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特許7015693マルチベクトル患者電極システム及び使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】マルチベクトル患者電極システム及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/39 20060101AFI20220127BHJP
【FI】
A61N1/39
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2017564493
(86)(22)【出願日】2016-06-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-06-28
(86)【国際出願番号】 US2016036658
(87)【国際公開番号】W WO2016201082
(87)【国際公開日】2016-12-15
【審査請求日】2019-03-19
(31)【優先権主張番号】14/736,188
(32)【優先日】2015-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512032331
【氏名又は名称】カーディオスライヴ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】サヴェージ ウォルター ティー
(72)【発明者】
【氏名】サヴェージ シェリー ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド ダグラス エム
(72)【発明者】
【氏名】グレイ ピーター ディー
【審査官】安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-525084(JP,A)
【文献】特表2006-507096(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0191901(US,A1)
【文献】国際公開第2014/201389(WO,A1)
【文献】米国特許第06169923(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00- 1/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が異なる位置に植込まれた各導電性電極を有する2以上の導電性電極と、
各導電性電極に電気的に接続された第1及び第2のアクティブ缶部を有するパルス発生器であって、それぞれの前記アクティブ缶部は、多相性パルスの各相を発生し、各相は前記2以上の導電性電極を通じて患者に送出されるようになっているパルス発生器を備え、
そして、第1のパスは前記第1のアクティブ缶部と前記2以上の導電性電極の第1の導電性電極との間にあり、第2のパスは、前記異なる位置に植込まれた、前記第2のアクティブ缶部と前記2以上の導電性電極の第2の導電性電極との間にあり、この結果、前記多相性パルスの各パルスが前記患者の心臓に前記パルスの複数のパスとなって送出される、植込み型マルチベクトル患者電極システム。
【請求項2】
前記多相性パルスの1又は2以上の位相は、同じパルス内で以前使われたショックベクトルを通じて送出される、請求項1に記載の植込み型マルチベクトル患者電極システム。
【請求項3】
前記多相性パルスの各位相は、全体パルスタイミングシーケンスの自身の固有セグメント内で送出される、請求項1に記載の植込み型マルチベクトル患者電極システム。
【請求項4】
前記多相性パルスの1又は2以上の位相は、前記全体パルスシーケンス内に他のタイミングセグメントの1又は2以上と大なり小なり重なり合う時間セグメント内で送出される、請求項1に記載の植込み型マルチベクトル患者電極システム。
【請求項5】
前記1又は2以上の導電性電極の各々は、別個の電気リードに接続される、請求項1に記載の植込み型マルチベクトル患者電極システム。
【請求項6】
前記1又は2以上の導電性電極の各々は、同じ電気リードに接続される、請求項1に記載の植込み型マルチベクトル患者電極システム。
【請求項7】
前記マルチベクトル患者電極システムは、前記患者の体の皮膚/表面の下に配置される、請求項1に記載の植込み型マルチベクトル患者電極システム。
【請求項8】
前記マルチベクトル患者電極システムは、前記患者の胴、前記患者の腹部、前記患者の肢、及び前記患者の頭部のうちの1又は2以上に設置される、請求項7に記載の植込み型マルチベクトル患者電極システム。
【請求項9】
前記1又は2以上の導電性電極は、様々な形状の1又は2以上を有する、請求項1に記載の植込み型マルチベクトル患者電極システム。
【請求項10】
前記1又は2以上の導電性電極は、1又は2以上の異なるサイズを有する、請求項1に記載の植込み型マルチベクトル患者電極システム。
【請求項11】
前記1又は2以上の導電性電極は、前記患者内の所定位置に固定される、請求項1に記載の植込み型マルチベクトル患者電極システム。
【請求項12】
1又は2以上のセンサをさらに備える、請求項1に記載の植込み型マルチベクトル患者電極システム。
【請求項13】
前記1又は2以上の患者センサは、前記患者からの様々な生体測定値の1又は2以上を能動的に又は受動的に感知する、請求項12に記載の植込み型マルチベクトル患者電極システム。
【請求項14】
前記患者からの前記1又は2以上の生体測定値は、ECG信号である、請求項13に記載の植込み型マルチベクトル患者電極システム。
【請求項15】
前記1又は2以上のセンサは、前記1又は2以上の導電性電極から離れて配置される、請求項12に記載の植込み型マルチベクトル患者電極システム。
【請求項16】
前記選択可能な1又は2以上のベクトルは、少なくとも、単一電極対単一電極、単一電極対複数電極、複数電極対単一電極、及び複数電極対複数電極の特性である、請求項1に記載の植込み型マルチベクトル患者電極システム。
【請求項17】
前記第1のアクティブ缶部及び第2のアクティブ缶部は互いに隣接している、請求項1に記載の植込み型マルチベクトル患者電極システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、医療機器に関連する方法及び配置に関する。より具体的には、本開示は、皮下植込み型除細動器、体内植込み型除細動器、胸骨下体内植込み型除細動器、及び、心外膜除細動器において特に使用される医療装置患者電極システム内において使用されるシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓の主たる役割は、体のあらゆる場所に含酸素の栄養が豊富な血液をポンピングすることである。心臓の一部から生じた電気インパルスは、ポンピングサイクルを調整する。電気インパルスが規則正しい一貫性のあるパターンに従う場合、心臓は、正常に機能して血液のポンピングが最適化される。心臓の電気インパルスが乱れた場合(すなわち、心不整脈)、電気インパルスのこのパターンは、無秩序になるか又は非常に早くなり、突然の心停止が起こる場合があり、これによって血液の循環が阻害される。その結果として、脳及び他の決定臓器は、栄養分及び酸素が奪われる。突然の心停止を経験している人は、突然気を失い、治療されない場合にはその後まもなく死ぬ場合がある。
【0003】
突然の心停止の最も成功している療法は、迅速かつ適切な除細動である。除細動器は、電気ショックを使用して心臓の適切な機能を回復する。しかしながら、除細動が成功又は失敗するかの非常に重要な要因は時間である。理想的には、突然の心停止になると直ちに除細動する必要があり、なぜならば、その人の生存率は、治療しなければ時々刻々と急激に下がるからである。
【0004】
多種多様な除細動器がある。一般的な形式の除細動器は、自動体外式除細動器(AED)である。AEDは、突然の心停止になった人を蘇生させるために第三者によって使用される外部装置である。図1は、従来のAED100を示し、AED100は、ベースユニット102と2つのパッド104とを含む。ハンドルを有するパドルが、パッド104の代わりに使用される場合もある。パッド104は、電気ケーブル106を使用してベースユニット102に接続される。
【0005】
AED100を使用する一般的な手順は、以下の通りである。初めに、突然の心停止になった人を床に置く。着衣を脱がせてその人の胸部108を露わにする。図1に示すように、パッド104を胸部108上の適切な場所に当てる。ベースユニット100内の電気システムは、高電圧を2つのパッド104間に生成し、高電圧は、電気ショックをその人に与える。理想的には、ショックによって、通常の心律動が回復される。場合によっては、複数のショックが必要である。
【0006】
既存の技術は上手く機能するが、自動体外式除細動器の有効性、安全性、及び使い易さを向上させる取り組みが続けられている。従って、自動体外式除細動器(AED)の利用可能性を向上させる取り組みが行われてきたので、自動体外式除細動器(AED)が、突然の心停止になった人の付近にある可能性が高くなっている。医療技術の進歩によって、自動体外式除細動器(AED)は、コストが低減しかつ小型になった。一部の最新のAEDは、ラップトップコンピュータ又はバックパックのサイズに近い。小型装置でも、典型的に重量は4~10ポンド以上の場合がある。従って、AEDは、公共施設(例えば、空港、学校、ジムなど)、さらには、ごく稀に、住宅に設置されることが増えている。残念ながら、心蘇生の平均成功率は、依然として極めて低い(8.3%未満)。
【0007】
別の形式の除細動器は、着用型自動除細動器(WCD)である。突然の心停止のリスクのある人に植え込まれるか又は突然の心停止になって既に倒れてしまった後に居合わせた人によって使用される装置ではなく、WCDは、リスクのある人によって着用される外部装置であり、WCDは、心律動を絶えず監視して、不整脈の発生を特定し、次に、関与する不整脈の形式を正しく特定し、その後、これが電気的除細動又は除細動であるかを問わず、特定された形式の不整脈に必要とされる治療作用を自動的に適用する。これらの装置は、ICDを潜在的に必要とすると確認された患者のために、最終決定が行われてICDが患者に正式に許可されるか又は拒否される前の2~6ヵ月の医療評価期間中に患者を効果的に保護するために最も頻繁に使用されている。
【0008】
また、手動体外式除細動器及びWCDは、外部電気的除細動に使用され、成形された電気パルスが使用される場合、これは患者の心房細動を終了させる。このために、外部電極パッドの使用も必要である。
【0009】
現在市場にある体外式除細動器及び自動体外式除細動器では、患者の体の所定位置に保持する必要がある剛性パドル又は患者の皮膚に張り付ける可撓性電極パッド(導体箔及び発泡体で作製)を利用する。剛性パドル基部を有する現行の体外式除細動器は、有効であるためにパドルを配置する必要がある箇所では患者の体の曲率に適合しない。従って、これらの装置のオペレータは、かなりの大きさの接触力を加えてパドルの患者接触界面全体にわたって物理的接触を行わせる必要があり、さらには、体外式除細動器に救命治療除細動ショックパルスを与えるように指示/開始又は合図するために、装置が心室細動又は心室性頻拍症などの欠陥のあるリズムつまり不整脈の存在を検出できるように、この力を維持して、患者と接触する表面積を心律動の感知及び読み取りのために最大にする必要がある。また、オペレータは、装置が選択された治療作用(ショックの有無を問わず)を行う間に所要の接触力を持続する必要がある。
【0010】
今日市場にある着用型自動除細動器は、依然として大型であり患者が着用するには違和感がある。これは、(センサ及び電極を含む)装用衣類に装着されるボックス内の単一のエネルギー源を利用し、エネルギー源ボックスは、通常、臀部に乗る。これらは、重量があり装着するには違和感があり、患者からの頻繁な苦情の元となっている。
【0011】
現行の着用型自動除細動器は、患者の背中及び腹部上に位置決めするための固定式の平坦な表面電極と固定式の湾曲した表面電極とを有する。このことは、各患者が、自身のユニットに特別に適合する必要があり、これは、患者にとって時間がかかる。利用可能な装置サイズの制限範囲を考慮すると、センサ及び電極の両方との一定の接触圧を維持するために装置をしっかりと着用する必要があり、これは拘束性があり患者には違和感がある可能性がある。このことは、患者と電極の接触インピーダンスを最小化するのを保証するために、装置が液体導電ヒドロゲルを使用する理由でもある。これは、装置で使用した際に毎回の使用後にきれいにするのが面倒であり、必然的に患者の衣服に悪影響を及ぼす可能性がある。また、装置を有効に再使用できる前に液体リザーバを再充填する必要もある。
【0012】
重病であり、心停止が今にも起こりそうなリスクが高いと分かっている患者のために、図2に示す植込み型除細動器(ICD)が処方され、その後、1次又は2次防止のために患者に外科的に植え込まれる。ICDは、電線コイル202、電気リード201、及び人に植え込まれる発生器装置200を含む完全自動装置であり、コイルは、心臓組織に直接接触し、経静脈リード201は、発生器へ接続する。生命を脅かす心不整脈が検出されると、第三者の少しの介入で又は介入なしで、適切な電流が利用者の心臓を自動的に通過する。
【0013】
また、最近、図3に示す皮下植込み型除細動器(S-ICD)が利用可能になっており、その理由は、経静脈リード(反復的な心臓の動きに起因するリード故障、敗血症、リード血栓及び血栓塞栓症の原因となる感染、リード故障による不適切なショック)に関連した長期リスクなしで、植込み型ICD(高リスクの個人向けの急速除細動)の利点の全てを提供するからである。S-ICDは心臓に触れないので、有効な除細動には大量のエネルギーが必要なので、大型でかさばる装置及び発生器の短寿命化につながる。現行システムは、胸骨上を通り抜ける(tunneled)リード302に接続された左側パルス発生器301を利用する。
【0014】
既存の複式電極手法の主たる欠点の1つは、この手法が心臓を横切る、ショックベクトルと知られている、除細動ショックの単一の経路のみを可能にする点である。電極の配置は、経心筋電流に影響を与えることが知られている。除細動の成功は、(心室質量の72~80%の範囲であると考えられている)臨界心筋質量を脱分極するために十分なピーク経心筋電流を与えることに左右される。また、電気パルスに対する個々の心臓繊維及び筋細胞の応答性は、治療電気パルスのベクトルと比較して、3次元内の心臓繊維及び筋細胞の物理的位置合わせに関連すると考えられている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】従来の体外式除細動器の例を図式的に示す。
図2】標準的な植込み型除細動器の例を示す。
図3】標準的な皮下植込み型除細動器の例を示す。
図4】複数のショック電極と複数の感知電極を有する皮下植込み型除細動器を示す。
図5】複数の小型アクティブ缶発生器と複数の感知電極とを有する皮下植込み型除細動器を示す。
図6】複数のショック電極と複数の感知電極を有する皮下植込み型除細動器を示す。
図7】複数のショック電極と、分割アクティブ缶発生器と、複数の感知電極とを有する皮下植込み型除細動器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示は、特に、心室細動及び心室性頻拍症に加えて心房細動及び他の非致死的心不整脈を感知及び終了させるために使用される体内式除細動器又は皮下体内式除細動器と共に使用することができるマルチベクトル患者電極システムに適用可能であり、この文脈において本開示を説明する。しかしながら、マルチベクトル患者電極システムは、同時又は連続的であるか又はパルス送出のタイミングのある程度の重なりが大きい小さいかを問わず、複数の経路を介して電気パルス又は治療パルスを送出することができることが望ましい、何らかの医療装置又は他のシステムと共に使用することができるので、マルチベクトル患者電極システムはより大きな有用性をもつことを理解されたい。
【0017】
実際の患者の心臓繊維及び筋細胞の3次元内の物理的な位置合わせは、ショックを送出するときには実際の患者において認識することはできないが、複数のベクトルが同じパルスに使用される/同じパルス内で使用される場合、これは、影響を受けて脱分極される細胞の数を効果的に増やすことができるので、除細動の成功の確率が高くなる。従って、ショックを複数のベクトルにわたって送出することができるシステムは、緊急事態で使用される潜在的に最適下限のベクトルを補正することによって、除細動の成功の確率を増大させる。さらに、従来のシステムの全ては、二相性ショックを使用してきた。複数のベクトルを通じて多種多様な多相性ショックを送出する能力は、心室細動を処置するための良好な除細動の直ちに利用可能な供給源の問題を解決するために、新規な波形率(小さく、常に利用可能であり、分散型ショックベクトルを有する)及び新規な波形を組み合わせてことによって、臨床的用途に有意な利点を導入することになる。また、この手法は、低いショックエネルギーのために既存の手法よりも優れた高い有効性の形の有意な臨床的利点をもたらす。従って、標準的な単一のショックベクトルではなく、2以上のショックベクトルを供給する複数のショック電極で構成された皮下装置は、単一のベクトルシステムが伝統的に行ない得るものに比べてショック成功の高い確率及び低いエネルギーで効果的に除細動を行う能力を提供する。
【0018】
皮下装置は、2つのパルス発生器のような構成要素で構成することができ、横方向(左側及び右側)に配置された各々は、各植え込まれた構成要素が小さくなるのを可能にし、高効率で魅力的なベクトルを供給できるので、魅力的な代替手段であろう。各パルス発生器はエネルギーリザーバを使用してパルスを生成することができるので、各パルス発生器はエネルギーリザーバを含む。電子構成要素を分散配置したシステムは、非常に小型の構成要素を可能にすることができる。これらの小型発生器の各々は、複数のショック電極に接続することができる。次に、これらの2又は3以上の小型発生器は、患者に植え込まれると電気リードによって相互に電気的に接続することができる。加えて、2つの構成要素を接続するリードは、感知及び除細動用のリードとして機能することもできる。装置の他の実施形態は、胸骨に位置する複数のコイルと、外部に2つの異なる別個の電極表面がある左側「アクティブ缶」発生器とを使用して、ショックベクトルオプションを提供することができる。
【0019】
複数のエネルギーリザーバを使用することで、複数のパルスを生成して患者に送出することができる。あるいは、複数のエネルギーリザーバによって、多相性パルスの各位相を別途に生成しかつ別途に送出することができる。これらは、エネルギーリザーバが複数の電極に接続されている場合、1又は2以上の異なるショックベクトルを通じて送出することができる。本開示は、上手く除細動又は電気除細動される心臓組織の全体的割合を高めて、より効果的に患者の致死/非致死的不整脈を終わらせるために、異なるショックベクトルを通じて(電極の完全に異なる組み合わせによることを含む)送出される別個のパルスを又は多相性パルスの別個の位相でさえも可能にする。また、本開示は、上手く除細動又は電気除細動される心臓組織の全体的割合を高める代替的又は付加的方法として、1対多、及び多対1のショックベクトル配置の静的又は動的構成を可能にする。また、本開示は、個々のパルス又はパルス位相をタイミングが大なり小なり重なる様式で送出することを可能にする。また、この手法は、神経刺激、胃腸刺激、もしくは患者体内の特定の内臓器官又は神経系の刺激の分野で特定の治療効果を患者にもたらすために、心臓刺激以外に他の治療及び臨床領域で何らかのエネルギーレベルで電気パルスを送出するのに使用することができる。
【0020】
マルチベクトル患者電極システムは、治療ショック電極に加えて又は治療ショック電極との組み合わせで、ECGセンサ及びLED光パルス検出器といったセンサ形式の組み合わせを含んで使用することもできる。この組み合わせは、体内式除細動器のショッカブルな不整脈の検出精度を有意に高くすることがきることを意味する。センサ形式の組み合わせは、本質的に受動的な、本質的に能動的な、又はこの2つの形式の組み合わせとすることができるセンサをさらに含むことができる。
【0021】
図2は、現在の体内式除細動器の大半で使用される、単一ショックベクトル電極システムを有する標準的なICD(200)を示す。経静脈リード(201)は、アクティブ発生器ユニットを心臓(202)の関連の心室に位置決めされたショック電極に関連付けられ、その後、ICDは、検出された不整脈の形式及びショックを与える必要がある心臓の心室に応じてショックベクトルを生成する適切なリードを選択する。その後、単一ベクトルショックは、適宜、アクティブなリードとアクティブな発生器との間で送出される。
【0022】
図3は、単一ショックベクトル電極(303)が単一リード(302)を介して接続された、標準的なS-ICD「アクティブ缶」発生器(301)を示す。図示するように、発生器(301)は、患者の左側側面上に植え込まれており、リード(302)は、皮膚下を通り抜け、電極(303)は、同様に皮膚下を通り抜け、胸骨上に位置決めされている。これによって、結果的に、単一ショックベクトルシステムは、アクティブ缶パルス発生器と電極との間にあり、植え込み時の発生器及び電極の両方の正確な位置調整に依存する。
【0023】
図4は、マルチベクトル電極システムを利用する新規なS-ICDシステムを示す。アクティブ缶パルス発生器(401)は、皮膚下の標準的な左側位置に位置決めして、リード(402)を介して同様に皮膚下に配置される胸骨導電患者電極(404)に接続することができる。加えて、リード(402)は、その長さに沿って複数のECG及びパルスセンサー/電極(403)を含むことができ、これによって、多重リードECG信号を感知することができ、信号品質は、使用されるセンサ/電極の数に左右される。また、システムは、付加的な小型ハウジング/接合部(405)を有することができ、付加的な小型ハウジング/接合部(405)は、電極(404)と感知電極(403)との間で胸骨又は剣状突起に位置決めされ、所要の正確な実施形態に応じて、付加的なショック電極及び/又は付加的なセンサ及び/又は他の構成要素を含むことができる。付加的なハウジング/接合部(405)におけるこの第3の通電電極の追加によって、発生器(401)と、電極(404)と、追加的なハウジング(405)との間で、システムから患者に送出された複数のショックベクトルの使用が可能である。
【0024】
図5は、マルチベクトル電極システム及びマルチ発生器システムを有する新規なS-ICDシステム500を示す。システムにおいて、アクティブ缶パルス発生器(501)は、皮膚下で左側位置及び右側位置に位置決めすることができる。この実施形態及び他の記載された実施形態における各アクティブ缶パルス発生器は、エネルギーリザーバ及び回路を含むことができ、除細動ショックを複数のショックベクトルを通じて患者に送出することができるように、パルス又はパルス位相を生成可能とすることができる。一部の実施形態において、パルス発生器は、多相性パルス(1又は2以上のプラス位相信号及び1又は2以上のマイナス位相信号などの複数の位相信号を有するパルス)を生成することができ、異なる位相信号を複数のショックベクトルを通じて患者に送出することができる。アクティブ缶パルス発生器501は、同様に患者の胴全体にわたって皮膚下に配置される皮下リード(502)を介して互いに接続されている。リードは、その長さに沿って1又は2以上のショック電極(504、505)を有することができる。さらに、リード(502)は、その長さに沿って複数のECG及びパルスセンサー/電極(503)を含むことができ、これによって、多重リードECG信号の感知が可能であり、信号品質は、使用されるセンサ/電極の数に左右される。2つのアクティブ缶パルス発生器と、1又は2以上の付加的なショック電極との組み合わせによって、発生器(501)のどちらか一方と電極(504、505)のどちらか一方との間で、又はこれらの何らかの適切な組み合わせの間で、システムによって、ショックを複数のショックベクトルを通じて送出することができる。
【0025】
図6は、マルチベクトル電極システムを含む新規なS-ICDシステム600を示す。アクティブ缶パルス発生器(601)は、皮膚下の標準的な左側位置に位置決めされ、リード(602)を介して、同様に皮膚下に配置される胸骨又は剣状突起ハウジング/接合部(602)に接続されている。加えて、リード(602)は、その長さに沿って複数のECG及びパルスセンサー/電極(603)を含むことができ、これによって、多重リードECG信号の感知が可能であり、信号品質は、使用されるセンサ/電極の数に左右される。胸骨ハウジング/接合部(606)は、2つの胸骨電極(604、605)に接続されており、付加的な構成要素及びセンサを含むこともできる。複数のアクティブな胸骨電極(604、605)のこのオプションによって、発生器(601)と電極(604、605)との間のシステムによる、複数のショックベクトルを通じたショックの送出が可能になる。
【0026】
図7は、マルチベクトル電極システムを有する新規なS-ICDシステムを示す。単一パルス発生器は、2つの別個のアクティブ缶部(701、702)から成る外側を有し、皮膚下で標準的な左側位置に位置決めされている。パルス発生器は、同様に患者の皮膚下に配置された皮下リード(703)を介して2又は3以上の胸骨のショック電極(705、706)の各々に接続されている。加えて、リード(703)は、その長さに沿って複数のECG及びパルスセンサー/電極(704)を含むことができ、これによって、多重リードECG信号の感知が可能になり、信号品質は、使用されるセンサ/電極の数に左右される。パルス発生器の2つのアクティブ缶部分(701、702)、並びに1又は2以上の追加的なるショック電極(705、706)の組み合わせによって、発生器部(701、702)のどちらか一方と電極(704、705)のどちらか一方との間で、又はこれらの何らかの適切な組み合わせの間で、システムによって、複数のショックベクトルを通じたショックの送出が可能になる。これらの潜在的なショックベクトル(707、708)の実施例が示されている。
【0027】
マルチベクトル患者電極システムは、患者の体内に配置することができ、除細動又は電気除細動のために、患者に対して例えば1又は2以上の治療パルスを送出するために使用することができる。また、マルチベクトル患者電極システムは、神経刺激、胃腸刺激、もしくは患者の体内の特定の内臓器官又は神経系の刺激など、異なるエネルギー及び持続時間の他の形式の治療を患者に施すために使用することができる。また、マルチベクトル患者電極システムは、鼓動又はパルスなどの患者の特性を感知するために使用することができる。また、マルチベクトル患者電極システムは、このマルチベクトル患者電極システムの実施形態がセンサ及び電極の両方を利用する場合、患者の特性を感知すること及び患者へ治療を施すことの両方を行うために使用することができる。
【0028】
マルチベクトル患者電極システムは、患者の胴、腹部、肢、及び/又は頭部などの体内で患者の様々な場所に配置することができる。一部の実施構成において、複数のマルチベクトル患者電極システムを使用することができ、各マルチベクトル患者電極システムは、患者の体内の1又は2以上の場所に設置することができる。
【0029】
前述の様々な例示的な実施形態において、マルチベクトル患者電極システムを使用して患者に送出されるパルスは、パルスの1又は2以上の異なる位相を有することができる多相性パルスとすることができる。一部の実施形態において、多相性パルスの各位相は、マルチベクトル患者電極システムを使用して自身のショックベクトルを介して送出することができる。一部の実施形態において、多相性パルスの1又は2以上の位相は、同じパルス内で以前使われたショックベクトルを通じて送出することができる。一部の実施形態において、多相性パルスの各位相は、自身の全体パルスタイミングシーケンスの固有セグメント内で送出することができる。一部の実施形態において、多相性パルスの1又は2以上の位相は、全体パルスシーケンスの他のタイミングセグメントの1又は2以上と大なり小なり重なり合う時間セグメント内で送出することができる。
【0030】
前述の様々な例示的な実施形態において、1又は2以上の導電性の患者電極の各々は、別個の個々の電気リードに接続することができる。他の実施形態において、2以上の複数の導電性の患者電極は、同じ電気リードに接続することができる。
【0031】
マルチベクトル患者電極システムを患者の体の皮膚/表面下に配置することができる。例えば、マルチベクトル患者電極システムは、患者の胴、患者の腹部、患者の肢、及び、患者の頭部内に設置することができる。
【0032】
前述の様々な例示的な実施形態において、1又は2以上の導電性電極は、様々な形状の1又は2以上を有することができる。他の実施形態において、1又は2以上の導電性電極は、1又は2以上の異なるサイズを有することができる。1又は2以上の導電性電極は、患者内の所定位置に固定することもできる。
【0033】
一部の実施形態において、システムは、1又は2以上の患者センサを含むことができる。1又は2以上の患者センサは、様々な生体測定値の1又は2以上を患者から能動的に又は受動的に感知することができる。患者からの生体測定値は、ECG信号を含むことができる。一部の実施形態において、1又は2以上のセンサは、1又は2以上の導電性電極から離れて配置される。
【0034】
前述の様々な実施形態において、パルス(又はパルス位相)は、1又は2以上のショックベクトルを使用して患者に送出することができる。それらのショックベクトルは、医療専門家、装置の製造業者、又は装置内のパルス発生器のプログラミング内のアルゴリズムによって、静的に又は動的に選択することができる。1又は2以上のショックベクトルの上記の送出において、ショックベクトルは、単一電極から単一電極への経路、単一電極から複数電極への経路、複数電極から単一電極への経路、及び複数電極から複数電極への経路とすることができる。
【0035】
マルチベクトル患者電極システムは、マルチベクトルパルス波形を患者に送出するために使用することができる。この方法において、1又は2以上のマルチベクトル患者電極システムは、患者内に組み込まれ、1又は2以上のマルチベクトル患者電極システムは、マルチベクトル患者電極システムの電気リード及び導電性電極に対してマルチベクトルパルス波形を発生させる。マルチベクトルパルス波形は、1又は2以上の導電性電極を介して患者に送出される。マルチベクトルパルス波形は、1又は2以上の特定のベクトルを通じて1又は2以上の導電性電極を通って送出することができ、これらのベクトルは、医療専門家、製造業者、又はパルス発生器のプログラミング内のアルゴリズムによって静的に又は動的に選択される。選択された1又は2以上のベクトルは、少なくとも、単一電極対単一電極、単一電極対複数電極、複数電極対単一電極、及び複数電極対複数電極の特性である。この方法において、多相性パルス波形の1又は2以上の位相の各々は、同じ選択されたベクトルを通じて経路指定され、多相性パルス波形の1又は2以上の位相の各々は、異なる選択されたベクトルを通じて経路指定され、及び/又は、多相性パルス波形の1又は2以上の位相の各々は、同じ選択されたベクトル及び異なる選択されたベクトルの組み合わせを通じて経路指定される。
【0036】
上記は本発明の特定の実施形態に関するが、当業者であれば、本開示の原理及び精神から逸脱することなくこの実施形態の変更を行い得ることを理解できるはずであり、本開示の範囲は、特許請求の範囲によって定義される。
【符号の説明】
【0037】
401 アクティブ缶パルス発生器
402 リード
403 電極
404 電極
405 ハウジング/接合部
図1
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図3
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図5
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図7