(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】車両の風検出装置、およびそれを用いた車両の走行安定化促進装置
(51)【国際特許分類】
B60R 19/52 20060101AFI20220127BHJP
B62D 37/02 20060101ALI20220127BHJP
B62D 6/00 20060101ALI20220127BHJP
B62D 137/00 20060101ALN20220127BHJP
【FI】
B60R19/52 M
B62D37/02 Z
B62D6/00
B62D137:00
(21)【出願番号】P 2017175385
(22)【出願日】2017-09-13
【審査請求日】2020-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 直記
(72)【発明者】
【氏名】跡部 圭一
(72)【発明者】
【氏名】野嵜 隆司
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 勝海
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-247347(JP,A)
【文献】特開2008-006855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/52
B62D 37/02
B62D 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両についての走行中の風が吹きつけられる箇所に設けられ、
長手方向を車幅方向とし、風圧により回転軸の周囲で回転可能な検出ルーバと、
周囲を通過する風により回転した前記検出ルーバの回転量に基づいて風圧を検出する検出部と、
を有する、
車両の風検出装置。
【請求項2】
前記検出ルーバは、
前記回転軸の両側に突出して風圧を受ける第一部と第二部とを有し、
前記第一部についての風圧が作用する面は、前記第二部についての風圧が作用する面より大きい面積に形成される、
請求項1記載の車両の風検出装置。
【請求項3】
前記検出ルーバは、前記車両の前面に設けられる、
請求項1または2記載の車両の風検出装置。
【請求項4】
前記第一部は、前記車両の車幅方向に沿うように設けられる前記回転軸の上側に位置し、
前記第二部は、前記回転軸の下側に位置する、
請求項2記載の車両の風検出装置。
【請求項5】
前記検出ルーバは、
前記車両の前面に設けられるフロントグリルにおいて、前記車両の車幅方向に沿って延在する複数のルーバの一部として設けられ、
複数の前記ルーバの中で最も上側となるように設けられる、
請求項1から4のいずれか一項記載の車両の風検出装置。
【請求項6】
前記検出ルーバは、前記車両の前面において前記車両の車幅方向に並べて、個別に回転可能に設けられた右検出ルーバおよび左検出ルーバで構成され、
前記検出部は、前記右検出ルーバの回転量と前記左検出ルーバの回転量との回転量差を検出する、
請求項1から
5のいずれか一項記載の車両の風検出装置。
【請求項7】
請求項
6に記載の車両の風検出装置と、
前記回転量に基づいて、前記車両の走行安定性が向上するように前記車両を制御する制御部と、
前記車両のフロントグリルに設けられ、前記車両の車幅方向に沿って延在する
前記回転軸の周囲で角度を調整して開口率を制御可能な開口調整ルーバと、
を有し、
前記制御部は、
前記回転量差に基づいて、前記車両の走行安定性が向上するように前記開口調整ルーバの開口率を調整する、
車両の走行安定化促進装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の風検出装置、およびそれを用いた車両の走行安定化促進装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、車両の左右両側面に圧力センサを設け、この圧力センサの検出に基づいて、車両の前面に設けたシャッタを開閉制御する。
これにより、たとえば横風がある場合にシャッタを閉じることができる。これにより、風の影響を受け難くできる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、圧力センサにより風圧を検出する場合、圧力センサに対して垂直に作用する圧力しか検出できない。それ以外の方向から車両へ吹き付ける風については、圧力を正確に検出できない。
しかも、車両は、走行する。この場合、車両の左右両側面には、走行による気流が生成される。この場合、車両の左右両側面に設けられた圧力センサには、車両へ吹き付ける風がそのまま吹き付けることができない。したがって、圧力センサに対して垂直となる向きから風が吹きつけていたとしても、走行する車両へ吹き付ける風の圧力を正確に検出できない。
【0005】
このように車両では、走行中に車両に吹き付ける風の圧力を好適に検出できるようにすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両の風検出装置は、車両についての走行中の風が吹きつけられる箇所に設けられ、風圧により回転軸の周囲で回転可能な検出ルーバと、周囲を通過する風により回転した前記検出ルーバの回転量に基づいて風圧を検出する検出部と、を有する。
【0007】
好適には、前記検出ルーバは、前記回転軸の両側に突出して風圧を受ける第一部と第二部とを有し、前記第一部についての風圧が作用する面は、前記第二部についての風圧が作用する面より大きい面積に形成される、とよい。
【0008】
好適には、前記検出ルーバは、前記車両の前面に設けられる、とよい。
【0009】
好適には、前記第一部は、前記車両の車幅方向に沿うように設けられる前記回転軸の上側に位置し、前記第二部は、前記回転軸の下側に位置する、とよい。
【0010】
好適には、前記検出ルーバは、前記車両の前面において前記車両の車幅方向に並べて、個別に回転可能に設けられた右検出ルーバおよび左検出ルーバで構成され、前記検出部は、前記右検出ルーバの回転量と前記左検出ルーバの回転量との回転量差を検出する、とよい。
【0011】
好適には、前記検出ルーバは、前記車両の前面に設けられるフロントグリルにおいて、前記車両の車幅方向に沿って延在する複数のルーバの一部として設けられ、複数の前記ルーバの中で最も上側となるように設けられる、とよい。
【0012】
本発明に係る車両の走行安定化促進装置は、上述したいずれかの車両の風検出装置と、前記風検出装置の検出部により検出された前記回転量に基づいて、前記車両の走行安定性が向上するように前記車両を制御する制御部と、前記車両のフロントグリルに設けられ、前記車両の車幅方向に沿って延在する回転軸の周囲で角度を調整して開口率を制御可能な開口調整ルーバと、を有し、前記制御部は、前記検出ルーバの回転量に基づいて前記風検出装置の検出部により検出された前記回転量差に基づいて、前記車両の走行安定性が向上するように前記開口調整ルーバの開口率を調整する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の風検出装置では、検出ルーバを用いて、その周囲を通過する風により回転した検出ルーバの回転量に基づいて風圧を検出する。よって、車両に吹き付けられる風の向きが、車両の表面に対して垂直な方向ではなくても、その風の圧力を好適に検出することができる。様々な方向から吹き付ける風の圧力を好適に検出することができる。しかも、検出ルーバは、その周囲を風が通過することにより回転するので、検出ルーバが設けられる箇所において車両の表面に沿って流れる風が生じたとしても、検出ルーバの周囲へ向けて吹き込む風により、車両に吹き付けられる風の圧力を検出することができる。車両が走行することによりその表面に沿って生じ得る気流の影響を受け難くできる。
その結果、本発明の風検出装置では、車両の走行中に、その車両に吹きつける風の圧力を好適に検出することができる。車両の挙動に影響を与える風の圧力を好適に検出することができる。
また、その風検出装置を用いた走行安定化促進装置では、検出ルーバの回転量に基づいて風検出装置の検出部により検出された回転量に基づいて、車両の走行安定性が向上するように開口調整ルーバの開口率を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る自動車の走行状態の一例の説明図である。
【
図2】
図2は、
図1の自動車に用いられる風検出装置およびそれを用いた走行安定化促進装置の構成の説明図である。
【
図3】
図3は、
図2の制御部による検出処理および走行安定化促進処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、
図1に対応した開口調整ルーバの制御状態の一例の説明図である。
【
図5】
図5は、変形例に係る走行安定化促進装置の構成の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る自動車1の走行状態の一例の説明図である。
図1(A)では、自動車1は、直進している。この状態で右斜め前方向から横風が自動車1の車体に吹き付けている。この場合、車体の前面に当たる横風の一部は、車体の前面に設けられたフロントグリルを通じて、車体の前室内に入る。これにより、車体の前室に配置されたエンジン3、駆動モータ、バッテリなどの補器を空気で冷却することができる。
図1(B)では、自動車1は、右側へ操舵され、右方向へコーナリングしている。この状態で右斜め前方向から横風が自動車1の車体に吹き付けている。この場合、車体の前面に当たる横風の一部は、車体の前面に設けられたフロントグリルを通じて、車体の前室内に入る。これにより、車体の前室に配置されたエンジン3、駆動モータ、バッテリなどの補器を空気で冷却することができる。
【0017】
ところで、
図1のように走行する自動車1に横風が吹き付けると、自動車1の走行の安定性が低下する可能性がある。
図1(A)の直進する自動車1が左右へふらついたり、
図1(B)のコーナリング中の進路が本来の進路から外側へずれたりする可能性がある。
そこで、たとえば自動車1の左右両側面に圧力センサを設け、この圧力センサの検出に基づいて、自動車1の前面に設けたシャッタを開閉制御する。シャッタを閉じることにより横風の影響を受け難くできる可能性がある。
しかしながら、圧力センサにより風圧を検出する場合、圧力センサに対して垂直に作用する圧力しか検出できない。それ以外の方向から自動車1へ吹き付ける風については、圧力を正確に検出できない。
しかも、走行中の自動車1の左右両側面では、走行による気流が前から後ろへ向けて生成される。この外乱により、自動車1の左右両側面に設けられた圧力センサでは、自動車1へ吹き付ける風を正しく検出できるとは考えられない。圧力センサに対して垂直となる向きから風が吹きつけたとしても、その風圧を正確に検出することはできない。
このように自動車1では、走行中に自動車1に吹き付ける風の圧力を好適に検出できるようにすることが求められている。また、その検出に基づいて自動車1の走行安定性を向上させることが求められている。
【0018】
図2は、
図1の自動車1に用いられる風検出装置およびそれを用いた走行安定化促進装置10の構成の説明図である。
図2の走行安定化促進装置10は、自動車1の前面に設けられたフロントグリル11、検出部12、制御部13、駆動装置14、を有する。
【0019】
自動車1の前面に設けられたフロントグリル11は、自動車1の車幅方向に沿って延在する複数のルーバを有する。フロントグリル11には、走行中の風が吹きつけられる。
一番上には、右検出ルーバ15および左検出ルーバ16が、自動車1の車幅方向に並べて、風圧に応じて個別に回転可能に設けられる。
その下側には、右開口調整ルーバ17および左開口調整ルーバ18が、自動車1の車幅方向に並べて三段で、個別に回動可能に設けられる。
【0020】
駆動装置14は、三段の右開口調整ルーバ17および左開口調整ルーバ18を個別に回転駆動する。また、所定の角度に調整した右開口調整ルーバ17および左開口調整ルーバ18を、その調整角度に維持するように保持する。
駆動装置14は、たとえば電動モータ、リンク機構、ロック機構で構成することができる。
これにより、フロントグリル11は、全開と全閉との間で任意の開口率に調整することができる。
なお、駆動装置14は、右検出ルーバ15および左検出ルーバ16についても、個別に回転駆動してよい。この場合、右検出ルーバ15および左検出ルーバ16は、駆動調整された角度を基準として、その状態から風圧により回転可能であればよい。
【0021】
また、右開口調整ルーバ17および左開口調整ルーバ18は、長手方向(車幅方向)に沿う回転軸が、ルーバの上下幅の中央に設定されている。
これに対し、右検出ルーバ15および左検出ルーバ16は、長手方向に沿う回転軸が、ルーバの上下幅の中央より下側に設定されている。
したがって、たとえば右検出ルーバ15についての回転軸の上側に突出して風圧を受ける第一部19は、回転軸の下側に突出して風圧を受ける第二部20より、大きい面積を有する。
左検出ルーバ16についての第一部19と第二部20ともに同様の関係にある。
これにより、右検出ルーバ15および左検出ルーバ16は、自動車1の前面に向けた風の圧力を受けると、フロントグリル11の一番上において、回転軸の上側の第一部19が後ろへ下がり、回転軸の下側の第二部20が前へ出るように回転することになる。右検出ルーバ15および左検出ルーバ16の直上には、自動車1のフロントフード4が配置されている。このため、自動車1の前にいる人は、右検出ルーバ15および左検出ルーバ16が後ろに下がったようになったとしてもその状態を目視で確認しにくい。
【0022】
検出部12は、風圧に応じて個別に回転可能な右検出ルーバ15の回転量および左検出ルーバ16の回転量を検出する。右検出ルーバ15および左検出ルーバ16は、その周囲を通過する風の圧力に応じた角度まで回転し得る。
検出部12は、たとえば回転したルーバの位置を光学的に検出しても、ルーバの回転軸に設けられたエンコーダにより検出してもよい。また、ルーバの回転量に応じてひずむように設けられたひずみゲージで構成されてもよい。
検出部12は、このほかにも、右検出ルーバ15の回転量と左検出ルーバ16の回転量との差を検出してよい。
【0023】
制御部13は、検出部12の検出結果に基づいて、自動車1に作用する風圧に対する走行安定性が向上するように、自動車1を制御する。
ここでは具体的には、制御部13は、右検出ルーバ15と左検出ルーバ16との回転量の差に基づいて、駆動装置14を用いて、右開口調整ルーバ17の開口率と左開口調整ルーバ18の開口率とを個別に制御する。
【0024】
図3は、
図2の制御部13による検出処理および走行安定化促進処理の一例を示すフローチャートである。
制御部13は、自動車1の走行中に
図3の処理を、繰り返し実行する。
【0025】
図3の処理において、制御部13は、まず、検出部12から、右検出ルーバ15の回転量と左検出ルーバ16の回転量とを取得する(ステップST1)。
そして、制御部13は、右検出ルーバ15の回転量と左検出ルーバ16の回転量とから、検出ルーバ15,16に吹き付ける風の風圧を演算する(ステップST2)。たとえば、右検出ルーバ15の回転量と左検出ルーバ16の回転量との平均的な回転量を演算し、その平均的な回転量から、自動車1の検出ルーバ15,16に吹き付ける風の風圧を演算する。風圧が高くなると、検出ルーバ15,16の回転量は大きくなる。
また、制御部13は、右検出ルーバ15の回転量と左検出ルーバ16の回転量との差を演算し、その回転量の差から、自動車1の検出ルーバ15,16に吹き付ける風の風向きを推定する(ステップST3)。一般的に、自動車1の前方に対する風向きの角度が大きくなるほど、回転量の差が大きくなると考えられる。
なお、回転量と風圧との関係や、回転量の差と風向きとの関係は、予めテーブルデータとしてメモリに保持し、制御部13は、そこから検出値に基づいて選択するようにしてもよい。
【0026】
次に、制御部13は、風の圧力および向きに応じた自動車1の安定化制御を実施する(ステップST4)。
安定化制御において、制御部13は、まず、風の状態に応じた左右ぞれぞれの開口率を演算する(ステップST5)。
たとえば制御部13は、風圧に応じて全体の開口率を演算する。
また、制御部13は、風向きと走行状態に応じて、全体の開口率を確保するように左右それぞれの開口率を演算する。たとえば風上側の開口率を下げて風下側の開口率を上げる。
次に、制御部13は、演算した左右それぞれの開口率が得られるように、駆動装置14により右開口調整ルーバ17および左開口調整ルーバ18の角度を制御する(ステップST6)。また、駆動装置14は、調整された角度において右開口調整ルーバ17および左開口調整ルーバ18を保持する。
これにより、自動車1の前面のフロントグリル11において、左右別々の開口率を得ることができる。
【0027】
図4は、
図1に対応した開口調整ルーバ17,18の制御状態の一例の説明図である。
【0028】
図4(A)は、
図1(A)のように直進中の自動車1に対して右側から斜めに横風が吹き付けている場合での、右開口調整ルーバ17および左開口調整ルーバ18の開口調整状態の一例を示している。
この場合、右検出ルーバ15は、左検出ルーバ16より大きく回転している。
そして、右開口調整ルーバ17および左開口調整ルーバ18は閉じることを基本として制御され、エンジン3の冷却等のための最小限の流入量が得られるように、全体の開口率が演算される。
また、その全体の開口率は、基本的にそのすべてを風上側の右開口調整ルーバ17で確保し、それでも不足する場合に風下上側の左開口調整ルーバ18を開くように制御する。
これにより、直進中の自動車1を左右へふらつかせる可能性がある横風がエンジン3室に流入することを抑制し、そのふらつきを抑えることができる。
【0029】
図4(B)は、
図1(B)のように右へコーナリング中の自動車1に対して右側から斜めに横風が吹き付けている場合での、右開口調整ルーバ17および左開口調整ルーバ18の開口調整状態の一例を示している。
この場合、右検出ルーバ15は、左検出ルーバ16より大きく回転している。
そして、横風が吹き付けられるコーナの内側の右開口調整ルーバ17は、全閉状態に閉じられる。
また、コーナの外側の左開口調整ルーバ18は、全開状態に開かれる。
これにより、コーナの内側から斜めに吹き付ける横風がある場合、風圧により自動車1の内側を外側と比べて相対的に抑えることができる。
その結果、右へコーナリング中の自動車1は、相対的に左側が前へ進みやすくなり、コーナの内側へ向くように回転しやすくなる。コーナの外側へのふくらみを抑制し、トレーサビリティを向上できる。
【0030】
以上のように、本実施形態では、検出ルーバ15,16を用いて、その周囲を通過する風により回転した検出ルーバ15,16の回転量に基づいて風圧を検出する。よって、自動車1に吹き付けられる風の向きが、自動車1の表面に対して垂直な方向ではなくても、その風の圧力を好適に検出することができる。様々な方向から吹き付ける風の圧力を好適に検出することができる。しかも、検出ルーバ15,16は、その周囲を風が通過することにより回転するので、検出ルーバ15,16が設けられる箇所において自動車1の表面に沿って流れる風が生じたとしても、検出ルーバ15,16の周囲へ向けて吹き込む風により、自動車1に吹き付けられる風の圧力を検出することができる。自動車1が走行することによりその表面に沿って生じ得る気流の影響を受け難くできる。
その結果、本発明では、自動車1の走行中に、その自動車1に吹きつける風の圧力を好適に検出することができる。自動車1の挙動に影響を与える風の圧力を好適に検出することができる。
【0031】
特に、検出ルーバ15,16が回転軸の両側に突出して風圧を受ける第一部19と第二部20とを有し、第一部19についての風圧が作用する面が、第二部20についての風圧が作用する面より大きい面積に形成されることにより、検出ルーバ15,16は、弱い風においても回転し始めることができ、しかも、強い風においても回転し切り難くできる。広い圧力範囲において検出ルーバ15,16を回転させて圧力を検出することができる。
これに対して、仮にたとえば第一部19の風圧作用面と第二部20の風圧作用面とを同じ面積にした場合、検出ルーバ15,16は回転し難くなる。その結果、回転負荷を超えた風の力を得られるようにならなければ風圧を検出することができない。
【0032】
本実施形態では、検出ルーバ15,16は、自動車1の前面に設けられる。よって、自動車1が走行している状況であっても、自動車1の側面に沿って流れる風の影響を受け難くできる。自動車1に吹きつける風の圧力を、好適に検出することができる。
しかも、自動車1では、その前面にエンジン3等の冷却風を取り込む構造が採用されることが一般的であり、その冷却風を取り込む構造の一部として検出ルーバ15,16を設けて、自動車1の意匠性を損ない難くできる。
【0033】
本実施形態では、第一部19が、自動車1の車幅方向に沿うように設けられる回転軸の上側に位置し、第二部20が、回転軸の下側に位置する。よって、風圧が作用して検出ルーバ15,16が回転する際には、検出ルーバ15,16の上側の第一部19が後ろ側へ倒れるようになる。その結果、倒れた第一部19の上側に形成される開口は、外から視認し難くなる。
【0034】
本実施形態では、検出ルーバ15,16は、自動車1の前面のフロントグリル11において自動車1の車幅方向に並べて、個別に回転可能に設けられた右検出ルーバ15および左検出ルーバ16で構成され、検出部12は、右検出ルーバ15の回転量と左検出ルーバ16の回転量との回転量差を検出する。よって、自動車1の右側部分に吹き付ける風の風圧と、自動車1の左側部分に吹き付ける風の風圧との風圧差を、回転量差から検出できる。よって、自動車1に吹き付ける風の向きを検出できる。
【0035】
本実施形態では、検出ルーバ15,16は、自動車1の前面においてフロントグリル11の一部として設けられる。しかも、フロントグリル11において自動車1の車幅方向に沿って延在する複数のルーバの中で最も上側となるように設けられる。よって、検出ルーバ15,16が風圧で回転したとしても、その状態をたとえば歩行者などが上側から視認し難くできる。検出ルーバ15,16が風圧により回転するとしても、その影響を抑制することができる。
【0036】
本実施形態では、自動車1の前面のフロントグリル11に、検出ルーバ15,16と開口調整ルーバ17,18とが設けられる。よって、検出ルーバ15,16と開口調整ルーバ17,18とをフロントグリル11でモジュール化したり、自動車1の走行安定化を促進する装置を基本的に自動車1の前面のフロントグリル11およびその周囲に集約的に配置することできる。
また、検出ルーバ15,16の回転量に基づいて風検出装置の検出部12により検出された回転量差に基づいて、自動車1に作用する風圧に対して自動車1の走行安定性が向上するように開口調整ルーバ17,18の開口率を調整する。これにより、走行する自動車1の安定性が改善され得る。
【0037】
上記実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0038】
図5は、変形例に係る走行安定化促進装置10の構成の説明図である。
図5の操舵装置31は、自動車1のハンドル操作を自動制御により実施する。
制御部13は、風の圧力および向きに応じた自動車1の安定化制御において、操舵装置31により操舵を微調整する。
たとえば
図1(B)のように右へコーナリング中に右側から横風が吹き付ける場合、右へ微小に操舵を切りましする。
これにより、右へコーナリング中の自動車1は、さらにコーナの内側へ向くように進行する。コーナの外側へのふくらみを抑制し、トレーサビリティを向上できる。
また、制御部13は、フロントグリル11による左右の開口率の制御とともに、操舵装置31による操舵の微調整を実施するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1…自動車(車両)、3…エンジン、4…フロントフード、10…走行安定化促進装置(風検出装置)、11…フロントグリル、12…検出部、13…制御部、14…駆動装置、15…右検出ルーバ(検出ルーバ)、16…左検出ルーバ(検出ルーバ)、17…右開口調整ルーバ(開口調整ルーバ)、18…左開口調整ルーバ(開口調整ルーバ)、19…第一部、20…第二部、31…操舵装置