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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】相関電子材料デバイスの製作及び動作
(51)【国際特許分類】
   H01L 45/00 20060101AFI20220127BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20220127BHJP
   H01L 49/00 20060101ALI20220127BHJP
   H01L 51/05 20060101ALI20220127BHJP
   H01L 51/30 20060101ALI20220127BHJP
   H01L 21/8239 20060101ALI20220127BHJP
   H01L 27/105 20060101ALI20220127BHJP
   G11C 13/00 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
H01L45/00 Z
C23C16/455
H01L49/00 Z
H01L29/28 100B
H01L29/28 250F
H01L27/105 448
G11C13/00 215
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018557221
(86)(22)【出願日】2017-01-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-04
(86)【国際出願番号】 GB2017050184
(87)【国際公開番号】W WO2017129972
(87)【国際公開日】2017-08-03
【審査請求日】2020-01-24
(31)【優先権主張番号】15/006,889
(32)【優先日】2016-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/046,177
(32)【優先日】2016-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/385,719
(32)【優先日】2016-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521053374
【氏名又は名称】ケルフィ・ラボズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】カルロス・アルベルト・パス・デ・アラウホ
(72)【発明者】
【氏名】ヨランタ・ボゼナ・チェリンスカ
(72)【発明者】
【氏名】キンバリー・ゲイ・リード
(72)【発明者】
【氏名】ルシアン・シフレン
【審査官】西出 隆二
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-522424(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0175355(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0030436(US,A1)
【文献】特開2012-057254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 45/00
C23C 16/455
H01L 49/00
H01L 51/05
H01L 51/30
H01L 21/8239
G11C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ内において、第1の堆積期間中に、遷移金属酸化物若しくは遷移金属又はこれらの任意の組合せ及び第1の配位子を含む、1種又は複数の気体に基材を曝露する工程であって、1種又は複数の気体が、製作された電子逆供与性で実質的にバルクスイッチの相関電子材料中において0.1%~10.0%の間である窒素の原子濃度をもたらすように窒素を含む配位子原子濃度を含む、工程
前記第1の堆積期間中に、気体状酸化物に基材を曝露して、少なくとも相関電子材料のフィルムの第1の層を形成する工程、
第1のアニーリング期間中に、前記曝露された基材をアニーリングする工程、
前記第1のアニーリング期間に続いて、第2の堆積期間中に、互いに実質的に相違する第1のインピーダンス状態及び第2のインピーダンス状態を示す相関電子材料のフィルムの少なくとも1つの更なる層を形成するように、1種又は複数の気体及び気体状酸化物に基材を曝露する工程を繰り返す工程、並びに、
第2のアニーリング期間中に前記曝露された基材をアニーリングする工程であって、前記相関電子材料のフィルムに更なる材料を少なくとも部分的に導入し、前記相関電子材料のフィルムにおける電子逆供与を促進する、工程、
を含む方法。
【請求項2】
電子逆供与性で実質的にバルクスイッチの相関電子材料が、アンモニア(NH)、エチレンジアミン(C)、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)、NO 配位子、アミン、アミド若しくはアルキルアミド又はこれらの任意の組合せを含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の堆積期間中に、5.0秒~180.0秒の間にわたって1種又は複数の気体のチャンバをパージする工程を更に含む、請求項又はに記載の方法。
【請求項4】
前記第1の堆積期間中に、1種又は複数の気体に基材を曝露する工程が、5.0秒~180.0秒の間の持続期間にわたって実施される、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の堆積期間中に、基材を曝露する工程を50~900回の間で繰り返す工程を更に含む、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の堆積期間中に、相関電子材料のフィルムの厚さが1.5nm~150.0nmの間に到達するまで基材を曝露する工程を繰り返す工程を更に含む、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
1種又は複数の気体が、気体状態のニッケルアミジネート(Ni(AMD))、ニッケルジ(シクロペンタジエニル)(Ni(Cp))、ニッケルジ(エチルシクロペンタジエニル)(Ni(EtCp))、ビス(2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオナト)Ni(II)(Ni(thd))、ニッケルアセチルアセトネート(Ni(acac))、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ニッケル(Ni(CH)、ニッケルジメチルグリオキシメート(Ni(dmg))、ニッケル2-アミノ-ペンタ-2-エン-4-オナト(Ni(apo))、Ni(dmamb)(式中、dmamb=1-ジメチルアミノ-2-メチル-2-ブタノレート)、Ni(dmamp)(式中、dmamp=1-ジメチルアミノ-2-メチル-2-プロパノレート)、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ニッケル(Ni(C(CH)5))若しくはニッケルカルボニル(Ni(CO))又はこれらの任意の組合せを含む、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
気体状酸化物が、酸素(O)、オゾン(O)、水(HO)、一酸化窒素(NO)、亜酸化窒素(NO)若しくは過酸化水素(H)又はこれらの任意の組合せのうちの1つ又は複数を含む、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の堆積期間中に、1種又は複数の気体に基材を曝露する工程及び気体状酸化物に基材を曝露する工程が、20.0℃~1000.0℃の間の温度で実施される、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
第2のアニーリング期間中に前記曝露された基材をアニーリングする工程が、チャンバ内において、曝露された基材をアニーリングする工程を含む、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のアニーリング期間中に前記曝露された基材のアニーリングを開始する前に、20.0℃~900.0℃の間にチャンバの温度を上昇させる工程を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
曝露された基材が、気体状窒素(N)、水素(H)、酸素(O)、水若しくは水蒸気(HO)、一酸化窒素(NO)、亜酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)、オゾン(O)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、アンモニア(NH)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH)、アセチレン(C)、エタン(C)、プロパン(C)、エチレン(C)若しくはブタン(C10)又はこれらの任意の組合せのうちの1つ又は複数を含む環境下で前記第2のアニーリング期間中にアニーリングされる、請求項から11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技法は一般に、相関電子デバイスに関し、より特定すると、スイッチ及び記憶回路等において利用され得る、望ましいインピーダンス特性を示すことができる相関電子デバイスを製作する手法に関し得る。
【背景技術】
【0002】
電子スイッチングデバイス等の集積回路デバイスは、例えば、多種多様な電子デバイスの類型において認めることができる。例えば、記憶デバイス及び/又は論理デバイスは、コンピュータ、デジタルカメラ、スマートフォン、タブレットデバイス及び携帯情報端末等における使用に適した電子スイッチを組み込むことができる。電子スイッチングデバイスに関する要素は、電子スイッチングデバイスが特定の用途に適しているかどうかを考慮するときに設計者が着目し得るが、例えば物理的なサイズ、記憶密度、動作電圧、インピーダンス範囲及び/又は電力消費を挙げることができる。設計者が着目し得る他の要素としては、例えば、製造コスト、製造の容易さ、スケーラビリティ及び/又は信頼性を挙げることができる。更に、より低い電力及び/又はより高い速度という特性を示す記憶デバイス及び/又は論理デバイスの必要性が増々高まっているように思われる。しかしながら、従来の製作法は、特定の種類の記憶デバイス及び/又は論理デバイスには良く適合し得るが、相関電子材料を利用するデバイスの製作における使用には適さないことがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
特許請求された主題は、本明細書の最後にある部分において、特に指摘されており、明確に特許請求されている。しかしながら、下記の詳細な記述を参照し、添付の図面も一緒に読むことにより、特許請求された主題は、操作の構成と操作の方法との両方に関しては、特許請求された主題の目的、特徴及び/又は利点と併せて、最も良く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1A】一実施形態による相関電子材料から形成されたデバイスに関する、電圧プロファイルに対比させた電流密度の説明図である。
図1B】相関電子材料を含むスイッチングデバイスの一実施形態の説明図及び相関電子材料スイッチの等価回路の概略図である。
図2】導電性材料の間に形成された遷移金属酸化物フィルム中のフィラメントを含むスイッチングデバイスの一実施形態の説明図である。
図3A】一実施形態による相関電子材料中の金属-カルボニル含有分子のσ結合及びπ結合を介した電子供与及び逆供与を図示する説明図である。
図3B】一実施形態による相関電子材料中の金属-カルボニル含有分子のσ結合及びπ結合を介した電子供与及び逆供与を図示する説明図である。
図3C】一実施形態による相関電子材料中の金属-カルボニル含有分子のσ結合及びπ結合を介した電子供与及び逆供与を図示する説明図である。
図3D】一実施形態による相関電子材料中の金属-カルボニル含有分子のσ結合及びπ結合を介した電子供与及び逆供与を図示する説明図である。
図3E図3A図3Dのカルボニル分子によって補填され得る、一実施形態による相関電子材料中にある酸素空格子点の形態の欠陥を含む代表的な酸化ニッケル錯体を示す図である。
図4A】支配的な配位子としての酸素を含む一実施形態によるニッケルを主体とした相関電子材料における、状態密度に対比させたエネルギーを図示するグラフである。
図4B】支配的な配位子としての酸素を含む一実施形態によるニッケルを主体とした相関電子材料における、状態密度に対比させたエネルギーを図示するグラフである。
図5】相関電子材料を製作するための方法の一実施形態の流れ図である。
図6A】1つ又は複数の実施形態による相関電子材料フィルムを製作するための方法の流れ図である。
図6B】1つ又は複数の実施形態による相関電子材料フィルムを製作するための方法の流れ図である。
図6C】1つ又は複数の実施形態による相関電子材料フィルムを製作するための方法の流れ図である。
図7】一実施形態による相関電子材料デバイスの製作において利用される気体形態の例示的な前駆物質として機能し得る、ビス(シクロペンタジエニル)分子(Ni(C)の図である。
図8A】一実施形態による相関電子材料デバイスを含むNiOを主体としたフィルムを製作するための方法において利用されるサブプロセスを示す図である。
図8B】一実施形態による相関電子材料デバイスを含むNiOを主体としたフィルムを製作するための方法において利用されるサブプロセスを示す図である。
図8C】一実施形態による相関電子材料デバイスを含むNiOを主体としたフィルムを製作するための方法において利用されるサブプロセスを示す図である。
図8D】一実施形態による相関電子材料デバイスを含むNiOを主体としたフィルムを製作するための方法において利用されるサブプロセスを示す図である。
図9A】NiOを主体としたデバイス等の一実施形態による相関電子デバイス材料を製作するための方法において使用され得る、時間に応じた前駆物質流量及び温度プロファイルを示す図である。
図9B】NiOを主体としたデバイス等の一実施形態による相関電子デバイス材料を製作するための方法において使用され得る、時間に応じた前駆物質流量及び温度プロファイルを示す、図である。
図9C】NiOを主体としたデバイス等の一実施形態による相関電子デバイス材料を製作するための方法において使用され得る、時間に応じた前駆物質流量及び温度プロファイルを示す、図である。
図9D】NiOを主体としたデバイス等の一実施形態による相関電子デバイス材料を製作するための方法において使用され得る、時間に応じた前駆物質流量及び温度プロファイルを示す、図である。
図9E】一実施形態による相関電子デバイス材料を製作するための方法において使用され得る、時間に応じた前駆物質流量及び温度プロファイルを示す図である。
図9F】一実施形態による相関電子デバイス材料を製作するための方法において使用され得る、時間に応じた前駆物質流量及び温度プロファイルを示す図である。
図9G】一実施形態による相関電子デバイス材料を製作するための方法において使用され得る、時間に応じた前駆物質流量及び温度プロファイルを示す図である。
図9H】一実施形態による相関電子デバイス材料を製作するための方法において使用され得る、時間に応じた前駆物質流量及び温度プロファイルを示す図である。
図10A】一実施形態による相関電子材料デバイスを製作するための堆積プロセス及びアニーリングプロセスにおいて使用される、時間に応じた温度プロファイルを示す図である。
図10B】一実施形態による相関電子材料デバイスを製作するための堆積プロセス及びアニーリングプロセスにおいて使用される、時間に応じた温度プロファイルを示す図である。
図10C】一実施形態による相関電子材料デバイスを製作するための堆積プロセス及びアニーリングプロセスにおいて使用される、時間に応じた温度プロファイルを示す図である。
図11A】1つ又は複数の実施形態による窒素含有分子を使用した相関電子材料フィルムを製作するための方法の流れ図である。
図11B】1つ又は複数の実施形態による窒素含有分子を使用した相関電子材料フィルムを製作するための方法の流れ図である。
図11C】1つ又は複数の実施形態による窒素含有分子を使用した相関電子材料フィルムを製作するための方法の流れ図である。
図12A】一実施形態による相関電子材料デバイスの製作において利用される前駆物質として機能し得る、ニッケルアミジネートの図である。
図12B】一実施形態による相関電子材料デバイスの製作において利用される前駆物質として機能し得る、ニッケル2-アミノペンタ-2-エン-4-オナト(Ni(apo))の図である。
図13A】一実施形態による相関電子材料デバイスを製作するための方法において利用されるサブプロセスを示す図である。
図13B】一実施形態による相関電子材料デバイスを製作するための方法において利用されるサブプロセスを示す図である。
図13C】一実施形態による相関電子材料デバイスを製作するための方法において利用されるサブプロセスを示す図である。
図13D】一実施形態による相関電子材料デバイスを製作するための方法において利用されるサブプロセスを示す図である。
図14】相関電子材料を製作するための更なる方法のための実施形態の流れ図である。
図15】相関電子材料を製作するための更なる方法のための実施形態の流れ図である。
図16】相関電子材料を製作するための更なる方法のための実施形態の流れ図である。
図17】相関電子材料を製作するための更なる方法のための実施形態の流れ図である。
図18】相関電子材料を製作するための更なる方法のための実施形態の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
下記の詳細な記述において、本明細書の一部を形成する添付図面への参照がなされており、対応する及び/又は同様の番号は、全体を通して、同様の要素を指定し得る。図面が、図示の単純さ及び/又は分かりやすさ等のために、必ずしも一定の縮尺で描かれているとは限らないことは、理解されよう。例えば、一部の態様の寸法は、他の態様に対して拡大されていることもある。更に、他の実施形態も利用され得ることを理解すべきである。更に、構造的な変更及び/又は他の変更は、特許請求された主題から逸脱することなくなされ得る。本明細書を通して、「特許請求された主題」への言及は、1つ又は複数のクレーム又は当該クレームの任意の部分によって包含されることを意図された主題を指し、必ずしも、完全なクレームの組、クレームの組(例えば、方法クレーム、装置クレーム等)の特定の組合せ又は特定のクレームを指すことを意図されているとは限らない。例えば上方、下方、頂部及び底部等の指示及び/又は言及は、図面の論述を円滑にするために使用可能であること、及び、特許請求された主題の適用を制限することを意図されていないことにも留意すべきである。したがって、下記の詳細な記述は、特許請求された主題及び/又は均等物を限定するように解釈すべきではない。
【0006】
本明細書を通して、1つの実装形態、一実装形態、1つの実施形態及び/又は一実施形態等への言及は、特定の実装形態及び/又は実施形態に関して記述された特定の特徴、構造及び/又は特性等が、特許請求された主題の少なくとも1つの実装形態及び/又は実施形態に含まれることを意味する。したがって、例えば、このような語句が、本明細書を通して様々な場所で出現することは、必ずしも、同じ実装形態及び/又は実施形態を指し、又は記述されたいずれか1つの特定の実装形態及び/又は実施形態を指すことを意図されているとは限らない。更に、記述された特定の特徴、構造及び/又は特性等は、様々な方法により、1つ又は複数の実装形態及び/又は実施形態と組み合わせることが可能であり、したがって、所期の特許請求の範囲に含まれることを理解すべきである。一般に、当然ながら、ある特許出願の明細書の場合がそうであったように、これらの着目対象及び他の着目対象は、使用に関する特定の文脈の点で相違する可能性がある。言い換えると、本開示を通して、記述及び/又は使用に関する特定の文脈は、導き出される合理的な推論に関する有益な手引きを提供する。しかしながら、「この点に関して」は、一般に更なる必要条件なしでも、本開示の文脈を同様に指す。
【0007】
本開示の特定の実施形態は、相関電子材料(CEM)フィルムを調製及び/又は製作して、例えば、相関電子スイッチ、例えば記憶デバイス及び/又は論理デバイス中に相関電子ランダムアクセスメモリ(CERAM)を形成するために利用され得るような相関電子スイッチを形成するための方法及び/又はプロセスを記述している。例えばCERAMデバイス及びCEMスイッチの構築において利用され得る相関電子材料は、例えばメモリ制御装置、メモリアレイ、フィルター回路、データコンバータ、光学機器、フェーズロックループ回路並びにマイクロ波及びミリ波トランシーバー等の多種多様な他の電子回路の類型も含み得るが、特許請求された主題は、これらの点に関して範囲が限定されない。この点に関して、例えばCEMスイッチは、かなり迅速な導体から絶縁体への遷移を示すことができ、この遷移は、例えば相変化記憶デバイスにおける結晶性から非晶性状態への変化、又は別の例において、抵抗変化型RAM(RERAM)デバイスにおけるナノイオニクスによるフィラメントの形成等に応答して、固体状態の構造的な相変化ではなく、電子相関によってもたらされ得る。一実施形態において、CEMデバイスにおける実質的に迅速な導体から絶縁体への遷移は、例えば相変化及び(RERAM)デバイスにおける溶融/固化又はナノイオニクスによるフィラメント形成とは著しく異なり、量子力学的現象(quantum mechanical phenomenon)に応答し得る。例えばCEMにおける、相対的に導電性の状態と相対的に絶縁性の状態との間及び/又は第1のインピーダンス状態と第2のインピーダンス状態との間でのこのような量子力学的遷移は、いくつかの実施形態のうちのいずれか1つにおいて、理解することができる。本明細書において使用されているとき、「相対的に導電性の状態」、「相対的にインピーダンスがより低い状態」及び/又は「金属状態」という用語は、相互変換可能なものであり得、及び/又は、時折、「相対的に導電性/インピーダンスがより低い状態」と呼ぶこともある。同様に、「相対的に絶縁性の状態」及び「相対的にインピーダンスがより高い状態」という用語は、本明細書において、相互変換可能に使用することができ、及び/又は、時折、相対的に「絶縁性/インピーダンスがより高い状態」と呼ぶこともある。
【0008】
相対的に導電性/インピーダンスがより低い状態が、絶縁性/インピーダンスがより高い状態と実質的に相違する場合において、相対的に絶縁性/インピーダンスがより高い状態と、相対的に導電性/インピーダンスがより低い状態との間での相関電子材料の量子力学的遷移は、Mott遷移の観点から理解することができる。Mott遷移によれば、ある材料は、Mott遷移条件が生じた場合、相対的に絶縁性/インピーダンスがより高い状態から、相対的に導電性/インピーダンスがより低い状態に切り替わることができる。Mott基準は、(n1/3 a≒0.26(式中、nは、電子の濃度を表し、「a」は、ボーア半径を表す。)によって表すことができる。Mott基準が満たされるように閾値キャリア濃度が達成された場合、Mott遷移が起きると考えられている。Mott遷移の生起に応答して、CEMデバイスの状態は、相対的に抵抗がより高い/キャパシタンスがより高い状態(例えば、絶縁性/インピーダンスがより高い状態)から、抵抗がより高い/キャパシタンスがより高い状態と実質的に相違する、相対的に抵抗がより低い/キャパシタンスがより低い状態(例えば、導電性/インピーダンスがより低い状態)に変化する。
【0009】
Mott遷移は、電子の局在化によって制御可能である。例えば電子等のキャリアが局在化している場合、キャリア間の強いクーロン相互作用は、CEMのバンドを分裂させて、相対的に絶縁性の(相対的にインピーダンスがより高い)状態をもたらすと考えられている。電子がもはや局在化されていない場合は、弱いクーロン相互作用が支配的であり得るが、これにより、バンド分裂をなくすことが可能であり、これにより、相対的にインピーダンスがより高い(絶縁性)状態と実質的に相違する金属(導電性)状態(相対的にインピーダンスがより低い状態)への遷移をもたらすことができる。このような金属状態から絶縁性状態への遷移は、本明細書において、図4A及び図4Bに関して更に提示及び記述されている。
【0010】
更に、一実施形態において、相対的に絶縁性/インピーダンスがより高い状態から、実質的に相違する相対的に導電性/インピーダンスがより低い状態への切替えは、抵抗の変化に加えて、キャパシタンスの変化ももたらし得る。例えば、CEMデバイスは、可変キャパシタンスの特性と一緒に可変抵抗を示すことができる。言い換えると、CEMデバイスのインピーダンス特性は、抵抗に関する構成要素と、キャパシタンスに関する要素との両方を含み得る。例えば、金属状態において、CEMデバイスは、0に近似し得る相対的に低い電場を含むことができ、したがって、同様に0に近似し得るかなり低いキャパシタンスを示すことができる。
【0011】
同様に、より高い密度の束縛電子又は相関電子によってもたらされ得る相対的に絶縁性/インピーダンスがより高い状態において、外部電場は、CEMに浸透することができ、したがって、CEMは、CEM中に保存された更なる電荷に少なくとも部分的に基づいた、より高いキャパシタンスを示すことができる。したがって、例えば、CEMデバイスにおける相対的に絶縁性/インピーダンスがより高い状態から、実質的に相違する相対的に導電性/インピーダンスがより低い状態への遷移は、少なくとも特定の実施形態において、抵抗の変化とキャパシタンスとの両方の変化を起こし得る。このような遷移は、測定可能な更なる現象をもたらし得るが、特許請求された主題は、この点に関して限定されない。
【0012】
一実施形態において、CEMから形成されたデバイスは、デバイスを構成するCEMの体積の大部分において、Mott遷移に応答してインピーダンス状態の切替えを示すことができる。一実施形態において、CEMは、「バルクスイッチ」を形成し得る。本明細書において使用されているとき、「バルクスイッチ」という用語は、CEMの少なくとも過半数の体積が、Mott遷移への応答等により、デバイスのインピーダンス状態を切り替えることを指す。例えば、一実施形態において、あるデバイスのCEMの著しい部分は、Mott遷移に応答して、相対的に絶縁性/インピーダンスがより高い状態から相対的に導電性/インピーダンスがより低い状態に切り替わることもできるし、又は相対的に導電性/インピーダンスがより低い状態から相対的に絶縁性/インピーダンスがより高い状態に切り替わることもできる。一実施形態において、CEMは、1つ若しくは複数の遷移金属、1つ若しくは複数の遷移金属化合物、1つ若しくは複数の遷移金属酸化物(TMO)、希土類元素を含む1つ若しくは複数の酸化物1つ若しくは複数の周期表のdブロック元素若しくはfブロック元素による1つ若しくは複数の酸化物、1つ若しくは複数の希土類遷移金属酸化物ペロフスカイト、イットリウム及び/又はイッテルビウムを含んでいてもよいが、特許請求された主題は、この点に関して範囲が限定されない。一実施形態において、CEMデバイスは、アルミニウム、カドミウム、クロム、コバルト、銅、金、鉄、マンガン、水銀、モリブデン、ニッケル、パラジウム、レニウム、ルテニウム、銀、タンタル、スズ、チタン、バナジウム、イットリウム及び亜鉛(これらは、酸素又は他の種類の配位子等のアニオンに結合していてもよい。)又はこれらの組合せを含む群より選択される1つ又は複数の材料を含んでいてもよいが、特許請求された主題は、この点に関して範囲が限定されない。
【0013】
図1Aは、相関電子材料から形成されたデバイスの電圧プロファイルに対比させた電流密度に関する、一実施形態100の説明図である。CEMデバイスの端子に印加された電圧に少なくとも部分的に基づいて、例えば「書込み動作」中において、CEMデバイスは、相対的にインピーダンスが低い状態又は相対的にインピーダンスが高い状態に変わることができる。例えば、電圧Vセット及び電流密度Jセットの印加は、相対的にインピーダンスが低いメモリ状態へのCEMデバイスの遷移をもたらすことができる。逆に、電圧Vリセット及び電流密度Jリセットの印加は、相対的にインピーダンスが高いメモリ状態へのCEMデバイスの遷移をもたらすことができる。図1Aに示されているように、参照番号110は、VリセットからVセットを隔てることができる電圧範囲を図示している。CEMデバイスをインピーダンスが高い状態又はインピーダンスが低い状態に変えた後、CEMデバイスの特定の状態は、(例えば、読取り動作中に)電圧V読取りを印加し、(例えば、読出しウインドウ(read window)107を利用して)CEMデバイスの端子において電流又は電流密度を検出することによって検出できる。
【0014】
一実施形態によれば、図1Aにおいて特徴付けられたCEMデバイスは、例えばペロフスカイト、Mott絶縁体、電荷交換絶縁体及びAnderson無秩序絶縁体(Anderson disorder insulator)等の任意の遷移金属酸化物(TMO)を含んでいてもよい。特定の実装形態において、CEMデバイスは、いくつかの例を挙げると酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化鉄、酸化イットリウム、酸化チタンイットリウム並びにペロフスカイト、例えばクロムドープチタン酸ストロンチウム、チタン酸ランタン並びにマンガン酸プラセオジムカルシウム及びマンガン酸プラセオジムランタンを含むマンガ酸塩系列等、スイッチング材料から形成され得る。特に、不完全な「d」及び「f」軌道殻を有する元素を組み込んだ酸化物は、CEMデバイスにおける使用のための十分なインピーダンス切替え特性を示すことができる。他の実装形態は、特許請求された主題から逸脱することなく、他の遷移金属化合物を利用することができる。
【0015】
図1AのCEMデバイスは、他の種類の遷移金属酸化物型可変インピーダンス材料を含んでいてもよいが、これらは、例示的なものにすぎず、特許請求された主題を限定することを意図されていないことを理解すべきである。酸化ニッケル(NiO)は、酸素が支配的な配位子を構成する特定の1種のTMOとして開示されている。したがって、この点に関して、本明細書において言及されている「支配的な配位子」は、遷移金属酸化物若しくは他の種類の遷移金属、dブロック主体型CEM又はfブロック主体型CEMにおいて、最も高い原子濃度で生じた配位子を意味する。例えば、支配的な配位子を構成する酸化ニッケルを主体としたCEMにおいて、酸素の原子濃度は例えば、およそ90.0%を超過し得る。しかしながら、これは、単に支配的な配位子の例であり、特許請求された主題は、この点に関して限定されないことを理解すべきである。
【0016】
本明細書において論述されたCEMは、例えばCEMフィルムにわたって可変インピーダンス特性を確保及び/又は安定化することができる、「外因性」配位子又は「置換型」配位子をドープされてもよい。この点に関して、本明細書において言及されている「置換型」配位子は、遷移金属分子若しくは他の種類の遷移金属、dブロック主体型CEM又はfブロック主体型CEM中にある支配的な配位子を置換することができる配位子を意味する。例えば、NiOを主体としたCEMにおいて、カルボニル(CO)分子は、酸素原子を置換することができ、これにより、インピーダンスが低い状態で動作しているCEMの導電性が増大する。別の例において、NiOを主体としたCEMにおいて、アンモニア(NH)分子は、酸素原子を置換することができ、これにより、やはり、インピーダンスが低い状態で動作しているCEMの導電性が増大する。少なくとも特定の実施形態において、置換型配位子に関する可能な属性は、CEMを構成する分子の配位圏中にある例えば酸素空格子点等の空格子点を充填又は代替する更なる機能を発揮することを含んでいてもよい。この点に関して、本明細書において言及されている「配位圏」は、特定の分子構造の中心原子又は中心イオン、及び、中心原子又は中心イオンに直接結合した原子又は分子を意味する。「配位圏」の非限定的な例が、図3Eにおいて示されている。
【0017】
この点に関して、本明細書において言及されている「CEMフィルム」は、元素周期表の「d」族又は「f」族のうちの1種又は複数の元素を含む、層を意味する。このような元素に関する一属性は、部分的に充填された「d」又は「f」原子軌道であり、このような元素が、支配的な配位子及び置換型の(例えば、ドーパント)配位子と一緒になって配位圏を形成する能力である。この点に関して、「層」という用語が本明細書において使用されているとき、「層」は、基材等の下に位置する形成物上に配置できる又はこの形成物を覆うように配置できる、ある材料からできたシート又はコーティングを意味する。例えば、原子層成長プロセスによって下に位置する基材に堆積された層は、数分の1オングストローム(例えば、0.6Å)の厚さを占める、単一の原子の厚さを占め得る。しかしながら、層は、例えば1枚のCEMフィルムを構成する複数のフィルムを製作するために利用された方法に応じて、単一の原子の厚さより厚い厚さを有するシート又はコーティングを包含する。
【0018】
複数の実施形態において、例えば置換型配位子による酸素空格子点の代替又は充填は、例えば相変化記憶デバイスにおける結晶性状態から非晶性状態への変化、又は別の例において、抵抗変化型RAM(RERAM)デバイスにおけるナノイオニクスによるフィラメントの形成等に応答して、CEM中におけるフィラメント形成の発生を低減すると考えられている。更に、例えば置換型配位子による酸素空格子点の代替又は充填は、CEM中における電子捕捉の発生を低減すると考えられているが、これは、寄生デバイスのキャパシタンスを低減し、デバイスの耐久性を増大させるように動作し得る。しかしながら、置換型配位子の使用は、CEMの他の態様に影響する可能性があり、特許請求された主題は、この点に関して限定されないことを理解すべきである。複数の実施形態において、置換型配位子は、およそ0.1%~10.0%の範囲の原子濃度を占め得る。本明細書において言及されているとき、原子濃度という用語は一般には、仕上がった材料中における特定の種類の原子の濃度に関する。例えば、百分率を単位とした炭素の原子濃度は、仕上がった材料に含まれる炭素原子の総数を仕上がった材料中の原子の総数で割り、100をかけたものである。分子ドーパントの原子濃度は、当該分子ドーパント中の金属に配位している原子の原子濃度、すなわち、カルボニル及びシアニド等の炭素を介して相互作用するドーパントの場合における炭素の原子濃度、アジド、アンモニア、エチレンジアミン及び1,10-フェナントロリン等の窒素を介して相互作用するドーパントの場合における窒素の原子濃度、並びに、S2-及びイソチオシアネート等の硫黄を介して相互作用するドーパントの場合における硫黄の原子濃度、水、ヒドロキシド及びオキサレート等の酸素を介して相互作用するドーパントの場合における酸素の原子濃度を指す。しかしながら、上記置換型配位子は、例示的な濃度と一緒にして、単に例として提供されており、特許請求された主題は、この点に関して限定されないことを理解すべきである。
【0019】
したがって、別の特定の例において、置換型配位子をドープされたNiOは、NiO:L(式中、Lが、カルボニル(CO)又はアンモニア(NH)等の配位子元素又は化合物を指し示し得、xが、NiOの単位1個に対する配位子の単位の数を指し示し得る。)と表すことができる。xの値は、任意の特異的な配位子及び配位子とNiO又は任意の他の遷移金属化合物との任意の特定の組合せに関しては、単に価数を釣り合わせることによって決定することができる。CO及びNHに加えて、分子ドーパントとして機能し得る他の置換型配位子としては、ニトロシル(NO)、トリフェニルホスフィン(PPh)、フェナントロリン(C12)、ビピリジン(C10)、エチレン(C)、エチレンジアミン(C(NH)、アセトニトリル(CHCN)、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素、シアニド(CN)、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)及びスルホセレニド(SSe1-x)並びにスルホシアニド(SCN)等を挙げることができる。
【0020】
別の実施形態において、図1AのCEMデバイスは、窒素含有配位子等の他の遷移金属酸化物型可変インピーダンス材料を含んでいてもよいが、これらは、例示的なものにすぎず、特許請求された主題を限定することを意図されていないことを理解すべきである。酸化ニッケル(NiO)は、特定の1種のTMOとして開示されている。本明細書において論述されたNiO材料は、可変インピーダンス特性を安定化することができる置換型の窒素含有配位子をドープされてもよい。特に、本明細書において開示されたNiO可変インピーダンス材料は、例えばアンモニア(NH)、シアノ(CN)、アジ化物イオン(N )、エチレンジアミン(C)、phen(1,10-フェナントロリン)(C12)、2,2’-ビピリジン(C10)、エチレンジアミン((C(NH)、ピリジン(CN)、アセトニトリル(CHCN)及びシアノスルファニド、例えばチオシアネート(NCS)、ニトロソニウム(NO)、イソシアニド(RNC。有機フラグメント(R)が窒素原子によってイソシアニド基に結合した官能基N≡Cを有する有機化合物)、アルケン及びアルキン等、形態C(式中、x0、y0、z0であり、少なくともx、y又はzが、0より大きい値を含む。)の窒素含有分子を含んでいてもよい。本明細書において開示されたNiO可変インピーダンス材料は、酸素窒化物系列(N。式中、x及びyが、整数を含み、x0及びy0であり、少なくともx又はyが、より大きい値を含む。)の構成要素を含み得るが、これらの酸素窒化物系列の構成要素としては、例えば、一酸化窒素(NO)、亜酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)、又は、NO 配位子を有する前駆物質を挙げることができる。複数の実施形態において、金属前駆物質は、価数を釣り合わせることによってNiOに対する配位子となったアミン、アミド、アルキルアミドの窒素含有配位子等の窒素含有配位子を含む。
【0021】
図1Aによれば、十分なバイアスが(例えば、図4A及び図4Bに関して更に記述されるバンド分裂ポテンシャル(U=イオン化-電子親和力)を超えるように)印可され、上記Mott条件が満たされた場合(例えば、注入された正孔が、例えばスイッチング領域における電子の集団と同等の集団である場合)、CEMデバイスは、例えばMott遷移に応答して、相対的にインピーダンスが低い状態から相対的にインピーダンスが高い状態に遷移することができる。これは、図1Aの電流密度プロファイルに対比させた電圧の点108に対応し得る。この点108において、又は適切にはこの点108の付近において、電子はもはや遮蔽されず、金属イオンの近くに局在化した状態になる。この相関は、電子と電子との強い相互作用ポテンシャルをもたらし得るが、これは、バンドを分裂させて、相対的にインピーダンスが高い材料を形成するように動作し得る。CEMデバイスが、相対的にインピーダンスが高い状態を含む場合、電流が、正孔の輸送によって生成され得る。したがって、閾値電圧がCEMデバイスの端子の両端間に印加された場合、電子は、MIMデバイスのポテンシャル障壁を超えて、金属-絶縁体-金属(MIM)型ダイオードに注入され得る。特定の実施形態において、CEMデバイスの端子の両端間に印加された閾値ポテンシャルにおいて、閾値電流の電子を注入することにより、CEMデバイスをインピーダンスが低い状態に変える「セット」動作を実施することができる。インピーダンスが低い状態において、電子の増大により、流入した電子を遮蔽し、電子の局在化をなくすことができるが、これは、バンド分裂ポテンシャルを崩壊させ、これにより、インピーダンスが低い状態をもたらすように動作し得る。
【0022】
一実施形態によれば、CEMデバイス中の電流は、印加された外部電流に少なくとも部分的に基づいて決定できる外部から適用された「コンプライアンス」条件によって、制御することが可能であり、この外部電流は、例えばCEMデバイスを相対的にインピーダンスが高い状態に変えるように、書込み動作中に限定することができる。この外部から印加されたコンプライアンス電流は、一部の実施形態において、CEMデバイスを相対的にインピーダンスが高い状態に変える後続のリセット動作のための電流密度の条件を設定することもできる。図1Aの特定の実装形態に提示のように、電流密度Jコンプライアンスは、CEMデバイスを相対的にインピーダンスが低い状態に変えるために、書込み動作中に点116において印加することが可能であり、後続の書込み動作においてCEMデバイスをインピーダンスが高い状態に変えるためのコンプライアンス条件を決定し得る。図1Aに提示のように、CEMデバイスは続いて、点108において電圧Vリセットで電流密度Jリセット>Jコンプライアンスを印加することによって、インピーダンスが高い状態に変えることが可能であるが、ここで、Jコンプライアンスは、外部から印加される。
【0023】
複数の実施形態において、コンプライアンスは、Mott遷移のために正孔によって「捕捉」され得る、CEMデバイス中のいくつかの電子を設定することができる。言い換えると、CEMデバイスを相対的にインピーダンスが低いメモリ状態に変えるために書込み動作中に印加された電流は、CEMデバイスを相対的にインピーダンスが高いメモリ状態に遷移させるためにCEMデバイスに注入すべき正孔の数を決定することができる。
【0024】
上記において指摘したように、リセット条件は、点108におけるMott遷移に応答して起こり得る。上記において指摘したように、このようなMott遷移は、電子の濃度nが正孔の濃度pに対して概ね等しい又は少なくとも同等になる、P型ドープ半導体に類似したCEMデバイス内の条件をもたらすことができる。この条件は、次の式(1)
【0025】
【数1】
【0026】
に従ってモデル化することができる。
【0027】
式(1)中において、λTFが、トーマス・フェルミ遮蔽距離に対応し、Cが、定数である。
【0028】
一実施形態によれば、図1Aにおいて示された電流密度プロファイルに対比された電圧の領域104中における電流又は電流密度は、CEMデバイスの端子の両端間に印加された電圧信号からの、正孔の注入に応答して存在し得る。ここで、閾値電圧VMIがCEMデバイスの端子の両端間に印加されると、正孔の注入は、電流IMIにおいてインピーダンスが低い状態からインピーダンスが高い状態に遷移するためのMott遷移基準を満たすことができる。これは、次の式(2)
【0029】
【数2】
【0030】
(式中、Q(VMI)が、注入された電荷(正孔又は電子)に対応し、印加電圧の関数である。)
に従ってモデル化することができる。Mott遷移を可能にするための電子及び/又は正孔の注入は、閾値電圧VMI及び閾値電流IMIに応答して、バンド間で起こり得る。電子濃度nを電荷濃度と等しくして、式(1)に従って、式(2)中のIMIによって注入された正孔によるMott遷移をもたらすことにより、トーマス・フェルミ遮蔽距離λTFへのこのような閾値電圧VMIの依存度は、次の式(3)
【0031】
【数3】
【0032】
(式中、ACEMが、CEMデバイスの断面積であり、Jリセット(VMI)が、CEMデバイスを相対的にインピーダンスが高い状態に変えることができる閾値電圧VMIにおいてCEMデバイスに印加される、CEMデバイス中にわたる電流密度を表し得る。)
に従ってモデル化することができる。
【0033】
図1Bは、相関電子材料を含むスイッチングデバイスの一実施形態150の説明図及び相関電子材料スイッチの等価回路の概略図である。上記のように、CEMスイッチ、CERAMアレイ又は1種若しくは複数の相関電子材料を利用する他の種類のデバイス等の相関電子デバイスは、可変抵抗と可変キャパシタンスとの両方の特性を示すことができる、可変又は複素インピーダンスデバイスを含んでいてもよい。言い換えると、導電性基材160、CEM170及び導電性上張り180を含むデバイス等のCEM可変インピーダンスデバイスに関するインピーダンス特性は、デバイス端子122及び130の間で測定された場合、デバイスの抵抗及びキャパシタンス特性に少なくとも部分的に依存し得る。一実施形態において、可変インピーダンスデバイスのための等価回路は、可変キャパシタ128等の可変キャパシタに対して並行である、可変抵抗器126等の可変抵抗器を備えてもよい。当然ながら、可変抵抗器126及び可変キャパシタ128は、図1Bにおいて、別個の構成要素を含むものとして図示されているが、実施形態150のデバイス等の可変インピーダンスデバイスは、実質的に均一なCEMを含んでいてもよく、特許請求された主題は、この点に関して限定されない。
【0034】
下記のTable 1(表1)は、実施形態150のデバイス等の例示的な可変インピーダンスデバイスに関する例示的な真理値表を図示している。
【0035】
【表1】
【0036】
一実施形態において、Table 1(表1)は、実施形態150のデバイス等の可変インピーダンスデバイスの抵抗が、インピーダンスが低い状態と、CEMデバイスの両端間に印加された電圧に少なくとも部分的に依存する関数である実質的に相違するインピーダンスが高い状態との間で遷移し得ることを示している。一実施形態において、インピーダンスが低い状態において示されたインピーダンスは、インピーダンスが高い状態において示された実質的に相違するインピーダンスに比べて、およそ10.0~100,000.0分の1の範囲であり得る。他の実施形態において、インピーダンスが低い状態において示されたインピーダンスは例えば、インピーダンスが高い状態において示されたインピーダンスに比べて、およそ5.0~10.0分の1の範囲であり得る。しかしながら、特許請求された主題は、インピーダンスが高い状態と、インピーダンスが低い状態とのいかなる特定のインピーダンス比にも限定されないことに留意すべきである。表1は、実施形態150のデバイス等の可変インピーダンスデバイスのキャパシタンスが、例示的な一実施形態においてはおよそ0の(又は非常にわずかな)キャパシタンスを備え得るキャパシタンスがより低い状態と、少なくとも部分的にCEMデバイスの両端に印加された電圧の関数であるキャパシタンスがより高い状態との間で遷移し得ることを示している。
【0037】
一実施形態によれば、CEMスイッチを形成するために利用され得るCEMデバイス、CERAM記憶デバイス又は1種若しくは複数の相関電子材料を含む種々の他の電子デバイスは、例えばMott遷移基準を満たすために十分な量の電子の注入により、相対的にインピーダンスが高い状態から遷移させること等によって、相対的にインピーダンスが低いメモリ状態に変えることができる。CEMデバイスを相対的にインピーダンスが低い状態に遷移させる場合において、十分な電子が注入されており、CEMデバイスの端子の間のポテンシャルが閾値スイッチングポテンシャル(例えば、Vセット)を上回っている場合、注入された電子は遮蔽を開始し得る。上記のように、遮蔽は、二重占有電子を非局在化して、バンド分裂ポテンシャル(U)を崩壊させ、これにより、相対的にインピーダンスが低い状態をもたらすように動作し得る。
【0038】
特定の実施形態において、例えばインピーダンスが低い状態から実質的に相違するインピーダンスが高い状態への変化等、CEMデバイスのインピーダンス状態の変化は、遷移金属、遷移金属酸化物(Ni等。式中、下付き文字「x」及び「y」が、整数を含む。)、dブロック金属又はfブロック金属を含む材料の電子の「供与」及び「逆供与」によってもたらすことができる。この点に関して、電子の「供与」という用語が本明細書において使用されているとき、電子の「供与」は、図3A図3Dに関して更に詳細に記述されたように、例えば遷移金属、遷移金属酸化物、dブロック金属若しくはfブロック金属又はこれらの組合せを含む配位圏の隣接する分子による、遷移金属、遷移金属酸化物、dブロック金属若しくはfブロック金属又はこれらの任意の組合せへの1個又は複数の電子の供給を意味する。電子の「逆供与」という用語が本明細書において使用されているとき、電子の「逆供与」は、図3A図3Dに関して更に詳細に記述されてもいるように、例えば支配的な又は置換型配位子を含む配位圏の隣接する分子による1個又は複数の電子の受容を指す。電子の供与及び逆供与により、遷移金属、遷移金属化合物、遷移金属酸化物、dブロック金属若しくはfブロック金属又はこれらの組合せは、印加電圧の影響下でインピーダンスを制御できるイオン化状態を維持することが可能である。特定の実施形態において、例えばCEM中における供与及び逆供与は、カルボニル(CO)等の炭素含有ドーパント、又は、例えばアンモニア(NH)、エチレンジアミン(C)若しくは酸窒化物系列(N)の構成要素等の窒素含有ドーパントの使用に応答して増進することが可能であり、これらのドーパントにより、CEMは、例えばCEMを含むデバイス又は回路の動作中に、ニッケル等の遷移金属又は遷移金属酸化物の伝導帯に、制御可能な態様で可逆的に電子を供与する特性を示すことができる。複数の実施形態において、供与は、例えば酸化ニッケル材料(例えば、NiO:CO又はNiO:NH)中においては逆転され得るが、これにより、酸化ニッケル材料は、デバイスの動作中に高インピーダンス特性を示す状態から低インピーダンス特性を示す状態に遷移することができる。したがって、この点に関して、供与性/逆供与性材料は、当該材料の伝導帯を終点及び起点とした電子の供与及び電子供与の逆転(逆供与)を制御するための印加電圧の影響に少なくとも部分的に基づいて、第1のインピーダンス状態から、実質的に相違する第2のインピーダンス状態への切替え(例えば、相対的にインピーダンスが低い状態から相対的にインピーダンスが高い状態への切替え、又はこの逆の切替え)等、インピーダンス切替え特性を示す材料を指す。
【0039】
図4A及び図4Bに関して更に詳細に記述されたように、電子供与によって、遷移金属、遷移金属化合物又は遷移金属酸化物を含むCEMスイッチは、例えばニッケル等の遷移金属が2+の酸化状態(例えば、材料ある中のNi2+。NiO:CO又はNiO:NH等)に変わった場合、低インピーダンス特性/低キャパシタンス特性を示すことができる。逆に、電子供与は、例えばNi等の遷移金属が1+又は3+の酸化状態に変わった場合、逆転され得る。したがって、CEMデバイスの動作中に、逆供与は、「不均化」を起こすことができ、「不均化」は、下記の式(4)
2Ni2+ → Ni1++Ni3+ (4)
に実質的に従った実質的に同時の酸化及び還元の反応を含んでいてもよい。
【0040】
上記の場合、このような不均化は、CEMデバイスの動作中に、例えば相対的にインピーダンスが高い状態をもたらすことができる、式(4)に示されたNi1++Ni3+としてのニッケルイオンの形成を指す。電子供与は、下記の式(5)
Ni1++Ni3+ → 2Ni2+ (5)
に実質的に従った式(4)の不均化反応の逆転を起こすことができる。
【0041】
この点に関して、本明細書において言及された「分子ドーパント」は、CEMを構成する遷移金属、遷移金属酸化物、dブロック主体型金属又はfブロック主体型金属を終点又は起点として、CEMの配位圏中等の局所的な電子供与又は逆供与を可能にする、原子種又は分子種を意味する。したがって、配位圏中において、分子ドーパントから金属への電子供与は、CEMのインピーダンスが低い状態をもたらすことができる。更に、配位圏中において、金属から分子ドーパントへの電子逆供与は、CEMのインピーダンスが高い状態をもたらすことができる。一実施形態において、炭素含有配位子(例えば、CO)又は窒素含有配位子(例えば、NH)等の「分子ドーパント」は、式(4)及び式(5)の不均化及び不均化の逆転させるように、CEMデバイスの動作中に電子の共有を可能にし得る。
【0042】
図3A図3Dに関して記述されたように、CO及びNH等の特定の分子を含むある種類の分子ドーパントが、例えばσ結合から電子を供与するように、配位圏に対して局所的に又は配位圏中において働く。一実施形態において、このようなσ結合は、炭素と酸素原子との間に形成され得、金属原子のπ結合から電子を逆供与することができる。理論に束縛されるわけではないが、分子ドーパントは、電子を供与及び/又は逆供与するようにCEMの配位圏に対して局所的に作用する、ハライド(例えば、Cl、Br及びF等)等の特定の単一原子型の種を更に包含する。分子ドープCEM中における電子の供与は、配位圏中の金属原子の伝導帯と価電子帯とのエネルギーギャップを減少させるように働くが、分子ドープCEM中における電子の逆供は、配位圏中の金属イオンの伝導帯と価電子帯との間のエネルギーを増大させるように動作し得る。単一原子型分子ドーパントの例示的な理論的動作が、図4A及び図4Bに関して記述されている。
【0043】
この点に関して、本明細書において言及された「σ結合」は、原子軌道の軸の重なり合いによって形成された化学的な共有結合を意味する。例えばCO分子において、σ結合は、炭素原子と酸素原子との間で「共有」され得る電子を指す。しかしながら、これは、単にσ結合の例であり、特許請求された主題は、この点に関して限定されないことを理解すべきである。更にこの点に関して、本明細書において言及された「π結合」は、関与する原子の原子軌道が側方同士で重なり合うことによる分子軌道の形成から生じた、共有結合を意味する。例えばCO分子において、π結合は、図3A及び図3Bの322及び324によって与えられているような、側方から側方にかけてのCO分子の軌道を指す。しかしながら、これは、π結合の例であり、特許請求された主題は、この点に関して限定されないことを理解すべきである。
【0044】
CO、NH、Cl、Br及びFは、単に分子ドーパントの例であり、シアノ(CN)、アジ化物イオン(N )、エチレンジアミン(C)、phen(1,10-フェナントロリン)(C12)、2,2’-ビピリジン(C10)、エチレンジアミン((C(NH)、ピリジン(CN)、アセトニトリル(CHCN)及びシアノスルファニド等の他の種類の分子ドーパントは同様に、インピーダンスが低い状態及びインピーダンスが高い状態でCEMを動作させるように電子供与又は逆供与をもたらすことができ、特許請求された主題は、この点に関して限定されないことを理解すべきである。
【0045】
複数の実施形態において、例えばカルボニル(NiO:COを形成することになる)及びアンモニア(NiO:NHを形成することになる)等の分子ドーパントの濃度は、およそ0.1%~10.0%の範囲の原子百分率の値であり得る。このような濃度は、図1Aに提示のように、Vリセット及びVセットに影響し得るが、Vリセット及びVセットは、Vセット≧Vリセットである条件に従っておよそ0.1V~10.0Vの範囲の範囲であり得る。例えば、可能な一実施形態において、例えば、Vリセットは、およそ0.1V~1.0Vの範囲の電圧において起こり得、Vセットは、およそ1.0V~2.0Vの範囲の電圧において起こり得る。しかしながら、Vセット及びVリセットの変化は、NiO:CO又はNiO:NH等の供与性又は逆供与性材料及びCEMデバイス中に存在する他の材料の原子濃度並びに他のプロセスの変化等の種々の要素に少なくとも部分的に基づいて起こり得るが、特許請求された主題は、この点に関して限定されないことに留意すべきである。
【0046】
特定の実施形態において、原子層成長(ALD)を利用して、NiO:CO又はNiO:NH等のNiO材料を含むフィルムを形成又は製作し、これによって、例えばインピーダンスが低い/キャパシタンスが低い状態を生じさせるために、回路環境下におけるCEMデバイスの動作中に電子の供与を可能にし得る。例えば回路環境下の動作中においても、電子供与は、例えばインピーダンスが高い状態等の実質的に相違するインピーダンス状態を生じさせるように逆転され得る。特定の実施形態において、原子層成長は、2種以上の前駆物質 を利用して、例えばNiO:CO若しくはNiO:NH又は他の遷移金属酸化物、遷移金属若しくはこれらの組合せの成分を導電性基材に堆積させることができる。一実施形態において、CEMデバイスの層は、下記の式(6a)
AX(気体)+BY(気体)=AB(固体)+XY(気体) (6a)
(式中、式(6a)の「A」が、遷移金属、遷移金属化合物、遷移金属酸化物又はこれらの任意の組合せに対応する。)に従って、別々の前駆物質分子AX及びBYを利用して堆積させることができる。複数の実施形態において、遷移金属酸化物は、ニッケルを含んでいてもよいが、アルミニウム、カドミウム、クロム、コバルト、銅、金、鉄、マンガン、水銀、モリブデン、ニッケル、パラジウム、レニウム、ルテニウム、銀、タンタル、スズ、チタン、バナジウム、イットリウム及び亜鉛(これらは、酸素又は他の種類の配位子等のアニオンに結合していてもよい。)又はこれらの組合せ等の遷移金属、遷移金属化合物及び/又は遷移金属酸化物等の他の金属を含んでいてもよく、しかしながら、特許請求された主題は、この点に関して範囲が限定されない。特定の実施形態において、チタン酸イットリウム(YTiO)等の1種より多い遷移金属酸化物を含む化合物が、利用されてもよい。
【0047】
複数の実施形態において、式(6a)の「X」は、有機配位子等の1個又は複数の配位子を含んでいてもよく、アミジネート(AMD、例えば、[RNCRNR(式中、R、R及びRが、H又はアルキルから選択される))、ジ(シクロペンタジエニル)(Cp)、ジ(エチルシクロペンタジエニル)(EtCp)、ビス(2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオナト)((thd))、アセチルアセトネート(acac)、ビス(メチルシクロペンタジエニル) ((CH)、ジメチルグリオキシメート(dmg)、2-アミノ-ペンタ-2-エン-4-オナト(apo)、(dmamb)(式中、dmambが、1-ジメチルアミノ-2-メチル-2-ブタノレートである。)、(dmamp)(式中、dmampが、1-ジメチルアミノ-2-メチル-2-プロパノレートである。)、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル) (C(CH及びテトラカルボニル(CO)等のカルボニル(CO)を含んでいてもよい。したがって、一部の実施形態において、ニッケルを主体とした前駆物質AXは例えば、いくつかの例を挙げると、ニッケルアミジネート(Ni(AMD))、ニッケルジ(シクロペンタジエニル)(Ni(Cp))、ニッケルジ(エチルシクロペンタジエニル)(Ni(EtCp))、ビス(2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオナト)Ni(II)(Ni(thd))、ニッケルアセチルアセトネート(Ni(acac))、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ニッケル(Ni(CH)、ニッケルジメチルグリオキシメート(Ni(dmg))、ニッケル2-アミノ-ペンタ-2-エン-4-オナト(Ni(apo))、Ni(dmamb)(式中、dmamb=1-ジメチルアミノ-2-メチル-2-ブタノレート)、Ni(dmamp)(式中、dmampが、1-ジメチルアミノ-2-メチル-2-プロパノレートである。)、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ニッケル(Ni(C(CH)及びニッケルカルボニル(Ni(CO))を含んでいてもよい。式(6a)中において、前駆物質「BY」は、いくつかの例を挙げると酸素(O)、オゾン(O)、一酸化窒素(NO)、過酸化水素(H)等の酸化剤を含んでいてもよい。他の実施形態において、後で本明細書において更に記述されるように、プラズマを酸化剤と一緒に使用して、酸素ラジカルを形成することができる。
【0048】
しかしながら、特定の実施形態において、前駆物質AX及びBYに加えてan 電子供与性又は逆供与正材料を含むドーパントを利用して、CEMデバイスの層を形成することができる。電子供与性又は逆供与正材料を含む更なるドーパント配位子は、前駆物質AXと一緒に平行流の状態で流動することができるが、下記の式(6b)に実質的に従って、供与性又は逆供与性化合物の形成を可能にし得る。複数の実施形態において、アンモニア(NH)、メタン(CH)、一酸化炭素(CO)又は他の材料等の供与性又は逆供与性材料を含むドーパントは、炭素若しくは窒素を含む他の配位子又は上記に列記された供与性又は逆供与性材料を含む他のドーパントを利用できるのと同様に、利用することができる。したがって、式(6a)は、下記の式(6b)
AX(気体)+(NH又は窒素を含む他の配位子)+BY(気体)
=AB:NH3(固体)+XY(気体) (6b)
に実質的に従って、供与性又は逆供与性材料を含む更なるドーパント配位子を包含するように修正することができる。
【0049】
式(6a)及び(6b)のAX、BY及びNH(又は窒素を含む他の配位子)等の前駆物質の原子濃度等の濃度は、製作されたCEMデバイス中においておよそ0.1%~10.0%の間の濃度を占める、アンモニア(NH)又はカルボニル(CO)の形態等の供与性又は逆供与性材料を含む窒素を主体とした又は炭素を主体としたドーパント分子の最終的な原子濃度をもたらすように、調節することができることに留意すべきである。しかしながら、特許請求された主題は、必ずしも、上記において特定された前駆物質及び/又は原子濃度に限定されるとは限らない。逆に、特許請求された主題は、CEMデバイスの製作において利用される原子層堆積、化学気相堆積、プラズマ化学気相堆積、スパッタデポジション、物理気相堆積、ホットワイヤ式化学気相堆積、レーザー促進式化学気相堆積、レーザー促進式原子層堆積、急速加熱式化学気相堆積、又はスピンオン堆積等において利用される、すべてのこのような前駆物質を包含することを意図されている。式(6a)及び(6b)中において、「BY」は、いくつかの例を挙げると酸素(O)、オゾン(O)、一酸化窒素(NO)、過酸化水素(H)等の酸化剤を含んでいてもよい。他の実施形態において、プラズマを酸化剤(BY)と一緒に使用して、酸素ラジカルを形成することができる。同様に、プラズマを、供与性又は逆供与性材料を含むドーピング種と一緒に使用して、活性化された種を形成し、これによって、CEMのドーピング濃度を制御してもよい。
【0050】
原子層成長を利用する実施形態等の特定の実施形態において、基材は、加熱されたチャンバ内においてAX及びBY等の前駆物質並びに電子供与性又は逆供与正材料を含むドーパント(アンモニア、又は、例えばニッケル-アミド、ニッケル-イミド、ニッケル-アミジネート若しくはこれらの組合せが挙げられる金属-窒素結合を含む他の配位子等)に曝露されてもよく、このチャンバは例えば、特定の実施形態において、例えばおよそ20.0℃~1000.0℃の範囲の温度、又は、およそ20.0℃~500.0℃の間の範囲の温度に到達し得る。例えばNiO:NHの原子層成長が実施される特定の1つの実施形態において、およそ20.0℃~400.0℃の範囲のチャンバ温度範囲が、利用され得る。前駆物質ガス(例えば、AX、BY、NH又は窒素を含む他の配位子)への曝露に応答して、このような気体は、およそ0.5秒~180.0秒の範囲の持続期間にわたって、加熱されたチャンバからパージすることができる。しかしながら、これらは、単にチャンバ温度及び/又は時間に関する可能性として適切な範囲の例であり、特許請求された主題は、この点に関して限定されないことに留意すべきである。
【0051】
特定の実施形態において、原子層成長を利用する1回の2種の前駆物質によるサイクル(例えば、式6(a)に関して記述されたように、AX及びBY)又は1回の3種の前駆物質によるサイクル(例えば、式6(b)に関して記述されたように、AX、NH、CH、又は窒素、炭素を含む他の配位子、又は電子供与性若しくは逆供与性材料を含む他のドーパント及びBY)は、サイクル1回当たりおよそ0.6Å~5.0Åの範囲の厚さを占めるCEMデバイス層をもたらすことができる。したがって、一実施形態において、層がおよそ0.6Åの厚さを占める原子層堆積プロセスを利用して、およそ500.0Åの厚さを占めるCEMデバイスフィルムを形成するために、例えば800~900回のサイクルが利用されてもよい。別の実施形態において、層がおよそ5.0Åを占める原子層堆積プロセスを利用して、例えば100の2種の前駆物質によるサイクル。原子層堆積を利用して、およそ例えば1.5nm~150.0nmの範囲の厚さ等の他の厚さを有するCEMデバイスフィルムを形成してもよく、特許請求された主題は、この点に関して限定されないことに留意すべきである。
【0052】
特定の実施形態において、原子層成長の1回若しくは複数の2種の前駆物質によるサイクル(例えば、AX及びBY)又は3種の前駆物質によるサイクル(AX、NH、CH、又は窒素、炭素を含む他の配位子、又は供与性若しくは逆供与性材料を含む他のドーパント及びBY)に応答して、CEMデバイスフィルムは、フィルム特性の改善を可能にし得る、又は、カルボニル若しくはアンモニアの形態等の電子供与性又は逆供与正材料を含むドーパントをCEMデバイスフィルムに組み込むために使用され得る、インサイチュアニーリングを受けてもよい。特定の実施形態において、チャンバは、およそ20.0℃~1000.0℃の範囲の温度に加熱されていてもよい。しかしながら、他の実施形態において、インサイチュアニーリングが、およそ100.0℃~800.0℃の範囲のチャンバ温度を利用して実施されてもよい。インサイチュアニーリング時間は、およそ1.0秒~5.0時間の範囲の持続期間にわたり得る。特定の実施形態において、アニーリング時間は例えば、例えばおよそ0.5分~およそ180.0分等、より狭い範囲に収まるようなものであり得、特許請求された主題は、これらの点に関して限定されない。
【0053】
特定の実施形態において、上記方法によって製造されたCEMデバイスは、デバイスが、当該デバイスの製作直後に相対的に低いインピーダンス(相対的に高い導電性)を示す、「生得的」特性(born on property)を示すことができる。したがって、CEMデバイスが、例えば所期の活性化において、より大きなエレクトロニクス環境に統合された場合、CEMデバイスに印加された相対的に低い電圧は、図1Aの領域104によって示されたように、CEMデバイスの中を通る相対的に高い電流フローを可能にし得る。例えば、本明細書において上記のように、少なくとも1つの可能な実施形態において、例えば、Vリセットは、およそ0.1V~1.0Vの範囲の電圧において起こり得、Vセットは、1.0V~2.0Vの範囲の電圧において起こり得る。したがって、およそ2.0V以下の範囲で動作する電気的スイッチング電圧により例えば、記憶回路は、例えばCERAM記憶デバイスに書き込み、CERAM記憶デバイスから読み取り、又はCERAMスイッチの状態を変化させることができる。複数の実施形態において、このような相対的に低い電圧による動作は、複雑度とコストを低減することが可能であり、競合するメモリ及び/又はスイッチングデバイス技術を上回る他の利点を提供することができる。
【0054】
図2は、導電性材料の間に形成された遷移金属酸化物フィルム中のフィラメントを含むスイッチングデバイスの一実施形態の説明図である。例えば導電性基材210等の導電性基材は、例えばCERAMスイッチングデバイスにおける使用任意の他の種類のCEMを主体としたデバイスにおける使用を目的として、複数の層として製作された、窒化チタン(TiN)等のチタンを主体とした基材及び/又はチタン含有基材を含んでいてもよい。他の実施形態において、導電性基材210は、窒化チタン、白金、チタン、銅、アルミニウム、コバルト、ニッケル、タングステン、窒化タングステン、ケイ化コバルト、酸化ルテニウム、クロム、金、パラジウム、酸化インジウムスズ、タンタル、銀、イリジウム又はこれらの任意の組合せ等の他の種類の導電性材料を含んでいてもよい。他の実施形態において、導電性基材210は、CERAMデバイスにおける使用又は任意の他の種類のCEMを主体としたデバイスにおける使用を目的として、複数の層として形成された、窒化タンタル(TaN)等のタンタルを主体とした材料及び/又はタンタル含有材料を含んでいてもよく、特許請求された主題は、この点に関して限定されない。複数の実施形態において、TaN基材は、例えばペンタキスジメチルアミドタンタル(PDMAT)等の前駆物質を利用して形成され得る。
【0055】
他の実施形態において、導電性基材210は、例えばCERAMデバイス又は他の種類のCEMを主体としたデバイスにおける使用を目的として、複数の層として形成された、窒化タングステン(WN)等のタングステンを主体とした材料及び/又はタングステン含有材料を含んでいてもよい。複数の実施形態において、WN基材は、例えばタングステンヘキサカルボニル(W(CO))及び/又はシクロペンタジエニルタングステン(II)トリカルボニルヒドリド等の前駆物質を利用して形成され得る。別の実施形態において、WN基材は、例えばトリアミンタングステントリカルボニル((NHW(CO))及び/又はタングステンペンタカルボニルメチルブチルイソニトリル(W(CO)(C11NC))を利用して形成され得る。導電性上張り240は、例えば導電性基材210を構成する材料に類似した1種又は複数の材料を含んでいてもよいし、又は全く異なる材料を含んでいてもよく、特許請求された主題は、この点に関して限定されない。
【0056】
特定の実施形態において、特定の範囲内の電圧の印加に応答して、フィラメント230は、導電性基材210と導電性上張り240との間に形成し得る。特定の実施形態において、フィラメントは、導電性基材210と導電性上張り240との間にある抵抗が低い結晶性経路に相当し得る。上記のように、フィラメント形成は、例えば遷移金属酸化物フィルムが酸化された状態になり得る、1種又は複数のナノイオニクスによる酸化還元(レドックス)反応を含んでいてもよい。他の実施形態において、フィラメント形成は、空格子点-イオン拡散プロセスを利用するイオン輸送によってもたらすことができる。
【0057】
しかしながら、遷移金属酸化物フィルム220中におけるフィラメント230の形成により、デバイスは、例えばおよそ3.0V以下の範囲の電圧レベルの印加に応答してスイッチング動作を実施することができるが、フィラメント形成により、スイッチングデバイスが量子力学的相関電子現象に応じて動作することを不可能にし、又は妨害することができる。例えば、フィラメント形成は、遷移金属酸化物フィルムから構築されたデバイス中における寄生電荷の蓄積を可能にし得、これにより、寄生デバイスのキャパシタンスを増大させることができる。したがって、寄生キャパシタンスの増大に伴って、高周波におけるCEMデバイスの動作が損なわれる可能性がある。
【0058】
したがって、特定の実施形態において、導電性基材210と導電性上張り240との間に流れる電流のための低インピーダンスで低キャパシタンスの経路を可能にするように、導電性フィラメントの形成を低減又は排除することが有利であり得る。例えば遷移金属酸化物から形成されたCEMデバイス中におけるフィラメント形成の回避により、CEMデバイスの「生得的」特性を保存することもでき、「生得的」特性は、デバイスの製作に応答して、相対的に低いインピーダンス(相対的に高い導電性)を示す、CEMデバイスの能力を指す。
【0059】
図3A図3Dは、一実施形態によるCEM中における金属-カルボニル分子のσ結合及びπ結合を介した電子供与及び逆供与を図示する説明図である。上記のように、例えばインピーダンスが低い状態からインピーダンスが高い状態への変化等のCEMデバイスのインピーダンス状態の変化は、配位子及びNi等の金属原子を終点及び起点とした電子の供与又は逆供与によってもたらすことができる。図3A図3Dに関して記述されたような特定の実施形態において、配位子分子から金属原子からの方向等の第1の方向に向かって起きる電子供与が、NiO:COを含むCEM中の例えばカルボニル配位子のより高い(又は最も高い)占有分子軌道を含み得る、σ結合によって達成することができる。金属原子から配位子分子からの方向等の第2の方向に向かって起きる電子逆供与は、例えばカルボニル配位子の最低空分子軌道に相当し得る、π結合によって達成することができる。
【0060】
電子供与又は逆供与を説明するために、実施形態300(図3A)は、少なくとも特定の実施形態において、酸化ニッケル(NiO)を含むCEM等のCEMの置換型配位子として機能して、例えばNiO:COを形成することができる、カルボニル(CO)分子を表している。図3Aの実施形態において、σ結合310は、1個又は複数の電子が、CO配位子から例えばNiO等のCEMの金属イオンへの方向に向かって移動することを可能にする、結合性電子軌道を表し得る。実施形態320(図3B)において、π結合322及び324は、例えばCO配位子の最低空分子軌道を表す半結合性軌道を含む。CO配位子に関する特定の場合において、π結合322及び324は、例えばNi等の金属原子の「d」軌道から電子を受容することができる。特定の場合において、電子逆供与性材料は、カルボニル(CO)、ニトロシル(NO)、イソシアニド(RNC。式中、Rが、H、C~Cアルキル又はC~C10アリールである。)、アルケン(例えば、エテン)、アルキン(例えば、エチン)又はトリアルキルホスフィン若しくはトリアリールホスフィン(RP。式中、Rが、C~Cアルキル又はC~C10アリールである。)等のホスフィン等、π逆結合性配位子である。
【0061】
実施形態340(図3C)において、例えばNiO:COを含むCEM中にあるNiを含み得る金属原子は、カルボニル配位子のσ結合から電子を受容するものとして示されている。一実施形態において、カルボニル配位子のσ結合から受容した電子は、例えばNi原子の「d」軌道を補うことができ、これにより、原子を2+の酸化状態(例えば、ある材料中のNi2+。NiO:CO又はNiO:NH等)に変えることができる。したがって、CEMデバイスを相対的に導電性の状態に遷移させるための電子供与は、下記の式(7)
Ni1++Ni3+ → 2Ni2+ (7)
に実質的に従って要約することができる。
【0062】
実施形態360(図3D)において、例えばNiO:COを含むCEM中にあるNiを含み得る金属原子は、Ni原子(図3C及び図3DにおいてMによって表されている)の「d」軌道335及び337から電子が逆供与される、逆供与プロセスを逆転させるものとして示されている。NiO:CO錯体に関する特定の場合において、図3Dに提示のように、「d」軌道からの電子は、CO分子のより低い(又は最低)空分子軌道(π結合)に供与される。本明細書において式(4)に関して記述されたように、逆供与は、不均化を起こすことができ、不均化は、(式(4)と同一である)式(8)
2Ni2+ → Ni1++Ni3+ (8)
に実質的に従った同時の酸化及び還元を含んでいてもよい。
【0063】
上記の場合、このような不均化は、CEMデバイスの動作中に、例えば相対的にインピーダンスが高い状態をもたらすことができる、式(8)に示されたNi1++Ni3+としてのニッケルイオンの形成を指す。
【0064】
図3Eは、図3A図3Dのカルボニル分子によって補填され得る、一実施形態による相関電子材料中の酸素空格子点の形態の欠陥を含む代表的なNiO錯体380を示している。特定の実施形態において、NiO錯体385は、Ni原子390及び391の配位圏を表し得る。上記のように、酸素空格子点395を含み得るこのような欠陥は、CEM材料中において、電子供与及び逆供与の劣化を起こし得る。今度は、CEM材料中における電子供与及び逆供与の劣化は、CEMを主体としたデバイスの導電性を低下させ、CEMを主体としたデバイス中における電化貯蔵の増大(これは、寄生キャパシタンスを増大させ、この結果、高周波スイッチング性能を低下させ得る。)を起こし得、及び/又はCEMを主体としたデバイスの他の性能的態様に影響し得るが、特許請求された主題は、この点に関して限定されない。
【0065】
したがって、図3Eの実施形態において、例えば酸素空格子点395等のNiO錯体385中の欠陥は、酸素空格子点395を充填できる置換型配位子として動作し得る、CO配位子397又はNH配位子398によって補填することができる。CO配位子397又はNH配位子398は例えば、NiOを含むCEMフィルムが、チャンバ内において、例えばおよそ100℃~800℃の範囲の温度で気体状CO(又は気体状NH)に曝露される、アニーリング工程を利用してCEMフィルムに導入することができる。特定の実施形態において、例えばCO配位子397及びNH配位子398等の置換型配位子は、配位圏の局所的な電気陰性度を調節するように動作し得、これにより、電子供与又は逆供与を促進することができる。したがって、例えばCO配位子397及びNH配位子398等の置換型配位子の存在は、CEMを形成する配位圏中における欠陥の濃度を低減するように動作し得る。複数の実施形態において、電子供与又は逆供与の促進によって、CEMを形成する配位圏中における欠陥の濃度を低減することにより、導電性を増大させ、キャパシタンスを減少させ、及び/又はCEMを主体としたデバイスの更なる性能向上をもたらすことができる。更に、電子供与又は逆供与の促進によって、導電性フィラメントが遷移金属酸化物フィルム中に形成し得るナノイオニクスによるフィラメントの形成が阻害されて、発生しなくなる可能性がある。
【0066】
図4A及び図4Bは、支配的な配位子としての酸素を含む一実施形態によるニッケルを主体としたCEMにおける、状態密度に対比させたエネルギーを図示するグラフである。実施形態400(図4A)において、上側Hubbardバンドと呼ばれることもある空いた伝導帯410は、フェルミ準位よりごくわずかに上に存在する。下側Hubbardバンドと呼ばれることもある価電子帯420は、フェルミ準位よりわずかに下に存在する。例えばCEMの伝導帯と価電子帯との間で電子が比較的容易に移動できることを指し示している、図4Aの状態密度に対比させたエネルギーのグラフは、導電性状態(例えば、金属状態)で動作し得るCEMに対応する。特定の例において、図4Aの状態密度に対比させたエネルギーのグラフは、電子供与又は逆供与が頻繁である、インピーダンスが低い(導電性の)状態に対応し得る。置換型配位子(NiO:CO及びNiO:NH)としてカルボニル及び/又はアンモニアを利用する、NiO等のNiを含むCEMを主体とした材料の例に関しては、図4Aの状態密度に対比させたエネルギーのグラフは、Ni原子の「3d」軌道が、8個の電子を含み、Niが、2+の酸化数を含む、条件を指し示すことができる。この関係は、下記の式(9)
2Ni2+ => 3d+3d (9)
に要約することができる。
【0067】
更に、特定の実施形態において、NiOは、図4Aにおいて価電子帯420の方向等の下方にフェルミ準位を突き動かすように動作し得る、P型CEMデバイスとして動作することができる。この点に関して、本明細書において言及された「P型ドープCEM」は、CEMがインピーダンスが低い状態で動作した場合において、無ドープのCEMに比べて増大した導電性を示す特定の分子ドーパントを含む、第1の種類のCEMを意味する。CO及びNH等の置換型配位子の導入は、NiO型CEMのP型的な性質を向上するように動作し得る。したがって、少なくとも特定の実施形態において、CEMのP型動作に関する一属性は、CEM中におけるP型ドーパントの原子濃度の制御によって、インピーダンスが低い状態で動作するCEMの導電性を調整又は個別修正する能力を含んでいてもよい。特定の実施形態において、P型ドーパントの原子濃度の増大により、CEMの導電性を増大させることができるが、特許請求された主題は、この点に関して限定されない。
【0068】
実施形態450(図4B)において、特定の実施形態においてイオン化エネルギーと電子親和力との差を表し得るバンド分裂ポテンシャル(U)は、価電子帯470から伝導帯460を分離している。したがって、CEMの伝導帯と価電子帯との間で動作しないように電子が制限され得ることを指し示している、図4Bの状態密度に対比させたエネルギーのグラフは、絶縁性の(インピーダンスが高い)状態で動作し得るCEMに対応する。置換型配位子(NiO:CO及びNiO:NH)としてカルボニル及び/又はアンモニアを利用する、NiO等のNiを含むCEMを主体とした材料の例に関しては、図4Aの状態密度に対比させたエネルギーのグラフは、Ni原子の第1の「3d」軌道が、7個の電子を含むが、Niの第2の「3d」軌道が、9個の電子を含む、条件を指し示すことができる。この例において、図3EにおけるNiO錯体385等の配位圏の隣接するNi原子の酸化数は、例えばNi1+及びNi3+等、互いに対して均等でないこともあり得、Niは、2+の酸化数を含み得る。この関係は、下記の式(10)
Ni1++Ni3+ => 3d+3d (10)
に要約することができる。
【0069】
図5は、相関電子材料を製作するための方法の一実施形態500の流れ図である。図5及び本明細書に記載の他の図面において記述されたような例示的な実装形態は、提示及び記述されたもの以外のブロック、より少ないブロック、又は、特定され得るものと異なる順番で生じたブロック、又は、これらの任意の組合せを含んでいてもよい。図5の方法は、ブロック510において開始してもよく、ブロック510は、チャンバ内において、CEMの1つ又は複数の層を基材上に形成する工程を含んでいてもよい。CEMの1つ又は複数の層は、遷移金属及び支配的な配位子から形成され得る。CEMの1つ又は複数の層は、CEMを形成する配位圏中にある濃度の欠陥を有し得る。図5の方法は、ブロック520において留まってもよく、ブロック520は、置換型配位子を含む分子ドーパントにCEMの1つ又は複数の層を曝露して、P型CEMを形成する工程を含んでいてもよい。置換型配位子は、CEMを形成する配位圏中における欠陥の濃度をするように動作し得るが、配位圏中における欠陥の濃度の低減は、CEMの1つ又は複数の層中における導電性フィラメント形成を阻害する。
【0070】
本明細書において上記のように、カルボニル(CO)等の分子ドーパントは、式(5)に実質的に従って式(4)の不均化反応及び式(4)の不均化反応の逆転を起こすように、CEMデバイスの動作中における電子の共有を可能にし得る。したがって、分子ドーパントとしてカルボニルを使用したとき、図6Aは、一実施形態601による相関電子デバイス材料を製作するための方法の流れ図である。例えば図6A図6B及び図6Cにおいて記述されたような例示的な実装形態は、提示及び記述されたもの以外のブロック、より少ないブロック、又は、特定され得るものと異なる順番で生じたブロック、又は、これらの任意の組合せを含んでいてもよい。一実施形態において、方法は、例えば、ブロック610、630及び650を含んでいてもよい。図6Aの方法は、本明細書において上述された原子層堆積に関する概略的な記述に従ってもよい。図6Aの方法は、ブロック610において開始してもよく、ブロック610は、加熱されたチャンバ内において、例えば気体状態の第1の前駆物質(例えば、「AX」)に基材を曝露する工程を含んでいてもよく、第1の前駆物質が、遷移金属酸化物、遷移金属、遷移金属化合物又はこれらの任意の組合せ及び第1の配位子を含む。一例において、ブロック610において述べられたように、ニッケルシクロペンタジエニル(Ni(Cp))が利用されてもよく、式中、Niが、遷移金属を表し、Cpが、シクロペンタジエニル配位子を表す。該方法は、ブロック620において留まってもよく、ブロック620は、不活性気体若しくは排気又はその組合せの使用によって、前駆物質AX及びAXの副生成物を除去する工程を含んでいてもよい。該方法は、ブロック630において留まってもよく、ブロック630は、気体状態の第2の前駆物質(例えば、BY)に基材を曝露する工程を含んでいてもよく、第2の前駆物質は、CEMデバイスのフィルムの第1層を形成するように酸化物を含む。該方法は、ブロック640において留まってもよく、ブロック640は、不活性気体若しくは排気又は組合せの使用によって、前駆物質BY及びBYの副生成物を除去する工程を含んでいてもよい。該方法は、ブロック650において留まってもよく、ブロック650は、相関電子材料が、少なくとも5.0:1.0である第1のインピーダンス状態の第2のインピーダンス状態に対する比を示すことが可能になり得るまで、フィルムの更なる層を形成するような中間パージ及び/又は排気工程を用いて、第1の前駆物質及び第2の前駆物質に基材を曝露する工程を繰り返す工程を含んでいてもよい。
【0071】
図6Bは、一実施形態602による相関電子デバイス材料を製作するための方法の流れ図である。図6Bの方法は、化学気相堆積若しくはCVD又はプラズマ促進式CVD等のCVDの変更形態に関する概略的な記述に従ってもよい。図6Bでは、ブロック660等において、基材は、CEMに対応するABの形成を促進するような圧力及び温度の条件下において、前駆物質AXとBYとに同時に曝露されてもよい。直流プラズマ若しくはリモートプラズマの施用、前駆物質を部分的に分解させるためのホットワイヤの使用、又は、CVDの形態の例である反応を促進するためのレーザー等、更なる手法を利用して、CEMの形成をもたらしてもよい。CVDフィルムプロセス及び/又は変更形態は、例えば相関電子材料が適切な厚さを有し、少なくとも5.0:1.0である第1のインピーダンス状態の第2のインピーダンス状態に対する比等の電気的特性等の適切な特性を示すようになるまで、CVDの当業者が決定できる条件下においてある持続期間にわたり得る。
【0072】
図6Cは、一実施形態603による相関電子デバイス材料を製作するための方法の流れ図である。図6Cの方法は、物理気相堆積若しくはPVD若しくはスパッタ気相堆積又はこれらの方法及び/若しくは関連の方法の変更形態に関する概略的な記述に従ってもよい。図6Cにおいて、ブロック671において、基材は、チャンバ内において、例えば、材料ABを含むCEMの形成を促進するような温度及び圧力である特定の条件下で「視線」を有する前駆物質の衝突流に曝露されてもよい。前駆物質の供給源は例えば、別々の「ターゲット」からのAB又はA及びBであってよく、堆積は、物理的に若しくは熱的に又は他の手段により、材料A若しくはB若しくはABから構成されるターゲットから取り出されており(スパッタリングされており)、基材の「視線」に含まれる、原子又は分子の流れを使用して達成される。一実装形態において、プロセスチャンバが利用されてもよく、プロセスチャンバ内の圧力は、より低い閾値又は閾値より低い圧力値に近似し、この結果、原子若しくは分子又はA若しくはB若しくはABの平均自由行程が、およそターゲットから基材への距離になる又はこの距離より長くなる圧力値等、十分に低い値を含む。AB(又はA又はB)又は両方の流れは、反応チャンバ圧力、基材の温度並びにPVD及びスパッタデポジションの当業者によって制御される他の特性の条件によって、ABを基材上に形成するように一緒になり得る。PVD又はスパッタデポジションの他の実施形態において、周囲環境は、BY等の供給源であってもよいし、又は例えば、炭素又はCO、例えば共スパッタリングされた炭素をドープされたNiOを形成するためのスパッタリングされたニッケルの反応を目的とした、周囲Oであってもよい。PVDフィルム及びPVDフィルムの変更形態は、少なくとも5.0:1.0である第1のインピーダンス状態の第2のインピーダンス状態に対する比を示すことができる厚さ及び特性の相関電子材料が堆積されるまで、PVDの当業者が決定できる条件下において、必要なある時間にわたって継続し得る。
【0073】
この方法は、ブロック672において留まってもよく、少なくとも一部の実施形態において、ニッケル等の金属は、ターゲットからスパッタリングすることができ、遷移金属酸化物は、後続の酸化プロセスにおいて形成され得る。この方法は、ブロック673において留まってもよく、少なくとも一部の実施形態において、金属又は金属酸化物は、かなりの部分の酸素と一緒にした又は一緒にしていない気体状炭素を含むチャンバ内において、スパッタリングすることができる。
【0074】
図6Aのブロック610に関して上述したように、Ni(Cp)は、CEMフィルムの形成において利用される遷移金属及び配位子の可能な一例として指し示されている。したがって、図7は、一実施形態による相関電子材料デバイスの製作において利用される気体形態の例示的な前駆物質として機能し得る、ビス(シクロペンタジエニル)分子(Ni(C)の図を提供している。複数の実施形態において、Ni(Cは、一実施形態700による相関電子材料の製作において利用される、気体形態の前駆物質として機能し得る。図7に提示のように、ニッケルジ(シクロペンタジエニル)分子の中心の近くにあるニッケル原子は、Ni2+イオンを形成するように、+2のイオン化状態に変えられている。図7の例示的な分子において、更なる電子が、ニッケルジ(シクロペンタジエニル) (Ni(Cp))分子のシクロペンタジエニル(Cp)部分にある左上及び右下のCH部位に存在する。図7は、2つの五角形状のシクロペンタジエニル配位子に結合したニッケルを示す、略記を更に図示している。
【0075】
図8A図8Dは、一実施形態によるCEMを含むNiOを主体としたフィルムを製作するための方法において利用される、サブプロセスを示している。図8A図8Dのサブプロセスは、式(6)の前駆物質AX及びBYを利用して、NiO:COの構成要素を導電性基材に堆積させるための、原子層堆積プロセスに対応し得る。複数の実施形態において、導電性基材は、本明細書において図2に関して記述されたように、導電性基材210の構築において利用されるものと同様の材料を含む電極材料を含んでいてもよい。しかしながら、適切に材料を置き換えて、図8A図8Dのサブプロセスを利用して、他の遷移金属、遷移金属酸化物、遷移金属化合物又はこれらの組合せを利用するCEMを含むフィルムを製作してもよく、特許請求された主題は、この点に関して限定されない。
【0076】
図8A(実施形態800)に示されているように、基材850等の基材は、およそ0.5秒~180.0秒の範囲の持続期間にわたって、ニッケルジ(シクロペンタジエニル) (Ni(Cp))を含む気体状前駆物質等の式(6a)の前駆物質AX等の第1の気体状前駆物質に曝露することができる。上記のように、原子濃度等の第1の気体状前駆物質の濃度及び曝露時間は、カルボニルの形態等の炭素の最終的な原子濃度が、仕上がった材料中において、例えば、およそ0.1%~10.0%の間になるように、調節することができる。図8Aに示されているように、気体状Ni(Cp)への基材の曝露は、基材850の表面の様々な場所において、Ni(Cp)分子又はNi(Cp)モチーフの付着を起こすことができる。堆積は、例えばおよそ20.0℃~400.0℃の範囲の温度に到達し得る、加熱されたチャンバ内で実施することができる。しかしながら、およそ20.0℃未満及びおよそ400.0℃超を含む温度範囲等の更なる温度範囲が可能であり、特許請求された主題は、この点に関して限定されないことに留意すべきである。
【0077】
図8B(実施形態810)に示されているように、Ni(Cp)を含む気体状前駆物質等の気体状前駆物質に導電性基材850等の導電性基材を曝露した後、チャンバは、残留気体状Ni(Cp)及び/又はCp配位子をパージすることができる。一実施形態において、Ni(Cp)を含む気体状前駆物質の例に関しては、チャンバは、およそ0.5秒~180.0秒の範囲の持続期間にわたって、パージすることができる。1つ又は複数の実施形態において、パージ持続期間は例えば、未反応の配位子及び副生成物と、遷移金属、遷移金属化合物、遷移金属酸化物又は同様の表面及びプロセスチャンバ内に存在する他の表面とのアフィニティ(化学結合を除く)に依存し得る。したがって、図8Bの例に関しては、未反応のNi(Cp)、Ni(Cp)、Ni及び他の副生成物が、基材又はチャンバの表面に対する増大したアフィニティを示すものである場合、長いパージ持続期間を利用して、言及されたもの等の残留気体状配位子を除去してもよい。他の実施形態において、パージ持続期間は例えば、チャンバ内における気体流に依存し得る。例えば、層流が支配的であるチャンバ内の気体流は、より速い速度で残留気体状配位子を除去することができるが、乱流が支配的であるチャンバ内の気体流は、よりゆっくりした速度で残留配位子を除去することができる。特許請求された主題は、チャンバ内における流動特性にかかわらず、残留気体状材料のパージを包含することを意図されていることに留意すべきである。
【0078】
図8C(実施形態820)に示されているように、式(6a)の前駆物質BY等の第2の気体状前駆物質は、チャンバ内に導入することができる。上記のように、第2の気体状前駆物質は、酸化剤を含んでいてもよく、酸化剤は、例えばCp等の第1の配位子を押しのけ、いくつかの例を挙げると酸素(O)、オゾン(O)、一酸化窒素(NO)、過酸化水素(H)等の酸化剤によって配位子を置き換えるように働くことができる。したがって、図8Cに提示のように、酸素原子は、基材850に結合した少なくともいくつかのニッケル原子との間に、結合を形成することができる。一実施形態において、前駆物質BYは、下記の式(11)
Ni(C+O → NiO+
可能な副生成物(例えば、CO、CO、C、C、CH、CH、C、C6、...) (11)
(この場合、Cが、式(11)中のCpを置換した。)に従って、Ni(Cp)を酸化して、いくつかの更なる酸化剤及び/又はこれらの組合せを形成することができる。図8Cに示されているように、C、CO、CH及びCを含むいくつかの可能な副生成物が示されている。同様に図8Cに示されているように、カルボニル(CO)分子は、例えば部位860及び861等において、酸化ニッケル錯体に結合し得る。複数の実施形態において、このようなニッケルとカルボニルと結合(例えば、NiO:CO)は、例えば0.1%~10.0%の間の原子濃度において、CEMデバイスの実質的に迅速な導体/絶縁体遷移をもたらすことができる。
【0079】
図8D(実施形態830)に示されているように、例えばCO、CO、C、C、CH、CH、C、C等の可能な炭化水素副生成物は、チャンバからパージすることができる。特定の実施形態において、このようなチャンバのパージは、およそ0.01Pa~105.0kPaの範囲の圧力を利用して、およそ0.5秒~180.0秒の範囲の持続期間にわたって実施することができる。
【0080】
特定の実施形態において、図8A図8Dに提示の記述されたサブプロセスは、およそ1.5nm~100.0nmの範囲の厚さ等の望ましい厚さが達成されるまで、繰り返すことができる。本明細書において上記のように、例えば図8A図8Dを参照しながら提示及び記述されたもの等の原子層堆積法は、例えば1回のALDサイクルの場合、およそ0.6Å~1.5Åの範囲の厚さを有するCEMデバイスフィルムを生じさせることができる。したがって、500.0Å(50.0nm)の厚さを占めるCEMデバイスフィルムを構築するためには、単なる可能な一例として、例えばAX+BYを利用するおよそ300~900回の2種の前駆物質によるサイクルが実施されてもよい。特定の実施形態において、サイクルは時々、望ましい特性を得るために、相異なる遷移金属及び/又は遷移金属化合物及び/又は遷移金属酸化物の合間に割り込むこともあり得る。例えば、一実施形態において、NiO:COの層が形成され得る2回の原子層堆積サイクルには、例えば酸化チタンカルボニル錯体(TiO:CO)を形成するための3回の原子層堆積サイクルが後続してもよい。遷移金属及び/又は遷移金属化合物及び/又は遷移金属酸化物の他の割込みも可能であり、特許請求された主題は、この点に関して限定されない。
【0081】
特定の実施形態において、1つ又は複数の原子層堆積サイクルの完了後、基材は、アニーリングすることができ、これにより、グレイン構造の制御を補助し、CEMフィルムをち密化し、又はフィルム特性、性能若しくは耐久性を改善することができる。例えば、原子層堆積が円柱状グレインの数を生じさせる場合、アニーリングにより、円柱状グレインの境界は一緒に堆積することが可能になり、この境界は例えば、例えばCEMデバイスの抵抗の変化を低減することができる。アニーリングは、例えばCEMデバイス材料の全体にわたって、カルボニル等の炭素分子をより均一に分配すること等、更なる利益をもたらすことができ、特許請求された主題は、この点に関して限定されない。
【0082】
図9A図9Dは、一実施形態によるNiOを主体としたデバイス等のCEMデバイスを製作するための方法において使用され得る、時間に応じた前駆物質流量及び温度プロファイルを示す図である。図9A図9Dに関しては、共通の時間尺(T~T)が利用されている。図9Aは、一実施形態901による、前駆物質(例えば、AX)のための前駆物質気体流量プロファイル910を示している。図9Bに示されているように、前駆物質気体流量は、CEMデバイスを製作しているチャンバ内に前駆物質ガスが進入できるように増大させてもよい。したがって、前駆物質気体流量プロファイル910によれば、時間Tにおいて、前駆物質AXの気体流量は、およそ0.0(例えば、無視できる量である)であってもよい。時間Tにおいて、前駆物質AXの気体流量は、相対的により高い値に増大させてもよい。時間Tからおよそ0.5秒~180.0秒の範囲の時間を経た後に対応し得る時間Tにおいて、前駆物質AXガスは、例えばパージ等によって、チャンバからパージ及び/又は排気することができる。前駆物質AX気体流量は、およそ時間Tになるまで停止し得るが、この時間Tにおいては、前駆物質AX気体流量は、相対的により高い値に増大し得る。時間T及びTのとき等、時間Tの後、前駆物質AX気体流量は、後の時点で増大させるまで、0.0(例えば、無視できる量)に戻されてもよい。
【0083】
図9Bは、一実施形態902によるパージガスの気体流量プロファイル920を示している。図9Bに提示のように、パージガス流量は、製作チャンバからの例えば前駆物質ガスAX及びBYの排気を可能にするように、増大又は低下させることができる。時間Tにおいて、パージガスプロファイル920は、相対的に高いパージガス流量を指し示しており、これにより、時間T前に、製作チャンバ内の不純物気体を除去することができる。時間Tにおいて、パージガス流量は、およそ0.0に戻されてもよく、これにより、製作チャンバへの前駆物質AXガスの導入が可能になる。時間Tにおいて、パージガス流量は、製作チャンバからの過剰な前駆物質ガスAY及び反応副生成物の除去を可能にするように、およそ0.5秒~180.0秒の範囲の持続期間にわたって増大させてもよい。
【0084】
図9Cは、一実施形態903による前駆物質ガス(例えば、BY)の気体流量プロファイル930を示している。図9Cに提示のように、前駆物質BYの気体流量は、およそ時間Tになるまで、およそ0.0の流量において留まり得るが、ここで、気体流量は、相対的により高い値に増大させてもよい。時間Tからおよそ0.5秒~180.0秒の範囲の時間を経た後に相当し得る時間Tにおいて、前駆物質BYガスは、例えばパージ等によって、チャンバからパージ及び/又は排気することができる。前駆物質BYの気体流量は、およそ時間Tになるまで、0.0に戻されてもよいが、この時間Tにおいて、前駆物質BYの気体流量は、相対的により高い値に増大させてもよい。
【0085】
時間Tにおいて、パージガス流量は、相対的に低い値に低下されてもよく、これにより、前駆物質BYガスは、製作チャンバに進入することができる。前駆物質BYガスへの基材の曝露後、パージガス流量はやはり、製作チャンバからの前駆物質BYガスの除去を可能にするように増大されてもよく、これは例えば、CEMデバイスフィルムの単一の原子層の完了を通知することができる。前駆物質BYガスの除去後、前駆物質AXガスは、CEMデバイスフィルムの第2の原子層の堆積サイクルを開始するように、製作チャンバに再導入されてもよい。特定の実施形態において、製作チャンバへの前駆物質AXガスの導入、製作チャンバからの残留前駆物質AXガスのパージ、前駆物質BYガスの導入及び残留前駆物質BYガスのパージに関する上記プロセスは例えば、例えばおよそ300回~900回の範囲で繰り返されてもよい。上記プロセスの繰返しは例えば、例えばおよそ20.0nm~100.0nmの間の厚さ寸法を有するCEMデバイスフィルムをもたらすことができる。
【0086】
図9Dは、一実施形態904による相関電子デバイス材料を製作するための方法において使用される、時間に応じた温度プロファイルを示す図である。図9Dにおいて、堆積温度は、例えばおよそ20.0℃~900.0℃の範囲の温度に到達するように上昇させることができる。しかしながら、特定の実施形態において、およそ100.0℃~800.0℃の範囲の温度範囲等、いくらかより狭い範囲が利用されてもよい。更に、特定の材料に関しては、およそ100.0℃~およそ600.0℃等、更により狭い温度範囲が利用されてもよい。
【0087】
図9E図9Hは、一実施形態による相関電子デバイス材料を製作するための方法において使用され得る、時間に応じた前駆物質流量及び温度プロファイルを示す図である。図9E図9Hに関しては、共通の時間尺(T~T)が利用されている。905に示されているように、前駆物質AXは、時間Tにおいて、製作チャンバ内に持ち込むことができるが、時間T~時間Tは、実施形態950に示されているようなパージガス流量の増大によって、堆積準備中のプロセスチャンバをパージ及び/又は排気するために使用される。実施形態940は、時間Tにおいて起きる前駆物質AXの流量の相対的な増大を示している。同様に時間Tにおいて、第2の反応物質である前駆物質BYの流量は、実施形態907に示されているように、気体流量が960において増大するにつれて、増大され得る。2種の前駆物質(AX及びBY)は、CEMフィルムの厚さのために必要な時間量を求めて、実質的に同時に流動することができる。図9H(実施形態908)に提示の温度プロファイルは、堆積のために温度が、時間Tの前又は近くに設定されていることを示している。
【0088】
図10A図10Cは、一実施形態によるCEMデバイスを製作するための堆積及びアニーリングプロセスにおいて使用される、時間に応じた温度プロファイルを示す図である。図10A(実施形態1000)に示されているように、堆積は、T~T1m等の初期時間枠中に実施することができ、この時間の最中において、CEMデバイスフィルムは、原子層堆積プロセスを利用して適切な基材に堆積させることができる。CEMデバイスフィルムの堆積後、アニーリング期間が後続してもよい。一部の実施形態において、いくつかの原子層堆積サイクルは、例えばおよそ10回のサイクルから1000回以上のサイクルまでの範囲であり得るが、特許請求された主題は、この点に関して限定されない。適切な基材へのCEMフィルムの堆積完了後、堆積温度に比べて相対的に高い温度のアニーリング又は同じ温度又はより低い温度におけるアニーリングは、時間T1n~時間T1z等においておよそ20.0℃(T)~900.0℃(T)の範囲の温度を利用して実施することができる。しかしながら、特定の実施形態において、およそ100.0℃(T)~800.0℃(T)の範囲の温度範囲等のより狭い範囲が利用されてもよい。更に、特定の材料に関しては、およそ200.0℃(T)~およそ600.0℃(T)等の更により狭い温度範囲が利用されてもよい。アニーリング時間は、およそ1.0秒~およそ5.0時間の範囲であり得るが、例えばおよそ0.5分~180.0分の持続期間により狭くすることもできる。特許請求された主題は、CEMデバイスのアニーリングのためのいかなる特定の温度範囲にも限定されないし、特許請求された主題は、いかなる特定のアニーリングの持続期間にも限定されないことに、留意すべきである。他の実施形態において、堆積方法は、化学気相堆積、物理気相堆積、スパッタリング、プラズマ促進式化学気相堆積又はCEMフィルムを形成するための他の堆積法若しくはALDとCVDとの組合せ等の堆積法の組合せであってもよい。
【0089】
複数の実施形態において、アニーリングは、気体状の窒素(N)、水素(H)、酸素(O)、水又は水蒸気(HO)、一酸化窒素(NO)、亜酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)、オゾン(O)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、アンモニア(NH)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH)、アセチレン(C)、エタン(C)、プロパン(C)、エチレン(C)、ブタン(C10)又はこれらの任意の組合せのうちの1つ又は複数を含む気体環境下で実施することができる。アニーリングは、減圧環境下において、又は、複数の雰囲気の圧力を含む大気圧までの圧力及び大気圧超の圧力において、実施することもできる。
【0090】
図10B(実施形態1001)に示されているように、堆積は、T~T2m(堆積-1)等の初期時間枠中に実施することででき、この初期時間枠中に、およそ10~およそ500回の間の原子層堆積サイクルを実施することができる。時間T2nにおいて、アニーリング期間が開始され得、時間T2zになるまで継続し得る。時間T2zの後、第2の組の原子層堆積サイクルは、おそらくは例えばおよそ10~およそ500回の間の回数のサイクルとして、実施されてもよい。図10Bに示されているように、第2の組の原子層堆積(堆積-2)サイクルが実施されてもよい。他の実施形態において、堆積法は、化学気相堆積、物理気相堆積、スパッタリング、プラズマ促進式化学気相堆積又はCEMフィルムを形成するための他の堆積法若しくはALDとCVDとの組合せ等の堆積法の組合せであってもよい。
【0091】
図10C(実施形態1002)に提示のように、堆積は、時間T~時間T3m等の初期時間枠中に実施することができ、この初期時間枠中に、およそ10~およそ500回の間の原子層堆積サイクルを実施することができる。時間T3nにおいて、第1のアニーリング期間(アニーリング-1)が開始され得、時間T3zになるまで継続し得る。時間T3jにおいて、第2の組の原子層堆積サイクル(堆積-2)は、時間T3kになるまで実施することができ、この時間T3kにおいて、チャンバ温度は、第2のアニーリング期間(アニーリング-2)が、例えば時間T3lで開始するように生じる態様で、増大させることができる。他の実施形態において、堆積法は、化学気相堆積、物理気相堆積、スパッタリング、プラズマ促進式化学気相堆積又はCEMフィルムを形成するための他の堆積法若しくはALDとCVDとの組合せ等の堆積法の組合せであってもよい。
【0092】
本明細書において上記のように、窒素含有分子(例えば、アンモニア、シアノ(CN)、アジ化物イオン(N )、エチレンジアミン(C)及びphen(1,10-フェナントロリン)等)等の分子ドーパントは、式(5)に実質的に従って式(4)の不均化反応及び式(4)の不均化反応の逆転を起こすように、CEMデバイスの動作中における電子の共有を可能にし得る。図11A図11Cは、1つ又は複数の実施形態による窒素含有分子を使用して相関電子材料フィルムを製作するための方法の流れ図である。例えば図11A図11B及び図11Cにおいて記述されたような例示的な実装形態は、提示及び記述されたもの以外のブロック、より少ないブロック、又は、特定され得るものと異なる順番で生じたブロック、又は、これらの任意の組合せを含んでいてもよい。一実施形態において、方法は、例えば、ブロック1110、1120、1130、1140及び1150を含んでいてもよい。図11Aの方法(実施形態1101)は、本明細書において上述された原子層成長に関する概略的な記述に従ってもよい。図11Aの方法は、ブロック1110において開始してもよく、ブロック1110は、加熱されたチャンバ内において、例えば気体状態の第1の前駆物質(例えば、「AX」)に曝露する工程を含んでいてもよく、第1の前駆物質は、遷移金属酸化物、遷移金属、遷移金属化合物又はこれらの任意の組合せ及び第1の配位子(第1の配位子は、窒素ドーパント供給源を含む必要はない。)を含む。ニッケル前駆物質のための窒素含有配位子の例としては、ニッケル-アミド、ニッケル-イミド及びニッケル-アミジネート(Ni(AMD))が挙げられる。図11Aの方法は、ブロック1120において留まってもよく、ブロック1120は、不活性気体若しくは排気又はこれらの組合せによって過剰な前駆物質AX及びAXの副生成物を除去する工程を含んでいてもよい。図11Aの方法は、ブロック1130において留まってもよく、ブロック1130は、気体状態の第2の前駆物質(例えば、BY)に基材を曝露する工程を含んでいてもよく、第2の前駆物質は、CEMデバイスのフィルムの第1の層を形成するように酸化物を含み、及び/又は、窒素を主体とした前駆物質(アンモニア(NH)、エチレンジアミン(C)又は酸化窒素系列(Nの構成要素等)、例えば一酸化窒素(NO)、亜酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)又はNO 配位子を有する前駆物質等)を含有してもよい。図11Aの方法は、ブロック1140において留まってもよく、ブロック1140は、不活性気体の使用によって、若しくは排気によって、又はプロセスチャンバの排気と不活性気体を使用したプロセスチャンバのパージとの組合せによって、過剰な前駆物質BY及びBYの副生成物を除去する工程を含んでいてもよい。図11Aの方法は、ブロック1150において留まってもよく、ブロック1150は、相関電子材料が、少なくとも5.0:1.0である第1のインピーダンス状態の第2のインピーダンス状態に対する比を示すことが可能になるまで、フィルムの更なる層を形成するような中間パージ及び/又は排気工程を用いて、第1の前駆物質及び第2の前駆物質に基材を曝露する工程を繰り返す工程を含んでいてもよい。
【0093】
図11Bは、一実施形態1102による窒素含有分子を使用して相関電子デバイス材料を製作するための方法の流れ図である。図11Bの方法は、化学気相成長若しくはCVD又はプラズマ促進式CVD等のCVDの変更形態に関する概略的な記述に従ってもよい。図11Bでは、ブロック1160等において、基材は、CEMに対応するABの形成を促進するような圧力及び温度の条件下において、前駆物質AXとBYとに同時に曝露されてもよい。直流プラズマ若しくはリモートプラズマの施用、前駆物質を部分的に分解させるためのホットワイヤの使用、又は、CVDの形態の例である反応を促進するためのレーザー等の更なる手法を利用して、CEMの形成をもたらしてもよい。CVDフィルムプロセス及び/又は変更形態は、例えば相関電子材料が適切な厚さを有し、少なくとも5.0:1.0である第1のインピーダンス状態の第2のインピーダンス状態に対する比等の電気的特性等の適切な特性を示すようになるまで、CVDの当業者が決定できる条件下においてある持続期間にわたって実施され得る。
【0094】
図11Cは、一実施形態1103による窒素含有分子を使用して相関電子デバイス材料を製作するための方法の流れ図である。図11Cの方法は、物理気相成長若しくはPVD若しくはスパッタ気相成長又はこれらの変更形態及び/若しくは関連の方法に関する概略的な記述に従ってもよい。図11Cにおいて、基材は、チャンバ内において、例えば、材料ABを含むCEMの形成を促進するような温度及び圧力である特定の条件下で「視線」を有する前駆物質の衝突流に曝露されてもよい。前駆物質の供給源は例えば、別々の「ターゲット」からのAB又はA及びBであってよく、堆積は、原子若しくは分子又はA若しくはB若しくはABの平均自由行程が、およそターゲットから基材への距離になる又はこの距離より長くなるのに十分な程度に圧力が低い、又はこの十分な程度より圧力が低いプロセスチャンバ内において、物理的に若しくは熱的に又は他の手段により、材料A若しくはB若しくはABから構成されるターゲットから取り出されており(スパッタリングされており)、基材の「視線」に含まれる、原子又は分子の流れを使用してもたらされる。AB(又はA又はB)又は両方の流れは、反応チャンバ圧力、基材の温度並びにPVD及びスパッタ成長の当業者によって制御される他の特性の条件によって、ABを基材上に形成するように一緒になり得る。PVD又はスパッタ成長の他の実施形態において、周囲環境は、BY等の供給源であってもよいし、又は例えば、NH等の窒素種をドープされたNiOを形成するためのスパッタリングされたニッケルの反応を目的とした、周囲NHであってもよい。PVDフィルム及びPVDフィルムの変更形態は、少なくとも5.0:1.0である第1のインピーダンス状態の第2のインピーダンス状態に対する比を示すことができる厚さ及び特性の相関電子材料が堆積されるまで、PVDの当業者が決定できる条件下において必要な時間にわたって継続する。
【0095】
複数の実施形態において、図12Aの例示的な分子において示されたような単一の窒素含有前駆物質を、AX及び窒素を主体とした気体等の気体状前駆物質の混合物の代わりに利用して、相関電子材料デバイスを製作してもよい。図12Aは、一実施形態1201による相関電子材料デバイスの製作において利用される前駆物質として機能し得る、ニッケルアミジネートNi(AMD)の図である。図12Aに提示のように、Ni(AMD)分子の中心の付近にあるニッケル原子は、4個の窒素原子によって取り囲まれており、4個の窒素原子のうちの1個又は複数は、炭化水素基(図12Aにおいて「R」によって表されている)に結合していてもよい。適切な炭化水素基としては、限定されるわけではないが、C~C直鎖状及び分岐状アルキル基、例えばイソプロピル基(C)、イソブチル基(C)又はメチル基(CH)を挙げることができる。特定の実施形態において、Ni(AMD)は、前駆物質AXとして利用することができ、これにより、AX及びアンモニア等の別個の窒素を主体とした気体を利用する必要がなくなる。特定の実施形態において、例えば前駆物質BYへの曝露に応答して起こり得る酸化等の酸化は、窒素原子が電子供与性又は逆供与正材料として機能できるように、窒素原子を放出することができる。
【0096】
別の実施形態において、図12Bの例示的な分子において示されたような窒素含有前駆物質は、相関電子材料デバイスの製作において、AX及び窒素を主体とした気体等の気体状前駆物質の代わりに利用されてもよい。例えば、図12B(実施形態1202)の例示的な分子において示されたように、ニッケル2-アミノペンタ-2-エン-4-オナト(Ni(apo))は、前駆物質AXとして利用することができ、これにより、AX及びアンモニア等の別個の窒素を主体とした気体を利用する必要がなくなる。図12B(実施形態1202)の例示的な分子において示されたように、窒素は、Ni(apo)分子の中心の付近に配置された2個の窒素原子によって供給され得る。特定の実施形態において、例えば前駆物質BYへの曝露に応答して起こり得る酸化等の酸化は、窒素原子が電子供与性又は逆供与正材料として機能できるように、窒素原子を放出することができる。
【0097】
図13A図13Dは、一実施形態によるCEMを含むフィルムを製作するための方法において利用される、サブプロセスを示している。図13A図13Dのサブプロセスは、式(6b)の前駆物質AX、BY及び窒素を主体とした気体(アンモニア(NH)及びエチレンジアミン(C)等)を利用して、NiO:NHの成分を導電性基材に堆積させることができる、原子層成長プロセスに対応し得る。しかしながら、適切な材料に材料を置き換えて、図13A図13Dのサブプロセスを利用して、他の遷移金属、遷移金属化合物、遷移金属酸化物又はこれらの組合せを利用するCEMを含むフィルムを製作してもよく、特許請求された主題は、この点に関して限定されない。
【0098】
図13A(実施形態1301)に提示のように、基材1350等の基材は、例えばおよそ1.0秒~120.0秒の範囲の持続期間にわたって、気体状ニッケルジ(シクロペンタジエニル)(Ni(Cp))、気体状ニッケルアミジネート(Ni(AMD))及び/又は気体状ニッケル2-アミノペンタ-2-エン-4-オナトを含んでいてもよい式(6a)の前駆物質AX等の第1の気体状前駆物質に曝露されてもよい。式(6b)に従う一実施形態において、前駆物質AXは、アンモニア(NH)、エチレンジアミン(C)又は他の窒素含有配位子等の窒素含有前駆物質を伴い得る。上記のように、第1の気体状前駆物質の原子濃度及び曝露時間は、製作された相関電子材料中において例えばおよそ0.1%~10.0%の間である窒素の最終的な原子濃度をもたらすように、調節することができる。
【0099】
図13Aに提示のように、例えば気体状ニッケルジ(シクロペンタジエニル)(Ni(Cp))と気体状アンモニア(NH)との混合物への基材の曝露は、基材1350の表面の様々な場所において、Ni(Cp)分子の付着を起こすことができる。複数の実施形態において、このようなNi(Cp)及びアンモニア(NH)の付着又は堆積は、例えばおよそ20.0℃~400.0℃の範囲の温度に到達し得る、加熱されたチャンバ内で実施することができる。しかしながら、およそ20.0℃未満及びおよそ400.0℃超を含む温度範囲等の更なる温度範囲が可能であり、特許請求された主題は、この点に関して限定されないことに留意すべきである。Ni(AMD)(図12Aにおいて示された例示的な分子)及び/又はNi(apo)図12Bにおいて示された例示的な分子)を含む気体状前駆物質は、気体状Ni(Cp)と気体状アンモニア(NH)との混合物の代わりに利用されてもよいことに留意すべきである。
【0100】
図13B(実施形態1302)に提示のように、Ni(Cp)及びアンモニア(NH)を含む気体状前駆物質の混合物等の気体状前駆物質に導電性基材1350等の導電性を曝露した後、チャンバは、残留気体状Ni(Cp)、Cp配位子及び結合していないアンモニア分子をパージすることができる。一実施形態において、Ni(Cp)とNHとの気体状混合物を含む気体状前駆物質の例に関しては、チャンバは、およそ5.0秒~180.0秒の範囲の持続期間にわたってパージすることができる。1つ又は複数の実施形態において、パージ持続期間は例えば、遷移金属又は遷移金属酸化物等との未反応の配位子及び/又は未反応のアンモニア分子のアフィニティ(化学結合を除く)に依存し得る。したがって、図13Bの例に関しては、未反応のCp及び/又は未反応のアンモニア分子が、Niに対する増大したアフィニティを示すものである場合、より長いパージ持続期間を利用して、Cp配位子等の残留気体状配位子を除去してもよいし、更には、未反応のアンモニアを除去してもよい。他の実施形態において、パージ持続期間は例えば、チャンバ内における気体流に依存し得る。例えば、層流が支配的であるチャンバ内の気体流は、より速い速度で残留気体状配位子及び/又はアンモニアを除去することができるが、乱流が支配的であるチャンバ内の気体流は、よりゆっくりした速度で残留配位子を除去することができる。特許請求された主題は、チャンバ内における流動特性にかかわらず、気体状材料が除去される速度を上昇又は低下できる残留気体状材料のパージを包含することを意図されていることに留意すべきである。
【0101】
図13C(実施形態1303)に提示のように、式(6a)及び(6b)の前駆物質BY等の第2の気体状前駆物質は、チャンバに導入することができる。上記のように、第2の気体状前駆物質は、酸化剤を含んでいてもよく、酸化剤は、例えばCp等の1種又は複数の第1の配位子を押しのけ、いくつかの例を挙げると酸素(O)、オゾン(O)、一酸化窒素(NO)、過酸化水素(H)等の酸化剤によって配位子を置き換えるように動作し得る。したがって、図13Cに提示のように、酸素原子は、例えば相対的に少ない数のアンモニア(NH)を押しのけることに加えて、基材1350に結合した少なくともいくつかのニッケル原子との間に、結合を形成することができる。一実施形態において、前駆物質BYは、下記の式(12)
Ni(C+O → NiO+
可能な副生成物(例えば、CO、CO、C、C、CH、CH、C、C、NH...) (12)
(この場合、Cが、式(12)中のCpを置換した。)に従って、Ni(Cp)を酸化して、いくつかの更なる酸化剤及び/又はこれらの組合せを形成することができる。図4Cによれば、C、CO、CH及びCを含むいくつかの可能な副生成物が示されている。同様に図13Cに提示のように、アンモニア(NH)は、例えば1361中の部位1360等において酸化ニッケル錯体に結合した状態のままであり得る。複数の実施形態において、このようなニッケルとアンモニアとの結合(例えば、NiO:NH)は、製作されたCEMデバイス中において例えば0.1%~10.0%の間である原子濃度において、CEMデバイスの実質的に迅速な導体/絶縁体遷移をもたらすことができる電子供与又は逆供与を可能にし得る。
【0102】
図13D(実施形態1304)に提示のように、例えば未反応のアンモニアに加えて、CO、CO、C、C、CH、CH、C、C等の可能な炭化水素副生成物は、チャンバからパージすることができる。特定の実施形態において、このようなチャンバのパージは、およそ0.25Pa~100.0kPaの範囲の圧力を利用して、およそ5.0秒~180.0秒の範囲の持続期間にわたって実施することができる。
【0103】
特定の実施形態において、図13A図13Dにおいて記述されたサブプロセスは、およそ200.0Å~1000.0Åの範囲の厚さ等の望ましい厚さの相関電子材料が達成されるまで、繰り返すことができる。本明細書において上記のように、例えば図13A図13Dを参照しながら提示及び記述されたもの等の原子層成長法は、例えばおよそ0.6Å~1.5Åの範囲の厚さを占めるCEMデバイスフィルムを生じさせることができる。したがって、500.0Åの厚さを占めるCEMデバイスフィルムを構築するためには、単なる可能な一例として、例えばAX気体+(NH又は窒素を含む他の配位子)+BY気体を利用するおよそ300~900回の2種の前駆物質によるサイクルが実施されてもよい。特定の実施形態において、サイクルは時々、望ましい特性を得るために、相異なる遷移金属及び/又は遷移金属酸化物の合間に割り込むこともあり得る。例えば、一実施形態において、NiO:NHの層が形成され得る2回の原子層成長サイクルには、例えば酸化チタンとアンモニアとの錯体(TiO:NH)を形成するための3回の原子層成長サイクルが後続してもよい。遷移金属及び/又は遷移金属酸化物の他の割込みも可能であり、特許請求された主題は、この点に関して限定されない。
【0104】
特定の実施形態において、1つ又は複数の原子層成長サイクルの完了後、基材は、アニーリングすることができ、これにより、グレイン構造の制御を補助することができる。例えば、原子層成長が円柱状グレインの数を生じさせる場合、アニーリングにより、円柱状グレインの境界は一緒に成長することが可能になり、この境界は例えば、例えばCEMデバイスの相対的にインピーダンスが高い状態の抵抗を低下させ、及び/又は電流容量を向上することができる。アニーリングは、例えばCEMデバイス材料の全体にわたって、アンモニア等の窒素分子をより均一に分配すること等、更なる利益をもたらすことができ、特許請求された主題は、この点に関して限定されない。
【0105】
複数の実施形態において、窒素含有ドーパントを含むCEMデバイスは、図9A図9Dに関して提示及び記述された前駆物質流量プロファイル並びに図10A図10Cを参照して提示及び記述された温度プロファイルを利用して、製作することができる。
【0106】
図14図18は、相関電子材料を製作するための更なる方法の実施形態の流れ図である。図14(実施形態1400)の方法は、ブロック1410において開始してもよく、ブロック1410は、Ni等のdブロック元素又はfブロック元素を含むフィルムを堆積させる工程を含んでいてもよい。複数の実施形態において、堆積させる工程は、例えば、PVD(例えば、プラズマを含んでいてもよく、及び/又は反応性気体を含んでいてもよい、スパッタリング)、CVD、MOCVD、ALD、ガスクラスターイオンビーム(GCIB)成長、プラズマALD、プラズマCVD及びプラズマMOCVDを含んでいてもよい。図14の方法は、ブロック1420において留まってもよく、ブロック1420は、例えばNiを酸化して、例えばNiOを形成すること、又は、O、O、O*、HO、NO、NO若しくはNO*供給源(「*」が、任意の整数を含む。)を利用して酸化若しくは酸窒化物化することによって、dブロック元素又はfブロック元素及び支配的な配位子を含むフィルムを形成する工程を含んでいてもよい。ブロック1420において、フィルムは、例えばO 2-(ペルオキシド)、I(ヨウ化物イオン)、Br(臭化物イオン)、S2-(硫黄)、SCN(チオシアン酸イオン、[SCN](炭素が間に入っている状態の硫黄-炭素-窒素配位子)、Cl(塩化物イオン)、N アジド、F(フッ化物イオン)、NCO(シアネート)、OH(ヒドロキシド)、C 2-オキサレート、HO(水)、NCS(イソチオシアネート)、CHCN(アセトニトリル)、CN(py又はピリジン)、NH、エチレンジアミン(C(NH)、bipy(2,2’-ビピリジン)、C10(phen(1,10-フェナントロリン))、C12(フェナントロリン)、NO (ニトリト)、PPh(トリフェニルホスフィン又はP(C)、CN-(シアン化物イオン)及びCO等のスペクトル系列配位子等の分子ドーパントをドープされてもよい。分子ドーパントは、C(式中、x、y及びzが、整数であり、少なくともx又はy又はzが1である。)、C(式中、x、y及びzが整数であり、少なくともx又はy又はzが、1である。)及びN(式中、x及びyが、整数であり、少なくともx又はyが、1である。)の分子等の炭化水素、カルボネート、ヒドロキシド及び窒素錯体を含んでいてもよい。
【0107】
酸化又は酸窒化物化は、およそ0.01kPa~800.0kPaの範囲の圧力及び20.0℃~1100.0℃の範囲の温度において実施されてもよい。特定の実施形態において、酸化又は酸窒化物化は、およそ50.0℃~900.0℃の範囲の温度で実施されてもよい。特定の実施形態においては、酸化又は酸窒化物化は、1.0秒~5.0時間の範囲の時間期間にわたって実施することができるが、特定の実施形態においては、およそ1.0秒~60.0分の範囲で実施されてもよい。ブロック1430において、CEMフィルムは、メタン(CH)等の炭素を主体とした供給源の利用等によって、ドーパント配位子をドープされてもよい。ブロック1440において、フィルムをアニーリングして、例えばCO又はNH等の特定のドーパント種を形成することができる。高温におけるアニーリング又は堆積温度に比べて同じ温度若しくはより低い温度におけるアニーリングは、およそ20.0℃(T)~900.0℃(T)の範囲の温度を利用して実施することができる。しかしながら、特定の実施形態において、およそ100.0℃(T)~800.0℃(T)の範囲の温度範囲等のより狭い範囲が利用されてもよい。ブロック1450において、更なるアニーリングは、ブロック1440において使用された温度と同様の温度を使用して実施することができるが、少なくとも特定の実施形態において、異なる温度範囲を使用してもよい。ブロック1450におけるアニーリングは、特定のドーパント種分子(CO又はNH等)をdブロック元素又はfブロック元素の原子に移動させるように動作し得る。
【0108】
図15(実施形態1500)の方法は、ブロック1510において開始してもよく、ブロック1510は、Ni等のdブロック元素又はfブロック元素及びNiO等の配位圏が形成されるような支配的な配位子を含む、フィルムを堆積させる工程を含んでいてもよい。特定の実施形態において、配位圏は、酸素空格子点等の支配的な配位子の空格子点を含んでいてもよい。ブロック1520において、フィルムは、ブロック1420に関して記述されたもの等のスペクトル系列配位子等の分子ドーパントをドープされてもよい。ブロック1530において、フィルムをアニーリングして、CO又はNH等の特定のドーパント種を形成することができる。ブロック1540において、フィルムをアニーリングして、CO又はNH等の特定のドーパント種をdブロック元素原子又はfブロック元素原子に移動させることができる。
【0109】
図16(実施形態1600)の方法は、ブロック1610において開始してもよく、ブロック1610は、ドーパント種がフィルムに組み込まれた状態になるように、Ni等のdブロック元素又はfブロック元素及びブロック1420に関して記述されたもの等の分子ドーパントを含むフィルムを堆積させる工程を含んでいてもよい。複数の実施形態において、フィルムに組み込まれたドーパント種は、MOCVDプロセスにおける有機配位子等のドーパント配位子を形成することができる。有機配位子によるMOVCDプロセスは、ビス(2,4-ペンタンジオナト)又はアセチルアセトナト(acac)等のβ-ジケトネート型配位子、1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロアセチルアセトナト(hfac)、2,2,6,6-テトラメチル-3,5,-ヘプタンジオナト(thd)、シクロペンタジエニル(Cp)並びにシクロペンタジエニルのエチル誘導体及びメチル誘導体(MeCp)、(CpEt)等のシクロペンタジエニル型配位子、並びに、エトキシ(OEt)、メトキシ(OMe)及びイソプロポキシ(OiPr)等のアルコキシ基型配位子を利用することができる。ブロック1630において、フィルムをアニーリングして、CO又はNH等の特定のドーパント種をdブロック元素原子又はfブロック元素原子(Ni等)に移動させることができる。
【0110】
図17(実施形態1700)の方法は、ブロック1710において開始してもよく、ブロック1710は、ドーパント種がフィルムに組み込まれた状態になるように、Ni等のdブロック元素又はfブロック元素及びブロック1420に関して記述されたもの等の分子ドーパントを含むフィルムを堆積させる工程を含んでいてもよい。複数の実施形態において、フィルムに組み込まれたドーパント種は、ドーパント配位子(MOCVDプロセスにおける有機配位子等)を形成することが可能であり得る。ブロック1720において、フィルムをアニーリングして、CO又はNH等の特定のドーパント種を(Ni等の)dブロック元素原子又はfブロック元素原子に移動させることができる。
【0111】
図18(実施形態1800)の方法は、ブロック1810を含んでいてもよく、ブロック1810は、支配的な配位子への主要な結合を含む配位圏中にdブロック元素又はfブロック元素を堆積させる工程を含んでいてもよい。配位圏は、程度は下がるが、ブロック1420に関して記述された分子ドーパント等、分子ドーパントへの結合を含んでいてもよい。CEMデバイスの動作中に実施され得るブロック1820は、CEM挙動をもたらすために、分子エネルギー準位の中及び外への電子の移動を可能にする工程を含んでいてもよい。このような挙動は、CEMデバイスのインピーダンスが低い状態と、インピーダンスが高い状態とを切り替えることを含んでいてもよい。
【0112】
特定の実施形態において、CEMデバイスは、多種多様な集積回路の類型のいずれかの中に実装することができる。例えば、一実施形態において、数多くのCEMデバイスは、集積回路中に実装して、プログラマブルメモリアレイを形成することが可能であり、プログラマブルメモリアレイは例えば、1つ又は複数のCEMデバイスのインピーダンス状態の変更によって再構成することができる。別の実施形態において、プログラマブルCEMデバイスは、例えば不揮発性メモリアレイとして利用され得る。当然ながら、特許請求された主題は、本明細書において提供された具体例に範囲が限定されない。
【0113】
複数のCEMデバイスは、例えば第1の相関電子材料を有する第1の相関電子デバイス及び第2の相関電子材料を有する第2の相関電子デバイスを含んでいてもよい、集積回路デバイスをもたらすように形成され得、第1の相関電子材料及び第2の相関電子材料は、実質的に相違するインピーダンス特性を備え得る。更に、一実施形態において、互いに異なるインピーダンス特性を備える第1のCEMデバイス及び第2のCEMデバイスが、集積回路の特定の層中に形成され得る。更に、一実施形態において、集積回路の特定の層中に第1のCEMデバイス及び第2のCEMデバイスを形成することは、少なくとも部分的に、選択的なエピタキシャル堆積によってCEMデバイスを形成することを含んでいてもよい。別の実施形態において、集積回路の特定の層中にある第1のCEMデバイス及び第2のCEMデバイスは少なくとも部分的に、例えば第1のCEMデバイス及び/又は第2のCEMデバイスのインピーダンス特性を改変するようなイオン注入によって、形成されていてもよい。
【0114】
更に、一実施形態において、2個以上のCEMデバイスは少なくとも部分的に、相関電子材料の原子層堆積によって、集積回路の特定の層中に形成され得る。更なる実施形態において、第1の相関電子スイッチ材料の複数の相関電子スイッチデバイスのうちの1つ又は複数、及び第2の相関電子スイッチ材料のうちの複数の相関電子スイッチデバイス1つ又は複数は少なくとも部分的に、ブランケット堆積と選択的なエピタキシャル堆積との組合せによって形成され得る。更に、一実施形態において、第1のアクセスデバイス及び第2のアクセスデバイスは、それぞれ第1のCEMデバイス及び第2のCEMデバイスに実質的に隣接するように位置させてもよい。
【0115】
更なる実施形態において、複数のCEMデバイスのうちの1つ又は複数は集積回路中において、一実施形において第1の金属化層の導電線と、第2の金属化層の導電線との1つ又は複数の交点に個別に位置させてもよい。1つ又は複数のアクセスデバイスは、第1の金属化層の導電線と、第2の金属化層の導電線との交点のうちの各1つ又は複数に位置させてもよく、アクセスデバイスは、一実施形態において、各CEMデバイスと組を作っていてもよい。
【0116】
上記記述では、有形の成分(及び/又は同様に、有形の材料)が論述されている状況等の使用に関する特定の文脈において、「上」であることと、「覆うような」であることとの間には区別が存在する。一例として、基材「上」への物質の堆積は、この例の場合における介在物質(例えば、間に行うプロセスの操作中に形成された介在物質)等の介在物が堆積された物質と基材との間にない状態で、有形の物理的な直接接触を伴う堆積を指す。しかしながら、基材を「覆うような」堆積は、基材「上」への堆積を可能性として含む(理由として、「上」であることは、厳密には、「覆うような」であると記述されている可能性もあるため)と理解されている一方で、堆積された物質が、必ずしも、基材と有形の物理的に直接接触をしているとは限らない態様で、1種又は複数の介在物質等の1種又は複数の介在物が堆積された物質と基材との間に存在する状況を含むとも理解されている。
【0117】
有形の材料及び/又は有形の成分が論述されている文脈等の使用に関する適切な特定の文脈において、「真下」であることと、「下」であることとの間にも同様の区別がなされる。このような使用に関する特定の文脈において、「真下」は、(先述した「上」と同様の)有形の物理的な接触を必ず示唆することを意図されているが、「下」は、有形の物理的な直接接触が存在する状況を可能性として含むが、1種又は複数の介在物質等の1種又は複数の介在物が存在する場合等において、必ずしも有形の物理的な直接接触を示唆するとは限らない。したがって、「上」は、「すぐ上」を意味するように理解されており、「真下に」は、「すぐ下」を意味するように理解されている。
【0118】
「覆うような」及び「下」等の用語は、上記「上方」、「下方」、「頂部」及び「底部」等の用語と同様に理解されることも、同様に理解されている。これらの用語は、論述を円滑にするために使用可能であるが、特許請求された主題の範囲を必ず制限することを意図されていない。一例として、例えば、「覆うような」という用語は、クレームの範囲が、実施形態が例えば上下を逆にした状態である場合と比較したとき等において、一実施形態が表側を上にした状態である状況のみに限定されることを示唆するように解されない。一例は、例えば様々な時間(例えば、製作中)における方向付けが、必ずしも、最終的な製品の方向付けに対応するとは限らない可能性がある、フリップチップを一例示として含む。したがって、一例としてある物体が、同様に一例である上下を逆にした状態等の特定の方向付けされた状態で、適用可能なクレームの範囲に含まれる場合は、適用できる逐語的なクレームの文言がそうではないと解釈される可能性を有するときであっても、この状態の物体もまた、やはり一例として表側を上にした状態及びこの逆に表側を下にした状態等の別の方向付けされた状態で、適用可能なクレームの範囲に含まれると解釈されることが意図されている。当然ながら、やはり、ある特許出願の明細書の場合が常にそうであったように、記述及び/又は使用に関する特定の文脈は、導き出される合理的な推論に関する有益な手引きを提供する。
【0119】
そうではないと指し示されていない限り、本開示との関連において、A、B又はC等の列記と関連して使用されている場合の「又は」という用語は、ここで包括的な意味で使用されている場合はA、B及びCを意味するように意図されており、更には、ここで排他的な意味で使用されている場合はA、B又はCを意味するように意図されている。このように理解している場合、「及び」は、包括的な意味で使用されており、A、B及びCを意味することを意図されているが、「及び/又は」は、多大な注意を払って、上記の意味のすべてが意図されていることを明確にするために使用することができるが、このような使用は、必要とされているわけではない。更に、「1つ又は複数の」という用語及び/又は類似用語は、任意の単数の特徴、構造及び/又は特性等を記述するために使用されており、「及び/又は」は、複数の及び/又は何らかの他の組合せの特徴、構造及び/又は特性等を記述するためにも使用されている。更に、「第1の」、「第2の」及び「第3の」等の用語は、そうではないと明示的に示されていない限り、数値の限界を与える又は特定の順番を示唆するのではなく、一例として異なる成分等の異なる態様を区別するために使用されている。同様に、「基づく」という用語及び/又は類似用語は、必ずしも排他的なリストの要素を示唆することを意図するとは限らず、必ずしも明示的に記述されているとは限らない更なる要素が存在してもよいことを意図するものとして、理解されている。
【0120】
更に、特許請求された主題の実施形態に関し、程度に関する試験、測定及び/又は指定を受ける、状況は、次のように理解されることが意図されている。一例として、所与の状況において、物理的特性の値は測定されるべきであると想定されたい。この例を継続すると、程度に関する、少なくとも特性に関する試験、測定及び/又は指定のための代替用として合理的な手法が、少なくとも実装形態を目的として、当業者に想到される可能性が合理的にある場合、特許請求された主題は、そうではないと明示的に指し示されていない限り、これらの代替用として合理的な手法を包含することを意図されている。一例として、ある領域にわたる測定値のプロットが生成され、特許請求された主題の実装形態が、当該領域にわたる傾きの測定値を採用することに関係するが、当該領域にわたる傾きを見積もるための種々の合理的で代替的な技法が存在する場合、これらの合理的で代替的な技法が同一の値、同一の測定値又は同一の結果をもたらさないときであっても、特許請求された主題は、そうではないと明示的に指し示されていない限り、これらの合理的で代替的な技法を包含することを意図されている。
【0121】
特徴、構造及び/又は特性等と一緒に使用された場合において、単純な例として「光学的」又は「電気的」を使用するとき、「型」及び/又は「様」という用語は、軽微でない場合においては特徴、構造及び/又は特性等と完全に合致すると考えられない可能性がある変化であったとしても、軽微な変化の存在は一般に、軽微な変化が、このような軽微な変化がやはり存在するとしても、特徴、構造及び/又は特性等が依然として支配的に存在すると考えられるほど十分に軽微である場合において、特徴、構造及び/又は特性等が「型」のものであること及び/又は「様」であること(例えば「光学型」又は「光学様」であること等)をできなくすることがないような態様で、特徴、構造及び/若しくは特性等の少なくとも一部を意味し、並びに/又は特徴、構造及び/若しくは特性等に関することを意味することに更に留意する。したがって、この例を継続すると、光学的型の特性及び/又は光学様の特性という用語は、光学特性を必ず含むことを意図されている。同様に、別の例として電気型の特性及び/又は電気様の特性という用語は、電気的特性を必ず含むことを意図されている。本開示の指定は、1種又は複数の説明用の例を提供しており、特許請求された主題は、1つ又は複数の説明用の例に限定されないことを意図されていることに留意すべきである。しかしながら、やはり、ある特許出願の明細書の場合が常にそうであったように、記述及び/又は使用に関する特定の文脈は、導き出される合理的な推論に関する有益な手引きを提供する。
【0122】
上記記述において、特許請求された主題の様々な実施形態が記述されてきた。説明を目的として、量システム及び/又は構成等の詳細事項が、例として記載された。他の場合において、周知の特徴は、特許請求された主題を妨げないように省略及び/又は単純化された。本明細書において特定の特徴が例示及び/又は記述されてきたが、数多くの修正、置換え、変更及び/又は均等物が、当業者に想到される。したがって、添付の特許請求の範囲は、特許請求された主題に属するすべての修正及び/又は変更を包含することを意図されていることを理解すべきである。
【符号の説明】
【0123】
100 実施形態
104 電流密度プロファイルに対比された電圧の領域
108 点
110 VリセットからVセットを隔てることができる電圧範囲
116 点
122 デバイス端子
126 可変抵抗器
128 可変キャパシタ
130 デバイス端子
150 実施形態
160 導電性基材
170 CEMフィルム
180 導電性基材
200 実施形態
210 導電性基材
220 遷移金属酸化物フィルム
230 フィラメント
240 導電性上張り
240 ブロック
300 実施形態
310 σ結合
320 実施形態
322 π結合
324 π結合
335 Ni原子のd軌道
337 Ni原子のd軌道
340 実施形態
360 実施形態
380 NiO錯体
385 NiO錯体
390 Ni原子
391 Ni原子
395 酸素空格子点
397 CO配位子
398 NH配位子
400 実施形態
410 伝導帯
420 価電子帯
450 実施形態
460 伝導帯
470 価電子帯
500 実施形態
510 ブロック
520 ブロック
601 実施形態
602 実施形態
603 実施形態
610 ブロック
620 ブロック
630 ブロック
640 ブロック
650 ブロック
660 ブロック
671 ブロック
672 ブロック
673 ブロック
700 実施形態
800 実施形態
810 実施形態
820 実施形態
830 実施形態
850 基材
860 部位
861 部位
901 実施形態
902 実施形態
903 実施形態
904 実施形態
907 実施形態
908 実施形態
910 前駆物質気体流量プロファイル
920 パージガスの気体流量プロファイル
930 前駆物質ガスの気体流量プロファイル
940 実施形態
950 実施形態
1000 実施形態
1001 実施形態
1002 実施形態
1101 実施形態
1102 実施形態
1103 実施形態
1110 ブロック
1120 ブロック
1130 ブロック
1140 ブロック
1150 ブロック
1160 ブロック
1162 ブロック
1164 ブロック
1166 ブロック
1168 ブロック
1170 ブロック
1201 実施形態
1202 実施形態
1301 実施形態
1302 実施形態
1303 実施形態
1304 実施形態
1350 基材
1360 部位
1361 部位
1400 実施形態
1410 ブロック
1420 ブロック
1430 ブロック
1440 ブロック
1450 ブロック
1500 実施形態
1510 ブロック
1520 ブロック
1530 ブロック
1540 ブロック
1600 実施形態
1610 ブロック
1620 ブロック
1630 ブロック
1700 実施形態
1710 ブロック
1720 ブロック
1800 実施形態
1810 ブロック
1820 ブロック
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図9G
図9H
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図13D
図14
図15
図16
図17
図18