(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】電圧補償装置
(51)【国際特許分類】
H02H 7/122 20060101AFI20220127BHJP
H02H 9/02 20060101ALI20220127BHJP
H02J 3/12 20060101ALI20220127BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20220127BHJP
【FI】
H02H7/122
H02H9/02 Z
H02J3/12
H02M7/48 R
(21)【出願番号】P 2017174001
(22)【出願日】2017-09-11
【審査請求日】2020-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】高野 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】玉田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】餅川 宏
(72)【発明者】
【氏名】児山 裕史
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 裕治
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-318032(JP,A)
【文献】特開平09-168232(JP,A)
【文献】特開2015-233406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 7/122
H02H 9/02
H02J 3/12
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統の電圧を補償する電圧補償装置であって、
第1交流端子から第1直流端子に向かって電流を流す第1ダイオードと、
前記第1ダイオードに逆並列に接続された第1スイッチング素子と、
第2直流端子から第2交流端子に向かって電流を流す第2ダイオードと、
前記第2ダイオードに逆並列に接続された第2スイッチング素子と、
前記第2交流端子とから前記第1直流端子に向かって電流を流す第3ダイオードと、
前記第3ダイオードに逆並列に接続された第3スイッチング素子と、
前記第2直流端子から前記第1交流端子に向かって電流を流す第4ダイオードと、
前記第4ダイオードに逆並列に接続された第4スイッチング素子と、
を含む電力変換器と、
電力系統の第1電力線に直列に接続された一次巻線と前記第1交流端子に接続された二次巻線とを有する第1変圧器と、
前記電力系統の第2電力線に直列に接続された一次巻線と前記第2交流端子に接続された二次巻線とを有する第2変圧器と、
前記第1電力線の電流値とあらかじめ設定されたしきい値とを比較して、前記電流値が前記しきい値以上の場合に制御信号を生成する制御部と、
前記第1変圧器の二次巻線と前記第2変圧器の二次巻線との間に接続され、前記制御信号にもとづいて前記二次巻線間を短絡するバイパス回路と、
を備え、
前記制御部は、前記制御信号にもとづいて、前記第1スイッチング素子および前記第3スイッチング素子を導通させ、前記第2スイッチング素子および前記第4スイッチング素子を遮断する電圧補償装置。
【請求項2】
前記バイパス回路は、接触器を含む請求項1記載の電圧補償装置。
【請求項3】
前記バイパス回路は、前記接触器に並列に接続されたサイリスタを含む請求項2記載の電圧補償装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第1スイッチング素子および前記第3スイッチング素子のうちの少なくとも1つの温度である第1温度、および、前記第2スイッチング素子および前記第4スイッチング素子のうちの少なくとも1つの温度である第2温度を検出し、
前記第1温度が前記第2温度よりも低い場合には、前記制御信号にもとづいて前記第1スイッチング素子および前記第3スイッチング素子を導通させ、
前記第1温度が前記第2温度以上の場合には、前記制御信号にもとづいて前記第2スイッチング素子および前記第4スイッチング素子を導通させる請求項1記載の電圧補償装置。
【請求項5】
電力系統の電圧を補償する電圧補償装置であって、
第1交流端子から第1直流端子に向かって電流を流す第1整流素子と、
第2直流端子から第2交流端子に向かって電流を流す第2整流素子と、
前記第2交流端子とから前記第1直流端子に向かって電流を流す第3整流素子と、
前記第2直流端子から前記第1交流端子に向かって電流を流す第4整流素子と、
を含む電力変換器と、
電力系統の第1電力線に直列に接続された一次巻線と、第1インダクタを介して前記第1交流端子に接続された二次巻線とを有する第1変圧器と、
前記電力系統の第2電力線に直列に接続された一次巻線と、前記第2交流端子に接続された二次巻線とを有する第2変圧器と、
前記第1電力線の電流値とあらかじめ設定されたしきい値とを比較して、前記電流値が前記しきい値以上の場合に制御信号を生成する制御部と、
前記第1変圧器の二次巻線と前記第2変圧器の二次巻線との間に接続され、前記制御信号にもとづいて前記二次巻線間を短絡するバイパス回路と、
を備え、
前記バイパス回路は、接触器と、前記接触器に並列に接続された自己消弧型スイッチ素子と、を含
み、
前記電力変換器は、
前記第1整流素子に逆並列に接続された第1スイッチ素子と、
前記第2整流素子に逆並列に接続された第2スイッチ素子と、
前記第3整流素子に逆並列に接続された第3スイッチ素子と、
前記第4整流素子に逆並列に接続された第4スイッチ素子と、
を含み、
前記第1スイッチ素子および前記第3スイッチ素子は、前記制御信号にもとづいて導通させ、
前記第2スイッチ素子および前記第4スイッチ素子は、前記制御信号にもとづいて遮断する電圧補償装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電圧補償装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統では、変電所からの距離に応じて電力線インピーダンスが増加することから、系統の末端では、その電圧降下により受電電圧が低下する場合がある。電力系統では、変電所からの距離によらず一定の電圧が利用できるようにする必要がある。
【0003】
電力系統においては、落雷等によって地絡等の事故が発生し、系統に連系する装置に過大な電流が流れる場合があり、このような事故から装置を保護する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】佐々木 裕治、吉田 隆彦、関 長隆、渡辺 敏之、齊藤 裕治 著、「高速応答を可能にしたTVRとその実証試験」、電気学会論文誌B,Vol.123(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実施形態は、電力系統に過大な事故電流が流れた場合に、過大電流から保護することを可能にした電圧補償装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る電圧補償装置は、電力系統の電圧を補償する。この電圧補償装置は、第1交流端子から第1直流端子に向かって電流を流す第1ダイオードと、前記第1ダイオードに逆並列に接続された第1スイッチング素子と、第2直流端子から第2交流端子に向かって電流を流す第2ダイオードと、前記第2ダイオードに逆並列に接続された第2スイッチング素子と、前記第2交流端子とから前記第1直流端子に向かって電流を流す第3ダイオードと、前記第3ダイオードに逆並列に接続された第3スイッチング素子と、前記第2直流端子から前記第1交流端子に向かって電流を流す第4ダイオードと、前記第4ダイオードに逆並列に接続された第4スイッチング素子と、を含む電力変換器と、電力系統の第1電力線に直列に接続された一次巻線と前記第1交流端子に接続された二次巻線とを有する第1変圧器と、前記電力系統の第2電力線に直列に接続された一次巻線と前記第2交流端子に接続された二次巻線とを有する第2変圧器と、前記第1電力線の電流値とあらかじめ設定されたしきい値とを比較して、前記電流値が前記しきい値以上の場合に制御信号を出力する制御部と、前記第1変圧器の二次巻線と前記第2変圧器の二次巻線との間に接続され、前記制御信号によって前記二次巻線間を短絡するバイパス回路と、を備える。前記制御部は、前記制御信号にもとづいて、前記第1スイッチング素子および前記第3スイッチング素子を導通させ、前記第2スイッチング素子および前記第4スイッチング素子を遮断する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態に係る電圧補償装置を例示するブロック図である。
【
図2】第1の実施形態の電圧補償装置の動作を説明するためのブロック図である。
【
図3】比較例の電圧補償装置の動作を説明するためのブロック図である。
【
図4】第2の実施形態に係る電圧補償装置を例示するブロック図である。
【
図5】第3の実施形態に係る電圧補償装置の一部を例示するブロック図である。
【
図6】第4の実施形態に係る電圧補償装置を例示するブロック図である。
【
図7】第4の実施形態の電圧補償装置の動作を説明するためのブロック図である。
【
図8】比較例の実施形態の電圧補償装置の動作を説明するためのブロック図である。
【
図9】第5の実施形態の電圧補償装置の動作を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る電圧補償装置を例示するブロック図である。
図1に示すように、本実施形態の電圧補償装置1は、電圧補償部10と、制御部80と、を備える。電圧補償部10は、直列変圧器11,13,15と、第1電力変換器20と、バイパス回路70と、を含む。
【0010】
電圧補償装置1は、電圧補償部10によって、電力系統に直列に接続される。電力系統は、U相、V相およびW相からなる三相交流の配電系統である。以下では、電力系統に直列に接続された電圧補償装置1から見て、変電所側を上流、需要者側を下流と呼ぶこととする。電圧補償装置1は、U相の上流6aと入力端子2aで接続され、U相の下流7aと出力端子3aで接続されている。電圧補償装置1は、V相の上流6bと入力端子2bで接続され、V相の下流7bと出力端子3bで接続されている。電圧補償装置1は、W相の上流6cと入力端子2cで接続され、W相の下流7cと出力端子3cで接続されている。電圧補償装置1は、電力系統の上流6a~6cおよび下流7a~7cの電圧の上昇あるいは低下を検出して、目標値の範囲内となるように電力系統の電圧を補償する。
【0011】
直列変圧器11,13,15は、一次巻線11p,13p,15pと、二次巻線11s,13s,15sと、をそれぞれ含む。直列変圧器11の一次巻線11pは、入力端子2aと出力端子3aとの間に接続されており、電力系統のU相に直列に接続されている。直列変圧器13の一次巻線13pは、入力端子2bと出力端子3bとの間に接続されており、電力系統のV相に直列に接続されている。直列変圧器15の一次巻線15pは、入力端子2cと出力端子3cとの間に接続されており、電力系統のW相に直列に接続されている。つまり、3つの直列変圧器11,13,15の一次巻線11p,13p,15pは、電力系統の各相に直列に接続されている。
【0012】
直列変圧器11,13,15の二次巻線11s,13s,15sは、それぞれ一方の端子12a,14a,16aで互いに接続され、それぞれの他方の端子12b,14b,16bは、第1電力変換器20の各交流出力端子22a,22b,22cに接続されている。つまり、直列変圧器11,13,15の二次巻線11s,13s,15sは、スター結線されて、第1電力変換器20の出力に接続されている。
【0013】
二次巻線11s,13s,15sは、スター結線に限らず、デルタ結線としてもよい。スター結線の場合には、二次巻線11s,13s,15sは、次のように接続される。すなわち、二次巻線11sの一方の端子12aは、二次巻線13sの他方の端子14bに接続される。二次巻線13sの一方の端子14aは、二次巻線15sの他方の端子16bに接続される。二次巻線15sの一方の端子16aは、二次巻線11sの他方の端子12bに接続される。二次巻線11s,13s,15sのそれぞれの他方の端子12b,14b,16bは、フィルタ回路50を介して、第1電力変換器20の交流出力端子22a,22b,22cにそれぞれ接続される。
【0014】
スター結線で直列変圧器の二次巻線を接続した場合には、結線作業が容易になるとの利点がある。一方、スター結線では、二次巻線の他方の端子を互いに接続して中性点とするが、中性点が他に接続されず、変圧器の非線形性等により電圧歪が発生したときに、電流を他に流すことができないため、電圧歪現象が解消されにくいとの問題を生ずることがある。
【0015】
デルタ結線で直列変圧器の二次巻線を接続した場合には、各相の二次巻線を互いに接続する等して結線作業が煩雑になる反面、二次巻線内に還流電流を流すことができる。そのため、電圧補償装置301は、電圧歪みを発生しにくく、高品質の電力を電力系統に対して連系することができる。
【0016】
第1電力変換器20は、高圧直流入力端子21aと低圧直流入力端子21bとを含む。高圧直流入力端子21aおよび低圧直流入力端子21bには、コンデンサ40が接続されている。高圧直流入力端子21aおよび低圧直流入力端子21bには、第2電力変換器90を介して直流電圧が供給される。
【0017】
第1電力変換器20は、交流出力端子22a,22b,22cを含む。第1電力変換器20は、交流出力端子22a,22b,22cを介して、三相交流電圧を出力する。交流出力端子22a,22b,22cは、フィルタ回路50を介して直列変圧器11,13,15の二次巻線11s,13s,15sに接続されている。
【0018】
第1電力変換器20は、高圧直流入力端子21aと低圧直流入力端子21bとの間に印加された直流電圧を三相交流電圧に変換するインバータ装置である。第1電力変換器20は、たとえば、6つのスイッチング素子23a~28aを含んでいる。スイッチング素子23a~28aは、自己消弧形のスイッチング素子であり、たとえばMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等である。スイッチング素子23a~28aは、オフした場合には、電流を遮断し、オンした場合に双方向に電流を流すことができる。
【0019】
スイッチング素子23a~28aには、逆並列にダイオード23b~28bがそれぞれ接続されている。つまりスイッチング素子がIGBTの場合には、スイッチング素子のエミッタ端子にダイオードのアノード端子が接続されている。スイッチング素子のコレクタ端子にダイオードのカソード端子が接続されている。スイッチング素子がMOSFETの場合には、ダイオード23b~28bは、MOSFETの構造上内蔵されるダイオードでもよい。
【0020】
スイッチング素子23a,26aは、直列に接続されている。スイッチング素子24a,27aは直列に接続されている。スイッチング素子25a,28aは、直列に接続されている。これら3つの直列回路は、並列に接続されてインバータ回路を構成する。第1電力変換器20のインバータ回路は、直流電圧を電力系統の周波数よりも高い周波数の交流電圧に変換することができれば、この回路構成に限定されない。インバータ回路は、たとえばマルチレベルインバータ回路やその変形等であってもよい。ダイオード23b~28bは、たとえば上下のスイッチング素子のデッドタイム期間中に電流を流すフライホイールダイオードとして機能する。
【0021】
スイッチング素子23a~28aが上述のように接続されているため、ダイオード23b~25bは、交流出力端子22a~22cから高圧直流入力端子21aに電流を流す電流経路となる。ダイオード26b~28bは、低圧直流入力端子21bから交流出力端子22a~22cに電流を流す電流経路となる。
【0022】
より詳しくは、ダイオード23bは、交流出力端子22aから高圧直流入力端子21aに向かって電流を流すように接続されている。ダイオード24bは、交流出力端子22bから高圧直流入力端子21aに向かって電流を流すように接続されている。ダイオード25bは、交流出力端子22cから高圧直流入力端子21aに向かって電流を流すように接続されている。ダイオード26bは、低圧直流入力端子21bから交流出力端子22aに向かって電流を流すように接続されている。ダイオード27bは、低圧直流入力端子21bから交流出力端子22bに向かって電流を流すように接続されている。ダイオード28bは、低圧直流入力端子21bから交流出力端子22cに向かって電流を流すように接続されている。
【0023】
フィルタ回路50は、インダクタ51a~51cと、コンデンサ52a~52cと、を含む。インダクタ51aは、二次巻線11sの端子12bと交流出力端子22aとの間に直列に接続されている。インダクタ51bは、二次巻線13sの端子14bと交流出力端子22bとの間に直列に接続されている。インダクタ51cは、二次巻線15sの端子16bと交流出力端子22cとの間に直列に接続されている。コンデンサ52aは、端子12bと端子14bとの間に接続されている。コンデンサ52bは、端子14bと端子16bとの間に接続されている。コンデンサ52cは、端子16bと端子12bとの間に接続されている。つまり、コンデンサ52a~52cは、デルタ結線されている。そして、結線された各ノードは、各端子12b,14b,16bに接続されている。
【0024】
フィルタ回路50のコンデンサ52a~52cは、デルタ結線の場合に限らず、スター結線されていてもよい。また、フィルタ回路50は、LCフィルタに限らず、LCRフィルタ等であってもかまわない。LCRフィルタの場合には、各端子12b,14b,16bとコンデンサ52a~52cとの間に抵抗器が接続される。
【0025】
ダイオード23b~28bは、フィルタ回路50のインダクタ51a~51cと直列に接続されて電流経路を形成し得る。電力系統の事故時等に二次巻線11s,13s,15sからインダクタ51a~51cに電流が流れた場合には、その電流は、ダイオード23b~28bを介して、コンデンサ40を充電し得る。そこで、本実施形態の電圧補償装置1では、バイパス回路70を含むとともに、スイッチング素子23a~28aによってダイオード23b~28bとは異なる電流経路を形成する。
【0026】
バイパス回路70は、端子12b,14bに接続され、端子14b,16bに接続されている。バイパス回路70は、制御部80に接続されている。バイパス回路70は、制御部80から供給されるバイパス制御信号Ssによって端子12b,14b間および14b,16b間をそれぞれ短絡する。
【0027】
バイパス回路70は、電磁接触器73,74を含む。電磁接触器73は、端子12b,14b間に接続されている。電磁接触器74は、端子14b,16b間に接続されている。電磁接触器73,74は、バイパス制御信号Ssを入力して導通信号を生成する駆動回路(図示せず)から供給される駆動信号によって導通する。
【0028】
制御部80は、電流検出器75,76によって検出された電流データIL1,IL2を入力する。制御部80は、検出された電流データIL1,IL2をあらかじめ設定されたしきい値It1と比較して、電流データがしきい値を超えたときに、バイパス制御信号Ssを出力する。バイパス制御信号Ssは、バイパス回路70に供給される。バイパス回路70にバイパス制御信号Ssが供給されると、バイパス回路70は、電磁接触器73,74を導通させて、事故時の過大な電流を電磁接触器73,74にバイパスする。
【0029】
制御部80は、電流検出器75,76によって検出された電流データIL1,IL2がしきい値Ith1を超えたときに、導通信号Sonおよび遮断信号Soffを出力する。導通信号Sonは、第1電力変換器20のハイサイド側のスイッチング素子23a~25aをオンさせる。遮断信号Soffは、第1電力変換器20のローサイド側のスイッチング素子26a~28aをオフさせる。導通信号Sonがローサイド側のスイッチング素子26a~28aをオンさせ、遮断信号Soffがハイサイド側のスイッチング素子23a~25aをオフさせてもよい。
【0030】
バイパス制御信号Ss、導通信号Sonおよび遮断信号Soffは、電流データIL1,IL2がしきい値Ithを超えたときに生成される図示しない内部制御信号(制御信号)にもとづいて出力される。本実施形態では、たとえば、バイパス制御信号Ssおよび導通信号Sonは、同一の信号として出力され、内部制御信号の反転信号として生成出力される。
【0031】
スイッチング素子23a~28aは、電磁接触器75,76よりも速くターンオンすることができる。第1電力変換器20のハイサイド側のスイッチング素子23a~25aがオンし、ローサイド側のスイッチング素子26a~28aがオフした後に、電磁接触器73,74が導通する。ハイサイド側のスイッチング素子23a~25aが、バイパス制御信号Ssと同時に供給される導通信号Sonおよび遮断信号Soffによって、事故時の過大な電流のバイパス経路を形成する。スイッチング素子23a~25aまたはスイッチング素子26a~28aは、少なくとも電磁接触器73,74が導通するまでの間、オンして、事故電流を流すことができる。
【0032】
電圧補償装置1は、上述した保護動作のほか、通常の動作状態において、系統電圧の電圧補償動作を行う。電圧補償部10は、電力系統の電圧を直列補償する。電圧補償部10は、第2電力変換器90と、インダクタ101,102と、並列変圧器103,104と、交流電圧検出器111~114と、直流電圧検出器115と、をさらに含む。
【0033】
第2電力変換器90は、高圧直流端子91aと、低圧直流端子91bと、を含んでいる。高圧直流端子91aおよび低圧直流端子91bは、コンデンサ40に接続されている。第2電力変換器90は、交流端子92a,92b,92cを含む。交流端子92a,92b,92cのいずれか1つ、この例では、交流端子92aには、インダクタ101の一端が接続されている。この例では、交流端子92cには、インダクタ102の一端が接続されている。つまり、第2電力変換器90は、交流端子92a~92cに入力される交流電力を直流に変換して、直流リンクであるコンデンサ40に供給するコンバータ装置として動作する。第2電力変換器90は、コンデンサ40に有効電力を供給する。第2電力変換器90は、第1電力変換器20と同じ回路形式のインバータ回路であってもよいし、異なる回路形式であってもよい。
【0034】
並列変圧器103の一次巻線は、U相およびV相の下流7a,7b側の線間に接続されている。並列変圧器104の一次巻線は、V相およびW相の下流7b,7c側の線間に接続されている。並列変圧器103の二次巻線の一方は、インダクタ101の他端に接続され、他方は、第2電力変換器90の交流端子92bに接続されている。並列変圧器104の二次巻線は、インダクタ102の他端に接続され、他方は、第2電力変換器90の交流端子92bに接続されている。つまり、並列変圧器103,104の二次巻線は、インダクタ101,102を介して第2電力変換器90の交流端子92a~92cとV結線されている。
【0035】
電流検出器105は、交流端子92aと並列変圧器103の二次巻線との間に直列に接続されている。電流検出器106は、交流端子92cと並列変圧器104の二次巻線との間に直列に接続されている。電流検出器105,106は、インダクタ101,102に流れるそれぞれの交流電流を検出して、電流データIL3,IL4を出力する。
【0036】
交流電圧検出器111,112は、電力系統の上流6a~6c側に接続されている。交流電圧検出器111は、U相とV相との線間に接続され、UV間の線間電圧を検出する。交流電圧検出器112は、V相とW相との線間に接続され、VW間の線間電圧を検出する。交流電圧検出器113,114は、電力系統の下流7a~7c側に接続されている。交流電圧検出器113は、u相とv相との線間に接続され、uv間の線間電圧を検出する。交流電圧検出器114は、v相とw相との線間に接続され、vw間の線間電圧を検出する。交流電圧検出器111~114は、たとえば計器用変圧器と計器用変圧器の出力を適切な電圧レベルに変換するトランスデューサとを含んでいる。交流電圧検出器111~114は、直列変圧器11,13,15の一次巻線11p,13p,15pの両端の電圧を検出して、計器用変圧器で降圧し、トランスデューサによって制御部80に入力可能な信号である交流電圧データVAC1~VAC4に変換して出力する。
【0037】
直流電圧検出器115は、コンデンサ40の両端の直流電圧を検出して、直流電圧データVDCを出力する。
【0038】
電力系統に異常電流が流れていない通常の動作状態においては、制御部80は、交流電圧データVAC1~VAC4を入力して、これらから上流側と下流側との電圧差を求める。制御部80は、あらかじめ設定された上流側と下流側との電圧差の目標値と、測定値とを比較する。制御部80は、測定値を目標値に応じて、その差分に応じた各相の電圧を直列変圧器11,13,15の二次巻線に供給する。制御部80は、測定値が目標値よりも低いときには、電力系統と同相の電圧を出力するように設定する。制御部80は、測定値が目標値以上のときには、電力系統と逆相の電圧を出力するように設定する。
【0039】
また、制御部80は、インダクタ101,102に流れる電流データIL3,IL4および直流電圧データVDCにもとづいて、第2電力変換器90の動作を制御する。
【0040】
制御部80は、交流電圧データVAC1~VAC4、電流データIL3,IL4および直流電圧データVDCにもとづいて、第1電力変換器20および第2電力変換器90を適切に動作させるためのゲート駆動信号Vg1,Vg2をそれぞれ生成する。第1電力変換器20および第2電力変換器90は、ゲート駆動信号Vg1,Vg2にもとづいて適切な電力変換動作を行う。
【0041】
なお、上述したバイパス制御信号Ssが出力された場合には、第2電力変換器90は、ゲートブロック信号GBによって、動作を停止するようにしてもよい。
【0042】
次に、本実施形態の電圧補償装置1の動作について説明する。
図2は、本実施形態の電圧補償装置の動作を説明するためのブロック図である。
図3は、比較例の電圧補償装置の動作を説明するためのブロック図である。
図2に示すように、電力系統で地絡等の事故が発生し、大きな事故電流が流れた場合には、電圧補償部10の直列変圧器11,13,15の一次巻線のうちの少なくとも1つに過大な電流が流れる。事故時の過大な電流は、正常時の数10倍程度の電流となり得る。二次巻線の1つには、巻き数比に応じて正常時の数10倍の電流が流れる。
【0043】
電力系統に流れる線電流は、電流検出器75,76によって検出される。検出された電流データIL1,IL2は制御部80へ送信される。制御部80では、電流データIL1,IL2をしきい値It1と比較し、電流データIL1,IL2のうち少なくとも一方がしきい値を超えた場合に、制御部80は、バイパス制御信号Ss、導通信号Sonおよび遮断信号Soffを出力する。
【0044】
第1電力変換器20は、導通信号Sonおよび遮断信号Soffを受信し、スイッチング素子23a~25aをオンさせ、スイッチング素子26a~28aをオフさせる。なお、第2電力変換器90は、これらの信号と同時に出力されるゲートブロック信号GBによって、電力変換動作を停止する。
【0045】
二次巻線に誘導された事故電流にもとづく電流Iincは、たとえばハイサイド側のスイッチング素子の1つ(
図2ではスイッチング素子25a)に逆方向(ダイオードの順方向)に流れる。電流Iincは、ハイサイド側の他のスイッチング素子に順方向で流れる。この例では、電流Iincは、2つのスイッチング素子(
図2ではスイッチング素子23a,24a)に分岐して流れる。電流経路は、配線のインピーダンス等も含めて決定されるので、2つのスイッチング素子の逆方向に分岐して流れた後、1つのスイッチング素子の順方向に流れる経路となる場合もある。
【0046】
ハイサイド側のスイッチング素子23a~25aをオフさせ、ローサイド側のスイッチング素子26a~28aをオンさせた場合についても同様である。
【0047】
事故電流発生の初期においては、電流Iincは、上述の経路で流れる。電力変換器に用いるスイッチング素子は、逆並列に接続されたダイオードに比べて導通時の電圧降下が小さい。そのため、スイッチング素子の方がダイオードよりも大きな電流耐量を有する。また、電流Iincのリターン経路もスイッチング素子によって形成される。そのため、事故時の電流がコンデンサ40に流れることがなく、事故電流によってコンデンサ40に過電圧が印加されることがない。スイッチング素子による事故電流経路形成後、さらに大きな電流容量を有する電磁接触器73,74が導通する。スイッチング素子は、電磁接触器が導通するまでの期間、電流Iincを流し得る電流耐量を有していればよい。
【0048】
次に、比較例の電圧補償装置の動作について説明する。
比較例の電圧補償装置は、
図3に示すように、事故電流によって生じた二次巻線に流れる電流Iinc'は以下のように流れる。
【0049】
電力系統に事故電流が流れると、二次巻線には、巻き数比に応じた電流Iinc'が流れる。電流Iinc'は、実施形態の電圧補償装置1に場合と同様に、正常時の数10倍の値を有する。
【0050】
このときの電流Iinc'は、電流検出器75,76によって検出され、検出された電流データIL1',IL2'は、制御部へ送信される。制御部では、電流データIL1',IL2'をしきい値It1と比較し、電流データIL1',IL2'のうち少なくとも一方がしきい値It1を超えた場合に、制御部は、ゲートブロック信号GBおよびバイパス制御信号Ssを出力する。
【0051】
第1電力変換器120は、ゲートブロック信号GBを受信し、電力変換動作を停止する。
【0052】
この例では、バイパス回路170には、サイリスタを含む双方向スイッチを用いている。サイリスタは、電磁接触器に比べて高速にターンオンすることができるが、数10μs~数100μs程度のターンオン時間を有している。そのため、バイパス回路170は、バイパス制御信号Ssを受信した後、少なくともターンオン時間による期間には、電流Iinc'をバイパスすることができない。
【0053】
二次巻線15sに誘導された電流Iinc'は、フィルタ回路のインダクタ51cおよびダイオード25bを介してコンデンサ40を充電するように流れる。コンデンサ40を充電した電流は、ダイオード26b,27b、インダクタ51a,51bおよび直列変圧器11,13の二次巻線を介して、直列変圧器15の二次巻線に戻る。ダイオード26b,27bおよびインダクタ51a,51bに分流する電流は、これらを含むインピーダンスに依存して決定される。
【0054】
フィルタ回路50のインダクタ51a~51cには、バイパス回路170が導通する前に電流が流れているため、流れた電流によって、インダクタ51a~51cには、エネルギが蓄積されている。バイパス回路170が導通しても、インダクタ51a~51cは、蓄積されたエネルギを放出するまで電流を流し続ける。したがって、バイパス回路170が動作しているにもかかわらず、電流Iinc'は、ダイオードに流れ続け、コンデンサ40を充電し続ける。
【0055】
電流Iinc'がダイオードの許容電流を超えた場合には、過電流等によりダイオードは破損するおそれがある。ダイオードを介してコンデンサ40を充電し続けた場合には、コンデンサ40の両端の電圧が定格電圧を超過して、コンデンサ240は過電圧によって破損するおそれがある。
【0056】
本実施形態の電圧補償装置の作用および効果について説明する。
本実施形態の電圧補償装置1では、導通信号Sonおよび遮断信号Soffを第1電力変換器20に供給する制御部80を備えている。導通信号Sonおよび遮断信号Soffによって制御されたスイッチング素子は、バイパス回路70が導通する前に、事故電流による電流を還流することができる。還流電流は、ダイオード23b~28bや、コンデンサ40には流れないので、これらを損傷することなく、事故時の過大な電流を処理することができる。その後電流耐量が十分に大きいバイパス回路70が導通することによって、事故時の電流による破損等を防止することができる。
【0057】
(第2の実施形態)
図4は、本実施形態の電圧補償装置を例示するブロック図である。
本実施形態では、バイパス回路に双方向サイリスタスイッチを併用する。
図4に示すように、本実施形態の電圧補償装置201は、電圧補償部210と、制御部80と、を備える。本実施形態では、電圧補償部210のバイパス回路270が上述の他の実施形態の場合と相違する。同一の構成要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0058】
図4に示すように、電圧補償部210は、バイパス回路270を含む。バイパス回路270は、サイリスタ71,72と、電磁接触器73,74と、を含む。サイリスタ71,72は、2つのSCR(Silicon Controlled Rectifier)をそれぞれ含み、2つのSCRは、互いに逆並列に接続されている。つまり、サイリスタ71,72では、一方のSCRのアノード端子と他方のSCRのカソード端子とが接続され、一方のSCRのカソード端子と他方のSCRのアノード端子とが接続されている。サイリスタ71は、端子12b,14b間に接続されている。サイリスタ72は、端子14b,16b間に接続されている。
【0059】
サイリスタ71,72は、バイパス制御信号Ssを入力してトリガ電流を生成する駆動回路(図示せず)から供給されるトリガ電流によってターンオンする。サイリスタ71,72は、事故時に発生した過大な電流をバイパスして第1電力変換器20やコンデンサ40を保護する。
【0060】
電磁接触器73は、端子12b,14b間に接続されている。つまり、電磁接触器73は、サイリスタ71と並列に接続されている。電磁接触器74は、端子14b,16b間に接続されている。つまり、電磁接触器74は、サイリスタ72と並列に接続されている。
【0061】
電磁接触器73,74は、バイパス制御信号Ssを入力して導通信号を生成する駆動回路(図示せず)から供給される駆動信号によって導通する。
【0062】
電磁接触器73,74は、サイリスタ71,72に比べて、導通するまでの遅れ時間が長いが、導通時の直流抵抗値はサイリスタ71,72のオン時の抵抗値よりも低い。そのため、電磁接触器73,74は、サイリスタ71,72よりも大きな電流を長時間にわたって流すことができる。電磁接触器73,74は、サイリスタ71,72に遅れて導通した後には、サイリスタ71,72に流れている電流をバイパスする。
【0063】
本実施形態の電圧補償装置201の効果について説明する。
電磁接触器は、導通するまでの遅れ時間が、半導体スイッチに比べて非常に遅く、数ms~数10msとなる場合がある。サイリスタは、数10μs程度のターンオン時間を有するので、電磁接触器にサイリスタを並列接続することによって、第1電力変換器20のスイッチング素子に事故電流を還流させている時間を短縮することができる。そのため、スイッチング素子の発熱を抑制することができ、電流耐量を強化できる。
【0064】
(第3の実施形態)
本実施形態では、ハイサイド側のスイッチング素子またはローサイド側のスイッチング素子のいずれか一方をオンさせ、他方をオフさせる。いずれをオンさせるかについて、そのときの温度が低い方を選択してオンさせ、温度が高い方はオフさせる。つまり、温度が低い方のスイッチング素子をオンして、事故電流に対応する二次側の電流Iincをバイパスさせる。
【0065】
図5は、本実施形態に係る電圧補償装置の一部を例示するブロック図である。
図5には、電圧補償装置の電圧補償部310のうち第1電力変換器320および制御部380が示されている。
図5に示すように、本実施形態では、電圧補償部310の第1電力変換器320および制御部380が上述した他の実施形態の場合と相違する。同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0066】
第1電力変換器320は、温度検出器321a,321bを含む。温度検出器321aは、ハイサイド側のスイッチング素子のいずれかの近傍に設けられており、スイッチング素子に熱的に結合されている。温度検出器321bは、ローサイド側のスイッチング素子のいずれかの近傍に設けられており、スイッチング素子に熱的に結合されている。温度検出器321a,321bは、熱的に結合されたスイッチング素子の温度を検出し、温度データTa,Tbを出力する。温度検出器321a,321bの出力は、制御部380に供給される。
【0067】
制御部380は、温度検出器321a,321bからそれぞれ供給されるスイッチング素子の温度データTa,Tbを入力して、いずれが小さい値を有するか比較する。制御部380は、温度データTa,Tbのうち小さい値を有する方のスイッチング素子に対して、導通信号Sonを供給する。制御部380は、温度データTa,Tbのうち大きい値を有する方のスイッチング素子に対しては、遮断信号Soffを供給する。導通信号Sonおよび遮断信号Soffは、上述の他の実施形態の場合と同様に、バイパス制御信号Ssの出力とともに出力され、バイパス回路70が導通する前に、スイッチング素子をオンまたはオフさせる。
【0068】
本実施形態の電圧補償装置では、温度が低い方のスイッチング素子がオンする。オンしたスイッチング素子は、事故電流の還流経路を形成し、事故電流を還流させる。事故電流が還流することによってスイッチング素子の温度が上昇することが考えられるが、そのような場合であっても、温度上昇を適切な範囲内におさめることができる。したがって、電圧補償装置をより安全に保護することが可能になる。
【0069】
(第4の実施形態)
本実施形態では、フィルタのインダクタに電流を流すことを防止する第2のバイパス回路を設けている。
図6は、本実施形態に係る電圧補償装置を例示するブロック図である。
図6に示すように、本実施形態の電圧補償装置401は、電圧補償部410と、制御部480と、を備える。本実施形態では、電圧補償部410が第2のバイパス回路460を含み、制御部480が上述の他の実施形態の場合と相違する。同一の構成要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0070】
電圧補償部410は、第2のバイパス回路460を含む。第2のバイパス回路460は、二次巻線11s,13s,15sの各端子12b,14b,16bと、コンデンサ40と、の間に接続されている。
【0071】
第2のバイパス回路460は、ダイオードブリッジ461と、短絡スイッチ462と、逆流防止ダイオード463と、を含む。
【0072】
ダイオードブリッジ461は、ダイオード461a~461fを含む。ダイオード461a~461cは、二次巻線11s,13s,15sの端子12b,14b,16bから第1電力変換器20の高圧直流入力端子21aに向かって電流を流すように接続されている。ダイオード461d~461fは、低圧直流入力端子21bから端子12b,14b,16bに向かって電流を流すように接続されている。ダイオードブリッジ461は、電力系統の地絡等の事故時に二次巻線11s,13s,15sに誘導される電流を流す経路を提供する。
【0073】
短絡スイッチ462は、ダイオードブリッジ461の直流電圧出力端子の両端に接続されている。短絡スイッチ462の制御端子は、制御部80に接続されている。短絡スイッチ462は、制御部から供給される信号がハイレベルになったときにオンして、ダイオードブリッジ461の直流電圧出力端子の両端を短絡する。短絡スイッチ462は、たとえばIGBTである。
【0074】
逆流防止ダイオード463は、ダイオードブリッジ461からコンデンサ40を充電する電流が流れる向きに接続されている。逆流防止ダイオード463は、短絡スイッチ462がオンしたときに、コンデンサ40からダイオードブリッジ461の側に電流が逆流しないように設けられている。
【0075】
制御部480は、バイパス制御信号Ssと同時に出力される第2のバイパス制御信号Ss2を出力する。第2のバイパス信号Ss2は、短絡スイッチ462の制御端子に供給される。バイパス制御信号Ss2によって短絡スイッチ462の制御端子を駆動することができるように、駆動回路を設けてもよい。第2のバイパス制御信号Ss2は、たとえば制御部480内で生成される図示しない内部制御信号と同一論理の信号として出力される。
【0076】
図7は、本実施形態の電圧補償装置の動作を説明するためのブロック図である。
図7に示すように、電力系統に流れる線電流は、電流検出器75,76によって検出される。検出された電流データIL1,IL2は制御部480へ送信される。制御部480では、電流データIL1,IL2をしきい値It1と比較し、電流データIL1,IL2のうち少なくとも一方がしきい値を超えた場合に、制御部480は、バイパス制御信号Ss、第2のバイパス制御信号Ss2およびゲートブロック信号GBを出力する。
【0077】
第2のバイパス回路460は、第2のバイパス制御信号Ss2を受信し、短絡スイッチ462をオンさせる。なお、第1電力変換器20および第2電力変換器90は、これらの信号と同時に出力されるゲートブロック信号GBによって、電力変換動作を停止する。
【0078】
二次巻線に誘導された事故電流にもとづく電流Iincは、たとえばハイサイド側のダイオードの1つ(
図7ではダイオード461c)に流れる。電流Iincは、短絡スイッチ462に流れ、ローサイド側のダイオード(
図7ではダイオード461d,461e)に分岐して流れる。電流経路は、配線のインピーダンス等も含めて決定される。
【0079】
本実施形態の電圧補償装置401では、事故時の電流は、第2のバイパス回路460を流れた後に、バイパス回路70に流れる。この実施形態では、第1電力変換器20のいずれの素子にも事故時の電流を流すことがないので、不測の大電流等により故障を生じるおそれを低減することができる。
【0080】
本実施形態では、制御部480が事故電流を検出した場合に、第1電力変換器20とは別に設けられた第2のバイパス回路に事故電流を還流させる。第2のバイパス回路460を構成するダイオード461a~461fおよび短絡スイッチ462は、発生し得る事故電流に対応するように選定される。したがって、簡素な構成で確実に事故電流をバイパスすることができ、電圧補償装置のより安全な運用を実現することができる。
【0081】
図8は、比較例の電圧補償装置を例示するブロックである。
比較例の電圧補償装置の電圧補償部は、第2のバイパス回路560を含む。この第2のバイパス回路560は、ブリッジ回路からなり、ブリッジ回路の出力は、コンデンサ40の両端に接続されている。
【0082】
事故時の電流は、バイパス回路170が導通するまでは、第2のバイパス回路560を経由してコンデンサ40に流入する。事故時の電流は、フィルタ回路50のインダクタンスには流れないので、事故時の電流が第1電力変換器20に流れ続けることはないが、バイパス回路70が動作するまでの過渡的な状況では、大電流が第2のバイパス回路560を介してコンデンサ40に流入する。そのため、コンデンサ40の両端の電圧が過電圧状態となる場合がある。
【0083】
これに対して、本実施形態の電圧補償装置401では、第2のバイパス回路460には、ダイオードブリッジ461に加えて設けられた短絡スイッチ462を有する。短絡スイッチ462は、制御部480が事故電流を検出した場合にターンオンする。そのため、事故電流は短絡スイッチ462に流れるので、コンデンサ40に過電圧が印加されるのを防止することができる。
【0084】
(第5の実施形態)
本実施形態では、上述した第4の実施形態の場合にさらに、第1の実施形態等の場合において説明したスイッチング素子による事故電流の放電経路を形成することを含む。
図9は、本実施形態の電圧補償装置の動作を説明するためのブロック図である。
図9に示すように、電圧補償部610は、第2のバイパス回路460を含む。制御部680は、バイパス制御信号Ssとともに、第2のバイパス制御信号Ss2、導通信号Sonおよび遮断信号Soffを出力する。バイパス制御信号Ss、第2のバイパス制御信号Ss2、導通信号Sonおよび遮断信号Soffは、制御部680において、電流データIL1,IL2がしきい値Ithを超えたことによって、生成され、ほぼ同時に出力される。
【0085】
バイパス制御信号Ssによってバイパス回路70が導通するまでの期間に、第2のバイパス回路460が導通し、ハイサイド側およびローサイド側のスイッチング素子のうちの一方がオンし、他方がオフする。これによって、事故時の電流は、少なくともバイパス回路70が導通するまでの間、第2のバイパス回路460およびスイッチング素子に分流する。
【0086】
本実施形態では、第2のバイパス回路460およびスイッチング素子によって事故時の電流を分流するので、これらの回路の構成素子には、より電流容量の小さいものを用いることができる。したがって、より一層装置の低コスト化、小型化が可能になる。
【0087】
以上説明した実施形態によれば、電力系統に過大な事故電流が流れた場合に、過大電流から保護することを可能にした電圧補償装置を実現することができる。
【0088】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 電圧補償装置、10 電圧補償部、11,13,15 直列変圧器、20 第1電力変換器、21a 高圧直流入力端子、21b 低圧直流入力端子、22a~22c 交流出力端子、23a~28a スイッチング素子、23b~28b ダイオード、40 コンデンサ、50 フィルタ回路、51a~51c インダクタ、70 バイパス回路、71,72 サイリスタ、73,74 電磁接触器、75,76 電流検出器、80 制御部、90 第2電力変換器、105,106 電流検出器、111~114 交流電圧検出器、310 電圧補償部、401 電圧補償装置、410 電圧補償部、460 第2のバイパス回路、461 ダイオードブリッジ、462 短絡スイッチ、463 逆流防止ダイオード、480 制御部