(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】2-メチレンアルカナールの連続的な製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 45/75 20060101AFI20220127BHJP
C07C 47/21 20060101ALI20220127BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220127BHJP
【FI】
C07C45/75
C07C47/21
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2019517361
(86)(22)【出願日】2017-09-05
(86)【国際出願番号】 EP2017072234
(87)【国際公開番号】W WO2018059887
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-08-11
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507254975
【氏名又は名称】オーキュー・ケミカルズ・ゲゼルシャフト・ミト・べシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】シャーラプスキー・クルト
(72)【発明者】
【氏名】ラーエ・ヤン-ヘンリー
(72)【発明者】
【氏名】バルツァレク・クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】マイアー・グレーゴル
(72)【発明者】
【氏名】シュトルッツ・ハインツ
【審査官】二星 陽帥
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/042000(WO,A1)
【文献】特表2016-515645(JP,A)
【文献】特開2007-153764(JP,A)
【文献】特開昭57-045123(JP,A)
【文献】特開平01-168637(JP,A)
【文献】特表2014-514252(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105693491(CN,A)
【文献】特開2004-290971(JP,A)
【文献】特開2009-255083(JP,A)
【文献】特開昭55-092334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 45/75
C07C 47/21
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式IIに従うアルカナール
【化1】
を、ホルムアルデヒド水溶液により、少なくとも1種の第二級アミンおよび少なくとも1種のカルボン酸の存在下で転化することによる、一般式Iの2-メチレンアルカナール
【化2】
(式中、R
1は脂肪族残基を表す)を製造する方法において、反応物が液/液二相系中で反応し、前記反応が、レイノルズ数が10以上で2320以下の層流条件下での管型反応器内で連続的に実施されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記管型反応器内の前記レイノルズ数が一定に保たれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液/液二相系が、少なくとも1つの有機相および少なくとも1つの水相を別々に並流で前記管型反応器内に供給することによって形成される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記カルボン酸が前記第二級アミンと一緒に有機溶媒中に溶解され、前記反応器内に供給される、請求項1~3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒が、6~12個の炭素原子を有するモノアルコールの群またはそれらの混合物から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記反応が、70℃以上で150℃以下の温度で実施される、請求項1~5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記二相系中に追加の界面活性物質が存在しない、請求項1~6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記管型反応器が、50以上で500以下のレイノルズ数で運転される、請求項1~7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
反応物質の総質量流量に対する反応器負荷V/Vh
(ここで、V/Vh=反応材料の体積/反応容積および時間)が、3.0h
-1以上で42.0h
-1以下である、請求項1~8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
前記カルボン酸が、脂肪族または芳香族のC2~C12モノカルボン酸の群から選択される、請求項1~9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
アルカナールと、ホルマリン中のホルムアルデヒドと、第二級アミンとのモル比が、1:1:0.01~1:1.2:0.07の範囲内である、請求項1~10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
前記残基R
1が、脂肪族のC5~C13炭化水素残基を表す、請求項1~11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
同じ炭素数で2個以上の炭素を有する少なくとも2種の異なるアルカナールが反応し、その際、前記アルカナールのうちの少なくとも1種が式IIに従う構造を有している、請求項1~12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
カルボン酸対第二級アミンのモル比が0.5以上で2以下である、請求項1~13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
使用される
一般式IIに従うアルカナールのうちの1種がn-ウンデカナールである、請求項1~14のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管型反応器内での2-メチレンアルカナールの連続的な製造に関し、この場合、2位で分枝していないアルカナールを、層流条件下で、ホルムアルデヒドにより、第二級アミンおよびカルボン酸が存在する酸・塩基触媒作用下で転化する。
【背景技術】
【0002】
2-メチレンアルカナールはその高い官能性に基づき、工業有機化学において価値の高い中間生成物である。二重結合の選択的水素化により、香料産業において重要な役割を果たす2-メチルアルカナールを得ることができる。この物質クラスのさらなる重要な転化は、例えばアルデヒド官能基のこの場合は不飽和カルボン酸への酸化によって生じ、この不飽和カルボン酸は、プラスチック、潤滑油、またはテキスタイル助剤の製造に大規模に使用される。
【0003】
非分枝状のn-アルデヒドをホルムアルデヒドで転化することにより2-メチレンアルカナールを製造することが知られている。この転化は第二級アミンの存在下で、マンニッヒ縮合反応の形態で起こり、これに関しては、最初に脱水してマンニッヒ塩基が形成され、
【0004】
【化1】
このマンニッヒ塩基から第二級アミンが分離し、最終的に2-メチレンアルカナールが得られる
【0005】
【化2】
(Methoden der Organischen Chemie、Houben Weyl、Georg Thieme Verlag、第4版 1954、第VII巻、第1部、93~94頁(非特許文献1))。
【0006】
このときの縮合反応そのものは、随意に、上に提示した反応スキームで挙げた物質クラスだけで行ってもよく、または酸もしくはさらなる塩基を添加して触媒してもよい。
【0007】
独国特許出願公開第2855506号(特許文献1)は、アルカナールの転化の可能性を、第二級アミンの触媒量の存在下でのみ開示している。
【0008】
国際公開第199320034号(特許文献2)は、連続的に運転される撹拌釜内でのC3~C10アルデヒドのアルドール化を、これに続く蒸留と共に説明している。置換されたアクロレインが製造され、この場合、追加の触媒として水酸化物または炭酸塩を使用している。
【0009】
酸・塩基触媒される製造法は、例えば独国特許出願公開第3744212号(特許文献3)で開示されている。そこに記載された方法では、ブテンの異性体をヒドロホルミル化する際に生じるC5アルカナール混合物を、第二級アミンおよびモノ、ジ、またはポリカルボン酸の存在下で、ホルムアルデヒド水溶液との反応蒸留において転化している。
【0010】
可能な反応条件の選択肢と同様に、製造に用い得る方式および反応タイプも多種多様である。そのため特許文献中ではバッチ式プロセスも連続式プロセスも見つかり、その反応は、なかでも撹拌釜、撹拌釜カスケード、およびさらに管型反応器内で実施されている。連続式またはバッチ式を随意に選べる撹拌釜内での転化の一例が、上に挙げた独国特許出願公開第2855506号(特許文献1)で引用されている。管型反応器内での連続的な転化は、例えば独国特許出願公開第19957522号(特許文献4)に記載されている。
【0011】
使用するアルデヒドをホルムアルデヒドにより触媒の存在下で転化することに関しては、有機相と水相の十分な混合を保証するため、撹拌釜を用いるのが典型的である。しかしながら撹拌釜内での反応は不利である。なぜなら非連続的な反応操作は、加熱工程および冷却工程と共に、反応熱の不均一な発生も示し、これが準最適な反応結果を引き起こし得るからである。加えて機械的に動く部品の運用は概して手がかかり、かつ故障しやすい。他方で撹拌釜または撹拌釜カスケード内での連続的な反応操作は、液体多相系に基づいて問題がある。なぜなら一方の相の望ましくない偏った放出がもう一方の相を濃縮させる可能性があり、これにより平均滞在時間の変動による、転化率、選択率、および空時収率に関する欠陥が必然的に生じるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】独国特許出願公開第2855506号
【文献】国際公開第199320034号
【文献】独国特許出願公開第3744212号
【文献】独国特許出願公開第19957522号
【非特許文献】
【0013】
【文献】Methoden der Organischen Chemie、Houben Weyl、Georg Thieme Verlag、第4版 1954、第VII巻、第1部、93~94頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、技術的労力を少ししか必要とせず、エネルギーをあまり消費せず、かつ高い空時収率を特徴とする、2-メチレンアルカナールの連続的な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この課題は、請求項1に基づく方法によって解決される。この方法の好ましい形態は従属請求項に示している。
【0016】
本発明によればこの課題は、一般式IIに従うアルカナール
【0017】
【化3】
を、ホルムアルデヒド水溶液により、少なくとも1種の第二級アミンおよび少なくとも1種のカルボン酸の存在下で転化することによる、一般式Iの2-メチレンアルカナール
【0018】
【化4】
(式中、R
1は脂肪族残基を表す)の製造方法によって解決され、その際、これらの反応物は液/液二相系中で反応し、この反応は、レイノルズ数が10以上で2320以下の層流条件下での管型反応器内で連続的に実施される。意外にも、管型反応器内での厳密な層流方式における連続的な方法においては、酸・塩基触媒作用下で、所望の2-メチレンアルカナールの非常に高い空時収率を実現できることが発見された。これにより、生産設備の寸法をより小さくすることができ、かつ少ない投資費用および運転費用で高い生成物量を得られることが有利である。この結果は意外である。なぜなら従来技術において、水相と有機相の間に大きな相界面が生じる技術的解決策が特に好ましいことが分かっているからである。反応速度論の一般的な規則に基づき、大きな相界面は、有機相と水相の間の高い物質交換に寄与し、当然の帰結として高い収率をもたらす。この大きな相界面を得るために乱流方式が提案されており、乱流方式は、有機相と水相の一定の良好な混合を保証するとされている。この良好な混合は、撹拌釜および/または撹拌釜カスケードの場合には、既に上で言及したように、高い技術的労力および高い運転費用を伴う。管型反応器にも同等の考察が適用されるべきであり、ここでも乱流状の流動様式が、より高い相界面に、したがってより高い転化率に寄与するであろう。それだけでなく、乱流状の様式は概して明らかにより良好な放熱を可能にし、これは、考察している発熱反応の選択率制御に非常に役に立つ。理論にこだわらないが、層流条件「だけ」の下で、すなわち乱流方式に比べて潜在的に小さい相界面/交換面の場合に、高い空時収率を得ることは、とりわけ、本発明により用いられる酸・塩基触媒作用によって達成される。本発明により使用可能なカルボン酸は、有機/水二相系中で界面を安定化させることができ、かつ高い物質交換に寄与することができると思われる。これは、部分的にはカルボン酸の両親媒性の性質によっても引き起こされている可能性があり、この性質が、層流状の流動様式において形成される相界面の安定化に寄与し得るのであろう。それだけでなく、選択された多相流動様式が反応温度の十分な安定性の妨げとなっておらず、これは厳密な層流方式に関して当然のことではない。
【0019】
使用可能な式IIに従うアルカナールは、一般的には炭素数C3~C15のアルデヒド(R1は、1~13個の炭素原子を有する脂肪族有機残基である)でもよい。したがってこの出発化合物は、短いまたは中くらいのアルデヒドと理解することができる。とりわけ、炭素原子が1つ少ない対応するオレフィンの公知のヒドロホルミル化反応またはオキソ反応から得られるアルデヒドを使用することができる。このヒドロホルミル化反応では、使用オレフィンが一酸化炭素および水素から成る混合物により、遷移金属触媒、例えばコバルト触媒またはロジウム触媒の存在下で転化される。この反応は、錯体配位子としての有機リン化合物、例えばトリフェニルホスフィンありまたはなしで実施することができ、技術文献中で詳細に説明されている(Ullmans’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第5版、1985、VCH Verlagsgesellschaft mbH、Vol. A1、326~331頁;第5版、1991 VCH Verlagsgesellschaft mbH、Vol. A18、321~327頁)。末端にあるオレフィンのヒドロホルミル化反応の際に、アルカナールから成る異性体混合物が生じ、これに関しては一般式IIのアルカナールと共に、2-メチルアルカナールおよびさらなるアルカナールも発生する。これらの異性体の相対的な割合は、ヒドロホルミル化条件に依存している。
【0020】
本発明による方法で使用する3~15個の炭素原子を有するアルカナール(R1は、1~13個の炭素原子を有する脂肪族有機残基である)は、通常はオレフィンのヒドロホルミル化からの生成物であり、例えばヘキセン-1、ヘプタン-1、オクテン-1、ノネン-1、デセン-1、ウンデセン-1、またはドデセン-1の転化からのヒドロホルミル化生成物である。本発明による方法に基づいて、分子内に3~5個の炭素原子を有する比較的短鎖のアルデヒド、例えばプロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、n-ペンタナール、または3-メチルブタナールが転化され得る。さらに炭素数がより大きなアルデヒド、例えばn-ヘプタナール、n-オクタナール、n-ノナナール、3,5,5,-トリメチルヘキサナール-1、n-デカナール、n-ウンデカナール、n-ドデカナール、またはn-トリデカナールも転化され得る。ただし使用するアルカナールは、2-メチレンアルカナールを形成し得るように、カルボニル官能基に隣接するC-炭素原子(2位、α位)で2個の水素原子を有する少なくとも1種のアルカナールを含んでいなければならない。
【0021】
意外にも、反応物としての式IIに従う複数のアルカナールをまたは様々なアルカナールの混合物を含んでいるアルカナール混合物も、上記の方法によって転化できることもさらに発見された。つまり前述の方法は、例えばn-ウンデカナールおよび2-メチルデカナールの混合物に適用することができ、この混合物の場合、n-アルデヒドだけが反応し、メチル分枝したアルデヒドはほぼ不活性に挙動する。この方法は、とりわけ、カルボニル基に対してα位に2個の水素原子を有するアルカナールの沸点を選択的に、対応する2-メチレンアルカナールに転換することで上昇させるためにも使用でき、この2-メチレンアルカナールは、この場合にはより高いその沸点に基づき、混合物からより容易に分離することができる。これは、例えば2-メチルブタナールおよび3-メチルブタナールの混合物を分離する際に重要であり得る。ただし空時収率が高い特に良好な結果は、反応溶液中に式IIに従う反応物だけが存在するときに生じる。
【0022】
式Iおよび式IIでは、R1は脂肪族残基を表している。これは、炭素数C1~C13の直鎖状、分枝状、または環状の飽和炭化水素残基ということである。例えば1つもしくは複数のハロゲン官能基によるまたは1つもしくは複数のヒドロキシ基による鎖中での置換が可能である。
【0023】
一般式IIに従うアルカナールの転化は、反応物としてのアルカナールを、第二級アミンおよびカルボン酸が存在する酸・塩基触媒作用下で、対応する2-メチレンアルカナールへと反応させることを含意している。
【0024】
ホルムアルデヒド水溶液として、例えば濃度が20~49重量%、好ましくは25~35重量%のホルマリン溶液を用いることができる。その際、反応物としての式IIのアルカナール1モルに対し、ホルムアルデヒドを例えば化学量論量で使用することができる。ただしこの反応は、ホルムアルデヒド過剰が好ましくは最大20Mol%、とりわけ最大10Mol%でも進行し得る。
【0025】
この反応は、少なくとも1種の第二級アミンの存在下で行われる。第二級アミンとして、下式のアミン
【0026】
【化5】
を考慮することが有用であり、式中、R
2およびR
3は、同じまたは相違していてよく、かつ1~12個、有利には1~10個、好ましくは1~6個の炭素原子を有するアルキル残基を意味しており、このアルキル残基は、場合によっては1つまたは複数のヘテロ原子によって、好ましくはヒドロキシルおよび/または第二級もしくは第三級アミンによって置換されてもよい。同様にR
2およびR
3は、隣接する炭素原子により、有利には五員環または六員環の構成要素を形成することもでき、この五員環または六員環はもう1つの窒素原子または酸素原子を含むことができる。したがって、第二級アミンとして個別に考慮されるのはN-メチル-、N-エチル-、N-プロピル-、N-イソプロピル-、N-ブチル-、N-sec.-ブチル-、N-tert.-ブチル-、N-ペンチル-、N-ヘキシル-、N-ヘプチル-、N-オクチル-、N-ノニル-、N-デシル-(2-ヒドロキシエチルアミン);上記置換基の1つの同じ置換基によってまたはそれぞれ異なる置換基によって2回置換された対応するアミン;ピペリジン、モルホリン、ピロリジン、ピペラジン、N-メチルピペラジン;N,N’-ジメチルエチレンジアミンである。
【0027】
好ましくは、(2-ヒドロキシエチル)-N-メチルアミン、N-エチル(2-ヒドロキシエチル)アミン、(2-ヒドロキシエチル)-N-イソプロピルアミン、N-ブチル(2-ヒドロキシエチル)アミン、(2-ヒドロキシプロピル)-N-イソプロピルアミン、(3-ヒドロキシプロピル)-N-イソプロピルアミン、N-ブチル(2-ヒドロキシプロピル)アミン、N-ブチル(3-ヒドロキシプロピル)アミン、(2-ヒドロキシプロピル)-N-イソブチルアミン、(3-ヒドロキシプロピル)-N-イソブチルアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミン、ビス(2-ヒドロキシプロピル)アミン、ビス(3-ヒドロキシプロピル)アミン、N,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、ピペラジン、N-メチルピペラジン、ならびにジアルキルアミン ジ-n-プロピルアミン、ジ-n-ペンチルアミン、ジ-n-ヘキシルアミン、およびとりわけ好ましくはジ-n-ブチルアミンを使用し得る。
【0028】
その際、反応は、少なくとも1種のカルボン酸の存在下で酸・塩基触媒されて行われる。カルボン酸としては、通常は脂肪族で2~10個の炭素原子を有するモノ、ジ、およびポリカルボン酸を使用する。ジカルボン酸およびポリカルボン酸、そのうちの好ましくはトリカルボン酸は、芳香族カルボン酸であっても脂肪族カルボン酸であってもよい。好ましいのは、モノカルボン酸の存在下で転化を実施することである。適しているモノカルボン酸は、例えば酢酸、プロピオン酸、n-酪酸、イソ酪酸、2-エチル酪酸、2-メチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸、およびイソノナン酸である。本発明による方法で使用可能なポリカルボン酸に属しているのは、ピメリン酸、コルク酸、アゼライン酸(Acelainsaeure)、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ペンタン-1,3,5-トリカルボン酸、3-ヒドロキシグルタル酸、糖酸、α,α’-ジヒドロキシアジピン酸、好ましくはシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、リンゴ酸、酒石酸、ブタン-1,2,4-トリカルボン酸、3-エチルペンタン-1,3,5-トリカルボン酸、クエン酸、トリメリット酸、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、テレフタル酸、イソフタル酸、およびフマル酸である。
【0029】
特に好ましい一実施形態では、アルカナールのホルムアルデヒドによる転化を、触媒としてのジ-n-ブチルアミンおよびn-酪酸の存在下で行うことができる。
【0030】
反応物の転化は、液/液二相系中で行われる。水相と有機相を一緒にすることで二相の系が形成され、この系中では有機相が水相中に分散して存在している。理論にこだわらないが、本発明により使用可能なカルボン酸および第二級アミンは、分配係数に基づき、主に有機相中に溶解して存在すると推察される。その場合、反応においてはホルムアルデヒドが有機相中に移行し、アルカナールと反応する。水中でのホルムアルデヒドの可溶性に対応して、水相はホルムアルデヒドの残留分を含んでいる。
【0031】
本発明によれば、反応は管型反応器内で連続的に行われる。これは、反応物の供給および生成物の排出が連続的に行われることを意味しており、例えば様々な溶液の管型反応器内へのおよび管型反応器からの絶え間ない流れとして行われる。二相系の一定で層流状の流速が発生し得る。この二相系は、例えば、別々の反応物流を同時に管型反応器の底部領域内に供給することによって形成することができる。底部領域内には、入っていく反応物質が滴状で分散することを保証する内装物を設けることができる。内装物として例えばノズル、多孔質焼結板、またはランスを設置することができる。管型反応器の設計は原則的に当業者に知られている。
【0032】
反応は、レイノルズ数が10以上で2320以下の層流条件下での管型反応器内で実施される。レイノルズ数は無次元量であり、流れの特性を表している。レイノルズ数に基づいて乱流または層流(栓流)が存在するかどうかを認識できる。これに関し、臨界レイノルズ数は層流から乱流への移行領域を特徴づけている。ここで考察している液/液二相系に関するレイノルズ数の推算には、流れ断面でのすべての反応物質の平均流速(均質流モデル)を考察する(Transportvorgaenge in der Verfahrenstechnik:Grundlagen und apparative Umsetzungen、Matthias Kraume、Springer Berlin Heidelberg、第2版、2012;国際公開第2010/105892号)。
【0033】
管型反応器内でのこのレイノルズ数領域内の層流状態を保証するには、反応物質の質量流量ならびに反応混合物の密度および動的粘度を、管型反応器の水力内径との関連でコントロールしなければならない。これは、層流状態を示す必要なレイノルズ数領域を上回らないように行われる。レイノルズ数を計算するための式上の関係性は、等式(1)
Re=wρd/η (1)
に基づいて明らかであり、式中、w=反応物質の質量流量[kg/h]、ρ=反応混合物の密度[kg/m3]、d=管型反応器の水力内径[m]、およびη=反応混合物の動的粘度[Pa・s]である(VDI Waermeatlas、第7版 1994、Lb1、Gl. (2); Grundlagen der Einphasen- und Mehrphasenstroemungen、Heinz Bauer、Verlag Sauerlaender, Aarau und Frankfurt am Main、1971)。管内流れに関し、層流が乱流に移行するレイノルズ数は2320と提示されている。均質流モデルを採用した場合にもこの区分を当てはめることができる。この数値未満で層流状態が存在している。本発明によれば、反応器容積の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、またはかなり好ましくは100%で層流状の流れプロファイルが優勢である場合に、管型反応器内で層流が存在している。意外にも、これらの条件下で極めて良好な空時収率が可能であることが発見された。100%の層流状の流れプロファイルの場合に関し、反応物流の供給および生成物流の排出の領域は無視されており、この領域は、一時的に、狭く限定された空間で、乱流状の特徴を示す可能性がある。
【0034】
この方法の好ましい一実施形態では、管型反応器内のレイノルズ数を一定に保つことができる。反応混合物の流れプロファイルが広範囲にわたって純粋に層流状である場合が特に好適であることが分かった。反応器内装物、例えば静止型混合器またはカラム充填物は、管型反応器内の乱流を増大させ得るので、反応器内装物の使用はあまり推奨できない。しかし本発明によれば、反応物質の質量流量が層流条件下で管型反応器を流れ通っている限り、反応器内装物の使用は不可能ではない。とは言え管型反応器内には凝縮コイルまたはコールドフィンガーを設置することができ、この凝縮コイルまたはコールドフィンガーの傍を反応物質の質量流量が層流状態を妨げられずに流れ過ぎる。とりわけ有利なのは、管型反応器を内装物なしで運転できることである。このために、ホルムアルデヒド水溶液、アルカナール、および触媒の有機溶液を、管型反応器の前に接続した混合要素内で総質量流量へと混合することができ、この総質量流量を続いて管型反応器の底部へと導く。例えばこのために市販の静止型混合要素を使用することができる(例えばSulzerまたはKenicksの混合器)。
【0035】
この方法のさらなる一形態では、液/液二相系を、少なくとも1つの有機相および少なくとも1つの水相を別々に並流で管型反応器内に供給することよって形成することができる。層流状の流れプロファイルを迅速に、できるだけ規定通りに形成するため、有機相と、水相中のホルムアルデヒドとを別々に並流で反応器内に送り込むことができる。こうすることで、方向づけられた層流を形成することができ、この層流中では、高い空時収率と同時に高い選択率を可能にする十分に大きな相界面が存在している。
【0036】
この方法の好ましい一実施形態によれば、カルボン酸を第二級アミンと一緒に有機溶媒中に溶解して反応器内に供給することができる。事前に溶解させたカルボン酸およびアミンから成る触媒を用いるこの形態は、管型反応器内での転化でより高い空時収率を得ることに寄与できる。理論にこだわらないが、酸およびアミンを事前に溶解させることで、これらの成分の有機相中での平衡分布がより迅速に可能であり、かつ全体の相平衡をより迅速に調整することもできる。これによりこの系が安定化し、より短い反応時間内でより高い転化率に到達できるようになる。有機溶媒としては、例えば、とりわけ6~12個の炭素原子を有する、アルコール、エステル、またはエーテルが適している。これらの溶媒はアルカナール中で酸性成分およびアミンを迅速に分散させ、かつこの群の溶媒は反応後に比較的簡単に大した手間をかけずに主生成物流から再び切り離すことができる。
【0037】
さらなる一形態では、溶媒を、6~12個の炭素原子を有するモノアルコールの群またはそれらからの混合物から選択することができる。この群の事前溶媒が、まさに短鎖~中鎖のアルデヒドの転化に特に適していることが分かった。特に適しているのは6~12個の炭素原子を有するモノアルコール、例えばヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、n-ノナノール、またはn-デカノールである。特に2-エチルヘキサノールが適していることが分かった。有機溶媒中の第二級アミンの濃度は、一般的に30~50重量%でもよく、カルボン酸は20~40重量%でもよい。比較的濃縮した溶液を管型反応器内に入れることで、触媒の有機溶液と存在しているアルカナールとが有機相へとまとまり、式IIのアルカナールに対する所望のモル比が調整される。
【0038】
この方法の追加の本発明による一態様では、反応を、70℃以上で150℃以下の温度で実施することができる。この温度範囲内では、良好な選択率によって高い空時収率を得ることができる。より高い温度は、運転費用の観点から、またより高分子の副生成物の形成に関して不利であり得る。より低い温度は、管型反応器の容積に不都合に影響し得る不利な速度の一因となる可能性がある。さらに好ましいのは、反応を90℃以上で130℃以下の温度で実施できることである。所望の反応温度より沸点が低い成分を考慮し、沸騰遅延を回避するために、場合によっては加圧下でこの方法を実施することが有利である。この反応を、0.05、好ましくは0.10、さらに好ましくは0.15および0.20MPa~1MPa未満、好ましくは0.50MPa未満の超過圧で進行させ得ることが有利である。この圧力範囲は、効果的に沸騰遅延を回避でき、均一な方式を可能にし、これにより収率のさらなる上昇に寄与することができる。
【0039】
この方法のさらなる一実施形態は、二相系中に追加の界面活性物質が存在しないことで生じ得る。理論にこだわらないが、とりわけ本発明による酸・塩基触媒作用は、二相系の十分な安定化に寄与することができ、したがって層流様式においてさえ、反応器容積全体に十分に大きな相界面を形成するためにさらなる追加物質をまったく必要としない。このようにして、表面/界面活性物質、例えば界面活性剤、湿潤剤、またはその類似物の使用をやめることができる。これは、生成物の精製を容易にすることができ、かつ系中でこれらの物質が蓄積する危険性を低下させる。
【0040】
好ましい一形態では、管型反応器を50以上で500以下のレイノルズ数で運転することができる。例によって示されているように、とりわけ低いレイノルズ数領域内で、層流方式により非常に高い空時収率を得ることができる。これに加えてこの低い領域は、維持するためにエネルギー入力を少ししか必要とせず、よってより少ない設備投資費用および運転費用に寄与することができる。さらに好ましいのは、管型反応器を100以上で400以下のレイノルズ数で運転できることである。
【0041】
さらなる1つのプロセス態様では、反応器負荷V/Vh(反応材料の体積/反応容積および時間)が、3.0h-1以上で42.0h-1以下でもよい。意外にも提示した反応条件下では、より少ない滞在時間に対応して比較的高い反応器負荷にもかかわらず、一定の高い選択率で、式IIのアルカナールの高い転化率を達成することができる。これにより、層流条件下の管型反応器内での本発明による実施が、所望の2-メチレンアルカナールの非常に高い空時収率を可能にする。提示した範囲外では、場合によっては不十分な転化率しか生じない可能性があり、または高沸点物質の形成が増加する可能性がある。さらに好ましいのは、V/Vhが5.0h-1以上で30.0h-1以下であり得る。
【0042】
この方法のさらなる好ましい一形態によれば、カルボン酸を、脂肪族または芳香族のC2~C12モノカルボン酸の群から選択することができる。短鎖~中鎖のモノカルボン酸の群が、層流系の安定化および高い空時収率を得るのに特に適していることが分かった。理論にこだわらないが、これらのカルボン酸は、短鎖~中鎖のアルカナールの分散相中に非常に良好に組み入れられるらしく、かつ分散相中で拡散し得るらしい。これは、より高い生成物収率を得ることにも寄与し得る。
【0043】
特に好ましい一実施形態では、アルカナールのホルムアルデヒドによる転化を、触媒としてのジ-n-ブチルアミンおよび酪酸の存在下で行うことができる。
【0044】
この方法の好ましい一形態では、アルカナールと、ホルマリン中のホルムアルデヒドと、第二級アミンとのモル比が、1:1:0.01~1:1.2:0.07の範囲内でもよい。アルカナールと、ホルムアルデヒド水溶液中のホルムアルデヒドと、第二級アミンとの間のモル比のこの範囲は、とりわけ層流条件下の管型反応器内で、高い選択率および良好な空時収率を示し、したがって少ない投資費用で多大な量を安価に生産することができる。
【0045】
追加の1つのプロセス態様では、アルカナール1モルにつきカルボン酸0.01~0.07当量を反応させることができる。アルカナールに対する触媒のこの比が、高い転化率の達成に特に適している。この量は、管型反応器内で高い空時収率を提供するために十分であるらしい。この比により、とりわけ、層流状の流れプロファイルの十分な安定化を保証でき、かつ触媒の十分な量(十分に高い移動度に基づき)が、アルデヒド相中でアルデヒド転化の触媒中心として機能することができる。さらに、使用生成物中の式IIのアルカナール1モルにつき好ましくは0.025~0.05当量の第二級アミンおよび好ましくは0.025~0.05当量のカルボン酸を用いてもよい。
【0046】
この方法の好ましい一形態では、残基R1は、脂肪族のC5~C13炭化水素残基を表すことができる。本方法は、とりわけこの中鎖のアルデヒドを転化するのに適し得る。まさにC5~C13アルデヒドにより、非常に高い空時収率を実現することができ、この場合、活用できないより高沸点の副生成物の割合は極めて低い。理論にこだわらないが、ホルムアルデヒド水相とこの群のアルデヒドとの極性の違いは、層流条件下で液/液相界面に沿って反応が十分に起こる程度に適しているようである。とりわけ、同じ炭素数の1種または複数のアルデヒドだけをホルムアルデヒドとの反応に使用することが有利となり得る。比較的大きな非極性の炭素鎖にもかかわらず、十分な反応速度および良好な空時収率が生じる。さらに、この残基定義をもつ1種のアルデヒドだけが反応溶液中に存在していることが有利であり得る。
【0047】
追加の1つのプロセス態様では、カルボン酸対第二級アミンのモル比が0.5以上で2以下でもよい。全体的に速い反応キネティクスおよびそれに基づく高い空時収率を得るには、カルボン酸と第二級アミンの間の提示した比が特に適している。
【0048】
さらなる好ましい一実施形態では、使用するアルデヒドのうちの1種がn-ウンデカナールでもよい。本発明による方法は、特に1-ウンデカナールを含有する混合物の転化に適しており、この混合物は、デセン-1をヒドロホルミル化する際に得られる。ヒドロホルミル化条件に応じて、n-ウンデカナールが2-メチルデカナールに変わる関係が生じる。このような混合物中では、本発明による方法に基づき、n-ウンデカナールを選択的かつ高い空時収率で2-メチレンウンデカナールに転換することができ、このとき2-メチルデカナールは、より低い反応性に基づいて変化しないままであり、蒸留によって切り離すことができる。最初にヒドロホルミル化混合物からn-ウンデカナールを蒸留によって切り離し、続いて本発明による方法に基づいてホルムアルデヒドによって転化してもよい。2-メチレンウンデカナールは、例えばパラジウム接触または白金接触における選択的水素化により、2-メチルウンデカナールに誘導体化することができ、2-メチルウンデカナールは香料産業にとって重要な原料である。
【0049】
同様にして、例えばヘキセン-1のヒドロホルミル化生成物から2-メチレンヘプタナールを、続いて2-メチルヘプタナールを獲得することができる。
【0050】
本発明の対象のさらなる詳細、特徴、および利点は、従属請求項からならびに図および付属している例の以下の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】管型反応器を使用した本発明による方法の可能な一形態の概略図である。
【
図2】管型反応器の前に接続された混合要素を使用した本発明による方法のさらなる一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1では、導管(1)によりホルムアルデヒド水溶液が、導管(2)によりマンニッヒ縮合反応の触媒としての第二級アミンおよびカルボン酸を含有する有機溶液が、ならびに導管(3)により真新しいアルカナールが循環流と混合されて、管型反応器(4)の底部に導入される。ホルムアルデヒド水溶液によって供給される水が、管型反応器内で連続相を形成する。導管(2)によって供給される触媒の有機溶液および導管(3)によって供給されるアルカナールは、管型反応器(4)の底部に設置された装置(5)により液滴に分割され、分散有機相として連続水相を密度差に基づいて反応器頭部の方向に貫流する。供給される質量流量の合計は、管型反応器内で層流状態が形成されるように選択される。放熱のために、管型反応器内に凝縮コイルまたはコールドフィンガーを設置できるが、ただしこの凝縮コイルまたはコールドフィンガーは、一緒にまとめられた質量流量の反応器頭部の方向への層流挙動を妨げない(
図1には描き込まれていない)。反応器頭部では、導管(6)により液体の反応器放出物が沈降器(7)内に導かれ、沈降器(7)内では、より軽い有機相が重い水相から分離される。気体状の部分は導管(8)によって排出される。ホルムアルデヒドの残量をまだ含有している沈降した水相は、導管(9)によりプロセスから取り除かれる。この水相の、例えば蒸留によるさらなる処理は任意選択である。
【0053】
所望の2-メチレンアルカナール、未転化のアルカナール、ならびに反応していない2-メチルアルカナールも含有する沈降した有機相は、導管(10)により沈降器から排出され、この有機相から或る量が部分流として導管(11)によって抜き取られる。抜き取られた粗生成物は、これに続いて精製することができ、またさらなる誘導体化反応、例えば選択的水素化のための出発物質として用いることができる。しかし、直接的に誘導体化し、その後に精製を行ってもよい。
【0054】
抜き取られなかった部分流は、導管(12)により循環として、導管(3)によって供給される真新しいアルカナールと一緒にまとめて、導管(13)を経て反応器(4)の底部にポンプで注入することができる。
【0055】
図2では、管型反応器の前に接続された混合要素を使用した本発明による方法のさらなる一実施形態を示している。導管(1)によって供給されるホルムアルデヒド水溶液、導管(2)によって供給される触媒の有機溶液、および導管(13)によって供給されるアルカナールは、静止型混合器(14)内で分散される。この多相混合物が導管(15)を経て管型反応器(4)の底部へと進む。この実施形態では、概略的に示唆した内装物をなくすことができる。もっとも管型反応器の層流状態が保証されている限りは、管型反応器の底部領域内の装置は不可能ではない。
例
【0056】
容積が0.191リットルの管型反応器内に、ホルマリン水溶液(30重量%)と、触媒混合物(ジ-n-ブチルアミン95.0g、n-酪酸64.5g、2-エチルヘキサノール50.1gから成る)と、アルデヒド(n-ウンデカナールを67%または91%の割合で含むウンデカナール)とをそれぞれ別々に、しかし同時に、反応器底部に通して連続的に供給する。静止型混合器なしの作動では、物質流を別々に、しかし同時に管型反応器の底部へと導くことができる。静止型混合器ありの作動では(例えばSulzer混合器、SMX DN4型)、管型反応器の外部で反応器底部の前に混合要素を取り付けることができる。その中で水溶液と有機溶液を相互に混合することができ、これに続いて分散有機相を有する液体多相系を管型反応器に送り込むことができる。両方の実施形態で、分散有機相は滴状で連続水相を貫流する。
【0057】
反応器頭部では多相の反応混合物を取り出すことができ、かつ沈降器内に導くことができる。分離した液相から、有機循環流を再び管型反応器内に戻す。戻さない水相は排出し、その一方で戻さない有機相をガスクロマトグラフィによりその有価生成物の含有率について分析した。
【0058】
反応条件、使用物質の連続的な供給、および循環流は、下の表1の条件に基づいて調整した。表1では、ガスクロマトグラフィによって確定した有機生成物の組成も、水を含まない%表示で示している。試験は0.2MPaの超過圧で行った。
【0059】
【0060】
表1から明らかになるのは、管型反応器内での層流方式における、連続的な製造プロセスの枠内では、酸・塩基触媒作用によって高い収率が得られるということである。収率はすべてで75%より高く、その際に84%より大きな高い転化率が全般的に実現されている。これらは要するに、撹拌釜/撹拌釜カスケードではバッチ方式でも連続方式でもこの大きさでは得られない高い空時収率をもたらしている。
【0061】
反応物質の総質量流量を変化させることにより、管型反応器内で層流状態が生じるようにレイノルズ数を狙い通りに調整することができる。反応器負荷が最も高い試験(表1の試験8および試験9)に関し、レイノルズ数は176であり(表2を参照)、したがって層流領域内(2320未満)である。例1~例7ではより少ない使用質量流量で作動させた。したがって等式(1)からより低いレイノルズ数が生じる。したがって挙げた例では安定した層流条件が存在している。
【0062】
【0063】
試験から得られた反応生成物は、その後の精製ステップで分離することができ、続いてパラジウム触媒または白金触媒上で部分的に水素化することができる。2-メチルデカナールは、水素化された反応混合物中にそのままで存在しており、所望の2-メチルウンデカナールは分別蒸留することができる。2-メチルウンデカナールは香料産業にとって価値の高い生成物である。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.一般式IIに従うアルカナール
【化6】
を、ホルムアルデヒド水溶液により、少なくとも1種の第二級アミンおよび少なくとも1種のカルボン酸の存在下で転化することによる、一般式Iの2-メチレンアルカナール
【化7】
(式中、R
1
は脂肪族残基を表す)を製造する方法において、反応物が液/液二相系中で反応し、前記反応が、レイノルズ数が10以上で2320以下の層流条件下での管型反応器内で連続的に実施されることを特徴とする方法。
2.前記管型反応器内の前記レイノルズ数が一定に保たれる、上記1に記載の方法。
3.前記液/液二相系が、少なくとも1つの有機相および少なくとも1つの水相を別々に並流で前記管型反応器内に供給することによって形成される、上記1または2に記載の方法。
4.前記カルボン酸が前記第二級アミンと一緒に有機溶媒中に溶解され、前記反応器内に供給される、上記1~3のいずれか一つに記載の方法。
5.前記溶媒が、6~12個の炭素原子を有するモノアルコールの群またはそれらの混合物から選択される、上記4に記載の方法。
6.前記反応が、70℃以上で150℃以下の温度で実施される、上記1~5のいずれか一つに記載の方法。
7.前記二相系中に追加の界面活性物質が存在しない、上記1~6のいずれか一つに記載の方法。
8.前記管型反応器が、50以上で500以下のレイノルズ数で運転される、上記1~7のいずれか一つに記載の方法。
9.反応物質の総質量流量に対する反応器負荷V/Vhが、3.0h
-1
以上で42.0h
-1
以下である、上記1~8のいずれか一つに記載の方法。
10.前記カルボン酸が、脂肪族または芳香族のC2~C12モノカルボン酸の群から選択される、上記1~9のいずれか一つに記載の方法。
11.アルカナールと、ホルマリン中のホルムアルデヒドと、第二級アミンとのモル比が、1:1:0.01~1:1.2:0.07の範囲内である、上記1~10のいずれか一つに記載の方法。
12.前記残基R
1
が、脂肪族のC5~C13炭化水素残基を表す、上記1~11のいずれか一つに記載の方法。
13.同じ炭素数で2個以上の炭素を有する少なくとも2種の異なるアルカナールが反応し、その際、前記アルカナールのうちの少なくとも1種が式IIに従う構造を有している、上記1~12のいずれか一つに記載の方法。
14.カルボン酸対第二級アミンのモル比が0.5以上で2以下である、上記1~13のいずれか一つに記載の方法。
15.使用されるアルデヒドのうちの1種がn-ウンデカナールである、上記1~14のいずれか一つに記載の方法。