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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】ゴム引布
(51)【国際特許分類】
   E04H 15/54 20060101AFI20220127BHJP
   B32B 25/10 20060101ALI20220127BHJP
   E04H 15/20 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
E04H15/54
B32B25/10
E04H15/20 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017171844
(22)【出願日】2017-09-07
(65)【公開番号】P2018053705
(43)【公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2016185394
(32)【優先日】2016-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100126413
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 太亮
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】飯野 裕介
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-105535(JP,A)
【文献】特開平02-006128(JP,A)
【文献】特開2002-138711(JP,A)
【文献】特開平09-241979(JP,A)
【文献】特開平03-244682(JP,A)
【文献】特表2008-526466(JP,A)
【文献】特開2012-246740(JP,A)
【文献】国際公開第2016/148659(WO,A2)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0017680(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 15/00-15/64
B32B 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布と、前記基布に直接または間接に積層されたゴム層と、前記ゴム層側の表面に設けられた着色ゴム層とを有し、
前記ゴム層が、隠蔽性顔料として黒色系顔料を含有しており、
前記着色ゴム層が、前記隠蔽性顔料とは異なる色味の白色系着色剤を含有することを特徴とするゴム引布。
【請求項2】
前記ゴム層と前記基布との間に、ゴム材料を含有する接着層を備える請求項1に記載のゴム引布。
【請求項3】
前記ゴム層が、ゴム材料100質量部に対し前記隠蔽性顔料を1質量部以上5 質量部以下の範囲で含有する請求項1または2に記載のゴム引布。
【請求項4】
遮光率が99.4%以上である請求項1から3のいずれか一項に記載のゴム引布。
【請求項5】
前記基布の前記ゴム層が積層された面とは反対側の面にゴム材料または樹脂材料を含む表面コート層が設けられている請求項1から4のいずれか一項に記載のゴム引布。
【請求項6】
前記着色ゴム層側からの観察において白色の色味を示す請求項1から5のいずれか一項に記載のゴム引布。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のゴム引布を備える天幕と、
気柱と、
を有することを特徴とするエアーテント。
【請求項8】
前記ゴム引布が、ゴム層側の表面に隠蔽性顔料とは異なる色味の着色剤とゴム材料とを含有する着色ゴム層を備え、
前記基布および前記着色ゴム層が、いずれも白色系である医療用の請求項7に記載のエアーテント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム引布に関し、より詳しくは、テントの天幕等に好適に使用可能なゴム引布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テントの天幕等に用いられるシートとしては、基布に樹脂材料が積層されてなる樹脂シートが知られる。たとえば特許文献1には、ポリエステル等で形成されたシートを基材とし、当該基材上に、アルミニウム蒸着層を設け、その上にポリエチレンからなる保護層を設けた光透過性遮熱テントシートの発明が開示されている。上記光透過性遮熱テントシートは、アルミニウム蒸着層を設けることで可視光線を透過させるとともに赤外線は遮蔽可能であることが説明されている。
【0003】
一般的なテント用の天幕としては、テント内の採光を確保する観点から良好な光透過性を有するものが望ましいとされており、上記光透過性遮熱テントシートは、かかる要望に応えるために改良されたシートである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-36669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されるシートに代表されるように樹脂材料から構成されたシートは、耐久性および耐寒性の点で充分ではなかった。たとえば、災害や事故などの発生による緊急時に、気柱に気体または液体等の流体を注入し数分で設営可能なエアーテントが知られる。このような緊急時に用いられるテントは、レジャー用のテントに比べて耐久性や耐寒性が優れたものが望まれる。これに対し、天幕としてゴム引布が選択される場合がある。
【0006】
ゴム引布は、基布に対しゴム層が積層された構成を基本とし、上述する樹脂シートと比べて、柔軟性、および耐候性に優れており、かかる観点からテントの天幕として好適である。
【0007】
しかしながらゴム引布は以下の問題を有していた。即ち、ゴム引布は、光が照射された側の面の目視観察(以下、外面観察ともいう)、または光が透過した側の面の目視観察(以下、内面観察ともいう)において、斑に視認されるゴム特有の変色痕が視認され問題であった。かかる問題は、上記光が太陽光である場合に特に顕著であった。特に、明度の高い色のゴム引布は、外面観察または内面観察にて変色痕が目立ち美観が損なわれる虞があった。上記明度の高い色には白色も含まれる。またゴム引布をテントの天幕とした場合に、ゴム特有の色味がテント内に反映され、テント内全体が褐色がかった雰囲気となる問題があった。上述する変色痕の発生およびテント内の雰囲気が褐色となる問題を総括し、以下では、ゴム引布の諸問題という場合がある。
【0008】
上述するゴム引布の諸問題は、ゴム引布からなる天幕を備えるテント全般において回避が望まれる。特に天幕の外面および内面を白色系で構成する必要のある医療用テントでは、ゴム引布の諸問題により、外観が損なわれるとともに、テントの内部空間が褐色がかった雰囲気になることにより適切な診察が阻害される虞があった。
【0009】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものである。即ち、本発明は、変色痕が目立たず、また光を通した際に、光の通過側においてゴム特有の褐色がかった雰囲気となることを回避可能なゴム引布、およびゴム引布の諸問題が発生しない天幕を備えるエアーテントを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のゴム引布は、基布と、前記基布に直接または間接に積層されたゴム層と、前記ゴム層側の表面に設けられた着色ゴム層とを有し、前記ゴム層が、隠蔽性顔料として黒色系顔料を含有しており、前記着色ゴム層は、前記隠蔽性顔料とは異なる色味の白色系着色剤を含有することを特徴とする。
【0011】
また本発明のエアーテントは、本発明のゴム引布を備える天幕と、気柱と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記構成を有する本発明のゴム引布は、ゴム層に隠蔽性顔料が含有されていることにより、外面観察および内面観察において変色痕の目視が抑制される。また本発明のゴム引布に光を通過させた場合、光の通過側においてゴム特有の褐色がかった雰囲気が抑制される。
また上記ゴム引布を天幕として備える本発明のエアーテントは、当該天幕の外面観察および内面観察において従来のような変色痕が目立たず、またテントの内部空間も褐色がかった雰囲気になることが防止される。そのため、本発明のエアーテントは、ゴム引布の長所である柔軟性および耐候性が発揮されるとともに、美しい外観およびゴム特有の褐色の雰囲気(色味)に支配されない室内環境を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第一実施形態にかかるゴム引布の断面構造を模式的に示す概略断面図である。
図2】本発明の第二実施形態にかかるゴム引布の断面構造を模式的に示す概略断面図である。
図3】本発明の第三実施形態にかかるゴム引布の断面構造を模式的に示す概略断面図である。
図4】本発明の第四実施形態にかかるエアーテントの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のゴム引布は、基布と、当該基布に直接または間接に積層されたゴム層を有し、上記ゴム層が、隠蔽性顔料を含有して構成される。
本発明者の検討によれば、上述する従来のゴム引布の諸問題は、シート状に形成されたゴム層のゴム本来の色味に起因するだけでなく、以下の要因があると推察された。即ち、ゴム材料を含む成形物は、成形物の弾性を充分に確保するために硫黄等を加えて分子間結合を作り出し架橋させる工程(以下、加硫工程ともいう)を経て形成されることが一般的である。ゴム引布を作製する場合も、ゴム層の柔軟性を良好なものとするためにゴム層形成時に加硫工程を実施することが一般的である。しかし加硫工程を経たゴム成形物は、部分的に架橋が密になった領域が発生する場合があり、ゴム引布におけるゴム層のように厚みの小さいゴム成形物では、当該領域が上述する変色痕となるものと推察された。また基布とゴム層との間にゴム材料を用いた接着層を形成する場合には、同様に加硫工程によって生じる変色痕が発生するものと推察された。
そのため、本発明者らは、一般的には光透過性を確保すべきゴム引布において、あえてゴム層に隠蔽性顔料を含有せしめ当該ゴム層に隠蔽性を持たせることで、実質的に変色痕の視認を防止するとともにテントの内部空間が褐色がかった雰囲気となることを抑制し、上記ゴム引布の諸問題を解決するに至った。
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜に省略する。
【0016】
<第一実施形態>
以下に、本発明のゴム引布の第一実施形態について図1を用いて説明する。図1は、本発明の第一実施形態にかかるゴム引布100の断面構造を模式的に示す概略断面図である。
図1に示すとおり、ゴム引布100は、基布10と、基布10に直接または間接に積層されたゴム層20とを有している。ゴム層20は、図示省略する隠蔽性顔料を含有している。本実施形態では、ゴム層20は、接着層30を介して基布10に間接的に積層されているが、たとえば接着層30を省略し、直接にゴム層20が基布10に積層されてもよい。
かかる構成を備えるゴム引布100は、ゴム層に隠蔽性顔料が含まれることで、光に透かしてみた場合に、外面観察および内面観察のいずれにおいてもゴム特有の変色痕が視認され難い。またゴム層20に含まれる隠蔽性顔料の色味により、ゴム引布100に入射した光が透過する側においてゴム特有の褐色の雰囲気が生じることが防止される。
【0017】
次に、本実施形態のゴム引布100について詳細に説明する。
基布10は、ゴム層20が積層されるためのベースとなる材料である。基布10は、一般的にゴム引布の基布として用いられる布から適宜選択して使用することができる。ここで布とは、織物、編物、および不織布を含み、多数の繊維の集合により形成されたシート状物を意味する。たとえば基布10を構成する繊維の例としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレン、若しくはビニロンなどの一種または混合により形成された合成繊維、綿若しくは麻等から形成された天然繊維、または天然繊維および合成繊維を用いた混紡繊維等のいずれか一種若しくは組み合わせが挙げられる。尚、基布10は、織目若しくは編目が残存した織物または編物であってもよいし、熱処理などにより織目または編目を溶融させて実質的に目が閉じられたシート状物であってもよい。ただし、より良好な柔軟性を得るためには、織目または編目を有する布が基布10として望ましい。
【0018】
基布10の厚みは特に限定されない。ゴム引布100をテントの天幕として用いる場合には、柔軟性、耐候性および軽量性のバランスを図り、たとえば50μm以上1000μm以下の範囲であることが好ましい。
【0019】
ゴム層20は、基布10に積層一体化されゴム引布100の柔軟性および耐候性に寄与するとともに、後述する隠蔽性顔料を含有することで隠蔽性を発揮する層である。ゴム層20を構成するゴム材料は、天然ゴムおよび合成ゴムのいずれであってもよい。またゴム層20は、一種のゴム材料を含んで形成された態様、または二種以上のゴム材料を含んで形成された態様のいずれであってもよい。
上記天然ゴムは、樹液に含まれるポリイソプレンを主成分とし、高弾性の高分子物質を含む。
上記合成ゴムは、一般的にゴムと解される材料であればよく、公知のゴム引布におけるゴム層を構成する材料から適宜選択することができる。上記合成ゴムとしては、例えばポリブタジエン系、シリコーン系、ポリウレタン系、塩素系またはフッ素系の複数の系に分類される各種のゴムを挙げることができる。
ポリブタジエン系ゴムとしては、たとえば、スチレンとブタジエンとのランダム共重合体であるスチレン・ブタジエンゴム、またはアクリロニトリルおよびブタジエンを用い乳化重合法等で作製したニトリルゴム等が挙げられる。
シリコーン系ゴムは、シリコーン樹脂を主成分とするゴムを指し、種々のゴムをシリコーンゴムで変性したシリコーン変性ゴムを含む。シリコーン変性ゴムとしては、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)をシリコーンゴムで変性したシリコーン変性EPDM等が挙げられる。
ポリウレタン系ゴムとしては、たとえば、熱可塑性エーテル系ポリウレタンのブロック共重合体である熱可塑性ポリウレタン等が挙げられる。
塩素系ゴムは、構造中に塩素原子を含有するゴムを指し、たとえば、クロロプレンゴム、またはクロロスルホン化ポリエチレンゴム等が挙げられる。
フッ素系ゴムは、構造中にフッ素原子を含有するゴムを指し、たとえば、テトラフルオロエチレンとプロピレンとの共重合体であるフッ素ゴム等が挙げられる。
【0020】
また上記合成ゴムとして、室温で流動性を示し、分子末端にカルボキシル基、水酸基、メルカプト基、ハロゲン原子、アミノ基、アジリジル基、またはエポキシ基等の架橋が可能な官能基を持ったテレキーリック液状ゴムと、ポリイソシアネートとを反応架橋せしめたイソシアネート架橋ゴムを用いることもできる。上記テレキーリック液状ゴムとは、具体的には、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ブタジエン-イソプレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、またはスチレン-ブタジエン共重合体等の両末端に反応基を有する液状のゴム材料である。
とりわけ、耐候性に優れるとうい観点からは、クロロスルホン化ポリエチレンゴムまたはクロロプレンゴムが好ましい。
【0021】
ゴム層20に含有される隠蔽性顔料は、ゴム引布100にゴム引布の諸問題を解決可能な程度の隠蔽性をもたらすことができる顔料であれば特に限定されない。上記隠蔽性顔料は、有機顔料または無機顔料のいずれかまたは組み合わせとすることができる。
隠蔽性顔料の具体例としては、カーボンブラック、鉄黒、カドミウムレッド、群青、紺青、マルスバイオレット、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、コバルトブルー、セルリアンブルー、エメラルドグリーン、黄鉛、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、チタンイエロー、バリウムイエロー、キナクリドン、オーレオリン、モリブデートオレンジ、弁柄、鉛丹、辰砂、酸化クロム、クロムバーミリオン、若しくはビリジアン等の有色顔料、または酸化チタン(チタン白、チタニウムホワイト)、酸化亜鉛(亜鉛華)、塩基性炭酸鉛(鉛白)、塩基性硫酸鉛、硫化亜鉛、リトポン、若しくはチタノックス等の白色顔料等が挙げられる。上記顔料は、一種で使用されてもよいし、混合して使用されてもよい。
少ない含有量で充分な隠蔽性を付与可能という観点からは、上記顔料として有色系顔料が好ましく、カーボンブラックまたは鉄黒などの黒色系顔料がより好ましい。
【0022】
ゴム層20における隠蔽性顔料の配合量は特に限定されないが、ゴム引布100に適度な隠蔽性を付与可能な範囲で過不足なく隠蔽性顔料が配合されることが好ましい。かかる観点から、ゴム層20において、ゴム材料100質量部に対し、隠蔽性顔料が1質量部以上50質量部以下の範囲で配合されることが好ましく、5質量部以上40質量部以下の範囲で配合されることがより好ましい。特に、ゴム層20を黒色に着色して隠蔽性を付与するために、隠蔽性顔料としてカーボンブラックが選択される場合には、ゴム材料100質量部に対し、カーボンブラックは1質量部以上15質量部以下の範囲、または5質量部以上10質量部以下の範囲で配合することで充分な隠蔽性をゴム引布100に付与可能である。
【0023】
ゴム引布100の隠蔽性は、ゴム引布100を太陽光に晒し、目視で外面観察および内面観察を行い変色痕が視認されるか否か、または、テントの天幕として使用した際、当該テントに入った人間がテント内の雰囲気を褐色がかっていると感じるか否か、という官能的な検査で判断することができる。
【0024】
ゴム層20の厚みは特に限定されない。ゴム引布100をテントの天幕として用いる場合には、柔軟性、耐候性および軽量性のバランスを図り、たとえば50μm以上500μm以下の範囲であることが好ましい。ただし、ゴム引布100は、所謂ターポリンのような樹脂シートに比べて重量が大きくなる傾向にある。そのためゴム引布100は、用途(たとえばエアーテントの天幕)によっては、軽量化の要望がある。ゴム引布100の軽量化の観点から、厚み30μm以上200μm以下の範囲のゴム層であることが好ましい。上記厚みの下限は、40μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましい。また上記厚みの上限は、160μm以下であることがより好ましく、120μm以下であることがさらに好ましい。またゴム層20の厚みを小さくしつつ、良好な耐候性を維持するという観点からは、上述する厚みの範囲であって、クロロスルホン化ポリエチレンゴムまたはクロロプレンゴムを用いて形成されたゴム層20が好ましい。
【0025】
ゴム層20には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、さらに適宜、添加剤が添加されてもよい。任意の添加剤としては、酸化マグネシウムまたは硫黄などの加硫剤、酸化亜鉛などの加硫助剤、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)またはアジピン酸ジエステル等の可塑剤、吸水剤、老化防止剤、プロセスオイル等が挙げられる。またゴム層20に含まれるゴム材料が、イソシアネート架橋ゴムの場合には、液状ゴムとポリイソシアネートとのウレタン化反応を促進させ、または遅延させて反応速度を調整するために、液状ゴム中に、更に反応調節剤、架橋剤、ウレタン化触媒、ブレンドポリオール等を添加するとよい。架橋剤は、上記イソシアネート架橋ゴムを構成する液状ゴムとポリイソシアネートとのウレタン化反応の際の架橋剤となるものであり、この架橋剤としては、例えば1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン、ジエタノールアミントリエタノールアミン、トリメチロールプロパン等の2官能以上の低分子ヒドロキシル化合物が使用できる。
【0026】
ゴム引布100の隠蔽性をより客観的に判断する方法の1つとして、ゴム引布100の遮光率を測定する方法が挙げられる。より具体的には、ゴム引布100の遮光率の測定方法は、JIS L 1055 A法(2009年)に基づき照度計を用いて照度100000ルクスにおける遮光率を測定する方法が挙げられる。良好な隠蔽性が発揮されゴム引布の諸問題を回避するという観点からは、ゴム引布100の遮光率は、99.4%以上が好ましく、99.8%以上がより好ましく、99.99%以上がさらに好ましい。このように、ゴム層20に適度な隠蔽性を付与するとともに、ゴム引布100全体として望ましい隠蔽性を発揮せしめることで、本発明の所期の課題を良好に解決することができる。
【0027】
図1に示すとおり、本実施形態にかかるゴム引布100は、ゴム層20と基布10との間に、ゴム材料を含有する接着層30を備える。接着層30を備えることにより、ゴム層20と基布10との接着性を高めることができる。
【0028】
接着層30は、ゴム層20に用いられる上述のゴム材料と同様のゴム材料により構成される。そのため、接着層30に用いられるゴム材料の具体的な説明はここでは割愛する。
接着層30に含まれるゴム材料と、ゴム層20に含まれるゴム材料は同じであってもよいし、異なっていてもよい。接着性を高めるという観点からは、接着層30およびゴム層20に少なくとも1種の同系または同一のゴム材料が含有されているとよい。接着性が良好でかつ耐候性に優れるという観点からは、接着層30およびゴム層20それぞれが、塩素系ゴムを含有していることが好ましく、塩素系ゴムとしてクロロプレンゴムまたはクロロスルホン化ポリエチレンが含まれていることがより好ましい。
【0029】
接着層30は、ゴム材料を溶剤にて希釈して適当な粘度に調節された塗布剤を、基布10に塗布して塗膜を形成し、当該塗膜にゴム層20を構成するシート状物を積層し、圧着ロール等で加圧接着することで形成される。必要に応じてその後に加硫工程を実施する。接着層30の厚みは特に限定されないが、上記塗布剤における樹脂固形分が10g/m2以上100g/m2以下の範囲となるよう、当該塗布剤を基布10に塗布して形成される程度の厚みが一般的である。上記塗布剤には、適宜任意の添加剤が添加されてもよい。
【0030】
上記塗布剤を調製するために用いられる溶剤は、接着層30を構成するゴム剤の粘度を調節し、基布10に対する塗布性や各種添加剤との混合を容易にするために用いる。上記溶剤としては、ブタン、ペンタン、ガソリン、石油スピリット、またはシクロヘキサン等の炭化水素系化合物;ベンゼン、トルエン、またはキシレン等の芳香族炭化水素系化合物;塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロモノフルオロメタン、またはジクロロジフルオロメタン等のハロゲン化炭化水素系化合物;クロロベンゼン、クロロトルエン、またはブロムベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系化合物;エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジオキサン、またはテトラヒドロフラン等のエーテル系化合物;アセトン、メチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、またはシクロヘキサノン等のケトン系化合物;酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸エチル、またはプロピオン酸メチル等のエステル系化合物等が挙げられる。
また、上記溶剤として、水、アルコール類等も使用することができる。
これらの溶剤の添加量は、接着層30を構成するゴム材料100質量部に対し、100質量部以上であることが好ましく、100質量部以上200質量部以下であることがより好ましい。
【0031】
上述するとおり、接着層30を設けることにより、基布10とゴム層20との一体性が良好に図られるため好ましい。しかし、ゴム材料を含む塗布剤を基布10に均一に塗布することは容易ではない。塗布剤の塗りムラがある状態で加硫工程を実施すると加硫痕が形成されてしまい、従来であれば、顕著な変色痕の発生の原因となっていた。しかし、本発明は、ゴム層20に隠蔽性顔料が含有されているため、上記加硫痕が発生した場合であっても、外面観察および内面観察において当該加硫痕が視認され難く、外観の優れたゴム引布100を提供することができる。
【0032】
上述するゴム引布100の形成方法は特に限定されず従来公知の方法を適宜採用することができる。たとえば、接着層30を介してゴム層20が積層されてなるゴム引布100は、基布10の上に上述する塗布剤を塗布して塗膜(接着層30)を形成し、当該塗膜の上にカレンダー装置から分出したゴム薄膜(ゴム層20)を積層し、圧着ロール等で加圧接着し、その後に加硫工程を実施して作製される。
また接着層30を有しないタイプのゴム引布100(図示省略)は、ゴム材料を溶剤に添加し、これを基布10に直接に塗布した後、加熱オーブン等にて加温して溶剤を揮発させ基布10の上にプレゴム層を形成し、その後に加硫工程を実施することで作製される。あるいは、離形紙上に予めゴム薄膜を形成し、半架橋状態である上記ゴム薄膜を離形紙からはがして基布10に貼り合わせ、さらに加温して架橋を完了させる方法でもゴム引布100を作製することができる。
【0033】
<第二実施形態>
以下に、本発明のゴム引布の第二実施形態について図2を用いて説明する。図2は、本発明の第二実施形態にかかるゴム引布110の断面構造を模式的に示す概略断面図である。
【0034】
ゴム引布110は、着色層40を備える点で、上述するゴム引布100とは相違し、それ以外の構成は、適宜ゴム引布100と同様に構成されている。そのため着色層40以外の構成の説明を適宜割愛する。
着色層40は、ゴム層20側の表面において設けられた層であって、ゴム層20に含有される隠蔽性顔料とは異なる色味の着色剤とゴム材料とを含有する。図示省略するが、ゴム引布110のゴム層20とは反対側の面にも着色されたゴム層を設けてもよい。また、図2にではゴム層20に直接に着色層40が積層された構成を示したが、適宜、これらの間に任意の層が設けられてもよい。
【0035】
着色層40は、ゴム引布110の外面観察において所望の色味を示し得る層である。ゴム引布110は、隠蔽性顔料を含有するゴム層20を備えることによって、変色痕が視認され難く、したがって着色層40の色味が外面観察において綺麗に反映される。たとえば、医療用のエアーテントの天幕としてゴム引布110が用いられる場合、着色層40に白色系の着色剤を添加することで、変色痕の影響を受けず綺麗な白色のエアーテントを提供することができる。即ち、本実施形態にかかるゴム引布110は、外面を白色などの特定の色味に構成するために、白色系顔料等が入った着色層40と基布10との間に、あえて黒色系等の隠蔽性顔料が含有されたゴム層20を設けることで、所望の色味を美しく実現する。
【0036】
着色層40を構成するゴム材料は、ゴム層20に用いられるゴム材料と同様のものを用いてよい。着色層40は、ゴム層20に用いられる上述のゴム材料と同様のゴム材料により構成される。そのため、着色層40に用いられるゴム材料の具体的な説明はここでは割愛する。着色層40に含まれるゴム材料と、ゴム層20に含まれるゴム材料とは同じであってもよいし、異なっていてもよいが、着色層40とゴム層20とを良好に接着させるとうい観点からは、同一または同系のゴム材料が用いられることが好ましい。互いの接着性が良好でかつ耐候性に優れるという観点からは、着色層40およびゴム層20それぞれが、塩素系ゴムを含有していることが好ましく、塩素系ゴムとして、クロロプレンゴムまたはクロロスルホン化ポリエチレンが含まれていることがより好ましい。
【0037】
着色層40の厚みは特に限定されない。ゴム引布110の軽量化を妨げず、かつ所望の色味を鮮明に呈するという観点からは、例えば50μm以上500μm以下の範囲とすることができ、50μm以上200μm以下であることが好ましく、50μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0038】
着色層40に含有される着色剤は、隠蔽性顔料とは異なる色味であればよく、たとえば有機系顔料、または無機系顔料を包含する。
【0039】
<第三実施形態>
以下に、本発明のゴム引布の第三実施形態について図3を用いて説明する。図3は、本発明の第三実施形態にかかるゴム引布120の断面構造を模式的に示す概略断面図である。
【0040】
ゴム引布120は、表面コート層50を備える点で、上述するゴム引布100とは相違し、それ以外の構成は、適宜ゴム引布100と同様に構成されている。そのため表面コート層50以外の構成の説明を適宜割愛する。
表面コート層50は、基布10のゴム層20が積層された面とは反対側の面に設けられた層であって、ゴム材料または樹脂材料を含む。
【0041】
表面コート層50に含まれる樹脂材料は、具体的には、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエステル樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等を、単独で、あるいは複数種を混合して使用することができる。表面コート層50は、単層または複数層で構成することができる。複数層で形成する場合は製造コストが高騰することがあるため、ゴム引布120の用途等に応じて、単層、複数層のいずれかを選択するとよい。
樹脂材料を含有する表面コート層50は、基布10と比べて接着剤との接着性が良好であるとともに、基布10とも良好に接着する。そのため、ゴム引布120を適宜の大きさに裁断した複数の裁断物を形成し、それらを接着剤で貼り合わせて所定の形状のシート(たとえばテント用の天幕)に加工する際に、接着剤と基布10との間に表面コート層50を介することで、当該接着剤と基布10との間における剥がれを防止して確実に貼り合わせることができる。
【0042】
表面コート層50に含まれるゴム材料は、ゴム層20に含まれるゴム材料と同様のものを用いることができるため、ここでは詳細な説明を割愛する。
ゴム材料を含む表面コート層50を備えるゴム引布120は、良好な防水性が発揮されるため、例えば、ゴムボートやエアーテントの気柱などを形成するための材料として好ましい。
【0043】
表面コート層50の厚みは特に限定されないが、貼り合わせ工程において良好に接着性を発揮し貼り合わせ可能とするという観点または、充分な防止性を発揮するという観点からは、基布10に対し、固形分量で10g/m2以上60g/m2以下の範囲で、上述する樹脂材料またはゴム材料が付与されるとよい。
【0044】
以上に本発明のゴム引布の第一実施形態から第三実施形態までを説明したが、これらは本発明を限定するものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、各実施形態におけるゴム引布の任意の位置に、さらに他の層が設けられてもよく、また、一の実施形態においても受けられた層は、適宜他の実施形態にも適用することができる。たとえば、ゴム引布100の構成に対し、さらに着色層40および表面コート層50が設けられた態様も本発明は包含する。
【0045】
<第四実施形態>
以下に、本発明のエアーテントの実施形態について図4を用いて説明する。図4は、本発明の第四実施形態にかかるエアーテント200の斜視図である。
【0046】
エアーテント200は、上述する本発明のゴム引布110を備える天幕60と、気柱70と、を有する。本発明のゴム引布110が天幕として用いられていることから、エアーテント200は、太陽光の下、屋外からもテント内からも、天幕60の表面において変色痕が視認され難く美麗である。またエアーテント200の内部において、ゴム特有の褐色がかった雰囲気になることが防止される。尚、本実施形態では天幕60としてゴム引布110を用いた態様を例に説明するが、適宜、ゴム引布100またはゴム引布120をエアーテント200の天幕60として用いてもよい。
【0047】
以下にエアーテント200の詳細について説明する。エアーテント200は、テントの骨格をなす気柱70と、気柱70に沿って設けられた天幕60(ゴム引布110)を有している。本実施形態では、気柱70の外側に沿って天幕60が配置されている。一般的には気柱70と天幕60とは所定の箇所で接合されている。気柱70に液体または気体が充填されることによって、気柱70が膨張するとともに天幕60が張られ、これによって、速やかにエアーテント200が設置される。このように設置が簡単でかつ短時間に行われることから、エアーテント200は、たとえば救急時または災害時などに好ましく用いられる。本実施形態にかかるエアーテント200は、内部に床80が設けられている。
気柱70は、床80から上方に延在する複数の柱部72と、隣り合う柱部72間を亘って略水平方向に延在する梁部74とを有する。エアーテント200は、気柱70に対し気体または液体を充填可能な気体注入口84を有している。たとえば、気体注入口84は、図4に示すとおり、天幕60の外面より外方向に突出するとともに、天幕60を介して気柱70と連通する。エアーテント200の正面側には、天幕60の一部により構成される扉82が設けられている。図4に示す扉82は、巻き上げられて上端部に止められており、解放状態となっている。
【0048】
エアーテント200において、天幕60を構成するゴム引布110は、ゴム層20側の表面に隠蔽性顔料とは異なる色味の着色剤とゴム材料とを含有する着色層40を備える。ここで、基布10および着色層40をいずれも白色系とすることで、エアーテント200は、医療用として使用可能である。ここで白色系とは、特に明度等で定義されるものではないが、医療用テントの天幕として許与される範囲の白または白に近い色であればよい。
【0049】
上述にて説明したとおり、ゴム引布110は、隠蔽性のゴム層20を備え、ゴム特有の変色痕の目視が抑制されるとともに、テント内の雰囲気が褐色がかることが回避される。そのため、医療用のテントであることを示す白色の外観を損なうことがなく、またテント内において褐色がかった雰囲気による医療行為の妨げを回避することができる。たとえば、白色の外観が基準である医療用のエアーテント200において、あえて黒色系の顔料を用いたゴム層20が設けられるとともに、黒色のゴム層20の両面に白色の層(即ち、白色の着色層40および白色の基布10)が設けられたゴム引布110を天幕60とすることで、良好な耐候性および柔軟性、並びに美しい白色の外観およびテント内における自然な雰囲気(色味)を実現することができる。
【実施例
【0050】
(実施例1)
ポリエステル繊維からなる基布に、下記接着層用組成物を固形分量で25g/m2コーティングし、加熱、乾燥して接着層を形成した。次に下記ゴム層用組成物を混合、混練し、カレンダー装置にて上記接着層上に厚み0.10mmに分出して積層しゴム層を得た。続いて、下記着色層用組成物を混合、混練し、カレンダー装置にて上記ゴム層上に厚み0.05mmに分出して積層し着色層を得た。その後、チャンバー温度150℃で10分間加熱して加硫工程を実施して、ゴム引布を作製し、これを実施例1とした。
【0051】
<接着層用組成物>
・クロロプレンゴム(ゴム樹脂) 100質量部
・酸化マグネシウム(加硫剤) 3質量部
・2-イミダゾリジンチオン(促進剤) 2質量部
・ステアリン酸(加工助剤) 1質量部
・酸化亜鉛(加硫助剤) 10質量部
・ロジン(増粘剤) 3質量部
・水酸化ケイ酸アルミニウム(充填剤) 50質量部
上記配合をトルエンで希釈して40%溶液とした。
<ゴム層用組成物1>
・クロロプレンゴム(ゴム樹脂) 80質量部
・ブタジエンゴム(ゴム樹脂) 20質量部
・酸化マグネシウム(加硫剤) 4質量部
・硫黄(加硫剤) 0.5質量部
・2-イミダゾリジンチオン(促進剤) 1.5質量部
・テトラメチルチウラムジスルフィド(促進剤) 0.5質量部
・フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(可塑剤) 30質量部
・酸化亜鉛(加硫助剤) 5質量部
・ステアリン酸亜鉛(加工助剤) 3質量部
・ステアリン酸(加工助剤) 2質量部
・水酸化ケイ酸アルミニウム(充填剤) 90質量部
・カーボンブラック(隠蔽性顔料) 7質量部
<着色層用組成物>
・クロロスルホン化ポリエチレン(ゴム樹脂) 100質量部
・酸化マグネシウム(加硫剤) 4質量部
・2-イミダリン-2-チオール(促進剤) 0.5質量部
・フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(可塑剤) 50質量部
・ステアリン酸(加工助剤) 1質量部
・ステアリン酸亜鉛(加工助剤) 1.5質量部
・炭酸カルシウム(充填剤) 20質量部
・シリカ(充填剤) 25質量部
・酸化チタン(白色顔料) 30質量部
【0052】
(実施例2)
ゴム層用組成物1を下記ゴム層用組成物2に変更したこと以外は、実施例1と同様にゴム引布を形成し、実施例2とした。
【0053】
<ゴム層用組成物2>
・クロロプレンゴム(ゴム樹脂) 80質量部
・ブタジエンゴム(ゴム樹脂) 20質量部
・酸化マグネシウム(加硫剤) 4質量部
・硫黄(加硫剤) 0.5質量部
・2-イミダゾリジンチオン(促進剤) 1.5質量部
・テトラメチルチウラムジスルフィド(促進剤) 0.5質量部
・フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(可塑剤) 30質量部
・酸化亜鉛(加硫助剤) 5質量部
・ステアリン酸亜鉛(加工助剤) 3質量部
・ステアリン酸(加工助剤) 2質量部
・水酸化ケイ酸アルミニウム(充填剤) 90質量部
・シリカ(充填剤) 20質量部
・カーボンブラック(隠蔽性顔料) 1.5質量部
【0054】
(比較例1)
ゴム層を形成せず、かつ着色層の分出の厚みを0.15mmに変更したこと以外は実施例1と同様にゴム引布を作製し、比較例1とした。
【0055】
(評価)
上述で得た実施例1、2および比較例1を、高さ300cm×幅600cm×奥行600cmのエアーテントの天幕として用い、テント内には、テントの天井部の略中央位置に、40Wの電球を6個設置した。屋外において各テントを設置し、電球を点灯した。そして以下のとおり評価した。評価結果は、表1に示す。
即ち、太陽光の下、テントの外側およびテント内から、天幕を目視で観察した。テント外からの観察は、テントの端から約200cm離れた位置に立って行った。テント内からの観察は、テントの略中央において仰向けになった状態で行った。
【0056】
(テント外からの観察における評価)
変色痕が確認されず、着色層の白色が綺麗に天幕の色として反映されている。 ◎
変色痕が殆ど確認されず、着色層の白色が綺麗に天幕の色として反映されている。○
変色痕が確認され、天幕の色が濁りまたは汚れのある白色であった。 ×
(テント内からの観察における評価)
変色痕が確認されず、テント内の雰囲気は電球の色味が反映された。 ◎
変色痕が殆ど確認されず、テント内の雰囲気は電球の色味が反映された。 ○
変色痕が確認され、テント内の雰囲気はゴム特有の褐色がかった色味であった。 ×
【0057】
(遮光率の測定)
上述で得た実施例1、2および比較例1のゴム引布を用い、JIS L 1055 A法(2009年)に基づき照度計を用いて照度100000ルクスにおける遮光率を測定した。測定結果は表1に示す。
尚、シート状物の遮光性は、一般的に、遮光率99.99%以上が1級(人の顔の表情が識別できない程度)、遮光率99.80%以上が2級(人の顔や表情がわかる程度)、遮光率99.40%以上が3級(人の顔がわかるが、作業を行うには暗い程度)と評価される。
本実施例において、実施例1、2は、いずれも遮光性が3級以上であって遮光性能が高いことが確認された。一方、比較例1は遮光率が98.2%であって、遮光性が3級未満であった。
【0058】
【表1】
【0059】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)基布と、前記基布に直接または間接に積層されたゴム層とを有し、
前記ゴム層が、隠蔽性顔料を含有していることを特徴とするゴム引布。
(2)前記ゴム層と前記基布との間に、ゴム材料を含有する接着層を備える上記(1)に記載のゴム引布。
(3)前記ゴム層が、ゴム材料100質量部に対し前記隠蔽性顔料を5質量部以上30質量部以下の範囲で含有する上記(1)または(2)に記載のゴム引布。
(4)遮光率が99.4%以上である上記(1)から(3)のいずれか一項に記載のゴム引布。
(5)前記基布の前記ゴム層が積層された面とは反対側の面にゴム材料または樹脂材料を含む表面コート層が設けられている上記(1)から(4)のいずれか一項に記載のゴム引布。
(6)前記ゴム層側の表面に前記隠蔽性顔料とは異なる色味の着色剤とゴム材料とを含有する着色ゴム層を備える上記(1)から(5)のいずれか一項に記載のゴム引布。
(7)上記(1)から(6)のいずれか一項に記載のゴム引布を備える天幕と、気柱と、を有することを特徴とするエアーテント。
(8)前記ゴム引布が、ゴム層側の表面に隠蔽性顔料とは異なる色味の着色剤とゴム材料とを含有する着色ゴム層を備え、
前記基布および前記着色ゴム層が、いずれも白色系である医療用の上記(7)に記載のエアーテント。
【符号の説明】
【0060】
10 基布
20 ゴム層
30 接着層
40 着色層
50 表面コート層
60 天幕
70 気柱
72 柱部
74 梁部
80 床
82 扉
84 流体注入口
100、110、120 ゴム引布
200 エアーテント
図1
図2
図3
図4