(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】ヘリコバクター・ピロリを判定するための方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/686 20180101AFI20220127BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20220127BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20220127BHJP
C12Q 1/689 20180101ALN20220127BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20220127BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z ZNA
G01N33/569 F
G01N33/53 M
C12Q1/689 Z
C12N15/31
(21)【出願番号】P 2018540864
(86)(22)【出願日】2017-02-03
(86)【国際出願番号】 IB2017050611
(87)【国際公開番号】W WO2017134627
(87)【国際公開日】2017-08-10
【審査請求日】2020-01-31
(31)【優先権主張番号】102016000011879
(32)【優先日】2016-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】505247498
【氏名又は名称】ティーエイチディー エス.ピー.エー.
【氏名又は名称原語表記】THD S.P.A.
【住所又は居所原語表記】Via dell’Industria,1, I-42015 Correggio(RE), Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100117422
【氏名又は名称】堀川 かおり
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】バスティア,フィリッポ
【審査官】中山 基志
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-527040(JP,A)
【文献】Research in Microbiology, 2012, Vol.163, p.109-113
【文献】JOURNAL OF CLINICAL MICROBIOLOGY, 1998, Vol.36, No.11, p.3285-3290
【文献】JOURNAL OF CLINICAL MICROBIOLOGY, 2007, Vol.45, No.2, p.303-305
【文献】World J Gastrointest Pathophysiol, 2011, Vol.2, No.3, p.35-41
【文献】Helicobacter, Vol.19, Supp.1, p.148, Abstract Number: P13.09.[online], 2014, [令和3年1月14日検索],Database EMBASE, DN:71612266
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q1/00-3/00
C12N15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体から単離された糞便試料中のヘリコバクター・ピロリ(Hp)を判定するためのおよび/またはクラリスロマイシンに対する前記ヘリコバクター・ピロリの耐性を判定するためのインビトロ方法であって、
I.個体から糞便試料を得るステップ、
II.前記試料からDNAを精製(単離)するステップ、および
III.前記クラリスロマイシンに対する前記耐性を担う少なくとも1つの突然変異部位を含むヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)の少なくとも1つの遺伝子の少なくとも1つの部分を増幅させるステップであって、前記増幅は、オリゴヌクレオチドの少なくとも1つのペア(プライマーのペア)および少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブを使用するリアルタイムPCRによって実施され、前記プライマーのペアは、前記突然変異を跨ぐDNA領域中でハイブリダイズし、それぞれのオリゴヌクレオチドプローブは、5’および3’末端において2つの異なるマーカーで標識されており、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブは、前記遺伝子の野生型アレルの少なくとも1つの遺伝子部分に相補的かつ特異的であり、および少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブは、前記クラリスロマイシン耐性を担う前記遺伝子の突然変異アレルの少なくとも1つの遺伝子部分に相補的かつ特異的である、ステップ、
IV.PCRサイクル閾値において、前記オリゴヌクレオチドプローブが標識されている前記マーカーのレベルを計測することにより、増幅された野生型および/または突然変異DNAを定量するステップであって、前記野生型アレルの前記少なくとも1つの遺伝子部分に相補的かつ特異的な前記プローブが標識されている前記マーカーのみの存在は、正常ホモ接合型ゲノタイプと、したがって前記クラリスロマイシンに耐性でない前記Hpの存在とを定義し、前記遺伝子の前記突然変異アレルの前記少なくとも1つの遺伝子部分に相補的かつ特異的な前記プローブが標識されている前記マーカーのみの存在は、突然変異ホモ接合型ゲノタイプと、したがって前記クラリスロマイシンに耐性である前記Hpの存在とを定義し、および両方のマーカーの存在は、前記遺伝子の野生型アレルおよび突然変異アレルを有するヘテロ接合型ゲノタイプと、したがって前記クラリスロマイシンに耐性である前記Hpの存在とを定義するステップを含み、前記突然変異は、23S rRNA遺伝子についてA2143G、A2142CおよびA2142Gから選択され、前記プライマーの1つのペアは、配列番号1又は2を増幅するための配列番号5及び6である方法。
【請求項2】
それぞれのオリゴヌクレオチドプローブは、前記5’末端において高強度蛍光マーカー(レポーター)で標識されており、かつ前記3’末端において非蛍光または低強度マーカー(クエンチャー)で標識されている請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マーカーは、VIC
(登録商標)、FAM
(商標)、HEX
(商標)、JOE
(商標)、NED
(商標)、SYBR(登録商標)、TAMRA
(商標)、TET
(商標)およびROX
(商標)から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記オリゴヌクレオチドプローブは、マイナーグルーブバインダー化学物質で修飾されている請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記オリゴヌクレオチドプローブは、配列番号13および/または14であり、
配列番号13および/または14は、前記プライマーのペア配列番号5および6と使用され、および配列番号13は、クラリスロマイシン耐性を担う前記突然変異を有さない配列番号1および/または2に相補的であり、かつ配列番号14は、A2143G、A2142CおよびA2142Gから選択されるクラリスロマイシン耐性を担う突然変異を有する配列番号1および/または2に相補的である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
個体から単離された糞便試料中のヘリコバクター・ピロリを判定するための、ならびに/またはA2143G、A2142CおよびA2142Gを含む群において選択される23S rRNA遺伝子の突然変異によって引き起こされるクラリスロマイシンに対する前記ヘリコバクター・ピロリの耐性を判定するためのキットであって、
-リアルタイムPCRにより、前記クラリスロマイシンに対する前記耐性を担う少なくとも1つの突然変異部位を含む少なくとも1つのヘリコバクター・ピロリ遺伝子の少なくとも1つの部分を増幅させるための少なくとも1つのプライマーのペアであって、前記23S rRNA遺伝子について配列番号5および6から選択される、少なくとも1つのプライマーのペア、および
-2つの異なるマーカーで標識された少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブであって、そのうちの少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブは、前記クラリスロマイシンに対する前記耐性を担う少なくとも1つの突然変異部位を含むヘリコバクター・ピロリの少なくとも1つの遺伝子の野生型アレルの少なくとも1つの部分に相補的かつ特異的であり、および少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブは、前記クラリスロマイシンに対する前記耐性を担う少なくとも1つの突然変異部位を含むヘリコバクター・ピロリの少なくとも1つの遺伝子の突然変異アレルの少なくとも1つの部分に相補的かつ特異的であり、前記オリゴヌクレオチドプローブは、配列番号13および/または14であり、前記プライマーのペア配列番号5および6と使用され、および配列番号13は、クラリスロマイシン耐性を担う前記突然変異を有さない配列番号1および/または2に相補的であり、かつ配列番号14は、A2143G、A2142CおよびA2142Gを含む群において選択されるクラリスロマイシン耐性を担う突然変異を有する配列番号1および/または2に相補的であるキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個体から単離された生物学的試料中のヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)を判定するためのインビトロ方法に関する。さらに、本発明の方法は、ヘリコバクター・ピロリの抗生物質耐性の判定も可能にする。
本発明のさらなる態様は、前記方法を実行するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘリコバクター・ピロリ(Hp)は、ヘリコバクター属に属する微好気性、好酸性の有鞭毛グラム陰性細菌である。
現在、Hpは、世界人口の約半数の胃にコロニー形成する細菌であり、消化性潰瘍およびMALTリンパ腫における病因論的因子、胃腺癌についてのリスク因子ならびに他の胃内および胃外型病変と関連する因子とみなされている。
Hp感染は、ある者が属する人種ではなく、低い社会経済状態に相関することが周知である。実際、Hp感染は、発展途上国において極めて蔓延している。この細菌の伝染様式は依然として不明であるが、しかし、経口または糞便-経口経路が最も可能性が高いと考えられている。
【0003】
Hp感染を診断する方法は、1)侵襲的方法、特に胃粘膜の生検採取を伴う内視鏡検査および後続の分析、ならびに2)非侵襲的方法、例えば呼気試験、糞便中の抗原についての試験または血液中の抗体についての試験として分類可能である。
最も一般的な非侵襲的方法の1つは、尿素呼気試験(UBT)である。この方法は、放射性炭素同位体で標識された尿素を含有する飲料を患者に飲用させることを必要とする。Hpの存在下において、ウレアーゼによって触媒される尿素は分裂し、呼気中のアンモニウムおよび顕著な二酸化炭素の形成および放出をもたらす。個体の呼気分析が顕著なCO2の存在を明らかにする場合、この試験は陽性であり、したがって個体はHpによって感染されているとみなされる。
血清学的試験は、Hpを標的化するIgG抗体を探索することを必要とする。しかし、これらの試験は、活動性感染を事前のHp感染から区別することを可能にしない。したがって、これらは、治療法の有効性のモニタリングについて理想的とみなされず、まして根絶を確認するための事後試験ともみなされない。
さらなる最小侵襲的方法は、糞便中の抗原(HpSA)についての試験に基づく。この場合、免疫酵素的試験が個体の糞便試料に対して実施される。
この方法は、呼気試験の妥当な代替試験であるが、特に治療法の効果を評価することが望まれる場合、低い感度および特異度を特徴とする。
Hp感染を根絶するための治療法に関して最も一般的なものとしては、抗生物質に伴うプロトンポンプ阻害剤(PPI)の投与が挙げられる。
特に、ファーストライン療法(ラインI)は、実際に、PPIおよびクラリスロマイシンの14日間の投与、次いでPPI、クラリスロマイシンおよびアモキシシリンまたはレボフロキサシンおよびメトロニダゾールの7~10日間の投与を提供する三重療法を含む。あるいは、連続療法が利用可能であり、それは、1グラム×2回のアモキシシリンおよびPPIの5日間の投与、次いで次の5日間の500mgのクラリスロマイシン×2回、PPIおよび500mg×2回のチニダゾールを提供する。
残念ながら、抗生物質に対する耐性がこの治療アプローチの成功の欠落にとって最も重要な因子である。特に、呼吸器疾病ならびに婦人科および寄生虫感染症の治療のためのクラリスロマイシンの広範な使用は、この抗生物質に対する一次抵抗を増加させている。
クラリスロマイシンは、多くのマクロライドと同様に、細菌リボソームの50Sサブユニットに結合することにより、その抗菌作用を展開する。この結合は、(酵素トランスロカーゼを遮断することにより)リボソームのA部位からP部位へのペプチドのトランスロケーションを妨害し、(酵素トランスフェラーゼを遮断することにより)ペプチド鎖の延長の阻害を引き起こす。
レボフロキサシンおよびアモキシシリンに対する耐性もかなり蔓延している。
Hpの根絶のためのレボフロキサシンの使用が一般的慣行であり、それは、クラリスロマイシンベース治療の不成功後の「セカンドライン療法」レジメにおけるその役割のためである。フルオロキノロンは、DNAのらせん構造の維持に不可欠な酵素であるDNAギラーゼ(トポイソメラーゼII)のAサブユニットに結合することにより、用量依存的細菌効果を付与する。感受性株において、レボフロキサシンは、DNA合成を遮断し、高用量においてRNA合成も遮断する。
【0004】
アモキシシリンは、アンピシリンと類似の活性を有するアミノペニシリンであり、胃液酸度に対する良好な安定性ならびにペニシリンおよびアンピシリンよりも大きい経口バイオアベイラビリティを特徴とする。ペニシリンと同様に、アモキシシリンは、細菌細胞壁に作用し、壁自体の剛性を確保するために必要な架橋の形成(ペプチド転移のプロセス)を妨害する。これは、ペプチド転移のプロセスを担う酵素であるトランスペプチダーゼと安定で不活性な複合体を形成する。アモキシシリンは、グラム陽性およびグラム陰性細菌の両方を含む作用スペクトルを有し、基本的に3つの耐性機序が存在する:
1)ベータラクタム環を開環させることによって抗生物質を不活性化させるベータラクタマーゼ酵素の産生、
2)分子に対する細菌の浸透性の低減、および
3)アモキシシリンに結合するタンパク質、またはペニシリン結合タンパク質(PBP)の改変。
アモキシシリンは、Hpを根絶するために使用すべき最初の抗生物質であり、その低い耐性率にも起因して依然として今日でも一般的な治療スキームで使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記に照らして、ヘリコバクター・ピロリを判定し得る技術、すなわち個体におけるこの細菌による感染の診断を可能にし、非侵襲的、経済的、迅速かつ診断精度の高い技術を有することが極めて必要とされ続けている。特に、試料中のヘリコバクター・ピロリの存在を判定することができ、細菌の抗生物質耐性を同時に評価し得る方法を有することが強く必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願人らは、個体から単離された生物学的試料に対してインビトロで実施され、分子分析、好ましくは突然変異の場合にヘリコバクター・ピロリによる感染を撲滅するための治療法において一般に使用される抗生物質、好ましくはクラリスロマイシン、レボフロキサシンおよびアモキシシリンに対する耐性を担うヘリコバクター・ピロリ遺伝子の突然変異部位を含む領域のゲノタイピングを提供する方法による、上記の必要性についての解決手段を見出した。
実際、本出願人らは、予測外にも、下記の方法が、多くの偽陽性を生じさせるために低い特異度を特徴とする現在利用可能な非侵襲的方法と比較して極めて信頼性が高いことを見出した。
【0007】
本発明の方法の特定の利点は、生物学的試料中のHpの存在、すなわちこの細菌による感染の判定の他、それが、同定されるHpの株が根絶療法において使用される抗生物質の1つに対する耐性を担う突然変異を担持するか否かの判定を同時に可能にすることである。したがって、本出願人らによって発明された方法を使用すると、単一の非侵襲的であり、迅速であり、感度および特異度が高い試験により、Hpによる感染を判定し、細菌の抗生物質耐性、好ましくはクラリスロマイシン、レボフロキサシンまたはアモキシシリンに対するこの耐性を判定することが可能である。
【0008】
したがって、本発明の方法は、治療的観点から非常に有利であることが示される。なぜなら、最も初期の段階から、細菌の根絶する目的に最も好適な治療に患者を誘導することができるためである。換言すると、患者は、最も初期の段階から、治療成功がより大きいアドホック治療を受ける。
本発明の方法はまた、医療サービスについての利点を有する。なぜなら、本発明は、種々の利用可能な薬理学的療法を用いる実際の根絶試行に基づく、細菌を根絶するために設計された現在利用可能な治療アプローチに伴う浪費の排除を見込むためである。
したがって、本発明の主題は、添付の独立請求項に規定されるとおり、ヘリコバクター・ピロリを判定/モニタリングするための、および/または特に治療目的のために一般に使用される抗生物質に対するヘリコバクター・ピロリの耐性を判定するための方法に関する。
さらに、本発明の主題は、添付の独立請求項に規定されるとおり、方法を実行するためのキットにさらに関する。
本発明の方法およびキットの好ましい態様は、添付の従属請求項に定義される。
本発明の追加の特徴および利点は、添付の図面も参照する以下の詳細な説明および例示的で非限定的な実施例からより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の方法の増幅ステップの実行の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、個体から単離された生物学的試料に対してインビトロで実施される、前記試料内のヘリコバクター・ピロリ(Hp)の存在を判定もしくはさらにモニタリングするための、および/または少なくとも1つの抗生物質に対するHpの耐性を判定するための方法であって、
(i)個体から単離された生物学的試料を得るステップ、
(ii)前記試料からDNAを精製(単離)するステップ、および
(iii)突然変異の場合に前記抗生物質に対する耐性を担う少なくとも1つのヌクレオチド部位を含むHp遺伝子の少なくとも1つの部分を増幅させるステップであって、前記増幅は、オリゴヌクレオチドの少なくとも1つのペア(プライマーのペア)および少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブを使用するPCR、好ましくはリアルタイムPCRによって実施され、プライマーのペアは、前記突然変異部位を跨ぐ核酸の領域中で対合し、前記オリゴヌクレオチドプローブは、2つの異なるマーカーで標識されており、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブは、少なくとも1つの正常部位を含むHp遺伝子の少なくとも1つの部分に相補的かつ特異的(すなわち、前記遺伝子の正常/非突然変異アレルに相補的)であり、および少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブは、前記抗生物質耐性を担う少なくとも1つの突然変異部位を含むHp遺伝子の少なくとも1つの部分に相補的かつ特異的(すなわち、前記遺伝子の突然変異アレルに相補的)である、ステップ(
図1を参照)、
(iv)2つのマーカーのレベルを計測することにより、増幅された正常および/または突然変異DNAを定量するステップであって、
- 増幅DNAの不存在は、試料中のHpの不存在を意味し、
- 前記遺伝子の野生型アレルに相補的かつ特異的なプローブが標識されているマーカーのみの存在は、正常ホモ接合型ゲノタイプと、したがって前記抗生物質に耐性でない前記Hpの存在とを定義し、
- 前記遺伝子の突然変異アレルに相補的かつ特異的なプローブが標識されているマーカーのみの存在は、突然変異ホモ接合型ゲノタイプと、したがって前記抗生物質に耐性である前記Hpの存在とを定義し、
- 両方のマーカーの存在は、前記遺伝子の野生型アレルおよび突然変異アレルを有するヘテロ接合型ゲノタイプと、したがって前記抗生物質に耐性である前記Hpの存在とを定義する、ステップを含む方法に関する。
【0011】
図1は、ステップ(iii)を図式化し、実際には、フォワードおよびリバースプライマーのペアは、突然変異の場合に抗生物質耐性を担う部位(それぞれDNAの鎖上)を跨ぐ。このペアは、抗生物質耐性の原因である突然変異部位を含有するHp遺伝子領域の増幅を可能にする。プローブのペアは、一方が、正常(野生型)、すなわち非突然変異遺伝子の領域と特異的にハイブリダイズし、他方が、突然変異を含有する遺伝子の領域とハイブリダイズするように選択される。この2つは、2つの異なるマーカーで標識されており、その結果、一方のマーカーまたは両方の検出がHpゲノタイプの判定を可能にし得る。細菌が試料に不存在である場合、プライマーが対合するDNAを見出さないため、増幅は生じないのは明らかである。ステップ(iv)に従って行う検出は、前記試料内に存在する任意のHpのゲノタイプを判定することを可能にし、前記ゲノタイプは、増幅遺伝子部分が突然変異を有さない場合、正常ホモ接合型であり、または増幅遺伝子部分が突然変異を有する場合、突然変異ホモ接合型であり、または増幅遺伝子部分の半分が非突然変異であり、半分が突然変異している場合、ヘテロ接合型である。
したがって、増幅産物の存在は、前記生物学的試料中のHp、したがってHpによる感染の存在を規定する一方、上記ゲノタイピングは、細菌が少なくとも1つの抗生物質に耐性であるか否かを判定することを可能にする。
【0012】
本発明が参照とする抗生物質は、Hp感染を治療上処置する目的のために個々にまたは組合せで一般に使用されるものである。好ましくは、抗生物質は、クラリスロマイシン、レボフロキサシン、アモキシシリン、メトロニダゾール、チニダゾール、テトラサイクリン、リファブチンおよびそれらの組合せを含む群において選択される。本発明の目的のため、好ましい抗生物質は、クラリスロマイシン、レボフロキサシン、アモキシシリンおよびそれらの組合せの中から選択され、最も好ましくはクラリスロマイシンである。
【0013】
本発明に関して、抗生物質に対する耐性は、細菌、この場合にはHpが、根絶療法において使用される抗生物質または抗生物質のプールに対して耐性になる機序を意味する。参照される抗生物質は上記のものである。
したがって、本発明の方法は、個体におけるHp感染を判定/モニタリングすること、および同時に任意の判定/モニタリングされるHp株の抗生物質耐性を判定することを可能にする。結果的に、本発明の方法は、Hp感染に伴う病変、とりわけ胃系を冒す病変、好ましくは胃炎、消化性潰瘍、胃癌、またはMALTリンパ腫、消化不良、鉄欠乏性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、および胃十二指腸外の病変の判定も可能にする。
【0014】
本発明の好ましい実施形態において、本方法は、個体から単離された糞便試料に対して実施される。
糞便試料は、個体自身によって回収することができ、すなわち、本方法のステップ(i)は、個体によって自主的に実施することができる。
一般に、糞便試料は、糞便の回収に好適な任意の装置を使用して回収される。好ましくは、装置は、糞便を回収し、可溶化手段を収容する可溶化チャンバ中でそれらを可溶化させるための部分を含む。可溶化手段は、好ましくは、PBSのような生理食塩溶液である。可溶化は、糞便試料の均一化を可能にし、好ましくは、例えばVortexミキサ上で数秒間(約30秒間)にわたり試料を激しく振盪させることによって実施/促進される。
糞便は、好ましくは、本発明の方法を実行するために適切な量の糞便の回収に好適なブラシを用いて回収される。特に、本発明の方法を実行するために回収すべき量(したがって、本方法の出発材料の量)は、150~250ミリグラム(mg)の範囲であり、好ましくは、それは約200mgの糞便である。
本発明の方法を実行する目的のため、約1mlの可溶化手段中で150~250mg、好ましくは約200mgの糞便を可溶化させることが望ましい。
可溶化チャンバは、好ましくは、濾過エレメントによって回収チャンバから離隔されている。このように、可溶化された糞便は、例えば、重力によって回収チャンバ中のフィルタを通過し得る。フィルタの細孔よりも大きい寸法の可溶化糞便の部分は、回収チャンバ中へ通過しない。濾過された糞便は、回収チャンバから、好ましくは貫通可能な膜を介して、例えばシリンジを用いて回収され得る。
【0015】
本発明の目的のため、濾過エレメントの細孔サイズは、好ましくは、100~200ミクロン(μm)、より好ましくは100~150μm、一層より好ましくは105~120μmの範囲であり、一層より好ましくは、それは約106μmである。したがって、通過する糞便の可溶化/濾過部分は、100~200μm以下、好ましくは100~150μm以下、より好ましくは105~120μm以下、より好ましくは約106μm以下の寸法を有する。
上記のとおり、個体から生物学的試料を得たら、または糞便を可溶化および/または濾過したら、生物学的試料または可溶化/濾過された糞便(以下、試料)を本方法のステップ(ii)に供する。
【0016】
DNAは、規定の目的のために一般に全ての当業者に公知の方法を使用して試料から抽出される。本発明の目的のため、好ましい抽出方法は、好ましくは、処理すべき試料との1:1の比のフェノール-クロロホルム溶液の使用を含む。
特に、本発明の抽出方法は、Trizolを試料に添加するステップを含む。好ましくは、Trizolと試料との比は、1:1である。次いで、Trizol:試料の混合物を好ましくは数秒間にわたり、例えばVortexミキサ上で均等に混合する。
【0017】
続いて、好ましくはクロロホルムをTrizol:試料の混合物に添加する。Trizol:試料の混合物の容量の1/10に等しいクロロホルムの量を添加することが好ましい。
好ましくは、Trizol:試料:クロロホルムの混合物を数秒間にわたり、例えばVortexミキサ上で均等に混合する。
好ましくは、均等に混合した後、Trizol:試料:クロロホルムの混合物を好ましくは遠心分離によって階層化する。10000~14000g、好ましくは約12000gにおいて、好ましくは約10分間の時間にわたり遠心分離することが望ましい。階層化は、好ましくは低温、より好ましくは約4℃において実施する。
【0018】
Trizol:試料:クロロホルムの混合物の階層化の終了時、通常、3相:水相、中間相およびフェノール相が得られる。
【0019】
本発明の目的のため、水相を廃棄することが好ましい。
したがって、DNAを混合物の残りの部分から、すなわち有機相を表す中間相およびフェノール相から沈殿させる。
沈殿は、好ましくは、アルコール、例えばエタノール、より好ましくは100%のエタノールを有機相に添加することによって達成される。
【0020】
次いで、沈殿したDNAを好ましくは例えば遠心分離によって沈降させる。好ましい遠心分離条件は、好ましくは低温、例えば約4℃において数分間にわたり約2000gである。
DNAが沈殿したら(実際には、DNAはペレットを形成する)、表面相を除去することが好ましく、沈殿したDNAを生理食塩溶液、例えばクエン酸ナトリウムにより、好ましくは少なくとも1回、より好ましくは2~3回処理する(このステップは、DNAペレットの洗浄の1種である)。このステップは、好ましくは室温において、より好ましくは約30分間にわたり実施する。
生理食塩溶液による全ての処理後、沈殿したDNAの沈降のステップを、好ましくは例えば約2000gにおける数分間の好ましくは低温(例えば、約4℃)での遠心分離によって行う。
【0021】
続いて、沈殿したDNAを好ましくはアルコール、例えばエタノール、好ましくは75%のエタノールで処理する。前記処理は、好ましくは約20~30分間にわたり、より好ましくは室温において実施する。
アルコールによる処理の終了時、沈殿したDNAを、好ましくは例えば約2000gにおける数分間の好ましくは低温(例えば、約4℃)での遠心分離によって沈降させる。
【0022】
次いで、沈殿したDNAを好ましくは乾燥させて、アルコールを完全に蒸発させる。
乾燥したDNAを好ましくはアルカリ溶液中、より好ましくはNaOH(例えば、NaOH 8mM)中で再懸濁させる。
ステップ(I)の終了時、最終遠心分離ステップを最大速度(約14000g)において10分間程度、好ましくは室温において実施することが好ましい。上清(すなわち沈殿しなかった部分)を移し、緩衝液、例えばHEPES-EDTAを好ましくはpH7~8においてそれに添加する。
【0023】
後続のステップ(iii)にDNAを使用する前、例えば全ての当業者に公知の技術(260/280nmの分光光度計による読取り、アガロースゲル上でのDNA試料の可視化など)により、上記精製DNAを定量的および/または定性的に評価することが望ましい。
【0024】
突然変異の場合に前記抗生物質に対する耐性を担う少なくとも1つのヌクレオチド部位を含むHp遺伝子の少なくとも1つの部分を増幅させるステップは、PCR、好ましくはリアルタイムPCR、より好ましくはTaqMan化学物質を用いるリアルタイムPCRによって行われる。
リアルタイムPCR系において、増幅(増幅された)産物の蓄積のモニタリングは、オリゴヌクレオチドプローブの標識によって可能になる。
【0025】
本方法のステップ(iii)において使用されるそれぞれのオリゴヌクレオチドプローブは、少なくとも2つの異なるマーカー、好ましくは蛍光で標識されている。特に、レポーターとして定義される高強度蛍光マーカー、例えば修飾フルオレセイン、および第2のマーカー、好ましくはクエンチャーと称される低強度または非蛍光マーカー、例えば修飾ローダミンである。
好ましくは、レポーターは、プローブの5’末端に結合しており、および/または好ましくは、クエンチャーは、プローブの3’末端に結合している。
【0026】
クエンチャーの非蛍光により、リアルタイムPCR系は、レポーター蛍光色素のインプットをより高精度で計測し得る。レポーターおよびクエンチャーが互いに近接(接近)している場合、プローブ自体(クエンチャー)がレポーターの蛍光を吸収し、したがってそれを計測することができない。実際、これらの条件下での唯一の検出可能な蛍光は、クエンチャーの低蛍光である。
【0027】
PCR中、それぞれのプローブは、プライマーのペア(フォワードプライマーおよびリバースプライマー、
図1を参照されたい)を跨ぐ領域中のその相補的配列との特異的アニーリング(対合)を遂行する。
DNAポリメラーゼは、標的DNAを複製するだけでなく、その5’-3’エンドヌクレアーゼ活性で、2つの蛍光マーカーを離隔し、したがってレポーターの発光を十分に検出可能にすることにより、それにハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドプローブも分解する。リアルタイムPCR中に複製した全てのDNAペアについて、レポーター分子(蛍光マーカー)の解放が生じることを考慮すると、増幅プロセス中に蓄積する相対蛍光は、増幅されたDNAの量に常に比例する。リアルタイムPCR反応の全持続期間にわたり、発光スペクトル収集プログラム、例えば配列検出システム(SDS)を介して、プログラムによって計測されるレポーターの蛍光の変動を増幅カイネティクスのリアルタイム表示に変換することが可能である。
系の「バックグラウンドノイズ」のわずかな変動に起因するのではなく、特異的増幅イベントに起因してレポーターの蛍光閾値に達するPCRサイクルは、反応の閾値サイクル(Ct)として定義される。本発明の方法において、標的DNAは、閾値サイクルにおいて、したがってPCR反応が指数関数増殖期である場合に定量される。
【0028】
一方がHp遺伝子の正常アレルについてのもの、および他方が突然変異アレルについてのもの(すなわちHpの抗生物質耐性を担う突然変異を担持するもの)である2つのオリゴヌクレオチドプローブは、2つの異なるレポーターで標識されており(発光する蛍光シグナルが異なる)、増幅されたアレルと、したがって細菌のゲノタイプとを追跡することが可能である。
したがって、増幅ステップは、細菌株のゲノタイピングを可能にし、すなわち、それは、不明試料のゲノタイプの判定を可能にする。本発明の増幅により、好ましくは単一ヌクレオチドの突然変異と関連する多型、すなわち点突然変異またはSNP(一塩基多型)を区別することが可能である。この場合、SNPは、突然変異の場合に抗生物質耐性を担うHp遺伝子内に収まる。あるいは、本発明の増幅は、前記ヌクレオチドが、正常タンパク質中に存在するものと異なるアミノ酸になるトリプレットの翻訳を決定する単一ヌクレオチドの突然変異を区別することを可能にする。
好ましくは、本発明に関して、一塩基多型(SNP)は、多型、すなわち単一ヌクレオチドに影響し、多型アレルが1%超の比率で集団中に存在するような遺伝子材料(DNA)の(遺伝的)変異を意味する。この閾値未満では、通常、レアバリアントと言われる。
好ましくは、遺伝的変異は、DNA中の塩基の置換、欠失または挿入によって引き起こされ得、コードおよび非コード領域を対象とし得る。多型遺伝子座は、集団の少なくとも2%がヘテロ接合型であるものである。これらの多型の結果は、タンパク質変異がそのタンパク質の機能も構造も変更しない場合、サイレントであり得る。あるいは、前記多型は、特に表現型の変化が観察される場合、例えばタンパク質が機能的に変更されている場合、非サイレント結果を有し得る。
【0029】
ゲノタイピングステップは、突然変異の場合に抗生物質耐性を担う部位を含むHp遺伝子の配列の少なくとも1つの部分を、前記部分の領域に相補的なオリゴヌクレオチドの少なくとも1つのペア(プライマーのペア)で増幅させることによって実施される。実際には、抗生物質耐性を引き起こす少なくとも1つの突然変異部位は、プライマーのペア間に収まり、すなわち、プライマーのペアで増幅する領域は、抗生物質耐性を担う少なくとも1つの突然変異部位を含有するHp遺伝子の配列の部分を含む。
前記遺伝子は、好ましくは、23S rRNA、gyrAおよびPBP-1の中から選択される。
23S rRNA遺伝子は、突然変異の場合にクラリスロマイシンに対する耐性を担う。特に、この場合、本発明の方法を用いると、クラリスロマイシン耐性のほとんどを担う23S rRNA遺伝子中に収まる最も広範な突然変異の少なくとも1つを判定することが可能である。好ましくは、クラリスロマイシン耐性を担う前記突然変異は、A2143G突然変異(すなわち2143位のアデニンがグアニンに改変されている)、A2142C突然変異およびA2142G突然変異の中から選択される。
【0030】
gyrA遺伝子は、突然変異の場合にレボフロキサシンに対する耐性を担う。特に、この場合、本発明の方法を用いると、その突然変異に起因して、リジンになる87位におけるアミノ酸アスパラギンに影響する突然変異の少なくとも1つを判定することが可能である。具体的には、87位において、2つの正常(野生型)バリアント、すなわちアミノ酸アスパラギンをコードするAACトリプレットまたはAATトリプレットが存在し得る。これらのトリプレットの3番目の塩基に影響し、それらをAAAまたはAAGに変形させる突然変異は、リジンによるアスパラギンの置換をもたらす。したがって、好ましくは、レボフロキサシン耐性を担う前記突然変異は、C261AおよびC261G突然変異から選択される。
【0031】
さらに、本発明の方法を用いると、突然変異に起因して、グリシン、またはアスパラギン、またはアラニン、またはチロシンになる91位におけるアスパラギン酸に影響する突然変異を判定することが可能である。
具体的には、91位におけるトリプレット、すなわちGAT配列(アスパラギン酸をコードする)は、最初のヌクレオチド塩基の部位において、GGTトリプレット(グリシンをコードする)またはTATトリプレット(チロシンをコードする)で置換される。
したがって、本発明の方法を用いて判定されるレボフロキサシン耐性を担う突然変異は、好ましくは、G271A、G271TおよびA272Gから選択される。
【0032】
PBP-1遺伝子は、突然変異の場合にアモキシシリンに対する耐性を担う。特に、この突然変異は、413位におけるアルギニンによるセリンのアミノ酸置換(Ser-413Arg)を引き起こす。セリンをコードするAGCトリプレットが3番目の塩基において突然変異され得、アルギニンをコードするトリプレットAGAまたはAGGになり得る。
好ましくは、本発明の方法を用いて判定されるアモキシシリン耐性を担う突然変異は、C413AおよびC413Gの中から選択される。
【0033】
特に、Hp遺伝子配列の前記増幅部分は、配列番号1~4の中から選択され、配列番号1および/または2は、23S遺伝子を指し、配列番号3は、gyrA遺伝子を指し、および配列番号4は、PBP-1遺伝子を指す。
好ましくは、プライマーのペアは、配列番号5および配列番号6を含む。前記プライマーのペアは、配列番号1および/または2の配列、すなわちHpのクラリスロマイシン耐性を担う突然変異部位の少なくとも1つを含むHpの23S rRNA遺伝子の配列の部分の増幅を可能にする。
あるいは、プライマーのペアは、配列番号9および配列番号10を含む。前記プライマーのペアは、配列番号3の配列、すなわちHpのレキソフロキサシン(lexofloxacin)耐性を担う突然変異部位の少なくとも1つを含むHpのgyrA遺伝子の配列の部分の増幅を可能にする。
【0034】
あるいは、プライマーのペアは、配列番号13および配列番号14を含む。前記プライマーのペアは、配列番号4の配列、すなわちHpのアモキシシリン耐性を担う突然変異部位の少なくとも1つを含むHpのPBP-1遺伝子の配列の部分の増幅を可能にする。
【0035】
任意に、単一増幅反応において2つ以上のプライマーのペアを使用して2つ以上のHpの抗生物質耐性を同時に判定/モニタリングすること、特にHp株のクラリスロマイシン耐性、および/またはレキソフロキサシン(lexofloxacin)耐性、および/またはアモキシシリン耐性を判定/モニタリングすることができる。
増幅は、プライマーのペアに加え、少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブを使用して実施される。それぞれのオリゴヌクレオチドプローブは、一端、好ましくは5’末端において高強度マーカー(レポーター)で標識されており、かつ他端、好ましくは3’において非蛍光または低強度マーカー(クエンチャー)で標識されている。さらに、2つのオリゴヌクレオチドプローブのうちの一方は、前記遺伝子の正常アレルに相補的かつ特異的であり、および一方は、前記抗生物質耐性を担う突然変異アレルに相補的かつ特異的である(
図1を参照されたい)。
【0036】
オリゴヌクレオチドプローブは、好ましくは、FAM(商標)(赤色蛍光を有する)、VIC(登録商標)(緑色蛍光を有する)、HEX(商標)、JOE(商標)、NED(商標)、SYBR(登録商標)、TAMRA(商標)、TET(商標)およびROX(商標)の中から選択されるマーカーで標識されている。
【0037】
上記に十分に説明されるとおり、これらの2つの蛍光マーカーが同一のオリゴヌクレオチドプローブ上に存在する場合、クエンチャーは、レポーターによって発光される蛍光を封鎖する(吸収する)一方、それらが離隔している場合、例えばDNAポリメラーゼによる分解の結果として生じる場合、レポーターの蛍光は、クエンチャーによって吸収されず、したがって検出/計測することができる。
【0038】
したがって、本発明に関して、クエンチャーは、レポーターの蛍光を消光し、したがってプローブがインタクトである場合、それ自体の蛍光のみが計測可能である低エネルギー蛍光マーカー(フルオロフォア、例えば修飾ローダミン)を意味する。好ましくは、プローブは、マイナーグルーブバインダー(MGB)化学物質を有するTaqManプローブである。マイナーグルーブバインダー化学物質を有するプローブは、プローブが少なくとも2つの異なる蛍光物質、例えばVICおよびFAMで標識されている系を意味する。この化学物質は、プローブの融解温度(商標)を、それらの長さを増加させずに増加させることを可能にし、したがって短鎖プローブを設計することができる。
【0039】
好ましくは、プローブは、配列番号13~23の中から選択される。
特に、配列番号13および/または配列番号14は、プライマーのペア配列番号5および配列番号6と使用され、配列番号13は、抗生物質耐性を担う突然変異を有さない23S rRNA遺伝子、好ましくは配列番号1および/または2の少なくとも1つの部分に相補的であり、かつ配列番号14は、好ましくはA2143G突然変異、A2142C突然変異およびA2142G突然変異の中から選択される抗生物質耐性を担う突然変異を担持する23S rRNA遺伝子、好ましくは配列番号1および/または2の少なくとも1つの部分に相補的である。または配列番号3は、正常アレルに特異的であり、かつ配列番号4は、クラリスロマイシン耐性を担う突然変異を担持するものに特異的である。
【0040】
好ましくは、配列番号15、16、17およびそれらの組合せの中から選択される少なくとも1つのプローブは、プライマーのペア配列番号7および8と使用される。特に、配列番号15~17は、レボフロキサシン耐性を担う突然変異部位の少なくとも1つを含有する配列番号3の配列の部分に相補的かつ特異的である。配列番号15は、gyrA遺伝子の正常アレルに特異的であり、かつ配列番号16および17は、Asn87Lys突然変異に特異的である。
【0041】
好ましくは、配列番号18、19、20およびそれらの組合せの中から選択される少なくとも1つのプローブは、プライマーのペア配列番号9および10と使用される。特に、配列番号18~20は、レボフロキサシン耐性を担う突然変異部位の少なくとも1つを含有する配列番号3の部分に相補的かつ特異的である。配列番号18は、gyrA遺伝子の正常アレルに特異的であり、かつ配列番号19および20は、Asp91Gly突然変異およびAsp91Tyr突然変異にそれぞれ特異的である。
【0042】
好ましくは、配列番号21、22、23およびそれらの組合せの中から選択される少なくとも1つのプローブは、プライマーのペア配列番号11および12と使用される。特に、配列番号21~23は、アモキシシリン耐性を担う突然変異部位の少なくとも1つを含有する配列番号4の配列の部分に相補的かつ特異的である。配列番号21は、PBP-1遺伝子の正常アレルに特異的であり、かつ配列番号22および23は、Ser413Arg突然変異に特異的である。
【0043】
本発明の方法において使用される配列を表Iに示す。特に、表は、配列の配列番号、本発明の方法において機能を考慮する配列の名称および配列自体を示す。
本発明の配列を添付の配列表に提供する。添付の配列表に含有される配列は、詳細な説明に組み込まれるものと理解すべきである。
本発明の主題は、表Iに列記され、添付の配列表に全体として記載される配列番号1~23と少なくとも70%、80%、85%、90%、または95%の同一性を特徴とする配列も含むとみなすべきである。
【表1】
【0044】
本発明の方法によれば、同一の増幅反応において少なくとも2つの異なる標識プローブが存在し、それぞれは、異なるフルオロフォアを有し、それぞれは、突然変異の場合に抗生物質耐性を引き起こすアレルの1つに相補的である。したがって、2つのフルオロフォアの1つの特異的波長における蛍光の増加は、その所与のアレルについてのホモ接合型の状態と同等である一方、両方の波長における蛍光の発光は、ヘテロ接合型の状態と同等である。
【0045】
本発明の主題は、本発明による方法を実行するためのキット、すなわち個体におけるHp感染を判定/モニタリングし、同時にそのHp株の抗生物質耐性を判定するためのキットにさらに関する。結果的に、キットは、Hp感染に伴う病変、とりわけ胃系を冒す病変、好ましくは胃炎、消化性潰瘍、胃癌、またはMALTリンパ腫、消化不良、鉄欠乏性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、および胃十二指腸外の病変の判定も可能にする。
【0046】
本発明の一実施形態において、本発明のキットは、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドのペア(プライマーのペア)および少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブを含み、プライマーのペアは、抗生物質に対する耐性を担う少なくとも1つの突然変異部位を含む少なくとも1つのHp遺伝子のDNA領域中で対合し、特に前記少なくとも1つの突然変異部位を跨ぎ、前記オリゴヌクレオチドプローブは、2つの異なるマーカーで標識されており、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブは、前記遺伝子の正常アレルの遺伝子の領域の部分に相補的かつ特異的であり、および少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブは、前記抗生物質耐性を担う前記遺伝子の突然変異アレルの遺伝子の領域の部分に相補的かつ特異的である。
【0047】
本発明の好ましい実施形態において、個体から単離された生物学的試料中のHpを判定するための、ならびに/またはA2143G、A2142CおよびA2142Gを含む群において選択される23S rRNA遺伝子の突然変異によって誘発されるクラリスロマイシンに対する、かつ/もしくはC261A、C261G、G271A、G271T、A272Gを含む群において選択されるgyrA遺伝子の突然変異によって引き起こされるレボフロキサシンに対する、かつ/もしくはC413AおよびC413Gを含む群において選択されるPBP-1遺伝子の突然変異によって誘発されるアモキシシリンに対する前記Hpの耐性を判定するためのキットは、
- リアルタイムPCRにより、前記抗生物質に対する耐性を担う少なくとも1つの突然変異部位を含む少なくとも1つのHp遺伝子の少なくとも1つの部分を増幅させるための少なくとも1つのプライマーのペアであって、23S rRNA遺伝子について配列番号5および6の中から、gyrA遺伝子について配列番号9および10の中から、かつpbp-1遺伝子について配列番号13および14の中から選択される、少なくとも1つのプライマーのペア、および
- 2つの異なるマーカーで標識された少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブであって、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブは、前記抗生物質に対する耐性を担う少なくとも1つの突然変異部位を含む少なくとも1つのHp遺伝子の正常アレルの少なくとも1つの部分に相補的かつ特異的であり、および少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブは、前記抗生物質に対する耐性を担う少なくとも1つの突然変異部位を含む少なくとも1つのHp遺伝子の突然変異アレルの少なくとも1つの部分に相補的かつ特異的であり、前記オリゴヌクレオチドプローブは、配列番号13~23を含む群において選択される、少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブ
を含み、
- 配列番号13および/または14は、プライマーのペア配列番号5および6と使用され、および配列番号13は、クラリスロマイシン耐性を担う突然変異を有さない23S rRNA遺伝子、好ましくは配列番号1および/または2の少なくとも1つの部分に相補的であり、かつ配列番号14は、A2143G、A2142CおよびA2142Gを含む群において選択されるクラリスロマイシン耐性を担う突然変異を有する23S rRNA遺伝子、好ましくは配列番号1および/または2の少なくとも1つの部分に相補的であり、
- 配列番号15、16および17は、プライマーのペア配列番号7および8と使用され、および配列番号15は、レボフロキサシン耐性を担う突然変異を有さないgyrA遺伝子、好ましくは配列番号3の少なくとも1つの部分に相補的であり、配列番号16および/または17は、レボフロキサシン耐性を担うAsn87Lys突然変異を有するgyrA遺伝子、好ましくは配列番号3の少なくとも1つの部分に相補的であり、
- 配列番号18、19および20は、プライマーのペア配列番号9および10と使用され、および配列番号18は、レボフロキサシン耐性を担う突然変異を有さないgyrA遺伝子、好ましくは配列番号3の少なくとも1つの部分に相補的であり、配列番号19は、Asp91Gly突然変異を有するgyrA遺伝子の少なくとも1つの部分に相補的であり、かつ/または配列番号20は、レボフロキサシン耐性を担うAsp91Ty突然変異を有するgyrA遺伝子、好ましくは配列番号3の少なくとも1つの部分に相補的であり、
- 配列番号21、22および23は、プライマーのペア配列番号11および12と使用され、および配列番号21は、アモキシシリン耐性を担う突然変異を有さないpbp-1遺伝子、好ましくは配列番号4の少なくとも1つの部分に相補的であり、かつ配列番号22および/または23は、アモキシシリン耐性を担うSer413Arg突然変異を有するpbp-1遺伝子の少なくとも1つの部分に相補的である。
【0048】
任意にに、キットにおいて、少なくとも1つの酵素および少なくとも1つの緩衝液、例えば酵素、例えばDNAポリメラーゼ、ヌクレオチド、陽性対照配列、陰性対照配列なども存在する。
<実施例>
【0049】
細菌DNAの抽出
約200mgの糞便を2mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で可溶化させた。
続いて、可溶化した糞便をVortexミキサ上で約30秒間振盪させることによって均一化した。
次いで、500μlのホモジネートを無菌シリンジで抜き取り、新たな1.5mlの試験管中に移した。500μlのトリアゾル(Triazol)をホモジネートに添加し、それを数秒間にわたり激しく混合した。
続いて、100μlのクロロホルムをホモジネート-トリアゾル(Triazol)の混合物に添加し、それを15秒間にわたり激しく混合し、12000gにおいて4℃で15分間にわたり遠心分離した。
この処理は、3つの区別される相:水相(表面)、中間相(中間)およびフェノール相(底部)の形成をもたらす。
水相を廃棄する。
DNAを含有する残りの相(中間相およびフェノール相)に150μlの100%のエタノールを添加する。試料を反転によって混合し、室温において2~3分間インキュベートする。
続いて、DNAを2000gにおいて4℃で2分間にわたり遠心分離することによって沈降させる。
次いで、タンパク質を含有する表面相を除去し、1mlのクエン酸ナトリウムをDNAペレットに添加し、それを室温において30分間インキュベートする。この処理後、試料を2000gにおいて4℃で5分間にわたり遠心分離し、上清を除去する。
このクエン酸ナトリウムステップを2回繰り返す。
次いで、2mlの75%のエタノールをペレットに添加し、それを室温において20分間インキュベートし、2000gにおいて4℃で5分間にわたり遠心分離する。エタノールを完全に除去し、DNAペレットを15~20分間乾燥させておく。
DNAペレットを500μlの8mMのNaOH中で溶解させる。次いで、溶解させた試料を14000gにおいて室温で10分間にわたり遠心分離して不溶性材料を除去する。遠心分離ステップの終了時、上清を新たな試験管中に移し、DNAを60μlの0.1MのHEPESおよび5.5μlの100mMのEDTA中で再懸濁させる。
【0050】
ヘリコバクター・ピロリの23S rRNA配列の一次アセンブリ(ヌクレオチド配列)
配列番号1は、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)の23S rRNA遺伝子のヌクレオチド配列である。
この配列は、クラリスロマイシンに対する耐性を担う点突然変異の部位である。
ゲノタイピング実験は、不明試料のゲノタイプの判定に使用される終点実験である。このタイプの実験を用いると、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)の場合のように、単一ヌクレオチドの突然変異に起因する多型(SNP)を区別することが可能である。
特にクラリスロマイシンに対する耐性の場合、ゲノタイピング実験は、不明試料が、
・Aについてホモ接合型(突然変異を担持しないヌクレオチド配列を有する試料)であるか、
・Gについてホモ接合型(突然変異を担持するヌクレオチド配列を有する試料)であるか、
・ヘテロ接合型(一方のアレル上の突然変異を担持し、他方のアレル上の突然変異を担持しないヌクレオチド配列を有する試料)であるか
を判定する目的を有する。
【0051】
ゲノタイピング実験のためのPCR反応は、以下の構成要素を含む:
・陰性対照 - 試料の代わりに水または緩衝液を含有する標本(テンプレートなしの対照(NTC)としても公知)。陰性対照は、増幅を受けないはずである。
・陽性対照 - 既知のゲノタイプを含有する標本。
・試料 - 標的ゲノタイプが既知でない標本。
・レプリケート - 同一の構成要素および容量を含有する同一反応物。
【0052】
ゲノタイピング実験は、2つのステップ:
(i)熱サイクル(PCR増幅)、および
(ii)シグナル終点検出
を必要とする。
ラージスケールでの突然変異のゲノタイピングのため、TaqMan(登録商標)化学物質を用いるリアルタイムPCRの方法を使用した。標的配列は、好適なプライマーで予備増幅させなければならない。2つのプライマー間に位置するプローブは、目的の突然変異を含有する配列を同定する。
【0053】
配列番号2、すなわちHpのクラリスロマイシン耐性を誘発するA/G突然変異の位置を含有する23S rRNA遺伝子のDNA配列の部分を以下に示す。
プライマーの位置を太字で示し、プローブを灰色で強調する。理解され得るとおり、プライマーは、クラリスロマイシン耐性を担うと考えられる突然変異の部位を含有する領域を跨ぎ、プローブは、考えられる突然変異の部位が存在するこの領域の部分に正確に相補的である(すなわち、それと対合する)。
【化1】
【0054】
したがって、PCRに使用されるプライマーは、以下のとおりである。
【表2】
使用されるプローブは、以下のものである。
【表3】
特に、フルオロフォアVICで標識されたプローブを使用して塩基Aを区別した一方、フルオロフォアFAMで標識されたプローブを使用して塩基Gを区別した(突然変異の場合)。
2アレル系において、対象の場合のように、同一反応において異なるフルオロフォア(この場合、正常アレルについてFAM(商標)および突然変異アレルについてVIC(商標))で標識された2つの異なるプローブが存在し、それぞれは分析中のSNPのアレルの1つに相補的である。対合(アニーリング)段階中、プローブのそれぞれは、その特異的鎖とハイブリダイズする。結果は、その所与のアレルについてのホモ接合型の状態と同等の2つの蛍光マーカー(フルオロフォア)の1つの特異的波長における蛍光の増加である一方、両方の波長における蛍光発光は、ヘテロ接合型の状態と同等である。
【0055】
一般に、アレル区別アッセイは、それらが品質管理試験をパスする場合にのみ合成する:
・正確な合成を確認するため、それぞれのプライマーおよびそれぞれのオリゴヌクレオチドプローブが質量分析によって個々に試験され、
・少なくとも1つの容易に解釈可能なアレル区別クラスタ、すなわち組成および/または位置の観点から互いに類似または近い少なくとも1つの単位群を産生しなければならず、例えば、この場合、それは同一の遺伝子構成を有する遺伝子クラスタまたは類似もしくは密接に相関する産物の群(例えば、突然変異ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter p.)を示す試料の群および/または正常/野生型ヘリコバクター・ピロリを有する群)であり、
・プライマーおよびオリゴヌクレオチドプローブが性能標準に達し得ないアッセイは、品質管理試験をパスせず、
・関連SNPに並行する配列は、フォーマット化され、バリデートされ、かつ順序付けられている。
【0056】
前記のとおり、ゲノタイピング実験において、PCRは、それぞれのアレルについての蛍光マーカー(フルオロフォア)で標識された特異的プローブ(多型の部位を含む短いヌクレオチド配列)を含む。プローブは、それぞれのアレルを区別する目的のために異なる高強度蛍光マーカー(蛍光レポーター)をそれぞれ含有する。
【0057】
本出願人らが所有するApplied Biosystems 7900HTシステム上でTaqMan(登録商標)マイナーグルーブバインダー(MGB)プローブを使用することが可能である。
それぞれのMGB TaqMan(登録商標)プローブは、
・全てのプローブの5’末端における蛍光色素レポーターであって、
- この場合、蛍光色素VIC(登録商標)は、野生型アレルのプローブの5’末端に結合しており、
- 蛍光色素FAM(商標)は、突然変異アレルのプローブの5’末端に結合している、蛍光色素レポーター、
・マイナーグルーブバインダー(MGB)(MGB化学物質は、プローブの融解温度(Tm)をそれらの長さを増加させずに増加させ(Afonina et al.,1997;Kutyavin et al.,1997)、したがってより短鎖のプローブの設計を可能にする。したがって、TaqMan MGBプローブは、対合および非対合プローブ間のTmの値のより大きい差を示し、Tmの値のより大きい差は正確なゲノタイピングを提供する)、
・プローブの3’末端における非蛍光クエンチャー(NFQ)
を含有する。
対象の場合において、以下の量の試料をそれぞれのウェルについて添加した96ウェル光学式読取プレート上でリアルタイムPCRを設定した。
【表4】
【0058】
TaqMan(登録商標)Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems,Foster City,CA)は、緩衝液、dNTPおよびTaq Gold Polymeraseを含有する。
SNPゲノタイピングアッセイは、2つのプライマー(フォワードおよびリバース)およびそれぞれのアレルについて特異的な2つのプローブを含有し、プローブの一方は、5’末端において蛍光マーカーFAM(商標)(赤色蛍光を有する)で標識されており、他方は、蛍光マーカーVIC(登録商標)(緑色蛍光を有する)で標識されている。
【0059】
DNAを以下の実験条件下で増幅させた:
- 60℃において1分間、プレリード:初期の蛍光の発光を検出するため、
- 50℃において2分間、
- 95℃において10分間、
- 95℃において15秒間、
- 60℃において1分間、40サイクル、
- 60℃において1分間、ポストリード:3つの異なるゲノタイプのクラスタリングを検出するため。
提供されるSDSソフトウェアを使用して結果を分析し、読み取った。
上記試験を、H.p.感染の診断に現在利用可能な侵襲および非侵襲試験と比較することにより、本方法の感度および特異度を評価した。
Hpについて組織学的に陽性である患者群を分析した。
この目的のため、上記方法を、現在、Hpの診断における判断基準とみなされている試験、すなわち組織学的試験、および組織から抽出されたDNAと比較した。72人のHp陽性患者を分析した。
パラフィン中で封入された組織から細菌DNAを抽出し、耐性を担う突然変異の同定のために上記分子分析に供した。
2つの分子分析間の一致率は100%であった。
分子分析によってのみ検出可能であった数例の偽陰性の存在を考慮すると、組織学的診断との一致率は92%であった。
【0060】
本出願人らの試験と、糞便抗原(Ag)についての試験との比較は、68%の一致率を示した。
したがって、本発明の分子的方法は、使用される組織学的試験および他の方法(糞便Ag)から生じる数例であるが有意な偽陰性の同定も可能にした。
A2143G突然変異の頻度は26%であり、文献中のデータと一致した。
【表5】
【配列表】