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特許7015831複数の伸縮式カテーテルの導入および操作のための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】複数の伸縮式カテーテルの導入および操作のための装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/092 20060101AFI20220127BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20220127BHJP
   A61M 25/06 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
A61M25/092 500
A61M25/00 550
A61M25/00 620
A61M25/06 550
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019522998
(86)(22)【出願日】2017-11-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 US2017060336
(87)【国際公開番号】W WO2018085812
(87)【国際公開日】2018-05-11
【審査請求日】2020-11-06
(31)【優先権主張番号】62/418,528
(32)【優先日】2016-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/796,436
(32)【優先日】2017-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500218127
【氏名又は名称】エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ティー・ウィンストン
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ジェイ・オルソン
(72)【発明者】
【氏名】アッシャー・エル・メトチク
(72)【発明者】
【氏名】トリ・ディー・トラン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・ジェイ・シーゲル
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-500057(JP,A)
【文献】特表2008-546431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
A61M 25/01
A61M 25/092
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位部分、遠位部分、およびプルワイヤ導管を備える操縦可能なシャフトであって、前記プルワイヤ導管が、少なくとも部分的に前記シャフトの前記近位部分および前記遠位部分を通って伸びる、操縦可能なシャフトと、
前記プルワイヤ導管を通って伸び、近位端部分および遠位端部分を有するプルワイヤであって、前記プルワイヤの前記遠位端部分が、前記シャフトの前記遠位部分に固定される、プルワイヤと、
前記プルワイヤの前記近位端部分に動作可能に接続され、前記シャフトの前記遠位部分の湾曲を調整するために前記プルワイヤの張力を増減するように構成された調整機構と、を備える送達装置であって、
前記シャフトの前記遠位部分が、
結合部分と、
前記結合部分の近位にある操縦可能な部分と、
前記結合部分に埋設されかつ前記プルワイヤの前記遠位端部分に結合されたプルリングと、
を備え、
前記操縦可能な部分が、
1つまたは複数の層を有し、かつ
前記操縦可能な部分の1つまたは複数の層のうちの1つの層に組み込まれる圧縮抵抗部分を含み、
前記圧縮抵抗部分が、前記プルリングから間隔を空けて近位にありかつ前記層の断面の一部に沿って角度方向に広がり、
前記圧縮抵抗部分が組み込まれている前記操縦可能な部分の前記層が、第1の硬度を有し、
前記圧縮抵抗部分が、前記第1の硬度よりも大きい第2の硬度を有する、送達装置。
【請求項2】
前記圧縮抵抗部分が、前記プルワイヤ導管の向かい側に位置している、請求項1に記載の送達装置。
【請求項3】
前記圧縮抵抗部分が、前記圧縮抵抗部分が組み込まれている前記層の前記断面に沿って10度~180度広がる、請求項1または請求項2に記載の送達装置。
【請求項4】
前記圧縮抵抗部分が、前記圧縮抵抗部分が組み込まれている前記層の前記断面に沿って60度広がる、請求項3に記載の送達装置。
【請求項5】
前記シャフトが、前記シャフトの内径を定める内側層を備え、
前記圧縮抵抗部分が組み込まれている前記層が、前記シャフトの外径を定める外側層である、請求項1から4のいずれか一項に記載の送達装置。
【請求項6】
前記シャフトが、前記内側層と前記外側層との間にらせんコイル状層をさらに備える、請求項5に記載の送達装置。
【請求項7】
前記シャフトが、前記らせんコイル状層の少なくとも一部を覆って編組された編組層をさらに備える、請求項6に記載の送達装置。
【請求項8】
前記シャフトが、前記内側層と前記らせんコイル状層との間に、前記プルワイヤ導管を封入するプルワイヤ導管封入層をさらに備える、請求項7に記載の送達装置。
【請求項9】
記内側層が、前記プルワイヤ導管を収容するように構成された凹部を画定する、請求項5に記載の送達装置。
【請求項10】
前記プルワイヤが第1のプルワイヤであり、
前記プルワイヤ導管が第1のプルワイヤ導管であり、
前記シャフトが、前記凹部に前記第1のプルワイヤ導管に隣接して配置された第2のプルワイヤ導管に収容された第2のプルワイヤをさらに備える、
請求項9に記載の送達装置。
【請求項11】
前記第2の硬度と前記第1の硬度との比が、ショアD硬度において1.5:1~5:1である、請求項1から10のいずれか一項に記載の送達装置。
【請求項12】
前記比が、ショアD硬度において3:1である、請求項11に記載の送達装置。
【請求項13】
前記シャフトがガイドシースであり、前記送達装置が、前記ガイドシース内に同軸上に配置された埋め込みカテーテルをさらに含み、前記埋め込みカテーテルの遠位端に取り付けられた人工弁を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の送達装置。
【請求項14】
近位部分、遠位部分、およびプルワイヤ導管を備える操縦可能なシャフトであって、前記プルワイヤ導管が、少なくとも部分的に前記シャフトの前記近位部分および前記遠位部分を通って伸びる、操縦可能なシャフトと、
前記プルワイヤ導管を通って伸び、近位端部分および遠位端部分を有するプルワイヤであって、前記プルワイヤの前記遠位端部分が、前記シャフトの前記遠位部分に固定される、プルワイヤと、
前記プルワイヤの前記近位端部分に動作可能に接続され、前記シャフトの前記遠位部分の湾曲を調整するために前記プルワイヤの張力を増減するように構成された調整機構と、を備える送達装置であって、
前記シャフトの前記遠位部分が、1つまたは複数の層と、プルリングと、前記遠位部分の1つまたは複数の層のうちの1つの層に組み込まれかつ前記プルリングから間隔を空けて近位にある圧縮抵抗部分と、を備え、
前記圧縮抵抗部分が、前記層の断面の一部に沿って角度方向に広がり、前記圧縮抵抗部分が組み込まれている前記層の硬度よりも大きい硬度を有し、前記圧縮抵抗部分が、前記層の前記断面に沿って前記プルワイヤ導管から角度方向でずれている、送達装置。
【請求項15】
前記圧縮抵抗部分が、前記プルワイヤ導管の向かい側に位置している、請求項14に記載の送達装置。
【請求項16】
前記圧縮抵抗部分が、前記圧縮抵抗部分が組み込まれている前記層の前記断面に沿って10度~180度広がる、請求項14または請求項15に記載の送達装置。
【請求項17】
前記圧縮抵抗部分の前記硬度と、前記圧縮抵抗部分が組み込まれている前記層の前記硬度と、の比が、ショアD硬度において1.5:1~5:1である、請求項14から16のいずれか一項に記載の送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、操縦可能な血管内送達デバイスの実施形態に関する。
【背景技術】
【0002】
血管内送達デバイスは、手術では容易にアクセスできない、または手術なしのアクセスが望ましい体内の位置に人工医療デバイスまたは器具を送り届けるために様々な手技において使用される。体内の標的位置へのアクセスは、限定はしないが、いくつかの例を挙げれば、血管、食道、気管、胃腸管のいずれかの部分、リンパ管を含む、体内の経路または管腔を通して送達デバイスを挿入し、誘導することによって実現され得る。1つの特定の例では、人工心臓弁が、ひだを寄せた状態で送達デバイスの遠位端に取り付けられ、人工弁が心臓内の埋め込み部位に到達するまで、患者の脈管構造を通して(たとえば、大腿動脈を通して)前に進められることが可能である。人工弁は次いで、たとえば人工弁が取り付けられているバルーンを膨らませることによって、または人工弁がそれの機能的サイズまで自己拡張できるように、送達デバイスのシースから人工弁を展開することによって、それの機能的サイズに広げられる。
【0003】
送達デバイスの有用性は、下大静脈を通る、または大動脈弓付近など、小血管を通り、脈管構造の急な曲がり付近でうまくナビゲートするデバイスの能力によって大きく制限される。脈管構造の曲がりを通して弁を「操縦する」助けとなるように送達デバイスのセクションの湾曲を調整するために、様々な技法が用いられてきた。一般に、送達デバイスは、プルワイヤ(pull wire)を用い、プルワイヤは、遠位端が操縦可能なセクションに固定して留められ、近位端が体外の送達デバイスのハンドルにある調整ノブに動作可能に接続される。プルワイヤは、一般に、送達デバイス、たとえばシースまたはカテーテルの壁の中にまたは壁に隣接して長手方向に伸びるプルワイヤのルーメン内に配置される。調整ノブを調整すると、たとえば、ノブを回転させると、プルワイヤに引張力が加わり、この引張力により操縦可能なセクションが曲がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2013/0030519号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0281619号明細書
【文献】米国特許出願公開第2008/0065011号明細書
【文献】米国特許出願公開第2007/0005131号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0036484号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/0123529号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0049313号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/0239142号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多くのガイドシースの欠点は、それらが撓められるかまたは曲げられるとき、望ましくない変形を起こしがちであることである。たとえば、経中隔アプローチにおいて僧帽弁にアクセスするときなど、著しい湾曲に従うガイドシースは、曲率半径に沿って1つまたは複数の位置でよじれ、ガイドシースの内径を劇的に縮小し、ガイドシースの遠位端の予測不可能な動きを生じる可能性がある。曲げられたガイドシースはまた「パンケーキ状になる」場合があり、シースの隣接する層の材料間に粘着力がないためにカテーテルの断面は楕円形にされる。さらに、曲げられたガイドシースは、シャフトが曲げられるときのシャフトの軸圧縮のために長さが減る、または短縮される場合がある。特に遠位端におけるガイドシースのそのような変形は、治療部位での埋め込み物の正確な位置決めを妨げることがある。したがって、改善された操縦可能なシャフトデバイスの必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示のいくつかの実施形態は、操縦可能なシャフトを備えた送達装置に関する。代表的な実施形態では、送達装置が、近位部分、遠位部分、およびプルワイヤ導管を有する操縦可能なシャフトを備え、プルワイヤ導管が、少なくとも部分的にシャフトの近位部分および遠位部分を通って伸びる。送達装置はさらに、プルワイヤ導管を通って伸びかつ近位端部分および遠位端部分を有するプルワイヤを含む。プルワイヤの遠位端部分は、シャフトの遠位部分に固定される。送達装置はさらに、プルワイヤの近位端部分に動作可能に接続された調整機構であって、シャフトの遠位部分の湾曲を調整するためにプルワイヤの張力を増減するように構成された、調整機構を備える。シャフトの遠位部分は、1つまたは複数の層を有する操縦可能な部分を備える。操縦可能な部分は、操縦可能な部分のそれぞれの層に組み込まれかつ層の断面の一部に沿って角度方向に広がる圧縮抵抗部分を含む。圧縮抵抗部分が組み込まれている操縦可能な部分の層は、第1の硬度を有し、圧縮抵抗部分は、第1の硬度よりも大きい第2の硬度を有する。
【0007】
別の代表的な実施形態では、方法が、送達装置のシャフトを患者の体内に挿入するステップを含み、シャフトは、近位部分と、遠位部分と、少なくとも部分的に近位部分および遠位部分を通って伸びるプルワイヤ導管と、を有する。プルワイヤが、プルワイヤ導管を通って伸び、シャフトの遠位部分は、1つまたは複数の層を有する操縦可能な部分を備える。操縦可能な部分は、操縦可能な部分のそれぞれの層に組み込まれかつ層の断面の一部に沿って角度方向に広がる圧縮抵抗部分を含む。圧縮抵抗部分が組み込まれている操縦可能な部分の層は、第1の硬度を有し、圧縮抵抗部分は、第1の硬度よりも大きい第2の硬度を有する。方法はさらに、シャフトの遠位部分の湾曲を調整するためにプルワイヤに張力をかけるステップを含む。
【0008】
別の代表的な実施形態では、送達装置が、近位部分と、遠位部分と、プルワイヤ導管と、を有する操縦可能なシャフトを備え、プルワイヤ導管は、少なくとも部分的にシャフトの近位部分および遠位部分を通って伸びる。送達装置はさらに、プルワイヤ導管を通って伸びかつ近位端部分および遠位端部分を有するプルワイヤを含む。プルワイヤの遠位端部分は、シャフトの遠位部分に固定される。送達装置はさらに、プルワイヤの近位端部分に動作可能に接続される調整機構であって、シャフトの遠位部分の湾曲を調整するためにプルワイヤの張力を増減するように構成された、調整機構を備える。シャフトの遠位部分は、1つまたは複数の層と、遠位部分のそれぞれの層に組み込まれた圧縮抵抗部分と、を含む。圧縮抵抗部分は、層の断面の一部に沿って角度方向に広がり、圧縮抵抗部分が組み込まれている層の硬度よりも大きい硬度を有する。圧縮抵抗部分は、層の断面に沿ってプルワイヤ導管から角度方向でずれている。
【0009】
開示する技術の上記および他の目的、特徴、および利点は、添付の図を参照しながら行う以下の詳細な説明からより明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】送達装置の代表的な実施形態の斜視図である。
図2図1の送達装置のガイドシースの側面図である。
図3】非外傷性先端部分および結合部分を示す、図1のガイドシースの遠位部分の断面側面図である。
図4図2の線4-4に沿った図1のガイドシースの断面図である。
図5】プルリング、およびプルリングに結合されたプルワイヤの遠位部分を示す側面図である。
図6】ガイドシースの様々な層を示す、図1のガイドシースの遠位部分の平面図である。
図7】外側層の圧縮抵抗部分を示す、図1のガイドシースの遠位部分の斜視図である。
図8図2の線8-8に沿った図1のガイドシースの断面図である。
図9図8のガイドシースのプルワイヤ導管収容部分の詳細図である。
図10図2の線10-10に沿った図1のガイドシースの断面図である。
図11】ガイドシースの屈曲を示す、図1のガイドシースの斜視図である。
図12】1つのプルワイヤを含むガイドシースの代替実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
特定の実施形態では、医療デバイス、器具、薬剤、または他の療法を患者の体内の位置に送り届けるために使用することができる送達装置は、1つまたは複数の操縦可能なカテーテルまたはシースを含むことができる。操縦可能なカテーテルおよびシースが有用な手技の例には、神経系、泌尿器、婦人科、不妊(fertility)(たとえば、体外受精、人工授精)、腹腔鏡、関節鏡、経食道、経膣、経膀胱、経直腸の手技、およびいずれかの体管または体腔でのアクセスを含む手技が含まれる。特定の例には、ステント、移植組織、塞栓用コイルなどの埋め込み物を置くこと、超音波振動子を含む、撮像デバイスまたはそれの構成要素を位置決めすること、および、たとえば砕石術を行うために、RF源、超音波放射体、電磁波源、レーザー源、熱源など、エネルギー源を位置決めすることが含まれる。
【0012】
いくつかの実施形態では、送達装置は、1つまたは複数の送達カテーテルをガイドシース内に同軸上に配置したガイドシースなどの操縦可能なシャフトを含む。いくつかの構成では、送達カテーテルは、カテーテルの遠位端部分にまたはその付近に、1つまたは複数のバルーンを含むことができる。いくつかの実装形態では、送達装置は、たとえば患者の心臓まで、脈管構造を通して医療デバイスを送り届けるために使用することができる。これらのデバイスは、操縦可能なシャフトを所与の方向に湾曲させるか、またはまっすぐにさせるように構成された、1つまたは複数の偏心して位置付けられたプルワイヤを含んでもよい。操縦可能なシャフトは、シャフトの遠位端付近にある操縦可能な部分をさらに含むことができ、この操縦可能な部分は、シャフトの短縮を減らし、プルワイヤによってシャフトにかけられる所与の引張力に対して達成可能な湾曲の度合いを増やし、それによって送達装置の操縦性を高める圧縮抵抗部分を含む。
【0013】
図1は、ハンドル部分102と、操縦可能なガイドシース104として構成されたシャフトと、を含む送達装置100の代表的な実施形態を示す。送達装置100は、患者の体内の標的位置へのアクセスが望まれる、任意の診断、治療、または介入性(interventional)手技を行うために使用することができる。たとえば、送達装置100は、いくつかの使用例を挙げれば、体内に人工器官デバイスを送り届け、展開するため、体内の標的位置に器具を送り届けるため、または薬もしくは他の薬剤を送り届けるかもしくは導入するために、使用することができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、送達装置は、ガイドシース104内に同軸上に配置されかつガイドシース104に対して移動可能な1つまたは複数のカテーテルを含むことができる。たとえば、図示した構成では、送達装置は、ガイドシース104内に配置された操縦可能なカテーテル106として構成された中間カテーテルと、操縦可能なカテーテル106内に同軸上に配置された送達または埋め込みカテーテル108として構成されたインナーカテーテルと、を含む。埋め込みカテーテル108は、埋め込みカテーテルの遠位端に人工器官デバイス110を半径方向に圧縮された状態で取り付けることができる。図示した構成では、人工器官デバイス110は、埋め込みカテーテルの遠位端で膨張可能バルーン112に取り付けられた人工心臓弁であり、送達装置は、心臓の自然弁(大動脈弁、僧帽弁、肺動脈弁、または三尖弁)のうちの1つに人工心臓弁110を送り届けるように構成することができる。
【0015】
1つの特定の例では、人工心臓弁110は、塑性的に拡張可能な人工心臓弁であることがあり、膨張可能バルーン112は、治療部位で弁110を広げ、展開するように構成することができる。バルーン112および埋め込みカテーテル108の例示的な構成は、特許文献1~4においてさらに開示されている。例示的な塑性的に拡張可能な人工心臓弁は、特許文献5および6に開示されている。
【0016】
別の例では、送達装置100は、自己拡張可能な人工心臓弁(たとえば、ニチノールなどの形状記憶材料から形成されたフレームを有する人工弁)を送り届け、展開するために使用することができる。自己拡張可能な人工弁を送り届けるために、人工弁は、半径方向に圧縮された状態で送達シースまたはスリーブに搭載され、標的位置で人工弁がそれの機能的サイズに広がることができるようにシースの遠位開放端部から前に出され得る。送達シースは、埋め込みカテーテル108の遠位端部分、またはガイドシース104を通って伸びる別のシャフトの遠位端部分であることがある。自己拡張可能な人工弁および自己拡張可能な人工弁のための送達デバイスに関するさらなる詳細は、特許文献7および8に開示されている。さらに、送達装置100は、ドッキングデバイス、弁尖クリップなどの様々な他の埋め込み可能なデバイスのいずれかを送り届けるために使用できることを理解されたい。
【0017】
図1および図2を参照すると、操縦可能なガイドシース104は、ハンドル部分102に結合された近位部分114と、遠位部分116と、を含むことができる。遠位部分116は、結合部分120に結合された低デュロメータ非外傷性先端部分118を含むことができ、結合部分120は非外傷性先端118の近くに位置する。いくつかの構成では、非外傷性先端118は、放射線不透過性とすることができる。ガイドシース104の遠位部分116は、結合部分120の近位にあって、以下で詳細に説明するように、ガイドシースの遠位部分の湾曲を調整するために曲がるかつ曲がらない(unflex)ように構成された操縦可能な部分122を含むことができる。
【0018】
図3図10は、ガイドシース104の、特に遠位部分116の構造をより詳細に示す。ガイドシース104の湾曲は、1つまたは複数の偏心して位置付けられたプルワイヤによって制御することができる(たとえば、図3図5、および図8参照)。たとえば、図示した構成では、ガイドシース104は、それぞれのプルワイヤのルーメンまたは導管128、130を通って長手方向に伸びる2つのプルワイヤ124、126を含む。組み立てられたプルワイヤ124、126および導管128、130は、ガイドシースのプルワイヤ導管部分154に配置することができる。図示した構成では、プルワイヤ導管部分154は、少なくとも一部はガイドシースの内側層134の凹部142によって定められる。他の構成が可能であるが、図示した構成では、凹部142は、ガイドシース104の内径Dの内部に及び得る。いくつかの実施形態では、プルワイヤ導管128、130は、プルワイヤが導管内で動くときのプルワイヤ124、126とそれぞれの導管128、130との間の摩擦を低減するために、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの滑らかな材料で作ることができる。
【0019】
プルワイヤ124、126は、結合部分120に埋設されたプルリング144に一方の端部で結合され、ハンドル102の回転ノブ132(図1参照)として構成された制御機構に反対の端部で結合され得る。ノブ132の回転が、プルワイヤ124、126の張力を増減することができ、プルワイヤ124、126の張力が、ガイドシースの湾曲を制御するために、遠位部分116、詳細には操縦可能な部分122が曲がるかつ曲がらないようにすることができる。結合部分122に封入されたプルリング144を示す結合部分の断面図が、図4に示されている。
【0020】
プルリング144およびプルワイヤ124、126の遠位部分は、図5に分離して示されている。図示した構成では、プルリング144は、それの円周のところどころに複数の開口156を定めることができる。ガイドシース104の製造中、結合部分120のポリマー材料は、プルリング144を覆ってリフローされることが可能であり、材料は、図3に示すように、結合部分にプルリングを封入するために開口156を通って流れることができる。さらに、図示の実施形態は2本のプルワイヤ124、126を含むが、他の構成が可能であることを理解されたい。たとえば、ガイドシース104は、デバイスの要件に応じて、単一のプルワイヤ(図12参照)、または3本以上のプルワイヤなど、任意の好適なサイズまたはレイアウトを有する任意の好適な数のプルワイヤを含むことができる。いくつかの構成では、2本のプルワイヤは、詳細には比較的大きい力が必要とされるとき(操縦可能なカテーテル106および埋め込みカテーテル108を搭載したガイドシースを曲げるときなど)、プルリング144に所与の力を伝えるために、単一のより大きいプルワイヤの断面積よりも小さい断面積を占めることができるので、本明細書で説明する特定の実施形態は、2本のプルワイヤを含む。
【0021】
図3図10を参照すると、ガイドシース104は、ガイドシースの長さに沿って異なる位置に様々な異なる材料を含む複数の層であって、ガイドシースに様々な特性を授けるように構成された、複数の層を含むことができる。たとえば、図3および図6を参照すると、ガイドシース104の操縦可能な部分122は、ガイドシース104の内径Dを定める第1の内側層134と、内側層134の半径方向外側に配置された第2のプルワイヤ導管封入層135と、を含む。第3のらせんコイル状層136が、プルワイヤ導管封入層135の上に広がる。第4の編組層138が、らせんコイル状層136を覆って配置され、第5の外側層140が、編組層を覆って配置され、ガイドシースの外径Dを定める。図6は、ガイドシースの構成を説明するために、外側層140、編組層138、らせんコイル状層136、およびプルワイヤ導管封入層135の各々を一部除去して示したガイドシース104の遠位部分116の平面図を示す。
【0022】
第1の層134は、ガイドシース104の全長に沿って広がり、操縦可能な中間カテーテル106がガイドシースのルーメン内でガイドシース104に対してスライドできるように、滑らかな材料(たとえば、PTFE)で作る(またはコーティングする)ことができる。上述のように、第1の層134は、プルワイヤ124、126および導管128、130が収容されるプルワイヤ導管部分154の凹部142を定めることもできる。
【0023】
プルワイヤ導管封入層135は、第1の内側層134とらせんコイル状層136との間に配置することができ、ガイドシースの円周周りに角度方向で変化する厚さを有することができる。たとえば、図8および図9を参照すると、プルワイヤ導管封入層135におけるプルワイヤ導管部分154に近接した部分は、層135がプルワイヤ導管128、130をプルワイヤ導管部分に封入するように、十分に厚くすることができる。一方、プルワイヤ導管封入層135におけるプルワイヤ導管部分154の向かい側の部分は、比較的薄くすることができる。代替として、プルワイヤ導管封入層135は、プルワイヤ導管128、130を含む部分の周り(たとえば、半分)など、ガイドシースの断面の一部分のみの周りに広がることができる。そのような構成では、らせんコイル状層136は、内側層の断面におけるプルワイヤ導管の向かい側にある部分に沿って内側層134に直接触れることができ、プルワイヤ導管封入層が始まる、内側層134の円周に沿った位置で、プルワイヤ導管封入層135を通じて移行することができる。いくつかの実施形態では、プルワイヤ導管封入層135は、様々なポリエーテルブロックアミド(たとえば、Pebax(登録商標))などの任意の好適なポリマーで作ることができる。いくつかの構成では、プルワイヤ導管封入層135は、結合部分120の近位端から、操縦可能な部分122を通って、プルワイヤ出口148(図2)まで広がることができる。
【0024】
らせんコイル状層136は、たとえば、プルワイヤ導管封入層135または第1の層134の周りにらせん状に巻かれたまたは巻きつけられたワイヤから形成され得る。図示の実施形態では、らせんコイル状層136は、近位のプルリング144付近から結合部分120および操縦可能な部分122を通って、近位部分114と遠位部分116との間にある移行領域146(図1)まで広がることができる。いくつかの実施形態では、らせんコイル状層136が終わる移行領域146は、外側層140が比較的高いデュロメータまたは硬度を有する材料(たとえば、63D Pebax(登録商標))から比較的低いデュロメータを有する材料(たとえば、VESTAMID(登録商標)などのポリアミド)に変わる位置とすることができる。いくつかの実施形態では、シャフトの外側層140または他の層の硬度をそれらの長さに沿って徐々に(たとえば、段階的に)変えると、屈曲中に、または体の血管を通り抜けるときに、シャフトがよじれる、破損する、またはゆがむ可能性を低減することができる。さらに、いくつかの例では、らせんコイル状層136は、たとえば、0.020インチのピッチで1インチ当たり50巻きで巻きつけられたステンレス鋼またはチタンフラットワイヤで作ることができ、ガイドシャフト104の、詳細には操縦可能な部分122の、それが曲げられるときのよじれまたはつぶれに耐えるように構成することができる。
【0025】
編組層138は、らせんコイル状層136の上に広がることができる。図示した構成では、編組層138は、近位のプルリング144近くの結合部分120から、たとえばプルワイヤ出口148まで広がることができる。編組層138は、たとえば、らせんコイル状層136の上に管状の層を形成するためにパターンで編み合わされた金属ワイヤとすることができる。たとえば、図示の実施形態では、編組層138は、オーバー1アンダー1パターン(over 1 under 1 pattern)で編み組まれたステンレス鋼またはチタンフラットワイヤで作られるが、任意の好適な編組パターンを使用することができる。たとえば、別の代表的な実施形態では、編組層138のワイヤは、1インチ当たりのピック数(PPI)が60のピックカウントで1オーバー2、アンダー2パターン(1 over 2, under 2 pattern)で編み組むことができる。編組層138は、たとえば、治療部位で埋め込み物を位置決めするのに役立つことができるトルクをガイドシースが伝えられるように、ガイドシース104の望ましくないねじれ変形に抗うように構成することができる。編組層138は、つぶれまたはよじれ防止特性をガイドシース104に与えることもできる。図示した構成では、結合部分120は、図3および図4に示すように、プルリング144のすぐ下に配置された編組層158を含むこともできる。
【0026】
外側層140は、それの長さに沿って、たとえば、ポリアミド(たとえば、VESTAMID(登録商標))、ポリエーテルブロックアミド(たとえば、Pebax(登録商標))、ナイロン、もしくは任意の他の好適な生体適合性ポリマーなどの様々なポリマー材料のうちのいずれか、またはそれらの組合せを含むことができる。図示した構成では、プルワイヤ導管封入層135、らせんコイル状層136、および編組層138は、ガイドシース104の近位端の遠位で終わることができる。たとえば、いくつかの構成ではこれらの層は、プルワイヤ出口148で終わることができる。プルワイヤ出口148の近位で、外側層140は、図10に示すように、ガイドシースの長さに沿って実質的に均一な外径を維持するために、厚さを増すことができる。
【0027】
図7および図8を参照すると、ガイドシース104の遠位部分116は、圧縮抵抗部分150を含むことができる。図示した構成では、圧縮抵抗部分150は、外側層140に組み込まれ、操縦可能なセクション122のそれぞれの部分を形成する。図7に示すように、圧縮抵抗部分150は、操縦可能な部分122の長さLに沿って広がることができる。圧縮抵抗部分150は、外側層140の断面に沿って円周方向に、もしくは角度方向で広がること、またはそのそれぞれの部分を占めることもできる。たとえば、図8を参照すると、外側層140の断面に沿った圧縮抵抗部分150の角度の範囲は、角度Θで示される。いくつかの実施形態では、角度Θは、10度から180度(または断面の円周の半分)とすることができる。いくつかの実施形態では、角度Θは、10度から90度とすることができる。図8の実施形態では、角度Θは60度である。
【0028】
いくつかの構成では、圧縮抵抗部分150は、プルワイヤ導管128、130の向かい側に配置することができる。たとえば、図示した構成では、圧縮抵抗部分150は、プルワイヤ導管128、130の直径方向に向かい側に位置するように、プルワイヤ導管部分154から180度だけ角度方向でずれている。この構成では、図8に示すように、プルワイヤ導管部分154を二等分する平面152が、圧縮抵抗部分150もまた二等分する。2本のプルワイヤおよび導管を含む図8の構成では、プルワイヤ導管部分154を二等分する平面152は、それぞれの導管128、130の間を通る。しかしながら、図12に示す代替構成など、単一のプルワイヤを含む構成では、プルワイヤ導管部分154および圧縮抵抗部分150を二等分する平面152が、プルワイヤ160および導管162も二等分するように、単一のプルワイヤ160および導管162が、プルワイヤ導管部分154と同軸上に一直線に並べられ得る。他の構成では、圧縮抵抗部分150は、外側層140の断面に沿って、たとえば必要に応じて90度から180度だけプルワイヤ導管部分154から角度方向でずれていることがある。
【0029】
圧縮抵抗部分150は、圧縮抵抗部分が組み込まれている操縦可能な部分122の外側層140の残りよりも比較的高い硬度またはデュロメータを有する材料から作ることができる。たとえば、いくつかの実施形態では、圧縮抵抗部分150は、操縦可能な部分122の外側層140の残りのデュロメータよりも1.5倍~5倍大きいデュロメータを有することができる。いくつかの実施形態では、圧縮抵抗部分150のデュロメータは、操縦可能な部分122の外側層140の残りのデュロメータよりも2倍~3倍大きいことがある。例示的な実施形態では、圧縮抵抗部分150は、72Dのデュロメータを有するPEBAX(登録商標)から作ることができ、操縦可能な部分122の外側層140の残りは、圧縮抵抗部分150のデュロメータと、操縦可能な部分122の外側層140の残りのデュロメータと、の比が2.9:1であるように、25Dのデュロメータを有するPEBAX(登録商標)から作ることができる。いくつかの実施形態では、圧縮抵抗部分150のデュロメータと操縦可能な部分122の外側層140の残りのデュロメータとの比は、3:1とすることができる。
【0030】
他の実施形態では、圧縮抵抗部分150は、ステンレス鋼、チタン、ニチノールなどのニッケルチタン合金、コバルトクロムなどの金属、または他のポリマーを含む、好適な硬度特性を示す様々な材料のいずれかで作ることができる。さらに、いくつかの構成では、圧縮抵抗部分は、外側層140の全体的な厚さに等しい厚さを有する必要がない。たとえば、圧縮抵抗部分150は、外側層の全体的な厚さよりも小さい厚さを有することができ、必要に応じて外側層内に封入されてもよい。圧縮抵抗部分150のデュロメータは、その長さに沿って変化することもできる。たとえば、圧縮抵抗部分150の近位部分は、遠位部分よりも比較的低いデュロメータを有することができ、その逆も同様である。
【0031】
圧縮抵抗部分150は、ガイドシース104の操縦可能な部分122に様々な有利な特性を与えることができる。たとえば、圧縮抵抗部分150の比較的より高いデュロメータは、操縦可能な部分122に軸方向の強度を与えることができる。これは、ガイドカテーテルが曲げられるときのガイドシース104の、詳細には操縦可能な部分122の、望ましくない短縮を著しく減らすまたは防止することができる。より詳細には、圧縮抵抗部分150は、ガイドシースが曲げられるときのガイドシースの軸方向の圧縮、および材料の関連したしわを、ガイドシースが撓んでいない状態であるときに比べて減らすことができる。材料のそのような軸方向の圧縮およびしわは、材料が変形するとき、ガイドシースの長さを縮小することがあり、ガイドシースを損傷させることがある。ガイドシース104が曲げられるときのガイドシースの短縮を減らすことまたは無くすことによって、圧縮抵抗部分150は、ガイドシースを曲げた後に治療部位で埋め込み物の所望の位置を獲得または回復するために、操作者が(たとえば、患者の脈管を通って送達装置を前進または後退させることによって)送達装置を長手方向に再位置決めする必要を減らすことができる。
【0032】
さらに、プルワイヤ導管128、130から角度方向でずれた圧縮抵抗部分150の位置は、指定された方向でガイドシースの操縦可能な部分122の変形を開始するのに役立つことができる。たとえば、圧縮抵抗部分150がプルワイヤ導管128、130の向かい側に位置するとき、圧縮抵抗部分の軸方向の剛性は、図11に示すように、ガイドシースが曲げられるとき、圧縮抵抗部分から離れる方向に操縦可能な部分122の撓みを誘起することができる。圧縮抵抗部分150は、特に1つまたは複数の構成層(たとえば、内側層134などのPTFE層)が周囲の層に強力に接着されていない場合に、シースが曲げられるとき、シースの異なる層の互いに対する長手方向の動きを減らすことによって、ガイドシースが楕円形になること(「パンケーキ状になる」とも呼ばれる)を減らすまたは防ぐこともできる。
【0033】
圧縮抵抗部分150は、ガイドシースを破損することなくプルワイヤ124、126によって遠位部分に加えられる所与の力に対して到達可能な遠位部分116の屈曲の度合いを増やすこともできる。遠位部分116の屈曲の角度はαで表され、図11に示される。たとえば、ガイドシース104の短縮を減らすことによって、プルワイヤ124、126によってかけられる力のより大きい割合を、ガイドシースを弾性的に圧縮するのではなくガイドシースを曲げるために利用できる。さらに、圧縮抵抗部分150は、ガイドシース104が曲げられるとき、ガイドシース104の短縮に伴ってプルワイヤ124、126が緩むのを減らすまたは防ぐことができ、一般的なガイドシースと比較して、所与のプルワイヤ移動により大きい湾曲の度合いが達成可能となる。本明細書で使用する「プルワイヤ移動」という用語は、プルワイヤに張力がかけられるとき、プルワイヤの長さ沿いの所与の点が静止基準(たとえば、プルワイヤ導管)に対して移動する直線距離を指す。
【0034】
さらに、圧縮抵抗部分150は、上記で説明したらせんコイル状層136、および編組層138とともに、著しく相乗的な利点をもたらすことができ、知られている操縦可能なシースおよびカテーテルを超えてガイドシース104の性能を向上させる。たとえば、22Frの内径を有し、圧縮抵抗部分、らせんコイル状層、および編組層の特徴を含む、搭載されていないガイドシース(たとえば、送達カテーテルまたは他のシャフトがそれのルーメンから伸びていないガイドシース)の遠位部分は、プルワイヤによってかけられた175Nの力により、よじれることなく、かつ著しく短縮することなく、355度近く曲がることができる。この例では、ガイドシースの遠位部分に175Nの力をかけるために、50mmのプルワイヤ移動が必要であった。対照的に、圧縮抵抗部分がなく、それのルーメンから送達カテーテルまたは他のシースが伸びていない一般的な操縦可能なカテーテルデバイスの場合、175Nの力が270度の屈曲を作り出し、60mmのプルワイヤ移動を必要とし、ガイドシースは、6mm~10mm短縮すると予想され得る。
【0035】
別の例では、22Frの内径を有し、上記の圧縮抵抗部分、らせんコイル状層、および編組層の特徴を含み、送達カテーテルおよび埋め込みカテーテルがガイドシースのルーメン内に同軸方向に伸びて搭載された、ガイドシースの遠位部分は、プルワイヤによってかけられた250Nの力により、よじれることなく、かつ著しく短縮することなく、270度曲がることができた。この例では、ガイドシースの遠位部分に250Nの力をかけるために、40mmのプルワイヤ移動が必要であった。対照的に、圧縮抵抗部分がなく、送達カテーテルまたは埋め込みカテーテルが搭載された操縦可能なカテーテルデバイスの場合、250Nの力が180度の屈曲を作り出し、70mmのプルワイヤ移動を必要とし、ガイドシースは、6mm~10mm短縮すると予想され得る。
【0036】
使用において、送達装置100は、任意の知られている送達技法を使用して患者の脈管構造を通して導入され、進められ得る。経大腿手技では、送達装置は、大腿動脈および大動脈を通して心臓まで挿入され得る(限定はしないが、一般的に、大動脈弁置換に使用される)。経中隔手技(一般的に、大動脈または僧帽弁置換に使用される)では、送達デバイスは、大腿静脈を通し、右心室と左心室とを分けている中隔を通すなどして、右心房に進めることができる。開示する実施形態は、ガイドシース104のトルク伝達性(torqueability)および遠位部分116で達成できる湾曲の度合いが比較的高いことにより、いくつかの手法において送達装置が僧帽弁にアクセスするために辿らなければならない曲がりくねった経路にもかかわらず標的部位での人工弁の正確な位置決めが可能になるので、人工弁を自然僧帽弁に送り届けるのに特に有用であり得る。経心室手技では、送達装置は、下側前方心室壁上のベアスポットで行われる外科的切開によって挿入され得る(限定はしないが、一般的に、大動脈または僧帽弁置換に使用される)。経心房手技では、送達装置は、左または右心房の壁に行われる外科的切開によって挿入され得る。経大動脈手技では、送達装置は、上行大動脈に行われる外科的切開によって挿入され、心臓に向かって進められ得る(限定はしないが、一般的に、大動脈弁置換に使用される)。
【0037】
これらの手技のいくつかにおいて、圧縮抵抗部分150、らせんコイル状層136、および編組層138の組合せは、治療部位で、心臓弁110などの人工器官デバイスを正確に位置決めするのに役立ち得る。たとえば、僧帽弁にアクセスするための経中隔手技では、送達装置の遠位端が治療部位に進められた後、ガイドシース104の遠位部分116は、人工弁110を僧帽弁と軸方向に位置合わせするために(たとえば、いくつかの例では180度以上)曲げられ得る。遠位部分116が曲げられた状態である間、ガイドシース104は、僧帽弁に対して人工弁110を半径方向に位置決めするためにトルクを与えることもできる。圧縮抵抗部分150、らせんコイル状層136、および編組層138の組合せは、ガイドシースが著しい短縮またはよじれなしで曲がること、およびシャフトの望ましくないねじり変形またはガイドシースの関連する予測不能な回転運動なしでトルクを与えられることを可能にすることができる。
【0038】
代替構成では、開示する送達装置実施形態の構成要素は、開示の趣旨から逸脱することなく並べ替えられ得ることを理解されたい。たとえば、らせんコイル状層136および編組層138の位置は、らせんコイル状層が編組層の上になるように逆にされ得る。代替として、らせんコイル状層136および編組層138は、1つまたは複数の中間層によって互いから分離されていることがある。さらに、圧縮抵抗部分150は、外側層140のそれぞれの部分である必要はなく、ガイドシース104の任意の好適な層に組み込まれ得る。圧縮抵抗部分150はまた、操縦可能な部分122の長さ全体に沿って広がる必要はなく、操縦可能な部分の任意の好適な部分に沿って広がることができる。本明細書で説明する、開示する圧縮抵抗部分、らせんコイル状層、および編組層の特徴は、送達カテーテルなど、他のタイプの操縦可能なカテーテルデバイスにも適用可能であり得る。
【0039】
全般的考察
この説明の目的で、本開示の実施形態のいくつかの態様、利点、および新規の特徴について、本明細書で説明する。開示する方法、装置、およびシステムは、決して限定的なものと解釈されるべきではない。代わりに、本開示は、様々な開示する実施形態の新規かつ非自明な特徴および態様すべてを、単独でかつ互いとの様々な組合せおよび部分的組合せで対象とする。方法、装置、およびシステムは、いずれか特定の態様または特徴またはそれらの組合せに限定されず、開示する実施形態は、いずれか1つまたは複数の特定の利点があること、または問題が解決されることを必要としない。
【0040】
開示する実施形態のいくつかの動作を、提示の便宜上、特定の連続した順序で説明するが、以下に記載する特殊な文言によって特定の順序が必要とされない限り、この説明の仕方は再配置を含むことを理解されたい。たとえば、連続して説明する動作は、場合によっては、再編成されるかまたは同時に行われることがある。さらに、簡単のために、添付図は、開示する方法が他の方法に関連して使用され得る様々な方法を示さない場合がある。加えて、説明は、開示する方法を説明するために「提供する」または「実現する」のような用語を使用することがある。これらの用語は、行われる実際の動作の高水準抽象概念である。これらの用語に対応する実際の動作は、特定の実装形態に応じて変わる可能性があり、当業者によって容易に識別可能である。
【0041】
本明細書で、および特許請求の範囲で使用する単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明確に別段の定めがない限り複数形を含む。加えて、「含む」という用語は、「備える」を意味する。さらに、「結合される」および「関連する」という用語は、電気的に、電磁的に、または物理的に(たとえば、機械的にもしくは化学的に)結合またはリンクされる意味であり、特殊の反対の文言がなければ、結合されるかまたは関連する部材間に中間の要素の存在を排除しない。
【0042】
本出願との関連では、「下側」および「上側」という用語は、それぞれ「流入」および「流出」という用語と区別なく使用される。したがって、たとえば、弁の下側端部は、それの流入端部であり、弁の上側端部は、それの流出端部である。
【0043】
本明細書で使用する、「近位」という用語は、使用者により近く、埋め込み部位からより遠いデバイスの位置、方向、または部分を指す。本明細書で使用する、「遠位」という用語は、使用者からより遠く、埋め込み部位により近い装置の位置、方向、または部分を指す。したがって、たとえば、装置の近位動作は、使用者に向かう装置の動きであり、装置の遠位動作は、使用者から離れる装置の動きである。「長手方向」および「軸方向」という用語は、明確に別段の定めがない限り、軸が近位および遠位方向に延びることを指す。
【0044】
別段に規定されていない限り、本明細書または特許請求の範囲において使用される、構成要素の量、距離、力、比、角度、パーセンテージなどを表す数はすべて、「約」という用語で修飾されるものと理解されたい。したがって、暗黙的または明示的に、別段に規定されていない限り、記載される数値パラメータは、求められる所望の特性および/または当業者によく知られているテスト条件/方法のもとでの検出の限界によって決まる可能性がある近似値である。考察した従来技術と実施形態とを直接的および明示的に区別するとき、実施形態数は、「約」という語が記載されていない限り近似値ではない。さらに、本明細書に記載する代替形態すべてが同等であるとは限らない。
【0045】
開示した技術の原理を適用することができる多くの可能な実施形態に鑑みて、図示の実施形態は、好ましい例にすぎず、本開示の範囲を限定すると受け取られるべきではないことを認識されたい。むしろ、本開示の範囲は、少なくとも以下の特許請求の範囲と同じである。
[付記項1]
近位部分、遠位部分、およびプルワイヤ導管を備える操縦可能なシャフトであって、前記プルワイヤ導管が、少なくとも部分的に前記シャフトの前記近位部分および前記遠位部分を通って伸びる、操縦可能なシャフトと、
前記プルワイヤ導管を通って伸び、近位端部分および遠位端部分を有するプルワイヤであって、前記プルワイヤの前記遠位端部分が、前記シャフトの前記遠位部分に固定される、プルワイヤと、
前記プルワイヤの前記近位端部分に動作可能に接続され、前記シャフトの前記遠位部分の湾曲を調整するために前記プルワイヤの張力を増減するように構成された調整機構と、を備える送達装置であって、
前記シャフトの前記遠位部分が、結合部分と、前記結合部分の近位にある操縦可能な部分と、前記結合部分に埋設されかつ前記プルワイヤの前記遠位端部分に結合されたプルリングと、を備え、前記操縦可能な部分が、1つまたは複数の層を有し、かつ前記操縦可能な部分の外側層に組み込まれる圧縮抵抗部分と編組層とを含み、前記外側層が、第1の硬度を有し、前記圧縮抵抗部分が、前記第1の硬度よりも大きい第2の硬度を有し、前記編組層が、前記操縦可能な部分に沿って前記プルリングの近くの前記結合部分から近位に広がる、送達装置。
[付記項2]
前記圧縮抵抗部分が、前記プルワイヤ導管の向かい側に位置している、付記項1に記載の送達装置。
[付記項3]
前記圧縮抵抗部分が、前記外側層の前記断面に沿って10度~180度広がる、付記項1または付記項2に記載の送達装置。
[付記項4]
前記圧縮抵抗部分が、前記外側層の前記断面に沿って60度広がる、付記項3に記載の送達装置。
[付記項5]
前記シャフトが、前記シャフトの内径を定める内側層を備え
る、付記項1から4のいずれか一項に記載の送達装置。
[付記項6]
前記シャフトが、前記内側層と前記外側層との間にらせんコイル状層をさらに備える、付記項5に記載の送達装置。
[付記項7]
前記編組層が、前記らせんコイル状層の少なくとも一部を覆って編組される、付記項6に記載の送達装置。
[付記項8]
前記シャフトが、前記内側層と前記らせんコイル状層との間に、前記プルワイヤ導管を封入するプルワイヤ導管封入層をさらに備える、付記項7に記載の送達装置。
[付記項9]
前記内側層が、前記プルワイヤ導管を収容するように構成された凹部を画定する、付記項5に記載の送達装置。
[付記項10]
前記プルワイヤが第1のプルワイヤであり、
前記プルワイヤ導管が第1のプルワイヤ導管であり、
前記シャフトが、前記凹部に前記第1のプルワイヤ導管に隣接して配置された第2のプルワイヤ導管に収容された第2のプルワイヤをさらに備える、
付記項9に記載の送達装置。
[付記項11]
前記第2の硬度と前記第1の硬度との比が、1.5:1~5:1である、付記項1から10のいずれか一項に記載の送達装置。
[付記項12]
前記比が3:1である、付記項11に記載の送達装置。
[付記項13]
前記シャフトがガイドシースであり、前記送達装置が、前記ガイドシース内に同軸上に配置された埋め込みカテーテルをさらに含み、前記埋め込みカテーテルの遠位端に取り付けられた人工弁を含む、付記項1から12のいずれか一項に記載の送達装置。
【符号の説明】
【0046】
100 送達装置
102 ハンドル部分
104 ガイドシース
106 操縦可能なカテーテル
108 埋め込みカテーテル
110 人工器官デバイス
112 膨張可能バルーン
114 近位部分
116 遠位部分
118 非外傷性先端部分
120 結合部分
122 操縦可能な部分
124 プルワイヤ
126 プルワイヤ
128 導管
130 導管
132 回転ノブ
134 内側層
135 プルワイヤ導管封入層
136 らせんコイル状層
138 編組層
140 外側層
142 凹部
144 プルリング
146 移行領域
148 プルワイヤ出口
150 圧縮抵抗部分
152 平面
154 プルワイヤ導管部分
156 開口
158 編組層
160 プルワイヤ
162 導管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12