書において、「運動線維の走行データ」とは、MRI画像などの画像化データから白質などの神経線維束の走行様式を推定する方法およびその方法により推定された神経繊維が走行するように描写されたデータを指す。本明細書では、トラクトグラフィー(Tractography)と互換的に使用されることがある。
【0019】
本明細書において、「電気外科機器」とは、適切な電気外科エネルギー源に取り付けられ、能動電極を有する、組織を焼灼し、凝固させ、そして/または切断することが可能な任意の機器を指す。能動電極は、任意の形態の導電性要素であり、細長く、そして尖っているかまたは丸みを帯びている遠位端を有する薄い平坦な刃の形態であってもよい。電気外科機器としては、くも膜および粘膜を凝固接着することができるものであれば、どのようなものを利用してもよく、例えば、バイポーラー凝固鑷子などの電気外科器具等を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0020】
本明細書において、「脳移動(brain shift)」とは、穿頭時の髄液漏れ、空気の侵入に起因して起こる脳の移動を指す。定位脳手術における、標的位置の同定の妨げとなる。
【0021】
本明細書において、「機能領域(eloquent area)」とは、運動機能、感覚機能、言語機能、視覚等の重要な脳機能を担う領域を指す。
【0022】
本明細書において、「脳表」とは、大脳の表面を指す。例えば、特定部位の脳表のくも膜、脳表の軟膜という場合、特定部位の脳表を覆う、くも膜または軟膜を指す。
【0023】
本明細書において、「髄液」とは、脳室系とクモ膜下腔を満たす、無色透明な液体を指す。くも膜と軟膜との間の領域に存在する。脳室系の脈絡叢から産生される廃液であり、脳の水分含有量の緩衝や、脳の形・位置を保つ役割を担う。「脳脊髄液」と互換的に使用される。
【0024】
本明細書において、「脳溝」とは、脳の表面にある溝を指し、髄液に満たされた領域である。
【0025】
本明細書において、「脳回」とは、大脳皮質に存在する、隆起部分であり、脳溝に囲まれた領域を指す。
【0026】
本明細書において、「脳回の頂点」とは、脳回の中で最も頭蓋骨と近い部位およびその周辺領域を指し、脳溝の周囲の領域は含まれない。
【0027】
本明細書において、「National Institute of Health Stroke Scale(NIHSS)」とは、脳卒中重症度評価スケールを示す。意識の評価、注視の評価、視野の評価、顔面麻痺の評価、四肢麻痺の評価、運動失調の評価、感覚障害の評価、失語、構音障害、消去減少と無視の項目があり、各項目ともに点数が高いほど重症度も高くなり、最大で42点となるように設定されている。
【0028】
本明細書において、「modified Rankin Scale(mRS)」とは、脳卒中の概括予後評価尺度として頻用される評価基準である。0~6の7段階で評価を行うことが可能である。点数が高いほど重症度が高くなる。
【0029】
本明細書において、「Functional Independence Measure(FIM)」とは、日常生活動作の自立度を数値化して評価する指標である。機能的自立度評価法ともいう。運動項目に加えてコミュニケーションや社会的認知などの認知項目があるため、実際の日常生活動作を評価することが可能である。運動項目として13項目があり、認知項目として5項目ある。各項目を7段階で評価し、点数が高いほど、自立していることを示す。
【0030】
本明細書において、「Barthel Index(BI)」とは、脳血管障害のリハビリテーションにおける評価尺度の1つである。食事、移乗、整容、トイレ、入浴、歩行(車いす)、階段昇降、着替え、排便、排尿の10個の評価項目があり、点数が高いほど自立していることを示す。
【0031】
本明細書において、「Fugl-Meyer Assessment(FMA)」とは、上肢運動機能、下肢運動機能、バランス、感覚、関節可動域・疼痛の項目を評価する、脳卒中の総合的身体機能評価方法を指す。点数が高いほど、身体機能が高いことを示す。(MRI画像)
本明細書において、MRI(magnetic resonance imaging)は、核磁気共鳴画像(NMRI:nuclear magnetic resonance imaging)とも呼ばれている。人の身体の2/3は水で構成されており、更には、各種脂肪酸やアミノ酸などの構造式にも水素(H)が含まれているために、医療用MRIでは、この水素原子(1H)の信号で画像が描出されている。水素は、1個の陽子(プロトン)と1個の電子で構成されており、陽子の周りを電子が回転(スピン)している。このスピンにより、個々の水素原子は、微少な磁化をおびている。通常は、このスピンの方向がバラバラであるために全体としては、磁化がみられない。ここに、外部から強力な磁場がかかると、個々の水素原子のスピンの向きが強制的に同一方向に修正される。この状態に特定の周波数(例:42.58MHz)の電波をあてると、水素原子核はその電波に共鳴して自ら電波を発信する。この現象が核磁気共鳴と呼ばれ、この現象に位置情報を加えて、信号の強度分布を示した地図が、核磁気共鳴画像すなわちMRIとなる。この特定の周波数の電波をパルス状に与え、その条件を変化させることにより、異なるタイプの画像が描出される(T1強調画像、T2強調画像など)。
【0032】
本明細書において、T1WIとは、T1強調画像:T1 weighted Image(T1WI)の略称として使用される。T1WIでは水は黒く低信号で描出され(脳室は黒色)、CTとよく似た画像を呈し、大脳皮質と白質などの解剖学的な構造が捉えやすいという特徴がある。
【0033】
T1強調画像で高信号を呈するものとしては、脂肪、亜急性期血腫(メトヘモグロビン)、脳白質(灰白質と比較して)(乳児では髄鞘化が進んでいないので、白質・灰白質のコントラストは逆)、蛋白が多く溶けた水、皮質壊死領域が高信号を呈することがある、著明な石灰化巣が高信号を呈することがある、正常下垂体後葉、新生児・妊婦(妊娠後期)の下垂体前葉、マンガンの沈着部位(特に肝機能障害に伴って、淡蒼球が高信号を呈することがある)、Gd(ガドリニウム)による造影領域(中枢神経においては血液脳関門の破綻・欠損部、位が造影されるのであって、造影効果は必ずしもvascularity を反映するのではない)、常磁性体:上述のメトヘモグロビン・マンガン・ガドリニウムも常磁性体である。常、磁性体には、他にメラニンなどがある(メラノーマは出血を伴わなくてもT1強調像にて高信号を呈しうる)等を上げることができる。T1強調画像で低信号を呈するものとしては、水(脳脊髄液)、脳灰白質(白質と比較して)、多くの病変(梗塞・腫瘍など水分含有量の増加を反映)、超急性期・急性期血腫(メトヘモグロビン生成前)、骨皮質・石灰化・空気など、信号を発生するものを含まないものを挙げることができる。
【0034】
本明細書においてT2WIとは、T2強調画像:T2 weighted image(T2WI)の略称である。T2WIでは水は白く高信号で描出され(脳室は白色)、多くの病巣が高信号で描出されるため、病変の抽出に有用とされている。
【0035】
T2強調画像で高信号を呈するものとしては、水(脳脊髄液)、多くの病変(腫瘍・梗塞・浮腫・脱髄など水分含有量の増加を反映)、脳灰白質(白質と比較して)(乳児では白質・灰白質のコントラストは逆)、亜急性期血腫(赤血球が壊れた後)、超急性期血腫(オキシヘモグロビンがデオキシヘモグロビンに変わる前)を挙げることができ、T2強調画像で低信号を呈するものとしては、急性期血腫(赤血球が壊れる前で、内部にデオキシヘモグロビンかメトヘモグロビンを含む状態)、陳旧性出血巣(ヘモジデリン)、鉄(フェリチン)の多い部位(特に淡蒼球・中脳赤核・黒質、小脳歯状核)、脳白質(灰白質と比較して)、骨皮質・密な石灰化・空気など信号を発生するものを含まないもの、蛋白が非常に多く溶けた水、線維化、密な組織など水の少ない組織、不均一な分布を呈する常磁性体(上記急性期血腫・陳旧性出血・鉄の沈着部位・メラニンなど)を挙げることができる。
【0036】
本明細書において、FLAIRとは、「FLAIR画像:Fluid Attenuated Inversion Recovery(水抑制画像)」の略称である。FLAIR画像は、基本的には水の信号を抑制したT2強調画像(脳室が黒く見えるT2WI風の画像)であり、脳室と隣接した病巣が明瞭に描出される。ラクナ梗塞に代表されるかくれ脳梗塞や血管性認知症にみられるビンスワンガー型白質脳症などの慢性期の脳梗塞部位(白色に描出される)確認に有用である。簡単に言うと、脳脊髄液が黒くなるように条件を工夫して撮ったT2 強調画像(T1 強調の要素もある)。脳室周囲や皮質近傍といった、脳脊髄液に近い病変の見落としを減らすために撮像することが多い。CTで検出できない様な少量の亜急性期クモ膜下出血を描出できることがある。急性期脳梗塞において、閉塞血管が高信号として捉えられることがある。脳脊髄液の拍動や磁性体によるアーチファクトが強く、後頭蓋窩病変の検出率がやや劣るとされるが、実用上は問題がない。
【0037】
本明細書において、T2*WIとは、T2*強調画像(T2 star 強調画像)またはT2star weighted image(T2*WI)であり、T2*強調画像は出血性病変の検出力が極めて高く(黒色に描出される)、過去に発症した出血巣の確認や無症候性微小出血の検出に優れている。
【0038】
本明細書において、DWIとは、拡散強調画像:Diffusion weighted imageの略称であり、水分子の拡散運動(自由運動度)を画像化したものである。拡散が低下した領域が高信号として描出される。急性期の脳梗塞では、拡散が低下してくるため、超急性期の脳梗塞の部位判定(白色に描出される)に有用である。
【0039】
本明細書において「予後」という用語は、がん等の疾患または障害などに起因する死亡または進行が起こる可能性を予測することを意味する。予後因子とは疾患または障害の自然経過に関する変数のことであり、これらは、いったん疾患または障害を発症した患者の再発率等に影響を及ぼす。予後の悪化に関連した臨床的指標には、例えば、本開示で使用される任意の細胞指標が含まれる。予後因子は、しばしば、患者を異なった病態をもつサブグループに分類するために用いられる。本開示の技術を用いて遺伝情報を、診断上有用な形質情報と関連付けることによって、対照の遺伝情報に基づいて予後因子を提供することを可能とし得る。
【0040】
本明細書において「プログラム」は、当該分野で使用される通常の意味で用いられ、コンピュータが行うべき処理を順序立てて記述したものであり、日本国では特許法上「物」として扱われるものである。すべてのコンピュータはプログラムに従って動作している。現代のコンピュータではプログラムは広義のデータとして表現され、記録媒体または記憶装置に格納される。
【0041】
本明細書において「記録媒体」は、本開示の方法を実行させるプログラムを格納した記録媒体であり、記録媒体は、プログラムを記録できる限り、どのようなものであってもよい。例えば、内部に格納され得るROMやHDD、磁気ディスク、USBメモリ等のフラッシュメモリなどの外部記憶装置でありうるがこれらに限定されない。
【0042】
本明細書において「システム」とは、本開示の方法またはプログラムを実行する構成をいい、本来的には、目的を遂行するための体系や組織を意味し、複数の要素が体系的に構成され、相互に影響するものであり、コンピュータの分野では、ハードウェア、ソフトウェア、OS、ネットワークなどの、全体の構成をいう。
【0043】
本明細書において「機械学習」とは、明示的にプログラミングすることなく、コンピュータに学ぶ能力を与える技術をいう。機能単位が新しい知識・技能を獲得すること、又は既存の知識・技能を再構成することによって、自身の性能を向上させる過程である。経験から学ぶように計算機をプログラミングすることで、細部をプログラミングするのに必要になる手間の多くは減らせ、機械学習分野では、経験から自動的に改善を図れるようなコンピュータプログラムを構築する方法について議論している。データ分析・機械学習の役割としては、アルゴリズム分野と並んで知的処理の基盤になる要素技術であり、通常他の技術と連携して利用され、連携する分野の知識(ドメインスペシフィック(領域特有)知識;例えば、医学分野)が必要である。その応用範囲としては、予測(データを集め、これから起こることを予測する)、探索(集めたデータの中から、何か目立つ特徴を見つける)、検定・記述(データの中のいろいろな要素の関係を調べる)などの役割がある。機械学習は、実世界の目標の達成度を示す指標に基づくものであり、機械学習の利用者が、実世界での目標を把握していなければならない。そして、目的が達成されたときに、良くなるような指標を定式化する必要がある。機械学習は逆問題で、解が解けたかどうかが不明確な不良設定問題である。学習したルールの挙動は確定的ではなく確率(蓋然)的である。何らかの制御できない部分が残ることを前提とした運用上の工夫が必要であり、本発明のテイラーメイド法はこの解決手段ともいいうるものである。訓練時と運用時の性能指標をみながら、機械学習の利用者が、データや情報を実世界の目標に合わせて逐次的に取捨選択することも有用である。
【0044】
機械学習としては、線形回帰、ロジスティック回帰、サポートベクターマシンなどが用いられ得、および交差検証(交差検定、交差確認ともいう。Cross Validation;CV)を行うことで、各モデルの判別精度を算出することができる。ランキングした後、1つずつ特徴量を増やして機械学習(線形回帰、ロジスティック回帰、サポートベクターマシンなど)と交差検証を行い、各モデルの判別精度を算出することができる。それにより、最も高い精度のモデルを選択することができる。本発明において、機械学習は、任意のものを使用することができ、教師付き機械学習として、線形、ロジスティック、サポートベクターマシン(SVM)などを利用することができる。
【0045】
機械学習では論理的推論を行う。論理的推論にはおおまかに3種類あり、演繹(deduction)、帰納(induction)、アブダクション(abduction)、類推(アナロジー)がある。演繹は、ソクラテスは人間、すべての人間は死ぬとの仮説があったときにソクラテスは死ぬとの結論を導き出すもので特殊な結論といえる。帰納は、ソクラテスは死ぬ、ソクラテスは人間との仮説があったときにすべての人間は死ぬとの結論を導き出すもので一般的な規則を導くものである。アブダクションは、ソクラテスは死ぬ、すべての人間は死ぬとの仮定があった時にソクラテスは人間であると導き出すものであり、仮説・説明にあたる。とはいえ、帰納にしてもどう一般化するかは前提によるため、客観的であるとは言えない可能性があることに留意する。類推は、対象Aと対象Bがあり、対象Aが4つの特徴を持ち、かつ対象Bがその特徴のうち共通して3つ持つ場合、対象Bは、残り一つの特徴を同様にもち、対象Aと対象Bは同種か類似した近親性を持つと推論するような蓋然的な論理的思考法である。
【0046】
不可能性には、不可能、非常に困難、未解決の3種類の基本原理がある。また、不可能性には、汎化誤差、ノ―フリーランチ定理、醜いアヒルの子定理があり、真のモデルの観測は不可能なので検証できないという不良設定問題に留意する必要がある。
【0047】
機械学習において、特徴(feature)・属性(attribute)とは、予測対象をある側面で見たときに、どのような状態にあるのかを表すものである。特徴ベクトル・属性ベクトルとは、予測対象を記述する特徴(属性)をベクトルの形式にまとめたものである。
【0048】
本明細書において、「モデル(model)」または「仮説(hypothesis)」とは、同義に用いられ、入力される予測対象から、予測結果への対象対応を記述する写像、もしくはそれらの候補集合で、数学的な関数か論理式を用いて表現する。機械学習での学習では、訓練データを参照して、モデル集合から真のモデルを最もよく近似すると思われるモデルが選択される。
【0049】
モデルとしては、生成モデル、識別モデル、関数モデルなどが挙げられる。入力(予測対象)xと出力(予測結果)yとの写像関係の分類モデルを表現する方針の違いを示すものである。生成モデルは、入力xが与えられたときの出力yの条件付分布を表現する。識別モデルは、入力xと出力yの同時分布を表現する。識別モデルと生成モデルは写像関係が確率的である。関数モデルは、写像関係が確定的なもので、入力xと出力yの確定的な関数関係を表現する。識別モデルと生成モデルでは識別の方がやや高精度といわれることもあるが、ノーフリーランチ定理により基本的には優劣はない。
【0050】
モデルの複雑さ:予測対象と予測結果の写像関係をより詳細で複雑に記述できるかどうかの度合い。モデル集合が複雑であるほど、一般により多くの訓練データが必要とされる。
【0051】
写像関係を多項式で表した場合は、高次の多項式の方がより複雑な写像関係を表現できる。高次の多項式の方が、1次式より複雑なモデルといえる。
【0052】
写像関係を決定木で表した場合、段数の大きな深い決定木の方がより複雑な写像関係を表現できる。したがって、段数の多い定木の方が、少ない決定木より複雑なモデルといえる。
【0053】
入力と出力の対応関係を表現する方針による分類も可能であり、パラメトリックモデルでは、パラメータによって完全に分布や関数の形状が決定される、ノンパラメトリックモデルでは基本的にデータからその形状が決まり、パラメータが決めるのは滑らかさに限定される。
【0054】
パラメータ:モデルの分布や関数の集合のうちの一つを指定するための入力で、他の入力と区別してPr[y|x;θ]やy=f(x;θ)などとも表記される。
【0055】
パラメトリックでは、訓練データ数と無関係に、ガウス分布の形状は平均・分散パラメータで決定され、ノンパラメトリックでは、ヒストグラムではビン数パラメータで滑らかさのみが決まり、パラメトリックより複雑であるとされる。
【0056】
機械学習での学習では、訓練データを参照して、モデル集合から真のモデルを最もよく近似すると思われるモデルを選択する。どのような「近似」をするかで、いろいろな学習方法がある。代表的には、最尤推定があり、確率的なモデル集合の中から、訓練データが発生する確率が最も高いモデルを選択する学習の基準である。最尤推定で、真のモデルを最も近似するモデルが選択できる。KLダイバージェンスは、尤度が大きくなると真の分布へのKLダイバージェンスは小さくなる。推定の種類は種々あり、推定した予測値やパラメータを求める形式の種類によって異なる。点推定は、最も確実性の高い値を一つだけ求めるもので、最尤推定やMAP推定など、分布や関数の最頻値を使うもので、最もよく利用される。他方、区間推定では、推定値が存在する範囲を求めるこの範囲に推定値が存在する確率が95%といった形で統計分野でよく利用される。分布推定では、推定値が存在する分布を求める事前分布を導入した生成モデルと組み合わせてベイズ推定などで利用される。
【0057】
(好ましい実施形態)
以下に本開示の好ましい実施形態を説明する。以下を含め本明細書において提供される実施形態は、本開示のよりよい理解のために提供されるものであり、本開示の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本開示の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。また、本開示の以下の実施形態は単独でも使用されあるいはそれらを組み合わせて使用することができることが理解される。
【0058】
(脳の細胞治療のための細胞投与方法)
本開示は、1つの局面において、被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与する経路を特定するための方法を提供する。
【0059】
この方法は、少なくとも以下のステップまたは手順のうちの一つを含む:
i)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得するステップと、
ii)該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、被験体の脳の情報を入手するステップと、
iii)該細胞を投与する経路の候補を以下の手順で提供するステップであって、該ステップは:
a)該コンピュータデバイスにより、頭皮において細胞を投与する投与デバイスを通すための切除位置を特定することと、
b)該コンピュータデバイスにより、細胞治療を投与するための頭蓋骨において該投与デバイスを通すための開口部を特定することと、
c)該コンピュータデバイスにより、該取得した画像データおよび該被験体の脳に関するデータを用いて運動線維、脳血管、脳溝、機能部位からなる群より選択される少なくとも一つの脳経路除外領域を特定することと、
d)該コンピュータデバイスにより、該障害位置の付近の安全領域を投与部位として選択するステップと、
e)該開口部と該投与部位との間に投与経路を描写することであって、該投与経路は該脳経路除外領域に関する情報を含んで描写される、こととを含み、必要に応じて、該脳経路除外領域に関する情報から該投与経路に関して適切性の情報を提供することと、
iv)該選択された投与部位を、グラフィック表示として出力するステップと
を包含する。
【0060】
別の局面では、本開示は、被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与する経路を特定するための方法であって、該方法は
i)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得するステップと、
ii)該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、被験体の脳の情報を入手するステップと、
iii)該細胞を投与する経路の候補を以下の手順で提供するステップであって、該ステップは:
aa)該コンピュータデバイスにより、該障害位置の付近の安全領域を投与部位として選択するステップと、
bb)該選択された投与部位への投与経路を特定するステップと、
cc)必要に応じて、該コンピュータデバイスにより、頭皮において細胞を投与する投与デバイスを通すための切除位置を選択することと
を含むステップと、
iv)該選択された投与部位を、グラフィック表示として出力するステップと
を包含する、方法を提供する。
【0061】
1つの実施形態において、i)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得することは、MRI、CT等の通常の造影手順を用いることにより、被験体の脳の画像データを少なくとも1部を入手し得る。取得すべき脳の画像データは、細胞治療を目指す領域が実質的にカバーされていることが好ましく、より好ましくは脳全体の画像が得られていることが有利である。
【0062】
画像データはDICOM、JPEGおよびTIFFなどが挙げられるが、DICOMが好ましい。
【0063】
1つの実施形態において、ii)該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、被験体の脳の情報を入手することは、当該分野で行われる任意の脳情報入手経路を用いて実現することができる。脳の情報として有用なものとしては、例えば、脳の過去の病歴、損傷に関する情報、運動繊維などの情報、機能的な情報(言語野・高次脳機能領域)等を挙げることができる。
【0064】
1つの実施形態において、iii)該細胞を投与する経路の候補を以下の手順で提供することは、例えば、a)該コンピュータデバイスにより、頭皮において細胞を投与する投与デバイスを通すための切除位置を特定することと、b)該コンピュータデバイスにより、細胞治療を投与するための頭蓋骨において該投与デバイスを通すための開口部を特定することと、c)該コンピュータデバイスにより、該取得した画像データおよび該被験体の脳に関するデータを用いて運動線維、脳血管、脳溝、機能部位からなる群より選択される少なくとも一つの脳経路除外領域を特定することと、d)該コンピュータデバイスにより、該障害位置の付近の安全領域を投与部位として選択するステップと、e)該開口部と該投与部位との間に投与経路を描写することであって、該投与経路は該脳経路除外領域に関する情報を含んで描写される、こととを含み、必要に応じて、該脳経路除外領域に関する情報から該投与経路に関して適切性の情報を提供することを含む。安全領域については、神経機能に重要な働きをしている部分は人間では既にほとんど個人差無く場所が同定されていることから、その部分は事前にコンピュータ内に取り込ませておくことが可能であり、左利きも概ね右利きと同じだが、ごく希に左利きで正反対に機能がある人(主に言語の領域で、通常は右利きも左利きも左半球に言語野があるため、その場合工夫が必要であるが、当該分野において公知の手法でこの改変は可能であり、まれに言語野が右半球にある左利きがいる)でも、言語野を事前に他の方法(MRI)で確認して、右半球にあり、かつ、そこを通過するような投与経路や投与部位が設定される場合には注意が必要であるものの、これは設計可能である。
【0065】
本明細書において、a)該コンピュータデバイスにより、頭皮において細胞を投与する投与デバイスを通すための切除位置を特定することは、脳外科分野で通常に使用される技術を用いることができ、例えば、皮膚を切除した瘢痕がある場合は、その瘢痕と角度をもって交差するような切除をすることは回避するべきである。例えば、Medtronic社のナビ計算システムFlameLinkにMRI画像を取り込み、皮膚の陥凹として確認することができる。皮膚は既に切開されている場合、基本的にはその切開を利用する。狙う穿頭孔(Burr hole)が、以前の皮膚の切開線からかなりずれている場合、皮膚を長く切開してGaleaを剥がすことで対応する。
【0066】
本明細書において、b)該コンピュータデバイスにより、細胞治療を投与するための頭蓋骨において該投与デバイスを通すための開口部を特定することは、脳外科分野で通常に使用される技術を用いることができ、例えば、術後の感染を防ぐため、可能な場合は、人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物がある場所を投与ルートから除外する。刺入点が機能性部位と重ならないように、穿頭孔を選択するべきである。脳が萎縮していてかなり落ち込んでいる(5mmほど)場合は、硬膜を切開しても脳までの距離が遠く事故の原因となり得るので、脳表が骨直下にある部位(脳回の頂点)を投与ルートとして選択する。穿頭孔の位置を正中線(midline)近くとする場合、上矢状静脈洞(SSS)に灌流する太い静脈が存在する(場合によっては静脈湖(Venous lake)となっている)可能性があるため、事前にFlameLinkで硬膜切開部位周囲に太い静脈がない事を確認する。
【0067】
本明細書において、c)該コンピュータデバイスにより、該取得した画像データおよび該被験体の脳に関するデータを用いて運動線維、脳血管、脳溝、機能部位からなる群より選択される少なくとも一つの脳経路除外領域を特定することは、当該分野において使用される任意の手法で特定することができる。これは、DWI画像、T2画像、FLAIR画像、DTI画像の少なくとも1つ、好ましくは2つ、3つ、または4つを用いて、投与部位を決定することができる。DWI画像から脳梗塞で損傷を受けた領域を把握する。脳梗塞により損傷を受けた領域は、血流が無いため投与した細胞が死滅するので、好ましくは投与しないことが推奨される。次に、T2画像およびFLAIR画像を用いて、DWI陰性(細胞死を免れた)であるが浮腫が強く出ている部位(回復可能ではあるが、投与には必ずしも望ましくない)を評価し、DTI画像から運動線維を描出して、どこで運動線維が断裂しているかを評価することで、投与経路の候補または範囲を選択することができる。次に、Tractographyが断裂している部分または弱くなっている部分(通常はDWIで白い場所)に近い場所、かつ、安全性の高い場所(もし出血やアレルギー反応を起こしても障害が少ない場所:一般的にAVMでeloquent areaと呼ばれる部位以外)を、細胞投与部位として選択することができる。選択の際、T2/FLAIR画像の高信号部位も避けてその実質的に正常側に投与するよう注意することが有用であり得る。損傷ダメージが大きすぎるためTractographyが描出されないことがあるが、子のような場合には、対側のTractographyを参考に神経線維の走行を推定し、推定Tractographyを作成することで、細胞投与部位を決定することができる。細胞が投与部位から出ないようにするため、脳表から近い位置(脳表から1cm、1.5cm、2cm、2.5cmまたは3cm以内)は投与候補位置から除外することが推奨される。DTI画像では白く描出されるが、DWI画像では白く描出されない部位から1cm、1.5cm、2cm、2.5cm、または3cm以内の領域は投与候補位置から除外することが有利であり得る。
【0068】
これらの投与部位および投与経路は、MRIを用いたナビゲーションソフト上で最終決定することができる。使用するMRIは、オンサイトではない場所で撮像したものも用いることができる。
【0069】
1つの実施形態では、d)該コンピュータデバイスにより、該障害位置の付近の安全領域を投与部位として選択することは、当該分野において公知の任意の手法およびその組み合わせを用いて実施することができる。例えば、Tractographyが断裂している部分または弱くなっている部分(通常はDWIで白い場所)に近い場所、かつ、安全性の高い場所(もし出血やアレルギー反応を起こしても障害が少ない場所:一般的にAVMでeloquent areaと呼ばれる部位以外)を、細胞投与部位として選択する。選択の際、T2/FLAIR画像の高信号部位も避けてその可及的近傍に投与することができる。
【0070】
1つの実施形態では、e)該開口部と該投与部位との間に投与経路を描写することであって、該投与経路は該脳経路除外領域に関する情報を含んで描写される、ことは、当該分野において公知の任意の手法およびその組み合わせを用いて実施することができる。ここで、この場合、必要に応じて、該脳経路除外領域に関する情報から該投与経路に関して適切性の情報を提供することができる。
【0071】
本明細書において、該選択された投与部位を、グラフィック表示として出力することは、当該分野で公知の任意の手法を用いて実現することができる。
【0072】
本開示は、上記をコンピュータに実現させるプログラムとして提供され得、あるいは、当該プログラムを記録した記録媒体として提供され得る。
【0073】
あるいは別の局面において、本開示は、被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与する経路を特定するシステムを提供する。
【0074】
このシステムは、少なくとも以下の構成のうちの一つを含む:
i)、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得する画像化デバイスと、
ii)被験体の脳の情報を入手する、該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスと、
iii)該細胞を投与する経路の候補を以下の手順で提供することを実現する演算ユニットであって、該手順は:
a)該コンピュータデバイスにより、頭皮において細胞を投与する投与デバイスを通すための切除位置を特定することと、
b)該コンピュータデバイスにより、細胞治療を投与するための頭蓋骨において該投与デバイスを通すための開口部を特定することと、
c)該コンピュータデバイスにより、該取得した画像データおよび該被験体の脳に関するデータを用いて運動線維、脳血管、脳溝、機能部位からなる群より選択される少なくとも一つの脳経路除外領域を特定することと、
d)該コンピュータデバイスにより、該障害位置の付近の安全領域を投与部位として選択することと、
e)該開口部と該投与部位との間に投与経路を描写することであって、該投与経路は該脳経路除外領域に関する情報を含んで描写される、こと
とを含み、必要に応じて、該脳経路除外領域に関する情報から該投与経路に関して適切性の情報を提供する演算ユニットと、
iv)該選択された投与部位を、グラフィック表示として出力する表示ユニットとを包含する。
【0075】
1つの実施形態において、i)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得することは、MRI、CT等の通常の造影手順を用いることにより、被験体の脳の画像データを少なくとも1部を入手し得る。取得すべき脳の画像データは、細胞治療を目指す領域が実質的にカバーされていることが好ましく、より好ましくは脳全体の画像が得られていることが有利である。
【0076】
(投与位置決定)
1つの実施形態において、本開示は、被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与する部位を特定するための方法を提供する。この方法は、A)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得するステップと、B)該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、被験体の脳の情報を入手するステップと、C)該コンピュータデバイスにより、該取得した画像データおよび該被験体の脳に関するデータを用いて運動線維を描写するステップと、D)該コンピュータデバイスにより、該運動線維が障害を受けている障害位置を特定するステップであって、該運動線維の走行データにおいて、運動線維の走行データが他の部位より低い部分を特定し、該低い部分を、障害を受けている運動線維と特定するステップとE)該コンピュータデバイスにより、該障害位置の付近の安全領域を投与部位として選択するステップと、F)該選択された投与部位を、グラフィック表示として出力するステップとを包含する。
【0077】
1つの実施形態において、A)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得することは、当該分野において公知の任意の手法を用いて実現することができ、本明細書において他の場所において詳述されており、これらの任意の手法を適用することができる。
【0078】
1つの実施形態において、B)該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、被験体の脳の情報を入手することは、当該分野において公知の任意の手法を用いて実現することができ、本明細書において他の場所において詳述されており、これらの任意の手法を適用することができる。
【0079】
1つの実施形態において、C)該コンピュータデバイスにより、該取得した画像データおよび該被験体の脳に関するデータを用いて運動線維を描写することは、当該分野において公知の任意の手法を用いて実現することができ、本明細書において他の場所において詳述されており、これらの任意の手法を適用することができる。DWI画像、T2画像、FLAIR画像、DTI画像の少なくとも1つを用いて運動線維を描写し得る。例えば、T2画像とFLAIR画像を用いて、DWI陰性(細胞死を免れた)であるが浮腫が強く出ている部位(回復可能ではあるが、投与には必ずしも望ましくない)を評価し、DTI画像から運動線維を描出して、どこで運動線維が断裂しているかを評価することができる。
【0080】
1つの実施形態において、D)該コンピュータデバイスにより、該運動線維が障害を受けている障害位置を特定することは、該運動線維の走行データにおいて、運動線維の走行データが他の部位より低い部分を特定し、該低い部分を、障害を受けている運動線維と特定することで実現することができる。
【0081】
1つの実施形態において、E)該コンピュータデバイスにより、該障害位置の付近の安全領域を投与部位として選択することは、当該分野において公知の任意の手法を用いて実現することができ、本明細書において他の場所において詳述されており、細胞の投与に際し安全性の高い、出血やアレルギー反応を起こしても障害が少ない場所(一般的に脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位以外)を細胞投与安全領域として示すことができ、あるいは、運動線維部位を除く、特定した障害位置を中心に半径1.5cmの領域かつ細胞投与安全領域であり、細胞投与不可領域を除く領域を、細胞投与候補位置として示すことができる。
【0082】
1つの実施形態において、F)該選択された投与部位を、グラフィック表示として出力することは、当該分野において公知の任意の手法を用いて実現することができ、本明細書において他の場所において詳述されている。
【0083】
1つの実施形態では、画像化デバイスはMRI、CT、血管造影検査装置、超音波検査を含むがこれに限定されない。好ましくは、MRIが使用される。
【0084】
1つの実施形態では本開示の走行データは、FA値(fractional anisotropy value)により表現される。例えば、目視でTractographyの断裂もしくは細くなっている部分を確認することができるが、コンピュータプログラム化することもでき、線維の走行を数値化(FA値)することができ、この数値が他の部位より極端に低下(例えば40%、50%、60%等)している部分を抽出し、その部位を損傷部位と評価することができる。したがって、運動線維の走行データが他の部位より低い部位における走行データの低下は、少なくとも40%、50%、60%、またはそれ以上の低下であってもよい。あるいは、可及的に近い場所(例えば、2cm以内、2.5cm以内、3cm以内、3.5cm以内、4cm以内)で、かつ、神経機能に重要な働きをしていないと考えられる部位を投与部位として選択することができる。好ましくは、前記安全領域は、前記障害位置から半径約1.5cm以内に存在する位置で、かつ、神経機能に重要な働きをしていないと考えられる部位が選択される。神経機能に重要な働きをしている部分は人間では既にほとんど個人差無く場所が同定されていることから、その部分は事前にコンピュータ内に取り込ませておくことが可能であり、例えば、左利きも概ね右利きと同じだが、ごく希に左利きで正反対に機能がある人もいるものの、主に言語の領域で、通常は右利きも左利きも左半球に言語野があるが、まれに言語野が右半球にある左利きが存在し、これは特定することができる。すなわち、左利きの場合は言語野を事前に他の方法(MRI)で確認して、右半球にあり、かつ、そこを通過するような投与経路や投与部位が設定される場合には注意が必要があるものの、当業者は適宜実施することができ、これらをコンピュータプログラムとして設計することもできる。
【0085】
1つの実施形態では、前記投与部位は、前記障害位置に対して脳の尾側(傷ついた部分の尾側)に位置決めされることができる。これは、俗に、下側から打つことを、の表現としたものといえる。
【0086】
1つの実施形態では、投与部位は、前記障害位置ごとに決定される。
【0087】
1つの実施形態において、投与部位は、前記障害位置に対して1または複数存在する。投与部位の個数は、ケースに応じて当業者が適宜決定することができ、投与する細胞量と回復すべき脳領域の相対的な関係で当業者が決定することができる。
【0088】
1つの実施形態において、描出された運動線維において、脳損傷が強く、描出されない場合には対側の健常な運動線維を参考にして、障害を受けている部分を把握することを特徴とする。これは単純に、対称を取るということで実現可能である。
【0089】
本開示は、上記をコンピュータに実現させるプログラムとして提供され得、あるいは、当該プログラムを記録した記録媒体として提供され得る。
【0090】
あるいは別の局面において、本開示は、被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与する部位を特定するシステムを提供する。このシステムは、A)該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得する画像化デバイスと、B)被験体の脳の情報を入手する、該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスであって、該コンピュータデバイスは、該取得した画像データおよび該被験体の脳に関するデータを用いて運動線維を描写し、該運動線維が障害を受けている障害位置を特定し、該運動線維の走行データにおいて、運動線維の走行データが他の部位より低い部分を特定し、該低い部分を障害を受けている運動線維と特定し、該障害位置の付近の安全領域を投与部位として選択することができるコンピュータデバイスと、D)投与部位を、グラフィック表示として出力する表示ユニットとを含む。
【0091】
(細胞を投与するための投与針の通過領域決定法)
一つの局面では、本開示は、細胞を投与するための投与針の通過領域決定法を提供する。
【0092】
本開示のこの局面において、本開示は、被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与するための投与針の通過領域を特定するための方法であって、該方法は
A)画像化デバイスを用いて、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得するステップと、
B)該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、被験体の脳の情報を入手するステップと、
C)該取得した画像データおよび該被験体の脳の情報から、該コンピュータデバイスにより、血管を描写するステップと、
D)該コンピュータデバイスにより、該血管を貫通しないような経路範囲を特定するステップと、
E)該コンピュータデバイスにより、脳内に針を刺入した後脳溝に出ない脳溝非侵襲範囲を特定するステップと、
F)該コンピュータデバイスにより、D)とE)で算出した経路範囲のうち重複する範囲の範囲内で経路を設定するステップと
G)該設定された経路を、グラフィック表示として出力するステップと
を包含する方法。
【0093】
一つの実施形態において、A)画像化デバイスを用いて、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得することは、当該分野において公知の任意の手法を用いて実現することができ、本明細書において他の場所において詳述されており、これらの任意の手法を適用することができる。
【0094】
一つの実施形態において、B)該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、被験体の脳の情報を入手することは、当該分野において公知の任意の手法を用いて実現することができ、本明細書において他の場所において詳述されており、これらの任意の手法を適用することができる。
【0095】
一つの実施形態において、C)該取得した画像データおよび該被験体の脳の情報から、該コンピュータデバイスにより、血管を描写することは、当該分野において公知の任意の手法を用いて実現することができ、これらの任意の手法を適用することができる。例えば、DWI画像、T2画像、FLAIR画像、DTI画像の少なくとも1つを用いて血管を描写し得る。例えば、ガドリニウム増強T1画像を用い、血管だけが強く高信号で描出されることを利用して、強いシグナルを同定することで実現することができるがこれに限定されない。血管描出にはMRA(magnetic resonance angiography)の元画像を使用するという方法も可能である。
【0096】
一つの実施形態において、D)該コンピュータデバイスにより、該血管を貫通しないような経路範囲を特定することは、当該分野において公知の任意の手法を用いて実現することができ、これらの任意の手法を適用することができる。例えば、DWI画像、T2画像、FLAIR画像、DTI画像の少なくとも1つを用いて血管を描写し、その結果を用いて貫通しない経路や範囲を特定することで、経路範囲を特定することができる。血管描出にはMRA(magnetic resonance angiography)の元画像を使用するという方法も可能である。
【0097】
一つの実施形態において、E)該コンピュータデバイスにより、脳内に針を刺入した後脳溝に出ない脳溝非侵襲範囲を特定することもまた、当該分野において公知の任意の手法を用いて実現することができ、これらの任意の手法を適用することができる。例えば、DWI画像、T2画像、FLAIR画像、DTI画像の少なくとも1つを用いて血管を描写し、その結果を用いて脳内に針を刺入した後脳溝に出ない脳溝非侵襲範囲を特定することができる。例えば、MRI画像に基づき該MRI画像について、少なくともDWI、T2、FLAIR、およびDTIを測定することで達成され得る。
【0098】
一つの実施形態において、F)該コンピュータデバイスにより、D)とE)で算出した経路範囲のうち重複する範囲の範囲内で経路を設定するもまた、当該分野において公知の任意の手法を用いて実現することができ、これらの任意の手法を適用することができる。例えば、D)およびE)のステップで得た情報を用いて、計算にて、重複する範囲を適切な候補経路として選択する手法である。
【0099】
一つの実施形態において、G)該設定された経路を、グラフィック表示として出力することは、当該分野において公知の任意の手法を用いて実現することができ、本明細書において他の場所において詳述されており、これらの任意の手法を適用することができる。
【0100】
一つの実施形態において、拡散テンソル(DTI)画像においてTractographyが描出される場合、(a)DTI画像においてTractographyが断裂しているか、または弱くなっている部分(脳梗塞急性期の場合通常はDWIで白い場所、脳梗塞慢性期の場合T2/FLAIRの高信号、外傷・脳出血の急性期の場合、CTで高信号、外傷・脳出血の慢性期の場合、T2/FLAIRで高信号)に近い場所で可及的に近接する正常脳組織であり、かつ(b)安全性の高い場所(もし出血やアレルギー反応を起こしても障害が少ない場所:一般的にAVMでeloquent area*と呼ばれる部位以外)であるという条件を満たし、(c)必要に応じて、T2/FLAIR画像の高信号部位も避けてその可及的近傍である部分という条件を満たす部位を投与部位として選択する。他方、拡散テンソル画像においてTractographyが描出されない場合、(aa)Tractographyを出すためのROIの設定(通常は中心前回・内包後脚・橋の3カ所を通過する神経線維選ぶことが多い)を中心前回、内包後脚、橋をそれぞれ単独において出てくるTractographyを参考にし、その中で、通常予想される人間における運動線維を選択し、(bb)(aa)でも出ない場合は対側のTractographyを参考に神経線維の走行を推定して、急性期のDWI画像において高信号と示される損傷部位、または慢性期にT2/FLAIR画像において低信号と示される損傷部位と推定されるトラクトグラフィーの通過点が重なる部位を運動線維が断裂している箇所と推定し、拡散テンソル画像においてTractographyが描出される場合の手順を行う。
【0101】
一つの実施形態において、投与部位の選択は、DWI領域で現在の脳梗塞で損傷を受けた領域を把握し、該領域は選択から外す。例えば、時間が経ち、傷ついている部分を把握するのはT2高信号が良い。T2画像およびFLAIR画像でDWI陰性だが浮腫が強く出ている部位もまた、選択から外し、DTI領域で運動神経を描出し、描出された運動線維の領域を選択から外すことが有利であり得る。
【0102】
一つの実施形態において、本開示の方法が経路として回避すべき血管は、脳の表面から上矢状静脈洞へ注ぐ太い静脈を含む。
【0103】
一つの実施形態において、血管の特定は、ガドリニウム増強T1画像を用い、血管だけが強く高信号で描出されることを利用することで血管を判定することが可能である。具体的には、脳内をピクセル画像としてそのシグナル強さ(シグナルインテンシティ)を定量すると脳実質(低信号)と血管(高信号)の2つのピークが確認される。その高信号の部位を持って血管と判定する、もしくはガドリニウムを用いない通常のT1強調画像も同時に撮影し、それをガドリニウム増強T1画像から引き算(サブストラクション)した画像を準備し、同様のピクセル画像シグナルインテンシティを出し、出てくる単一のピーク(血管)を評価することも出来る。血管描出にはMRA(magnetic resonance angiography)の元画像を使用し、そのピクセル画像でシグナルインテンシティを測定し、そのピーク値が他の脳の部分より高いことを持って確認することも可能である。
【0104】
一つの実施形態において、血管の特定は、前記特定は、MRI画像に基づき該MRI画像について、少なくともDWI、T2、FLAIR、およびDTIのうちの少なくとも1つ、2つ、3つまたは4つを測定することで達成される。理論に束縛されることを望まないが、FLAIR、GdT1、DTIがあることが好ましい。DWIは脳梗塞になった場所が発症から1週間だけ白く写るという便利な取り方である。通常脳梗塞になったか、なっていないかは、これで判定する。例示的な治験では急性期の患者を入れていることから、DWIでどこが傷ついて、麻痺が出ることになったのかを判断するためにDWIが大変有用であるが、時間が経った慢性期の患者さんではDWIを取っても、白く写らない(もうその時期は終わっている)ため、あまり有益な情報が得られないこともある。また外傷や脳出血ではDWIは評価ができないこともある。またT2とFLAIRはかなり似通った画像が得られ、特に情報量が多いのはFLAIRになるためアプリ上で最適な投与部位と投与経路を計算するために最低限必要なシークエンスがどうかということになるとFLAIRとガドリニウム増強T1とDTIを含めることが有利であり得る。あるいは、好ましいシークエンスは(1)FLAIR画像、(3)T2画像、(3)ガドリニウム増強T1画像との説明もあり得る。これは、ナビゲーションソフトの一部(例えば、これはメドトロニックが提供するもの)を構築するのに慣習的に使われる3つのパラメーターが例示される。上記の様に、最低条件の一つの例としてはFLAIR・GdT1・DTIが挙げられる。例示的な例としては、FLAIR/GdT1/T2でナビゲーションを作って、それに対して別のコンピュータ上でDWIとDTIを見ながら場所を決めることもできる。
【0105】
一つの実施形態において、脳内の領域は、MRIにおけるT2強調画像およびFLAIR(fluid-attenuated inversion-recovery)画像に信号強度をプロットしたとき、以下のように分類することが可能である。
【0106】
【0107】
脳溝のFLAIRの低信号と正常脳実質のFLAIR中信号は時に区別が難しい場合には、脳溝のT2高信号と正常脳実質のT2中信号を用いることでより正確に部位を判断することが可能である。
【0108】
一つの実施形態において、脳溝非侵襲経路の特定は、MRIにおけるT2強調画像およびFLAIR(fluid-attenuated inversion-recovery)画像により確認することにより実現される。T2画像では正常な脳実質は中信号で描出されるのに比較し、脳溝および脳内浮腫は高信号で描出される。またFLAIR画像では正常な脳実質は中信号で描出され、脳溝は低信号で描出され、脳内浮腫は高信号で描出される。これにより容易に脳溝の同定が可能になる。具体的には、A)FLAIRでは脳をピクセル画像で信号強度をプロットした際に、正常な脳実質(中信号)と脳溝(低信号)で区別される2つのピークが存在する。その低信号部位を脳溝と判定する。B)T2強調画像では脳をピクセル画像で信号強度をプロットした際に、正常な脳実質(中信号)と脳溝(高信号)で区別される2つのピークが存在する。その高信号部位を脳溝と判定するこれらの両方で確認される脳溝を実際の脳溝と判定する。)
一つの実施形態において、MRIにおけるT2強調画像およびFLAIR (fluid-attenuated inversion-recovery)像による確認は、A)FLAIRでは脳をピクセル画像で信号強度をプロットした際に、正常な脳実質(中信号)と脳溝(低信号)で区別される2つのピークが存在する。その低信号部位を脳溝と判定する。
【0109】
B)T2強調画像では脳をピクセル画像で信号強度をプロットした際に、正常な脳実質(中信号)と脳溝(高信号)で区別される2つのピークが存在する。その高信号部位を脳溝と判定する。
これらの両方で確認される脳溝を実際の脳溝と判定する。
【0110】
本開示は、上記をコンピュータに実現させるプログラムとして提供され得、あるいは、当該プログラムを記録した記録媒体として提供され得る。
【0111】
あるいは別の局面において、本開示は、被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与するための投与針の通過領域を特定するシステムを提供する。このシステムは、A)該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得する画像化デバイスと、B)被験体の脳の情報を入手する、画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスであって、該コンピュータデバイスは、該取得した画像データおよび該被験体の脳の情報から、血管を描写し、該血管を貫通しないような経路範囲を特定し、脳内に針を刺入した後脳溝に出ない脳溝非侵襲範囲を特定し、D)とE)で算出した経路範囲のうち重複する範囲の範囲内で経路を設定する、コンピュータデバイスと、G)該設定された経路を、グラフィック表示として出力する表示ユニットとを包含する。
【0112】
(髄液漏れの防止)
一つの局面において、被験体の脳における髄液漏れを防止する方法であって、A)脳の表面に存在する硬膜を切開するステップと、B)穿刺開始予定部位の脳表のくも膜と軟膜をバイポーラー凝固鑷子などの電気外科器具などの電気外科機器を用いて凝固接着させるステップであって、該くも膜が白濁するまであるいは、白濁することが理解されている画像条件もしくは出力条件に設定するステップとを含む。ここで白濁することが理解されている画像条件としては、例えば、くも膜を目視もしくはカメラなどを介してくも膜を表示する画像のレベルが概脳の表面に存在する微小血管が確認できなくなるまで、あるいは出力の機械の種類に応じて、白濁することが達成できることが知られるレベルに設定することで、特定することができる。
【0113】
本開示は、上記をコンピュータに実現させるプログラムとして提供され得、あるいは、当該プログラムを記録した記録媒体として提供され得る。
【0114】
一つの実施形態では、脳における髄液漏れの防止は、前記被験体の中枢神経障害に対する細胞治療におけるものである。
【0115】
更なる実施形態では、本開示の髄液漏れの防止方法は、C)該被験体に必要となる細胞を投与するステップを含む。
【0116】
別の局面において、本開示は、被験体の脳における髄液漏れを防止するためのシステムを提供し、該システムは、A)脳の表面に存在する硬膜を切開する切開具と、B)バイポーラー凝固鑷子などの電気外科器具などの電気外科器具であって、該電気照射器具は、穿刺開始予定部位の脳表のくも膜と軟膜を凝固接着させるように構成され、該くも膜が白濁するまであるいは、白濁することが理解されている画像条件もしくは出力条件に設定することができる器具と、C)該くも膜の白濁を検出し得るセンサーとを含む。
【0117】
1つの局面において、本開示は、被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与する経路を特定するための方法を提供し、該方法は
i)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得するステップと、
ii)該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、被験体の脳の情報を入手するステップと、
iii)該細胞を投与する経路の候補を以下の手順で提供するステップであって、該ステップは:
aa)該コンピュータデバイスにより、該障害位置の付近の安全領域を投与部位として選択するステップと、
bb)該選択された投与部位への投与経路を特定するステップと、
cc)必要に応じて、該コンピュータデバイスにより、頭皮において細胞を投与する投与デバイスを通すための切除位置を選択することと
を含むステップと、
iv)該選択された投与部位を、グラフィック表示として出力するステップと
を包含する。
【0118】
他の局面では、本開示は、被験体の中枢神経障害に対する細胞治療において、細胞を投与する経路を特定するための方法を提供し、該方法は
i)画像化デバイスにより、該被験体の脳の少なくとも一部の画像データを取得するステップと、
ii)該画像化デバイスと連絡するコンピュータデバイスにより、被験体の脳の情報を入手するステップと、
iii)該細胞を投与する経路の候補を以下の手順で提供するステップであって、該ステップは:
a)必要に応じて、該コンピュータデバイスにより、頭皮において細胞を投与する投与デバイスを通すための切除位置を選択することと、
b)該コンピュータデバイスにより、細胞治療を投与するための頭蓋骨において該投与デバイスを通すための開口部を選択することと、
c)該コンピュータデバイスにより、該取得した画像データおよび該被験体の脳に関するデータを用いて運動線維、脳血管、脳溝、機能部位からなる群より選択される少なくとも一つの脳経路除外領域を特定することと、
d)該コンピュータデバイスにより、該障害位置の付近の安全領域を投与部位として選択するステップと、
e)該開口部と該投与部位との間に投与経路を描写することであって、該投与経路は該脳経路除外領域に関する情報を含んで描写される、こととを含み、必要に応じて、該脳経路除外領域に関する情報から該投与経路に関して適切性の情報を提供することと、
を含む、ステップと、
iv)該選択された投与部位を、グラフィック表示として出力するステップと
を包含する。
【0119】
1つの局面において、本開示は、被験体の中枢神経障害に対する細胞治療の悪影響の発生確率を予測する方法を提供し、該方法は
1)細胞の投与位置を示すデータ群と、該細胞の投与位置ごとの細胞治療の悪影響の発生のデータとを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させるステップと、
2)細胞の投与位置を示すデータ群を取得するステップと、
3)学習済みの該人工知能モデルに対して、2)で取得した該細胞の投与位置を示すデータ群を入力するステップと、
4)学習済みの該人工知能モデルに、細胞治療の悪影響の発生確率を算出させるステップと
を包含する。
【0120】
1つの実施形態において、前記細胞の投与位置を示すデータ群が、投与位置と脳表との距離、投与位置と障害位置との距離、投与位置と浮腫領域との距離、および投与位置が脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位以外であるかどうかの少なくとも1つのデータを含む。
【0121】
一部の実施形態において、前記細胞の投与位置を示すデータ群が、投与位置と脳表との距離、投与位置と障害位置との距離、投与位置と浮腫領域との距離、および投与位置が脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位以外であるかどうかの組合せを含む。
【0122】
別の局面において、本開示は、被験体の中枢神経障害に対する細胞治療の悪影響の発生確率を予測する方法を提供し、該方法は、
1)細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群と、該細胞を投与するための投与針の通過領域ごとの細胞治療の悪影響のデータとを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させるステップと、
2)細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を取得するステップと、
3)学習済みの該人工知能モデルに対して、2)で取得した該細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を入力するステップと、
4)学習済みの該人工知能モデルに、細胞治療の悪影響の発生確率を算出させるステップと
を包含する。
【0123】
1つの実施形態において、前記細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群が、投与針が通過する皮膚直下の脳表と頭蓋骨との距離、投与針の刺入点の直下がeloquent areaであるかどうか、投与針の刺入点の直下に太い静脈があるかどうか、投与針が人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物を通過するかどうか、脳溝と投与針との距離、および投与針と太い脳内の血管との距離の少なくとも1つを含む。
【0124】
他の実施形態において、前記細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群が、投与針が通過する皮膚直下の脳表と頭蓋骨との距離、投与針の刺入点の直下がeloquent areaであるかどうか、投与針の刺入点の直下に太い静脈があるかどうか、投与針が人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物を通過するかどうか、脳溝と投与針との距離、および投与針と太い脳内の血管との距離の組合せを含む。
【0125】
1つの局面において、本時開示は、被験体の中枢神経障害に対する細胞治療の悪影響の発生確率を予測する方法を提供し、該方法は、
1)細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群と、該細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に該細胞を投与するための投与針の通過領域ごとの細胞治療の悪影響のデータとを学習データとして人工知能モデルに入力し、人工知能モデルに学習させるステップと、
2)細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を取得するステップと、
3)学習済みの該人工知能モデルに対して、2)で取得した該細胞の投与位置を示すデータ群および該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群を入力するステップと、
4)学習済みの該人工知能モデルに、細胞治療の悪影響の発生確率を算出させるステップと
を包含する。
【0126】
1つの実施形態において、前記細胞の投与位置を示すデータ群が、投与位置と脳表との距離、投与位置と障害位置との距離、投与位置と浮腫領域との距離、および投与位置が脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位以外であるかどうかの組合せを含む。
【0127】
一部の実施形態において、前記細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群が、投与針が通過する皮膚直下の脳表と頭蓋骨との距離、投与針の刺入点の直下がeloquent areaであるかどうか、投与針の刺入点の直下に太い静脈があるかどうか、投与針が人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物を通過するかどうか、および脳溝と投与針との距離、投与針と太い脳内の血管との距離の組合せを含む。
【0128】
他の実施形態において、前記細胞の投与位置を示すデータ群が、投与位置と脳表との距離、投与位置と障害位置との距離、投与位置と浮腫領域との距離、および投与位置が脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位以外であるかどうかの少なくとも1つを含み、該該細胞の投与位置に細胞を投与するための投与針の通過領域を示すデータ群が、投与針が通過する皮膚直下の脳表と頭蓋骨との距離、投与針の刺入点の直下がeloquent areaであるかどうか、投与針の刺入点の直下に太い静脈があるかどうか、投与針が人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物を通過するかどうか、脳溝と投与針との距離、および投与針と太い脳内の血管との距離の少なくとも1つを含む。
【0129】
本開示は、上述の方法を実行するためのプログラム、プログラムを格納した記録媒体ならびに上述の方法を行う装置およびシステムも提供する。この方法は、インターネット上で起動することが可能であり、得られたデータを管理者側が取得できるように(いわゆるグーグルやFacebookなど)することで、より良い方法に対するデータの蓄積が出来る様になる。細胞治療の悪影響を評価するために、術後の画像や運動機能回復評価データを入力することも可能である。
【0130】
(プログラムの構成例)
1つの実施形態では、本開示はプログラムとして提供されることができ、脳梗塞を有する患者の脳のMRI画像を撮像し、撮像したMRI画像についてDWI、T2、FLAIRおよびDTIを測定する。測定により得られる画像をプログラムに取り込ませることで実現することができる。
【0131】
このプログラムは以下のステップを行い、細胞の投与部位を決定する。すなわち、事前に取り込ませた、細胞の投与に際し安全性の高い、出血やアレルギー反応を起こしても障害が少ない場所(一般的にAVMでeloquent areaと呼ばれる部位以外)を細胞投与安全領域として示し、患者が外傷・脳出血の急性期の場合、CTで高信号(ハンスフィールドユニットで少なくとも50以上)の領域を、細胞投与不可領域として示し、・脳表から2cmまたは1cm、または3cm以内の領域を、細胞投与不可領域として示し、DTI画像では白く描出されるが、DWI画像では白く描出されない部位から0.5cm以内の領域を、細胞投与不可領域として示し、T2画像、FLAIR画像において、浮腫が強く出ている部位を、細胞投与不可領域として示し、DTI画像において、目的領域(Region of Interest;ROI)として中心前回、内包後脚および橋を選択して、運動線維を描出させ、運動線維の走行データが他の部位より低い部分(FA値が少なくとも50%以上低い部分)を障害位置として特定し、運動線維部位を除く、特定した障害位置を中心に半径1.5cmの領域かつ細胞投与安全領域であり、細胞投与不可領域を除く領域を、細胞投与候補位置として示すことができる。
【0132】
あるいは、以下のような構成で実現することができる。例えば、脳梗塞を有する患者の脳のMRI画像を撮像し、撮像したMRI画像についてDWI、T2、FLAIRおよびDTIを測定する。測定により得られる画像をコンピュータに取り込ませ、本開示の例示的プログラムは、細胞の投与部位を決定し、事前に取り込ませた、細胞の投与に際し安全性の高い、出血やアレルギー反応を起こしても障害が少ない場所(一般的にAVMでeloquent areaと呼ばれる部位以外)を細胞投与安全領域として示し、患者が外傷・脳出血の急性期の場合、CTで高信号の領域を、細胞投与不可領域として示し、脳表から2cm以内の領域を、細胞投与不可領域として示し、T2画像、FLAIR画像において、浮腫が強く出ている部位を、細胞投与不可領域として示し、脳における損傷ダメージが大きく、ROIとして中心前回、内包後脚および橋を選択しても、中心前回、内包後脚、橋の単独にしても運動線維を描出できない場合、対側の健常な運得神経を参考に神経線維の走行を推定し、運動線維部位を除く、特定した障害位置を中心に半径1.5cmの領域かつ細胞投与安全領域であり、細胞投与不可領域を除く領域を、細胞投与候補位置として示すことで実現することができる。
【0133】
また、本開示は細胞投与位置の決定を行うプログラムとして提供されることができる。このプログラムは、脳梗塞を有する患者の脳のMRI画像を撮像し、撮像したMRI画像についてDWI、T2、FLAIRおよびDTIを測定する。測定により得られる画像をコンピュータに取り込ませ、そして本開示のプログラムは、細胞の投与部位を決定するために、以下を行う。すなわち、事前に取り込ませた、細胞の投与に際し安全性の高い、出血やアレルギー反応を起こしても障害が少ない場所(一般的にAVMでeloquent
areaと呼ばれる部位以外)を細胞投与安全領域として示し、患者が脳梗塞慢性期または外傷・脳出血の慢性期の場合、T2/FLAIRで高信号(A)FLAIRでは脳をピクセル画像で信号強度をプロットした際に、正常な脳実質(中信号)と脳溝(低信号)で区別される2つのピークが存在する。その低信号部位を脳溝と判定する。B)T2強調画像では脳をピクセル画像で信号強度をプロットした際に、正常な脳実質(中信号)と脳溝(高信号)で区別される2つのピークが存在する。その高信号部位を脳溝と判定する。これらの両方で確認される脳溝を実際の脳溝と判定する。)の領域を、細胞投与不可領域として示し、脳表から2cm以内の領域を、細胞投与不可領域として示し、DTI画像では白く描出されるが、DWI画像では白く描出されない部位から0.5cm以内の領域を、細胞投与不可領域として示し、T2画像、FLAIR画像において、浮腫が強く出ている部位を、細胞投与不可領域として示し、DTI画像において、目的領域(Region
of Interest;ROI)として中心前回、内包後脚および橋を選択して、運動線維を描出させ、運動線維の走行データが他の部位より低い部分(FA値が少なくとも50%以上低い部分)を障害位置として特定し、運動線維部位を除く、特定した障害位置を中心に半径1.5cmの領域かつ細胞投与安全領域であり、細胞投与不可領域を除く領域を、細胞投与候補位置として示すことができる。
【0134】
別の構成例としては、例えば、本開示のプログラムの例としては、脳における損傷ダメージが大きい場合での細胞投与位置の決定も行うことができる。この場合、脳梗塞を有する患者の脳のMRI画像を撮像し、撮像したMRI画像についてDWI、T2、FLAIRおよびDTIを測定する。測定により得られる画像をコンピュータに取り込ませ、 細胞の投与部位を決定することができる。ここで、コンピュータプログラムは、事前に取り込ませた、細胞の投与に際し安全性の高い、出血やアレルギー反応を起こしても障害が少ない場所(一般的にAVMでeloquent areaと呼ばれる部位以外)を細胞投与安全領域として示し、患者が脳梗塞慢性期または外傷・脳出血の慢性期の場合、T2/FLAIRで高信号の領域を、細胞投与不可領域として示し、脳表から2cm以内の領域を、細胞投与不可領域として示すし、DTI画像では白く描出されるが、DWI画像では白く描出されない部位から0.5cm以内の領域を、細胞投与不可領域として示し、T2画像、FLAIR画像において、浮腫が強く出ている部位を、細胞投与不可領域として示し、脳における損傷ダメージが大きく、ROIとして中心前回、内包後脚および橋を選択しても、中心前回、内包後脚、橋の単独にしても運動線維を描出できない場合、対側の健常な運得線維を参考に神経線維の走行を推定し、運動線維部位を除く、特定した障害位置を中心に半径1.5cmの領域かつ細胞投与安全領域であり、細胞投与不可領域を除く領域を、細胞投与候補位置として示すことができる。
【0135】
本開示におけるプログラムの例としては、例えば細胞投与候補位置の1つを選択した後、プログラムを用いた細胞の投与経路の決定を行うものが提供される。この例示的プロラムは、脳梗塞を有する患者の脳のMRI画像を撮像し、撮像したMRI画像についてガドリニウム増強T1、T2、FLAIRおよびDTIの画像をコンピュータに取り込ませる。ここでこのプログラムは以下のステップを行い、細胞の投与経路を決定する。すなわち、皮膚直下の脳表と頭蓋骨との距離が10mm未満であり、皮膚直下が脳回の頂点である皮膚領域を刺入推奨領域として示すことができる。例えば、脳表と頭蓋骨との距離が、5mm未満であれば安全(推奨)、5mm以上~10mm未満であれば投与可能(中難易度)、10mm以上であれば投与不可(高難易度)のように3段階で分類可能することが可能であり、これにより、医師によっていろいろなルートを選択可能なソフトウェア(アプリケーション)を提供することができる。脳表と頭蓋骨との距離を、安全(推奨)、投与可能(中難易度)および投与不可(高難易度)に分類するための数値は、医師により自由に変更することも可能である。
【0136】
また、eloquent areaが直下にある皮膚の領域を刺入不可領域として示し、ガドリニウム増強T1画像において、直下に太い静脈がある皮膚領域を刺入不可領域として示す。ここで、静脈の太さの判断は以下のように行うことができる。脳内をピクセル画像としてそのシグナル強さ(シグナルインテンシティ)を定量すると脳実質(低信号)と血管(高信号)の2つのピークが確認される。その高信号の部位を持って血管と判定する、もしくはガドリニウムを用いない通常のT1強調画像も同時に撮影し、それをガドリニウム増強T1画像から引き算(サブストラクション)した画像を準備し、同様のピクセル画像シグナルインテンシティを出し、出てくる単一のピーク(血管)を評価することも出来る。さらに、血管描出にはMRA(magnetic resonance angiography)の元画像を使用し、そのピクセル画像でシグナルインテンシティを測定し、そのピーク値が他の脳の部分より高いことを持って確認することも可能である。また、人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物がある場所を投与不可部位として示し、FLAIR/T2画像において、脳溝領域を投与不可領域として示すことができる。ここで、脳溝領域の判定は以下のように行うことができる。A)FLAIRでは脳をピクセル画像で信号強度をプロットした際に、正常な脳実質(中信号)と脳溝(低信号)で区別される2つのピークが存在する。その低信号部位を脳溝と判定する。B)T2強調画像では脳をピクセル画像で信号強度をプロットした際に、正常な脳実質(中信号)と脳溝(高信号)で区別される2つのピークが存在する。その高信号部位を脳溝と判定する。A)およびB)の両方で確認される脳溝を実際の脳溝と判定する。ここで、脳溝を貫通する経路は好ましい選択肢ではないだけでなく、脳溝と針との距離が非常に近い場合も血管を傷つける可能性が高く、脳溝と針との距離によって、経路の安全度を分類することも可能である。例えば、以下のように分類することができる。
・安全(推奨)範囲:脳溝と針との距離が5mm以上離れている。
・投与可能範囲(中難易度):脳溝と針との距離が5mm未満、1mm以上である。
・投与不可能範囲(高難易度):脳溝と針との距離が1mm未満(針が脳溝を貫通する場合を含む)である。
【0137】
脳溝と針との距離を、安全(推奨)範囲、投与可能範囲(中難易度)および投与不可能範囲(高難易度)に分類するための数値は、医師により自由に変更することも可能である。
【0138】
あるいは、ガドリニウム増強T1画像において、太い脳内の血管から1mm以内の領域を投与不可領域と示すことができる。また、針と太い脳内の血管との距離が非常に近い場合も血管を傷つける可能性が高く、針と太い脳内の血管との距離によって、経路の安全度を分類することも可能である。例えば、以下のように分類することができる。
・安全(推奨)範囲:針と太い脳内の血管との距離が5mm以上離れている。
・投与可能範囲(中難易度):針と太い脳内の血管との距離が5mm未満、1mm以上である。
・投与不可能範囲(高難易度):針と太い脳内の血管との距離が1mm未満(針が血管を貫通する場合を含む)である。
針と太い脳内の血管との距離を、安全(推奨)範囲、投与可能範囲(中難易度)および投与不可能範囲(高難易度)に分類するための数値は、医師により自由に変更することが可能である。
【0139】
また、細胞投与候補位置と、刺入推奨領域とを結ぶ直線経路の内、脳表と頭蓋骨との距離との距離が安全(推奨)範囲内であり、脳溝と針との距離が安全(推奨)範囲内であり、針と太い脳内の血管との距離が安全(推奨)範囲であり、投与不可部位/領域を通過しない経路を優先的に示すことができる。
【0140】
あるいは、例示的なプログラムでは、脳梗塞を有する患者の脳のMRI画像を撮像し、撮像したMRI画像についてガドリニウム増強T1、T2、FLAIRおよびDTIの画像をコンピュータに取り込ませ、細胞の投与経路を決定することができる。
【0141】
このプログラムでは、皮膚直下の脳表と頭蓋骨との距離が5mm未満であり、皮膚直下が脳回の頂点である皮膚領域を刺入推奨領域として示すし、eloquent areaが直下にある皮膚の領域を刺入不可領域として示し、ガドリニウム増強T1画像において、直下に太い静脈がある皮膚領域を刺入不可領域として示し、以前の皮膚切開部位を、MRI画像において皮膚の陥凹として示し、次いで、以前の切開創上の領域を切開推奨領域、以前の切開創から3cm未満の領域を切開可能領域、以前の切開創から3cm以上離れた領域を切開不可領域として示し、人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物がある場所を投与不可部位として示し、FLAIR/T2画像において、脳溝領域を投与不可領域として示し、ガドリニウム増強T1画像において、太い脳内の血管および脳溝の血管から1mm以内の領域を投与不可領域と示し、細胞投与候補位置と、刺入推奨領域かつ切開推奨領域である領域とを結ぶ直線経路の内、脳表と頭蓋骨との距離との距離が安全(推奨)範囲内であり、脳溝と針との距離が安全(推奨)範囲内であり、針と太い脳内の血管との距離が安全(推奨)範囲であり、投与不可部位/領域を通過しない経路を優先的に示すことができる。
【0142】
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0143】
以上、本開示を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本開示を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本開示を限定する目的で提供したのではない。従って、本開示の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0144】
以下に実施例を記載する。以下の実施例で用いるヒトの取り扱いは、同意を取得した上で、必要な場合、監督官庁で規定される基準およびヘルシンキ宣言にのっとり、ICHの基準を尊重し、北海道大学にて規定される倫理規定に従い、GCPに基づいて行った。ヘルシンキ宣言やICHで提唱されている基準ならびに北海道大学倫理委員会が規定する各種基準を遵守した。試薬類は具体的には実施例中に記載した製品を使用したが、他メーカー(Sigma-Aldrich、など)の同等品でも代用可能である。
【0145】
(実施例1:投与部位の決定)
本実施例では、細胞投与部位を決定するために事前に脳MRIで運動線維を描出する。描出された運動線維(脳損傷が強く、描出されない場合には対側の健常な運動線維を参考にする)が障害を受けている部分を把握し、同部位に可及的に近い場所(半径1.5cm以内)で神経機能に重要な働きをしていないと考えられる部位を投与部位として選択する。
【0146】
その手順は以下のとおりである。
【0147】
少なくともDWI画像、T2画像、FLAIR画像、DTI画像を用いて、投与部位を決定する。
【0148】
まず、DWI画像から脳梗塞で損傷を受けた領域を把握する。(血流が無いから細胞が死滅するため、ここには絶対に投与しない。)
T2画像とFLAIR画像を用いて、DWI陰性(細胞死を免れた)であるが浮腫が強く出ている部位(回復可能ではあるが、投与には必ずしも望ましくない)を評価し、DTI画像から運動線維を描出して、どこで運動線維が断裂しているかを評価する。
【0149】
Tractographyが断裂している部分または弱くなっている部分(通常はDWIで白い場所)に近い場所、かつ、安全性の高い場所(もし出血やアレルギー反応を起こしても障害が少ない場所:一般的にAVMでeloquent areaと呼ばれる部位以外)を、細胞投与部位として選択する。選択の際、T2/FLAIR画像の高信号部位も避けてその可及的近傍に投与するよう注意する。
【0150】
損傷ダメージが大きすぎるためTractographyが描出されない場合は、対側のTractographyを参考に神経線維の走行を推定し、推定Tractographyを作成することで、細胞投与部位を決定する。
【0151】
細胞が投与部位から出ないようにするため、脳表から近い位置(脳表から2cm以内)は投与候補位置から除外する。
【0152】
投与部位は、MRIを用いたナビゲーションソフト上で最終決定される。使用するMRIは、他院で撮像したものでも構わない。
(実施例2:投与位置決定例1)
ラクナ梗塞を有する74才女性において、細胞投与位置を決定した。
【0153】
DWI画像において右放線冠に白い部分が存在したため、この部位を梗塞部位と判定した(
図1A)。DTI画像から、梗塞部位がTractographyの通り道であること、すなわち、脳梗塞の中を運動神経の線維(青)が通過していることが分かる(かつ、信号は反対側に比べて少なくなっている)から、この中で運動線維が断裂されて、麻痺が出ていると判断した(
図1B)。脳出血や細胞アレルギーを生じたとしてもほとんど症状を出さない(サイレントエリア)である右尾状核上部白質を選択した(
図1C)。選択した位置に、2,000万個の細胞を投与した。
(結果)
投与後360日後、脳卒中重症度評価スケールのひとつであるNIHSS(National Institute of Health Stroke Scale)の低下、機能的自立度評価(FIM)、バーセルインデックス(BI)の改善が見られたが、Fugl-Meyer評価(FMA)は変わらなかった(表2)。
【0154】
【0155】
(実施例3:投与位置決定例2)
新原生脳塞栓症および右中大脳脈閉塞を有する67才男性において、細胞投与位置を決定した。
【0156】
DWI画像において放線冠から内包後脚に白い部分が存在したため、この部位を梗塞部位と判定した(
図2A)。DTI画像から、脳梗塞の中を運動神経の線維(青)が通過していることが分かる(かつ、信号は反対側に比べて少なくなっている)ことから、この中で運動線維が断裂されていると判断した。梗塞部位とTractographyを考慮し(
図2B)、DWIで確認される梗塞部位の外側の部位を投与部位と決定した(
図2C)。選択した位置に、2,000万個の細胞を投与した。
【0157】
(結果)
投与後360日後、NIHSSの低下、FIMおよびBIの改善が見られたが、FMAは変わらなかった。運動機能の経時的な改善が見られた(表3)。
【0158】
【0159】
(実施例4:投与位置決定例3)
アテローム血栓性梗塞および右頸部頸動脈閉塞を有する58才男性において、細胞投与位置を決定した。
【0160】
DWIにおいて白く描出される脳梗塞が左半球に広範囲に認められ(
図3A)、脳梗塞の領域中にTractographyで描出される運動線維は描出されなかった(広範囲の障害のため)(
図3B)。そのため(1)正常脳組織ならびに(2)反対側および解剖学的に推測される運動神経線維の走行を考慮し、左中心後回皮質下白質に2000万個の細胞を投与した(
図3C)。
【0161】
(結果)
投与後360日後、NIHSSの低下、FIMの改善が見られたが、BIおよびFMAは変わらなかった(表4)。
【0162】
【0163】
(実施例5:投与位置決定例4)
アテローム血栓性梗塞および右中大脳動脈狭窄を有する64才男性において、細胞投与位置を決定した。
DWI画像において左前頭葉に高信号となる白い部分が散在性に認められたため、この部位を梗塞部位と判定した(
図4A)。DTI画像から、梗塞部位内にTractographyの信号が弱いながらも確認され、かつ信号は反対側に比べて少なくなっていることから、この中で運動線維が断裂されていると判断した(
図4B)。ここに可及的に近い場所でDWIで確認される梗塞部位の前方外側の部位を投与部位と決定した(
図4C)。選択した位置に、5,000万個の細胞を投与した。
【0164】
(結果)
投与後180日後、NIHSSの低下、FIMおよびBIの改善が見られたが、FMAは変わらなかった(表5)。
【0165】
【0166】
(実施例6:投与位置決定例5)
右半球に広範な脳梗塞を生じていた(
図5A)。脳梗塞の中を運動神経の線維(青)が通過していることが分かり(かつ、信号は反対側に比べて少なくなっている)、トラクトグラフィーがDWI内を通過する部位で神経線維が損傷され麻痺を出していると考えられたため(
図5B)、同部位の近くかつ安全と考えられる右尾状核に細胞を投与した(
図5C)。
【0167】
(結果)
術後1年経過し、NIHSS、BI、FMA、FIM全てにおいて改善を認めた(表6)。
【0168】
【0169】
(実施例7:投与位置決定例6)
左内包部分でトラクトグラフィーが脳梗塞巣(DWI陽性)を通過していたため(
図6Aおよび6B)、同部位が原因で麻痺が出ていると判断し、脳梗塞巣(DWI)すぐ近傍の左尾状核頭部に細胞を投与した(
図6C)。
(結果)
術後半年経過し、NIHSS、BI、FMA、FIM全てにおいて改善を認めた(表7)。
【0170】
【0171】
(実施例8:投与位置決定例7)
右前頭葉深部白質の放線冠にDWIで白く写る急性期脳梗塞が存在していた(
図7A))。トラクトグラフィーは描出されなかったが、それは内部を通過しているためと考えられた(
図7B)。そのため細胞投与を反対側から想定されるトラクトグラフィーに近く、安全と考えられる右尾状核外側白質に投与した(
図7C)。
(結果)
投与1ヶ月後で投与7日前と比較し、NIHSS、FIM、BI、FMAの改善を認めている。mRSは変化が無かった(表8)。
【0172】
【0173】
(実施例9:投与針の通過領域の決定)
本実施例では、事前に脳MRIを用いて脳表の太い静脈を確認し針の通過の際に同部位を貫通することが無いように策定した。また一旦脳内に針を刺入した場合以後は脳溝に出ない様な通路を選んだ(脳溝に出ることによって脳の表面を走っている細い静脈や動脈を傷つける恐れがある)。この手法は、手術の方法として記載できるほか、プログラムとしても記載可能である。
【0174】
その手順は以下のとおりである。
【0175】
MRIのFLAIR画像、T2画像、およびガドリニウム増強T1画像を用いて、細胞投与ルートを決定する。
【0176】
皮膚は既に切開されている場合、基本的にはその切開を利用する。狙う穿頭孔(Burr hole)が、以前の皮膚の切開線からかなりずれている場合、皮膚を長く切開してGaleaを剥がすことで対応する。
【0177】
皮膚の切開部位は、Medtronic社のナビ計算システムFlameLinkにMRI画像を取り込み、皮膚の陥凹として確認する。
【0178】
術後の感染を防ぐため、可能な場合は、人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物がある場所を投与ルートから除外する。
【0179】
刺入点が機能性部位と重ならないように、穿頭孔を選択する。
【0180】
脳が萎縮していてかなり落ち込んでいる(5mmほど)場合は、硬膜を切開しても脳までの距離が遠く事故の原因となり得るので、脳表が骨直下にある部位(脳回の頂点)を投与ルートとして選択する。
【0181】
穿頭孔の位置を正中線(midline)近くとする場合、上矢状静脈洞(SSS)に灌流する太い静脈が存在する(場合によっては静脈湖(Venous lake)となっている)可能性があるため、事前にFlameLinkで硬膜切開部位周囲に太い静脈がない事を確認する。
【0182】
脳溝に出ると脳表を走っている比較的太い血管を傷つける恐れがあるため、穿頭孔直下で脳実質に入り、以後目標とする投与位置まで脳溝に出ないような投与ルートを選択する。投与ルートの確認として、FLAIR/T2画像で脳内を進む針が脳溝に出ていない事の確認、ガドリニウム画像で太い脳内の血管および脳溝周囲の血管に接触していないことの確認を行う。
【0183】
(実施例10:投与針の通過領域の決定例)
MRIのFLAIR画像、T2画像、およびガドリニウム増強T1画像を用いて、細胞投与ルートを決定した。皮膚は以前に切開されているため、その切開を利用した穿頭孔となるようルートを決定した。Medtronic社のナビ計算システムFlameLinkにMRI画像を取り込むことで、皮膚の切開部位を皮膚の陥凹として確認し、脳表が骨直下にある部位(脳回の頂点)であり、かつ刺入点が機能性部位と重ならないよう投与ルートとして選択した。投与ルート決定後、FLAIR/T2画像を用いて脳内を進む針が脳溝に出ていない事を、ガドリニウム画像を用いて太い脳内の血管および脳溝周囲の血管に接触していないことを確認した。
(結果)
投与全例で脳内出血等の合併症を認めなかった。
【0184】
(実施例11:髄液漏れを防ぐ方法)
本実施例では、脳の表面に存在するくも膜を切開すると脳内の髄液が流出する。脳は髄液の中に浮いている様に存在するため、時間が経過した際には脳の位置がずれるbrain shift (sinking)が生じる。これを防ぐためにくも膜を切開する前に、穿刺開始予定部位の脳表のくも膜と軟膜をバイポーラー凝固鑷子などの電気外科器具を用いて凝固接着させる方法がある。これにより針を挿入している際にも脳のずれを防ぐことが出来る。これは特に複数回の穿刺を必要とする場合において特に重要である。
【0185】
その手順は以下のとおりである。
【0186】
くも膜が白濁するまで凝固させ、脳軟膜と接着させた。
【0187】
くも膜と軟膜を接着させた状態でくも膜を切開しても髄液漏出は起きず、当初予定された部位に細胞を投与することが出来た。brain shift (sinking)も生じなかった。
【0188】
(実施例12:細胞投与位置を決定するためのプログラム例1)
本実施例では、プログラムを用いた細胞投与位置の決定を実施する。
【0189】
脳梗塞を有する患者の脳のMRI画像を撮像し、撮像したMRI画像についてDWI、T2、FLAIRおよびDTIの画像をプログラムに取り込ませる。
【0190】
プログラムは以下のステップを行い、細胞の投与部位を決定する。
・事前に取り込ませた、細胞の投与に際し安全性の高い、出血やアレルギー反応を起こしても障害が少ない場所(一般的に脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位以外)を細胞投与安全領域として示す。
・DWI画像において白く映る部分を、細胞投与不可領域として示す。
・脳表から2cm以内の領域を、細胞投与不可領域として示す。
・T2画像、FLAIR画像において、浮腫が強く出ている部位(A)信号強度をプロットしたFLAIR画像において高信号の部位、およびB)信号強度をプロットしたT2強調画像において、高信号の部位のうちの両方を満たす部位)を、細胞投与不可領域として示す。
・DTI画像において、目的領域(Region of Interest;ROI)として中心前回、内包後脚および橋を選択して、運動線維を描出させ、運動線維の走行データが他の部位より低い部分(FA値(fractional anisotropy value)が少なくとも50%以上低い部分)を障害位置として特定する。
・運動線維部位を除く、特定した障害位置を中心に半径1.5cmの領域かつ細胞投与安全領域であり、細胞投与不可領域を除く領域を、細胞投与候補位置として示す。
【0191】
(実施例13:細胞投与位置を決定するためのプログラム例2)
本実施例では、脳における損傷ダメージが大きい場合の、プログラムを用いた細胞投与位置の決定を実施する。
【0192】
脳梗塞を有する患者の脳のMRI画像を撮像し、撮像したMRI画像についてDWI、T2、FLAIRおよびDTIを測定する。測定により得られる画像をプログラムに取り込ませる。
【0193】
プログラムは以下のステップを行い、細胞の投与部位を決定する。
・事前に取り込ませた、細胞の投与に際し安全性の高い、出血やアレルギー反応を起こしても障害が少ない場所(一般的にAVMでeloquent areaと呼ばれる部位以外)を細胞投与安全領域として示す。
・DWI画像において白く映る部分を、細胞投与不可領域として示す。
・脳表から2cm以内の領域を、細胞投与不可領域として示す。
・T2画像、FLAIR画像において、浮腫が強く出ている部位(A)信号強度をプロットしたFLAIR画像において高信号の部位、およびB)信号強度をプロットしたT2強調画像において、高信号の部位のうちの両方を満たす部位)を、細胞投与不可領域として示す。
・脳における損傷ダメージが大きく、ROIとして中心前回、内包後脚および橋を選択しても、中心前回、内包後脚、橋の単独にしても運動線維を描出できない場合、対側の健常な運得神経を参考に神経線維の走行を推定する。急性期のDWI画像において高信号と示される損傷部位、または慢性期にT2/FLAIR画像において低信号と示される損傷部位と推定されるトラクトグラフィーの通過点が重なる部位を運動線維が断裂している箇所と推定する。
・運動線維部位を除く、特定した障害位置を中心に半径1.5cmの領域かつ細胞投与安全領域であり、細胞投与不可領域を除く領域を、細胞投与候補位置として示す。
【0194】
(実施例14:細胞投与位置を決定するためのプログラム例3)
本実施例では、プログラムを用いた細胞投与位置を決定する。
【0195】
脳梗塞を有する患者の脳のMRI画像を撮像し、撮像したMRI画像についてDWI、T2、FLAIRおよびDTIを測定する。測定により得られる画像をプログラムに取り込ませる。
【0196】
プログラムは以下のステップを行い、細胞の投与部位を決定する。
・事前に取り込ませた、細胞の投与に際し安全性の高い、出血やアレルギー反応を起こしても障害が少ない場所(一般的にAVMでeloquent areaと呼ばれる部位以外)を細胞投与安全領域として示す。
・患者が外傷・脳出血の急性期の場合、CTで高信号(ハンスフィールドユニットで少なくとも50以上)の領域を、細胞投与不可領域として示す。
・脳表から2cm以内の領域を、細胞投与不可領域として示す。
・T2画像、FLAIR画像において、浮腫が強く出ている部位を、細胞投与不可領域として示す。
・DTI画像において、目的領域(Region of Interest;ROI)として中心前回、内包後脚および橋を選択して、運動線維を描出させ、運動線維の走行データが他の部位より低い部分(FA値が少なくとも50%以上低い部分)を障害位置として特定する。
・運動線維部位を除く、特定した障害位置を中心に半径1.5cmの領域かつ細胞投与安全領域であり、細胞投与不可領域を除く領域を、細胞投与候補位置として示す。
【0197】
(実施例15:細胞投与位置を決定するためのプログラム例4)
本実施例では、脳における損傷ダメージが大きい場合の、プログラムを用いた細胞投与位置の決定を実施する。
【0198】
脳梗塞を有する患者の脳のMRI画像を撮像し、撮像したMRI画像についてDWI、T2、FLAIRおよびDTIを測定する。測定により得られる画像をプログラムに取り込ませる。
【0199】
プログラムは以下のステップを行い、細胞の投与部位を決定する。
・事前に取り込ませた、細胞の投与に際し安全性の高い、出血やアレルギー反応を起こしても障害が少ない場所(一般的にAVMでeloquent areaと呼ばれる部位以外)を細胞投与安全領域として示す。
・患者が外傷・脳出血の急性期の場合、CTで高信号の領域を、細胞投与不可領域として示す。
・脳表から2cm以内の領域を、細胞投与不可領域として示す。
・T2画像、FLAIR画像において、浮腫が強く出ている部位を、細胞投与不可領域として示す。
・脳における損傷ダメージが大きく、ROIとして中心前回、内包後脚および橋を選択しても、中心前回、内包後脚、橋の単独にしても運動線維を描出できない場合、対側の健常な運得神経を参考に神経線維の走行を推定する。
・運動線維部位を除く、特定した障害位置を中心に半径1.5cmの領域かつ細胞投与安全領域であり、細胞投与不可領域を除く領域を、細胞投与候補位置として示す。
【0200】
(実施例16:細胞投与位置を決定するためのプログラム例5)
本実施例では、プログラムを用いた細胞投与位置の決定を実施する。
【0201】
脳梗塞を有する患者の脳のMRI画像を撮像し、撮像したMRI画像についてDWI、T2、FLAIRおよびDTIを測定する。測定により得られる画像をプログラムに取り込ませる。
【0202】
プログラムは以下のステップを行い、細胞の投与部位を決定する。
・事前に取り込ませた、細胞の投与に際し安全性の高い、出血やアレルギー反応を起こしても障害が少ない場所(一般的にAVMでeloquent areaと呼ばれる部位以外)を細胞投与安全領域として示す。
・患者が脳梗塞慢性期または外傷・脳出血の慢性期の場合、A)信号強度をプロットしたFLAIR画像において高信号の部位、およびB)信号強度をプロットしたT2強調画像において、高信号の部位のうちの両方を満たす領域を、細胞投与不可領域として示す。
・脳表から2cm以内の領域を、細胞投与不可領域として示す。
・T2画像、FLAIR画像において、浮腫が強く出ている部位を、細胞投与不可領域として示す。
・DTI画像において、目的領域(Region of Interest;ROI)として中心前回、内包後脚および橋を選択して、運動線維を描出させ、運動線維の走行データが他の部位より低い部分(FA値が少なくとも50%以上低い部分)を障害位置として特定する。
・運動線維部位を除く、特定した障害位置を中心に半径1.5cmの領域かつ細胞投与安全領域であり、細胞投与不可領域を除く領域を、細胞投与候補位置として示す。
【0203】
(実施例17:細胞投与位置を決定するためのプログラム例6)
本実施例では、脳における損傷ダメージが大きい場合の、プログラムを用いた細胞投与位置の決定を実施する。
【0204】
脳梗塞を有する患者の脳のMRI画像を撮像し、撮像したMRI画像についてDWI、T2、FLAIRおよびDTIを測定する。測定により得られる画像をプログラムに取り込ませる。
【0205】
プログラムは以下のステップを行い、細胞の投与部位を決定する。
・事前に取り込ませた、細胞の投与に際し安全性の高い、出血やアレルギー反応を起こしても障害が少ない場所(一般的にAVMでeloquent areaと呼ばれる部位以外)を細胞投与安全領域として示す。
・患者が脳梗塞慢性期または外傷・脳出血の慢性期の場合、T2/FLAIRで高信号の領域を、細胞投与不可領域として示す。
・脳表から2cm以内の領域を、細胞投与不可領域として示す。
・T2画像、FLAIR画像において、浮腫が強く出ている部位を、細胞投与不可領域として示す。
・脳における損傷ダメージが大きく、ROIとして中心前回、内包後脚および橋を選択しても、中心前回、内包後脚、橋の単独にしても運動線維を描出できない場合、対側の健常な運得線維を参考に神経線維の走行を推定する。
・運動線維部位を除く、特定した障害位置を中心に半径1.5cmの領域かつ細胞投与安全領域であり、細胞投与不可領域を除く領域を、細胞投与候補位置として示す。
【0206】
(実施例18:細胞投与経路を決定するためのプログラム例1)
本実施例では、細胞投与候補位置の1つを選択した後、プログラムを用いた細胞の投与経路の決定を行う。
【0207】
脳梗塞を有する患者の脳のMRI画像を撮像し、撮像したMRI画像についてガドリニウム増強T1、T2、FLAIRおよびDTIの画像をプログラムに取り込ませる。
【0208】
プログラムは以下のステップを行い、細胞の投与経路を決定する。
・皮膚直下の脳表と頭蓋骨との距離に応じて、以下のように脳の領域を分類する。
【0209】
安全(推奨)範囲:脳表と頭蓋骨との距離が5mm未満である。
【0210】
投与可能範囲:脳表と頭蓋骨との距離が5mm以上、10mm未満である。
【0211】
投与不可能範囲:脳表と頭蓋骨との距離が10mm以上離れている。
・eloquent areaが直下にある皮膚の領域を刺入不可領域として示す。
・ガドリニウム増強T1画像において、直下に太い静脈がある皮膚領域を刺入不可領域として示す。
・人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物がある場所を投与不可部位として示す。
・FLAIR/T2画像において、脳溝領域(A)信号強度をプロットしたFLAIR画像において、低信号の領域、およびB)信号強度をプロットしたT2強調画像において、高信号の領域の両方を満たす領域)を投与不可領域として示す。
・脳溝と針との距離に応じて、以下のように脳の領域を分類する。
【0212】
安全(推奨)範囲:脳溝と針との距離が5mm以上離れている。
【0213】
投与可能範囲:脳溝と針との距離が1mm以上、5mm未満である。
【0214】
投与不可能範囲:脳溝と針との距離が1mm未満(針が脳溝を貫通する場合を含む)である。
・ガドリニウム増強T1画像において、針と太い脳内の血管との距離に応じて、以下のように脳の領域を分類する。
【0215】
安全(推奨)範囲:針と太い脳内の血管との距離が5mm以上離れている。
【0216】
投与可能範囲:針と太い脳内の血管との距離が1mm以上、5mm未満である。
【0217】
投与不可能範囲:針と太い脳内の血管との距離が1mm未満(針が血管を貫通する場合を含む)である。
・細胞投与候補位置と、刺入推奨領域とを結ぶ直線経路の内、脳表と頭蓋骨との距離との距離が安全(推奨)範囲内であり、脳溝と針との距離が安全(推奨)範囲内であり、針と太い脳内の血管との距離が安全(推奨)範囲であり、投与不可部位/領域を通過しない経路を優先的に示す。
【0218】
(実施例19:細胞投与経路を決定するためのプログラム例2)
本実施例では、細胞投与候補位置の1つを選択した後、プログラムを用いた細胞の投与経路の決定を行う。
【0219】
脳梗塞を有する患者の脳のMRI画像を撮像し、撮像したMRI画像についてガドリニウム増強T1、T2、FLAIRおよびDTIの画像をプログラムに取り込ませる。
【0220】
プログラムは以下のステップを行い、細胞の投与経路を決定する。
・皮膚直下の脳表と頭蓋骨との距離が5mm未満であり、皮膚直下が脳回の頂点である皮膚領域を刺入推奨領域として示す。
・eloquent areaが直下にある皮膚の領域を刺入不可領域として示す。
・ガドリニウム増強T1画像において、直下に太い静脈がある皮膚領域を刺入不可領域として示す。
・以前の皮膚切開部位を、MRI画像において皮膚の陥凹として示し、次いで、以前の切開創上の領域を切開推奨領域、以前の切開創から3cm未満の領域を切開可能領域、以前の切開創から3cm以上離れた領域を切開不可領域として示す。
・人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物がある場所を投与不可部位として示す。
・FLAIR/T2画像において、脳溝領域を投与不可領域として示す。
・ガドリニウム増強T1画像において、太い脳内の血管および脳溝の血管から1mm以内の領域を投与不可領域と示す。
・細胞投与候補位置と、刺入推奨領域かつ切開推奨領域である領域とを結ぶ直線経路の内、脳表と頭蓋骨との距離との距離が安全(推奨)範囲内であり、脳溝と針との距離が安全(推奨)範囲内であり、針と太い脳内の血管との距離が安全(推奨)範囲であり、投与不可部位/領域を通過しない経路を優先的に示す。
【0221】
(実施例20:髄液漏れを防止するためのシステムの例1)
本実施例では、くも膜の白濁度合いを指標として、髄液漏れを防止するためのシステムを開示する。
【0222】
本システムを、くも膜の焼灼におけるくも膜の白濁度合いの判断のときに使用することができる。本システムは、くも膜の状態を画像として得るカメラ部分と、カメラ部分から得たくも膜画像の白濁度合いを判断する判断部分からなる。カメラ部分から得た焼灼中のくも膜の画像は、判断部分へと送信される。判断部分は、焼灼中のくも膜の画像を受信すると、焼灼前のくも膜の画像と比較する。焼灼前のくも膜の画像において認められる血管が、焼灼中のくも膜の画像において認められなくなった場合、判断部分は焼灼を止めるための警告を示す。
【0223】
(実施例21:髄液漏れを防止するためのシステムの例2)
本実施例では、焼灼の時間およびバイポーラーの出力を指標として、髄液漏れを防止するためのシステムを開示する。
【0224】
本システムに、バイポーラーの出力および焼灼予定領域の面積を入力すると、焼灼に必要な時間が予測される。本システムは、焼灼を開始して予想焼灼時間経過後に焼灼を止めるための警告を示す。
(実施例22:細胞投与位置に基づく細胞治療の悪影響の発生確率の予測例)
(1)対象患者
脳梗塞の患者を対象とする。
(2)MRI画像撮影
それぞれの患者について、亜急性期及び慢性期に相当する時期に、脳のMRI画像を撮影する。撮影はMRI装置(3T Achieva TX(Philips Medical Systems))をデフォルトの設定(b= 0, 1000 s mm-2,
TR/TE = 5032/ 85 msec, NEX = 1, voxel size =3 x 3 x 3 mm3, no. of slices = 43, 32 diffusion gradient directions)で用いて行う。
(3)MRI画像解析
撮影したMRI画像に基づき、脳表との距離、脳内の障害位置との距離、浮腫領域との距離、および脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位以外であるかどうかの点を評価し、細胞の投与位置を決定する。
(4)骨髄幹細胞の調製及び投与
症例登録後、速やかに患者の骨髄を採取し、北海道大学病院臨床研究開発センター細胞プロセッシング室において細胞培養および骨髄幹細胞の調製を施行する。調製した骨髄幹細胞(2000万個又は5000万個/患者)を、骨髄採取の3~5週後に患者の脳内に直接投与する。
(5)悪影響評価
投与後の患者に細胞治療に起因する悪影響(運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または失血など)が無いか評価する。
(6)結果
脳表との距離、脳内の障害位置との距離、浮腫領域との距離、および脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位以外であるかどうかの点と、細胞治療の悪影響の発生確率とが相関することがわかり、これらの結果を表示することにより、当業者は、自己の採用すべき投与位置について最適な決定を下すための助けとすることができる。
(実施例23:細胞投与経路に基づく細胞治療の悪影響の発生確率の予測例)
(1)対象患者
脳梗塞の患者を対象とする。
(2)MRI画像撮影
それぞれの患者について、亜急性期及び慢性期に相当する時期に、脳のMRI画像を撮影する。撮影はMRI装置(3T Achieva TX(Philips Medical Systems))をデフォルトの設定(b= 0, 1000 s mm-2,
TR/TE = 5032/ 85 msec, NEX = 1, voxel size =3 x 3 x 3 mm3, no. of slices = 43, 32 diffusion gradient directions)で用いて行う。
(3)MRI画像解析
撮影したMRI画像に基づき、投与針が通過する皮膚直下の脳表と頭蓋骨との距離、投与針の刺入点の直下がeloquent areaであるかどうか、投与針の刺入点の直下に太い静脈があるかどうか、投与針が人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物を通過するかどうか、脳溝と投与針との距離、および投与針と太い脳内の血管との距離について評価し、細胞投与経路を決定する。
(4)骨髄幹細胞の調製及び投与
症例登録後、速やかに患者の骨髄を採取し、北海道大学病院臨床研究開発センター細胞プロセッシング室において細胞培養および骨髄幹細胞の調製を施行する。調製した骨髄幹細胞(2000万個又は5000万個/患者)を、骨髄採取の3~5週後に患者の脳内に直接投与する。
(5)悪影響評価
投与後の患者に細胞治療に起因する悪影響(運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または失血など)が無いか評価する。
(6)結果
投与針が通過する皮膚直下の脳表と頭蓋骨との距離、投与針の刺入点の直下がeloquent areaであるかどうか、投与針の刺入点の直下に太い静脈があるかどうか、投与針が人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物を通過するかどうか、脳溝と投与針との距離、および投与針と太い脳内の血管との距離の点と、細胞治療の悪影響の発生確率とが相関することがわかり、これらの結果を表示することにより、当業者は、自己の採用すべき投与経路について最適な決定を下すための助けとすることができる。
(実施例24:細胞投与位置およびその細胞投与位置に投与するための細胞投与経路に基づく細胞治療の悪影響の発生確率の予測例)
(1)対象患者 脳梗塞の患者を対象とする。
(2)MRI画像撮影
それぞれの患者について、亜急性期及び慢性期に相当する時期に、脳のMRI画像を撮影する。撮影はMRI装置(3T Achieva TX(Philips Medical Systems))をデフォルトの設定(b= 0, 1000 s mm-2,
TR/TE = 5032/ 85 msec, NEX = 1, voxel size =3 x 3 x 3 mm3, no. of slices = 43, 32 diffusion gradient directions)で用いて行う。
(3)MRI画像解析
撮影したMRI画像に基づき、脳表との距離、脳内の障害位置との距離、浮腫領域との距離、および脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位以外であるかどうかの点を評価し、細胞の投与位置を決定し、投与針が通過する皮膚直下の脳表と頭蓋骨との距離、投与針の刺入点の直下がeloquent areaであるかどうか、投与針の刺入点の直下に太い静脈があるかどうか、投与針が人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物を通過するかどうか、脳溝と投与針との距離、および投与針と太い脳内の血管との距離について評価し、細胞投与経路を決定する。
(4)骨髄幹細胞の調製及び投与
症例登録後、速やかに患者の骨髄を採取し、北海道大学病院臨床研究開発センター細胞プロセッシング室において細胞培養および骨髄幹細胞の調製を施行する。調製した骨髄幹細胞(2000万個又は5000万個/患者)を、骨髄採取の3~5週後に患者の脳内に直接投与する。
(5)悪影響評価
投与後の患者に細胞治療に起因する悪影響(運動機能、感覚機能、言語機能もしくは視覚に対する悪影響または失血など)が無いか評価する。
(6)結果
脳表との距離、脳内の障害位置との距離、浮腫領域との距離、および脳動静脈奇形(AVM)でeloquent areaと呼ばれる部位以外であるかどうかの点ならびに投与針が通過する皮膚直下の脳表と頭蓋骨との距離、投与針の刺入点の直下がeloquent areaであるかどうか、投与針の刺入点の直下に太い静脈があるかどうか、投与針が人工骨、人工硬膜またはチタンプレートなどの人工物を通過するかどうか、脳溝と投与針との距離、および投与針と太い脳内の血管との距離の点と、細胞治療の悪影響の発生確率とが相関することがわかり、これらの結果を表示することにより、当業者は、自己の採用すべき投与位置および経路について最適な決定を下すための助けとすることができる。
【0225】
(注記)
以上のように、本開示の好ましい実施形態を用いて本開示を例示してきたが、本開示は、特許請求の範囲によってのみ、その範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および他の文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様に、その内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。本出願は、日本国特許庁に、2019年12月27日に出願された特願2019-239560に対する優先権主張を伴うものであり、その内容は、その全体が本願において参考として援用される。
【産業上の利用可能性】
【0226】
本開示は、脳の細胞療法を成功裏に導くための種々の手法が提供され、医療技術や医療機器産業における利用可能性が見いだされる。