(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】頭部保護帽体用内装ユニット及びこれを備えた頭部保護帽体
(51)【国際特許分類】
A42B 3/30 20060101AFI20220127BHJP
A42B 3/10 20060101ALI20220127BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
A42B3/30
A42B3/10
A61B5/00 102A
(21)【出願番号】P 2017156123
(22)【出願日】2017-08-10
【審査請求日】2020-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000107619
【氏名又は名称】スターライト工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】東島 将俊
(72)【発明者】
【氏名】奥島 規志
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 陽平
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 茂
(72)【発明者】
【氏名】河邉 保雅
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-024300(JP,A)
【文献】特開昭63-050509(JP,A)
【文献】特開2014-153876(JP,A)
【文献】特開2017-125269(JP,A)
【文献】特開平09-296319(JP,A)
【文献】特開2010-202998(JP,A)
【文献】特開2000-256913(JP,A)
【文献】特開平10-310058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B3/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帽体の内側に組み付けられることで頭部保護帽体を構成する頭部保護帽体用内装ユニットであって、
前記帽体に着脱自在に組み付けられる内装体と、該内装体に一体的に設けられ、
前記頭部保護帽体を作業での使用時の使用者の頭部の生体情報、
前記使用者の頭部周囲の環境情報、及び、
前記使用者の動作情報のデータを検出する各種センサとを備え、
該各種センサが、前記帽体に対し前記内装体とともに着脱自在に組み付けられ、
前記内装体は、ヘッドバンド部及びハンモック部を備え、
前記生体情報に関するデータを検出するセンサが、前記ヘッドバンド部において前記使用者の頭部に接触する位置に設けられ、
前記環境情報に関するデータを検出するセンサが、前記ハンモック部の外側で前記帽体の頂部近傍に設けられ、
前記動作情報に関するデータを検出するセンサが、前記ヘッドバンド部に設けられるものであることを特徴とする頭部保護帽体用内装ユニット。
【請求項2】
前記センサに有線で接続された全ての電子機器を、前記
各種センサとともに前記内装体に一体的に設けてなる請求項1に記載の頭部保護用帽体の頭部保護帽体用内装体ユニット。
【請求項3】
前記電子機器の一つとしてバッテリーを備え、該バッテリーを前記帽体で支持してなる請求項2に記載の頭部保護帽体用内装ユニット。
【請求項4】
前記バッテリー、
通信部及び
制御部を含む
前記電子機器を収容する収容部材を設け、該収容部材を前記内装体又は前記帽体に着脱自在に取り付けるものとしてなる
請求項3に記載の頭部保護帽体用内装ユニット。
【請求項5】
前記収容部材の少なくとも一部が前記帽体から露出する、請求項4記載の頭部保護帽体用内装ユニット。
【請求項6】
前記内装体又は、前記内装体に一体的に設けられた
前記電子機器に、他の頭部保護帽体用内装ユニットと識別するための電子識別情報を付与してなる
請求項2から請求項5の何れか一項に記載の頭部保護帽体用内装ユニット。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか一項に記載の頭部保護帽体用内装ユニットを備えた頭部保護帽体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザーの頭部の生体情報や動作情報、頭部周囲の環境情報等に関するデータを検出し、このデータに基づいてユーザーの状態を確認する各種センサ付きの頭部保護帽体に用いられる内装ユニットと、これを備えた頭部保護帽体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘルメットに、電極を取付けて体温等の生体情報を計測し、この生体情報から被験者の疲労度、眠気等を検知し、警告し休憩を促すシステムを備えたものがある(特許文献1、2参照)。
【0003】
また、疲労監視するヘルメットとして、帽体内に設置され、頭部の位置に接触して第1情報取得するための第1電極と、帽体外に設置され、頭部の別の位置に接触して、第2情報を取得するための第2電極とを電気的に接続し脳波情報を取得するものや(特許文献3参照)、生体情報などを検出するスマートヘルメットとして、ヘッドバンド若しくはあご紐に生体情報取得用電極を備えたものがある(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-148718号公報
【文献】特開2005-230030号公報
【文献】特開2015-021215号公報
【文献】特開2017-125269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらはいずれも、ユーザーの頭部の生体情報や動作情報、頭部周囲の環境情報等に関するデータを検出し、利用するために必要な各種センサや制御機、通信機、バッテリーなどの電子機器が、それぞれ別々にヘルメットに取り付けられていたり、一部又は全部がヘルメット本体に組み込まれていたりしているため、例えば、汚れたヘルメット本体の洗浄やバッテリーの交換を行なうためには、電子機器が故障しないようにそれぞれを取り外したり、分解したりする必要があり、メンテナンスが非常に煩雑となるものであった。特に工場や建設現場において熱中症を監視するヘルメットの場合等、頭部又は頭部周囲の測定情報が必要な帽体においては、センサをヘルメット内に内蔵する必要があり、センサを外してヘルメットや電子機器のメンテナンスが行えないといった問題があった。
【0006】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、ユーザーの頭部の生体情報や動作情報、頭部周囲の環境情報等に関するデータを検出する各種センサを設けた頭部保護帽体であっても、帽体からの電子機器の取外しが容易であり、メンテナンスを迅速に行なうことができる頭部保護帽体用内装ユニット及びこれを備えた頭部保護帽体を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る頭部保護帽体用内装ユニットは、帽体の内側に組み付けられることで頭部保護帽体を構成する頭部保護帽体用内装ユニットであって、前記帽体に着脱自在に組み付けられる内装体と、該内装体に一体的に設けられ、前記頭部保護帽体を作業での使用時の使用者の頭部の生体情報、前記使用者の頭部周囲の環境情報、及び、前記使用者の動作情報のデータを検出する各種センサとを備え、該各種センサが、前記帽体に対し前記内装体とともに着脱自在に組み付けられ、前記内装体は、ヘッドバンド部及びハンモック部を備え、前記生体情報に関するデータを検出するセンサが、前記ヘッドバンド部において前記使用者の頭部に接触する位置に設けられ、前記環境情報に関するデータを検出するセンサが、前記ハンモック部の外側で前記帽体の頂部近傍に設けられ、前記動作情報に関するデータを検出するセンサが、前記ヘッドバンド部に設けられるものであることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、頭部又は頭部周囲にセンサを備える保護帽であっても、内装体を取り外すことで、各種センサを帽体から外すことができ、帽体の交換や洗浄等のメンテナンスを容易に行なうことができるという利点がある。
【0009】
また、本発明に係る頭部保護帽体用内装ユニットにおいて、前記各種センサに有線で接続された全ての電子機器を、前記各種センサとともに前記内装体に一体的に設けてなることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、内装体を取り外すことで、各種センサを含む全ての電子機器を帽体から外すことができ、帽体の交換や洗浄等のメンテナンスを更に容易に行なうことができる。
【0011】
また、前記電子機器の一つとしてバッテリーを備え、該バッテリーを前記帽体で支持してなるものであってもよい。
【0012】
この構成によれば、電子機器の中では重量の大きいバッテリーを帽体で支持することで、安定した状態で使用することができる。
【0013】
また、前記バッテリー、通信部及び制御部を含む前記電子機器を収容する収容部材を設け、該収容部材を前記内装体又は前記帽体に着脱自在に取り付けるものであってもよい。
【0014】
この構成によれば、メンテナンス時にこの収容部材を取り外すことで、着脱をより簡易且つ迅速に行い得る。
【0015】
さらに、前記収容部材の少なくとも一部が前記帽体から露出するものであってもよい。
【0016】
この構成によれば、通信部を収容する収容部材が露出しているため、無線通信のための電波が通信部に届きやすい状態で常に使用することができ、この通信を遮られる可能性が低くなる。
【0017】
さらに、前記内装体又は、前記内装体に一体的に設けられた前記電子機器に、他の頭部保護帽体用内装ユニットと識別するための電子識別情報を付与してなるものであってもよい。
【0018】
この構成によれば、帽体を交換しても内装ユニットをそのまま用いることで、電子識別情報を同一のものとして管理することができるため、ユーザーの特定や管理などを容易に行なうことができる。
【0019】
また、上記の頭部保護帽体用内装ユニットを備えた頭部保護帽体によれば、メンテナンスを容易に行なうことができるため、比較的高価であるセンサ付き頭部保護帽体を、長期間にわたり支障なく、また、修理及び洗浄しながら適切に使用し続けることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るセンサ付き頭部保護帽体によれば、ユーザーの頭部の生体情報や動作情報、頭部周囲の環境情報等に関するデータを検出する各種センサ等を設けた頭部保護帽体であっても、帽体からの電子機器の取外し等のメンテナンスを容易に行なうことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る頭部保護帽体用内装ユニットを備えたセンサ付きヘルメット1の使用状態を示す部分断面図である。
【
図2】本発明に係る頭部保護帽体用内装ユニットを備えたセンサ付きヘルメット1の構成を示す分解図である。
【
図3】本発明に係る頭部保護帽体用内装ユニットを備えたセンサ付きヘルメット1の構成を示す部分拡大図である。
【
図4】本発明に係る別の実施形態の頭部保護帽体用内装ユニットを備えたセンサ付きヘルメット1Aの使用状態を示す部分断面図である。
【
図5】本発明に係る別の実施形態の頭部保護帽体用内装ユニットを備えたセンサ付きヘルメット1Aの構成を示す分解図である。
【
図6】本発明に係る別の実施形態の頭部保護帽体用内装ユニットを備えたセンサ付きヘルメット1Aの使用状態を示す側面図である。
【
図7】本発明に係る別の実施形態の頭部保護帽体用内装ユニットを備えたセンサ付きヘルメット1Aの構成を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
【0023】
図1~
図3は、本発明に係る第一実施形態として、ハンモック部にセンサ等を有する頭部保護帽体用の内装ユニット3を備えたセンサ付きヘルメット1の構成及び使用状態を示すものであり、
図4~
図7は、本発明に係る第二実施形態として、ヘッドバンド部にセンサ等を有する頭部保護帽体用の内装ユニット3Aを備えたセンサ付きヘルメット1Aの構成及び使用状態を示すものであって、図中符号1、1Aはセンサ付きヘルメット、2はヘルメット本体、3、3Aは内装ユニット、4は各種センサを示している。なお、頭部保護帽体とは、少なくとも頭部の全部又は一部を保護するものをいい、その材質については一般的な合成樹脂に限らず、金属や他の材質であってもよく、また、折り畳み式、組立て式によるもの等、種々の形態のものを広く含むものとする。
【0024】
ここで、これらの実施形態では、センサ付き頭部保護帽体として、作業用のヘルメットに適用した例を示しているが、センサ付き頭部保護帽体の適用対象としては、帽子等の人を含む動物の頭部の保護部を有するもの全てが対象となる。なお、センサ付きヘルメット1、1Aは、一般的な作業用のヘルメットであるため、主に工場や工事現場あるいは山林等で作業する作業者に日常的に使用されることが多く、このような使用において、ヘルメット本体2の汚れや各部の破損などがあった場合のメンテナンスや日常点検を各ユーザーが行うこともある。このため、メンテナンスや日常点検を容易且つ迅速に行なうことができるセンサ付きヘルメット1、1Aは、作業全体の効率の向上や各作業者の安全の確保といった効果も発揮するものとなる。
【0025】
まず、
図1~
図3に基づいて、本発明に係る第一実施形態のセンサ付きヘルメット1の構成を説明する。
【0026】
図1及び
図2に示すように、センサ付きヘルメット1は、ヘルメット本体(帽体)2の内側に、各種センサ4を有する内装ユニット3が着脱自在に組み付けられて構成されたものである。内装ユニット3は、帽体であるヘルメット本体2に着脱自在に組み付けられる内装体5と、内装体5に一体的に設けられ、ユーザーUの頭部の生体情報、頭部周囲の環境情報及び動作情報の少なくとも一つに関するデータを検出する各種センサ4とを備え、各種センサ4が、ヘルメット本体2に対し内装体5とともに着脱自在に組み付けられるものである。この組付構造については、着脱自在であれば、一般的な作業用ヘルメットや特殊な用途に用いられるヘルメット、又は他の組付構造を広く採用することができるが、本実施形態では、一方に孔を設け、この孔に係合する係合部を他方に設けることで容易な構成とするとともに、工具を用いることなく取付け又は取外しが可能となっている。また、各種センサ4は内装体5に一体的に設けられているが、この一体的とは、必ずしも全体がまとまっていることをいうのではなく、物理的につながりを有する一つの集合体を形成するものをいい、例えば、一部が取外し可能となっているものや、コード等のみでつながっているものも含む。
【0027】
内装ユニット3は、各種センサ4と、ヘッドバンド部51及びハンモック部52、顎紐53からなる内装体5とが主な構成部材であるが、内装ユニット3には、これらの他に各種センサ4の電源となるバッテリー6、各種センサによって得られたデータに基づいて制御を実行する制御部7、及び、外部と通信する通信部8が設けられている。これらの電子機器は全てコード10でつながった状態で、内装体5に一体的に組み付けられている。また、内装体5は、ヘッドバンド部51とハンモック部52が連結部材12、12、…で連結され、これらが連結部材11でヘルメット本体2に着脱自在に取り付けられている。
【0028】
各種センサ4としては、内装体5のヘッドバンド部51に設けられてユーザーUの額に接触する皮膚表面温度センサである生体情報センサ41、ハンモック部52の外側で頂部近傍に設けられた温度センサ及び湿度センサからなる頭部周囲の環境情報センサ42、ヘッドバンド部51の後側に設けられた収容部材9内の加速度センサ及び角速度センサからなる動作情報センサ43を有している。
【0029】
生体情報センサ41は、使用時のユーザーUの額に対応する位置に設けられていることで、皮膚表面温度を正しく測定することができるものとなっている。また、ヘッドバンド部51の内面に設けられていることにより、皮膚表面温度センサがヘッドバンド部51によって額に押し当てられるため、皮膚表面温度センサが額に密着し、生体情報をより正しく継続して測ることができるものとなっている。この生体情報センサ41は、制御部7とコードでつながっていることで、この制御部7に生体情報を送信することができる。
【0030】
頭部周囲の環境情報センサ42は、ヘルメット本体2の内側に設けられていることによって、直射日光や雨水、風に当たらず、これらの影響を受けずに、温度や湿度といった頭部周囲の環境情報を正しく測定することができるものとなっている。また、ハンモック部52の外側に設けられているため、ユーザーの頭部に接触することがなく、頭部周辺の頭部周囲の環境情報をより確実に得ることができるものとなっている。さらに、ヘルメット本体2とハンモック部52との間には、安全性担保の観点から、一般的に大きなクリアランスが設けられているため、この空間を利用することで、測定用の空間を別途設ける必要がなく、且つ、ヘルメットを無駄に大きくする必要もなく、また、一般的なヘルメットへの適用も可能となっている。また、頭部周囲の環境情報センサ42は、制御部7等とコード10でつながれているが、このコード10は、ハンモック部52のヘルメット本体2側の表面に沿うように設けられているため、コード10が絡まったり、引っ掛かったりすることがなく、安全に使用することができるものとなっている。
【0031】
動作情報センサ43は、ユーザーの動作情報によって、ユーザー転倒や長時間の停止等といった異常を検知するためのものであり、ヘッドバンド部51の後側に設けられている。ヘッドバンド部51は、センサ付きヘルメット1において、ユーザーの頭部にしっかりと嵌められることでユーザーに接触しているものであるため、このヘッドバンド部51に動作情報センサ43が設けられていることで、ユーザーの頭部の動作と程同一の動作情報を得られることができ、より正確な動作情報を得ることができるものとなっている。また、動作情報センサ43は、収容部材9内に収容されているが、この収容部材9内には、この動作情報センサ43の他に、バッテリー6、制御部7及び通信部8が収容されている。
【0032】
図3に示すように、収容部材9は、一面(内側面)に設けられた挿通部9aにヘッドバンド部51の一部を挿通することで、ヘッドバンド部51の後端部に着脱自在に設けられている。このヘッドバンド部51は、センサ付きヘルメット1においてヘルメット本体2から少し下方に突出していることで露出している。このため、ここに配置された収容部材9もヘルメット本体2から下方に突出して露出するものとなっている。このような構成により、収容部材9内に収容された、動作情報センサ43及びバッテリー6等が外気の影響により、高温となることを防ぐとともに、同じく収容部材9内に収容された通信部8がヘルメット本体2に遮られることなく外部機器との通信を障害なく行なうことができるものとなっている。
【0033】
ここで、バッテリー6としては、例えば使い捨てのリチウム乾電池やアルカリ乾電池又は充電式のリチウム電池等からなる各種のバッテリーを採用可能であるが、省スペースや軽量化を目的とすると小型のボタン型電池やコイン型電池等を採用することができる。
【0034】
制御部7は、ユーザーUの頭部の生体情報に関する検出データや、頭部周囲の環境情報に関する検出データを、予め定められた一定間隔で通信部8から外部機器に送信するように制御する第一制御部と、ユーザーUの動作情報に基づいてユーザーUに異常が生じているか否かを判別するとともに、ユーザーUに異常が生じていると判別された場合に、この判別情報を通信部8から外部機器に送信するように制御する第二制御部とを有している。
【0035】
第一制御部は、生体情報センサ41の検出データと、頭部周囲の環境情報センサ42の検出データとの両方又はその一方を、予め定められた一定間隔、例えば予め設定された一定の時間間隔で、あるいは予め設定された一定の時刻毎に通信部8から外部機器に送信するように構成されている。
【0036】
具体的には、生体情報センサ41により検出されたユーザーUの脳波、心拍、脈拍数、体温、皮膚表面温度、血流、心電図、筋電、発汗等による生体インピーダンスの変化等からなる生体情報の検出データや、頭部周囲の環境情報センサ42により検出された外気温度及び外部湿度等からなる頭部周囲の環境情報の検出データが、例えば1分又は30分毎に第一制御部から通信部8を介して外部機器に送信されるようになっている。特に皮膚表面温度や体温からなる生体情報の検出データ、外気温度及び外部湿度等からなる頭部周囲の環境情報の検出データについては、熱中症危険度を監視するという観点から、継続して定期的に検出、確認されるのが望ましい。
【0037】
第二制御部は、ユーザーUの動作情報を検出する動作情報センサ43の検出データに基づき、ユーザーUの動作を逐次監視し、ユーザーUの動作が通常時とは異なっていると判別された場合に、当該判別情報を通信部8から外部機器に送信するように構成されている。
【0038】
具体的には、動作情報センサ43を構成する加速度センサ及び角速度センサにより、例えば10ミリ秒に設定されたサンプリングタイム内におけるユーザーUの動作に応じて発生する加速度及び角速度の少なくとも一方を、10回程度測定し、その平均値が予め設定された閾値を超えているか否かを第二制御部において判別する。そして、第二制御部は、加速度及び角速度の検出データが前記閾値を超えた異常に大きな値である場合に、ユーザーUが転倒したり、高所から落下したりする等の事故が発生したと判別し、この時点で異常判別信号を通信部8から外部機器に送信する制御を実行する。
【0039】
第二制御部は、ユーザーUに事故が発生したと判別した場合に、動作情報センサ43により検出された動作情報に関するデータに基づいて、ユーザーUの危険度合を測定する機能を有している。この測定データは、通信部8から外部機器に送信されるように構成されている。
【0040】
通信部8は、制御部7からの指示により各種データを送信するものであり、通信手段として例えば、Bluetooth(登録商標)や、ZigBee(登録商標)の規格により規定された無線PAN、又はWiMAX(登録商標)の規格により規定された無線MAN等を用いることができるが、勿論他の通信手段により外部機器へ送信又は外部機器からの受信を行なうものであってもよい。
【0041】
ここで、外部機器は、例えば、各ユーザーUがそれぞれ携帯するスマートフォン、タブレット、携帯用無線機又は携帯型パソコン等の他に、インターネットに代表されるネットワーク回線を通じてつながる電子計算機やこれに類する他の電子機器を用いることができる。
【0042】
例えば、各種センサ4により検出されたデータ等から、ユーザーUの熱中症危険度判別情報、WBGT(暑さ指数)に基づく熱中症危険度予防情報、ユーザーUが転倒する等の事故判別情報、ユーザーUの体温情報、もしくは帽体外気温情報、帽体外湿度情報、帽体内気温情報、帽体内湿度情報、帽体着脱情報、又はユーザーUの血流情報、脳波情報、生体情報、ユーザーUの現在位置を示す位置情報、気圧情報、高度情報、方角情報等の管理データの少なくとも一つが、制御部7及び通信部8によって外部機器等に送信され、ユーザーの状態を適正に確認し、必要に応じて適切な対応させることができるものとして利用してもよい。なお、前記WBGT(暑さ指数)とは、人体が受ける熱ストレスの大きさを、気温・湿度・風速・輻射熱を考慮して指標化したものであり、この値が大きい場合には、作業やスポーツを休止することが望ましいとされている。
【0043】
また、各種センサ4の検出データに応じてユーザーUが熱中症になっている可能性があると、確認された場合には、例えば、当該ユーザーUの管理データが外部機器としてクライアント端末に送信され、この端末の表示画面に前記ユーザーUの管理データが表示されるものとすることで、この管理データを見た作業管理者が、対応策を講じるものとすることも可能である。センサ付きヘルメット1では、このような熱中症等の危険度を監視することが望まれる工場や工事現場あるいは山林等で作業者が着用するヘルメットに、前記各種センサ4等を設けたため、前記作業者が熱中症になっているか否かを容易かつ適正に判別することができる。
【0044】
なお、センサ付きヘルメット1では、制御部7に電子識別情報を付与しているため、緊急時の対応をより迅速に行なうことができる。この電子識別情報の内容としては、例えばユーザーUの氏名、顔写真、性別、年齢、体重、身長、通常の血圧、血液型、所属会社、所属部署、社員番号、現在の業務内容、スケジュール、作業場所、緊急連絡先、緊急時に搬送される病院名、病歴、通院歴、ドナー登録の有無、労災履歴、家族情報等を適宜選択することができ、また、その方式については種々のものを広く採用することができる。特に、現在の業務内容や作業場所や、緊急連絡先、搬送される病院名、家族の氏名等を表示画面等に表示するように構成した場合には、ユーザーUが危険状態となった時における対応を迅速かつ適切にとることができる。また、ユーザーUの労災履歴、通院歴、病歴、投薬履歴、及び血液型を表示するように構成すれば、ユーザーUが病院等に搬送された場合に、輸血をスムーズに行うことが可能である等の利点がある。
【0045】
上記構成により、センサ付きヘルメット1は、各種センサ4を含む電子機器の全てが、内装体5に一体的に設けられているため、ヘルメット本体2から内装体5を取り外すことで、内装体5とともに各種センサ4を含む電子機器の全てがヘルメット本体2から取り外されるものとなっている。
【0046】
次に、
図4~
図7に基づいて、本発明に係る第二実施形態のセンサ付き頭部保護帽体用ユニットを備えたセンサ付きヘルメット1Aの構成を説明する。
【0047】
図4~
図6に示すように、センサ付きヘルメット1Aは、ヘルメット本体2(帽体)に、各種センサ4を有する内装ユニット3Aが着脱自在に組み付けられて構成されている。内装ユニット3Aは、上記第一実施形態と同様に、使用者の頭部の生体情報、頭部周囲の環境情報及び動作情報の少なくとも一つに関するデータを検出する各種センサ4と、内装体5Aが主な構成部材であるが、内装ユニット3Aには、これらの他に各種センサ4の電源となるバッテリー6、各種センサによって得られたデータに基づいて制御を実行する制御部7、外部と通信する通信部8が設けられている。これらの電子機器は全てコードでつながった状態で、内装体5Aに一体的に組み付けられている。また、内装体5Aは、ヘッドバンド部51と顎紐53から構成されている。
【0048】
各種センサ4としては、内装体5Aのヘッドバンド部51に設けられてユーザーUの額に接触する皮膚表面温度センサと、ヘルメット本体2の外側縁部に着脱自在に取り付けられた収容部材9A内に収容された、温度センサ及び湿度センサ等からなる頭部周囲の環境情報センサ42、及び加速度センサ及び角速度センサ等からなる動作情報センサ43とを有している。
【0049】
収容部材9Aは、ヘルメット本体2の外側に突出するように設けられている。具体的には、
図7に示すように、収容部材9Aの設けられたクリップ9bをヘルメット本体2の縁部に嵌めることで取り付けられている。このため、収容部材9Aは、ヘルメット本体2に対して、容易に着脱可能となっており、
図5に示すようにヘルメット本体2から容易に取り外すことができるものとなっている。また、この収容部材9Aは、ヘルメット本体2の外側に設けられているため、収容部材9A内に収容された、動作情報センサ43及びバッテリー6等が外気の影響により高温となることを防ぐとともに、同じく収容部材9内に収容された通信部8がヘルメット本体2に遮られることなく外部機器との通信を行なうことができるものとなっている。
【0050】
上記センサ付きヘルメット1Aの他の構成については、上記センサ付きヘルメット1の構成と同様であり、同一構造については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0051】
上記構成により、センサ付きヘルメット1Aは、各種センサ4を含む電子機器の全てが、内装体5に一体的に設けられているため、ヘルメット本体2から内装体5と収容部材9Aを取り外すことで、内装体5とともに各種センサ4を含む電子機器の全てがヘルメット本体2から取り外されるものとなっている。
【0052】
上記各実施形態においては、各種センサ4として、生体情報センサ41、頭部周囲の環境情報センサ42、及び動作情報センサ43を示したが、これらに限らず、用途や目的、使用者に合わせて必要とされるデータを検出するものであれば、他のものを広く採用することができ、CCDやCMOSセンサに代表される光学センサ等の採用も可能である。
【0053】
また、ヘッドバンド部51やハンモック部52についても、各種採用することが可能であるが、ラチェット構造などを取り入れたものとすると長さを調整することができるため、ユーザーUの変更にも容易に対応することができ、また、素材についても、ポリエチレンやポリプロピレン、紐材等の一般的なものを用いることで安価なものとすることもできるし、特殊なものや新規に開発されたものを用いることで各用途に合わせた構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0054】
1 センサ付きヘルメット
1A センサ付きヘルメット
2 ヘルメット本体
2 帽体
3 内装ユニット
3A 内装ユニット
4 各種センサ
5 内装体
5A 内装体
6 バッテリー
7 制御部
8 通信部
9 収容部材
9A 収容部材
9a 挿通部
9b クリップ
10 コード
11 連結部材
12 連結部材
41 生体情報センサ
42 頭部周囲の環境情報センサ
43 動作情報センサ
51 ヘッドバンド部
52 ハンモック部
53 顎紐
U ユーザー