(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】色変換装置、色変換方法、及びインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/21 20060101AFI20220127BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
B41J2/21
B41J2/01 123
(21)【出願番号】P 2017051328
(22)【出願日】2017-03-16
【審査請求日】2019-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】原山 健次
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-052225(JP,A)
【文献】特開2011-201151(JP,A)
【文献】特開2012-096467(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0354726(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地色のインク滴を吐出することで記録媒体の直上又は上方に下地層を形成し、かつ複数色のインク滴を吐出することで前記記録媒体又は前記下地層の直上に画像層を形成してなる成果物を生成するための色変換装置であって、
前記画像層の一部又は全部を示すコンテンツデータに対して、前記画像層が示す画像領域内の位置毎に、前記下地層の有無又は前記下地色の種類に応じた色変換処理を行う色変換処理部と、
前記色変換処理部により前記色変換処理が行われた前記コンテンツデータを用いて、前記複数色のインク滴に関する吐出情報を示す画像層データを作成する画像層データ作成部と、を備え、
前記コンテンツデータは、前記画像層を形成する画像層コンテンツデータと、前記下地層を形成する下地層コンテンツデータを有し、
前記色変換処理部は、前記画像層の画素が有する位置チャンネルの値が共通する前記画素において、前記画像層コンテンツデータと前記下地層コンテンツデータの両方を読み込み、前記下地層コンテンツデータの前記画素の情報に応じたカラープロファイルを用いて前記画像層コンテンツデータの前記画素における色変換処理を行うことを特徴とする色変換装置。
【請求項2】
前記下地色のインク滴に関する吐出情報を示す下地層データを作成する下地層データ作成部を更に備え、
前記下地層データ作成部は、前記画像層データの解像度に等しい解像度を有する前記下地層データを作成することを特徴とする請求項1に記載の色変換装置。
【請求項3】
前記画像層の直下の前記下地層は、異なる種類のインク滴によって形成された複数の分割された領域を面内に有しており、
前記画像層データ作成部は、前記下地層の分割された領域毎のインク滴の種類に応じて画像層データを作成することを特徴とする請求項1又は2に記載の色変換装置。
【請求項4】
前記記録媒体は透明であり、
前記画像層は、第1の画像層と第2の画像層とを有し、前記第1の画像層と前記第2の画像層の間にそれぞれに接するように背景層が形成されており、
前記画像層データ作成部は、前記記録媒体又は前記下地層の種類に応じて前記記録媒体と前記背景層との間に位置する第1の画像層を形成する画像層データを作成し、前記背景層の種類に応じて前記背景層に対して前記第1の画像層と反対の面に位置する第2の画像層を形成する画像層データを作成することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の色変換装置。
【請求項5】
前記色変換処理部は、前記画像層コンテンツデータと前記下地層コンテンツデータの両方の読み込み、及び前記下地層コンテンツデータの前記画素の情報に応じたカラープロファイルを用いて前記画像層コンテンツデータの前記画素における色変換処理を、すべての前記画素について情報を取得したか否かを判定し、すべての前記画素が対応する情報を取得するまで、前記読み込み及び色変換処理を繰り返すことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の色変換装置。
【請求項6】
更に前記下地
層の、前記インク滴のドットゲインが変動し得る表面性状に基づき前記色変換処理を行うことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の色変換装置。
【請求項7】
下地色のインク滴を吐出することで記録媒体の直上又は上方に下地層を形成し、かつ複数色のインク滴を吐出することで前記記録媒体又は前記下地層の直上に画像層を形成してなる成果物を生成するための色変換方法であって、
前記画像層の一部又は全部を示すコンテンツデータに対して、前記画像層が示す画像領域内の位置毎に、前記下地層の有無又は前記下地色の種類に応じた色変換処理を行う処理ステップと、
前記色変換処理が行われた前記コンテンツデータを用いて、前記複数色のインク滴に関する吐出情報を示す画像層データを作成する作成ステップと、
前記画像層の画素が有する位置チャンネルの値が共通する前記画素において、前記コンテンツデータに含まれる前記画像層を形成する画像層コンテンツデータと前記コンテンツデータに含まれる前記下地層を形成する下地層コンテンツデータの両方を読み込み、前記下地層コンテンツデータの前記画素の情報に応じたカラープロファイルを用いて前記画像層コンテンツデータの前記画素における色変換処理を行うステップと、
を有することを特徴とする色変換方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の色変換装置と、
複数色のインク滴を吐出可能な吐出ユニットと、
前記色変換装置により得られた前記画像層データに基づいて前記吐出ユニットの吐出制御を行う吐出制御部と
を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下地色のインク滴を吐出することで記録媒体の直上又は上方に下地層を形成し、かつ複数色のインク滴を吐出することで記録媒体又は下地層の直上に画像層を形成してなる成果物を生成するための色変換装置、色変換方法、及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、商業印刷分野において、複数色のインク滴を吐出することで記録媒体の上に画像を形成するインクジェット記録装置が開発されている。例えば、インク滴によるドット径を適切に制御するための画像技術が種々提案されている。
【0003】
特許文献1では、画像層の形成に先立ち、硬化した状態の下地層を記録媒体の上に形成する方法及び装置が提案されている。このように、凹凸がない下地層の上に画像層を形成することで、画像層の高解像度化が可能である旨が記載されている。本文献では、下地層の色(以下、下地色)として、クリア(透明色)、ブラック又はホワイト(無彩色)が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5786415号公報([0006]、[0007]、[0015]等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、記録媒体の種類に応じて表面性状(例えば、表面粗さ、濡れ性)が異なることから、使用するインクとの関係によりドット径の大きさ(いわゆるドットゲイン)が異なってくる。つまり、下地層を形成するインクの種類によって画像層の色再現性が変動する可能性もある。しかし、特許文献1では、下地層と色再現性の関係性について何も言及されていない。
【0006】
例えば、[1]下地層が設けられない部分領域、[2]下地層が設けられる部分領域、更には[3]下地色が異なる部分領域、が同一の記録媒体の上に混在している場合、画像領域全体における色再現性の精度が部分的に異なるという問題が生じ得る。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、下地層が設けられる成果物に関して、下地層の形態にかかわらず画像領域全体における色再現精度を向上可能な色変換装置、色変換方法、及びインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る「色変換装置」は、下地色のインク滴を吐出することで記録媒体の直上又は上方に下地層を形成し、かつ複数色のインク滴を吐出することで前記記録媒体又は前記下地層の直上に画像層を形成してなる成果物を生成するための装置であって、前記画像層の一部又は全部を示すコンテンツデータに対して、前記画像層が示す画像領域内の位置毎に、前記下地層の有無又は前記下地色の種類に応じた色変換処理を行う色変換処理部と、前記色変換処理部により前記色変換処理が行われた前記コンテンツデータを用いて、前記複数色のインク滴に関する吐出情報を示す画像層データを作成する画像層データ作成部を備える。
【0009】
このように、画像層の一部又は全部を示すコンテンツデータに対して、下地層の有無又は下地色の種類に応じた色変換処理を行うことで、画像層の直下にある下地層が色再現性に与える影響を考慮しながら画像層の色を調整可能となる。これにより、下地層が設けられる成果物に関して、下地層の形態にかかわらず画像領域全体における色再現精度が向上する。
【0010】
また、前記下地色のインク滴に関する吐出情報を示す下地層データを作成する下地層データ作成部を更に備え、前記下地層データ作成部は、前記画像層データの解像度に等しい解像度を有する前記下地層データを作成することが好ましい。これにより、下地層及び画像層のそれぞれで吐出されるインク滴の、記録媒体上における位置関係が略同一になる。
【0011】
また、前記画像層の直下の前記下地層は、異なる種類のインク滴によって形成された複数の分割された領域を面内に有しており、前記画像層データ作成部は、前記下地層の分割された領域毎のインク滴の種類に応じて画像層データを作成することが好ましい。これにより、下地層の同じ面内において異なる下地層が形成されている場合であっても、領域毎の色再現の差を小さくすることができる。
【0012】
また、前記記録媒体は透明であり、前記画像層は、第1の画像層と第2の画像層とを有し、前記第1の画像層と前記第2の画像層の間にそれぞれに接するように背景層が形成されており、前記画像層データ作成部は、前記記録媒体又は前記下地層の種類に応じて前記記録媒体と前記背景層との間に位置する第1の画像層を形成する画像層データを作成し、前記背景層の種類に応じて前記背景層に対して前記第1の画像層と反対の面に位置する第2の画像層を形成する画像層データを作成することが好ましい。これにより、透明の記録媒体を用いて形成された両面観察用の成果物を形成した場合であっても、一方の面側と他方の面側での色再現の差を小さくすることができる。
【0013】
本発明に係る「色変換方法」は、下地色のインク滴を吐出することで記録媒体の直上又は上方に下地層を形成し、かつ複数色のインク滴を吐出することで前記記録媒体又は前記下地層の直上に画像層を形成してなる成果物を生成するための方法であって、前記画像層の一部又は全部を示すコンテンツデータに対して、前記画像層が示す画像領域内の位置毎に、前記下地層の有無又は前記下地色の種類に応じた色変換処理を行う処理ステップと、前記色変換処理が行われた前記コンテンツデータを用いて、前記複数色のインク滴に関する吐出情報を示す画像層データを作成する作成ステップをコンピュータに実行させる。
【0014】
本発明に係る「インクジェット記録装置」は、上記したいずれかの色変換装置と、複数色のインク滴を吐出可能な吐出ユニットと、前記色変換装置により得られた前記画像層データに基づいて前記吐出ユニットの吐出制御を行う吐出制御部を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る色変換装置、色変換方法、及びインクジェット記録装置によれば、下地層が設けられる成果物に関して、下地層の形態にかかわらず画像領域全体における色再現精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この実施形態に係るインクジェット記録装置の全体斜視図である。
【
図2】
図1に示す第2キャリッジ部の概略平面透視図である。
【
図3】
図1に示すプリンタ本体の電気ブロック図である。
【
図4】
図1に示すRIP装置の電気ブロック図である。
【
図5】
図1に示すインクジェット記録装置の動作説明に供されるフローチャートである。
【
図6】メディア領域、画像領域及び下地領域の位置関係を示す模式図である。
【
図8】記録媒体の色が不透明である成果物の生産工程を示す時系列図である。
【
図9】記録媒体の色が透明である成果物の生産工程を示す時系列図である。
【
図10】1つの画像層が形成された成果物の観察形態を示す模式図である。
【
図11】両面観察に対応するドット画像データの構造例を示す模式図である。
【
図12】2つの画像層が形成された成果物の観察形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るインクジェット記録装置について、色変換装置及び色変換方法との関係において好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0018】
<インクジェット記録装置10の全体構成>
図1は、この実施形態に係るインクジェット記録装置10の全体斜視図である。このインクジェット記録装置10は、カラー画像又はモノクロ画像を形成するプリンタ本体12と、プリンタ本体12との間で通信可能に接続されるRIP(Raster Image Processor)装置14(色変換装置)とから構成される。
【0019】
プリンタ本体12は、複数色のインクを用いて記録媒体Mの上に画像を形成するフラットベッド型のインクジェットプリンタである。このプリンタ本体12は、基本的には、本体ユニット16及び印刷ユニット18から構成されている。
【0020】
記録媒体Mの種類として、例えば、紙、不織布、塩化ビニル、合成化学繊維、ポリエチレン、ポリエステル、ターポリン、或いはアクリル板を含む種々の材質からなるメディア(浸透性/非浸透性を問わない)が用いられる。インクの種類として、例えば、溶剤系インク(典型的には、光硬化型インク)、水系インク(典型的には、染料インク・顔料インク)、或いは固体インクが用いられる。
【0021】
本体ユニット16は、フレーム状の基台20と、基台20の上方に固定された支持テーブル22と、支持テーブル22に接続された真空ブロア24と、タッチパネル式ディスプレイ、スピーカ又はボタンを含んで構成される操作部26を備える。
【0022】
支持テーブル22の中央部には、多数の空気孔(不図示)が形成された吸着盤28が設けられている。各々の空気孔と真空ブロア24とは、減圧室(不図示)を介して連通している。すなわち、真空ブロア24の作動により、吸着盤28に対して記録媒体Mを吸着可能であると共に、記録媒体Mの吸着状態を解除可能である。
【0023】
印刷ユニット18は、X方向に移動可能な第1キャリッジ部30、及び、第1キャリッジ部30のガイドレール32、32に沿ってY方向に移動可能な第2キャリッジ部34を備える。第1キャリッジ部30の両端部にあるガイド突出部36は、支持テーブル22の両側部にあるガイド溝部38に対してスライド可能に係合されている。
【0024】
プリンタ本体12は、マルチパス(或いは、シャトルパス)記録方式を採用する。この装置構成では、第1キャリッジ部30を副走査方向(X方向)に移動させ、かつ第2キャリッジ部34を主走査方向(Y方向)に往復移動させながら、記録媒体Mの上の同じ位置(所定幅の画像領域)に向けてインク滴D(
図2)を複数回に分けて吐出することで画像を完成させる記録方式である。本図例では、主走査方向に相当するY方向は、副走査方向に相当するX方向に直交する。
【0025】
<第2キャリッジ部34の具体的構成>
図2は、
図1に示す第2キャリッジ部34の概略平面透視図である。第2キャリッジ部34は、2色以上のインクをそれぞれインク滴Dとして吐出可能な吐出ユニット42と、吐出ユニット42の両側に配される照射ユニット43、44とを含んで構成される。
【0026】
吐出ユニット42及び照射ユニット43、44は、本体ユニット16が備える駆動回路46にそれぞれ電気的に接続されている。この駆動回路46は、吐出ユニット42に対する「吐出制御」及び照射ユニット43、44に対する「照射制御」を行うための電気回路である。
【0027】
各々の照射ユニット43、44は、インク滴Dを硬化させる活性光線(例えば、紫外線)を記録媒体Mに向けて照射可能である。例えば、紫外線を発する光源は、希ガス放電灯、水銀放電灯、蛍光灯ランプ、LED(Light Emitting Diode)アレイ等で構成される。
【0028】
吐出ユニット42は、1つ以上のノズル列48をそれぞれ有し、吐出ヘッド50と、吐出ヘッド50を保持する平面視矩形状のヘッドホルダ52を有する。以下、ノズル列の参照数字(48)に添字(c/m/y/k/w/cl/sv)をそれぞれ付与し、区別して表記する場合がある。
【0029】
吐出ヘッド50によるインク滴Dの吐出機構として種々の方式を採ってもよい。例えば、圧電素子を含んで構成されるアクチュエータの変形によってインク滴Dを吐出する方式を適用してもよい。また、ヒータ(発熱体)を介してインクを加熱することで気泡を発生させ、その圧力でインク滴Dを吐出する方式を適用してもよい。
【0030】
吐出ヘッド50のノズル列48yは、イエロー(Y)のインク滴Dを吐出する複数のノズル54が、X方向に沿って等間隔に配置されてなる。ノズル列48cは、シアン(C)のインク滴Dを吐出する複数のノズル54が、X方向に沿って等間隔に配置されてなる。ノズル列48mは、マゼンタ(M)のインク滴Dを吐出する複数のノズル54が、X方向に沿って等間隔に配置されてなる。ノズル列48kは、ブラック(K)のインク滴Dを吐出する複数のノズル54が、X方向に沿って等間隔に配置されてなる。
【0031】
また、ノズル列48w、48wはそれぞれ、ホワイト(W)のインク滴Dを吐出する複数のノズル54が、X方向においてノズル列48y,48c,48m,48kを挟んだ両側に配置されてなる。ノズル列48cl、48clはそれぞれ、クリア(CL)のインク滴Dを吐出する複数のノズル54が、X方向においてノズル列48w,48y,48c,48m,48k,48wを挟んだ両側に配置されてなる。そして、ノズル列48sv、48svはそれぞれ、シルバー(SV)のインク滴Dを吐出する複数のノズル54が、X方向においてノズル列48cl,48w,48y,48c,48m,48k,48w,48clを挟んで両端に配置されてなる。
【0032】
インクの色の構成は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)のプロセスカラーのみならず、LC(ライトシアン)、LM(ライトマゼンタ)、Gy(グレー)、W(ホワイト)、CL(クリア)、Pr(プライマー)のうちの少なくとも1色を組み合わせてもよい。或いは、O(オレンジ)、バイオレット、金属色(具体的には、ゴールド、シルバー)、蛍光色を含むスポットカラー(特色)を適宜組み合わせてもよい。
【0033】
ここで、吐出ユニット42が吐出可能なインクの色には、下地層110(
図8等)を構成する色(以下、下地色)が含まれる。ここで、下地色は、画像の下地に使用される色であり、典型的には、W(ホワイト)、CL(クリア)、Pr(プライマー)、K(ブラック)、金属色(シルバー、ゴールド)、或いは蛍光色である。なお、画像層111(
図8等)を構成する色の中に「下地色」が含まれてもよい点に留意する。
【0034】
<プリンタ本体12の電気ブロック図>
図3は、
図1に示すプリンタ本体12の電気ブロック図である。プリンタ本体12は、操作部26(
図1)、第1キャリッジ部30、第2キャリッジ部34、吐出ユニット42、照射ユニット43、44、駆動回路46(いずれも
図2参照)の他、プリント制御部60、印刷I/F62、記憶部64、及び移動機構66を含んで構成される。
【0035】
印刷I/F62は、シリアルI/F又はパラレルI/Fで構成され、印刷用データを含む電気信号をRIP装置14から受信する。記憶部64は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体、具体的にはメモリ装置で構成される。
【0036】
移動機構66は、記録媒体Mに対して、印刷ユニット18をX方向及びY方向に沿って相対移動させる機構である。この実施形態では、移動機構66は、第1キャリッジ部30をX方向に往復移動させると共に、第2キャリッジ部34をY方向に沿って往復移動させる。
【0037】
プリント制御部60は、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro-Processing Unit)のプロセッサを含んで構成される制御基板である。プリント制御部60は、記憶部64に格納されたプログラムを読み出し実行することで、信号処理部68を含む各機能を実現可能である。信号処理部68は、印刷I/F62を介して入力されたドット画像データ206(ドットの有無及び配置を示すデータ;
図4参照)に基づいてインク滴Dの吐出制御に供される制御信号、具体的には、吐出ヘッド50が備えるアクチュエータの駆動波形信号を生成する。
【0038】
駆動回路46の一部をなす吐出制御部70は、印刷ユニット18及び記録媒体Mの相対移動の下、吐出ユニット42の吐出制御を行う。例えば、吐出制御部70は、プリント制御部60から出力される駆動波形信号に応じて、吐出ヘッド50のノズル列48からインク滴Dを適時に吐出させる。
【0039】
駆動回路46の一部をなす照射制御部72は、印刷ユニット18及び記録媒体Mの相対移動の下、照射ユニット43、44の照射制御を行う。例えば、照射制御部72は、予め指定された照射条件に従って、照射ユニット43、44から適量の紫外線を照射させる。
【0040】
<RIP装置14の電気ブロック図>
図4は、
図1に示すRIP装置14の電気ブロック図である。RIP装置14は、制御部80と、通信I/F82と、印刷I/F84と、UI(ユーザインターフェース)部86と、記憶部88と、を備えるコンピュータである。
【0041】
通信I/F82は、外部装置に対して電気信号を送受信するインターフェースである。これにより、RIP装置14は、通信I/F82を介して、印刷ジョブの実行に必要な各種情報を取得可能である。
【0042】
印刷I/F84は、プリンタ本体12に対して電気信号を送受信するインターフェースである。これにより、プリンタ本体12は、RIP装置14から供給された印刷用データ(例えば、ドット画像データ206)に基づいて、記録媒体Mに対して所望の印刷処理を行う。
【0043】
UI部86は、入力デバイスによる入力機能及び出力デバイスによる出力機能を組み合わせることで、グラフィカル・ユーザ・インターフェース(GUI)を構築する。入力デバイスは、マウス、キーボード、タッチパネル又はマイクロフォンを含んで構成される。出力デバイスは、ディスプレイ又はスピーカを含んで構成される。
【0044】
記憶部88は、制御部80が各構成要素を制御するのに必要なプログラム及びデータ等を記憶している。本図例では、記憶部88には、1つ又は複数のコンテンツデータ203、及びドット画像データ206が記憶されると共に、色変換条件に関するデータベース(以下、色変換条件DB207)が構築されている。ここで、ドット画像データ206は、画像層111(
図8等)を示す画像層データ204と、下地層110(
図8等)を示す下地層データ205から構成される。
【0045】
記憶部88は、非一過性であり、且つ、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体で構成されてもよい。ここで、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM、フラッシュメモリ等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。また、この記憶媒体は、短時間に且つ動的にプログラムを保持するものであっても、一定時間プログラムを保持するものであってもよい。
【0046】
制御部80は、CPU、MPU、又はGPU(Graphics Processing Unit)のプロセッサによって構成されている。制御部80は、記憶部88に格納されたプログラムを読み出し実行することで、色変換処理部95、画像層データ作成部96、下地層データ作成部97、及び印刷指示部98の各機能を実現可能である。
【0047】
<インクジェット記録装置10の動作>
この実施形態に係るインクジェット記録装置10は以上のように構成される。続いて、印刷ジョブの実行を受け付けた後におけるインクジェット記録装置10の動作について、主に
図5のフローチャートを参照しながら説明する。ここでは、成果物121、122(
図10、
図12)の層構成に適した色変換方法を中心に述べる。
【0048】
ステップS1において、RIP装置14の制御部80は、印刷処理に供されるコンテンツデータ203に適した印刷情報を取得する。具体的には、制御部80は、[1]支持テーブル22内の作図範囲、記録媒体Mの厚さを含む、XYZ空間内の作図領域、[2]記録解像度、記録媒体Mの種類、インクの種類を含む印刷条件を取得する。
【0049】
図6は、メディア領域100、画像領域102及び異なる下地が形成される下地領域R1~R3の位置関係を示す模式図である。メディア領域100は、支持テーブル22(
図1)の上に吸着される記録媒体Mの主面領域である。画像領域102は、インク滴Dの吐出可能範囲を示す矩形状の領域であり、メディア領域100に対して僅かに内側に設けられている。
【0050】
下地領域R1~R3は、例えば、[1]コンテンツデータ203の内容・配置、[2]成果物121、122(
図10、
図12)の用途・観察態様、[3]記録媒体Mの種類・インクの種類、[4]発注者の嗜好・要求仕様、等によって決定される。ここでは、下地領域R1~R3内の色(インク種)はそれぞれ、クリア(CL)、ホワイト(W)、シルバー(SV)であることを想定する。これらの下地層領域R1~R3は、コンテンツデータ203の印刷条件として任意又は最適条件として設定される。
【0051】
ステップS2において、色変換処理部95は、コンテンツデータ203を読み込む。このとき、色変換処理部95はコンテンツデータ203に対して設定された下地層の色(インク種)情報を他の印刷条件と同時に取得する。
【0052】
ステップS3において、色変換処理部95は、ステップS2で取得した下地層の色(インク種)情報に応じた色変換処理を行う。この処理に先立ち、色変換処理部95は、下地層の色(インク種)に紐付けられた1つのカラープロファイルを選択する。そして、色変換処理部95は、予め選択したカラープロファイルを用いてコンテンツデータ203の色を変換する。
【0053】
ここで、
図7(A)は片面観察用の、描画オブジェクトの一形態であるコンテンツデータ203のデータ構造を示す模式図である。このコンテンツデータ203は、画像を形成する画像層コンテンツデータ200と下地層コンテンツデータ201から構成される。コンテンツデータ203は、3つのカラーチャンネルと1つの位置チャンネル(U)を有するラスタ形式の連続調画像データである。各々の画素PXは、例えば、RGBの3原色を組み合わせることで、連続階の色を表現する。
【0054】
ステップS2において、色変換処理部95は、コンテンツデータ203を読み込む。このとき、色変換処理部95は画素PX1が有する位置チャンネル(U1)の値が共通する画像層コンテンツデータ200と下地層コンテンツデータ201の両方を読み込み、画像層コンテンツデータ200の画素PX1に対応した下地層コンテンツデータ201の画素PX2を取得する。
【0055】
そして、ステップS3において、色変換処理部95は、ステップS3で取得した下地層コンテンツデータ201の画素PX2の情報に応じたカラープロファイルを用いて色変換処理を行う。
本図に示すデータ構造の場合、色変換処理部95は、カラープロファイルの一部を構成する3次元-4次元LUTを用いて、画素PX単位で色変換処理を行う。
【0056】
ステップS4において、色変換処理部95は、すべての画素PX1に対応する画素PX2の情報を取得したか否かを判定する。未取得の画素PX1に対応する画素PX2が存在する場合(ステップS4:NO)、ステップS2に戻る。
【0057】
以下、色変換処理部95は、すべて画素PX1が対応する画素PX2の情報を取得するまで、ステップS2、S3、S4を順次繰り返す。これにより、下地層コンテンツデータ201に応じた画像層コンテンツデータ200の色変換処理が行われる。
【0058】
ステップS3において、画像層データ作成部96は、色変換と並行して画像処理を実行する。具体的には、画像層データ作成部96は、コンテンツデータ203が有する印刷条件等を用いて、複数色のインク滴Dに関する吐出情報を示す画像層データ204を作成する。この画像処理には、例えば[1]解像度変換処理、[2]ラスタライズ処理、[3]ハーフトーン処理、[4]ドットサイズの割付処理、[5]インク量制限処理、が含まれる。
【0059】
また、同様に下地層データ作成部97は、下地層コンテンツデータ201についても印刷条件を基に色変換を行い、下地色のインク滴Dに関する吐出情報を示す下地層データ205を作成する。
【0060】
図7(B)は、ステップS3において色変換処理が行われた後の、ドット画像データ206のデータ構造の一例を示す模式図である。画像層データ204を構成する画素PX1は、CMYKの4原色を組み合わせることで、画像層111(
図8等)におけるドットの有無又はドットサイズを位置毎に表現する。下地層データ205を構成する画素PX2は、下地層110(
図8)、下地層110(
図9)におけるドットの有無又は下地色の種類を位置毎に表現する。すなわち、ドット画像データ206は、5つのカラーチャンネルで構成されたラスタ形式の多値画像データであるとも言える。
【0061】
このように、下地層データ作成部97は、下地色のインク滴Dに関する吐出情報を示すと共に、画像層データ204の解像度に等しい解像度を有する下地層データ205を作成してもよい。これにより、下地層110及び画像層111(
図8等)のそれぞれで吐出されるインク滴Dの、記録媒体M上における位置関係が略同一になる。
【0062】
ステップS5において、印刷指示部98は、ステップS4により得られたドット画像データ206を含む印刷用データを、プリンタ本体12に向けて送信する。そうすると、プリンタ本体12は、印刷I/F84(
図4)及び印刷I/F62(
図3)を介して印刷用データを受信する。この実施形態では、画像処理(ステップS3)が完了した後に送信処理(ステップS5)を実行しているが、1つ又は複数の画像列を処理単位として画像処理及び送信処理を並行する構成を採用してもよい。
【0063】
ステップS6において、印刷ユニット18は、駆動回路46及び移動機構66の連動により、複数パス工程制御による印刷処理を実行する。ここで「複数パス工程制御」とは、第1キャリッジ部30をX方向に複数回移動(例えば、1回以上の往復移動又は複数回の片道移動)させることで、画像を完成させる制御を意味する。
【0064】
以下、記録媒体Mの色が不透明である成果物121の生産工程について、
図8の時系列図を参照しながら説明する。なお、
図8(A)は1パス目の印刷処理を実行する前の状態図であり、
図8(B)は2パス目の印刷処理を実行する前の状態図であり、
図8(C)は2パス目の印刷処理を実行した後の状態図である。
【0065】
1パス目において、吐出ヘッド50のノズル列48(
図2)から、下地色となる色、例えば、ホワイト(W)、シルバー(SV)のインク滴Dが記録媒体M(
図8(A)参照)に向けて吐出される。その後、照射ユニット43、44による紫外線の照射によりインク滴Dが硬化され、その結果、記録媒体Mの上に下地層110が形成される(
図8(B)参照)。
【0066】
2パス目において、吐出ヘッド50の各々のノズル列48y,48c,48m,48k(
図2)から、プロセスカラー(YCMK)のインク滴Dが記録媒体Mに向けて吐出される。その後、照射ユニット43、44による紫外線の照射によりインク滴Dが硬化され、その結果、下地層110の上に画像層111が形成される。
これにより、
図8(C)に示す成果物121の生成動作が終了する。
【0067】
以下、記録媒体Mの色が透明である成果物122の生産工程について、
図9の時系列図を参照しながら説明する。なお、
図9(A)は1パス目の印刷処理を実行する前の状態図であり、
図9(B)は2パス目の印刷処理を実行する前の状態図であり、
図9(C)は3パス目の印刷処理を実行した後、
図9(D)は4パス目の印刷処理を実行した後の状態図である。
【0068】
1パス目において、吐出ヘッド50のノズル列48cl(
図2)から、クリア(CL)のインク滴Dが記録媒体M(
図9(A)参照)に向けて吐出される。その後、照射ユニット43、44による紫外線の照射によりインク滴Dが硬化され、その結果、記録媒体Mの上に下地層110が形成される(
図9(B)参照)。
【0069】
2パス目において、吐出ヘッド50の各々のノズル列48y,48c,48m,48k(
図2)から、プロセスカラー(YCMK)のインク滴Dが記録媒体Mに向けて吐出される。その後、照射ユニット43、44による紫外線の照射によりインク滴Dが硬化され、その結果、下地層110の上に第1の画像層111-1が形成される。
【0070】
3パス目において、吐出ヘッド50のノズル列48(
図2)から、背景色となる色であるホワイト(W)、シルバー(SV)のインク滴Dが記録媒体Mに向けて吐出される。その後、照射ユニット43、44による紫外線の照射によりインク滴Dが硬化され、その結果、第1の画像層111-1の上に背景層113が形成される。
【0071】
4パス目において、吐出ヘッド50の各々のノズル列48y,48c,48m,48k(
図2)から、プロセスカラー(YCMK)のインク滴Dが記録媒体Mに向けて吐出される。その後、照射ユニット43、44による紫外線の照射によりインク滴Dが硬化され、その結果、背景層113の上に第2の画像層111-2が形成される。これにより、
図9(C)に示す成果物122の生成動作が終了する。
【0072】
ステップS7において、下地層110を有する成果物121、122の生成動作が終了する。この成果物121、122は、例えば、POP(Point Of Purchase)広告、壁面ポスター、屋外広告、看板を含む商用印刷物として使用される。
【0073】
<成果物121の色再現>
図10は、
図6のX-X線に沿った断面図であって、1つの画像層111が形成された成果物121の観察形態を示す模式図に相当する。より詳しくは、
図10は
図8(C)に示す成果物121の部分断面図である。
【0074】
図10に示すように、成果物121は、不透明な記録媒体Mの主面上に、下から順に、下地層110、画像層111が積層されてなる。この積層構造を採用する場合、外光は、画像層111から入射し、画像層111又は下地層110にて反射した後、観察者の目Eに到達する。つまり、観察者は、成果物121を画像層111側から視ることで、画像層111が示す画像の内容を認識する。
【0075】
ここで、下地領域R1内において、下地層110は形成されず、記録媒体M上に直接画像層111が形成されていると共に、画像層111は背景層無しに対応する色変換処理が施された画像色を有する。下地領域R2内において、下地層110はホワイト(W)の下地色を有すると共に、画像層111はホワイト(W)に対応する色変換処理が施された画像色を有する。下地領域R3内において、下地層110はシルバー(SV)の下地色を有すると共に、画像層111はシルバー(SV)に対応する色変換処理が施された画像色を有する。
【0076】
つまり、下地層110の表面性状(表面粗さ、濡れ性等)により液滴Dのドットゲインが変動し得る現象を考慮して、下地領域R1~R3毎に画像層111の色変換処理が施される。これにより、画像層111の直下に下地層110が設けられる成果物121に関して、下地層110の形態及び/又は背景層113の有無にかかわらず画像領域102全体(すなわち、下地領域R1~R3)における色再現精度が向上する。
【0077】
<両面観察用の成果物122>
なお、成果物121の観察形態は、一方の主面のみから1種類の画像を視認可能である「片面観察」用に限られない。つまり、各々の主面から2種類の異なる画像を視認可能である「両面観察」用の成果物122(
図9)を生成することができる。
【0078】
図11は、両面観察に対応するドット画像データ206の構造例を示す模式図である。ドット画像データ206は、[1]第1画像層データ204a及び第2の画像層データ204bからなる画像層データ204と、[2]第1の下地層データ205a及び第2の下地層データ205bからなる下地層データ205を有する。このドット画像データ206は、10個のカラーチャンネルで構成されたラスタ形式の多値画像データであるとも言える。
【0079】
記録媒体M側に形成された第1の画像層111-1を形成するドット径は、その直下の層である下地層110に影響を受ける。一方、背景層113上に形成された第2の画像層111-2は、その直下の層である背景層113に影響を受ける。
成果物122のような両目観察用の場合は、成果物122を記録媒体M側から観察した場合と、第2の画像層111-2側から観察した場合とで、それぞれの画像の色味の再現をできるだけ近くしておくことが特に求められる。
【0080】
図11(A)は、両面観察用の描画オブジェクトの一形態であるコンテンツデータ203のデータ構造を示す模式図である。
図7(B)は、色変換処理が行われた後の、両面観察用のドット画像データのデータ構造の一例を示す模式図である。
ここでは、片面観察用と異なる部分の色変換処理についてのみ説明する。両面観察に対応するドット画像データ206の構造例を示す模式図である。
【0081】
色変換処理部95は、第1の画像層コンテンツデータ200aの下地層コンテンツデータ201として、第1の下地層コンテンツデータ201aを選択する。そして、第1の画像層コンテンツデータ200aの画素PX1が有する第1の位置チャンネル(U1)と、第1の下地層コンテンツデータ201aの画素PX2が有する第2の位置チャンネル(U2)とを比較して、第1の画像層コンテンツデータ200aの画素PX1と対応する第1の下地層コンテンツデータ201aの画素PX2を特定する。
【0082】
次に、色変換処理部95は、特定された第1の下地層コンテンツデータ201aの画素PX2の第2のチャンネル群(R2、G2、B2)を基に紐付けられた1つのカラープロファイルを選択し、第1の画像層コンテンツデータ200aの第1のチャンネル群(R1、G1、B1)の色変換を行い、第1の画像層データ204aとする。色変換後の第1の画像層データ204aを構成する画素PX1は、第1のチャンネル群(C1、M1、Y1、K1)を用いて、第1の画像層111-1(
図9)におけるドットの有無及び/又はドットサイズを表現する。ここで、第1の画像層データ204aを構成する画素PX1は、第1の位置チャンネル(U1)に、当該画素PX1の位置情報を表現する。
色変換処理部95は、この処理を、全ての第1の画像層コンテンツデータ200aの画素PX1に対して行う。
【0083】
色変換処理部95は、第1の画像層コンテンツデータ200aと同様に、第2の画像層コンテンツデータ200bに対しても色変換を行う。
色変換処理部95は、第2の画像層コンテンツデータ200bの下地層コンテンツデータ201として、背景層コンテンツデータ201bを選択する。そして、第2の画像層コンテンツデータ200bの画素PX1が有する第1の位置チャンネル(U1)と、背景層コンテンツデータ201bの第2の位置チャンネル(U2)とを比較して、第2の画像層コンテンツデータ200bの画素PX1と対応する背景層コンテンツデータ201bの画素PX2を特定する。
【0084】
次に、色変換処理部95は、特定された背景層コンテンツデータ201bの画素PX2の第2のチャンネル群(R2、G2、B2)を基に紐付けられた1つのカラープロファイルを選択し、第2の画像層コンテンツデータ200bの第1のチャンネル群(R1、G1、B1)の色変換を行い、第2の画像層データ204bとする。色変換後の第2の画像層データ204bを構成する画素PX1は、第1のチャンネル群(C1、M1、Y1、K1)を用いて、第2の画像層111-2(
図9)におけるドットの有無及び/又はドットサイズを表現する。ここで、第2の画像層データ204bを構成する画素PX1は、第1の位置チャンネル(U1)に、当該画素PX1の位置情報を表現する。
色変換処理部95は、この処理を、全ての第2の画像層データ200bの画素PX1に対して行う。
【0085】
これにより、第1の画像層111-1の直上に背景層113が設けられ、更に背景層113の直上に第2の画像層111-2が設けられる成果物122に関して、各々の画像層(第1の画像層111-1、第2の画像層111-2)の形成時の下地層(下地層110、背景層113)の形態にかかわらず色再現精度が向上する。つまり、成果物122のような両目観察用の場合であっても、成果物122を記録媒体M側から観察した場合と、第2の画像層111-2側から観察した場合とで、それぞれの画像の色味の再現をできるだけ近くすることが可能となり、一方の面側(第1の画像層111-1)と他方の面側(第2の画像層111-2)での色再現の差を小さくすることができる。
【0086】
色変換後のドット画像データ206は、成果物122のうち、下地層110、第1の画像層111-1、背景層113、第2の画像層111-2の夫々の層に対応する画像データを有する。
ドット画像データ206は、[1]第1の画像層データ204a及び第2の画像層データ204bからなる画像層データ204と、[2]第1の下地層(背景層)データ205a及び第2の下地層(背景層)データ205bからなる下地層(背景層)データ205を有する。このドット画像データ206は、10個のカラーチャンネルで構成されたラスタ形式の多値画像データであるとも言える。
【0087】
第1の画像層データ204aを構成する画素PX1は、第1のチャンネル群(C1、M1、Y1、K1)を用いて、第1の画像層111-1(
図9)におけるドットの有無及び/又はドットサイズを表現する。ここで、第1の画像層データ204aを構成する画素PX1は、第1の位置チャンネル(U1)に、当該画素PX1の位置情報を表現する。
【0088】
また、下地層110に対応する第1の下地層データ205aを構成する画素PX2も、第1の画像層データ204aと同様に、第2のチャンネル群(C2、M2、Y2、K2)を用いて、下地層110におけるドットの有無及び/又はドットサイズを表現する。ここで、第1の下地層データ205aを構成する画素PX2は、第2の位置チャンネル(U2)に、当該画素PX2の位置情報を表現する。
【0089】
<この実施形態による効果>
以上のように、このRIP装置14は、[1]下地層110のインク滴Dを吐出することで記録媒体Mの直上又は上方に下地層110を形成し、かつ複数色のインク滴Dを吐出することで記録媒体M又は下地層110の直上に画像層111を形成してなる成果物121,122を生成するための装置である。
【0090】
そして、RIP装置14は、[2]画像層111の一部又は全部の内容を示すコンテンツデータ203に対して、画像層111が示す画像領域102内の位置毎に、下地層110の有無又は下地色の種類に応じた色変換処理を行う色変換処理部95と、[3]色変換処理部95により色変換処理が行われたコンテンツデータ203を用いて、複数色のインク滴Dに関する吐出情報を示す画像層データ204を作成する画像層データ作成部96と、を備える。
【0091】
また、インクジェット記録装置10は、[1]上記したRIP装置14と、[2]複数色のインク滴Dを吐出可能な吐出ユニット42と、[3]RIP装置14により得られた画像層データ204に基づいて吐出ユニット42の吐出制御を行う吐出制御部70と、を備える。
【0092】
また、この色変換方法によれば、[1]画像層111の一部又は全部を示すコンテンツデータ203に対して、画像層111が示す画像領域102内の位置毎に、下地層110の有無又は下地色の種類に応じた色変換処理を行う処理ステップ(S3)と、[2]色変換処理が行われたコンテンツデータ203を用いて、複数色のインク滴Dに関する吐出情報を示す画像層データ204を作成する作成ステップ(S5)と、をコンピュータ(ここでは、RIP装置14)に実行させる。
【0093】
このように構成することで、画像層110の直下にある下地層110が色再現性に与える影響を考慮しながら画像層111の色を調整可能となる。これにより、下地層110が設けられる成果物121,122に関して、下地層110の形態にかかわらず画像領域102全体における色再現精度が向上する。
【0094】
[備考]
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0095】
例えば、移動機構66は、記録媒体Mを固定しながら吐出ユニット42を移動可能であるが、両者の相対移動はこの形態に限られない。例えば、記録媒体Mのみを移動させる形態、或いは、記録媒体M及び吐出ユニット42を同時に移動させる形態であってもよい。
【0096】
また、この実施形態に係るインクジェット記録装置10は、別体である2つの装置(プリンタ本体12及びRIP装置14)から構成されているが、装置構成はこれに限られない。例えば、色変換処理を含む画像処理機能をプリンタ本体12に集約し、一体的なインクジェット記録装置を構成してもよい。
【符号の説明】
【0097】
10‥インクジェット記録装置 12‥プリンタ本体
14‥RIP装置(色変換装置) 16‥本体ユニット
18‥印刷ユニット 30‥第1キャリッジ部
34‥第2キャリッジ部 42‥吐出ユニット
43、44‥照射ユニット 46‥駆動回路
48(c/m/y/k/w/cl/sv)‥ノズル列
50‥吐出ヘッド 60‥プリント制御部
66‥移動機構 68‥信号処理部
70‥吐出制御部 72‥照射制御部
80‥制御部 88‥記憶部
200‥画像層コンテンツデータ 201‥下地層コンテンツデータ
203‥コンテンツデータ 204‥画像層データ
204a‥第1の画像層データ 204b‥第2の画像層データ
205‥下地層データ 205a‥第1の下地層データ
205b‥第2の下地層データ 206‥ドット画像データ
207‥色変換情報DB 95‥色変換処理部
96‥画像層データ作成部 97‥下地層データ作成部
98‥印刷指示部 100‥メディア領域
102‥画像領域 110‥下地層
111‥画像層 111-1‥第1の画像層
111-2‥第2の画像層 113‥背景層
121,122‥成果物 D‥インク滴
M‥記録媒体 PX‥画素
R1~R3‥下地領域