(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】システムキッチン
(51)【国際特許分類】
A47B 77/08 20060101AFI20220127BHJP
【FI】
A47B77/08 B
(21)【出願番号】P 2018090306
(22)【出願日】2018-05-09
【審査請求日】2020-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】本間 満
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-050351(JP,A)
【文献】特開2010-046322(JP,A)
【文献】特開2011-174623(JP,A)
【文献】特開平05-253028(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0156468(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 77/08
F24C 15/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレートに載置された被加熱物を加熱する1口以上の加熱コイルを備える加熱調理器と、前記加熱調理器がドロップインされた筐体とを備えるシステムキッチンにおいて、
前記筐体の側面の上方に前記加熱調理器
を冷却するための冷却風を吸気する吸気口と、前記筐体の側面の下方に前記加熱調理器
を冷却するための冷却風を排気する排気口と、前記加熱調理器を冷却するための冷却風が通過する導風機構とを備え、
前記筐体は、該筐体外部の床面側の面と床面との間に空間が形成されるように凸部が形成され、
前記導風機構は、前記吸気口から前記排気口への冷却風の流路を形成し、
前記吸気口と前記排気口とは前記筐体において対向しない位置となるように、前記吸気口が手前側の前記側面に形成され、
前記排気口は、前記床面側の面に形成されていることを特徴とするシステムキッチン。
【請求項2】
請求項
1に記載のシステムキッチンにおいて、
前記導風機構はダクト形状であることを特徴とするシステムキッチン。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載のシステムキッチンにおいて、
前記筐体の側面と前記導風機構との間に断熱部材が設けられていることを特徴とするシステムキッチン。
【請求項4】
請求項1乃至
3のいずれか1項に記載のシステムキッチンにおいて、
前記加熱調理器と前記導風機構との間に遮蔽部が設けられていることを特徴とするシステムキッチン。
【請求項5】
請求項1乃至
4のいずれか1項に記載のシステムキッチンにおいて、
前記筐体内部と前記導風機構との間に断熱部材が設けられていることを特徴とするシステムキッチン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱部や制御部の冷却効率を向上した加熱調理器の排気処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の加熱調理器の技術として、例えば特許文献1、特許文献2に記載の技術がある。特許文献1の加熱調理器では、加熱調理器上部には被加熱物が載置可能なトッププレートを有し、被加熱物を誘導加熱する加熱コイルをトッププレート下方に設けた加熱調理器において、排気口はトッププレートと筐体の後端部の間から、筐体内部の空気を後方に向けて排気する。
【0003】
特許文献2の加熱調理器では、キッチンに組み込まれた状態で天面および前面が露出する加熱調理器において、本体の前面に開口を有する収納室を備え、収納室は冷却ファンの風路の一部を構成し、冷却ファンの排気口は本体の外側の壁であって、キッチンに組み込まれた状態でキッチンに囲まれる壁に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-217644号公報
【文献】特開2017-166790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術においては、トッププレートと筐体の後端部の間に排気口が設けられているため、調理中に飛び跳ねた油や食材屑がトッププレート清掃時に排気口へ入り、排気口が汚れることで排気性能の低下や、排気口の汚れによる美観を損ねる課題があった。また、トッププレートと筐体の後端部の間に排気口を設けるため、排気口の有効高さ寸法が小さくなり、排気効率が悪化することで、本体内に配設している複数の加熱コイルや制御基板を効率よく冷却することができない課題があった。
【0006】
特許文献2に記載の技術においては、加熱調理器の本体の壁に排気口と吸気口を設けることで、排気口の汚れによる排気性能の低下や美観を損ねる課題は解決できる。しかし、加熱コイルや制御基板を冷却し、温度上昇した冷却風をキッチン内へ排出するため、キッチンの内部温度が上昇してしまい、キッチン内の引き出しや収納部に食材や調味料を保管することができない課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものである。プレートに載置された被加熱物を加熱する1口以上の加熱コイルを備える加熱調理器と、前記加熱調理器がドロップインされた筐体とを備えるシステムキッチンにおいて、前記筐体の側面の上方に前記加熱調理器を冷却するための冷却風を吸気する吸気口と、前記筐体の側面の下方に前記加熱調理器を冷却するための冷却風を排気する排気口と、前記加熱調理器を冷却するための冷却風が通過する導風機構とを備え、前記筐体は、該筐体外部の床面側の面と床面との間に空間が形成されるように凸部が形成され、前記導風機構は、前記吸気口から前記排気口への冷却風の流路を形成し、前記吸気口と前記排気口とは前記筐体において対向しない位置となるように、前記吸気口が手前側の前記側面に形成され、前記排気口は、前記床面側の面に形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、加熱調理器の加熱部や制御部の冷却効率を向上し、キッチン内部の温度上昇を防止することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施例を示す加熱調理器をキッチンに組み込んだ状態の、システムキッチンの外観斜視図。
【
図2】システムキッチンの加熱調理器用の吸気口、排気口位置を説明する図
【
図3】キッチン側面下方に加熱調理器用の排気口を設け、加熱調理器の吸気口を側面部に設ける説明図
【
図5】キッチン側面下方に加熱調理器用の排気口を設け、加熱調理器の吸気口を底面部に設ける説明図
【
図6】キッチン側面下面に加熱調理器用の排気口を設ける説明図
【
図8】システムキッチンの加熱調理器用の吸気口、排気口位置の複数の形態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面等を用いて、本発明の実施例について説明する。以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものではない。本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能であり、下記の実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0011】
図1は、本発明の一実施例を示す加熱調理器をキッチンに組み込んだ状態の、システムキッチンの外観斜視図である。加熱調理器1は、筐体であるキッチン6の開口部に組込まれている。調理を行う際の被加熱物である調理鍋は、加熱調理器1の上面に配置された耐熱ガラス等からなるトッププレート3上に載置される。トッププレート3には載置部4が描かれており、トッププレート3を挟んで載置部4の下に位置するように、加熱コイル2A、2B、2Cが複数配置されている。手前側に配置される加熱コイル2A、2Bの火力は、炒め物や揚げ物など、高温で大火力が必要となる大火力の加熱コイルが配置され、奥側の加熱コイル2Cには少量の湯沸かしや煮込みなど、小火力の加熱コイルが配置されることが多い。
【0012】
図2は、キッチン6の加熱調理器1用の吸気口、排気口位置を説明する図である。キッチン6の側面に設けられた吸気口7から冷却風を吸い込み、加熱調理器1を冷却する。そして、加熱調理器1を冷却することで温度上昇した冷却風は、キッチン6の側面に設けられた排気口9から排気される。
【0013】
<実施例1>
図3は、キッチン側面下方に加熱調理器用の排気口を設け、加熱調理器の吸気口を側面部に設ける説明図である。
図3において、加熱コイルは調理鍋の加熱を効率よく行うため、トッププレート3に押しつけるよう配置されている。各加熱コイルを制御する複数の制御基板には、各種電子部品が搭載され、発熱が大きい電子部品はアルミ製のヒートシンクを用いて放熱を行なっている。これら複数の加熱コイル2A、2B、2Cや制御基板4を効率よく冷却するための冷却ファン5は加熱調理器1内に配置されている。キッチン6の側面の上方には、加熱調理器1を冷却するための冷却風を吸気する吸気口7が設けられている。また、キッチン6の側面の下方には、加熱調理器1を冷却するための冷却風を排気する排気口9が設けられている。
【0014】
まず、キッチン6の側面の上方に設けられた加熱調理器1用の吸気口7より温度の低い空気を取り入れ、加熱調理器1の側面部に設けた加熱調理器吸気口8Aより冷却風を加熱調理器1内へ流入する。そして、加熱調理器1内の複数の加熱コイル2A、2B、2C、制御基板4や冷却フィン5の冷却を行う。熱交換により温度上昇した冷却風は、加熱調理器1の加熱調理器排気口8Bから排気され、キッチン6側面の吸気口7より下方に備えた、加熱調理器用の排気口9よりキッチン外へ排出する。排気口9がキッチン6の側面の下方に設けられることにより、加熱調理器1の使用者を含むシステムキッチンの使用者の上体に温度上昇した冷却風が当たるのを防ぐことができる。これにより、使用者は快適にシステムキッチンを使用することができる。
【0015】
キッチン側面の加熱調理器用の吸気口7からキッチン側面の加熱調理器用の排気口9までは、導風機構10によりキッチン内に冷却風の流路を形成する。これにより、温度上昇した冷却風がキッチン内部11へ流入することなく、加熱調理器の加熱部や制御部の冷却効率を向上しつつ、キッチン内部11の温度上昇を防止することができる。また、導風機構10内に、誘導加熱調理器用の排気口9からキッチン側面の加熱調理器用の排気口9までの経路内の排気効率向上のため冷却ファン16を設けることで、より加熱調理器の加熱部や制御部の冷却効率を向上しつつ、キッチン内部11の温度上昇を防止することができる。そして、キッチン内に食材や調味料を保管することができる。さらに、使用者にとってキッチン6の背面側に入れられている食材は取り出すのが大変であるため、導風機構10が背面側に設けられていることにより、キッチン6内のスペースを有効活用できる。
【0016】
図4は
図3の変形例であり、導風機構10の内壁と加熱調理器1の外郭の隙間を狭小化する遮蔽手段17を設け、吸気口8Aの上流側の空間と排気口8Bの下流の空間を遮蔽手段17により分離させたものである。
【0017】
図示した遮蔽手段17は導風機構10の底面から加熱調理器1の底面に向かって突起したリブ状の平板であり、排気口8Bから排気した高温空気が吸気口8Aに還流することを抑制できる。還流が少ない構成であるほど、キッチンの吸気口7から低温空気を吸引することができ、加熱調理器1およびキッチン6を効率よく冷却できる。
【0018】
ここで、遮蔽手段17は加熱調理器1の外郭となる底面や側面に近接あるいは接触して配置することで、還流する空気漏れをより低減できる。なお、図示したような部分的に突起した遮蔽手段17でなく、加熱調理器1の底面と導風機構10を接触あるいは近接させても同様の効果がある。また、本構成は加熱調理器1の吸気口8Aや排気口8Bの配置によらず適用できる。
【0019】
なお、吸気口7から吸引した冷却風が遮蔽手段17によって加熱調理器1の内部を効率良く通過する場合は、加熱調理器内に冷却フィン5を設けず、導風機構10内の冷却ファン16によって冷却風の吸引を行っても良い。
【0020】
<実施例2>
図5は、キッチン側面下方に加熱調理器用の排気口を設け、加熱調理器の吸気口を底面部に設ける説明図である。加熱調理器1の加熱調理動作時は、加熱調理器1内の温度上昇に伴い、加熱調理器1の熱がキッチン内部空間12や導風機構10へ輻射し、キッチン内の加熱調理器周囲の空間12の温度が上昇する。
図5において、温度上昇を防止するため、加熱調理器1の吸気口8Cを加熱調理器1の底面部に設ける。底面部に吸気口8Cを設けることで、キッチン外より吸気した温度の低い空気を加熱調理器1内へ吸気する際に、加熱調理器1の底面部や側面部を冷却することができる。さらに、キッチン内の加熱調理器周囲の空間12の昇温した空気も加熱調理器1内の発熱部品の冷却後に加熱調理器1の排気口8Bを経由しキッチン側面の下方設けた加熱調理器用の排気口9よりキッチン外へ排出する。これらにより、キッチン内部11やキッチン内の加熱調理器周囲の空間12の温度上昇を防止することができる。
【0021】
さらに、トッププレート3上面に排気口を設けなくて済むため、調理中やトッププレート清掃時に排気口に油や食材屑が入ることがなくなる。さらに、排気の性能低下や、排気口の汚れによる美観を損ねることもなく、凹凸の少ないトッププレート構成とすることが可能となり、意匠性も向上する。
【0022】
<実施例3>
図6は、キッチン6の側面下面に加熱調理器用の排気口を設ける説明図である。
図6において、導風機構10は、キッチン内の加熱調理器周囲の空間12と、キッチン内の引き出しや収納空間部であるキッチン内部11とをキッチン内で仕切る。且つ、キッチン内の加熱調理器の空間に冷却風を流入する吸気口7をキッチン側面の上方に設け、キッチン内の加熱調理器の空間の冷却風を排出する排気口13をキッチン6の側面の下方に設ける。具体的には、排気口13をキッチン6の側面下方であって、キッチン6の側面に設けられた凸部の床面側の面であるキッチン側面下面に排気口13を設ける。これにより、床面に対して排気されるため、キッチンの対面方向に位置するリビング側の居住者へ排気風が当たらなくなり、排気風の煩わしさを防止したり、温風が当たるのを防ぐことができる。
【0023】
<実施例4>
図7は、導風機構をダクト形状で形成した説明図である。具体的には、導風機構10は、加熱調理器の排気口8からキッチン6の側面の下方に設けた加熱調理器1用の排気口9への流路を任意の長さに変更可能な、ダクト14形状で構成される。これにより、使用者の嗜好や生活スタイル、キッチン環境に合わせ、キッチン側面の下方に設ける排気口9の位置を任意に調整することができるようになる。
【0024】
<実施例5>
図8は、システムキッチンの加熱調理器用の吸気口、排気口位置の複数の形態を示す図である。
図8(a)と(d)とにおいて、キッチン側面の上方に備えた加熱調理器用の吸気口7と、キッチン側面の下方に備えた加熱調理器用の排気口9は、キッチン側面の対向した位置に設けられている。これにより、排気口9より排出される温度上昇した冷却風を再び吸気することがないため、常にキッチン外から温度の低い空気を加熱調理器1内へ取り込めることができ、加熱調理器の冷却効果を損なうことがない。
【0025】
一方、
図8(b)と(c)とにおいて、キッチン側面の上方に備えた加熱調理器用の吸気口7と、キッチン側面の下方に備えた加熱調理器用の排気口9は、キッチン側面の対向しない位置に設けられている。これにより、排気口9より排出される温度上昇した冷却風を再び吸気することがないため、常にキッチン外から温度の低い空気を加熱調理器1内へ取り込めることができ、加熱調理器の冷却効果を損なうことがない。また、
図8に示す実施形態の通り、キッチン側面の上方に設ける吸気口7の位置とキッチン側面の下方に設ける排気口9の位置とを任意に調整することができることで、使用者の嗜好や生活スタイル、キッチン環境に合わせた加熱調理器を提供できる。
【0026】
<実施例6>
導風機構10には温度上昇した冷却風が流れるため、導風機構10内の温度が上昇し熱伝達することで、キッチン側面やキッチン内部の温度が上昇する。温度上昇を防止するため、キッチン6の側面と導風機構10との間に断熱部材15を設けることができる。これにより、キッチン側面の温度上昇を防ぐことができ、使用者が安心してシステムキッチンを使用できる。また、キッチン内部11と導風機構10との間に断熱部材15を設けることができる。これにより、キッチン内部の温度上昇を防ぐことができ、キッチン内に食材や調味料を保管することができる。
【0027】
以上より、加熱調理器1の加熱部や制御部の冷却効率を向上し、キッチン内部11の温度上昇も防止することができる。また、非常に使い勝手が良く、意匠性も良いものである。
【符号の説明】
【0028】
1 加熱調理器
2A、2B、2C 加熱コイル
3 トッププレート
4 制御基板
5 冷却ファン
6 キッチン
7 キッチン側面の加熱調理器用の吸気口
8A 加熱調理器の側面部の吸気口
8B 加熱調理器の排気口
8C 加熱調理器の底面部の吸気口
9 キッチン側面の加熱調理器用の排気口
10 導風機構
11 キッチン内部(引き出しや収納空間)
12 キッチン内の加熱調理器周囲の空間
13 キッチン側面下面の加熱調理器用の排気口
14 ダクト
15 断熱部材
16 導風機構内に設けた冷却ファン
17 遮蔽手段