(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】吸収式熱交換システム
(51)【国際特許分類】
F25B 15/00 20060101AFI20220127BHJP
【FI】
F25B15/00 301Z
(21)【出願番号】P 2017201151
(22)【出願日】2017-10-17
【審査請求日】2020-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】503164502
【氏名又は名称】荏原冷熱システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100097320
【氏名又は名称】宮川 貞二
(74)【代理人】
【識別番号】100131820
【氏名又は名称】金井 俊幸
(74)【代理人】
【識別番号】100155192
【氏名又は名称】金子 美代子
(74)【代理人】
【識別番号】100100398
【氏名又は名称】柴田 茂夫
(72)【発明者】
【氏名】竹村 與四郎
(72)【発明者】
【氏名】青山 淳
(72)【発明者】
【氏名】平田 甲介
【審査官】飯星 潤耶
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-183967(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107144042(CN,A)
【文献】特開2007-309555(JP,A)
【文献】特開2008-202853(JP,A)
【文献】特開2006-207883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00-49/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収液が冷媒の蒸気を吸収して濃度が低下した希溶液となる際に放出した吸収熱によって第1の被加熱流体の温度を上昇させる吸収部と;
冷媒の蒸気が凝縮して冷媒液となる際に放出した凝縮熱によって第2の被加熱流体の温度を上昇させる凝縮部と;
前記凝縮部から前記冷媒液を導入し、導入した前記冷媒液が蒸発して前記吸収部に供給される前記冷媒の蒸気となる際に必要な蒸発潜熱を加熱源流体から奪うことで前記加熱源流体の温度を低下させる蒸発部と;
前記吸収部から前記希溶液を導入し、導入した前記希溶液を加熱し前記希溶液から冷媒を離脱させて濃度が上昇した濃溶液とするのに必要な熱を加熱源流体から奪うことで前記加熱源流体の温度を低下させる再生部と;
前記凝縮部において温度が上昇した後の前記第2の被加熱流体と、前記凝縮部において温度が上昇した後の前記第2の被加熱流体の温度を上昇させる昇温流体と、の間で熱交換を行わせる熱交換部とを備え;
前記吸収液と前記冷媒との吸収ヒートポンプサイクルによって、前記吸収部は前記再生部よりも内部の圧力及び温度が高くなり、前記蒸発部は前記凝縮部よりも内部の圧力及び温度が高くなるように構成され;
前記熱交換部は、前記蒸発部において温度が低下した後の前記加熱源流体及び前記再生部において温度が低下した後の前記加熱源流体の少なくとも一方を前記昇温流体として導入するように構成された;
吸収式熱交換システム。
【請求項2】
前記熱交換部は、前記蒸発部及び前記再生部に導入される前の前記加熱源流体から分岐された一部の前記加熱源流体を前記昇温流体として導入するように構成された;
請求項1に記載の吸収式熱交換システム。
【請求項3】
前記熱交換部から流出した前記第2の被加熱流体の温度が所定の温度になるように、前記蒸発部及び再生部に流入する前記加熱源流体の流量と前記熱交換部に流入する前記加熱源流体の流量との比が設定された;
請求項
2に記載の吸収式熱交換システム。
【請求項4】
前記蒸発部及び前記再生部に導入される前の前記加熱源流体から分岐された一部の前記加熱源流体を前記第1の被加熱流体として前記吸収部に導入するように構成された;
請求項1乃至請求項
3のいずれか1項に記載の吸収式熱交換システム。
【請求項5】
前記凝縮部から前記蒸発部に搬送される前記冷媒液と、前記熱交換部から流出した前記昇温流体と、の間で熱交換を行わせる冷媒熱交換器を備える;
請求項1乃至請求項
4のいずれか1項に記載の吸収式熱交換システム。
【請求項6】
吸収液が冷媒の蒸気を吸収して濃度が低下した希溶液となる際に放出した吸収熱によって第1の被加熱流体の温度を上昇させる吸収部と;
冷媒の蒸気が凝縮して冷媒液となる際に放出した凝縮熱によって第2の被加熱流体の温度を上昇させる凝縮部と;
前記凝縮部から前記冷媒液を導入し、導入した前記冷媒液が蒸発して前記吸収部に供給される前記冷媒の蒸気となる際に必要な蒸発潜熱を加熱源流体から奪うことで前記加熱源流体の温度を低下させる蒸発部と;
前記吸収部から前記希溶液を導入し、導入した前記希溶液を加熱し前記希溶液から冷媒を離脱させて濃度が上昇した濃溶液とするのに必要な熱を加熱源流体から奪うことで前記加熱源流体の温度を低下させる再生部と;
前記凝縮部において温度が上昇した後の前記第2の被加熱流体と、前記凝縮部において温度が上昇した後の前記第2の被加熱流体の温度を上昇させる昇温流体と、の間で熱交換を行わせる熱交換部とを備え;
前記吸収液と前記冷媒との吸収ヒートポンプサイクルによって、前記吸収部は前記再生部よりも内部の圧力及び温度が高くなり、前記蒸発部は前記凝縮部よりも内部の圧力及び温度が高くなるように構成され;
前記凝縮部から前記蒸発部に搬送される前記冷媒液と、前記熱交換部から流出した前記昇温流体と、の間で熱交換を行わせる冷媒熱交換器を備える;
吸収式熱交換システム。
【請求項7】
前記吸収部で加熱された前記第1の被加熱流体を導入して前記第1の被加熱流体の液体と蒸気とに分離する気液分離器を備える;
請求項1乃至請求項
6のいずれか1項に記載の吸収式熱交換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸収式熱交換システムに関し、特に温度が異なる2種類の被加熱流体を取り出すことができる吸収式熱交換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器は、高温の流体と低温の流体との間で熱を交換する装置として広く用いられている。2つの流体の間で直接熱交換が行われる熱交換器では、熱交換後に流出する低温の流体及び高温の流体の温度は、両者の交換熱量に見合った温度となる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5498809号公報(
図11等参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱交換器の用途の1つとして、排熱を回収することが挙げられる。排熱は、使用されずに捨てられる熱であるため、回収できる熱量が多いほど熱を有効に利用することができることとなる。回収した熱を利用する側で、温度が異なる2種類の流体の需要があるとき、温度が異なる2種類の流体を取り出すことができれば、回収した熱の有効利用を図ることができる。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑み、温度が異なる2種類の被加熱流体を取り出すことができる吸収式熱交換システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る吸収式熱交換システムは、例えば
図1に示すように、吸収液Saが冷媒の蒸気Veを吸収して濃度が低下した希溶液Swとなる際に放出した吸収熱によって第1の被加熱流体FL1の温度を上昇させる吸収部10と;冷媒の蒸気Vgが凝縮して冷媒液Vfとなる際に放出した凝縮熱によって第2の被加熱流体FL2の温度を上昇させる凝縮部40と;凝縮部40から冷媒液Vfを導入し、導入した冷媒液Vfが蒸発して吸収部10に供給される冷媒の蒸気Veとなる際に必要な蒸発潜熱を加熱源流体FHから奪うことで加熱源流体FHの温度を低下させる蒸発部20と;吸収部10から希溶液Swを導入し、導入した希溶液Swを加熱し希溶液Swから冷媒Vgを離脱させて濃度が上昇した濃溶液Saとするのに必要な熱を加熱源流体FHから奪うことで加熱源流体FHの温度を低下させる再生部30と;凝縮部40において温度が上昇した後の第2の被加熱流体FL2と、凝縮部40において温度が上昇した後の第2の被加熱流体FL2の温度を上昇させる昇温流体FHと、の間で熱交換を行わせる熱交換部80とを備え;吸収液Sa、Swと冷媒Ve、Vf、Vgとの吸収ヒートポンプサイクルによって、吸収部10は再生部30よりも内部の圧力及び温度が高くなり、蒸発部20は凝縮部40よりも内部の圧力及び温度が高くなるように構成されている。
【0007】
このように構成すると、温度が異なる2種類の被加熱流体を取り出すことができる。
【0008】
また、本発明の第2の態様に係る吸収式熱交換システムは、例えば
図1に示すように、上記本発明の第1の態様に係る吸収式熱交換システム1において、吸収部10で加熱された第1の被加熱流体FL1を導入して第1の被加熱流体FL1の液体Frと蒸気Fvとに分離する気液分離器16を備える。
【0009】
このように構成すると、利用価値の高い、第1の被加熱流体の蒸気を取り出すことができる。
【0010】
また、本発明の第3の態様に係る吸収式熱交換システムは、例えば
図1に示すように、上記本発明の第1の態様又は第2の態様に係る吸収式熱交換システム1において、熱交換部80は、蒸発部20において温度が低下した後の加熱源流体FH及び再生部30において温度が低下した後の加熱源流体FHの少なくとも一方を昇温流体として導入するように構成されている。
【0011】
このように構成すると、吸収式熱交換システムから排出される加熱源流体からさらに熱を回収することができる。
【0012】
また、本発明の第4の態様に係る吸収式熱交換システムは、例えば
図3に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第3の態様のいずれか1つの態様に係る吸収式熱交換システム2において、熱交換部80は、蒸発部20及び再生部30に導入される前の加熱源流体FHから分岐された一部の加熱源流体FHsを昇温流体として導入するように構成されている。
【0013】
このように構成すると、熱交換部から流出する第2の被加熱流体の温度を高くすることができる。
【0014】
また、本発明の第5の態様に係る吸収式熱交換システムは、例えば
図3を参照して示すと、上記本発明の第4の態様に係る吸収式熱交換システム2において、熱交換部80から流出した第2の被加熱流体FL2の温度が所定の温度になるように、蒸発部20及び再生部30に流入する加熱源流体FHの流量と熱交換部80に流入する加熱源流体FHsの流量との比が設定されている。
【0015】
このように構成すると、熱交換部から流出した第2の被加熱流体の温度を所定の温度に設定することができる。
【0016】
また、本発明の第6の態様に係る吸収式熱交換システムは、例えば
図4に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第5の態様のいずれか1つの態様に係る吸収式熱交換システム3において、蒸発部20及び再生部30に導入される前の加熱源流体FHから分岐された一部の加熱源流体FHを第1の被加熱流体FL1として吸収部10に導入するように構成されている。
【0017】
このように構成すると、第1の被加熱流体の温度を、分岐された加熱源流体の温度よりも高くすることができる。
【0018】
また、本発明の第7の態様に係る吸収式熱交換システムは、例えば
図5に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第6の態様のいずれか1つの態様に係る吸収式熱交換システム4において、凝縮部40から蒸発部20に搬送される冷媒液Vfと、熱交換部80から流出した昇温流体FHと、の間で熱交換を行わせる冷媒熱交換器99を備える。
【0019】
このように構成すると、吸収式熱交換システムから流出する昇温流体の温度を下げることができ、吸収式熱交換システムにおいて昇温流体から回収する熱量を増加させることができる。
【0020】
上記目的を達成するために、本発明の第8の態様に係る吸収式熱交換システムは、例えば
図6に示すように、吸収液Saが冷媒の蒸気Veを吸収して濃度が低下した希溶液Swとなる際に放出した吸収熱によって第1の被加熱流体FL1の温度を上昇させる吸収部10と;冷媒の蒸気Vgが凝縮して冷媒液Vfとなる際に放出した凝縮熱によって第2の被加熱流体FL2の温度を上昇させる凝縮部40と;凝縮部40から冷媒液Vfを導入し、導入した冷媒液Vfが蒸発して吸収部10に供給される冷媒の蒸気Veとなる際に必要な蒸発潜熱を加熱源流体FHから奪うことで加熱源流体FHの温度を低下させる蒸発部20と;吸収部10から希溶液Swを導入し、導入した希溶液Swを加熱し希溶液Swから冷媒を離脱させて濃度が上昇した濃溶液Saとするのに必要な熱を加熱源流体FHから奪うことで加熱源流体FHの温度を低下させる再生部30とを備え;吸収液Sa、Swと冷媒Ve、Vf、Vgとの吸収ヒートポンプサイクルによって、吸収部10は再生部30よりも内部の圧力及び温度が高くなり、蒸発部20は凝縮部40よりも内部の圧力及び温度が高くなるように構成され;さらに、凝縮部40から流出した第2の被加熱流体FL2を導入し、第2の被加熱流体FL2が保有する熱で加熱を必要とする物質を加熱する中温熱消費設備64を備える。
【0021】
このように構成すると、温度が異なる2種類の被加熱流体を取り出して有効に利用することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、温度が異なる2種類の被加熱流体を取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る吸収式熱交換システムの模式的系統図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態の変形例に係る吸収式熱交換システムの模式的系統図である。
【
図3】本発明の第2の実施の形態に係る吸収式熱交換システムの模式的系統図である。
【
図4】本発明の第3の実施の形態に係る吸収式熱交換システムの模式的系統図である。
【
図5】本発明の第4の実施の形態に係る吸収式熱交換システムの模式的系統図である。
【
図6】本発明の第5の実施の形態に係る吸収式熱交換システムの模式的系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0025】
まず
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る吸収式熱交換システム1を説明する。
図1は、吸収式熱交換システム1の模式的系統図である。吸収式熱交換システム1は、吸収液と冷媒との吸収ヒートポンプサイクルを利用して、第1低温流体FL1及び第2低温流体FL2と、高温流体FHとの熱交換を行わせるシステムである。ここで、第1低温流体FL1及び第2低温流体FL2は、吸収式熱交換システム1において温度を上昇させる対象となる流体であり、第1低温流体FL1は第1の被加熱流体に、第2低温流体FL2は第2の被加熱流体に、それぞれ相当する。高温流体FHは、吸収式熱交換システム1において温度が低下する流体であり、加熱源流体に相当する。吸収式熱交換システム1は、吸収液S(Sa、Sw)と冷媒V(Ve、Vg、Vf)との吸収ヒートポンプサイクルが行われる主要機器を構成する吸収器10、蒸発器20、再生器30、及び凝縮器40を備え、さらに、熱交換部80を備えている。吸収器10、蒸発器20、再生器30、凝縮器40は、それぞれ、吸収部、蒸発部、再生部、凝縮部に相当する。
【0026】
本明細書においては、吸収液に関し、ヒートポンプサイクル上における区別を容易にするために、性状やヒートポンプサイクル上の位置に応じて「希溶液Sw」や「濃溶液Sa」等と呼称するが、性状等を不問にするときは総称して「吸収液S」ということとする。同様に、冷媒に関し、ヒートポンプサイクル上における区別を容易にするために、性状やヒートポンプサイクル上の位置に応じて「蒸発器冷媒蒸気Ve」、「再生器冷媒蒸気Vg」、「冷媒液Vf」等と呼称するが、性状等を不問にするときは総称して「冷媒V」ということとする。本実施の形態では、吸収液S(吸収剤と冷媒Vとの混合物)としてLiBr水溶液が用いられており、冷媒Vとして水(H2O)が用いられている。
【0027】
吸収器10は、第1低温流体FL1の流路を構成する伝熱管12と、濃溶液Saを伝熱管12の表面に供給する濃溶液供給装置13とを内部に有している。吸収器10は、濃溶液供給装置13から濃溶液Saが伝熱管12の表面に供給され、濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収して希溶液Swとなる際に吸収熱を発生させる。この吸収熱を、伝熱管12を流れる第1低温流体FL1が受熱して、第1低温流体FL1が加熱されるように構成されている。
【0028】
本実施の形態に係る吸収式熱交換システム1は、吸収器10の伝熱管12を流れて加熱された第1低温流体FL1を液体と蒸気とに分離する気液分離器16を備えている。気液分離器16と伝熱管12とは、加熱後流体管17及び分離液管18で接続されている。加熱後流体管17は、伝熱管12を流れて加熱された第1低温流体FL1を気液分離器16に導くものである。分離液管18は、伝熱管12を流れて加熱された第1低温流体FL1が気液分離器16内で分離された後の液体である分離液体Frを伝熱管12に導くものである。また、気液分離器16の上部(典型的には頂部)には、分離蒸気管19の一端が接続されている。分離蒸気管19は、伝熱管12を流れて加熱された第1低温流体FL1が気液分離器16内で分離された後の蒸気である分離蒸気Fvを吸収式熱交換システム1の外に導くものである。また、主に蒸気として吸収式熱交換システム1の外に供給された分の第1低温流体FL1を補うための補給液体Fsを吸収式熱交換システム1の外から導入する補導入管18sが設けられている。補導入管18sは、分離液管18に接続されており、分離液管18を流れる分離液体Frに補給液体Fsを合流させるように構成されている。補導入管18sには、分離液管18に向けて補給液体Fsを圧送する補給液体ポンプ18pが配設されている。分離液管18を流れる分離液体Frは、第1低温流体FL1として吸収器10の伝熱管12に導入されるように構成されている。
【0029】
蒸発器20は、高温流体FHの流路を構成する熱源管22を、蒸発器缶胴21の内部に有している。蒸発器20は、蒸発器缶胴21の内部に冷媒液Vfを散布するノズルを有していない。このため、熱源管22は、蒸発器缶胴21内に貯留された冷媒液Vfに浸かるように配設されている(満液式蒸発器)。蒸発器20は、熱源管22周辺の冷媒液Vfが熱源管22内を流れる高温流体FHの熱で蒸発して蒸発器冷媒蒸気Veが発生するように構成されている。蒸発器缶胴21には、蒸発器缶胴21内に冷媒液Vfを供給する冷媒液管45が接続されている。
【0030】
吸収器10と蒸発器20とは、相互に連通している。吸収器10と蒸発器20とが連通することにより、蒸発器20で発生した蒸発器冷媒蒸気Veを吸収器10に供給することができるように構成されている。
【0031】
再生器30は、希溶液Swを加熱する高温流体FHを内部に流す熱源管32と、希溶液Swを熱源管32の表面に供給する希溶液供給装置33とを有している。熱源管32内を流れる高温流体FHは、本実施の形態では、蒸発器20の熱源管22内を流れた後の高温流体FHとなっている。蒸発器20の熱源管22と再生器30の熱源管32とは、高温流体FHを流す高温流体連絡管25で接続されている。再生器30の熱源管32の高温流体連絡管25が接続された端部とは反対側の端部には、高温流体排出管39が接続されている。高温流体排出管39は、高温流体FHを系外へ導く流路を構成する管である。再生器30は、希溶液供給装置33から供給された希溶液Swが高温流体FHに加熱されることにより、希溶液Swから冷媒Vが蒸発して濃度が上昇した濃溶液Saが生成されるように構成されている。希溶液Swから蒸発した冷媒Vは再生器冷媒蒸気Vgとして凝縮器40に移動するように構成されている。
【0032】
凝縮器40は、第2低温流体FL2が流れる伝熱管42を凝縮器缶胴41の内部に有している。凝縮器40は、再生器30で発生した再生器冷媒蒸気Vgを導入し、これが凝縮して冷媒液Vfとなる際に放出した凝縮熱を、伝熱管42内を流れる第2低温流体FL2が受熱して、第2低温流体FL2が加熱されるように構成されている。伝熱管42には、一端に第2低温流入管48が接続され、他端に第2低温排出管49が接続されている。第2低温流入管48は、伝熱管42に第2低温流体FL2を供給するものである。第2低温流体排出管49は、伝熱管42で加熱された第2低温流体FL2を流すものである。再生器30と凝縮器40とは、相互に連通するように、再生器30の缶胴と凝縮器缶胴41とが一体に形成されている。再生器30と凝縮器40とが連通することにより、再生器30で発生した再生器冷媒蒸気Vgを凝縮器40に供給することができるように構成されている。
【0033】
再生器30の濃溶液Saが貯留される部分と吸収器10の濃溶液供給装置13とは、濃溶液Saを流す濃溶液管35で接続されている。濃溶液管35には、濃溶液Saを圧送する溶液ポンプ35pが配設されている。吸収器10の希溶液Swが貯留される部分と希溶液供給装置33とは、希溶液Swを流す希溶液管36で接続されている。濃溶液管35及び希溶液管36には、濃溶液Saと希溶液Swとの間で熱交換を行わせる溶液熱交換器38が配設されている。凝縮器40の冷媒液Vfが貯留される部分と蒸発器缶胴21とは、冷媒液Vfを流す冷媒液管45で接続されている。冷媒液管45には、冷媒液Vfを圧送する冷媒ポンプ46が配設されている。
【0034】
熱交換部80は、高温流体排出管39及び第2低温排出管49に配設されており、高温流体排出管39を流れる高温流体FHと第2低温排出管49を流れる第2低温流体FL2とで熱交換を行わせるように構成されている。本実施の形態では、蒸発器20及び再生器30において温度が低下した高温流体FHが、昇温流体として機能し、第2低温流体FL2と熱交換するようになっている。熱交換部80は、典型的にはシェルアンドチューブ型熱交換器で構成されているが、プレート型熱交換器等の、2つの流体の間で熱交換させる機器であってもよい。
【0035】
吸収式熱交換システム1は、定常運転中、吸収器10の内部の圧力及び温度は再生器30の内部の圧力及び温度よりも高くなり、蒸発器20の内部の圧力及び温度は凝縮器40の内部の圧力及び温度よりも高くなる。吸収式熱交換システム1は、吸収器10、蒸発器20、再生器30、凝縮器40が、第2種吸収ヒートポンプの構成となっている。
【0036】
引き続き
図1を参照して、吸収式熱交換システム1の作用を説明する。まず、冷媒側の吸収ヒートポンプサイクルを説明する。凝縮器40では、再生器30で蒸発した再生器冷媒蒸気Vgを受け入れて、伝熱管42を流れる第2低温流体FL2によって再生器冷媒蒸気Vgが冷却されて凝縮し、冷媒液Vfとなる。このとき、第2低温流体FL2は、再生器冷媒蒸気Vgが凝縮する際に放出した凝縮熱によって温度が上昇する。凝縮した冷媒液Vfは、冷媒ポンプ46で蒸発器缶胴21に送られる。蒸発器缶胴21に送られた冷媒液Vfは、熱源管22内を流れる高温流体FHによって加熱され、蒸発して蒸発器冷媒蒸気Veとなる。このとき、高温流体FHは、冷媒液Vfに熱を奪われて温度が低下する。蒸発器20で発生した蒸発器冷媒蒸気Veは、蒸発器20と連通する吸収器10へと移動する。
【0037】
次に溶液側の吸収ヒートポンプサイクルを説明する。吸収器10では、濃溶液Saが濃溶液供給装置13から供給され、この供給された濃溶液Saが蒸発器20から移動してきた蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する。蒸発器冷媒蒸気Veを吸収した濃溶液Saは、濃度が低下して希溶液Swとなる。吸収器10では、濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する際に吸収熱が発生する。この吸収熱により、伝熱管12を流れる第1低温流体FL1が加熱され、第1低温流体FL1の温度が上昇する。吸収器10で蒸発器冷媒蒸気Veを吸収した濃溶液Saは、濃度が低下して希溶液Swとなり、吸収器10の下部に貯留される。貯留された希溶液Swは、吸収器10と再生器30との内圧の差により再生器30に向かって希溶液管36を流れ、溶液熱交換器38で濃溶液Saと熱交換して温度が低下して、再生器30に至る。
【0038】
再生器30に送られた希溶液Swは、希溶液供給装置33から供給され、熱源管32を流れる高温流体FHによって加熱され、供給された希溶液Sw中の冷媒が蒸発して濃溶液Saとなり、再生器30の下部に貯留される。このとき、高温流体FHは、希溶液Swに熱を奪われて温度が低下する。熱源管32を流れる高温流体FHは、蒸発器20の熱源管22を通過してきたものである。希溶液Swから蒸発した冷媒Vは、再生器冷媒蒸気Vgとして凝縮器40へと移動する。再生器30の下部に貯留された濃溶液Saは、溶液ポンプ35pにより、濃溶液管35を介して吸収器10の濃溶液供給装置13に圧送される。濃溶液管35を流れる濃溶液Saは、溶液熱交換器38で希溶液Swと熱交換して温度が上昇してから吸収器10に流入し、濃溶液供給装置13から供給され、以降、同様のサイクルを繰り返す。
【0039】
吸収液S及び冷媒Vが上記のような吸収ヒートポンプサイクルを行う過程における、高温流体FH並びに第1低温流体FL1及び第2低温流体FL2の温度の変化を、具体例を挙げて説明する。95℃で蒸発器20の熱源管22に流入した高温流体FHは、冷媒液Vfに熱を奪われて89℃に温度が低下する。蒸発器20から流出した高温流体FHは、高温流体連絡管25を流れた後、89℃で再生器30の熱源管32に流入する。熱源管32に流入した高温流体FHは、希溶液Swに熱を奪われて84℃に温度が低下する。再生器30で温度が低下した高温流体FHは、84℃で再生器30を流出し、高温流体排出管39を流れて熱交換部80に流入する。
【0040】
他方、32℃で凝縮器40の伝熱管42に流入した第2低温流体FL2は、再生器冷媒蒸気Vgが凝縮する際に放出した凝縮熱を得て、50℃に温度が上昇する。凝縮器40から流出した第2低温流体FL2は、第2低温排出管49を流れて熱交換部80に流入する。熱交換部80では、高温流体排出管39を流れる高温流体FHと第2低温排出管49を流れる第2低温流体FL2との間で熱交換が行われ、84℃の高温流体FHは74℃に温度が低下し、50℃の第2低温流体FL2は80℃に温度が上昇する。74℃に温度が低下した高温流体FHは、引き続き高温流体排出管39を流れて吸収式熱交換システム1から排出される。80℃に温度が上昇した第2低温流体FL2は、中温度の熱を消費する設備(不図示)に供給される。吸収式熱交換システム1は、熱交換部80で加熱された第2低温流体FL2の温度が、蒸発器20及び再生器30から流出した高温流体FHの温度よりも高くないが、高温流体FHが中温度の熱を消費する設備で利用できない性質や種類の流体である場合には好適である。例えば、高温流体FHが生産プロセス内を循環する流体であって、生産プロセスから吸収式熱交換システム1に流入した高温流体FHを、熱を奪って冷却した後に生産プロセスに戻す場合、又は、高温流体FHが廃棄すべき流体であって、吸収式熱交換システム1で熱を奪って冷却した後に廃棄する場合等である。中温度の熱を消費する設備として、典型的には比較的近距離に設置された暖房設備が挙げられる。吸収式熱交換システム1では、第2低温流体FL2の流量を、高温流体FHの流量の約1/3としている。換言すれば、第2低温流体FL2と高温流体FHとの流量比を約1:3としている。この流量比は、あらかじめ決められた値にしたがって採用したサイズの配管やオリフィス等を用いることで固定してもよく、バルブ等を用いて自動又は手動で調節可能に構成してもよい。流量比がバルブ等を用いて自動で調節される場合、バルブ等は典型的には制御装置に制御される。
【0041】
また、82℃で吸収器10の伝熱管12に流入した第1低温流体FL1は、濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する際に発生した吸収熱を得て110℃に温度が上昇する。第1低温流体FL1は、吸収器10で加熱された際に一部が沸騰して気液混合状態となる。吸収器10から流出した第1低温流体FL1は、加熱後流体管17を介して気液分離器16に流入する。気液分離器16に流入した第1低温流体FL1は、分離蒸気Fvと分離液体Frとに分離される。気液分離器16で分離された分離蒸気Fvは、分離蒸気管19に流出し、高温度の熱を消費する設備(不図示)に供給される。高温度の熱を消費する設備として、典型的には工場プロセスや遠方に設置された暖房設備が挙げられる。このように、吸収式熱交換システム1では、導入する高温流体FHの温度以上の分離蒸気Fv(第1低温流体FL1)を取り出すことができる。他方、気液分離器16で分離された分離液体Frは、分離液管18を流れ、途中で補導入管18sを流れてきた補給液体Fsが合流して温度が低下し、第1低温流体FL1として82℃で伝熱管12内に供給される。典型的には、分離蒸気Fvとして高温度の熱を消費する設備に供給された分が、補給液体Fsとして外部から供給される。
【0042】
以上で説明したように、本実施の形態に係る吸収式熱交換システム1によれば、第2種吸収ヒートポンプの機能を発揮する吸収器10、蒸発器20、再生器30、凝縮器40における吸収液Sと冷媒Vとの吸収ヒートポンプサイクルを介して間接的に高温流体FHと第1低温流体FL1及び第2低温流体FL2との熱交換を行わせると共に、熱交換部80において直接的に高温流体FHと第2低温流体FL2との熱交換を行わせることで、温度が異なる2種類の被加熱流体(第1低温流体FL1、第2低温流体FL2)を取り出すことができる。また、吸収式熱交換システム1では、吸収器10から流出した第1低温流体FL1を気液分離器16において気液分離して分離蒸気Fvとして取り出すので、エンタルピが大きく利用価値の高い蒸気を供給することができる。なお、高温流体FH、第1低温流体FL1、第2低温流体FL2のそれぞれは、流体の性質や種類が、他の1つ又は2つと異なっていてもよく、同じであってもよい。
【0043】
次に
図2を参照して、本発明の第1の実施の形態の変形例に係る吸収式熱交換システム1Aを説明する。
図2は、吸収式熱交換システム1Aの模式的系統図である。吸収式熱交換システム1Aは、主として以下の点で吸収式熱交換システム1(
図1参照)と異なっている。吸収式熱交換システム1Aは、吸収器10から流出した第1低温流体FL1が、液体の状態で高温度の熱を消費する設備(不図示)に供給されるようになっている。したがって、吸収式熱交換システム1Aでは、吸収式熱交換システム1(
図1参照)で設けられていた気液分離器16(
図1参照)及びこのまわりの構成の分離蒸気管19(
図1参照)、分離液管18(
図1参照)、補給液体ポンプ18p(
図1参照)が配設された補導入管18s(
図1参照)が設けられておらず、高温度の熱を消費する設備等から送られてきた第1低温流体FL1が吸収器10の伝熱管12に流入し、吸収器10で加熱された第1低温流体FL1が加熱後流体管17を流れて高温度の熱を消費する設備に供給されるように構成されている。吸収式熱交換システム1Aの上記以外の構成は、吸収式熱交換システム1(
図1参照)と同様である。
【0044】
上述のように構成された吸収式熱交換システム1Aでは、吸収器10、蒸発器20、再生器30、凝縮器40における吸収液Sと冷媒Vとの吸収ヒートポンプサイクルは、吸収式熱交換システム1(
図1参照)と同様に作用する。また、高温流体FHの流路及び温度変化も、吸収式熱交換システム1(
図1参照)と同様に作用する。また、第2低温流体FL2の流路及び温度変化も、吸収式熱交換システム1(
図1参照)と同様に作用する。他方、第1低温流体FL1は、吸収器10の伝熱管12に流入し、吸収器10において濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する際に発生した吸収熱を得て蒸発しない程度に温度が上昇して吸収器10から流出し、加熱後流体管17を介して高温度の熱を消費する設備(不図示)に供給される。このように、吸収式熱交換システム1Aは、気液分離器16(
図1参照)まわりの構成を省略した簡便な構成で温度が異なる2種類の液体を取り出すことができる。
【0045】
次に
図3を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る吸収式熱交換システム2を説明する。
図3は、吸収式熱交換システム2の模式的系統図である。吸収式熱交換システム2は、主として以下の点で吸収式熱交換システム1(
図1参照)と異なっている。吸収式熱交換システム2は、蒸発器20に導入される前の高温流体FHの一部を分岐した部分高温流体FHsを、蒸発器20及び再生器30を迂回して、再生器30から流出した高温流体FHに合流させる高温流体迂回管29が設けられている。高温流体迂回管29の一端は、高温流体FHを熱源管22に導入する高温流体導入管24に接続されている。高温流体迂回管29の他端は、高温流体排出管39に接続されている。本実施の形態では、高温流体排出管39を流れる高温流体FHは、熱交換部80を介さずに系外に排出される。熱交換部80は、吸収式熱交換システム1(
図1参照)においては高温流体排出管39及び第2低温排出管49に配設されていたことに代えて、第2低温排出管49及び高温流体迂回管29に配設されており、第2低温排出管49を流れる第2低温流体FL2と、高温流体迂回管29を流れる部分高温流体FHsとの間で熱交換を行わせるように構成されている。吸収式熱交換システム2の上記以外の構成は、吸収式熱交換システム1(
図1参照)と同様である。
【0046】
上述のように構成された吸収式熱交換システム2の作用は以下の通りである。吸収器10、蒸発器20、再生器30、凝縮器40における吸収液Sと冷媒Vとの吸収ヒートポンプサイクルは、吸収式熱交換システム1(
図1参照)と同様に作用する。蒸発器20に向かって高温流体導入管24を流れる高温流体FHは、一部が分岐して部分高温流体FHsとして高温流体迂回管29に流入し、残りの高温流体FHが熱源管22に流入する。熱源管22に流入した高温流体FHは、冷媒液Vfに熱を奪われて温度が低下し、蒸発器20から流出して高温流体連絡管25を流れた後に再生器30の熱源管32に流入し、再生器30において希溶液Swに熱を奪われて温度が低下して再生器30を流出する。高温流体導入管24から高温流体迂回管29に流入した高温流体FHは、熱交換部80に流入する。他方、凝縮器40の伝熱管42に流入した第2低温流体FL2は、再生器冷媒蒸気Vgが凝縮する際に放出した凝縮熱を得て温度が上昇し、凝縮器40から流出して熱交換部80に流入する。熱交換部80では、高温流体迂回管29を流れる部分高温流体FHsと第2低温排出管49を流れる第2低温流体FL2との間で熱交換が行われ、部分高温流体FHsは温度が低下し、第2低温流体FL2は温度が上昇する。熱交換部80において温度が低下した部分高温流体FHsは、高温流体迂回管29を介して高温流体排出管39を流れる高温流体FHと合流し、吸収式熱交換システム2から排出される。熱交換部80において温度が上昇した第2低温流体FL2は、引き続き第2低温排出管49を流れて中温度の熱を消費する設備(不図示)に供給される。他方、第1低温流体FL1は、吸収式熱交換システム1(
図1参照)と同様、吸収器10の伝熱管12に流入し、吸収器10において濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する際に発生した吸収熱を得て温度が上昇して吸収器10を流出し、気液分離器16に流入して分離蒸気Fvと分離液体Frとに分離され、分離蒸気Fvは高温度の熱を消費する設備(不図示)に供給され、分離液体Frは必要な補給液体Fsが合流したうえで再び第1低温流体FL1として伝熱管12内に流入する。
【0047】
吸収式熱交換システム2によれば、高温流体導入管24を流れる高温流体FHの、熱源管22に流入する流量と高温流体迂回管29に流入する流量との比率に応じて、熱交換部80から流出して中温度の熱を消費する設備に供給される第2低温流体FL2の温度を調節することができる。換言すれば、熱交換部80から流出した第2低温流体FL2の温度が所定の温度になるように、熱源管22に流入する高温流体FHの流量と高温流体迂回管29に流入する高温流体FHの流量との比を設定することができる。この場合における流量比は、熱源管22及び高温流体迂回管29の各々についてあらかじめ決められた値にしたがって採用したサイズの配管やオリフィス等を用いることで固定してもよく、各々の管22、29のいずれかの位置に配置したバルブ等を用いて自動又は手動で調節可能に構成してもよい。また、本実施の形態における熱交換部80の加熱側流体である部分高温流体FHsの温度は、吸収式熱交換システム1(
図1参照)における熱交換部80の加熱側流体である高温流体FHの温度よりも高いので、本実施の形態では、熱交換部80で加熱される第2低温流体FL2の温度を、吸収式熱交換システム1(
図1参照)の場合よりも高くすることができる。なお、図示は省略するが、吸収式熱交換システム2の構成に加えて、
図1に示すような高温流体排出管39及び第2低温排出管49に配設された熱交換部80を設け、2つの熱交換部80を備えることとしてもよい。この場合、高温流体迂回管29の高温流体排出管39への接続部を、高温流体排出管39及び第2低温排出管49に配設された熱交換部80の上流側として、部分高温流体FHsが合流した後の高温流体排出管39を流れる高温流体FHと、第2低温排出管49を流れる第2低温流体FL2とで熱交換を行わせるようにするとよい。換言すれば、第2低温排出管49を流れる第2低温流体FL2は、部分高温流体FHsが合流した後の高温流体排出管39を流れる高温流体FHと熱交換した後に、高温流体迂回管29を流れる部分高温流体FHsと熱交換するように構成すると、最初に高温流体FHで加熱され、次に高温流体FHよりも温度が高い部分高温流体FHsで加熱されることとなってよい。
【0048】
次に
図4を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る吸収式熱交換システム3を説明する。
図4は、吸収式熱交換システム3の模式的系統図である。吸収式熱交換システム3は、主として以下の点で吸収式熱交換システム1A(
図2参照)と異なっている。吸収式熱交換システム3は、蒸発器20に導入される前の高温流体FHから分岐された一部の高温流体FHを、第1低温流体FL1として吸収器10の伝熱管12に流入させる分岐流体流入管15が設けられている。分岐流体流入管15の一端は、高温流体FHを熱源管22に導入する高温流体導入管24に接続されている。分岐流体流入管15の他端は、伝熱管12の、加熱後流体管17が接続された端部とは反対側の端部に接続されている。吸収式熱交換システム3の上記以外の構成は、吸収式熱交換システム1A(
図2参照)と同様である。
【0049】
上述のように構成された吸収式熱交換システム3では、吸収器10、蒸発器20、再生器30、凝縮器40における吸収液Sと冷媒Vとの吸収ヒートポンプサイクルは、吸収式熱交換システム1A(
図2参照)と同様に作用する。また、第2低温流体FL2の流路及び温度変化も、吸収式熱交換システム1A(
図2参照)と同様に作用する。蒸発器20に向かって高温流体導入管24を流れる高温流体FHは、一部が分岐して第1低温流体FL1として分岐流体流入管15に流入し、残りの高温流体FHが熱源管22に流入する。熱源管22に流入した高温流体FHは、冷媒液Vfに熱を奪われて温度が低下し、蒸発器20から流出して高温流体連絡管25を流れた後に再生器30の熱源管32に流入し、再生器30において希溶液Swに熱を奪われて温度が低下して再生器30を流出する。再生器30を流出した高温流体FHは、高温流体排出管39を流れ、熱交換部80において第2低温流体FL2と熱交換して温度が低下したうえで、吸収式熱交換システム3から排出される。他方、高温流体導入管24から分岐流体流入管15に流入した第1低温流体FL1(分岐された一部の高温流体FH)は、吸収器10の伝熱管12に流入し、吸収器10において濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する際に発生した吸収熱を得て温度が上昇して吸収器10を流出し、加熱後流体管17を介して高温度の熱を消費する設備(不図示)に供給される。このように、吸収式熱交換システム3では、蒸発器20に導入される前の高温流体FHから分岐された一部の高温流体FHを第1低温流体FL1として吸収器10に導入するので、吸収器10から流出した第1低温流体FL1の温度を蒸発器20に導入される前の高温流体FHの温度よりも高くすることができる。
【0050】
次に
図5を参照して、本発明の第4の実施の形態に係る吸収式熱交換システム4を説明する。
図5は、吸収式熱交換システム4の模式的系統図である。吸収式熱交換システム4は、主として以下の点で吸収式熱交換システム1(
図1参照)と異なっている。吸収式熱交換システム4は、吸収式熱交換システム1(
図1参照)の構成に加えて、冷媒熱交換器99を備えている。冷媒熱交換器99は、凝縮器40から蒸発器20に向かう冷媒液Vfと、熱交換部80から流出した高温流体FHとの間で熱交換を行わせる機器である。冷媒熱交換器99は、冷媒ポンプ46よりも下流側の冷媒液管45及び熱交換部80よりも下流側の高温流体排出管39に配設されている。冷媒熱交換器99には、シェルアンドチューブ型やプレート型の熱交換器が用いられる。吸収式熱交換システム3の上記以外の構成は、吸収式熱交換システム1(
図1参照)と同様である。
【0051】
上述のように構成された吸収式熱交換システム4の作用は以下の通りである。吸収器10、蒸発器20、再生器30、凝縮器40における吸収液Sと冷媒Vとの吸収ヒートポンプサイクルは、凝縮器40から蒸発器20に向かう冷媒液Vfの温度変化を除き、吸収式熱交換システム1(
図1参照)と同様に作用する。高温流体FHの流路及び温度変化は、熱交換部80から流出するまでは、吸収式熱交換システム1(
図1参照)と同様に作用する。第1低温流体FL1及び第2低温流体FL2の流路及び温度変化は、吸収式熱交換システム1(
図1参照)と同様に作用する。そして、冷媒熱交換器99を備える吸収式熱交換システム4においては、凝縮器40から蒸発器20に向かう冷媒液Vfと、熱交換部80から流出した高温流体FHとの間で熱交換が行われ、冷媒液Vfの温度が上昇し、高温流体FHの温度が低下する。冷媒熱交換器99から流出した冷媒液Vfは、温度が上昇して蒸発器20に流入するので、蒸発器20において蒸発するのに必要な熱量を抑制することができ、これに伴って温度低下が抑制された高温流体FHが保有する熱量を熱交換部80における熱交換に利用することができて、熱交換部80から流出する第2低温流体FL2の温度を上昇させることができる。他方、冷媒熱交換器99から流出した高温流体FHは、温度が低下して吸収式熱交換システム4から排出されることとなり、吸収式熱交換システム4における高温流体FHの回収熱量を増やすことができる。なお、冷媒熱交換器99は、吸収式熱交換システム1A(
図2参照)、吸収式熱交換システム2(
図3参照)、吸収式熱交換システム3(
図4参照)のそれぞれに設置することもできる。
【0052】
次に
図6を参照して、本発明の第5の実施の形態に係る吸収式熱交換システム5を説明する。
図6は、吸収式熱交換システム5の模式的系統図である。吸収式熱交換システム5は、主として以下の点で吸収式熱交換システム1(
図1参照)と異なっている。吸収式熱交換システム5は、熱交換部80(
図1参照)が設けられておらず、中温熱消費設備64が設けられている。中温熱消費設備64は、第2低温流体FL2が保有する熱によって、加熱を必要とする物質を加熱する設備であり、典型的には暖房設備が挙げられる。中温熱消費設備64が暖房設備の場合、暖房対象空間の加熱に用いられる温水又は空気が、加熱を必要とする物質に該当する。中温熱消費設備64には、それぞれの一端が凝縮器40の伝熱管42に接続された第2低温流入管48及び第2低温排出管49それぞれの他端が接続されている。なお、中温熱消費設備64から流出した第2低温流体FL2を、伝熱管42に流入させる前に冷却する冷却塔CTを設けてもよい。ここで、冷却塔CTは、熱の放出先である大気が加熱を必要とする訳ではないので、中温熱消費設備64には該当しない。冷却塔CTが設けられる場合、典型的には、冷却塔CTはバイパス管48Bに配設され、バイパス管48Bの両端は間隔をあけて第2低温流入管48に接続され、バイパス管48Bの両端の間の第2低温流入管48には開閉弁48vが設けられ、開閉弁48vの開閉によって第2低温流体FL2が冷却塔CTを通過しないのと通過するのとを切り替えることができるように構成される。さらに、バイパス管48Bにバイパス開閉弁48Bvを設けて、開閉弁48vとバイパス開閉弁48Bvとの開度を各々所定の開度に調節することによって、第2低温流体FL2の一部が冷却塔CTを通過できるように構成してもよい。また、第1低温流体FL1の系統について、典型的には、分離蒸気Fvを高温熱消費設備HFに供給できるように分離蒸気管19の端部と高温熱消費設備HFとが蒸気供給管78で接続され、高温熱消費設備HFから流出した液体を補給液体Fsとして分離液管18に流入させることができるように高温熱消費設備HFと補導入管18sの端部とが戻り液管77で接続される。なお、高温熱消費設備HFに供給されるのが、分離蒸気Fvに代えて液体の第1低温流体FL1でもよく、この場合は吸収式熱交換システム1A(
図2参照)に倣って気液分離器16まわりの構成を省略することができる。吸収式熱交換システム5の上記以外の構成は、吸収式熱交換システム1(
図1参照)と同様である。
【0053】
上述のように構成された吸収式熱交換システム5では、吸収器10、蒸発器20、再生器30、凝縮器40における吸収液Sと冷媒Vとの吸収ヒートポンプサイクルは、吸収式熱交換システム1(
図1参照)と同様に作用する。また、第1低温流体FL1の流路及び温度変化も、吸収式熱交換システム1(
図1参照)と同様に作用する。高温流体FHは、再生器30の熱源管32から流出するまでは流路及び温度変化が吸収式熱交換システム1(
図1参照)と同様に作用し、熱源管32から流出すると吸収式熱交換システム5の外に排出される。第2低温流体FL2は、凝縮器40の伝熱管42では、吸収式熱交換システム1(
図1参照)と同様に昇温する。伝熱管42から流出した第2低温流体FL2は、第2低温排出管49を介して中温熱消費設備64に供給され、中温熱消費設備64で熱が利用されて温度が低下し、第2低温流入管48を介して再び伝熱管42に流入する。ここで、第2低温流入管48を流れる第2低温流体FL2が冷却塔CTを通るのは、典型的には、吸収ヒートポンプサイクルにおいて凝縮器40の伝熱管42へ流入する流体に許容される温度の上限値より高い温度の第2低温流体FL2(説明の便宜上、以降これを「高温第2低温流体FL2h」という。)が、中温熱消費設備64から流出する場合である。高温第2低温流体FL2hが冷却塔CTを通る場合、高温第2低温流体FL2hの全量がバイパス管48Bを経由して冷却塔CTに導入されて冷却された後に、高温第2低温流体FL2hは吸収ヒートポンプサイクルに対して適正な温度に減温された後に伝熱管42に導入される。又は、高温第2低温流体FL2hの一部がバイパス管48Bを経由して冷却塔CTに導入されて冷却され、バイパス管48Bを経由しなかった高温第2低温流体FL2hと合流した後に、高温第2低温流体FL2hは吸収ヒートポンプサイクルに対して適正な温度に減温されて伝熱管42に導入される。他方、中温熱消費設備64から流出する第2低温流体FL2の温度が、吸収ヒートポンプサイクルが許容する温度範囲内にある場合には、第2低温流体FL2は冷却塔CTを経由せずに伝熱管42に流入する。このように、吸収式熱交換システム5では、吸収式熱交換システム1(
図1参照)で設けられているような熱交換部80を省略した比較的簡便な構成で、温度が異なる2つの流体を、中温熱消費設備64と例えば高温熱消費設備HFとに供給することができる。
【0054】
なお、
図6に示す吸収式熱交換システム5が備える、加熱を必要とする物質を加熱する設備である中温熱消費設備64、バイパス管48B、冷却塔CT、開閉弁48v、バイパス開閉弁48Bvを、吸収式熱交換システム1(
図1参照)、1A(
図2参照)、2(
図3参照)、3(
図4参照)、4(
図5参照)のそれぞれに設けて、これら(吸収式熱交換システム1(
図1参照)乃至4(
図5参照))を、温度が異なる2つの流体が中温熱消費設備64と高温熱消費設備HFとに供給されるように構成してもよい。このようにすると、加熱を必要とする物質を加熱する設備である中温熱消費設備64に、吸収式熱交換システム5の場合より温度が高い第2低温流体FL2を供給することができる。
【0055】
以上の説明では、蒸発器20が満液式であるとしたが、流下液膜式であってもよい。蒸発器を流下液膜式とする場合は、蒸発器缶胴21内の上部に冷媒液Vfを供給する冷媒液供給装置を設け、満液式の場合に蒸発器缶胴21に接続することとしていた冷媒液管45の端部を、冷媒液供給装置に接続すればよい。また、蒸発器缶胴21の下部の冷媒液Vfを冷媒液供給装置に供給する配管及びポンプを設けてもよい。
【0056】
以上の説明では、高温流体FHが、蒸発器20から再生器30に直列に流れることとしたが、再生器30から蒸発器20に直列に流れることとしてもよく、蒸発器20と再生器30とに並列に流れることとしてもよい。高温流体FHが、蒸発器20から再生器30に直列に流れることとすると吸収液Sが結晶する確率をより低減することができ、再生器30から蒸発器20に直列に流れることとするとCOPを向上させることができ、蒸発器20と再生器30とに並列に流れることとすると高温流体FHとして液体のみならず蒸気がより使いやすくなる。
【符号の説明】
【0057】
1 吸収式熱交換システム
10 吸収器
16 気液分離器
20 蒸発器
30 再生器
40 凝縮器
64 中温熱消費設備
80 熱交換部
99 冷媒熱交換器
FL1 第1低温流体
FL2 第2低温流体
FH 高温流体
FHs 部分高温流体
Sa 濃溶液
Sw 希溶液
Ve 蒸発器冷媒蒸気
Vf 冷媒液
Vg 再生器冷媒蒸気