(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】書架用制振構造
(51)【国際特許分類】
A47B 97/00 20060101AFI20220127BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20220127BHJP
F16B 9/02 20060101ALN20220127BHJP
【FI】
A47B97/00 A
F16F15/02 L
F16B9/02 K
(21)【出願番号】P 2017218766
(22)【出願日】2017-11-14
【審査請求日】2020-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】599088302
【氏名又は名称】キハラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180264
【氏名又は名称】西山 貴大
(72)【発明者】
【氏名】深江 典之
(72)【発明者】
【氏名】木原 一雄
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-184064(JP,A)
【文献】特開2006-239037(JP,A)
【文献】特開平09-313281(JP,A)
【文献】特開2005-211330(JP,A)
【文献】特開平11-313721(JP,A)
【文献】実開昭59-077443(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 97/00
A47B 63/00
F16F 15/02
F16B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
書架の側板を底面側から挟んでいるU型金具と、
前記U型金具の側面を貫通し、前記U型金具を前記側板に固定している取付ボルトと、
前記U型金具の底面と前記書架を設置する前記側板との間に挟まれている第1の弾性部材と、
前記U型金具の底面を貫通して床面に固定されているアンカーボルトと、
前記U型金具と床面との間に高さ調整材と、を有し、前記高さ調整材を前記アンカーボルトが貫通していることを特徴とする書架用制振構造。
【請求項2】
前記側板の側面と前記U型金具との間に挟まれている第2の弾性部材を有することを特徴とする請求項1に記載の書架用制振構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書架に制振性を付加する書架用制振構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図書館に設置されている書架は、一般家庭用の書架と比べるとサイズが大きく、収納されている書籍の数も多い。例えば、通常の図書館用書架は、一段あたり横幅900mm、奥行き210mm、高さ275mmの空間を5段から7段ほど配置して、それを連続的に繋げた構造となっている。そのような図書館用の書架が、地震によって倒壊すると、多数の書籍が落下したりして被害が大きくなり、また、復旧に時間がかかる。
【0003】
そこで地震対策として、書架に免震装置を設けることがある(例えば、特許文献1参照)。
図5は、書架に設置できる免震装置の一例であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。このような免震装置100では、載置台120とその上に載る書架の重量を、直交する2方向に復帰力を発生する十字型スライド130と、車輪等からなる転動支持手段121とで分担支持できるので、十字型スライド130の載荷重に対する強度を下げることができ、優れた免震効果を発揮することができるという効果を奏している。
【0004】
特許文献1には、このような構造の免震装置であれば、安価に製造することができると記載されているが、免震装置そのものが複雑な構造なので、簡易な地震対策と比較すると高価であり、さらに図書館のように多数の書架が並んでいるような場合には、設置個数が多くなるので、全量としては多大な費用がかかることになる。したがって、安価でありながら、このような免震装置と同程度の効果を発揮できるような地震対策が望まれる。
【0005】
図書館では、書架を床面にアンカーボルトで固定して地震対策をすることもある。しかし、その場合、床面からの地震動が書架に直接伝達され、収納されている書籍は固定されていないので、高い段から書籍が落下する可能性が高くなる。特に、地震動の方向が書架の奥行方向の場合には、棚板の背面側に設置してある背板から書籍に振動が伝わるため、より書籍の落下が多くなることになる。
【0006】
また、書架と床面との間に弾性部材を挟み込むことで、書架への地震動の伝達を低減させるという地震対策も可能であるが、その場合は、弾性部材の変形や劣化によって、書架の安定性が損なわれやすいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような事情に鑑み、本発明は、アンカーボルトで書架を固定しつつ、簡易な構造でありながら、床面からの地震動を吸収し低減させる書架用制振構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために本発明の書架用制振構造は、書架の側板を底面側から挟んでいるU型金具と、そのU型金具の側面を貫通し、U型金具を側板に固定している取付ボルトと、U型金具の底面と書架の側板との間に挟まれている第1の弾性部材と、U型金具の底面を貫通して床面に固定されているアンカーボルトと、を有するものである。
【0010】
更に、側板の側面とU型金具との間に挟まれている第2の弾性部材を有することにしたり、U型金具と床面との間に高さ調整材を有し、その高さ調整材をアンカーボルトが貫通していることにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の書架用制振構造によれば、アンカーボルトで書架を固定しつつ、U型金具と側板との間に弾性部材を簡単に取付けることができ、更に、弾性部材の変形量をU型金具で制限できるので、安定した状態かつ容易に制振構造を付加することができるという効果を奏する。更に、高さ調整材をアンカーボルトが貫通することで、高さ調整材を安全に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の書架用制振構造を書架に設けた全体斜視図である。
【
図5】書架に設置できる免震装置の一例であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の書架用制振構造を書架に設けた全体斜視図である。なお、書架10の向かって左側は棚板13を外した状態、右側は棚板13を取付けた状態である。
【0015】
書架10の基本構造は、側板11、フレーム12、棚板13、背板14で構成されている。側板11、フレーム12及び棚板13の素材は、スチール製や木製など特に限定せず、例えば、フレーム12と棚板13をスチール製とし、側板11を木製とするような組合せにしてもよい。
【0016】
側板11は、収納する書籍を左右方向から挟む方向に垂直に立てられた板材であり、柱としての役目を果たす。隣り合う側板11は、フレーム12で繋がれ、上方から見ると側板11に対しフレーム12が直角に接続している。つまり、フレーム12と側板11は、上方から見てH形状又はコの字形状になるので、全体として自立できることになる。なお、
図1はH形状の図であり、図書館用の書架10では、H形状のものが多い。
【0017】
フレーム12は、垂直方向の2辺と水平方向の2辺からなる四角形の枠材である。フレーム12の垂直方向の2辺は、側板11の中心に沿って側板11に結合され、水平方向の2辺は、隣り合う側板11を、側板11の上側と下側で連結する構造になっている。
【0018】
棚板13は、上方から見てフレーム12と2枚の側板11,11で三方を囲まれた空間に設置される。つまり、H形状の書架10の場合は、上方から見ると、フレーム12を境に対称的に棚板13が設置されることになる。
【0019】
背板14は、フレーム12の4辺が形成している四角形の内側に取付けられる板状の部材である。背板14は、棚板13の背面側に備えられてあり、書籍が棚板13の後方に落下するのを防いだり、棚の間仕切りとしての役目を果たしたりするものである。つまり、棚板13がフレーム12を境に対称的に設けられている場合は、その対称的な棚板13の間にあって、表と裏の棚を間仕切りすることになる。なお、地震が発生したときに、書籍が背板14に衝突することがあるので、背板14の素材は、軽くて丈夫なものが望ましい。また、フレーム12と背板14とをバネ材からなるダンパーで繋ぐことで、背板14を制振部材として利用することも可能である。
【0020】
本発明の書架用制振構造は、上記のような構造の書架10と床面との間に設けて、床面からの地震動を容易かつ安全に吸収・低減するものである。
【0021】
図1の側板11の底面に取付けられているのがU型金具20であり、
図2は、U型金具の斜視図である。また、
図3は、本発明の書架用制振構造の断面図であり、
図4は、本発明の書架用制振構造の側面図である。
【0022】
U型金具20は、金属製の板材を折り曲げて形成した断面がUの字型の部材であり、U型金具の底面20aと、2面のU型金具の側面20bと、からなる。このU型金具20は、
図3に示すように側板11を底面側から挟むように取付けるものである。U型金具の側面20bには、U型金具20を側板11に固定するための取付ボルト21を貫通させる取付ボルト孔20cがあけられており、また、U型金具の底面20aには、床面FLに固定するためのアンカーボルト22を貫通させるアンカーボルト孔20dがあけられている。U型金具20の長さは書架に合わせて様々であり、
図2(a)は長いU型金具の例、
図2(b)は短いU型金具の例である。U型金具20が長い場合、取付けボルト孔20cやアンカーボルト孔20dの箇所数を増やすことで、書架の安定性を増すことができる。一方、U型金具が短い場合、一つの側板11に対して、複数箇所取り付けるとよい。つまり、U型金具20の長さは特に限定しないので、取付けボルト孔20cやアンカーボルト孔20dの箇所数も特に限定せず、サイズや設置場所に応じて決定すればよい。
【0023】
書架用制振構造の書架への取付手順を説明する。まず、書架10を設置する床面FL上にU型金具20を配置する。そして、U型金具の底面20a上に第1の弾性部材31を所定の位置に載置する。そして、U型金具20のアンカーボルト孔20dを貫通させて、床面FLにアンカーボルト22を固定する。次に、書架10の側板11がU型金具20に挟まれるように書架10を設置する。なお、側板11の底面には、アンカーボルト22の頭部を収納できる凹部を設けておいてもよい。最後に、U型金具の側面20bにあいている取付ボルト孔20cに取付ボルト21を通して、側板11とU型金具20を固定する。
【0024】
なお、側板11の側面とU型金具の側面20bとの間に、第2の弾性部材32を挟んでもよい。第2の弾性部材32を設けることで、第1の弾性部材31だけの場合よりも地震動の吸収や減衰効果が高くなるという効果が得られる。
【0025】
第1の弾性部材31と第2の弾性部材32は、ダンパーとして機能するものであれば特に素材は限定しないが、基本的にはゴム製であり、耐久性の高いものが望まれる。また、設置個数や大きさも特に限定せず、U型金具20の長さや、書架10の安定性を考慮して、個数や大きさを決定すればよい。なお、第1の弾性部材31や第2の弾性部材32は、U型金具20の内側に備えられるので、変形がある程度制限され、書架10が必要以上に不安定になることを抑えることができる。
【0026】
また、書架20の傾きを調整するために、高さ調整材35を使用することができる。高さ調整材35は、床面FLとU型金具の底面20aとの間に設置すればよい。高さ調整材35は、アンカーボルト22を貫通させる孔が設けられていることで、ずれたり外れたりすることを防止することができる。なお、高さ調整材35の素材は、金属製を基本とするが、弾性材にすることで、地震動の減衰効果に更に寄与することもできる。
【0027】
本発明の書架用制振構造は、U型金具を用いた簡易な構造なので、アンカーボルトと組み合わせて、容易に制振構造を付加することができる。また、第1の弾性部材及び第2の弾性部材の取り替えが可能な構造となっているので、劣化したときの取り替えに容易に対応できるという利点も有している。更に、第1の弾性部材及び第2の弾性部材は、U型金具の内側に設けられるので、必要以上に変形することもない。また、高さ調整材を用いて、書架の傾きを容易に調整することも可能である。
【0028】
そして、このような書架用制振構造は、書架の側板の真下に設置されるので、外観がすっきりとしており、歩行等の邪魔にならないという利点も有している。
【符号の説明】
【0029】
10 書架
11 側板
12 フレーム
13 棚板
14 背板
20 U型金具
20a U型金具の底面
20b U型金具の側面
20c 取付ボルト孔
20d アンカーボルト孔
21 取付ボルト
22 アンカーボルト
31 第1の弾性部材
32 第2の弾性部材
35 高さ調整材
FL 床面