(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】車軸検知装置
(51)【国際特許分類】
B61L 1/16 20060101AFI20220127BHJP
【FI】
B61L1/16
(21)【出願番号】P 2018015828
(22)【出願日】2018-01-31
【審査請求日】2020-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000207470
【氏名又は名称】大同信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106345
【氏名又は名称】佐藤 香
(72)【発明者】
【氏名】布施 卓也
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-189266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線路の対象区間の各端部に複数設けられた車軸検出子の検出結果に基づいて前記端部それぞれについて前記対象区間から進出した車軸の個数を計って進出車軸数を求める進出車軸計数部と、前記車軸検出子の検出結果に基づいて前記端部それぞれについて前記対象区間へ進入した車軸の個数を計って進入車軸数を求める進入車軸計数部と、前記端部それぞれについてそこを通過した可能性のある車軸の個数を計って通過車軸数を求める通過車軸計数部と、前記端部それぞれについて前記車軸検出子のうち該当端部に係るものに故障その他の異常がある非常時には該当端部に係る採択車軸数として前記通過車軸数を採択するが前記端部それぞれについて前記車軸検出子のうち該当端部に係るものに故障その他の異常が無い常態時には該当端部に係る採択車軸数として該当端部に係る進入車軸数を採択する端部毎切替手段と、前記採択車軸数と前記進出車軸数との差を演算して入出差を求める入出差算出部と、前記入出差算出部の演算結果に基づいて前記対象区間に列車が在線しているか否かを判別する判定部とを備えている車軸検知装置
であって、
前記通過車軸計数部が、同じ区間端部に設けられた複数の車軸検出子それぞれから得られる複数の計数値から最大値を選出して前記通過車軸数に採用するようになっていることを特徴とする車軸検知装置。
【請求項2】
端部毎切替手段が、前記端部のうち非常時に該当するものについては総てに前記通過車軸数を採択し、前記端部のうち常態時に該当するものについては一つ以上のものに前記進入車軸数を採択するが他のものについては前記通過車軸数を採択するようになっていることを特徴とする請求項1記載の車軸検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道の線路の区間に係る列車在線の有無判別に役立つ車軸計数装置に関し、詳しくは、監視や計数の対象になっている区間の端部に設置された車軸検出子の出力に基づいて対象区間の出入りに関わった車軸を数える車軸計数装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道用の車軸計数装置は、アクスルカウンタとも呼ばれ、基本的には、対象区間に進入した車軸と、区間から進出した車軸とについて、個数を数え上げるものである。
車軸検出子の所を車軸が通過したことを検出する車軸検知器をも含めて車軸計数装置と呼ぶこともあれば、車軸検知器を含めない構成部分だけを車軸計数装置と呼ぶこともあるが、本願では、車軸検出子や車軸検知器による車軸検知結果に基づいて車軸の個数を数える構成部分が含まれていれば車軸計数装置に該当するものとする。
【0003】
車軸検出子と車軸検知器とを先に述べると、車軸検出子には車軸検知子や車輪検出子と呼ばれるものも該当する。また、車軸検知器には、車軸検知装置や,車軸検出器,車軸検出装置,車輪検知器,車輪検出器,車輪検知装置,車輪検出装置と呼ばれるものも該当する。このような車軸検出子や車軸検知器として多用されてきたものは(例えば特許文献1,2参照)、対をなす送信器と受信器とをレールの内側と外側とに分けて配置し、両器間の信号が車輪によって遮断されることを利用して、車輪ひいては車軸を検出するようになっているが、送信器と受信器とをレールの片側に設けてレール長手方向に並べるようになったものもある(例えば特許文献3参照)。
【0004】
送信器と受信器との対が明確であればその対を車軸検出子とするのが基本であるが、送信器と受信器とが同数でなくても良くなっているので(例えば特許文献3参照)、その場合は、検出結果を出す受信器の方を重視してそれを車軸検出子とする。
車軸検知器は、線路区間の複数の端部のうち何れか一つの端部に配設された通常は複数個の車軸検出子を駆動しながら夫々の車軸検出子から車軸検出状態・車軸検出結果を取得して、該当端部に係る車軸の通過有無と進行方向とを検出するようになっている。個々の車軸検出子について故障の有無を検出できるものもある(例えば特許文献3参照)
【0005】
図面を引用して要点を説明すると(
図8参照)、レール4(線路)のうち対象区間と隣接区間との境界部分である端部に区間端ユニット10が一つずつ設置される。対象区間が左の第1隣接区間と右の第2隣接区間とに連なる場合(
図8(a)参照)、対象区間は二つの端部を持つので、左右の端部それぞれに区間端ユニット10が設置される。対象区間が第1隣接区間と第2隣接区間と第3隣接区間とに連なる場合(
図8(b)参照)、対象区間は三つの端部を持つので、三端部それぞれに区間端ユニット10が設置される。
【0006】
区間端ユニット10は(
図8(c)参照)、複数の車軸検出子11と一つの車軸検知器12とを具備しており、車軸検出子11が最少の二個の場合(
図8(c)の左側部分を参照)、車軸検知器12は、車軸検出子11,11夫々の検出子信号A1,A2に基づいて車軸の進入(すなわち車軸が隣接区間から対象区間へ移動して区間端部を通過したこと)を検出して車軸進入検出信号iを出力するとともに、車軸の進出(すなわち車軸が対象区間から隣接区間へ移動して区間端部を通過したこと)を検出して車軸進出検出信号oを出力するようになっている。また、車軸検出子11が三個の場合(
図8(c)の右側部分を参照)、車軸検知器12は、車軸検出子11,11,11夫々の検出子信号A1,A2,A3に基づいて車軸の進入を検出して車軸進入検出信号iを出力するとともに、車軸の進出を検出して車軸進出検出信号oを出力するようになっている。
【0007】
車軸の進入は(
図8(d)参照)、検出子信号A1,A2又はA1,A2,A3が一時期だけ重なる態様で隣接区間側のものから対象区間側のものへ順に即ちA1,A2又はA1,A2,A3の順に変化したことを確認することで検出することができる。そして、車軸の進入が検出されると車軸進入検出信号iにパルスが発現するようになっている。
車軸の進出は(
図8(e)参照)、検出子信号A1,A2又はA1,A2,A3が一時期だけ重なる態様で対象区間側のものから隣接区間側のものへ順に即ちA2,A1又はA3,A2,A1の順に変化したことを確認することで検出することができる。そして、車軸の進出が検出されると車軸進出検出信号oにパルスが発現するようになっている。
【0008】
それ以外の信号変化態様は、車軸の進入や進出の取り止めか機器異常となる。例えば、検出子信号A1しか車軸を検出しなかったときや、検出子信号A1の検出パルスに検出子信号A2の検出パルスが完全に包含されたようなときには、車軸が区間端部で折り返したものとして扱われ、車軸の進入も進出も検出されない。また、両端の検出子信号A1,A3に検出パルスが発現したのに中間の検出子信号A2に検出パルスが全く発現しなかったようなときには、車軸検出子11の動作異常か故障の可能性が高いので、車軸検知器12の仕様にもよるが、車軸検知器12から故障検出信号や故障通知が出力される。
【0009】
車軸計数装置20は(
図9参照)、上述したように対象区間に進入した車軸と区間から進出した車軸とについて個数を数え上げるものなので、そのために、計数部23を具備していて、対象区間の各端部に設けられた区間端ユニット10の車軸検知器12から車軸の進入進出の検出結果(i,o)を取得して数え上げるようになっている。
簡明化のため、対象区間が左方の第1隣接区間と右方の第2隣接区間とだけ連なっている線路状態を具体例にすると(
図9(a)参照)、車軸計数装置20の計数部23は、左の端部に対応した第1計数部23Bと、右の端部に対応した第2計数部23Cとを具備している。
【0010】
第1計数部23Bは、左の区間端ユニット10の検出結果である車軸進入検出信号iと車軸進出検出信号oとを入力する手段と、そのうちの車軸進入検出信号iに基づいて第1隣接区間側の端部に係る進入車軸数Biを数え上げる第1進入車軸計数部23Biと、上述した入力のうちの車軸進出検出信号oに基づいて第1隣接区間側の端部に係る進出車軸数Boを数え上げる第1進出車軸計数部23Boとを具備している。
第2計数部23Cは、右の区間端ユニット10の検出結果である車軸進入検出信号iと車軸進出検出信号oとを入力する手段と、そのうちの車軸進入検出信号iに基づいて第2隣接区間側の端部に係る進入車軸数Ciを数え上げる第2進入車軸計数部23Ciと、上述した入力のうちの車軸進出検出信号oに基づいて第2隣接区間側の端部に係る進出車軸数Coを数え上げる第2進出車軸計数部23Coとを具備している。
【0011】
また、この車軸計数装置20は、総ての端部に係る進入車軸数と進出車軸数との差である入出差Δ1を算出する入出差算出部21を具備しており、上記の具体例に当てはめると(
図9(a)参照)、式[+進入車軸数Bi-進出車軸数Bo+進入車軸数Ci-進出車軸数Co]を演算して、その算出値を入出差Δ1とするようになっている。
さらに、車軸計数装置20は、入出差Δ1に基づいて対象区間に列車7が在線しているか否かを判別する判定部22を具備しており、対象区間について入出差Δ1=“0”が成り立っていれば非在線と判定し、そうでなければ在線と判定するようにもなっている。
【0012】
列車7が第1隣接区間から進行して対象区間へ進入し更に対象区間から第2隣接区間へ進出したときを具体例として(
図9(b)~(d)参照)、進入車軸数Biと進出車軸数Boと進入車軸数Ciと進出車軸数Coと入出差Δ1と在線判定結果とに係る変遷を述べる。先ず(
図9(b)参照)、列車7が第1隣接区間に在って対象区間に無い状態では、進入車軸数Biも進出車軸数Boも進入車軸数Ciも進出車軸数Coも総て“0”で、入出差Δ1も“0”なので、対象区間に係る在線判定結果が非在線になる。
【0013】
そして、8個の車軸を持った列車7が第1隣接区間寄り端部から対象区間へ進入し始めると、車軸が端部を通過する度に、左の区間端ユニット10から車軸進入検出信号iにて検出パルスが出力され、それに応じて進入車軸数Biが“+1”されて、列車7が対象区間に進入し終えたときには(
図9(c)参照)、進入車軸数Biが列車7の車軸数と同じ“8”になることから、入出差Δ1も“8”になるので、対象区間に係る在線判定結果が在線になる。
【0014】
それから、列車7が対象区間から第2隣接区間へ進出し始めると、車軸が端部を通過する度に、右の区間端ユニット10から車軸進出検出信号oにて検出パルスが出力され、それに応じて進出車軸数Coが“+1”されて、列車7が対象区間を進出し終えたときには(
図9(d)参照)、進出車軸数Coが“8”になることから、それと進入車軸数Biの“8”とが相殺しあって入出差Δ1が“0”になるので、対象区間に係る在線判定結果が非在線になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特開2000-006808号公報
【文献】特開2007-263938号公報
【文献】特願2016-234583号(出願)
【文献】特願2017-067088号(出願)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
このような従来の車軸計数装置では、対象区間の総ての端部について而も車軸進入と車軸進出との双方について軸数を数え上げることで在線判定を行うようになっていたため、どこか一カ所でも、車軸の進入出を検出できなくなったり、そのような事態に繋がる可能性のある異常や故障が発生したり、といった不具合があると、列車在線状態を的確に把握することが出来なくなるので、信号保安装置としての安全性を確保する観点から、列車在線状態の判定を非在線でなくフェールセーフ側の在線に強制するようになっている。
【0017】
しかしながら、そのような不具合発生時の在線判定は、現状の列車在線状態に影響する可能性のある列車の進入も進出も一律に禁止することになるので、列車制御を安全側に留め置くものではあるが、不具合解消まで列車を止めたままにしておくことに繋がるため、稼働率を低下させる要因となり、列車運行の安定や確保といった観点からは好ましくないという一面も持つ。すなわち、車軸検出に不具合が発生したときには安全側に強制する必要があるが、むやみに強制するのは稼働率を損なうので好ましくない。
【0018】
そこで、車軸検出に不具合があっても一律に在線判定が出されるのでなく必要な保安度が確保される範囲で動作しうる車軸計数装置として、車軸検出子の故障その他の非常時には常態と異なる基準で在線判定を行う車軸計数装置が開発されている(特許文献4参照)。その典型的な実施態様を挙げると(同文献の実施例3,
図5参照)、常態では、従来と同様に、総ての端部に係る進入車軸数と進出車軸数との差である入出差を算出して、その値が“0”なら列車非在線とするが、そうでなければ在線とする一方、非常時には、総ての端部に係る通過車軸数と進出車軸数との差である通出差を算出して、その値が“0”なら列車非在線とするが、そうでなければ在線とするというものである。
【0019】
もっとも、このような実施態様を素直にそのまま具体化した車軸計数装置では、常態では的確になされていた区間端部での列車の車軸の折り返しに係る処理が、判定基準の異なる非常時には、在線判定が縮退動作下で行われて、列車の車軸の折り返しが有った端部を含む対象区間に係る通出差が“0”でなくなり、実際には列車非在線なのに、判定結果が列車在線となってしまう。もちろん、これは、フェールセーフ側の判定であり、列車の車軸の折り返しが無ければ、更に車軸検出子の故障といった不具合の生じた区間端部からの列車進出が無ければ、非常時でも在線判定が適切になされる点で、従来の車軸計数装置よりも稼働率が向上している。
【0020】
ところが、その車軸計数装置について動作等の確認や更なる改良など種々検討を重ねていたところ、特に更なる稼働率の向上を目指して上記実施態様での非常時の判定基準について更なる要件の追加や細分化などを検討したところ、非常時に列車在線判定対象区間の区間端部で列車の車軸の折り返しが有っても、判定結果を一律に列車在線にしなくても良い場合があることが判明した。
そこで、かかる知見に基づき、車軸検出に不具合があっても更には区間端部で車軸の折り返しがあっても一律に在線判定が出されるのでなく必要な保安度が確保される範囲で動作しうる車軸計数装置を実現することが技術的な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の車軸検知装置は(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、
線路の対象区間の各端部に複数設けられた車軸検出子の検出結果に基づいて前記端部それぞれについて前記対象区間から進出した車軸の個数を計って進出車軸数を求める進出車軸計数部と、前記車軸検出子の検出結果に基づいて前記端部それぞれについて前記対象区間へ進入した車軸の個数を計って進入車軸数を求める進入車軸計数部と、前記端部それぞれについてそこを通過した可能性のある車軸の個数を計って通過車軸数を求める通過車軸計数部と、前記端部それぞれについて前記車軸検出子のうち該当端部に係るものに故障その他の異常がある非常時には該当端部に係る採択車軸数として前記通過車軸数を採択するが前記端部それぞれについて前記車軸検出子のうち該当端部に係るものに故障その他の異常が無い常態時には該当端部に係る採択車軸数として該当端部に係る進入車軸数を採択する端部毎切替手段と、前記採択車軸数と前記進出車軸数との差を演算して入出差を求める入出差算出部と、前記入出差算出部の演算結果に基づいて前記対象区間に列車が在線しているか否かを判別する判定部とを備えている。
【0022】
また、本発明の車軸計数装置は(解決手段2)、上記解決手段1の車軸計数装置であって、端部毎切替手段が、前記端部のうち非常時に該当するものについては総てに前記通過車軸数を採択し、前記端部のうち常態時に該当するものについては一つ以上のものに前記進入車軸数を採択するが他のものについては前記通過車軸数を採択するようになっていることを特徴とする。
【0023】
さらに、本発明の車軸計数装置は(解決手段3)、上記解決手段1,2の車軸計数装置であって、前記通過車軸計数部が、同じ区間端部に設けられた複数の車軸検出子それぞれから得られる複数の計数値から最大値を選出して前記通過車軸数に採用するようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
このような本発明の車軸検知装置にあっては(解決手段1)、入出差算出の基礎となる採択車軸数として進入車軸数と通過車軸数とのうち何れかを採択する際に、線路の対象区間のそれぞれの端部毎に車軸検出子の状態に応じて木目細かく切り替えがなされるようにしたことにより、一括切替にて全端部に通過車軸数が採択されるのに比べ、進入車軸数の採択された端部では列車折り返し時の処理が適切になされる分だけ稼働率の向上を期待することができる。
【0025】
すなわち、或る端部における車軸検出に不具合があっても、不具合の無い端部については、進入車軸数の採択により、端部での列車の折り返しがあってもそれだけで過剰な在線判定が出る訳ではない。
したがって、この発明によれば、非常時でも一律に在線判定が出されるのでなく必要な保安度が確保される範囲で動作できて稼働率の高い車軸計数装置を実現することができ、上記の技術課題が解決される。
【0026】
また、本発明の車軸計数装置にあっては(解決手段2)、非常時の端部について総てに通過車軸数を採択するとともに常態時の端部について総てに進入車軸数を採択するのがベストであるが、非常時の端部については総てに通過車軸数を採択するのが必須であるのと異なり、常態時の端部については、進入車軸数の採択が必須ではなく、通過車軸数を採択することも可能であることから、一つでも進入車軸数を採択すれば、該当箇所の端部における列車折り返し時の処理が適切になされるので、それなりに稼働率の向上が望めることとなる。
【0027】
さらに、本発明の車軸計数装置にあっては(解決手段3)、通過車軸数が各車軸検出子に係る計数値の最大値になるようにしたことにより、複数の車軸検出子のうち一つでも正常であれば正しい通過車軸数が得られることから、簡便な手法であっても稼働率向上に役立つ通過車軸数が得られるので、上記の技術課題を簡便に解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施例1について、車軸計数装置の構造を示し、(a)がブロック構成図、(b)が常態時の機能部分を特定するブロック図、(c)が非常時の機能部分を特定するブロック図である。
【
図7】先行例(特許文献4の実施例3,
図5)に係る非常時の列車走行状況の模式図である。
【
図8】車軸計数装置の使用に適う前提状態を示し、(a),(b)が鉄道の線路の区間の例、(c)が車軸検出子と車軸検知器とからなる区間端ユニットの例、(d),(e)が車軸検出子の信号の波形例である。
【
図9】従来の車軸計数装置の構造等を示し(a)がブロック構成図、(b)~(d)が列車走行状況の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
このような本発明の車軸検知装置について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1により説明する。
図1~6に示した実施例1は、上述した解決手段1~3(出願当初の請求項1~3)を総て具現化したものである。
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、筐体や,機械部品,電気回路などは図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心にブロック図や記号図にて示した。また、それらの図示に際し従来と同様の構成要素には同一の符号を付して示したので、而も、それらについて背景技術の欄で述べたことは以下の実施例についても共通するので、重複する再度の説明は割愛し、以下、従来との相違点を中心に説明する。
【実施例1】
【0030】
本発明の車軸検知装置の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図1(a)は、車軸計数装置40の構造を示すブロック図である。また、
図1(b)は常態時の機能部分を特定するブロック図であり、
図1(c)は、非常時の機能部分を特定するブロック図である。
【0031】
車軸計数装置40は(
図1(a)参照)、従来の車軸計数装置20を改良して機能を向上させたものであり、それが既述した車軸計数装置20と相違するのは、入出差算出部21が入出差算出部41になった点と、計数部23が計数部43になった点である。
また、計数部43が計数部23と相違するのは、第1計数部23Bに第1通過車軸計数部43Baが追加されてそれらが第1計数部43Bになった点と、この第1計数部43Bに第1端部毎切替部43Bxが追加された点と、第2計数部23Cに第2通過車軸計数部43Caが追加されてそれらが第2計数部43Cになった点と、この第2計数部43Cに第2端部毎切替部43Cxが追加された点である。
【0032】
既述した部分を簡潔に再述すると、計数部43のうち第1進入車軸計数部23Biと第2進入車軸計数部23Ciは、信号入力先の区間端ユニット10が左のものか右のものかという違いはあるが、何れも、車軸検知器12の検出結果である車軸進入検出信号iに基づいて、該当する端部について対象区間へ進入した列車7の車軸の個数を計って進入車軸数Bi,Ciを求めるようになっている。
また、計数部43のうち第1進出車軸計数部23Boと第2進出車軸計数部23Coは、やはり信号入力先が左か右かという違いはあるが、何れも、車軸検知器12の検出結果である車軸進出検出信号oに基づいて、該当する端部について対象区間から進出した列車7の車軸の個数を計って進出車軸数Bo,Coを求めるようになっている。
【0033】
改造や追加された部分を詳しく説明すると、第1通過車軸計数部43Baは、左の端部すなわち第1隣接区間と対象区間との境界の端部に係る区間端ユニット10から、車軸検出子11,11の検出結果である検出子信号A1,A2を入力し、その検出子信号A1,A2に含まれたパルスに基づいて、該当する左の端部を通過した可能性のある列車7の車軸の個数を計ることで、通過車軸数Baを求めるようになっている。
具体的には、検出子信号A1に発現したパルスを数え上げて検出子毎車軸数ΣA1を求めるとともに、検出子信号A2に発現したパルスを数え上げて検出子毎車軸数ΣA2を求めてから、それら複数の検出子毎車軸数ΣA1,ΣA2のうちから最も大きな値であるMAX(ΣA1,ΣA2)を選出して通過車軸数Baに採用するようになっている。
【0034】
また、第2通過車軸計数部43Caは、右の端部すなわち第2隣接区間と対象区間との境界の端部に係る区間端ユニット10から、車軸検出子11,11の検出結果である検出子信号A1,A2を入力し、その検出子信号A1,A2に含まれたパルスに基づいて、該当する右の端部を通過した可能性のある列車7の車軸の個数を計ることで、通過車軸数Caを求めるようになっている。
具体的には、検出子信号A1に発現したパルスを数え上げて検出子毎車軸数ΣA1を求めるとともに、検出子信号A2に発現したパルスを数え上げて検出子毎車軸数ΣA2を求めてから、それら複数の検出子毎車軸数ΣA1,ΣA2のうちから最も大きな値であるMAX(ΣA1,ΣA2)を選出して通過車軸数Caに採用するようになっている。
【0035】
第1端部毎切替部43Bxは、左の端部すなわち第1隣接区間と対象区間との境界の端部に係る区間端ユニット10における図示を割愛した内部故障診断回路等による異常検出に応じて自動で、あるいは、やはり図示を割愛した切替スイッチ等の操作による手動で、左の端部の区間端ユニット10の車軸検出子11等が総て正常(常態)か否か(非常)を検知したうえで、上記の左端部(該当端部)に係る採択車軸数として、常態時には該当端部に係る進入車軸数Biを採択する一方、非常時には該当端部に係る通過車軸数Baを採択し、その採択車軸数と進出車軸数Boを入出差算出部41に渡すようになっている。
【0036】
第2端部毎切替部43Cxは、右の端部すなわち第2隣接区間と対象区間との境界の端部に係る区間端ユニット10について上述したのと同様にして状態の正否(常態/非常)を検知したうえで、上記の右端部(該当端部)に係る採択車軸数として、常態時には該当端部に係る進入車軸数Ciを採択する一方、非常時には該当端部に係る通過車軸数Caを採択し、その採択車軸数と進出車軸数Coを入出差算出部41に渡すようになっている。これらの端部毎切替部43Bx,43Cxは、単に常態時か非常時かに応じて一斉に採択対象を切り替えるのでなく、担当する端部に係る車軸検出子の異常の有無等に基づく端部毎の常態/非常の状態検知に応じて個別に採択対象を切り替えるものとなっている。
【0037】
入出差算出部41は、単体をみると改造されておらず既述の入出差算出部21と同じものであるが、入力先に端部毎切替部43Bx,43Cxが介挿されたことにより算出式の内容が変更されている。具体的には、入出差算出部41と第1計数部43Bとの間に第1端部毎切替部43Bxが介装され、入出差算出部41と第2計数部43Cとの間に第2端部毎切替部43Cxが介装されたため、第1計数部43Bから第1端部毎切替部43Bxを介して採択車軸数(進入車軸数Bi又は通過車軸数Ba)と進出車軸数Boという二つの車軸数を入力するとともに、第2計数部43Cから第2端部毎切替部43Cxを介して採択車軸数(進入車軸数Ci又は通過車軸数Ca)と進出車軸数Coという二つの車軸数を入力して、端部毎切替部43Bx,43Cxの切替状態によって変わる採択車軸数(Bi又はBa),(Ci又はCa)と進出車軸数Bo,Coとの差を演算することにより入出差Δ1(又はΔ2)を求めるようになっている。
【0038】
この実施例1の車軸計数装置40について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。
図1~
図6の何れも、簡明化のため、対象区間が左方の第1隣接区間と右方の第2隣接区間とだけ連なっている線路状態を具体例としている。各図のうち、
図1(b)は、常態時の機能部分を特定するブロック図であり、
図2は、常態時の列車走行状況の模式図である。また、
図1(c)は、非常時の機能部分を特定するブロック図であり、
図3~
図6は、非常時の列車走行状況の模式図である。
【0039】
先ず、
図1(b)と
図2を参照しながら、左右の区間端ユニット10,10が何れも正常に動作している常態時に列車7がレール4を第1隣接区間から対象区間を経て第2隣接区間へ走行したときの状況を述べる。
図2(a)は、列車7が第1隣接区間に在線しているところを示し、
図2(b)は、列車7が第1隣接区間から進行して対象区間へ進入し終えたところを示し、
図2(c)は、列車7が対象区間から第2隣接区間へ進出し終えたところを示している。
【0040】
常態では(
図1(b)参照)、左の端部に係る第1通過車軸計数部43Baも第1進入車軸計数部23Biも第1進出車軸計数部23Boも適正動作可能であり、そのため通過車軸数Baも進入車軸数Biも進出車軸数Boも適正値が得られるとともに、採択車軸数として進入車軸数Biが採択され、それらの値Bi,Boが第1端部毎切替部43Bxによって入出差算出部41へ送られる。
また、右の端部に係る第2通過車軸計数部43Caも第2進入車軸計数部23Ciも第2進出車軸計数部23Coも適正動作可能であり、そのため進入車軸数Ciも進出車軸数Coも適正値が得られるとともに、採択車軸数として進入車軸数Ciが採択され、それらの値Ci,Coが第2端部毎切替部43Cxによって入出差算出部41へ送られる。
【0041】
そして、それらの差Δとして入出差Δ1=(+Bi+Ci-Bo-Co)が入出差算出部41によって算出される。そのため、既述した従来と同様の在線判定結果が判定部22から出る(
図2参照)。
詳述すると、列車7が第1隣接区間に在って対象区間に無い状態では(
図2(a)参照)、通過車軸数Baも進入車軸数Biも進出車軸数Boも通過車軸数Caも進入車軸数Ciも進出車軸数Coも総て“0”で、入出差Δ1=(+Bi+Ci-Bo-Co)も“0”なので、対象区間に係る在線判定結果が非在線になる。
【0042】
それから、8個の車軸を持った列車7が第1隣接区間寄り端部から対象区間へ進入し始めると、その端部を車軸が通過する度に、左の区間端ユニット10から車軸進入検出信号iにて検出パルスが出力され、それに応じて進入車軸数Biが“+1”されるとともに、左の区間端ユニット10から検出子信号A1,A2にて検出パルスが出力され、それに応じて第1通過車軸計数部43Baの検出子毎車軸数ΣA1,ΣA2もそれぞれ“+1”される。そして、列車7が対象区間に進入し終えたときには(
図2(b)参照)、進入車軸数Biが列車7の車軸数と同じ“8”になることから、入出差Δ1=(+Bi+Ci-Bo-Co)も“8”になるので、対象区間に係る在線判定結果が在線になる。なお、第1通過車軸計数部43Baの検出子毎車軸数ΣA1,ΣA2も更には通過車軸数Baも列車7の車軸数と同じ“8”になるが、こちらは判定に使用されない。
【0043】
それから、列車7が対象区間から第2隣接区間へ進出し始めると、そこの端部を車軸が通過する度に、右の区間端ユニット10から車軸進出検出信号oにて検出パルスが出力され、それに応じて進出車軸数Coが“+1”されるとともに、右の区間端ユニット10から検出子信号A1,A2にて検出パルスが出力され、それに応じて第2通過車軸計数部43Caの検出子毎車軸数ΣA1,ΣA2もそれぞれ“+1”される。
そして、列車7が対象区間を進出し終えたときには(
図2(c)参照)、進出車軸数Coが列車7の車軸数と同じ“8”になることから、それと進入車軸数Biの“8”とが相殺しあって入出差Δ1=(+Bi+Ci-Bo-Co)が“0”になるので、対象区間に係る在線判定結果が非在線になる。
【0044】
なお、このとき、第2通過車軸計数部43Caの検出子毎車軸数ΣA1,ΣA2も通過車軸数Caも列車7の車軸数と同じ“8”になるが、こちらは判定に使用されない。
こうして、常態では(
図1(b),
図2参照)、既述した従来品と同様に、進入車軸数Bi,Ciと進出車軸数Bo,Coとに基づく入出差基準判定がなされるので、対象区間に係る列車在線状態が的確に把握される。また、繰り返しとなる詳細な説明は割愛するが、列車7が第2隣接区間から対象区間を経て第1隣接区間へ走行したときも、左右が入れ替わるのは別として、同様の動作状況となる。
【0045】
次に、
図1(c)と
図3~
図6とを参照しながら、左右の区間端ユニット10,10のうち何れか一つ例えば左の区間端ユニット10において片方の車軸検出子11が故障して検出子信号A2が出力されない異常状態を具体例として詳述する。
かかる非常時には(
図1(c)参照)、第1端部毎切替部43Bxの切り替わりによって、採択車軸数として進入車軸数Biでなく通過車軸数Baが採択されるようになる。
そのため、故障ユニット10側(左側)の第1計数部43Bから入出差算出部41へは、第1通過車軸計数部43Baの通過車軸数Baと第1進出車軸計数部23Boの進出車軸数Boとが送られることになる。
【0046】
これに対し、正常ユニット10側(右側)の第2計数部43Cから入出差算出部41へは、上述した総て正常時と同じく、採択車軸数として進入車軸数Ciが採択されるので、第2進入車軸計数部23Ciの進入車軸数Ciと第2進出車軸計数部23Coの進出車軸数Coとが送られる。
そして、それらの差Δとして上述した正常時の入出差Δ1でなく非常時の入出差Δ2=(+Ba+Ci-Bo-Co)が算出される。すなわち、式[+通過車軸数Ba-進出車軸数Bo+進入車軸数Ci-進出車軸数Co]が入出差算出部41によって演算される。その算出値(Δ2)が差Δとして判定部22に送られる。
【0047】
このような車軸計数装置40の非常時の動作状況についても、先ず、
図1(c)と
図3とを参照しながら、列車7がレール4を第1隣接区間から対象区間を経て第2隣接区間へ走行したときの状況を述べる。
列車7が第1隣接区間に在って対象区間に無い状態では(
図3(a)参照)、通過車軸数Baも進入車軸数Biも進出車軸数Boも通過車軸数Caも進入車軸数Ciも進出車軸数Coも総て“0”で、入出差Δ2=(+Ba+Ci-Bo-Co)も“0”なので、対象区間に係る在線判定結果が適正な非在線になる。
【0048】
それから、8個の車軸を持った列車7が第1隣接区間寄り端部から対象区間へ進入し始めると、車軸が端部を通過する度に、左の区間端ユニット10から検出子信号A1にて検出パルスが出力され、それに応じて第1通過車軸計数部43Baの検出子毎車軸数ΣA1が“+1”される。これに対し、異常の影響によって、検出子信号A2と車軸進入検出信号iには検出パルスが出力されない。そのため、列車7が対象区間に進入し終えたときには(
図3(b)参照)、進入車軸数Biは“0”のままであるが、第1通過車軸計数部43Baの検出子毎車軸数ΣA1は列車7の車軸数と同じ“8”になり、それに応じて通過車軸数Baも“8”になることから、入出差Δ2(+Ba+Ci-Bo-Co)も“8”になるので、対象区間に係る在線判定結果が適正な在線になる。
【0049】
それから、列車7が対象区間から第2隣接区間へ進出し始めると、車軸が端部を通過する度に、右の区間端ユニット10から車軸進出検出信号oにて検出パルスが出力され、それに応じて進出車軸数Coが“+1”されるとともに、右の区間端ユニット10から検出子信号A1,A2にて検出パルスが出力され、それに応じて第2通過車軸計数部43Caの検出子毎車軸数ΣA1,ΣA2もそれぞれ“+1”される。そして、列車7が対象区間を進出し終えたときには(
図3(c)参照)、第2進出車軸計数部23Coの進出車軸数Coが列車7の車軸数と同じ“8”になることから、入出差Δ2=(+Ba+Ci-Bo-Co)が“0”になるので、対象区間に係る在線判定結果が適正な非在線になる。なお、第2通過車軸計数部43Caの検出子毎車軸数ΣA1,ΣA2も更には通過車軸数Caも列車7の車軸数と同じ“8”になるが、こちらは判定に使用されない。
【0050】
こうして、一部の端部に関して進入車軸数Biや進出車軸数Boを検出することができなくなった非常時であっても(
図1(c),
図3参照)、その端部に係る検出子信号A1,A2の何れかに基づいて通過車軸数Baを検出することができる状況であれば、既述した従来品とは異なり、通過車軸数Baと進出車軸数Boと進入車軸数Ciと進出車軸数Coとに基づく入出差基準判定{入出差Δ2(+Ba+Ci-Bo-Co)が“0”か否かの判定}がなされるので、対象区間に係る列車在線状態が的確に把握される。
【0051】
次に、車軸計数装置40の非常時の動作状況について、
図1(c)と
図4とを参照しながら、列車7がレール4を第2隣接区間から対象区間を経て第1隣接区間へ走行したときの状況を述べる。
この場合も、列車7が第2隣接区間に在って対象区間に無い状態では(
図4(a)参照)、通過車軸数Baも進入車軸数Biも進出車軸数Boも通過車軸数Caも進入車軸数Ciも進出車軸数Coも総て“0”で、入出差Δ2=(+Ba+Ci-Bo-Co)も“0”なので、対象区間に係る在線判定結果が適正な非在線になる。
【0052】
それから、8個の車軸を持った列車7が第2隣接区間寄り端部から対象区間へ進入し始めると、繰り返しとなる詳細な説明を割愛して簡潔に述べるが、右の区間端ユニット10は正常なので、8個の車軸の通過と進入出とが正しく検出されて、列車7が対象区間に進入し終えたときには(
図4(b)参照)、進出車軸数Coは“0”のままであるが、進入車軸数Ciと通過車軸数Caが車軸数と同じ“8”になる。
この場合、入出差Δ2(+Ba+Ci-Bo-Co)も“8”になるので、対象区間に係る在線判定結果が適正な在線になる。
【0053】
それから、列車7が対象区間から第1隣接区間へ進出し始めると、やはり繰り返しとなる詳細な説明を割愛して簡潔に述べるが、左の区間端ユニット10が異常なことから、8個の車軸の通過は検出されるが進入と進出は検出されないので、列車7が対象区間を進出し終えたときには(
図4(c)参照)、通過車軸数Baは車軸数と同じ“8”になるが、進入車軸数Biも進出車軸数Boも“0”のままである。
この場合、入出差Δ2(+Ba+Ci-Bo-Co)が“16”になるので、対象区間に係る在線判定結果が正しくない在線になるが、これは列車の二重進入事故を回避できる安全側の判定結果なので、必要な保安度は確保される。
【0054】
次に、車軸計数装置40の非常時の動作状況について、
図1(c)と
図5とを参照しながら、左側で折り返した状況、すなわち列車7がレール4を走行して第1隣接区間から対象区間へ入りかけて入りきらないうちに第1隣接区間へ戻ったときの状況を述べる。
この場合も、列車7が第1隣接区間に在って対象区間に無い状態では(
図5(a)参照)、通過車軸数Baも進入車軸数Biも進出車軸数Boも通過車軸数Caも進入車軸数Ciも進出車軸数Coも総て“0”で、入出差Δ2=(+Ba+Ci-Bo-Co)も“0”なので、対象区間に係る在線判定結果が適正な非在線になる。
【0055】
それから、8個の車軸を持った列車7が第1隣接区間寄り端部から対象区間へ進入し始めて8個のうち1個の車軸だけが対象区間へ進入すると(
図5(b)参照)、左の区間端ユニット10は異常なので、進入車軸数Biは“0”のままであるが、通過車軸数Baは“1”になる。進出車軸数Boは“0”のままである。
この場合、入出差Δ2(+Ba+Ci-Bo-Co)が“1”になるので、対象区間に係る在線判定結果が適正な在線になる。
【0056】
それから直ちに列車7が対象区間の左端から第1隣接区間へ戻ると(
図5(c)参照)、左の区間端ユニット10が異常なため通過車軸数Baは図示した“1”のままか図示しない“2”になるが、進入車軸数Biも進出車軸数Boも“0”のままである。
この場合、入出差Δ2(+Ba+Ci-Bo-Co)が図示した“1”か図示しない“2”になるので、対象区間に係る在線判定結果が正しくない在線になるが、これは列車の二重進入事故を回避できる安全側の判定結果なので、必要な保安度は確保される。
【0057】
次に、車軸計数装置40の非常時の動作状況について、
図1(c)と
図6とを参照しながら、右側で折り返した状況、すなわち列車7がレール4を走行して第2隣接区間から対象区間へ入りかけて入りきらないうちに第2隣接区間へ戻ったときの状況を述べる。
この場合も、列車7が第2隣接区間に在って対象区間に無い状態では(
図6(a)参照)、通過車軸数Baも進入車軸数Biも進出車軸数Boも通過車軸数Caも進入車軸数Ciも進出車軸数Coも総て“0”で、入出差Δ2=(+Ba+Ci-Bo-Co)も“0”なので、対象区間に係る在線判定結果が適正な非在線になる。
【0058】
それから、8個の車軸を持った列車7が第2隣接区間寄り端部から対象区間へ進入し始めて8個のうち1個の車軸だけが対象区間へ進入すると(
図6(b)参照)、右の区間端ユニット10は正常なので、進入車軸数Ciと進出車軸数Coは“0”のままであるが、通過車軸数Caは“1”になる。
この場合、右の区間端ユニット10が正常なため通過車軸数Caは入出差Δ2の演算に用いられないことから、入出差Δ2(+Ba+Ci-Bo-Co)が“0”になるので、対象区間に係る在線判定結果が適正な非在線を維持する。
【0059】
それから直ちに列車7が対象区間の右端から第2隣接区間へ戻ると(
図6(c)参照)、通過車軸数Caは図示した“1”のままか図示しない“2”になるが、進入車軸数Ciも進出車軸数Coも“0”のままである。
この場合も、右の区間端ユニット10が正常なため通過車軸数Caは入出差Δ2の演算に用いられないことから、やはり入出差Δ2(+Ba+Ci-Bo-Co)が“0”になるので、対象区間に係る在線判定結果が適正な非在線を維持する。
【0060】
以上の動作説明から明らかなように、この車軸計数装置40にあっては、区間端ユニット10の異常な端部であっても列車進入については過剰な阻止が回避されて適正な在線という判定結果が出され、区間端ユニット10の異常な端部に係る列車の進出と折り返しについては、正しくはなくても安全側である在線という判定結果が出される。しかも、対象区間の何れかの区間端ユニット10に異常があっても、区間端ユニット10の正常な端部については、列車進入時には在線という適正な判定結果が出され、列車進出時にも更には列車折返時にも、非在線という適正な判定結果が出される。そのため、本発明では、保安度を損なうことなく稼働率が向上するのを期待することができる。
【0061】
[その他1]
本願発明は先願(特許文献4参照)の車軸計数装置の要件を具備しているので、その先願の技術的範囲に属するものであるが、要件の具体化や追加によって別発明と言えるものにまで改良されていることを明確にするために、
図7に示した先願の車軸計数装置の実施例を「先行例」として、その非常時の列車走行状況を説明する。
この先行例では、対象区間の何れかの区間端ユニット10が異常になると、他の正常な区間端ユニット10についても一律に、進入車軸数Bi,Ciに代えて通過車軸数Ba,Caを演算に使用していた(
図7参照)。
【0062】
そのため、上述のように右側で折り返した状況では、列車7が未だ第2隣接区間の中に在る状態では(
図7(a)参照)、各軸数Ba,Bi,Bo,Ca,Ci,Coが総て“0”であり入出差Δ2も“0”であり対象区間に係る在線判定結果が適正な非在線になるのは同じであるが、列車7の先頭1個の車軸が対象区間へ進入すると(
図7(b)参照)、通過車軸数Caが“1”になり、対象区間に係る在線判定結果が在線になる。それから直ちに列車7が第2隣接区間へ戻っても(
図7(c)参照)、通過車軸数Caは“1”以上を維持し、入出差Δ2も“1”以上になるので、対象区間に係る在線判定結果が正しくはないが安全側の在線にとどまる。この点が本発明の実施例との相違点である。
【0063】
[その他2]
上記実施例では、進出車軸数Boが第1計数部43Bから第1端部毎切替部43Bxを介して入出差算出部41へ送られるとともに、進出車軸数Coが第2計数部43Cから第2端部毎切替部43Cxを介して入出差算出部41へ送られるようになっていたが、これらは必須でなく、進出車軸数Boが第1計数部43Bから第1端部毎切替部43Bxを介すことなく入出差算出部41へ送られるようにしても良く、進出車軸数Coが第2計数部43Cから第2端部毎切替部43Cxを介すことなく入出差算出部41へ送られるようにしても良い。
【0064】
上記実施例では、対象区間について差Δ(入出差Δ1,Δ2)が“0”のときに限って非在線と判定するようになっていたが、列車の各車両には四つ以上の車軸が装備されていることが多く、その場合、差Δが“4”以上の単位で変化するため、差Δが“1”~“3”や“-1”~“-3”の値を採るということは基本的に無いが、幾つかの車軸検出子11のうち一つが一回だけ検出を誤ると差Δ2が“+1”や“-1”になることがあるので、差Δ2が“+1”や“-1”のときには、非在線と判定するのでなく、“0”に準じて在線と判定するようにしても良い。
【0065】
また、そのように入出差Δ1,Δ2に基づく非在線の判定要件を“0”や“±1”といった特定の数値にしたのは、カウント値のリセットやデバッグ等までも容易にすることを考慮したためであり、例えば、各軸数Bi,Bo,Ci,Coや算出値Δ1,Δ2に予め他のオフセット値を設定しておき、そのオフセットが判定時に相殺されるような判定を行うことや、列車の非在線時に入出差Δ1,Δ2が採るべき謂わば非在線時総和値に上記オフセット値が反映されるような演算を行うといったこと等により、比較的容易に、上述のような特定値による発明特定要件の限定は回避や迂回することができる。
【0066】
上記実施例では、車軸検出子11の検出子信号A1,A2が車軸計数装置40によって直に入力されるような構成例を図示したが、車軸検出子11の検出子信号A1,A2が車軸検知器12を介して車軸計数装置40へ送られるようにしても良く、その際、車軸検知器12は、単に中継するだけでも良く、波形整形や信号レベル増幅さらには雑音除去など適宜な加工を施すようになっていても良い。
【0067】
上記実施例では、対象区間の端部に臨んで車軸検出子11が二個しか設けられていなかったが、一つの端部に三個の車軸検出子11が設けられていても、背景技術の欄で述べたように車軸の進入と進出が検出可能であり(
図8参照)、通過車軸数も個々の車軸検出子11の検出結果の最大値を採択する手法にて検出することができる。一つの端部に四個以上の車軸検出子11が設けられても同様に必要な車軸数を計ることができる。対象区間の各端部に付設されている車軸検出子11の個数が端部毎に異なっていても、やはり必要な車軸数を計ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の車軸計数装置は、上記の実施例で示した如く端部を二つ持つ対象区間に適用が限定されるものでなく、三つ以上の端部を持った対象区間にも(
図8参照)、適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
4…レール(線路)、7…列車(鉄道車両)
10…区間端ユニット、11…車軸検出子、12…車軸検知器、
20…車軸計数装置、
21…入出差算出部、22…判定部、
23…計数部、23B…第1計数部、23C…第2計数部、
23Bi…第1進入車軸計数部、23Bo…第1進出車軸計数部、
23Ci…第2進入車軸計数部、23Co…第2進出車軸計数部、
40…車軸計数装置、
41…入出差算出部、43…計数部、
43B…第1計数部、43C…第2計数部、
43Ba…第1通過車軸計数部、43Ca…第2通過車軸計数部、
43Bx…第1端部毎切替部、43Cx…第2端部毎切替部、
A1…検出子信号、A2…検出子信号、A3…検出子信号、
i…車軸進入検出信号、o…車軸進出検出信号、
Ba…通過車軸数、Bi…進入車軸数、Bo…進出車軸数、
Ca…通過車軸数、Ci…進入車軸数、Co…進出車軸数、
ΣA1…検出子毎車軸数、ΣA2…検出子毎車軸数、ΣA3…検出子毎車軸数