(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】薬剤供給装置
(51)【国際特許分類】
F28F 27/00 20060101AFI20220127BHJP
C02F 5/00 20060101ALI20220127BHJP
C02F 5/10 20060101ALI20220127BHJP
C02F 1/50 20060101ALI20220127BHJP
F28F 19/00 20060101ALI20220127BHJP
F28G 13/00 20060101ALN20220127BHJP
【FI】
F28F27/00 501Z
C02F5/00 610G
C02F5/10 610A
C02F1/50 510A
C02F1/50 510C
C02F1/50 520K
C02F1/50 531M
C02F1/50 540B
C02F1/50 550B
C02F1/50 550C
C02F1/50 550H
C02F1/50 550L
C02F1/50 560Z
F28F19/00 501B
F28F19/00 511A
F28G13/00 A
(21)【出願番号】P 2018062295
(22)【出願日】2018-03-28
【審査請求日】2020-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390024914
【氏名又は名称】東京ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】松村 卓也
(72)【発明者】
【氏名】小原 基
(72)【発明者】
【氏名】今村 智之
(72)【発明者】
【氏名】篠沢 諭
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第201746413(CN,U)
【文献】特開昭55-001805(JP,A)
【文献】特開2017-202475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 27/00
C02F 5/00
C02F 5/10
C02F 1/50
F28F 19/00
F28G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水の蛍光濃度
と、前記冷却水の酸化還元電
位およ
び前記冷却水の塩素濃度のうち
のいずれか
一方と、を測定するセンサが設けられた測定配管と、
少なくとも前記測定配管に防食防スケール剤を供給する防食防スケール剤供給部と、
第1の冷却水循環装置から前記冷却水を前記測定配管に導入し、前記測定配管から排出された前記冷却水を前記第1の冷却水循環装置に再導入する第1制御状態と、第2の冷却水循環装置から前記冷却水を前記測定配管に導入し、前記測定配管から排出された前記冷却水を前記第2の冷却水循環装置に再導入する第2制御状態とを切り換える切換制御部と、
前記第1の冷却水循環装置および前記第2の冷却水循環装置に、第1の殺菌剤を供給する第1殺菌剤供給部と、
前記第1の冷却水循環装置および前記第2の冷却水循環装置に、前記第1の殺菌剤とは種類が異なる第2の殺菌剤を供給する第2殺菌剤供給部と、
前記センサの測定結果に基づいて、前記防食防スケール剤供給部、前記第1殺菌剤供給部、および、前記第2殺菌剤供給部を制御する供給制御部と、
を備え、
前記供給制御部は、
前記センサによって測定された前記蛍光濃度に基づいて、前記防食防スケール剤供給部が供給する前記防食防スケール剤の量を制御し、
前記センサによって測定された、前記酸化還元電位または前記塩素濃度に基づいて、前記第1殺菌剤供給部が供給する前記第1の殺菌剤の量を制御し、
前記防食防スケール剤供給部に連動させて、前記第2殺菌剤供給部が供給する前記第2の殺菌剤の量を制御する薬剤供給装置。
【請求項2】
前記第1の冷却水循環装置は、第1の冷却塔を有し、
前記第2の冷却水循環装置は、第2の冷却塔を有し、
前記第1殺菌剤供給部は、前記第1の冷却塔、および、前記第2の冷却塔に前記第1の殺菌剤を供給し、
前記第2殺菌剤供給部は、前記第1の冷却塔、および、前記第2の冷却塔に前記第2の殺菌剤を供給する請求項1に記載の薬剤供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の冷却水循環装置へ薬剤を供給する薬剤供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷却塔と熱交換器とに冷却水を循環させる開放系の冷却水循環装置が広く利用されている。冷却水循環装置において、冷却塔は、熱交換器において熱交換させることにより加熱された冷却水の一部を蒸発(気化)させることで冷却水を冷却する。そして、冷却塔で冷却された冷却水は、熱交換器に供給される。
【0003】
このような冷却水循環装置では、冷却塔において冷却水の一部が蒸発するため、冷却水が濃縮される。そうすると、熱交換器、冷却塔、および、これらを接続する配管が腐食する腐食障害、冷却水中の不溶解物が堆積するスケール障害が生じるおそれがある。また、冷却塔が開放されているため、冷却水中に微生物(藻類、細菌、カビ)が増殖するスライム障害が生じるおそれがある。
【0004】
そこで、腐食障害を防止する腐食防止剤、スケール障害を防止するスケール防止剤、スライム障害を防止する殺菌剤を冷却水に添加することが一般的に行われている。
【0005】
例えば、特許文献1には、冷却塔へ供給する補給水の電気伝導度を測定する電気伝導度計と、薬剤を貯留する薬剤タンクと、薬剤タンクに貯留された薬剤を補給水路に供給する薬注ポンプとを有する薬剤供給装置が記載されている。また、薬剤供給装置は、冷却塔へ供給される補給水量と補給水の電気伝導度の比に応じた量の薬剤を所定の補給水量に対して供給することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1等の従来技術では、冷却水循環装置それぞれに薬剤供給装置が設置されている。このため、複数の冷却水循環装置を備える設備では、初期コストやメンテナンスコストが増加してしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、初期コストおよびメンテナンスコストを低減することが可能な薬剤供給装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の薬剤供給装置は、冷却水の蛍光濃度と、冷却水の酸化還元電位および冷却水の塩素濃度のうちのいずれか一方と、を測定するセンサが設けられた測定配管と、少なくとも測定配管に防食防スケール剤を供給する防食防スケール剤供給部と、第1の冷却水循環装置から冷却水を測定配管に導入し、測定配管から排出された冷却水を第1の冷却水循環装置に再導入する第1制御状態と、第2の冷却水循環装置から冷却水を測定配管に導入し、測定配管から排出された冷却水を第2の冷却水循環装置に再導入する第2制御状態とを切り換える切換制御部と、第1の冷却水循環装置および第2の冷却水循環装置に、第1の殺菌剤を供給する第1殺菌剤供給部と、第1の冷却水循環装置および第2の冷却水循環装置に、第1の殺菌剤とは種類が異なる第2の殺菌剤を供給する第2殺菌剤供給部と、センサの測定結果に基づいて、防食防スケール剤供給部、第1殺菌剤供給部、および、第2殺菌剤供給部を制御する供給制御部と、を備え、供給制御部は、センサによって測定された蛍光濃度に基づいて、防食防スケール剤供給部が供給する防食防スケール剤の量を制御し、センサによって測定された、酸化還元電位または塩素濃度に基づいて、第1殺菌剤供給部が供給する第1の殺菌剤の量を制御し、防食防スケール剤供給部に連動させて、第2殺菌剤供給部が供給する第2の殺菌剤の量を制御する。
【0011】
また、第1の冷却水循環装置は、第1の冷却塔を有し、第2の冷却水循環装置は、第2の冷却塔を有し、第1殺菌剤供給部は、第1の冷却塔、および、第2の冷却塔に第1の殺菌剤を供給し、第2殺菌剤供給部は、第1の冷却塔、および、第2の冷却塔に第2の殺菌剤を供給してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、初期コストおよびメンテナンスコストを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態にかかる冷却水システムを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
(冷却水システム100)
図1は、本実施形態にかかる冷却水システム100を説明する図である。
図1中、冷却水、および、薬剤の流れを実線の矢印で示し、信号の流れを破線の矢印で示す。なお、
図1中、後述する中央制御部150と、バルブ(第1バルブ212、第2バルブ214、第3バルブ232、第4バルブ242)との間の信号の流れを示す破線、および、中央制御部150と注入ポンプ266、276、286との間の信号の流れを示す破線は、図面の簡明化のため図示を省略する。
【0017】
図1に示すように、冷却水システム100は、複数の冷却水循環装置110(
図1中、110A、110Bで示す)と、中央制御部150と、薬剤供給装置200とを含む。なお、本実施形態では、冷却水システム100が、2つの冷却水循環装置110(110A、110B)を備える構成を例に挙げて説明する。しかし、冷却水システム100は、3つ以上の冷却水循環装置110を備えていてもよい。
【0018】
(冷却水循環装置110)
冷却水循環装置110は、冷却塔120と、送出配管130と、ポンプ132と、熱交換器140と、返送配管142とを含む。
【0019】
冷却塔120は、水槽122と、塔本体124と、ファン126と、散水部128とを含む。水槽122は、冷却水を貯留する。塔本体124は、水槽122の上部に接続される。塔本体124の上壁部には開口124aが形成され、側壁部には開口124bが形成される。
【0020】
ファン126は、塔本体124に設けられ、不図示のモータによって回転される。ファン126は、側壁部の開口124bから上壁部の開口124aに向かって(下方から上方に向かって)空気を排気する。つまり、空気は、塔本体124の側壁部の開口124bから吸引され、塔本体124内を通過して、塔本体124の上壁部の開口124aから排気される。
【0021】
散水部128は、ノズルで構成され、塔本体124におけるファン126の下方に設けられる。散水部128には、後述する返送配管142が接続されている。散水部128は、返送配管142を通じて熱交換器140から排出された冷却水を散水する。散水部128によって散水された冷却水は、塔本体124内を落下する。冷却水は、落下する過程において、開口124bから塔本体124内に取り込まれた空気(外気)と接触することにより、一部が蒸発する。したがって、冷却水は、水の気化熱(潜熱)によって冷却される。冷却された冷却水は、塔本体124の下方に位置する水槽122に貯留される。
【0022】
送出配管130は、冷却塔120の水槽122と熱交換器140の入口とを接続する。ポンプ132は、送出配管130に設けられる。ポンプ132は、冷却塔120の水槽122に貯留された冷却水を熱交換器140に送出する。
【0023】
熱交換器140は、冷却水と熱媒体とを熱交換して、熱媒体を冷却する。返送配管142は、熱交換器140の出口と、冷却塔120の散水部128とを接続する。したがって、熱交換器140によって加熱された冷却水は、返送配管142を通じて、冷却塔120の散水部128に返送される。
【0024】
中央制御部150は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成され、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出し、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して冷却水システム100全体を管理および制御する。
【0025】
中央制御部150は、インターネット、専用回線等の通信網10を介して、管理サーバ20に接続される。中央制御部150は、取得した情報を、通信網10を介して管理サーバ20に送信する。中央制御部150は、例えば、熱交換器140によって冷却された熱媒体の温度を示す情報、ポンプ132の駆動状況を示す情報、後述する蛍光センサ220、ORPセンサ222、ECセンサ224の測定値を示す情報、および、注入ポンプ266、276、286の駆動状況を示す情報、バルブ(第1バルブ212、第2バルブ214、第3バルブ232、第4バルブ242)の開閉を示す情報を管理サーバ20に送信する。
【0026】
したがって、管理サーバ20は、中央制御部150から連続的に情報を取得できる。そして、管理サーバ20は、取得した情報を確認したり、分析したりする。これにより、管理サーバ20は、冷却水システム100の状況を把握したり、冷却水システム100に対しメンテナンスが必要か否かを把握したりすることができる。
【0027】
また、本実施形態において、中央制御部150は、薬剤供給装置200を構成する切換制御部290、供給制御部292としても機能する。切換制御部290および供給制御部292による具体的な制御処理については、後に詳述する。
【0028】
以上説明したように、冷却水循環装置110は、冷却塔120と熱交換器140とに冷却水を循環させる。上記したように、冷却水循環装置110では、冷却塔120において冷却水の一部が蒸発するため、冷却水が濃縮される。そうすると、冷却塔120、熱交換器140、ポンプ132、送出配管130、および、返送配管142が腐食する腐食障害、冷却水中の不溶解物が堆積するスケール障害が生じるおそれがある。また、冷却塔120が開放されているため、冷却水中に微生物(藻類、細菌、カビ)が増殖するスライム障害が生じるおそれがある。そこで、本実施形態の冷却水システム100は、腐食障害、スケール障害、および、スライム障害を防止すべく、薬剤供給装置200を備える。
【0029】
(薬剤供給装置200)
薬剤供給装置200は、測定配管210と、第1バルブ212と、第2バルブ214と、蛍光センサ(センサ)220と、ORPセンサ(センサ)222と、ECセンサ224と、第1接続管230と、第3バルブ232と、第2接続管240と、第4バルブ242と、薬剤供給部250と、切換制御部290と、供給制御部292とを含む。
【0030】
測定配管210は、冷却水循環装置110Aの返送配管142と、冷却水循環装置110Aの水槽122とを接続する配管である。測定配管210には、第1バルブ212および第2バルブ214が設けられる。第1バルブ212および第2バルブ214は、開閉弁である。また、測定配管210における第1バルブ212と第2バルブ214との間には、蛍光センサ220、および、ORPセンサ222が設けられる。なお、本実施形態において、冷却水の流れ方向の上流側から順に、蛍光センサ220、ORPセンサ222が測定配管210に設けられる。
【0031】
蛍光センサ220は、冷却水の蛍光濃度を測定する。腐食障害およびスケール障害を防止する防食防スケール剤には、一般的に、予め定められた量の蛍光物質(例えば、スルホン化ピレン化合物である1,3,6,8-ピレンテトラスルホン酸四ナトリウム(PTSA))が含まれている。したがって、蛍光センサ220は、蛍光濃度を測定することによって、防食防スケール剤の濃度を間接的に測定する。
【0032】
ORPセンサ222は、冷却水の酸化還元電位を測定する。スライム障害を防止する第1の殺菌剤(例えば、塩素配合型殺菌剤)は、冷却水の酸化力を上昇させる機能を有する。したがって、ORPセンサ222は、酸化還元電位を測定することによって、第1の殺菌剤の濃度を間接的に測定する。
【0033】
ECセンサ224は、冷却水循環装置110の水槽122に貯留された冷却水の電気伝導度を測定する。ECセンサ224によって測定された電気伝導度が所定の設定電気伝導度を上回った場合、水槽122から冷却水がブロー(廃棄)され、新たな水が水槽122に供給される。そして、ECセンサ224によって測定された電気伝導度が設定電気伝導度を以下になったら、水槽122からの冷却水のブローが停止され、新たな水の水槽122への供給が停止される。
【0034】
第1接続管230は、測定配管210における第1バルブ212と蛍光センサ220との間と、冷却水循環装置110Bの返送配管142とを接続する。第1接続管230には、第3バルブ232が設けられる。第2接続管240は、測定配管210におけるORPセンサ222と第2バルブ214との間と、冷却水循環装置110Bの水槽122とを接続する。第2接続管240には、第4バルブ242が設けられる。第3バルブ232、および、第4バルブ242は、開閉弁である。
【0035】
薬剤供給部250は、防食防スケール剤供給部260と、殺菌剤供給部270(
図1中、270A、270Bで示す)とを含む。
【0036】
防食防スケール剤供給部260は、タンク262と、供給管264と、注入ポンプ266とを含む。タンク262は、防食防スケール剤を貯留する。供給管264は、タンク262と、測定配管210におけるORPセンサ222と第2接続管240の接続箇所との間とを接続する。注入ポンプ266は、供給管264に設けられる。注入ポンプ266は、タンク262に貯留された防食防スケール剤を測定配管210に供給する。
【0037】
殺菌剤供給部270は、冷却水循環装置110に第1の殺菌剤および第2の殺菌剤(例えば、レジオネラ菌殺菌剤)を供給する。殺菌剤供給部270Aは、冷却水循環装置110Aの近傍に設けられ、殺菌剤供給部270Bは、冷却水循環装置110Bの近傍に設けられる。殺菌剤供給部270は、タンク272、282と、供給管274、284と、注入ポンプ276、286とを含む。
【0038】
タンク272は、第1の殺菌剤を貯留する。供給管274は、タンク272と、冷却水循環装置110の水槽122とを接続する。供給管274には、注入ポンプ276が設けられる。注入ポンプ276は、タンク272に貯留された第1の殺菌剤を水槽122(供給管274)に供給する。
【0039】
タンク282は、第2の殺菌剤を貯留する。供給管284は、タンク282と、冷却水循環装置110の水槽122とを接続する。供給管284には、注入ポンプ286が設けられる。注入ポンプ286は、タンク282に貯留された第2の殺菌剤を水槽122(供給管284)に供給する。
【0040】
切換制御部290は、第1制御状態と第2制御状態とを、所定間隔(例えば、15分)で交互に切り換える。第1制御状態は、蛍光センサ220、および、ORPセンサ222に、冷却水循環装置110A(第1の冷却水循環装置110)の冷却塔120(第1の冷却塔120)の冷却水(冷却水循環装置110Aを循環する冷却水)を測定させる状態である。第2制御状態は、蛍光センサ220、および、ORPセンサ222に、冷却水循環装置110B(第2の冷却水循環装置110)の冷却塔120(第2の冷却塔120)の冷却水(冷却水循環装置110Bを循環する冷却水)を測定させる状態である。
【0041】
具体的に説明すると、切換制御部290は、第1バルブ212および第2バルブ214を開弁し、第3バルブ232および第4バルブ242を閉弁して第1制御状態とする。そうすると、冷却水循環装置110Aの返送配管142を通過する冷却水は、測定配管210に導入され、蛍光センサ220、および、ORPセンサ222によって、蛍光濃度、および、酸化還元電位が測定される。測定された冷却水は、測定配管210を通じて冷却水循環装置110Aの水槽122に再導入される。
【0042】
また、切換制御部290は、第3バルブ232および第4バルブ242を開弁し、第1バルブ212および第2バルブ214を閉弁して第2制御状態とする。そうすると、冷却水循環装置110Bの返送配管142を通過する冷却水は、第1接続管230を通じて測定配管210に導入され、蛍光センサ220、および、ORPセンサ222によって、蛍光濃度、および、酸化還元電位が測定される。測定された冷却水は、測定配管210および第2接続管240を通じて、冷却水循環装置110Bの水槽122に再導入される。
【0043】
供給制御部292は、蛍光センサ220の測定結果に基づいて、防食防スケール剤供給部260の注入ポンプ266を制御する。供給制御部292は、例えば、蛍光センサ220が測定した冷却水の蛍光濃度が所定の蛍光範囲未満である場合に注入ポンプ266の駆動を開始し、蛍光範囲を上回ったら注入ポンプ266を停止する。また、供給制御部292は、蛍光センサ220が測定した冷却水の蛍光濃度が所定の蛍光範囲内である場合、注入ポンプ266を駆動させない。ここで、蛍光範囲は、腐食障害およびスケール障害を防止できる防食防スケール剤の濃度の下限値以上、所定の上限値以下の蛍光濃度の範囲である。
【0044】
これにより、タンク262から、測定配管210を通じて水槽122に防食防スケール剤が供給される。したがって、冷却水循環装置110を循環する冷却水の防食防スケール剤の濃度を蛍光範囲内に維持することができる。
【0045】
また、供給制御部292は、ORPセンサ222の測定結果に基づいて、殺菌剤供給部270の注入ポンプ276を制御する。供給制御部292は、例えば、ORPセンサ222が測定した冷却水の酸化還元電位が所定の電位範囲未満である場合に、注入ポンプ276の駆動を開始し、電位範囲を上回ったら注入ポンプ276を停止する。また、供給制御部292は、ORPセンサ222が測定した冷却水の酸化還元電位が所定の電位範囲内である場合、注入ポンプ276を駆動させない。ここで、電位範囲は、スライム障害を防止できる第1の殺菌剤の濃度の下限値以上、所定の上限値以下の酸化還元電位の範囲である。
【0046】
なお、供給制御部292は、制御状態が第1制御状態であり、かつ、ORPセンサ222が測定した冷却水の酸化還元電位が電位範囲未満である場合、殺菌剤供給部270Aの注入ポンプ276の駆動を開始する。また、供給制御部292は、制御状態が第2制御状態であり、かつ、ORPセンサ222が測定した冷却水の酸化還元電位が電位範囲未満である場合、殺菌剤供給部270Bの注入ポンプ276の駆動を開始する。
【0047】
これにより、タンク272から水槽122に第1の殺菌剤が供給(滴下)される。したがって、冷却水循環装置110を循環する冷却水の第1の殺菌剤の濃度を電位範囲内に維持することができる。
【0048】
また、供給制御部292は、殺菌剤供給部270の注入ポンプ286を制御する。供給制御部292は、例えば、防食防スケール剤供給部260の注入ポンプ266に連動させて注入ポンプ286を制御する。つまり、供給制御部292は、注入ポンプ266を駆動させている間、注入ポンプ286を駆動し、注入ポンプ266を停止させている間、注入ポンプ286を停止する。これにより、タンク282から水槽122に第2の殺菌剤が供給(滴下)される。
【0049】
以上説明したように、本実施形態の薬剤供給装置200は、複数の冷却水循環装置110A、110Bで、1つの蛍光センサ220、1つのORPセンサ222、および、1つの防食防スケール剤供給部260を共用する。つまり、薬剤供給装置200は、冷却水循環装置110Aの冷却水に含まれる薬剤(防食防スケール剤)の濃度と、冷却水循環装置110Bの冷却水に含まれる薬剤の濃度とを、所定間隔ごとに交互に測定し、冷却水循環装置110Aおよび冷却水循環装置110Bの冷却水中の防食防スケール剤の濃度を蛍光範囲に維持する。
【0050】
これにより、蛍光センサ220、ORPセンサ222、および、防食防スケール剤供給部260の初期コストおよびメンテナンスコストを低減することが可能となる。
【0051】
また、殺菌剤供給部270は、水槽122に殺菌剤(第1の殺菌剤、および、第2の殺菌剤)を直接滴下する。殺菌剤は、強アルカリ成分を含む。したがって、殺菌剤を測定配管210に供給すると、測定配管210が閉塞されるおそれがある。しかし、本実施形態の殺菌剤供給部270は、測定配管210ではなく、供給管274、284に殺菌剤を供給する。これにより、測定配管210が閉塞されてしまう事態を回避することが可能となる。したがって、蛍光センサ220、および、ORPセンサ222によって常時測定を行うことができる。つまり、冷却水の状態を常時把握することが可能となる。なお、殺菌剤が強アルカリ成分を含まない場合、殺菌剤供給部270は測定配管210に殺菌剤を供給してもよい。
【0052】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0053】
例えば、上記実施形態において、薬剤供給装置200は、センサとして、蛍光センサ220、ORPセンサ222、および、ECセンサ224を備える構成を例に挙げて説明した。しかし、薬剤供給装置200は、冷却水の蛍光濃度、冷却水の酸化還元電位、および、冷却水の塩素濃度(残留塩素濃度)のうち、少なくともいずれかを測定するセンサを備えていればよい。例えば、薬剤供給装置200は、ORPセンサ222に代えて、冷却水の塩素濃度を測定する残留塩素濃度測定センサを備えてもよい。残留塩素濃度測定センサは、冷却水の第1の殺菌剤の濃度を測定することができる。
【0054】
また、上記実施形態において、薬剤供給装置200は、返送配管142から測定配管210に冷却水を導入する構成を備える場合を例に挙げて説明した。しかし、薬剤供給装置200は、冷却水循環装置110を循環する冷却水を測定配管210に導入する構成を備えていればよい。例えば、薬剤供給装置200は、冷却塔120(例えば、水槽122)および送出配管130のうちいずれか一方または両方から、測定配管210に冷却水を導入する構成を備えてもよい。
【0055】
また、上記実施形態において、薬剤供給装置200は、測定配管210から水槽122に冷却水を再導入する構成を備える場合を例に挙げて説明した。しかし、薬剤供給装置200は、測定配管210を通過した冷却水を、冷却水循環装置110に再導入する構成を備えていればよい。例えば、薬剤供給装置200は、測定配管210から、散水部128、送出配管130、および、返送配管142のいずれか1または複数に冷却水を再導入する構成を備えてもよい。
【0056】
また、上記実施形態において、タンク262が、防食防スケール剤を貯留する構成を例に挙げて説明した。しかし、タンク262は、防食防スケール剤に加えて、または、代えて、殺菌剤を貯留してもよい。
【0057】
また、上記実施形態において、冷却水循環装置110それぞれに殺菌剤供給部270が設けられる構成を例に挙げて説明した。しかし、薬剤供給装置200は、1つの殺菌剤供給部270を備え、殺菌剤供給部270から冷却水循環装置110Aおよび冷却水循環装置110Bに殺菌剤を供給してもよい。
【0058】
また、上記実施形態において、防食防スケール剤供給部260が注入ポンプ266を備える構成を例に挙げて説明した。また、上記実施形態において、殺菌剤供給部270が第1の殺菌剤および第2の殺菌剤を供給する構成を例に挙げて説明した。しかし、殺菌剤供給部270は、第1の殺菌剤または第2の殺菌剤を供給してもよい。
【0059】
また、上記実施形態において、供給制御部292は、防食防スケール剤供給部260の注入ポンプ266に連動させて注入ポンプ286を制御する場合を例に挙げて説明した。しかし、供給制御部292は、注入ポンプ266と独立して注入ポンプ286を制御してもよい。例えば、供給制御部292は、所定間隔ごとに、注入ポンプ286を駆動してもよい。
【0060】
また、冷却水循環装置110Aのポンプ132と、冷却水循環装置110Bのポンプ132とは、交互に駆動されてもよい。この場合、切換制御部290は、冷却水循環装置110Aのポンプ132が駆動されている場合に第1制御状態とし、冷却水循環装置110Bのポンプ132が駆動されている場合に第2制御状態とする。また、冷却水循環装置110Aのポンプ132、および、冷却水循環装置110Bのポンプ132のいずれか一方のみが駆動されてもよい。
【0061】
また、注入ポンプ266、276、286は、蛍光センサ220、ORPセンサ222の測定結果に拘わらず、所定間隔ごとに駆動されてもよい。また、防食防スケール剤供給部260は、防食防スケール剤を水槽122に直接滴下してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、複数の冷却水循環装置へ薬剤を供給する薬剤供給装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
110A 冷却水循環装置(第1の冷却水循環装置)
110B 冷却水循環装置(第2の冷却水循環装置)
120 冷却塔
200 薬剤供給装置
210 測定配管
220 蛍光センサ(センサ)
222 ORPセンサ(センサ)
250 薬剤供給部
290 切換制御部
292 供給制御部