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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】焼結鉱破砕用歯の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 19/00 20060101AFI20220127BHJP
   F27B 21/12 20060101ALI20220127BHJP
   F27D 15/02 20060101ALI20220127BHJP
   C22B 1/20 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
B22D19/00
B22D19/00 P
B22D19/00 W
F27B21/12
F27D15/02 Z
C22B1/20 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021546785
(86)(22)【出願日】2021-04-01
(86)【国際出願番号】 JP2021014209
【審査請求日】2021-08-20
(31)【優先権主張番号】P 2020066006
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591209280
【氏名又は名称】株式会社フジコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(72)【発明者】
【氏名】花田 喜嗣
(72)【発明者】
【氏名】永吉 英昭
【審査官】藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-007773(JP,U)
【文献】実開昭58-183245(JP,U)
【文献】特開昭64-034567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 19/00-19/16
B02C 1/00-7/18,
15/00-17/24
B02C 13/00-13/31,
18/00-18/38
C22B 1/20
F27B 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結鉱破砕機に供給される焼結鉱を破砕する焼結鉱破砕用の歯であって、該焼結鉱破砕用の歯が、長尺の歯本体部と、該歯本体部の長さ方向に沿って該歯本体部と一体に構成される芯材と、該芯材を囲うように成形され前記焼結鉱と接触する耐摩耗層からなる破砕部と、を備えた焼結鉱破砕用歯の製造方法において、
a)前記芯材を、その長さ方向が鉛直方向となるように立設配置する工程と、
b)前記芯材の最下部領域を囲んで前記耐摩耗層の形状に対応した空洞部Aを前記芯材との間に形成する型枠Aを配置する工程と、
c)前記空洞部Aへの溶湯供給と該溶湯の前記空洞部Aからの排出を連続的に行い、溶湯を前記芯材と接触させることにより、前記芯材の表層部を軟化状態もしくは溶融状態とし、溶湯を前記芯材に溶着させる工程と、
d)溶湯を前記空洞部Aに充填して部分耐摩耗層を成形する工程と、
e)成形した前記部分耐摩耗層の上側領域を含めて前記芯材の次の対象領域を囲んで前記耐摩耗層の形状に対応した空洞部Bを前記芯材との間に形成する型枠Bを配置する工程と、
f)前記空洞部Bに溶湯を供給して、前記部分耐摩耗層に発生した引け巣を含む欠陥を消失させながら凝固させる工程と、
g)前記空洞部Bへの溶湯の供給と該溶湯の前記空洞部Bからの排出を連続的に行い、溶湯を前記芯材と接触させることにより、前記芯材の表層部を軟化状態もしくは溶融状態とし、溶湯を前記芯材に溶着させる工程と、
h)溶湯を前記空洞部Bに充填して新たな部分耐摩耗層を成形する工程と、を有し、
以後、前記e)から前記h)までの各工程を、前記芯材の長さ方向に渡って複数回行い、前記耐摩耗層を形成することを特徴とする焼結鉱破砕用歯の製造方法。
【請求項2】
焼結鉱破砕機に供給される焼結鉱を破砕する焼結鉱破砕用の歯であって、該焼結鉱破砕用の歯が、長尺の歯本体部と、該歯本体部の長さ方向に沿って該歯本体部と一体に構成される芯材と、該芯材を囲うように成形され前記焼結鉱と接触する耐摩耗層からなる破砕部と、を備えた焼結鉱破砕用歯の製造方法において、
前記芯材を、成形する前記焼結鉱破砕用の歯の長さ方向に分割されて、最下部に配置される分割芯材Aと、該分割芯材Aの上側に鉛直方向に載置される複数の分割芯材Bで構成し、
a)前記分割芯材Aを最下部に配置される型枠Aの内側面に接して配置して、前記耐摩耗層の形状に対応した空洞部Aを前記分割芯材Aと前記型枠Aとの間に形成する工程と、
b)前記空洞部Aへの溶湯供給と該溶湯の前記空洞部Aからの排出を連続的に行い、溶湯を前記分割芯材と接触させることにより、前記分割芯材Aの表層部を軟化状態もしくは溶融状態とし、溶湯を前記分割芯材Aに溶着させる工程と、
c)溶湯を前記空洞部Aに充填して部分耐摩耗層を成形する工程と、
d)前記分割芯材Bを囲み前記分割芯材Bが内側面に接する型枠Bを配置して、前記耐摩耗層の形状に対応して前記分割芯材Bと前記型枠Bとの間に形成される空洞部Bを、前記部分耐摩耗層の上側に位置させる工程と、
e)前記空洞部Bに溶湯を供給して、前記部分耐摩耗層に発生した引け巣を含む欠陥を消失させながら凝固させる工程と、
f)前記空洞部Bへの溶湯の供給と該溶湯の前記空洞部Bからの排出を連続的に行い、溶湯を前記分割芯材Bと接触させることにより、前記分割芯材Bの表層部を軟化状態もしくは溶融状態とし、溶湯を前記分割芯材Bに溶着させる工程と、
g)溶湯を前記空洞部Bに充填して新たな部分耐摩耗層を成形する工程と、を有し、
以後、前記d)から前記g)までの各工程を、前記芯材の長さ方向に渡って複数回行い、前記耐摩耗層を形成することを特徴とする焼結鉱破砕用歯の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の焼結鉱破砕用歯の製造方法において、前記d)から前記g)までの各工程を複数回行って前記耐摩耗層を形成した後、前記分割芯材A、Bで構成される前記芯材、及び、前記芯材に形成された前記耐摩耗層から、前記型枠A、Bを取外し、長さ方向に隣り合う前記分割芯材A、B同士を溶接により一体的に接合することを特徴とする焼結鉱破砕用歯の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の焼結鉱破砕用歯の製造方法において、前記型枠A、Bには、溶湯の排出口が前記芯材の長さ方向に渡って複数形成され、該各排出口の開閉により、前記空洞部A、Bへの溶湯の供給と前記空洞部A、Bからの溶湯の排出を連続的に行って前記芯材の表層部を軟化状態もしくは溶融状態とした後、前記部分耐摩耗層を成形することを特徴とする焼結鉱破砕用歯の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の焼結鉱破砕用歯の製造方法において、予め前記芯材の表面に凹凸処理を施すことを特徴とする焼結鉱破砕用歯の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の焼結鉱破砕用歯の製造方法において、前記凹凸処理を施した前記芯材の表面に、前記耐摩耗層が溶着し易くなるように溶着促進剤を塗布することを特徴とする焼結鉱破砕用歯の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の焼結鉱破砕用歯の製造方法において、前記焼結鉱破砕機は、間隔を有して配置された複数の受歯を備えた固定歯と、該固定歯の上方に配置された回転軸に放射状に突設され、該回転軸の回転により隣り合う前記受歯の間に進入する複数の鬼歯を備えた回転歯とを有し、製造する前記焼結鉱破砕用の歯が前記受歯であることを特徴とする焼結鉱破砕用歯の製造方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の焼結鉱破砕用歯の製造方法において、前記焼結鉱破砕機は、間隔を有して配置された複数の受歯を備えた固定歯と、該固定歯の上方に配置された回転軸に放射状に突設され、該回転軸の回転により隣り合う前記受歯の間に進入する複数の鬼歯を備えた回転歯とを有し、製造する前記焼結鉱破砕用の歯が前記鬼歯であることを特徴とする焼結鉱破砕用歯の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結機で製造された高温の焼結鉱を破砕する焼結鉱破砕機に用いられる焼結鉱破砕用歯の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉で使用される焼結鉱は、図5に示すように、無端ベルト状に連結され、一方向に移動する複数のパレット80を備えた焼結機81により、焼結原料を焼成することで製造されている。なお、焼結機81で製造された焼結鉱は、排鉱部に位置するパレット80から排出された後、排鉱部付近に設けられた焼結鉱破砕機(以下、単に破砕機とも記載)82により所定の粒度に破砕されて、高炉に供給される。
この破砕機82は、間隔を有して並設された複数の受歯83を備えた固定歯84と、固定歯84の上方に配置された回転軸85に突設された複数の鬼歯86を備えた回転歯87とを有し、固定歯84上の焼結鉱を、複数の受歯83と、回転軸87の回転により隣り合う受歯83間に進入する鬼歯86とで破砕するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このように、破砕機81は高温の焼結鉱を破砕するものであるため、図6(A)、(B)に示すように、受歯83の破砕部側(使用にあっては上側)には、その長さ方向(長手方向、長尺方向)に渡って耐摩耗層88が形成されている(鬼歯も同様)。
この耐摩耗層88は、例えば、肉盛鋳掛技術により製造され、具体的には、歯本体89の表面に予め鋼製の格子90を溶接して小ブロックを形成し、この小ブロックの格子90内に所要成分の粒状やワイヤー状の溶接材料からなる硬化材を注入してカーボン電極のアーク熱で溶融させ、あるいは、格子90内に白銑鉄の溶湯を徐々に鋳込みながらカーボン電極のアーク熱で溶融させ、歯本体89に融合させることで形成されている。このように、格子90を形成して鋳掛ける(肉盛溶接する)ことで、耐摩耗層88のひび割れの進展や肉厚影響による剥離を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平4-9433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した技術では、耐摩耗層88に引け巣やブローホールが発生し、また、格子90と耐摩耗層88の間に未溶着箇所が発生する等の不良や欠陥が生じ、これらの欠陥箇所が欠落ち、脱落してしまう。
このため、耐摩耗層88の摩耗や欠損が(特に、図6(B)に示す長さ方向中央部、及び、長さ方向に直交する幅方向両側部に)生じ易くなり、更なる長寿命化が求められていた。また、硬化材を格子90のマス目ごとに鋳掛けるため、鋳掛箇所が多く製造に時間を要し、更に、高い熟練度を備えた鋳掛作業者が必要となり、大量生産しづらかった。
なお、耐摩耗層の形成にはカーボン電極のアーク熱を用いることから、大きな電力が必要となり、製造コストがかかっていた。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、従来よりも耐摩耗性の向上が図れ、しかも、作業性よく経済的に製造可能な焼結鉱破砕用歯の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
【0008】
前記目的に沿う第1の発明に係る焼結鉱破砕用歯の製造方法は、焼結鉱破砕機に供給される焼結鉱を破砕する焼結鉱破砕用の歯であって、該焼結鉱破砕用の歯が、長尺の歯本体部と、該歯本体部の長さ方向に沿って該歯本体部と一体に構成される芯材と、該芯材を囲うように成形され前記焼結鉱と接触する耐摩耗層からなる破砕部と、を備えた焼結鉱破砕用歯の製造方法において、
a)前記芯材を、その長さ方向が鉛直方向となるように立設配置する工程と、
b)前記芯材の最下部領域を囲んで前記耐摩耗層の形状に対応した空洞部Aを前記芯材との間に形成する型枠Aを配置する工程と、
c)前記空洞部Aへの溶湯供給と該溶湯の前記空洞部Aからの排出を連続的に行い、溶湯を前記芯材と接触させることにより、前記芯材の表層部を軟化状態もしくは溶融状態とし、溶湯を前記芯材に溶着させる工程と、
d)溶湯を前記空洞部Aに充填して部分耐摩耗層を成形する工程と、
e)成形した前記部分耐摩耗層の上側領域を含めて前記芯材の次の対象領域を囲んで前記耐摩耗層の形状に対応した空洞部Bを前記芯材との間に形成する型枠Bを配置する工程と、
f)前記空洞部Bに溶湯を供給して、前記部分耐摩耗層に発生した引け巣を含む欠陥を消失させながら凝固させる工程と、
g)前記空洞部Bへの溶湯の供給と該溶湯の前記空洞部Bからの排出を連続的に行い、溶湯を前記芯材と接触させることにより、前記芯材の表層部を軟化状態もしくは溶融状態とし、溶湯を前記芯材に溶着させる工程と、
h)溶湯を前記空洞部Bに充填して新たな部分耐摩耗層を成形する工程と、を有し、
以後、前記e)から前記h)までの各工程を、前記芯材の長さ方向に渡って複数回行い、前記耐摩耗層を形成する。
前記目的に沿う第2の発明に係る焼結鉱破砕用歯の製造方法は、焼結鉱破砕機に供給される焼結鉱を破砕する焼結鉱破砕用の歯であって、該焼結鉱破砕用の歯が、長尺の歯本体部と、該歯本体部の長さ方向に沿って該歯本体部と一体に構成される芯材と、該芯材を囲うように成形され前記焼結鉱と接触する耐摩耗層からなる破砕部と、を備えた焼結鉱破砕用歯の製造方法において、
前記芯材を、成形する前記焼結鉱破砕用の歯の長さ方向に分割されて、最下部に配置される分割芯材Aと、該分割芯材Aの上側に鉛直方向に載置される複数の分割芯材Bで構成し、
a)前記分割芯材Aを最下部に配置される型枠Aの内側面に接して配置して、前記耐摩耗層の形状に対応した空洞部Aを前記分割芯材Aと前記型枠Aとの間に形成する工程と、
b)前記空洞部Aへの溶湯供給と該溶湯の前記空洞部Aからの排出を連続的に行い、溶湯を前記分割芯材と接触させることにより、前記分割芯材Aの表層部を軟化状態もしくは溶融状態とし、溶湯を前記分割芯材Aに溶着させる工程と、
c)溶湯を前記空洞部Aに充填して部分耐摩耗層を成形する工程と、
d)前記分割芯材Bを囲み前記分割芯材Bが内側面に接する型枠Bを配置して、前記耐摩耗層の形状に対応して前記分割芯材Bと前記型枠Bとの間に形成される空洞部Bを、前記部分耐摩耗層の上側に位置させる工程と、
e)前記空洞部Bに溶湯を供給して、前記部分耐摩耗層に発生した引け巣を含む欠陥を消失させながら凝固させる工程と、
f)前記空洞部Bへの溶湯の供給と該溶湯の前記空洞部Bからの排出を連続的に行い、溶湯を前記分割芯材Bと接触させることにより、前記分割芯材Bの表層部を軟化状態もしくは溶融状態とし、溶湯を前記分割芯材Bに溶着させる工程と、
g)溶湯を前記空洞部Bに充填して新たな部分耐摩耗層を成形する工程と、を有し、
以後、前記d)から前記g)までの各工程を、前記芯材の長さ方向に渡って複数回行い、前記耐摩耗層を形成する。
【0009】
第1、第2の発明に係る焼結鉱破砕用歯の製造方法において、前記型枠A、Bには、溶湯の排出口が前記芯材の長さ方向に渡って複数形成され、該各排出口の開閉により、前記空洞部A、Bへの溶湯の供給と前記空洞部A、Bからの溶湯の排出を連続的に行って前記芯材の表層部を軟化状態もしくは溶融状態とした後、前記部分耐摩耗層を成形することができる。
【0010】
本発明に係る焼結鉱破砕用歯の製造方法において、前記焼結鉱破砕機は、間隔を有して配置された複数の受歯を備えた固定歯と、該固定歯の上方に配置された回転軸に放射状に突設され、該回転軸の回転により隣り合う前記受歯の間に進入する複数の鬼歯を備えた回転歯とを有し、製造する前記焼結鉱破砕用の歯が前記受歯であるのがよい。
【0011】
本発明に係る焼結鉱破砕用歯の製造方法において、前記焼結鉱破砕機は、間隔を有して配置された複数の受歯を備えた固定歯と、該固定歯の上方に配置された回転軸に放射状に突設され、該回転軸の回転により隣り合う前記受歯の間に進入する複数の鬼歯を備えた回転歯とを有し、製造する前記焼結鉱破砕用の歯が前記鬼歯であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る焼結鉱破砕用歯の製造方法は、型枠内へ溶湯を供給し、芯材の表層部を軟化状態もしくは溶融状態にして、溶湯を芯部に溶着させるので、芯部に対する耐摩耗層(硬化層、以下同じ)の密着力が高められる。また、溶湯を型枠内に貯留して凝固させるので、耐摩耗層を一体的に形成できる。更に、例えば、従来のような、格子が不要であるため、また、アーク熱も不要となり、溶湯の冷却速度が速いので、形成される耐摩耗層を硬くでき、形成する耐摩耗層の耐摩耗性を向上できる。なお、高い熟練度を備えた鋳掛作業者も不要となる。
従って、従来よりも耐摩耗性の向上が図れる焼結鉱破砕用歯を、作業性よく経済的に製造できる。
【0013】
特に、引け巣(空洞)を消失させることで、従来よりも組織の緻密化と品質の安定化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(A)は本発明の一実施例に係る焼結鉱破砕用歯の製造方法で製造された焼結鉱破砕機の受歯の斜視図、(B)は同焼結鉱破砕用歯の製造方法の説明図である。
図2】本発明の他の実施例に係る焼結鉱破砕用歯の製造方法の説明図である。
図3】(A)~(G)は実験例に係る焼結鉱破砕用歯の製造方法で製造された受歯の耐摩耗層の摩耗状況を示すグラフである。
図4】(A)は実験例に係る焼結鉱破砕用歯の製造方法で製造された受歯の摩耗状況を示すグラフ、(B)、(C)は比較例に係る焼結鉱破砕用歯の製造方法で製造された受歯の摩耗状況を示すグラフ、(D)は実験例に係る焼結鉱破砕用歯の製造方法で製造された受歯の摩耗状況を示すグラフ、である。
図5】焼結鉱の製造工程を示す説明図である。
図6】(A)は従来例に係る焼結鉱破砕機の受歯の斜視図、(B)は同受歯の耐摩耗層の摩耗状況を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施例につき説明し、本発明の理解に供する。
まず、図1(A)を参照しながら、本発明の一実施例に係る焼結鉱破砕用歯の製造方法で製造された、焼結鉱破砕機に用いられる受歯(焼結鉱破砕用歯の一例)10と鬼歯(焼結鉱破砕用歯の一例、図示せず)について説明する。
焼結鉱破砕機は、複数の受歯10を備えた固定歯と、ロールの表面に設けられた大きな原料を噛み込む突起状の複数の鬼歯を備えた回転歯とを有し、焼結機で製造された高温の焼結鉱を破砕するものである(図5参照)。
【0016】
固定歯は、複数(例えば、10本以上)の受歯10が間隔を有して平行(格子状(連子状))に配置されている。
この受歯10は、断面四角形の棒状のものであり、歯本体11と、歯本体11の破砕部側(使用にあっては上部側)に設けられた芯部(母材、芯材)12と、この芯部12に溶着され、歯本体11の破砕部側にその長さ方向に渡って形成された耐摩耗層13とを有している(即ち、歯本体11は、受歯10のうち、芯部12と耐摩耗層13を除いた部分)。
【0017】
芯部12は、例えば、鋼製のものであり、断面逆T字状となって、歯本体11の破砕部側表面(上側表面)にその長さ方向に沿って取付けられている。
この芯部12の突出部分の幅Cwは、例えば、耐摩耗層13の幅(歯本体11の長さ方向とは直交する方向の幅)Rwの0.05~0.3倍(好ましくは0.2倍以下)程度であり、また、芯部12(突出部分)の高さCtは、例えば、耐摩耗層13の高さRtの0.5~0.9倍(好ましくは、下限が0.6倍、上限が0.8倍)程度であるが、受歯の構成によって種々変更できる(形状も変更できる)。
【0018】
この芯部12の歯本体11への取付けは、溶接により行われるが、例えば、ボルト等の締結手段で行ってもよく、また、締結手段を併用して行ってもよい。更に、芯部は歯本体と一体であってもよい(歯本体と芯部が分断されていない、一体的に製造された構成でもよい)。
また、芯部12は、歯本体11の長さ方向途中位置(ここでは、長さ方向中央部)で分断されているが、固定歯の種類によっては分断されていないものもある。
なお、上記したように、耐摩耗層13を一体的に形成した芯部12を歯本体11に溶接あるいはボルト等の締結手段で取付けることにより、耐摩耗層13が摩耗減損した場合には、歯本体11と芯部12との溶接部分を切断あるいは締結手段を外して、歯本体11から芯部12を取り外し、新品の耐摩耗層13を一体的に形成した芯部12を歯本体11に取付ければよい。これにより、例えば、実際に使用されている現場で容易に交換でき、また、現場への輸送(搬送)に際しても、耐摩耗層13を一体的に形成した芯部12と歯本体11を個別に輸送し現地にて組み立てることで輸送コストの低減が図れる。
【0019】
分断された各芯部12に溶着された耐摩耗層13の長さ(歯本体11の長さ方向の長さ)は、例えば、500mm以上(更には、1000mm以上)程度であり、上限値は特に限定されるものではないが、例えば、3000mm程度である。なお、芯部が分断されていない構成であれば、耐摩耗層も分断されていない構成にできる。
この耐摩耗層13の材質は、高炭素かつ高クロムをベースにした白銑鉄(例えば、C:4.0~5.5質量%、Cr:25~30質量%の白銑鋳鉄等)が主体であり、高温雰囲気で磨耗を受ける場合に極めて優れた耐用度を示す。なお、耐摩耗層の材質は、焼結鉱破砕機に使用可能な金属製の材質であれば、上記した白銑鉄に限定されるものではない。
【0020】
上記した歯本体11の長さ方向に隣り合う耐摩耗層13の間、及び、歯本体11の上側側部には、鋳掛肉盛層14が形成されている。これにより、歯本体11と耐摩耗層13との一体性が高められ、また、歯本体11の破砕部側の摩耗を抑制できる。
なお、歯本体11の内部には、冷却水用の流路(図示しない)が形成され、使用時における受歯10の温度上昇を抑制可能な構成となっている(歯本体11が水冷構造を備えている)。
【0021】
回転歯は、図5に示した回転歯87と略同一形状であるため、ここでは便宜的に、図5で使用した符号を付して説明する。回転歯87は、固定歯の上方に、その軸心が平面視して受歯10(歯本体11)の長さ方向とは直交する方向に沿って配置された回転軸85と、この回転軸85に放射状に突設され、回転軸85の回転により隣り合う受歯10の間に進入する複数の鬼歯86を備えている。
この鬼歯86に相当する本発明の鬼歯は、側面視して扇形状となって、歯本体と、歯本体の破砕部側(使用にあっては回転方向下流部側)の長さ方向(回転軸を中心とした高さ方向)に渡って設けられた芯部(母材、芯材)と、この芯部に溶着された耐摩耗層とを有している(即ち、歯本体は、鬼歯のうち、芯部と耐摩耗層を除いた部分)。
【0022】
芯部は、例えば、鋼製のものであり、断面逆T字状となって、歯本体の破砕部側表面にその長さ方向に沿って取付けられているが、鬼歯の形状に応じて変更することができる。この芯部は、歯本体とは分断されてもよく、また、歯本体と一体であってもよい(受歯と同様)。
なお、耐摩耗層の材質は、上記した受歯10の耐摩耗層と同様の材質で構成できるが、材質の種類は、受歯10の耐摩耗層と同一でもよく、また、異なってもよい。
【0023】
続いて、図1(B)を参照しながら、受歯10の製造方法について説明する。
まず、図1(B)の左図に示すように、受歯10の芯部12を、その長さ方向が鉛直方向となるように立設配置し、この芯部12の最下部領域(後述する最初の耐摩耗層形成工程の対象となる領域)を囲んで、形成する耐摩耗層13の形状(長手方向長さは分割分)に対応した空洞部15を形成する型枠16を配置する(型枠16と芯部12とで空洞部15が形成される)。この型枠16の内側(溶湯との接触面側)には耐火物層がある(後述する型枠19も同様)。
【0024】
ここでは、平面視して芯部12全体が型枠16で囲まれている(空洞部15に芯部12が配置されている)が、芯部12の表面側(耐摩耗層13の形成面側)のみが、型枠で囲まれてもよい。また、この芯部12は、歯本体11に取付けられていない状態で(芯部12のみで)型枠16に配置されているが、歯本体11に取付けられた状態で型枠16に配置されてもよい。
なお、芯部12の表面には、予め凹凸処理(例えば、ブラスト処理)がなされ、更に耐摩耗層13が溶着し易くなるように、溶着促進剤を塗布しておくことが好ましい。
【0025】
次に、型枠16内(空洞部15)への溶湯の供給(注湯)と該溶湯の型枠16内からの排出を連続的に行って溶湯を芯部12に溶着させた後、更に溶湯を型枠16内に貯留(充填)して凝固させる(所定時間かけて半凝固状態とする)、耐摩耗層形成工程を行う。
ここで、型枠16への溶湯の供給と型枠16からの溶湯の排出は、芯部12の表層部が軟化状態もしくは溶融状態となるまで行う。従って、溶湯の温度は、芯部12の融点Ctmより高い温度に設定する(例えば、(Ctm+20℃)以上、更には、(Ctm+50℃)以上、更に好ましくは、(Ctm+100℃)以上)のがよい。一方、溶湯の温度の上限値は特に限定されないが、溶湯の温度を上昇させるための電力や型枠の損傷等を考慮すれば、(Ctm+200℃)程度である。
【0026】
続いて、図1(B)の中図に示すように、上記した耐摩耗層形成工程で形成された半凝固部位17(形成される耐摩耗層13の一部)の上側領域も含めた次の領域(2回目の耐摩耗層形成工程の対象領域)を囲んで、形成する耐摩耗層13の形状(長手方向長さは分割分)に対応した空洞部18を形成する型枠19を配置し、上記した耐摩耗層形成工程を行う。
この型枠の配置と耐摩耗層形成工程(溶湯を芯部12に固着させる工程)を、図1(B)の右図に示すように、芯部12の長さ方向に渡って(下側から上側へ)複数回繰り返し行う。なお、耐摩耗層形成工程の繰り返し回数(所定回数)は、型枠の個数(形成する耐摩耗層13の長さ)により決まる。
【0027】
上記した2回目以降の耐摩耗層形成工程は、前回行った耐摩耗層形成工程により形成された半凝固部位17に発生した引け巣20を無くしながら(壊しながら)行う(前工程の半凝固状態の湯と新たに注湯した湯とを混ぜ合わせ、前工程の湯の引け巣を消失させながら、即ち、内部に引け巣などの欠陥を残さない状態で凝固させて行う)。
従って、この半凝固部位17は、完全に凝固した状態ではなく、少なくともその上部が軟化状態(更には、上側中央部が溶融状態)にある半凝固状態であることが好ましい。ここで、軟化状態とは、例えば、耐摩耗層13の融点Rtmより200~50℃の範囲で低い温度(Rtm-(200~50℃))となった状態であり、例えば、溶湯注湯後の経過時間(例えば、注湯終了から数分程度:予め求めた半凝固部位17温度と経過時間との関係)に基づいて、2回目以降の耐摩耗層形成工程を行うこともできる。
【0028】
最後に押湯を行うことにより、芯部12に耐摩耗層13が形成される。
上記した方法で製造した耐摩耗層13を、芯部12を介して歯本体11に取付けた後、歯本体11の隣り合う耐摩耗層13の間、及び、歯本体11の上側側部に、鋳掛肉盛層14を形成することで、受歯10として使用できる。
なお、鬼歯についても、上記した受歯10と同様、鬼歯の芯部を、その長さ方向(高さ方向)が鉛直方向となるように立設配置し、この芯部を囲んで、形成する耐摩耗層の形状に対応した空洞部を形成する型枠を配置し、上記した耐摩耗層形成工程を1回又は複数回行うことで、耐摩耗層を形成する。
【0029】
次に、図2を参照しながら、本発明の他の実施例に係る焼結鉱破砕用歯の製造方法ついて説明する。本実施例に係る焼結鉱破砕用歯は受歯であって、この受歯は前記した受歯10と外観上は略同様の構成であるため、異なる部分についてのみ、詳しく説明する。
受歯の芯部31は、その長さ方向に分割された複数(ここでは3個)の分割芯部32で構成されている。このため、使用する型枠33も、分割芯部22ごとに配置される複数(ここでは、分割芯部22の個数に対応して3個)の分割型枠34で構成されている。これは、芯部31に対する溶湯の溶着性を良好にするためである。
なお、型枠33(分割型枠34)の内側(溶湯との接触面)には耐火物層がある。
【0030】
芯部が長尺の場合、例えば、長さが1000mm超の場合、型枠の長さも芯部の長さに対応して1000mm超となり、このような型枠の上方から溶湯を供給すると、高さ方向途中位置で溶湯の流れが乱れ、溶湯が溶着しづらくなる。
そこで、上記したように、芯部と型枠をそれぞれ複数に分割することで、溶湯の流れを安定にでき、溶湯の溶着を良好にできる。なお、分割芯部と分割型枠の各長さは、溶湯の溶着を安定に行うことができれば、特に限定されるものではないが、例えば、1000mm以下(好ましくは800mm以下、更には600mm以下)程度にすればよい。一方、下限値については、特に限定されるものではないが、例えば、200mm程度である。
【0031】
まず、図2の左図に示すように、土台35上に、形成する耐摩耗層36(上記した耐摩耗層13と同様)の形状(長手方向長さは分割分)に対応した空洞部37を有する分割型枠34を、その長さ方向が鉛直方向となるように立設配置する。なお、分割型枠34内には、断面逆T字状の分割芯部32を、その幅広面が分割型枠34の一つの内側面38に接するように、しかも、その長さ方向が鉛直方向となるように、立設配置されている(分割芯部32が分割型枠34で囲まれている)。
この分割型枠34には、その長さ方向(高さ方向)に間隔を有して複数(ここでは5個)の開口部39が形成されている。この開口部39は溶湯の排出口であり、分割型枠34の空洞部37と外部とを連通させるものである。
【0032】
この5個の開口部39のうち、最下部に位置する開口部39のみ開状態(他の4個の開口部39は閉状態)とし、分割型枠34内(空洞部37)への溶湯の供給と該溶湯の分割型枠34内からの排出を連続的に行って溶湯を分割芯部32に溶着させた後、最下部に位置する開口部39を閉状態とし、更に溶湯を分割型枠34内に貯留して凝固させる、耐摩耗層形成工程を行う(耐摩耗層形成工程を各開口部39の開閉により行う)。
このとき、分割芯部32の上側領域に対して溶湯の溶着が悪い場合、例えば、溶着させようとする高さ位置よりも低い位置にある開口部39を閉状態とし、その上の開口部39を開状態として、分割型枠34内(空洞部37)への溶湯の供給と該溶湯の分割型枠34内からの排出を連続的に行うこともできる。
【0033】
上記した耐摩耗層形成工程を行った後、図2の中図に示すように、この耐摩耗層形成工程で使用した分割芯部32及び分割型枠34の上に、芯部31の長さ方向に沿って次の耐摩耗層形成工程で使用する分割芯部32及び分割型枠34を載せ、この耐摩耗層形成工程を行う(即ち、最下部に位置する開口部39のみ開状態とし、溶湯の供給と排出を連続的に行った後、最下部に位置する開口部39を閉状態として溶湯を凝固させる)。この長さ方向に隣り合う分割型枠34は、その長さ方向端部に設けられたフランジ部40をボルト等の締結手段で連結することで、位置ずれが防止できる。
【0034】
この分割型枠34及び分割芯部32の配置と耐摩耗層形成工程を、図2の右図に示すように、芯部31の長さ方向に渡って複数回繰り返し行う。なお、耐摩耗層形成工程の繰り返し回数は、分割型枠34及び分割芯部32の個数(形成する耐摩耗層36の長さ)により決まる。
上記した2回目以降の耐摩耗層形成工程は、前回行った耐摩耗層形成工程により形成された半凝固部位に発生した引け巣を無くしながら(壊しながら)行う。なお、2回目以降の耐摩耗層形成工程は、前記したように、前回の耐摩耗層形成工程(溶湯の注湯)が終了した後、形成された半凝固部位の上部が軟化状態(更には、上側中央部が溶融状態)にある状態で行うことが、耐摩耗層36を一体的に形成する上で好ましい。
【0035】
最後に押湯を行うことにより、芯部31に耐摩耗層36が形成される。
上記した方法で耐摩耗層36を製造した後、芯部31と耐摩耗層36から型枠33(全ての分割型枠34)を取外す。
ここで、芯部31を構成する各分割芯部32は、耐摩耗層36のみでその長さ方向に一体となっているため、長さ方向に隣り合う分割芯部32同士を、例えば、溶接等により一体的に接合することで、その強度を向上できる。また、製造した耐摩耗層36には、必要に応じて表面加工処理を行うことができる。
上記した耐摩耗層36を、芯部31を介して歯本体(歯本体11と同様)に取付けた後、歯本体の隣り合う耐摩耗層36の間、及び、歯本体の上側側部に、鋳掛肉盛層(鋳掛肉盛層14と同様)を形成することで、受歯として使用できる。
【実験例】
【0036】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実験例について説明する。
ここでは、本発明の焼結鉱破砕用歯の製造方法を用いて製造した受歯(実験例)と、従来法である肉盛鋳掛技術を用いて製造した受歯(比較例:図6(A)に相当)を、それぞれ実際の操業で使用し、その摩耗状況を比較検討した。
実験例の結果を図3(A)~(G)、及び、図4(A)、(D)に、比較例の結果を図4(B)、(C)にそれぞれ示す。なお、図4(A)は図3(D)と、図4(D)は図3(E)と、それぞれ同一のグラフである。
【0037】
図3(A)~(G)はそれぞれ、耐摩耗層の長さ方向一端からの距離が、90mm、190mm、290mm、390mm、490mm、590mm、690mm位置での耐摩耗層の摩耗状況を示すグラフである。また、図4(B)、(C)は、耐摩耗層の長さ方向一端からの距離が、450mm位置での耐摩耗層の摩耗状況を示すグラフである。
ここで、各グラフの縦軸は、測定基準位置からの耐摩耗層の高さ(mm)を、横軸は、耐摩耗層の幅(0が幅方向中心位置:mm)を、それぞれ示している。
また、各グラフにおいて、一点鎖線は、使用前の耐摩耗層の輪郭形状を、点線は、試験開始から3ヶ月経過時点の耐摩耗層の輪郭形状を、実線は、試験開始から6ヶ月経過時点の耐摩耗層の輪郭形状を、それぞれ示している。
【0038】
図3(A)~(G)に示すように、実験例では、耐摩耗層の幅方向角部の摩耗、及び、鬼歯が接近する箇所の摩耗が、他の部分よりも大きい傾向が現れているが、耐摩耗層の長さ方向に渡って略均等な摩耗状況が得られた(摩耗による減肉厚みは、最大でも8mm程度、最小は2mm程度)。
一方、比較例では、図4(B)、(C)に示すように、耐摩耗層の幅方向角部の摩耗、及び、鬼歯が接近する箇所の摩耗が、実験例と比較して大きいことが分かる。これは、図4(B)、(C)の摩耗状況を示す位置と略同様の位置である図4(A)、(D)と比較して明らかであることによる(摩耗による減肉厚みは12mmであり、実験例の最大値に対して1.5倍、略同様の位置である図4(D)の減肉厚みに対して3倍、多く摩耗している)。
【0039】
以上のことから、本発明の焼結鉱破砕用歯の製造方法により、焼結鉱破砕用歯を作業性よく経済的に製造でき、しかも、製造した焼結鉱破砕用歯は、従来よりも耐摩耗性の向上が図れることを確認できた。
【0040】
以上、本発明を、実施例を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施例に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施例や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施例や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の焼結鉱破砕用歯の製造方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
前記実施例においては、本発明の焼結鉱破砕用歯の製造方法を用いて、受歯と鬼歯を製造した場合について説明したが、受歯と鬼歯のいずれか一方のみを製造することもできる(他方は肉盛鋳掛技術を用いた従来法でもよい)。
また、本発明の焼結鉱破砕用歯の製造方法は、前記した構成の受歯と鬼歯に適用することに限定されるものではなく、他の構成の焼結鉱破砕機に用いられる焼結鉱破砕用歯に適用することもできる。
【0041】
そして、前記実施例においては、芯部のみを用いて(歯本体に取付けられていない状態で)耐摩耗層を形成した(耐摩耗層形成工程を行った)場合について説明したが、歯本体に取付けられた状態の芯部に対して、耐摩耗層を形成することもできる。また、芯部(歯本体に取付けられた状態でもよい)は、常温の状態で耐摩耗層を形成しているが、耐摩耗層を形成する前に少なくとも耐摩耗層の形成部分(芯部全体でもよく、更には歯本体が含まれてもよい)を予熱することが好ましい。この予熱温度は、芯部の融点Ctmより低い温度、例えば、(Ctm-20℃)以下程度、更には、(Ctm-50℃)以下程度であり、下限は200℃程度、更には500℃程度である。これにより、耐摩耗層形成工程を行うに際し、芯部の表層部が軟化状態(更には溶融状態)になるまでの時間を短縮できる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る焼結鉱破砕用歯の製造方法により、焼結鉱破砕用歯(例えば、受歯と鬼歯)を作業性よく経済的に製造でき、しかも、製造した焼結鉱破砕用歯は、従来よりも耐摩耗性の向上が図れる。これによって、焼結機で製造された高温の焼結鉱の破砕に有効に利用できる。
【符号の説明】
【0043】
10:受歯(焼結鉱破砕用歯)、11:歯本体、12:芯部、13:耐摩耗層、14:鋳掛肉盛層、15:空洞部、16:型枠、17:半凝固部位、18:空洞部、19:型枠、20:引け巣、31:芯部、32:分割芯部、33:型枠、34:分割型枠、35:土台、36:耐摩耗層、37:空洞部、38:内側面、39:開口部、40:フランジ部
【要約】
長尺硬化材の製造方法、及び、焼結機で製造された焼結鉱を破砕する焼結鉱破砕機に用いられ、歯本体11の破砕部側にその長さ方向に渡って耐摩耗層13が形成された焼結鉱破砕用歯10並びにその製造方法は、歯本体11の破砕部側にその長さ方向に渡って設けられる芯部12を囲んで、耐摩耗層13の形状に対応した空洞部15、18を形成する型枠16、19を配置した後、型枠16、19内への溶湯の供給と溶湯の型枠16、19内からの排出を連続的に行って溶湯を芯部12に溶着させ、更に溶湯を型枠16、19内に貯留して凝固させる耐摩耗層形成工程を行い、耐摩耗層13を形成する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6